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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174387
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20231130BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231130BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231130BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231130BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W60/00
G08G1/16 C
B60T7/12 F
B60T7/12 C
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087220
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭教
(72)【発明者】
【氏名】長尾 圭優
(72)【発明者】
【氏名】須藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】松元 洸樹
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BC01
3D241CC01
3D241CC08
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA39Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB20Z
3D246EA02
3D246EA11
3D246GB27
3D246GB33
3D246GB37
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA02A
3D246HB12A
3D246HB24A
3D246KA19
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】安全性を高めることができる走行制御装置を得る。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係る走行制御装置は、車両が目標速度で走行するように車両の速度を制御可能であり、動作状態が有効状態または無効状態をとり得る速度制御部と、ドライバの操作に基づく第1の制動指示を検出する第1の制動指示検出部と、車両の外部環境に基づいて第2の制動指示を行う制動制御部と、第2の制動指示を検出する第2の制動指示検出部と、速度制御部が有効状態である場合において、第1の制動指示および第2の制動指示のうちの第1の制動指示のみが生じた場合に、速度制御部の動作状態を有効状態に維持させ、第2の制動指示が生じた場合に、速度制御部の動作状態を無効状態に変化させる動作状態設定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が目標速度で走行するように前記車両の速度を制御可能であり、動作状態が有効状態または無効状態をとり得る速度制御部と、
ドライバの操作に基づく第1の制動指示を検出する第1の制動指示検出部と、
前記車両の外部環境に基づいて第2の制動指示を行う制動制御部と、
前記第2の制動指示を検出する第2の制動指示検出部と、
前記速度制御部が前記有効状態である場合において、前記第1の制動指示および前記第2の制動指示のうちの前記第1の制動指示のみが生じた場合に、前記速度制御部の前記動作状態を前記有効状態に維持させ、前記第2の制動指示が生じた場合に、前記速度制御部の前記動作状態を前記無効状態に変化させる動作状態設定部と
を備えた走行制御装置。
【請求項2】
前記走行制御装置は、前記第1の制動指示および前記第2の制動指示に基づいて、前記車両を制動または停止させる制動装置の動作を制御する
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記走行制御装置は、前記速度制御部が前記無効状態である場合において、前記第1の制動指示および前記第2の制動指示の両方が解除された場合に、前記車両をドライバの操作に応じた速度で走行させる
