(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174375
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】機電一体モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20231130BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20231130BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087202
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(71)【出願人】
【識別番号】502002050
【氏名又は名称】株式会社ピューズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 健裕
(72)【発明者】
【氏名】赤津 観
(72)【発明者】
【氏名】中村 享大
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB08
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC14
5H604QB01
5H604QB04
5H604QB14
5H611BB01
5H611BB04
5H611TT01
5H611TT02
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】小型化を図ることができる機電一体モータユニットを提供すること。
【解決手段】モータと、モータを駆動するインバータと、を備え、モータの軸線方向で、モータとインバータとを隣接させて一体化した機電一体モータユニットであって、モータは、環状のバックヨーク、及び、バックヨークから径方向に突き出す複数のティースを有するステータコアと、複数のティースの各々間のスロットに設けられた複数のスロット導体と、スロットから軸線方向で突出したスロット導体の部位と電気的に接続され、任意のスロット導体同士を電気的に接続する複数の渡線導体と、を有し、複数の渡線導体は、軸線方向で所定間隔をあけて積層されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを駆動するインバータと、
を備え、
前記モータの軸線方向で、前記モータと前記インバータとを隣接させて一体化した機電一体モータユニットであって、
前記モータは、
環状のバックヨーク、及び、前記バックヨークから径方向に突き出す複数のティースを有するステータコアと、
前記複数のティースの各々間のスロットに設けられた複数のスロット導体と、
前記スロットから前記軸線方向で突出した前記スロット導体の部位と電気的に接続され、任意の前記スロット導体同士を電気的に接続する複数の渡線導体と、
を有し、
前記複数の渡線導体は、前記軸線方向で所定間隔をあけて積層されていることを特徴とする機電一体モータユニット。
【請求項2】
前記複数の渡線導体は、それぞれ板状であって、前記スロット側から径方向で前記バックヨーク側に放射状に延び、前記バックヨークの上方で同心円状に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の機電一体モータユニット。
【請求項3】
前記渡線導体を覆う絶縁体を備えることを特徴とする請求項2に記載の機電一体モータユニット。
【請求項4】
前記複数の渡線導体がそれぞれ配置された複数の基板を備えることを特徴とする請求項1に記載の機電一体モータユニット。
【請求項5】
前記基板に絶縁層を設けることを特徴とする請求項4に記載の機電一体モータユニット。
【請求項6】
前記スロット導体の前記渡線導体と電気的に接続されている部分以外の部位を覆う絶縁体を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の機電一体モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機電一体モータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータケースの上側にインバータケースを密接させて配置して、モータとインバータとを一体的に合体させて構成した機電一体モータユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された機電一体モータユニットにおいては、モータケースに加えてインバータケースの高さ寸法が必要になるため、小型化が困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、小型化を図ることができる機電一体モータユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る機電一体モータユニットは、モータと、前記モータを駆動するインバータと、を備え、前記モータの軸線方向で、前記モータと前記インバータとを隣接させて一体化した機電一体モータユニットであって、前記モータは、環状のバックヨーク、及び、前記バックヨークから径方向に突き出す複数のティースを有するステータコアと、前記複数のティースの各々間のスロットに設けられた複数のスロット導体と、前記スロットから前記軸線方向で突出した前記スロット導体の部位と電気的に接続され、任意の前記スロット導体同士を電気的に接続する複数の渡線導体と、を有し、前記複数の渡線導体は、前記軸線方向で所定間隔をあけて積層されていることを特徴とするものである。
