(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174330
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】リモート制御装置、ローカル制御装置、学習処理装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087122
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下川 達也
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA02
3C223AA06
3C223BA03
3C223BB02
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リモート制御装置、ローカル制御装置、学習処理装置、方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】設備を制御するローカル制御装置から、設備に関する測定値を受信する測定値受信部と、ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延が生じる場合において設備の制御に使用すべき制御値を、制御遅延に相当する遅延量と測定値とから算出するモデルを用いて、受信した測定値と遅延量とに応じた制御値を算出する算出部と、算出した制御値をローカル制御装置に送信する制御値送信部と、を備えるリモート制御装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を制御するローカル制御装置から、前記設備に関する測定値を受信する測定値受信部と、
前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延が生じる場合において前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と測定値とから算出するモデルを用いて、前記受信した測定値と遅延量とに応じた制御値を算出する算出部と、
前記算出した制御値を前記ローカル制御装置に送信する制御値送信部と、を備える
リモート制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記ローカル制御装置が前記測定値を送信してから、前記制御値送信部から該測定値に対応する前記制御値を前記ローカル制御装置が受信するまでの期間の候補値が予め設定された余裕時間を超える分を前記遅延量として用いる
請求項1に記載のリモート制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記モデルを用いて、複数の前記遅延量のそれぞれに応じた複数の前記制御値を、前記受信した測定値から算出し、
前記制御値送信部は、前記複数の制御値を前記ローカル制御装置に送信する
請求項1に記載のリモート制御装置。
【請求項4】
前記制御値送信部は、前記複数の制御値と前記複数の遅延量の対応関係を示すデータを前記ローカル制御装置に送信する
請求項3に記載のリモート制御装置。
【請求項5】
前記測定値受信部は、前記算出した制御値を用いて前記設備を制御したことに応じて得られた新たな測定値と、前記用いた制御値に対応する制御遅延とを受信し、
受信した前記制御遅延及び前記新たな測定値を用いて、前記モデルを更新する学習処理部を備える
請求項1に記載のリモート制御装置。
【請求項6】
測定値に応じた制御値を算出するリモート制御装置に対して、設備に関する測定値を送信する測定値送信部と、
前記リモート制御装置から、前記送信した測定値に応じた複数の制御値を受信する制御値受信部と、
前記リモート制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延に応じて、前記複数の制御値の中から前記設備の制御に用いる制御値を選択する選択部と、
前記選択された制御値に従って前記設備の制御を行う制御部と、を備える
ローカル制御装置。
【請求項7】
前記測定値送信部が前記測定値を送信してから、該測定値に対応する前記複数の制御値を前記制御値受信部が受信するまでの期間を測定して、前記制御遅延を決定する遅延測定部を備え、
前記選択部は、前記遅延測定部が決定した前記制御遅延に応じて、前記複数の制御値の中から前記設備の制御に用いる制御値を選択する
請求項6に記載のローカル制御装置。
【請求項8】
前記遅延測定部は、前記測定値送信部が前記測定値を送信してから、該測定値に対応する前記複数の制御値を前記制御値受信部が受信するまでの期間が予め設定された余裕時間を超える分を前記制御遅延として決定し、
前記制御部は、前記測定値送信部が前記測定値を送信してから少なくとも前記予め設定された余裕時間が過ぎてから、前記設備の制御を行う
請求項7に記載のローカル制御装置。
【請求項9】
リモート制御装置から受信した制御値に従って設備を制御するローカル制御装置において取得された、前記リモート制御装置と前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延と前記設備に関する測定値とを受信する測定値受信部と、
前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と前記測定値とから算出するモデルを生成する学習処理部と、を備える
学習処理装置。
【請求項10】
設備を制御するローカル制御装置から、前記設備に関する測定値を受信する測定値受信段階と、
前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延が生じる場合において前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と測定値とから算出するモデルを用いて、前記受信した測定値と遅延量とに応じた制御値を算出する算出段階と、
前記算出した制御値を前記ローカル制御装置に送信する制御値送信段階と、を備える
方法。
【請求項11】
コンピュータを、
設備を制御するローカル制御装置から、前記設備に関する測定値を受信する測定値受信部と、
前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延が生じる場合において前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と測定値とから算出するモデルを用いて、前記受信した測定値と遅延量とに応じた制御値を算出する算出部と、
