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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174517
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】給電レール及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231130BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053980
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】63/365,303
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】杉田 達弥
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】ガイドベルトとケースの接触によって異音が発生することを抑制できる給電レールを提供する。
【解決手段】給電レール20は、筒形状を有するケース21と、ケース21に対して、所定方向に沿って移動可能に取り付けられるスライド部22と、ケース21に収容され、所定方向に沿って延びるフレキシブルフラットケーブル23と、スライド部22に取り付けられる可動端子部と、ケース21に取り付けられる固定端子部と、フレキシブルフラットケーブル23を案内するガイドベルト26と、ガイドベルト26を保持する保持部材27と、を備える。保持部材27は、ガイドベルト26の幅方向における少なくとも一方の端部を係止する係止部29を有し、係止部29によってガイドベルト26を保持する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延び、筒形状を有するケースと、
前記ケースに対して、前記所定方向に沿って移動可能に取り付けられるスライド部と、
前記ケースに収容され、前記所定方向に沿って延びるフレキシブルフラットケーブルと、
前記フレキシブルフラットケーブルの一端部に設けられ、前記スライド部に取り付けられる可動端子部と、
前記フレキシブルフラットケーブルの他端部に設けられ、前記ケースに取り付けられる固定端子部と、
前記ケースに収容され、前記フレキシブルフラットケーブルに沿って前記所定方向に延び、前記フレキシブルフラットケーブルを案内するガイドベルトと、
前記ガイドベルトを保持する保持部材と、を備え、
前記フレキシブルフラットケーブルは、前記可動端子部に接続する先端部と、前記固定端子部に接続する基端部と、を有し、
前記ガイドベルトは、前記先端部と共に前記スライド部に取り付けられる移動端部と、前記基端部と共に前記ケースに固定される固定端部と、前記移動端部と前記固定端部との間に設けられて湾曲する湾曲部と、を有し、
前記保持部材は、前記固定端部と前記湾曲部との間に設けられ、前記ガイドベルトの幅方向における少なくとも一方の端部を係止する係止部を有し、前記係止部によって前記ガイドベルトを保持することを特徴とする給電レール。
【請求項2】
前記保持部材は、前記ガイドベルトの厚み方向において前記ガイドベルトと重なる位置に配置されるベース部と、前記係止部と、を有し、
前記係止部は、前記ガイドベルトの前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なることを特徴とする請求項1に記載の給電レール。
【請求項3】
前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、
前記係止部は、前記ベース部の延在方向における中央部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なることを特徴とする請求項2に記載の給電レール。
【請求項4】
前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、
前記係止部は、前記ベース部の延在方向における少なくとも一方の側端部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なることを特徴とする請求項2に記載の給電レール。
【請求項5】
前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、
前記係止部は、前記ベース部の延在方向における両端部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なることを特徴とする請求項2に記載の給電レール。
【請求項6】
前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、前記ガイドベルトの前記フレキシブルフラットケーブル側の面とは反対側の面と対向する位置に設けられ、
前記係止部は、前記幅方向における前記ベース部の両端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なることを特徴とする請求項2に記載の給電レール。
【請求項7】
前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、前記ガイドベルトの前記フレキシブルフラットケーブル側の面とは反対側の面と対向する位置に設けられ、
前記係止部は、前記ベース部の延在方向における中央部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なる膨出部と、前記ベース部の延在方向における両端部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なる爪部と、を有し、
前記厚み方向において、前記膨出部の長さは、前記爪部の長さよりも長いことを特徴とする請求項2に記載の給電レール。
【請求項8】
シートクッションと、シートバックと、を備えるシート本体と、
前記所定方向に延び、前記シート本体を前記所定方向に移動可能に支持するスライドレールと、
請求項1に記載の給電レールと、を備え、
前記給電レールは、前記スライドレールが延びる方向に沿って、前記スライドレールの側方に配置されることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電レール及び車両用シートに係り、特に、自動車等の車両に設けられる車両用シートに電力を供給するための給電レール、及び該給電レールを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車体側の電源からスライドシートに電力を供給するための給電レールが知られている。例えば、特許文献1に記載の給電レールは、長筒型のケース内に収容されたフレキシブルフラットケーブルと、車両の電源回路の配線に接続された固定端子と、スライドシートの配線に接続される可動端子とを備え、車両の電源回路からフレキシブルフラットケーブルを介してスライドシートへと電力を供給している。