【0007】
これにより、モータの軸線方向の高さを抑えて、機電一体モータユニットの小型化を図ることができる。
【0008】
また、上記において、前記複数の渡線導体は、それぞれ板状であって、前記スロット側から径方向で前記バックヨーク側に放射状に延び、前記バックヨークの上方で同心円状に配設されているようにしてもよい。
【0009】
これにより、同一の層内で導体密度を高くすることが可能となる。
【0010】
また、上記において、前記渡線導体を覆う絶縁体を備えるようにしてもよい。
【0011】
これにより、渡線導体同士の絶縁性を高めることができる。
【0012】
また、上記において、前記複数の渡線導体がそれぞれ配置された複数の基板を備えるようにしてもよい。
【0013】
これにより、渡線導体が配置された基板を軸線方向で積層することによって、スロット導体と渡線導体とをモータの軸線方向で端面側にて電気的に接続し、モータの軸線方向の高さを抑えて、機電一体モータユニットの小型化を図ることが可能となる。
【0014】
また、上記において、前記基板に絶縁層を設けるようにしてもよい。
【0015】
これにより、渡線導体同士の絶縁性を高めることができる。
【0016】
また、上記において、前記スロット導体の前記渡線導体と電気的に接続されている部分以外の部位を覆う絶縁体を設けるようにしてもよい。
【0017】
これにより、スロット導体と渡線導体との絶縁性や、隣り合うスロット導体同士の絶縁性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る機電一体モータユニットは、モータの軸線方向の高さを抑えて、小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る機電一体モータユニットの概略構成を示した図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分斜視図である。
【
図3】
図3は、スロット導体と渡線導体との接続部分を示した図である。
【
図4】
図4は、渡線導体の配線の一例を示した図である。
【
図5】
図5は、ステータの4系統の巻線を並列で設けてインバータを多重化した場合を示した図である。
【
図6】
図6は、インバータ基板を周方向で2等分して多重化したインバータの一例を示した図である。
【
図7】
図7は、インバータの実装面積についての説明図である。
【
図8】
図8は、渡線導体の配線の他例を示した図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る機電一体モータユニットを軸線方向で切断した部分断面である。
【
図12】
図12は、渡線部の基板及びスロット導体に設ける絶縁体の一例についての説明図である。
【
図13】
図13は、スロット導体の形状の一例についての説明図である。
【
図14】
図14は、同一の基板に形成した三相の導体パターンの一例を示した図である。
【
図15】
図15は、導体パターンが形成された扇形状基板を用いて構成したインバータの一例を示した図である。
【
図16】
図16は、ティース及びスロットの真上のスペースを、スロット導体と渡線導体との結線領域として使用した場合についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下に、本発明に係る機電一体モータユニットの実施形態1について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
図1は、実施形態1に係る機電一体モータユニット1の概略構成を示した図である。
【0022】
図1に示すように、実施形態に係る機電一体モータユニット1は、モータ2とインバータ3とによって構成されている。機電一体モータユニット1は、例えば、電動車両に搭載される。モータ2は、ロータ軸21が設けられたロータ及びステータなどによって構成された回転電機であり、不図示の電源からインバータ3を経由して供給される電力によって駆動される。実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、軸線方向でモータ2のステータ22におけるコイルエンド部としての渡線部4を介して、モータ2のロータ軸21の軸線方向でモータ2とインバータ3とが積層されて一体化された駆動ユニット(機電一体装置)である。なお、実施形態1に係る機電一体モータユニット1では、ステータ22の電気的に独立した巻線の系統が4系統である場合について説明するが、巻線の系統の数が1系統、2系統及び3系統の場合にも本発明を適用することができる。
【0023】
図2は、実施形態1に係る機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分斜視図である。なお、
図2では、モータ2を構成するロータの図示は省略している。
【0024】
