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2023-174341有機合成用の触媒、および有機化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174341
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】有機合成用の触媒、および有機化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/08 20060101AFI20231130BHJP
   C07D 317/36 20060101ALI20231130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
B01J31/08 Z
C07D317/36
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087141
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎司
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA23A
4G169BA23B
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BD13A
4G169BD13B
4G169BD14A
4G169BD14B
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE17A
4G169BE17B
4G169CB38
4G169DA05
4H039CA42
4H039CH40
(57)【要約】
【課題】触媒活性が高く、反応系中から容易に固液分離可能であり、高効率で有機化合物を合成可能な有機合成用の触媒、およびその触媒を用いる有機化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂である、有機合成用の触媒である。また、触媒として、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂を用いる、有機化合物の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂であることを特徴とする、有機合成用の触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の有機合成用の触媒であって、
前記ハロゲン化水素酸塩は、臭化水素酸塩またはヨウ化水素酸塩であることを特徴とする、有機合成用の触媒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機合成用の触媒であって、
環状カーボネートの合成用であることを特徴とする、有機合成用の触媒。
【請求項4】
触媒として、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂を用いることを特徴とする、有機化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の有機化合物の製造方法であって、
前記ハロゲン化水素酸塩は、臭化水素酸塩またはヨウ化水素酸塩であることを特徴とする、有機化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の有機化合物の製造方法であって、
前記有機化合物は、環状カーボネートであることを特徴とする、有機化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を合成するための有機合成用の触媒、およびその触媒を用いる有機化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成するための環状カーボネート合成触媒および環状カーボネートの製造方法は、先行技術において古くから知られている。
【0003】
環状カーボネートを合成する不均一系触媒として、例えば、ハロゲン化物イオンを対イオンとする第四級アンモニウム基をイオン交換基として有する強アニオン交換樹脂(特許文献1参照)、水分含有量0.5重量%以下の強アニオン交換樹脂(特許文献2参照)、および珪酸根を対アニオンとする、第三級アミノ基または第四級アンモニウム基をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂(特許文献3参照)等が挙げられている。
【0004】
また、アルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成する方法として、水の存在下、ヨウ素イオンを対イオンとする第四級アンモニウム基をイオン交換基として有する強アニオン交換樹脂を不均一系触媒として用いる方法(非特許文献1参照)や、第三級アミンのヨウ化水素酸塩を均一系触媒として用いる方法(非特許文献2参照)等が知られている。
【0005】
しかし、第四級アンモニウム基をイオン交換基として有する強アニオン交換樹脂を用いる方法では、触媒活性が不十分であるという問題がある。また、均一系触媒を用いる方法では、反応系から触媒を取り除くことが困難であるという問題がある。
【0006】
また、例えば、オキサゾリジノンを合成する均一系触媒として、ハロゲン化物イオンを対イオンとする第3級アンモニウム塩が知られている(非特許文献3参照)。
【0007】
しかし、均一系触媒を用いる方法では、反応系から触媒を取り除くことが困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2773070号明細書
【特許文献2】特開平3-120270号公報
【特許文献3】特許第3568226号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ACS Sustainable Chem. Eng. 2020, 8, 7993-8003
【非特許文献2】ACS Sustainable Chem. Eng. 2017, 5, 7295-7301
【非特許文献3】Green Chem. 2011, 13, 2351-2353
