(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174331
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B05B 13/04 20060101AFI20231130BHJP
B05B 12/24 20180101ALI20231130BHJP
B05D 1/32 20060101ALI20231130BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20231130BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B05B13/04
B05B12/24
B05D1/32 E
B05D1/02 Z
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087125
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】萩森 普
(72)【発明者】
【氏名】上田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
(72)【発明者】
【氏名】塚本 紫門
(72)【発明者】
【氏名】千田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 忠
(72)【発明者】
【氏名】両角 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 潔
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073DB03
4D073DB08
4D073DB13
4D075AA01
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4D075DB31
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4D075EA05
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4F035AA03
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4F035CA01
4F035CA05
4F035CB03
4F035CD05
4F035CD18
4F035CD19
(57)【要約】
【課題】テーブル上に載置される被印刷物やマスキング部材の位置決めの手間をなくすことが可能な印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】被印刷物5を載置するテーブル14と、前記テーブルに載置された前記被印刷物に向かって液剤を噴霧可能なスプレー手段31と、前記被印刷物と前記スプレー手段とを相対的に移動させる移動機構50,60と、所望の形状に切り抜かれた画像形成部82と該画像形成部を囲むように3つ以上形成されたマーク84とを有し、前記被印刷物上に載置されるマスキング部材80と、前記被印刷物上に載置された前記マスキング部材の前記各マークを検出するマーク検出部40と、前記マーク検出部によって検出された前記各マークで囲まれた範囲内で前記スプレー手段により液剤が噴霧されるように、前記移動機構を制御する制御部70と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物を載置するテーブルと、
前記テーブルに載置された前記被印刷物に向かって液剤を噴霧可能なスプレー手段と、
前記被印刷物と前記スプレー手段とを相対的に移動させる移動機構と、
所望の形状に切り抜かれた画像形成部と該画像形成部を囲むように3つ以上形成されたマークとを有し、前記被印刷物上に載置されるマスキング部材と、
前記被印刷物上に載置された前記マスキング部材の前記各マークを検出するマーク検出部と、
前記マーク検出部によって検出された前記各マークで囲まれた範囲内で前記スプレー手段により液剤が噴霧されるように、前記移動機構を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記各マークは、前記画像形成部を囲むように隣り合う次のマークの方向を示す方向指示部を有する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記各マークの方向指示部は、一方向を示す線で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記被印刷物と前記マーク検出部とを相対的に移動させる検出部移動機構を備え、