【0003】
特許文献1に記載の給電レールでは、フレキシブルフラットケーブルの伸縮移動に対応して、フレキシブルフラットケーブルを押さえつけて案内するガイドプレート(ガイドベルト)を備えている。そして、ケース内に収容されたフレキシブルフラットケーブルについて、がたつきによる異音が発生するのを防止するため、ケースの内面に、フレキシブルフラットケーブルに接触する断面三角形状の突条部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-032862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような給電レールでは、特にガイドプレートが湾曲する部分において、ガイドプレートが重力等により変形し、車両の走行によって車体が振動すると、ガイドプレートがケースの内面に接触し、異音が発生するおそれがった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ガイドベルトとケースの接触によって異音が発生することを抑制できる給電レール及び車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の給電レールによれば、所定方向に延び、筒形状を有するケースと、前記ケースに対して、前記所定方向に沿って移動可能に取り付けられるスライド部と、前記ケースに収容され、前記所定方向に沿って延びるフレキシブルフラットケーブルと、前記フレキシブルフラットケーブルの一端部に設けられ、前記スライド部に取り付けられる可動端子部と、前記フレキシブルフラットケーブルの他端部に設けられ、前記ケースに取り付けられる固定端子部と、前記ケースに収容され、前記フレキシブルフラットケーブルに沿って前記所定方向に延び、前記フレキシブルフラットケーブルを案内するガイドベルトと、前記ガイドベルトを保持する保持部材と、を備え、前記フレキシブルフラットケーブルは、前記可動端子部に接続する先端部と、前記固定端子部に接続する基端部と、を有し、前記ガイドベルトは、前記先端部と共に前記スライド部に取り付けられる移動端部と、前記基端部と共に前記ケースに固定される固定端部と、前記移動端部と前記固定端部との間に設けられて湾曲する湾曲部と、を有し、前記保持部材は、前記固定端部と前記湾曲部との間に設けられ、前記ガイドベルトの幅方向における少なくとも一方の端部を係止する係止部を有し、前記係止部によって前記ガイドベルトを保持する、ことにより解決される。
上記構成により、ガイドベルトが、固定端部と湾曲部との間に設けられた保持部材によって保持されているため、重力等によるガイドベルトの変形が発生しにくくなり、ガイドベルトとケースが接触することを抑制できる。
詳しく述べると、ガイドベルトの上端部又は下端部を係止する係止部によって、ガイドベルトが保持されるため、ガイドベルトの姿勢を安定させて、ガイドベルトがケース内面に接触することを抑制できる。
したがって、ガイドベルトとケースの接触によって異音が発生することを抑制できる。
【0008】
このとき、前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、前記係止部は、前記ベース部の延在方向における中央部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なると良い。
上記構成により、ガイドベルトの幅方向において重なる係止部によって、ガイドベルトが保持されるため、ガイドベルトがケース内面に接触することを抑制できる。
【0009】
このとき、前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、前記係止部は、前記ベース部の延在方向における中央部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なると良い。
上記構成により、係止部は保持部材の長さ方向における中央部分に設けられ、ガイドベルトの上端を保持するため、ガイドベルトの姿勢をより安定させて、ガイドベルトがケース内面に接触することを一層抑制できる。
【0010】
このとき、前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、前記係止部は、前記ベース部の延在方向における少なくとも一方の側端部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なると良い。
上記構成により、係止部は保持部材の延在方向における側端部分に設けられ、ガイドベルトの上端又は下端を保持するため、ガイドベルトの姿勢をより安定させて、ガイドベルトがケース内面に接触することを一層抑制できる。
【0011】
このとき、前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、前記係止部は、前記ベース部の延在方向における両端部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なると良い。
上記構成により、係止部は保持部材の長さ方向における延在方向における両端部分に設けられ、ガイドベルトの上端又は下端を保持するため、ガイドベルトの姿勢をより安定させて、ガイドベルトがケース内面に接触することを一層抑制できる。
【0012】
このとき、前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、前記ガイドベルトの前記フレキシブルフラットケーブル側の面とは反対側の面と対向する位置に設けられ、前記係止部は、前記幅方向における前記ベース部の両端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なると良い。
上記構成により、保持部材とフレキシブルフラットケーブルとの間にガイドベルトが設けられ、ガイドベルトを覆うように保持部材が取り付けられるため、ガイドベルトの姿勢をより安定させて、ガイドベルトがケース内面に接触することを一層抑制できる。
【0013】
このとき、シートクッションと、シートバックと、を備えるシート本体と、
前記所定方向に延び、前記シート本体を前後移動可能に支持するスライドレールと、
前記スライドレールの延びる方向に沿って、前記スライドレールの側方に配置される給電レールと、を備えると良い。
上記構成により、爪部によってガイドベルトを係止しつつ、膨出部によってフレキシブルフラットケーブルがガイドベルトに接触することを抑制できる。
【0014】
