(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174345
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】表示装置、およびヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20231130BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20231130BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20231130BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/02 B
G02B3/08
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087148
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 智明
(72)【発明者】
【氏名】三上 萌
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA03
2H042BA12
2H042BA13
2H042BA20
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA18
2H199DA43
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】表示装置の薄型化と発生する縞模様の低減。
【解決手段】画像を表す表示光100を出射する表示パネル31と、表示光100を形成するための光である基礎光110を放射する光源38と、を備えた表示装置20であって、表示パネル31に入射する基礎光110を拡散する第一拡散シート32と、第一拡散シート32と離間して配置され、第一拡散シート32に入射する基礎光110を拡散する第二拡散シート34と、第二拡散シート34に入射する基礎光110を屈折させる複数の光学素子を有する光学部材35と、を備える表示装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表す表示光を出射する表示パネルと、前記表示光を形成するための光である基礎光を放射する光源と、を備えた表示装置であって、
前記表示パネルに入射する前記基礎光を拡散する第一拡散構造と、
前記第一拡散構造と離間して配置され、前記第一拡散構造に入射する前記基礎光を拡散する第二拡散構造と、
前記第二拡散構造に入射する前記基礎光を屈折させる複数の光学素子を有する光学部材と、
を備える表示装置。
【請求項2】
前記第一拡散構造を備えた第一拡散シートと、
前記第二拡散構造を備えた第二拡散シートと、
前記第一拡散シートと前期第二拡散シートとの間に配置される透光部材と、
を備える請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第一拡散構造を備えた第一拡散シートと、
前記第二拡散構造を備えた第二拡散シートと、
前記第一拡散シートと前記第二拡散シートとを所定の間隔で保持する保持部材と、
を備える請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルに対向する第一の主面に前記第一拡散構造が設けられ、前記第一の主面と反対側の第二の主面に前記第二拡散構造が設けられる透光部材を備える
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記光学部材は、前記第二拡散構造側の面に前記光学素子が配置される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記光学部材は、前記第二拡散構造とは反対側の面に前記光学素子が配置される
請求項1または5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記光学部材は、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、フライアイレンズ、およびプリズムのうちの一つである
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記光学部材は、前記表示パネルに対向する第一の光学面と、前記第一の光学面と反対側の第二の光学面と、を備え、
前記第一の光学面、および前記第二の光学面の少なくともいずれか一方は、フレネル面、複数の凸レンズからなる光学面、複数の凹レンズからなる光学面、および複数のプリズムからなる光学面のうち少なくとも二種類の光学面で構成される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記光学部材は、前記表示パネルに対向する第一の光学面と、前記第一の光学面と反対側の第二の光学面と、を備え、