モータ2のステータ22は、円筒状のステータコア221を有している。ステータコア221は、円環状のバックヨーク222と、バックヨーク222から径方向内側に向かって延びる複数のティース223とを含み、周方向で複数のティース223間にスロット224が形成されている。スロット224の数は任意であるが、本実施形態では、一例として、48個である。スロット224には、軸線方向に延びる柱状の導体であるスロット導体225が複数配置されている。本実施形態においては、一つのスロット224に対して4つのスロット導体225が配置されている。
【0025】
図3は、スロット導体225と渡線導体41との接続部分を示した図である。
図4は、渡線導体41の配線の一例を示した図である。
【0026】
渡線部4は、ステータ22の巻線(ステータコイル)における所謂コイルエンド部を構成するものである。
図3及び
図4に示すように、渡線部4は、軸線方向でステータコア221の端面上に設けられており、バックヨーク222の軸線方向で端面側に、任意のスロット導体225同士を電気的に繋ぐための複数の渡線導体41が設けられている。複数の渡線導体41は、それぞれ板状の厚銅導体で構成されている。また、複数の渡線導体41は、それぞれステータ22の径方向でスロット224側からバックヨーク222側に放射状に延び、バックヨーク222の上方で同心円状に配設され、軸線方向に所定間隔をあけて積層されている。
【0027】
渡線導体41は、例えば、
図3に示すように、スロット導体225の軸線方向でスロット224内から突出した突出部分と電気的に接続されている。なお、渡線導体41とスロット導体225とを電気的に接続するための接合方法としては、例えば、半田付け、溶接、及び、嵌合などが適用可能である。
【0028】
そして、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、スロット導体225と渡線導体41とによって構成されたステータ22の巻線にインバータ3から3相交流電力を供給して電流を流すことにより、モータ2のロータに駆動力を与えるための磁界を発生させることができる。
【0029】
インバータ3は、
図2に示すように、インバータ基板31、並びに、インバータ基板31に設けられた複数の半導体素子32及び配線パターン(不図示)などによって構成されている。インバータ3は、不図示のバッテリとモータ2のスロット導体225とにそれぞれ電気的に接続されているとともに、バッテリからモータ2に供給される電力を制御することによってモータ2の駆動を制御する。なお、インバータ3を構成する半導体素子32と配線パターンとは、インバータ基板31に設けることに限定されず、例えば、渡線部4に内蔵されていても構わないし、インバータ基板31とは別体で構成してインバータ基板31の上部に搭載することも可能である。なお、インバータ3については、ディスクリートのパワー素子を搭載したプリント基板でも構わないし、パワー素子をケースに集積させたスイッチングモジュールでも構わない。
【0030】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、モータ2の軸線方向の両端面にそれぞれインバータ3を配置して多重化する構造を採用して、系統を多重化することによって、冗長性を確保することが可能となっている。
【0031】
図5は、ステータ22の4系統の巻線を並列で設けてインバータ3を多重化した場合を示した図である。
【0032】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、
図5に示すように、ステータ22の電気的に独立した巻線の系統が第1系統巻線40Aと第2系統巻線40Bと第3系統巻線40Cと第4系統巻線40Dとの4系統であり、ステータ22の巻線(導体)の結線構成が、各系統がスター結線されているクローズ巻線構成である。なお、ステータ22の巻線の結線構成としては、中性点を持たないオープン巻線として構成してもよく、これにより冗長性を向上させることができる。4系統の巻線である第1系統巻線40Aと第2系統巻線40Bと第3系統巻線40Cと第4系統巻線40Dとは、それぞれに対応した4系統の第1系統インバータ30Aと第2系統インバータ30Bと第3系統インバータ30Cと第4系統インバータ30Dとに接続されている。4系統の第1系統インバータ30Aと第2系統インバータ30Bと第3系統インバータ30Cと第4系統インバータ30Dとは、互いに直列で接続されており、第1インバータ系統4Aに接続された電源5から直流電力が供給される。第1系統インバータ30Aと第2系統インバータ30Bと第3系統インバータ30Cと第4系統インバータ30Dとに供給された直流電力は、各系統に応じた交流電力に変換されて、第1系統巻線40Aと第2系統巻線40Bと第3系統巻線40Cと第4系統巻線40Dとに供給される。
【0033】
なお、ここでは、ステータ22の巻線の結線構成が4並列構成(並列数が4)での例を示しているが、4並列構成(並列数が4)に限定されるものではない。すなわち、ステータ22の電気的に独立した巻線の系統が2系統以上であって、ステータ22の巻線の結線構成を2並列構成以上(並列数が2以上)とすることによって、冗長性を向上させることができる。
【0034】
図6は、インバータ基板31を周方向で2等分して多重化したインバータ3の一例を示した図である。
【0035】
