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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174413
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/02 20060101AFI20231130BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20231130BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20231130BHJP
【FI】
G06K19/02
G06K19/077 144
G06K19/077 196
G06K19/077 244
G06K19/077 264
B42D25/305 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087275
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】元井 拓実
(72)【発明者】
【氏名】淵 健太
(72)【発明者】
【氏名】安原 誠
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005MA28
2C005PA04
2C005PA07
2C005PA15
2C005PA20
2C005PA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境負荷の低減を実現することができる、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード等のICモジュールを含む積層体を提供する。
【解決手段】ICモジュール7を内蔵した積層体であるICカード1は、ICモジュール7に接続されたアンテナ8と、アンテナ8を挟持する一対のコア層4、5と、一対のコア層4、5の外側に透明な一対のオーバーシート層3、6と、を備える。コア層4、5及びオーバーシート層3、6は、バイオマス樹脂層を備える。一対のオーバーシート層3、6の少なくとも一方は、当該バイオマス樹脂層とは異なる樹脂層の両面に当該バイオマス樹脂層がそれぞれ積層された複数層で構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICモジュールを内蔵した積層体において、
前記ICモジュールに接続されたアンテナと、
前記アンテナを挟持する一対のコア層と、
前記一対のコア層の外側に透明な一対のオーバーシート層と、を備え、
前記コア層および前記オーバーシート層は、バイオマス樹脂層を備え、
前記一対のオーバーシート層の少なくとも一方は、当該バイオマス樹脂層とは異なる樹脂層の両面に当該バイオマス樹脂層がそれぞれ積層された複数層で構成される、積層体。
【請求項2】
前記複数層は、共押出しによる積層シートである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記一対のコア層と、前記一対のオーバーシート層との間のいずれか一方に中間層をさらに備え、
当該中間層は前記複数層を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記異なる樹脂層は、ポリカーボネート樹脂層である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層体のうち、ICモジュールおよびアンテナを含む積層体の全体に占めるバイオマス由来成分の重量%が、10%以上、45%以下である、積層体。
【請求項6】
前記バイオマス樹脂層の軟化温度は、90℃以上、105℃以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記一対のオーバーシート層の少なくとも一方の前記コア層とは反対を向く面に隠蔽層を介して絵柄印刷層が設けられている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記一対のオーバーシート層の少なくとも一方は、レーザ光発色剤を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層体を有する、カード。
【請求項10】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層体を有する、冊子体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばクレジットカード、キャッシュカード、IDカード等のICモジュールを含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードとして、カード表面の外部接続端子を通じて電気信号の入出力を行う接触ICカードや、アンテナを介して電磁誘導等により電気信号の入出力を行う非接触ICカードが用いられている。また、これらに加えて、カードが備える単一のICチップにより、接触ICカードの機能と非接触ICカードの機能とのいずれをも実現できる接触および非接触共用ICカード、すなわちデュアルインターフェースICカードも用いられている。中でも、デュアルインターフェースICカードは、金融決済時には入出力データの外部漏洩の抑制に効果的な接触ICカードとして使用でき、部屋への入退室時や駅の改札機等に対しては近接状態でデータのやり取りを行う利便性の高い非接触ICカードとして使用できる。このため、デュアルインターフェースICカードについても、市場での普及が進んでいる。
【0003】
積層体はアンテナを内蔵するアンテナ内蔵層と、アンテナ内蔵層の両面に設けられた一対のコア層とを備え、一方のコア層およびアンテナ内蔵層を切削加工して形成された凹部内にICモジュールが実装される。また積層体の凹部にICモジュールとアンテナとを電気的に接続する導電プレートが配置され、導電プレートとICモジュールとは導電性接着剤により接着される。このように一方のコア層およびアンテナ内蔵層を切削加工して形成された凹部内にICモジュールを実装して得られた積層体は、接触型や非接触型、接触・非接触共用型の積層体となっている。
【0004】
ところで近年、環境負荷の低減を目的として化石燃料の消費抑制と廃棄プラスチックの削減が求められている。このような場合、接触型、非接触型、接触・非接触共用型の積層体の材料として植物由来のバイオマス樹脂材料を使用することができれば、石油由来の樹脂材料のみを使用することと比べて、カーボンニュートラルに向けた環境負荷の低減を実現することができて都合が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-310604
【特許文献2】特開2015-110300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであり、環境負荷の低減を実現することができる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態による第1の発明は、ICモジュールを内蔵した積層体において、前記ICモジュールに接続されたアンテナと、前記アンテナを挟持する一対のコア層と、前記一対のコア層の外側に透明な一対のオーバーシート層と、を備え、前記コア層および前記オーバーシート層は、バイオマス樹脂層を備え、前記一対のオーバーシート層の少なくとも一方は、当該バイオマス樹脂層とは異なる樹脂層の両面に当該バイオマス樹脂層がそれぞれ積層された複数層で構成される、積層体である。
【0008】
本実施の形態による第2の発明は、第1の発明において、前記複数層は、共押出しによる積層シートである、積層体である。
【0009】
本実施の形態による第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記一対のコア層と、前記一対のオーバーシート層との間のいずれか一方に中間層をさらに備え、当該中間層は前記複数層を含む、積層体である。
【0010】
