(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174525
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】車両用開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/649 20150101AFI20231130BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20231130BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
E05F15/649
B60J5/04 Z
B60J5/06 Z
B60J5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062189
(22)【出願日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2022085343
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】和泉 健太
(72)【発明者】
【氏名】倉持 光生
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA06
2E052DB06
2E052EA02
2E052EB01
2E052EC02
2E052EC03
2E052GA10
2E052GB12
2E052GC01
2E052GD01
(57)【要約】
【課題】開閉動作のバラツキ感を抑えて高い質感を確保する。
【解決手段】車両の開口部を構成するドア開口部には、互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体71,72としての前部ドア11及び後部ドア12が設けられる。また、車両用開閉体制御装置としての制御装置は、これらの前部ドア11及び後部ドア12を開閉動作させる開閉制御部として、第1開閉制御部及び第2開閉制御部を有する。そして、制御装置は、その前部ドア11及び後部ドア12を連動して共に開動作又は共に閉動作させる場合に、互いに異なる開閉動作距離を有した前部ドア11及び後部ドア12について、その開閉動作の終了タイミングを同期させる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部に設けられて互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体を前記開閉動作させる開閉制御部を備え、
前記開閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体を連動して共に開動作又は共に閉動作させる場合に、互いに異なる開閉動作距離を有した前記第1及び第2の開閉体について、前記開閉動作の終了タイミングを同期させる車両用開閉体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体のうち、前記開閉動作距離の短い一方側について、前記開閉動作の開始タイミングを遅らせること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体のうち、前記開閉動作距離の短い一方側よりも、前記開閉動作距離の長い他方側の方が、相対的に開閉動作速度が速くなるように制御すること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記第1及び第2の開閉体は、全開位置から全閉位置に移動する全閉動作及び前記全閉位置から前記全開位置に移動する全開動作において、前記第1及び第2の開閉体が互いに異なる前記開閉動作距離を有するものであって、
前記開閉制御部は、前記連動した前記全閉動作及び前記連動した前記全開動作の少なくとも何れか一方について、前記終了タイミングを同期させること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体の少なくとも何れか一方について、前記第1及び第2の開閉体を個別に前記開閉動作させる個別制御の実行時と前記第1及び第2の開閉体を共に前記開閉動作させる連動制御の実行時とで異なる開閉動作速度で制御すること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項6】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記第1及び第2の開閉体を前記連動して前記開閉動作させる連動制御の実行時、該連動制御の実行による前記第1及び第2の開閉体の前記開閉動作距離を取得する開閉動作距離取得部と、
前記取得した前記第1及び第2の開閉体の前記開閉動作距離を比較する開閉動作距離比較部と、を備えること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに相反する方向に開閉動作する所謂両開きの構成を有した一対の開閉体を制御する車両用開閉体制御装置がある。例えば、特許文献1に記載の電動車両は、両開きの構成を有した二枚のスライドドアを用いて、その車体の側面に設けられたドア開口部を開閉する。そして、これにより、大きなドア開口を確保することで、その乗員の円滑な乗降を担保する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二枚の開閉体を連動して開閉動作させる際、目的位置に到達するまでの開閉動作距離に差がある場合には、利用者が、その連動した開閉動作にバラツキを感じる可能性がある。そして、これにより、その質感が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両用ドア装置の各態様を記載する。
態様1の車両用ドア装置は、車両の開口部に設けられて互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体を前記開閉動作させる開閉制御部を備え、前記開閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体を連動して共に開動作又は共に閉動作させる場合に、互いに異なる開閉動作距離を有した前記第1及び第2の開閉体について、前記開閉動作の終了タイミングを同期させる。
【0006】
上記構成によれば、利用者が、その第1及び第2の開閉体の連動した開閉動作にバラツキを感じ難くなる。そして、これにより、質感の向上を図ることができる。
態様2の車両用ドア装置は、態様1に記載の車両用開閉体制御装置において、前記開閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体のうち、前記開閉動作距離の短い一方側について、前記開閉動作の開始タイミングを遅らせる。
【0007】
上記構成によれば、簡素な構成にて、その第1及び第2の開閉体の連動した開閉動作の終了タイミングを同期させることができる。
態様3の車両用ドア装置は、態様1又は態様2に記載の車両用開閉体制御装置において、前記開閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体のうち、前記開閉動作距離の短い一方側よりも、前記開閉動作距離の長い他方側の方が、相対的に開閉動作速度が速くなるように制御する。
【0008】
上記構成によれば、簡素な構成にて、精度よく、その第1及び第2の開閉体の連動した開閉動作の終了タイミングを同期させることができる。更に、連動制御の実行時、その開閉動作の開始タイミングを一致させることが可能になる。そして、これにより、より一層、その連動した開閉動作にバラツキ感が生じ難くなることで、より高い質感を確保することができる。
【0009】
