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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174311
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】冷凍菓子用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20231130BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A23G9/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087093
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】依田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】岸 瑶介
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GB22
4B014GB23
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK07
4B014GK12
4B014GL10
4B014GP02
4B014GP13
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG12
4B026DG13
4B026DH01
4B026DH03
4B026DP01
4B026DP10
4B026DX02
(57)【要約】
【課題】シェイク等の柔らかい冷凍菓子の用途で求められる混ぜやすさや食しやすさに優れた冷凍菓子を得るのに好適な冷凍菓子用油脂組成物を提供すること。
【解決手段】ラウリン系油脂と、非ラウリン系極度硬化油を含む、冷凍菓子用油脂組成物であって、前記非ラウリン系極度硬化油が、融点50℃以上の非ラウリン系極度硬化油であり、且つ前記非ラウリン系極度硬化油が、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して1~9質量%の量で含まれる、前記冷凍菓子用油脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウリン系油脂と、非ラウリン系極度硬化油を含む、冷凍菓子用油脂組成物であって、前記非ラウリン系極度硬化油が、融点50℃以上の非ラウリン系極度硬化油であり、且つ前記非ラウリン系極度硬化油が、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して1~9質量%の量で含まれる、前記冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項2】
前記冷凍菓子は、半液体状又はソフトクリーム状の冷凍菓子である、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項3】
前記非ラウリン系極度硬化油が、極度硬化ハイエルシン菜種油、極度硬化パーム油、極度硬化菜種油、極度硬化大豆油、極度硬化豚脂、極度硬化牛脂、並びにこれらの1種又は2種以上の間でエステル交換した油脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項4】
前記非ラウリン系極度硬化油が、極度硬化ハイエルシン菜種油、極度硬化パーム油、並びにこれらの1種又は2種の間でエステル交換した油脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項5】
ラウリン系油脂を91~99質量%含む、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項6】
前記ラウリン系油脂が、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油、これらの硬化油及びこれら1種又は2種以上の間でエステル交換した油脂から成る群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項7】
構成脂肪酸としてベヘン酸を4.5質量%以下の量で含む、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項8】
前記冷凍菓子は、半液体状の冷凍菓子である、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項9】
前記冷凍菓子は、シェイクである、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、冷凍菓子用アイスミックス。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、冷凍菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍菓子用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)や氷菓などの冷凍菓子(冷菓)製品の製造において、油相部成分として植物性油脂を用いることが知られている。植物性油脂から製造される冷凍菓子は、生乳から製造される冷凍菓子に比べて、比較的安価に製造されるという利点を有するためにその消費量は多い。植物性油脂を用いた冷凍菓子の製造では、通常、安定な乳化物を得るため、乳化剤や安定剤などが使用される。
