(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174288
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087052
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】山名 真司
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA24
2H033BB12
2H033BB30
2H033CA17
2H033CA36
2H033CA37
(57)【要約】
【課題】温度上昇を許容範囲内に収め、生産性の低下を防ぐことができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置は、用紙を加熱および加圧して画像を定着させる定着ローラ31と、定着ローラ31の幅方向での一部を加熱する加熱部37と、定着ローラ31での通紙を制御する制御部61とを備える。定着ローラ31での通紙では、加熱部37の加熱範囲よりも幅が狭い幅狭用紙を通紙するジョブを実行する際、予め設定された条件で通紙する通常モードと、単位時間当たりの通紙の割合を制限する通紙制限モードとを有する。制御部61は、通常モードを予め設定された通紙制限時間実行した際に、通紙制限モードに移行する移行制御をする。幅狭用紙を通紙するジョブを複数実行する場合において、移行制御では、前のジョブでの通紙時間に応じて、次のジョブにおける通紙制限時間を変更する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を加熱および加圧して画像を定着させる定着部材を備えた定着装置であって、
前記定着部材の幅方向での一部を加熱する加熱部と、
前記定着部材での通紙を制御する制御部とを備え、
前記定着部材での通紙では、前記加熱部の加熱範囲よりも幅が狭い幅狭用紙を通紙するジョブを実行する際、予め設定された条件で通紙する通常モードと、単位時間当たりの通紙の割合を制限する通紙制限モードとを有し、
前記制御部は、前記通常モードを予め設定された通紙制限時間実行した際に、前記通紙制限モードに移行する移行制御をしており、
前記幅狭用紙を通紙するジョブを複数実行する場合において、前記移行制御では、前のジョブでの通紙時間に応じて、次のジョブにおける前記通紙制限時間を変更すること
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記移行制御では、前のジョブでの通紙時間を前記通紙制限時間から減算して、次のジョブにおける前記通紙制限時間とすること
を特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の定着装置であって、
前記移行制御では、前のジョブが前記通常モードで終了している場合、前記通常モードで実行された複数の前のジョブの前記通紙時間を積算し、積算した通紙時間を前記通紙制限時間から減算すること
を特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記移行制御では、前のジョブが終了してから次のジョブを開始するまでの間欠時間に応じて、次のジョブでの前記通紙制限時間を変更すること
を特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定着装置であって、
前記移行制御では、前記間欠時間が予め設定されたリセット時間未満のとき、前のジョブでの通紙時間を前記通紙制限時間から減算し、前記間欠時間が前記リセット時間以上のとき、前のジョブでの通紙時間を無視して前記通紙制限時間を決定すること
を特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項4に記載の定着装置であって、
前記加熱部の加熱範囲以上の幅とされた用紙を幅広用紙とし、前記幅狭用紙と前記幅広用紙とが混在するジョブを混載ジョブとしたとき、
前記移行制御では、前記混載ジョブでの前記幅広用紙の通紙時間を前記間欠時間とみなして、前記通紙制限時間を決定すること
を特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記通紙制限モードでは、連続して通紙する用紙同士の間隔を制御すること