このとき、前記ベース部は、前記ガイドベルトに沿って前記所定方向に延び、前記ガイドベルトの前記フレキシブルフラットケーブル側の面とは反対側の面と対向する位置に設けられ、前記係止部は、前記ベース部の延在方向における中央部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なる膨出部と、前記ベース部の延在方向における両端部分において、前記幅方向における前記ベース部の少なくとも一方の端部から前記厚み方向へ延びて、前記幅方向において前記ガイドベルトと重なる爪部と、を有し、前記厚み方向において、前記膨出部の長さは、前記爪部の長さよりも長いと良い。
上記構成により、爪部によってガイドベルトを係止しつつ、膨出部によってフレキシブルフラットケーブルがガイドベルトに接触することを抑制できる。
【0015】
また前記課題は、本発明の給電レールを備える車両用シートによれば、シートクッションと、シートバックと、を備えるシート本体と、前記所定方向に延び、前記シート本体を前記所定方向に移動可能に支持するスライドレールと、給電レールと、を備え、前記給電レールは、前記スライドレールが延びる方向に沿って、前記スライドレールの側方に配置されること、により解決される。
上記構成により、ガイドベルトとケースの接触によって異音が発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガイドベルトとケースの接触によって異音が発生することを抑制できる。
また、ガイドベルトの姿勢をより安定させて、ガイドベルトがケース内面に接触することを一層抑制できる。
また、爪部によってガイドベルトを係止しつつ、膨出部によってフレキシブルフラットケーブルがガイドベルトに接触することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の車両用シートの側面図である。
図2】スライドレールの斜視図であって、アッパレールの一部を示す図である。
図3】スライドレールの斜視図であって、ロアレールとアッパレールの一部を示す図である。
図4】給電レールの斜視図である。
図5】給電レールの側面図である。
図6A】給電レールのケース内部を上方から見た図であって、スライド部が前方位置にある状態を示す図である。
図6B】給電レールのケース内部を上方から見た図であって、スライド部が中間位置にある状態を示す図である。
図6C】給電レールのケース内部を上方から見た図であって、スライド部が後方位置にある状態を示す図である。
図7図6BのVII-VII断面図である。
図8】保持部材の斜視図であって、ガイドベルトに取り付けられた状態を示す図である。
図9図8のIX-IX断面図である。
図10A図8のX-X断面図である。
図10B】保持部材の変形例を示す図である。
図11A】変形例1の給電レールであって、ガイドレールとフレキシブルフラットケーブルを示す図である。
図11B】変形例2の給電レールであって、ガイドレールとフレキシブルフラットケーブルを示す図である。
図11C】変形例3の給電レールであって、ガイドレールとフレキシブルフラットケーブルを示す図である。
図12】変形例4の車両用シートの側面図である。
図13】変形例5の車両用シートの側面図である。
図14】変形例5の給電レールのケース内部を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図1図10を参照して説明する。
以下の説明において、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0019】
<シートの全体構成>
車両用シートSは、図1に示すように、シートクッション1と、シートバック2と、シート支持部材3と、備えているシート本体と、車体のフロアFに取り付けられ、所定方向、具体的には前後方向に移動可能に支持するレール装置4と、レール装置4を制御する制御装置5(ECU)と、レール装置4を移動操作するためスイッチ6と、から主に構成されている。
【0020】
シートクッション1は、図1に示すように、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となるクッションフレームにパッド材1aを載置して表皮材1bで被覆されて構成されている。
シートバック2は、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となるバックフレームにパッド材2aを載置して表皮材2bで被覆されて構成されている。
【0021】
シート支持部材3は、シートクッション1及びシートバック2を支持する部材であって、レール装置4に取り付けられる。制御装置5は、電子制御装置であり、車体に搭載された電源Pと、レール装置4と、スイッチ6とに接続されている。スイッチ6は、シート支持部材3の側部に設けられ、前進に対応したボタンと、後退に対応したボタンとを有する。
乗員は、シートクッション1に着座して、スイッチ6を操作することによってレール装置4を作動させ、フロアFに対して車両用シートSを前後に移動させることができる。
【0022】
レール装置4は、図1に示すように、所定方向である前後方向に延びるスライドレール10と、スライドレール10の側方に設けられ前後方向に延びる給電レール20と、を備える。なお、図1では図示しないが、スライドレール10は、左右一対設けられている。
スライドレール10は、図2図3に示すように、フロアFに対して、シート本体を前後移動可能に支持するレール部材であって、フロアFに固定されるロアレール11と、シート支持部材3に固定されるアッパレール12と、を有する。
給電レール20は、図4に示すように、車体に設けられた電源Pと車両用シートSとを電気的に接続し、電源Pからスライドレール10に電力を供給するための給電装置である。
【0023】
レール装置4は、図1に示すように、フロアFに形成されたレール溝に配置される。レール装置4の上面は、フロアFの上面と同一平面上に配置される。レール装置4がレール溝に配置されることによって、レール装置4がフロアFから突出することを抑制することができる。
本実施形態では、図4に示すように、給電レール20は、シート幅方向における左側のスライドレール10の左側に配置される。しかし、これに限らず、給電レール20は、左側のスライドレール10右側に配置されても良く、右側のスライドレール10の側方に配置されても良い。
【0024】
<スライドレール>
スライドレール10は、シート本体を所定方向、具体的には前後方向に移動可能に支持するレール部材である。スライドレール10は、図2図3に示すように、前後方向に延在するロアレール11と、ロアレール11に対して前後移動可能に取り付けられ、前後方向に延在するアッパレール12と、を有する。
【0025】
ロアレール11は、フロアFに固定されるレール底壁と、レール底壁の左右の縁部から上方に延びる左右のレール外側壁と、左右のレール外側壁の上端からそれぞれ互いに近づく方向に延びるレール上壁と、レール上壁の端部から下方に延びる左右のレール内壁11aと、を有する。なお、図3では、ロアレール11の内、レール内壁11aのみを示している。
