IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本オクラロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-半導体受光素子 図1
  • 特開-半導体受光素子 図2
  • 特開-半導体受光素子 図3
  • 特開-半導体受光素子 図4
  • 特開-半導体受光素子 図5
  • 特開-半導体受光素子 図6
  • 特開-半導体受光素子 図7
  • 特開-半導体受光素子 図8
  • 特開-半導体受光素子 図9
  • 特開-半導体受光素子 図10
  • 特開-半導体受光素子 図11
  • 特開-半導体受光素子 図12
  • 特開-半導体受光素子 図13
  • 特開-半導体受光素子 図14
  • 特開-半導体受光素子 図15
  • 特開-半導体受光素子 図16
  • 特開-半導体受光素子 図17
  • 特開-半導体受光素子 図18
  • 特開-半導体受光素子 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174432
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】半導体受光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20231130BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L31/10 H
H01L31/10 A
H01L31/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112593
(22)【出願日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2022085155
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊中 隆司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】濱田 博
【テーマコード(参考)】
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
5F149AA04
5F149AA07
5F149AB07
5F149BA03
5F149BA15
5F149BA21
5F149DA02
5F149DA05
5F149DA27
5F149DA28
5F149FA12
5F149FA17
5F149GA06
5F149JA10
5F149JA12
5F149LA01
5F149XB04
5F149XB05
5F149XB37
5F849AA04
5F849AA07
5F849AB07
5F849BA03
5F849BA15
5F849BA21
5F849DA02
5F849DA05
5F849DA27
5F849DA28
5F849FA12
5F849FA17
5F849GA06
5F849JA10
5F849JA12
5F849LA01
5F849XB04
5F849XB05
5F849XB37
(57)【要約】
【課題】ESD耐圧の向上を目的とする。
【解決手段】半導体受光素子は、基板10と、基板10の第1面に配置され、積層された複数の半導体層を含み、複数の半導体層は吸収層16を含む受光メサ構造14と、複数の半導体層の積層方向に直交する横方向で受光メサ構造14に重なり、受光メサ構造14の側面を囲む絶縁膜26と、基板10の第1面に配置され、複数の半導体層の最上層20の上面に接触して電気的に接続するメサ電極32を含み、メサ電極32に導通して外方に延びて横方向で受光メサ構造14に重なって絶縁膜26の上にある突起電極38を含み、突起電極38は延長方向に直交する幅においてメサ電極32よりも狭い第1電極30と、基板10の第1面に配置され、複数の半導体層の最下層18の下面に電気的に接続する第2電極40と、を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面に配置され、積層された複数の半導体層を含み、前記複数の半導体層は吸収層を含む受光メサ構造と、
前記複数の半導体層の積層方向に直交する横方向で前記受光メサ構造に重なり、前記受光メサ構造の側面を囲む絶縁膜と、
前記基板の前記第1面に配置され、前記複数の半導体層の最上層の上面に接触して電気的に接続するメサ電極を含み、前記メサ電極に導通して外方に延びて前記横方向で前記受光メサ構造に重なって前記絶縁膜の上にある突起電極を含み、前記突起電極は延長方向に直交する幅において前記メサ電極よりも狭い第1電極と、
前記基板の前記第1面に配置され、前記複数の半導体層の最下層の下面に電気的に接続する第2電極と、
を有する半導体受光素子。
【請求項2】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記絶縁膜は、前記受光メサ構造から外方向に広がっている半導体受光素子。
【請求項3】
請求項2に記載された半導体受光素子であって、
前記突起電極は、前記絶縁膜に沿って前記受光メサ構造から外方向に延びる半導体受光素子。