前記算出した制御値を前記ローカル制御装置に送信する制御値送信部
として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
測定値に応じた制御値を算出するリモート制御装置に対して、設備に関する測定値を送信する測定値送信段階と、
前記リモート制御装置から、前記送信した測定値に応じた複数の制御値を受信する制御値受信段階と、
前記リモート制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延に応じて、前記複数の制御値の中から前記設備の制御に用いる制御値を選択する選択段階と、
前記選択された制御値に従って前記設備の制御を行う制御段階と、を備える
方法。
【請求項13】
コンピュータを、
測定値に応じた制御値を算出するリモート制御装置に対して、設備に関する測定値を送信する測定値送信部と、
前記リモート制御装置から、前記送信した測定値に応じた複数の制御値を受信する制御値受信部と、
前記リモート制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延に応じて、前記複数の制御値の中から前記設備の制御に用いる制御値を選択する選択部と、
前記選択された制御値に従って前記設備の制御を行う制御部
として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
リモート制御装置から受信した制御値に従って設備を制御するローカル制御装置において取得された、前記リモート制御装置と前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延と前記設備に関する測定値とを受信する測定値受信段階と、
前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と前記測定値とから算出するモデルを生成する学習処理段階と、を備える
方法。
【請求項15】
コンピュータを、
リモート制御装置から受信した制御値に従って設備を制御するローカル制御装置において取得された、前記リモート制御装置と前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延と前記設備に関する測定値とを受信する測定値受信部と、
前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と前記測定値とから算出するモデルを生成する学習処理部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモート制御装置、ローカル制御装置、学習処理装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「プラント等の設備においては、センサや操作機器と、これらを制御する制御装置とが通信手段を介して接続された分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されており、DCSによる高度な自動操業が実現されている」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
特許文献1 特開2020-027556号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、リモート制御装置を提供する。前記リモート制御装置は、設備を制御するローカル制御装置から、前記設備に関する測定値を受信する測定値受信部と、前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延が生じる場合において前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と測定値とから算出するモデルを用いて、前記受信した測定値と遅延量とに応じた制御値を算出する算出部と、前記算出した制御値を前記ローカル制御装置に送信する制御値送信部と、を備える。
【0004】
前記リモート制御装置において、前記算出部は、前記ローカル制御装置が前記測定値を送信してから、前記制御値送信部から該測定値に対応する前記制御値を前記ローカル制御装置が受信するまでの期間の候補値が予め設定された余裕時間を超える分を前記遅延量として用いてよい。
【0005】
前記リモート制御装置のいずれかにおいて、前記算出部は、前記モデルを用いて、複数の前記遅延量のそれぞれに応じた複数の前記制御値を、前記受信した測定値から算出し、前記制御値送信部は、前記複数の制御値を前記ローカル制御装置に送信してよい。
【0006】
前記リモート制御装置において、前記制御値送信部は、前記複数の制御値と前記複数の遅延量の対応関係を示すデータを前記ローカル制御装置に送信してよい。
【0007】
前記リモート制御装置のいずれかにおいて、前記測定値受信部は、前記算出した制御値を用いて前記設備を制御したことに応じて得られた新たな測定値と、前記用いた制御値に対応する制御遅延とを受信し、前記リモート制御装置のいずれかは、受信した前記制御遅延及び前記新たな測定値を用いて、前記モデルを更新する学習処理部を備えてよい。
【0008】
本発明の第2の態様においては、ローカル制御装置を提供する。ローカル制御装置は、前記測定値に応じた制御値を算出するリモート制御装置に対して、設備に関する測定値を送信する測定値送信部と、前記リモート制御装置から、前記送信した測定値に応じた複数の制御値を受信する制御値受信部と、前記リモート制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延に応じて、前記複数の制御値の中から前記設備の制御に用いる制御値を選択する選択部と、前記選択された制御値に従って前記設備の制御を行う制御部と、を備える。
【0009】
前記ローカル制御装置は、前記測定値送信部が前記測定値を送信してから、該測定値に対応する前記複数の制御値を前記制御値受信部が受信するまでの期間を測定して、前記制御遅延を決定する遅延測定部を備え、前記選択部は、前記遅延測定部が決定した前記制御遅延に応じて、前記複数の制御値の中から前記設備の制御に用いる制御値を選択してよい。
【0010】
前記ローカル制御装置のいずれかにおいて、前記遅延測定部は、前記測定値送信部が前記測定値を送信してから、該測定値に対応する前記複数の制御値を前記制御値受信部が受信するまでの期間が予め設定された余裕時間を超える分を前記制御遅延として決定し、前記制御部は、前記測定値送信部が前記測定値を送信してから少なくとも前記予め設定された余裕時間が過ぎてから、前記設備の制御を行ってよい。
【0011】