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、触媒活性が高く、反応系中から容易に固液分離可能であり、高効率で有機化合物を合成可能な有機合成用の触媒、およびその触媒を用いる有機化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂である、有機合成用の触媒である。
【0012】
前記有機合成用の触媒において、前記ハロゲン化水素酸塩は、臭化水素酸塩またはヨウ化水素酸塩であることが好ましい。
【0013】
前記有機合成用の触媒は、環状カーボネートの合成用であることが好ましい。
【0014】
本発明は、触媒として、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂を用いる、有機化合物の製造方法である。
【0015】
前記有機化合物の製造方法において、前記ハロゲン化水素酸塩は、臭化水素酸塩またはヨウ化水素酸塩であることが好ましい。
【0016】
前記有機化合物の製造方法において、前記有機化合物は、環状カーボネートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、触媒活性が高く、反応系中から容易に固液分離可能であり、高効率で有機化合物を合成可能な有機合成用の触媒、およびその触媒を用いる有機化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0019】
<有機合成用の触媒>
本発明の実施形態に係る有機合成用の触媒は、有機化合物を合成するための触媒であり、例えば、アルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成するための触媒であり、また、例えば、アジリジンと二酸化炭素とからオキサゾリジノン等の有機化合物を合成するための触媒である。この触媒は、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂であり、不均一系触媒として用いることができる。
【0020】
本発明者らは、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有する弱アニオン交換樹脂が、有機化合物を合成する反応において、触媒活性が高く、反応系中から容易に固液分離可能であり、高効率で環状カーボネートを合成可能な触媒として機能することを見出した。本実施形態に係る有機合成用の触媒は、例えば、下記反応式で示されるアルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成する反応において、触媒活性が高く、反応系中から容易に固液分離可能であり、高効率で環状カーボネートを合成可能な触媒として機能する。
【0021】
例えば、アルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成する際に、触媒として第三級アミノ基を官能基として有する弱アニオン交換樹脂とハロゲン化水素との塩を用いることによって、高い転化率で環状カーボネートを得ることが可能であり、さらに反応系中から容易に固液分離可能な不均一系触媒を提供する。この触媒を使用することによって、公知文献記載の触媒よりも高い転化率で環状カーボネートを合成することが可能である。
【0022】
【化1】
【0023】
上記反応式において、アルキレンオキシドにおけるRは、反応を阻害しなければ特に限定されないが、それぞれ独立して、例えば、水素原子;ハロゲン原子、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~8のアルコキシ基、オキソ基、ニトロ基、シアノ基等で置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖、分岐状、環状のアルキル基;炭素数2~12のアルケニル基;炭素数2~12のアルキニル基;炭素数6~18のアリール基;炭素数1~8のアルコキシ基;炭素数1~8のアシル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基等であり、好ましくは、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0024】
アルキレンオキシドとしては、反応を阻害しなければ特に限定されないが、例えば、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、プロピルオキシラン、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、スチルベンオキシド、4-クロロスチレンオキシド、1,2―エポキシ-5-ヘキセン、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル等が挙げられ、好ましくは、プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシドである。
【0025】
本実施形態に係る有機合成用の触媒の第三級アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルヒドロキシエチルアミノ基、メチルヒドロキシプロピルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、2,2,6,6-テトラメチルピペリジル基、モルホリル基等の第三級アミノ基等が挙げられる。
【0026】
対イオンであるハロゲン化物イオンは、F,Cl,Br,I等であり、触媒調製における安全性等の点から、好ましくは、Cl,Br,Iであり、反応転化率が高い等の点から、より好ましくは、Br,Iであり、副生成物が少ない等の点から、さらに好ましくは、Iである。
【0027】
アニオン交換樹脂の骨格を構成するポリマー材料の種類は、特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤とを共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤とを重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。アニオン交換樹脂の骨格を構成するポリマー材料としては、耐熱性等の点から、好ましくは、スチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂である。