本実施の形態による第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれかにおいて、前記異なる樹脂層は、ポリカーボネート樹脂層である、積層体である。
【0011】
本実施の形態による第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかの積層体のうち、前記ICモジュールおよび前記アンテナを含む積層体の全体に占めるバイオマス由来成分の重量%が、10%以上、45%以下である、積層体である。
【0012】
本実施の形態による第6の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれかにおいて、前記バイオマス樹脂層の軟化温度は、90℃以上、105℃以下である、積層体である。
【0013】
本実施の形態による第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれかにおいて、前記一対のオーバーシート層の少なくとも一方の前記コア層とは反対を向く面に隠蔽層を介して絵柄印刷層が設けられている、積層体である。
【0014】
本実施の形態による第8の発明は、第1の発明から第7の発明のいずれかにおいて、前記一対のオーバーシート層の少なくとも一方は、レーザ光発色剤を含む、積層体である。
【0015】
本実施の形態による第9の発明は、第1の発明から第8の発明のいずれかの積層体を有する、カードである。
【0016】
本実施の形態による第10の発明は、第1の発明から第8の発明のいずれかの積層体を有する、冊子体である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本開示によれば、環境負荷の低減を図ることができる積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る積層体の構造を説明する平面図および断面図である。
図2】第1実施形態に係る積層体のオーバーシートの構造を説明する断面図である。
図3】第1実施形態に係るバイオマス樹脂の製造方法を説明する構造式である。
図4】ICモジュールの構造を説明する図である。
図5】第1実施形態に係る積層体の製造方法を説明する断面図である。
図6】第2実施形態に係る積層体の構造を説明する断面図である。
図7】第3実施形態に係る積層体の構造を説明する概略斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面等を参照して、本開示の積層体の一例について説明する。ただし、本開示の積層体は、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。
【0020】
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0021】
1.第1実施形態
本開示の積層体の第1実施形態の一例について説明する。図1乃至図5は本開示による積層体の実施の形態を示す図である。本実施形態では積層体の一例としてICモジュール7を内蔵したデュアルインターフェースICカード(以下、積層体、あるいはICカードともいう)1について説明する。なお、積層体は、デュアルインターフェースICカード以外の非接触ICカードや接触ICカードをも含み、さらにはICモジュールを搭載しないカード全般をも含むものである。
【0022】
ここで、説明の便宜上、ICカード1についてXYZ座標系を設定する。まず、図1(a)や図1(b)等に示すように、ICカード1の主面の法線方向にZ軸をとる。そして、ICモジュール7の外部接続端子71が配置されていない側の主面から、当該外部接続端子71が配置されている側の主面に向かう方向を+Z方向または厚さ方向の上方とし、その反対方向を-Z方向または厚さ方向の下方とする。
【0023】
また、ICカード1を+Z方向から見たとき、デュアルインターフェースICカード1の両短辺およびZ軸に垂直な直線をX軸とする。また、外部接続端子71に近い側の一の短辺から他の短辺に向かう方向を+X方向または右方向とし、その反対方向を-X方向または左方向とする。さらに、X軸およびZ軸に垂直な軸をY軸とし、外部接続端子71から遠い側の一の長辺から他の長辺に向かう方向を+Y方向または上方とし、その反対方向を-Y方向または下方とする。
【0024】
図1(a)は、ICカード1を+Z方向から見た平面図であり、図1(b)は、図1(a)のICカード1をX軸と平行なA-A線に沿った面で切った断面を-Y方向から見た図である。図2は、オーバーシート層3、6の構成の詳細を示す断面図である。
【0025】
図1(a)に示すように、ICカード1は、+Z方向側からの平面視において、4隅に丸みを備えた略矩形状の薄板の形態を有する。また、ICカードの+Z方向側の表面には、中心よりもやや左上、すなわち中心よりも-X方向寄りでありかつ+Y方向寄りに外部接続端子71を含むICモジュール7が視認できる。ICモジュール7は、図1(b)に示すように、カード基体2に形成された凹部9の中に埋設され、外部接続端子71の+Z方向側の表面がカード基体2の+Z方向側の表面と略同一面となるように配置されている。このようなデュアルインターフェースICカード1の形態は、ICカードの国際規格であるISO/IEC7816に準拠している。
【0026】
図1(b)に示すように、デュアルインターフェースICカード1のカード本体を構成するカード基体2は、-Z方向側から順に、オーバーシート層6、コア層5、コア層4およびオーバーシート層3が積層されて一体化したものである。典型的には、オーバーシート層3および6が透明色の基材であり、コア層4および5が白色の基材であるが、これには限定されない。また、コア層4およびコア層5の間に、アンテナ8が両者に挟持されるように配置されている。なお、ICカード1のオーバーシート層3の外側、すなわち+Z方向を向く面に印刷層110が設けられ、ICカード1のコア層5のオーバーシート層6を向く面に印刷層120が設けられている。
【0027】
アンテナ8を構成するアンテナ線の両端には、それぞれ矩形状の金属製の導電プレート100が溶接されている。また、凹部9は、3段階の深さで形成されている。すなわち、もっとも浅い深さである第1凹部9aには、ICモジュール7の基板72が搭載され、基板72の下側の面が第1凹部9aの上面と当接する。また、最も深い深さである第2凹部9bには、ICモジュール7のうち、下方側に張り出しているICチップ体74を収納する空間が形成される。また、第1凹部9aの深さおよび第2凹部9bの深さの間の深さとなる第3凹部9cでは、アンテナ8と導通する一対の導電プレート100が凹部9の開口側に向けて露出する。この第3凹部9cには、例えば導電性粒子を含んだ導電接着層10を充填することにより、ICモジュール7の電気的接点と導電プレート100とを電気的に接続できる。その結果、ICモジュール7およびアンテナ8が非接触の通信回路を形成する。
【0028】
このように、積層体であるICカード1は、ICモジュール7を内蔵し、ICモジュール7に接続されたアンテナ8と、アンテナ8を両側から挟持する一対のコア層4および5とを備える。さらに、ICカード1は、一対のコア層4および5の外側に、透明な一対のオーバーシート層3および6と、を備えている。ここで、コア層4および5と、オーバーシート層3および6とは、後述するようなバイオマス樹脂層を備えている。バイオマス樹脂層は、植物由来のイソソルバイド(イソソルビド)を主原料としたバイオエンジニアリングプラスチックである。
【0029】
さらに、一対のオーバーシート層3および6の少なくとも一方は、当該バイオマス樹脂層とは異なる樹脂層の両面に当該バイオマス樹脂層がそれぞれ積層された複数層で構成されている。一例として、バイオマス樹脂層、ポリカーボネート樹脂層およびバイオマス樹脂層の3層構成とすることができる。このような構成とすることにより、ICカード1は、通常のカード用基材であるポリ塩化ビニルやPET-G、ポリカーボネート等を主成分とするカードと比較して、植物由来のバイオマス樹脂成分が多いため、環境負荷の低減を図ることができる。
【0030】