本発明の第3の態様においては、学習処理装置を提供する。前記学習処理装置は、リモート制御装置から受信した制御値に従って設備を制御するローカル制御装置において取得された、前記リモート制御装置と前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延と前記設備に関する測定値とを受信する測定値受信部と、前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と前記測定値とから算出するモデルを生成する学習処理部と、を備える。
【0012】
本発明の第4の態様においては、方法を提供する。前記方法は、設備を制御するローカル制御装置から、前記設備に関する測定値を受信する測定値受信段階と、前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延が生じる場合において前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と測定値とから算出するモデルを用いて、前記受信した測定値と遅延量とに応じた制御値を算出する算出段階と、前記算出した制御値を前記ローカル制御装置に送信する制御値送信段階と、を備える。
【0013】
本発明の第5の態様においては、プログラムを提供する。前記プログラムは、コンピュータを、設備を制御するローカル制御装置から、前記設備に関する測定値を受信する測定値受信部と、前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延が生じる場合において前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と測定値とから算出するモデルを用いて、前記受信した測定値と遅延量とに応じた制御値を算出する算出部と、前記算出した制御値を前記ローカル制御装置に送信する制御値送信部として機能させる。
【0014】
本発明の第6の態様においては、方法を提供する。前記方法は、測定値に応じた制御値を算出するリモート制御装置に対して、設備に関する測定値を送信する測定値送信段階と、
前記リモート制御装置から、前記送信した測定値に応じた複数の制御値を受信する制御値受信段階と、前記リモート制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延に応じて、前記複数の制御値の中から前記設備の制御に用いる制御値を選択する選択段階と、前記選択された制御値に従って前記設備の制御を行う制御段階と、を備える。
【0015】
本発明の第7の態様においては、プログラムを提供する。前記プログラムは、コンピュータを、測定値に応じた制御値を算出するリモート制御装置に対して、設備に関する測定値を送信する測定値送信部と、前記リモート制御装置から、前記送信した測定値に応じた複数の制御値を受信する制御値受信部と、前記リモート制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延に応じて、前記複数の制御値の中から前記設備の制御に用いる制御値を選択する選択部と、前記選択された制御値に従って前記設備の制御を行う制御部として機能させる。
【0016】
本発明の第8の態様においては、方法を提供する。前記方法は、リモート制御装置から受信した制御値に従って設備を制御するローカル制御装置において取得された、前記リモート制御装置と前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延と前記設備に関する測定値とを受信する測定値受信段階と、前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と前記測定値とから算出するモデルを生成する学習処理段階と、を備える。
【0017】
本発明の第9の態様においては、プログラムを提供する。前記プログラムは、コンピュータを、リモート制御装置から受信した制御値に従って設備を制御するローカル制御装置において取得された、前記リモート制御装置と前記ローカル制御装置との間の通信遅延を含む制御遅延と前記設備に関する測定値とを受信する測定値受信部と、前記設備の制御に使用すべき制御値を、前記制御遅延に相当する遅延量と前記測定値とから算出するモデルを生成する学習処理部として機能させる。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る制御システム10のブロック図の一例を示す。
【
図2】制御システム10における通信の説明図である。
【
図3】本実施形態のリモート制御装置100の処理フローの一例を示す。
【
図5】モデル135のウェイトテーブルの一例を示す。
【
図6】複数の制御値と複数の遅延量の対応関係を示すテーブルの一例を示す。
【
図7】本実施形態のローカル制御装置200の処理フローの一例を示す。
【
図8】本実施形態に係る制御システム10においてリモート制御装置100が学習するフローの一例を示す。
【
図9】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本実施形態に係るリモート制御装置100及びローカル制御装置200が含まれてよい制御システム10のブロック図の一例を示す。なお、これらブロックは、それぞれ機能的に分離された機能ブロックであって、実際の装置構成とは必ずしも一致していなくてもよい。すなわち、本図において、1つのブロックとして示されているからといって、それが必ずしも1つの装置により構成されていなくてもよい。また、本図において、別々のブロックとして示されているからといって、それらが必ずしも別々の装置により構成されていなくてもよい。これより先のブロック図についても同様である。
【0022】
制御システム10は、一例として、プラントの保全管理を行うものであり、リモート制御装置100と、ローカル制御装置200と、設備300とを備える。制御システム10は、設備300のバルブ等をPID(Proportional Integral Differential)等により開閉制御する場合、ローカル制御装置200による設備300の測定値送信から、リモート制御装置100により算出された制御値に応じて制御された設備300に関する新たな測定値の取得までを1周期として、複数周期行う。制御システム10は、このような制御におけるリモート制御装置100とローカル制御装置200の間のデータの送受信により生じる制御遅延を考慮した設備の制御を実行する。
【0023】