【0026】
アッパレール12は、シート支持部材3の下部に固定され、ロアレール11に対して前後移動可能に設けられる。アッパレール12の両側壁は、それぞれレール内壁11aに対向する位置に設けられる。なお、アッパレール12は、前後方向においてロアレール11よりも短く形成される。
【0027】
図2に示すように、アッパレール12は、電動モータ13と、電動モータ13の出力軸と連結する駆動軸14と、駆動軸14と接続するギアケース15と、ギアケース15に収容されるねじ部材16と、を有する。アッパレール12は、電動モータ13によってねじ部材16が駆動されることによって、ロアレール11に対して前後方向にスライド移動する。
なお、アッパレール12は、例えば車輪、ボール、ローラベアリング等を介してロアレール11に取り付けられることで、ロアレール11に対して円滑にスライド移動することができる。
【0028】
電動モータ13は、アッパレール12をスライド移動させる駆動部であって、給電レール20から不図示のコネクタを介して電力が供給される。電動モータ13は、前後方向に延びる円筒形状に形成され、モータブラケット13aを介して、アッパレール12の上面12aに取り付けられる。
【0029】
駆動軸14は、ねじ部材16を駆動する回転軸であって、電動モータ13の出力軸に連結される。駆動軸14は、前後方向に延び、ギアケース15に回転可能に支持される。電動モータ13の出力軸と駆動軸14とは、同一直線上に配置される。
【0030】
ギアケース15は、前後方向に長い直方体の箱形に形成され、ねじ部材16を収容する。ギアケース15は、電動モータ13の前方において、ギアブラケット15aを介して、アッパレール12の上面12aに取り付けられる。ギアケース15には、ねじ部材16を側方に露出させるための開口部であるケース開口15bが形成される。
【0031】
ねじ部材16は、図3に示すように、ロアレール11に対して前後方向に移動可能に設けられる第1ねじ部材17と、第2ねじ部材18と、を有する。第1ねじ部材17及び第2ねじ部材18は、それぞれ前後に延び、互いに並列にギアケース15に配置される。
第1ねじ部材17はギアケース15の右側面に沿って配置され、第2ねじ部材18はギアケース15の左側面に沿って配置される。駆動軸14は、第1ねじ部材17と第2ねじ部材18との中間部の下方に配置される。
【0032】
ねじ部材16は、第1ねじ部材17及び第2ねじ部材18の前後方向における両端に一対設けられ、駆動軸14、第1ねじ部材17及び第2ねじ部材18を軸支する軸受部16Aを有する。具体的には、軸受部16Aは、第1ねじ部材17の前端及び後端を回転可能に支持する第1軸受部16aと、第2ねじ部材18の前端及び後端を回転可能に支持する第2軸受部16bと、駆動軸14を回転可能に支持する第3軸受部16cと、を有する。
駆動軸14が回転すると、駆動軸14に噛み合う駆動ギア(不図示)によって、第1ねじ部材17及び第2ねじ部材18は互いに同一方向に回転する。
【0033】
図3に示すように、ロアレール11には、ねじ部材16と係合するねじ係合部19が形成されている。具体的には、アッパレール12の第1ねじ部材17に隣接する右側のレール内壁11aに第1係合部19aが形成される。また、アッパレール12の第2ねじ部材18に隣接する左側のレール内壁11aに第2係合部19bが形成される。
第1係合部19a及び第2係合部19bは、レール内壁11aに前後方向に並んで複数形成された孔部である。したがって、駆動軸14の回転によって、ねじ部材16が回転すると、第1ねじ部材17が第1係合部19aの孔部と噛み合い、第2ねじ部材18が第2係合部19bの孔部と噛み合うことで、アッパレール12がロアレール11に対して前後方向に移動する。
【0034】
<給電レール>
給電レール20は、電源Pからスライドレール10に電力を供給する給電装置である。給電レール20は、図1図4に示すように、スライドレール10が延びる方向に沿ってスライドレール10の側方に配置される。
給電レール20は、所定方向、すなわち前後方向に延びるケース21と、アッパレール12の移動に伴ってスライドするスライド部22と、電源Pからスライドレール10に電力を供給するためのフレキシブルフラットケーブル23と、フレキシブルフラットケーブル23からスライドレール10に電力を供給するための可動端子部24と、電源Pからフレキシブルフラットケーブル23に電力を供給するための固定端子部25と、フレキシブルフラットケーブル23を案内するガイドベルト26と、ガイドベルト26を保持する保持部材27と、を備える。
【0035】
ケース21は、図4図7に示すように、例えばアルミニウム等の金属からなり、所定方向である前後方向に延びる筒状部材である。ケース21は、フロアFに形成されたレール溝内において、スライドレール10に隣接して配置される。
ケース21は、フロアFのレール溝に固定されるケース底壁21aと、ケース底壁21aの左右両端部から上方に向かってケース底壁21aに対して略垂直に延びる右壁部21b及び左壁部21cと、左壁部21cの上端からケース底壁21aと略平行に右方に延びる上壁部21dと、上壁部21dの先端から左壁部21cと略平行に下方に延びて、ケース底壁21aと接続する中壁部21eと、を有する。
【0036】
ケース21には、図4図7に示すように、左壁部21cと中壁部21eとの間に、前後方向に延びるスリット21fが形成される。スライド部22は、スリット21fを介して、ケース21に対してスライド移動可能となっている。
スリット21fの開口部分には、ひさし部21gが形成される。具体的には、ひさし部21gは、右壁部21b及び中壁部21eからスリット21f内に向かって、下方に傾斜して延びる。ひさし部21gによって、スリット21fからケース21内に異物が進入し難くなるため、フレキシブルフラットケーブル23の断線を抑制できる。
【0037】
図5に示すように、ケース21の前端部21hには、固定端子部25が接続される。ケース21の前端部21h及び後端部21iには、カバー21jが取り付けられる。すなわち、ケース21のケース底壁21a、左壁部21c、上壁部21d、及び中壁部21eで囲まれた空間は、カバー21jによって閉じられている。
また、中壁部21eの上下方向における中間部分には、スライド部22を左右方向において貫通させるための開口21kが形成される。開口21kは、前後方向に延びるように、中壁部21eに形成される。
【0038】
スライド部22は、図4図7に示すように、ケース21に対して、前後方向に沿ってスライド可能に取り付けられる。スライド部22は、スリット21f内に配置される本体部22aと、本体部22aから上方に延びて上壁部21dよりも上方に突出する突出部22bと、突出部22bの上端に設けられるコネクタ取付部22cと、本体部22aから開口21kを介して左方へ延びる接続部22dと、フレキシブルフラットケーブル23が取り付けられるフラットケーブル取付部22eと、を有する。