態様4の車両用ドア装置は、態様1~態様3の何れか一つの態様に記載の車両用開閉体制御装置において、前記第1及び第2の開閉体は、全開位置から全閉位置に移動する全閉動作及び前記全閉位置から前記全開位置に移動する全開動作において、前記第1及び第2の開閉体が互いに異なる前記開閉動作距離を有するものであって、前記開閉制御部は、前記連動した前記全閉動作及び前記連動した前記全開動作の少なくとも何れか一方について、前記終了タイミングを同期させる。
【0010】
即ち、全閉動作時及び全開動作時においては、その第1及び第2の開閉体に設定された全閉位置及び全開位置間の開閉動作距離が既知の値となっている。このため、連動制御の実行毎に特別な演算処理を行うことなく、精度よく、その終了タイミングを同期させることができる。
【0011】
態様5の車両用ドア装置は、態様1~態様4の何れか一つの態様に記載の車両用開閉体制御装置において、前記開閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体の少なくとも何れか一方について、前記第1及び第2の開閉体を個別に前記開閉動作させる個別制御の実行時と前記第1及び第2の開閉体を共に前記開閉動作させる連動制御の実行時とで異なる開閉動作速度で制御する。
【0012】
即ち、個別制御の実行時と連動制御の実行時とで異なる開閉動作速度を設定することにより、個別制御の実行時、作動時間の遅延を抑えることができる。その結果、利用者の「待たされ感」が生じ難くなる。そして、これにより、高い質感を確保することができる。
【0013】
態様6の車両用ドア装置は、態様1~態様5の何れか一つに記載の車両用開閉体制御装置において、前記第1及び第2の開閉体を前記連動して前記開閉動作させる連動制御の実行時、該連動制御の実行による前記第1及び第2の開閉体の前記開閉動作距離を取得する開閉動作距離取得部と、前記取得した前記第1及び第2の開閉体の前記開閉動作距離を比較する開閉動作距離比較部と、を備える。
【0014】
上記構成によれば、より幅広い利用状況において、その第1及び第2の開閉体の連動した開閉動作の終了タイミングを同期させることができる。そして、これにより、その連動した開閉動作のバラツキ感を低減して高い質感を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、開閉動作のバラツキ感を抑えて高い質感を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車両のドア開口部に設けられた前部ドア及び後部ドアの正面図である。
【
図2】車両のドア開口部に設けられた前部ドア及び後部ドアの正面図である。
【
図3】車両の前部ドア及び後部ドアを開閉動作させるドア装置の上面図である。
【
図4】車両の前部ドア及び後部ドアを開閉動作させるドア装置の斜視図である。
【
図5】連結長可変機構を構成する関節リンク機構の平面図である。
【
図6】連結長可変機構を構成する関節リンク機構の平面図である。
【
図7】全閉位置近傍における前部ドア及び後部ドアの開閉動作軌跡を示す説明図である。
【
図8】ドア側係合部及び車体側係合部の概略構成図である。
【
図9】車両用開閉体制御装置の制御ブロック図である。
【
図10】前部ドア及び後部ドアに設定された全閉位置及び全開位置間の開閉動作距離の相違、及びチェック位置を示す説明図である。
【
図11】第1の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御について説明する図である。
【
図12】第1の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御について処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】第1の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御の態様を示すタイムチャートである。
【
図14】第2の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御について説明する図である。
【
図15】第2の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御の態様を示すグラフである。
【
図16】第2の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御について処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】第3の実施形態における車両用制御装置のブロック図である。
【
図18】第3の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御について説明する図である。
【
図19】第3の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御について処理手順を示すフローチャートである。
【
図20】第4の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御について説明する図である。
【
図21】第4の実施形態において連動制御時に実行される終了タイミングの同期制御について処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、車両用開閉体制御装置に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1~
図4に示すように、本実施形態の車両1は、車体2の側面2sに設けられたドア開口部3を有している。そして、本実施形態の車両1は、このドア開口部3に設けられた前部ドア11及び後部ドア12を備えている。
【0018】
具体的には、本実施形態の車両1において、ドア開口部3は、このドア開口部3を、その車両前後方向(各図中、左右方向)に沿った開口幅方向の前方側と後方側とを隔てる柱構造を有しない所謂ピラーレス構造を有している。そして、前部ドア11及び後部ドア12は、このドア開口部3の開口幅方向、その前方開口部3F及び後方開口部3Rとなる位置に並んで設けられている。
【0019】
また、本実施形態の車両1において、これらの前部ドア11及び後部ドア12は、それぞれ、独立に設けられたリンク機構13,14を介して車体2に支持されている。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、これら各リンク機構13,14の動作に基づいて、ドア開口部3に設けられた前部ドア11及び後部ドア12を互いに相反する方向に独立して開閉動作させることのできる車両用ドア装置20が形成されている。
【0020】
(リンク機構)
本実施形態の車両用ドア装置20において、各リンク機構13,14は、それぞれ、互いに独立した第1及び第2のリンクアーム21,22を備えている。更に、これらの第1及び第2のリンクアーム21,22は、それぞれ、車体2に対して回動可能に連結されるとともに、その対応する前部ドア11及び後部ドア12に対して回動可能に連結されている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20においては、これにより、これらの各リンク機構13,14が、それぞれ、互いに独立した4節リンク機構としての構成を有するものとなっている。
【0021】
具体的には、前部ドア11を前方開口部3Fに支持するリンク機構13において、第1及び第2のリンクアーム21,22は、それぞれ、ドア開口部3の前縁部3f近傍において、その車体2に対して回動可能に連結された第1の回動連結点X1を有している。また、これら第1及び第2のリンクアーム21,22は、それぞれ、車両1のドアとしての前部ドア11に対して回動可能に連結された第2の回動連結点X2を有している。更に、後部ドア12を後方開口部3Rに支持するリンク機構14において、第1及び第2のリンクアーム21,22は、それぞれ、ドア開口部3の後縁部3r近傍において、その車体2に対して回動可能に連結された第1の回動連結点X1を有している。そして、これら第1及び第2のリンクアーム21,22は、それぞれ、車両1のドアとしての後部ドア12に対して回動可能に連結された第2の回動連結点X2を有している。