請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記速度制御部は、前記速度制御部が前記有効状態である場合において、前記第1の制動指示が解除された場合に、前記車両の速度が前記目標速度になるように前記車両を加速させる
請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の走行制御を行う走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、例えば、ドライバが設定した目標速度で車両を走行させる速度制御システムを備えたものがある。例えば、特許文献1には、速度制御システムの動作状態が有効状態である場合において、ドライバがブレーキ操作を行った際、速度制御システムの動作状態を無効状態にせず、有効状態に維持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-519676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両では、安全性が高いことが望まれており、さらなる安全性の向上が期待される。
【0005】
安全性を高めることができる走行制御装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る走行制御装置は、速度制御部と、第1の制動指示検出部と、制動制御部と、第2の制動指示検出部と、動作状態設定部とを備えている。速度制御部は、車両が目標速度で走行するように車両の速度を制御可能であり、動作状態が有効状態または無効状態をとり得るものである。第1の制動指示検出部は、ドライバの操作に基づく第1の制動指示を検出するものである。制動制御部は、車両の外部環境に基づいて第2の制動指示を行うものである。第2の制動指示検出部は、第2の制動指示を検出するものである。動作状態設定部は、速度制御部が有効状態である場合において、第1の制動指示および第2の制動指示のうちの第1の制動指示のみが生じた場合に、速度制御部の動作状態を有効状態に維持させ、第2の制動指示が生じた場合に、速度制御部の動作状態を無効状態に変化させるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施の形態に係る走行制御装置によれば、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施の形態に係る走行制御装置を備えた車両の一構成例を表すブロック図である。
図2図1に示した速度制御システム設定部の一構成例を表す説明図である。
図3図1に示した走行制御部の一動作例を表すフローチャートである。
図4】変形例に係る走行制御装置を備えた車両の一構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、一実施の形態に係る走行制御装置を備えた車両9の一構成例を表すものである。車両9は、速度制御システムを備えた車両であり、運転操作部10と、外部環境認識部20と、走行制御部30と、走行機構部40とを備えている。
【0011】
運転操作部10は、ドライバによる運転操作を受け付けるように構成される。運転操作部10は、ステアリングホイール11と、速度制御システム設定部12と、アクセルペダル13と、ブレーキペダル14とを有している。
【0012】
ステアリングホイール11は、ドライバによる操舵操作を受け付けるように構成される。
【0013】
速度制御システム設定部12は、ドライバによる速度制御システムの設定操作を受け付けるように構成される。
【0014】
図2は、速度制御システム設定部12の一構成例を表すものである。速度制御システム設定部12は、この例では、ステアリングホイール11に設けられ、ドライバが運転時に容易に速度制御システム設定部12の操作を行うことができるようになっている。速度制御システム設定部12は、この例では複数のボタンBを有する。複数のボタンBは、速度制御システムの動作状態を有効状態にするためのボタン、速度制御システムの動作状態を無効状態にするためのボタン、車両9の目標速度を設定するためのボタン、車両9が走行している地形(テレイン)のタイプを設定するためのボタンなどを含む。なお、速度制御システム設定部12は、ボタンBに限定されるものではなく、例えば、スイッチ、タッチスクリーン、ディスプレイ、キーパッドなどの様々なユーザインタフェースを有することができる。
【0015】
アクセルペダル13は、車両9を加速させるための、ドライバによる加速操作を受け付けるように構成される。
【0016】
ブレーキペダル14は、車両9を制動させるための、ドライバによる制動操作を受け付けるように構成される。