【0039】
図4に示すように、コネクタ取付部22cは、スライドレール10(具体的には、ロアレール11の上面)及びケース21の上壁部21dよりも、上方に配置される。シート支持部材3がスライドレール10によって前後方向に移動するとき、シート支持部材3の一部分がコネクタ取付部22cに当接することによって、シート支持部材3と共にスライド部22が前後方向に移動する。
したがって、シート支持部材3がスライドレール10によって前後方向に移動するとき、コネクタ取付部22cに設けられた可動端子部24も同様に前後方向に移動するため、スライドレール10のアッパレール12の近傍位置において、常にアッパレール12へ給電することができる。
【0040】
フレキシブルフラットケーブル23は、導体からなる複数の金属板(例えば銅板)を幅方向に配列し、それらの外表面を耐熱絶縁テープで被覆した、可撓性を有する伝送線群である。
図4図6Aに示すように、フレキシブルフラットケーブル23は、ケース21に収容され、前後方向に沿って延びる。具体的には、フレキシブルフラットケーブル23は、突出部22bに沿って上下方向に延び、屈曲してフラットケーブル取付部22eに取り付けられ、ケース21内において後方へ向かって延びる。そしてケース21内で湾曲して折り返され、前方へ向かって延び、ケース21の前端部21hにおいて固定端子部25へ接続する。
【0041】
フレキシブルフラットケーブル23は、図6Aに示すように、略前後方向に延びる長尺帯状のケーブルである。フレキシブルフラットケーブル23は、フレキシブルフラットケーブル23の厚み方向がケース21の左右方向と一致し、幅方向がケース21の上下方向と一致し、長さ方向がケース21の前後方向と一致するようにケース21内に配置される。
フレキシブルフラットケーブル23は、可動端子部24に接続する先端部23aと、固定端子部25に接続する基端部23bと、先端部23aと基端部23bとの間に設けられて湾曲する中間部23cと、を有する。中間部23cは、フレキシブルフラットケーブル23における先端部23aと基端部23bとの間のケーブル中間部の一部分であって、スライド部22の移動に伴って上面視で略U字状に湾曲する部分である。
【0042】
可動端子部24は、図4図6Aに示すように、フレキシブルフラットケーブル23の先端部23aに設けられ、スライド部22のコネクタ取付部22cに取り付けられる。可動端子部24は、フレキシブルフラットケーブル23の先端部23aに接続する可動ケーブル24aと、アッパレール12のコネクタ(不図示)に接続する可動コネクタ24bと、を有する。
上述したように、シート支持部材3がスライドレール10によって前後方向に移動するとき、コネクタ取付部22cに設けられた可動端子部24も同様に前後方向に移動する。そのため、アッパレール12の前後方向の動きに合わせて可動コネクタ24bが動くことによって、アッパレール12へ給電することができる。
【0043】
固定端子部25は、図4図6Aに示すように、フレキシブルフラットケーブル23の基端部23bに設けられ、ケース21の前端部21hに取り付けられる。固定端子部25は、フレキシブルフラットケーブル23の基端部23bに接続する固定ケーブル25aと、車体に設けられた電源Pに接続する固定コネクタ25bと、を有する。
固定コネクタ25bは、制御装置5を介して電源Pに接続される。フレキシブルフラットケーブル23を介して、固定端子部25と可動端子部24とが電気的に接続されることで、電源Pからの電力をスライドレール10に供給することができる。
【0044】
ガイドベルト26は、図4図6Aに示すように、ケース21に収容され、前後方向に沿って延び、フレキシブルフラットケーブル23を案内する。具体的には、ガイドベルト26は、フレキシブルフラットケーブル23と共にスライド部22に取り付けられ、ケース21内において後方へ向かって延びる。そしてケース21内で湾曲して折り返され、前方へ向かって延び、ケース21の前端部21hに固定される。
【0045】
ガイドベルト26は、図6Aに示すように、略前後方向に延びる長尺帯状の案内部材である。ガイドベルト26は、例えばステンレス等の金属材料又は樹脂材料から形成される。ガイドベルト26は、ガイドベルト26の厚み方向がケース21の左右方向と一致し、幅方向がケース21の上下方向と一致し、長さ方向がケース21の前後方向と一致するようにケース21内に配置される。
図7に示すように、ガイドベルト26は、断面形状がフレキシブルフラットケーブル23に向かって凸となる円弧状に形成される。ガイドベルト26は、凸面26Aがフレキシブルフラットケーブル23と対向するように配置される。
【0046】
ガイドベルト26は、フレキシブルフラットケーブル23の先端部23aと共にスライド部22に取り付けられる移動端部26aと、基端部23bと共にケース21に固定される固定端部26bと、移動端部26aと固定端部26bとの間に設けられて湾曲する湾曲部26cと、を有する。湾曲部26cは、ガイドベルト26における移動端部26aと固定端部26bとの間のベルト中間部の一部分であって、スライド部22の移動に伴って上面視で略U字状に湾曲する部分である。
【0047】
移動端部26aは、スライド部22に取り付けられ、スライド部22の前後移動に応じて、フレキシブルフラットケーブル23の先端部23aと共に、前後方向に移動する。
固定端部26bは、ケース21の前端部21hに取り付けられ、フレキシブルフラットケーブル23の基端部23bと共にケース21に固定される。
湾曲部26cは、フレキシブルフラットケーブル23に沿って湾曲するように設けられ、フレキシブルフラットケーブル23を案内する。
【0048】
保持部材27は、ガイドベルト26の上下方向におけるがたつきを抑えるために、ガイドベルト26を保持する部材であって、樹脂等から形成される。保持部材27は、ガイドベルト26における固定端部26bと湾曲部26cとの間に設けられ、ガイドベルト26の右側に配置されるベース部28と、ベース部28に設けられガイドベルト26を係止する係止部29と、を有する。
【0049】
図6Aに示すように、スライド部22が前方位置にあるとき、保持部材27は、湾曲部26cの近傍に位置した状態となる。図6Bに示すように、スライド部22が後方へ移動して中間位置にあるとき、保持部材27は、固定端部26bと湾曲部26cの間に位置した状態となる。図6Cに示すように、スライド部22がさらに後方へ移動して後方位置にあるとき、保持部材27は、湾曲部26cから離間した固定端部26bと湾曲部26cの間に位置した状態となる。
このように、ガイドベルト26は、固定端部26bと湾曲部26cとの間で、保持部材27の係止部29に保持されている。これにより、湾曲部26cの前後方向における位置によらず、湾曲部26cに加えられる下方への曲げモーメントが低減され、重力等によるガイドベルト26の変形が抑制されている。したがって、ガイドベルト26の下縁がケース21のケース底壁21aに接触し難くなり、異音の発生を抑制することができる。
