(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174538
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 16/06 20060101AFI20231130BHJP
B41J 15/04 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
B65H16/06
B41J15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070427
(22)【出願日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2022086748
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 巌
【テーマコード(参考)】
2C060
3F052
【Fターム(参考)】
2C060BA02
2C060BC03
2C060BC12
3F052AA01
3F052AB05
3F052BA02
3F052BA05
3F052BA11
3F052BA19
3F052BA20
(57)【要約】
【課題】ロールシートの幅方向の大きさが異なる場合でも、画像形成装置にセットしたロールシートの幅方向の中央の位置が変わらないように、ロールシートを保持することが出来る画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置は、ロールシートホルダでロール状のシートを保持する。ロールシートホルダは、保持するロール状のシートの回転軸となるコアと、コアに取り付けられコアの長手方向に沿って移動可能な第1のフランジと、第1のフランジに連動し前記コアの長手方向に沿って第1のフランジの移動に対して逆方向に等距離だけ移動するスライダと、スライダに対して着脱可能な第2のフランジと、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれた連続するシートに画像を形成して記録を行う画像形成装置であって、
前記ロール状に巻かれたシートを保持するロールシートホルダと、
前記ロール状に巻かれた状態から引き出したシートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送する前記連続するシートに画像を形成して記録を行う記録手段と、
を有し、
前記ロールシートホルダは、
保持する前記ロール状のシートの回転軸となるコアと、
前記コアに取り付けられ前記コアの長手方向に沿って移動可能な第1のフランジと、
前記第1のフランジに連動し、前記コアの長手方向に沿って、前記第1のフランジの移動に対して逆方向に等距離だけ移動するスライダと、
前記スライダに対して着脱可能な第2のフランジと、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記スライダはクラッチを備え、前記クラッチは、前記スライダに前記第2のフランジが装着されている状態において、前記スライダの前記第1のフランジと接近する方向への移動を制限せず、前記スライダの前記第1のフランジと離間する方向への移動を制限することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クラッチは、前記コアと前記スライダ内の部材との間の摩擦が大きくなることで、前記スライダの前記第1のフランジと離間する方向への移動を制限することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記コアは、前記部材に設けられた穴を通るように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記コアと、前記部材の穴壁との間にはクリアランスが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記クラッチは、前記第2のフランジが前記スライダに対して装着されると、前記スライダの前記第1のフランジと離間する方向への移動を制限することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ロールシートホルダにより保持された前記ロール状に巻かれたシートの中央の位置は、前記搬送手段の搬送方向に対する幅が第1サイズの場合と、前記第1サイズと異なる第2サイズの場合とで変わらないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記記録手段は、前記連続するシートにラベル画像を連続的に形成して記録を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を形成して記録を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空の紙管にシートがロール状に巻き取られたロールシートを画像形成装置の内部に保持し、ロールシートから引き出しながら搬送したシートに対して記録ヘッドで記録を行う画像形成装置がある。ロールシートは、紙管の中心を貫通するスプール軸と、ロールシートの幅方向の側面を押さえるフランジとで、画像形成装置内部に保持される。
図20は従来の画像形成装置で用いられるスプール軸とフランジである。一対のフランジのうち、片方はスプール軸901と固定されており(固定側フランジ902)、もう片方はスプール軸901に着脱可能とされている(自由側フランジ903)。ロールシートを記録媒体として使用する従来の画像形成装置では、シートの幅方向の片側を記録やシート搬送の位置基準としている。そのため、ロールシートの基準側の位置を規制する固定側フランジ902は、スプール軸901に固定されている。ロールシートを画像形成装置にセットする場合は、中空となっている紙管の中心部にスプール軸901を貫通させて、ロールシートが固定側フランジ902に突き当たるまで移動させる。その後、自由側フランジ903をスプール軸901にセットし、ロールシートに突き当たるまで移動させる。自由側フランジ903は、ロールシートに突き当てたあと、ねじなどによってスプール軸901に固定される。固定側フランジ902と自由側フランジ903には、紙管の内部に嵌まる爪904が設けられており、スプール軸901と紙管が同軸の位置関係となるように、ロールシートを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、画像形成装置で記録を行った後のシートに、画像形成装置とは異なる加工機による後加工を行うニーズが増してきた。後加工を行う加工機では、加工の基準位置をシートの幅方向における中央とするものがある。そのため、画像形成装置によるシートへの記録と加工機によるシートの加工を連続的に行うためには、画像形成装置における記録の基準位置を、シートの幅方向における中央とすることが好ましい。しかし、従来のスプール軸とフランジの構成では、画像形成装置のシートに対する画像形成の位置の基準を、シートの幅方向における中央とすることが出来ないという課題があった。