【請求項4】
請求項2に記載された半導体受光素子であって、
前記突起電極は、前記受光メサ構造から外方向に延びない半導体受光素子。
【請求項5】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記突起電極は、前記延長方向に沿ったいずれの部分でも、前記幅において均一である半導体受光素子。
【請求項6】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記突起電極は、前記延長方向の先端に近いほど、前記幅において狭い半導体受光素子。
【請求項7】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記突起電極は、複数の突起電極のそれぞれである半導体受光素子。
【請求項8】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記絶縁膜は、前記複数の半導体層の前記最上層の前記上面を覆い、前記上面に開口を有し、
前記第1電極の、前記開口に重なる部分が前記メサ電極である半導体受光素子。
【請求項9】
請求項8に記載された半導体受光素子であって、
前記メサ電極は、外部電極を兼ねる半導体受光素子。
【請求項10】
請求項8に記載された半導体受光素子であって、
前記開口は、リング状のスリットであり、
前記絶縁膜の一部は、前記開口の内側にあり、
前記メサ電極は、リング状の平面形状を有する半導体受光素子。
【請求項11】
請求項10に記載された半導体受光素子であって、
前記第1電極は、前記開口の内側で前記絶縁膜に載る部分を有しない半導体受光素子。
【請求項12】
請求項10に記載された半導体受光素子であって、
前記第1電極は、前記開口の内側で前記絶縁膜に載る外部電極を有する半導体受光素子。
【請求項13】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記第1電極は、前記メサ電極に電気的に接続する外部電極を含み、
前記外部電極は、前記メサ電極よりも広い部分を含む半導体受光素子。
【請求項14】
請求項13に記載された半導体受光素子であって、
前記第1電極は、前記外部電極および前記メサ電極を接続する接続線を含み、
前記接続線および前記突起電極は、相互に反対方向に延びる半導体受光素子。
【請求項15】
請求項13に記載された半導体受光素子であって、
前記外部電極は、前記絶縁膜の上にある半導体受光素子。
【請求項16】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記メサ電極の少なくとも一部と、前記突起電極の少なくとも一部は、別部材である半導体受光素子。
【請求項17】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記第2電極は、一対の部分を含み、
前記第1電極は、前記一対の部分の間にある半導体受光素子。
【請求項18】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記横方向で前記受光メサ構造を埋め込む埋め込み層をさらに有し、
前記絶縁層は、前記埋め込み層を囲む半導体受光素子。
【請求項19】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記突起電極は、前記第2電極の一部に向けて延びている半導体受光素子。
【請求項20】
請求項1に記載された半導体受光素子であって、
前記基板は、光透過性材料からなり、前記第1面とは反対側の第2面に、前記受光メサ構造に重なるレンズ部を有する半導体受光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信における伝送速度が増加しており、光モジュールの高速応答性が要求されている。光信号を電気に変換する機能を備えた光モジュールでは、内蔵される半導体受光素子の高速応答性が要求される。半導体受光素子は、積層された複数の半導体層に電圧を印加するようになっている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-4537号公報
【特許文献2】特開2020-184566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体受光素子の応答速度は容量を低減することで向上するが、静電気放電(ESD;Electrostatic Discharge)に対する耐圧の低下につながる。
【0005】
本発明は、ESD耐圧の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
半導体受光素子は、基板と、前記基板の第1面に配置され、積層された複数の半導体層を含み、前記複数の半導体層は吸収層を含む受光メサ構造と、前記複数の半導体層の積層方向に直交する横方向で前記受光メサ構造に重なり、前記受光メサ構造の側面を囲む絶縁膜と、前記基板の前記第1面に配置され、前記複数の半導体層の最上層の上面に接触して電気的に接続するメサ電極を含み、前記メサ電極に導通して外方に延びて前記横方向で前記受光メサ構造に重なって前記絶縁膜の上にある突起電極を含み、前記突起電極は延長方向に直交する幅において前記メサ電極よりも狭い第1電極と、前記基板の前記第1面に配置され、前記複数の半導体層の最下層の下面に電気的に接続する第2電極と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図2図1に示す半導体受光素子のII-II線断面図である