図6に示すように、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、U相、V相、W相の3相のパワーモジュール320U,320V,320Wを1セットとして2セット分が、モータ2の軸線方向で両端側に設けられたインバータ基板31にそれぞれ設けられている。なお、3相のパワーモジュール320U,320V,320Wは、それぞれ4つの半導体素子32などによって構成されている。
【0036】
具体的に、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、
図6に示すように、モータ2の軸線方向で片側のインバータ基板31を周方向で2等分して、一方に1セット目の3相のパワーモジュール320U,320V,320Wを配置して第1系統インバータ30Aを構成し、他方に2セット目の3相のパワーモジュール320U,320V,320Wを配置して第2系統インバータ30Bを構成している。なお、同様に、図示は省略するが、モータ2の軸線方向で残りの片側のインバータ基板31を周方向で2等分して、一方に1セット目の3相のパワーモジュール320U,320V,320Wを配置して第3系統インバータ30Cを構成し、他方に2セット目の3相のパワーモジュール320U,320V,320Wを配置して第4系統インバータ30Dを構成する。このように、インバータ3を第1系統インバータ30A~第4系統インバータ30Dによって多重化を行う構成を採用することにより、冗長性を向上させることができる。なお、モータ2の軸線方向で片側に設けるインバータ3の系統数としては、2系統に限定させるものではなく、2系統以上とすることによって、冗長性を向上させることができる。また、インバータ基板31に配置する3相のパワーモジュール320U,320V,320Wは、1セット分だけであってもよいし、3セット以上配置しても構わない。
【0037】
図7は、インバータ3の実装面積についての説明図である。
【0038】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、
図7に示すように、インバータ基板31の径方向における大きさとして、ステータコア221の内径及び外径からインバータ基板31の内縁部31a及び外縁部31bがはみ出でるようにしてもよい。これにより、ステータコア221の内径及び外径からインバータ基板31の内縁部31a及び外縁部31bがはみ出ない場合よりも、インバータ基板31に半導体素子32などを実装することが可能な実装面積を拡大することができる。これにより、軸線方向におけるインバータ3の体積を抑えることができ、冗長性を保ちつつ、機電一体モータユニット1の小型化が可能となる。
【0039】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、ステータ22の巻線をスロット導体225と渡線導体41とを電気的に接続することによって構成するとともに、スロット導体225と渡線導体41とを別の導体で構成することにより、各導体が配置される場所に応じて適切な断面形状を取ることができる。一例として、スロット導体225としては、スロット224の形状に沿うように正方形に近い導体断面形状をとりつつ、渡線導体41としては、渡線部4の軸線方向の高さを抑えるように、板状の導体を配置することによって、機電一体モータユニット1の小型化を図ることが可能となる。
【0040】
また、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、軸線方向でバックヨーク222の上方だけではなくスロット224の上方にもインバータ3を配置することができるため、軸線方向の寸法増加を抑えつつ、モータ2の軸線方向で端部側にインバータ3を配置した機電一体モータユニット1を提供することができる。また、実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、モータ2とインバータ3とを接続する配線を短くすることができることから電力損失の低減を図ることが可能となる。
【0041】
ここで、スロット224から軸線方向に伸ばされるスロット導体225と、バックヨーク222から放射状に伸ばされる渡線導体41とは、互いが交差する箇所で、半田付けやレーザ溶接、嵌合接合などを用いて電気的に接続される。このとき、同一平面内(同一の層内)でスロット導体225と渡線導体41との接続部分が隣り合っている場合には、隣り合った接続部分における絶縁距離が短くなってしまい、スロット導体225間のショートを引き起こすおそれがある。こうした隣り合った接続部分におけるショートを抑制するために、例えば、
図8に示すように、同一平面内(同一の層内)におけるスロット導体225と渡線導体41との接続部分の間隔を絶縁距離L1が得られるように広げることによって、絶縁を確保した状態でスロット導体225と渡線導体41とを接続することが可能となり、絶縁性の向上を図ることができる。
【0042】
図9は、実施形態1に係る機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分断面図である。なお、
図9中の符号61は、インバータ3のインバータ基板31と渡線部4の絶縁材60との間に介在させた絶縁シートである。
【0043】
渡線部4において渡線導体41が軸線方向で重なり合う箇所については、異なる電位の渡線導体41が近接することがある。そのため、例えば、