を特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記通紙制限モードでは、通紙する用紙の搬送速度を制御すること
を特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、用紙を加圧して画像を定着させる定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置では、未定着のトナー像が形成された用紙を加圧および加熱することで、トナー像の定着が行われる。定着装置では、ヒータ等を設けて、定着部材が所望の温度を維持するように加熱している。
【0003】
ところで、画像形成装置では、様々な用途に応じるために、サイズ(幅)が異なる用紙に画像形成できるように構成されており、通紙可能な用紙のうち、最もサイズが大きい用紙に合わせて、ヒータ等の加熱範囲が設定されている。そのため、サイズが小さい用紙を通紙する際、定着部材の端部では、用紙に接触しない非通紙部が生じる。非通紙部では、用紙との接触によって温度が低下しないまま加熱されるので、温度が過度に上昇し、定着部材の損傷や溶融などを引き起こすことがあった。そこで、これを解消するために、通紙を制限(CPMダウン)したり、画像形成を一旦停止したりして、温度上昇を抑えていたが、それによって、生産性が低下するという課題があった。このような課題に対し、生産性の低下を防止した画像加熱装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の画像加熱装置は、記録材(用紙)上の画像をニップ部にて加熱する画像加熱手段と、画像加熱手段の記録材搬送領域外を送風により冷却する冷却手段とを有し、記録材の幅が所定範囲内の場合は、冷却動作を伴う画像形成を実行し、記録材の幅が所定幅以下の場合は、冷却動作を行わずに、ニップ部を通過する単位時間当たりの記録材の枚数を減少させた画像形成(CPMダウン)を実行する。
【0006】
上述した画像加熱装置では、所定幅以下の記録材に対して、常にCPMダウンを行うので、生産性が低下するという課題がある。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、温度上昇を許容範囲内に収め、生産性の低下を防ぐことができる定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る定着装置は、用紙を加熱および加圧して画像を定着させる定着部材を備えた定着装置であって、前記定着部材の幅方向での一部を加熱する加熱部と、前記定着部材での通紙を制御する制御部とを備え、前記定着部材での通紙では、前記加熱部の加熱範囲よりも幅が狭い幅狭用紙を通紙するジョブを実行する際、予め設定された条件で通紙する通常モードと、単位時間当たりの通紙の割合を制限する通紙制限モードとを有し、前記制御部は、前記通常モードを予め設定された通紙制限時間実行した際に、前記通紙制限モードに移行する移行制御をしており、前記幅狭用紙を通紙するジョブを複数実行する場合において、前記移行制御では、前のジョブでの通紙時間に応じて、次のジョブにおける前記通紙制限時間を変更することを特徴とする。
【0009】
本開示に係る定着装置は、前記移行制御では、前のジョブでの通紙時間を前記通紙制限時間から減算、次のジョブにおける前記通紙制限時間とする構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る定着装置は、前記移行制御では、前のジョブが前記通常モードで終了している場合、前記通常モードで実行された複数の前のジョブの前記通紙時間を積算し、積算した通紙時間を前記通紙制限時間から減算する構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る定着装置は、前記移行制御では、前のジョブが終了してから次のジョブを開始するまでの間欠時間に応じて、次のジョブでの前記通紙制限時間を変更する構成としてもよい。
【0012】
本開示に係る定着装置は、前記移行制御では、前記間欠時間が予め設定されたリセット時間未満のとき、前のジョブでの通紙時間を前記通紙制限時間から減算し、前記間欠時間が前記リセット時間以上のとき、前のジョブでの通紙時間を無視して前記通紙制限時間を決定する構成としてもよい。
【0013】