図3図1に示す半導体受光素子のIII-III線断面図である。
図4】変形例1に係る半導体受光素子の断面図である。
図5】変形例2に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図6】変形例3に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図7】変形例4に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図8】第2の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図9図8に示す半導体受光素子のIX-IX線断面図である。
図10】第3の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図11図10に示す半導体受光素子のXI-XI線断面図である。
図12図10に示す半導体受光素子のXII-XII線断面図である。
図13】第4の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図14図13に示す半導体受光素子のXIV-XIV線断面図である。
図15図13に示す半導体受光素子のXV-XV線断面図である。
図16】第5の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図17図16に示す半導体受光素子のXVII-XVII線断面図である。
図18】第6の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。
図19図18に示す半導体受光素子のXIX-XIX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。図2は、図1に示す半導体受光素子のII-II線断面図である。図3は、図1に示す半導体受光素子のIII-III線断面図である。半導体受光素子は、基板10を有する。基板10は、半絶縁性基板であり、例えばFeがドープされたInPからなる。基板10にコンタクト層12が設けられている。コンタクト層12は、第1導電型(例えばn型)の半導体層である。
【0010】
[受光メサ構造]
半導体受光素子は、受光メサ構造14を有する。受光メサ構造14は、基板10の第1面(詳しくはコンタクト層12の上)に配置されている。受光メサ構造14は、コンタクト層12と接触して電気的に接続している。半導体受光素子は、受光メサ構造14の上面から入光される表面入射型半導体受光素子であり、例えば、p型半導体層とn型半導体層の間に真性半導体(Intrinsic Semiconductor)層を挿入した構造のPIN型の受光素子である。半導体受光素子は、アバランシェフォトダイオード(APD: Avalanche Photodiode)であってもよい。
【0011】
受光メサ構造14は、積層された複数の半導体層を含む。複数の半導体層は吸収層16を含む。受光メサ構造14に入光した光は、吸収層16に入射し、吸収され、電気に変換される。吸収層16は、真性半導体層または導電型の半導体層のいずれであってもよいし、両者の組み合わせであっても構わない。吸収層16は、複数の半導体層の最下層18および最上層20に挟まれている。最下層18はコンタクト層12の上にあり、第1導電型である。最上層20は吸収層16の上にあり、第2導電型である。例えば、最下層18はn型バッファ層であり、最上層20はp型コンタクト層である。吸収層16と最上層20との間にp型バッファ層が設けられていても構わない。なお、p型とn型は反対であっても構わない。
【0012】
基板10の上方には、第1スペーサ22が設けられている。第1スペーサ22は、複数層からなり、最下層がコンタクト層12と同じ層である点を除いて、受光メサ構造14と同様のメサ構造である。基板10の上方には、第2スペーサ24が設けられている。第2スペーサ24は、第1スペーサ22と同じ層構造を有している。受光メサ構造14、第1スペーサ22および第2スペーサ24は、MBE(Molecular Beam Epitaxy)装置を用いて上述した層構造を成長させた後、リソグラフィ技術を用いてそれぞれを分離することにより形成することができる。
【0013】
[絶縁膜]
半導体受光素子は、絶縁膜26を有する。絶縁膜26は、受光メサ構造14、第1スペーサ22、第2スペーサ24および基板10の露出する表面(例えば全体)を覆って保護している。絶縁膜26は、パッシベーション膜である。絶縁膜26は、複数の半導体層の積層方向に直交する横方向で受光メサ構造14に重なる。絶縁膜26は、受光メサ構造14の側面を囲む。絶縁膜26は、受光メサ構造14(最下層18)から外方向に広がっている。
【0014】