【0003】
植物性油脂を用いて製造されるアイスクリーム類や氷菓などの冷凍菓子には、食したときに風味や冷感、口溶けなどの点で優れた特性を有することが求められる。
従来提案されている冷凍菓子用の油脂組成物として、コク味や口溶けの特性に着目した冷菓用の油脂組成物としては、パームミッドフラクション等のSUS型トリグリセリドを45%以上含有する油脂とラウリン系油脂を主成分とする冷菓用油脂組成物が知られている(特許文献1)。
また、冷凍菓子を食した際の濃厚感に優れた油脂組成物として、ラウリン系極度硬化油を主成分とし、パーム系油脂を更に含み得る冷凍菓子用油脂組成物が知られている(特許文献2)。
さらに、常温で溶けにくく且つ口溶けに優れた冷凍菓子を得るための油脂組成物として、ラウリン系油脂と、パーム系油脂及び/又は液状油脂とを含む油脂組成物が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4826739号公報
【特許文献2】特開2020-028238号公報
【特許文献3】特許第6976693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷凍菓子には、シェイクなどの半液体状の冷凍菓子やソフトクリーム、ジェラートなどの比較的柔らかいものも存在する。これらの冷凍菓子では、消費者が食する際に攪拌しやすいよう、或いは食べやすい(飲みやすい)ように、適度な粘度と溶出性が求められることがある。しかしながら、特許文献1、2などの従来提案されている冷凍菓子用油脂組成物を用いて製造した冷凍菓子は、常温に置いたときになかなか溶け出さず、粘度も高すぎるため、シェイクやソフトクリームのような柔らかい冷凍菓子の用途では喫食できるようになるまでの時間が多くかかり、また、固すぎて消費者が食しにくいという問題がある(本明細書の比較例1、2、4)。また、特許文献3の油脂組成物を用いて製造した冷凍菓子は、常温で溶けにくいものであり、シェイク等の柔らかい冷凍菓子の用途で求められる混ぜやすさや食しやすさ(飲みやすさ)といった点には着目していない。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みたものであり、シェイク等の柔らかい冷凍菓子の用途で求められる混ぜやすさや食しやすさに優れた冷凍菓子を得るのに好適な冷凍菓子用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意努力により、ラウリン系油脂と、融点50℃以上の非ラウリン系極度硬化油を含む冷凍菓子用油脂組成物であって、前記非ラウリン系極度硬化油が、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して1~9質量%の量で含まれる冷凍菓子用油脂組成物から得られた冷凍菓子が、食する際の混ぜやすさや食しやすさ(飲みやすさ)に優れることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
〔1〕 ラウリン系油脂と、非ラウリン系極度硬化油を含む、冷凍菓子用油脂組成物であって、前記非ラウリン系極度硬化油が、融点50℃以上の非ラウリン系極度硬化油であり、且つ前記非ラウリン系極度硬化油が、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して1~9質量%の量で含まれる、前記冷凍菓子用油脂組成物。
〔2〕 前記冷凍菓子は、半液体状又はソフトクリーム状の冷凍菓子である、〔1〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔3〕 前記非ラウリン系極度硬化油が、極度硬化ハイエルシン菜種油、極度硬化パーム油、極度硬化菜種油、極度硬化大豆油、極度硬化豚脂、極度硬化牛脂、並びにこれらの1種又は2種以上の間でエステル交換した油脂からなる群から選択される少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔4〕 前記非ラウリン系極度硬化油が、極度硬化ハイエルシン菜種油、極度硬化パーム油、並びにこれらの1種又は2種の間でエステル交換した油脂からなる群から選択される少なくとも1種である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔5〕 ラウリン系油脂を91~99質量%含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔6〕 前記ラウリン系油脂が、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油、これらの硬化油及びこれら1種又は2種以上の間でエステル交換した油脂から成る群から選択される少なくとも1種である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔7〕 構成脂肪酸としてベヘン酸を4.5質量%以下の量で含む、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔8〕 前記冷凍菓子は、半液体状の冷凍菓子である、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔9〕 前記冷凍菓子は、シェイクである、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、冷凍菓子用アイスミックス。
