(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174287
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】空気極および金属空気電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20231130BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20231130BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20231130BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M4/86 H
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M12/08 K
H01M12/06 F
H01M12/06 B
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087051
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田村 啓吾
【テーマコード(参考)】
5H011
5H018
5H032
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011CC02
5H011CC10
5H018AA10
5H018AS03
5H018BB03
5H018BB06
5H018BB12
5H018EE08
5H018EE12
5H018EE19
5H018HH03
5H032AA02
5H032AS01
5H032AS02
5H032AS03
5H032AS11
5H032BB04
5H032CC02
5H032CC11
(57)【要約】
【課題】空気極における剥離の発生を防止し、出力低下を抑制する。
【解決手段】空気極2は、集電体22、触媒層24、および撥水膜21を備える。撥水膜21は、集電体22の一方の面側に配置された第1撥水膜211と、集電体22の他方の面側に配置された第2撥水膜212とを備える。第1撥水膜211と第2撥水膜212は、集電体を介して積層され一体化される。撥水膜21は周縁部の厚みが他領域よりも厚い封止領域213を有する構成とされている。
【選択図】
図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、触媒層、および撥水膜を備える空気極であって、
前記撥水膜は、その縁部に、厚みが当該撥水膜の他領域よりも厚い封止領域を有することを特徴とする空気極。
【請求項2】
請求項1に記載の空気極において、
前記撥水膜は、前記集電体の一方の面側に配置された第1撥水膜と、前記集電体の他方の面側に配置された第2撥水膜とを備え、
前記第2撥水膜は、少なくとも中央部が開口されて前記封止領域に対応するフレーム形状を有することを特徴とする空気極。
【請求項3】
請求項2に記載の空気極において、
前記集電体は多孔質材とされ、
前記第2撥水膜は前記集電体における前記触媒層側に設けられたことを特徴とする空気極。
【請求項4】
請求項2に記載の空気極において、
前記第2撥水膜は、厚みが前記第1撥水膜の厚みよりも薄いことを特徴とする空気極。
【請求項5】
請求項2に記載の空気極において、
前記第2撥水膜は中央部が開口されたフレーム形状に設けられたことを特徴とする空気極。
【請求項6】
請求項1に記載の空気極において、
前記集電体は多孔質材とされ、
前記撥水膜は、前記集電体の一方の面側に配置された第1撥水膜を備え、
前記第1撥水膜の周縁部に、当該第1撥水膜の他領域よりも厚みが厚い肉厚部が設けられたことを特徴とする空気極。
【請求項7】
請求項1~6までのいずれか1つの請求項に記載の空気極と、金属極と、電解質と、電池ケースとを備える金属空気電池であって、
前記電池ケースには開口部が設けられ、前記開口部の周縁部に前記撥水膜が溶着されてなる溶着領域が設けられたことを特徴とする金属空気電池。
【請求項8】
請求項7に記載の金属空気電池において、
前記封止領域は、前記溶着領域の少なくとも一部と重なるように設けられたことを特徴とする金属空気電池。
【請求項9】
請求項7に記載の金属空気電池において、
前記電池ケースの外側に押さえ部材が設けられ、
前記押さえ部材は空気流入路を備え、前記空気流入路の空気流入方向に対して交差する方向に沿って前記封止領域が設けられたことを特徴とする金属空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気極および金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電極用金属の化学反応を用いた様々な電池が実用化されており、その1つとして金属空気電池が挙げられる。金属空気電池は、空気極(正極)、金属極(負極)、および電解質(または電解液)等で構成されており、電気化学的な反応により、亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、カルシウム、およびリチウム等の金属が、金属酸化物に変化する過程で得られる電気エネルギーを取り出して利用する。