前記制御部は、前記マーク検出部により1つのマークが検出された後、前記検出部移動機構により、前記マーク検出部を前記方向指示部が示す方向に移動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記マスキング部材にて、前記各マークを頂点とする多角形は、少なくとも1つの凹角を有する凹多角形であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
被印刷物上にマスキング部材を載置した状態で、印刷装置のスプレー手段により前記被印刷物に向かって液剤を噴霧する印刷方法において、
前記マスキング部材に、所望の形状に切り抜かれた画像形成部と該画像形成部を囲むように3つ以上形成されたマークとを形成するマスキング部材形成工程と、
テーブルに載置された被印刷物上に前記マスキング部材を載置する載置工程と、
前記印刷装置のマーク検出部により、前記マスキング部材の前記各マークを検出するマーク検出工程と、
前記印刷装置の制御部により、前記各マークで囲まれた領域を算出する領域算出工程と、
前記算出された領域内に前記スプレー手段により液剤を噴霧するスプレー工程と、
を含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
前記各マークは、前記画像形成部を囲むように隣り合う次のマークの方向を示す方向指示部を有することを特徴とする請求項6に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記各マークの方向指示部は、一方向を示す線で構成されていることを特徴とする請求項7に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記印刷装置は、前記被印刷物と前記マーク検出部とを相対的に移動させる検出部移動機構を備え、
前記マーク検出工程において、前記マーク検出部により1つのマークが検出された後、前記検出部移動機構により、前記マーク検出部を前記方向指示部が示す方向に移動させることを特徴とする請求項7又は8に記載の印刷方法。
【請求項10】
前記マスキング部材にて、前記各マークを頂点とする多角形は、少なくとも1つの凹角を有する凹多角形であることを特徴とする請求項6に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被印刷物に対してインクジェットヘッドからインクを吐出するインクジェットプリンタが知られている。インクジェットヘッドでは、インクを精度良く吐出させるためにノズル孔が小さく設定されており、これに対応させるためにインクの成分の配合が限定されている。そのため、例えば、粒径の大きい顔料成分を含む液剤は、インクジェットヘッドのノズル孔から吐出することができない。
【0003】
インクジェットヘッドに適用させることができない液剤を用いて印刷を行う方法として、インクジェットヘッドに比べてノズル孔の大きいスプレー手段を用いる方法が知られている。例えば、特許文献1では、テーブルに載置された被印刷物の上に、液剤が付着される領域を切り抜いた開口部を有する板状のマスキング部材を載置し、このマスキング部材の上からスプレー手段によって液剤を噴霧する装置が記載されている。この装置では、予め作成された移動制御データに従って、テーブルとスプレー手段とを相対的に移動させることにより、テーブル上に載置された被印刷物への液剤の噴霧作業を自動化している。
【0004】
スプレー手段による液剤の噴霧では、印刷される画像のエッジ部分がぼやけてしまうという問題があるが、開口部を有するマスキング部材を用いて、印刷領域にのみ液剤が付着されるようにすることで、エッジ部分のぼやけを解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスキング部材を使用して液剤を噴霧する装置では、マスキング部材が載置された範囲内にのみ液剤が噴霧されるように、テーブル上の被印刷物の配置位置、及び、被印刷物上に載置されるマスキング部材の配置位置を設定することが重要になる。上述した装置では、テーブルに対して、被印刷物とマスキング部材とが予め規定された配置位置に載置されるように、テーブルに設けられた位置決めピンを用いて被印刷物とマスキング部材をそれぞれ位置決めしている。
【0007】