絶縁膜26は、複数の半導体層の最上層20の上面を覆う。絶縁膜26は、半導体受光素子が受光可能な光の波長(850nm帯~1.55μm帯)に応じて低反射膜として機能するように形成されている。受光メサ構造14に入光した光は絶縁膜26を透過する。絶縁膜26は、上面に開口28(スルーホール)を有する。開口28は、リング状のスリットである。絶縁膜26の一部は、開口28の内側(スリットに囲まれた領域)にある。絶縁膜26は、コンタクト層12の上にも開口28がある。
【0015】
[第1電極]
半導体受光素子は、第1電極30を有する。第1電極30は、基板10の第1面に配置されている。以下、第1電極30の複数の部位を説明するが、これらは一体的なものである。
【0016】
[メサ電極]
第1電極30は、メサ電極32を含む。メサ電極32は、複数の半導体層の最上層20の上面に接触(物理的および電気的に接続)する。第1電極30の、絶縁膜26の開口28に重なる部分がメサ電極32である。メサ電極32は、リング状の平面形状を有するが、一部が繋がっていないC形状であっても構わないし、外形において楕円形、長円形または直線および弧の組み合わせ形状であってもよい。第1電極30は、絶縁膜26の開口28(スリット)の内側で絶縁膜26に載る部分を有しない。
【0017】
[外部電極]
第1電極30は、外部電極34(例えばパッド)を含む。外部電極34は、第1スペーサ22の上面を覆うように配置され、図示しないワイヤがボンディングされるようになっており、外部(例えばトランスインピーダンスアンプ)との電気的な接続が行われる。外部電極34は、メサ電極32よりも広い部分を含む。外部電極34は、絶縁膜26の上にある。
【0018】
[接続線]
第1電極30は、外部電極34およびメサ電極32を接続する接続線36を含む。接続線36は、延長方向の幅において、外部電極34よりも狭く、メサ電極32よりも狭い。
【0019】
[突起電極]
第1電極30は、突起電極38を含む。突起電極38は、メサ電極32に導通して外方に延びる。突起電極38は、横方向で受光メサ構造14に重なって絶縁膜26の上にある。突起電極38は、絶縁膜26に沿って受光メサ構造14から外方向に延び、先端がコンタクト層12の上方にある。突起電極38および接続線36は、相互に反対方向に延びる。
【0020】
突起電極38は、延長方向に直交する幅においてメサ電極32よりも狭い。突起電極38は、延長方向に沿ったいずれの部分でも、幅において均一である。突起電極38の幅は、メサ電極32の幅(例えば直径)の1/4以下が好ましい。幅が広いと、容量が大きくなり高速応答性の妨げとなる。
【0021】
突起電極38は、メサ電極32および接続線36を介して、外部電極34と電気的に接続されている。突起電極38は、メサ電極32からの延長方向とは異なる方向で、外部電極34と電気的に接続されている。突起電極38の延長方向の端部は、他の電極と接続されていない。
【0022】
[第2電極]
半導体受光素子は、第2電極40を有する。第2電極40は、基板10の第1面に配置されている。第1電極30は、第2電極40の一対の部分(例えばパッド)の間にある。突起電極38は、第2電極40の一部に向けて延びている。第2電極40は、絶縁膜26の開口の内側でコンタクト層12に接触する。第2電極40は、複数の半導体層の最下層18の下面に電気的に接続する。
【0023】
第2電極40は、第2スペーサ24の上面に配置される領域と、受光メサ構造14の外周に沿って弧を描く形状の領域と、これらの間を繋ぐ領域で構成されている。第1電極30と第2電極40との間に電圧を印加することで、受光メサ構造14に入光した光(光信号)が吸収され、電気信号が得られる。
【0024】
[評価試験]
半導体受光素子の評価試験の一つに、ESD耐圧試験がある。ESD耐圧試験は、どれだけの電圧が印加されると半導体受光素子が破壊されるかを確認する試験である。もしくは、要求されるESD耐圧の電圧印加時に半導体受光素子が破壊されないことを確認する試験である。
【0025】
一般的に、ESD耐圧と半導体受光素子が持つ容量は比例関係にある。つまり容量が大きい半導体受光素子は、ESD耐圧も大きい。しかし、容量が大きい半導体受光素子は、高速応答に対応することが難しい。
【0026】
比較例として、第1電極が突起電極を備えていない場合を想定し、受光メサ構造は50Gbps動作に対応した構造を備えているものとする。ESD耐圧試験を実施したところ、要求仕様を満たすことができなかった。電圧印加後の半導体受光素子を解析したところ、受光メサ構造に含まれる半導体層の一部が破壊されていた。
【0027】
一方、第1の実施形態に係る半導体受光素子にESD耐圧試験を行ったところ、ESD耐圧は比較例と比べて1.5倍以上となり、要求仕様を満足した。突起電極38を追加したことで半導体層内の電荷集中が分散されたために、ESD耐圧が向上したと推測される。突起電極38は、接続線36から遠い位置、例えば接続線36とメサ電極32との接続位置の正反対の位置に配置されていると、ESD耐圧の向上効果が大きいことが分かった。
【0028】
