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特開2023-174467空気入口バッフルを備える燃料電池システム及びその動作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174467
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】空気入口バッフルを備える燃料電池システム及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04014 20160101AFI20231130BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20231130BHJP
【FI】
H01M8/04014
H01M8/04701
H01M8/04746
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181495
(22)【出願日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】202241030531
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バース,ニランジャナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーシー,ナンダン
(72)【発明者】
【氏名】ゲダム,ヘマント
(72)【発明者】
【氏名】ケケリス,カイル
(72)【発明者】
【氏名】エドモンストン,デイビッド
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA36
5H127BA37
5H127BA44
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB24
5H127BB27
5H127BB37
5H127DA05
5H127DC02
5H127DC06
5H127DC12
5H127DC22
5H127DC26
5H127DC32
5H127DC53
5H127DC74
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE15
5H127EE18
5H127EE25
5H127EE30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スタックから排出されたカソード排気を使用して空気を加熱することを目的とした空気入り口バッフルに関するもの。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池のスタック102と、スタック102から排出されたカソード排気を使用して空気を加熱するように構成されるカソード復熱器500と、カソード復熱器500とスタック102との間に配置され、鉛直方向に沿って分離された少なくとも2列の開口を備え、スタックの複数の領域に、カソード復熱器から排出された加熱された空気を供給するように構成される空気入口バッフル550とを備える。
【選択図】図2A2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のスタックと、
前記スタックから排出されたカソード排気を使用して空気を加熱するように構成されるカソード復熱器と、
前記カソード復熱器と前記スタックとの間に配置され、鉛直方向に沿って分離された少なくとも2列の開口を備え、前記スタックの複数の領域に、前記カソード復熱器から排出された加熱された前記空気を供給するように構成される空気入口バッフルと、
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
前記システムの定常状態動作中、前記空気入口バッフルは、燃料電池間の温度変動が40℃以下になるように、前記スタックの鉛直温度プロファイルを制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムの定常状態動作中、前記空気入口バッフルは、前記スタックにおける任意の前記燃料電池の最大燃料利用率が前記燃料電池スタックの平均燃料利用率を上回るのが約1%以下になるように前記スタックの鉛直温度プロファイルを制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムの定常状態動作中、前記燃料電池は、86%~91%の範囲の燃料利用率を有し、前記燃料電池は、固体酸化物型燃料電池を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記開口は、5mm~15mmの範囲の直径を有する、前記空気入口バッフルの連続プレート部分を通る貫通孔であり、
各列において隣り合う開口は、5mm~15mmの範囲の中心間距離によって分離される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記空気入口バッフルは、円筒形であり、
前記カソード復熱器は、前記加熱された空気を前記スタックに向かって水平方向に排出するように構成される環状空気出口を備え、
前記空気入口バッフルは、前記環状空気出口から排出された前記加熱された空気を鉛直に転向するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記開口は、前記空気入口バッフルの円周の周りに延在するアレイとして配置され、
各アレイは、少なくとも2列の前記開口を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記開口は、第1のアレイ、第2のアレイ、第3のアレイ、及び第4のアレイに配置され、
前記第1のアレイ及び前記第2のアレイは、前記環状空気出口の下方に配置され、
前記第3のアレイ及び前記第4のアレイは、前記環状空気出口の上方に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第3のアレイ及び前記第4のアレイは、前記第1のアレイ及び前記第2のアレイよりも多数の前記開口を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記空気入口バッフルの連続プレート部分は、前記環状空気出口の鉛直レベルに位置し、