【0003】
集電体、触媒層、および撥水膜を備える空気極は、電池ケースの内部に設けられて、触媒層で酸素の還元反応が進行する。触媒層における酸素還元反応は、固相である触媒、液相である電解液、および気相である空気の三相の表面が、互いに接触した境界面(三相界面)で進行すると考えられている。電池ケースは、空気極で覆われる開口部を有しおり、開口部の全周に沿って電池ケースを構成する包材の熱可塑性樹脂と空気極とが熱融着されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されるような従来の金属空気電池では、空気極に設けられた集電体が他の部材と剥離しやすく、撥水層と集電体との界面や集電体と触媒層との界面にすき間が生じやすくなる。このようなすき間が生じると、電解液がすき間に溜まり、触媒層への空気の供給量が減少する。触媒層への空気の供給量が減少すると、金属空気電池の出力が低下するといった問題点がある。
【0006】
本開示は、前記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、金属空気電池の空気極における剥離の発生を防止して、良好な電池特性を確保するとともに出力低下を抑制し得る空気極および金属空気電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本開示は、集電体、触媒層、および撥水膜を備える空気極であって、前記撥水膜は、撥水膜は、その縁部に、厚みが当該撥水膜の他領域よりも厚い封止領域を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記空気極において、前記撥水膜は、前記集電体の一方の面側に配置された第1撥水膜と、前記集電体の他方の面側に配置された第2撥水膜とを備え、前記第2撥水膜は少なくとも中央部が開口されて前記封止領域に対応するフレーム形状を有することが好ましい。
【0009】
また、前記空気極において、前記集電体は多孔質であり、前記第2撥水膜は前記集電体における前記触媒層側に設けられることが好ましい。
【0010】
また、前記空気極において、前記第2撥水膜は、厚みが前記第1撥水膜の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0011】
また、前記空気極において、前記第2撥水膜は中央部が開口されたフレーム形状に設けられることが好ましい。
【0012】
また、前記空気極において、前記集電体は多孔質材とされ、前記撥水膜は、前記集電体の一方の面側に配置された第1撥水膜を備え、前記第1撥水膜の周縁部に、当該第1撥水膜の他領域よりも厚みが厚い肉厚部が設けられてもよい。
【0013】
また、前記空気極を用いた金属空気電池も本開示の技術的思想の範疇である。すなわち、前記空気極と、金属極と、電解質と、電池ケースとを備える金属空気電池であって、前記電池ケースには開口部が設けられ、前記開口部の周縁部に前記撥水膜が溶着されてなる溶着領域が設けられたことを特徴とする。
【0014】
また、前記金属空気電池において、前記封止領域は、前記溶着領域の少なくとも一部と重なるように設けられることが好ましい。
【0015】
また、前記金属空気電池において、前記電池ケースの外側に押さえ部材が設けられ、前記押さえ部材は空気流入路を備え、前記空気流入路の空気流入方向に対して交差する方向に沿って前記封止領域が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、空気極における剥離の発生を防止することが可能となり、良好な電池特性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の実施形態に係る金属空気電池を示す正面図である。
【
図2】前記金属空気電池の積層構成を示す斜視図である。
【
図3】前記金属空気電池の内部構造を示す断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る空気極の積層構成を示す説明図である。
【
図5】前記空気極における第1撥水膜を示す断面図である。
【
図8A】前記金属空気電池の電池ケースを構成する包材を示す断面図である。
【
図9】前記電池ケースに設けられる溶着領域の一例を示す説明図である。
【
図10】前記電池ケースに設けられる溶着領域の他の例を示す説明図である。
【
図11】前記空気極を備える金属空気電池を用いたモジュール構成例を示す断面図である。
【
図12】前記金属空気電池に備えられる押さえ部材を示す斜視図である。
【
図13】前記金属空気電池を用いた電池ユニットの構成を示す説明図である。
【
図14A】本開示の他の実施形態に係る空気極における撥水膜の構成を示す平面図である。
【
図15】前記撥水膜としての第1撥水膜の肉厚部を拡大して示す断面図である。
【
図17A】前記肉厚部の他の例を拡大して示す断面図である。
【
