(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174392
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法、ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20231130BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20231130BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231130BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231130BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20231130BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20231130BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20231130BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEQ
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/54
C08L15/00
C08K5/00
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087231
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】木村 円
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AA08
4F070AB07
4F070AB11
4F070AB16
4F070AC05
4F070AC14
4F070AC23
4F070AC40
4F070AC45
4F070AC46
4F070AC50
4F070AC53
4F070AC94
4F070AE01
4F070AE03
4F070AE08
4F070AE22
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC03
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC111
4J002DA039
4J002DJ016
4J002ER028
4J002EV118
4J002EV128
4J002EV148
4J002EV168
4J002EV278
4J002EV328
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD019
4J002FD158
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】充填剤の分散性を向上させ、低ロス性に優れたゴム組成物を得ることができるゴム組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するべく、本発明は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分(A)と、無機充填剤(B)を含有する充填剤と、シランカップリング剤(C)と、加硫促進剤(D)と、を含むゴム組成物の製造方法であって、前記ゴム組成物を複数段階で混練し、前記混練の第一段階で、前記ゴム成分(A)、前記無機充填剤(B)の一部又は全部、前記シランカップリング剤(C)の一部又は全部、及び、前記加硫促進剤(D)を混練し、前記ゴム成分は、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分(A)と、無機充填剤(B)を含有する充填剤と、シランカップリング剤(C)と、加硫促進剤(D)と、を含むゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴム組成物を複数段階で混練し、
前記混練の第一段階で、前記ゴム成分(A)、前記無機充填剤(B)の一部又は全部、前記シランカップリング剤(C)の一部又は全部、及び、前記加硫促進剤(D)を混練し、
前記ゴム成分は、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体を含有することを特徴とする、ゴム組成物の製造方法。
【化1】
(式中、R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L
1及びL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性される共重合体は、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体であり、
前記共重体における前記芳香族ビニル単位の含有量が40質量%以下であることを特徴とする、請求項1記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記加硫促進剤(D)が、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類及びキサントゲン酸塩類から選択される少なくとも1種の加硫促進剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記加硫促進剤(D)が、少なくとも1種のグアニジン類の加硫促進剤であることを特徴とする、請求項3に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記加硫促進剤(D)が、少なくとも1種のチオウレア類の加硫促進剤であることを特徴とする、請求項3に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
前記混練の第一段階において、前記ゴム成分(A)、前記無機充填剤(B)の全部又は一部及び前記シランカップリング剤(C)の全部又は一部を混練した後に、前記促進剤(D)を加えて、さらに混練することを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
前記混練の第一段階における、ゴム組成物の最高温度が、120~190℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
前記シランカップリング剤(C)が、下記一般式(I)~(IV)で表わされる化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【化2】
(式中、R
1は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基、炭素数2~8の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル基又は水素原子であり、R
2は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基であり、R
3は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキレン基である。aは平均値として2~6であり、pとrは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として0~3である。但しp及びrの双方が3であることはない。)
【化3】
{式中、R
4は-Cl、-Br、R
9O-、R
9C(=O)O-、R
9R
10C=NO-、R
9R
10CNO-、R
9R
10N-、及び、-(OSiR
9R
10)h(OSiR
9R
10R
11)から選択される一価の基(R
9、R
10及びR
11は、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値として1~4である。)であり、R
5はR
4、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、R
6はR
4、R
5、水素原子又は-[O(R
12O)j]
0.5 -基(R
12は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)であり、R
7は炭素数1~18の二価の炭化水素基であり、R
8は炭素数1~18の一価の炭化水素基である。x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。}
【化4】
{式中、R
13は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基、炭素数2~8の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル基又は水素原子であり、R
14は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基であり、R
15は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキレン基である。
R
16は一般式
(-S-R
17-S-)、(-R
18-S
m1-R
19-)及び(-R
20-S
m2-R
21-S
m3-R
22-)のいずれかの二価の基(R
17~R
22は各々炭素数1~20の二価の炭化水素基、二価の芳香族基、又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であり、m1、m2及びm3は各々平均値として1以上4未満である。)であり、複数あるkは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1~6であり、s及びtは各々平均値として0~3である。但しs及びtの双方が3であることはない。}
【化5】
{式中、R
23は炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、複数あるGは同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、複数あるZ
aは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [-0-]
0.5、[-0-G-]
0.5及び[-O-G-O-]
0.5から選ばれる官能基であり、複数あるZ
bは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [-O-G-O-]
0.5で表される官能基であり、複数あるZ
cは同一でも異なっていてもよく、各々-Cl、-Br、-OR
a、R
aC(=O)O-、R
aR
bC=NO-、R
aR
bN-、R
a-及びHO-G-O-(Gは上記表記と一致する。)から選ばれる官能基であり、R
a及びR
bは各々炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。m、n、u、v及びwは、1≦m≦20、0≦n≦20、0≦u≦3、0≦v≦2、0≦w≦1であり、且つ(u/2)+v+2w=2又は3である。A部が複数である場合、複数のA部におけるZ
a
u、Z
b
v及びZ
c
wそれぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、B部が複数である場合、複数のB部におけるZ
a
u、Z
b
v及びZ
c
wそれぞれにおいて、同一でも異なってもよい。}
【請求項9】
前記無機充填剤(B)が、シリカであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
前記充填剤が、カーボンブラックをさらに含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
前記変性剤は、式(1a)~(1e)のうちのいずれか1つであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【化6】
【請求項12】
前記変性共重合体は、式(2)で表される化合物を含む変性剤によってさらに変性された変性共重合体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
【化7】
(式(2)中、R
1~R
3は、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;又は炭素数3~30の複素環基であり、R
4は、単一結合;置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
5は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;又は下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nは1~5の整数であり、R
5のうち少なくとも1つは下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nが2~5の整数の場合、複数のR
5は互いに同一であるか、異なってもよい。
【化8】
式(2a)において、R
6は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
7及びR