【0022】
また、これらの各リンク機構13,14において、各第1のリンクアーム21は、それぞれ、その対となる各第2のリンクアーム22の上方に配置されている。具体的には、各第1のリンクアーム21は、それぞれ、その前部ドア11及び後部ドア12が形成する車両1の窓部23の下方、所謂ベルトライン付近となる高さに配置されている。そして、各第2のリンクアーム22は、それぞれ、その前部ドア11及び後部ドア12の下端部11b,12b近傍の高さに配置されている。
【0023】
即ち、本実施形態の車両用ドア装置20においては、第1のリンクアーム21の方が、第2のリンクアーム22よりも、その前部ドア11及び後部ドア12の重心に近い位置に第2の回動連結点X2を有している。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、各リンク機構13,14の何れにおいても、第1のリンクアーム21の方が、その第2のリンクアーム22よりも、より大きなドア荷重を支える構成となっている。
【0024】
具体的には、本実施形態の車両用ドア装置20において、メインリンク25としての位置付けを有する第1のリンクアーム21は、それぞれ、並行する二本の軸状部材を連結することにより形成されている。これに対し、サブリンク26としての位置付けを有する各第2のリンクアーム22は、一本の軸状部材を用いて形成されている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その第1のリンクアーム21に高い支持剛性を付与する構成となっている。
【0025】
さらに詳述すると、
図3に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20において、前部ドア11を支持するリンク機構13は、開動作時、第1及び第2のリンクアーム21,22が、それぞれ、第1の回動連結点X1周りに、
図3中、時計回り方向に回動する。また、本実施形態の車両用ドア装置20は、前部ドア11の閉動作時、そのリンク機構13を形成する第1及び第2のリンクアーム21,22が、それぞれ、第1の回動連結点X1周りに、
図3中、反時計回り方向に回動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、このリンク機構13を介してドア開口部3の前方開口部3Fに支持された前部ドア11が、車両前方側に開動作し、及び車両後方側に閉動作する構成になっている。
【0026】
これに対し、後部ドア12を支持するリンク機構14は、その開動作時、第1及び第2のリンクアーム21,22が、それぞれ、第1の回動連結点X1周りに、
図3中、反時計回り方向に回動する。更に、本実施形態の車両用ドア装置20は、後部ドア12の閉動作時、そのリンク機構14を形成する第1及び第2のリンクアーム21,22が、それぞれ、第1の回動連結点X1周りに、
図3中、時計回り方向に回動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、このリンク機構13を介してドア開口部3の後方開口部3Rに支持された後部ドア12が、車両後方側に開動作し、及び車両前方側に閉動作する構成になっている。
【0027】
即ち、本実施形態の車両用ドア装置20においては、リンク機構13の動作に基づいて、円弧状軌跡Rgを描くように、その前部ドア11の開閉動作軌跡R1が規定される。そして、後部ドア12の開閉動作軌跡R2についても同様に、そのリンク機構14の動作に基づいて、円弧状軌跡Rgを描くように規定される。
【0028】
つまり、本実施形態の車両用ドア装置20は、各リンク機構13,14に支持された前部ドア11及び後部ドア12が、それぞれ全閉位置P0に近づくことで、その第1及び第2のリンクアーム21,22が車両前後方向に延在する状態となる。そして、これにより、これらの前部ドア11及び後部ドア12は、それぞれ、その車幅方向に向かう移動成分が大きくなる。
【0029】
また、各リンク機構13,14を形成する第1及び第2のリンクアーム21,22が車幅方向に延在する状態となる中間の開閉動作位置においては、それぞれ、その車両前後方向に向かう前部ドア11及び後部ドア12の移動成分が大きくなる。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、車両1の前部ドア11及び後部ドア12の開閉動作時、その車幅方向の変位量を抑えることで、障害物との干渉を回避して、より大きなドア開口量を確保することのできる構成となっている。
【0030】
(連結長可変機構)
また、
図4~
図6に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、後部ドア12を支持するリンク機構14において、その第2のリンクアーム22に設けられた連結長可変機構30を備えている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20においては、この連結長可変機構30の動作に基づいて、リンク機構14を形成する第2のリンクアーム22について、その第1及び第2の回動連結点X1,X2間の連結長Lを変更することが可能となっている。
【0031】
詳述すると、
図5及び
図6に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20において、リンク機構14側の第2のリンクアーム22は、車体側リンク31及びドア側リンク32を備えて構成されている。即ち、車体側リンク31は、車体2に対する第1の回動連結点X1を有している。また、ドア側リンク32は、車両1の後部ドア12に対する第2の回動連結点X2を有している。更に、リンク機構14側の第2のリンクアーム22は、これらの車体側リンク31とドア側リンク32とを回動可能に連結した構成を有している。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより形成される関節リンク機構40が、その連結長可変機構30として機能する構成になっている。
【0032】
具体的には、本実施形態のドア側リンク32は、車体側リンク31との比較において、その軸方向長さの短い所謂ミニアームとしての構成を有している。また、車体側リンク31は、その長手方向の一端側に、車体2に対する車体側連結部41を有している。更に、ドア側リンク32もまた、その長手方向の一端側に、後部ドア12に対するドア側連結部42を有している。そして、これらの車体側リンク31及びドア側リンク32は、それぞれ、長手方向の他端側に、その互いに連結される中間連結部43,44を有している。
【0033】
即ち、本実施形態の車両用ドア装置20においては、これらの中間連結部43,44が、その後部ドア12を支持するリンク機構14側の第2のリンクアーム22に設けられた関節リンク機構40の中間連結点X3を形成する。また、第2のリンクアーム22は、この中間連結点X3を頂点として、その車体側リンク31及びドア側リンク32が三角形を形成する。そして、これにより、これらの車体側リンク31及びドア側リンク32が相対回動することで、上記三角形の底辺となる第1及び第2の回動連結点X1,X2を結ぶ直線の長さ、つまりは、その連結長Lが変化する構成となっている。
【0034】