図17B】前記肉厚部のさらに他の例を拡大して示す断面図である。
【
図18】前記金属空気電池における特性評価の結果を示す特性図表である。
【
図19】前記金属空気電池の特性評価において封止領域の位置について示す説明図である。
【
図20A】前記金属空気電池の特性評価において封止領域の形状について示す説明図である。
【
図20B】前記金属空気電池の特性評価において封止領域の他の形状について示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施形態に係る空気極2および金属空気電池1について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(金属空気電池)
図1~
図3は本開示の実施形態に係る金属空気電池1を示し、
図1は金属空気電池1を示す正面図、
図2は金属空気電池1における内部の積層構成を示す斜視図、
図3は金属空気電池1の断面図である。
【0020】
本開示の実施形態に係る金属空気電池1は、金属極3を負極(アノード)とし、空気極2を正極(カソード)とする電池であって、例えば、亜鉛空気電池、リチウム空気電池、ナトリウム空気電池、カルシウム空気電池、マグネシウム空気電池、アルミニウム空気電池、および鉄空気電池などである。
【0021】
例示の形態に係る金属空気電池1は、電池ケース4内の電解液(図示を省略している)中に、2つの正極と、それら正極の間の負極(金属極3)とが設けられた構成を有している。2つの正極としては、2つの空気極2(第1空気極201および第2空気極202)を備える。金属極3は、電極活物質となる金属を含む。正極は、1つの空気極2と、1つの充電極からなる構成とされてもよい。なお、説明の便宜上、
図1における図中上方を金属空気電池1における上方と仮定し、以下説明する。
【0022】
電池ケース4には、外面から内面に貫通する開口部42が設けられている。
図2に示すように、空気極2は、電池ケース4の内部であって、開口部42に隣接して配置され、開口部42を覆うように設けられている。
【0023】
図3に示すように、開口部42は、電池ケース4の表裏両側を構成する包材41にそれぞれ設けられている。電池ケース4の包材41は、所定形状に打ち抜いて開口部42が形成されている。
【0024】
空気極2は、撥水膜21、集電体22、および触媒層24を積層して構成されている。空気極2のうち、撥水膜21の第1撥水膜211は、開口部42に面して設けられ、第1撥水膜211の内側に集電体22が設けられている。開口部42は、空気極2によって塞がれているので、開口部42から電解液が流出せず、空気だけを通すことができる。空気極2の詳細については後述する。
【0025】
金属極3は、活物質(負極活物質)を含む電極であり、電池ケース4内で電解液に接するように保持され、2つの空気極2に挟まれて配置されている。活物質としては、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄などの金属元素が用いられる。金属極3は、負極集電体31に負極リード部32が延設され、外部回路と電気的に接続することが可能とされている。
【0026】
電解液は、イオン導電性を有する液体であり、溶媒に電解質が溶解している。電解液の種類は、金属電極である負極20に含まれる負極活物質の種類によって異なるが、水溶媒を用いた電解液(電解質水溶液)であることが好ましい。
【0027】
金属空気電池1として、亜鉛空気電池、アルミニウム空気電池、鉄空気電池が適用される場合、電解液には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を用いることができる。また、マグネシウム空気電池の場合には、電解液に塩化ナトリウム水溶液を用いることができる。また、リチウム空気電池の場合には、有機性の電解液を用いることができる。電解液には、電解質以外の有機添加物や無機添加物が添加されてもよく、高分子添加物によりゲル化されていてもよい。
【0028】
金属空気電池1の一例として、亜鉛空気電池とする場合、金属極3の活物質には亜鉛を用いることができ、電解液には水酸化カリウム水溶液を用いることができる。なお、金属極3はこれに限定されず、他の材料を用いてもよく、金属極3との組み合わせに応じて、電解液も適宜選択すればよい。
【0029】
(空気極)
空気極2について、より詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係る空気極2の積層構成を示す説明図であり、
図5は、空気極2の第1撥水膜211を示す断面図である。
【0030】
図4に示すように、空気極2は、撥水膜21、集電体22、および触媒層24が積層されて構成されている。撥水膜21は、その縁部に、厚みが当該撥水膜21の他領域よりも厚い封止領域を有するように構成される。
【0031】
撥水膜21は、撥水性樹脂を含有する多孔性材料により形成されている。撥水膜21としては、集電体22の一方の面側に配置された第1撥水膜211と、集電体22の他方の面側に配置された第2撥水膜212とが備えられている。そのため、空気極2は、集電体22が第1撥水膜211と第2撥水膜212とで挟み込まれた積層構成を有している。