【0017】
なお、運転操作部10は、この他、例えば、変速レバー、ウインカーレバー、パーキングブレーキペダルなども有する。
【0018】
外部環境認識部20は、車両9の外部の環境を認識するように構成される。外部環境認識部20は、撮像部21と、認識処理部22とを有している。撮像部21は、車両9の前方を撮像するように構成され、例えば、イメージセンサやレンズを含んで構成される。認識処理部22は、撮像部21により生成された撮像画像に基づいて、車両9の前方の環境を認識するように構成される。認識処理部22は、例えば、車両9の前方の車両、人、自転車、障害物などを認識するようになっている。
【0019】
走行制御部30は、運転操作部10が受け付けたドライバの運転操作、および外部環境認識部20の認識結果に基づいて、走行機構部40の動作を制御することにより、車両9の走行を制御するように構成される。走行制御部30は、例えば、1または複数のECU(Electronic Control Unit)を用いて構成される。走行制御部30は、運転支援制御部31と、制動指示検出部36,37とを有している。
【0020】
運転支援制御部31は、外部環境認識部20の認識結果に基づいて、ドライバの運転を支援するように構成される。運転支援制御部31および外部環境認識部20は、運転支援システムを構成する。運転支援制御部31は、高速速度制御部32と、低速速度制御部33と、動作状態設定部34と、制動制御部35とを有している。
【0021】
高速速度制御部32および低速速度制御部33は、速度制御システムの制御部であり、車両9の速度がドライバにより設定された目標速度になるように、車両9の速度を制御するように構成される。
【0022】
高速速度制御部32は、例えば、車両9の速度が時速50km以上である場合に速度制御を行いやすいように構成される。高速速度制御部32は、例えば、車両9が高速道路を走行する場合など、頻繁な発振や停止の繰り返しが無い走行を行う場合に動作し得る。上述した速度制御システム設定部12は、例えば、高速速度制御部32の動作状態を有効状態にするためのボタン、高速速度制御部32の動作状態を無効状態にするためのボタン、高速速度制御部32による車両9の目標速度を設定するためのボタンなどを含む。
【0023】
低速速度制御部33は、例えば、車両9の速度が時速50km未満である場合に速度制御を行いやすいように構成される。低速速度制御部33は、例えば、車両9が高速道路以外の道路や、オフロードを走行する場合に動作し得る。上述した速度制御システム設定部12は、例えば、低速速度制御部33の動作状態を有効状態にするためのボタン、低速速度制御部33の動作状態を無効状態にするためのボタン、低速速度制御部33による車両9の目標速度を設定するためのボタンなどを含む。
【0024】
動作状態設定部34は、高速速度制御部32および低速速度制御部33の動作状態を設定するように構成される。動作状態設定部34は、例えば、ドライバによる、速度制御システム設定部12の操作に基づいて、高速速度制御部32および低速速度制御部33の動作状態を設定する。また、動作状態設定部34は、例えばドライバによる、ブレーキペダル14の操作や、車両9に設けられた、車両9の走行状態を検出する様々なセンサの検出結果に基づいて、高速速度制御部32および低速速度制御部33の動作状態を設定する。
【0025】
例えば、車両9が高速道路を走行している場合において、ドライバが、高速速度制御部32の動作状態を有効状態にするためのボタンを操作すると、動作状態設定部34は、高速速度制御部32の動作状態を、無効状態から有効状態に設定する。これにより、高速速度制御部32は、車両9の速度が目標速度になるように、車両9の速度を制御する。その後、例えばドライバがブレーキペダル14を操作すると、動作状態設定部34は、高速速度制御部32の動作状態を、有効状態から無効状態に変化させる。これにより、その後、ドライバが、アクセルペダル13およびブレーキペダル14を操作することにより、走行制御部30は、車両9を、ドライバ操作に応じた速度で走行させる。ドライバは、速度制御システムを再度有効状態にしたい場合には、高速速度制御部32の動作状態を有効状態にするためのボタンを操作する。これにより、動作状態設定部34は、高速速度制御部32の動作状態を無効状態から有効状態に変化させる。また、動作状態設定部34は、例えば、車両9の車輪がスリップしていることを検出した場合に、高速速度制御部32の動作状態を無効状態にすることができるようになっている。
【0026】