図9に示すように、複数の渡線導体41のそれぞれを絶縁体である絶縁材60で覆って(包んで)モールド化することが好ましい。これにより、渡線導体41同士の絶縁性を高めることができる。
【0044】
実施形態1に係る機電一体モータユニット1においては、複数のスロット224を通るスロット導体225と、渡線部4に設けられた渡線導体41とを、別々の導体で構成したうえで、スロット導体225と渡線導体41とをモータ2の軸線方向で端面側にて電気的に接続している。そして、実施形態1に係る機電一体モータユニット1では、複数の板状の渡線導体41を軸線方向で積層して配置することによって、渡線部4の軸線方向の高さ、ひいては、モータ2の軸線方向の高さを抑えることにより、機電一体モータユニット1の小型化を図ることが可能となる。
【0045】
(実施形態2)
以下に、本発明に係る機電一体モータユニットの実施形態2について説明する。なお、本実施形態において実施形態1と同様の部分についての説明は適宜省略する。実施形態2に係る機電一体モータユニットにおいては、渡線導体を周方向に複数配置した複数の薄板リング状の基板を、軸線方向に積層して渡線部を構成している。
【0046】
図10は、実施形態2に係る機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分斜視図である。
図11は、実施形態2に係る機電一体モータユニット1を軸線方向で切断した部分断面である。
【0047】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、軸線方向でステータコア221の端面上に、渡線導体41が配置された基板42を軸線方向に8つ積層して渡線部4が構成されている。なお、積層する基板42の数としては、
図10及び
図11などに示したような8つに限られるものではない。渡線導体41は、同一の基板42上において任意のスロット導体225同士をつなぐように、軸線方向でスロット224から突出したスロット導体225の突出部分と電気的に接続されている。なお、実施形態2に係る機電一体モータユニット1では、基板42上に渡線導体41を配置しているが、プリプレグに導体が貼り合わされたプリント基板や厚銅基板などでも構わない。
【0048】
スロット導体225と渡線導体41との接合については、予めステータ22のスロット224内にスロット導体225を配置したうえで、層ごとに一体化された渡線導体41を一層ずつ被せて、各々対応するスロット導体225と渡線導体41とを接合した後に、その上方に次の層を重ねて接合させる方法を取っている。これらスロット導体225と渡線導体41との接合方法については、はんだ、溶接、嵌合、及び、3Dプリントなどを用いることができる。また、導線導体を一層毎に重ねるだけではなく、複数層を同時に重ねても構わないし、ステータ22における軸線方向片側のコイルエンド部を形成する渡線導体を一体化したうえで、スロット導体225と接合する方法でも構わない。また、渡線導体41とスロット導体225とをまとめて形成した後にステータ22に取り付けても構わない。
【0049】
図12は、渡線部4の基板42及びスロット導体225に設ける絶縁体の一例についての説明図である。
【0050】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1において、渡線部4で渡線導体41が軸線方向で重なり合う箇所については、異なる電位の渡線導体41が近接することがある。そのため、例えば、
図12に示すように、基板42の裏面(軸線方向でステータコア221側の面)に絶縁体からなる絶縁層43を設けることが好ましい。また、スロット導体225は、渡線導体41と電気的に接続されない導体部位に絶縁体からなる絶縁被膜226で覆うことが好ましい。これにより、スロット導体225と渡線導体41との絶縁性や、隣り合うスロット導体225同士の絶縁性を高めることができる。
【0051】
図12に示すように、スロット導体225は、スロット導体225におけるスロット224内から軸線方向に突出した導体部位225aのうち、軸線方向の端部が渡線導体41と電気的に接続されている。そして、導体部位225aのうち、渡線導体41と電気的に接続されない部分は絶縁体からなる絶縁被膜226で覆うことが好ましい。また、スロット導体225におけるスロット224内に位置する導体部位225bも絶縁被膜226で覆うことが好ましい。これにより、スロット導体225とは電気的に接続されない渡線導体41との絶縁性や、隣り合うスロット導体225同士の絶縁性を高めることができる。なお、渡線導体41とは電気的に接続されないスロット導体225の導体部位に、後から絶縁体を被せる構成であっても構わない。
【0052】
図13は、スロット導体225の形状の一例についての説明図である。
【0053】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1において、スロット導体225の形状としては、スロット導体225のスロット224から軸線方向に突出した導体部位225aを、
図13に示すように軸線方向と直交する方向の断面が円形に近い断面形状とするとともに、スロット224内に位置する導体部位225bを、