8は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、R
9は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基であり、XはN、O又はS原子であり、XがO又はSである場合、R9は存在しない。
【化9】
式(2b)において、R
10は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
11及びR
12は、互いに独立に炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基である。)
【請求項13】
請求項1に記載のゴム組成物の製造方法によって得られることを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項14】
請求項13に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の製造方法、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出の規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に関する要求が高まっている。このような要求に対応するべく、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。従来、タイヤの転がり抵抗を減少する手法として、タイヤ構造を最適化する手法も検討されてきたが、タイヤに適用するゴム組成物としてより発熱性の低い(低ロス性の)ゴム組成物を用いることが、現在、一般的な手法の一つとして実施されている。
【0003】
このような低ロス性を有するゴム組成物を得る方法として、充填剤としてシリカ等の無機充填剤を使用する方法が知られている。
しかし、無機充填剤配合ゴム組成物において、シリカ等の無機充填剤を配合する際には、無機充填剤、特にシリカはゴム組成物中で凝集してしまうため(シリカ表面の水酸基が原因で凝集してしまうため)、ゴム組成物中の充填剤の分散性を高めるために種々の技術が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ジエン系ゴムを有するゴム成分と、補強性充填剤と、特定のアミジン構造を有する化合物とを含有させることによって、ゴム成分と充填剤との化学的相互作用を高め、ゴム組成物中での補強性充填剤の分散性を高めることで、弾性率やtanδを改善する技術が開示されている。
また、特許文献2には、オリゴシロキサンと3級アミノ基を有する特定の化合物を含む変性剤によって変性させた共役ジエン系重合体を、充填剤と共に用いることで、充填剤の分散性を高め、低ロス性の改善を図る技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、将来、より高次元にゴムの性能を最適化することを考慮すると、特許文献1及び2に開示されたような技術では、十分な低ロス性が得られないこともあり、さらなる技術の改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2014-501827号公報
【特許文献2】特開2021-085029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明の目的は、充填剤の分散性を向上させ、低ロス性に優れたゴム組成物を得ることができるゴム組成物の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低ロス性に優れたゴム組成物、及び、転がり抵抗の低減が図られたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を行った。そして、オリゴシロキサンと3級アミノ基を有する特定の化合物を含む変性剤によって変性させた共役ジエン系重合体をゴム成分として用いるとともに、混練工程の第一段階において、特定種の加硫促進剤を加えて混練する工程を適正に実施することによって、充填剤の分散性を大きく向上させ、低ロス性の改善を図ることができることを見出した。
【0009】
本発明のゴム組成物の製造方法は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分(A)と、無機充填剤(B)を含有する充填剤と、シランカップリング剤(C)と、加硫促進剤(D)と、を含むゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴム組成物を複数段階で混練し、
前記混練の第一段階で、前記ゴム成分(A)、前記無機充填剤(B)の一部又は全部、前記シランカップリング剤(C)の一部又は全部、及び、前記加硫促進剤(D)を混練し、
前記ゴム成分は、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体を含有することを特徴とする。
上記構成を具えることによって、充填剤の分散性を向上させ、低ロス性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0010】
また、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性される共重合体は、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体であり、前記共重体における前記芳香族ビニル単位の含有量が40質量%以下であることが好ましい。この場合、ゴム組成物の低ロス性をより向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記加硫促進剤(D)が、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類及びキサントゲン酸塩類から選択される少なくとも1種の加硫促進剤であることが好ましく、少なくとも1種のグアニジン類の加硫促進剤、又は、少なくとも1種のチオウレア類の加硫促進剤であることがより好ましい。この場合、シランカップリング剤のカップリング機能を高め、ゴム組成物の低ロス性をより向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記混練の第一段階において、前記ゴム成分(A)、前記無機充填剤(B)の全部又は一部及び前記シランカップリング剤(C)の全部又は一部を混練した後に、前記促進剤(D)を加えて、さらに混練することが好ましい。この場合、シランカップリング剤のカップリング機能を高め、ゴム組成物の低ロス性をより向上させることができる。
【0013】
さらにまた、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記混練の第一段階における、ゴム組成物の最高温度が、120~190℃であることが好ましい。この場合、シランカップリング剤のカップリング機能を高め、ゴム組成物の低ロス性をより向上させることができる。
【0014】
また、本発明のゴム組成物の製造方法では前記シランカップリング剤(C)が、下記一般式(I)~(IV)で表わされる化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
【化1】
(式中、R
1は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基、炭素数2~8の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル基又は水素原子であり、R
2は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基であり、R
3は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキレン基である。aは平均値として2~6であり、pとrは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として0~3である。但しp及びrの双方が3であることはない。)
【化2】
{式中、R
4は-Cl、-Br、R
9O-、R
9C(=O)O-、R
9R
10C=NO-、R
9R
10CNO-、R
9R
10N-、及び、-(OSiR
9R
10)h(OSiR
9R
10R
11)から選択される一価の基(R
9、R
10及びR
11は、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値として1~4である。)であり、R
5はR
4、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、R
6はR
4、R
5、水素原子又は-[O(R
12O)j]
0.5 -基(R
12は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)であり、R
7は炭素数1~18の二価の炭化水素基であり、R
8は炭素数1~18の一価の炭化水素基である。x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。}
【化3】
{式中、R
13は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基、炭素数2~8の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル基又は水素原子であり、R
14は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基であり、R
15は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキレン基である。
R
16は一般式
(-S-R
17-S-)、(-R
18-S
m1-R
19-)及び(-R
20-S
m2-R
21-S
m3-R
22-)のいずれかの二価の基(R
17~R
22は各々炭素数1~20の二価の炭化水素基、二価の芳香族基、又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であり、m1、m2及びm3は各々平均値として1以上4未満である。)であり、複数あるkは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1~6であり、s及びtは各々平均値として0~3である。但しs及びtの双方が3であることはない。}
【化4】
{式中、R
23は炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、複数あるGは同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、複数あるZ
aは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [-0-]
0.5、[-0-G-]
0.5及び[-O-G-O-]
0.5から選ばれる官能基であり、複数あるZ
bは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [-O-G-O-]
0.5で表される官能基であり、複数あるZ
cは同一でも異なっていてもよく、各々-Cl、-Br、-OR
a、R
aC(=O)O-、R
aR
bC=NO-、R
aR
bN-、R
a-及びHO-G-O-(Gは上記表記と一致する。)から選ばれる官能基であり、R
a及びR
bは各々炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。m、n、u、v及びwは、1≦m≦20、0≦n≦20、0≦u≦3、0≦v≦2、0≦w≦1であり、且つ(u/2)+v+2w=2又は3である。A部が複数である場合、複数のA部におけるZ
a
u、Z
b
v及びZ
c
wそれぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、B部が複数である場合、複数のB部におけるZ
a
u、Z
b
v及びZ
c
wそれぞれにおいて、同一でも異なってもよい。}
この場合、ゴム加工時の作業性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記無機充填剤(B)が、シリカであることが好ましい。この場合、ゴム組成物の低ロス性をより向上させることができる。
【0016】
さらにまた、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記充填剤が、カーボンブラックをさらに含有することが好ましい。この場合、ゴム組成物の耐摩耗性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記変性剤は、式(1a)~(1e)のうちのいずれか1つであることが好ましい。この場合、ゴム組成物の低ロス性をより向上させることができる。
【化5】
【0018】
さらに、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記変性共重合体は、式(2)で表される化合物を含む変性剤によってさらに変性された変性共重合体であることが好ましい。この場合、ゴム組成物の低ロス性をより向上させることができる。
【化6】
(式(2)中、R
1~R
3は、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;又は炭素数3~30の複素環基であり、R