例えば、車両9が高速道路以外の道路を走行している場合において、ドライバが、低速速度制御部33の動作状態を有効状態にするためのボタンを操作すると、動作状態設定部34は、低速速度制御部33の動作状態を、無効状態から有効状態に設定する。これにより、低速速度制御部33は、車両9の速度が目標速度になるように、車両9の速度を制御する。その後、例えばドライバがブレーキペダル14を操作すると、動作状態設定部34は、高速速度制御部32の場合とは異なり、低速速度制御部33の動作状態を有効状態に維持する。また、動作状態設定部34は、例えば、後述する制動制御部35がプリクラッシュブレーキを作動させた場合に、低速速度制御部33の動作状態を、有効状態から無効状態に変化させる。また、動作状態設定部34は、例えば、車両9に設けられたセンサが、車両9の車輪がスリップしていることを検出した場合でも、低速速度制御部33の動作状態を有効状態に維持することができるようになっている。
【0027】
なお、この例では、ドライバがブレーキペダル14を操作した場合に、動作状態設定部34は、低速速度制御部33の動作状態を有効状態に維持するようにしたが、例えば、ドライバは、この場合に、動作状態を有効状態に維持するか、または動作状態を有効状態から無効状態に変化させるかを、速度制御システム設定部12を操作することによりあらかじめ設定することができる。また、この例では、制動制御部35がプリクラッシュブレーキを作動させた場合に、低速速度制御部33の動作状態を、有効状態から無効状態に変化させるようにしたが、例えば、ドライバは、この場合に、動作状態を有効状態から無効状態に変化させるか、または動作状態を有効状態に維持するかを、速度制御システム設定部12を操作することによりあらかじめ設定することができる。
【0028】
制動制御部35は、外部環境認識部20の認識結果に基づいて、いわゆるプリクラッシュブレーキを作動させることにより、車両9を制動するように構成される。制動制御部35は、外部環境認識部20の認識結果に基づいて、例えば車両9が前方の障害物に衝突する可能性がある場合に、衝突を回避するために、プリクラッシュブレーキを作動させるようになっている。
【0029】
制動指示検出部36は、ドライバがブレーキペダル14を操作した場合に生成された制動指示I1を検出するように構成される。また、制動指示検出部36は、制動指示I1を検出したことを動作状態設定部34に通知する機能をも有している。
【0030】
制動指示検出部37は、制動制御部35がプリクラッシュブレーキを作動させた場合に生成された制動指示I2を検出するように構成される。また、制動指示検出部37は、制動指示I2を検出したことを動作状態設定部34に通知する機能をも有している。
【0031】
走行制御部30は、制動指示検出部36,37が検出した制動指示I1,I2に基づいて、走行機構部40の制動装置41(後述)の動作を制御するようになっている。
【0032】
走行機構部40は、例えばエンジン、変速機構、操舵機構、制動機構、車輪などを備え、走行制御部30からの指示に基づいて動作するように構成される。車両9は、この走行機構部40が動作することにより、運転操作部10が受け付けたドライバの運転操作に応じて走行するようになっている。
【0033】
走行機構部40は、制動装置41を有している。制動装置41は、例えば、ブレーキディスクなどを用いて構成され、走行制御部30からの指示に基づいて車両9を制動するように構成される。
【0034】
ここで、低速速度制御部33は、本開示における「速度制御部」の一具体例に対応する。制動指示検出部36は、本開示における「第1の制動指示検出部」の一具体例に対応する。
制動制御部35は、本開示における「制動制御部」の一具体例に対応する。制動指示検出部37は、本開示における「第2の制動指示検出部」の一具体例に対応する。動作状態設定部34は、本開示における「動作状態設定部」の一具体例に対応する。走行制御部30は、本開示における「走行制御装置」の一具体例に対応する。
【0035】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の走行制御部30の動作および作用について説明する。
【0036】
(全体動作概要)