【0032】
また、第1撥水膜211および第2撥水膜212は、共通の材質からなる。
図5に示すように、第1撥水膜211で説明すると、不織布からなる裏打ち層214と、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる撥水性樹脂シートの撥水層215とが、熱ラミネートによって積層一体化されたシート材とされている。
【0033】
第1撥水膜211の裏打ち層214は、後述する包材41の熱溶着性フィルム層412と溶着できる必要がある。包材41の熱溶着性フィルム層412を構成する材料には、PE(ポリエチレン)が好ましいため、裏打ち層214は、熱的にPEと親和性の高い(130~140℃付近に融点を持つ)材質とされることが好ましい。また、撥水膜21における透気性の妨げにならないよう、通気性の高いものであることが好ましい。そのため、裏打ち層214は、PE不織布、またはPEと他の樹脂との混抄材であることが好ましい。裏打ち層214の厚みは、50~100μmとされ、透気度は10s/100cc・Air以下とされることが好ましい。
【0034】
第1撥水膜211の撥水層215の厚みは、例えば100~250μmとされることが好ましく、より好ましくは200~250μmとされることである。第1撥水膜211の気孔率は、20~50%とされることが好ましく、30~40%とされることがより好ましい。透気度は、1000s/100cc・Air以下とされることが好ましい。第1撥水膜21111を適切な厚みとすることで、耐久性を確保でき、触媒層24との密着性を高めることができる。
【0035】
第2撥水膜212は、中央部が開口された矩形フレーム形状に設けられている。第2撥水膜212も第1撥水膜211と同様に裏打ち層214と撥水層215とを有する一方、厚みが第1撥水膜211の厚みよりも薄く形成されている。例えば、第2撥水膜212の厚みは、30μm~150μmとされることが好ましい。第2撥水膜212の厚みは、厚過ぎると触媒層24と第1撥水膜211との距離が大きくなり、プレス一体化時に両者の密着性が悪くなるおそれがあるからである。
【0036】
第2撥水膜212は、集電体22における触媒層24側(集電体22と触媒層24との間)に設けられて、集電体22を介して第1撥水膜211と第2撥水膜212が一体化される。したがって、第2撥水膜212は、中央部が開口された矩形フレーム形状とされる他、フレーム形状の内側(周縁部以外の部分)が格子状や網目状とされてもよい。
【0037】
なお、透気性を考慮すると、第2撥水膜212において開口される部分の面積が、空気極2の投影面積に対して少なくとも50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、封止性を考慮すると、第2撥水膜212において開口される部分の面積が空気極2の投影面積に対して、80%以下であることが好ましい。
【0038】
集電体22は、多孔性でかつ電子伝導性を有し、例えば金属線材を用いてメッシュ状(網構造)に形成され、多数の貫通孔が設けられた多孔質材とされている。集電体22に用いる金属線材の材質は限定されるものではなく公知の材質を適用することができるが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、銅、アルミニウム、タングステン、チタン等から1種以上を選択できる。金属極3は、集電体22に空気極リード部23が延設され、外部回路と電気的に接続することが可能とされている。空気極リード部23は、例えば金属箔等の箔からなる。
【0039】
集電体22は、メッシュ状とされるに限定されず、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチングによるもの、金属粒子や金属繊維の焼結体、発泡金属などの多孔質材であってもよい。ただし、撥水膜21に対するアンカー効果を考慮すると、集電体22はメッシュ状であることがより好ましい。
【0040】
触媒層24は、
図2および
図3に示すように、金属極3に対向して配置され、電解質と接している。触媒層24は、例えば、導電性の多孔性担体と、多孔性担体に担持された触媒とを含む構成とされることが好ましい。これにより、触媒上において、酸素ガスと水と電子とが共存する三相界面を形成することが可能となる。
【0041】
触媒層24に含まれる触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウムおよび白金等の白金族、コバルト、マンガンおよび鉄等の遷移金属を含むペロブスカイト型酸化物、ルテニウム、パラジウムなどの貴金属酸化物、酸化マンガン等が挙げられる。導電性の多孔性担体とは、例えば、カーボンブラックなどの炭素材料が好ましい。触媒粒子径は、100nm~1μmとされ、100nm~500nmとされることがより好ましい。触媒層24の厚みは、100μm~2mmとされ、より好ましくは500μm~1mmとされることである。
【0042】