しかしながら、被印刷物の形状が変わる等、テーブルに対して液剤を噴霧する領域を変更する場合、その度に、スプレー手段やテーブルの移動制御データを作成し直したり、テーブル上の位置決めピンの配置を変更したりする必要が生じてしまうことから、作業の手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、テーブル上に載置される被印刷物やマスキング部材の位置決めの手間をなくすことが可能な印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る印刷装置は、被印刷物を載置するテーブルと、前記テーブルに載置された前記被印刷物に向かって液剤を噴霧可能なスプレー手段と、前記被印刷物と前記スプレー手段とを相対的に移動させる移動機構と、所望の形状に切り抜かれた画像形成部と該画像形成部を囲むように3つ以上形成されたマークとを有し、前記被印刷物上に載置されるマスキング部材と、前記被印刷物上に載置された前記マスキング部材の前記各マークを検出するマーク検出部と、前記マーク検出部によって検出された前記各マークで囲まれた範囲内で前記スプレー手段により液剤が噴霧されるように、前記移動機構を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る印刷方法は、被印刷物上にマスキング部材を載置した状態で、印刷装置のスプレー手段により前記被印刷物に向かって液剤を噴霧する印刷方法において、前記マスキング部材に、所望の形状に切り抜かれた画像形成部と該画像形成部を囲むように3つ以上形成されたマークとを形成するマスキング部材形成工程と、テーブルに載置された被印刷物上に前記マスキング部材を載置する載置工程と、前記印刷装置のマーク検出部により、前記マスキング部材の前記各マークを検出するマーク検出工程と、前記印刷装置の制御部により、前記各マークで囲まれた領域を算出する領域算出工程と、前記算出された領域内に前記スプレー手段により液剤を噴霧するスプレー工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
上記印刷装置及び上記印刷方法によれば、テーブルに被印刷物を載置し、この被印刷物上の所望の位置にマスキング部材を載置すると、マーク検出部によって、マスキング部材に形成された各マークが検出される。各マークは、マスキング部材の画像形成部(すなわち、マスキング部材が切り抜かれた部分)を囲むように形成されており、この各マークで囲まれた範囲内でスプレー手段が液剤を噴霧するように移動機構を制御することで、マスキング部材でマスクされた範囲内で液剤が噴霧されるようにすることができる。このように、マークを用いて液剤の噴霧範囲を検出可能にしたことで、作業者がテーブル上に載置される被印刷物及びマスキング部材の位置決めを行う作業を省くことができ、作業者の手間をなくして作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、テーブル上に載置される被印刷物やマスキング部材の位置決めの手間をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である印刷装置の斜視図である。
【
図3】ヘッドキャリッジ及びスプレーキャリッジの正面図である。
【
図5】マスキング部材の他の実施例を示す平面図である。
【
図6】印刷方法の手順を示すフローチャートである。
【
図9】スプレーユニットにより印刷された被印刷物を示す図である。
【
図10】載置工程の別の実施例を示す説明図である。
【
図11】マスキング部材の他の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る印刷装置10の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である印刷装置10の斜視図である。印刷装置10は、マスキング部材80が載置された被印刷物5に向かって液剤を噴霧するスプレー手段を備えたスプレーユニット30を備えた装置である。スプレーユニット30には、スプレー手段としてスプレーガン31が搭載されている。本実施形態の印刷装置10は、スプレーユニット30とともに、被印刷物5に対してインクジェット印刷を行うインクジェットヘッド20を備えている。
【0015】
インクジェットヘッド20によるインクジェット印刷では、インクを微小な液滴状に精密に制御して被印刷物5に吐出する。インクジェットヘッド20において、インクが吐出されるノズル孔の内径は、例えば、25~30μm程度である。インクジェットヘッド20から吐出されるインクに含まれる顔料等は、ノズル孔に対応させるために、小さい粒径、例えば平均粒径が200nm以下に限定される。
【0016】
