IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -機電一体モータユニット 図1
  • -機電一体モータユニット 図2
  • -機電一体モータユニット 図3
  • -機電一体モータユニット 図4
  • -機電一体モータユニット 図5
  • -機電一体モータユニット 図6
  • -機電一体モータユニット 図7
  • -機電一体モータユニット 図8
  • -機電一体モータユニット 図9
  • -機電一体モータユニット 図10
  • -機電一体モータユニット 図11
  • -機電一体モータユニット 図12
  • -機電一体モータユニット 図13
  • -機電一体モータユニット 図14
  • -機電一体モータユニット 図15
  • -機電一体モータユニット 図16
  • -機電一体モータユニット 図17
  • -機電一体モータユニット 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174374
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】機電一体モータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20231130BHJP
   H02K 9/22 20060101ALI20231130BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20231130BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K9/22 Z
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087201
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(71)【出願人】
【識別番号】502002050
【氏名又は名称】株式会社ピューズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 健裕
(72)【発明者】
【氏名】赤津 観
(72)【発明者】
【氏名】中村 享大
【テーマコード(参考)】
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP08
5H609PP09
5H609PP16
5H609QQ04
5H609QQ09
5H609QQ23
5H609RR26
5H609RR31
5H609RR46
5H611AA09
5H611BB04
5H611TT01
5H611TT02
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】効率的な冷却を行うことができる機電一体モータユニットを提供すること。
【解決手段】モータと、モータを駆動するインバータと、を備え、モータの軸線方向で、モータとインバータとを隣接させて一体化した機電一体モータユニットであって、モータは、円環状のステータコアとステータコアに設けられた巻線とを有し、軸線方向と直交する方向であるステータコアの径方向で、ステータコアと巻線とインバータとに隣接させて冷却器を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを駆動するインバータと、
を備え、
前記モータの軸線方向で、前記モータと前記インバータとを隣接させて一体化した機電一体モータユニットであって、
前記モータは、円環状のステータコアと前記ステータコアに設けられた巻線とを有し、
前記軸線方向と直交する方向である前記ステータコアの径方向で、前記ステータコアと前記巻線と前記インバータとに隣接させて冷却器を設けたことを特徴とする機電一体モータユニット。
【請求項2】
モータと、
前記モータを駆動するインバータと、
を備え、
前記モータの軸線方向で、前記モータと前記インバータとを隣接させて一体化した機電一体モータユニットであって、
前記モータは、円環状のステータコアと前記ステータコアに設けられた巻線とを有し、
前記軸線方向で前記巻線と前記インバータとの間に冷却器を挟み込んで設けたことを特徴とする機電一体モータユニット。
【請求項3】
前記ステータコアは、環状のバックヨーク、及び、前記バックヨークから径方向に突き出す複数のティースを有し、
前記巻線は、前記複数のティースの各々間のスロットに設けられた複数のスロット導体と、前記スロットから前記軸線方向で突出した前記スロット導体の部位と電気的に接続され、任意の前記スロット導体同士を電気的に接続する複数の渡線導体と、によって構成されており、
前記複数の渡線導体は、前記軸線方向で所定間隔をあけて積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機電一体モータユニット。
【請求項4】
前記渡線導体を覆う熱伝導性絶縁体を備えることを特徴とする請求項3に記載の機電一体モータユニット。
【請求項5】
前記複数の渡線導体がそれぞれ配置された複数の基板を備えることを特徴とする請求項3に記載の機電一体モータユニット。
【請求項6】
