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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174310
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20231130BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B23Q3/157 B
B23Q3/155 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087092
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】森 雅彦
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002AA01
3C002BB07
3C002CC00
3C002EE03
3C002HH07
3C002KK01
3C002LL01
(57)【要約】
【課題】マガジンの工具の排出及び取り付けの少なくとも一方の作業にともなう加工動作の停止時間を低減できる工作機械を提供すること。
【解決手段】マガジンは、交換用の複数の工具を保持し、複数の工具の位置を入れ替える工具入替装置と、工具を収容可能な収容部と、工具入替装置に保持された工具を取り外す取り外し装置と、を有する。制御装置は、マガジンに収容された交換用の複数の工具、及び工具主軸装置に取り付けられた工具のうち、少なくとも一方について、交換が必要な寿命工具が存在するか否かを判断する寿命工具判断処理と、寿命工具判断処理により寿命工具が存在すると判断した場合、寿命工具判断処理により判断した寿命工具を、工具入替装置を制御して収容部に対応する位置に配置し、取り外し装置を制御して寿命工具を収容部に排出する排出処理と、を実行する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具によりワークに対する加工を実行する工具主軸装置と、
交換用の複数の前記工具を収納するマガジンを有し、前記マガジンの交換用の前記工具と、前記工具主軸装置の前記工具との交換を実行する自動工具交換装置と、
制御装置と、
を備え、
前記マガジンは、
交換用の複数の前記工具を保持し、複数の前記工具の位置を入れ替える工具入替装置と、
前記工具を収容可能な収容部と、
前記工具入替装置に保持された前記工具を取り外す取り外し装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記マガジンに収容された交換用の複数の前記工具、及び前記工具主軸装置に取り付けられた前記工具のうち、少なくとも一方について、交換が必要な寿命工具が存在するか否かを判断する寿命工具判断処理と、
前記寿命工具判断処理により前記寿命工具が存在すると判断した場合、前記寿命工具判断処理により判断した前記寿命工具を、前記工具入替装置を制御して前記収容部に対応する位置に配置し、前記取り外し装置を制御して前記寿命工具を前記収容部に排出する排出処理と、
を実行する、工作機械。
【請求項2】
前記工具入替装置は、
複数の工具保持具と、
複数の前記工具保持具を取り付けられ、複数の前記工具保持具を搬送する搬送装置と、
を有し、
複数の前記工具保持具の各々は、
交換用の前記工具を保持し、所定の位置を押し込まれることで前記工具の保持を解除するロック機構を有し、
前記制御装置は、
前記搬送装置を制御し、前記工具保持具に前記工具を保持させた状態で複数の前記工具保持具の位置を入れ替えることで前記工具の位置を入れ替え、
前記取り外し装置は、
前記制御装置の制御に基づいて前記寿命工具を保持する前記工具保持具の前記ロック機構における所定の位置を押し込んで、前記工具保持具の保持を解除し前記寿命工具を排出する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記マガジンは、
前記収容部をスライド可能に保持するスライド部材を有し、
前記収容部は、
前記マガジンの外となる第1スライド位置と、前記マガジンの中であって前記取り出し装置によって排出された前記寿命工具を受け取り可能な第2スライド位置とに、前記スライド部材によりスライド可能に設けられる、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記スライド部材に対して前記収容部をスライド移動させるスライド駆動源を、さらに備え、
前記制御装置は、
前記寿命工具判断処理により前記寿命工具が存在すると判断した場合、前記スライド駆動源を制御して前記収容部を前記第1スライド位置から前記第2スライド位置へ移動させ、前記排出処理を実行する、請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記収容部は、
前記収容部に前記寿命工具が収容されたか否かを検出する工具センサを有し、
前記制御装置は、
前記工具センサの検出信号に基づいて前記寿命工具が前記収容部に排出されたことを検出した後、前記スライド駆動源を制御して前記収容部を前記第2スライド位置から前記第1スライド位置へ移動させ、前記収容部を前記第1スライド位置へ移動させたことを報知する、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記寿命工具判断処理により前記寿命工具が存在すると判断した場合、前記自動工具交換装置を制御して前記マガジンと前記工具主軸装置との間で前記工具を交換しない時間が所定の基準時間以上となるか否かを判断する空き時間判断処理を実行し、
前記空き時間判断処理により交換しない時間が所定の前記基準時間以上であると判断した場合、前記スライド駆動源を制御して前記収容部を前記第1スライド位置から前記第2スライド位置へ移動させ、前記排出処理を実行する、請求項4に記載の工作機械。
【請求項7】
ユーザインタフェースを、さらに備え、
前記工具入替装置は、
複数の工具保持具と、
複数の前記工具保持具を取り付けられ、複数の前記工具保持具を搬送する搬送装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記搬送装置を制御し、前記工具保持具に前記工具を保持させた状態で複数の前記工具保持具の位置を入れ替えることで前記工具の位置を入れ替え、
前記収容部は、
前記工具を保持する治具と、
前記治具に保持された前記工具を移動させる移動装置と、
を有し、
前記制御装置は、
複数の前記工具保持具のうち、前記治具に保持された前記工具を取り付ける前記工具保持具を識別する識別情報を前記ユーザインタフェースによって受け付ける受付処理と、
前記搬送装置を制御して、前記受付処理で受け付けた前記識別情報が示す前記工具保持具を、前記収容部から前記工具を受け取り可能な位置に配置する工具保持具配置処理と、
前記工具保持具配置処理を実行した後、前記移動装置を制御して、前記治具に保持された前記工具を、前記工具保持具配置処理により配置した前記工具保持具に取り付ける取り付け処理と、
を実行する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項8】
前記マガジンは、
前記収容部をスライド可能に保持するスライド部材と、
前記スライド部材に対して前記収容部をスライド移動させるスライド駆動源と、
を有し、
前記収容部は、
前記マガジンの外となる第1スライド位置と、前記マガジンの中であって前記治具に保持された前記工具を前記工具保持具に取り付け可能な第2スライド位置とに、前記スライド部材によりスライド可能に設けられ、
前記制御装置は、
前記工具保持具配置処理を実行し、前記スライド駆動源を制御して前記収容部を前記第1スライド位置から前記第2スライド位置へ移動させた後、前記取り付け処理を実行する、請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
対向2軸旋盤を、さらに備え、
前記工具主軸装置は、
前記対向2軸旋盤の主軸と平行な方向において、前記対向2軸旋盤の間に配置され、
前記マガジンは、
前記工具主軸装置の上方で、且つ前記工作機械における前方側となる位置に配置される、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項10】
工具によりワークに対する加工を実行する工具主軸装置と、
交換用の複数の前記工具を収納するマガジンを有し、前記マガジンの交換用の前記工具と、前記工具主軸装置の前記工具との交換を実行する自動工具交換装置と、
ユーザインタフェースと、
制御装置と、
を備え、
前記マガジンは、
交換用の複数の前記工具を保持し、複数の前記工具の位置を入れ替える工具入替装置と、
前記工具を収容可能な収容部と、
を有し、
前記工具入替装置は、
複数の工具保持具と、
複数の前記工具保持具を取り付けられ、複数の前記工具保持具を搬送する搬送装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記搬送装置を制御し、前記工具保持具に前記工具を保持させた状態で複数の前記工具保持具の位置を入れ替えることで前記工具の位置を入れ替え、
前記収容部は、
前記工具を保持する治具と、
前記治具に保持された前記工具を移動させる移動装置と、
を有し、
前記制御装置は、
複数の前記工具保持具のうち、前記治具に保持された前記工具を取り付ける前記工具保持具を識別する識別情報を前記ユーザインタフェースによって受け付ける受付処理と、