前記第一の光学面と前記第二の光学面とは、フレネル面、複数の凸レンズからなる光学面、複数の凹レンズからなる光学面、および複数のプリズムからなる光学面のうちの一つの光学面でそれぞれ構成され、
前記第一の光学面の種類と前記第二の光学面の種類とが異なっている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
画像を表す表示光を出射する表示パネルと、前記表示光を形成するための光である基礎光を放射する光源と、を備えた表示装置を備えるヘッドアップディスプレイであって、
前記表示パネルに入射する前記基礎光を拡散する第一拡散構造と、
前記第一拡散構造と離間して配置され、前記第一拡散構造に入射する前記基礎光を拡散する第二拡散構造と、
前記第二拡散構造に入射する前記基礎光を屈折させる複数の光学素子を有する光学部材と、
前記表示パネルから出射される前記表示光を反射するミラーと、
を備えるヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置、およびヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)とは、表示装置から所定の画像を表す表示光を出射し、当該画像の虚像を、車両のウインドシールド(フロントガラス)において車両の前方の景色上に重ね合わせて表示する車載機器である。
【0003】
上述した表示装置では、特許文献1に記載されるように、画像を表す表示光の領域ごとの輝度を均一にするためにバックライトからの光を発散させるフレネルレンズなどが用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置にフレネルレンズを使うと表示装置全体の薄型化を図ることができる。しかし、発明者は、フレネルパターンと称される光学部材の表面に設けられた微細構造による縞模様が虚像で視認され、視認される画像の品位を悪化させてしまうことを見出した。本発明者はさらに研究と実験を重ね、光学部材表面の微細構造のピッチを狭くすることで、縞模様を目立たなくさせることを見出したが、表示光の輝度が低下するという課題も見出した。
【0006】
本開示は、発明者の知見に基づくものであり、表示光の輝度の低下を抑制し、光学部材の微細構造による縞模様などの視認度合いを低下させる表示装置、およびヘッドアップディスプレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る表示装置は、画像を表す表示光を出射する表示パネルと、前記表示光を形成するための光である基礎光を放射する光源と、を備えた表示装置であって、前記表示パネルに入射する前記基礎光を拡散する第一拡散構造と、前記第一拡散構造と離間して配置され、前記第一拡散構造に入射する前記基礎光を拡散する第二拡散構造と、前記第二拡散構造に入射する前記基礎光を屈折させる複数の光学素子を有する光学部材と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係るヘッドアップディスプレイは、画像を表す表示光を出射する表示パネルと、前記表示光を形成するための光である基礎光を放射する光源と、を備えた表示装置を備えるヘッドアップディスプレイであって、前記表示パネルに入射する前記基礎光を拡散する第一拡散構造と、前記第一拡散構造と離間して配置され、前記第一拡散構造に入射する前記基礎光を拡散する第二拡散構造と、前記第二拡散構造に入射する前記基礎光を屈折させる複数の光学素子を有する光学部材と、前記表示パネルから出射される前記表示光を反射するミラーと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る表示装置、ヘッドアップディスプレイによれば、光学部材の微細構造による縞模様などの視認度合いの低下、輝度低下の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るヘッドアップディスプレイを搭載した車両を示す図である。
【
図2】実施の形態に係るヘッドアップディスプレイによりHUD画像が表示されるウインドシールドの領域を示す図である。
【
図3】実施の形態に係るヘッドアップディスプレイの構成を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る表示装置の分解斜視図である。
【
図6】光学部材としてのフレネルレンズを示す斜視図である。
【