スプレーユニット30は、インクジェットヘッド20で対応不可なインク等の液剤、例えば平均粒径が200nmを超える顔料を含む液剤を用いて、被印刷物5に印刷を施すことが可能である。スプレーユニット30による液剤の噴霧では、印刷される画像の輪郭部分がぼやけるため、所望の形状に切り抜かれた画像形成部82を有するマスキング部材80を用いて、印刷領域にのみ液剤が付着されるようにする。なお、スプレーユニット30により噴霧される液剤は、着色されたインクに限られず、例えば、印刷の前処理を行うプライマインク等の処理液、被印刷物5に形成された印刷画像の上にトップコート層を形成するトップコート液などの液剤であってもよい。
【0017】
図1において、符号U及びDは上方及び下方、符号Fr及びRrは前方及び後方、符号L及びRは左方及び右方を示している。ここで、前方Fr及び後方Rrとは、印刷装置10の正面にいる作業者から見て作業者に向かう方向及び作業者から遠ざかる方向をそれぞれ意味し、左方L及び右方Rとは、印刷装置10の正面にいる作業者から見た左方向及び右方向をそれぞれ意味する。また、本実施形態では、印刷装置10のスプレーユニット30の移動方向を主走査方向Yといい、主走査方向Yと平面視で直交する方向を副走査方向Xという。本実施形態において、主走査方向Yは左右方向と一致し、副走査方向Xは前後方向と一致している。
【0018】
図1に示すように、印刷装置10は、装置本体12と、被印刷物5が載置されるテーブル14と、インクジェットヘッド20と、光照射装置21と、インクジェットヘッド20及び光照射装置21を保持するヘッドキャリッジ22と、スプレーユニット30と、マーク検出装置40と、スプレーユニット30及びマーク検出装置40を保持するスプレーキャリッジ48と、を備えている。印刷装置10は、さらに、ヘッドキャリッジ22及びスプレーキャリッジ48を主走査方向Yに移動させる主走査方向移動機構50と、ヘッドキャリッジ22及びスプレーキャリッジ48を副走査方向Xに移動させる副走査方向移動機構60と、制御部である制御装置70と、を備えている。
【0019】
印刷対象である被印刷物5は、例えば、記録紙、樹脂シート、衣類等とすることができる。被印刷物5の素材や形状は特に限定されるものではなく、例えば、紙、樹脂、布帛、金属、木、ガラス等の素材、また、平面形状や立体形状の物とすることができる。印刷装置10は、テーブル14に被印刷物5を複数載置した状態で各被印刷物5に印刷を施すことが可能である。
【0020】
装置本体12は、箱状に形成され、印刷装置10のテーブル14、インクジェットヘッド20、光照射装置21、ヘッドキャリッジ22、スプレーユニット30、スプレーキャリッジ48、主走査方向移動機構50、副走査方向移動機構60、及び、制御装置70を直接的又は間接的に支持している。
【0021】
テーブル14は、被印刷物5を下方から支持するものであり、装置本体12の上方に露出している。テーブル14は、平板状に形成されており、テーブル14の上面は、被印刷物5が載置される平面状の載置面14aを形成している。載置面14aは、水平面に沿って広がり、主走査方向Yと副走査方向Xは、載置面14aに略平行な方向となっている。
【0022】
主走査方向移動機構50は、ガイドレール51と、ベルト52と、キャリッジモータ53(
図2参照)と、を備えている。ガイドレール51は、テーブル14よりも上方に設置されており、主走査方向Yに延びている。ガイドレール51には、ヘッドキャリッジ22及びスプレーキャリッジ48が、主走査方向Yに移動可能に係合している。
図3は、ヘッドキャリッジ22及びスプレーキャリッジ48の正面図である。本実施形態において、スプレーキャリッジ48は、ヘッドキャリッジ22よりも左方に配置されている。スプレーキャリッジ48とヘッドキャリッジ22とは、連結機構56により、連結又は分離可能に構成されている。
【0023】
図3に示すように、連結機構56は、ヘッドキャリッジ22の左側部に設けられた第1の連結部材58と、スプレーキャリッジ48の右側部に設けられた第2の連結部材57と、を備えている。本実施形態において、連結機構56は、磁力を利用してヘッドキャリッジ22とスプレーキャリッジ48とを連結するものであり、第1の連結部材58及び第2の連結部材57のうち、一方は磁石を備えており、他方は磁石に吸着する磁性体を備えている。第1の連結部材58と第2の連結部材57とは、接触することで連結される。なお、連結機構56は磁力を利用するものに限られず、連結・分離可能な係合部材等、他の構成を備えたものであってもよい。主走査方向移動機構50は、ヘッドキャリッジ22とスプレーキャリッジ48とが分離された状態では、スプレーキャリッジ48のみを単独で主走査方向Yへ移動させることができる。
【0024】