前記搬送装置を制御して、前記受付処理で受け付けた前記識別情報が示す前記工具保持具を、前記収容部から前記工具を受け取り可能な位置に配置する工具保持具配置処理と、
前記工具保持具配置処理を実行した後、前記移動装置を制御して、前記治具に保持された前記工具を、前記工具保持具配置処理により配置した前記工具保持具に取り付ける取り付け処理と、
を実行する、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械におけるマガジンに収容された工具の交換に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マガジンを備える工作機械が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、工作機械のマガジンに収容された工具の寿命を管理する寿命管理装置について記載されている。寿命管理装置は、工作機械と段取りステーションが接続されている。段取りステーションは、工作機械のマガジンに取り付けられ、工具を交換する。寿命管理装置は、管理する工具として、複数の刃が段状に設けられた段付工具を管理している。工作機械は、任意の刃の寿命が尽きた場合、当該刃を備えた工具がマガジンから段取りステーションへ搬送される。そして、新しい刃に交換された工具は、段取りステーションを介してマガジンへ搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-112652号公報(段落0047)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、工具をマガジンから排出又はマガジンに搬入する機械的な構造について具体的に記載されていない。また、上記した段付工具の他に、ドリルやエンドミルなどの工具についても、使用回数や使用時間に応じて交換が必要となる。このような交換が必要な寿命工具は、マガジンや工具主軸装置から取り出し、新たな工具と交換する必要がある。例えば、ユーザがマガジン内の工具を取り外して交換する場合や、工具主軸装置から工具を取り外して交換する場合、工作機械の加工動作の停止が必要となる場合がある。一方で、同一種の工具をマガジンに複数収容した場合、任意の工具が寿命工具となっても、代替えの工具がマガジン内にあれば、直ぐに寿命工具を交換する必要がない場合もある。このため、工作機械が、実行する加工の工程やマガジン内の工具のストック状態に応じて工具を排出する、あるいは新たな工具を搬入する技術が必要となる。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、マガジンの工具の排出及び取り付けの少なくとも一方の作業にともなう加工動作の停止時間を低減できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、工具によりワークに対する加工を実行する工具主軸装置と、交換用の複数の前記工具を収納するマガジンを有し、前記マガジンの交換用の前記工具と、前記工具主軸装置の前記工具との交換を実行する自動工具交換装置と、制御装置と、を備え、前記マガジンは、交換用の複数の前記工具を保持し、複数の前記工具の位置を入れ替える工具入替装置と、前記工具を収容可能な収容部と、前記工具入替装置に保持された前記工具を取り外す取り外し装置と、を有し、前記制御装置は、前記マガジンに収容された交換用の複数の前記工具、及び前記工具主軸装置に取り付けられた前記工具のうち、少なくとも一方について、交換が必要な寿命工具が存在するか否かを判断する寿命工具判断処理と、前記寿命工具判断処理により前記寿命工具が存在すると判断した場合、前記寿命工具判断処理により判断した前記寿命工具を、前記工具入替装置を制御して前記収容部に対応する位置に配置し、前記取り外し装置を制御して前記寿命工具を前記収容部に排出する排出処理と、を実行する、工作機械を開示する。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本明細書は、工具によりワークに対する加工を実行する工具主軸装置と、交換用の複数の前記工具を収納するマガジンを有し、前記マガジンの交換用の前記工具と、前記工具主軸装置の前記工具との交換を実行する自動工具交換装置と、ユーザインタフェースと、制御装置と、を備え、前記マガジンは、交換用の複数の前記工具を保持し、複数の前記工具の位置を入れ替える工具入替装置と、前記工具を収容可能な収容部と、を有し、前記工具入替装置は、複数の工具保持具と、複数の前記工具保持具を取り付けられ、複数の前記工具保持具を搬送する搬送装置と、を有し、前記制御装置は、前記搬送装置を制御し、前記工具保持具に前記工具を保持させた状態で複数の前記工具保持具の位置を入れ替えることで前記工具の位置を入れ替え、前記収容部は、前記工具を保持する治具と、前記治具に保持された前記工具を移動させる移動装置と、を有し、前記制御装置は、複数の前記工具保持具のうち、前記治具に保持された前記工具を取り付ける前記工具保持具を識別する識別情報を前記ユーザインタフェースによって受け付ける受付処理と、前記搬送装置を制御して、前記受付処理で受け付けた前記識別情報が示す前記工具保持具を、前記収容部から前記工具を受け取り可能な位置に配置する工具保持具配置処理と、前記工具保持具配置処理を実行した後、前記移動装置を制御して、前記治具に保持された前記工具を、前記工具保持具配置処理により配置した前記工具保持具に取り付ける取り付け処理と、を実行する、工作機械を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の工作機械によれば、マガジンの工具の排出及び取り付けの少なくとも一方の作業にともなう加工動作の停止時間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例に係わる工作機械を正面側から見た斜視図。
図2】工作機械のブロック図。
図3図1の工作機械の装置カバーを取り外した状態を示す図。
図4図3の状態における工作機械の右側面図。
図5】自動工具交換装置の斜視図。
図6】自動工具交換装置を機体裏側(図5の反対側)から見た斜視図。
図7】前後シフタによって工具を移動させる状態を示す側面図。
図8】取り外し装置の構成を示す模式図。
図9】ツールマガジン及び収容ボックスの構成を示す模式図。
図10】工具排出処理のフローチャート。
図11】工具排出処理の動作状態を示す模式図。
図12】工具取り付け処理のフローチャート。
図13】工具取り付け処理の動作状態を示す模式図。
図14】別例の収容ボックスの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の工作機械を具体化した一実施例について、図を参照しつつ詳しく説明する。図1は、本実施例の工作機械1を正面側から見た斜視図を示している。図2は、工作機械1のブロック図を示している。図3は、工作機械1の装置カバー2(図1参照)を取り外した状態を示している。以下の説明では、図1に示すように、工作機械1を正面から見た方向を基準として、機械幅方向であって装置の設置面に水平な方向における右方向をZ方向、装置の設置面に平行でZ方向に垂直な前方向をY方向、Z方向及びY方向に垂直な上方向をX方向と称して説明する。また、以下の説明では、概ね、工作機械1の左側に配置された装置に関する符号に「L」の文字を、右側に配置された装置に関する符号に「R」の文字を付加する。
【0011】
(工作機械1の構成)
図1及び図2に示すように、工作機械1は、前面を装置カバー2によって覆われており、機械正面には可動式の操作盤3が配置されている。装置カバー2は、工作機械1の左側に左側正面扉5Lが設けられ、右側に右側正面扉5Rが設けられている。左側及び右側正面扉5L,5Rは、例えば、スライド扉であり、扉を開けることで、扉の後方の加工スペースにアクセス可能となっている。
【0012】
図2及び図3に示すように、工作機械1は、操作盤3の他に、左側加工装置11L、右側加工装置11R、ワーク搬送装置14、制御装置15を備えている。左側正面扉5Lの後方には、左側加工装置11L及び左側加工装置11Lの加工スペースが設けられている。左側加工装置11Lは、例えば、タレット型の旋盤であり、左側主軸装置12Lと、左側タレット13Lを備えている。左側主軸装置12Lは、例えば、ワークをチャックする複数の爪(図示略)を備え、複数の爪によってワークを把持し、Z方向と平行な軸心を中心にワークを回転させる。左側タレット13Lは、複数の工具(回転工具や切削工具)を取り付け可能な刃物台を有し、工具の割り出しを実行する。左側タレット13Lは、割り出した工具によって左側主軸装置12Lに把持されたワークに対する加工(切削加工や穴開け加工など)を実行する。ユーザは、左側正面扉5Lを介してワークの加工状態の確認や劣化した工具の交換などを実行する。
【0013】
また、右側正面扉5Rの後方には、右側加工装置11R及び右側加工装置11Rの加工スペースが設けられている。右側加工装置11Rは、左側加工装置11Lと同一の構成となっている。このため、右側加工装置11Rの説明において左側加工装置11Lと同様の内容についての説明を省略する。右側加工装置11Rは、右側主軸装置12Rと、右側タレット13Rを備えている。右側主軸装置12Rの主軸は、Z方向と平行であり、左側加工装置11Lの左側主軸装置12Lの主軸と左右方向で対向している(向き合っている)。従って、左側及び右側加工装置11L,11Rは、左右対称に配置された所謂、対向2軸型の旋盤である。右側加工装置11Rは、右側主軸装置12Rで把持したワークに対する加工を右側タレット13Rの工具で実行する。尚、右側加工装置11Rは、左側加工装置11Lと同一構成でなくとも良い。例えば、左側加工装置11L及び右側加工装置11Rの少なくとも一方が、マシニングセンタなどの他の種類の加工装置でも良い。