4は、単一結合;置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
5は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;又は下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nは1~5の整数であり、R
5のうち少なくとも1つは下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nが2~5の整数の場合、複数のR
5は互いに同一であるか、異なってもよい。
【化7】
式(2a)において、R
6は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
7及びR
8は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、R
9は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基であり、XはN、O又はS原子であり、XがO又はSである場合、R9は存在しない。
【化8】
式(2b)において、R
10は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
11及びR
12は、互いに独立に炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基である。)
【0019】
本発明のゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物の製造方法によって得られることを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた低ロス性を実現できる。
【0020】
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた転がり抵抗の低減効果を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、充填剤の分散性を向上させ、低ロス性に優れたゴム組成物を得ることができるゴム組成物の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、低ロス性に優れたゴム組成物、及び、転がり抵抗の低減が図られたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明のゴム組成物の製造方法、ゴム組成物及びタイヤの一実施形態について、具体的に例示説明する。
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物の製造方法は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分(A)と、無機充填剤(B)を含有する充填剤と、シランカップリング剤(C)と、加硫促進剤(D)と、を含むゴム組成物の製造方法である。
そして、本発明のゴム組成物の製造方法は、前記ゴム組成物を複数段階で混練し、
前記混練の第一段階で、前記ゴム成分(A)、前記無機充填剤(B)の一部又は全部、前記シランカップリング剤(C)の一部又は全部、及び、前記加硫促進剤(D)を混練し、
前記ゴム成分は、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体を含有することを特徴とする。
【化9】
(式中、R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L
1及びL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。)
【0023】
前記ゴム成分(A)として、充填剤親和性作用基であるオリゴシロキサン及び3級アミノ基を含んだ式(1)で表される化合物を含んだ変性剤によって変性させた共役ジエン系重合体を用いることによって、シリカ等の充填剤(C)の分散性を高めることができることに加え、前記混練の第一段階で調製する混練物の調整により、シランカップリング剤(C)のカップリング機能の活性を高め、前記充填剤(C)のゴム組成物への分散性を高めることができる結果、これらの相乗効果によって、得られたゴム組成物の低発熱性を大きく改善することができる。
【0024】
ここで、前記混練工程において、混練に用いられる混練装置について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、単軸混練押出機;多軸混練押出機(連続式混練装置);バンバリミキサー、インターミックス、ニーダー等の噛合い式又は非噛合い式回転ローターを有する混練機;ロール(バッチ式混練装置);などが挙げられる。
また、前記混練における、ローターの回転速度、ラム圧、混練温度、混練装置の種類等の諸条件は、適宜選択することができる。
【0025】
本発明のゴム組成物の製造方法では、上述したように、記ゴム組成物を複数段階で混練する。
そして、前記混練の第一段階で、前記ゴム成分(A)、前記無機充填剤(B)の一部又は全部、前記シランカップリング剤(C)の一部又は全部、及び、前記加硫促進剤(D)を混練する。
ここで、混練の第一段階で前記加硫促進剤(D)を加えるのは、シランカップリング剤(C)のカップリング機能の活性を高めるためである。
【0026】
また、本発明のゴム組成物の製造方法では、前記混練の第一段階において、前記ゴム成分(A)、前記無機充填剤(B)の全部又は一部及び前記シランカップリング剤(C)の全部又は一部を混練した後に前記加硫促進剤(D)を加えて、さらに混練することが、前記加硫促進剤(D)配合によるカップリング機能の活性向上効果が低減するのをさらに抑制できるために好ましい。
即ち、前記無機充填剤(B)と前記シランカップリング剤(C)との反応が十分に進行した後に、前記シランカップリング剤(C)と前記ゴム成分(A)との反応を進行させることができるからである。
【0027】
さらに、前記混練の第一段階で、該ゴム成分(A)、該無機充填剤(B)の全部又は一部、及び該シランカップリング剤(C)の全部又は一部を加えた後、該第一段階の途中で前記加硫促進剤(D)を加えるまでの時間を10~180秒とすることがより好ましい。この時間の下限値は、30秒以上であることがより好ましく、上限値は、150秒以下であることがより好ましく、120秒以下であることがさらに好ましい。この時間が10秒以上であれば(B)と(C)の反応を十分に進行させることができる。この時間が180秒を超えても(B)と(C)の反応は既に十分に進行しているので、さらなる効果は享受しにくく、上限値を180秒とすることが好ましい。
【0028】
本発明において、混練の第一段階におけるゴム組成物中の有機酸のモル量Xが前記加硫促進剤(D)のモル量Yに対して以下の式[3]の関係にあることが好ましい。促進剤(D)配合によるカップリング機能の活性向上効果が多量の有機酸の存在により低減するのを好適に抑制するためである。
0≦X≦1.5×Y ・・・[3]
混練の第一段階(X)における有機酸量を減少させるためには、有機酸が混練りの第二段階以降に加えられることが好ましい。
【0029】
本発明の製造方法においては、混練の第一段階におけるゴム組成物におけるゴム組成物の最高温度が、120~190℃であることが好ましい。無機充填剤(B)とシランカップリング剤(C)との反応を十分に進行させるためである。この観点から、混練の第一段階におけるゴム組成物の最高温度が、130~190℃であることがより好ましく、140~180℃であることがさらに好ましい。
【0030】
本発明の製造方法において、前記混練工程は、前記加硫促進剤(D)を除くその他の加硫剤等を含まない混練の第一段階と、加硫剤等を含む混練の最終段階の少なくとも2つの段階を含むものであり、必要に応じ、促進剤(D)を除くその他の加硫剤等を含まない混練の中間段階を含んでも良い。ここで、加硫剤等とは、加硫剤及び加硫促進剤をいう。
なお、前記混練の第一段階とは、ゴム成分(A)、無機充填剤(B)及びシランカップリング剤(C)の両方を混練する最初の段階をいい、最初の段階で、ゴム成分(A)と無機充填剤(B)以外の充填剤とを混練する場合や、ゴム成分(A)のみを予備練りする場合の段階は含まれない。
【0031】
本発明のゴム組成物の製造方法は、上述したように、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分(A)と、無機充填剤(B)を含有する充填剤と、シランカップリング剤(C)と、加硫促進剤(D)と、を含むゴム組成物の製造方法である。
以下、ゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0032】
(ゴム成分)
本発明の製造方法により製造されるゴム組成物は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分(A)を、含む。
ゴム成分として、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種を含有することで、ゴム組成物の耐摩耗性を向上できる。また、後述する式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性されることで、前記無機充填剤(B)の分散性を高めることができる。
【0033】
前記ゴム成分(A)に含有される合成ジエン系ゴムの種類については、特に限定されず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、ブタジエンゴム(BR)(なお、BRについては、1,3-ブタジエンの重合体であるポリブタジエンのことを意味し、ブタジエンと他のポリマーとの共重合体等は含まない。)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0034】
なお、前記天然ゴム及び前記合成ジエン系ゴムについては、未変性のゴムのみから構成しても、変性したゴムから構成しても良い。
ただし、本発明では、前記ゴム成分(A)に含有される合成ジエン系ゴムについては、後述する式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体を含まないものとする。そのため、後述する式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された天然ゴム及び合成ジエン系ゴムは、後述する変性共重合体に含まれる。
【0035】
また、前記ゴム成分(A)は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、ジエン系以外のゴム(非ジエン系ゴム)を含有することもできる。
前記非ジエン系ゴムとしては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。
【0036】
そして、本発明のゴム組成物では、前記ゴム成分は、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体(以下、単に「変性共役ジエン系重合体」と呼ぶことがある。)を含有することを要する。
【化10】
前記ゴム成分(A)として、充填剤親和性作用基であるオリゴシロキサン及び3級アミノ基を含んだ式(1)で表される化合物を含んだ変性剤によって変性させた共役ジエン系重合体を用いることによって、シリカ等の無機充填剤(B)の分散性を高めることができる。
その結果、本発明のゴム組成物は、低発熱性が大きく改善され、充填剤の分散性が改善されるため、補強性や、タイヤへ適用した際の操縦安定性、加工性等の他の物性を低下させることもない。
【0037】
前記式(1)において、R1~R8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L1及びL2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。
【0038】
具体的には、前記式(1)において、R1~R4は、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキル基であってもよく、前記R1~R4が置換される場合、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数4~10のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数2~12のアルカノイルオキシ基(alkanoyl、RaCOO-、この時、Raは炭素数1~9のアルキル基である)、炭素数7~13のアラルキルオキシ基、炭素数7~13のアリールアルキル基、及び、炭素数7~13のアルキルアリール基からなる群から選択される1つ以上の置換基に置換され得る。
より具体的には、前記R1~R4は置換又は非置換の炭素数1~10のアルキル基であってもよく、さらに具体的に前記R1~R4は、それぞれ独立して置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基であってもよい。
【0039】
また、前記式(1)において、R5~R8は、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、具体的には、置換又は非置換の炭素数1~10のアルキル基、さらに具体的には、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基であってもよく、置換される場合、先にR1~R4で説明したような置換基に置換され得る。前記R5~R8がアルキル基ではなく、加水分解可能な置換基の場合、N-R5R6及びN-R7R8の結合が水分存在下にN-Hに加水分解されて重合体の加工性に悪影響を及ぼし得る。