ESD耐圧を向上させる目的だけであれば、突起電極38は、受光メサ構造14のごく一部だけに配置するのではなく、受光メサ構造14の全体を覆うように配置するほうが好ましいが、容量が大きくなるので、高速応答性の観点では好ましくない。本実施形態によれば、突起電極38の幅が狭いので、ESD耐圧の向上と高速応答性の維持の両立を実現している。
【0029】
[変形例1]
図4は、変形例1に係る半導体受光素子の断面図である。変形例1では、突起電極38Aは、受光メサ構造14Aから外方向に延びない。突起電極38Aは受光メサ構造14Aの側面の途中まで配置されている。したがって、突起電極38Aを起因とする寄生容量を低減することができる。変形例1の構造は、突起電極38Aの形状を除き、第1の実施形態と同じである。
【0030】
[変形例2]
図5は、変形例2に係る半導体受光素子の概略平面図である。変形例2では、突起電極38Bは、延長方向の先端に近いほど、幅において狭い。突起電極38Bは、矩形ではなく三角形形状としている。本構造によれば、第1の実施例と比較して、突起電極38Bの面積を広くすることができ、これによりESD耐圧をさらに向上させることができる。変形例2の構造は、突起電極38Bの形状を除き、第1の実施形態と同じである。
【0031】
[変形例3]
図6は、変形例3に係る半導体受光素子の概略平面図である。変形例3では、突起電極38Cは、一対の突起電極38Cのそれぞれである。本構造によれば、第1の実施例と比較して、突起電極38Cが多いために、ESD耐圧をより向上させることができる。変形例3の構造は、一対の突起電極38Cがあることを除き、第1の実施形態と同じである。
【0032】
[変形例4]
図7は、変形例4に係る半導体受光素子の概略平面図である。変形例4では、突起電極38Dは、複数の突起電極38Dのそれぞれである。複数の突起電極38Dの1つは、接続線36Dとは逆側にある。本構造によれば、第1の実施例と比較して、突起電極38Dが多いために、ESD耐圧をより向上させることができる。ただし、寄生容量も大きくなるので、4つ以下の突起電極38Dが好ましい。要するに、要求されるESD耐圧仕様と高速応答特性に応じて、突起電極38Dの形状や個数を決定すればよい。変形例4の構造は、複数の突起電極38Dがあることを除き、第1の実施形態と同じである。
【0033】
[第2の実施形態]
図8は、第2の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。図9は、図8に示す半導体受光素子のIX-IX線断面図である。
【0034】
第1電極230は、別部材の第1層242および第2層244を含み、両者は部分的に積層して導通している。第1層242および第2層244は、同じ材料で構成してもよいが、別の材料で構成してもよい。例えば、第1層242が下からTi/Pt/Auの積層構造を有し、第2層244が下からTi/Auの積層構造を有してもよい。
【0035】
第1層242の一部は、外部電極234および外部電極234から引き出された第1接続線236Aである。第2層244の一部は、第1接続線236Aに部分的に重なって導通する第2接続線236Bである。第1接続線236Aおよび第2接続線236Bが、接続線236を構成する。
【0036】
第1層242は、絶縁膜226の開口228の内側にあって受光メサ構造214に接触するメサ接触部246を含む。メサ接触部246は、リング状である。第2層244は、メサ接触部246の一部に重なる第1積層部248と、メサ接触部246の他の一部に重なる第2積層部250を含む。メサ接触部246、第1積層部248および第2積層部250がメサ電極232を構成する。第2積層部250は、第2接続線236Bと連続一体的になっている。第2層244は、第1積層部248と連続一体化した突起電極238を含む。メサ電極232の少なくとも一部と、突起電極238の少なくとも一部は、別部材である。
【0037】
一対の第2電極240が、分離されている。一対の第2電極240の端部は、それぞれ、受光メサ構造214を挟む一対の領域にある。突起電極238が延びる方向の先には、第2電極240がない。本構成においても第1の実施形態で説明した効果が得られる。第1の実施形態で説明した半導体受光素子のその他の構成は、ここに適用可能である。
【0038】
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。図11は、図10に示す半導体受光素子のXI-XI線断面図である。図12は、図10に示す半導体受光素子のXII-XII線断面図である。
【0039】
絶縁膜326は、第1の実施形態とは異なり、開口328の外形の内側には存在しない。つまり、メサ電極332に囲まれる絶縁膜はない。受光メサ構造314の上面において、中央にはメサ電極332があるため、光が透過しない。半導体受光素子は、裏面入射型半導体受光素子である。
【0040】
基板310は、光透過性材料からなり、第1面とは反対側の第2面(裏面)に、受光メサ構造314に重なるレンズ部352(集光レンズ)を有する。レンズ部352は、入光する光を受光メサ構造314(特に吸収層316)に集光するようになっており、受光効率を向上させている。本構成においても第1の実施形態で説明した効果が得られる。第1又は第2の実施形態で説明した半導体受光素子のその他の構成は、ここに適用可能である。
【0041】
[第4の実施形態]