尚、本実施形態の車両用ドア装置20において、この連結長可変機構30を構成する関節リンク機構40には、図示しない付勢部材によって、その車体側リンク31及びドア側リンク32を中間連結点X3周りに相対回動させる付勢力が付与されている。つまり、本実施形態の連結長可変機構30は、この連結長可変機構30が設けられたリンク機構14側の第2のリンクアーム22による後部ドア12の連結長Lを短縮する方向に付勢されている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、以下に詳述する後部ドア12が全閉位置P0近傍にある場合以外については、この第2のリンクアーム22による連結長Lが短縮された状態で、その後部ドア12が開閉動作する構成になっている。
【0035】
(全閉位置近傍の開閉動作軌跡)
図4~
図7に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20においては、この後部ドア12を支持するリンク機構14側の第2のリンクアーム22に設けられた連結長可変機構30の動作に基づいて、その後部ドア12の開閉動作軌跡R2が変化する。具体的には、後部ドア12が全閉位置P0近傍にある場合、その後部ドア12の開閉動作軌跡R2が直線状軌跡Rsに変化する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、各リンク機構13,14の動作に基づいて、それぞれ、その独立に開閉動作する前部ドア11及び後部ドア12が、互いに干渉しないように構成されている。
【0036】
詳述すると、
図7に示すように、本実施形態の車両1においては、後部ドア12が全閉位置P0にある場合に、その前端部12fが、同じく全閉位置P0にある前部ドア11の後端部11rよりも車幅方向内側に配置される。このため、全閉位置P0近傍においても、これら前部ドア11及び後部ドア12の双方が円弧状軌跡Rgで開閉動作すると仮定した場合、その前部ドア11の前端部12fと後部ドア12の前端部12fとが互いに干渉するという問題が生ずる。
【0037】
この点を踏まえ、本実施形態の車両用ドア装置20においては、上記のように、全閉位置P0近傍に後部ドア12がある場合には、連結長可変機構30の動作に基づいて、その後部ドア12の開閉動作軌跡R2が変化する。具体的には、後部ドア12の全閉動作時には、その前端部12fが車両後方側から前方側(
図7中、右側から左側)に向かう直線状軌跡Rsを描く態様で、この後部ドア12が移動する。また、全閉位置P0からの開動作時には、同じく、その前端部12fが車両前方側から後方側(
図7中、左側から右側)に向かう直線状軌跡Rsを描く態様で、この後部ドア12が移動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、互いの開閉動作位置に依らず、これらの前部ドア11及び後部ドア12が、それぞれ、独立に開閉動作することが可能となっている。
【0038】
(ドア側係合部及び車体側係合部)
さらに詳述すると、
図8に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、後部ドア12の前端部12fに設けられたドア側係合部51を備えている。また、この車両用ドア装置20は、車両前後方向に延在するドア開口部3の開口幅方向、略中央位置に設けられた車体側係合部52を備えている。即ち、車両前方側に閉動作する後部ドア12においては、その前端部12fが、この後部ドア12の閉側端部53となる。更に、この後部ドア12が設けられたドア開口部3の後方開口部3Rにおいては、その前端部分に位置するドア開口部3の開口幅方向、略中央位置が、その閉側端部54となる。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、後部ドア12が全閉位置P0近傍にある場合に、そのドア側係合部51及び車体側係合部52が互いに係合する構成になっている。
【0039】
尚、
図1に示すように、本実施形態の車両1において、ドア側係合部51は、後部ドア12の前端部12fにおいて、その上端部12fa及び下端部12fbに設けられている。そして、車体側係合部52は、ドア開口部3の開口幅方向、略中央位置において、その上縁部3a及び下縁部3bに設けられている。
【0040】
また、
図8に示すように、本実施形態のドア側係合部51は、そのガイド係合部55として、車両1の上下方向(
図8中、紙面に直交する方向)に延びる軸状係合部56を備えている。尚、本実施形態の車両用ドア装置20において、このガイド係合部55としての軸状係合部56は、上下方向に延在する支軸周りに回転自在に軸支されたローラ57としての構成を有している。更に、車体側係合部52は、車幅方向(
図8中、上下方向)に対向する一対の側壁部58a,58bを有して後部ドア12の開閉動作方向に延在するガイド溝58を備えている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、このガイド溝58内に、ガイド係合部55及び軸状係合部56としてのローラ57が配置される状態で、これらのドア側係合部51及び車体側係合部52が互いに係合する構成になっている。
【0041】
即ち、車幅方向に対向する一対の側壁部58a,58b間に挟み込まれる状態で、車体側係合部52のガイド溝58内にドア側係合部51の軸状係合部56が配置されることにより、その車幅方向における後部ドア12の変位が規制される。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、リンク機構14を形成する第1及び第2のリンクアーム21,22が並んだ状態になりやすい全閉位置P0近傍においても、その後部ドア12を安定的に支持することが可能になっている。
【0042】
更に、本実施形態の車両用ドア装置20においては、その第2のリンクアーム22に設けられた連結長可変機構30の動作に基づいて、ドア側係合部51と車体側係合部52とが係合した状態での後部ドア12の開閉動作が許容される。具体的には、ドア側係合部51及び車体側係合部52が係合する状態で後部ドア12が開閉動作することにより、連結長可変機構30の動作に基づく連結長Lの変更を伴いつつ、ガイド溝58の延在方向に沿ってガイド係合部55としてのローラ57が相対変位する。つまり、本実施形態の車両用ドア装置20は、後部ドア12が全閉位置P0に移動する際、車体側係合部52に対してドア側係合部51が係合することにより、そのガイド溝58内にローラ57が配置された状態で後部ドア12の開閉動作が案内される。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その後部ドア12の開閉動作軌跡R2が変化する。つまりは、その後部ドア12を支持するリンク機構14の動作に基づいた円弧状軌跡Rgが、ドア開口部3の開口幅方向に沿った直線状軌跡Rsに変化する構成となっている。
【0043】
(アクチュエータ)
また、
図1~
図4に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、アクチュエータ61,62の駆動力に基づいて、車両1の前部ドア11及び後部ドア12をそれぞれ独立に開閉動作させることのできる所謂パワードア装置としての構成を有している。
【0044】
本実施形態の車両用ドア装置20において、アクチュエータ61は、前部ドア11を支持するリンク機構13に駆動力を付与することにより、その前部ドア11を開閉動作させる。そして、アクチュエータ62もまた、後部ドア12を支持するリンク機構14に駆動力を付与することにより、その後部ドア12を開閉動作させる。
【0045】
詳述すると、これらの各アクチュエータ61,62は、それぞれ、その対応する各リンク機構13,14のメインリンク25に位置付けられた第1のリンクアーム21を回転駆動する。具体的には、これらの各アクチュエータ61,62は、それぞれ、車体2に固定された状態で、その車体2に対する第1の回動連結点X1周りに第1のリンクアーム21を回転駆動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その各リンク機構13,14の動作に基づいて、これらの各リンク機構13,14に支持された前部ドア11及び後部ドア12が、それぞれ、互いに開閉動作する構成になっている。