〔11〕 〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、冷凍菓子。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷凍菓子用油脂組成物を用いることにより、シェイク等の柔らかい冷凍菓子の用途で求められる混ぜやすさや食しやすさ(飲みやすさ)に優れた冷凍菓子を得ることができる。また、本発明の油脂組成物を用いることにより、食する際に適度に溶け出し且つ半液体状態を維持しやすい冷凍菓子を得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
<<冷凍菓子用油脂組成物>>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、ラウリン系油脂と、非ラウリン系極度硬化油を含む、冷凍菓子用油脂組成物であって、前記非ラウリン系極度硬化油が、融点50℃以上の非ラウリン系極度硬化油であり、且つ前記非ラウリン系極度硬化油が、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して1~9質量%の量で含まれる、前記冷凍菓子用油脂組成物である。
【0011】
本発明において、冷凍菓子(冷菓ともいう)は、アイスクリーム類及び氷菓(アイスキャンディなど)に代表される、冷やして供される菓子全般を指し、固体状の冷凍菓子はもちろんのこと、シェイクなどの半液体状の冷凍菓子やソフトクリーム状の硬度の低い(柔らかい)冷凍菓子も含む。
本発明において、極度硬化油脂とは、水素添加によって原料油脂の不飽和脂肪酸をほぼ完全(好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.8質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.3質量%以下)に又は完全に飽和させた油脂を意味する。水素添加は、慣用の方法、例えば「食用油製造の実際」(宮川高明著、幸書房、昭和63年7月5日、初版第1刷発行)に記載の方法に従って行うことができる。
本発明において、冷凍菓子用油脂組成物を構成する油脂は、植物性油脂(すなわち、乳脂肪、豚脂、牛脂等を除く油脂)から構成されていてもよく、植物性油脂以外に動物性油脂を含んでいてもよいが、植物性油脂を80質量%以上含むことが好ましく、植物性油脂を90質量%以上含むことがより好ましく、植物性油脂のみからなることがさらにより好ましい。
【0012】
<ラウリン系油脂>
本明細書及び特許請求の範囲において、ラウリン系油脂とは、構成脂肪酸としてラウリン酸を35質量%以上含み、かつ不飽和脂肪酸量が40%以下である油脂の総称である。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、ラウリン系油脂を含む。ラウリン系油脂は、冷凍菓子用油脂組成物中に80~99質量%含まれることが好ましく、85~99質量%含まれることがより好ましく、90~99質量%含まれることがさらにより好ましく、91~99質量%含まれることがさらにより好ましく、92~99質量%含まれることがさらにより好ましく、92~98質量%含まれることがさらにより好ましく、92~97質量%含まれることがさらにより好ましく、93~96質量%含まれることがさらにより好ましい。また、ラウリン系油脂の量は、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して91~95質量%であることも好ましく、この場合、92~94質量%であることがより好ましく、93質量%であることがさらにより好ましい。
ラウリン系油脂を含むことにより、解乳化性が高まり、フリージングした後のシェイクの溶出率を下げる効果がある。また、シェイクの粘度を上昇させやすい。
ラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油が挙げられる。また、ヤシ油、パーム核油を分別した油脂や、これらの硬化油及びこれらの油脂の1種又は2種類以上の間でエステル交換した油脂を挙げることもできる。これらの中でも、ラウリン系油脂としては、極度硬化ヤシ油、極度硬化パーム核油、ヤシ油及びパーム核油並びにこれらの1種又は2種の間でエステル交換した油脂から成る群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、極度硬化ヤシ油、極度硬化パーム核油、ヤシ油及びパーム核油から成る群から選択される少なくとも1種であることがさらにより好ましく、極度硬化ヤシ油及び極度硬化パーム核油から成る群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、極度硬化ヤシ油であることがさらにより好ましい。
ラウリン系油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のラウリン系油脂を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
<非ラウリン系極度硬化油>
本明細書及び特許請求の範囲において、非ラウリン系極度硬化油とは、上述したラウリン系油脂以外の油脂を水素添加して得られる極度硬化油脂である。