【0014】
また、工作機械1は、NC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を備えている。図4は、図3の状態における工作機械1の右側面図である。図2図4に示すように、工作機械1の機体中央には、旋盤である左側及び右側加工装置11L,11Rでは難しい加工を実行するための工具主軸装置21が設けられている。工作機械1は、左側及び右側加工装置11L,11R、及び工具主軸装置21を備える複合加工機27(図5参照)を一つのベッド22の上に備えている。
【0015】
左側及び右側主軸装置12L,12Rは、スラントベッド構造のベッド22の上の傾斜面23に沿って、ボールネジ機構(図示略)等によりZ方向と平行な方向にスライド移動可能となっている。左側及び右側タレット13L,13Rと工具主軸装置21は、何れも主軸(Z方向)と直交する機体前後方向と機体上下方向に移動可能となっている。特に、工具主軸装置21の移動方向が水平なY方向と鉛直なX方向であるのに対し、左側及び右側タレット13L,13Rの移動方向は、Y方向及びX方向を45度傾けたYL方向とXL方向となっている。
【0016】
また、工作機械1の前方には、自動工具交換装置25が設けられている。工具主軸装置21は、Z方向における工作機械1の中央に設けられ、自動工具交換装置25との間で工具T(主軸ヘッド工具)を取り替え可能となっている。工具Tは、本開示の工具の一例であり、例えば、ドリル、エンドミルなどである。尚、本開示の工具は、ドリル、エンドミルなどの一体的な切削工具に限らず、先行技術文献に記載の切削用の刃を取り付けた段付工具などの刃が分離可能な工具でも良い。図4に示すように、工具主軸装置21は、主軸ヘッド21A内に主軸用サーボモータや工具スピンドルが内蔵され、その下端部に設けられた工具装着部に対して、自動工具交換装置25に収められた様々な工具Tの取り替えが可能になっている。また、自動工具交換装置25は、設置面に起立した交換装置本体25Aと、交換装置本体25Aの上部に設けられたツールマガジン25Bと、工具Tを移動させるシフト装置25C(図6参照)と、工具Tを交換するツールチェンジャ25Dを備えている。ツールマガジン25Bは、工具主軸装置21の上方で、且つ工作機械1における前方側となる位置に配置されている。ツールマガジン25Bの詳細については後述する。
【0017】
工作機械1は、左側及び右側加工装置11L,11Rで同時にワークW(図4参照)を加工するほか、工具主軸装置21における工具交換も行うことが可能である。工作機械1は、例えば、Z方向における工具主軸装置21の左右両側にそれぞれ配置された分離シャッタ(図示略)を備えている。工作機械1は、駆動機構によってY方向に2枚の分離シャッタを個別に移動可能となっている。図3は、この分離シャッタを収納した状態を示している。工作機械1は、2枚の分離シャッタにより、左側加工装置11L、右側加工装置11Rの各々の加工スペースと、工具主軸装置21の工具交換スペースを分離する。また、一方の分離シャッタだけを閉じることにより、工具交換スペースを含めた空間を左側加工装置11Lの加工スペース等とすることもできる。
【0018】
ワーク搬送装置14は、例えば、ガントリ式のワーク搬送装置であり、フレーム構体31に支持された走行レール32等を有し、ヘッド33をXYZの各方向へ移動させることができる。ワーク搬送装置14は、左側及び右側加工装置11L,11R、ワークWを搬入する入口装置、ワークWを排出する出口装置等と、ヘッド33の間でワークWの受け渡しを実行する。また、左側及び右側主軸装置12R,12Lは、Z軸方向にスライド移動することでワークWの受け渡しを直接実行することもできる。また、図1及び図2に示すように、操作盤3は、装置カバー2の前面に設けられ、タッチパネル3Aや操作部3Bを備えている。装置カバー2の前面における右下には、Z方向と平行な方向に沿ったレール6が設けられている。操作盤3は、レール6に取り付けられた保持部材7に取り付けられ、保持部材7とともにレール6に沿って装置前面の中央から右端までZ方向へ移動可能となっている。また、操作盤3は、保持部材7に保持された状態でX方向と平行な回転軸を中心に左右方向へ回転可能となっている。操作部3Bは、例えば、操作スイッチ、押しボタン、ダイヤル、表示ランプ等を備えている。操作盤3は、タッチパネル3Aや操作部3Bに対する操作入力をユーザから受け付け、受け付けた操作入力に応じた信号を制御装置15に出力する。また、操作盤3は、制御装置15の制御に基づいてタッチパネル3Aの表示内容や操作部3Bの表示ランプの点灯状態を変更する。尚、装置カバー2の中央の下方には、工作機械1を操作するペンダント8が吊り下げ可能となっている。
【0019】
また、図2に示すように、工作機械1の制御装置15は、CPU15Aと、記憶装置15Bを備え、コンピュータを主体とする処理装置である。記憶装置15Bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備える。制御装置15は、各装置(左側加工装置11Lやワーク搬送装置14等)と電気的に接続され、各装置を制御可能となっている。記憶装置15Bには、制御プログラム16が記憶されている。制御プログラム16には、例えば、ワークに対する加工において左側及び右側加工装置11L,11Rの各々の動作を制御するNCプログラム、ワーク搬送装置14の動作を制御するプログラム、自動工具交換装置25の動作を制御するプログラム、各種の信号を処理するラダー回路用のプログラム等が含まれている。また、制御プログラム16には、後述する図10の工具排出処理や、図12の工具取り付け処理を実行し、ツールマガジン25Bの収容ボックス47等を制御するプログラムが含まれている。
【0020】
また、記憶装置15Bには、工具履歴データ17が記憶可能となっている。制御装置15は、ツールマガジン25B内の工具Tや、工具主軸装置21に取り付けられた工具Tなど、工作機械1が備える工具Tに係わるデータを工具履歴データ17に記憶する。工具履歴データ17には、例えば、工具Tの工具番号、その工具Tを保持する工具保持具59(図7参照)の識別情報、工具Tの使用履歴に係わるデータが関連付けて記憶されている。工具番号は、例えば、工具Tを個別に識別可能な番号である。識別情報は、ツールマガジン25B(図3図4参照)において、工具Tを取り付けた工具保持具59を識別する情報である。後述するすように、ツールマガジン25Bには、複数の工具保持具59の各々に工具Tが保持されている。例えば、複数の工具保持具59は、後述する環状のローラチェーン52に保持され、任意の工具保持具59から周方向に順番に識別番号が付与されている。識別情報は、この工具保持具59を識別する識別番号(保持具の番号)である。尚、識別情報は、工具保持具59の番号に限らず、工具保持具59の位置(後述するローラチェーン52のどの回転位置に取り付けられているかを示す情報)でも良い。また、制御装置15は、工具履歴データ17の使用履歴に係わるデータに基づいて各工具Tの寿命を判断する。寿命判断の詳細については後述する。また、工具履歴データ17のデータ構成は、上記した内容に限定されない。例えば、制御装置15は、工具Tの種類を示す情報を工具履歴データ17に記憶し、工具Tが同一種か判断しても良い。
【0021】
(自動工具交換装置25について)
次に、自動工具交換装置25について説明する。ここで、図4図6に示すように、本実施例の複合加工機27は、左側及び右側主軸装置12R,12L、左側及び右側タレット13L,13R、工具主軸装置21が、スラントベッドタイプのベッド22上にコンパクトに構成され、省スペース化を可能にしている。特に複合加工機27は、機体前後方向の寸法が抑えられているほか、各装置の移動範囲が狭くなるように設計されている。即ち、複合加工機27の機体前側の中央部分が加工室となり、狭い空間において各装置が退避位置と加工位置との間を移動するよう構成されている。
【0022】
しかしながら、従来のようにベッド22上の離れた位置に自動工具交換装置を配置し、そこへ工具主軸装置21の主軸ヘッド21Aを移動させ工具Tの交換を実施しようとすると、加工スペースの大型化や複合加工機27全体の大型化を招く虞がある。そこで、本実施例の工作機械1において、主軸ヘッド21Aの可動範囲は、機体の前後及び上下方向の僅かな距離となっている。そして、左側及び右側主軸装置12R,12Lなどをコンパクトに配置した複合加工機27の効果を損なわないように、自動工具交換装置25は、可動範囲の狭い工具主軸装置21に対して工具Tを交換しに行く構造となっている。
【0023】
詳述すると、図4図6に示すように、自動工具交換装置25は、工作機械1の機体前部中央に配置され、複数の工具Tを割出し可能に収納したツールマガジン25Bが機体上部に設けられている。自動工具交換装置25のシフト装置25C(図6参照)は、機体上部に位置するツールマガジン25Bと、それより低い位置にある主軸ヘッド21Aとの間で工具Tを移動させる。また、ツールマガジン25Bは、機体前面の左側及び右側正面扉5L,5Rよりも前方に突き出すようにして配置され、マガジンカバー2Aによって覆われている(図1参照)。
