(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174336
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20231130BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20231130BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231130BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20231130BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231130BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20231130BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C13/00 E
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
B60C15/06 C
C08L9/00
C08K5/3445
C08K5/092
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087133
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 隼
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA05
3D131AA06
3D131AA12
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB09
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC22
3D131EA02U
3D131GA13
3D131GA19
4J002AC11W
4J002EF067
4J002EU116
4J002FD156
4J002FD157
4J002GN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐外傷性能に優れたタイヤ用ゴム組成物および当該タイヤ用ゴム組成物からなるタイヤ部材を備えたタイヤを提供すること。
【解決手段】エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物と、2価以上のカルボン酸化合物とを含み、厚さ2mmのASTMD638TypeVに準拠したダンベル形状の試験片について、JISK6251に準じて破断時伸びEB(%)および破断強度TB(MPa)を測定するとき、修復試験片のEB(%)/アニール試験片のEB(%)×100で定義される値であるEB修復率(%)RRE
B、および修復試験片のTB(MPa)/アニール試験片のTB(MPa)×100で定義される値であるTB修復率(%)RRTBが、それぞれ、
(1)TB≧0.40、
(2)RREB≧20、
(3)RRTB≧20
を満たすタイヤ用ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物と、2価以上のカルボン酸化合物とを含み、
厚さ2mmのASTM D638 TypeVに準拠したダンベル形状の試験片について、JIS K 6251に準じて破断時伸びEB(%)および破断強度TB(MPa)を測定するとき、前記TB、下記で定義されるEB修復率(%)RREB、および、下記で定義されるTB修復率(%)RRTBが、それぞれ、式(1)~式(3)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
TB≧0.40 (1)
RREB≧20 (2)
RRTB≧20 (3)
(RREBとは、修復試験片のEB(%)/アニール試験片のEB(%)×100で定義される値である。RRTBとは、修復試験片のTB(MPa)/アニール試験片のTB(MPa)×100で定義される値である。ここで、修復試験片とは、試験片を、その長辺の中央で厚み方向に切断し、直ちに切断面を貼り合わせたのち、80℃で、24時間熱処理した試験片である。アニール試験片とは、80℃で、24時間熱処理した試験片である。)
【請求項2】
前記式(1)の右辺が、0.50である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記式(2)の右辺が45であり、前記式(3)の右辺が50である、請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記式(2)の右辺が60であり、前記式(3)の右辺が60である、請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記式(2)の右辺が72であり、前記式(3)の右辺が72である、請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記タイヤ用ゴム組成物が充填剤を含み、
前記充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、45質量部未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物から構成されるタイヤ部材を有するタイヤ。
【請求項8】
前記タイヤ部材がタイヤ表層部材である請求項7記載のタイヤ。
【請求項9】