まず、図1を参照して、車両9の動作を説明する。運転操作部10は、ドライバによる運転操作を受け付ける。外部環境認識部20は、車両9の外部の環境を認識する。走行制御部30は、運転操作部10が受け付けたドライバの運転操作、および外部環境認識部20の認識結果に基づいて、走行機構部40の動作を制御することにより、車両9の走行を制御する。走行制御部30の運転支援制御部31は、外部環境認識部20の認識結果に基づいて、ドライバの運転を支援する。運転支援制御部31において、高速速度制御部32および低速速度制御部33は、車両9の速度がドライバによりあらかじめ設定された目標速度になるように、車両9の速度を制御する。動作状態設定部34は、高速速度制御部32および低速速度制御部33の動作状態を設定する。制動制御部35は、外部環境認識部20の認識結果に基づいて、プリクラッシュブレーキを作動させることにより、車両9を制動する。制動指示検出部36は、ドライバがブレーキペダル14を操作した場合に生成された制動指示I1を検出する。制動指示検出部37は、制動制御部35がプリクラッシュブレーキを作動させた場合に生成された制動指示I2を検出する。走行機構部40は、走行制御部30からの指示に基づいて動作する。車両9は、この走行機構部40が動作することにより、運転操作部10が受け付けたドライバの運転操作に応じて走行する。
【0037】
(詳細動作)
図3は、低速速度制御部33の動作状態が有効状態である場合における、走行制御部30の一動作例を表すものである。
【0038】
低速速度制御部33は、車両9の速度が目標速度になるように車両9の速度を制御する(ステップS101)。具体的には、低速速度制御部33は、車両9の速度が目標速度になるように、走行機構部40のエンジンや変速機構の駆動トルクを制御するとともに、走行機構部40の制動装置41の制動動作を制御する。これにより、車両9の速度は、目標速度になるように制御され、目標速度に維持される。
【0039】
次に、制動指示検出部37は、プリクラッシュブレーキによる制動指示I2を検出したかどうかを確認する(ステップS102)。
【0040】
ステップS102において、制動指示I2を検出していない場合(ステップS102において“N”)には、制動指示検出部36は、ドライバ操作による制動指示I1を検出したかどうかを確認する(ステップS103)。この制動指示I1を検出していない場合(ステップS103において“N”)には、処理はステップS101に戻る。
【0041】
ステップS103において、制動指示I1を検出した場合(ステップS103において“Y”)には、動作状態設定部34は、ドライバがブレーキペダル14を操作した場合に、低速速度制御部33の動作状態を有効状態に維持する設定になっているかどうかを確認する(ステップS104)。すなわち、この例では、上述したように、ドライバがブレーキペダル14を操作した場合に、動作状態を有効状態に維持するか、または動作状態を有効状態から無効状態に変化させるかを、ドライバが速度制御システム設定部12を操作することによりあらかじめ設定することができるようになっている。動作状態設定部34は、低速速度制御部33の動作状態を有効状態に維持する設定になっているかどうかを確認する。
【0042】
ステップS104において、動作状態を有効状態に維持する設定になっている場合(ステップS104において“Y”)には、低速速度制御部33は、走行機構部40のエンジンや変速機構による駆動トルクの制御を中断し、走行機構部40の制動装置41の制動動作を制御する(ステップS105)。すなわち、低速速度制御部33の動作状態は有効状態に維持されるが、ドライバがブレーキペダル14を操作しているので、低速速度制御部33は、駆動トルクの制御を中断し、走行機構部40の制動装置41の制動動作を制御する。これにより、車両9は減速し、例えば停止する。
【0043】
次に、制動指示検出部36は、制動指示I1の解除を検出したかどうかを確認する(ステップS106)。例えば、ドライバがブレーキペダル14から足を離した場合に、制動指示I1は解除されるので、制動指示検出部36は、制動指示I1の解除を検出し得る。制動指示I1の解除をまだ検出していない場合(ステップS106において“N”)には、制動指示検出部36は、制動指示I1の解除を検出するまで、このステップS106の処理を繰り返す。
【0044】
ステップS106において、制動指示I1の解除を検出した場合(ステップS106において“Y”)には、低速速度制御部33は、走行機構部40のエンジンや変速機構による駆動トルクを増加させ、車両9の速度を目標速度に近づける(ステップS107)。すなわち、低速速度制御部33の動作状態は有効状態に維持されているので、ドライバがブレーキペダル14から足を離し、制動指示I1が解除されると、低速速度制御部33は、車両9の速度が目標速度になるように車両9の速度を制御する。そして、処理はステップS101に戻る。
【0045】