【0024】
ツールマガジン25Bは、工具入替装置41(図6参照)と、マガジン操作部43(図1参照)と、取り外し装置45と、収容ボックス47(図1参照)を備えている。工具入替装置41は、天板51と、ローラチェーン52と、サーボモータ53を備えている。天板51は、例えば、X方向から見た場合に、左右方向に長い板状をなしている。ツールマガジン25Bは、天板51に吊り下げられるようにして複数(例えば、40個)の工具Tを取り付けられ、左右方向の中央後部に設けられた割出し位置P11に、任意の工具Tを移動させるよう構成されている。割り出し位置P11に位置決めされ工具Tは、シフト装置25Cによって工具主軸装置21における工具交換位置まで搬送され交換が行われる。左右方向における天板51の両端部の下側には、スプロケット57(図4参照)がそれぞれ設けられている。ローラチェーン52は、無端の環状をなし、一対のスプロケット57に掛け渡されている。また、天板51の右側端部には、サーボモータ53が設けられている。サーボモータ53の出力軸は、一対のスプロケット57のうち、右側のスプロケット57に連結されている。例えば、サーボモータ53の出力軸は、減速機構(図示略)を介してスプロケット57に回転駆動力を伝達可能となっている。サーボモータ53は、制御装置15の制御に基づいて回転動作を制御され、ローラチェーン52を回転させる。
【0025】
図5図7に示すように、ローラチェーン52には、一定の間隔でポットホルダ58が設けられている。複数のポットホルダ58の各々には、工具Tを保持する工具保持具59を取り付け可能となっている。ポットホルダ58は、例えば、工具保持具59の側部を両側から上下2箇所で挟み込む爪部材であり、ローラチェーン52から外側へ水平に突き出している。工具Tは、工具保持具59に対して着脱可能に取り付けられている。工具保持具59には、爪形状のポットホルダ58を挿入可能な溝形状の把持部59Aが側面に形成されている。工具保持具59は、把持部59Aにポットホルダ58を挿入され、ローラチェーン52に対して引掛けられるようにして保持される。ツールマガジン25Bに収納された複数の工具Tは、環状のローラチェーン52に取り付けられて長円形の移動ライン(周方向)に沿って等間隔で並べられ、円周の外側に向けて取り外しが可能となっている。工具Tは、工具保持具59、ポットホルダ58を介してローラチェーン52に保持された状態で、ローラチェーン52の回転に合わせて、ローラチェーン52の移動ライン(周方向)に移動する。
【0026】
工具保持具59は、工具Tのヘッド部分(図8の基端部85など)に嵌め合わせるキャップ状の部材であり、ローラチェーン52やシフト装置25Cにおいて工具Tの取り扱いを可能にするための形状が施されている。尚、各図面で示した工具Tは全て円柱形状であるが、これは様々な工具Tを具体的に示すことなく省略して表現したに過ぎない。工具保持具59に嵌められた工具Tは、刃先などの加工部を下にした吊下げ姿勢でローラチェーン52に保持されている。自動工具交換装置25のシフト装置25Cは、工具Tを吊下げ姿勢のまま、工具主軸装置21の工具交換位置まで搬送する。シフト装置25Cは、ローラチェーン52に対する工具Tの着脱を行う前後シフタ61と、工具Tを工具交換位置へと移動する上下シフタ62を備えている。そして、自動工具交換装置25は、主軸ヘッド21Aと上下シフタ62との間で工具Tを取り替えるため、工具交換位置にツールチェンジャ25Dを備えている。
【0027】
図7は、前後シフタ61を側方から見た状態を示しており、前後シフタ61によって工具Tを移動させる状態を示す側面図である。前後シフタ61は、ツールマガジン25Bの上部中央に組付けられている。前後シフタ61は、エアシリンダ63のピストンロッド65を機体後方(図7の右側)に突き出した状態で天板51に固定されている。ピストンロッド65の先端には、ポットクランパヘッド67が固定されている。また、ポットクランパヘッド67は、エアシリンダ63と平行に設けられた2本のガイドロッド68によっても保持されている。ポットクランパヘッド67は、エアシリンダ63の伸縮によって前後方向に移動し、ガイドロッド68によって移動時の姿勢が維持される。
【0028】
前後シフタ61は、ポットクランパヘッド67に対して着脱可能なポットクランパ69を備えている。工具Tは、工具保持具59に対して着脱可能に構成され、工具保持具59は、ポットクランパ69に対して着脱可能に構成され、ポットクランパ69は、ポットクランパヘッド67に対して着脱可能に構成されている。このように各部材を着脱可能に構成することで、ツールマガジン25Bと工具主軸装置21との間で工具Tについて行われる複数回の受渡しが可能になっている。
【0029】
具体的には、ポットクランパヘッド67は、ポットクランパヘッド67の上面に設けられたプルボルト67Aを着脱可能に把持するプルクランプを備えている。前後シフタ61は、図7に示す前後変換位置P1と上下変換位置P2との間で工具Tを移動させる。前後変換位置P1は、図6に示す割出し位置P11であり、工具Tについてローラチェーン52による周方向の移動と、前後シフタ61による機体前後方向の移動とが切り換えられる位置である。ポットクランパ69は、前後変換位置P1に配置されると、割り出し位置P11に割出しされた工具Tの工具保持具59をクランプ可能となる。
【0030】
また、ポットクランパ69は、L字形の固定ブロック69Aに対して板状の可動ブロック69Bが支持ピン69Cによって前後方向に変位可能な状態で組付けられている。ポットクランパ69は、固定ブロック69Aの内部にクランプバネを設けられ、可動ブロック69Bを固定ブロック69A側に常に引き寄せている。固定ブロック69Aと可動ブロック69Bとは、対向する内側面にクランプ突起69Dが形成されている。また、工具保持具59の前後両側には、クランプ突起69Dが嵌るクランプ溝59Bが形成されている。図7の右側に示した上下変換位置P2において、ポットクランパ69は、クランプバネの付勢力により、工具保持具59を挟む様に保持する。
【0031】
また、可動ブロック69Bは、移動方向と直交する横方向両側に支持ピン69Cが突き出しており、前後変換位置P1において天板51から下方に突き出した止めピン71に支持ピン69Cを当てる。その結果、図7に示す上下変換位置P2から前後変換位置P1へ移動した場合、支持ピン69Cが止めピン71に当たり、可動ブロック69Bは固定ブロック69A側への移動を規制される。前後変換位置P1において、ポットクランパ69は、開いた状態となる。前後変換位置P1において、割り出し位置P11に割り出された工具保持具59の把持部59Aにポットホルダ58が嵌り込んだ状態となっており、割り出された工具Tは、工具保持具59を介してローラチェーン52に保持された状態となる。制御装置15は、工具Tをツールマガジン25Bから取り出す場合、エアシリンダ63を駆動してポットクランパヘッド67を前後変換位置P1から上下変換位置P2へ移動させ、ポットクランパ69によって工具保持具59(工具T)をポットホルダ58から取り外す。また、前後シフタ61は、上下シフタ62から上下変換位置P2において工具保持具59(工具T)を受け取る(返却される)。制御装置15は、上下変換位置P2から前後変換位置P1へポットクランパ69を移動させることで、工具保持具59の把持部59Aにポットホルダ58を嵌め込み、ポットクランパ69による挟持を解除し、工具Tをローラチェーン52に取り付ける。
【0032】
上下変換位置P2では、工具Tの搬送方向を、前後シフタ61による機体前後方向の移動と、上下シフタ62による機体上下方向の移動とに切り換えられる。上下変換位置P2では前後シフタ61と上下シフタ62による工具Tの移し替えが、ポットクランパヘッド67とポットクランパ69との着脱によって行われる。上下変換位置P2に配置された工具Tは、上下シフタ62及びツールチェンジャ25Dを介して工具主軸装置21の主軸ヘッド21Aの工具Tと交換される。上下シフタ62及びツールチェンジャ25Dの詳細な説明については省略するが、ポットクランパ69は、上下シフタ62に掴み取られるように構成されている。例えば、ポットクランパ69は、支持ピン69Cと同様に横方向両側に張出した把持ブロック69Eを有し、把持ブロック69Eの張出し部分にはU字形の切欠き部(図示略)が形成されている。上下シフタ62は、この切欠き部にクランプピン(図示略)を挿入してポットクランパ69を保持するクランプ部や、工具保持具59を嵌め込む切り欠き部などを備え、ポットクランパ69を保持した状態で下方向へ移動しポットクランパヘッド67からポットクランパ69を掴み取るように取り外す。上下シフタ62は、上下方向に延びる昇降フレーム62A(図6参照)に上記したクランプ部を備え、ボールネジ機構によって昇降フレーム62Aを上下方向へ移動可能となっている。
【0033】
自動工具交換装置25は、昇降フレーム62Aを下降させた位置が工具交換位置となっており、その高さに合わせてツールチェンジャ25Dが設けられている。また、ツールチェンジャ25Dは、加工室内において工具主軸装置21の近くに配置されている(図4参照)。ツールチェンジャ25Dは、例えば、工具Tを把持する一対のチャックを有する工具交換アーム(図示略)、その工具交換アームを旋回させるカム装置などを備え、工具交換アームを旋回させることで、上下シフタ62に保持された工具Tと、工具主軸装置21の主軸ヘッド21Aの工具Tを交換する。また、主軸ヘッド21Aから取り外した使用後の工具Tについても、上記したツールマガジン25Bから主軸ヘッド21Aへの搬送とは逆方向(逆の手順)に搬送することで、工具Tの返却を実行することができる。