前記空気入口バッフルは、前記環状空気出口の前記鉛直レベルにおいて前記開口を有せず、
前記空気入口バッフルの前記連続プレート部分は、前記環状空気出口から排出された前記加熱された空気を鉛直に転向するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
加熱された空気及び燃料を燃料電池のスタックに供給することと、
燃料排気及び空気排気を排出するように、前記スタックを定常状態モードで動作させることと、
前記燃料排気及び前記空気排気を、前記燃料排気を酸化させるアノードテールガス酸化器に供給することと、
前記アノードテールガス酸化器からの排気をカソード復熱器に供給することと、
空気を前記カソード復熱器に供給することと、
前記アノードテールガス酸化器からの前記排気を使用して前記空気を加熱して、前記カソード復熱器から、前記カソード復熱器と前記スタックとの間に配置され、鉛直方向に沿って分離された少なくとも2列の開口を備える空気入口バッフル上に、前記加熱された空気を排出することと、
前記少なくとも2列の開口を通して前記スタックの複数の領域に前記加熱された空気を供給することと、
を含む、燃料電池システムを動作させる方法。
【請求項12】
前記定常状態モード中、前記空気入口バッフルは、燃料電池間の温度変動が40℃以下になるように、前記スタックの鉛直温度プロファイルを制御する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記定常状態モードでの動作中、前記空気入口バッフルは、前記スタック内の任意の前記燃料電池の最大燃料利用率が前記燃料電池スタックの平均燃料利用率を上回るのが約1%以下になるように、前記スタックの鉛直温度プロファイルを制御する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記定常状態モードでの動作中、前記燃料電池は、86%~91%の範囲の燃料利用率を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記開口は、5mm~15mmの範囲の直径を有する、前記空気入口バッフルの連続プレート部分を通る貫通孔であり、
各列において隣り合う開口は、5mm~15mmの範囲の中心間距離によって分離される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記空気入口バッフルは、円筒形であり、
前記カソード復熱器は、前記加熱された空気を前記スタックに向かって水平方向に排出する環状空気出口を備え、
前記空気入口バッフルは、前記環状空気出口から排出された前記加熱された空気を鉛直に転向する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記開口は、前記空気入口バッフルの円周の周りに延在するアレイとして配置され、
各アレイは、少なくとも2列の前記開口を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記開口は、第1のアレイ、第2のアレイ、第3のアレイ、及び第4のアレイに配置され、
前記第1のアレイ及び前記第2のアレイは、前記環状空気出口の下方に配置され、
前記第3のアレイ及び前記第4のアレイは、前記環状空気出口の上方に配置され、
前記第3のアレイ及び前記第4のアレイは、前記スタックの下部よりも前記スタックの上部により多くの加熱された空気が供給されるように、前記第1のアレイ及び前記第2のアレイよりも多数の前記開口を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記空気入口バッフルの連続プレート部分は、前記環状空気出口の鉛直レベルに位置し、
前記空気入口バッフルは、前記環状空気出口の前記鉛直レベルに前記開口を有せず、
前記空気入口バッフルの前記連続プレート部分は、前記環状空気出口から前記開口に向かって排出された前記加熱された空気を鉛直に転向する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記環状空気出口の下方に位置する前記スタックの下部よりも前記環状空気出口の上方に位置する前記スタックの上部に、より大量の前記加熱された空気が供給され、
前記スタックの前記上部は、前記スタックの前記下部と、前記環状空気出口の前記レベルに位置する前記スタックの中間部との双方よりも低い温度に維持される、請求項19に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、電気化学セルシステムに関し、より詳細には、開口を有する空気入口バッフルを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池等の燃料電池は、燃料内に貯蔵されたエネルギーを電気エネルギーへと高効率で変換することができる電気化学的装置である。高温型燃料電池は、固体酸化物型燃料電池及び溶融炭酸塩型燃料電池を含む。これらの燃料電池は、水素及び/又は炭化水素燃料を使用して動作することができる。固体酸化物型再生燃料電池等の燃料電池のクラスが存在し、これらの燃料電池は、電気エネルギーを入力として使用することで、酸化した燃料を酸化されていない燃料へと再還元することができるように、逆の動作も可能にする。
【発明の概要】
【0003】
種々の実施形態によれば、燃料電池システムは、燃料電池のスタックと、スタックから排出されたカソード排気を使用して空気を加熱するように構成されるカソード復熱器と、カソード復熱器とスタックとの間に配置され、鉛直方向に沿って分離された少なくとも2列の開口を備え、スタックの複数の領域に、カソード復熱器から排出された加熱された空気を供給するように構成される空気入口バッフルとを備える。
【0004】