また、コア層4および5と、オーバーシート層3および6とを積層して熱融着により一体化させる工程においても、通常のカード用基材と同様の温度範囲で加工できるため、既存の製造設備をそのまま流用できる。さらに、ICカード1は、最表面付近に配置されるオーバーシート層3および6において、バイオマス樹脂層の間に異なる樹脂層を挟んで配置される。このため、カードの物性や外観品質を適宜調整でき、良好なICカードとすることができる。よって、通常のカードと同様の物性や強度を有しているため、ISO/IEC7810やISO/IEC7816といったICカードに要求される規格を十分に満足するものとして使用できる。
【0031】
以下に、本実施形態のICカード1の構成およびその製造方法の詳細を説明する。
【0032】
(a)カード基体
カード基体2は、デュアルインターフェースICカードであるICカード1を構成する、ICモジュール7を除くカード本体を指す。カード基体2は、前述したとおり、典型的には厚さ方向の-Z方向側の一端からオーバーシート層6、コア層5、コア層4およびオーバーシート層3がこの順に積層された構成を備える。また、コア層4および5の間には、ループ形状に巻かれ、被覆導線等から形成されたアンテナ8が配置されている。カード基体2は、凹部9が形成される前のもの、および凹部9の形成後のものの両方を指すことがあり、アンテナ8を含まないもの、およびこれを含むものの両方を指す場合がある。また、アンテナ8の始点および終点に導電プレート100が溶接されている。
【0033】
ただし、カード基体2の層構成は、これに限らず、オーバーシート層、コア層、オーバーシート層の3層構成、または、オーバーシート層、中間層、コア層、コア層、中間層およびオーバーシート層の6層構成であってもよく、中間層は適宜、複数層設けられてもよい。また、カード基体2のオーバーシート層3または6のコア層4または5とは反対側の表面に印刷や磁気ストライプの埋め込みがされていてもよく、コア層4または5のオーバーシート層3または6との隣接表面に印刷がされていてもよい。なお、本実施形態では、図1(a)および図1(b)に示すように、オーバーシート層3の外側すなわち+Z方向側の面に隠蔽印刷層として印刷層110が設けられ、コア層5のオーバーシート層6側の面に印刷層120が設けられている。
【0034】
隠蔽印刷層である印刷層110は、例えば、オーバーシート層3の外側に図示しない磁気ストライプ等が設けられた際に、これを隠蔽して意匠性の低下を抑制する目的で使用されることが多い。このような印刷層110は、カード基体2の中央側を向く側の隠蔽層と、当該隠蔽層よりもカード基体2の外側を向く絵柄印刷層とから構成される。印刷層110は、図示しないが、あらかじめ剥離層を介してPETフィルム等である転写シート基材上に設けておき、転写シート基材上の印刷層110を剥離層とともに表面側のオーバーシート層3に熱転写することにより、オーバーシート層3上に形成できる。隠蔽層は例えば銀色、黒色、金色または赤色を含み、銀色の隠蔽層はアルミニウムを含む。また絵柄印刷層は種々の色彩のインキを塗布して絵柄印刷を形成することにより得られる。印刷層110の隠蔽層または絵柄印刷層は、層全面領域にベタな印刷となっていてもよく、部分的な領域にベタな印刷、または網点印刷されていてもよい。印刷層120は、印刷層110と同様の構成でもよいが、上記の隠蔽層のみや、上記の絵柄印刷層のみの構成でもよく、これらは顔料を使用したインキなどにより形成される。印刷層120は、層全面領域へのベタな印刷で形成されてもよく、部分的な領域へのベタな印刷、または網点印刷で形成されていてもよい。また、印刷層120は文字や記号を含んでもよい。
【0035】
剥離層は透明体で構成されるインキから得られ、このような剥離層を形成するインキとして、以下のような構成の部材を混合したものが考えられる。すなわち、樹脂1(アクリル樹脂)が含有量20~30%であり、樹脂2(塩酢ビ樹脂)が含有量5%以下であり、樹脂3(ポリエステル樹脂)が含有量1%以下である。また、紫外線吸収剤が含有量2%以下であり、メチルエチルケトンが含有量30~40%であり、トルエン(300)が含有量34.0~36.0%であり、ポリエチレンワックスが含有量1%以下である。
【0036】
カード基体2の厚さは、ISO/IEC7810等の規格に準拠する観点からは、0.76mm以上、0.84mm以下であることが好ましいが、この範囲外であってもよい。
【0037】
(i)コア層
コア層4および5としては、白色または着色されたバイオマス樹脂から構成されるバイオマス樹脂層を用いることができる。本開示で使用するバイオマス樹脂層は、植物由来のイソソルバイドを主原料とし、ポリカーボネート樹脂に近い物性を備えるものの、通常のポリカーボネート樹脂の主原料であるビスフェノールAを含まない。また、当該バイオマス樹脂層は、生分解性ポリマーではないため、耐熱性、耐湿性、耐久性に優れている。さらに、その軟化温度は通常のエンジニアリングプラスチック樹脂と同様の範囲内であるため、既存の熱プレス機等の製造装置がそのまま使用できる。
【0038】
このような性質を備えるバイオマス樹脂層である、イソソルバイドポリマー(ISP)を含むISPシートの製法は、例えば特許第4868083号公報や特許第4868084公報に記載されているが、概要は以下のようになる。図3は、本開示のイソソルバイドポリマー(ISP)を含む、ISPシートの製造方法を説明する構造式である。
【0039】
本開示のバイオマス樹脂層は、触媒並びに原料モノマーとして炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器において、多段階でエステル交換反応により重縮合させて製造されるポリカーボネート樹脂に類似する樹脂をシート状に成形したものである。ジヒドロキシ化合物は、例えば立体異性体の関係にあるイソソルバイドである。また、原料モノマーとして、イソソルバイド以外のジヒドロキシ化合物では、ポリカーボネート樹脂の色相を良好とする観点から、脂肪族ジヒドロキシ化合物および脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物である1 , 4 - シクロヘキサンジメタノールが好適に用いられる。また、炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネートが好適に用いられる。
【0040】
当該バイオマス樹脂層の製造方法を言い換えると、まず、グルコース(ぶどう糖)を還元し、アルデヒド基をヒドロキシ基に変換してソルビトールを得る。次いで、これを脱水、環作して、イソソルバイドモノマーを作成する。次に、イソソルバイドモノマーおよびジフェニルカーボネート(DPC)を、溶融法(溶融エステル交換法)によって反応させることにより、樹脂であるISPを作成する。そして、ISPおよび1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」ともいう)を反応させ、ISPおよびCHDMを含むISPシートを作成する。
【0041】
このようなバイオマス樹脂層において、イソソルバイドポリマーシートのイソソルバイドおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールにおけるイソソルバイドの割合は、40mol%以上、70mol%以下であることが好ましい。この範囲であることにより、ICカードとしての必要な物性や耐久性が、通常のカード用樹脂であるポリ塩化ビニル、PET-Gおよびポリカーボネートといった樹脂とくらべて遜色ないものとできるからである。
【0042】
コア層のシートの厚さは、カードの全体厚さを勘案して適宜に選択することができるが、例えば、0.10mm以上、0.38mm以下程度とすることができる。なお、後述するように、互いに対向するコア層4および5のいずれかの表面上に、両層に挟まれる位置関係となるようにアンテナ8を、熱圧を掛けて配置する必要がある。
【0043】
例えばコア層5の一方の面に、アンテナ8が形成され、当該アンテナ8を構成するアンテナ線の両端部に、それぞれ導電プレート100が溶接される。このようなコア層5へのアンテナ8の形成は、アンテナ線に対して所定の熱圧を掛けて、これをコア層5に埋め込むことによって行う。アンテナ8がコア層5に埋め込まれた中間生成物をアンテナシート12と称することがある。アンテナシート12は、それのみでデュアルインターフェースICカードであるICカード1を製造するための部品として市場に流通させることができる。さらには、コア層5等のシート材を加工業者に供給し、これを当該加工業者がアンテナシート12に加工して供給元に納品する、という商形態が存在し得る。
