(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174484
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】球面の立体角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法
(51)【国際特許分類】
E21F 1/00 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
E21F1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212542
(22)【出願日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】202210582759.X
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518309666
【氏名又は名称】中南大学
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】張 潔
(72)【発明者】
【氏名】高 広軍
(72)【発明者】
【氏名】熊 小慧
(72)【発明者】
【氏名】劉 堂紅
(72)【発明者】
【氏名】王 家斌
(72)【発明者】
【氏名】何 侃
(72)【発明者】
【氏名】韓 帥
(72)【発明者】
【氏名】王 雨舸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法を提供する。
【解決手段】本発明は、列車が緩衝構造に入った後の減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法を提供し、列車が緩衝構造に入る時、前の気流は、球面波の形態で緩衝構造に広がり、且つ該球面波の等価半径はトンネル断面の水力半径であり、形成された空間角は1/4球体πであり、該球体の球心を投影中心として、緩衝構造の開孔領域を球面Sに投影し、投影面積S
1を得て、減圧空間角をθ=S
1/S×πに定義し、減圧空間角θの大きさを調整し、列車がトンネルに入って生成された初期圧縮波を効果的に緩和し、それによってトンネル出口の微気圧波が減少する。本発明は、列車が緩衝構造に入った後の減圧空間角特性とトンネル出口微気圧波との間の影響メカニズムへの研究を通じて、微気圧波を効率的緩和する緩衝構造モデルを得て、緩衝構造設計のために新しい方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法であって、列車が緩衝構造に入る時、前の気流は、球面波の形態で緩衝構造に広がり、且つ該球面波の等価半径はトンネル断面の水力半径であり、形成された空間角は1/4球体πであり、該球体の球心を投影中心として、緩衝構造の開孔領域を球面Sに投影し、投影面積S1を得て、減圧空間角をθ=S1/S×πに定義し、減圧空間角θの大きさを調整し、トンネルを通る列車によって生成される微気圧波を減少することを特徴とする減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項2】
減圧空間角θの大きさを調整し、トンネルの入口に近い壁面での圧力時間履歴曲線を直線的に上昇させ、初期圧縮波の圧力勾配を緩和することを特徴とする請求項1に記載の減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項3】
前記減圧空間角θには最適値があることを特徴とする請求項2に記載の減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項4】
前記緩衝構造上の開孔領域は全透過孔であることを特徴とする請求項1に記載の減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項5】
前記緩衝構造内に弓形板が取り付けられ、列車が緩衝構造に入ると、S1は、前記弓形板上の開孔領域から球面Sへの投影面積であることを特徴とする請求項1に記載の減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項6】
前記弓形板上の開孔領域は全透過孔であることを特徴とする請求項5に記載の減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速列車の空気力学の分野、特に、減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