制御システム10において、ローカル制御装置200は、設備300内又は設備300の制御対象の近傍に設置され、例えば、プラントにおいてプロセスが実行される現場に配置される制御装置であってよい。また、リモート制御装置100は、ローカル制御装置200と離れた場所に配置され、例えば、プラントの管理センタに配置される制御指示装置又は制御データ算出装置であってよい。
【0024】
設備300は、制御対象の機器が設けられた施設や装置である。例えば、設備300は、プラントであってもよいし、プラント内に設けられた装置等であってもよい。プラントとしては、化学やバイオ等の工業プラントの他、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等が挙げられる。
【0025】
設備300における制御対象は、例えば、設備300のプロセスにおける物体の量、温度、圧力、流量、速度、および、pH等の少なくとも1つの物理量を制御する、バルブ、ヒータ、モータ、ファン、および、スイッチ等のアクチュエータ、すなわち、操作端であってよく、操作量に応じた所与の操作を実行する。
【0026】
設備300には、設備300の内外における様々な状態(物理量)を測定可能な1または複数のセンサが設けられていてよい。一例として、センサは、設備300の様々な位置における温度や、流量等を測定した測定値を出力してよい。設備300に関する測定値には、このような測定値が含まれていてよい。また、設備300に関する測定値には、設備300のバルブの開閉度を示す操作量が含まれていてよい。測定値には、このように制御した結果の運転状態を示すデータに加えて、設備300におけるエネルギーや原材料の消費量を示す消費量データや、設備300の制御に対して外乱として作用し得る物理量を示す外乱環境データ等が含まれていてもよい。
【0027】
ここで、制御値は、ローカル制御装置200が行う設備300に対する制御を示すものであってよく、例えば設備300の制御対象への制御操作及び制御量の少なくとも一方を示すものであってよい。制御値は、さらに識別子等で設備300の制御対象を示してよい。一例として、制御値は、設備300のバルブをn%(n>0、n%はバルブの開度であってよい)閉める又は開ける、設備300の所定の流路の流量をn%増やす又は減らす等を示してよい。
【0028】
リモート制御装置100は、ローカル制御装置200に接続され、モデル135の学習処理や、当該モデル135を用いて算出した制御値のローカル制御装置200への送信を行う。リモート制御装置100は、PC、タブレットPC、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。また、リモート制御装置100は、コンピュータ内で1または複数の実行可能な仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。これに代えて、リモート制御装置100は、プラントの保全管理用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。また、リモート制御装置100は、クラウドコンピューティングにより実現されてもよい。
【0029】
リモート制御装置100は、測定値受信部110と、学習処理部120と、モデル記憶部130と、算出部140と、制御値送信部150とを備える。測定値受信部110は、ローカル制御装置200に接続され、ローカル制御装置200から、ネットワーク(例えば、無線/有線、インターネット、イントラネット等であり、以下同様である。)を介して、設備300に関する測定値を受信する。測定値受信部110は、測定値とともに、ローカル制御装置200で測定された制御遅延を受信してよい。測定値受信部110は、受信した測定値及び制御遅延を学習処理部120及び算出部140に供給する。
【0030】
学習処理部120は、モデル記憶部130に接続され、測定値受信部110からの測定値及び制御遅延を用いて、機械学習を行い、モデル135の生成及び更新を行う。学習処理されるモデル135は、ローカル制御装置200との間の通信遅延を含む制御遅延が生じる場合において設備300の制御に使用すべき制御値を、制御遅延に相当する遅延量と測定値とから算出するものである。学習処理部120は、学習処理したモデル135をモデル記憶部130に供給する。
【0031】
モデル記憶部130は、算出部140に接続され、学習処理部120が学習処理したモデル135を記憶する。モデル記憶部130は、算出部140にモデル135を供給する。
【0032】
算出部140は、制御値送信部150に接続され、モデル記憶部130に記憶されたモデル135を用いて、測定値受信部110で受信した測定値と遅延量とに応じた制御値を算出する。算出部140は、ローカル制御装置200との間の通信遅延を含む制御遅延に相当する複数の遅延量を取得し、当該複数の遅延量と測定値とをモデル135に入力して、複数の遅延量のそれぞれに応じた複数の制御値を算出してよい。算出部140は、制御値を制御値送信部150に供給する。
【0033】
制御値送信部150は、ローカル制御装置200に接続され、算出した複数の制御値を、ネットワークを介して、ローカル制御装置200に送信する。制御値送信部150は、複数の制御値を、算出に用いた複数の遅延量にそれぞれ対応付けて送信してよい。
【0034】
ローカル制御装置200は、設備300に接続され、リモート制御装置100からの制御値に従って設備300の制御を行い、測定値の取得及び送信を行う。ローカル制御装置200もまた、リモート制御装置100と同様に、コンピュータであってよく、PC、タブレットPC、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。また、ローカル制御装置200は、コンピュータ内で1または複数の実行可能な仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。これに代えて、ローカル制御装置200は、プラントの保全管理用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。また、ローカル制御装置200は、マイクロコントローラ等を用いた制御コントローラ等であってもよい。
【0035】
ローカル制御装置200は、測定値送信部210と、制御値受信部220と、遅延測定部230と、選択部240と、制御部250と、を備える。
【0036】
測定値送信部210は、リモート制御装置100、制御部250、及び遅延測定部230に接続され、制御部250から設備300に関する測定値を取得し、リモート制御装置100に対して、ネットワークを介して、測定値を送信する。測定値送信部210は、遅延測定部230が測定した制御遅延を、測定値とともにリモート制御装置100に送信してよい。測定値送信部210は、リモート制御装置100に測定値を送信した時間を示す情報を遅延測定部230に供給してよい。