【0044】
アンテナシート12の形成方法の詳細は後述するが、概略として以下のようになる。まず、コア層5の表面に、絶縁部材で被覆された被覆導線を、一方を始点とし、他方を終点として巻き線形成機により埋め込む。すなわち、コア層5に対して所定の熱圧を加えながら、図1(a)に示すようなループ形状にアンテナ供給ヘッドを描画させ、当該アンテナ供給ヘッドから供給されたアンテナ線をコア層5に順次、埋め込む。また、アンテナ線の埋め込み前または埋め込み後のいずれかに、コア層5の所定位置に一対の導電プレート100を接着剤等により貼り付ける。
【0045】
ここで、アンテナ線の両端を、当該導電プレート100に溶接して電気的に接続する。そして、巻き線形成機は、アンテナ8の始点および終点の部分でアンテナ線を切断する。このようにしてアンテナシート12が完成する。
【0046】
(ii)オーバーシート層
オーバーシート層3および6は、そのいずれかまたは両方が、図2(a)に示す通り、3層の積層構成を備えている。オーバーシート層3を例にすると、オーバーシート層3は、ICカード1の外部接続端子71が露出する側の表面に第1層31を備え、その下方側、すなわち-Z方向に向けて第2層32と第3層33とを、この順に積層されるように備える。第1層31および第3層33は、上述した同一構成のバイオマス樹脂層であり、第2層32は、例えばポリカーボネート樹脂層である。第2層32は、これ以外にもポリ塩化ビニル層やPET-G層等、通常のカード用基材として使用されるプラスチック樹脂層とすることができる。なお、オーバーシート層3および6は、4層、5層等の3層よりも多層の構成であってもよい。
【0047】
第2層32をバイオマス樹脂層よりも比較的に軟化点が高く、より硬い性質のポリカーボネート樹脂層とすることで、後述するように、ICカード1の物性や曲げ強度、耐久性を向上させることが期待できる。例えば、バイオマス樹脂層のみで構成される白色のコア層のみで作成したカードと、バイオマス樹脂層の間にポリカーボネート樹脂層を挟んだ3層構成の透明なオーバーシート層のみで作成したカードと、に対してJISX6305-1(2010)の5.8 動的曲げ力の試験を、両者のカードのそれぞれ5枚ずつに対して行った。カードの厚さは、いずれも規格範囲内の0.76mm~0.78mmであった。その結果、前者のカードでは40,000~45,000回の間で微細な亀裂が入り始めたのに対して、後者のカードでは95,000~100,000回の間で微細な亀裂が入り始めた。この結果からも明らかなように、後者のカードは前者のカードに対して曲げ強度や曲げ耐久性が高いことが分かる。また、ICカード1の内部に配置されるアンテナ8の凹凸が、比較的柔軟な部材であるコア層4、5を通じて、オーバーシート層3、6の表面に顕在化することを抑制し、ICカード1の表裏面を比較的、平滑にできることが期待できる。
【0048】
一方、第2層32をバイオマス樹脂層よりも比較的に軟化点が低く、より柔軟な性質のポリ塩化ビニル樹脂層とすることで、例えばICカード1のエンボス適性を向上したり、オーバーシート層3に埋め込む磁気ストライプの出張りを吸収し、表裏面を平滑化することが期待できる。また、第2層32をバイオマス樹脂層とほぼ同等の軟化点および柔軟性を有する性質のPET-G樹脂層とすれば、上述するポリカーボネート樹脂層およびポリ塩化ビニル樹脂層の中間的な効果が期待できる。
【0049】
上記を言い換えれば、オーバーシート層3は、間にバイオマス樹脂層とは異なる樹脂層を配置し、その厚さ方向に沿った上下両面をバイオマス樹脂層で挟み込んだ3層構成をとる。一例としてこの3層構成のオーバーシート層3は、共押出し法により1枚のシートとして形成できるが、3層を別々のシートとして用意し、これらをまとめて熱圧によって積層してもよい。オーバーシート層3および6の厚さは、例えば0.05mm以上、0.10mm以下とできる。
【0050】
なお、オーバーシート層3および6は4層以上で構成されてもよく、これを共押出し法で成形してもよい。また、各々の層について別シートとして用意してもよい。オーバーシート層3および6を4層以上の積層構成とする場合は、その積層構成の表裏面が少なくともバイオマス樹脂層となることが好ましい。共押出し法で成形されたオーバーシート層3および6は、3層が別々の層として準備され、これを積層して熱プレスにより一体化されたものとは3層の各層間の融着度合いが異なる。すなわち、共押出し法で成形された場合は、各層の融点以上の温度で加熱された状態で成形されるため、比較的、各層の融着度合いが強く層間分離し難い。一方、別々の層として積層し熱プレスで一体化されたものは、熱プレス時の加熱温度がガラス転移点(Tg)を少し超えた温度で融着するため、比較的、各層の融着度合いが弱く、層間分離し易い。このため、両方のサンプルを準備して、常温、Tg付近への加熱後、または何らかの薬品浸漬後の層間分離の比較試験を行うことで、市場で使用されているカードのオーバーシート層が共押出し法で成形されたものか、別々の層として積層し熱プレスで一体化されたものかを判別することが可能である。層間分離の試験としては、例えばJISX6305-1(2010)の5.3 はく離強度に準じてもよく、他の試験方法に準じてもよい。
【0051】
また、ICカード1の表裏面を構成する、オーバーシート層3および6のバイオマス樹脂層となる最表面には、各種印刷適性やインクリボンからの色材の熱転写適性、ホログラムやサインパネル等の熱転写適性等の向上のための表面処理が行われることが好ましい。これには、例えば塩化ビニル・酢酸ビニル(塩酢ビ)系共重合樹脂を含むインキをコーティングすることが挙げられる。この場合、ICカード1の表面または裏面について、赤外分光法(IR)でスペクトルを得た際に塩素成分のピークが現れることによって、塩酢ビ系インキの使用の有無が判別可能である。
【0052】
オーバーシート層3および6は、それがバイオマス樹脂層の単層構成である場合も、上述した3層構成である場合も、そのカード基体2の中央側に配置されるコア層4や5の表面に形成された印刷層等のデザインが視認できる程度に透明であることが好ましい。オーバーシート層3および6が透明であることにより、コア層4や5の表面に設けられた印刷等による文字やデザインが良好に視認できることで、これらの印刷等の保護もでき、ICカード1の意匠性や付加価値を向上できる。
【0053】
オーバーシート層3および6が透明であるとは、例えば波長が380nm以上で780nm以下である可視光を厚さ方向に沿って入射した場合の透過率が30%以上であることとしてもよい。ただし、透過率は50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。透過率が高いほどICカード1の意匠性の向上が図れるからである。3層構成の場合は3層全体の透過率とできる。なお、オーバーシート層3や6が透明であるとは、無色の場合に限らず、何らかの色彩を備えていてもよいことはいうまでもない。
【0054】
ICカード1を磁気カードとして使用する場合には、オーバーシート層3および6のいずれかまたは両方について、コア層4および5とは反対の主面側に磁気ストライプを熱転写等によりあらかじめ埋め込んでおいてもよい。
【0055】
また、他のバリエーションとして、オーバーシート層3および6の少なくともいずれかは、3層構成のうちの少なくとも1層がレーザ照射により発色するレーザ光発色剤を含む、レーザ発色層であってもよい。そのようなオーバーシート層3aおよび6aの例を図2(b)および図2(c)に示す。オーバーシート層3aおよび6aは、第2層32aが、レーザ発色層となっている。例えば、図2(c)に示すように、所定波長のレーザ光Lをオーバーシート層3aまたは6aに照射したとき、第1層31や第3層33ではレーザ光Lは透過するが、第2層32aではこれを吸収し、所定の発色部130がマーキングされる。その結果、例えばマーキング領域に対応した所定の文字や模様等を視認させることができる。
【0056】