列車が高速でトンネルに入ると、トンネルの壁面によって制限されているため、前の気流が変動し、初期圧縮波が形成され、トンネル出口においてパルス波の形態で外側に放射し、ノイズ音を生成し、周囲の環境に害を及ぼす。トンネル出口の微気圧波を緩和するために、トンネルの口に緩衝構造を設置して、トンネルに入る列車によって生成された初期圧縮波勾配を緩和する。現在の段階では、トンネルの空気力学を緩和するためによく使用される緩衝構造には多くの種類があるが、既存のラインでより高い速度列車が走っている場合、既存のトンネル緩衝構造は、トンネルを通るこの速度レベルで列車によって生成される空気力効果を効果的に緩和することはできず、既存の鉄道トンネルの基準を満たすことができない。したがって、本発明は、トンネル微気圧波を効果的に緩和するために最適な穿孔率を見つけることができるだけでなく、既存の緩衝構造を変更せずに内部弓形板に依存して、トンネル出口の微気圧波を効果的に緩和できる。
【0003】
上記の技術的背景の説明は、この出願の技術的解決手段の明確かつ完全な説明を促進し、当業者の理解を促進するために説明することである。これらの手段が本出願の背景技術部分で説明されているため、上記の技術的解決手段が当業者に公的に知られていると思われることができないことに注意する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景技術の欠点について、高速鉄道においてトンネルの微気圧波を緩和する方法を提供し、緩衝構造の減圧空間角特性とトンネル出口微気圧波との間の影響メカニズムへの研究を通じて、微気圧波を緩和する緩衝構造モデルを得て最適化し、より高い速度列車がトンネルをスムーズかつ安全に通ることを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、減圧空間角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法を提供し、列車が緩衝構造に入る時、前の気流は、球面波の形態で緩衝構造に広がり、且つ該球面波の等価半径はトンネル断面の水力半径であり、形成された空間角は1/4球体πであり、該球体の球心を投影中心として、緩衝構造の開孔領域を球面Sに投影し、投影面積S1を得て、減圧空間角をθ=S1/S×πに定義し、減圧空間角θの大きさを調整し、トンネルを通る列車によって生成される微気圧波を減少する。
【0006】
さらに、減圧空間角θの大きさを調整し、トンネルの入口に近い壁面での圧力時間履歴曲線を直線的に上昇させ、初期圧縮波の圧力勾配を緩和する。
【0007】
さらに、前記減圧空間角θには最適値がある。
【0008】
さらに、前記緩衝構造上の開孔領域は全透過孔である。
【0009】
さらに、前記緩衝構造内に弓形板が取り付けられ、列車が緩衝構造に入ると、S1は、前記弓形板上の開孔領域から球面Sへの投影面積である。
【0010】
さらに、前記弓形板上の開孔領域は全透過孔である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記の手段は、以下の有益な効果を有する。
本発明によって提供されるトンネルの微気圧波を緩和する方法は、既存の鉄道トンネルに基づいて、より高い速度列車がトンネルをスムーズかつ安全に通るというニーズを満たし、列車が緩衝構造に入った後の減圧空間角特性とトンネル出口微気圧波との間の影響メカニズムへの研究を通じて、トンネル微気圧波を効果的に緩和するために最適な穿孔率を見つけることができるだけでなく、既存の緩衝構造を変更せずに内部弓形板に依存して、トンネル出口の微気圧波を効果的に緩和できる。
【0012】
本発明の他の有益な効果は、その後の発明を実施するための形態部分で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の実施例1による理想的なトンネル壁面圧力曲線と実際の曲線との比較図である。
【
図3】本発明の実施例1による異なる緩衝構造の開孔率でのトンネル壁面の圧力曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によって解決される技術的問題、技術的解決手段および利点をより明確にするために、添付の図面および具体的な実施例を参照して、以下に詳細に説明する。明らかに、説明される実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な労働をしないという前提の下で、当業者によって得られた他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。さらに、以下に説明する本発明の様々な実施形態に関与する技術的特徴は、互いに対立を構成しない限り、組み合わせることができる。
【0015】