【0037】
制御値受信部220は、遅延測定部230及び選択部240に接続され、リモート制御装置100から、測定値送信部210が送信した測定値に応じた複数の制御値を、ネットワークを介して受信する。制御値受信部220は、測定値送信部210が直前に送信した測定値から算出された複数の制御値を受信してよい。制御値受信部220は、選択部240に複数の制御値を供給する。制御値受信部220は、遅延測定部230に、制御値を受信した時間を示す情報を供給してよい。
【0038】
遅延測定部230は、選択部240に接続され、測定値送信部210が測定値を送信してから、該測定値に対応する複数の制御値を制御値受信部220が受信するまでの期間を測定して、制御遅延を決定してよい。遅延測定部230は、制御値受信部220及び測定値送信部210からの情報に基づいて制御遅延を決定してよい。遅延測定部230は、決定した制御遅延を選択部240に供給する。遅延測定部230は、決定した制御遅延を測定値送信部210に供給してよい。
【0039】
選択部240は、制御部250に接続され、リモート制御装置100との間の通信遅延を含む制御遅延に応じて、複数の制御値の中から設備300の制御に用いる制御値を選択する。選択部240は、遅延測定部230が決定した制御遅延に応じて、複数の制御値の中から設備300の制御に用いる制御値を選択してよい。選択部240は、選択した制御値を示す制御データを制御部250に供給する。
【0040】
制御部250は、設備300に接続され、選択された制御値に従って設備300の制御を行う。制御部250は、バルブの開閉等の設備300の制御を行い、さらに制御後の設備300について新たな測定値を取得してよい。制御部250は、設備300に関する複数の異なるセンサが測定した複数種類の測定値を取得してよい。制御部250は、取得した測定値を測定値送信部210に供給する。
【0041】
図2は、制御システム10における1周期に関する通信の説明図である。
図2において、リモート制御装置100、ローカル制御装置200、及び設備300のそれぞれの点線は、下向きに時間の経過を示し、リモート制御装置100、ローカル制御装置200、及び設備300の間のデータの送受信を、実線の矢印で示し、ローカル制御装置200における設備300に関する測定を、下向きの矢印で示す。
図2において、ローカル制御装置200は測定値をリモート制御装置100に送信し、リモート制御装置100は当該測定値に応じた制御値を算出してローカル制御装置200に送信し、ローカル制御装置200は当該受信した制御値に応じて設備300を制御して、設備300に関する新たな測定値を取得する。
【0042】
制御システム10では、リモート制御装置100とローカル制御装置200の間でデータの送受信のための通信が必要となる。当該通信にはゆらぎがあり、測定値送信から制御値受信までの期間(
図2で示した通信期間)にばらつきが生じるため、通信遅延による制御遅延が不定となる。このため、最適と判断された制御値に応じた制御操作が、設備300に対する制御操作を行うタイミングでは最適では無くなっていることがある。従って、本実施形態の制御システム10では、制御遅延を考慮したモデル135を用いて制御遅延に相当する遅延量に応じた制御値を算出する。
【0043】
図3は、本実施形態のリモート制御装置100の処理フローの一例を示す。なお、この動作は、ローカル制御装置200から測定値を受信することに応じて開始されてよい。
【0044】
ステップS11において測定値受信部110は、ローカル制御装置200から測定値を受信する。測定値受信部110は、測定値を算出部140に供給する。
【0045】
ステップS12において算出部140は、複数の遅延量を取得する。算出部140は、ユーザ入力を介して複数の遅延量を取得してよい。算出部140は、ローカル制御装置200が測定値を送信してから、制御値送信部150から当該測定値に対応する制御値をローカル制御装置200が受信するまでの通信期間の候補値が予め設定された余裕時間を超える分を遅延量として用いてよい。通信期間の候補値は、ユーザ入力を介して、現周期より前の周期の通信期間に基づいて設定されてよい。余裕時間は、ユーザ入力を介して、ローカル制御装置200による測定値送信から次の周期の測定値送信の直前までの制御の1周期の長さ未満に設定されてよい。
【0046】
一例として、複数周期で測定した通信期間の平均値は約50msであり、通信期間は、通信のゆらぎによって最大で平均値+1s生じうる。制御の周期が200msの場合、ローカル制御装置200による測定値取得のための時間を十分に確保するために、余裕時間を100msに設定し、遅延量を、200ms毎に設定することができる。従って、算出部140は、通信期間の候補値100,300,500,700,900,1100msとして、遅延量0,200,400,600,800,1000msを用いてよい。なお、通信期間の平均値が0ms近傍であって通信のゆらぎが時々発生する場合、余裕時間は0msに設定してもよい。
【0047】
また、算出部140は、測定値とともにローカル制御装置200から受信した制御遅延に基づいて、遅延量を取得してもよい。算出部140は、受信した制御遅延に予め設定された値(一例として200ms)を足した値、及び制御遅延と予め設定された値との差分を、遅延量として用いてもよい。予め設定された値は、ユーザ入力を介して設定されてよい。リモート制御装置100は、ユーザ入力を介して余裕時間を用いることを決定してよく、この場合、余裕時間を用いることを示すインディケーションをローカル制御装置200に送信してよい。
【0048】
ステップS13において算出部140は、各遅延量と測定値とをモデル135に入力し、モデル135の出力として制御値を算出する。算出部140は、KDPP(Kernel Dynamic Policy Programming)、TD学習(Temporal Difference Learning)、モンテカルロ法等の既知のアルゴリズムにより強化学習されたモデル135を用いてよい。
【0049】