種々の実施形態によれば、燃料電池システムを動作させる方法は、加熱された空気及び燃料を燃料電池のスタックに供給することと、燃料排気及び空気排気を排出するように、スタックを定常状態モードで動作させることと、燃料排気及び空気排気を、燃料排気を酸化させるアノードテールガス酸化器に供給することと、アノードテールガス酸化器からの排気をカソード復熱器に供給することと、空気をカソード復熱器に供給することと、アノードテールガス酸化器からの排気を使用して空気を加熱して、カソード復熱器から、カソード復熱器とスタックとの間に配置され、鉛直方向に沿って分離された少なくとも2列の開口を備える空気入口バッフル上に、加熱された空気を排出することと、少なくとも2列の開口を通してスタックの複数の領域に加熱された空気を供給することとを含む。
【0005】
本明細書に援用されるとともに、本明細書の一部をなす添付図面により、本発明の例示的な実施形態を示す。添付図面は、上述の全般的な説明及び後述の詳細な説明と併せて、本発明の特徴を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示の種々の実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
図2A2B図2Aは、本開示の種々の実施形態に係る、図1のシステムのホットボックスの構成要素を示す断面図であり、図2Bは、本開示の種々の実施形態に係る、図2Aのシステムの拡大部分を示す図である。
図2C図2Cは、本開示の種々の実施形態に係る、図2Aのシステムの中央カラムの三次元切欠き図である。
図2D図2Dは、本開示の種々の実施形態に係る、図2Aのシステムの中央カラムの下方に配置されるアノードハブ構造体の斜視図である。
図3A図3Aは、本開示の種々の実施形態に係る、図2Aのシステムの中央カラムを通る燃料及び空気流を示す断面図である。
図3B図3Bは、本開示の種々の実施形態に係る、図2Aのシステムの中央カラムを通る燃料及び空気流を示す断面図である。
図3C図3Cは、本開示の種々の実施形態に係る、図2Aのシステムの中央カラムを通る燃料及び空気流を示す断面図である。
図4A図4Aは、カソード復熱器の内部に配置された空気入口バッフルを示す断面図である。
図4B図4Bは、カソード復熱器、スタック、及び中央カラムを通る空気及び排気の流れを示す簡略化された部分断面図である。
図4C図4Cは、図4Aの空気入口バッフルの側面図である。
図5図5は、空気入口バッフルを備えない比較用の燃料電池システムにおける、カソード復熱器500からスタックへの空気の分配を示す簡略化された断面図である。
図6図6は、図4Aに示されている空気入口バッフルを備える燃料電池システムにおいて51アンペアで動作する寿命初期(BOL:beginning-of-life)スタックのセル燃料分布(CFD:cell fuel distribution)予測平均鉛直温度プロファイルを示すグラフである。
図7図7は、51アンペアのBOL動作条件下で試験されたスタックの熱プロファイルに対応する、CFDからの平均鉛直燃料利用率プロファイルを示すグラフである。
図8図8は、図4Aに示されている空気入口バッフルを備える燃料電池システムにおいて51アンペアで動作する寿命初期(BOL)スタック、及び66アンペアで動作する(例えば、セル条件が悪化した)寿命中期(MOL:middle of life)スタックの平均鉛直温度プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載されるように、本開示の様々な態様が、例示的な実施形態及び/又は本発明の例示的な実施形態が示されている添付図面を参照して説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、図面に示されている又は本明細書に記載される例示的な実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。開示されている様々な実施形態は、その特定の実施形態に関連して記載される特定の特徴、要素、又はステップを伴うことができることが理解されよう。また、特定の特徴、要素、又はステップは、1つの特定の実施形態に関連して記載されているが、代替の実施形態と交換しても、代替の実施形態と様々な例示されていない組合せ又は順列で組み合わせてもよいことが理解されよう。
【0008】
添付図面を参照して、種々の実施形態を詳細に説明する。可能な限り、同じ参照符号は、図面全体を通して同じ又は同様の部分を指すのに使用する。特定の例及び実施態様に対する参照は、例示目的でなされ、本発明又は特許請求の範囲の範囲を制限することは意図していない。
【0009】
本明細書において、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までのように範囲が表現され得る。そのような範囲が表現される場合の例として、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までというのが挙げられる。同様に、頭に「約」又は「実質的に」を使用することによって値が近似として表現される場合、特定の値は別の様相を形成することが理解されよう。いくつかの実施形態において、「約X」という値は、+/-1%Xという値を含み得る。範囲のそれぞれの端点は、他方の端点に関連しても、他方の端点とは無関係でも重要であることが更に理解されよう。
【0010】
固体酸化物型燃料電池(SOFC)システムにおいて、電気を発生させるために、1つ以上の燃料電池スタックに空気及び燃料を供給することができる。動作中、スタックは、セルの発熱に起因する鉛直温度勾配、流入空気に起因する対流冷却、及び/又は、スタック及び/又は他のシステム構成要素間の放射結合を発生し得る。例えば、燃料電池は、スタックの頂部及び/又は底部において、スタックの中央のセルよりも温度が低くなる場合があり、及び/又は、スタックの中央のセルは、過剰に冷却又は加熱される場合がある。過剰な鉛直温度勾配は、電圧性能の低下、熱応力、セルの劣化、及び不均一な燃料送達をもたらす可能性があり、これにより、全体的なシステム性能及び/又は効率が低下するおそれがある。これは、燃料の枯渇、及びスタック内のいくつかの燃料電池の関連する故障を更にもたらし得る。したがって、本開示の実施形態は、スタック温度変動を改善し、スタック内の個々のセルに対する均一な燃料流のための鉛直スタック温度プロファイルの最適化に役立つ、穴の開いた空気入口バッフルを含むSOFCシステムを提供する。
【0011】