本発明の説明では、「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」という用語が指示する方向または位置関係は、添付の図面に示す方向または位置関係に基づき、本発明を説明することを容易にして説明を簡略化するためだけであり、指す装置又は素子には特定の方向を持ち、特定の方向で構築して動作する必要があると指示するか又は暗示しないため、したがって本発明を限定するものであると理解ではない。また、用語「第一」、「第二」、「第三」は説明の目的のみに用いられ、相対重要性を指示するか又は暗示すると理解ではない。
【0016】
本発明は、高速列車の空気力学の分野に関し、列車が高速でトンネルに入ると、トンネルの壁面による制限のため、前の気流が変動し、初期圧縮波が形成され、トンネル出口においてパルス波の形態で外側に放射し、ノイズ音を生成し、周囲の環境に害を及ぼす。
【0017】
従来技術において、トンネル出口の微気圧波を緩和するために、通常、トンネルの口に緩衝構造を設置して、トンネルに入る列車によって生成された初期圧縮波勾配を緩和する。この緩衝構造は通常アーチ型の形態で、サイズはドッキングトンネルよりも大きい。既存のラインでより高い速度列車が走っている場合、既存のトンネル緩衝構造は、トンネルを通るこの速度レベルで列車によって生成される空気力効果を効果的に緩和することはできず、既存の鉄道トンネルの基準を満たすことができない。これに基づき、本発明の実施例は、緩衝構造に入った後の減圧空間角に基づいてトンネル微気圧波を緩和する方法を提供し、メカニズムでトンネルの微気圧波を緩和するよう努める。トンネル微気圧波を効果的に緩和するために最適な穿孔率を見つけることができるだけでなく、既存の緩衝構造を変更せずに内部弓形板に依存して、トンネル出口の微気圧波を効果的に緩和できる。列車が緩衝構造に入る時、前の気流は、球面波の形態で緩衝構造に広がり、且つ該球面波の等価半径はトンネル断面の水力半径であり、形成された空間角は1/4球体であり、即ちπであり、該球体の球心を投影中心として、緩衝構造上の露出位置を球面Sに投影し、投影面積S1を得て、減圧空間角をθ=S1/S×πに定義する。
【0018】
実施例1:
図1に示すように、列車が緩衝構造に入った後、S
1は、緩衝構造上の開孔領域から球面Sへの投影面積であり、且つ本実施例における開孔領域は全透過孔であった。
【0019】
列車が高速で緩衝構造に入った後、前の気流が緩衝構造壁面によって制限され周囲に広がることはできず、緩衝構造に孔を開けることは、この効果を緩和するための重要な措置になった。研究により、緩衝構造の開孔率が増加すると、初期圧縮波の圧力勾配は、最初に減少してから増加する傾向を示す。それにより、開孔率のサイズの合理的な制御は、微気圧波を緩和するために特に重要である。開孔率のサイズを調整することにより、減圧空間角θのサイズが変更され、車両トンネルカップリングの空気力学効果を緩和することができる。
【0020】
数値シミュレーションによって5台の車両編成列車が600km/hで2kmのシングルライントンネルを渡る時の空気力学性能を研究した。ここで、トンネル横断面積は92m2であり、トンネルの両端に緩衝構造が配置され、緩衝構造は断面拡大斜めカット式であり、横断面積はトンネルの横断面積の2倍であり、緩衝構造の長さは100mであり、緩衝構造の上部に透過孔があり、単一の透過孔のサイズは6m×6mであった。
【0021】
表1および表2に示すように、トンネル出口から20mおよび50m箇所の微気圧振幅はまず、緩衝構造の開孔率の増加とともに減少し、次に緩衝構造の開孔率の増加とともに増加し、緩衝構造の開孔率が2.28%である場合、トンネル出口から20m及び50m箇所の微気圧波への緩和効果が最もよく、20mと50m箇所の微気圧波振幅は、それぞれ172Paと101Paであり、開孔なしの緩衝構造の場合の236Paと126Paに比べて、緩和効果はそれぞれ27.1%と19.8%であった。
【0022】
【0023】
【0024】
したがって、トンネル出口微気圧波の振幅は、まず緩衝構造の開孔率の増加とともに減少し、次に緩衝構造の開孔率の増加とともに増加し、1つの最適値を有すると考えることができる。
【0025】
さらなる研究では、異なる減圧空間角θの値を変更してテストすると、トンネル壁面の圧力曲線が異なる傾向を示すが、初期値から1つの同じ最大値に増加することがわかり、トンネル出口で測定された微気圧波とこのセクション曲線の最大勾配と正の相関があり、即ち異なる減圧空間角θ下でのトンネル壁面圧力的変化率極値がより大きい場合、気流の減圧効果がより悪いことを示し、その結果、トンネルの出口で測定された微気圧波はより大きくなる。
【0026】
上記の分析に基づいて、減圧空間角θをこのセクション曲線の勾配が固定されるまで、つまり、直線であるまで調整する場合、その勾配の極値は最小であり、このとき、気流への減圧効果が最も良く、トンネルの出口で測定された微気圧波は最小である。もちろん、この状況は理想的な状態であり、実際の操作の場合、