一例として算出部140が、KDPP等のカーネル法のモデル135を用いる例を示す。算出部140は、測定値及び各遅延量から状態sのベクトルを生成する。従って、算出部140は、複数の遅延量にそれぞれ応じた複数の状態s1~sn(n>1)のベクトルを生成する。次に、算出部140は、状態s1~snの各々と、取り得る全ての制御操作との組み合わせを示す複数の制御操作決定テーブルを生成する。そして、算出部140は、制御操作決定テーブルの各々を、モデル135へ入力する。モデル135は、ウェイトとサンプルデータ(状態及び制御操作)とが対応付けられたウェイトテーブルを有してよい。入力に応じて、制御操作決定テーブルの各行と、モデル135の各サンプルデータとの間でカーネル計算が行われ、各サンプルデータとの間の距離がそれぞれ算出される。そして、各サンプルデータについて算出した距離にそれぞれのウェイトを乗算したものが順次足し合わせられて、各制御操作における報酬値が計算される。モデル135は、このようにして計算された報酬値が最も高くなる制御操作(制御値)を選択する。このようにして、算出部140は、各遅延量に対応する制御値を算出することができる。算出部140は、制御値と各遅延量の対応関係を示すデータ(一例として、テーブル)を制御値送信部150に供給してよい。
【0050】
ステップS14において制御値送信部150は、ローカル制御装置200に各制御値と各遅延量の対応関係を示すデータを送信する。
【0051】
ステップS15においてリモート制御装置100は、ローカル制御装置200による設備300の制御が終了したか否かを判断し、終了していない場合(ステップS15;No)にはステップS11に戻り、終了している場合(ステップS15;Yes)には処理フローを終了する。
【0052】
図4は、モデル135に入力される制御操作決定テーブルの一例を示す。制御操作決定テーブルは、同じ周期に測定された測定値1、測定値2、及び遅延量Δt=200からなる状態と、取り得る6つの制御操作とを示す。制御操作の5は、バルブを5%開ける、3は、バルブを3%開ける、1は、バルブを1%開ける、0は、バルブを現在の状態に維持する、-3は、バルブを3%閉める、-5は、バルブを5%閉めることを示す。遅延量Δtは、通信期間の候補値が余裕時間100msを超える分であり、算出部140は、他の遅延量(一例としてΔt=0,400,600,800,1000ms)についても同様の制御操作決定テーブルを作成する。
【0053】
図5は、モデル135のウェイトテーブルの一例を示す。モデル135は、測定された測定値及び測定された制御遅延の遅延量の集合を示す状態sと各状態下に取られた制御操作との組み合わせであるサンプルデータと、報酬値によって計算されたウェイトとで構成されるウェイトテーブルを有する。なお、このようなウェイトは、学習処理部120において算出される報酬関数により定まる報酬値が大きいほど大きい値になるように決定されてよい。
【0054】
図6は、複数の制御値と複数の遅延量の対応関係を示すテーブルの一例を示す。テーブルは、インデックスと遅延量Δtと制御操作とを示す。遅延量Δtは、通信期間の候補値が余裕時間100msを超える分である。テーブルにおいて、各インデックスに遅延量と制御値が示す制御操作とが対応付けられている。制御値送信部150は、
図6に示すようなテーブルをローカル制御装置200に送信してよい。
【0055】
図7は、本実施形態のローカル制御装置200の処理フローの一例を示す。なお、この動作はローカル制御装置200へのユーザの指示入力に応じて開始されてよい。ユーザの指示入力は、制御対象の設備300を示す識別子(装置名、識別番号等)の入力を含んでよい。
【0056】
ステップS21において制御部250は、測定値を設備300から取得し、測定値送信部210は、リモート制御装置100に測定値を送信する。制御部250は、設備300の1又は複数のセンサ等から直接受信した測定値を取得してよく、設備300に配置されたコンピュータ等から測定値を取得してもよく、ローカル制御装置200が直接測定した設備300に関する測定値を取得してもよい。測定値送信部210は、リモート制御装置100に、測定値の種類等を示す識別子とともに当該測定値を送信してよい。測定値送信部210は、測定値を送信した時間を示すデータ(一例としてタイムスタンプ等)を遅延測定部230に供給する。
【0057】
ステップS22において制御値受信部220は、リモート制御装置100から、送信した測定値に応じた複数の制御値を受信する。制御値受信部220は、制御値を受信した時間を示すデータ(一例としてタイムスタンプ等)を遅延測定部230に供給する。
【0058】
ステップS23において遅延測定部230は、現周期の制御遅延を決定する。遅延測定部230は、現周期における、測定値送信部210からの測定値を送信した時間を示すデータと、制御値受信部220からの制御値を受信した時間を示すデータとを用いて、測定値の送信時間から制御値の受信時間までの期間を測定してよい。また、遅延測定部230は、制御部250が測定値を取得した時間から、選択部240が制御値受信部220から制御値を受け取った時間までの期間を測定してもよい。
【0059】
リモート制御装置100においてステップS12で余裕時間を超える分を遅延量として用いている場合、遅延測定部230は、測定した期間が予め設定された余裕時間を超える分を制御遅延と決定してよい。余裕時間は、ユーザ入力を介して設定されてよく、リモート制御装置100においてステップS12で用いられる余裕時間と同一であってよい。ローカル制御装置200は、ユーザ入力を介して又はリモート制御装置100から余裕時間を示すインディケーションを受信することにより、余裕時間を用いることを決定してよい。また、遅延測定部230は、余裕時間を用いない場合、測定した期間を制御遅延として決定してもよい。遅延測定部230は、制御遅延を選択部240に供給する。
【0060】
ステップS24において選択部240は、決定された制御遅延に応じて、受信した複数の制御値の中から1つの制御値を選択する。選択部240は、決定された制御遅延とテーブルにおける複数の遅延量とを比較し、複数の遅延量のうち制御遅延に最も近い遅延量に対応する制御値を選択してよい。また、選択部240は、制御遅延が2つの遅延量の間の値である場合、遅延量との差分に応じて重み付けした制御値の操作量を加算して制御操作を決定してよい。一例として、制御遅延が20msである場合、選択部240は、
図6のテーブルから遅延量0の制御値の操作量5%、遅延量200msの制御値の操作量3%を選択し、(5%×180/200)+(3%×20/200)=4.8%であるため、バルブを4.8%開ける制御操作を決定してよい。選択部240は、決定した制御操作を制御部250に供給する。
【0061】