図1は、本開示の種々の実施形態に係るSOFCシステム10の概略図である。図1を参照すると、システム10は、ホットボックス100と、その内部に又は隣接して配置される様々な構成要素とを備える。ホットボックス100は、固体酸化物型燃料電池等の燃料電池とインターコネクトとを交互に含むスタック102を含むことができる。スタック102の1つの固体酸化物型燃料電池は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、スカンジア及びセリア安定化ジルコニア、又はスカンジア、イットリア、及びセリア安定化ジルコニア等のセラミック電解質と、ニッケル-YSZ、ニッケル-SSZ、又はニッケルドープセリアサーメット等のアノード電極と、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)等のカソード電極とを含む。インターコネクトは、クロム-鉄合金インターコネクト等の金属合金インターコネクトとすることができる。スタック102は、燃料のために内部又は外部でマニホールド化することができる。
【0012】
ホットボックス100は、アノード復熱交換器110と、カソード復熱交換器500と、アノードテールガス酸化器(ATO)150と、アノード排気冷却熱交換器140と、スプリッター158と、ボルテックスジェネレーター159と、水インジェクター160とを含むこともできる。システム10は、接触部分酸化(CPOx)反応器200と、混合器210と、CPOxブロワー204(例えば、空気ブロワー)と、主空気ブロワー208(例えば、システムブロワー)と、アノード再循環ブロワー212とを備えることもでき、これらは、ホットボックス100の外部に配置することができる。しかしながら、本開示は、構成要素のそれぞれをホットボックス100に関する特定の場所に限定しない。
【0013】
CPOx反応器200は、燃料入口300からの燃料入口流を、燃料導管300Aを通して受け取る。燃料入口300は、CPOx反応器200に供給される燃料の量を制御する弁を備える燃料タンク又はユーティリティ天然ガスラインとすることができる。CPOxブロワー204は、システム始動時にCPOx反応器200に空気を供給することができる。燃料及び/又は空気は、燃料導管300Bによって混合器210に供給することができる。燃料(例えば、燃料入口流)は、混合器210から燃料導管300Cを通ってアノード復熱器110に流れる。燃料は、アノード復熱器110内で燃料排気の一部によって加熱され、その後、燃料は、アノード復熱器110から燃料導管300Dを通ってスタック102に流れる。
【0014】
主空気ブロワー208は、空気導管302Aを通して空気流(例えば、空気入口流)をアノード排気冷却器140に供給するように構成することができる。空気は、アノード排気冷却器140から空気導管302Bを通ってカソード復熱器500に流れる。空気は、カソード復熱器500内でATO排気によって加熱される。空気は、カソード復熱器500から空気導管302Cを通ってスタック102に流れる。
【0015】
スタック102内で発生するアノード排気流(例えば、燃料排気流)は、アノード排気導管308Aを通してアノード復熱器110に供給される。アノード排気は、未反応の燃料を含むことができ、本明細書において燃料排気と称する場合もある。アノード排気は、アノード排気導管308Bによってアノード復熱器110からスプリッター158に供給することができる。アノード排気の第1の部分は、スプリッター158から水インジェクター160及びアノード排気導管308Cを通してアノード排気冷却器140に供給することができる。アノード排気の第2の部分は、スプリッター158からアノード排気導管308Dを通してATO150に供給される。アノード排気の第1の部分は、アノード排気冷却器140内の空気入口流を加熱し、その後、アノード排気冷却器140からアノード排気導管308Eを通して混合器210に供給することができる。アノード再循環ブロワー212は、後述するように、アノード排気導管308Eを通してアノード排気を移動させるように構成することができる。
【0016】
スタック102内で発生するカソード排気は、排気導管304Aを通ってATO150に流れる。ボルテックスジェネレーター159は、排気導管304A内に配置することができ、カソード排気を旋回させるように構成することができる。アノード排気導管308Dは、ボルテックスジェネレーター159、又はボルテックスジェネレーター159の下流にあるカソード排気導管304A若しくはATO150に流体接続することができる。旋回したカソード排気は、ATO150に供給される前にスプリッター158によって供給されるアノード排気の第2の部分と混合することができる。この混合物は、ATO150内で酸化し、ATO排気を発生させることができる。ATO排気は、ATO150から排気導管304Bを通ってカソード復熱器500に流れる。排気は、カソード復熱器から排気導管304Cを通ってホットボックス100から流れ出る。
【0017】
水は、水タンク又は送水管等の水源206から水導管306を通って水インジェクター160に流れる。水インジェクター160は、アノード排気導管308C内に供給されるアノード排気の第1の部分に水を直接注入する。アノード排気導管308C内に供給されるアノード排気(再循環アノード排気流とも称する)の第1の部分からの熱により、水が蒸発して水蒸気が発生する。水蒸気は、アノード排気と混合し、その結果の混合物がアノード排気冷却器140に供給される。次いで、この混合物は、アノード排気冷却器140からアノード排気導管308Eを通して混合器210に供給される。混合器210は、水蒸気及びアノード排気の第1の部分を新たな燃料(すなわち、燃料入口流)と混合するように構成される。次いで、この加湿燃料混合物は、スタック102に供給される前に、アノード排気によってアノード復熱器110内で加熱することができる。システム10は、アノード復熱器110の内部及び/又は下流に位置する1つ以上の燃料改質触媒112、114、及び116を備えることもできる。改質触媒(複数の場合もある)は、加湿燃料混合物を、スタック102に供給される前に改質する。
【0018】