図7】保持部材により所定の間隔に配置された拡散シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の第一の態様に係る表示装置は、画像を表す表示光を出射する表示パネルと、前記表示光を形成するための光である基礎光を放射する光源と、を備えた表示装置であって、前記表示パネルに入射する前記基礎光を拡散する第一拡散構造と、前記第一拡散構造と離間して配置され、前記第一拡散構造に入射する前記基礎光を拡散する第二拡散構造と、前記第二拡散構造に入射する前記基礎光を屈折させる複数の光学素子を有する光学部材と、を備える。
【0012】
本態様によれば、HAZE値(詳細は後述)が低い第一拡散構造、および第二拡散構造を用いて表示光の輝度の低下を抑制した場合でも、両拡散構造を離間して配置することにより複数の光学素子を有する光学部材に基づき表示光として出射される画像に発生する縞模様などを視認できない程度にまで低減することができる。
【0013】
本開示の第二の態様に係る表示装置は、前記第一の態様に加え、前記第一拡散構造を備えた第一拡散シートと、前記第二拡散構造を備えた第二拡散シートと、前記第一拡散シートと前期第二拡散シートとの間に配置される透光部材と、を備える。
【0014】
本態様によれば、第一拡散構造、および第二拡散構造をそれぞれ備えたシートを透光部材の両側にそれぞれ配置することで、第一拡散構造、および第二拡散構造を簡単な構成で安定して所定の間隔に配置することができる。
【0015】
本開示の第三の態様に係る表示装置は、前記第一の態様に加え、前記第一拡散構造を備えた第一拡散シートと、前記第二拡散構造を備えた第二拡散シートと、前記第一拡散シートと前記第二拡散シートとを所定の間隔で保持する保持部材と、を備える。
【0016】
本態様によれば第一拡散構造、および第二拡散構造をそれぞれ備えたシートを簡単な構成で所定の間隔に配置することができる。
【0017】
本開示の第四の態様に係る表示装置は、前記第一の態様に加え、前記表示パネルに対向する第一の主面に前記第一拡散構造が設けられ、前記第一の主面と反対側の第二の主面に前記第二拡散構造が設けられる透光部材を備える。
【0018】
本態様によれば、部品点数を削減しつつ所定の間隔で第一拡散構造と第二拡散構造とを配置することができる。
【0019】
本開示の第五の態様に係る表示装置は、前記第一の態様、前記第二の態様、前記第三の態様、および前記第四の態様のいずれかに加え、前記光学部材は、前記第二拡散構造側の面に前記光学素子が配置される。
【0020】
本開示の第六の態様によれば、前記第一の態様、前記第二の態様、前記第三の態様、前記第四の態様、および前記第五の態様のいずれかに加え、前記光学部材は、前記第二拡散構造とは反対側の面に前記光学素子が配置される。
【0021】
本開示の第七の態様によれば、前記第一の態様、前記第二の態様、前記第三の態様、前記第四の態様、前記第五の態様、および前記第六の態様のいずれかに加え、前記光学部材は、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、フライアイレンズ、およびプリズムのうちの一つである。
【0022】
本開示の第八の態様によれば、前記第一の態様、前記第二の態様、前記第三の態様、前記第四の態様、前記第五の態様、前記第六の態様、および前記第七の態様のいずれかに加え、前記光学部材は、前記表示パネルに対向する第一の光学面と、前記第一の光学面と反対側の第二の光学面と、を備え、前記第一の光学面、および前記第二の光学面の少なくともいずれか一方は、フレネル面、複数の凸レンズからなる光学面、複数の凹レンズからなる光学面、および複数のプリズムからなる光学面のうち少なくとも二種類の光学面で構成される。
【0023】
本開示の第九の態様によれば、前記第一の態様、前記第二の態様、前記第三の態様、前記第四の態様、前記第五の態様、前記第六の態様、および前記第七の態様のいずれかに加え、前記光学部材は、前記表示パネルに対向する第一の光学面と、前記第一の光学面と反対側の第二の光学面と、を備え、前記第一の光学面と前記第二の光学面とは、フレネル面、複数の凸レンズからなる光学面、複数の凹レンズからなる光学面、および複数のプリズムからなる光学面のうちの一つの光学面でそれぞれ構成され、前記第一の光学面の種類と前記第二の光学面の種類とが異なっている。
【0024】
本開示に係るヘッドアップディスプレイは、画像を表す表示光を出射する表示パネルと、前記表示光を形成するための光である基礎光を放射する光源と、を備えた表示装置を備えるヘッドアップディスプレイであって、前記表示パネルに入射する前記基礎光を拡散する第一拡散構造と、前記第一拡散構造と離間して配置され、前記第一拡散構造に入射する前記基礎光を拡散する第二拡散構造と、前記第二拡散構造に入射する前記基礎光を屈折させる複数の光学素子を有する光学部材と、前記表示パネルから出射される前記表示光を反射するミラーと、を備える。
【0025】