図1に示すように、スプレーキャリッジ48の背面には、主走査方向移動機構50のベルト52が固定されている。ベルト52は、主走査方向Yへ延びており、印刷装置10に内蔵された
図2に示すキャリッジモータ53に接続されている。主走査方向移動機構50は、キャリッジモータ53が回転駆動すると、ベルト52が主走査方向Yへ走行し、これにより、スプレーキャリッジ48は、ガイドレール51に沿って主走査方向Yへ移動する。
【0025】
図1に示すように、ガイドレール51は、門型のガントリー90に支持されている。ガントリー90は、主走査方向Yに延びる中央部分91と、中央部分91の右端部に設けられた右側部分92と、中央部分92の左端部に設けられた左側部分93と、を備えている。中央部分91は、テーブル14の上方に渡されており、ガイドレール51は、中央部分91の前面に固定されている。右側部分92は、ヘッドキャリッジ22を収容可能な箱状に形成されている。左側部分93は、ヘッドキャリッジ22及びスプレーキャリッジ48を収容可能な箱状に形成されている。ガントリー90は、装置本体12の上面に設けられた図示していないレールに係合している。このレールは、副走査方向Xに延びている。
【0026】
副走査方向移動機構60は、レールに沿ってガントリー90を副走査方向Xへ移動させる。これにより、ガイドレール51が副走査方向Xへ移動し、ガイドレール51に係合したヘッドキャリッジ22及びスプレーキャリッジ48が副走査方向Xに移動する。副走査方向移動機構60は、ガントリー90を移動させるガントリーモータ61(
図2参照)を備えている。
【0027】
ド
次に、ヘッドキャリッジ22に搭載されたインクジェットヘッド20及び光照射装置21について説明する。既述のとおり、インクジェットヘッド20は、テーブル14上に載置された被印刷物5に対してインクを吐出するインクジェット方式のヘッドである。ここで、インクジェット方式とは、二値偏向方式又は連続偏向方式などの各種の連続方式、及び、サーマル方式又は圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。インクジェットヘッド20には、図示していない複数のインクカートリッジがそれぞれインク流路を介して接続されている。各インクカートリッジには、インクが収容されており、各インク流路には、インクをインクジェットヘッド20へ供給するインクポンプ24(
図2参照)が設けられている。
【0028】
ヘッドキャリッジ22の右側面及び左側面には、光照射装置21が設けられている。光照射装置21は、インクジェットヘッド20から吐出された被印刷物5に着弾したインクを硬化させる光を照射する。スプレーユニット30から噴霧される液剤が光硬化性を有する場合、被印刷物5に噴霧された液剤は、光照射装置21から照射された光によって硬化させることができる。
【0029】
次に、スプレーキャリッジ48に搭載されたスプレーユニット30について説明する。スプレーユニット30は、テーブル14に支持された被印刷物5に向かって微粒化した液剤を噴霧する。
図3に示すように、スプレーユニット30は、スプレーガン31と、液剤タンク32と、ミストキャッチャ33と、を備えている。
【0030】
スプレーガン31は、液剤を噴霧するスプレーノズル31aと、スプレーバルブ31bと、液剤供給口31cと、霧化用エア供給口31dと、を備えている。液剤タンク32は、被印刷物5に噴霧される液剤を貯留するタンクであり、スプレーガン31の液剤供給口31cに接続されている。スプレーバルブ31bは、液剤供給口31cとスプレーノズル31aとの間の流路を開閉するバルブである。霧化用エア供給口31dは、図示していないエア供給路を介して
図1に示すエアコンプレッサ36に接続されている。エア供給流路には、流路を開閉可能なエア供給バルブ38(
図2参照)が設けられている。エアコンプレッサ36は、圧縮空気を発生させる圧縮装置であり、本実施形態では、装置本体12の収容空間12aに収容されている。スプレーバルブ31b及びエア供給バルブ38は、制御装置70によって開閉制御される。スプレーバルブ31bが開放されると、液剤タンク32からスプレーノズル31aに液剤が供給される。供給された液剤は、霧化用エア供給口31dに供給された圧縮空気によって微粒化されて、スプレーノズル31aから噴霧される。なお、液剤タンク32は、スプレーキャリッジ48以外の場所に設けられる構成であってもよい。
【0031】
ミストキャッチャ33は、スプレーキャリッジ48において、スプレーノズル31aの周囲を囲むように取り付けられている。ミストキャッチャ33内のミストは、ミスト回収口33aに吸い込まれて、ミスト回収口33aに接続された図示していないチューブを介して回収される。