【0050】
図7に示すように、保持部材27は、ガイドベルト26の凹面26Bと対向するように、ケース21に設けられる。すなわち、ベース部28は、ガイドベルト26のフレキシブルフラットケーブル23側の凸面26Aとは反対側の凹面26Bに対向する位置に設けられる。
なお、保持部材27は、ガイドベルト26の凸面26Aと対向するように、ケース21に設けられても良い。すなわち、ベース部28は、ガイドベルト26のフレキシブルフラットケーブル23側の凸面26Aに対向する位置(ガイドベルト26及びフレキシブルフラットケーブル23との間)に設けられても良い。
【0051】
ベース部28は、ガイドベルト26に沿って前後方向に延びる、例えば長尺板状の部材である。ベース部28は、図8に示すように、ガイドベルト26の厚み方向である左右方向においてガイドベルト26と重なる位置に配置される。
【0052】
係止部29は、ガイドベルト26の幅方向における端部(上端又は下端)を係止する部分である。係止部29は、保持部材27における中央部分27a、前側部分27b、後側部分27cにおいて、ベース部28からガイドベルト26へ向かって突出するように設けられる。係止部29は、ベース部28の上下方向における端部から左方向へ延びて、ガイドベルト26と上下方向において重なる。
なお、本実施形態では、係止部29が保持部材27における中央部分27a、前側部分27b、後側部分27cの3箇所に設けられている。しかしこれに限らず、係止部29は、中央部分27a、前側部分27b、後側部分27cのいずれか一部分に設けられても良い。
【0053】
図8に示すように、係止部29は、ガイドベルト26の上端を係止する膨出部30と、ガイドベルト26の上下端を係止する爪部31と、を有する。すなわち、ガイドベルト26は、ベース部28と、係止部29の膨出部30及び爪部31とによって囲まれた空間内に収容されている。
なお、係止部29は、中央部分27aに膨出部30が設けられ、前側部分27bに前係止片31aが設けられ、後側部分27cに後係止片31bが設けられる。しかしこれに限らず、膨出部30が前側部分27b、後側部分27cに設けられても良く、爪部31が中央部分27aに設けられても良い。また、中央部分27a、前側部分27b、後側部分27cの全てに膨出部30が設けられても良く、中央部分27a、前側部分27b、後側部分27cの全てに爪部31が設けられても良い。
【0054】
膨出部30は、図8図9に示すように、ベース部28の延在方向である前後方向における中央位置(中央部分27a)において、ベース部28の上端部28aから左方向へ延びて、上下方向においてガイドベルト26と重なる。つまり、膨出部30はガイドベルト26の上端を係止する。
膨出部30の下面は、ガイドベルト26の上端に当接し、膨出部30の先端面30aは、フレキシブルフラットケーブル23に当接する。膨出部30の先端面30aは、丸みを帯びた形状となっている。
なお、本実施形態では、膨出部30が上端部28aに設けられるが、下端部28bに設けられても良い。また、膨出部30が上端部28a及び下端部28bの両方に設けられても良い。
【0055】
爪部31は、図8図10Aに示すように、ベース部28の前後方向における両端部分(前側部分27b、後側部分27c)において、ベース部28の上端部28a及び下端部28bから左方向へ延びて、上下方向において重なる。つまり、爪部31はガイドベルト26の上下端を係止する。
なお、本実施形態では、爪部31が上端部28a及び下端部28bに設けられるが、上端部28a及び下端部28bのいずれか一方側に設けられても良い。
【0056】
図9及び図10に示すように、左右方向において、膨出部30の長さL1は、爪部31の長さL2よりも長い。そのため、爪部31よりも長い膨出部30がフレキシブルフラットケーブル23に当接するため、ガイドベルト26は、フレキシブルフラットケーブル23と離間した位置で保持される。また、膨出部30の先端面30aがフレキシブルフラットケーブル23に当接したときも、先端面30aが丸みを帯びた形状となっているため、フレキシブルフラットケーブル23が保持部材27によって摩耗してしまうことを抑制できる。
【0057】
このように、保持部材27は、係止部29によってガイドベルト26の上下方向における端部を保持することで、ガイドベルト26を安定して保持することができる。そして、保持部材27によってガイドベルト26を安定して保持することで、湾曲部26cにおいてガイドベルト26の下縁がケース21のケース底壁21aに衝突し難くなる。こうすることで、異音の発生を抑制することができる。
なお、保持部材27の上下方向におけるがたつきを抑えるために、保持部材27がケース21に接触するように取り付けられても良い。例えば、保持部材27に上下方向に付勢する弾性部材を設けることにより、保持部材27が弾性部材の付勢力によってケース21に保持されても良い。
【0058】
また、図10Aに示す係止部29は、ベース部28の上下端面から、ベース部28の厚み方向へ延びて、上下方向においてガイドベルト26と重なり、ガイドベルト26の上下方向における端部を保持する。しかしこれに限らず、図10Bに示すように、係止部29は、ベース部28の上下端部において、上下端面よりも中央側に設けられても良い。なお、ベース部28の上下端部とは、上下方向における中央部以外の部位を示す。
【0059】
図10Bに示すように、変形例にかかる保持部材27のベース部28は、上端面に段差が形成される段差上端部128aと、下端面に曲面が形成される曲面下端部128bと、を有する。段差上端部128a及び曲面下端部128bが設けられることで、ベース部28の上下端部における厚みは、中央部の厚みよりも薄くなっている。
【0060】
<製造方法>
車両用シートSの製造方法について説明する。
まず、シートクッション1とシートバック2とを備えるシート本体を用意する。そして、所定方向である前後方向に延びるスライドレール10にシート本体を前後方向に移動可能に取り付ける。具体的には、スライドレール10のアッパレール12の上方に、シート本体のシート支持部材3を固定する。
【0061】
そして、スライドレール10が延びる方向に沿って、スライドレール10の側方に給電レール20を配置する。具体的には、給電レール20のケース21を、フロアFに形成されたレール溝内において、スライドレール10に隣接するように配置する。
また、スライドレール10に給電レール20の可動端子部24を電気的に接続する。具体的には、スライドレール10のアッパレール12に設けられたコネクタ(不図示)に、フレキシブルフラットケーブル23の先端部23aに接続された可動端子部24を接続する。また、給電レール20の固定端子部25を車体に設けられた電源Pに電気的に接続する。
こうすることで、電源Pからの電力が、給電レール20を介して、スライドレール10のアッパレール12に供給される。