【0046】
尚、本実施形態の車両1においては、全閉動作時、これらの各アクチュエータ61,62に駆動された前部ドア11及び後部ドア12が、それぞれ、その図示しないドアロック装置を構成するラッチ機構がハーフラッチ状態となる位置まで移動する。換言すると、本実施形態の前部ドア11及び後部ドア12は、各アクチュエータ61,62の駆動力に基づき全閉動作することにより、所謂「半ドア状態」となる位置まで移動する。更に、前部ドア11及び後部ドア12の各ドアロック装置には、それぞれ、モータを駆動源として、そのラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移行させる図示しないクローザ装置が設けられている。そして、本実施形態の前部ドア11及び後部ドア12は、それぞれ、「引き込み」或いは「閉じ込み」等と呼称されるクローザ装置の作動に基づいて、これらの前部ドア11及び後部ドア12が設けられたドア開口部3を完全に閉塞する位置に到達する。詳しくは、これらの前部ドア11及び後部ドア12が、それぞれ、その対応する前方開口部3F及び後方開口部3Rを完全に閉塞する位置に到達する構成となっている。
【0047】
(制御装置)
図9に示すように、本実施形態の車両1において、上記のようにパワードア装置として構成された車両用ドア装置20は、制御装置70によって、その作動が制御されている。即ち、この制御装置70は、車両用ドア装置20を構成する各リンク機構13,14に設けられた各アクチュエータ61,62の作動を制御することにより、その各リンク機構13,14に支持された前部ドア11及び後部ドア12を開閉動作させる。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、これらの前部ドア11及び後部ドア12を制御対象として、その開閉動作を制御する開閉体制御装置が形成されている。
【0048】
詳述すると、本実施形態の各アクチュエータ61,62は、それぞれ、独立に設けられたモータ61m,62mを駆動源とする。更に、制御装置70は、これらの各モータ61m,62mに対する駆動電力の供給を制御する。そして、本実施形態の制御装置70は、これにより、各アクチュエータ61,62の作動、即ち、これらの各アクチュエータ61,62に駆動された前部ドア11及び後部ドア12の開閉動作を、それぞれ独立に制御することが可能となっている。
【0049】
さらに詳述すると、本実施形態の制御装置70は、前部ドア11を第1の開閉体71として、その開閉動作を制御する第1開閉制御部73と、後部ドア12を第2の開閉体72として、その開閉動作を制御する第2開閉制御部74と、を備えている。また、本実施形態の制御装置70には、例えば、車室内に設けられた操作スイッチや利用者の保持する携帯機等の操作入力部75に対する操作入力信号Scrが入力される。そして、本実施形態の制御装置70は、この操作入力信号Scrに示される作動要求に基づいて、上記第1開閉制御部73及び第2開閉制御部74が、それぞれ、その対応する前部ドア11及び後部ドア12の開閉動作を制御する構成となっている。
【0050】
具体的には、本実施形態の車両1において、制御装置70には、その操作入力信号Scrとして、前部ドア11及び後部ドア12を、それぞれ、個別に開閉動作させるべき旨の作動要求が入力される。更に、制御装置70には、前部ドア11及び後部ドア12を連動して開閉動作させるべき旨の作動要求が入力される。そして、本実施形態の制御装置70は、これらの作動要求に基づいて、第1開閉制御部73及び第2開閉制御部74が、前部ドア11及び後部ドア12の個別制御を実行し、及び、これらの前部ドア11及び後部ドア12の連動制御を実行する構成となっている。
【0051】
また、本実施形態の制御装置70には、前部ドア11及び後部ドア12の開閉動作に同期したパルス信号Sp1,Sp2が入力される。尚、本実施形態の車両1においては、各アクチュエータ61,62に、それぞれ、これらの各パルス信号Sp1,Sp2を出力するパルスセンサ77,78が設けられている。更に、本実施形態の制御装置70は、これらの各パルス信号Sp1,Sp2をカウントすることにより、前部ドア11及び後部ドア12の開閉動作位置Pa,Pb及び開閉動作速度Va,Vbを検出する。そして、本実施形態の制御装置70は、これらの開閉動作位置Pa,Pb及び開閉動作速度Va,Vbに基づいて、その第1開閉制御部73及び第2開閉制御部74が、それぞれ、その対応する前部ドア11及び後部ドア12の開閉動作を制御する構成になっている。
【0052】
具体的には、本実施形態の制御装置70は、制御対象となる前部ドア11及び後部ドア12の作動について、特に制約のない通常時には、操作入力信号Scrに示される作動要求に基づいて、遅滞なく、その作動制御を開始する。また、本実施形態の制御装置70は、制御開始後、その制御対象となる前部ドア11及び後部ドア12を、開閉動作位置Pa,Pbに応じた開閉動作速度Va,Vbで作動させる。尚、本実施形態の制御装置70においては、このような開閉動作位置Pa,Pbと開閉動作速度Va,Vbとの関係、つまりは、その開閉動作位置Pa,Pbに応じた開閉動作速度Va,Vbのプロフィールが、図示しない速度制御マップに保持されている。更に、本実施形態の車両1においては、前部ドア11及び後部ドア12の開閉動作について、所要時間の短縮化が図られている。このため、本実施形態の制御装置70は、特段の制約がない場合には、前部ドア11及び後部ドア12の作動開始後、各アクチュエータ61,62の駆動性能を最大限に利用する所定速度で、その前部ドア11及び後部ドア12を開閉動作させる構成となっている。
【0053】
(連動制御)
次に、本実施形態の制御装置70が実行する前部ドア11及び後部ドア12の連動制御、詳しくは、これら第1及び第2の開閉体71,72を構成する前部ドア11及び後部ドア12の連動した開閉動作の終了タイミングの同期制御について説明する。
【0054】
尚、本実施形態の車両1において、この場合における「開閉動作の終了タイミング」は、その制御装置70が実行する各アクチュエータ61,62の作動制御を通じた前部ドア11及び後部ドア12の連動制御が終了するタイミングとなっている。つまり、前部ドア11及び後部ドア12の全閉動作時については、これらの前部ドア11及び後部ドア12が、それぞれ、クローザ装置による「閉じ込み」の実行が可能となる位置に到達したタイミングが、その「開閉動作の終了タイミング」となっている。
【0055】
図10に示すように、本実施形態の車両1においては、全開位置P1から全閉位置P0に移動する全閉動作及び全閉位置P0から全開位置P1に移動する全開動作において、その前部ドア11及び後部ドア12が互いに異なる開閉動作距離α,βを有している。具体的には、前部ドア11について設定された全閉位置P0及び全開位置P1間の開閉動作距離αよりも、後部ドア12について設定された全閉位置P0及び全開位置P1間の開閉動作距離βの方が長くなっている(α<β)。更に、本実施形態の車両用ドア装置20において、これらの前部ドア11及び後部ドア12を開閉駆動する各アクチュエータ61,62は、略等しい駆動性能を有している。このため、これらの前部ドア11及び後部ドア12を個別に全閉動作及び全開動作させた場合には、前部ドア11よりも後部ドア12の方が、その作動開始から終了までの所要時間が長くなる構成となっている。
【0056】
また、本実施形態の制御装置70は、操作入力信号Scrとして、前部ドア11及び後部ドア12を共に全開位置P1から全閉位置P0に全閉動作させるべき旨の作動要求を受け付ける。更に、制御装置70は、これらの前部ドア11及び後部ドア12を共に全閉位置P0から全開位置P1に全開動作させるべき旨の作動要求を受け付ける。そして、本実施形態の制御装置70は、このような連動制御の実行時には、これら前部ドア11及び後部ドア12について、その開閉動作の終了タイミングを同期させる構成になっている。