図2に示すように、曲線をできるだけ直線に近くすることでよい。
【0027】
同時に、
図3に示すように、本実施例は、前記異なる開孔率でのトンネル壁面の圧力曲線をテストした。開孔率が2.28%である場合、そのトンネル壁面の圧力曲線はより直線に近いことがわかり、したがって、微気圧波への緩和効果がより良く、表1と表2の結果も実証することができる。
【0028】
したがって、実際の緩衝構造を改善する場合、現場の施工条件、構造強度冗長などを統合的に考慮して適切な開孔率を選択してテストすることができ、減圧空間角をできるだけ最適値の範囲に近づけ、トンネル壁面の圧力曲線をできるだけ線形上昇の傾向にし、初期圧縮波の圧力勾配を緩和する。より良い微気圧波の緩和効果を達成する。
【0029】
実施例2:
図4に示すように、本実施例と実施例1の主な区別点は、緩衝構造内に弓形板が取り付けられ、弓形板に開孔領域も有し、列車が緩衝構造に入った後、S
1が弓形板上の開孔領域から球面Sへの投影面積であり、且つ本実施例における開孔領域が同様に全透過孔である。
【0030】
列車が緩衝構造に入った後、生成された初期圧縮波は緩衝構造とトンネルにさらに伝播する。初期圧縮波勾配を緩和するために、緩衝構造に孔を開けて、初期圧縮波が開孔領域から緩衝構造の外部に発散し、多くの程度でそのエネルギーを消費し初期圧縮波勾配を緩和した。弓形板を取り付けた後、トンネルに入ることによって生成される初期圧縮波は、弓形板上の開孔領域から緩衝構造の内壁と弓形板の外壁で構成された空間内へ往復に消耗した。弓形板に依存して、減圧空間角θをさらに調整し、既存の緩衝構造内に一連の連続関数変化の等価減圧空間角を構築した。
【0031】
数値シミュレーションによって5台の車両編成列車が600km/hで2kmのシングルライントンネルを渡る時の空気力学性能を研究した。トンネル横断面積は92m2であり、トンネルの両端に緩衝構造が配置され、緩衝構造の横断面積はトンネルの横断面積の2倍であり、長さは100mであった。緩衝構造の上部に2つの開孔領域があり、単一のサイズは4m×6mであった。計算によって得られた一台の列車が600km/hでトンネルを通過するとき、さまざまな動作条件下で、トンネル出口からの微気圧波振幅は表3に示すとおりである。
【0032】
【0033】
したがって、トンネルの出口での微気圧波振幅は弓形板の設置でさらに緩和できる。実際の緩衝構造を改善する場合、新たに増加した弓形板は、構造全体の強度の弱体化は明らかではないため、現場の施工条件等を総合的に考慮して弓形板の増加を選択してテストでき、同様に満足な微気圧波緩和効果を達成することができる。
【0034】
要するに、本発明は、実施例1および2を介して緩衝構造に入った後の減圧空間角から車/トンネルカップリング空気圧効果への緩和メカニズムを深く研究し、既存の緩衝構造に基づいて最適化された設計方法を提供および構築し、高速列車が「より高い速度」でトンネルを安全に通過するために新しい方法を提供する。本発明は、高速鉄道トンネルだけでなく、高速磁気浮上鉄道トンネルにも適用できる。
【0035】
以上の前記は本発明の好ましい実施態様であり、当業者にとって、本発明の原理から分離されていないという前提の下で、いくつかの改善と修整もでき、これらの改善及び修整も本発明の保護範囲に属すべきであることを指摘する必要がある。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の前方の圧縮空気を排気するために用いられる球面の立体角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法であって、前記列車が緩衝構造に入る時、前の気流は、球面波の形態で緩衝構造に広がり、且つ該球面波の等価半径はトンネル断面の水力半径であり、形成された球面角はπであり、該球面の球心を投影中心として、緩衝構造の開孔領域を、表面積がSとする前記球面に投影し、投影面積S1を得て、前記球面の立体角をθ=S1/S×πに定義し、前記球面の立体角θの大きさを調整し、トンネルを通る列車によって生成される微気圧波を減少することを特徴とするトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項2】
前記球面の立体角θの大きさを調整し、トンネルの入口に近い壁面での圧力変化曲線を直線的に上昇させ、初期圧縮波の圧力勾配を緩和することを特徴とする請求項1に記載のトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項3】
前記球面の立体角θには最適値があることを特徴とする請求項2に記載のトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項4】