ステップS25において制御部250は、設備300に対して、選択した制御操作を行う。制御部250は、制御操作を示す制御データを設備300の制御対象に出力してよい。また、制御部250は、選択した制御値に応じた制御操作を制御対象に対して直接行ってもよい。制御部250は、予め設定された余裕時間を用いる場合、測定値送信部210が測定値を送信してから少なくとも予め設定された余裕時間が過ぎてから、設備300の制御を行う。制御部250は、選択部240から制御データを既に受け取っていたとしても、ステップS21の測定値の送信後余裕時間が経過するまで制御を行わない。制御部250は、余裕時間経過後に選択部240から制御データを供給された場合には、すぐに制御操作を行ってよい。
【0062】
ステップS26においてローカル制御装置200は、設備300の制御が終了したか否かを判断し、終了していない場合(ステップS26;No)にはステップS21に戻り、終了している場合(ステップS26;Yes)には処理フローを終了する。
【0063】
以上のような
図3に示すリモート制御装置100の処理フローと
図7に示すローカル制御装置200の処理フローは並行に実行されてよく、例えば、ステップS21、ステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS14、ステップS15、ステップS22、ステップS23、ステップS24、ステップS25、ステップS26の順で実行されてよい。
【0064】
図8は、本実施形態に係る制御システム10においてリモート制御装置100が学習するフローの一例を示す。リモート制御装置100の学習処理部120は、KDPP、TD学習、モンテカルロ法等の既知のアルゴリズムによりモデル135の強化学習を実行してよい。以下、KDPP等のカーネル法による強化学習の例を示す。
【0065】
ステップS31において、学習処理部120は、目標値を取得する。目標値は、測定値のいずれかと同じ種類のパラメータ(一例としてタンクの水位等)であってよく、また、制御値が示す制御操作量と同じ種類のパラメータ(一例としてバルブの開度等)であってもよい。学習処理部120は、ユーザ入力を介して、目標値を取得してよい。また、学習処理部120は、以前の学習処理に用いていた目標値と同じ目標値を取得してもよい。
【0066】
ステップS32において、学習処理部120は、目標値を用いて報酬関数を決定する。学習処理部120は、モデル135から算出された制御値に従って制御された設備300に関する状態が、目標値に応じた状態に近づく場合に報酬値が高くなるように報酬関数を決定してよい。また、学習処理部120は、モデル135により制御された設備300に関する測定値が、目標値の内容を満たす場合に報酬値が高くなるように報酬関数を決定してもよい。
【0067】
ステップS33において、制御部250は、ステップS21、S23と同様に、設備300に関する測定値及び制御遅延の遅延量Δtを取得し、リモート制御装置100に送信する。例えば、制御部250は、設備300から、測定値及び制御遅延の遅延量Δtを取得してよい。制御部250は、最初の測定値の取得の際には、例えば制御遅延の遅延量Δtを0としてもよい。また、リモート制御装置100は、シミュレータから測定値及び制御遅延の遅延量Δtを取得してもよい。
【0068】
ステップS34において、算出部140は、ステップS13と同様に、モデル135を用いて制御値を決定する。学習時において算出部140は、ランダムに制御値を決定してもよい。算出部140は、制御値を制御値送信部150に供給し、制御値送信部150は、制御値をローカル制御装置200へ送信する。
【0069】
ステップS35において、ローカル制御装置200は、供給された制御値に応じて設備300を制御する。ローカル制御装置200は、ステップS23及びステップS24と同様に、測定した制御遅延に応じた制御値を選択してよい。ローカル制御装置200は、ランダムに設定した遅延量で制御遅延を生じさせて、当該制御遅延に応じた制御値を選択してよい。また、ローカル制御装置200は、供給された制御値に応じてシミュレータにシミュレーションを行わせてもよい。ローカル制御装置200は、制御値を用いて設備300を制御したことに応じて得られた新たな測定値と、測定した制御遅延の遅延量Δt又は用いた制御値をモデル135によって算出した際に用いられた遅延量Δtとを、リモート制御装置100に送信する。
【0070】
ステップS36において、測定値受信部110は、算出した制御値を用いて設備300を制御したことに応じて得られた新たな測定値と、当該用いた制御値に対応する制御遅延の遅延量Δtとを、ローカル制御装置200から受信する。これにより、決定された制御値により設備300が制御操作されたことに応じて変化した後の状態の測定値が取得される。測定値受信部110は、受信した測定値及び遅延量Δtを学習処理部120に供給する。
【0071】
ステップS37において、学習処理部120は、取得された測定値及び制御遅延の遅延量に基づいて報酬値を算出する。学習処理部120は、ステップS32で決定した報酬関数を用いて報酬値を算出してよい。
【0072】
ステップS38において、学習処理部120は、制御に応じた測定値及び制御遅延の遅延量の取得処理が、指定されたステップ回数を超えたかどうか判定する。なお、このようなステップ回数は、予めユーザにより指定されたものであってもよいし、学習対象期間(例えば10日間等)を基に定められたものであってもよい。上述の取得処理が指定されたステップ回数を超えていないと判定された場合(ステップS38;No)、学習処理部120は、処理をステップS34に戻してフローを継続する。これにより、制御に応じた測定値及び制御遅延の遅延量の取得処理が指定されたステップ回数だけ実行される。
【0073】
ステップS38において、上述の処理が指定されたステップ回数を超えたと判定された場合(ステップS38;Yes)、学習処理部120は、処理をステップS39へ進める。
【0074】
ステップS39において、学習処理部120は、報酬値から各サンプルデータに対するウェイトを算出して、モデル135を更新する。例えば、学習処理部120は、
図5に示されるモデル135のウェイトテーブルにおけるウェイト列の値を上書きするほか、これまでに保存されていない新たなサンプルデータをモデル135に追加する。
【0075】
ステップS40において、学習処理部120は、モデル135の更新処理が、指定された繰り返し回数を超えたかどうか判定する。なお、このような繰り返し回数は、予めユーザにより指定されたものであってもよいし、モデル135の妥当性に応じて定められたものであってもよい。上述の処理が指定された繰り返し回数を超えていないと判定された場合(ステップS40;No)、学習処理部120は、処理をステップS33へ戻してフローを継続する。
【0076】