非ラウリン系極度硬化油の原料としては、例えば、パーム系油脂(パーム油、その分別油やエステル交換油)、液状油脂(菜種油、ハイエルシン酸菜種油、大豆油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ヒマワリ油、落花生油、米油、紅花油等)、動物性油脂(豚脂、牛脂、羊脂等)が挙げられる。また、前記例示の「ハイエルシン酸菜種油」とは、エルシン酸含量の多い菜種油(例えば、エルシン酸を20~60質量%含む菜種油)を意味する。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、融点50℃以上の非ラウリン系極度硬化油を含む。融点50℃以上の非ラウリン系極度硬化油としては、例えば、極度硬化ハイエルシン菜種油(融点約60℃)、極度硬化パーム油(融点約58℃)、極度硬化菜種油(融点約68℃)、極度硬化大豆油(融点約68℃)、極度硬化豚脂(融点約58℃)、極度硬化牛脂(融点約58℃)等が知られている。
非ラウリン系極度硬化油としては、融点53℃以上の非ラウリン系極度硬化油が好ましく、融点55℃以上の非ラウリン系極度硬化油がより好ましく、融点57℃以上の非ラウリン系極度硬化油がさらにより好ましく、融点59℃以上の非ラウリン系極度硬化油がさらにより好ましい。
油脂の融点は、基準油脂分析法(2.2.4.2-1996)、融点(上昇融点))により測定することができる。
非ラウリン系極度硬化油としては、極度硬化ハイエルシン菜種油、極度硬化パーム油、極度硬化菜種油、極度硬化大豆油、極度硬化豚脂、極度硬化牛脂並びにこれらの1種又は2種以上の間でエステル交換した油脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、極度硬化ハイエルシン菜種油、極度硬化パーム油並びにこれらの1種又は2種の間でエステル交換した油脂からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、極度硬化ハイエルシン菜種油及び極度硬化パーム油からなる群から選択される少なくとも1種であることがさらにより好ましく、極度硬化ハイエルシン菜種油であることがさらにより好ましい。
また、非ラウリン系極度硬化油は、植物性油脂であってもよく、動物性油脂であってもよく、植物性油脂と動物性油脂の混合物であってもよいが、植物性油脂を含むことが好ましく、植物性油脂のみからなることがより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、非ラウリン系極度硬化油を、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して1~9質量%の量で含む。非ラウリン系極度硬化油の量は、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して1~8質量%であることが好ましく、2~8質量%であることがより好ましく、3~8質量%であることがさらにより好ましく、4~7質量%であることがさらにより好ましい。また、非ラウリン系極度硬化油の量は、冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して5~9質量%であることも好ましく、この場合、6~8質量%であることがより好ましく、7質量%であることがさらにより好ましい。
非ラウリン系極度硬化油を上記範囲内で含むことにより、混ぜやすさや食する際の食しやすさ(飲みやすさ)に優れる冷凍菓子、特に半液体状又はソフトクリーム状の冷凍菓子が得られやすくなる。また、食する際に適度に溶け出し且つ半液体状態を維持しやすい冷凍菓子が得られやすくなる。これに対し、非ラウリン系極度硬化油の含量が上記範囲を超えると、粘度が低くなることでさらさらとして食べごたえ(飲みごたえ)が小さくなる。一方、非ラウリン系極度硬化油の含量が上記範囲を下回ると、溶出率が低くなり、時間が経過しても固体状のままで喫食できるようになるまでの時間が多くかかる可能性がより高くなる。また、半液体状の冷凍菓子全体の解乳化性が高くなり、当該冷凍菓子の液体状部と固体状部が混ざりにくくなる可能性が高まる。さらに、粘度が高まることにより半液体状の冷凍菓子をストロー等で吸い込みづらく、あるいは傾けて飲みづらくなる可能性が高まる。
非ラウリン系極度硬化油は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上の非ラウリン系極度硬化油を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
<ベヘン酸含量>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるベヘン酸(C22-0)の割合が4.5質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、0.5~4.0質量%であることがさらにより好ましく、0.8~4.0質量%であることが好ましく、1.2~3.8質量%であることがより好ましく、1.5~3.6質量%であることがさらにより好ましい。
【0015】