図13は、第4の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。図14は、図13に示す半導体受光素子のXIV-XIV線断面図である。図15は、図13に示す半導体受光素子のXV-XV線断面図である。
【0042】
半導体受光素子は、横方向で受光メサ構造414を埋め込む埋め込み層454をさらに有する。埋め込み層454は、半絶縁性の半導体層である。埋め込み層454は、受光メサ構造414(複数の半導体層)の側面を覆うように配置されている。絶縁層は、埋め込み層454を囲む。
【0043】
本実施形態では、受光メサ構造414(例えば複数の半導体層の最下層418)と突起電極438との間の距離を大きくすることができ、第1の実施形態と比較して、突起電極438を起因とする寄生容量を低減することができる。第1から第3の実施形態で説明した半導体受光素子のその他の構成は、ここに適用可能である。
【0044】
[第5の実施形態]
図16は、第5の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。図17は、図16に示す半導体受光素子のXVII-XVII線断面図である。半導体受光素子は、裏面入射型半導体受光素子であり、基板510が第2面(裏面)にレンズ部552を有する。受光メサ構造514には、第1の実施形態で示した内容を適用可能である。
【0045】
外部電極534は、開口528の内側(スリットに囲まれた領域)で絶縁膜526に載る。外部電極534は、メサ電極532に囲まれている。複数の半導体層の最上層520と外部電極534の間に絶縁膜526が介在する。半導体受光素子は、第1スペーサを有していない。第1電極530は接続線を有しない。
【0046】
1つの第2スペーサ524が設けられている。第2スペーサ524は、平面形状において矩形(長方形)である。第2スペーサ524は、受光メサ構造514と同じ複数の半導体層から構成されている。第2電極540が、第2スペーサ524の全体を覆うとともに、基板510に接触して電気的に接続する。基板510は、光透過性の導電性基板であり、InPから構成されてもよい。
【0047】
半導体受光素子は、図示しないサブマウントに搭載して使われる。詳しくは、受光メサ構造514をサブマウントの搭載面に向けて、半導体受光素子は搭載される(ジャンクションダウン搭載)。サブマウントの搭載面に設けられた配線に、第1電極530および第2電極540が接合される。接合には、はんだを使用可能である。サブマウントの配線は、主として外部電極534と接続される。突起電極538の一部もサブマウントの配線と接する。しかし、突起電極538の延長方向の先端部は、他の電極と接続されない。突起電極538には、第1~第4変形例を適用可能である。本実施形態においても、突起電極538を有することでESD耐圧を向上させることができる。第1又は第2の実施形態で説明した半導体受光素子のその他の構成は、ここに適用可能である。
【0048】
[第6の実施形態]
図18は、第6の実施形態に係る半導体受光素子の概略平面図である。図19は、図18に示す半導体受光素子のXIX-XIX線断面図である。
【0049】
本実施形態は、メサ電極632が外部電極を兼ねる点で、第5の実施形態と異なる。つまり、絶縁膜626が、開口628の内側の部分を有していない。そのため、第1電極630は、開口628の内側で絶縁膜626に載る部分を有していない。したがって、基板610の第2面から入光した光が反射する領域で、メサ電極632(外部電極)に絶縁が積層されないので、光の反射を抑えることができる。
【0050】
[実施形態の概要]
(1)本発明に係る半導体受光素子は、基板10と、基板10の第1面に配置され、積層された複数の半導体層を含み、複数の半導体層は吸収層16を含む受光メサ構造14と、複数の半導体層の積層方向に直交する横方向で受光メサ構造14に重なり、受光メサ構造14の側面を囲む絶縁膜26と、基板10の第1面に配置され、複数の半導体層の最上層20の上面に接触して電気的に接続するメサ電極32を含み、メサ電極32に導通して外方に延びて横方向で受光メサ構造14に重なって絶縁膜26の上にある突起電極38を含み、突起電極38は延長方向に直交する幅においてメサ電極32よりも狭い第1電極30と、基板10の第1面に配置され、複数の半導体層の最下層18の下面に電気的に接続する第2電極40と、を有する。突起電極38があることで、ESD耐圧を向上することができる。
【0051】
(2)(1)に記載された半導体受光素子であって、絶縁膜26は、受光メサ構造14から外方向に広がっている半導体受光素子。
【0052】
(3)(2)に記載された半導体受光素子であって、突起電極38は、絶縁膜26に沿って受光メサ構造14から外方向に延びる半導体受光素子。
【0053】
(4)(2)に記載された半導体受光素子であって、突起電極38Aは、受光メサ構造14Aから外方向に延びない半導体受光素子。
【0054】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、突起電極38は、延長方向に沿ったいずれの部分でも、幅において均一である半導体受光素子。
【0055】