【0040】
より具体的には、前記式(1)で表される化合物において、R1~R4はメチル基又はエチル基であり、R5~R8は炭素数1~10のアルキル基とすることができる。
【0041】
本発明において、前記式(1)で表される化合物中のアミノ基、即ち、N-R5R6及びN-R7R8が、3級アミノ基であることが好ましい。前記3級アミノ基は、式(1)で表される化合物が変性剤として用いられた際、さらに優れた加工性を有するようにする。
なお、前記R5~R8にアミノ基を保護するための保護基が結合するか、又は、水素が結合する場合には、前記式(1)で表される化合物による効果の具現が難しい可能性がある。水素が結合する場合、変性過程で陰イオンが水素と反応して反応性を失うようになって変性反応自体が不可能となり、保護基が結合する場合、変性反応が行われるが、重合体末端に結合した状態で後加工時に加水分解によって脱保護されて1次又は2次アミノ基になり、脱保護された1次又は2次アミノ基は、その後の配合時に配合物の高粘度化を引き起こし、加工性低下の原因になるおそれがある。
【0042】
また、前記式(1)で表される化合物中のL1及びL2は、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。
より具体的には、L1及びL2は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基、さらに具体的には、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基のような炭素数1~6のアルキレン基とすることができる。
【0043】
前記式(1)で表される化合物中のL1及びL2については、分子内のSi原子とN原子との間の距離が近いほどより優れた効果を奏する。ただし、SiがNと直接結合する場合、後の処理工程中にSiとNとの間の結合が切れるおそれがあり、この際に発生した2次アミノ基は後処理中に水により流失する可能性が高く、製造される変性共役ジエン系重合体では、シリカ等の無機充填剤(B)との結合を促進するアミノ基の部材によってシリカ充填剤との結合が難しく、その結果、分散剤の分散効果が低下することがある。このようにSiとNとの間の結合の長さによる改善効果を考慮すると、前記L1及びL2は、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基のような炭素数1~3のアルキレン基であることがさらに好ましく、より具体的には、プロピレン基とすることができる。また、L1及びL2は、先にR1~R4で説明したような置換基に置換され得る。
【0044】
また、前記式(1)で表される化合物は、例えば、下記式(1a)~(1e)で表される化合物のうちのいずれか1つであることが好ましい。より優れた低発熱性を実現できるためである。
【化11】
【0045】
本発明の変性剤において、前記式(1)で表される化合物は、アルコキシシラン構造が共役ジエン系重合体活性化末端と結合する一方、Si-O-Si構造及び末端に結合した3つ以上のアミノ基が、シリカ等の充填剤に対して親和力を示すことによって、従来分子内一つのアミノ基を含む変性剤と比較して充填剤と変性共役ジエン系重合体との結合を促進させることができる。
また、前記共役ジエン系重合体の活性化末端の結合程度が均一で、カップリング前後に分子量分布の変化を観察すると、カップリング後にも前に比べて分子量分布が大きくならずに一定である。
そのため、前記変性共役ジエン系重合体自体の物性低下がなく、ゴム組成物内の充填剤の凝集を防ぎ、充填剤の分散性を高めることができるため、ゴム組成物の加工性を向上させることができる。これらの効果は、特に、ゴム組成物をタイヤに適用した際の燃費特性、摩耗特性及び制動特性をバランスよく改善させることが可能となる。
【0046】
なお、前記式(1)で表される化合物は、下記反応式1で表される縮合反応を通じて製造され得る。
【化12】
【0047】
前記反応式1において、R1~R8、L1及びL2、及びnは、上述した式(1)で定義されたものと同様であり、R’及びR’’は、前記縮合反応に影響を及ぼさない任意の置換基である。例えば、前記R’及びR’’は、それぞれ独立してR1~R4のいずれか1つと同一のものとすることができる。
【0048】
前記反応式1の反応は、酸条件下で進められ、酸は一般に縮合反応に用いられるものであれば、制限なしに用いることができる。当業者は、前記反応が進められる反応器の種類、出発物質、反応温度などの多様な工程変数に合わせて最適な酸を選択することができる。
【0049】
前記式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性される共重合体は、種々の共重合体を用いることができるが、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体であることが好ましい。
なお、前記共役ジエン単位及び芳香族ビニル単位は、無秩序に配列、結合されたランダム共重合体とすることができる。
【0050】
本発明のゴム組成物では、前記共重合体の芳香族ビニル単位の含有量(共重合体の総質量に対する芳香族ビニル単位の占める質量)が40質量%以下であることが好ましい。ゴム組成物の低発熱性をより改善できるためである。同様の観点から、前記芳香族ビニル単位の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。なお、ゴム組成物をタイヤに適用した際の操縦安定性や、耐摩耗性を良好なレベルに維持する観点からは、前記共重合体の芳香族ビニル単位の含有量は、3質量%以上であることが好ましい。
【0051】
ここで、前記共役ジエン単位となる共役ジエン系単量体の種類については、特に制限されるものではない。例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン及び2-フェニル-1,3-ブタジエンからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0052】
また、前記芳香族ビニル単位となる芳香族ビニル単量体の種類については、特に限定はされない。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン及び1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0053】
さらに、前記変性共重合体の共重合体については、上述した共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体の組合せとすることができるが、それらの中でも、スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。他の性能を低下させることなく、より確実に優れた低発熱性を実現でき、タイヤに適用した際のウェット性能についても優れるためである。
【0054】
また、前記変性共重合体は、1.1~3.0の狭い分子量分布:Mw/Mn(多分散指数(PDI)ともいう)を有するものとすることができる。前記変性共重合体の分子量分布が3.0を超えるか、1.1未満の場合、ゴム組成物へ適用時に引張特性及び粘弾性が低下するおそれがある。前記変性共重合体の分子量分布の制御による、重合体の引張特性及び粘弾性改善の効果の顕著性を考慮すると、前記変性共重合体の分子量分布を、1.3~2.0とすることが好ましい。なお、前記変性共重合体は、前記変性剤を用いることによって、変性前の共重合体の分子量分布と類似する。
【0055】
なお、前記変性共重合体の分子量分布は、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算され得る。このとき、前記数平均分子量(Mn)は、n個の重合体分子の分子量を測定し、これら分子量の総合を求めてnで割って計算した個別の重合体分子量の共通平均(commonaverage)であり、前記重量平均分子量(Mw)は高分子組成物の分子量分布を表す。全体分子量の平均は、モル当たりグラム(g/mol)で表すことができる。
また、本発明において、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれゲル透過型クロマトグラフィ(GPC)で分析されるポリスチレン換算分子量である 。
【0056】
また、前記変性共重合体は、上記した分子量分布の条件を満たしていると同時に、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol~2,000,000g/molであり、より具体的には、200,000g/mol~800,000g/molとすることができる。前記変性共重合体は、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~4,000,000g/molであり、より具体的には、300,000g/mol~1,500,000g/molとすることができる。
【0057】
前記変性共重合体の重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol未満であるか、又は数平均分子量(Mn)が50,000g/mol未満の場合、ゴム組成物に適用する際の、引張特性の低下のおそれがある。また、重量平均分子量(Mw)が4,000,000g/molを超えているか、数平均分子量(Mn)が2,000,000g/molを超える場合には、変性共重合体の加工性の低下にゴム組成物の作業性が悪化し、混練が困難となり、ゴム組成物の物性を十分に向上させることは難しくなることがある。
より具体的には、本発明の一実施例に係る前記変性共重合体は、前記分子量分布とともに、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の条件を同時に満たしている場合には、ゴム製の組成物に適用時のゴム組成物の粘弾性と加工性をバランスよく改善させることができる。
【0058】
また、本発明では、前記式(1)で表される化合物を含む変性剤を利用した前記変性共重合体の製造方法を提供できる。
前記変性共重合体の製造方法では、具体的には、1)炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物の存在下、芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体を重合して少なくとも一末端にアルカリ金属が結合された活性重合体を製造する段階、及び、2)前記活性重合体を前記化学式1で表される化合物を含む変性剤と反応させる段階を含むことができる。
【0059】
前記1)の段階は、少なくとも一末端にアルカリ金属が結合された活性重合体を製造するための段階であって、炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物の存在下、芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体を重合することによって行うことができる。
【0060】
なお、前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン及びキシレンからなる群から選択された1種以上のものを用いることができる。
【0061】
前記有機アルカリ金属化合物は、単量体の全体100gを基準に0.1mmol~1.0mmolで用いることができる。
前記有機アルカリ金属化合物は、特に制限されるものではないが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルフォネート、ナトリウムスルフォネート、カリウムスルフォネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド及びリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0062】
前記1)の段階の重合は、必要に応じて極性添加剤をさらに添加して行うものであってもよく、前記極性添加剤は、前記単量体の全体100重量部に対して0.001重量部~1.0重量部で添加することができる。具体的には前記単量体の全体100重量部に対して0.005重量部~0.5重量部、より具体的には0.01重量部~0.3重量部で添加することができる。
前記極性添加剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、ジエチルエーテル、シクロアマルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンジメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、3級ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0063】
なお、上述の製造方法では、 前記の極性添加剤を用いることによって共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル系単量体を共重合させる場合、これらの反応速度の差を補うことによってランダム共重合体を容易に形成することができるように誘導することができる 。