本開示に係る定着装置は、前記加熱部の加熱範囲以上の幅とされた用紙を幅広用紙とし、前記幅狭用紙と前記幅広用紙とが混在するジョブを混載ジョブとしたとき、前記移行制御では、前記混載ジョブでの前記幅広用紙の通紙時間を前記間欠時間とみなして、前記通紙制限時間を決定する構成としてもよい。
【0014】
本開示に係る定着装置は、前記通紙制限モードでは、連続して通紙する用紙同士の間隔を制御する構成としてもよい。
【0015】
本開示に係る定着装置は、前記通紙制限モードでは、通紙する用紙の搬送速度を制御する構成としてもよい。
【0016】
本開示に係る画像形成装置は、本開示に係る定着装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この構成によると、前のジョブに応じてCPMダウン制御を行うタイミングを制御することで、温度上昇を許容範囲内に収め、生産性の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施の形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
【
図2】
図1の定着装置近傍を拡大して示す概略側面図である。
【
図3】画像形成装置の概略構成を示す概略構成図である。
【
図4】定着ローラに対する加熱部の加熱範囲と用紙との関係を示す模式説明図である。
【
図5】移行制御の一例(その1)を示す説明図である。
【
図6】移行制御の一例(その2)を示す説明図である。
【
図7】移行制御の一例(その3)を示す説明図である。
【
図8】移行制御の一例(その4)を示す説明図である。
【
図9】移行制御の一例(その5)を示す説明図である。
【
図10】本開示の実施の形態に係る画像形成装置において、幅狭用紙の通紙を実施する際の処理フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本開示の実施の形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
【0021】
本開示の実施の形態に係る画像形成装置1は、画像形成を行う本体部と、上部に設けられた原稿読取部44および原稿搬送部45と、下部に設けられた給紙装置50とを備える。給紙装置50は、装置本体52と、装置本体52に挿入される給紙カセット51とで構成されている。
【0022】
原稿読取部44は、原稿が載置される原稿載置台43が上面に設けられており、原稿載置台43上の原稿の画像を読み取り、画像データを作成して画像形成装置1に伝達する。原稿搬送部45は、原稿載置台43の上に自動で原稿を搬送する。また、原稿搬送部45は、画像形成装置1に対して回動自在に取り付けられており、回動させて原稿載置台43の上を開放することで、原稿を手置きで載置することができる。
【0023】
画像形成装置1の本体部には、露光装置11、現像装置12、感光体ドラム13、クリーニング装置14、帯電器15、転写ユニット20、定着装置17、排紙トレイ39、および用紙搬送経路R1が設けられており、外部や原稿読取部44から伝達された画像データに応じて、所定の用紙に対して多色および単色の画像を形成する。
【0024】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像装置12、感光体ドラム13、帯電器15、クリーニング装置14は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0025】
感光体ドラム13は、画像形成装置1の高さ方向において略中央に配置されている。帯電器15は、感光体ドラム13の表面(周面)を所定の電位に均一に帯電させる。露光装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。クリーニング装置14は、現像および画像転写の後に感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去および回収する。
【0026】
転写ユニット20は、転写駆動ローラ22、転写従動ローラ23、および中間転写ベルト21を備える。中間転写ベルト21は、接続された駆動源によって回転する転写駆動ローラ22と、転写従動ローラ23とに懸架され、転写駆動ローラ22の回転に応じて、転写従動ローラ23と伴に従動する。中間転写ベルト21は、矢符Cの方向へ周回移動し、中間転写ベルトクリーニング装置25によって残留トナーを除去および回収され、各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が順次転写して重ね合わされて、中間転写ベルト21の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0027】