【0028】
第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有する弱アニオン交換樹脂は、例えば、300~1000μmの粒状の樹脂として用いることができる。
【0029】
<有機化合物の製造方法>
本実施形態に係る有機化合物の製造方法は、触媒として、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂を用いる方法である。本実施形態に係る有機化合物の製造方法は、例えば、触媒として、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂を用いて、アルキレンオキシドオキサイドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成する方法である。また、本実施形態に係る有機化合物の製造方法は、例えば、触媒として、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂を用いて、アジリジンと二酸化炭素とからオキサゾリジノンを合成するする方法である。
【0030】
本実施形態に係る有機合成用の触媒を用いて有機化合物を合成する反応において、反応条件は、目的の有機化合物を得ることができる条件であればよく、特に制限はない。本実施形態に係る有機合成用の触媒を用いるアルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成する反応において、反応条件は、目的の環状カーボネートを得ることができる条件であればよく、特に制限はない。また、本実施形態に係る有機合成用の触媒を用いるアジリジンと二酸化炭素とからオキサゾリジノンを合成する反応において、反応条件は、目的のオキサゾリジノンを得ることができる条件であればよく、特に制限はない。
【0031】
本実施形態に係る有機合成用の触媒を用いるアルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成する反応における反応条件として、反応温度は、例えば、0~120℃であり、好ましくは、10~100℃である。反応時間は、例えば、1~96時間であり、好ましくは、3~48時間である。反応圧力は、例えば、大気圧~5.0MPaであり、好ましくは、大気圧~1.0MPaである。本実施形態に係る有機合成用の触媒を用いる環状カーボネートを合成する反応は、不均一系で、常温(15~30℃)、大気圧でも行うことができる。
【0032】
アルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成する反応で用いる溶媒としては、反応を阻害しなければ特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等が挙げられ、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。アルキレンオキシドが反応条件で液体状態の場合には、溶媒を用いなくてもよい。
【0033】
アルキレンオキシドと二酸化炭素とから環状カーボネートを合成する反応は、例えば、耐圧性の反応容器中にプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドと、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有する弱アニオン交換樹脂とを水等の溶媒に加え、反応容器中に二酸化炭素を封入し、不均一系で、所定の温度、所定の圧力で所定の時間反応させることによって行うことができる。反応後、弱アニオン交換樹脂をろ過等の固液分離によって除去し、溶媒を留去等により除去することによって目的の環状カーボネートを得ることができる。アルキレンオキシドが反応条件で液体状態の場合には、反応は、例えば、耐圧性の反応容器中にプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドに、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有する弱アニオン交換樹脂を加え、反応容器中に二酸化炭素を封入し、不均一系で、所定の温度、所定の圧力で所定の時間反応させることによって行うことができる。反応後、弱アニオン交換樹脂をろ過等の固液分離等によって除去することによって目的の環状カーボネートを得ることができる。反応の終了は、例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)、液体クロマトグラフ(LC)測定、ガスクロマトグラフ(GC)測定、核磁気共鳴(NMR)測定、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)測定等によって確認することができる。得られた環状カーボネートは、公知の方法によって精製してもよい。
【0034】
このような反応によって、例えば、8%以上、好ましくは80%以上の反応転化率で環状カーボネートを得ることができる。
【0035】
<有機合成用の触媒の製造方法>
本実施形態に係る有機合成用の触媒は、例えば、第三級アミノ基を有するアニオン交換樹脂とハロゲン化水素とから製造される。
【0036】
本実施形態に係る有機合成用の触媒を合成する反応において、反応条件は、第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂を得ることができる条件であればよく、特に制限はない。
【0037】
反応は、例えば、第三級アミノ基を有するアニオン交換樹脂と、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素とを混合し、所定の温度(例えば、10~30℃)で所定の時間(例えば、0.5~24時間)反応させることによって行うことができる。得られた樹脂は、水やアルコール系溶媒等によって洗浄してもよい。
【0038】
第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有する弱アニオン交換樹脂の製造工程は、ハロゲン化物イオンを対イオンとする第四級アンモニウム基をイオン交換基として有する強アニオン交換樹脂の製造工程に比べて、対イオンの変換工程等の反応工程が少なく、第三級アミノ基をイオン交換基として有する弱アニオン交換樹脂を、容易にハロゲン化水素酸塩とすることができる。