【0064】
また、前記1)の段階における重合は、断熱重合を介して行うか、等温重合を介して行うことができる。
ここで、前記断熱重合は、有機アルカリ金属化合物を投入した以後、任意に熱を加えることなく自己反応熱で重合させる段階を含む重合方法を示すものであり、前記等温重合は、前記有機アルカリ金属化合物を投入した以後、任意に熱を加えるか熱を奪って重合物の温度を一定に維持する重合方法を示すものである。
【0065】
さらに、前記重合は、20℃~200℃の温度範囲で行うものであってもよく、具体的には0℃~150℃、より具体的には10℃~120℃の温度範囲で行うことができる。
【0066】
また、前記2)の段階は、変性共重合体を製造するために、前記活性重合体と前記式(1)で表される化合物を含む変性剤を反応させる変性反応段階である。
【0067】
このとき、前記式(1)で表される化合物を含む変性剤は、上述したものと同じであってもよい。前記式(1)で表される化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、0.1~2.0モルになる割合で用いることができる。
さらに、前記2)の段階における反応は、重合体に官能基を導入させるための変性反応であって、前記各反応は、0℃~90℃の温度範囲で1分~5時間の間行うものであってもよい。
【0068】
なお、上述した製造方法は、前記2)の段階以後、必要に応じて溶媒及び未反応単量体回収及び乾燥のうちの1つ以上の段階をさらに含むこともできる。
【0069】
また、前記変性共重合体は、上述したように、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性されるが、式(2)で表される化合物を含む変性剤によってさらに変性されることが好ましい。ゴム組成物中の充填剤の分散性をさらに向上できるため、低発熱性、及び、タイヤへ適用した際の操縦安定性をより高いレベルで両立でき、耐摩耗性や加工性をより向上させることもできる。
【0070】
【化13】
上記式(2)において、R
1~R
3は、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;又は炭素数3~30の複素環基であり、R
4は、単一結合;置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
5は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;又は下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nは1~5の整数であり、R
5のうち少なくとも1つは下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nが2~5の整数の場合、複数のR
5は互いに同一であるか、異なってもよい。
【0071】
【化14】
上記式(2a)において、R
6は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
7及びR
8は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、R
9は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基であり、XはN、O又はS原子であり、XがO又はSである場合、R9は存在しない。
【0072】
【化15】
上記式(2b)において、R
10は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
11及びR
12は、互いに独立に炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基である。
【0073】
また、上記式(2)で表される化合物では、R1~R3は、互いに独立に水素;炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;又は炭素数2~10のアルキニル基であり、R4は、単一結合;又は非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R5は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;又は下記化学式(2a)又は化学式(2b)で表される作用基であり、上記化学式(2a)において、R6は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R7及びR8は、互いに独立に非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R7は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;又は炭素数3~20の複素環基であり、上記化学式(2b)において、R10は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R11及びR12は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;又は炭素数3~20の複素環基であってもよい。
【0074】
さらに、より具体的には、上記式(2)で表される化合物は、以下の式(2-1)~式(2-3)で表される化合物とすることができる。
【0075】
【0076】
なお、前記共重合体を、上記式(2)で表される化合物を含む変性剤によって変性させる場合には、式(2)で表される化合物を含む変性剤を、変性開始剤として用いる。
具体的には、例えば、炭化水素溶媒中で、式(2)で表される化合物を含む変性剤の存在下にて、共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を重合させることで、式(2)で表される化合物由来の変性基を、前記共重合体に付与することができる。
【0077】
ここで、前記共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体の重合は、例えば、アニオン重合とすることができ、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応により重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。
また、前記重合は、昇温重合、等温重合または定温重合(断熱重合)であってもよく、上記定温重合は、上記式(2)で表される化合物を含む変性剤を投入した以後、任意に熱を加えることなく自己反応熱で重合させる段階を含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、変性開始剤を投入した以後、任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、上記変性開始剤を投入した以後、熱を加えて熱を増加させたり、熱を奪い取って重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味する。
【0078】
なお、前記ゴム成分(A)における前記変性共重合体の含有量は、特に限定はされないが、0.1~90質量%とすることができ、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。前記変性共重合体の含有量が0.1重量%以上の場合、他の物性を良好に保ったまま低発熱性を向上でき、結果的に前記ゴム組成物を利用して製造された成形品、例えば、タイヤでの燃費特性、摩耗特性及び制動特性等の効果がより確実に得られる。
【0079】
(充填剤)
本発明の製造方法により製造されるゴム組成物は、無機充填剤(B)を含有する充填剤を含む。
ここで、前記無機充填剤(B)としては、例えば、シリカ及び下記一般式(XI) で表される無機化合物を用いることができる。
dM1・xSiOy・zH2O ・・・(XI)
ここで、一般式(XI)中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、d、x、y及びzは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数、及び0~10の整数である。
なお、一般式(XI)において、x、zがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。
【0080】
本発明においては、上述の無機充填剤(B)の内、低転がり性と耐摩耗性の両立の観点からシリカが好ましい。シリカとしては市販のあらゆるものが使用でき、なかでも湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いるのが好ましく、湿式シリカを用いるのが特に好ましい。シリカのBET比表面積(ISO5794/1に準拠して測定する)は40~350m2/gであるのが好ましい。BET表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性とゴム成分中への分散性とを両立できるという利点がある。この観点から、BET表面積が80~350m2/gの範囲にあるシリカが更に好ましく、BET表面積が120~350m2/gの範囲にあるシリカが特に好ましい。このようなシリカとしては東ソーシリカ社製、商品名「ニプシルAQ」(BET比表面積=220m2/g)、「ニプシルKQ」、デグッサ社製商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m2/g)等の市販品を用いることができる。
【0081】
前記一般式(XI)で表わされる無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO3)2]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n―1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。また、前記一般式(XI)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
一般式(XI)で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。これらの無機化合物の平均粒径は、混練作業性、耐摩耗性及びウェットグリップ性能のバランスなどの観点から、0.01~10μmの範囲が好ましく、0.05~5μmの範囲がより好ましい。本発明における無機充填剤(B)は、シリカ単独で使用しても良いし、シリカと一般式
(III)で表される無機化合物の1種以上とを併用しても良い。
【0082】
また、前記充填剤は、所望により、上述の無機充填剤(B)に加えてカーボンブラックを含有しても良い。カーボンブラックを含有することにより、ゴム組成物の補強性を高め、より優れた耐摩耗性を得ることができる。このカーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック、特にSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEFグレードのカーボンブラックを用いるのが好ましい。窒素吸着比表面積(N2SA、JISK6217-2:2001に準拠して測定する)が30~250m2/gであることが好ましい。このカーボンブラックは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。なお、本発明において、カーボンブラックは無機充填剤(B)に含まれない。
【0083】
本発明の製造方法では、前記無機充填剤(B)は、ゴム成分(A)100質量部に対して、20~120質量部使用することが好ましい。20質量部以上であれば、ウエット性能を確保する観点から好ましく、120質量部以下であれば、低発熱性向上の観点から好ましい。更には、30~100質量部使用することがより好ましい。
また、前記充填剤は、ゴム成分(A)100質量部に対して、20~150質量部使用することが好ましい。20質量部以上であれば、ゴム組成物の補強性向上の観点から好ましく、150質量部以下であれば、低発熱性向上の観点から好ましい。
さらに、前記充填剤中、無機充填剤(B)が40質量%以上であることがウェット性能と低発熱性の両立の観点から好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0084】
(シランカップリング剤)
本発明の製造方法により製造されるゴム組成物は、シランカップリング剤(C)を含む。
ここで、前記シランカップリング剤(C)は、下記一般式(I)~(IV)で表わされる化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
本発明の製造方法により製造されるゴム組成物は、このようなシランカップリング剤(C)を用いることにより、ゴム加工時の作業性に更に優れると共に、より耐摩耗性の良好な空気入りタイヤ
を与えることができる。
【0085】
【化17】
式中、R
1は同一でも異なっていても良く、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基又は炭素数2~8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基、R
2は同一でも異なっていても良く、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、R