【0057】
詳述すると、
図11に示すように、本実施形態の制御装置70は、前部ドア11及び後部ドア12を個別に開閉動作させる個別制御の実行時、その制御対象となる前部ドア11及び後部ドア12を通常作動させる。即ち、操作入力信号Scrの入力により、遅滞なく、その個別作動要求に基づいた作動制御を開始する。一方、前部ドア11及び後部ドア12を連動して開閉動作させる上記連動制御の実行時には、その全閉位置P0及び全開位置P1間の開閉動作距離αが相対的に長い後部ドア12のみ、通常作動させる。そして、その全閉位置P0及び全開位置P1間の開閉動作距離βが相対的に短い前部ドア11については、その作動開始タイミングを遅らせる構成となっている。
【0058】
具体的には、
図10及び
図11に示すように、本実施形態の制御装置70は、全開位置P1から全閉位置P0に全閉動作させる連動制御の実行時、先行する後部ドア12が所定のチェック位置Pwcに到達するまで、全開位置P1に前部ドア11を待機させる。本実施形態の制御装置70において、このチェック位置Pwcは、後部ドア12が全閉位置P0に到達するまでの残りの開閉動作距離βxと、全開位置P1に待機する前部ドア11の開閉動作距離αとが等しくなる位置に設定されている(βx=α)。更に、本実施形態においては、前部ドア11の作動開始後、目標位置となる全閉位置P0に到達するまで、これらの前部ドア11及び後部ドア12について、その開閉動作位置Pa,Pbに応じた開閉動作速度Va,Vbのプロフィールが略等しくなっている。そして、本実施形態の制御装置70は、これにより、その作動開始タイミングを遅らせた後発の前部ドア11と、先行した後部ドア12とが、略同時に目標位置となる全閉位置P0に到達するように、これら前部ドア11及び後部ドア12の作動を制御する。
【0059】
同様に、本実施形態の制御装置70は、全閉位置P0から全開位置P1に全開動作させる連動制御の実行時、先行する後部ドア12が所定のチェック位置Pwoに到達するまで、全閉位置P0に前部ドア11を待機させる。本実施形態の制御装置70において、このチェック位置Pwoもまた、後部ドア12が全開位置P1に到達するまでの残りの開閉動作距離βxと、全閉位置P0に待機する前部ドア11の開閉動作距離αとが等しくなる位置に設定されている。更に、この場合もまた、前部ドア11の作動開始後、目標位置となる全開位置P1に到達するまで、これらの前部ドア11及び後部ドア12について、その開閉動作位置Pa,Pbに応じた開閉動作速度Va,Vbのプロフィールが略等しくなっている。そして、本実施形態の制御装置70は、これにより、後発の前部ドア11と、先行した後部ドア12とが、略同時に全開位置P1に到達するように、これら前部ドア11及び後部ドア12の作動を制御する構成になっている。
【0060】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
即ち、
図12及び
図13に示すように、本実施形態の制御装置70は、連動制御の実行時(ステップ101:YES)、先ず、相対的に長い開閉動作距離βを有した後部ドア12についてのみ、その作動制御を開始する(ステップ102)。そして、相対的に短い開閉動作距離αを有した後部ドア12については、作動制御を開始することなく、その作動開始位置に待機させる。
【0061】
次に、制御装置70は、この先行した後部ドア12が、所定のチェック位置に到達したか否かを判定する(ステップ103)。そして、制御装置70は、その後部ドア12が、所定のチェック位置に到達した場合(ステップ103:YES)に、前部ドア11の待機を解除して、この前部ドア11の作動制御を開始する(ステップ104)。
【0062】
本実施形態の制御装置70においては、このとき、後発となる前部ドア11の開閉動作距離αと先行する後部ドア12の残る開閉動作距離βxとが等しいことで、これらの前部ドア11及び後部ドア12が、略同時に、その目標位置に到達する。そして、これにより、同期したタイミングで、これら前部ドア11及び後部ドア12の開閉動作が終了する。
【0063】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両1の開口部を構成するドア開口部3には、互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体71,72としての前部ドア11及び後部ドア12が設けられる。また、車両用開閉体制御装置としての制御装置70は、これらの前部ドア11及び後部ドア12を開閉動作させる開閉制御部として、第1開閉制御部73及び第2開閉制御部74を有する。そして、制御装置70は、その前部ドア11及び後部ドア12を連動して共に開動作又は共に閉動作させる場合に、互いに異なる開閉動作距離α,βを有した前部ドア11及び後部ドア12について、その開閉動作の終了タイミングを同期させる。
【0064】
上記構成によれば、利用者が、その前部ドア11及び後部ドア12の連動した開閉動作にバラツキを感じ難くなる。そして、これにより、質感の向上を図ることができる。
(2)前部ドア11及び後部ドア12は、互いに異なる全閉位置P0及び全開位置P1間の開閉動作距離α,βを有する。そして、制御装置70は、その連動した全閉動作時及び連動した全開動作時、相対的に短い開閉動作距離αを有した前部ドア11について、その開閉動作の開始タイミングを遅らせる。
【0065】
上記構成によれば、簡素な構成にて、その前部ドア11及び後部ドア12の連動した開閉動作の終了タイミングを同期させることができる。特に、全閉動作時及び全開動作時においては、その前部ドア11及び後部ドア12に設定された全閉位置P0及び全開位置P1間の開閉動作距離α,βが既知の値となっている。このため、連動制御の実行毎に特別な演算処理を行うことなく、精度よく、その終了タイミングを同期させることができる。
【0066】
[第2の実施形態]
以下、車両用開閉体制御装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0067】
本実施形態では、上記第1の実施形態との比較において、前部ドア11及び後部ドア12を連動して開閉動作させる連動制御の実行時、これらの前部ドア11及び後部ドア12について、その開閉動作の終了タイミングを同期させる同期制御の態様が相違する。
【0068】
詳述すると、
図14に示すように、本実施形態においてもまた、このような終了タイミングの同期制御は、その連動した全開位置P1からの全閉動作、及び、その連動した全閉位置P0からの全開動作に適用される。更に、本実施形態においては、このとき、制御装置70が、後部ドア12との比較において、その全閉位置P0及び全開位置P1間の開閉動作距離αが相対的に短い前部ドア11のみを、個別制御の実行時よりも低速で作動させる(
図10参照)。つまりは、通常作動する後部ドア12の開閉動作速度Vbの方が、低速作動する前部ドア11の開閉動作速度Vaよりも、相対的に速くなるように制御する(Vb>Va)。そして、これにより、全閉位置P0及び全開位置P1間の開閉動作距離αが相対的に短い前部ドア11と、その開閉動作距離βが相対的に長い後部ドア12とが、略同時に、その目標位置となる全閉位置P0又は全開位置P1に到達するように構成されている。
【0069】
具体的には、
図15に示すように、本実施形態において、制御装置70は、前部ドア11について、その個別制御時に用いる通常マップM1と、連動制御時に用いる低速マップM2と、を有している。低速マップM2には、通常マップM1よりも低い開閉動作速度Vaのプロフィール、つまりは開閉動作位置Paに応じた開閉動作速度Vaが規定されている。そして、本実施形態においては、これにより、連動制御時、前部ドア11が、個別制御時の開閉動作速度V1よりも遅い開閉動作速度V2で、その作動を開始する構成となっている。
【0070】
即ち、