システム10は、システム10の様々な要素を制御するように構成されるシステムコントローラー225を更に備えることができる。コントローラー225は、記憶された命令を実行するように構成される中央処理装置を備えることができる。例えば、コントローラー225は、燃料組成データに従って、システム10を通る燃料及び/又は空気流を制御するように構成することができる。
【0019】
図2Aは、図1のシステム10のホットボックス100の構成要素を示す断面図であり、図2Bは、図2Aの拡大部分を示している。図2Cは、本開示の種々の実施形態に係るシステム10の中央カラム400の三次元切欠き図であり、図2Dは、カラム400を配置することができるホットボックスベース101内に配置されるアノードハブ構造体600の斜視図である。
【0020】
図2A図2Dを参照すると、燃料電池スタック102は、ホットボックス100内で中央カラム400の周りに配置することができる。例えば、スタック102は、中央カラム400の周りにリング構成で配置することができるとともに、ホットボックスベース101上に位置決めすることができる。カラム400は、アノード復熱器110と、ATO150と、アノード排気冷却器140とを備えることができる。特に、アノード復熱器110は、ATO150の径方向内側に配置され、アノード排気冷却器140は、アノード復熱器110及びATO150の上方に取り付けられる。1つの実施形態において、アノード復熱器110内に酸化触媒112及び/又は水素化触媒114が位置することができる。アノード復熱器110の底部には、水蒸気メタン改質(SMR)インサートとして改質触媒116が位置することもできる。
【0021】
ATO150は、アノード復熱器110の外壁の周りに位置決めされる外側円筒152を備える。任意選択として、ATO内側円筒154によってATO断熱材156を包囲することができる。したがって、断熱材156は、アノード復熱器110とATO150との間に位置することができる。ATO酸化触媒が、外側円筒152とATO断熱材156との間の空間内に位置することができる。燃料入口経路ベローズ854が、アノード排気冷却器140とATO内側円筒154との間に位置することができる。ATO熱電対フィードスルー1601が、アノード排気冷却器140を通ってATO150の頂部まで延在する。それにより、このフィードスルー1601を通して1つ以上の熱電対(図示せず)を挿入することによって、ATO150の温度を監視することができる。
【0022】
アノードハブ構造体600は、アノード復熱器110及びATO150の下かつホットボックスベース101の上方に位置決めすることができる。アノードハブ構造体600は、ATOスカート1603によって覆われる。ボルテックスジェネレーター159及び燃料排気スプリッター158は、アノード復熱器110及びATO150の上かつアノード排気冷却器140の下に位置する。始動時のATOにおけるスタック燃料排気の酸化を開始するATOグロープラグ1602が、ATO150の底部付近に位置することができる。
【0023】
アノードハブ構造体600は、中央カラムから、中央カラム400の周りに配置される燃料電池スタック102へと燃料を均一に分配するために使用される。アノード流ハブ構造体600は、溝付きキャストベース602と、燃料入口導管300D及びアノード排気導管308Aによる「スパイダー」ハブとを備える。各対の導管300D、308Aは、燃料電池スタック102に接続する。また、アノード側円筒(例えば、アノード復熱器110内側及び外側円筒、並びにATO外側円筒152)は、ベース602の溝内に溶接又はろう接され、後述する流れ分布のための均一な体積断面をもたらす。
【0024】
図2A及び図2Bの矢印によって示されているように、ホットボックス100の頂部から空気が入り、次いで、カソード復熱器500内に流れ、そこで、空気がATO150から排出されたATO排気によって加熱される。その後、加熱された空気は、カソード復熱器500を通って流れ、そして、空気出口530を通ってカソード復熱器500から出る。スタック102とカソード復熱器500との間には、空気入口バッフル550を配置することができる。詳細に後述するように、空気入口バッフル550は、スタック102への空気流を制御するように構成することができる。
【0025】
固体酸化物型燃料電池の場合、空気は、次いで、スタック102を通って流れ、酸素イオンが、カソード電極から燃料電池電解質を通ってアノード電極へと拡散し、燃料電池のアノード電極におけるアノードハブ構造体600から供給された燃料(すなわち、燃料入口流)と反応するようになっている。空気排気は、スタック102から流れ、次いで、ボルテックスジェネレーター159の羽根を通過して渦を巻いた後、ATO150に入る。
【0026】
スプリッター158は、アノード復熱器100の頂部から出る燃料排気の第2の部分を、スプリッター内の開口(例えば、スリット)を通して、旋回した空気排気(例えば、ボルテックスジェネレーター159、又はボルテックスジェネレーター159の下流の排気導管304A内、又はATO150内)へと向けることができる。したがって、燃料及び空気排気は、ATO150に入る前に混合することができる。
【0027】
図3A及び図3Bは、中央カラム400を通る流れ分布を示す側断面図であり、図3Cは、アノード復熱器110を通る上断面図である。図2A図2B図3A、及び図3Cを参照すると、アノード復熱器110は、内側円筒110Aと、波形プレート110Bと、ATO断熱材156によって被覆することができる外側円筒110Cとを備える。燃料導管300Cからの燃料は、中央カラム400の頂部から入る。次いで、燃料は、アノード排気冷却器140の中空コアを通って流れることによってアノード排気冷却器140を迂回し、その後、アノード復熱器110の外側円筒110Cと波形プレート110Bとの間を通って流れる。その後、燃料は、図3Bに示されているアノードハブ構造体600のハブベース602及び導管300Dを通って、スタック102に流れる。
【0028】