3は同一でも異なっていても良く、各々炭素数1~8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基、aは平均値として2~6であり、p及びrは同一でも異なっていても良く、各々平均値として0~3、但しp及びrの双方が3であることはない。
【0086】
上記一般式(I)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0087】
【化18】
式中、R
4は-Cl、-Br、R
9O-、R
9C(=O)O-、R
9R
10C=NO-、R
9R
10CNO-、R
9R
10N-、及び-(OSiR
9R
10)
h(OSiR
9R
10R
11)から選択される一価の基(R
9、R
10及びR
11は各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値として1~4である。)であり、R
5はR
4、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、R
6はR
4、R
5、水素原子又は-[O(R
12O)
j]0.5-基(R
12は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)であり、R
7は炭素数1~18の二価の炭化水素基であり、R
8は炭素数1~18の一価の炭化水素基である。x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。
【0088】
上記一般式(II)において、R8、R9、R10及びR11は同一でも異なっていてもよく、好ましくは各々炭素数1~18の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R5が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R12は直鎖、環状又は分枝のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R9は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状、枝分かれ状のいずれであってもよく、前記シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよい。このR7としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基を好ましく挙げることができる。
【0089】
上記一般式(II)におけるR5、R8、R9、R10及びR11の炭素数1~18の一価の炭化水素基の具体例としては、メチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,sec-ブチル基,tert-ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基,フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記一般式(II)におけるR12の例としては、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,オクタメチレン基,デカメチレン基,ドデカメチレン基等が挙げられる。
【0090】
前記一般式(II)で表されるシランカップリング剤(C)の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(General Electric Silicones社製、商標:NXTシラン)が特に好ましい。
【0091】
【化19】
式中、R
13は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、炭素数2~8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基又は水素原子であり、R
14は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R
15は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。R
16は一般式(-S-R
17-S-)、(-R
18-S
m1-R
19-)及び(-R
20-S
m2-R
21-S
m3-R
22-)のいずれかの二価の基(R
17~R
22は各々炭素数1~20の二価の炭化水素基、二価の芳香族基、又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であり、m1、m2及びm3は各々平均値として1以上4未満である。)であり、複数あるkは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1~6であり、s及びtは各々平均値として0~3である。但しs及びtの双方が3であることはない。
【0092】
上記一般式(III)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S2-(CH2)6-S2-(CH2)3-
Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S2-(CH2)10-S2-(CH2)3-
Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S3-(CH2)6-S3-(CH2)3-
Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S4-(CH2)6-S4-(CH2)3-
Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)6-S2-(CH2)6-S
-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)6-S2.5-(CH2)6-
S-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)6-S3-(CH2)6-S
-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)6-S4-(CH2)6-S
-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)10-S2-(CH2)10-
S-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S4-(CH2)6-S4-(CH2)6-
S4-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S2-(CH2)6-S2-(CH2)6-
S2-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3、
平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)6-S2-(CH2)6-S
2-(CH2)6-S-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3等で表される化合物が好適に挙げられる。
【0093】
【化20】
式中、R
23は炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、複数あるGは同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1~9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、複数あるZ
aは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ[-0-]
0.5、[-0-G-]
0.5及び[-O-G-O-]
0.5から選ばれる官能基であり、複数あるZ
bは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ[-O-G-O-]
0.5で表される官能基であり、複数あるZ
cは同一でも異なっていてもよく、各々-Cl、-Br、-OR
a、R
aC(=O)O-、R
aR
bC=NO-、R
aR
bN-、R
a-及びHO-G-O-(Gは上記表記と一致する。)から選ばれる官能基であり、R
b及びR
bは各々炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。m、n、u、v及びwは、1≦m≦20、0≦n≦20、0≦u≦3、0≦v≦2、0≦w≦1であり、且つ(u/2)+v+2w=2又は3である。A部が複数である場合、複数のA部におけるZ
a
u、Z
b
v及びZ
c
wそれぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、B部が複数である場合、複数のB部におけるZ
a
u、Z
b
v及びZ
c
wそれぞれにおいて、同一でも異なってもよい。
【0094】
上記一般式(IV)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、化学式(V)、化学式(IV)及び化学式(VII)が挙げられる。
【化21】
【化22】
【化23】
式中、Lはそれぞれ独立して炭素数1~9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、x=m、y=nである。
【0095】
化学式(V) で表されるシランカップリング剤としては、Momentive Performance Materials社製、商標「NXT Low-VSilane」、が市販品として入手できる。
また、化学式(VI)で表されるシランカップリング剤としては、Momentive Performance Materials社製、商標「NXT Ultra Low-VSilane」、が同様に市販品として入手することができる。
更に、化学式(VII)で表されるシランカップリング剤としては、、Momentive Performance Materials社製、商標、「NXT-Z」として挙げることができる。
上記一般式(II)、化学式(V)及び化学式(VI)で得られるシランカップリング剤は、保護されたメルカプト基を有するので、加硫工程以前の工程での加工中に初期加硫(スコーチ)の発生を防止することができるため、加工性が良好となる。
また、化学式(V)、(VI)及び(VII)で得られるシランカップリング剤はアルコキシシラン炭素数が多いため、揮発性化合物VOC(特にアルコール)の発生が少なく、作業環境上好ましい。また、化学式(VII)のシランカップリング剤はタイヤ性能として低発熱性を得ることから更に好ましい。
【0096】
さらに、前記シランカップリング剤(C)は、上記一般式(I)~(IV)で表わされる化合物の内、上記一般式(I)で表わされる化合物が特に好ましい。加硫促進剤(D)はゴム成分(A)と反応するポリスルフィド結合部位の活性化を起こし易いからである。
本発明においては、前記シランカップリング剤(C)は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらにまた、ゴム組成物における前記シランカップリング剤(C)の配合量は、質量比{シランカップリング剤(C)/無機充填剤(B)}が(1/100)~(20/100)であることが好ましい。(1/100)以上であれば、ゴム組成物の低発熱性向上の効果をより好適に発揮することとなり、(20/100)以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。更には質量比(3/100)~(20/100)であることがより好ましく、質量比(4/100)~(10/100)であることが特に好ましい。
【0097】
(加硫促進剤)
本発明の製造方法により製造されるゴム組成物は、加硫促進剤(D)を含む。
前記加硫促進剤(D)としては、好ましく挙げられる、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類及びキサントゲン酸塩類の加硫促進剤について詳述する。
【0098】
前記グアニジン類の加硫促進剤としては、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられ、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン及び1-o-トリルビグアニドは反応性が高いので好ましい。
【0099】
前記スルフェンアミド類の加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらの内、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN-tert-ブチル-2 - ベンゾチアゾリルスルフェンアミドは、反応性が高いので好ましい。
【0100】
前記チアゾール類の加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2-メルカプト-6-ニトロベンゾチアゾール、2-メルカプト-ナフト[1,2-d]チアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの内、2-メルカプトベンゾチアゾール及びジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドは、反応性が高く好ましい。