前記タイヤ表層部材が、トレッド、サイドウォール、ウイングおよびクリンチからなる群から選択される少なくとも一つである請求項8記載のタイヤ。
【請求項10】
前記タイヤ表層部材がサイドウォールであり、
前記サイドウォールが外層サイドウォールであり、
前記外層サイドウォールの厚み(mm)をWとするとき、Wが式(4)を満たす、請求項9記載のタイヤ。
W≧1.0 (4)
【請求項11】
前記Wと、前記RRTBとが、式(5)を満たす、請求項10記載のタイヤ。
W×RRTB>50 (5)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮から、車両の低燃費化に対する要求が強くなる中、タイヤにおいても、転がり抵抗の低減の観点から、タイヤの軽量化が検討されている。しかし、軽量化のために、トレッドやサイドウォール等のゴムのボリュームを減らすとタイヤの耐外傷性能を低下させる要因となり得る。
【0003】
特許文献1には、ウレタンを材質とする補強層を備えることでサイドウォールの耐外傷性を高めたタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐外傷性能に優れたタイヤ用ゴム組成物および当該タイヤ用ゴム組成物からなるタイヤ部材を備えたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のタイヤ用ゴム組成物に関する。
エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物と、2価以上のカルボン酸化合物とを含み、
厚さ2mmのASTM D638 TypeVに準拠したダンベル形状の試験片について、JIS K 6251に準じて破断時伸びEB(%)および破断強度TB(MPa)を測定するとき、前記TB、下記で定義されるEB修復率(%)RREB、および、下記で定義されるTB修復率(%)RRTBが、それぞれ、式(1)~式(3)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
TB≧0.40 (1)
RREB≧20 (2)
RRTB≧20 (3)
(RREBとは、修復試験片のEB(%)/アニール試験片のEB(%)×100で定義される値である。RRTBとは、修復試験片のTB(MPa)/アニール試験片のTB(MPa)×100で定義される値である。ここで、修復試験片とは、試験片を、その長辺の中央で厚み方向に切断し、直ちに切断面を貼り合わせたのち、80℃で、24時間熱処理した試験片である。アニール試験片とは、80℃で、24時間熱処理した試験片である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐外傷性能に優れたタイヤ用ゴム組成物および当該タイヤ用ゴム組成物からなるタイヤ部材を備えたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤのタイヤ回転軸を通る平面による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物と、2価以上のカルボン酸化合物とを含み、厚さ2mmのASTM D638 TypeVに準拠したダンベル形状の試験片について、JIS K 6251に準じて破断時伸びEB(%)および破断強度TB(MPa)を測定するとき、前記TB、下記で定義されるEB修復率(%)RREB、および、下記で定義されるTB修復率(%)RRTBが、それぞれ、式(1)~式(3)を満たすタイヤ用ゴム組成物である。
TB≧0.4 (1)
RREB≧20 (2)
RRTB≧20 (3)
(RREBとは、修復試験片のEB(%)/アニール試験片のEB(%)×100で定義される値である。RRTBとは、修復試験片のTB(MPa)/アニール試験片のTB(MPa)×100で定義される値である。ここで、修復試験片とは、試験片を、その長辺の中央で厚み方向に切断し、直ちに切断面を貼り合わせたのち、80℃で、24時間熱処理した試験片である。アニール試験片とは、80℃で、24時間熱処理した試験片である。)
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、エポキシ化ジエン系ゴムと、イミダゾール化合物と、2価以上のカルボン酸化合物とを含むことで自己修復能を有し、これにより優れた耐外傷性能を示すと考えられる。理論に拘束されることは意図しないが、そのメカニズムとしては、以下が考えられる。すなわち、ゴムが傷を受けると、当該傷を受けた部分は、分子レベルでは化学的な結合、すなわち、共有結合やイオン性結合等が切断された状態にある。しかし、本発明のタイヤ用ゴム組成物では、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ基と、イミダゾール化合物のイミダゾール部分とが反応することで、傷を受けた部分においてイオン性の足場が形成されると考えられる。そして、そこに、さらに2価以上のカルボン酸が反応することでイオン性結合が形成され、ポリマー間のネットワークが再生すると考えられる。これにより、本発明のタイヤ用ゴム組成物は自己修復能を示すと考えられる。
【0011】
前記式(1)の右辺は、0.50であることが好ましい。
【0012】
より大きな破断強度は、本発明の効果を利すると考えられる。
【0013】
前記式(2)の右辺は好ましくは45、より好ましくは60、さらに好ましくは72であり、前記式(3)の右辺は好ましくは50、より好ましくは60、さらに好ましくは72である。
【0014】
より大きな各修復率は、本発明の効果を利すると考えられる。
【0015】