<オレイン酸含量>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるオレイン酸(cisC18-1)の割合が20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、16質量%以下であることがさらにより好ましく、10質量%以下であることがさらにより好ましく、5質量%以下であることがさらにより好ましく、3質量%以下であることがさらにより好ましく、2質量%以下であることがさらにより好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましく、0.6質量%以下であることがさらにより好ましく、0.4質量%以下であることがさらにより好ましく、0.2質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0016】
<パルミチン酸含量>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるパルミチン酸(C16-0)の割合が20質量%以下であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましく、4~12質量%であることがさらにより好ましく、5~11質量%であることがさらにより好ましく、6~10質量%であることがさらにより好ましい。
【0017】
<ラウリン酸含量>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるラウリン酸(C12-0)の割合が30質量%以上であることが好ましく、35~55質量%であることがより好ましく、40~55質量%であることがさらにより好ましく、40~50質量%であることがさらにより好ましく、43~48質量%であることがさらにより好ましい。
【0018】
<不飽和脂肪酸含量>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占める不飽和脂肪酸の割合が20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらにより好ましく、5質量%以下であることがさらにより好ましく、3質量%以下であることがさらにより好ましく、2質量%以下であることがさらにより好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましく、0.5質量%以下であることがさらにより好ましく、0.3質量%以下であることがさらにより好ましく、0.2質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0019】
<固体脂含量(SFC)>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、20℃におけるSFCが30~60(単位:%)であることが好ましく、35~60であることが好ましく、40~60であることがより好ましく、45~60であることがさらにより好ましく、45~55であることがさらにより好ましく、48~55であることがさらにより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、30℃におけるSFCが15以下(単位:%)であることが好ましく、1.0~15.0であることが好ましく、3.0~15.0であることがより好ましく、6.0~15.0であることがさらにより好ましく、8.0~14.0であることがさらにより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、35℃におけるSFCが12以下(単位:%)であることが好ましく、11以下であることが好ましく、1.0~11.0であることがより好ましく、2.0~11.0であることがさらにより好ましく、3.0~11.0であることがさらにより好ましく、4.0~11.0であることがさらにより好ましく、5.0~11.0であることがさらにより好ましい。
SFC(単位:%)は、基準油脂分析法(2.2.9-2013、固体脂含量(NMR法))を基にして、次のようにして測定することができる。即ち、油脂組成物を60℃で30分保持し、油脂組成物を完全に融解した後、0℃で30分保持して固化させる。その後、25℃で30分保持し、テンパリングを行った後、0℃に30分保持する。その後、5℃ずつ昇温し各温度で30分間保持した後、それぞれの温度におけるSFCを測定する。
【0020】
<その他の油脂>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、その他の油脂を含んでいてもよい。具体例としては、パーム系油脂、液状油脂、MCT(中鎖脂肪酸油)があげられる。パーム系油脂とは、パームの果実由来の油脂の総称であり、パーム油、パーム油を分別した油脂及びこれらの油脂の1種又は2種類以上をエステル交換した油脂を意味する。なお、パームの核由来の油脂であるパーム核油、その分別油、その硬化油及びそのエステル交換油は、パーム系油脂には含まれない。パーム系油脂の例としては、パーム油、パームミッドフラクション、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、及びこれらの1種又は複数の油脂のエステル交換油などが挙げられる。液状油脂は、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を60質量%以上含む油脂を意味する。液状油脂の具体例としては、大豆油、ハイオレイック菜種油、菜種油、ハイオレイックヒマワリ油、ヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、紅花油、オリーブ油、亜麻仁油、ごま油、えごま油、グレープシードオイル、チアシードオイル、米油、パンプキンシードオイル、アボカドオイル、マカダミアナッツ油、ヘンプ油、アルガンオイル、アーモンド油、くるみ油が挙げられる。また、上記の油脂を分別した油脂や、上記の油脂の1種又は2種類以上をエステル交換等した油脂を挙げることもできる。