【0034】
また、図5に示すように、交換装置本体25Aの外側カバー73にはガラスを嵌めた覗き窓73Aが形成されている。また、図6に示すように、交換装置本体25Aの機内側カバー75には交換窓75Aが形成されている。また、交換窓75Aの加工室側には、工具交換に従って交換窓75Aを開閉させる工具交換シャッタ77が設けられている。工具交換シャッタ77は、昇降用エアシリンダ(図示略)を備え、制御装置15により昇降用エアシリンダを制御されることで、図6に実線で示す位置まで上昇して交換窓75Aを閉じる、又は二点鎖線で示す位置まで下降して交換窓75Aを開くように構成されている。また、工具交換シャッタ77には、ツールチェンジャ25Dの工具Tを交換する工具交換アームを収容するアーム収納ボックス77Aが設けられている。例えば、制御装置15は、ツールチェンジャ25Dと工具主軸装置21との間で工具Tの交換を実行する場合、工具交換シャッタ77を下降させて交換窓75Aを開くとともに、ツールチェンジャ25Dの工具交換アームをアーム収納ボックス77Aから外に出す。そして、ツールチェンジャ25Dは、工具交換アームを旋回させることにより、工具Tの交換を実行する。制御装置15は、工具の交換が終了すると、工具交換シャッタ77を上昇させて交換窓75Aを閉じ工具主軸装置21による加工等を実行する。ツールチェンジャ25Dに保持された使用後の工具Tは、工具Tの取り出しとは逆の順序で、ツールマガジン25Bに返却される。
【0035】
(工具Tの交換について)
次に、工作機械1が備える工具Tと、交換用の工具Tの交換方法について説明する。ここでいう工作機械1が備える工具Tとは、ツールマガジン25B内の工具T、工具主軸装置21に取り付けられた工具T、自動工具交換装置25で搬送中の工具Tなど、工具主軸装置21で使用する工具であって工作機械1内に存在する工具である。工具Tは、使用を重ねることで摩耗・破損等するため、新しく補充する工具T(以下、補充工具T1という場合がある)と交換する必要がある。本実施例の工作機械1は、工具Tと補充工具T1の交換方法として、マガジン操作部43を用いた方法、工具主軸装置21を用いた方法、収容ボックス47を用いた方法の3つの方法で交換することができる。
【0036】
まず、マガジン操作部43を用いた方法について説明する。図1に示すように、マガジン操作部43は、例えば、マガジンカバー2Aの右側面の下に設けられている。マガジン操作部43には、例えば、タッチパネルや押しボタンスイッチが設けられている。また、マガジンカバー2Aの右側面には、マガジン扉25Eが設けられている。マガジン扉25Eは、例えば、スライド扉であり、マガジン操作部43の上方に設けられる。ユーザは、マガジン扉25Eを開けることでツールマガジン25Bに保持された工具Tの交換を行なうことができる。また、マガジン扉25Eには、ロック機構(図示略)が設けられており、ロック機構の設定・解除を制御装置15によって制御可能となっている。制御装置15は、工具Tの排出や取り出しを実施しない状態では、ロック機構を設定しマガジン扉25Eが開かないように制御する。
【0037】
例えば、ユーザは、所定の交換対象の工具Tを補充工具T1と交換したい場合、マガジン操作部43を操作して交換対象の工具Tの割り出しを実行する。上記したように、例えば、ツールマガジン25Bに収納された工具Tには、その工具Tを保持する工具保持具59を示す識別情報が設定されている。ユーザは、交換対象の工具Tを保持する工具保持具59の識別情報をマガジン操作部43に入力し割り出しを制御装置15に指示する。制御装置15は、サーボモータ53を制御してローラチェーン52を回転させ、マガジン操作部43で受け付けた識別情報が示す工具保持具59、即ち、交換対象の工具Tを保持する工具保持具59をマガジン扉25Eの位置に配置する。制御装置15は、工具保持具59の配置が完了すると、マガジン扉25Eのロックを解除し、工具Tの配置が完了したことをマガジン操作部43等で報知する。ユーザは、マガジン扉25Eを開けて工具Tの交換を行うことができる。尚、後述するように、工具保持具59は、工具Tを保持するロック機構83(図8参照)を備えており、手作業で工具保持具59から工具Tを取り外す作業、及び、工具保持具59に補充工具T1を取り付ける作業を行うことができる。
【0038】
次に、工具主軸装置21を用いた方法について説明する。例えば、ユーザは、工具主軸装置21の主軸ヘッド21Aに取り付けられた工具Tを補充工具T1と交換する場合、タッチパネル3Aを操作して制御装置15に対し加工動作の停止を指示する。ユーザは、タッチパネル3Aを操作して主軸ヘッド21Aの姿勢や向きを変更し、工具Tの交換がし易い姿勢・向きとする。ユーザは、例えば、左側正面扉5Lを開けて主軸ヘッド21Aから工具Tを取り外し、補充工具T1を主軸ヘッド21Aに取り付ける。このようにして工具主軸装置21を用いて工具Tの交換を行うことができる。尚、工作機械1は、上記したマガジン操作部43を用いた方法や、工具主軸装置21を用いた方法が実施できない構成でも良い。例えば、工作機械1は、マガジン操作部43やマガジン扉25Eを備えなくとも良い。
【0039】
次に、収容ボックス47を用いて工具Tを交換する方法について説明する。上記した2種類の交換方法では、ツールマガジン25Bの交換動作や、工具主軸装置21の加工動作を停止する必要がある。これに対し、収容ボックス47を用いた交換では、交換や加工動作の停止時間を少なくする、あるいはなくすことができる。詳述すると、図3図5に示すように、取り外し装置45は、例えば、ツールマガジン25Bの天板51における右側端部の前端に設けられている。取り外し装置45は、サーボモータ53の前方となる位置に取り付けられている。
【0040】
図8は、取り外し装置45の構成を模式的に示している。また、図8は、取り外し装置45によって工具Tを取り外す取り外し位置P3に工具T及びその工具Tを保持する工具保持具59を配置した状態を示している。図8に示すように、取り外し装置45には、エアシリンダ81が設けられている。エアシリンダ81は、出力ロッド81Aを下方に向けた状態で天板51(図5参照)に固定されている。また、エアシリンダ81のピストン81Bは、バネ81Cによって上方へ付勢されている。取り外し装置45は、シリンダにエアを供給されていない状態では、バネ81Cの付勢力によって出力ロッド81Aを上げた状態となる。また、制御装置15は、取り外し位置P3の工具保持具59から工具Tを取り外す場合、エアシリンダ81のシリンダにエアを供給して出力ロッド81Aを下方へ押し出す。
【0041】
工具保持具59には、工具Tを保持するロック機構83が設けられている。ロック機構83は、ロック部83Aと、ボタン部83Bとを有している。ロック部83Aは、例えば、工具Tの基端部85を下方から挿入してチャックするチャック爪を有し、図示しないバネによってチャック爪を閉じる方向に付勢されている。ロック機構83は、ロック部83Aのチャック爪に基端部85を挿入された状態でチャック爪を閉じることで基端部85を保持し、工具Tを保持する。また、ロック機構83は、工具保持具59に工具Tを保持していない状態で、基端部85を下方から押し込まれるとロック部83Aのチャック爪が押し開かれ基端部85を保持することができる。また、ボタン部83Bは、工具保持具59の上面に設けられている。ボタン部83Bは、ロック部83Aのバネによって上方へ付勢さされ突出した状態となっている。ロック機構83は、ボタン部83Bを下方へ押し込まれることでロック部83Aのチャック爪を開き基端部85の保持を解除する。取り外し装置45は、取り外し位置P3に配置された工具保持具59のボタン部83Bを、出力ロッド81Aにより下方へ押し込むことで工具保持具59から工具Tを取り外すことができる。尚、ロック部83Aは、チャック爪を用いた構成に限らない。例えば、ロック部83Aは、基端部85に形成された凹部に、突起を係合させる係合機構でも良い。
【0042】
次に、収容ボックス47について説明する。図1に示すように、収容ボックス47は、例えば、ツールマガジン25Bのマガジンカバー2Aの前面の右端部に取り付けられている。収容ボックス47は、例えば、有底の四角い箱形形状をなし、使用済みの工具Tや補充工具T1(以下、工具T等という場合がある)を収容可能となっている。図9は、ツールマガジン25B及び収容ボックス47を模式的に示している。収容ボックス47は、上部に開口が形成され、開口から工具T等の出し入れが可能となっている。尚、収容ボックス47の上部に開閉可能な蓋を取り付けても良い。
【0043】
また、収容ボックス47は、置台91、治具92、工具センサ93、移動装置95を備えている。置台91は、工具T等を載置可能な台である。治具92は、例えば、収容ボックス47の側壁に固定され、置台91の上に載置された工具T等を保持する。治具92は、例えば、金属製の部材であり、工具T等の外径形状に合わせて形成され、工具T等を嵌め込み可能な切り欠き部が形成されている。工具T等は、治具92に保持されることで、例えば、基端部85を上方にし、上下方向に沿った状態で保持される。
【0044】
工具センサ93は、置台91に載置された工具T等を検出するセンサである。工具センサ93は、例えば、赤外線センサであり、置台91に工具T等が載置された状態では、ハイレベルの検出信号を制御装置15に出力し、置台91に工具T等が載置されていない状態では、ローレベルの検出信号を制御装置15へ出力する。尚、工具センサ93は、赤外線センサに限らず、例えば、磁界を用いた近接センサでも良い。また、工具センサ93は、非接触式のセンサに限らず、接点を用いた接触式のスイッチでも良い。