前記タイヤ用ゴム組成物は充填剤を含み、前記充填剤の含有量はゴム成分100質量部に対して、好ましくは45質量部未満、より好ましくは20質量部未満、さらに好ましくは5質量部未満であり、あるいは、充填剤を含まなくてもよい。
【0016】
本発明の他の態様は、タイヤ用ゴム組成物から構成されるタイヤ部材を有するタイヤである。
【0017】
自己修復能を有し、耐外傷性能が向上した本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤ部材として好適に使用できる。
【0018】
前記タイヤ部材はタイヤ表層部材であることが好ましい。本発明の効果を発揮し易い態様である。
【0019】
前記タイヤ表層部材は、トレッド、サイドウォール、ウイングおよびクリンチからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0020】
本発明の効果を発揮し易い態様である。
【0021】
前記タイヤ表層部材はサイドウォールであり、前記サイドウォールは外層サイドウォールであり、前記外層サイドウォールの厚み(mm)をWとするとき、Wは式(4)を満たすことが好ましい。
W≧1.0 (4)
【0022】
外層サイドウォールが一定以上の厚さを有することで、自己修復能の効果が得られ易い。
【0023】
前記Wと、前記RRTBとは、式(5)を満たすことが好ましい。
W×RRTB>50 (5)
【0024】
外層サイドウォールの厚さと修復率との積が一定値以上であることで、所定の耐外傷性能が発揮され得ると考えられる。
【0025】
<定義>
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている「Measuring Rim」、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている「Design Rim」を指す。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0026】
「タイヤ表層部材」とは、タイヤの外表面を構成する部材である。例えば、トレッド、サイドウォール、ウイング、クリンチなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
「外層サイドウォールの厚み(W)」とは、タイヤ最大幅位置での外層サイドウォールの厚み(mm)をいう。当該厚みWは、タイヤ回転軸を通る平面で切断したタイヤを、正規リムに保持させた状態で計測される。
【0028】
<測定方法>
「エポキシ化率」は、エポキシ化ジエン系ゴムについて、エポキシ化される前のゴム中の二重結合の総数に対するエポキシ化された二重結合の数の割合(モル%)であり、日本電子(株)製のJNM-ECAシリーズのNMR装置を用いて測定される。
【0029】
「破断時伸びEB(%)」および「破断強度TB(MPa)」は、厚さ2mmのASTM D638 TypeVに準拠したダンベル形状の試験片について、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張試験特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施し、測定する。
【0030】
「EB修復率(%)RREB」は、「修復試験片のEB(%)/アニール試験片のEB(%)×100」で定義される値である。ここで、修復試験片とは、破断時伸びEB(%)の測定用試験片を、その長辺の中央で厚み方向に切断し、直ちに切断面を貼り合わせたのち、80℃で、24時間熱処理した試験片である。また、アニール試験片とは、破断時伸びEB(%)の測定用試験片を、80℃で、24時間熱処理した試験片である。
【0031】
「TB修復率(%)RRTB」は、「修復試験片のTB(MPa)/アニール試験片のTB(MPa)×100」で定義される値である。ここで、修復試験片とは、破断強度TB(MPa)の測定用試験片を、その長辺の中央で厚み方向に切断し、直ちに切断面を貼り合わせたのち、80℃で、24時間熱処理した試験片である。また、アニール試験片とは、破断強度TB(MPa)の測定用試験片を、80℃で、24時間熱処理した試験片である。
【0032】
「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
【0033】
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2:2017に準じて測定される。
【0034】
「平均一次粒子径」は、透過型または走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察された一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。カーボンブラックや、シリカ等に適用される。
【0035】
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物と、2価以上のカルボン酸化合物とを含む。
【0036】
(ゴム成分)
エポキシ化ジエン系ゴムとしては特に限定されず、例えば、エポキシ化天然ゴム(ENR)、エポキシ化イソプレンゴム、エポキシ化ブタジエンゴム、エポキシ化ブタジエンアクリロニトリルゴム、エポキシ化スチレンブタジエンゴム、エポキシ化イソプレンブタジエンゴムなどが挙げられる。エポキシ化ジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
エポキシ化ジエン系ゴムとしては特に限定されず、市販のものでも、ジエン系ゴムをエポキシ化したものでもよい。ジエン系ゴムのエポキシ化は、天然ゴムのエポキシ化に準じて行うことができる。