空気極10を作製する工程では、撥水膜21としての第1撥水膜211、集電体22、撥水膜21としての第2撥水膜212、および触媒層24を順に重ねて、これらをプレスして密着一体化させる。これにより、撥水膜21の周縁部では、その厚みが他領域よりも厚くなった封止領域213が形成される。
【0043】
また、空気極2と、電解液として例えばKOH水溶液と、金属極3とを組み合わせることで、金属空気電池1を得ることができる。金属空気電池1においては、金属極3側から触媒層24に電解質が浸み込み、空気極2の第1撥水膜211側から触媒層24に酸素ガスを含む空気が供給される。その結果、空気極2の触媒層24において電極反応(酸素還元反応)が進行する。これによって、金属空気電池1が出力する。
【0044】
図6は、本実施形態に係る空気極2を示す正面図であり、
図7Aは、
図6におけるA-A断面図であり、
図7Bは、
図6におけるB-B断面図である。
【0045】
前記のとおり、従来の空気極では、撥水膜と集電体とが剥離して界面にすき間が生じ、撥水膜側から触媒層への空気の供給量が減少して、電池出力が低下するおそれがあった。
【0046】
これに対して、本実施形態に係る空気極2は、撥水膜21としての第1撥水膜211と第2撥水膜212とが集電体22を挟んで対向し、一体化されていることで、第2撥水膜212が空気極2の外周部に配置されている。これにより、
図6に示すように、空気極2は、撥水膜21の周縁部の厚みが他領域よりも厚くなった封止領域213を備えている。
【0047】
封止領域213は、第2撥水膜212の厚みが周縁部において第1撥水膜211に重ねられて、他領域よりも厚く、撥水性が強化された領域である。第2撥水膜212は中央部が開口された矩形フレーム形状を有するので、
図7Aに示すように、空気極2の外周部では、1つの辺縁部に沿って第2撥水膜212が存在することとなり、
図7Bに示すように、空気極2の幅方向の中間部では上側の辺縁部と下側の辺縁部に沿ってそれぞれ第2撥水膜212が存在する。
【0048】
第1撥水膜211および第2撥水膜212は、これらの間に介在する多孔質材からなる集電体22に食い込み、密着性が高められている。したがって、集電体22と撥水膜21とを高い強度で接着させることができる。
【0049】
空気極2においては、このような封止領域213が設けられたことで、空気極2の外周部における撥水性を高めることができる。これにより、空気極2は、撥水膜21と触媒層24との間への電解液の浸入や、これらの部材間の剥離を効果的に抑制されたものとなる。
【0050】
なお、第1撥水膜211と第2撥水膜212とは、共通の材質からなるだけでなく、異なる材質からなるものであってもよい。その場合、第1撥水膜211は前記のとおり
図5に示される構成であることが好ましい。一方、第2撥水膜212は封止領域213を構成することから、高い透気性を有しなくともよく、集電体22の撥水膜21に対するアンカー効果を得られる材質であればよい。そのため、例えば第2撥水膜212にはブチルゴム、またはエポキシ系接着剤等を用いることができる。
【0051】
図8Aは、電池ケース4を構成する包材41を示す断面図であり、
図8Bは、電池ケース4の正面図である。
図9は、電池ケース4に設けられる溶着領域43の一例を示す説明図であり、
図10は、溶着領域43の他の例を示す説明図である。
【0052】
上述の空気極2が備えられる本実施形態に係る金属空気電池1では、電池ケース4を構成する包材41と、空気極2の撥水膜21との一体化が図られている。
【0053】
包材41は、電解液に対して耐腐食性を有する材料であって、かつ、耐熱性および熱溶着性を有する材料であることが望まれる。また、包材41は、単層構造であるに限らず、
図8Aに示すように、例えば基材層411と熱溶着性フィルム層412とが積層一体化された複層構造を有することが好ましい。
【0054】
基材層411には、耐熱性を有する合成樹脂系材料を含むことが好ましく、熱融着による封止時に、不要な変形や破断等を生じるのを防ぐ作用を備えさせることができる。そのため、基材層411には、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)などを好適に用いることができ、中でもナイロンが好ましい。
【0055】
包材41の熱溶着性フィルム層412を構成する材料には、PE(ポリエチレン)が好ましく、この他にも、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などが用いられてもよい。また、
図8Bに示すように、包材41により形成される電池ケース4には、略矩形状の開口部42が設けられている。
【0056】
電池ケース4の包材41を、基材層411と熱溶着性フィルム層412との複層構造とするとき、電池ケース4の外面には基材層411が配設され、電池ケース4の内面に熱溶着性フィルム層412が配設されることが好ましい。これによって、電池ケース4の内面の溶着性能を確保するとともに、電池ケース4の物理的強度を高めて形状保持が可能となる。
【0057】