画像形成装置1は、転写ローラ26aを含む2次転写装置26をさらに備えている。転写ローラ26aは、中間転写ベルト21との間に転写ニップ域が形成されており、用紙搬送経路Sを通じて搬送されて来た用紙を転写ニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、転写ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写される。
【0028】
画像形成装置1は、給紙カセット51に蓄積された用紙を用いて画像形成を行う。給紙装置50は、露光装置11の下側に設けられている。また、排紙トレイ39は、原稿読取部44の下方に設けられており、画像形成済みの用紙を載置するためのトレイである。
【0029】
用紙は、給紙ローラ33により給紙カセット51から引き出されて、S字状の用紙搬送経路R1に供給される。用紙搬送経路R1に沿って、さらに、搬送ローラ35、レジストローラ34、2次転写装置26、定着装置17、および排紙ローラ36が配置されている。
【0030】
レジストローラ34は、給紙カセット51から搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム13上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を転写ローラ26aに搬送する。搬送ローラ35は、用紙の搬送を促進補助するための小型のローラである。
【0031】
定着装置17は、未定着のトナー像が形成された用紙を受け取り、定着ローラ31(定着部材の一例)と加圧ローラ32との間に通紙し、用紙を挟み込んで加熱および加圧して、用紙上のトナー像を定着させる。定着後の用紙は、排紙ローラ36によって排紙トレイ39上に排出される。本実施の形態において、定着ローラ31の内側には、加熱部37が配置されており、定着ローラ31の外側には、温度検知部38が配置されている。なお、定着装置17については、後述する
図2を参照して、詳細に説明する。
【0032】
また、用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合は、用紙を排紙ローラ36から反転経路Rrへと逆方向に搬送して、用紙の表裏を反転させ、用紙をレジストローラ34へと再度導き、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を排紙トレイ39へと搬出する。
【0033】
図2は、
図1の定着装置近傍を拡大して示す概略側面図である。
【0034】
上述したように、定着装置17は、定着ローラ31、加圧ローラ32、加熱部37、および温度検知部38を備える。加熱部37は、供給された電力によって発熱するヒータランプや発熱素子などである。加熱部37については、温度検知部38での検知結果に応じて加熱するタイミングを制御すればよい。温度検知部38は、例えば、非接触式の温度センサである。
【0035】
図3は、画像形成装置の概略構成を示す概略構成図である。
【0036】
画像形成装置1は、さらに、制御部61および受付部62を備える。なお、
図3では、画像形成装置1の一部を抜き出して示しているが、他の部材を備えていてもよい。制御部61は定着ローラ31での通紙を制御する。受付部62は、ユーザから画像形成(ジョブ)を実行する旨の指示を受け付ける。ユーザから受け付けたジョブでは、形成する画像と、それに対応する用紙の種類とを関連付けて受け付けてもよい。また、ジョブでは、複数の用紙に対する画像形成を併せて受け付けてもよい。
【0037】
次に、定着ローラ31と用紙の幅との関係について、
図4を参照して説明する。
【0038】
図4は、定着ローラに対する加熱部の加熱範囲と用紙との関係を示す模式説明図である。
【0039】