前記基板に熱伝導性絶縁層を設けることを特徴とする請求項5に記載の機電一体モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機電一体モータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータとインバータとの間に冷却通路を配置し、双方を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-292703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、モータとインバータとの冷却通路を共用化する技術が開示されているが、効率的に冷却するための配置や構成が考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、効率的な冷却を行うことができる機電一体モータユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る機電一体モータユニットは、モータと、前記モータを駆動するインバータと、を備え、前記モータの軸線方向で、前記モータと前記インバータとを隣接させて一体化した機電一体モータユニットであって、前記モータは、円環状のステータコアと前記ステータコアに設けられた巻線とを有し、前記軸線方向と直交する方向である前記ステータコアの径方向で、前記ステータコアと前記巻線と前記インバータとに隣接させて冷却器を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
これにより、モータとインバータとで冷却器を共用して効率的な冷却を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る機電一体モータユニットは、モータと、前記モータを駆動するインバータと、を備え、前記モータの軸線方向で、前記モータと前記インバータとを隣接させて一体化した機電一体モータユニットであって、前記モータは、円環状のステータコアと前記ステータコアに設けられた巻線とを有し、前記軸線方向で前記巻線と前記インバータとの間に冷却器を挟み込んで設けたことを特徴とするものである。
【0009】
これにより、モータとインバータとで冷却器を共用して効率的な冷却を行うことができる。
【0010】
また、上記において、前記ステータコアは、環状のバックヨーク、及び、前記バックヨークから径方向に突き出す複数のティースを有し、前記巻線は、前記複数のティースの各々間のスロットに設けられた複数のスロット導体と、前記スロットから前記軸線方向で突出した前記スロット導体の部位と電気的に接続され、任意の前記スロット導体同士を電気的に接続する複数の渡線導体と、によって構成されており、前記複数の渡線導体は、前記軸線方向で所定間隔をあけて積層されているようにしてもよい。
【0011】
これにより、モータの軸線方向の高さを抑えて、機電一体モータユニットの小型化を図ることができる。
【0012】
また、上記において、前記渡線導体を覆う熱伝導性絶縁体を備えるようにしてもよい。
【0013】
これにより、渡線導体同士の絶縁性を高めつつ、渡線導体から熱伝導性絶縁体を通って冷却器に熱が伝達されやすくなり冷却性能を向上させることができる。
【0014】
また、上記において、前記複数の渡線導体がそれぞれ配置された複数の基板を備えるようにしてもよい。
【0015】
これにより、渡線導体が配置された基板を軸線方向で積層することによって、スロット導体と渡線導体とをモータの軸線方向で端面側にて電気的に接続し、モータの軸線方向の高さを抑えて、機電一体モータユニットの小型化を図ることが可能となる。
【0016】
また、上記において、前記基板に熱伝導性絶縁層を設けるようにしてもよい。
【0017】
これにより、渡線導体同士の絶縁性を高めつつ、渡線導体から熱伝導性絶縁層を通って冷却器に熱が伝達されやすくなり冷却性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る機電一体モータユニットは、冷却通路を共用化しつつ効率的な冷却を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1に係る機電一体モータユニットの概略構成を示した図である。
図2図2は、実施形態1に係る機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分斜視図である。
図3図3は、スロット導体と渡線導体との接続部分を示した図である。
図4図4は、渡線導体の配線の一例を示した図である。
図5図5は、実施形態1に係る機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分断面図である。
図6図6は、モータ及びインバータから冷却器への放熱の経路についての説明図である。
図7図7は、径方向でステータの外周側からインバータ基板を張り出した場合の機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分断面図である。
図8図8は、実施形態1に係る他の構成例の機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分断面図である。
図9図9は、モータ及びインバータから冷却器への放熱の経路についての説明図である。
図10図10は、渡線部の基板及びスロット導体に設ける絶縁体についての説明図である。
図11図11は、実施形態2に係る機電一体モータユニットの概略構成を示した図である。
図12図12は、実施形態2に係る機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分斜視図である。
図13図13は、実施形態2に係る機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分断面図である。