したがって、電池ケース4の内面に配置される熱溶着性フィルム層412は、空気極2の第1撥水膜211と溶着されることになる。空気極2の第1撥水膜211および第2撥水膜212は、前記のとおり、撥水性樹脂を含有する多孔性材料の共通の積層構成を有するシート材である。
図5に示したように、第1撥水膜211および第2撥水膜212は、いずれも一方の面には不織布からなる裏打ち層214が設けられ、他方の面にはPTFE等の撥水層215が設けられて、積層一体化されている。
【0058】
図9に示すように、電池ケース4に設けられた開口部42は、第1撥水膜211で覆われて、開口部42の周縁部が溶着される。この場合、電池ケース4を構成する包材41の熱溶着性フィルム層412に対して、第1撥水膜211の裏打ち層214が接するように重ねて配置され、熱溶着性フィルム層412と裏打ち層214とが溶着される。これにより、開口部42の周縁部に沿って、第1撥水膜211が溶着されてなる溶着領域43が略矩形状に設けられる。
【0059】
例えば、包材41の熱溶着性フィルム層412がPEからなり、第1撥水膜211の裏打ち層214がポリオレフィン不織布とされた場合、溶着条件として、基材層411(例えばナイロン)は溶けないが熱溶着性フィルム層412(PE)が溶ける温度である、160℃程度の温度で数秒間、圧着することが好ましい。これにより、図示するように溶着領域43が設けられる。
【0060】
また、
図10に示すように、第1撥水膜211で覆われた開口部42の上下が直線状に溶着されるとともに、開口部42の左右が直線状に溶着されてもよい。これにより、開口部42の周縁部に、略矩形状(井桁状)の溶着領域43が設けられてもよい。
【0061】
空気極2は、このように設けられる溶着領域43に対して、撥水膜21の封止領域213が重なる部分を有するように設けられる。さらに、触媒層24、第2撥水膜212、集電体22、および溶着領域43が設けられた第1撥水膜211および包材41の一体化物が、この順で重ねられ、常温プレスされることで空気極2が得られる。その際、例えばプレス圧は2.04kN/cm2とされ、プレス時間は2分間とされることが好ましい。
【0062】
したがって、このように構成される空気極2を備える金属空気電池1において、空気極2の外周部の封止領域213と、これに重なり合う部分を有するように溶着領域43が設けられるので、内部の電解液が外部に流出しないように構成することができる。しかも、封止領域213においては、集電体22と撥水膜21とを高い強度で接着させることができ、空気極2内の部材間の電解液の浸入や、撥水膜21、集電体22、および触媒層24の剥離を低減することができる。
【0063】
(電池ユニット)
図11は、空気極2を備える金属空気電池1を用いたモジュール構成例を示す断面図であり、
図12は、金属空気電池1の押さえ部材53を示す斜視図、
図13は、金属空気電池1を用いた電池ユニット10の構成を示す説明図である。
【0064】
金属空気電池1において、より大きな起電力や電池容量を得ようとする場合、複数を直列または並列に接続して用いられる。そのような場合に、複数の金属空気電池1をモジュール筐体50に収納してモジュール化した電池ユニット10を構成することで、容易に取り扱うことが可能となる。
【0065】
前記のように、金属空気電池1において、基材層411と熱溶着性フィルム層412とが積層一体化された構成の包材41が電池ケース4に用いられた場合、電池ケース4に自立性がないため、モジュール筐体50に収納して金属空気電池1同士を所定間隔で保持する必要がある。そのため、
図11に示すように、金属空気電池1の外側に押さえ部材53が配設される。
【0066】
図12に示すように、押さえ部材53は、板状部材が山谷状に折曲された形状を有し、これらの複数の山折り部および谷折り部によって表裏両面に複数の溝531が設けられている。
【0067】
複数の金属空気電池1をモジュール筐体50内に密集させると、電池ケース4の開口部42が塞がれてしまう。これに対して、
図13に示すように、モジュール筐体50に収納された隣接する金属空気電池1同士の間には、それぞれ押さえ部材53が配設されている。モジュール筐体50内に、押さえ部材53で挟まれた金属空気電池1が複数配設されることで、押さえ部材53の折曲された部分が金属空気電池1の外面に接触する。そして、押さえ部材53との接触部同士の間に、矢符X方向に延びる複数の溝531が配置されることとなり、これらの溝531は空気流入路となる。これにより、金属空気電池1同士の間にすき間を設けることができるとともに、金属空気電池1を自立させた状態で配置することができる。
【0068】
また、複数の金属空気電池1および押さえ部材53は、モジュール筐体50内で一方向に配列される。モジュール筐体50には、矢符X方向の一方の側面に通気ファン51が備えられ、他方の側面に排気口52が設けられている。通気ファン51から排気口52へと向かう矢符X方向が空気流入方向となり、複数の金属空気電池1に沿って押さえ部材53を介して空気が流入する。
【0069】
金属空気電池1において、特に封止領域213は空気流入方向(矢符X方向)に交差する方向に沿って設けられていることが好ましい。つまり、この場合には、金属空気電池1の少なくとも上下方向に沿って封止領域213が設けられていることが好ましい。