図2A図2B図2C図3A、及び図3Bを参照すると、燃料排気は、スタック102からアノード排気導管308Aを通ってハブベース602に流れ、ハブベース602からアノード復熱器110を通って内側円筒110Aと波形プレート110Bとの間に流れ、アノード排気導管308Bを通ってスプリッター158内に流れる。図1に示されているように、燃料排気の第1の部分は、スプリッター158からアノード排気導管308Cを通ってアノード排気冷却器140に流れ、一方、第2の部分は、スプリッター158からアノード排気導管308Dを通ってATO150に流れる。燃料導管300Cとベローズ852/支持円筒852Aとの間にアノード排気冷却器内側コア断熱材140Aが位置することができ、ベローズ852/支持円筒852Aは、図3Aに示されているように、アノード排気冷却器140とボルテックスジェネレーター159との間に位置する。この断熱材は、アノード排気冷却器140に向かう途中のアノード排気導管308C内のアノード排気流の第1の部分からの熱移動及び熱損失を最小限に抑える。断熱材140Aは、燃料導管300C内の燃料入口流とアノード排気冷却器140内の流れとの間の熱移動を回避するために、導管300Cとアノード排気冷却器140との間に位置することもできる。他の実施形態において、断熱材140Aは、円筒形アノード排気冷却器140内から省くことができる。
【0029】
図3Bはまた、空気が空気導管302Aからアノード排気冷却器140(ここでは空気がアノード排気の第1の部分によって加熱される)に流れ、次いで、アノード排気冷却器140から導管302Bを通ってカソード復熱器500に流れることを示している。アノード排気の第1の部分は、アノード排気冷却器140において、アノード排気冷却器140を通って流れる空気によって冷却される。その後、アノード排気の冷却された第1の部分は、アノード排気冷却器140から、図1に示されているアノード再循環ブロワー212に供給される。
【0030】
下記により詳細に記載するとともに、図2A及び図3Bに示されているように、アノード排気は、アノード復熱器110から出て、アノード排気導管308Bを通してスプリッター158内に供給される。スプリッター158は、アノード排気をアノード排気の第1の部分及び第2の部分(すなわち、流れ)に分割する。第1の流れは、アノード排気導管308Cを通してアノード排気冷却器140内に供給される。第2の流れは、アノード排気導管308Dを通してATO150に供給される。
【0031】
ATO150及びアノード排気冷却器140に供給されるアノード排気の相対量は、アノード再循環ブロワー212によって制御される。ブロワー212の速度が速いほど、より大部分のアノード排気がアノード排気導管308C内に供給されるとともに、より小部分のアノード排気がアノード排気導管308Dを介してATO150に供給され、その逆同様である。ATO150に供給されるアノード排気は、スタックのカソード(すなわち、空気)排気によって酸化し、導管304Bを通してカソード復熱器500に供給することができる。
【0032】
図4Aは、カソード復熱器500の内部に配置された空気入口バッフル550を示す断面図であり、図4Bは、カソード復熱器500、スタック102、及び中央カラム400を通る空気及び排気の流れを示す簡略化された部分断面図であり、図4Cは、空気入口バッフル550の側面図である。
【0033】
図4A図4Cを参照すると、カソード復熱器500は、スタック102のうちの1つ以上及び図2Aにより詳細に示されている中央カラム400を囲むことができる。カソード復熱器500は、空気入口510A及び空気排気出口510Bを備えるカバー510と、上側蓋514と、任意選択のフィンアセンブリ518と、下側シリンダー524と、外殻528とを備えることができる。フィンアセンブリ518は、円筒形波形プレート520と、波形プレート520の内側に配置された内壁522とを備えることができる。波形プレート520は、流入空気と流出するカソード排気との間で熱を伝達するように構成することができる。内壁522の内面は、遮熱断熱材によって覆うことができる。
【0034】
環状空気出口530は、内壁522と下側シリンダー524との間に形成することができる。特に、空気出口530は、下側シリンダー524と内壁522とが重なり合う場所に形成することができる。環状ATO排気入口532は、外殻528と下側シリンダー524との間に形成することができる。
【0035】
図4A及び図4Bに示されているように、空気は、空気入口510Aを通ってカソード復熱器500に入り、上側蓋514の下を波形プレート520の内面に沿って流れ、空気出口530から出ることができる。その後、空気は、空気入口バッフル550を通過し、カソード復熱器500によって囲まれた燃料電池スタック102に供給することができる。スタック102から排出されたカソード排気は、中央カラム400内に流れ、ボルテックスジェネレーター159においてアノード排気(図示せず)と混合され、そして、ATO150に供給することができる。ATO150から排出されたATO排気(すなわち、酸化燃料排気)は、カソード復熱器500のATO排気入口532に供給され、波形プレート520の外面に沿って流れ、上側蓋514の上面を越え、その後、排気出口510Bを通って出ることができる。したがって、空気は、ATO排気から取り出される熱によって加熱される。
【0036】
空気入口バッフル550は、カソード復熱器500の内部に配置され、燃料電池スタック102を囲む円筒形部品とすることができる。空気入口バッフルは、カソード復熱器500からの燃料電池スタック102間のバリアを形成することができる。空気入口バッフル550は、燃料電池スタック102の高さに沿った鉛直温度変動を制限し、セルにわたって均一な燃料利用率に好ましいものに最適化するために、燃料電池スタック102への加熱された空気の流れを制御するように構成することができる。例えば、システムの定常状態動作(システムの始動動作後に生じる)中、空気入口バッフル550は、燃料電池スタック102における約40℃未満、例えば、約30℃~約40℃の鉛直セル間温度変動をもたらすように構成することができる。いくつかの実施形態において、システムの定常状態動作中、空気入口バッフル550は、スタック102内の燃料電池の最大燃料利用率が燃料電池スタック102全体の平均燃料利用率を上回るのが約1%以下になるように、例えば、0.1%~1%だけ平均燃料利用率を上回るように、燃料電池スタック102の温度を制御するように構成することができる。いくつかの実施形態において、空気入口バッフル550は、スタック102における燃料電池の燃料利用率が約86%~約91%の範囲になるように、スタック102の温度を制御するように構成することができる。したがって、同じスタック内の異なる2つの燃料電池間の最小燃料利用率と最大燃料利用率との差は、10%以下、例えば5%以下、例えば4%~6%である。