前記緩衝構造上の開孔領域は全透過孔であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項5】
前記緩衝構造内に弓形板が取り付けられ、列車が緩衝構造に入ると、S1は、前記弓形板上の開孔領域から球面Sへの投影面積であり、前記弓形板は、少なくとも2つ以上の開孔領域を前記トンネルの長さ方向に4列で備え、前記弓形板の外径は前記緩衝構造の内径より小さく、前記弓形板の内径は前記トンネルの直径と等しいことを特徴とする請求項1に記載のトンネル微気圧波の緩和方法。
【請求項6】
前記弓形板上の開孔領域は全透過孔であることを特徴とする請求項5に記載のトンネル微気圧波の緩和方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速列車の空気力学の分野、特に、列車の前方の圧縮空気を排気するために用いられる球面の立体角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
列車が高速でトンネルに入ると、トンネルの壁面によって制限されているため、前の気流が変動し、初期圧縮波が形成され、トンネル出口においてパルス波の形態で外側に放射し、ノイズ音を生成し、周囲の環境に害を及ぼす。トンネル出口の微気圧波を緩和するために、トンネルの口に緩衝構造を設置して、トンネルに入る列車によって生成された初期圧縮波勾配を緩和する。現在の段階では、トンネルの空気力学を緩和するためによく使用される緩衝構造には多くの種類があるが、既存のラインでより高い速度列車が走っている場合、既存のトンネル緩衝構造は、トンネルを通るこの速度レベルで列車によって生成される空気力効果を効果的に緩和することはできず、既存の鉄道トンネルの基準を満たすことができない。したがって、本発明は、トンネル微気圧波を効果的に緩和するために最適な穿孔率を見つけることができるだけでなく、既存の緩衝構造を変更せずに内部弓形板に依存して、トンネル出口の微気圧波を効果的に緩和できる。
【0003】
上記の技術的背景の説明は、この出願の技術的解決手段の明確かつ完全な説明を促進し、当業者の理解を促進するために説明することである。これらの手段が本出願の背景技術部分で説明されているため、上記の技術的解決手段が当業者に公的に知られていると思われることができないことに注意する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景技術の欠点について、高速鉄道においてトンネルの微気圧波を緩和する方法を提供し、緩衝構造の球面の立体角特性とトンネル出口微気圧波との間の影響メカニズムへの研究を通じて、微気圧波を緩和する緩衝構造モデルを得て最適化し、より高い速度列車がトンネルをスムーズかつ安全に通ることを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、列車の前方の圧縮空気を排気するために用いられる球面の立体角に基づくトンネル微気圧波の緩和方法を提供し、前記列車が緩衝構造に入る時、前の気流は、球面波の形態で緩衝構造に広がり、且つ該球面波の等価半径はトンネル断面の水力半径であり、形成された球面角はπであり、該球面の球心を投影中心として、緩衝構造の開孔領域を表面積がSとする前記球面に投影し、投影面積S1を得て、前記球面の立体角をθ=S1/S×πに定義し、前記球面の立体角θの大きさを調整し、トンネルを通る列車によって生成される微気圧波を減少する。
【0006】
さらに、前記球面の立体角θの大きさを調整し、トンネルの入口に近い壁面での圧力変化曲線を直線的に上昇させ、初期圧縮波の圧力勾配を緩和する。
【0007】
さらに、前記球面の立体角θには最適値がある。
【0008】
さらに、前記緩衝構造上の開孔領域は全透過孔である。
【0009】
さらに、前記緩衝構造内に弓形板が取り付けられ、列車が緩衝構造に入ると、S1は、前記弓形板上の開孔領域から球面Sへの投影面積であり、前記弓形板は、少なくとも2つ以上の開孔領域を上部に備え、前記弓形板の外径は前記緩衝構造の内径より小さく、前記弓形板の内径は前記トンネルの直径と等しい。
【0010】
さらに、前記弓形板上の開孔領域は全透過孔である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記の手段は、以下の有益な効果を有する。
本発明によって提供されるトンネルの微気圧波を緩和する方法は、既存の鉄道トンネルに基づいて、より高い速度列車がトンネルをスムーズかつ安全に通るというニーズを満たし、列車が緩衝構造に入った後の球面の立体角特性とトンネル出口微気圧波との間の影響メカニズムへの研究を通じて、トンネル微気圧波を効果的に緩和するために最適な穿孔率を見つけることができるだけでなく、既存の緩衝構造を変更せずに内部弓形板に依存して、トンネル出口の微気圧波を効果的に緩和できる。