【0032】
マーク検出装置40は、
図4に示すマスキング部材80のマーク84-1~84-4を検出するマーク検出部を構成している。マーク検出装置40は、スプレーキャリッジ48に設けられ、スプレーユニット30とともに主走査方向Y及び副走査方向Xに移動する。本実施形態において、マーク検出装置40は、スプレーユニット30の側方に設けられており、
図3に示すように、箱状に形成されたミストキャッチャ33の側面にマーク検出装置40が設置されている。
図3において、マーク検出装置40は、ミストキャッチャ33の前方側面に設置されているが、ミストキャッチャ33の後方側面や左方側面、右方側面に設置されていてもよい。また、マーク検出装置40は、ミストキャッチャ33以外のスプレーキャリッジ48の部材に設置されていてもよい。マーク検出装置40は、マーク84を検出するセンサ42を有している。本実施形態において、センサ42は、反射した光を受光してマーク84を検知する受光センサであり、発光器及び受光器を備えている。センサ42は、発光器からマスキング部材80に向かって光を照射し、マスキング部材80で反射された光を受光器によって受光する。なお、センサ46は、これに限られず、マスキング部材80のマーク84を検出可能な構成であればよい。
【0033】
マーク検出装置40は、スプレーユニット30とともに移動する。具体的には、上述したように、検出部移動機構である主走査方向移動機構50及び副走査方向移動機構60によってテーブル14に対して主走査方向Y及び副走査方向Xに移動可能に構成されている。なお、マーク検出装置40の設置構造はこれに限られない。例えば、マーク検出装置40は、テーブル14よりも上方に配置されて、印刷装置10に固定設置され、マーク検出装置40に設けられた広角カメラ等によりテーブル14上に載置されたマーキング部材80の各マーク84を検出する構成であってもよい。また、マーク検出装置40が印刷装置10とは別の装置であってもよい。
【0034】
制御装置70は、
図1に示すように、ガントリー90の右側部分92内に収容されている。制御装置70は、例えばCPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部、入出力インターフェイス等を有して構成されている。
図2に示すように、制御装置70は、インクジェットヘッド20、光照射装置21、スプレーユニット30、マーク検出装置40、インクポンプ24、エア供給バルブ38、キャリッジモータ53及びガントリーモータ61とそれぞれ電気的に接続されており、これらを制御可能に構成されている。また、制御装置70は、マーク検出装置40により検出された各マーク84の位置に基づいて、各マーク84で囲まれた範囲を算出する算出部72を有する。検出されたマーク84の位置は、制御装置70の記憶部71に記憶することができる。
【0035】
次にマスキング部材80について説明する。マスキング部材80は、スプレーユニット30によって印刷等を行う際に、被印刷物5に載置される部材である。
図4に示すように、マスキング本体81と、マスキング本体81に形成され、所望の形状に切り抜かれた画像形成部82と、画像形成部82を囲むように形成された複数のマーク84とを有する。
図4に示すマスキング部材80では、一例として、「CUT」の文字が切り抜かれた画像形成部82を有している。ここで、マスキング部材80の材質は特に限定されない。
【0036】
図4に示す例では、マスキング本体81に4つのマーク84-1,84-2,84-3,84-4が形成されているが、マーク84の数は、画像形成部82を囲むことが可能となるように3つ以上形成されていればよい。また、マーク84の形状は、
図4に示す円形に限られず、適宜設定することができる。各マーク84-1~84-4は、画像形成部82を囲むように隣り合う次のマークの方向を示す方向指示部85を有している。本実施形態において、方向指示部85は、一方向を示す線で構成されており、マーク84-1の方向指示部85は、次のマーク84-2の方向を示し、マーク84-2の方向指示部85は、次のマーク84-3の方向を示している。
【0037】
なお、方向指示部85は、
図5に示すように、隣り合う次のマークの方向を示す、二方向に延びた線であってもよい。
図5では、1つのマーク84-1の方向指示部85が、隣り合う次のマークである、マーク84-2及びマーク84-4の方向を示している。
【0038】
次に、