【0037】
空気入口バッフル550は、スタック102の特定の部分に向かって加熱された空気を導くように構成される開口552のアレイを備えることができる。例えば、いくつかの実施形態において、開口552は、空気入口バッフルが、スタック102の底部よりもスタック102の頂部に、カソード復熱器500から排出された空気のうちのより多くを導くように、空気入口バッフル550上に配置することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、開口552は、図4Cに示されているように、円形貫通孔とすることができる。しかしながら、他の実施形態において、開口552は、他の形状、例えば、水平又は鉛直スリット等を有することができる。開口552の場所、サイズ、及び/又は数は、空気入口バッフル550を通して供給される空気によって影響を受ける所望のスタック102及び/又はシステム特性に従って設定することができる。
【0039】
1つの実施形態において、空気入口バッフル550は、空気出口530の鉛直レベルにおいて開口552を有しなくてもよい。したがって、空気出口530を出る空気は、空気入口バッフル550の連続プレート部分553に衝突し、燃料電池スタック102に直接供給されない。したがって、空気出口530の鉛直レベルに位置する燃料電池スタック102の一部は、空気出口530から供給される空気流の直接の衝突によって過剰に冷却されない。したがって、空気入口バッフル550の連続プレート部分553は、空気出口530から出る空気を鉛直方向(すなわち、上下)に広げ(すなわち、転向し)、その後、空気は開口552を通って燃料電池スタック102に達する。したがって、空気は、スタック102に達する前に鉛直に流れることによって、より均一な温度を達成する。さらに、空気が、開口の鉛直レベルに位置するスタック102のいくつかの鉛直部分に衝突することから、スタック102の単一の領域が空気流によって過剰に冷却されることがない。これにより、スタック102の高さに沿ったより均一な鉛直温度分布がもたらされる。
【0040】
燃料電池に供給される燃料は、スタックの底部からスタック102の頂部に流れ、燃料電池からの燃料排気は、スタック102を通って反対方向に、燃料電池スタック102内のライザー管又は統合された燃料チャネルを通って流れる。燃料分布は、スタック102の幾何学形状、及びスタック102における局所温度変動に起因するスタック102に伴う燃料の特性の変動によって左右され得る。例えば、燃料温度がより高いと、燃料の流れ抵抗が増大し得るため、燃料流量が低減し得る。鉛直スタック温度変動は、燃料電池の発熱、流入空気によるスタックの対流冷却、及びスタックとSOFCシステムの他の発熱構成要素との間の放射結合における変動によって生じ得る。
【0041】
例えば、図5は、空気入口バッフルを備えない比較用の燃料電池システムにおける、カソード復熱器500からスタック102への空気の分配を示す簡略化された断面図である。図5に示されているように、空気は、空気出口530を通ってカソード復熱器500を出て、スタック102の中央部分CPにおいて燃料電池に最初に導かれる。その結果、スタック102は、流入空気によって中央部分CPにおける燃料電池が冷却されることにより、不均一な鉛直温度プロファイルを経ることになり得る。
【0042】
対照的に、図4A図4Cに関して上述したように、1つの実施形態において、空気出口530の鉛直レベルに位置する燃料電池スタック102の一部は、空気出口530から供給された空気流の直接の衝突によって過剰に冷却されない。したがって、空気入口バッフル550の連続プレート部分553は、空気出口530から出る空気を鉛直方向(すなわち、上下)に広げ(すなわち、転向し)、その後、空気が開口552を通って燃料電池スタック102に達する。したがって、空気は、スタック102に達する前に鉛直に流れることによって、より均一な温度に達する。さらに、空気出口5230の鉛直レベルに開口552がある場合でも、空気が、開口552の鉛直レベルに位置するスタック102のいくつかの鉛直部分に衝突することから、スタック102の単一の領域が空気流によって過剰に冷却されることがない。これにより、スタック102の高さに沿ったより均一な鉛直温度分布がもたらされる。
【0043】
本発明者らは、スタック内の鉛直温度変動を低減することで、様々な動作条件にわたって、より良好なセル温度制御、電圧性能、及び電圧の均一性をもたらすことができ、セルの劣化及び熱応力の低減を低減することができることを突き止めた。加えて、最適な鉛直スタック温度プロファイルにより、スタック内の燃料電池への燃料流の鉛直方向の均一性が向上する。燃料電池は、燃料電池の枯渇に起因する過剰に高い燃料利用率において劣化及び/又は故障する場合がある。スタック内のセルにおける最大の燃料利用率は、全体的な燃料利用率及びシステム効率を決定付ける要因であり得る。
【0044】
例えば、図4Cを再び参照すると、多数の小径の開口552により、カソード復熱器500に空気を供給する空気ブロワーによる圧力降下及び寄生損失を最小限に抑えることができる。多数の小径の開口552は、高速空気ジェットがスタック102に直接衝突することを防止及び/又は低減することもでき、それにより、スタックへの損傷を減少させ、スタック102を囲む空気入口プレナムへの流入空気をより円滑に分配することができる。
【0045】