その他の油脂を含む場合、その他の油脂は冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して10質量%以下の割合であることが好ましく、5質量%以下の割合であることがより好ましく、3質量%以下の割合であることがさらにより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0021】
<その他の任意成分>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤などを含んでいてもよい。酸化防止剤としては、ビタミンE、ビタミンC、ローズマリー抽出物、茶抽出物、コケモモ抽出物等が挙げられる。
【0022】
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、上記の油脂を単に混合しただけのものであってもよく、または、上記油脂を混合後にエステル交換したものであってもよい。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に断らない限り、「冷凍菓子用油脂組成物」は、上記の油脂を単に混合しただけの組成物も、上記油脂を混合後にエステル交換して得られる組成物も包含する概念とする。これらの中でも、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、上記油脂を混合後にエステル交換していない(すなわち、上記油脂を混合して得られる混合油脂である)ことが好ましい。
エステル交換は、当該技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。例えば、非選択的エステル交換反応方法、選択型(指向型)エステル交換反応方法が挙げられる。
【0023】
<用途>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、冷凍菓子の製造に用いることができる。冷凍菓子の中でも、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、半液体状(半固体状、シャーベット状)又はソフトクリーム状の冷凍菓子の製造に好ましく用いることができる。
半液体状の冷凍菓子としては、シェイク、フラッペ、スムージーなどが挙げられる。
ソフトクリーム状の冷凍菓子としては、ソフトクリーム、ジェラートなどが挙げられる。ソフトクリームは、製品の温度が-4℃~-7℃程度であり、一般的なアイスクリーム(保管温度-18℃程度)に比べて製品温度が高く、柔らかい。
これらの中でも、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、半液体状の冷菓飲料に好ましく用いられ、シェイクに特に好ましく用いられる。
半液体状の冷凍菓子は、一般的なアイスクリームに比して未凍結部分が多く、流動性が高い。従って、一般的なアイスクリームとは求められる特性が異なりやすい。本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、半液体状の冷凍菓子の製造に好ましく用いることができる。
シェイクは、一般に、アイスミックス(ソフトミックス、シェイクミックス等を含む)を一定の方法によりフリージングし、-18℃以下での硬化工程を経ずに喫食される、半液体状の冷凍菓子である。シェイクは、アイスミックスをシェイクメーカーあるいはソフトクリームフリーザー等の機械設備により含気させながら-4~-7℃程度に冷却し、コップ等の容器に充填することにより製造することができる。
【0024】
<<アイスミックス/冷凍菓子(冷菓)>>
上述した油脂組成物から下記のように水中油型乳化油脂組成物であるアイスミックスを製造することができる。アイスミックスとは、冷却・撹拌によって冷凍菓子に固形化あるいは半固形化する前の水中油型乳化油脂組成物をいう。このアイスミックスを冷却しながら撹拌することにより、冷凍菓子を製造することができる。
〔油相部〕
本発明のアイスミックスは水相部と油相部からなり、油相部に上記本発明の冷凍菓子用油脂組成物を含有することを特徴とする。
本発明において、油相部は、本発明の冷凍菓子用油脂組成物に加えて、油脂として乳脂肪を更に含んでいてもよく、アーモンドミルク、オーツミルク、カカオなどの植物原料に由来する油分を更に含んでいてもよい。乳脂肪の例としては、バターオイル、バター、生クリーム、牛乳等を由来とする乳脂肪が挙げられる。
【0025】