図7Aに示したように、空気極2の外周部で、1つの辺縁部に沿って上下方向に第2撥水膜212が存在して、封止領域213が形成されていることで、空気極2の外周部における撥水性が高められ、部材間の剥離を効果的に防ぐことが可能となる。
【0070】
(他の実施形態)
図14Aは、他の実施形態に係る空気極2の撥水膜の構成を示す平面図であり、
図14Bは、前記撥水膜を示す断面図である。
【0071】
本開示において、撥水膜21としては、前記したように集電体22の一方の面側に配置される第1撥水膜211と、他方の面側に配置される第2撥水膜212とを有する構成であるに限られず、例えば集電体22の一方の面側だけに配置される構成とされてもよい。その場合に、撥水膜21は、周縁部の厚みが他領域よりも厚い封止領域が、一体に設けられていることが好ましい。すなわち、撥水膜21として、集電体22の一方の面側に配置される第1撥水膜216において、前記第2撥水膜212に相当する厚みを有する肉厚部217が一体に設けられており、前記第2撥水膜212を用いない構成とされてもよい。
【0072】
この場合、例えば
図14Aに示すように、第1撥水膜216の周縁部には肉厚部217が設けられている。また、
図14Bに示すように、肉厚部217は、この第1撥水膜216の他領域よりも厚みが厚くなるように形成されている。第1撥水膜216におけるその他の構成は、前記実施形態に示す第1撥水膜211と共通とすることができる。
【0073】
図15は、第1撥水膜216の肉厚部217を拡大して示す断面図である。図示するように、肉厚部217における厚みDは、他領域の厚みD1に対して、厚みD2分だけさらに厚くなるように設けられている。肉厚部217は、第1撥水膜216の表面側に盛り上がった断面略円形状の畝状に設けられている。
【0074】
ここで、厚みD2は、前記実施形態に示した第2撥水膜212の厚みに相当する厚みであることが好ましい。前記のとおり、第2撥水膜212の好ましい厚みは、30μm~150μmであるので、この第1撥水膜216における厚みD2も、30μm~150μmとされることが好ましい。また、厚みD1は、前記実施形態に示した第1撥水膜211の厚みに相当する、例えば100~250μm(より好ましくは200~250μm)とされることが好ましい。
【0075】
図16は、本実施形態に係る空気極2を示す断面図であり、
図7B相当図である。図示するように、空気極2は、撥水膜21としての第1撥水膜216と触媒層24とが集電体22を挟んで対向し一体化される。これにより、第1撥水膜216の肉厚部217が空気極2の外周部に配置され、集電体22に食い込むものなされる。これにより、空気極2は、撥水膜21の周縁部の厚みが他領域よりも厚く、撥水性が強化された領域である封止領域を有するものとなる。肉厚部217による封止領域においては、集電体22と第1撥水膜216とを高い強度で接着させることができ、空気極2内の部材間の電解液の浸入や、撥水膜21、集電体22、および触媒層24の剥離を低減することが可能となる。
【0076】
なお、第1撥水膜216における肉厚部217の断面形状は、
図15に示される形状であるに限らず、厚みD2を有する形状であればどのような形状とされてもよい。例えば、
図17Aに示すように、第1撥水膜216の肉厚部217は、断面略矩形状に形成されてもよい。また、
図17Bに示すように、第1撥水膜216の肉厚部217は、断面略三角形状に形成されてもよい。
【0077】
(実施例)
図18は、金属空気電池1における評価結果を示す特性図表である。金属空気電池1に備えられる空気極2に、封止領域が設けられている実施例1~4と、封止領域が設けられていない比較例1について電池性能を評価した。
【0078】
実施例1~4および比較例1において、触媒には、MnO2(中央電気工業製、二酸化マンガン、商品名:CMD-K200)を用い、重量比で1.5倍量のカーボンブラックを加えて12時間ボールミル(使用するボールはZrで直径4mm)で混合した。この触媒とカーボンブラックの混合物に全固形分に対する重量比で25%分量の結着剤(ダイキン製、PTFE分散液「D-210C」、溶媒:水、固形分濃度:60wt%)と、全体の固形分濃度が50wt%となる量の水を入れ、加圧ニーダで混練して得たものを合剤とし、この合剤をロール圧延機にてシート状に成形し乾燥することで触媒層24を作製した。
【0079】
封止領域を有する実施例1~3においては、封止領域が設けられる位置を
図19に示すL位置と、R位置とで異ならせた。L位置は、前記実施形態に示したように、第1撥水膜211と第2撥水膜212が集電体22を介して積層されて封止領域を形成する例であり、第2撥水膜212が配置される。R位置は、第1撥水膜211に隣接して第2撥水膜212を設けて封止領域を形成して、第2撥水膜212と触媒層24との間に集電体22を配置する例である。
【0080】
同様に、封止領域を有する実施例4は、第2撥水膜を設けず、
図17Aに示す第1撥水膜216が、集電体22を介して触媒層24に積層され、肉厚部217により封止領域を形成する例である。
【0081】