図16に示すように、制御装置70は、連動制御の実行時(ステップ201:YES)には、前部ドア11について、図示しない記憶領域から、その低速マップM2を読み出す(ステップ202)。尚、後部ドア12については、個別制御時と同じく、通常マップM1に相当した開閉動作速度Vbの制御マップ(図示略)を読み出す。そして、制御装置70は、これらの前部ドア11及び後部ドア12について、同時に、その連動した作動制御を開始する(ステップ203)。
【0071】
尚、これら前部ドア11及び後部ドア12の作動制御に用いられる制御マップには、目標位置近傍において、その開閉動作速度Va,Vbを低下させる所謂スローストップ制御を実行するための減速プロフィールが規定されている(
図15参照)。そして、本実施形態では、これを踏まえた上で、相対的に短い開閉動作距離αを有した前部ドア11と相対的に長い開閉動作距離βを有した後部ドア12とが、略同時に目標位置に到達するように、その低速マップM2が形成されている。
【0072】
以上、本実施形態の構成においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、連動制御の実行時、前部ドア11及び後部ドア12が同時に作動開始することで、より一層、その連動した開閉動作にバラツキ感が生じ難くなる。そして、これにより、より高い質感を確保することができる。
【0073】
また、短い開閉動作距離αを有した前部ドア11について、個別制御時の通常マップM1と、連動制御時の低速マップM2と、を切り替えることにより、連動制御時、より長い開閉動作距離βを有する後部ドア12の方が、相対的に速く作動するように制御する。このような構成を採用することで、前部ドア11を個別制御する際、作動時間の遅延を抑えることができる。その結果、利用者の「待たされ感」が生じ難くなる。そして、これにより、より高い質感を確保することができる。
【0074】
[第3の実施形態]
以下、車両用開閉体制御装置に関する第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0075】
図17及び
図18に示すように、本実施形態の制御装置70Cは、上記第1の実施形態と同様の第1開閉制御部73及び第2開閉制御部74に加え、開閉動作距離取得部81及び開閉動作距離比較部82を備えている。開閉動作距離取得部81は、第1及び第2の開閉体71,72を連動して共に閉動作又は共に開動作させる連動制御の実行時、この連動制御の実行による第1の開閉体71の開閉動作距離γ1及び第2の開閉体72の開閉動作距離γ2を、それぞれ取得する。また、開閉動作距離比較部82は、その取得した第1の開閉体71の開閉動作距離γ1と第2の開閉体72の開閉動作距離γ2とを比較する。更に、本実施形態の制御装置70Cにおいては、これらの第1及び第2の開閉体71,72のうち、開閉動作距離γの長い方が先行開閉体Daに位置付けられ、その開閉動作距離γの短い方が後発開閉体Dbに位置付けられる。そして、本実施形態の制御装置70Cは、後発開閉体Dbの作動開始タイミングを遅らせることにより、これらの第1及び第2の開閉体71,72について、その連動した開閉動作の終了タイミングを同期させる構成となっている。
【0076】
即ち、本実施形態の制御装置70Cにおいては、このような終了タイミングの同期制御が、全開位置P1からの全閉動作及び全閉位置P0からの全開動作以外の連動制御についても適用される。例えば、第1及び第2の開閉体71,72の何れか一方又は両方が、半開状態、つまりは、全閉位置P0と全開位置P1との間に停止した状態から、これらの第1及び第2の開閉体71,72が連動して全閉動作又は全開動作する場合等にも適用される。そして、本実施形態の制御装置70Cは、これにより、より効果的に、その開閉動作のバラツキ感を低減することが可能となっている。
【0077】
詳述すると、
図19に示すように、本実施形態の制御装置70Cは、連動制御の実行時(ステップ301:YES)、第1の開閉体71について、その開閉動作距離γ1を取得する(ステップ302)。また、制御装置70Cは、第2の開閉体72について、その開閉動作距離γ2を取得する(ステップ303)。更に、制御装置70Cは、これら第1及び第2の開閉体71,72の開閉動作距離γ1,γ2を比較する(ステップ304)。そして、本実施形態の制御装置70Cは、このステップ303における開閉動作距離γ1,γ2の比較に基づいて、第1及び第2の開閉体71,72について、その先行開閉体Da及び後発開閉体Dbを決定する(ステップ305)。
【0078】
次に、本実施形態の制御装置70Cは、上記ステップ303における開閉動作距離γ1,γ2の比較に基づいて、先行開閉体Daのチェック位置Pwを決定する(ステップ306)。本実施形態の制御装置70Cにおいて、このチェック位置Pwは、その先行開閉体Daが目的位置に到達するまでの残りの開閉動作距離γa´と、作動開始位置に待機する後発開閉体Dbの開閉動作距離γbとが等しい位置に設定される(Pw:γa´=γb)。次に、本実施形態の制御装置70Cは、相対的に短い開閉動作距離γを有した後発開閉体Dbを作動開始位置に待機させた状態で、相対的に長い開閉動作距離γを有した先行開閉体Daのみ、その作動制御を開始する(ステップ307)。更に、制御装置70Cは、この先行開閉体Daが、上記チェック位置Pwに到達したか否かを判定する(ステップ308)。そして、本実施形態の制御装置70Cは、その先行開閉体Daが、上記チェック位置Pwに到達した場合(ステップ308:YES)に、後発開閉体Dbの待機を解除して、この後発開閉体Dbの作動制御を開始する(ステップ309)。
【0079】
即ち、本実施形態の制御装置70Cにおいてもまた、このとき、この後発開閉体Dbの開閉動作距離γbと先行開閉体Daの残る開閉動作距離γa´とが等しいことで、これらの先行開閉体Da及び後発開閉体Dbが、略同時に、その目標位置に到達する。そして、本実施形態の制御装置70Cは、これにより、同期したタイミングで、その第1及び第2の開閉体71,72の開閉動作が終了する構成となっている。
【0080】
以上、本実施形態の構成においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、より幅広い利用状況において、その第1及び第2の開閉体71,72の連動した開閉動作の終了タイミングを同期させることができる。そして、これにより、その開閉動作のバラツキ感を低減して高い質感を確保することができる。
【0081】
[第4の実施形態]
以下、車両用開閉体制御装置に関する第4の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記各実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0082】
本実施形態では、上記第3の実施形態との比較において、前部ドア11及び後部ドア12を連動して開閉動作させる連動制御の実行時、これらの前部ドア11及び後部ドア12について、その開閉動作の終了タイミングを同期させる同期制御の態様が相違する。
【0083】
詳述すると、
図20及び
図21に示すように、本実施形態においてもまた、制御装置70Cは、連動制御の実行時(ステップ401:YES)、第1及び第2の開閉体71,72の開閉動作距離γ1,γ2を取得する(ステップ402及びステップ403)。そして、その第1及び第2の開閉体71,72の開閉動作距離γ1,γ2を比較する(ステップ404)。
【0084】
また、本実施形態において、制御装置70Cは、これらの第1及び第2の開閉体71,72のうち、開閉動作距離γの短い方を低速開閉体Dsとし、その開閉動作距離γの長い方を高速開閉体Dfとする(ステップ405)。そして、これにより、第1及び第2の開閉体71,72のうち、開閉動作距離γの短い一方側よりも、その開閉動作距離γの長い他方側の方が、相対的に高速作動するように制御することで、その開閉動作の終了タイミングを同期させる。