本発明のアイスミックスの油相部には、上記油脂に加えて、親油性の乳化剤、着香料、着色料等を添加してもよい。乳化剤としては、例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド等従来公知の乳化剤が例示でき、本発明においてはこれらのいずれを適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明において、アイスミックス全質量に対する油相部の質量割合は、1~25質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、1~15質量%であることがさらにより好ましい。また、本発明において、アイスミックス全質量に対する本発明の油脂組成物の質量割合は、1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、1~12質量%であることがさらにより好ましい。
【0026】
〔水相部〕
本発明のアイスミックスの水相部には、水に加えて、安定剤、乳化剤(蔗糖脂肪酸エステルなど)、カゼインナトリウム、脱脂粉乳、糖類などを添加してもよい。また、必要に応じて、クエン酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、第二りん酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム、カラギナン等の増粘多糖類、香料などを添加してもよい。糖類としては、例えば、液糖、水飴、粉飴、ショ糖、麦芽糖、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、トレハロース等が挙げられ、これは必要に応じ適宜組み合わせて配合される。好ましくは、本発明のアイスミックスの水相部には、液糖が含まれる。液糖の量は、アイスミックスの全質量に対して、1~15質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましく、3~8質量%であることがさらにより好ましい。液糖を用いることにより、シェイクやソフトクリームなどの柔らかい冷凍菓子が製造しやすくなる。
また、水相部に脱脂粉乳が含まれる場合、脱脂粉乳(固形分)の量は、アイスミックスの全質量に対して、1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、3~12質量%であることがさらにより好ましい。
【0027】
その後、油相部と水相部を60℃~90℃に加温し、混合して予備乳化を行う。予備乳化後、バッチ式殺菌法、または間接加熱方式あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法にて滅菌し、ホモゲナイザーにて均質化し、常温(30℃)以下、好ましくは0~10℃程度、より好ましくは5℃程度に冷却してエージングすることで、本発明のアイスミックス(水中油型乳化油脂組成物)を製造することができる。
得られたアイスミックスを撹拌しながら-10~0℃程度、好ましくは-4~-7℃、より好ましくは-5℃程度に冷却することにより、本発明の冷凍菓子を製造することができる。
【実施例0028】
<<油脂組成物の調製>>
表1~2に示す油脂及び配合割合(質量%)で混合した後、結晶を完全に融解させた。その後、脱色、脱臭し、実施例1~6及び比較例1~4の各油脂組成物を得た。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
<<物性>>
実施例1~6及び比較例1~4で用いた油脂及び油脂組成物の脂肪酸組成、SFCを、下記の方法により測定した。
<脂肪酸組成>
基準油脂分析法(2.42.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法))に準じて測定した。
ガスクロマトグラフィー装置は、島津製作所(株)製、GC-2010型を用いた。カラムは、SUPELCO社製、SP-2560を用いた。
実施例1~6及び比較例1~4において使用した各油脂の全構成脂肪酸に占める主要な構成脂肪酸の割合(質量%)を表3に、実施例1~6及び比較例1~4の各油脂組成物の構成脂肪酸に占める主要な構成脂肪酸の割合(質量%)を表4~5に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
<SFC>
実施例1~6及び比較例1~4の各油脂組成物の固体脂含量(SFC、単位は%)は、基準油脂分析法(2.2.9-2013、固体脂含量(NMR法))を基にして、次のようにして測定した。即ち、油脂組成物を60℃で30分保持し、油脂組成物を完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させた。その後、25℃で30分保持し、テンパリングを行った後、0℃で30分保持した。その後、5℃ずつ昇温し各温度で30分間保持した後、それぞれの温度におけるSFCを測定した。その結果を表6~7に示す。
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
<<アイスミックスの製造>>
実施例1~6及び比較例1~4の各油脂組成物を用いて、表8に記載の油相部、水相部a、水相部bをそれぞれ混合した後、水相部bに水相部aを加え、十分に撹拌して混合した。混合後の水相部を加熱し、80℃で油相部を加え、85℃で15分間予備乳化と殺菌を行った。その後、ホモゲナイザーにて均質化を行い(200kg/cm2、20kg/cm2)、30℃に冷却した後、30℃で22時間保持しアイスミックスを得た。
なお、表8中、%は質量%を意味する。
【0039】
【表8】
乳化剤:サンソフトNo.561V(太陽化学)
安定剤:ネオソフトIL-220(太陽化学)
【0040】