【0062】
なお、給電レール20は、前後方向に延び、筒形状を有するケース21と、ケース21に対して、前後方向に沿って移動可能に取り付けられるスライド部22と、ケース21に収容され、前後方向に沿って延びるフレキシブルフラットケーブル23と、フレキシブルフラットケーブル23の先端部23aに設けられ、スライド部22に取り付けられる可動端子部24と、フレキシブルフラットケーブル23の基端部23bに設けられ、ケース21に取り付けられる固定端子部25と、ケース21に収容され、フレキシブルフラットケーブル23に沿って前後方向に延び、フレキシブルフラットケーブル23を案内するガイドベルト26と、ガイドベルト26を保持する保持部材27と、を備える。
フレキシブルフラットケーブル23は、可動端子部24に接続する先端部23aと、前記固定端子部に接続する基端部23bと、を有し、ガイドベルト26は、先端部23aと共にスライド部22に取り付けられる移動端部26aと、基端部23bと共にケース21に固定される固定端部26bと、移動端部26aと固定端部26bとの間に設けられて湾曲する湾曲部26cと、を有する。
保持部材27は、固定端部26bと湾曲部26cとの間に設けられ、左右方向においてガイドベルト26と重なる位置に配置されるベース部28と、ベース部28の上端部又は下端部から左右方向へ延びて、上下方向においてガイドベルト26と重なる係止部29と、を有する。そして、保持部材27は、係止部29によってガイドベルト26を保持する。
【0063】
なお、ベース部28は、ガイドベルト26に沿って前後方向に延び、係止部29の膨出部30は、ベース部28の延在方向における中央部分において、上端部から左右方向へ延びて、上下方向においてガイドベルト26と重なると良い。
また、ベース部28は、ガイドベルト26に沿って前後方向に延び、係止部29の爪部31は、ベース部28の延在方向における側端部分において、上端部又は下端部から左右方向へ延びて、上下方向においてガイドベルト26と重なると良い。
また、ベース部28は、ガイドベルト26に沿って前後方向に延び、ガイドベルト26のフレキシブルフラットケーブル23側の凸面26Aとは反対側の凹面26Bと対向する位置に設けられると良い。
また、左右方向において膨出部30の長さは、爪部31の長さよりも長いと良い。
【0064】
上述した、車両用シートSの製造方法は、下記の通りである。
車両用シートの製造方法であって、
シートクッションとシートバックとを備えるシート本体を用意し、
所定方向に延びるスライドレールに、前記シート本体を前記所定方向に移動可能に取り付け、
前記スライドレールが延びる方向に沿って、前記スライドレールの側方に給電レールを配置すること、を含み、
前記給電レールは、
前記所定方向に延び、筒形状を有するケースと、
前記ケースに対して、前記所定方向に沿って移動可能に取り付けられるスライド部と、
前記ケースに収容され、前記所定方向に沿って延びるフレキシブルフラットケーブルと、
前記フレキシブルフラットケーブルの一端部に設けられ、前記スライド部に取り付けられる可動端子部と、
前記フレキシブルフラットケーブルの他端部に設けられ、前記ケースに取り付けられる固定端子部と、
前記ケースに収容され、前記フレキシブルフラットケーブルに沿って前記所定方向に延び、前記フレキシブルフラットケーブルを案内するガイドベルトと、
前記ガイドベルトを保持する保持部材と、を備え、
前記フレキシブルフラットケーブルは、前記可動端子部に接続する先端部と、前記固定端子部に接続する基端部と、を有し、
前記ガイドベルトは、前記先端部と共に前記スライド部に取り付けられる移動端部と、前記基端部と共に前記ケースに固定される固定端部と、前記移動端部と前記固定端部との間に設けられて湾曲する湾曲部と、を有し、
前記保持部材は、前記固定端部と前記湾曲部との間に設けられ、前記ガイドベルトの幅方向における少なくとも一方の端部を係止する係止部を有し、前記係止部によって前記ガイドベルトを保持し、
前記スライドレールに前記給電レールの前記可動端子部を電気的に接続することをさらに含む、車両用シートの製造方法。
【0065】
<変形例1>
次に、給電レール20の変形例1について、図11Aに基づいて説明する。なお、上述の給電レール20と重複する内容については説明を省略する。
変形例1の給電レール20は、図11Aに示すように、フレキシブルフラットケーブル23に突起部23dが形成されている。
詳しく述べると、フレキシブルフラットケーブル23の下端には、突起部23dが形成される。突起部23dは、左右方向から見たときに略逆三角形状であって、前後方向に複数個(例えば3個)並んで形成される。突起部23dが形成される位置は、例えば、フレキシブルフラットケーブル23の基端部23bと中間部23cとの間であって、保持部材27よりも前側に設けられる。
【0066】
このように、フレキシブルフラットケーブル23に突起部23dが形成されることで、中間部23cにおける重力等によるフレキシブルフラットケーブル23の変形が発生しにくくなる。したがって、フレキシブルフラットケーブル23とケース21のケース底壁21aが過度に接触することを抑制できるため、異音の発生を抑制できる。
【0067】
<変形例2>
次に、給電レール20の変形例2について、図11Bに基づいて説明する。
変形例2の給電レール20は、図11Bに示すように、ガイドベルト26に突出片26dが形成されている。
詳しく述べると、ガイドベルト26の下端には、突出片26dが形成される。突出片26dは、左右方向から見たときに略逆三角形状であって、前後方向に複数個(例えば3個)並んで形成される。突出片26dが形成される位置は、例えば、ガイドベルト26の固定端部26bと湾曲部26cとの間であって、保持部材27よりも前側に設けられる。
【0068】
このように、ガイドベルト26に突出片26dが形成されることで、湾曲部26cにおける重力等によるガイドベルト26の変形が発生しにくくなる。したがって、ガイドベルト26とケース21のケース底壁21aが過度に接触することを抑制できるため、異音の発生を抑制できる。
【0069】
<変形例3>
次に、給電レール20の変形例3について、図11Cに基づいて説明する。
変形例3の給電レール20は、図11Cに示すように、ケース21のケース底壁21aに隆起部21lが形成されている。
詳しく述べると、ケース底壁21aのフレキシブルフラットケーブル23に対応する位置(左壁部21c近傍)には、ケース底壁21aから上方に向かって隆起する隆起部21lが形成される。隆起部21lは、前後方向から見たときに断面形状が略台形であって、前後方向に延びるように形成される。隆起部21lが形成される位置は、例えば、ケース底壁21aにおけるフレキシブルフラットケーブル23の基端部23bと中間部23cとの間に対応する位置であって、保持部材27よりも前側に設けられる。
【0070】