【実施例0039】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<実施例1-1~1-3>
触媒として、下記の構造を有する第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有するアニオン交換樹脂(アンバーリストA21(オルガノ株式会社製)とハロゲン化水素酸の塩)を使用して、下記に示す4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応を実施した。
【0041】
(実施した反応)
【化2】
【0042】
(使用した触媒の化学構造式)
resin-N(CH・HX
X=I(実施例1-1,1-2),Br(実施例1-3)
resin=スチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂
【0043】
有機合成用触媒(環状カーボネート合成触媒)の合成反応は、以下の手順で行った。
[A21・HIの調製]
反応容器中で第三級アミノ基を有するアニオン交換樹脂(アンバーリストA21(オルガノ株式会社製)、resin-N(CH)の乾燥品2.17g、水30mLと、55%~58%ヨウ化水素酸2.24gとを混合し、室温(25℃)で1時間撹拌して反応させた。次いで、生成物をろ過し、ろ過物を水で洗浄後、減圧乾燥することによって、目的の有機合成用触媒であるA21・HIを得た。
【0044】
[A21・HBrの調製]
反応容器中で第三級アミノ基を有するアニオン交換樹脂(アンバーリストA21(オルガノ株式会社製))の乾燥品1.08g、水15mLと、49%臭化水素酸0.827gとを混合し、室温で1時間撹拌して反応させた。次いで、生成物をろ過し、ろ過物を水で洗浄後、減圧乾燥することによって、目的の有機合成用触媒であるA21・HBrを得た。
【0045】
[IRA98・HIの調製]
反応容器中で第三級アミノ基を有するアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA98(オルガノ株式会社製)、resin-N(CH)の乾燥品2.21g、水30mLと、55%~58%ヨウ化水素酸2.28gとを混合し、室温で1時間撹拌して反応させた。次いで、生成物をろ過し、ろ過物を水で洗浄後、減圧乾燥することによって、目的の有機合成用触媒であるIRA98・HIを得た。
【0046】
実施例1-1~実施例1-3における4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応は、以下の手順で行った。
【0047】
反応容器中でプロピレンオキシド0.290gに、水2.5gと、得られた有機合成用触媒とを所定量添加、混合した。二酸化炭素を充填したバルーンを装着し、大気圧下、室温で24時間撹拌して反応させた。反応後、有機合成用触媒をろ過によって除去し、粗4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンを得た。核磁気共鳴装置(Bruker社製、Ascend 400MHz)を用いてH-NMRを測定し、各スペクトルの積分値より4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの反応転化率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0048】
<比較例1-1>
比較例1-1として触媒を用いずに、実施例と同様にして4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応を実施した。結果を表1に示す。
【0049】
<比較例1-2>
比較例1-2として強アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA900J CL(オルガノ株式会社製)をヨウ素形に変換したI型触媒(ヨウ化物イオンを対イオンとする第四級アンモニウム基をイオン交換基として有する強アニオン交換樹脂)を使用して、実施例と同様にして4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応を実施した。結果を表1に示す。
【0050】
(使用した触媒の化学構造式)
resin-N(CH・HX
X=I(比較例1-2)
resin=スチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂
【0051】
有機合成用触媒の合成反応は、以下の手順で行った。
[IRA900J・Iの調製]
反応容器中で第四級アミノ基を有するアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA900J CL(オルガノ株式会社製)、resin-N(CH・HCl)と、過剰量の1規定NaOH水溶液とを添加し、室温で4時間撹拌した。次いで、生成物をろ過した後、ろ過物を水で洗浄した。その後、反応容器中で得られた生成物10mLと55~58%ヨウ化水素酸1.90gとを混合し、室温で3時間撹拌して反応させた。次いで、生成物をろ過し、ろ過物を水で洗浄後、減圧乾燥することによって、IRA900J・Iを得た。
【0052】
<比較例1-3>
比較例1-3として弱アニオン交換樹脂であるアンバーリストA21(オルガノ株式会社製)の乾燥品を使用して、実施例と同様にして4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応を実施した。結果を表1に示す。
【0053】
<比較例1-4>
比較例1-4として強アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA98(オルガノ株式会社製)の乾燥品を使用して、実施例と同様にして4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応を実施した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実験結果より、実施例の第三級アミノ基のハロゲン化水素酸塩をイオン交換基として有する弱アニオン交換樹脂の方が、第四級アンモニウム基およびハロゲン化物イオンを有する強アニオン交換樹脂、第三級アミノ基をイオン交換基として有する弱アニオン交換樹脂よりも4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンへの反応転化率が高いことが明らかである。また、ヨウ化水素の塩を用いると(実施例1-1,1-2)、臭化水素の塩を用いた場合(実施例1-3)に比べて、副生成物が少なかった。