【0045】
移動装置95は、例えば、エアシリンダであり、置台91を上下方向に昇降させる。移動装置95は、制御装置15の制御に基づいて、置台91に載置された工具T等を工具保持具59に取り付け可能な上方の位置と、工具保持具59から工具Tを離間させる下方の位置とに置台91を移動可能となっている。尚、工具T等を移動させる移動装置95は、エアシリンダに限らない。例えば、移動装置95は、油圧シリンダでも良い。また、移動装置95は、流体圧シリンダに限らず、モータの駆動に基づいて置台91を昇降させるアクチュエータ、偏心カム、ラック機構等でも良い。
【0046】
また、本実施例では、工具Tは、工具保持具59によって吊り下げられる構成であるため、移動装置95によって工具T等を昇降させているが、工具Tの保持態様に応じて収容ボックス47の構成は適宜変更できる。例えば、工具Tを工具保持具59によって水平に保持する場合、移動装置95は、工具Tを前後方向や左右方向に移動させる装置でも良い。即ち、工具Tの取り付け方向や取り外し方向は、上下方向に限らない。
【0047】
また、ツールマガジン25Bは、収容ボックス47を移動させる装置として、スライド部材97と、スライド駆動源98を備えている。スライド部材97は、例えば、マガジンカバー2Aの下面に配設された一対のレールであり、Y方向と平行な方向に沿って設けられている。スライド部材97は、収容ボックス47をY方向と平行な方向にスライド可能に保持する。スライド部材97は、例えば、収容ボックス47のスライド位置に合わせて伸縮可能(折りたたみ可能)に構成されている。スライド駆動源98は、例えば、サーボモータやボールネジ機構等を備え、スライド部材97に対して収容ボックス47をY方向と平行な方向にスライド移動させる。尚、スライド駆動源98は、サーボモータやボールネジ機構に限らず、ギアを用いたスライド機構や、リニアモータのような電磁力を用いたスライド機構でも良い。また、サーボモータ等のスライド駆動源98を収容ボックス47に設けても良い。
【0048】
収容ボックス47は、例えば、Y方向及びZ方向の両方を側壁で囲まれている。マガジンカバー2Aには、収容ボックス47の位置に合わせて開口87が形成されている。開口87は、収容ボックス47の外径形状に合わせた形状をなしている。収容ボックス47は、開口87を通じてマガジンカバー2Aの中と外に移動可能となっている。収容ボックス47は、スライド部材97に保持されることで、開口87を通じて第1スライド位置と、第2スライド位置にスライド移動可能となっている。第1スライド位置は、例えば、図9に示すマガジンカバー2A(本開示のマガジンの一例)の外に収容ボックス47を排出した排出位置P4である。収容ボックス47を排出位置P4に配置した場合、開口87は、収容ボックス47の開口87側の側壁47Aによって閉塞される。これにより、ユーザが、開口87を通じてマガジンカバー2A内に手を入れることを抑制できる。
【0049】
また、第2スライド位置は、例えば、マガジンカバー2Aの中であって取り外し装置45によって排出される工具Tを受け取り可能な位置、即ち、取り外し位置P3である。収容ボックス47は、取り外し位置P3に配置された状態において、移動装置95を駆動されると、置台91に載置した補充工具T1を工具保持具59に取り付けることができる。また、収容ボックス47は、取り外し位置P3において置台91を上昇させた状態で、工具保持具59から取り外された工具Tを置台91の上に受け取り治具92で保持することができる。スライド駆動源98は、制御装置15の制御に基づいて、収容ボックス47を取り外し位置P3や排出位置P4に移動させる。
【0050】
(工具排出処理)
次に、寿命工具を排出する工具排出処理について説明する。図10は、工具排出処理のフローチャートを示している。制御装置15は、工具排出処理を実行することで、寿命工具の判断と、寿命工具の排出を実行する。制御装置15は、例えば、ユーザからワークWの加工の開始指示を付け付けると図10に示す処理を開始する。尚、図10に示す処理を開始する条件は、加工を開始する条件に限らない。例えば、制御装置15は、工作機械1の電源を投入され、システムを起動した後、図10に示す処理を開始しても良い。
【0051】
制御装置15は、図10に示す処理を開始すると、ステップ(以下、単にSと記載する)11において、寿命工具が存在するか否かを判断する。寿命工具とは、工作機械1が備える工具Tのうち、交換が必要な工具である。制御装置15は、例えば、工作機械1が備える工具Tの各々の使用回数を、工具履歴データ17の使用履歴に係わるデータとして記憶する。制御装置15は、例えば、工具主軸装置21に工具Tを最初に取り付けるタイミングや、工具主軸装置21の工具Tを交換するタイミングで、取り付ける工具Tの使用回数を工具履歴データ17から読み出す。制御装置15は、工具主軸装置21の加工動作中に、工具主軸装置21に取り付けた工具Tの使用回数を更新する。制御装置15は、更新後の使用回数が所定の閾値回数以上になるまでS11で否定判断し(S11:NO)、使用回数のカウントを継続する。また、制御装置15は、使用回数が閾値回数以上にならないまま工具Tの交換が実施された場合、それまでカウントした使用回数で工具履歴データ17の使用回数を更新する。制御装置15は、交換後の工具Tの使用回数を工具履歴データ17から読み出し、交換後の工具TについてS11の判断を実行する。一方、制御装置15は、加工動作に応じて更新した後の使用回数が所定の閾値回数以上になると、工具主軸装置21に取り付けられている工具Tを寿命工具と判断し、S11で肯定判断する(S11:YES)。
【0052】
尚、制御装置15は、S11で使用回数が閾値回数以上となった工具Tについて同一種の工具T、即ち、代替えの工具Tがツールマガジン25Bに収納されている場合、同一種の工具Tが寿命工具となるまで寿命工具が存在しないと判断しても良い。そして、制御装置15は、同一種の全ての工具Tの使用回数が閾値回数以上となった場合、寿命工具が存在すると判断しても良い。また、上記した寿命工具の判断タイミングは、一例である。例えば、制御装置15は、使用後の工具Tがツールマガジン25Bに返却されたタイミングで、その返却された工具Tの使用回数を判断しても良い。従って、制御装置15は、工具主軸装置21に取り付けられた工具Tについてのみ寿命工具の判断を実行しても良く、ツールマガジン25Bに収容された工具Tについてのみ寿命工具の判断を実行しても良く、その両方を判断しても良い。また、寿命工具の判断条件は、使用回数に限らない。例えば、制御装置15は、工具Tの累計の使用時間が所定の基準時間以上となった場合、その工具Tを寿命工具と判断しても良い。あるいは、制御装置15は、使用回数と使用時間の両方で寿命工具を判断しても良い。また、制御装置15は、その工具Tを用いて加工したワークWの個数が所定の個数以上となった場合、その工具Tを寿命工具として判断しても良い。
【0053】
また、制御装置15は、寿命工具が存在すると判断すると(S11:YES)、S13を実行する。S13において、制御装置15は、寿命工具の交換を開始できるか否かを判断する。制御装置15は、例えば、加工対象のワークWの種類を変更する段取り替えが発生するまでS13で否定判断し(S13:NO)、段取り替えが発生すると肯定判断して(S13:YES)、S15を実行しても良い。この場合、制御装置15は、寿命工具が発生すると、段取り替えごとに後述する寿命工具の排出を実行する。尚、段取り替えの発生を検出する方法は、特に限定されない。例えば、制御装置15は、1つの種類のワークWについて加工が終了する条件、1つのジョブの実行を完了する条件、指定された数のワークWの加工が完了する条件、あるいは、ユーザから加工の終了を指示される条件などに基づいて段取り替えの発生を検出しても良い。
【0054】
また、S13の判断条件は、段取り替えが発生する条件に限らない。例えば、制御装置15は、自動工具交換装置25を制御してツールマガジン25Bと工具主軸装置21との間で工具Tを交換しない時間(空き時間)が所定の基準時間以上となるか否かを判断しても良い(本開示の空き時間判断処理の一例)。そして、制御装置15は、交換しない時間が所定の基準時間以上であると判断した場合(S13:YES)、後述する寿命工具の排出を実行しても良い。この基準時間としては、例えば、寿命工具の排出作業を開始してから、寿命工具を収容ボックス47に排出し収容ボックス47をマガジンカバー2Aの外(排出位置P4)に排出するのに必要な時間である。即ち、基準時間は、次の工具Tの交換が発生するまでに寿命工具を機外に排出できる時間である。これにより、工具Tの交換が発生しない空き時間の間に寿命工具を排出でき、寿命工具を効率良く排出できる。また、制御装置15は、上記した段取り替えのタイミングと、工具Tを交換しないタイミングの両方で寿命工具の排出を実行しても良い。また、制御装置15は、基準時間として、寿命工具の排出に必要な時間よりも短い時間を設定しても良い。この場合、制御装置15は、寿命工具の排出位置P4への排出が完了するまでの間、自動工具交換装置25による工具Tの交換を一時的に停止しても良い。
【0055】