【0101】
前記チウラム類の加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトライソプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラペンチルチウラムジスルフィド、テトラヘキシルチウラムジスルフィド、テトラヘプチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラノニルチウラムジスルフィド、テトラデシルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラステアリルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス( 2 - エチルヘキシル) チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラプロピルチウラムモノスルフィド、テトライソプロピルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラペンチルチウラムモノスルフィド、テトラヘキシルチウラムモノスルフィド、テトラヘプチルチウラムモノスルフィド、テトラオクチルチウラムモノスルフィド、テトラノニルチウラムモノスルフィド、テトラデシルチウラムモノスルフィド、テトラドデシルチウラムモノスルフィド、テトラステアリルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。これらの内、テトラキス( 2 - エチルヘキシル) チウラムジスルフィド及びテトラベンジルチウラムジスルフィドは、反応性が高いので好ましい。
【0102】
前記チオウレア類の加硫促進剤としては、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジイソプロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1,1-ジフェニル-2-チオ尿素、2,5-ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1-(1-ナフチル)-2-チオ尿素、1-フェニル-2-チオ尿素、p-トリルチオ尿素、o-トリルチオ尿素等が挙げられる。これらの内、N,N’-ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素及びN,N’-ジメチルチオ尿素は、反応性が高いので好ましい。
【0103】
前記ジチオカルバミン酸塩類の加硫促進剤としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘプチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸亜鉛、ジデシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジヘプチルジチオカルバミン酸銅、ジオクチルジチオカルバミン酸銅、ジ(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸銅、ジデシルジチオカルバミン酸銅、ジドデシルジチオカルバミン酸銅、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジペンチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘプチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジオクチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジドデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジイソプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジブチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジペンチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘキシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘプチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジオクチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジ(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸第二鉄、ジデシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジドデシルジチオカルバミン酸第二鉄、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸第二鉄、ジベンジルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。これらの内、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛及びジメチルジチオカルバミン酸銅は、反応性が高いため好ましい。
【0104】
前記キサントゲン酸塩類の加硫促進剤としては、メチルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸亜鉛、プロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、ペンチルキサントゲン酸亜鉛、ヘキシルキサントゲン酸亜鉛、ヘプチルキサントゲン酸亜鉛、オクチルキサントゲン酸亜鉛、2-エチルヘキシルキサントゲン酸亜鉛、デシルキサントゲン酸亜鉛、ドデシルキサントゲン酸亜鉛、メチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸カリウム、プロピルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、ペンチルキサントゲン酸カリウム、ヘキシルキサントゲン酸カリウム、ヘプチルキサントゲン酸カリウム、オクチルキサントゲン酸カリウム、2-エチルヘキシルキサントゲン酸カリウム、デシルキサントゲン酸カリウム、ドデシルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、プロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、ブチルキサントゲン酸ナトリウム、ペンチルキサントゲン酸ナトリウム、ヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、ヘプチルキサントゲン酸ナトリウム、オクチルキサントゲン酸ナトリウム、2-エチルヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、デシルキサントゲン酸ナトリウム、ドデシルキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの内、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛は、反応性が高いので好ましい。
【0105】
そして、本発明の製造方法では、上述した各種の加硫促進剤の中でも、少なくとも1種のグアニジン類の加硫促進剤、又は、少なくとも1種のチオウレア類の加硫促進剤を用いることが好ましく、少なくとも1種のグアニジン類の加硫促進剤を用いることがより好ましい。
前記ゴム成分(A)中の前記変性共重合体は、両末端変性となる場合には、配合粘度が増加する傾向にあるが、前記グアニジン類の加硫促進剤を用いることで、配合粘度の増加を抑制でき、より優れた加工性が得られるためである。
【0106】
なお、本発明の製造方法では、前記混練の第一段階におけるゴム組成物中の加硫促進剤(D)の分子数(モル数)がシランカップリング剤(C)の分子数(モル数)の0.1~1.0倍であることが好ましい。0.1倍以上であればシランカップリング剤(C)の活性化が十分に起こり、1.0倍以下であれば加硫速度に大きな影響は与えないからである。更に好ましくは、加硫促進剤(D)の分子数(モル数)はシランカップリング剤(C)の分子数(モル数)の0.2~0.6倍である。
なお、加硫促進剤(D)は、硫黄加硫の促進剤としても用いられるので、混練の最終段階においても所望により適量を配合してもよい。混練の最終段階で加硫促進剤を配合する際には、上述の加硫促進剤(D)に限定されず、公知の加硫促進剤を配合することもできる。
【0107】
(有機酸化合物)
本発明の製造方法においては、混練りの第一段階におけるゴム組成物中の有機酸化合物の分子数(モル数)が加硫促進剤(D)の分子数(モル数)の1.5倍以下であることが好ましい。加硫促進剤(D)配合によるカップリング機能の活性向上効果が低減するのを好適に抑制するためである。
【0108】
前記有機酸化合物としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、カプリル酸、エナント酸、カプロン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ネルボン酸等の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸並びにロジン酸や変性ロジン酸等の樹脂酸などの有機酸、前記飽和脂肪酸及び前記不飽和脂肪酸並びに樹脂酸のエステルなどが挙げられる。
なお、本発明においては、加硫促進助剤としての機能を十分に発揮することもできることから、混練の第一段階におけるゴム組成物に含まれる有機酸化合物中の50モル%以上がステアリン酸であることが好ましい。
また、前記ゴム成分(A)が乳化重合スチレン-ブタジエン共重合体及び天然ゴムから選ばれる少なくとも1種を含む場合は、混練の第一段階におけるゴム組成物に含まれる有機酸化合物中の50モル%以上が、該乳化重合スチレン-ブタジエン共重合体及び該天然ゴムから選ばれる少なくとも1種に含まれる、ロジン酸及び脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。乳化重合スチレン-ブタジエン共重合体に含まれるロジン酸(変性ロジン酸も包含される。)及び脂肪酸は、乳化重合スチレン-ブタジエン共重合体を重合するのに必要な乳化剤に由来するものである。また、天然ゴムは、通常、脂肪酸を少量含んでいる。
【0109】
(その他の配合成分)
なお、本発明の製造方法により製造されるゴム組成物は、上述したゴム成分(A)、無機充填剤(B)を含有する充填剤、シランカップリング剤(C)、加硫促進剤(D)等に加えて、ゴム工業界で通常使用される配合成分、例えば、老化防止剤、軟化剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して、通常の配合量の範囲内で配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0110】
前記老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されない。例えば、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0111】
また、本発明の製造方法によって製造されるゴム組成物は、優れた低ロス性及び耐摩耗性を実現する観点から、軟化剤をさらに含むことが好ましい。前記軟化剤としては、例えば、ナフテン系ベースオイル、パラフィン系ベースオイル、アロマ系ベースオイル等が挙げられる。ここで、前記潤滑剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対し、2~30質量部配合することが好ましい。前記潤滑剤の含有量がゴム成分100質量部に対して30質量部を超える場合、潤滑剤がゴム製品の表面に滲み出るおそれや、耐摩耗性が低下したりするおそれがある。また、変性したゴム成分中のテトラジン部位と相互作用し、遮蔽してしまうため反応性が落ち、低ロス性能や耐摩耗性が低下するおそれもある。
さらに、上述した潤滑剤の中でも、ナフテン系ベースオイル又はパラフィン系ベースオイルを用いることが好ましく、ナフテン系ベースオイルを用いることが最も好ましい。アロマオイルは、芳香族成分が多いため、芳香族化合物である当該薬品との親和性が高く、ポリマーとの反応をより阻害するため好ましくないためである。一方で、ナフテン系ベースオイルやパラフィン系ベースオイルは、ポリマー中に拡散し反応することを助ける効果があり、流動点が低いオイルの方がよくポリマー中に拡散するためである。
なお、前記ナフテン系ベースオイル、前記パラフィン系ベースオイル、前記アロマ系ベースオイルという分類については、CA値、CP値、CN値により決定される。例えば、前記ナフテン系ベースオイル前記分類されるのは、TDAE、SRAE、RAE、Black Oil等である。また、前記パラフィン系ベースオイルとして分類されるのは、スピンドルオイルヤパラフィンオイルである。
さらにまた、前記ナフテン系ベースオイルと前記ナフテン系アスファルトを混合した、A/O Mix(三共油化工業株式会社)等の混合油でもより好ましい効果が得られる。