【0038】
天然ゴムをエポキシ化する方法としては、例えば、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などがあげられる(特公平4-26617号公報、特開平2-110182号公報、英国特許第2113692号明細書など)。過酸法としては、例えば、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。なお、有機過酸の量や反応時間を調整することにより、様々なエポキシ化率のエポキシ化天然ゴムを調製することができる。エポキシ化される天然ゴムとしては、特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0039】
エポキシ化ジエン系ゴムとしては、入手が容易であるなどの実用面での観点から、ENR、エポキシ化ブタジエンゴムなどが好ましく、ENRがより好ましい。
【0040】
エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は、好ましくは15モル%超、より好ましくは20モル%超、さらに好ましくは25モル%以上である。一方、該エポキシ化率は、破壊特性の観点から、好ましくは75モル%以下、より好ましくは60モル%未満、さらに好ましくは50モル%以下である。エポキシ化率は前記方法により測定される値である。
【0041】
ゴム成分100質量%中のエポキシ化ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは70質量%超、より好ましくは80質量%超、さらに好ましくは90質量%超、さらに好ましくは95質量%超であり、100質量%であることが最も好ましい。
【0042】
ゴム成分は、前記のエポキシ化ジエン系ゴム以外のその他のゴム成分を含有してもよい。その他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム(IR系ゴム)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリノルボルネンゴム等のエポキシ化されていないジエン系ゴムや、ブチルゴム(IIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等の非ジエン系ゴムが挙げられる。その他のゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(2価以上のカルボン酸化合物)
2価以上のカルボン化合物とは、カルボキシル基を二つ以上有する化合物である。2価以上のカルボン化合物としては、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ基とイミダゾール化合物とが反応して生成したイオン性の足場と、イオン性結合を形成し得るものであれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。2価以上のカルボン酸化合物としては、脂肪族カルボン酸化合物、脂環族カルボン酸化合物および芳香族カルボン酸化合物のいずれであってもよい。また、2価以上のカルボン化合物は置換基を有していてもよい。2価以上のカルボン化合物の置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。これら置換基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。また、これら置換基の種類は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0044】
2価以上のカルボン化合物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、スベリン酸等の2価のカルボン酸化合物、クエン酸等の3価のカルボン酸化合物、ピロメリト酸等の4価のカルボン酸化合物、メリト酸等の6価のカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0045】
2価以上のカルボン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
2価以上のカルボン化合物の好ましい例としては、2価のカルボン酸化合物が挙げられる。2価のカルボン酸化合物としては、下記式(I)で表される化合物を好適に使用することができる。この化合物は、両末端にカルボキシ基が存在することから、ポリマー間に強固なネットワークを形成することが可能となる。
HOOC-A-COOH (I)
(式中、Aは、炭素数1~10の2価の炭化水素基であり、置換基を有していてもよい。)
【0047】
Aの炭化水素基は、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれであってもよい。Aの炭化水素基のうち、脂肪族炭化水素基および脂環族炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれであってもよい。Aの炭化水素基のうち、脂環族炭化水素基および芳香族炭化水素基は、その水素原子がアルキル基で置換されていてもよい。Aの炭化水素基のうち、脂肪族炭化水素基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい。Aの炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、また、該炭素数は、好ましくは12以下であり、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。