レーザ光発色剤を含むレーザ発色層は、例えば波長が700nm以上、1200nm以下である赤外のレーザ光の照射で所定の色彩に発色する層であり、通常の第2層の基材に所望の添加剤を添加することで作成できる。
【0057】
レーザ光を吸収して発色する添加剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、金属酸 化物、金属硫化物、および金属窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用できる。レーザ光エネルギー吸収体がカーボンブラックである場合の平均粒径は、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、90nm以下であることがさらに好ましい。
【0058】
また、チタンブラック、金属酸化物としては、平均粒径10μm以下であることが、レーザ発色性、印字鮮明性を維持できるため好ましい。酸化物を形成する金属として、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、チタン、珪素、アンチモン、錫、銅、マンガン、コバルト、ビスマス、バナジウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、タングステン、パラジウム、銀、白金などが挙げられる。さらに、複合金属酸化物としてITO、ATO、AZO等が挙げられる。 金属硫化物としては、硫化亜鉛、硫化カドミニウムなどが挙げられる。さらに、金属窒化物としては窒化チタンなどが挙げられる。さらには、フルオラン系、フェノチアジン系、スピロピラン系、トリフェニルメタフタリド系、ローダミンラクタム系等のロイコ染料と顕色剤を用いてもよい。
【0059】
これらの材料を、第2層を構成する通常の樹脂に添加してフィルム化することにより、レーザ発色層である第2層32aを得ることができる。これらの材料は用いるレーザ光の波長域等により選択でき、また添加量はエネルギーの吸収効率、レーザ発色層への印刷適性、転写適性、物理的特性により決定できる。なお、上述した説明は、第2層32aに所定波長のレーザ光を吸収して発色する添加剤を含有させることを念頭に説明している。しかしながら、レーザ発色層はこれに限らず、レーザ照射時の発熱により第2層32aの樹脂が発泡することで発色する方法や、レーザ光の吸収により添加剤が発熱して、周囲の樹脂を炭化させて発色させる方法を用いてもよい。
【0060】
このように、オーバーシート層3aおよび6aは、3層構成の中でも特に通常のカード用基材に用いる樹脂で構成される第2層32aにレーザ発色機能を持たせている。すなわち、バイオマス樹脂層を直接レーザ光で発色させるのではなく、すでにレーザ発色基材として実績のある通常のカード用基材を発色させる構成としている。このため、レーザ発色層として新たな基材の開発や評価を行う必要がなく、従来技術の発色層と同様の構成を用いて容易に発色させることができる。
【0061】
なお、ICモジュール7やアンテナ8を含む積層体の全体に占めるバイオマス由来成分の重量%が、10%以上、45%以下であることが好ましい。バイオマス由来成分の重量%がこの範囲であることにより、ICカード1の一定以上の重量比率で、バイオマス由来成分が含有されることとなり、環境負荷軽減効果が向上する。また、バイオマス由来成分が一定以下の重量比率であることで、ICカード1に要求される規格や実使用上の耐久性や物理特性が確保でき、ICカード1としての信頼性が確保できる。バイオマス由来成分の定義等についての詳細は、例えば「日本バイオプラスチック協会」にて定められている。
【0062】
具体的には、本実施形態では、カード基体2を構成する層ごとで当該層全体に占めるバイオマス由来成分の重量%(パーセント)を示すと、コア層4および5は約34%であり、オーバーシート層3および6が約14%である。カード基体2で見ると約27%である。また、バイオマス樹脂層と他の通常のカード用基材の樹脂層とでは比重が異なる。すなわち、本実施形態では、バイオマス樹脂層の比重は、白色のコア層4および5では1.42であり、透明なオーバーシート層3および6では1.27である。これに対して、組成が近いポリカーボネート樹脂の比重は、白色の層では1.30であり、透明な層では1.20である。また、PET-G樹脂の比重は、白色の層では1.40であり、透明な層では1.25である。このような比重の違いからも、使用材料の特定がある程度可能である。
【0063】
(iii)アンテナ
コア層5に形成されたアンテナ8は、その端部ある一対の導電プレート100に、ICモジュール7の端子73aおよび73bがそれぞれ電気的に接続することにより、ICモジュール7が備えるICチップおよびアンテナ8が非接触通信の通信回路を構成する。当該通信回路は、例えば、ISO/IEC144443等で規定される13.56MHzのHF周波数帯域を用いて近接通信を行うものでもよい。または、それ以外の、例えば920MHzのUHF周波数帯域や125KHzのLF周波数帯域、マイクロ波の2.45GHzの周波数帯を用いて通信を行うものでもよい。
【0064】
外部機器であるリーダライタ等にICカード1をかざしたときに、当該通信回路にはリーダライタが形成する磁界等により電流が発生して、ICチップに電力を供給する。これにより、ICチップは駆動可能となり、リーダライタと非接触による情報の送受信が可能であり、メモリに対する情報の読み出しや書き換え等を行なう。
【0065】
アンテナ8を構成するアンテナ線は、典型的には、銅線の周囲が絶縁部材で被覆された被覆導線により形成される。なお、これ以外にも、Cu-Ni、Cu-Cr、Cu-Zn、Cu-Sn、Cu-Be等の銅合金線、または鉄、ステンレス、アルミ等の種々の金属線、金属合金線を選択することもできる。ICカード1は、被覆導線を用いることにより、例えば銅箔エッチング方式等に比較して安価に製造できる。
【0066】
アンテナ線の直径は、非接触の通信回路としての特性を確保できる限りにおいて特段の制限はないが、例えば、0.03mm以上、0.30mm以下とすることができ、好ましくは、0.05mm以上、0.15mm以下とすることができる。後者の範囲とすることで、埋め込み加工による熱圧や切削加工による外力への耐久性が向上でき、良好な通信特性を確保できる。
【0067】
なお、本実施形態では、アンテナ8のアンテナ線の両端に一対の導電プレート100が溶接され、当該導電プレート100と、ICモジュール7の端子73aおよび73bとが、それぞれ導電接着層10を介して電気的に接続する態様について説明している。しかしながら、本開示のICカード1のアンテナ8の態様はこれに限らない。例えばアンテナ8の両端が導電プレートを有さず、アンテナ線の両端が、それぞれジグザグ形状または蛇腹形状の部位を形成することにより、当該部位が導電プレートと同様の機能を果たす構成であるとしてもよい。
【0068】
また、ICモジュール7には、基板72の外部接続端子71とは反対側の面に、ICチップと電気的に接続された小型の第1カップリングコイルアンテナが形成されていてもよい。このとき、カード基体2の内部に配置されるアンテナ8は、カード基体2の外周に沿ったループアンテナと、ICモジュール7の第1カップリングコイルと対向する位置に形成された第2カップリングコイルと、を備える。さらに、ループアンテナおよび第2カップリングコイルは電気的に接続され、その全体のループが閉じた構成となっている。すなわちアンテナ8はICモジュール7とは物理的に結線されていない。このような構成である場合、ICモジュール7は、ループアンテナが受電した電力や信号を、第2カップリングコイルに伝達し、さらに第2カップリングコイルと第1カップリングコイルとが磁界結合することにより、これをICモジュール7に伝達することができる。すなわち、ICカード1は、このようなブースターアンテナ方式によって動作することも可能である。
【0069】
(b)ICモジュール
次に、ICモジュール7の主要な構成要素の各部について、主に図1(b)や図4に基づいて説明する。図4(a)は、図1(a)と同様に、+Z方向側からICモジュール7の外部接続端子71を見た図である。図4(b)は、ICモジュール7を図4(a)とは反対側の-Z方向側から見た図である。ここでは、内部を透視できるよう、ICチップ体74のモールド部74bの大半を省略して記載している。
【0070】
ICモジュール7は、カード基体2に対して形成された凹部9に埋設され、ICモジュール7の端子73aおよび73bがアンテナ8の両端の一対の導電プレート100とそれぞれ電気的に接続することで、非接触通信の通信回路を形成できる。また、ICモジュール7が備える外部接続端子71を通じて、接触式リーダライタ等と接触通信を行うことができる。
【0071】
基板72はガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の可撓性を有する絶縁性の樹脂フィルムの表裏に銅箔が接着剤を介して貼り込まれ、当該樹脂フィルムの表裏面に貼り込まれた銅箔を、所定のパターンを形成するように残存させたものである。具体的には、当該樹脂フィルムの一方の銅箔面に外部接続端子71を、他方の銅箔面に端子73aおよび73bを形成するように、感光材の塗付、所定パターンが形成されたフィルム版の載置、露光、非感光部位のエッチング除去、を順次行う。これにより、当該樹脂フィルムの表裏面に所定のパターンの銅箔が一部残存した基板72が形成される。また、基板72にはあらかじめ、外部接続端子71へのワイヤボンディングのための貫通孔であるボンディングホール76が複数箇所設けられている。
【0072】
基板72の厚さに特に制限はないが、カード基体2の曲げにある程度、追従できることを考慮して、例えば、0.03mm以上、0.50mm以下とすることができ、好ましくは、0.07mm以上0.20mm以下とすることができる。
【0073】
外部接続端子71には、図4(a)に示すように、ISO/IEC7816―2規格で定められた、外部端子の各区画が画定されている。これらの各区画とICチップ74aとは、図4(b)に示すように、基板72に設けられた上述のボンディングホール76を通じて、金ワイヤ等のワイヤ75によって結線されている。また、端子73aおよび73bとICチップ74aとの間も同様に、ワイヤ75によって結線されている。これらのボンディングホール76やワイヤ75は、モールド部74bによって被覆保護されている。
【0074】
基板72の、外部接続端子71の形成面とは反対側の面に、ICチップ体74が配置されている。ICチップ体74は、基板72に接着剤を介して接着、固定されたICチップ74aと、結線のためのボンディング用のワイヤ75と、これらを保護するための封止樹脂であるモールド部74bとから構成される。ICチップ74aは、接触通信および非接触通信の両方の動作を制御するためのCPUと、RAMやROM、EEPROM、フラッシュメモリー等の記憶装置を備えている。またICチップ74aは、接触通信および非接触通信の入力信号解読と出力信号生成を行うインターフェース回路や電力発生回路等の各種回路と、を備えている。なお、各種回路はICチップ74aとは別個の素子として設けられていてもよい。
【0075】
モールド部74bは、ICチップ74aやワイヤ75を外力負荷や環境負荷から保護するために、これらを被覆する突起状部位として設けられる。モールド部74bとして、絶縁性の紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂等が使用される。
【0076】
ICチップ体74の厚さは、内部に備えるICチップ74aの厚さやボンディングされたワイヤの形状にもよるが、例えば、0.45mm以上、0.75mm以下とすることができる。また、ICモジュール7の総厚は、例えば、0.35mm以上、1.0mm以下とすることができ、好ましくは、0.40mm以上、0.65mm以下とすることができる。後者の範囲であることにより、第2凹部9bの深さを0.7mm以下にすることができ、デュアルインターフェースICカード1の全体の厚さをISO/IEC7810規格に定められた0.84mm以下に抑えることができるからである。
【0077】
(c)導電接着層
カード基体2に対してICモジュール7を埋設するための凹部9を、エンドミルによる切削加工等によって形成した後、ICモジュール7を当該凹部9に埋設固定し、電気的および機械的に接続する導電接着層10について説明する。導電接着層10は、図1(b)に示すように、凹部9の第3凹部9cで導電プレート100の表面が露出している部分のコア層4と、その上方に埋設、配置されるICモジュール7の基板72に形成された端子73aおよび73bとに挟まれるように配置される。導電接着層10は、液状またはテープ状の部材である。
【0078】
導電接着層10は、カード基体2の凹部9の切削後の第3凹部9cの中に塗付または充填付されていてもよい。また、導電接着層10がテープ状である場合は、あらかじめICモジュール7の基板72の外部接続端子71とは反対側の面にラミネートされていてもよい。
【0079】
液状で熱硬化等する導電接着層10としては、例えばエポキシ樹脂中に銀粒子をフィラーとして分散した、いわゆる導電ペースト等を使用できる。また、絶縁性の接着成分を含有するバインダーである接着剤の中に、球状樹脂または球状金属の周りに金属膜が形成された導電性粒子が分散した構成を有する異方性導電ペースト(ACP)や、はんだを用いる方法でもよい。
【0080】
一方、導電接着層10としてテープ状の接着剤として、上述したACPと同等の成分を備えたテープ状の異方性導電フィルム(ACF)を使用できる。
【0081】
導電接着層10として上述した導電ペーストを用いた場合は、第3凹部9cの中に導電接着層10を充填した後、ICモジュール7の外部接続端子71側から熱圧を掛けることにより、当該導電接着層10を熱硬化できる。その結果、ICチップ74aおよびアンテナ8の電気的接続が図れる。
【0082】
(d)凹部
カード基体2に対してICモジュール7を埋設するために形成される凹部9は、外周に沿って形成された第1凹部9aを有している。また、当該凹部9は、第1凹部9aに囲まれた中央側に第1凹部9aよりも深い第2凹部9bを有している。さらに、当該凹部9は、第2凹部9bの外周よりも外側であって、第1凹部9aに囲まれた領域の一部に、第1凹部9aよりも深く、かつ第2凹部9bよりも浅い第3凹部9cをさらに有している。
【0083】
第1凹部9aはICモジュール7の平板状の基板72を収納し、第2凹部9bはICチップ体74の突起部分を収納するために設けられる。そして、第3凹部9cは、上述したようにICモジュール7とアンテナ8との電気的接続を図るための導電接着層10を充填するための領域として設けられる。
【0084】
(e)ICカードの製造方法
次に、上述したコア層4および5、オーバーシート層3および6を備えたカード基体2、ICモジュール7並びに導電接着層10を用いた、デュアルインターフェースICカードであるICカード1の製造方法の一例を説明する。
【0085】
まず、バイオマス樹脂層を含んだコア層4や5、同じくバイオマス樹脂層を含んだ3層構成のオーバーシート層3や6、およびICモジュール7を含め、カード基体2やICカード1を構成するための必要な部材を準備する。本実施形態では、コア層4および5、並びにオーバーシート層3および6は、それぞれ同一の構成である。また、オーバーシート層3および6は、第2層32がポリカーボネートである3層構成で共押出し成型された積層シートである。
【0086】
次に、コア層5のコア層4と対向する側の表面において、あらかじめ所定位置に一対の導電プレート100を、接着剤等を介して貼り付ける。次いで、絶縁部材で被覆された被覆導線をアンテナ線として、一方の導電プレート100の位置を始点とし、他方の導電プレート100の位置を終点として、巻き線形成機により埋め込む。具体的には、例えばコア層5に対して所定の熱圧を加えながら、図1(a)に示すようなループ形状にアンテナ供給ヘッドを描画させ、当該アンテナ供給ヘッドから供給されたアンテナ線をコア層5に順次、埋め込む。その後、アンテナ線の両端を一対の導電プレート100とそれぞれ溶接し、それ以外のアンテナ線の余剰分を切断する。
【0087】
次に、導電プレート100やアンテナ8が形成されたアンテナシート12であるコア層5を用いて、図1(b)に示すとおり、厚さ方向の下側からオーバーシート層6、コア層5、コア層4およびオーバーシート層3をこの順に重ねる。その後、カードが縦横に多面付けで配置された大判シートの積層状態の単位で、厚さ方向の上下からステンレス板で挟み込み、当該ステンレス板を介して、当該積層状態の中間生成物に対して熱圧を加える。
【0088】
このような熱プレス工程を経ることにより、積層状態の中間生成物の各層が一体化した大判シート単位のカード基体を得ることができる。また、オーバーシート層3、6およびコア層4、5のいずれかが、所定温度で熱融着しない耐熱性を有する場合は、以下のようにできる。すなわち、各層間に所定温度で熱融着する接着シートを挟み、あるいは、接着剤を塗付した上で、これらを熱プレス工程に掛けることにより、一体化した大判シート単位のカード基体を得る。これをカード基体2としてカード単位で表したものを図5(a)に示す。
【0089】
ここで、コア層4およびコア層5、コア層5およびオーバーシート層6、並びにコア層4およびオーバーシート層3、のそれぞれは、熱プレスの際に互いに向き合う面がいずれも同一のバイオマス樹脂層となっている。本開示のバイオマス樹脂層は、詳細の理由は定かではないものの、軟化温度の高いポリカーボネート樹脂層との熱融着は比較的容易であるのに対して、これよりも軟化温度が低いPET-G樹脂シートとの熱融着が比較的困難であることが分かっている。また、当然ながら同一のバイオマス樹脂層同士の熱融着はいうまでもなく良好である。ちなみにバイオマス樹脂層の軟化温度は、90℃以上、105℃以下である。
【0090】
したがって、本実施形態では、積層時に互いに隣接する表面部分が、同一のバイオマス樹脂層となるため、熱プレス工程における融着不良は起こり難く、通常のカード用基材である塩化ビニ樹脂シート、PET-G樹脂シート。ポリカーボネート樹脂層同士の熱融着と比較しても製造上の困難性が特に生じない。このため、通常製品と同様、特段に製造設備の条件を変えることなく生産が可能である。また、本実施形態では、オーバーシート層3や6の第2層32としてポリカーボネート樹脂層を使用しているが、オーバーシート層3や6は、3層構成があらかじめ一体化した共押出し成型にてシート加工されている。このため、カード基体2のコア層4や5、オーバーシート層3や6を積層して熱プレスする際には、比較的低温の軟化温度であるバイオマス樹脂層の軟化温度以上で加熱するだけで容易に積層一体化が可能である。その結果、加熱温度を著しく上げる必要がないので、加工時のエネルギーや加工時間を節約できる。
【0091】
さらに、本実施形態では、オーバーシート層3や6の第2層32として、比較的、材料が固く、軟化温度が高いポリカーボネート樹脂層を使用している。このため、アンテナ8の凹凸が、比較的、柔軟な材料であるコア層4や5を通じて、オーバーシート層3や6の表面の凹凸として顕在化することが低減できる。その結果、オーバーシート層3や6の表面が比較的平滑となり、ICカード1の意匠性や外観品質の向上が図れる。具体的には、ICカード1の表面にうねりが生じたり、表面に印刷がされる場合には、表面凹凸の影響で印刷によるインキ塗膜にひび割れが生じること(絵柄割れ)が抑制できる。また、当該第2層32の強度の補強効果により、ICカード1の曲げ耐久性等の向上も見込める。
【0092】
上記により得られた、図5(a)に示す、カードが縦横に多面付けで配置された大判シート単位のカード基体を、打ち抜き機によりISO/IEC7810のカードサイズであるカード基体2として打ち抜く。また、当該カード基体2に、ICモジュール7を埋設するための凹部9を、エンドミルによる切削加工にて形成する。これにより、図5(b)に示すように、切削済みのカード基体2が得られる。凹部9は、前述のとおり、第1凹部9a、第2凹部9bおよび第3凹部9cの3段階の深さを有するものである。
【0093】
その後、凹部9が形成されたカード基体2に対し、凹部9の第3凹部9cの中に導電接着層10である液状の導電ペーストを塗布、充填する。そして、その上にICモジュール7を埋設し、外部接続端子71に所定のヒートブロックを押し当てて、カード基体2側に向けて所定時間、所定の熱圧を加える。これにより、導電接着層10を熱硬化させてICモジュール7の端子73aおよび73bとアンテナ8の両端の導電プレート100との電気的接続を図る。これにより、ICカード1が完成する。
【0094】
(f)第1実施形態のICカードについて
以上をまとめると、第1実施形態のデュアルインターフェースICカードであるICカード1は、ICモジュール7を内蔵した積層体である。ICカード1は、ICモジュール7に接続されたアンテナ8と、アンテナ8を挟持する一対のコア層4および5と、一対のコア層4および5の外側に、透明な一対のオーバーシート層3および6と、を備える。コア層4、5およびオーバーシート層3、6は、バイオマス樹脂層を備える。また、一対のオーバーシート層3,6の少なくとも一方は、当該バイオマス樹脂層とは異なる樹脂層の両面に当該バイオマス樹脂層がそれぞれ積層された複数層で構成される。
【0095】
これにより、ICカード1には一定量の植物由来材料であるバイオマス樹脂成分が含まれ、環境負荷の低減を図ることができる。また、オーバーシート層3、6は、2箇所のバイオマス樹脂層の間に異なる樹脂層を挟んだ3層構成をとるため、バイオマス樹脂層のみから構成されるカードと比べて、異なる樹脂層の成分を適宜選択することでICカード1の物性や強度、品質の調整が可能となる。また、このような構成としても、オーバーシート層3、6を3層構成の共押出し成型でシート化する場合には、コア層4、5およびオーバーシート層3、6を積層し、熱圧を掛けて一体化する工程において、以下が言える。すなわち、当該工程において、互いに向かい合う面が同一のバイオマス樹脂層となるため、比較的容易に熱融着による積層一体化が可能である。
【0096】
2.第2実施形態
次に、本開示の第2実施形態に係る積層体であるICカード1aについて説明する。
【0097】
図6(a)は、第2実施形態のデュアルインターフェースICカードであるICカード1aに関する、図1(b)に対応する断面図である。ICカード1aも本開示の積層体の一例である。第2実施形態のICカード1aは、第1実施形態のICカード1に対して、コア層4に対応するコア層41とオーバーシート層3との間に、第1中間層42および第2中間層43が積層されている点が異なる。また、コア層5に対応するコア層51とオーバーシート層6との間に、第1中間層52および第2中間層53が積層されている点が異なる。さらに、少なくとも第1中間層42および52の少なくとも一方は、オーバーシート層3や6と同一の構成、すなわち2箇所のバイオマス樹脂層の間に異なる樹脂層を挟んだ3層構成をとる。
【0098】
本実施形態では、オーバーシート層3および6が同一の3層構成であることに加え、第1中間層42および52も、これと同様の3層構成を備えている。図6(b)は、図2(a)に対応する、ICカード1aのオーバーシート層3および6に加えて、第1中間層42および52の層構成を説明する断面図である。すなわち、本実施形態では、第1中間層42および52も、オーバーシート層3および6と同様の第1層31、第2層32および第3層33の3層構成を備えている。
【0099】
さらには、第2中間層43および53は、コア層41および51と、厚さを除いて同様の構成を備えている。ただし、ICカード1aは、このような構成には限定されず、オーバーシート層3および6のいずれか一方のみが3層構成であり、かつ、第1中間層42および52のいずれか一方のみがこれと同様の3層構成を備えていてもよい。また、第2中間層43および53は、コア層41および51とは、その構成が異なっていてもよい。このような構成でも、本実施形態に期待される効果が同様に見込めるからである。
【0100】
典型的なICカード1aのオーバーシート層3、6および第1中間層42、52の構成は、図6(b)に示すとおりである。すなわち、第1層31および第3層33は、上述したバイオマス樹脂層であり、第2層32は、例えばポリカーボネート樹脂層である。第2層32は、これ以外にもポリ塩化ビニル層やPET-G層等、通常のカード用基材として使用されるプラスチック樹脂層とすることができることは第1実施形態と同じである。
【0101】
第2層32をバイオマス樹脂層よりも比較的に軟化点が高く、より硬い性質のポリカーボネート樹脂層とすることで、ICカード1a厚さ方向の中心から最表面に至るまでの区間にバイオマス樹脂層とは異なる任意の異なる樹脂層を2箇所配置することができる。よって、ICカード1aの物性や曲げ強度、耐久性を向上させることが期待できるとともに、厚さ方向に沿ったアンテナ8からの距離が近い、比較的中央に近い地点でポリカーボネート樹脂層を配置できる。これにより、アンテナ8に起因する凹凸が、比較的柔軟な部材であるコア層41、51のすぐ外側で抑制できるため、オーバーシート層3、6が内包するポリカーボネート樹脂層による凹凸抑制効果をさらに向上させることができる。
【0102】
一方、第2層32をバイオマス樹脂層よりも比較的に軟化点が低く、より柔軟な性質のポリ塩化ビニル樹脂層とすることで、以下の効果が見込める。すなわち、例えばICカード1aのエンボス適性を向上したり、オーバーシート層に埋め込む磁気ストライプの出張りを吸収し、表裏面を平滑化することが一層期待できる。また、第2層32をバイオマス樹脂層とほぼ同等の軟化点および柔軟性を有する性質のPET-G樹脂層とした場合も、上述するポリカーボネート樹脂層およびポリ塩化ビニル樹脂層の中間的な効果が一層、期待できる。
【0103】
本実施形態は、このように、第1中間層42、52および第2中間層43、53が新たに付加されたこと以外は、第1実施形態とその構成や製造方法が同様であるため、詳細の説明は割愛する。
【0104】
第2実施形態のICカード1aが、上記のような構成であることにより、ICカード1aには一定量の植物由来材料であるバイオマス樹脂成分が含まれ、環境負荷の低減を図ることができる。また、オーバーシート層3、6だけでなく、第1中間層42、52もこれと同様の3層構成を備えることにより、バイオマス樹脂層とは異なる樹脂層が、ICカード1aの最表面付近だけではなく、厚さ方向の中心に近い位置にも配置できる。その結果、ICカード1aが多層構成となっていても、その構成の一部であるオーバーシート層3、6および第1中間層42、52は、互換性のある共通の構成とすることができる。よって、材料種類が少なくなり、購入管理や在庫管理の負荷を軽減できる。特に、第1中間層42や52は機能上、透明である必要はないが、透明とすることでオーバーシート層3や6との互換性を持たせられる。
【0105】
これにより、バイオマス樹脂層のみから構成されるカードの場合や、オーバーシート層にのみ、これとは異なる樹脂層が配置されるカードの場合と比べて、異なる樹脂層の成分を適宜選択することによるICカード1aの物性や強度、品質の調整を一層容易とすることができる。また、このような構成としても、オーバーシート層3、6に加え、第1中間層42、52をともに3層構成の共押出し成型でシート化する場合には、以下のようになる。すなわち、コア層41、51および第1中間層42、52を積層し、熱圧を掛けて一体化する工程において、少なくとも互いに向かい合う面が同一のバイオマス樹脂層となる。このため、比較的、容易に熱融着による積層一体化が可能である。
【0106】
さらに、第2中間層43、53がコア層41、51と同様のバイオマス樹脂層である場合は、第1中間層42、52および第2中間層43、53や、第2中間層43、53およびオーバーシート層3、6についても、互いに向かい合う面が同一のバイオマス樹脂層となる。よって、この場合には、熱プレス工程に際して、すべての互いに向かい合う面が同一のバイオマス樹脂層となり、一層容易に熱融着による積層一体化が可能である。
【0107】
なお、本実施形態においても、オーバーシート層3および6の少なくとも一方に、第1実施形態のバリエーションとして説明した、図2(b)および図2(c)に示すようなレーザ光発色剤を含むレーザ発色層を設けてもよいことはいうまでもない。
【0108】
3.第3実施形態
次に、本開示の第3実施形態に係る積層体である冊子体200について説明する。
【0109】
図7(a)は、第3実施形態に係る冊子体200を説明する概略斜視図である。図7(b)は、図7(a)の冊子体200に含まれるデータページ210に対して、これをデータページ210の主面に平行なY軸に沿ったB-B線について切った断面を+X方向側から見た断面図である。
【0110】
冊子体200は、例えばパスポートや貯金通帳のように、複数の頁の一端が綴じられて冊子状になるものを指す。本実施形態の冊子体200はパスポートである。冊子体200は略矩形状の表紙220および裏表紙230を備え、当該表紙220および当該裏表紙230の間に1枚または複数のページが挟まれて綴じられており、各々のページが不正により、あるいは不用意に取り外されないように構成されている。
【0111】
データページ210の構成は、ほぼ第1実施形態のICカード1の構成と類似している。すなわち、ICカード1のカード基体2に対応するデータページ210は、-Z方向側から順に、オーバーシート層216、コア層215、コア層214およびオーバーシート層213が積層されて一体化したものである。典型的には、オーバーシート層213および216が透明色の基材であり、コア層214および215が白色の基材であるが、これには限定されない。また、コア層214およびコア層215の間には、アンテナ240と、ICモジュール250とが両コア層に挟持されるように配置されている。データページ210は、ICカード1とは違ってICモジュール7の外部接続端子71に相当するものはなく、ICモジュール250の全体がデータページ210の内部に埋まっている。また、アンテナ240の両端は直接ICモジュール250の電気的接点に溶接されている。
【0112】
本実施形態では、オーバーシート層213および216が、ICカード1のオーバーシート層3および6に対応し、コア層214および215が、コア層4および5に対応する。すなわち、コア層214および215がバイオマス樹脂層を含み、オーバーシート層213および216の少なくともいずれか一方が、図2(a)に対応する第1層31、第2層32および第3層33の3層構成となっている。第1層31および第3層33は、上述したバイオマス樹脂層であり、第2層32は、これとは異なる樹脂層、例えばポリカーボネート樹脂層である。本実施形態の冊子体200も、その層構成については第1実施形態のICカード1と同様のため、その作用効果についても同じことがいえる。また、冊子体200はこれに限らず、第2実施形態と同様の層構成としてもよく、オーバーシート層213および216のいずれかにレーザ光発色剤を含むレーザ発色層を備えてもよいことも同様である。
【0113】
なお、第1実施形態や第2実施形態では、積層体として例示したICカード1、1aはいずれもデュアルインターフェースICカードであるとして説明した。しかし、本開示はこれには限らず、ICカード1、1aは、アンテナ8を備えず、外部接続端子やICチップ体を備えたICモジュールをカード基体に埋設した接触ICカードであってもよい。また、ICカード1、1aは、第3実施形態で説明したように、外部接続端子を備えず、ICモジュール全体がカード基体の内部に埋め込まれた形態の非接触ICカードであってもよい。さらには、積層体は、ICカードだけではなく、ICモジュールを備えない磁気カードやIDカード等も含めたカード全般を指す。
【符号の説明】
【0114】
1、1a ICカード
2、2a カード基体
3、3a、6、6a オーバーシート層
4、5 コア層
7 ICモジュール
8 アンテナ
9 凹部
9a 第1凹部
9b 第2凹部
9c 第3凹部
10 導電接着層
12 アンテナシート
31 第1層
32、32a 第2層
33 第3層
41、51 コア層
42、52 第1中間層
43、53 第2中間層
70 ICモジュール
71 外部接続端子
72 基板
73a、73b 端子
74 ICチップ体
74a ICチップ
74b モールド部
74p パッド
75 ワイヤ
76 ボンディングホール
100 導電プレート
110、120 印刷層
130 発色部
200 冊子体
210 データページ
213、216 オーバーシート層
214、215 コア層
220 表紙
230 裏表紙
240 アンテナ
250 ICモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7