本ヘッドアップディスプレイによれば、HAZE値が低い第一拡散構造、および第二拡散構造を用いて表示光の輝度の低下を抑制した場合でも、両拡散構造を離間して配置することにより複数の光学素子を有する光学部材に基づき表示光として出射される虚像に発生する縞模様などを視認できない程度にまで低減することができる。
【0026】
以下、本開示に係る表示装置、および表示装置を備えたヘッドアップディスプレイの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示を説明するために一例を挙示するものであり、本開示を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0027】
また、図面は、本開示を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。また、図中に示す場合があるX軸、Y軸、Z軸は、図の説明のために任意に設定した直交座標を示している。つまりZ軸は、鉛直方向に沿う軸とは限らず、X軸、Y軸は、水平面内に存在するとは限らない。
【0028】
また、以下では複数の開示を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本開示に関する任意の構成要素として説明している。
【0029】
まず、
図1~
図3を参照しながら、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ2の構成について説明する。
図1は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ2を搭載した車両4を示す図である。
図2は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ2によりHUD画像8が表示されるウインドシールド10の領域12を示す図である。
図3は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ2の構成を示す図である。
【0030】
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ2は、自動車等の車両4のダッシュボード6の内部に配置されている。
図1~
図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ2では、虚像であるHUD画像8を表示するための表示光を、例えば車両4のウインドシールド10(表示媒体の一例)の運転席寄り下側の領域12に向けて出射する。表示光は、ウインドシールド10の領域12で運転者14に向けて反射する。これにより、運転者14は、ウインドシールド10の領域12において、虚像であるHUD画像8をウインドシールド10の前方の景色上に重ね合わせて見ることができる。すなわち、運転者14にとっては、HUD画像8は、あたかもウインドシールド10の前方の空間16に表示されているかのように見える。
【0031】
図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ2は、筐体18と、表示装置20と、第一のミラー22(ミラーの一例)と、第二のミラー24(ミラーの一例)とを備えている。
【0032】
筐体18は、箱形状に形成されており、例えばアルミニウム等の金属で形成されている。筐体18は、車両4のダッシュボード6の内部に配置されている。筐体18の内部には、表示装置20、第一のミラー22、および第二のミラー24が収納されている。筐体18の上面は、ウインドシールド10に対向するように配置されている。筐体18の上面には、開口部26が形成されている。この開口部26は、例えば透明な樹脂プレートで構成されたカバー部材28で覆われている。
【0033】
表示装置20は、HUD画像8を表示するための表示光を、第一のミラー22に向けて出射するためのPGU(Picture Generation Unit)である。表示装置20の構成については、後述する。
【0034】
第一のミラー22は、例えば平面ミラーであり、表示装置20からの表示光を第二のミラー24に向けて反射する。第二のミラー24は、例えば凹面ミラーであり、第一のミラー22からの表示光をウインドシールド10の領域12に向けて反射する。第二のミラー24からの表示光は、カバー部材28を透過してウインドシールド10の領域12で反射した後に、運転者14の目に入射する。
【0035】
なお、本実施の形態では、ヘッドアップディスプレイ2は、2つのミラー(第一のミラー22、および第二のミラー24)を備えるようにしたが、これに限定されず、1つのミラー、または3以上のミラーを備えるようにしてもよい。
【0036】
次に、
図4、および
図5を参照しながら、表示装置20の構成について説明する。
図4は、実施の形態に係る表示装置20の断面図である。
図5は、実施の形態に係る表示装置20の分解斜視図である。なお、筐体の図示は、省略している。