【0048】
Aの炭化水素基の具体例としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基等が挙げられ、アルキレン基が好ましい。また、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基や、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等の分岐鎖アルキレン基が挙げられ、このうち、直鎖状アルキレン基が好ましく、エチレン基、n-プロピレン基、n-へキシレン基がより好ましく、n-へキシレン基がさらに好ましい。
【0049】
Aの炭化水素基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。これら置換基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。また、これら置換基の種類は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0050】
2価以上のカルボン酸の含有量は、本発明の効果の観点から、エポキシ化ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5質量部超、より好ましくは0.6質量部超、さらに好ましくは0.7質量部超、さらに好ましくは0.8質量部超であり、さらに好ましくは0.9質量部超である。また、該含有量は、好ましくは20質量部未満、より好ましくは10質量部未満、さらに好ましくは5質量部未満である。
【0051】
(イミダゾール化合物)
イミダゾール化合物とは、イミダゾール環を有する化合物である。イミダゾール化合物としては、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ基と反応して、イオン性の足場を生成し得るものであれば特に限定されない。
【0052】
イミダゾール化合物としては、種々のものを用いることができ、例えば、下記式(II)で表される化合物が好ましい。
【0053】
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を表す。R
3、R
4は、互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0054】
R1、R2、R3、R4の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基;炭素数5~24、好ましくは炭素数5~12、より好ましくは炭素数5~8のシクロアルキル基;炭素数6~30、好ましくは炭素数6~24、より好ましくは炭素数6~12のアリール基;炭素数7~25、好ましくは炭素数7~13、より好ましくは炭素数7~10のアラルキル基が挙げられる。
【0055】
また、R3、R4が結合して環構造を形成する場合、R3、R4とイミダゾール環の炭素原子とで形成される環構造としては、例えば、炭素数5~12の芳香族環、複素環、脂肪族環などが挙げられる。
【0056】
本発明の効果の観点から、R1、R2、R3、R4の少なくとも1つがアルキル基であることが好ましく、R1、R2、R3、R4のうち、2つがアルキル基、他の2つが水素原子であることがより好ましく、R1とR2とがアルキル基、R3とR4とが水素原子であることが更に好ましい。
【0057】
イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-デシル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。イミダゾール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
なかでも、1,2-ジメチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールが好ましい。
【0059】
イミダゾール化合物としては、例えば、四国化成工業(株)等の製品を使用できる。
【0060】
イミダゾール化合物の含有量は、前記2価以上のカルボン酸化合物中のカルボキシル基に対して、好ましくは0.05モル当量超、より好ましくは0.15モル当量超、さらに好ましくは0.25モル当量超であり、また、好ましくは3モル当量未満、より好ましくは2モル当量未満、さらに好ましくは1モル当量未満である。上記範囲内であると、本発明の効果の観点から好ましい傾向がある。
【0061】
(その他の成分)
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記以外の成分として、カーボンブラックやシリカ等の充填剤、シランカップリング剤、樹脂、オイル等を含む可塑剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤などの、タイヤ工業で一般的な各種配合剤及び添加剤を配合することができる。
【0062】
(充填剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は充填剤を含み得るが、当該充填剤の含有量はゴム成分100質量部に対して、好ましくは45質量部未満であり、より好ましくは20質量部未満、さらに好ましくは5質量部未満であり、あるいは、充填剤を含まなくてもよい。前記充填剤の含有量は充填剤の合計含有量であり、充填剤を1種しか含まない場合には、当該1種の充填剤の含有量である。
【0063】