【0056】
<実施例2-1,2-2>
4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応において、溶媒、温度、圧力条件を変えて合成反応を実施した。
【0057】
実施例2-1における4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応は、以下の手順で行った。
【0058】
反応容器中でプロピレンオキシド0.145gに、得られた有機合成用触媒A21・HIを所定量添加、混合した。二酸化炭素を充填したバルーンを装着し、大気圧下、室温で24時間撹拌して反応させた。反応後、有機合成用触媒をろ過によって除去し、粗4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンを得た。核磁気共鳴装置を用いてH-NMRを測定し、各スペクトルの積分値より4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの反応転化率(%)を求めた。結果を表2に示す。
【0059】
実施例2-2における4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応は、以下の手順で行った。
【0060】
加圧反応容器中でプロピレンオキシド0.145gに、得られた有機合成用触媒A21・HIを所定量添加、混合した。0.3MPaの二酸化炭素を圧入し、40℃で24時間撹拌して反応させた。反応後、有機合成用触媒をろ過によって除去し、粗4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンを得た。核磁気共鳴装置を用いてH-NMRを測定し、各スペクトルの積分値より4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの反応転化率(%)を求めた。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
実験結果より、無溶媒条件下でも反応が進行することが明らかとなり、さらに温度と圧力を加えることによって反応転化率が向上することが明らかとなった。
【0063】
<実施例3-1~3-5>
基質適応性を検討するため、下記に示す4-(クロロメチル)-1,3-ジオキシラン-2-オンと4-フェニルー1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応を実施した。
【0064】
(実施した反応)
【化3】
【化4】
【0065】
(使用した触媒の化学構造式)
resin-N(CH・HX
X=I(実施例3-2,3-3,3-5),Br(実施例3-1),Cl(実施例3-4)
resin=スチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂
【0066】
有機合成用触媒の合成反応は、以下の手順で行った。
[IRA98・HClの調製]
反応容器中で第三級アミノ基を有するアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA98(オルガノ株式会社製))の乾燥品2.21g、水30mLと、35%塩酸1.04gとを混合し、室温で1時間撹拌して反応させた。次いで、生成物をろ過し、ろ過物を水で洗浄後、減圧乾燥することによって、目的の有機合成用触媒であるIRA98・HClを得た。
【0067】
実施例3-1,3-2における4-(クロロメチル)-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応は、以下の手順で行った。
【0068】
反応容器中でエピクロロヒドリン0.463gに、水2.5gと、得られた有機合成用触媒とを所定量添加、混合した。二酸化炭素を充填したバルーンを装着し、大気圧下、室温で24時間撹拌して反応させた。反応後、有機合成用触媒をろ過によって除去し、粗4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンを得た。核磁気共鳴装置を用いてH-NMRを測定し、各スペクトルの積分値より4-メチル-1,3-ジオキシラン-2-オンの反応転化率(%)を求めた。結果を表3に示す。
【0069】
実施例3-3,3-4における4-(クロロメチル)-1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応は、以下の手順で行った。
【0070】
加圧反応容器中でエピクロロヒドリン1.85gに、得られた有機合成用触媒を所定量添加、混合した。0.3MPaの二酸化炭素を圧入し、50℃で24時間撹拌して反応させた。反応後、有機合成用触媒をろ過によって除去し、粗エピクロロヒドリンカーボネートを得た。核磁気共鳴装置を用いてH-NMRを測定し、各スペクトルの積分値より4-(クロロメチル)-1,3-ジオキシラン-2-オンの反応転化率(%)を求めた。結果を表3に示す。
【0071】
実施例3-5における4-フェニルー1,3-ジオキシラン-2-オンの合成反応は、以下の手順で行った。
【0072】
加圧反応容器中でスチレンオキシド2.40gに、得られた有機合成用触媒を所定量添加、混合した。0.3MPaの二酸化炭素を圧入し、50℃で24時間撹拌して反応させた。反応後、有機合成用触媒をろ過によって除去し、粗スチレンオキシドカーボネートを得た。核磁気共鳴装置を用いてH-NMRを測定し、各スペクトルの積分値より4-フェニルー1,3-ジオキシラン-2-オンの反応転化率(%)を求めた。結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
実験結果より置換基としてハロゲン化アルキルや芳香族を有する基質においても環状カーボネートを合成することができた。
【0075】
このように、実施例の触媒を用いることによって、触媒活性が高く、反応系中から容易に固液分離可能であり、高効率で環状カーボネート等の有機化合物を合成することができた。