【0037】
図4に示すように、表示装置20は、画像が形成される表示光100を出射する装置であって、表示パネル31と、第一拡散シート32と、透光部材33と、第二拡散シート34と、光学部材の一つであるフレネルレンズ35と、光学部材の一つであるプリズム板36と、導光板37と、光源38と、を備えている。
【0038】
表示パネル31は、受光した基礎光110に基づき画像を表す表示光100を出射する部材である。本実施の形態の場合、表示パネル31は、空間光変調装置として機能する液晶パネルである。表示パネル31の背面(図中Z-側の面)に入射した基礎光110は、液晶パネルを透過して画像が形成され表示光100として射出する。
【0039】
第一拡散シート32は、表示パネル31に入射する基礎光110を拡散する第一拡散構造を備えたシート状の部材である。なお、シートとは、自重により撓む部材、および撓まない部材を含む。第一拡散構造とは、表示パネル31に入射する基礎光110の均斉度を向上する機能を有する構造である。具体的に第一拡散構造としては、透光性を備えた部材の表面に設けられた微小な凹凸構造、透光性を備えた部材の中に基礎光110を反射する微小粒子が分散状に配置された構造、透光性を備えた部材の中に微小な空洞が分散状に配置された構造などを例示することができる。第一拡散シート32は、表示パネル31を覆うことができる矩形のシートであり、少なくとも片面に微小な凹凸構造が設けられている。基礎光110が流れる方向において、第一拡散シート32は、表示パネル31の上流に配置され、第一拡散シート32と表示パネル31との間には他の部材は配置されなくてもかまわない。第一拡散シート32を構成する材料は、特に限定されるものではないが、PETなどの樹脂、ガラス等を挙示することができる。
【0040】
望ましくは、第一拡散シート32は、HAZE値が55%以下の低HAZE値のものを採用する。HAZE値を高くすると、フレネルレンズ35などの光学部材に基づき発生する表示光100の縞模様などを抑制することが可能であるが、表示光100の輝度が低下(例えば1/10にまで低下)するためである。本実施の形態の場合、30%以上、40%以下の範囲のHAZE値を実現できる第一拡散シート32が採用される。
【0041】
なお、HAZE値とは、曇り値などと呼ばれることもあるガラスやプラスチックの曇り具合を表す指標である。HAZE値が小さくなるほど透明ということを表している。
【0042】
透光部材33は、第一拡散シート32、および第二拡散シートを所定の間隔に配置する機能を有する部材である。透光部材33は、基礎光110を透過させることができる例えば白板ガラス等の透明なガラスプレート、プラスチックなどで構成された板状の部材である。透光部材33の厚み(図中Z軸方向の長さ)、つまり第一拡散シート32と第二拡散シート34との間隔は、0.5mm以上であることが好ましい。透光部材33の厚みが0.5mm未満の場合、高輝度の表示光100を維持しながら虚像として視認される縞模様を低減することが困難となる。なお、表示装置20をコンパクトに構成するため、透光部材33の厚みは10mm以下が好ましい。具体的に本実施の形態の場合、透光部材33の厚みは、1.9mmである。
【0043】
第二拡散シート34は、第一拡散構造を有する第一拡散シート32と離間して配置され、透光部材33を介して第一拡散シート32に入射する基礎光110を拡散する第二拡散構造を備えたシート状の部材である。第二拡散構造とは、第一拡散構造と同様、第一拡散構造に入射する基礎光110の均斉度を向上する機能を有する構造である。具体的に第二拡散構造としては、第一拡散構造と同様、透光性を備えた部材の表面に設けられた微小な凹凸構造、透光性を備えた部材の中に基礎光110を反射する微小粒子が分散状に配置された構造、透光性を備えた部材の中に微小な空洞が分散状に配置された構造などを例示することができる。第二拡散シート34は、第一拡散シート32と同様、表示パネル31を覆うことができる矩形のシートであり、少なくとも片面に微小な凹凸構造が設けられている。基礎光110が流れる方向において、第二拡散シート34は、透光部材33の上流に配置される。第一拡散シート32、および第二拡散シート34と透光部材33との間には他の部材が配置されてもかまわない。第二拡散シート34を構成する材料は、特に限定されるものではないが、PETなどの樹脂、ガラス等を挙示することができる。
【0044】
望ましくは、第二拡散シート34は、HAZE値が55%以下の低HAZE値のものを採用する。HAZE値を高くすると、フレネルレンズ35などの光学部材に基づき発生する表示光100の縞模様などを抑制することが可能であるが、表示光100の輝度が低下(例えば1/10にまで低下)するためである。本実施の形態の場合、30%以上、40%以下の範囲のHAZE値を実現できる第二拡散シート34が採用される。
【0045】