図6に示すフローチャートを用いて、上述した印刷装置10において、スプレーユニット30、マーク検出装置40及びマスキング部材80を用いて、被印刷物5に印刷を施す手順について説明する。上述したように、スプレーユニット30及びマーク検出装置40は、主走査方向移動機構50及び副走査方向移動機構60からなる移動機構によって、テーブル14に対して相対的に移動可能に構成されており、スプレーユニット30及びマーク検出装置40は、インクジェットヘッド20と分離させた状態で移動させることができる。以下では、
図4、
図7、
図8及び
図9を用いて、被印刷物5である灰色の衣服に白色の「CUT」の文字をスプレー印刷する手順を説明する。
【0039】
まず、ステップS11では、
図4に示すように、マスキング部材80に、所望の形状に切り抜かれた画像形成部82と、画像形成部82を囲むように形成された複数のマーク84とを形成する(マスキング部材形成工程)。画像形成部82は、「CUT」の文字が切り抜かれた形状となっている。ステップS11において、画像形成部82が形成されたマスキング部材80は、カット刃を移動させて所望の形状に加工するカッティング機によって形成されてもよいし、型を用いた成形によって形成されてもよいし、3次元造形装置等を用いた積層造形によって形成されてもよい。次のステップS12では、
図7に示すように、印刷装置10のテーブル14上に被印刷物5を載置し、この被印刷物5上にマスキング部材80を載置する(載置工程)。
【0040】
次のステップS13では、印刷装置10の制御装置70により主走査方向移動機構50及び副走査方向移動機構60を作動させてマーク検出装置40をテーブル14に対して移動させ、マーク検出装置40により、マスキング部材80の各マーク84を検出する(マーク検出工程)。制御装置70は、マーク検出装置40によってマスキング部材80の1つのマーク84が検出されると、検出されたマーク84の位置を記憶部71に記憶する。その後、マーク84に設けられた方向指示部85が指し示す方向に、マーク検出装置40をテーブル14に対して移動させる。例えば、
図7に示すマスキング部材80の1つのマーク84-1が検出されると、制御装置70は、このマーク84-1の方向指示部85が指し示す方向(すなわちマーク84-2の方向)に、マーク検出装置40をテーブル14に対して移動させる。このように、方向指示部85によって次のマーク84-2の方向が示されることで、制御装置70は、マーク検出装置40を次のマーク84-2の方向へ容易にテーブル14に対して移動させることができる。制御装置70は、マーク84を順に検出し、最初に検出したマーク84と同じマーク84を検出したとき、全てのマーク84を検出したと判断する。ただし、検出するべきマーク84の数を事前に制御装置70に記憶させ、マーク検出装置40が実際に検出したマーク84の数が検出するべきマーク84の数に一致したら、全てのマーク84を検出したと判断してもよい。
【0041】
マーク検出装置40によって、マスキング部材80上の全てのマーク84-1~84-4の位置が検出されると、次のステップ14において、制御装置70は、算出部72により、各マーク84-1~84-4で囲まれた領域を算出する(領域算出工程)。算出部72は、記憶部71に記憶された各マーク84-1~84-4のテーブル14上の位置に基づいて、領域を算出することができる。本実施形態では、マーク84-1~84-4を頂点として、マーク84間を直線で結んだ多角形領域を算出する。算出部72により、各マーク84で囲まれた範囲(以下、「液剤噴霧範囲」とも称する)が算出されると、次のステップS15では、算出された液剤噴霧範囲に基づいて、
図8に示すように、制御装置70が、スプレーユニット30を移動させ、この液剤噴霧範囲内でスプレーガン31を作動させて液剤39を被印刷物5に向かって噴霧する(スプレー工程)。スプレー工程の後、マスキング部材80を取り外す。これにより、
図9に示すように、被印刷物5に白色の「CUT」の文字を印刷することができる。
【0042】
上述したように、本実施形態の印刷装置10及び印刷方法では、テーブル14に被印刷物5を載置し、この被印刷物5上の所望の位置にマスキング部材80を載置した状態で、マーク検出装置40によって、マスキング部材80に形成された各マーク84-1~84-4が検出される。スプレーユニット30は、この各マーク84-1~84-4で囲まれた範囲内でスプレーガン31が液剤を噴霧するように、制御装置70によりテーブル14に対して主走査方向Y及び副走査方向Xへ移動し、液剤の噴霧のタイミングが制御されるため、マスキング部材80でマスクされた範囲内で液剤が噴霧されるように自動制御することができる。このように、本実施形態の印刷装置10では、液剤の噴霧範囲を自動検出可能にしたことで、作業者がテーブル14上に載置される被印刷物5及びマスキング部材80の位置決めを行う作業を省くことができる。これにより、作業者の手間をなくして作業効率を向上させることができる。