S15において、制御装置15は、寿命工具を取り出し位置P3に配置する。制御装置15は、ツールチェンジャ25Dやシフト装置25Cを制御して寿命工具をツールマガジン25Bに返却する。制御装置15は、サーボモータ53を制御してローラチェーン52を回転させ、寿命工具を保持した工具保持具59を取り出し位置P3に配置する。制御装置15は、工具履歴データ17に基づいて寿命工具の工具保持具59を判断できる。図11のS15に示すように、制御装置15は、寿命工具T2を取り出し位置P3に配置するまでの間、収容ボックス47を排出位置P4に配置する。開口87は、側壁47Aによって閉じられた状態となる。また、収容ボックス47は、工具Tが入っていない状態となっている。尚、制御装置15は、S15の実行時に、工具センサ93に基づいて収容ボックス47に工具Tが存在することを検出した場合、エラーを報知しても良い。これにより、収容ボックス47に取り忘れの工具Tが存在した場合に、工具Tの取り出しをユーザに促すことができる。
【0056】
制御装置15は、S15を実行すると、寿命工具T2の配置が完了したか否かを判断する(S17)。制御装置15は、配置が完了するまでの間(S17:NO)、S17を繰り返し実行し、配置が完了すると(S17:YES)、S19を実行する。S19において、制御装置15は、スライド駆動源98を制御して収容ボックス47を排出位置P4から取り出し位置P3まで移動させる(図11のS19参照)。
【0057】
次に、制御装置15は、移動装置95を駆動して置台91を上昇させる(S21)。図11のS21に示すように、置台91は、寿命工具T2の下端に接触又は近接する位置に配置される。制御装置15は、取り外し装置45のエアシリンダ81を制御して、出力ロッド81Aを下降させ、出力ロッド81Aによってボタン部83Bを下方へ押し込み、ロック機構83のロックを解除する(S23)。寿命工具T2は、工具保持具59から取り外され、置台91に下方から支持され、側面を治具92に保持された状態となる。制御装置15は、例えば、エアシリンダ81へのエアの供給を一定時間だけ継続して停止する。出力ロッド81Aは、エアの供給を停止されることで上昇する。
【0058】
従って、本実施例の取り外し装置45は、制御装置15の制御に基づいて寿命工具T2を保持する工具保持具59のロック機構83のボタン部83Bを押し込んで、工具保持具59の保持を解除し寿命工具T2を排出する。これにより、取り外し装置45を制御することで、所望のタイミングで寿命工具T2の排出を実行できる。寿命工具T2を排出するタイミングを、ツールマガジン25Bを使用しない時間などに調整することで、寿命工具T2の排出によるツールマガジン25Bの停止時間をできるだけ短くすることができる。
【0059】
次に、制御装置15は、移動装置95を制御して、置台91を下降させる(S25)。制御装置15は、置台91を下降させた後、工具センサ93によって置台91の上に寿命工具T2が存在するか否かを判断する(S27)。制御装置15は、工具センサ93の検出信号に基づいて置台91に寿命工具T2が存在しないと判断した場合(S27:NO)、エラーを報知する(S29)。制御装置15は、例えば、「寿命工具の排出に失敗しました、収容ボックスを確認ください」などのメッセージをタッチパネル3Aに表示し、エラーランプの点灯等を実行する。制御装置15は、図10に示す処理を終了する。これにより、寿命工具T2が置台91から落下した場合など、何らかの不具合が発生した場合に、排出動作を停止してユーザに対応を促すことができる。
【0060】
一方、制御装置15は、工具センサ93によって寿命工具T2を検出した場合(S27:YES)、スライド駆動源98を制御して収容ボックス47を取り出し位置P3から排出位置P4に移動させる(S31)。図11のS31に示すように、寿命工具T2をツールマガジン25Bの外に排出できる。制御装置15は、寿命工具T2を排出したことを報知する(S33)。制御装置15は、例えば、タッチパネル3Aによる表示、ランプの点灯、音声等により、排出の完了を報知する。制御装置15は、S33を実行すると、S11からの処理を再度開始する。このようにして制御装置15は、寿命工具T2の排出を実行することができる。
【0061】
尚、図10に示すフローチャートの処理の内容、順番は、一例である。例えば、制御装置15は、S31で収容ボックス47を排出した後に、S27を実行しても良い。また、制御装置15は、S33の排出の報知を実行しなくとも良い。また、制御装置15は、ユーザから寿命工具T2の排出指示を受け付けた場合に、図10の各ステップを適宜実行しても良い。例えば、ユーザは、段取り替えを実施する場合に、排出を指示する。制御装置15は、ユーザから排出指示を受け付けた場合に、ツールマガジン25Bの全ての工具Tについて寿命工具T2を判断し、S15以降の処理を検出した寿命工具T2の各々について実行しても良い。あるいは、制御装置15は、例えば、ユーザから排出指示を受け付けるまでS11を実行する。そして、制御装置15は、排出指示を受け付けた場合に、排出指示を受け付けるまでの間にS11の実行で検出した寿命工具T2の各々について、S15以降の処理を実行し排出しても良い。
【0062】
上記したように、本実施例の収容ボックス47は、マガジンカバー2A(ツールマガジン25B)の外となると排出位置P4(本開示の第1スライド位置の一例)と、マガジンカバー2Aの中であって取り外し装置45によって排出された寿命工具T2を受け取り可能な取り出し位置P3(本開示の第2スライド位置の一例)とに、スライド部材97によりスライド可能に設けられている。これにより、取り外し装置45によって取り外した寿命工具T2を取り出し位置P3で収容ボックス47に受け取り、寿命工具T2を収容したまま収容ボックス47をスライド移動させ、マガジンカバー2Aの外の排出位置P4まで排出できる。収容ボックス47のスライド動作により、寿命工具T2をツールマガジン25Bの動作等に影響がない位置まで迅速に排出できる。
【0063】
また、制御装置15は、S11で寿命工具T2が存在すると判断した場合(S11:YES)、スライド駆動源98を制御して収容ボックス47を排出位置P4から取り出し位置P3へ移動させ、寿命工具T2の取り外しを実行する(S15)。これにより、排出が不要な間(寿命工具T2が発生しない間)は、ツールマガジン25Bの動作に影響がないマガジンカバー2Aの外に収容ボックス47を出して置くことができる。また、排出を実施する時には、収容ボックス47をマガジンカバー2Aの中に入れ、寿命工具T2の収容ボックス47への排出を制御装置15の制御により自動で実行できる。制御装置15は、ツールマガジン25Bが工具主軸装置21と交換作業を実行していない時間など、所望のタイミングで寿命工具T2の排出を実行できる。
【0064】
また、制御装置15は、工具センサ93の検出信号に基づいて寿命工具T2が収容ボックス47に排出されたことを検出した後(S27:YES)、スライド駆動源98を制御して収容ボックス47を取り出し位置P3から排出位置P4へ移動させ(S31)、排出を報知する(S33)。これにより、制御装置15が任意のタイミングで寿命工具T2の排出を実行しても、排出したことをユーザに知らせることができる。ユーザは、報知を認識することで、収容ボックス47から寿命工具T2を取り出して、補充工具T1の補充などを迅速に実施できる。
【0065】
また、本実施例の工作機械1は、所謂、同一構造の対向2軸型の旋盤である。工具主軸装置21は、対向2軸旋盤の主軸と平行な方向において、対向2軸旋盤の間に配置されている。ツールマガジン25Bは、工具主軸装置21の上方で、且つ工作機械1における前方側となる位置に配置されている。このような構成の工作機械1では、ツールマガジン25Bを上方に配置し、その下方にシフト装置25Cやツールチェンジャ25Dを配置することで工具主軸装置21の動作範囲を狭くし加工室の小型化や複合加工機27の小型化を図れる。さらに、収容ボックス47を用いることで、制御装置15が寿命工具T2の排出を自動で実施できる。このため、例えば、ユーザが、マガジン操作部43を操作して寿命工具T2を排出させるために、ツールマガジン25Bの動作状況を確認しながら装置の上方に配置されたマガジン操作部43を操作する必要がなくなる。寿命工具T2の取り出し作業における作業負荷を軽減できる。
【0066】
(工具取り付け処理)
次に、補充工具T1を取り付ける工具取り付け処理について説明する。図12は、工具取り付け処理のフローチャートを示している。制御装置15は、工具取り付け処理を実行することで、収容ボックス47内の補充工具T1を、指定された工具保持具59に取り付ける。制御装置15は、例えば、工作機械1の電源を投入され、システムを起動した後、図12に示す処理を開始する。尚、以下の工具取り付け処理の説明では、上記した工具排出処理と同様の制御内容については、その説明を適宜省略する。
【0067】
制御装置15は、図12に示す処理を開始すると、S41において、補充工具T1の交換指示を受け付けたか否かを判断する。ユーザは、例えば、所望の補充工具T1を収容ボックス47にセットした後、タッチパネル3Aを操作してセットした補充工具T1を取り付ける工具保持具59の識別情報を入力・選択等し、交換の開始を指示する。制御装置15は、交換指示を受け付けるまでの間、S41で否定判断し(S41:NO)、交換指示を受け付けると(S41:YES)、S42を実行する。
【0068】