充填剤としては、シリカやカーボンブラックを使用することができる他、タイヤ工業で通常使用される充填剤、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー等も使用することができる。充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
≪シリカ≫
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低燃費性能および耐摩耗性能の観点から、140m2/g超が好ましく、150m2/g超がより好ましく、160m2/g超がさらに好ましく、175m2/g以上が特に好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、350m2/g未満が好ましく、300m2/g未満がより好ましく、250m2/g未満がさらに好ましい。なお、シリカのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0066】
シリカの平均一次粒子径は、25nm未満が好ましく、22nm未満がより好ましく、20nm未満がさらに好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm超が好ましく、3nm超がより好ましく、5nm超がさらに好ましい。なお、平均一次粒子径は、前記方法により求めることができる。
【0067】
≪カーボンブラック≫
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、具体的にはN110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0068】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性の観点から、10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましく、35m2/g以上がさらに好ましく、50m2/g以上が特に好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、130m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0069】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、30nm未満が好ましく、26nm未満がより好ましく、23nm未満がさらに好ましく、22nm以下がさらに好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm超が好ましく、3nm超がより好ましく、5nm超がさらに好ましい。なお、平均一次粒子径は、前記方法により求めることができる。
【0070】
≪シランカップリング剤≫
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤;等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、モメンティブ社等より市販されているものを使用することができる。シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部超が好ましく、3.0質量部超がより好ましく、5.0質量部超がさらに好ましい。また、コストおよび加工性の観点からは、30質量部未満が好ましく、20質量部未満がより好ましく、15質量部未満がさらに好ましい。
【0072】
<タイヤ用ゴム組成物の物性>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記式(1)~式(3)を満たす。
【0073】
(式(1))
前記式(1)は、破断強度TB(MPa)について、以下のとおり規定する。
TB≧0.40 (1)
【0074】
式(1)の右辺は、好ましくは0.50、より好ましくは0.60、さらに好ましくは0.70である。TBの上限について、本発明の効果の観点から、特に制限はないが、通常、例えば、5.00未満程度である。
【0075】
上記において、破断強度TBは、加熱加圧温度を低くすること等により大きくすることができる。反対に、加熱加圧温度を高くすること等により小さくすることができる。
【0076】
(式(2))
前記式(2)は、EB修復率RREBについて、以下のとおり規定する。
RREB≧20 (2)
【0077】
式(2)の右辺は、好ましくは45、より好ましくは60、さらに好ましくは72である。RREBの上限について、本発明の効果の観点から、特に制限はないが、通常、例えば、90未満程度である。
【0078】
上記において、EB修復率RREBは、加熱加圧温度を低くすること等により大きくすることができる。反対に、加熱加圧温度を高くすること等により小さくすることができる。
【0079】
(式(3))
前記式(3)は、TB修復率RRTBについて、以下のとおり規定する。
RRTB≧20 (3)
【0080】
式(3)の右辺は、好ましくは50、より好ましくは60、さらに好ましくは72である。RRTBの上限について、本発明の効果の観点から、特に制限はないが、通常、例えば、90未満程度である。
【0081】
上記において、TB修復率RRTBは、加熱加圧温度を低くすること等により大きくすることができる。反対に、加熱加圧温度を高くすること等により小さくすることができる。
【0082】
<タイヤ>
本発明のタイヤについて、
図1を参照しながら説明する。但し、本発明のタイヤは、図面によって限定されるものではない。