図14図14は、モータ及びインバータから冷却器への放熱の経路についての説明図である。
図15図15は、実施形態2に係る他の構成例の機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分断面図である。
図16図16は、モータ及びインバータから冷却器への放熱の経路についての説明図である。
図17図17(a)は、半導体素子としてディスクリート素子を用いたインバータの一例を示した図である。図17(b)は、パワーモジュールを用いたインバータの一例を示した図である。
図18図18(a)は、半導体素子としてディスクリート素子を用いた場合におけるSiCチップの数を示した図である。図18(b)は、パワーモジュールを用いた場合におけるSiCチップの数を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下に、本発明に係る機電一体モータユニットの実施形態1について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
図1は、実施形態1に係る機電一体モータユニット1の概略構成を示した図である。図1に示すように、実施形態に係る機電一体モータユニット1は、モータ2とインバータ3とによって構成されている。機電一体モータユニット1は、例えば、電動車両に搭載される。モータ2は、ロータ軸21が設けられたロータ及びステータなどによって構成された回転電機であり、不図示の電源からインバータ3を経由して供給される電力によって駆動される。実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、軸線方向でモータ2のステータにおけるコイルエンド部としての渡線部4を介して、モータ2のロータ軸21の軸線方向でモータ2とインバータ3とが積層されて一体化された駆動ユニット(機電一体装置)である。
【0022】
図2は、実施形態1に係る機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分斜視図である。なお、図2では、モータ2を構成するロータの図示は省略している。
【0023】
モータ2のステータ22は、円筒状のステータコア221を有している。ステータコア221は、円環状のバックヨーク222と、バックヨーク222から径方向内側に向かって延びる複数のティース223とを含み、周方向で複数のティース223間にスロット224が形成されている。スロット224の数は任意であるが、本実施形態では、一例として、48個である。スロット224には、軸線方向に伸びる柱状の導体であるスロット導体225が複数配置されている。そして、スロット導体225に電流を流すことによってロータに駆動力を与えるための磁界を発生させることができる。
【0024】
インバータ3は、インバータ基板31、並びに、インバータ基板31に設けられた複数の半導体素子32及び配線パターン(不図示)などによって構成されている。インバータ3は、不図示のバッテリとモータ2のスロット導体225とにそれぞれ電気的に接続されているとともに、バッテリからモータ2に供給される電力を制御することによってモータ2の駆動を制御する。なお、インバータ3を構成する半導体素子32と配線パターンとは、インバータ基板31に設けることに限定されず、例えば、渡線部4に内蔵されていても構わないし、インバータ基板31とは別体で構成してインバータ基板31の上部に搭載することも可能である。
【0025】
渡線部4は、ステータ22の巻線(ステータコイル)における所謂コイルエンド部を構成するものである。図3及び図4に示すように、渡線部4は、軸線方向でステータコア221の端面上に設けられており、バックヨーク222の軸線方向で端面側に、任意のスロット導体225同士を電気的に繋ぐための複数の渡線導体41が設けられている。複数の渡線導体41は、それぞれ板状の厚銅導体で構成されている。渡線導体41は、例えば、図3に示すように、スロット導体225の軸線方向でスロット224内から突出した突出部分と電気的に接続されている。なお、渡線導体41とスロット導体225とを電気的に接続するための接合方法としては、例えば、半田付け、溶接、及び、嵌合などが適用可能である。また、複数の渡線導体41は、それぞれステータ22の径方向でスロット224側からバックヨーク222側に放射状に延び、バックヨーク222の上方で同心円状に配設され、軸線方向に所定間隔をあけて積層されている。
【0026】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、スロット導体225と渡線導体41とを別の導体で構成することにより、それぞれの導体断面積は同等にしつつ、導体が配置される場所に応じて適切な断面形状を取ることができる。一例として、スロット導体225としては、スロット224の形状に沿うように正方形に近い導体断面形状をとりつつ、渡線導体41としては、ステータ22のコイルエンド部の高さ方向を抑えるように、平板状の導体を配置することによって、機電一体モータユニット1の小型化を図ることが可能となる。また、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、軸線方向でバックヨーク222の上方だけではなくスロット224の上方にもインバータ3を配置することができるため、軸線方向の寸法増加を抑えつつ、ステータ22の軸線方向の端部側にインバータ3を配置した機電一体モータユニット1を提供することができる。また、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、モータ2とインバータ3とを接続する配線を短くすることができることから電力損失の低減を図ることが可能となる。