本実施の形態の場合、第二拡散シート34は、第一拡散シート32と同種のシートが採用されている。
【0046】
フレネルレンズ35は、基礎光110に基づき表示パネル31によって形成される表示光100、特に表示パネル31の周辺の表示光100をアイボックスへ効率的に向かわせるための光学部材である。本実施の形態の場合、基礎光110が流れる方向において、フレネルレンズ35は、第二拡散シート34の上流側に配置されている。フレネルレンズ35は、樹脂成形品である。
図6に示すように、フレネルレンズ35の表示パネル31側の光学面は、断面がのこぎり刃状で第一軸方向(図中X軸方向)に延在する光学素子が第一軸に直交する第二軸方向に並べて配置されたリニアフレネルレンズが形成されている。光学部材であるフレネルレンズ35は、第二拡散構造を備えた第二拡散シート34と光学素子の郡であるリニアフレネルレンズとが当接、または近接状態となるように配置されている。フレネルレンズ35のリニアフレネルレンズが設けられた光学面の反対側であるプリズム板36側の光学面は、球面、または非球面レンズを同心円状に分割して厚みを減らしたノコギリ状の断面の光学素子を持つ同心円フレネルレンズが形成されている。
【0047】
プリズム板36は、フレネルレンズ35と導光板37との間に配置される光学部材の一つである。本実施の形態の場合、基礎光110が流れる方向において、プリズム板36は、フレネルレンズ35の上流側、導光板37の下流側に配置されている。プリズム板36は、導光板37の出射面373から出射された基礎光110が表示パネル31を通過後、観察者の目に均一に向かうように、基礎光110の進行方向を屈折により変更する複数の光学素子を光学面に備えている。具体的には、表示パネル31の表示の中心から観察者に向かう表示光100の方向に近づくように変更する。
【0048】
導光板37は、一列に並んだ光源38から放射された基礎光110が入射され、入射された基礎光110が表示パネル31の所定の領域内に均一に入射するように導光する透明な材料、例えば樹脂材料などから作製されたパネル状の部材である。
【0049】
本実施の形態の場合、基礎光110が流れる方向において、導光板37は、プリズム板36の上流、光源38の下流に配置されている。光源38から放射される基礎光110の光軸は、第一軸(図中X軸)に沿っている。表示パネル31の所定の領域は、第一軸に平行な面(図中XY平面)に沿って広がっている。そこで、導光板37は、入射面371から入射した基礎光110を傾斜面372において反射して基礎光110の光軸を90度曲げ、表示パネル31に平行に対向する出射面373から出射する構造となっている。当該構造により、導光板37は、光源38から放射される基礎光110を表示パネル31の全体に広がるように導光する。
【0050】
光源38は、表示パネル31において表示光100を形成するための光である基礎光110を放射する。本実施の形態の場合、光源38から放射された基礎光110は、導光板37を通過中に進行方向が変更(図中X軸方向からZ軸方向に変更)され、プリズム板36と、フレネルレンズ35、第二拡散シート34、透光部材33、第一拡散シート32の記載順に透過し、表示パネル31に到達する。光源38の種類は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、LED(Light Emitting Diode)が採用されており、同一種類のLEDからなる複数の光源38が、導光板37に沿った状態で基板39に並べて実装されている。
【0051】
以上のように、本実施の形態に係る表示装置20は、光学部材にフレネルレンズ35が採用されている。これにより、通常の光学レンズを採用する場合に比べて表示装置20の薄型化(小型化)を実現している。フレネルレンズ35と表示パネル31との間に、所定の間隔で離間した状態で第一拡散シート32、および第二拡散シート34を配置している。これにより、フレネルレンズ35に基づき発生する表示光100内の縞模様を運転者が視認できない程度に軽減することができ、第一拡散シート32と第二拡散シート34との間隔が10mm以下(本実施の形態の場合2mm程度)であるため、表示装置20の薄型化にあまり影響しない。
【0052】
一枚の拡散シートによって表示光100内の縞模様を視認できない程度に低減することができるHAZE値(例えば87%)よりも低いHAZE値(例えば35%)の第一拡散シート32、および第二拡散シート34を採用しているため、表示光100の輝度・輝度むらの低下を許容範囲(運転者が気づかない程度)に抑えることができる。
【0053】