また、実施例1~4において、封止領域の形状は、
図20Aに示すように、矩形状の封止領域213Aとした実施例1、実施例2、および実施例4と、
図20Bに示すように、上下で直線状の封止領域213Bとした実施例3とで異ならせた。
【0082】
評価項目において、初期電圧と、60℃環境下で21日間保管した後の保管後電圧とを比較し、通電試験によって電圧維持率を評価した。保管には、金属空気電池1に対して矢符X方向を空気流入方向として常時通風した状態で金属空気電池1を保持する評価治具を用いた。また、初期容量と、60℃環境下で同様に21日間保管した後の保管後容量とを比較し、容量維持率を評価した。さらに、保管後の空気極内の電解液の浸入の有無を目視で確認し、浸水状態を評価した。総合的な電池性能の評価として、電圧維持率、容量維持率、および浸水状態の有無から、電池性能を○、△、×として3段階で評価した。
【0083】
封止領域を備えない比較例1では、21日間保管後に大部分の浸水が発生しており、容量維持率が52。8%と低下する結果となった。これに対して、封止領域を備える実施例1および実施例4では、浸水の発生がほぼ認められず、実施例2および実施例3でも部分的に発生する程度にとどまった。
【0084】
また、L位置に第2撥水膜212を設け、集電体22を第1撥水膜211と第2撥水膜212とで挟み込む積層形態とし、第2撥水膜212が矩形フレーム形状の封止領域213Aとされた実施例1は、初期容量と保管後容量とに大きな差が発生せず、容量維持率が98.4%と高い維持率となり、極めて良好な電池性能を有することが認められた。
【0085】
第2撥水膜212が矩形フレーム形状の封止領域213Aであっても、第2撥水膜212をR位置に設けた実施例2では容量維持率が実施例1よりも劣る結果となったが、部分的な浸水が認められるのみであり、良好な電池性能を有するといえる。撥水膜、封止領域、および触媒層は、いずれも互いに密着しやすい性質を有するが、封止領域に対する密着性は触媒層よりも撥水膜の方が高い。そのため、第2撥水膜212を集電体22と触媒層24との間に設けるよりも、集電体22と第1撥水膜211との間に設ける方が、集電体22によるアンカー効果を得られやすく、密着性が高められて好ましい。このことは、第2撥水膜212をL位置に設けた実施例1と、R位置に設けた実施例2との対比からも確認することができる。
【0086】
第2撥水膜212を実施例1と同様のL位置に設けていても、第2撥水膜212が上下で直線状とされた封止領域213Bである実施例3では、空気流入方向の矢符X方向に交差する上下方向に第2撥水膜212(封止領域)が存在しない。そのため、外周部における撥水性がやや低下し、実施例1および実施例2に比べて容量維持率が低くなったと考えられる。しかしながら、実施例3においても、部分的な浸水が認められるのみであり、良好な電池性能を有するといえる。
【0087】
第2撥水膜212が矩形フレーム形状の封止領域213Aとなる実施例1と、第2撥水膜212が上下で直線状とされた封止領域213Bとなる実施例3との対比から、金属空気電池1の空気極2における封止領域は、空気流入方向(矢符X方向)に交差する方向に沿って設けられていること(実施例1)が、高い撥水性を確保するにはより好ましいといえる。
【0088】
仮に実施例3のように、空気流入方向にのみ封止領域を設けた場合、その封止領域が押さえ部材53との非接触部に相当する位置であると、撥水膜21と触媒層24との密着度合いが、押さえ部材53との接触部に相当する位置よりも弱まり、封止領域の効果を高める方向には作用しないと考えられる。そのため、金属空気電池1の空気極2における封止領域は、空気流入方向(矢符X方向)に交差する方向に沿って設けられていることが、より好ましいといえる。
【0089】
また、第2撥水膜212を備えないものの、第1撥水膜216に肉厚部217を設けて、集電体22を触媒層24との間に挟み込む積層形態とした実施例4にあっても、実施例1と同様に封止領域が矩形フレーム形状に形成され、集電体22との密着性が高められたことで、初期容量と保管後容量とに大きな差が発生せず、容量維持率が98.4%と高い維持率となり、極めて良好な電池性能を有することが認められた。
【0090】
以上より、本実施形態に係る空気極2および金属空気電池1において、空気極2での剥離の発生を抑制し得て、良好な電池特性を得ることが可能となり、出力低下の問題を解消することが可能となる。
【0091】
なお、今回開示した実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 金属空気電池
2 空気極
201 第1空気極
202 第2空気極
21 撥水膜
211、216 第1撥水膜
212 第2撥水膜
213 封止領域
214 裏打ち層
215 撥水層
217 肉厚部
22 集電体
23 空気極リード部
24 触媒層
3 金属極
31 負極集電体
32 負極リード部
4 電池ケース
41 包材
411 基材層
412 熱溶着性フィルム層
42 開口部
43 溶着領域
50 モジュール筐体
51 通気ファン
52 排気口
53 押さえ部材
531 溝(空気流入路)