【0083】
図1は、タイヤ回転軸を通る平面によるタイヤの断面図であって、タイヤ中心線Cより右側の上半分を示す。
図1のタイヤ1は、地面と接するトレッド面を有するトレッド2と、サイドウォール3と、トレッド2とサイドウォール3とに挟まれた表層部材であるウイング4と、サイドウォールの一端からリムまで延びるクリンチ5と、トレッドのタイヤ半径方向内側に配置されたバント6と、バンドのさらにタイヤ半径方向内側に配置されたブレーカー7と、ブレーカーのさらにタイヤ半径方向内側に配置されたカーカス8と、カーカスのさらにタイヤ半径方向内側に配置されたインナーライナー9とを備えている。トレッド2はキャップトレッド2aとベーストレッド2bとからなり、サイドウォール3は外層サイドウォール3aと内層サイドウォール3bとからなっている。
【0084】
本発明のタイヤは、自己修復能を有する本発明のタイヤ用ゴム組成物を、いずれかのタイヤ部材に使用したタイヤである。例えば、本発明のタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を、
図1に示された少なくとも一つのタイヤ部材に使用したタイヤであり、あるいは、
図1に示されたすべてのタイヤ部材に使用したタイヤである。
【0085】
とりわけ、本発明のタイヤは、自己修復能を有する本発明のタイヤ用ゴム組成物を、トレッド、サイドウォール、ウイング、クリンチなどの外傷を受け易いタイヤ表層部材に使用したタイヤであることが好ましい。また、これらタイヤ表層部材のうち、例えば、サイドウォールが外層サイドウォールと内層サイドウォールとからなる場合には、本発明のタイヤ用ゴム組成物はいずれにも用いることができるが、とりわけ、外層サイドウォールに用いたタイヤが好ましい。また、これらタイヤ表層部材のうち、例えば、トレッドがキャップトレッドとベーストレッドとからなる場合には、本発明のタイヤ用ゴム組成物はいずれにも用いることができるが、とりわけ、キャップトレッドに用いたタイヤが好ましい。
【0086】
(式(4))
本発明のタイヤは、外層サイドウォールの厚み(mm)をWとするとき、Wが式(4)を満たすことが好ましい。
W≧1.0 (4)
【0087】
上記式(4)の右辺は、1.2であることが好ましく、1.4であることがより好ましく、1.5であることがさらに好ましい。また、Wの値は、厚い程、その分耐外傷性能が向上するので上限について特に制限はないが、通常、外層サイドウォールの厚みは、30mmである。
【0088】
(式(5))
本発明のタイヤは、前記Wと、前記RRTBとが、式(5)を満たすことが好ましい。
W×RRTB>50 (5)
【0089】
上記式(5)の右辺は、60であることが好ましく、70であることがより好ましく、75であることがさらに好ましく、90であることがさらに好ましく、100であることがさらに好ましい。また、W×RRTBの値は、大きい程、その分耐外傷性能が向上するので上限について特に制限はないが、通常、290程度である。
<製造>
(ゴム組成物の製造)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。混練り工程は、例えば、排出温度150~170℃で3~10分間混練りする方法が挙げられる。当該混練り工程は、所望により、複数回に分けて実施することもできる。その際の各混練りの条件は、当業者が適宜設定することができる。
【0090】
(タイヤの製造)
上記で得られるタイヤゴム組成物は、未硬化の段階で、それぞれ、所望のタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工した上で、これを、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未硬化タイヤとすることができる。この未硬化タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明のタイヤを得ることができる。加熱加圧の条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、140~200℃で30~180分間、加熱加圧する方法が挙げられる。
【0091】
<用途>
本発明のタイヤ用ゴム組成物からなるタイヤ部材を有するタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わず、いずれのタイヤにも使用できるが、空気入りタイヤとして、好適に使用することができる。また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バスなどの重荷重用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤなどの高性能タイヤ等さまざまな用途に使用することができる。
【実施例0092】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。以下に示す各種薬品を用いて表1に従って得られるゴム組成物を検討して下記評価方法に基づいて算出した結果を表1に示す。
【0093】
<各種薬品>
ENR(エポキシ化天然ゴム)1:クンプーランガスリー社製のENR25(エポキシ化率25モル%)
ENR(エポキシ化天然ゴム)2:クンプーランガスリー社製のENR50(エポキシ化率:50モル%)
NR(天然ゴム):TSR20
イミダゾール化合物:1,2-ジメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製)
カルボン酸化合物:スベリン酸(2価のカルボン酸、東京化成工業(株)製)