【0027】
冷却装置は、冷却水を用いて機電一体モータユニット1を冷却するために設けられている。この冷却装置は、ウォータポンプ、冷却器5、及び、ラジエータなどによって構成されている。ウォータポンプは、例えば、電動式であり、冷却液を冷却液回路で循環させるために設けられている。冷却器5は、矩形状の流路形成部材51の内部に冷却液53が流通する流路52が形成されており、流路52を流通する冷却液53がステータ22と渡線部4とインバータ3(インバータ基板31)とから熱を奪うように構成されている。ラジエータは、内部を流通する冷却液53と外気とで熱交換させることにより、外気によって冷却液53を冷却するために設けられている。
【0028】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1では、冷却器5の流路形成部材51が、ステータコア221の外周面と、渡線部4の絶縁材料42の外周面と、インバータ3(インバータ基板31)の外周面とに、高熱伝導性の絶縁体である熱伝導性絶縁シート62を介して接するように構成されている。これにより、ステータコア221と渡線部4とインバータ3とのそれぞれで冷却器5を共用して効率的な冷却を行うことができる。
【0029】
図5は、実施形態1に係る機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分断面図である。
【0030】
また、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、図5に示すように、渡線部4の渡線導体41を高熱伝導性の絶縁体である絶縁材料42で覆って(包んで)モールド化することによって、渡線導体同士の絶縁性を高めつつ、渡線導体41から絶縁材料42を通って冷却器5に熱が伝達されやすくなり冷却性能を向上させることができる。なお、図5中の符号61は、インバータ3のインバータ基板31と渡線部4の絶縁材料42との間に介在させた高熱伝導性の絶縁体である熱伝導性絶縁シートである。
【0031】
ここで、モータ2の発熱は、スロット導体225及び渡線導体41を電流が流れることによって生じる銅損が主である。スロット導体225からの熱は、図6に示すように、ステータコア221を半径方向に通過して冷却器5に到達する経路と、絶縁材料42を半径方向に通過して冷却器5に到達する経路とが存在する。また、渡線導体41からの熱は、図6に示すように、絶縁材料42を半径方向に通過して冷却器5に到達する経路が存在する。インバータ3では、半導体素子32からの熱が、インバータ基板31を径方向に通過して冷却器5に到達する経路と、インバータ基板31から渡線部4の絶縁材料42を径方向に通過して冷却器5に到達する経路とが存在する。実施形態1に係る機電一体モータユニット1では、インバータ3からの熱が渡線部4の絶縁材料42を経由して冷却器5に到達するため、渡線部4内でモータ2の熱とインバータ3の熱とが合成されるが、渡線部4の絶縁材料42を高熱伝導性の材料とすることによって、モータ2とインバータ3との放熱を一つの冷却器5で実現することができる。これにより、モータ2とインバータ3とで冷却器5の流路52を共用することによるウォータポンプのロス低減やスペース圧縮や冷却システムの簡素化などを図ることができる。また、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、モータ2とインバータ3とからの熱を同時に冷却器5へ放熱するための冷却構造をとることによって、小型化を図ることができる。
【0032】
また、実施形態1に係る機電一体モータユニット1は、図7に示すように、径方向でステータ22の外周側からインバータ3のインバータ基板31を張り出す形で、インバータ基板31と冷却器5の流路形成部材51とを接触するように構成してもよい。これにより、インバータ基板31から冷却器5に放熱されやすくなり、冷却器5によるインバータ3の冷却性を高めることができる。
【0033】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、渡線導体41を円周上に複数配置した薄板リング状の基板を、軸線方向に複数積層してステータ22のコイルエンド部としての渡線部4を構成してもよい。
【0034】
図8は、実施形態1に係る他の構成例の機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分断面図である。
【0035】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1として、図8に示した機電一体モータユニット1では、軸線方向でステータコア221の端面上に、渡線導体41が配置された基板43を軸線方向に8つ積層して渡線部4が構成されている。なお、積層する基板43の数としては、図8に示したような8つに限られるものではない。渡線導体41は、同一の基板43上において任意のスロット導体225同士をつなぐように、軸線方向でスロット224から突出したスロット導体225の突出部分と電気的に接続されている。なお、図8に示した機電一体モータユニット1では、基板43上に渡線導体41を配置しているが、プリプレグに導体が貼り合わされたプリント基板や厚銅基板などでも構わない。
【0036】