【0043】
このように、本実施形態の印刷装置10では、位置決め作業が不要であるため、例えば、
図10に示すように、テーブル14に対して被印刷物5が傾いて載置されていても、被印刷物5に対して画像を形成したい位置にマスキング部材80を載置することで、
図9に示すように、適切な位置に画像を印刷することができる。
【0044】
また、本実施形態において、マスキング部材80に形成された各マーク84-1~84-4は、画像形成部82を囲む次のマーク84を示す方向指示部85を有しているので、マーク検出装置40が、この方向指示部85が示す方向に従って、次のマーク84を容易に検出することができる。これにより、印刷装置10は、マーク84の検出時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【0045】
特に、本実施形態のマスキング部材80では、マーク84に設けられた方向指示部85により、次のマーク84の位置を示す一方向が示されているため、この一方向へマーク検出装置40を移動させることにより、次のマーク84を容易に検出することができる。これにより、マーク84の検出時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【0046】
次に、
図11を用いて、マスキング部材80の他の実施例について説明する。
図11に示すマスキング部材80では、画像形成部82が、3つの切り抜き部83a,83b,83cで形成されており、2つの切り抜き部83a,83cは三角形に形成され、これらの間に形成された切り抜き部83bが、三角形よりも小さい四角形に形成されている。マーク84は、これらの画像形成部82を囲むように5つ形成されており、各マーク84-1~84-5を頂点とする多角形は、1つの凹角を有する凹多角形に形成されている。各マークマーク84-1~84-5には、次のマーク84の位置の方向を示す方向指示部85が形成されている。
【0047】
図11に示す実施例のように、マスキング部材80は、画像形成部82の外形の形状に合わせて、各マーク84-1~84-5で形成される多角形を少なくとも1つの凹角を有する凹多角形とすることができる。このように、各マーク84-1~84-5によって規定される多角形、すなわち、各マーク84を頂点とする多角形を全ての角が凸角となる凸多角形ではなく、凹角を有する凹多角形とすることで、スプレーガン31により液剤が噴霧される範囲を全ての角が凸角となる凸多角形で囲まれる範囲よりも小さくすることができ、液剤の消費量を抑えることができる。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、装置本体12に固定されたテーブル14に対してスプレーユニット30及びマーク検出装置40を移動させる構成であるが、スプレーユニット30及びマーク検出装置40とテーブル14とは相対的に移動可能な構成であればよい。一例として、印刷装置10は、テーブル14を移動させるテーブル移動機構を備え、主走査方向移動機構50によりスプレーユニット30及びマーク検出装置40を主走査方向Yに移動させ、テーブル移動機構によってテーブル14を副走査方向Xに移動させる構成とすることができる。また、印刷装置10は、テーブル移動機構を備えず、スプレーユニット30及びマーク検出装置40とテーブル14上に載置された被印刷物5とを相対的に移動可能な構成であってもよい。例えば、テーブル14上に載置された被印刷物5をローラにより副走査方向Xに搬送し、スプレーユニット30及びマーク検出装置40を主走査方向移動機構50により主走査方向Yに移動させてもよい。
【0050】
また、例えば、印刷装置10は、少なくともスプレーユニット30と、マーク検出装置40を備えた構成であればよく、インクジェットヘッド20を備えていない構成であってもよい。また、印刷装置10は、スプレーユニット30とマーク検出装置40とをテーブル14に対して個別に移動させる移動機構を有し、スプレーユニット30とマーク検出装置40とがそれぞれ独立して主走査方向Yと副走査方向Xとに移動する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
5 被印刷物
10 印刷装置
12 装置本体
14 テーブル
20 インクジェットヘッド
30 スプレーユニット
31 スプレーガン
40 マーク検出装置
48 スプレーキャリッジ
50 主走査方向移動機構
60 副走査方向移動機構
70 制御装置
80 マスキング部材
81 マスキング本体
82 画像形成部
84 マーク
85 方向指示部