制御装置15は、S42において、図10のS13と同様に、交換作業を開始できるか否かを判断する。制御装置15は、段取り替えが発生していない場合や、ツールマガジン25Bの空き時間が短い場合など(S42:NO)、S42の判断処理を繰り返し実行する。尚、制御装置15は、S42に否定判断した場合にも、補充工具T1の補充を実行するかユーザに確認しても良い。例えば、制御装置15は、加工動作中やツールマガジン25Bを使用中である場合に、「加工動作を停止して補充工具を補充しますか?」などのメッセージをタッチパネル3Aに表示し、ユーザから実行の指示を受け付けた場合に、後述するS43以降を実行し交換を開始しても良い。
【0069】
制御装置15は、S42において、交換作業を開始できると判断すると(S42:YES)、S43を実行する。S43において、制御装置15は、サーボモータ53を制御して、S41で受け付けた識別情報が示す工具保持具59を、取り外し位置P3に配置する(図13のS43参照)。尚、制御装置15は、工具履歴データ17を用いてツールマガジン25B内の工具保持具59に工具Tが取り付けられているか否か管理し、S41で受け付けた工具保持具59に工具Tが取り付けられている場合、エラーを報知しても良い。
【0070】
制御装置15は、工具保持具59の配置が完了したか否かを判断し(S45)、配置が完了すると(S45:YES)、スライド駆動源98を制御して収容ボックス47を排出位置P4から取り外し位置P3に移動させる(S47、図13参照)。制御装置15は、移動装置95を制御して置台91を上昇させる(S49)。補充工具T1は、置台91によって上方へ押し上げられ、取り出し位置P3に配置された工具保持具59に嵌め込まれる。制御装置15は、移動装置95を制御して置台91を下降させ(S51)、工具Tが存在するか否かを工具センサ93によって判断する(S53)。尚、制御装置15は、S49において、補充工具T1の上昇に合わせて取り外し装置45を駆動し、出力ロッド81Aを下げてロック機構83を一時的に解除しても良い。
【0071】
制御装置15は、工具センサ93の検出信号に基づいて置台91に補充工具T1が存在すると判断した場合(S53:NO)、図10のS29と同様に、エラーを報知する(S55)。これにより、補充工具T1の取り付けミスが発生した場合など、何らかの不具合が発生した場合に、取り付け動作を停止してユーザに対応を促すことができる。
【0072】
一方、制御装置15は、工具センサ93によって補充工具T1を検出しない場合(S53:YES)、スライド駆動源98を制御して収容ボックス47を取り出し位置P3から排出位置P4に移動させ(S57、図13参照)、補充工具T1を取り付け、収容ボックス47を排出したことを報知する(S59)。制御装置15は、S59を実行すると、S41からの処理を再度開始する。このようにして制御装置15は、補充工具T1をツールマガジン25Bに補充することができる。尚、図12に示すフローチャートの処理の内容、順番は、一例である。例えば、制御装置15は、S57で収容ボックス47を排出した後に、S53を実行しても良い。また、制御装置15は、S42を実行しなくとも良い。
【0073】
上記したように、本実施例の収容ボックス47は、治具92に保持された補充工具T1を移動させる移動装置95を有する。制御装置15は、S41において補充工具T1を取り付ける工具保持具59を識別する識別情報を操作盤3のタッチパネル3Aで受け付ける(S41、本開示の受付処理の一例)。制御装置15は、サーボモータ53を制御して、S41で受け付けた識別情報が示す工具保持具59を、取り出し位置P3に配置する(S43、本開示の工具保持具配置処理の一例)。制御装置15は、取り出し位置P3に指定された工具保持具59を配置した後、移動装置95を制御して補充工具T1を取り出し位置P3に配置した工具保持具59に取り付ける(S49、本開示の取り付け処理の一例)。これによれば、ユーザから受け付けた補充工具T1の取り付けを、制御装置15の任意のタイミングで実行できる。ツールマガジン25Bが工具Tの交換を実施していない空き時間や段取り替えで加工動作を停止している時間など、適切なタイミングで補充工具T1を取り付けることができる。結果として、取り付け作業にともなって加工時間を停止する時間をできるだけ少なくできる。尚、収容ボックス47の出し入れはユーザが実施しても良い。
【0074】
また、制御装置15は、S43を実行し、スライド駆動源98を制御して収容ボックス47を排出位置P4から取り出し位置P3へ移動させた後、移動装置95による取り付けを実行する。これによれば、収容ボックス47をマガジンカバー2Aに引き込む動作も制御装置15が所定のタイミングで実施できる。ユーザは、補充工具T1を収容ボックス47に配置するだけで、補充工具T1の補充を行うことができる。
【0075】
因みに、上記実施例において、操作盤3は、ユーザインタフェースの一例である。マガジンカバー2A、ツールマガジン25Bは、マガジンの一例である。収容ボックス47は、収容部の一例である。ローラチェーン52、サーボモータ53は、搬送装置の一例である。取り出し位置P3は、第2スライド位置の一例である。排出位置P4は、第1スライド位置の一例である。
【0076】
以上、上記した本実施例によれば以下の効果を奏する。
本実施例の一態様の制御装置15は、工具主軸装置21の工具Tについて寿命工具T2であるか判断し(S11、本開示の寿命工具判断処理の一例)、寿命工具T2であると判断した場合(S11:YES)、工具入替装置41のサーボモータ53を制御して収容ボックス47に対応する取り出し位置P3に寿命工具T2を配置する(S15)。制御装置15は、取り外し装置45を制御して寿命工具T2を収容ボックス47に排出する(S23、本開示の排出処理との一例)。
【0077】
ここで、工作機械1は、工具Tの交換方法として、マガジン操作部43による方法や、工具主軸装置21から取り外す方法が実施できる。しかしながら、このような方法では、工作機械1の加工動作や、ツールマガジン25Bの交換動作を停止する必要があり、生産効率の低下を招く虞がある。これに対し、本実施例の工作機械1であれば、制御装置15は、任意のタイミング、例えば、工作機械1の生産効率を考慮して都合の良いタイミングに工具Tの排出を実施できる。制御装置15は、段取り替えが発生したタイミング、ツールマガジン25Bを使用しない空き時間が発生したタイミングなどに、工具Tを排出できる。これにより、工具Tの排出による工作機械1の加工動作の停止時間を短くして生産効率を向上できる。
【0078】
尚、本開示は上記の実施例に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施例の工作機械1は、収容ボックス47に移動装置95を備え、補充工具T1の補充機能を有したが、寿命工具T2の排出機能のみを備えても良い。図14は、別例の収容ボックス47を示している。例えば、収容ボックス47を、マガジンカバー2Aの下方に配置しても良い。図14の収容ボックス47は、置台91、治具92、移動装置95を備えていない。そして、制御装置15は、所望のタイミングで取り外し装置45を制御して、寿命工具T2を収容ボックス47に落下させても良い。制御装置15は、工具センサ93によって落下した寿命工具T2を検出し、寿命工具T2の排出が完了したことを報知する。これにより、ユーザは、任意のタイミングで収容ボックス47を引き出し、排出された寿命工具T2を取り出すことができる。
また、上記実施例でにおいて、ツールマガジン25Bは、スライド駆動源98を備えなくとも良い。例えば、ユーザが、制御装置15の指示に応じて収容ボックス47を出し入れし寿命工具T2の排出や補充工具T1の補充を実施しても良い。
【0079】
また、本開示の収容部は、収容ボックス47のようなボックス形状に限らず、置台91等を上に載せた板状の部材でも良い。
また、収容ボックス47は、工具センサ93を備えなくとも良い。
また、治具92を置台91に取り付けても良い。この場合、移動装置95は、治具92と、治具92に保持された工具Tの両方を昇降させる構成でも良い。
また、左側及び右側加工装置11L,11Rは、対向2軸の旋盤に限らず、平行2軸の旋盤でも良い。また、左側及び右側加工装置11L,11Rとしては、例えば、横型旋盤、正面旋盤、立型旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、ボール盤など、様々な構成を採用できる。
【0080】
尚、本開示の範囲は、特許請求の範囲に記載された従属関係に限定されない。例えば、本明細書では、請求項7において「請求項1に記載の工作機械」を「請求項1~6の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。あるいは、本明細書では、請求項9において「請求項1又は請求項2に記載の工作機械」を「請求項1~8の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0081】
1 工作機械、2A マガジンカバー(マガジン)、3 操作盤(ユーザインタフェース)、15 制御装置、21 工具主軸装置、25B ツールマガジン(マガジン)、25 自動工具交換装置、41 工具入替装置、45 取り外し装置、47 収容ボックス(収容部)、52 ローラチェーン(搬送装置)、53 サーボモータ(搬送装置)、59 工具保持具、83 ロック機構、92 治具、93 工具センサ、97 スライド部材、98 スライド駆動源、P3 取り出し位置(第2スライド位置)、P4 排出位置(第1スライド位置)、T 工具、T1 補充工具(工具)、T2 寿命工具、W ワーク。
図1
図2
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