スロット導体225と渡線導体41との接合については、予めステータ22のスロット224内にスロット導体225を配置したうえで、層ごとに一体化された渡線導体41を一層ずつ被せて、各々対応するスロット導体225と渡線導体41とを接合した後に、その上方に次の層を重ねて接合させる方法を取っている。これらスロット導体225と渡線導体41との接合方法については、はんだ、溶接、嵌合、及び、3Dプリントなどを用いることができる。また、導線導体を一層毎に重ねるだけではなく、複数層を同時に重ねても構わないし、ステータ22における軸線方向片側のコイルエンド部を形成する渡線導体を一体化したうえで、スロット導体225と接合する方法でも構わない。また、渡線導体41とスロット導体225とをまとめて形成した後にステータ22に取り付けても構わない。
【0037】
図9は、モータ2及びインバータ3から冷却器5への放熱の経路についての説明図である。
【0038】
図9に示すように、スロット導体225からの熱は、ステータコア221を半径方向に通過して冷却器5に到達する経路と、渡線部4の基板43を半径方向に通過して冷却器5に到達する経路とが存在する。また、渡線導体41からの熱は、基板43を半径方向に通過して冷却器5に到達する経路が存在する。インバータ3では、半導体素子32からの熱が、インバータ基板31を径方向に追加して冷却器5に到達する経路と、インバータ基板31から軸線方向で渡線部4の基板43に伝わり基板43を径方向に通過して冷却器5に到達する経路とが存在する。これにより、図8及び図9に示した機電一体モータユニット1においては、モータ2とインバータ3との放熱を一つの冷却器5で実現することができ、モータ2とインバータ3とで冷却器5の流路52を共用することによるウォータポンプのロス低減やスペース圧縮や冷却システムの簡素化などを図ることができる。
【0039】
なお、図8及び図9に示した機電一体モータユニット1において、渡線部4で渡線導体41が軸線方向で重なり合う箇所については、異なる電位の渡線導体41が近接することがある。そのため、例えば、図10に示すように、基板43の裏面(軸線方向でステータコア221側の面)に絶縁体からなる絶縁層44を設けることが好ましい。これにより、渡線導体41同士の絶縁性を高めることができる。さらには、基板43の裏面に絶縁層44を設けることによって、渡線導体41から絶縁層44を通って冷却器5に熱が伝達されやすくなり冷却性能を向上させることができる。また、スロット導体225は、渡線導体41と電気的に接続されない導体部位に絶縁体からなる絶縁被膜226で覆うことが好ましい。これにより、スロット導体225と渡線導体41との絶縁性や、隣り合うスロット導体225同士の絶縁性を高めることができる。
【0040】
また、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、渡線導体41が設けられた基板43を軸線方向に複数積層した場合、軸線方向で隣り合う層間(軸線方向で隣り合う基板43間)に高熱伝導性の絶縁材料を挟み込む構成であってもよい。これにより、絶縁性を高めつつ、モータ2及びインバータ3から冷却器5への放熱性を向上させることができる。
【0041】
(実施形態2)
以下に、本発明に係る機電一体モータユニットの実施形態2について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。なお、本実施形態において実施形態1と同様の部分についての説明は適宜省略する。
【0042】
図11は、実施形態2に係る機電一体モータユニット1の概略構成を示した図である。図12は、実施形態2に係る機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分斜視図である。図13は、実施形態2に係る機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分断面図である。なお、図13に示した機電一体モータユニット1の渡線部4の構成は、実施形態1で図5に示した機電一体モータユニット1の渡線部4の構成と同様である。
【0043】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、図11図12及び図13に示すように、軸線方向でモータ2の渡線部4とインバータ3との間に冷却器5を挟み込む形で配置している。実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、図13に示すように、インバータ3(インバータ基板31)と冷却器5(流路形成部材51)との間に高熱伝導性の絶縁体からなる熱伝導性絶縁シート63を介在させており、渡線部4(絶縁材料42)と冷却器5(流路形成部材51)との間に高熱伝導性の絶縁体からなる熱伝導性絶縁シート64を介在させている。なお、熱伝導性絶縁シート63,64の少なくとも一方は無くてもよい。
【0044】
図14は、モータ2及びインバータ3から冷却器5への放熱の経路についての説明図である。
【0045】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、図14に示すように、スロット導体225からの熱は、渡線部4の絶縁材料42を軸線方向に通過して冷却器5に到達する経路と、ステータコア221に伝わった熱が渡線部4の絶縁材料42を軸線方向に通過して冷却器5に到達する経路とが存在する。また、渡線導体41からの熱は、絶縁材料42を軸線方向に通過して冷却器5に到達する経路が存在する。インバータ3では、半導体素子32からの熱が、インバータ基板31を軸線方向に追加して、軸線方向で流路形成部材51の渡線部4側とは反対側の面から冷却器5に到達する経路が存在する。