ステップS102において、制動指示I2を検出した場合(ステップS102において“Y”)や、ステップS104において、動作状態を有効状態から無効状態に変化させる設定になっている場合(ステップS104において“N”)には、動作状態設定部34は、低速速度制御部33の動作状態を有効状態から無効状態に変化させる(ステップS108)。これにより、走行制御部30は、例えば、ドライバによるアクセルペダル13の操作、およびブレーキペダル14の操作に基づいて、走行機構部40の動作を制御する。
【0046】
以上で、このフローは終了する。
【0047】
このように、走行制御部30では、車両9が目標速度で走行するように車両9の速度を制御可能であり、動作状態が有効状態または無効状態をとり得る低速速度制御部33と、ドライバの操作に基づく制動指示I1を検出する制動指示検出部36と、車両9の外部環境に基づいて制動指示I2を行う制動制御部35と、制動指示I2を検出する制動指示検出部37と、低速速度制御部33が有効状態である場合において、制動指示I1および制動指示I2のうちの制動指示I1のみが生じた場合に、低速速度制御部33の動作状態を有効状態に維持させ、制動指示I2が生じた場合に、低速速度制御部33の動作状態を無効状態に変化させる動作状態設定部34とを設けるようにした。
【0048】
これにより、例えば、プリクラッシュブレーキが作動した場合には、制動指示I2が生じるので、動作状態設定部34は、低速速度制御部33の動作状態を有効状態から無効状態に変化させる。これにより、走行制御部30では、安全性を高めることができる。
【0049】
すなわち、仮に、プリクラッシュブレーキが作動した場合において、低速速度制御部33の動作状態が有効状態を維持する場合には、プリクラッシュブレーキによる制動指示I2に基づいて、車両9は制動され、停止し得る。このとき、低速速度制御部33の動作状態は有効状態であるので、停止後に、例えばドライバがブレーキペダル14から足を離すことにより制動指示I1が解除され、かつプリクラッシュブレーキによる制動指示I2が解除されたときに、車両9は、自動的に走行しはじめ、目標速度に向かって加速する。プリクラッシュブレーキが作動した場合には、ドライバは動揺している可能性がある。また、プリクラッシュブレーキは、例えば車両9の周囲の障害物に衝突する可能性がある場合に作動し得るので、車両9が走行し始めたときに、その障害物に衝突する可能性が解消できていないこともあり得る。よって、車両9は、プリクラッシュブレーキが作動した後に、車両9が自動的に走行しはじめると、安全性が低下する可能性がある。一方、走行制御部30では、プリクラッシュブレーキが作動した場合には、動作状態設定部34は、低速速度制御部33の動作状態を有効状態から無効状態に変化させる。これにより、走行制御部30では、例えば車両9が停止した後、制動指示I1および制動指示I2が解除されたときに、車両9が自動的に走行し始めることがないので、安全性を高めることができる。
【0050】
また、例えば、プリクラッシュブレーキが作動せず、ドライバがブレーキペダル14を操作した場合には、制動指示I1,I2のうちの制動指示I1のみが生じるので、動作状態設定部34は、低速速度制御部33の動作状態を有効状態に維持する。これにより、例えば、車両9が制動され、停止した後に、例えばドライバがブレーキペダル14から足を離したときに、車両9は、自動的に走行しはじめ、目標速度に向かって加速する。よって、走行制御部30では、ドライバの利便性を高めることができる。
【0051】
すなわち、仮に、ドライバがブレーキペダル14を操作したときに、低速速度制御部33の動作状態が無効状態に変化した場合には、ドライバは、低速速度制御部33の動作状態を有効状態にするためのボタンを操作しなければならず、手間がかかる。一方、走行制御部30では、低速速度制御部33の動作状態は有効状態に維持されるので、ドライバは、低速速度制御部33の動作状態を有効状態にするためのボタンを操作する必要がない。これにより、走行制御部30では、ドライバの利便性を高めることができる。
【0052】
[効果]
以上のように本実施の形態では、車両が目標速度で走行するように車両の速度を制御可能であり、動作状態が有効状態または無効状態をとり得る低速速度制御部と、ドライバの操作に基づく制動指示I1を検出する制動指示検出部36と、車両の外部環境に基づいて制動指示I2を行う制動制御部と、制動指示I2を検出する制動指示検出部37と、低速速度制御部が有効状態である場合において、制動指示I1および制動指示I2のうちの制動指示I1のみが生じた場合に、低速速度制御部の動作状態を有効状態に維持させ、制動指示I2が生じた場合に、低速速度制御部の動作状態を無効状態に変化させる動作状態設定部とを設けるようにしたので、安全性を高めることができる。