これらの潤滑油を配合するタイミングについては、特に限定されず、例えば、前記ゴム成分の製造の段階で 油展させてもよいし、ゴム組成物を混錬する際に、添加させてもよい。
【0112】
また、本発明のゴム組成物の製造方法においては、通常、ゴム組成物に配合される亜鉛華等の加硫活性剤、老化防止剤等の各種配合剤は、必要に応じ、混練の第一段階又は最終段階、あるいは第一段階と最終段階の中間段階において混練りされる。
本発明の製造方法における混練装置として、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、二軸押出機等が用いられる。
【0113】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物の製造方法によって得られることを特徴とする。
本発明による製造方法によって得られたゴム組成物は、充填剤の分散性が高く、低ロス性に優れる。
【0114】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のゴム組成物をタイヤ材料として含むことで、転がり抵抗の低減が可能となる。
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いること以外、特に制限は無く、常法に従って製造することができる。なお、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0115】
また、本発明のタイヤでは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いるが、タイヤ部材の中でも、トレッドゴム、サイドウォールゴム、コード若しくは繊維被覆ゴム、ビードフィラー又はガムチェーファーに用いられることが好ましい。これらの部材に適用すれば、本発明のゴム組成物による優れた低ロス性の効果、ひいては転がり抵抗低減効果による利益を十分に享受できるからである。
【0116】
なお、本発明のタイヤの種類については、特に限定はされないが、耐摩耗性の向上及び転がり抵抗の低減の両立をより効果的に発揮できる点からは、乗用車用タイヤ、スタッドレスタイヤ、ランフラットタイヤ又はトラック・バス用タイヤであることが好ましい。
【実施例0117】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0118】
(サンプル1~12)
表1に示す配合処方及び混練方法により、ゴム組成物のサンプルを作製した。第1混練段階における混合物の最高温度については表1に示す。ゴム組成物のサンプル作製では、第1混練段階の後に第2混練段階を行う。なお、混練りについては、バンバリミキサーを用いて実施する。
【0119】
<性能評価>
(1)配合粘度
各サンプルのゴム組成物について、RPA2000(アルファテクノロジーズ社製)を用い、温度130℃で1分余熱した後、周波数1Hz、歪み100%の条件で、0.1分後の配合粘度を測定する。値が小さいほど加工性に優れる。
各実施例及び各比較例の測定結果を、表1に示す。測定値は、小さいほどシリカの分散性が高く、良好な結果であることを示す。
【0120】
(2)低ロス性
各サンプルのゴム組成物を、160℃で15分間加硫して加硫ゴムを得る。得られた加硫ゴムに対し、ARES-G2(TA Instruments社製)を用い、温度30℃、歪5%、周波数15Hzで、損失正接(tanδ)を測定する。
各実施例及び各比較例の測定結果は、比較例1の測定結果を100とした相対評価となる指数にして、表1に示す。指数値は、大きい程、低発熱性であることを示す。
【0121】
【0122】
*1 以下の条件で、SBR-1を作製する。
乾燥し、窒素置換した800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5g及びスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6ミリモルを加え、0.8ミリモルのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行う。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、〔N,N-ビス(トリメチルシリル)-(3-アミノ-1-プロピル)〕(メチル)(ジエトキシ)シランを0.72ミリモル添加し、50℃で30分間変性反応を行う。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2ミリリットルを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBR-1を得る。
また、得られる変性SBR-1のミクロ構造を測定した結果、結合スチレン含有量が10質量%、ブタジエン部分のビニル含有量が40%、ゲル浸透クロマトグラフィーにより得られたポリスチレン換算ピーク分子量が200,000である。
*2 以下の条件で、SBR-2を作製する。
(変性剤の製造例)
真空乾燥させた4Lステンレススチール圧力容器を2つ用意する。最初の圧力容器にシクロヘキサン944g、下記化学式(2-1)で表される化合物161g及びテトラメチルエチレンジアミン86gを投入し、第1反応溶液を製造する。これと同時に、2番目の圧力容器に液状の20重量%n-ブチルリチウム318g及びシクロヘキサン874gを投入し、第2反応溶液を製造する。この時、下記の化学式(2-1)で表される化合物、n-ブチルリチウム及びテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:1:1である。各圧力容器の圧力は7barに維持させた状態で、質量流量計を用いて連続式反応器内に、第1連続式チャネルに第1反応溶液を1.0g/minの注入速度で、第2連続式チャネルに第2反応溶液を1.0g/minの注入速度でそれぞれ注入する。この時、連続式反応器の温度は-10℃を維持し、内部圧力はバックプレッシャレギュレータ(backpressure regulator)を用いて3barを維持し、反応器内の滞留時間は10分以内になるように調節する。反応を終了して変性開始剤を得る。
【化24】
(変性SBR-2の作製)
3基の反応器が直列に連結された連続反応器のうち第1基反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解したスチレン溶液を0.84kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を15.10kg/h、n-ヘキサン47.66kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解した1,2-ブタジエン溶液を10g/h、極性添加剤としてn-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解した溶液を10.0g/h、上記製造例で製造された変性開始剤(2-1)を292.5.0g/hの速度で注入する。この時、第1基反応器の温度は50℃となるように維持し、重合転換率が43%となった時、移送配管を通じて、第1反応器から第2反応器に重合物を移送する。
引き続き、第2反応器にn-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を0.68kg/hの速度で注入する。この時、第2基反応器の温度は65℃となるように維持し、重合転換率が95%以上となった時、移送配管を通じて、第2反応器から第3反応器に重合物を移送する。
上記第2反応器から第3反応器に重合物を移送し、変性剤として下記式(1a)が溶解した溶液を第3反応器に投入する(変性剤:act. Li=1:1mol)。第3反応器の温度は65℃となるように維持する。
【化25】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に酸化防止剤として30重量%で溶解したIR1520(BASF社)溶液を、170g/hの速度で注入して攪拌する。その結果、得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて攪拌し、溶媒を除去することで、変性SBR-2を得る。
なお、得られる変性SBR-2のミクロ構造を測定した結果、スチレン含有量が5質量%、ブタジエン部分のビニル含有量が37%である。
*3 以下の条件で、SBR-3を作製する。
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2.750g、テトラヒドロフラン2.00g、スチレン160g、1,3-ブタジエン165g、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム(DBS-K)34.9mg(0.10mmol)を仕込む。反応器内容物の温度を40℃に調整した後、n-ブチルリチウム215mg(3.36mmol)を添加して重合を開始する。重合温度が55℃になった時点で、1,3-ブタジエン165gを20分間で追加添加する。重合転化率が99%に達した時点で、ブタジエン10gを追加し、更に5分重合させた後1-トリメチルシリル-2-エトキシメチル-1-アザ-2-シラ-シクロペンタン545mg(2.9mmol)を加えて15分間反応を行う。反応後の重合体溶液に2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した後、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、熱ロールによりゴムを乾燥し、変性SBR-3を得る。
なお、得られる変性SBR-3のミクロ構造を測定した結果、スチレン含有量が35質量%、ブタジエン部分のビニル含有量が27%である。
*4 以下の条件で、SBR-4を作製する。
3基の反応器が直列に連結された連続反応器のうち第1基反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解したスチレン溶液を6.58kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を15.10kg/h、n-ヘキサン49.11kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解した1,2-ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤としてn-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解した溶液を51.0g/h、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10質量%で溶解したn-ブチルリチウム溶液を59.0g/hの速度で注入する。この時、第1基反応器の温度は50℃になるように維持する。
次いで、第2反応器にn-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60質量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を0.95kg/hの速度で注入する。この時、第2基反応器の温度は65℃になるように維持する。
前記第2反応器から第3反応器に重合物を移送し、変性剤として下記式(1a)が溶解した溶液を第3反応器に投入する(変性剤:act. Li=1:1mol)。この時、第3反応器の温度は65℃になるように維持する。
その後、第3反応器から排出された重合溶液に酸化防止剤として30質量%で溶解したIR1520(BASF社)溶液を167g/hの速度で注入して攪拌する。その結果、得られる重合物をスチームで加熱された温水に入れて攪拌して溶媒を除去することで、片末端が変性された変性SBR-4を得る。
また、得られる変性SBR-4のミクロ構造を測定した結果、スチレン含有量が37質量%、ブタジエン部分のビニル含有量が40%である。
*5 東ソー・シリカ株式会社製 「ニップシールAQ」、 BET表面積205m
2/g
*6 信越化学工業株式会社社製 「ABC-856」、ビス-トリエトキシシリルプロピル-ポリサルファイド
*8 1,3-ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業社製 「ノクセラー D」
*9 N、N’-ジエチルチオウレア、ランクセス社製 レノグラン DETU-80
*10 N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製 「ノクラック6C」
*11 ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製 「ノクセラー DM-P」
*12 N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製 「ノクセラー NS-P」
【0123】
表1の結果から、実施例の各サンプルは、比較例の各サンプルに比べて、シリカの分散性及び低ロス性に優れる結果を示すことがわかった。
本発明によれば、充填剤の分散性を向上させ、低ロス性に優れたゴム組成物を得ることができるゴム組成物の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、低ロス性に優れたゴム組成物、及び、転がり抵抗の低減が図られたタイヤを提供することができる。