【0012】
本発明の他の有益な効果は、その後の発明を実施するための形態部分で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の実施例1による理想的なトンネル壁面圧力
変化曲線と実際の曲線との比較図である。
【
図3】本発明の実施例1による異なる緩衝構造の開孔率でのトンネル壁面の圧力
変化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によって解決される技術的問題、技術的解決手段および利点をより明確にするために、添付の図面および具体的な実施例を参照して、以下に詳細に説明する。明らかに、説明される実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な労働をしないという前提の下で、当業者によって得られた他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。さらに、以下に説明する本発明の様々な実施形態に関与する技術的特徴は、互いに対立を構成しない限り、組み合わせることができる。
【0015】
本発明の説明では、「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」という用語が指示する方向または位置関係は、添付の図面に示す方向または位置関係に基づき、本発明を説明することを容易にして説明を簡略化するためだけであり、指す装置又は素子には特定の方向を持ち、特定の方向で構築して動作する必要があると指示するか又は暗示しないため、したがって本発明を限定するものであると理解ではない。また、用語「第一」、「第二」、「第三」は説明の目的のみに用いられ、相対重要性を指示するか又は暗示すると理解ではない。
【0016】
本発明は、高速列車の空気力学の分野に関し、列車が高速でトンネルに入ると、トンネルの壁面による制限のため、前の気流が変動し、初期圧縮波が形成され、トンネル出口においてパルス波の形態で外側に放射し、ノイズ音を生成し、周囲の環境に害を及ぼす。
【0017】
従来技術において、トンネル出口の微気圧波を緩和するために、通常、トンネルの口に緩衝構造を設置して、トンネルに入る列車によって生成された初期圧縮波勾配を緩和する。この緩衝構造は通常アーチ型の形態で、サイズはドッキングトンネルよりも大きい。既存のラインでより高い速度列車が走っている場合、既存のトンネル緩衝構造は、トンネルを通るこの速度レベルで列車によって生成される空気力効果を効果的に緩和することはできず、既存の鉄道トンネルの基準を満たすことができない。これに基づき、本発明の実施例は、緩衝構造に入った後の球面の立体角に基づいてトンネル微気圧波を緩和する方法を提供し、メカニズムでトンネルの微気圧波を緩和するよう努める。トンネル微気圧波を効果的に緩和するために最適な穿孔率を見つけることができるだけでなく、既存の緩衝構造を変更せずに内部弓形板に依存して、トンネル出口の微気圧波を効果的に緩和できる。列車が緩衝構造に入る時、前の気流は、球面波の形態で緩衝構造に広がり、且つ該球面波の等価半径はトンネル断面の水力半径であり、形成された空間角は1/4球体であり、即ちπであり、該球体の球心を投影中心として、緩衝構造上の露出位置を球面Sに投影し、投影面積S1を得て、球面の立体角をθ=S1/S×πに定義する。
【0018】
実施例1:
図1に示すように、列車が緩衝構造に入った後、S
1は、緩衝構造上の開孔領域から球面Sへの投影面積であり、且つ本実施例における開孔領域は全透過孔であった。
【0019】
列車が高速で緩衝構造に入った後、前の気流が緩衝構造壁面によって制限され周囲に広がることはできず、緩衝構造に孔を開けることは、この効果を緩和するための重要な措置になった。研究により、緩衝構造の開孔率が増加すると、初期圧縮波の圧力勾配は、最初に減少してから増加する傾向を示す。それにより、開孔率のサイズの合理的な制御は、微気圧波を緩和するために特に重要である。開孔率のサイズを調整することにより、球面の立体角θのサイズが変更され、車両トンネルカップリングの空気力学効果を緩和することができる。
【0020】
数値シミュレーションによって5台の車両編成列車が600km/hで2kmのシングルライントンネルを渡る時の空気力学性能を研究した。ここで、トンネル横断面積は92m2であり、トンネルの両端に緩衝構造が配置され、緩衝構造は断面拡大斜めカット式であり、横断面積はトンネルの横断面積の2倍であり、緩衝構造の長さは100mであり、緩衝構造の上部に透過孔があり、単一の透過孔のサイズは6m×6mであった。
【0021】