このように、ケース底壁21aに隆起部21lが形成されることで、中間部23cにおける重力等によるフレキシブルフラットケーブル23の変形が発生しにくくなる。したがって、フレキシブルフラットケーブル23とケース21のケース底壁21aが過度に接触することを抑制できるため、異音の発生を抑制できる。
【0071】
<変形例4>
次に、車両用シートSの変形例4について、図12に基づいて説明する。
変形例4の車両用シートSは、図12に示すように、前後方向に三列のシートを備える車両において、車両の前部座席に相当するフロントシートS1と、二列目のミドルシートS2と、三列目のリアシートS3と、を備える。
図12に示すように、車両用シートSは、各シート本体を前後移動可能に支持する複数のレール装置4を備える。詳しく述べると、フロントシートS1のシート本体を前後移動可能に支持するフロントレール装置4Aを備え、ミドルシートS2のシート本体を前後移動可能に支持するミドルレール装置4Bを備え、リアシートS3のシート本体を前後移動可能に支持するリアレール装置4Cを備える。
【0072】
このように、複数の車両用シートSが設けられる場合であっても、各給電レール20を介して、車両用シートSの各スライドレール10に電源Pから電力を供給することができる。
なお、本実施形態では、制御装置5及び電源Pは複数設けられ、各レール装置4に接続されるが、これに限らず、一つの制御装置5及び電源Pが各レール装置4に共通して設けられても良い。
【0073】
<変形例5>
次に、車両用シートSの変形例5について、図13図14に基づいて説明する。
変形例5の車両用シートSは、図13に示すように、前後方向に三列のシートを備える車両において、車両の前部座席に相当するフロントシートS1と、二列目のミドルシートS2と、三列目のリアシートS3と、を備える。
図13に示すように、車両用シートSは、各シート本体を前後移動可能に支持する長尺の長尺レール装置4Dを備える。長尺レール装置4Dは、フロントシートS1のスライドレール10と、ミドルシートS2のスライドレール10と、リアシートS3のスライドレール10とに電力を供給する長尺給電レール40を備える。
【0074】
図14に示すように、長尺給電レール40は、前後方向に長尺に延びる長尺ケース41を有し、各車両用シートS用の給電機構が収容される。具体的には、長尺給電レール40は、フロントシートS1用の第1スライド部42aと、ミドルシートS2用の第2スライド部42bと、リアシートS3用の第3スライド部42cと、を有する。
また、長尺給電レール40は、フロントシートS1用の第1フレキシブルフラットケーブル43aと、ミドルシートS2用の第2フレキシブルフラットケーブル43bと、リアシートS3用の第3フレキシブルフラットケーブル43cと、を有する。
【0075】
そして、長尺給電レール40は、フロントシートS1用の第1ガイドベルト46aと、ミドルシートS2用の第2ガイドベルト46bと、リアシートS3用の第3ガイドベルト46cと、を有する。
また、長尺給電レール40は、フロントシートS1用の第1保持部材47aと、ミドルシートS2用の第2保持部材47bと、リアシートS3用の第3保持部材47cと、を有する。
【0076】
このように、複数の車両用シートSが設けられる場合であっても、長尺給電レール40を介して、車両用シートSの各スライドレール10に電源Pから電力を供給することができる。そして、第1保持部材47aと、第2保持部材47bと、第3保持部材47cが長尺ケース41に設けられることによって、第1ガイドベルト46a、第2ガイドベルト46b、第3ガイドベルト46cの変形が発生しにくくなる。
【0077】
上記実施形態では、スライドレール10及び給電レール20が延びる方向(所定方向)を前後方向である構成を例に説明したが、これに限定されない。スライドレール10及び給電レール20は、所定方向として、左右方向に延びて設けられても良く、前後方向、左右方向以外の方向に延びて設けられても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、特に限定されることなく、二輪車用の二輪シート、電車やバス等の車両用シート、飛行機や船等の乗り物用シートのほか、作業用の事務イス、車イス、ショッピングカートの子供用イス等の種々のシートに対して利用することができる。
【0079】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
S 車両用シート
S1 フロントシート
S2 ミドルシート
S3 リアシート
F フロア
P 電源
1 シートクッション
1a パッド材
1b 表皮材
2 シートバック
2a パッド材
2b 表皮材
3 シート支持部材
4 レール装置
4A フロントレール装置
4B ミドルレール装置
4C リアレール装置
5 制御装置
6 操作スイッチ
10 スライドレール
11 ロアレール
11a レール内壁
12 アッパレール
12a 上面
13 電動モータ
13a モータブラケット
14 駆動軸
15 ギアケース
15a ギアブラケット
15b ケース開口
16 ねじ部材
16a 第1軸受部
16b 第2軸受部
16c 第3軸受部
17 第1ねじ部材
18 第2ねじ部材
19 ねじ係合部
19a 第1係合部
19b 第2係合部
20 給電レール
21 ケース
21a ケース底壁
21b 右壁部
21c 左壁部
21d 上壁部
21e 中壁部
21f スリット
21g ひさし部
21h ケース前端部
21i ケース後端部
21j カバー
21k 開口
21l 隆起部
22 スライド部
22a 本体部
22b 突出部
22c コネクタ取付部
22d 接続部
22e フラットケーブル取付部
23 フレキシブルフラットケーブル
23a 先端部
23b 基端部
23c 中間部
23d 突起部
24 可動端子部
24a 可動ケーブル
24b 可動コネクタ
25 固定端子部
25a 固定ケーブル
25b 固定コネクタ
26 ガイドベルト
26A 凹面
26B 凸面
26a 移動端部
26b 固定端部
26c 湾曲部
26d 突出片
27 保持部材
27a 中央部分
27b 前側部分(側端部分、両端部分)
27c 後側部分(側端部分、両端部分)
28 ベース部
28a 上端部
28b 下端部
128a 段差上端部
128b 曲面下端部29 係止部
30 膨出部
31 爪部
31a 前係止片
31b 後係止片
4D 長尺レール装置
40 長尺給電レール
41 長尺ケース
42a 第1スライド部
42b 第2スライド部
42c 第3スライド部
43a 第1フレキシブルフラットケーブル
43b 第2フレキシブルフラットケーブル
43c 第3フレキシブルフラットケーブル
46a 第1ガイドベルト
46b 第2ガイドベルト
46c 第3ガイドベルト
47a 第1保持部材
47b 第2保持部材
47c 第3保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14