【0053】
[変形例]
上記実施の形態では、車両9に運転支援システムを設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、車両9に自動運転システムを設けてもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0054】
図4は、本変形例に係る車両9の一構成例を表すものである。車両9は、運転操作部10と、外部環境認識部20Aと、走行ルート設定部50Aと、走行制御部30Aと、走行機構部40とを備えている
【0055】
外部環境認識部20Aは、撮像部21Aと、認識処理部22Aとを有している。撮像部21Aは、車両9の周囲を撮像するように構成される。撮像部21Aは、例えば、車両9の前方を撮像する撮像部、側方を撮像する撮像部、および後方を撮像する撮像部を含む。認識処理部22Aは、撮像部21Aにより生成された撮像画像に基づいて、車両9の周囲の環境を認識するように構成される。なお、外部環境認識部20Aは、これに限定されず、さらにレーダー装置などの様々なセンサを有し、これらのセンサの検出結果をも利用して、車両9の周囲の環境を認識してもよい。
【0056】
走行ルート設定部50Aは、車両9が走行すべき目的地までのルート(予定走行ルート)を決定するように構成される。走行ルート設定部50Aは、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部51Aと、処理部52Aとを有している。GNSS受信部51Aは、GPS(Global Positioning System)などのGNSSを用いて、地上での車両9の位置を取得するように構成される。処理部52Aは、道路地図についての情報を含む地図情報データベースを用いて、車両9の予定走行ルートを設定する。処理部52Aは、例えば、地図情報データベースを記憶する記憶部を有し、記憶部に記憶された地図情報データベースを用いて予定走行ルートを設定してもよいし、例えば地図情報データベースが記憶されたネットワークサーバと通信を行う通信部を有し、このネットワークサーバから取得した情報に基づいて予定走行ルートを設定してもよい。走行ルート設定部50Aは、例えば、表示パネル、タッチパネル、各種ボタンなどのユーザインタフェースを有している。これにより、走行ルート設定部50Aは、例えば、ドライバがこのユーザインタフェースを操作することにより入力した目的地についての情報に基づいて目的地までの予定走行ルートを設定するようになっている。
【0057】
走行制御部30Aは、自動運転制御部31Aを有している。自動運転制御部31Aは、外部環境認識部20Aの認識結果に基づいて、走行ルート設定部50Aが設定した予定走行ルートに沿って車両9が走行するように、走行機構部40の動作を制御するように構成される。自動運転制御部31A、外部環境認識部20A、および走行ルート設定部50Aは、自動運転システムを構成する。自動運転制御部31Aは、上記実施の形態の場合と同様に、高速速度制御部32と、低速速度制御部33と、動作状態設定部34と、制動制御部35とを有している。
【0058】
動作状態設定部34は、上記実施の形態の場合と同様に、低速速度制御部33が有効状態である場合において、制動指示I1および制動指示I2のうちの制動指示I1のみが生じた場合に、低速速度制御部33の動作状態を有効状態に維持させ、制動指示I2が生じた場合に、低速速度制御部33の動作状態を無効状態に変化させる。これにより、走行制御部30Aでは、安全性を高めることができる。
【0059】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、上記実施の形態では、走行制御部30は、図3に示したフローチャートで動作するようにしたが、このフローチャートは一例であり、例えば、このフローチャートとは異なるように動作してもよい。
【符号の説明】
【0061】
9…車両、10…運転操作部、11…ステアリングホイール、12…速度制御システム設定部、13…アクセルペダル、14…ブレーキペダル、20,20A…外部環境認識部、21,21A…撮像部、22,22A…認識処理部、30,30A…走行制御部、31…運転支援制御部、31A…自動運転制御部、32…高速速度制御部、33…低速速度制御部、34…動作状態設定部、35…制動制御部、36,37…制動指示検出部、40…走行機構部、41…制動装置、50A…走行ルート設定部、51A…GNSS受信部、52A…処理部、I1,I2…制動指示。
図1
図2
図3
図4