【0094】
実施例および比較例
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、各種薬品を、150℃で5分間混練りし、混練物を得る。
【0095】
上記で得た各未硬化ゴム組成物を、表1記載の条件下で加熱加圧することにより試験用ゴム組成物を得る。
【0096】
<引張試験>
各試験用ゴム組成物から厚さ2mmのASTM D638 TypeVに準拠したダンベル形状の試験片を作製し、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張試験特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)及び破断強度TB(MPa)を測定する。
【0097】
<TB指数>
基準例のTB(MPa)の値を100として、各例におけるTBの値を指数化する。指数値が大きくなるほど、破断強度が大きいことを示す。
【0098】
<EB修復率(RREB)(%)、EB修復率指数>
RREBは、修復試験片のEB(%)およびアニール試験片のEB(%)について、下記式で定義される値である。ここで、修復試験片とは、試験片を、その長辺の中央で厚み方向に切断し、直ちに切断面を貼り合わせたのち、80℃で、24時間熱処理した試験片である。アニール試験片とは、80℃で、24時間熱処理した試験片である。基準例のEB修復率(%)の値を100として、各例におけるEB修復率の値を指数化する。指数値が大きくなるほど、EB修復率が大きいことを示す。
RREB=修復試験片のEB(%)/アニール試験片のEB(%)×100
【0099】
<TB修復率(RRTB)(%)、TB修復率指数>
RRTBとは、修復試験片のTB(MPa)およびアニール試験片のTB(MPa)について、下記式で定義される値である。修復試験片およびアニール試験片は上記のとおりである。基準例のTB修復率(%)の値を100として、各例におけるTB修復率の値を指数化する。指数値が大きくなるほど、TB修復率が大きいことを示す。
修復試験片のTB(MPa)/アニール試験片のTB(MPa)×100
【0100】
<耐外傷性能>
TB指数、EB修復率指数およびTB修復率指数の平均値を耐外傷性能指数とする。
【0101】
【0102】
<実施形態>
以下に、好ましい実施形態を示す。
【0103】
[1]エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物と、2価以上のカルボン酸化合物とを含み、
厚さ2mmのASTM D638 TypeVに準拠したダンベル形状の試験片について、JIS K 6251に準じて破断時伸びEB(%)および破断強度TB(MPa)を測定するとき、前記TB、下記で定義されるEB修復率(%)RREB、および、下記で定義されるTB修復率(%)RRTBが、それぞれ、式(1)~式(3)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
TB≧0.40 (1)
RREB≧20 (2)
RRTB≧20 (3)
(RREBとは、修復試験片のEB(%)/アニール試験片のEB(%)×100で定義される値である。RRTBとは、修復試験片のTB(MPa)/アニール試験片のTB(MPa)×100で定義される値である。ここで、修復試験片とは、試験片を、その長辺の中央で厚み方向に切断し、直ちに切断面を貼り合わせたのち、80℃で、24時間熱処理した試験片である。アニール試験片とは、80℃で、24時間熱処理した試験片である。)
[2]前記式(1)の右辺が、0.50、好ましくは0.60、より好ましくは0.70である上記[1]記載のタイヤ用ゴム組成物。
[3]前記式(2)の右辺が45であり、前記式(3)の右辺が50である、上記[1]または上記[2]記載のタイヤ用ゴム組成物。
[4]前記式(2)の右辺が60であり、前記式(3)の右辺が60である、上記[1]または上記[2]記載のタイヤ用ゴム組成物。
[5]前記式(2)の右辺が72であり、前記式(3)の右辺が72である、上記[1]または上記[2]記載のタイヤ用ゴム組成物。
[6]前記タイヤ用ゴム組成物が充填剤を含み、
前記充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、45質量部未満、好ましくは20質量部未満、より好ましくは5質量部未満であるか、あるいは
前記タイヤ用ゴム組成物が充填剤を含まない、上記[1]~上記[5]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[7]上記[1]~上記[6]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物から構成されるタイヤ部材を有するタイヤ。
[8]前記タイヤ部材がタイヤ表層部材である上記[7]記載のタイヤ。
[9]前記タイヤ表層部材が、トレッド、サイドウォール、ウイングおよびクリンチからなる群から選択される少なくとも一つである上記[8]記載のタイヤ。
[10]前記タイヤ表層部材がサイドウォールであり、
前記サイドウォールが外層サイドウォールであり、
前記外層サイドウォールの厚み(mm)をWとするとき、Wが式(4)を満たす、好ましくは式(4)の右辺が1.2、より好ましくは1.4、さらに好ましくは1.5である、上記[9]記載のタイヤ。
W≧1.0 (4)
[11]前記Wと、前記RRTBとが、式(5)を満たす、好ましくは式(5)の右辺が60、より好ましくは70、さらに好ましくは75、さらに好ましくは90、さらに好ましくは100である、上記[10]記載のタイヤ。
W×RRTB>50 (5)