得られたアイスミックスの粘度を、下記の方法により測定した。
【0041】
<アイスミックスの粘度(cp)測定>
30℃保管後のアイスミックスを、B型粘度計(BROOK FIELD社製粘度計のLVT)、スピンドル2番、スピード30にて測定した。
アイスミックスの粘度が高いと、アイスミックスを冷却して冷凍菓子を製造するとき、アイスミックスをフリーザーに充填しづらく、フリージングに支障が出やすい。具体的には、ホッパー等のミックス導入部から撹拌部までアイスミックスが行き渡りづらい、フリージング時にムラが発生しやすくなる、等の現象が想定される。従って、アイスミックスの粘度は低いほど好ましい。以上の点から、アイスミックスの粘度が450cp未満を◎評価、450~1000cpを○評価、1000cp超過を×評価とした。その結果を表9~10に示す。
【0042】
<冷凍菓子(シェイク)の製造>
上記で得られたアイスミックスをフリーザーに入れ、220rpmで撹拌しながら-5℃になるまで冷却し、シェイクを得た。得られたシェイクを用いて、下記の手順に従って混ぜやすさ、粘度、溶出率を評価した。
【0043】
<混ぜやすさの評価>
シェイク中には、通常、固体状部分と液体状部分が混在する。固体状部分の塊(アイスの塊)があると飲みにくいため、ストローやスプーンでシェイクを混ぜたときに、より早く固体状部分の塊がなくなるほど飲みやすくなる。以上の理由から、フリージング後のシェイクをプラスチックカップに充填し、周囲温度20℃にて20分静置後、薬さじで右回しに10回混ぜ、この時の混ぜやすさを下記の基準にて評価した。
◎:ほとんどアイスの塊が残らない
〇:ややアイスの塊が残る
×:大きなアイスの塊が残る
その結果を表9~10に示す。
【0044】
<シェイクの粘度(cp)測定>
フリージング後のシェイクをプラスチックカップに充填し、周囲温度20℃にて20分静置後B型粘度計(BROOK FIELD社製粘度計のLVT)、スピンドル4番、スピード30にて測定した。
粘度は、シェイクの飲みごたえや飲みやすさと関係する。粘度が低すぎるシェイクは、半凍結状態での喫食を楽しむ食品としてはさらさらとしすぎて飲みごたえが損なわれる。一方、粘度が高すぎるシェイクは液体状部の粘度も高くなるため、シェイクを、ストローを用いて、あるいはコップ等を傾けて飲む際に吸い込みづらく、あるいは飲みづらくなる。以上の理由から、飲みごたえや飲みやすさの観点で適度な粘度として、1000~2500cpの粘度を有するシェイクを◎評価、粘度が2500超過~3200cpのシェイクを○評価、粘度が1000cp未満もしくは3200cp超過のシェイクを×評価とした。
その結果を表9~10に示す。
【0045】
<溶出率(%)>
300mLビーカーに茶こしをセットし、50gほどのシェイクを茶こしの上にのせ、30分後に溶けだしたシェイクの質量を測定し、下記の式にて溶出率を算出した。
溶出率(%)=溶出量(g)/のせたシェイク量(g)×100
なお、試験時の周囲温度は20℃で行った。
溶出率は、シェイクの形状維持や喫食し易さと関係する。溶出率が大きすぎるとシェイクは形状を維持できなくなる可能性が高まる。具体的には、溶出率が高すぎるシェイクは、経時的に溶け出しやすく、飲み切る前に溶け切ってしまう可能性が高まる。逆に、溶出率が低すぎると、シェイクが経時的に溶け出しづらくなり、喫食できるようになるまでの待ち時間が長くなってしまうか、シェイクが固化してしまう可能性が高まる。以上の理由から、形状維持及び喫食し易さの観点で適度な溶出率として、20~45%の溶出率を有するシェイクを◎評価、15%~20%未満もしくは45%超過~50%のシェイクを〇評価、15%未満もしくは50%超過のシェイクを×評価とした。
その結果を表9~10に示す。
【0046】
【表9】
【0047】
【表10】
【0048】
<<結果>>
表9~10に示す結果から明らかなように、比較例1、4の油脂組成物から製造されたシェイクは、液体状部と固体状部とが混ざりにくく、シェイクの用途には適さないことが分かった。また、比較例1、4の油脂組成物から製造されたシェイクは、高すぎる粘度も有していた。そのため、ストロー等で喫食する際に吸い込みづらいという問題を有する。さらに、比較例1、2、4の油脂組成物から製造されたシェイクは、30分後の溶出率が非常に低いという結果となった。従って、喫食できるようになるまでに多くの時間がかかるという欠点を有する。逆に、比較例3の油脂組成物から製造されたシェイクは、溶出率は良好であるものの、十分な粘度を有さなかった。そのため、さらさらとし過ぎており、シェイクを食する際に、シェイクとしての食べごたえ(飲みごたえ)が十分に得られないという問題が残る。これに対し、実施例1~6の油脂組成物から製造されたシェイクは、良好な混ぜやすさ、適度な粘度とそれによる飲みやすさを有し、適度な溶出率を有していた。従って、シェイク用途に適していることが示された。また、実施例1~6の中でも、特に実施例3~4の油脂組成物は、混ぜやすさ、粘度、溶出率のいずれも良好であることが分かった。さらに、実施例4の油脂組成物は、混ぜやすく、溶出率が適度に高く喫食が容易である一方で、粘度も適度に高いため十分な飲みごたえも確保できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、シェイク等の柔らかい冷凍菓子の用途で求められる混ぜやすさや食しやすさに優れた冷凍菓子を得ることができる。したがって、本発明は、産業上、極めて有用である。