図4では、定着ローラ31、加熱部37、温度検知部38、および用紙について、幅方向Wでのそれぞれの位置関係を示している。本実施の形態において、加熱部37は、メインヒータ37aとサブヒータ37bとで構成されている。メインヒータ37aは、幅方向Wでの中央部に発熱部(メイン発熱部HE1)が設けられている。サブヒータ37bは、幅方向Wでの両端部に発熱部(サブ発熱部HE2)が設けられており、サブ発熱部HE2は、幅方向Wにおいて、メイン発熱部HE1の端部と僅かに重複している。
【0040】
本実施の形態において、温度検知部38は、メイン検知部38a、サブ検知部38b、および非通紙検知部38cで構成されている。メイン検知部38aは、幅方向Wでの略中央であって、メイン発熱部HE1に対応する位置に配置されている。サブ検知部は、幅方向Wでの端部よりの位置であって、サブ発熱部HE2に対応する位置に配置されている。非通紙検知部38cは、幅方向Wでの端部であって、サブ発熱部HE2の端部に対応する位置に配置されている。以下では説明のため、幅方向Wにおいて、メイン発熱部HE1に対応する範囲を加熱範囲KAと呼ぶことがある。
【0041】
画像形成装置1は、サイズ(幅)が異なる複数の種類の用紙に対して画像形成可能とされている。画像形成装置1では、定着ローラ31の幅方向Wでの中心と、用紙の幅方向Wでの中心とが略一致するように通紙される。
図4では、画像形成可能な用紙の例として、第1用紙P1(幅広用紙の一例)、第2用紙P2(幅広用紙の一例)、および第3用紙P3(幅狭用紙の一例)を示している。第1用紙P1は、メイン発熱部HE1(加熱範囲KA)よりも幅が広く、端部がサブ発熱部HE2に重なっている。つまり、メインヒータ37aとサブヒータ37bとを動作させることで、第1用紙P1に対応する部分を加熱することができる。第2用紙P2は、メイン発熱部HE1(加熱範囲KA)と略同じくらいの幅とされている。つまり、メインヒータ37aを動作させることで、第2用紙P2に対応する部分を加熱することができる。第3用紙P3は、メイン発熱部HE1(加熱範囲KA)よりも幅が狭い。メインヒータ37aを動作させることで、第3用紙P3よりも広い範囲が加熱される。そのため、第3用紙P3の通紙が連続すると、定着ローラ31において、第3用紙P3よりも外側の非通紙部では、過度に温度が上昇することがあった。
【0042】
そこで、画像形成装置1では、通紙を制限(CPMダウン)して、温度上昇を抑えている。具体的に、画像形成装置1には、加熱範囲KAよりも幅が狭い幅狭用紙を通紙するジョブを実行する際、予め設定された条件で通紙する通常モードと、単位時間当たりの通紙の割合を制限する通紙制限モードとが設けられている。通紙制限モードでは、連続して通紙する用紙同士の間隔が、通常モードよりも広くなるように制御している。用紙同士の間隔が広くなると、次の用紙が通紙されるまでの時間が長くなるので、定着ローラ31での温度分布の偏りが解消される。このように、用紙同士の間隔を制御することで、容易にCPMダウンを行うことができる。用紙同士の間隔の制御では、給紙カセット51から用紙を引き出すタイミングを調整したり、レジストローラ34から用紙を搬送するタイミングを調整したりすればよい。また、通紙制限モードでは、上述した方法に限らず、通紙する用紙の搬送速度を、通常モードよりも遅くなるように制御してもよい。
【0043】
次に、通常モードと通紙制限モードとで移行させる移行制御について、
図5ないし
図9を参照して説明する。
【0044】
図5は、移行制御の一例(その1)を示す説明図である。
【0045】
図5と、後述する
図6ないし
図9とでは、時間の経過に沿った画像形成装置1の動作を示している。以下では説明のため、通常モードでの画像形成装置1の動作を通常動作と呼び、通紙制限モードでの画像形成装置1の動作を通紙制限動作と呼ぶことがある。また、幅広用紙の通紙に対応した画像形成装置1の動作を幅広動作と呼ぶことがある。
【0046】
本実施の形態では、通常時に幅狭用紙を通紙するジョブを実行する際、通常モードにしてジョブを開始する。通常動作(第1通常動作TD1)での通紙時間が通紙制限時間STに到達すると、通紙制限モードに移行させ、以降は、通紙制限動作(第1通紙制限動作SD1)を実施する。本実施の形態において、通紙制限時間STは65秒とされているが、これに限定されず、適宜変更してもよい。用紙の通紙時間については、用紙のサイズ(種類)に応じて、予め設定された値から適宜換算すればよい。移行制御では、ジョブでの通紙時間をカウントし、通紙制限時間STから減算する処理を実施しており、通紙制限時間STが0になると通紙制限モードに移行させる。このように、簡素な計算によって、通紙制限モードに移行するタイミングを容易に制御することができる。