したがって、各アレイ554における開口552の数、直径、及び/又は間隔、及び/又はアレイ554の配置は、スタック温度プロファイル及び対応する燃料利用率等の所望のスタック特性を提供するように選択することができる。例えば、空気入口バッフル550の開口552は、開口を有しないそれぞれの連続プレート部分553によって互いに鉛直に分離された1つ以上の環状アレイ554に配置することができる。例えば、開口552は、第1のアレイ554A、第2のアレイ554B、第3のアレイ554C、及び第4のアレイ554Dに配置することができる。しかしながら、本開示は、特定の数のアレイ554に限定されない。例えば、各アレイ554は、少なくとも1列の開口552、例えば、1列~10列の開口552、2列~8列の開口552、又は2列~5列の開口552を含むことができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、第1のアレイ554A及び第2のアレイ554Bは、環状空気出口530の下方に配置され、第3のアレイ554C及び第4のアレイ554Dは、環状空気出口530の上方に配置される。いくつかの実施形態において、第3のアレイ554C及び第4のアレイ554Dは、第1のアレイ554A及び第2のアレイ554Bよりも多数の列の開口552を含むことができ、第3のアレイ554Cは、第4のアレイ554Dよりも多数の列の開口552を含むことができる。したがって、空気入口バッフル550は、スタックの下端部よりも上端部により多くの空気流を供給することができる。
【0047】
開口552は、約2mm~約20mm、例えば約5mm~約15mmの範囲の直径を有することができる。各列の開口552は、約2mm~約20mm、例えば約5mm~約15mmの範囲の中心間水平間隔を有することができる。隣り合う列の開口552は、約2mm~約20mm、例えば約5mm~約14mmの範囲の中心間鉛直間隔を有することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、第1のアレイ554Aは、空気入口バッフルプレート550の底部から約130mm~約150mmのところに配置することができる。第2のアレイ554Bは、空気入口バッフルプレート550の底部から約240mm~約265mmのところに配置することができる。第3のアレイ554Cは、空気入口バッフルプレート550の底部から約410mm~約435mmのところに配置することができる。第4のアレイ554Dは、空気入口バッフルプレート550の底部から約500mm~約525mmのところに配置することができる。
【0049】
初期カラム/スタック燃料分布(CFD)モデリングは、スタック又はカラムの頂部よりも底部においてより高い温度を有する、約20℃の差を有する線形温度プロファイルにより、燃料送達の均一性が向上することを予測している。燃料電池の高い燃料利用率、低いセル間燃料利用率変動、及び高い全体システム効率をもたらすために、スタック内の任意のセルにおける最大燃料利用率は、好ましくは、平均スタック燃料利用率の約1%以内に維持すべきである。空気入口バッフルは、鉛直方向に(例えば、スタックの底部から頂部に)僅かに負の傾きを有するスタック温度プロファイルを得るために設計し、それにより、スタックに沿った鉛直燃料分布を向上させることができる。
【0050】
例えば、空気入口バッフル550の下部よりも空気入口バッフルの上部により多数の開口552が位置することができ、それにより、環状空気出口530の下方に位置するスタック102の下部よりも環状空気出口530の上方に位置するスタック102の上部に、より大量の加熱された空気が供給され、スタック102の上部が、スタック102の下部及び環状空気出口530のレベルに位置するスタック102の中間部よりも低い温度に維持される。さらに、スタック102の下部は、環状空気出口530のレベルに位置するスタック102の中間部よりも低い温度に維持することができる。
【0051】
図6は、図4Cに示されている空気入口バッフルを備える燃料電池システムにおいて使用される場合の、51アンペアで動作する寿命初期(BOL)スタックの平均鉛直温度プロファイルと、最適なセル燃料分布(CFD)に基づいて予測される鉛直温度プロファイルとを示すグラフである。
【0052】
図6を参照すると、試験された各スタックは、セル1がスタックの底部に配置され、セル256がスタックの頂部に配置されるという連続番号が付された256個の燃料電池を含むものであった。セル1~大体セル32までの温度は、セル1が最低温度を有し、セル32が最高温度を有するように徐々に上昇し得る。セル33~224の温度は、セル33が最高温度を有し、セル224が最低温度を有し、それにより、セル33~224の鉛直温度勾配が実質的に線形の負の傾きを有するように、比較的一定の割合で徐々に低下し得る。空気入口バッフルプレートは、予測された温度プロファイルにおおよそ一致する鉛直スタック温度プロファイルをもたらすことが示された。したがって、空気入口バッフルプレートは、燃料分布の向上をもたらす。
【0053】
図7は、51アンペアのBOL動作条件下で試験したスタックの平均鉛直燃料利用率プロファイルを示すグラフである。図7を参照すると、グラフは、スタック内のセルの最大燃料利用が91%であり、平均スタック燃料利用率である90%の1%以内であることを示している。したがって、空気入口バッフル設計は、鉛直方向の燃料利用率の広がりを厳密に維持するとともに、熱分布を厳密に維持することが示された。
【0054】
図8は、図4Cに示されている空気入口バッフルを備える燃料電池システムにおいて使用される場合の、51アンペアで動作する寿命初期(BOL)スタック、及び66アンペアで動作する(例えば、セル条件が悪化した)寿命中期(MOL)スタックの平均鉛直温度プロファイルを示すグラフである。図6に見ることができるように、空気入口バッフルは、より高い電流及び悪化したセル条件において鉛直方向の熱の広がりを厳密に維持する。加えて、熱プロファイルは、66アンペアのMOL動作のためにより低い温度にシフトしたが、温度プロファイルの傾き及び性質は、51アンペアのBOLプロファイルのものとおおよそ一致し、したがって、燃料分布の向上が示される。
【0055】
開示の態様の上述の記載は、当業者が本発明を実施又は使用することを可能にするために提供される。これらの態様に対する種々の変更形態が、当業者には容易に明らかになるであろう。また、本明細書において定義される一般的な原則を、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様に適用することができる。したがって、本発明は、本明細書に示されている態様に限定されることを意図せず、本明細書に開示されている原則及び新規の特徴と一貫して最も広い範囲を与えられるものとする。

図1
図2A2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】