ステップS40において、上述の処理が指定された繰り返し回数を超えたと判定された場合(ステップS40;Yes)、学習処理部120は、フローを終了する。学習処理部120は、例えばこのようにして、設備300に関する測定値及び制御遅延に応じた制御値を出力するモデル135を生成することができる。
【0077】
本実施形態により、通信のゆらぎによる制御への影響を考慮したモデル135を用いて得られた制御値を算出でき、当該制御値に応じて設備300の最適な制御操作を実行することができる。
【0078】
なお、モデル記憶部130は、リモート制御装置100の外部において生成されたモデル135を記憶してもよい。この場合、リモート制御装置100は、学習処理部120を有していなくてもよい。また、学習処理のみを行う学習処理装置は、本実施形態の測定値受信部110と学習処理部120とを少なくとも備えるものであってよい。
【0079】
なお、算出部140は、遅延量Δtが0の場合と遅延量Δt>0の場合とで、モデル135を用いてそれぞれ制御値を算出し、2つの制御値を、遅延量Δtが0の場合と遅延量Δt>0の場合とでビット0と1にそれぞれ対応付けたテーブルを作成して、制御値送信部150は、当該テーブルをローカル制御装置200に送信してもよい。
【0080】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャート及びブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階又は(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階及びセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、及び他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0081】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャート又はブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0082】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0083】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置200のプロセッサ又はプログラマブル回路に対し、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャート又はブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0084】
図9は、本発明の複数の態様が全体的又は部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作又は当該装置の1又は複数のセクションとして機能させることができ、又は当該操作又は当該1又は複数のセクションを実行させることができ、及び/又はコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0085】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、及びディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、及びICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230及びキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0086】
CPU2212は、ROM2230及びRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等又はそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0087】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラム又はデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラム又はデータを提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0088】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0089】
プログラムが、DVD-ROM2201又はICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、又はROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0090】
例えば、通信がコンピュータ2200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0091】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0092】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0093】
上で説明したプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上又はコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0094】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0095】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0096】
10 制御システム
100 リモート制御装置
110 測定値受信部
120 学習処理部
130 モデル記憶部
135 モデル
140 算出部
150 制御値送信部
200 ローカル制御装置
210 測定値送信部
220 制御値受信部
230 遅延測定部
240 選択部
250 制御部
300 設備
2200 コンピュータ
2201 DVD-ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インタフェース
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD-ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード