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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174414
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ペースト状身体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20231130BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231130BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/34
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087276
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】杉本 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】森川 稔之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC792
4C083CC23
4C083DD22
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】洗浄時の使用感や泡立ち、弱酸性における低温域や高温域の保存安定性に優れ、泡立て時の泡だれを抑制するペースト状身体洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】成分(a):炭素数8~22のアシル基を有するアシルメチル-β-アラニンを1~15質量%、成分(b):N-アシルアミノ酸塩を15~30質量%、成分(c):炭素数2~4の多価アルコールを50~70質量%含有するペースト状身体洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a):炭素数8~22のアシル基を有するアシルメチル-β-アラニンを1~15質量%、
成分(b):N-アシルアミノ酸塩を15~30質量%、
成分(c):炭素数2~4の多価アルコールを50~70質量%
含有するペースト状身体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の洗浄に用いられるペースト状身体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体洗浄用の洗浄剤組成物においては、石鹸を主成分に用いたものが広く使用されている。このような石鹸を用いた洗浄剤組成物は、泡立ちやさっぱり感に優れるものの、1)肌への刺激性が強い、2)すすぎ後に肌にきしみ感が生じる、3)タオルドライ後につっぱり感を生じる、4)硬水中では泡立ちや洗浄力が著しく低下する、といった欠点があった。
そこで、皮膚に対する作用が温和な洗浄成分として、N-アシルアミノ酸塩からなるアニオン性界面活性剤が注目を集めており、本化合物を含有した洗浄剤組成物が開発、提案されている。
【0003】
一方、液だれを生じやすい液体洗浄剤や、溶け崩れを生じやすい固形洗浄剤に代わり、液だれがなく、チューブ容器等に充填することで使用時に必要量のみを適宜取り出すことができる、ペースト状ないしクリーム状(以下、単に「ペースト状」という。)の洗浄剤が消費者に好まれている。このようなペースト状身体洗浄剤組成物は、使用性には優れるものの、低温域で石鹸が結晶化してチューブ容器等から出し難くなったり、高温域で離水したりする保存安定性の課題があった。
【0004】
これらの課題を解決する手段として、例えば特許文献1には、炭素数12以上の脂肪酸の塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびモノグリセリン脂肪酸エステルを含有する洗浄剤組成物が開示されている。この洗浄剤組成物においては、タオルドライ後のつっぱり感がなく、低温域や高温域の保存安定性には優れているものの、石鹸を主成分とした弱アルカリ性洗浄剤であるため、肌に対するマイルド性で劣る場合があった。
【0005】
石鹸を主成分とし、N-アシルアミノ酸塩を添加する上記のようなペースト状洗浄剤組成物の課題を解決する手段として、N-アシルアミノ酸塩を主成分とする洗浄剤組成物が提案されている。例えば特許文献2には、N-アシル中性アミノ酸および/またはその塩と高重合ポリオールと多価アルコールを含有し、弱酸性から中性のpHを示すクリーム状洗浄剤組成物が開示されている。この洗浄剤組成物においては、pHを弱酸性から中性とすることで肌に対してマイルドとなり、泡立ちについても優れるものの、N-メチル化されたN-アシル中性アミノ酸塩を用いた場合、液状となり、保存安定性に劣る場合があった。
【0006】
また特許文献3には、N-長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩を主成分とし、N-長鎖アシル中性アミノ酸及び/又はその塩、多価アルコール、水をそれぞれ特定の質量比で含有し、特定のpHを示すクリーム状洗浄剤組成物が開示されている。この洗浄剤組成物においては、泡立ちや、pH5.6~5.9の弱酸性における保存安定性には優れているものの、pH6以上の弱酸性領域においては、アシルグルタミン酸塩、アシルアラニン塩の水への溶解性が高くなり、離水、または液状となることがあり、保存安定性に劣る場合があった。
【0007】
更に、これらの洗浄剤組成物は、手のひらで泡立てる際に少しずつ水を加えながら溶解する必要がある。しかしながら、N-アシルアミノ酸塩によって生じる泡は、その重量の軽さと泡粘度の低さから泡だれを生じる場合があり、使用時に満足した泡量を得にくいことがあった。
したがって、洗浄時の使用感や泡立ち、弱酸性における低温域や高温域の保存安定性に優れ、泡立て時の泡だれを抑制するペースト状身体洗浄剤組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-155295号公報
【特許文献2】特開2000-143497号公報
【特許文献3】特開2009-067947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、洗浄時の使用感や泡立ち、弱酸性における低温域や高温域の保存安定性に優れ、泡立て時の泡だれを抑制するペースト状身体洗浄剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ペースト状身体洗浄剤組成物において、アシルメチル-β-アラニン、N-アシルアミノ酸塩、および多価アルコールをそれぞれ特定の割合で含有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、成分(a):炭素数8~22のアシル基を有するアシルメチル-β-アラニンを1~15質量%、成分(b):N-アシルアミノ酸塩を15~30質量%、成分(c):炭素数2~4の多価アルコールを50~70質量%含有するペースト状身体洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のペースト状身体洗浄剤組成物(以下、単に「洗浄剤組成物」とも言う。)によれば、洗浄時の使用感や泡立ち、弱酸性における低温域や高温域の保存安定性に優れ、泡立て時の泡だれを抑制する効果が得られる。
なお、本発明における「身体洗浄剤」とは、人体における各部、具体的には顔面を含む頭部、頚部、胴部、腕部および脚部における体表面を洗浄するための洗浄剤を表し、毛髪のみを洗浄するための毛髪洗浄剤が除外される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~4」は2以上かつ4以下を表す。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、下記成分(a)、成分(b)、および成分(c)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。なお、各成分の含有量は、本発明の洗浄剤組成物の全量を100質量%としたときの含有量である。
【0015】
<成分(a)>
本発明で用いられる成分(a)は、炭素数8~22のアシル基を有するアシルメチル-β-アラニンである。
炭素数8~22のアシル基を「RCO-」と表記したとき、Rは炭素数7~21の炭化水素基であり、アシル基は脂肪酸(RCOOH)から水酸基を除いた部分を示す。このアシル基(RCO-)は、飽和脂肪酸に由来するアシル基、および不飽和脂肪酸に由来するアシル基のいずれであってもよいが、飽和脂肪酸に由来するアシル基が好ましい。またアシル基は、一種類の脂肪酸に由来するアシル基に限定されず、二種類以上の脂肪酸を含む混合脂肪酸に由来するアシル基であってよい。また、本発明の効果の観点からは、このアシル基の炭素数は8~18であることが好ましい。
【0016】
更に具体的に炭素数8~22のアシル基としては、例えば、カプリロイル基、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、リノレノイル基、アラキジノイル基、ベヘノイル基などが挙げられる。また、これらアシル基のうち2種以上が混合した混合アシル基でもよく、例えば、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基などの混合アシル基が挙げられる。その中で好ましくは、ラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基であり、より好ましくは、ラウロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基である。
【0017】
成分(a)の具体例としては、例えば、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチル-β-アラニンなどが挙げられる。
また、成分(a)として、アシルメチル-β-アラニンを1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
成分(a)の含有量の下限値は1質量%であり、好ましくは3質量%、より好ましくは5質量%である。成分(a)の含有量が少なすぎると、泡立て時の泡だれのしにくさや保存安定性に劣ることがある。また、成分(a)の含有量の上限値は15質量%であり、好ましくは10質量%である。成分(a)の含有量が多すぎると、泡立ちが劣り、また低温保管時に析出し、ざらざらした感触が残ることがある。成分(a)の含有量の範囲としては、例えば、1~15質量%、好ましくは3~10質量%、より好ましくは5~10質量%が挙げられる。
【0019】
<成分(b)>
本発明に用いられる成分(b)は、N-アシルアミノ酸塩である。
N-アシルアミノ酸塩とは、アシル基とアミノ酸のアルカリ塩が結合した化合物のことを指す。このアシル基を「RCO-」と表記したとき、Rは、好ましくは炭素数7~21、より好ましくは炭素数7~17の炭化水素基であり、アシル基は脂肪酸(RCOOH)から水酸基を除いた部分を示す。このアシル基(RCO-)は、飽和脂肪酸に由来するアシル基、および不飽和脂肪酸に由来するアシル基のいずれであってもよいが、飽和脂肪酸に由来するアシル基が好ましい。またアシル基は、一種類の脂肪酸に由来するアシル基に限定されず、二種類以上の脂肪酸を含む混合脂肪酸に由来するアシル基であってよい。
【0020】
更に具体的なアシル基としては、例えば、カプリロイル基、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、リノレノイル基、アラキジノイル基、ベヘノイル基などが挙げられる。また、これらアシル基のうち2種以上が混合した混合アシル基でもよく、例えば、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基などの混合アシル基が挙げられる。その中で好ましくは、ラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基であり、より好ましくは、ラウロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基である。
【0021】
N-アシルアミノ酸塩としては、例えば、N-アシルグリシン塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルアラニン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシル-N-ヒドロキシエチル-β-アラニン塩、N-アシル-N-メチルタウリン塩などのN-アシル中性アミノ酸塩類;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルアスパラギン酸塩などのN-アシル酸性アミノ酸塩類;N-アシルリジン塩、N-アシルアルギニン塩などのN-アシル塩基性アミノ酸塩類が挙げられる。好ましくは、N-アシルグリシン塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルアラニン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシル-N-ヒドロキシエチル-β-アラニン塩、N-アシル-N-メチルタウリン塩などのN-アシル中性アミノ酸塩類であり、より好ましくは、N-アシル-N-ヒドロキシエチル-β-アラニン塩、N-アシル-N-メチルタウリン塩である。
【0022】
成分(b)として、N-アシルアミノ酸塩を1種または2種以上を用いることができ、特にN-アシル中性アミノ酸塩類の中から選ばれる2種以上を用いることが好ましい。例えば、N-アシル-N-ヒドロキシエチル-β-アラニン塩とN-アシル-N-メチルタウリン塩との組み合わせ、N-アシル-N-メチルタウリン塩とN-アシル-N-メチル-β-アラニン塩との組み合わせが好ましく、N-アシル-N-ヒドロキシエチル-β-アラニン塩とN-アシル-N-メチルタウリン塩との組み合わせが特に好ましい。
【0023】
N-アシルアミノ酸塩を形成する対イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン塩が挙げられる。好ましくは、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミンであり、より好ましくはナトリウムである。
【0024】
成分(b)の具体例としては、例えば、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイル-N-ヒドロキシエチル-β-アラニンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-ヒドロキシエチル-β-アラニンナトリウムなどが挙げられる。
【0025】
成分(b)の含有量の下限値は15質量%であり、好ましくは20質量%である。成分(b)の含有量が少なすぎると、組成物の泡立ちが不十分となることがある。また、成分(b)の含有量の上限値は30質量%であり、好ましくは25質量%である。成分(b)の含有量が多すぎると、低温域の保存によって組成物の硬度が高くなるため、容器からの吐出が困難となったり、ペースト状組成物の水馴染みが遅くなることでかえって泡立ちが劣ったりすることがある。成分(b)の含有量の範囲としては、例えば、15~30質量%、好ましくは20~25質量%が挙げられる。
【0026】
<成分(c)>
本発明に用いられる成分(c)は、炭素数2~4の多価アルコールである。
炭素数2~4の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。その中で好ましくは、グリセリンである。
【0027】
成分(c)の含有量の下限値は50質量%であり、好ましくは55質量%である。成分(c)の含有量が少なすぎると、高温域の保存によって組成物の硬度が不十分となり、保存安定性に劣ることがある。また、成分(c)の含有量の上限値は70質量%であり、好ましくは65質量%である。成分(c)の含有量が多すぎると、低温域の保存によって組成物の硬度が高くなるため、容器からの吐出が困難となることがある。成分(c)の含有量の範囲としては、例えば、50~70質量%、好ましくは55~65質量%が挙げられる。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物は上記成分(a)、成分(b)、および成分(c)を少なくとも含有し、全成分(a)~(c)の合計含有量は、好ましくは70~98質量%、より好ましくは75~95質量%、更に好ましくは80~90質量%である。
【0029】
<水>
本発明の洗浄剤組成物は、上記成分(a)、成分(b)、および成分(c)の他に、好ましくは更に水を含有する。水としては特に制限はなく、蒸留水、イオン交換水、水道水などを使用できる。
水の含有量は、本発明の洗浄剤組成物の全量を100質量%としたとき、好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~15質量%である。
【0030】
本発明の洗浄剤組成物に含まれる、N-アシルアミノ酸の分子構造を有する化合物を(成分(a)+成分(b))と表す場合、N-アシルアミノ酸の分子構造を有する化合物と成分(b)に含まれるN-アシルアミノ酸塩のモル質量比は、泡立ちや保存安定性の観点から、1.1~2.1が好ましく、より好ましくは1.2~1.5である。
N-アシルアミノ酸の分子構造を有する化合物と成分(b)に含まれるN-アシルアミノ酸塩のモル質量比は以下の式により算出される。また、各成分の分子量は、示性式に基づき、各原子の原子量を乗じて算出される。なお、アシル基の炭素数は、各炭素数に存在比を乗じ、加算した平均炭素数を言う。
【数1】
wa:成分(a)の仕込量(g)
wb:成分(b)の仕込量(g)
MWa:成分(a)の分子量
MWb:成分(b)の分子量
【0031】
本発明の洗浄剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、例えば、他の界面活性剤や油分、水溶性高分子、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤など、毛髪や身体の洗浄剤に一般的に用いられている成分が挙げられる。
これら任意成分の含有量は、本発明の洗浄剤組成物の全量を100質量%としたとき、0~20質量%が好ましい。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物は、公知の方法に従って製造することができる。例えば、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)、必要に応じてその他の任意成分を加えて、組成物の全量が100質量%となるように水で調整する。その後、40~90℃で撹拌しながら混合し、これを徐冷撹拌しながら10~40℃になるまで冷却することで、本発明の洗浄剤組成物が得られる。
【実施例0033】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0034】
[実施例1~7および比較例1~6]
<洗浄剤組成物の調製>
表1および表2中の成分(a)~(c)または場合により成分(a)に代えて成分(a’)、その他成分を順次水に添加して、80℃で撹拌しながら混合し、これを徐冷撹拌しながら25℃になるまで冷却して実施例1~7および比較例1~6の各洗浄剤組成物を調製した。
なお、表1および表2中の各成分としては、化粧品用として提供されている市販の製品を用いた。また、表中の各成分の含有量は質量%で示す。
【0035】
実施例1~7および比較例1~6で得られた各洗浄剤組成物について、下記(1)~(5)に記載のとおり、「泡立ち」、「洗浄時の使用感」、「泡立て時の泡だれ」、「保存安定性(5℃、45℃)」について評価を行った。また、下記の方法により、各洗浄剤組成物のpHを測定した。下記に各洗浄剤組成物のpH、(1)~(5)の評価結果を表1および表2に併せて示した。
【0036】
<pHの測定方法>
洗浄剤組成物の10質量%水溶液を調製し、pHメーター(株式会社堀場製作所製「F-52」)を用いて25℃におけるpHを測定した。
【0037】
<洗浄剤組成物の評価>
(1)泡立ち
20名の男女(24~40才)をパネラーとし、洗浄剤組成物1gを用いて手で泡立て、泡立ちについて下記絶対評価基準に従って評価した。各パネラーの評価の合計点を求め、評価の合計点に基づき、下記評価基準により「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階で評価した。前記評価が「◎」である場合、および「○」である場合を合格とした。
〔絶対評価基準〕
(評点):(評価)
2点:泡立ちが良いと感じた。
1点:泡立ちがやや悪いと感じた。
0点:明らかに泡立ちが悪いと感じた。
〔評点の合計による4段階評価〕
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上35点未満
△:合計点が20点以上30点未満
×:合計点が20点未満
【0038】
(2)洗浄時の使用感
20名の男女(24~40才)をパネラーとし、洗浄剤組成物1gを用いて洗顔し、洗浄時の使用感について下記絶対評価基準に従って評価した。各パネラーの評価の合計点を求め、評価の合計点に基づき、下記評価基準により「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階で評価した。前記評価が「◎」である場合、および「○」である場合を合格とした。
〔絶対評価基準〕
(評点):(評価)
2点:きしみ感やつっぱり感がなく、洗浄時の使用感が良いと感じた。
1点:ややきしみ感がある、またはややつっぱり感があると感じた。
0点:明らかにきしみ感、またはつっぱり感があり、洗浄時の使用感が悪いと感じた。
〔評点の合計による4段階評価〕
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上35点未満
△:合計点が20点以上30点未満
×:合計点が20点未満
【0039】
(3)泡立て時の泡だれ
洗浄剤組成物2gを100mLの蓋つき透明ガラス容器に入れ、そこへ5倍希釈となる精製水を加えた後、蓋を閉じて25℃において30回上下に激しく振り混ぜて泡を立てた。その後、1分静置して余分な水分を下方へ取り除き、25℃においてB型粘度計(東機産業株式会社製「TVB-20L」)を用いて、泡粘度を測定した。測定した泡粘度に基づき、下記評価基準により「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階で評価した。前記評価が「◎」である場合、および「○」である場合を合格とした。
〔評価基準〕
◎:泡粘度が1,000mPa・s以上
○:泡粘度が500mPa・s以上、1,000mPa・s未満
△:泡粘度が100mPa・s以上、500mPa・s未満
×:泡粘度が100mPa・s点未満
【0040】
(4)保存安定性(5℃)
洗浄剤組成物20gをチューブ容器(内径7mm)に密封して、5℃の恒温槽で1ヶ月間保存した。恒温槽から取り出し、25℃の恒温槽で一晩静置して室温に戻した後、チューブ容器から洗浄剤組成物を押し出し、下記評価基準により「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階で評価した。前記評価が「◎」である場合、および「○」である場合を合格とした。
〔評価基準〕
◎:適度な硬さでチューブから容易に取り出すことができ、ざらざらした手触りのない状態
○:やや硬いがチューブから取り出すことができ、ざらざらした手触りのない状態
△:やや硬いがチューブから取り出すことができ、ざらざらした手触りのある状態
×:硬くなりチューブから容易に取り出すことができず、ざらざらした手触りのある状態
【0041】
(5)保存安定性(45℃)
洗浄剤組成物20gを蓋つきの透明ガラス容器に密封して、45℃の恒温槽で1ヶ月間保存した。恒温槽から取り出した直後の洗浄剤組成物を目視にて観察し、下記評価基準により「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階で評価した。前記評価が「◎」である場合、および「○」である場合を合格とした。
〔評価基準〕
◎:離水や分離がなく、均一な白色外観のペースト状である。
○:離水や分離のないペースト状であるが、わずかに白色が薄くなった部分がある。
△:わずかな離水が認められ、不均一な外観のペースト状である。
×:明らかに離水している、または液状である。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
実施例1~7はいずれの項目においても良好であった。
一方、比較例1は、泡立ちや洗浄時の使用感に優れ、硬度が低い柔らかなペーストを形成して、低温域の保存安定性に優れたものの、成分(a)が含まれていないため、泡立て時に泡だれを生じ、また高温域で明らかな分層を生じた。
比較例2は、比較例1の洗浄剤組成物を有機酸によって弱酸性pHとしたことで洗浄時の使用感が向上したものの、成分(b)から持ち込まれるアルカリ塩が多いことでN-アシルアミノ酸界面活性剤の水への溶解性が高く、高温域で分層を生じ、保存安定性が不十分であり、泡立て時の泡だれ抑制も不十分であった。
比較例3は、成分(a)が含まれておらず、また成分(c)を過剰に含むので、洗浄剤組成物の硬度が高くなるため、特に低温域ではチューブ容器からの吐出が困難となる。さらに泡立て時の泡量が少なく、すぐに破泡して液状となりやすいため、泡立て時の泡だれ抑制も不十分であった。
【0045】
比較例4は、成分(b)を過剰に含むことで、高温域の保存安定性に優れるものの、洗浄剤組成物の硬度が高くなるため、特に低温域ではチューブ容器からの吐出が困難となり、さらにペーストの水馴染みに時間を要し、泡立ちが不十分であった。
比較例5は、成分(a)を過剰に含むため、泡立ちが不十分であった。また低温保管時に洗浄剤組成物の硬度が高くなり、成分(a)が析出することで、ざらざらした感触が残っていた。
比較例6は、成分(a)の代わりに成分(a’)としてラウリン酸が含まれているため、泡立ちに優れるものの、低温保管時にラウリン酸が析出することで、ざらざらした感触が残り、低温域の保存安定性が不十分であり、洗浄時の使用感に劣り、泡立て時の泡だれ抑制も不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のペースト状身体洗浄剤組成物は、弱酸性のpHを示すので肌に対してマイルドであり、洗浄時の使用感や泡立ち、弱酸性における低温域や高温域の保存安定性に優れ、泡立て時に泡だれを抑制することができ、例えば、ボディーシャンプー、洗顔料、ハンドソープとして用いることができる。