【0046】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1では、モータ2からの放熱とインバータ3からの放熱とが、冷却器5における流路形成部材51の軸線方向で対向する両面から別々になされるため、双方の熱が冷却器5に到達するまで干渉することがなく、効率よく冷却液53に熱を伝えることが可能となる。これにより、実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、モータ2とインバータ3との放熱を一つの冷却器5で実現することができ、モータ2とインバータ3とで冷却器5の流路52を共用することによるウォータポンプのロス低減やスペース圧縮や冷却システムの簡素化などを図ることができる。また、実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、モータ2とインバータ3とからの熱を同時に冷却器5へ放熱するための冷却構造をとることによって、小型化を図ることができる。
【0047】
また、実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、渡線導体41を円周上に複数配置した薄板リング状の基板を、軸線方向に複数積層してステータ22のコイルエンド部としての渡線部4を構成してもよい。
【0048】
図15は、実施形態2に係る他の構成例の機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分断面図である。
【0049】
図15に示した機電一体モータユニット1の渡線部4の構成は、実施形態1で図8に示した機電一体モータユニット1の渡線部4の構成と同様であり、軸線方向で渡線部4とインバータ3との間に冷却器5を挟み込む形で配置している。図15に示した機電一体モータユニット1においては、インバータ3(インバータ基板31)と冷却器5(流路形成部材51)との間に高熱伝導性の絶縁体からなる熱伝導性絶縁シート63を介在させており、渡線部4(絶縁材料42)と冷却器5(流路形成部材51)との間に高熱伝導性の絶縁体からなる熱伝導性絶縁シート64を介在させている。なお、熱伝導性絶縁シート63,64の少なくとも一方は無くてもよい。
【0050】
図16は、モータ2及びインバータ3から冷却器5への放熱の経路についての説明図である。
【0051】
図16に示すように、スロット導体225からの熱が、軸線方向で渡線部4の基板43に伝わって冷却器5に到達する経路と、ステータコア221に伝わってから軸線方向で渡線部4の基板43に伝わって冷却器5に到達する経路とが存在する。また、渡線導体41からの熱が、軸線方向で基板43に伝わって冷却器5に到達する経路が存在する。インバータ3では、半導体素子32からの熱が、軸線方向でインバータ基板31に伝わって、軸線方向で流路形成部材51の渡線部4側とは反対側の面から冷却器5に到達する経路が存在する。
【0052】
これにより、図15及び図16に示した機電一体モータユニット1においては、モータ2とインバータ3との放熱を一つの冷却器5で実現することができ、モータ2とインバータ3とで冷却器5の流路52を共用することによるウォータポンプのロス低減やスペース圧縮や冷却システムの簡素化などを図ることができる。
【0053】
図17(a)は、半導体素子32としてディスクリート素子を用いたインバータ3の一例を示した図である。図17(b)は、パワーモジュール320を用いたインバータ3の一例を示した図である。図18(a)は、半導体素子32としてディスクリート素子を用いた場合におけるスイッチング素子(例えば、Siチップ、SiCチップ、及び、GaNチップなど)32aの数を示した図である。図18(b)は、パワーモジュール320を用いた場合におけるスイッチング素子320aの数を示した図である。
【0054】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、図17(a)に示すように、インバータ3としてインバータ基板31に設ける半導体素子32として、例えば、ディスクリート素子を用いることができるが、図17(b)に示すように、パワーモジュール320を用いても構わない。これにより、実施形態2に係る機電一体モータユニット1では、例えば、図18(a)に示すように、半導体素子32としてディスクリート素子を使用して、同じ実装面積の中で1レグあたりの半導体素子32を構成するスイッチング素子32aの数が2つの場合に比べて、図18(b)に示すように、パワーモジュール320を使用することにより、同じ実装面積の中で1レグあたりのパワーモジュール320を構成するスイッチング素子320aの数を4つに増やすことが可能となる。また、パワーモジュール320を使用することによって、スイッチング素子320aから冷却器5までの放熱経路においてインバータ基板31を省略できるため、熱抵抗の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 機電一体モータユニット
2 モータ
3 インバータ
4 渡線部
5 冷却器
21 ロータ軸
22 ステータ
31 インバータ基板
32 半導体素子
32a スイッチング素子
41 渡線導体
42 絶縁材料
43 基板
44 絶縁層
51 流路形成部材
52 流路
53 冷却液
61,62,63,64 熱伝導性絶縁シート
221 ステータコア
222 バックヨーク
223 ティース
224 スロット
225 スロット導体
226 絶縁被膜
320 パワーモジュール
320a スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18