表1および表2に示すように、トンネル出口から20mおよび50m箇所の微気圧振幅はまず、緩衝構造の開孔率の増加とともに減少し、次に緩衝構造の開孔率の増加とともに増加し、緩衝構造の開孔率が2.28%である場合、トンネル出口から20m及び50m箇所の微気圧波への緩和効果が最もよく、20mと50m箇所の微気圧波振幅は、それぞれ172Paと101Paであり、開孔なしの緩衝構造の場合の236Paと126Paに比べて、緩和効果はそれぞれ27.1%と19.8%であった。
【0022】
【0023】
【0024】
したがって、トンネル出口微気圧波の振幅は、まず緩衝構造の開孔率の増加とともに減少し、次に緩衝構造の開孔率の増加とともに増加し、1つの最適値を有すると考えることができる。
【0025】
さらなる研究では、異なる球面の立体角θの値を変更してテストすると、トンネル壁面の圧力変化曲線が異なる傾向を示すが、テスト開始時の圧力から1つの同じ最大値に増加することがわかり、トンネル出口で測定された微気圧波とこのセクション曲線の最大勾配と正の相関があり、即ち異なる球面の立体角θ下でのトンネル壁面圧力的変化率極値がより大きい場合、気流の減圧効果がより悪いことを示し、その結果、トンネルの出口で測定された微気圧波はより大きくなる。
【0026】
上記の分析に基づいて、
球面の立体角θをこのセクション曲線の勾配が固定されるまで、つまり、直線であるまで調整する場合、その勾配の極値は最小であり、このとき、気流への減圧効果が最も良く、トンネルの出口で測定された微気圧波は最小である。もちろん、この状況は理想的な状態であり、実際の操作の場合、
図2に示すように、曲線をできるだけ直線に近くすることでよい。
【0027】
同時に、
図3に示すように、本実施例は、前記異なる開孔率でのトンネル壁面の圧力
変化曲線をテストした。開孔率が2.28%である場合、そのトンネル壁面の圧力
変化曲線はより直線に近いことがわかり、したがって、微気圧波への緩和効果がより良く、表1と表2の結果も実証することができる。
【0028】
したがって、実際の緩衝構造を改善する場合、現場の施工条件、構造強度冗長などを統合的に考慮して適切な開孔率を選択してテストすることができ、球面の立体角をできるだけ最適値の範囲に近づけ、トンネル壁面の圧力変化曲線をできるだけ線形上昇の傾向にし、初期圧縮波の圧力勾配を緩和する。より良い微気圧波の緩和効果を達成する。
【0029】
実施例2:
図4に示すように、本実施例と実施例1の主な区別点は、緩衝構造内に弓形板が取り付けられ、弓形板に開孔領域も有し、列車が緩衝構造に入った後、S
1が弓形板上の開孔領域から球面Sへの投影面積であり、且つ本実施例における開孔領域が同様に全透過孔である。
【0030】
列車が緩衝構造に入った後、生成された初期圧縮波は緩衝構造とトンネルにさらに伝播する。初期圧縮波勾配を緩和するために、緩衝構造に孔を開けて、初期圧縮波が開孔領域から緩衝構造の外部に発散し、多くの程度でそのエネルギーを消費し初期圧縮波勾配を緩和した。弓形板を取り付けた後、トンネルに入ることによって生成される初期圧縮波は、弓形板上の開孔領域から緩衝構造の内壁と弓形板の外壁で構成された空間内へ往復に消耗した。弓形板に依存して、球面の立体角θをさらに調整し、既存の緩衝構造内に一連の連続関数変化の等価球面の立体角を構築した。
【0031】
数値シミュレーションによって5台の車両編成列車が600km/hで2kmのシングルライントンネルを渡る時の空気力学性能を研究した。トンネル横断面積は92m2であり、トンネルの両端に緩衝構造が配置され、緩衝構造の横断面積はトンネルの横断面積の2倍であり、長さは100mであった。緩衝構造の上部に2つの開孔領域があり、単一のサイズは4m×6mであった。計算によって得られた一台の列車が600km/hでトンネルを通過するとき、さまざまな動作条件下で、トンネル出口からの微気圧波振幅は表3に示すとおりである。
【0032】
【0033】
したがって、トンネルの出口での微気圧波振幅は弓形板の設置でさらに緩和できる。実際の緩衝構造を改善する場合、新たに増加した弓形板は、構造全体の強度の弱体化は明らかではないため、現場の施工条件等を総合的に考慮して弓形板の増加を選択してテストでき、同様に満足な微気圧波緩和効果を達成することができる。
【0034】
要するに、本発明は、実施例1および2を介して緩衝構造に入った後の球面の立体角から車/トンネルカップリング空気圧効果への緩和メカニズムを深く研究し、既存の緩衝構造に基づいて最適化された設計方法を提供および構築し、高速列車が「より高い速度」でトンネルを安全に通過するために新しい方法を提供する。本発明は、高速鉄道トンネルだけでなく、高速磁気浮上鉄道トンネルにも適用できる。
【0035】
以上の前記は本発明の好ましい実施態様であり、当業者にとって、本発明の原理から分離されていないという前提の下で、いくつかの改善と修整もでき、これらの改善及び修整も本発明の保護範囲に属すべきであることを指摘する必要がある。