図13に示すように軸線方向と直交する方向の断面が正方形に近い断面形状とするのが好ましい。これにより、導体部位225aの前記断面を円形状孔42aの形状に沿わせるとともに、導体部位225bの前記断面をスロット224の形状に沿わせることによって、スロット224へのスロット導体225の設置性、及び、スロット導体225と渡線導体41との接合性を向上させることができる。
【0054】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、スロット導体225と渡線導体41とを別々の導体で構成したうえで、渡線導体41を円周上に複数配置した複数の薄板リング状の基板42を軸線方向で積層することによって、スロット導体225と渡線導体41とをモータ2の軸線方向で端面側にて電気的に接続している。これにより、実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、ステータ22のコイルエンド部としての渡線部4の軸線方向の高さ、ひいては、モータ2の軸線方向の高さを抑えて、機電一体モータユニット1の小型化を図ることが可能となる。
【0055】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1では、ステータ22の巻線をスロット導体225と渡線導体41とで構成し、ステータ22の巻線構成を同心巻とすることによって、同一の基板42内(同一の層内)で、ティース223側から延びている渡線導体41の部分と、バックヨーク222側から延びている渡線導体41の部分とを交差させることなく、導体密度を高くすることが可能となる。また、積層する層(基板42)の数を少なくすることが可能となり、ステータ22のコイルエンド部としての渡線部4の小型化を図ることができる。
【0056】
図14は、同一の基板42に形成した三相の導体パターン410U,410V,410Wの一例を示した図である。
【0057】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1では、ステータ22の巻線をスロット導体225と渡線導体41とで構成することによって、例えば、
図14に示すように、異なる相の導体パターンが近接しないように、周方向で絶縁距離L2だけあけて各相の導体パターン410U,410V,410Wを配置することが可能となる。これにより、実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、同一の基板42内で絶縁距離L2を確保しつつ、同一の基板42内で各相の導体パターン410U,410V,410Wを構成する複数の渡線導体41の配置密度を高くすることができ、渡線部4で積層する層(基板42)の数を少なくすることが可能となり、渡線部4の小型化を図ることができる。
【0058】
図15は、渡線部4で導体パターンが形成された扇形状基板を用いた場合についての説明図である。
【0059】
実施形態2に係る機電一体モータユニット1では、
図15に示すように、渡線部4の基板を、U相、V相、W相の三相の導体パターン410U,410V,410Wのそれぞれに対応した扇形状基板42U,42V,42Wに分割し、扇形状基板42U,42V,42Wを周方向で隣接させて円環形状(
図15では半円環形状)に配置してもよい。この際、扇形状基板42U,42V,42Wに形成される導体パターン410U,410V,410Wは、相によらず渡線導体41の配置が同じであることが好ましい。これにより、三相の導体パターン410U,410V,410Wがそれぞれ形成された扇形状基板42U,42V,42Wとして、同一の導体パターン410が形成された扇形状基板を共用することができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0060】
また、実施形態2に係る機電一体モータユニット1においては、スロット導体225と渡線導体41との接続部分の上方に絶縁体(例えば、基板42の裏面に設けた絶縁層43など)を配置することによって、
図16に示すように、軸線方向でティース223及びスロット224の真上に渡線導体41を配置することが可能となる。これにより、ティース223及びスロット224の真上のスペースを、スロット導体225と渡線導体41との結線領域として使用できることから、同一の基板42内に配置される複数の渡線導体41の配置密度を高くすることができ、渡線部4で積層する層(基板42)の数を少なくすることが可能となり、渡線部4の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 機電一体モータユニット
2 モータ
3 インバータ
4 渡線部
5 電源
21 ロータ軸
22 ステータ
30A 第1系統インバータ
30B 第2系統インバータ
30C 第3系統インバータ
30D 第4系統インバータ
31 インバータ基板
31a 内縁部
31b 外縁部
32 半導体素子
40A 第1系統巻線
40B 第2系統巻線
40C 第3系統巻線
40D 第4系統巻線
41 渡線導体
42 基板
42U,42V,42W 扇形状基板
42a 円形状孔
43 絶縁層
60 絶縁材
61 絶縁シート
221 ステータコア
222 バックヨーク
223 ティース
224 スロット
225 スロット導体
225a 導体部位
225b 導体部位
226 絶縁被膜
320U,320V,320W パワーモジュール
410U,410V,410W 導体パターン