表示光100内の縞模様の低減は、例えば、フレネルレンズ35のフレネルピッチを表示パネル31の画素程度まで細かくすることにより実現できる。しかし、フレネルレンズ35の樹脂成形時に用いられる金型の微細加工が必要となり製造コストの増加に繋がる。また、フレネルレンズ35の先端のRを小さくすることによって縞模様を低減することも考えられるが、金型の加工が困難であり、加工できたとしても先端まで樹脂を充填することが困難である。これに対し、所定の間隔で配置された第一拡散シート32、第二拡散シート34を用いることで、容易に入手可能な樹脂製のフレネルレンズ35を採用しても簡単な構造で縞模様を低減することができる。
【0054】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0055】
例えば、
図7に示すように、表示装置20は、第一拡散シート32と第二拡散シート34とを所定の間隔で保持する保持部材40を備えてもかまわない。保持部材40は、第一拡散シート32の周縁部を保持する第一枠体41と、第二拡散シート34の周縁部を保持する第二枠体42と、を備えている。第一枠体41と第二枠体42とは、四隅に設けられた柱部43により連結されている。柱部43の長さにより第一拡散シート32と、第二拡散シート34との間隔が設定される。この場合、第一拡散シート32と第二拡散シート34との間には、透光部材33などの物体は存在しない空間が形成される。
【0056】
また、
図8に示すように、表示装置20は、第一拡散構造を備えた第一拡散シート32、および第二拡散構造を備えた第二拡散シート34を備えるのではなく、透光部材33の表示パネル31に対向する第一の主面に凹凸状の第一拡散構造51が設けられ、第一の主面と反対側の第二の主面に凹凸状の第二拡散構造52が設けられてもかまわない。
【0057】
また、表示パネル31として空間光変調装置である液晶パネルを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、光源38から出射される基礎光110であるレーザー光を反射する駆動ミラーを備えた反射スキャン装置60で反射角を変化させながら反射させることでレーザー光を表示パネル31にスキャンして照射する表示装置の場合、表示パネル31は、基礎光110であるレーザー光に基づき、画像を示す表示光100を形成するスクリーンであっても良い。
【0058】
また上記実施の形態では、フレネルレンズ35とプリズム板36の2つの光学部材を備えた表示装置20を例示したが、表示装置20は、一つの光学部材を備えてもよく、3以上の光学部材を備えてもかまわない。また、光学部材としては、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、フライアイレンズ、および微小な複数の突起、および窪みの少なくとも一方が出射面などに設けられたプリズムの中から選定してもよく、表示装置20が複数の光学部材を備える場合、選定される組み合わせは任意である。
【0059】
また、光学部材は、表示パネル31に対向する第一の光学面と、第一の光学面と反対側の第二の光学面と、を備え、第一の光学面、および第二の光学面の少なくともいずれか一方は、フレネル面、複数の凸レンズからなる光学面、複数の凹レンズからなる光学面、および複数のプリズムからなる光学面のうち少なくとも二種類の光学面で構成されてもかまわない。
【0060】
また、光学部材は、表示パネル31に対向する第一の光学面と、前記第一の光学面と反対側の第二の光学面と、を備え、第一の光学面と第二の光学面とは、フレネル面、複数の凸レンズからなる光学面、複数の凹レンズからなる光学面、および複数のプリズムからなる光学面のうちの一つの光学面でそれぞれ構成され、第一の光学面の種類と前記第二の光学面の種類とが異なっていてもかまわない。
【0061】
光学素子として複数の凸レンズを備えた光学部材としては、レンチキュラーレンズ、フライアイレンズなどを例示することができる。また、光学素子として複数の凹レンズを備えた光学部材としては、フライアイレンズを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示に係る表示装置は、例えば車両用のヘッドアップディスプレイに搭載されるPGU、その他の装置に搭載されるPGU等に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
2 ヘッドアップディスプレイ
4 車両
6 ダッシュボード
8 HUD画像
10 ウインドシールド
12 領域
14 運転者
16 空間
18 筐体
20 表示装置
22 第一のミラー
24 第二のミラー
26 開口部
28 カバー部材
31 表示パネル
32 第一拡散シート
33 透光部材
34 第二拡散シート
35 フレネルレンズ
36 プリズム板
37 導光板
38 光源
39 基板
40 保持部材
41 第一枠体
42 第二枠体
43 柱部
51 第一拡散構造
52 第二拡散構造
60 反射スキャン装置
100 表示光
110 基礎光
371 入射面
372 傾斜面
373 出射面