【0047】
図6は、移行制御の一例(その2)を示す説明図である。
【0048】
画像形成装置1では、1つのジョブで通紙する用紙として、幅狭用紙と幅広用紙とが混在して指定されることがあり、このような幅狭用紙と幅広用紙とが混在するジョブを混載ジョブと呼ぶ。また、移行制御では、前のジョブが終了してから次のジョブを開始するまでの期間を間欠時間としている。そして、混載ジョブでは、幅広用紙の通紙時間を間欠時間とみなして、通紙制限時間STを決定する。幅広用紙の通紙では、定着ローラ31の加熱範囲内に非通紙部が生じず、温度上昇が抑えられるので、通紙時間を間欠時間と同じように扱うことができ、より適切な制御を行うことができる。
【0049】
図6では、混載ジョブにおける画像形成装置1の動作を示している。
図6に示すジョブでは、幅狭用紙と幅広用紙との通紙を交互に繰り返している。具体的に、ジョブ開始時は、幅狭用紙の通紙(第2通常動作TD2)を通常モードで実施した後、幅広用紙の通紙(第1幅広動作ND1)を実施している。その後も幅狭用紙と幅広用紙との通紙を交互に繰り返しており、第3通常動作TD3、第2幅広動作ND2、第4通常動作TD4、第3幅広動作ND3、および第5通常動作TD5の順に実施している。この際、第2通常動作TD2、第3通常動作TD3、第4通常動作TD4、および第5通常動作TD5での通紙時間を積算し、積算した時間が通紙制限時間STを超えると、通紙制限モードに移行させ、第5通常動作TD5の後に、通紙制限動作(第2通紙制限動作SD2)を実施する。つまり、複数枚の幅狭用紙の通紙として、第5通常動作TD5を実施している途中からCPMダウンして、第2通紙制限動作SD2を実施している。
【0050】
上述したように、CPMダウンをせずに、通常モードでの通紙を繰り返し実行している場合には、温度上昇が懸念されるので、通紙時間を積算することで、通紙制限モードに移行するタイミングを早め、温度上昇を抑えることができる。
【0051】
次に、混載ジョブにおいて、通紙制限モードに移行した後に、幅広用紙の通紙を実施する場合について、
図7および
図8を参照して説明する。
【0052】
図7は、移行制御の一例(その3)を示す説明図であって、
図8は、移行制御の一例(その4)を示す説明図である。
【0053】
図7では、
図5に示す一例と同様に、通常動作(第6通常動作TD6)を通紙制限時間STに到達するまで実施した後、通紙制限モードに移行して、通紙制限動作(第3通紙制限動作SD3)を実施している。そして、第3通紙制限動作SD3の後に、幅広用紙の通紙(第4幅広動作ND4)を実施する。ここで、第4幅広動作ND4の通紙時間(第1間欠時間KT1)が、予め設定されたリセット時間よりも短い場合には、通紙制限モードを維持し、第4通紙制限動作SD4を実施する。本実施の形態において、リセット時間は、60秒とされているが、これに限定されず、適宜変更してもよい。
【0054】
図8は、通常動作(第7通常動作TD7)の後、通紙制限モードに移行して、通紙制限動作(第5通紙制限動作SD5)を実施した後、幅広用紙の通紙(第5幅広動作ND5)を実施している点は、
図7に示す一例と同じである。
図8は、第5幅広動作ND5の通紙時間(第2間欠時間KT2)が、予め設定されたリセット時間よりも長い場合を示しており、この場合、それまでの通紙時間を無視して通常モードに移行し、第8通常動作TD8を実施する。
【0055】
上述したように、移行制御では、間欠時間がリセット時間未満のとき、ジョブでの通紙時間を通紙制限時間STから減算する処理を実施する。一方、間欠時間がリセット時間以上のときには、ジョブでの通紙時間を無視して通紙制限時間STを決定する。つまり、通紙制限時間STをリセットして、最初に設定された値に戻す。このように、間欠時間が所定のリセット時間より長いと、充分に温度上昇が抑えられていると判断できるので、通紙制限時間STの減算をリセットすることで、より適切な制御を行うことができる。
【0056】
図7および
図8では、幅広用紙の通紙している期間を間欠時間とみなした場合を示したが、これに限定されず、第4幅広動作ND4および第5幅広動作ND5を、定着ローラ31への通紙を行っていない期間に差し替えても、同様の処理が行われる。つまり、