【0085】
具体的には、本実施形態において、制御装置70Cは、上記ステップ303における開閉動作距離γ1,γ2の比較に基づいて、その低速開閉体Dsの開閉動作速度Vs及び高速開閉体Dfの開閉動作速度Vfを決定する(ステップ406)。即ち、高速開閉体Dfには、低速開閉体Dsの開閉動作速度Vsよりも速い開閉動作速度Vfが設定される(Vs<Vf)。そして、制御装置70Cは、このステップ406において決定した開閉動作速度Vs,Vfで、同時に、これら低速開閉体Ds及び高速開閉体Dfの連動した作動制御を同時に開始する(ステップ407)。
【0086】
尚、本実施形態においては、上記ステップ406で決定した開閉動作速度Vs,Vfに基づいて、例えば、スローストップ制御等、その低速開閉体Ds及び高速開閉体Dfの速度制御プロフィールが規定される。そして、制御装置70Cは、この速度制御プロフィールを踏まえた上で、互いに異なる開閉動作距離γを有した低速開閉体Ds及び高速開閉体Dfが、略同時に目標位置に到達するように、その開閉動作速度Vs,Vfを決定する構成になっている。
【0087】
以上、本実施形態の構成においても、上記第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、連動制御の実行時、第1及び第2の開閉体71,72が同時に作動開始することで、より一層、その連動した開閉動作にバラツキ感が生じ難いという利点がある。
【0088】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0089】
・上記各実施形態では、連動制御の実行時、終了タイミングの同期制御によって、第1及び第2の開閉体71,72が、略同時に、その目標位置に到達するように構成されることとした。しかし、これに限らず、終了タイミングの同期については、必ずしも完全同時でなくともよい。ある程度のズレがあってもよい。同期制御を行わない場合と比較して、その第1及び第2の開閉体71,72の連動した開閉動作の終了タイミングが近くなる構成であればよい。
【0090】
・更に、例えば、第1及び第2の開閉体71,72の連動した全閉動作時については、クローザ装置の作動による「閉じ込み」を考慮して、その開閉動作の終了タイミングを同期させる構成としてもよい。例えば、各アクチュエータ61,62の作動による開閉動作の終了タイミングを第1の終了タイミングとするとともに、クローザ装置の作動による「閉じ込み」の終了タイミングを第2の終了タイミングとする。そして、第1及び第2の開閉体71,72の連動した全閉動作時、その第2の終了タイミングが略同時となるように同期制御を実行する構成としてもよい。
【0091】
・上記第3の実施形態では、第1及び第2の開閉体71,72のうち、開閉動作距離γの長い先行開閉体Daにチェック位置Pwを設定して、その開閉動作距離γの短い後発開閉体Dbを待機させる。そして、その先行開閉体Daがチェック位置Pwに到達するまで後発開閉体Dbの作動開始タイミングを遅らせることにより、これらの第1及び第2の開閉体71,72について、その開閉動作の終了タイミングを同期させることとした。
【0092】
しかし、これに限らず、後発開閉体Dbに待機時間を設定して待機させる。そして、その待機時間の経過により、その後発開閉体Dbの待機を解除する構成としてもよい。第1の実施形態についてもまた、同様の構成を適用してもよい。このような構成を採用しても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
・上記第1及び第2の実施形態では、全開位置P1からの連動した全閉動作及び全閉位置P0からの連動した全開動作において、その終了タイミングの同期制御を実行することとした。しかし、これに限らず、連動した全閉動作についてのみ、その終了タイミングの同期制御を実行する構成としてもよい。そして、連動した全開動作についてのみ、その終了タイミングの同期制御を実行する構成としてもよい。
【0094】
・また、上記第3及び第4の実施形態では、第1及び第2の開閉体71,72の何れか一方又は両方が、全閉位置P0と全開位置P1との間に停止した状態から、これらが連動して全閉動作又は全開動作する場合について、その同期制御の適用を例示した。しかし、これに限らず、全閉動作及び全開動作以外の連動制御について、その終了タイミングの同期制御を適用してもよい。即ち、連動制御における第1及び第2の開閉体71,72の目標位置は任意である。そして、この場合についてもまた、第1及び第2の開閉体71,72を連動して共に閉動作させる場合、又は共に開動作させる場合の何れか一方についてのみ、その終了タイミングの同期制御を適用する構成であってもよい。
【0095】
・上記各実施形態では、所謂ピラーレス構造を有する車両1のドア開口部3に設けられた前部ドア11及び後部ドア12を第1及び第2の開閉体71,72とする。そして、制御装置70は、その開閉制御部として、第1の開閉体71の作動を制御する第1開閉制御部73と、第2の開閉体72の作動を制御する第2開閉制御部74と、を備えることとした。しかし、これに限らず、これらの第1開閉制御部73及び第2開閉制御部74の機能を一体化した開閉制御部を備える構成に具体化してもよい。
【0096】
・上記第2の実施形態では、連動制御時、相対的に短い開閉動作距離αを有した前部ドア11の開閉動作速度Vaについて、個別制御時の開閉動作速度V1よりも遅い開閉動作速度V2で、その作動を制御することとした。しかし、これに限らず、連動制御時、相対的に長い開閉動作距離βを有した後部ドア12について、その開閉動作速度Vbを速くする構成としてもよい。
【0097】
・上記第1及び第3の実施形態では、第1及び第2の開閉体71,72のうち、開閉動作距離の短い一方側について、その開閉動作の開始タイミングを遅らせる。そして、上記第2及び第4の実施形態では、第1及び第2の開閉体71,72のうち、開閉動作距離の短い一方側よりも、開閉動作距離の長い他方側の方が、相対的に開閉動作速度が速くなるように制御することとした。しかし、これに限らず、開始タイミングの遅延及び相対速度の変更を組み合わせて、その開閉動作の終了タイミングを同期させる構成に具体化してもよい。
【0098】
・上記各実施形態では、前部ドア11及び後部ドア12を開閉駆動する各アクチュエータ61,62は、略等しい駆動性能を有することとしたが、これらの各アクチュエータ61,62が異なる駆動性能を有する構成に適用してもよい。
【0099】
・また、上記各実施形態では、前部ドア11及び後部ドア12は、リンク機構13,14を介してドア開口部3に支持されることとした。しかし、これに限らず、これらの前部ドア11及び後部ドア12が、互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体71,72として機能する、即ち所謂両開きドアとしての構成を有するものであれば、その支持構造については任意に変更してもよい。例えば、その前部ドア11及び後部ドア12が、両開きのスライドドアとしての構成を有するものに適用してもよい。更に、所謂観音開き型のスイングドアとしての構成を有するものに適用してもよい。そして、これらの前部ドア11及び後部ドア12が、互いに異なる支持構造を有するものに適用してもよい。
【0100】
・更に、第1及び第2の開閉体71,72は、必ずしも車両1の前部ドア11及び後部ドア12でなくともよい。例えば、車両1の後方に開口するリヤハッチに設けられた第1及び第2の開閉体71,72に適用してもよい。そして、車両1に設けられたドア開口部3以外の開口部を、その第1及び第2の開閉体71,72が開閉する構成に適用してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…車両
3…ドア開口部
11…前部ドア
12…後部ドア
71…第1の開閉体
72…第2の開閉体
73…第1開閉制御部
74…第2開閉制御部
α,β…開閉動作距離