(6)(1)から(4)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、突起電極38Bは、延長方向の先端に近いほど、幅において狭い半導体受光素子。
【0056】
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、突起電極38Cは、複数の突起電極38Cのそれぞれである半導体受光素子。
【0057】
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、絶縁膜26は、複数の半導体層の最上層20の上面を覆い、上面に開口28を有し、第1電極30の、開口28に重なる部分がメサ電極32である半導体受光素子。
【0058】
(9)(8)に記載された半導体受光素子であって、メサ電極632は、外部電極を兼ねる半導体受光素子。
【0059】
(10)(8)に記載された半導体受光素子であって、開口28は、リング状のスリットであり、絶縁膜26の一部は、開口28の内側にあり、メサ電極32は、リング状の平面形状を有する半導体受光素子。
【0060】
(11)(10)に記載された半導体受光素子であって、第1電極30は、開口28の内側で絶縁膜26に載る部分を有しない半導体受光素子。
【0061】
(12)(10)又は(11)に記載された半導体受光素子であって、第1電極530は、開口528の内側で絶縁膜526に載る外部電極534を有する半導体受光素子。
【0062】
(13)(1)から(11)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、第1電極30は、メサ電極32に電気的に接続する外部電極34を含み、外部電極34は、メサ電極32よりも広い部分を含む半導体受光素子。
【0063】
(14)(13)に記載された半導体受光素子であって、第1電極30は、外部電極34およびメサ電極32を接続する接続線36を含み、接続線36および突起電極38は、相互に反対方向に延びる半導体受光素子。
【0064】
(15)(13)又は(14)に記載された半導体受光素子であって、外部電極34は、絶縁膜26の上にある半導体受光素子。
【0065】
(16)(1)から(15)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、メサ電極232の少なくとも一部と、突起電極238の少なくとも一部は、別部材である半導体受光素子。
【0066】
(17)(1)から(16)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、第2電極40は、一対の部分を含み、第1電極30は、一対の部分の間にある半導体受光素子。
【0067】
(18)(1)から(17)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、横方向で受光メサ構造414を埋め込む埋め込み層454をさらに有し、絶縁層は、埋め込み層454を囲む半導体受光素子。
【0068】
(19)(1)から(18)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、突起電極38は、第2電極40の一部に向けて延びている半導体受光素子。
【0069】
(20)(1)から(19)のいずれか1項に記載された半導体受光素子であって、基板310は、光透過性材料からなり、第1面とは反対側の第2面に、受光メサ構造314に重なるレンズ部352を有する半導体受光素子。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態を説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 基板、12 コンタクト層、14 受光メサ構造、14A 受光メサ構造、16 吸収層、18 最下層、20 最上層、22 第1スペーサ、24 第2スペーサ、26 絶縁膜、28 開口、30 第1電極、32 メサ電極、34 外部電極、36 接続線、36D 接続線、38 突起電極、38A 突起電極、38B 突起電極、38C 突起電極、38D 突起電極、40 第2電極、214 受光メサ構造、226 絶縁膜、228 開口、230 第1電極、232 メサ電極、234 外部電極、236 接続線、236A 第1接続線、236B 第2接続線、238 突起電極、240 第2電極、242 第1層、244 第2層、246 メサ接触部、248 第1積層部、250 第2積層部、310 基板、314 受光メサ構造、316 吸収層、326 絶縁膜、328 開口、332 メサ電極、352 レンズ部、414 受光メサ構造、418 最下層、438 突起電極、454 埋込層、510 基板、514 受光メサ構造、520 最上層、524 第2スペーサ、526 絶縁膜、528 開口、530 第1電極、532 メサ電極、534 外部電極、538 突起電極、540 第2電極、552 レンズ部、610 基板、626 絶縁膜、628 開口、630 第1電極、632 メサ電極。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19