図7は、前のジョブとして第3通紙制限動作SD3を実施した後に、通紙を行っていない期間として第1間欠時間KT1を空けてから、次のジョブとして第4通紙制限動作SD4を実施した場合に相当する。また、
図8は、前のジョブとして第5通紙制限動作SD5を実施した後に、通紙を行っていない期間として第2間欠時間KT2を空けてから、次のジョブとして第8通常動作TD8を実施した場合に相当する。
【0057】
図9は、移行制御の一例(その5)を示す説明図である。
【0058】
図9は、前のジョブを実施した後、時間を空けて、次のジョブを実施する場合を示している。具体的に、短時間の通常動作(第9通常動作TD9)を実施した後、第3間欠時間KT3を空けて、再度、通常動作(第10通常動作TD10)を開始している。この際、第9通常動作TD9での通紙時間を通紙制限時間STから減算した状態で、第10通常動作TD10での通紙時間を通紙制限時間STから減算する処理を実施している。そして、減算処理により通紙制限時間STが0になると、通紙制限モードに移行して、通紙制限動作(第6通紙制限動作SD6)を実施する。
【0059】
例えば、第9通常動作TD9での通紙時間を10秒とし、通紙制限時間STを65秒にした場合では、第10通常動作TD10での通紙時間が55秒を超えた時点から、第6通紙制限動作SD6を実施する。このように、前のジョブに応じてCPMダウン制御を行うタイミングを制御することで、温度上昇を許容範囲内に収め、生産性の低下を防ぐことができる。
【0060】
なお、
図9に示すように、第3間欠時間KT3の間に、幅広用紙の通紙(第6幅広動作ND6)を実施した場合、第6幅広動作ND6の通紙時間は、間欠時間とみなされ、通紙制限時間STの減算には反映されない。
【0061】
次に、画像形成装置1において、幅狭用紙の通紙を実施する際の処理フローを、
図10を参照して説明する。
【0062】
図10は、本開示の実施の形態に係る画像形成装置において、幅狭用紙の通紙を実施する際の処理フローを示すフロー図である。
【0063】
ステップS01では、受付部62によって、ユーザからのジョブの実施を受け付ける。
【0064】
ステップS02では、制御部61によって、現在の状態が通紙制限モードであるかどうかを判断する。その結果、通紙制限モードである場合(ステップS02:Yes)には、ステップS03へ進む。一方、通紙制限モードでない場合(ステップS02:No)には、ステップS05へ進む。
【0065】
ステップS03では、制御部61によって、間欠時間がリセット時間を超えているかどうかを判断する。具体的に、間欠時間がリセット時間を超えている場合は、
図8に示す一例に対応し、間欠時間がリセット時間を超えていない場合は、
図7に示す一例に対応する。間欠時間がリセット時間を超えている場合(ステップS03:Yes)には、ステップS04へ進む。一方、間欠時間がリセット時間を超えていない場合(ステップS03:No)には、ステップS08へ進む。
【0066】
ステップS04では、制御部61によって、積算時間をリセットし、通常モードに移行する。
【0067】
ステップS05では、制御部61によって、通常モードでの印刷を実施させる。ここでは、通紙時間を積算時間としてカウントしている。また、積算時間をリセットせずに、通常モードでの印刷を繰り返している場合は、累積した通紙時間を積算時間とする。
【0068】
ステップS06では、制御部61によって、積算時間が通紙制限時間を超えているかどうかを判断する。その結果、積算時間が通紙制限時間を超えている場合(ステップS06:Yes)には、ステップS07へ進む。一方、積算時間が通紙制限時間を超えていない場合(ステップS06:No)には、ステップS09へ進む。
【0069】
ステップS07では、制御部61によって、通紙制限モードに移行させる。
【0070】
ステップS08では、制御部61によって、通紙制限モードでの印刷を実施させる。
【0071】
ステップS09では、制御部61によって、ジョブが終了したかどうかを判断する。その結果、ジョブが終了した場合(ステップS09:Yes)には、処理を終了する。一方、ジョブが終了していない場合(ステップS09:No)には、ステップS02へ戻る。
【0072】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
17 定着装置
31 定着ローラ(定着部材の一例)
37 加熱部
38 温度検知部
61 制御部
62 受付部
KA 加熱範囲
W 幅方向