本発明は、このような従来の技術に存在する課題に鑑みてなされたものであり、ロールシートの幅方向の大きさが異なる場合でも、画像形成装置にセットしたロールシートの幅方向の中央の位置が変わらないように、ロールシートを保持することが出来る画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明に係る一実施形態は、ロール状に巻かれた連続するシートに画像を形成して記録を行う画像形成装置であって、前記ロール状に巻かれたシートを保持するロールシートホルダと、前記ロール状に巻かれた状態から引き出したシートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送する前記連続するシートに画像を形成して記録を行う記録手段と、を有し、前記ロールシートホルダは、保持する前記ロール状のシートの回転軸となるコアと前記コアに取り付けられ前記コアの長手方向に沿って移動可能な第1のフランジと 前記第1のフランジに連動し、前記コアの長手方向に沿って、前記第1のフランジの移動に対して逆方向に等距離だけ移動するスライダと、前記スライダに対して着脱可能な第2のフランジと、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ロールシートの幅方向の大きさが異なる場合でも、ロールシートの幅方向の中央の位置が変わらないように、ロールシートを保持することが出来る画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【
図5】ロールシートをセットした状態のロールシートホルダの図である。
【
図6】ロールシートをセットしていない状態のロールシートホルダの図である。
【
図7】ロールシートホルダの内部構成を示す図である。
【
図8】ロールシートホルダにロールシートをセットする手順を示す図である。
【
図9】ロールシートホルダにロールシートをセットする手順を示す図である。
【
図10】ロールシートホルダにロールシートをセットする手順を示す図である。
【
図11】ロールシートホルダにロールシートをセットする手順を示す図である。
【
図12】ロールシートホルダへのロールシートのセットが完了した状態示す図である。
【
図13】重量の軽いロールシートをセットする手順を示す図である。
【
図14】重量の軽いロールシートをセットする手順を示す図である。
【
図15】重量の軽いロールシートのロールシートホルダへのセットが完了した状態を示す図である。
【
図16】幅の狭いロールシートをセットする手順を示す図である。
【
図17】幅の狭いロールシートのロールシートホルダへのセットが完了した状態を示す図である。
【
図19】クラッチ機構の動作を説明するための図である。
【
図20】従来のロールシートホルダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本実施形態の画像形成装置を示した斜視図である。画像形成装置100は、LCD及びタッチパネルからなる操作部102と、記録媒体がロール状に巻き取られたロールシートを装填する給送部103と、を備えている。画像形成装置100は、ロールシートを搬送手段によって搬送しつつ、そのロールシートに付されたラベルに合わせて、ホストコンピュータ104から受信した画像データを印刷する。画像形成装置100とホストコンピュータ104とは、プリンタケーブル105によってつながれている。
【0010】
図2は、本実施形態の画像形成装置100の模式断面図である。画像形成装置100は、給送部103で保持している記録媒体としてのロールシート200を、搬送ユニット201で搬送するよう構成されている。ロールシート200は、搬送ユニット201の搬送ローラ202と搬送ベルト207とで搬送される。搬送ユニット201の内部にはファン208が設けられ、搬送ユニット201は、ファン208によって負圧を発生させてロールシート200を搬送ベルト207に吸いつけながらロールシート200の搬送を行う。
【0011】
本実施形態の画像形成装置はインクを吐出して記録を行う画像形成手段を有するインクジェット画像形成装置であり、インクを吐出する多数のノズルを有する記録ヘッド201が搬送ベルト207の記録媒体を搬送する面と対向するように保持されている。この記録ヘッド201には不図示のインクタンクが接続されている。そして、記録に際しては搬送ユニット201によって搬送されるロールシート200に対して、画像信号に応じて記録ヘッド210からインクを吐出することにより画像を形成する。また、画像形成装置には記録ヘッド210のノズルを覆うことが可能な不図示のキャップが設けられている。キャップには不図示のポンプユニットが接続され、キャップ内を負圧とすることによりノズル内のインクを吸引することができる。吸引や吐出によりノズル内部のインクをキャップに排出することで、ノズルの目詰まりを防止することができる。
【0012】
記録ヘッド210よりもロールシート200の搬送方向上流側の位置には、ロールシート200に貼付されたラベルの有無を検出することが可能なメディアセンサ209が配置されている。ロールシート200の構成を
図4に示す。ロールシート200は連続したシートをロール状に巻き取ったものであるが、台紙701上にラベル702が等間隔に貼り付けられている。画像形成装置100は、ロールシート200を搬送し、ラベル702に記録を行う。
【0013】
<制御部>
図3は本実施形態の画像形成装置100の動作を制御する制御部の構成を示すブロック図である。画像形成装置100は制御部からの制御信号により、記録動作や後述するクリーニング動作を実行する。
【0014】
図3において、301は画像形成装置全体を制御するメインコントローラであり、データを格納する格納手段としての機能、及びデータ制御手段及び、設定データに基づいて本体の動作を変更する設定手段としての機能などを有する。メインコントローラ301はホストコンピュータ104に接続され、互いに信号の授受を行う。302はメインコントローラ301に接続され、制御プログラムなどが格納されているROMであり、それらのプログラムに従いメインコントローラ301はRAM303を作業用メモリとして使用する。304はホストコンピュータ104から送信されてきた画像データを格納するイメージバッファメモリである。305は記録ヘッド201に内蔵される発熱体(不図示)を駆動させる駆動回路であり、メインコントローラ301に接続されたドライバコントローラ306が、イメージバッファメモリ304に格納されたビットマップ形式の画像データに従ってヘッド駆動回路305を制御することで画像を記録する。307は搬送部等に設けられた搬送モータ206を駆動する駆動回路であり、メインコントローラ301によって制御される。そして、操作部102のLCDに表示する画面や、ユーザがタッチパネルを操作した場合の挙動もメインコントローラ301によって制御される。また、センサ回路309によってメディアセンサ209等の検出が行われる。
<ロールシート>
図4を用いてロールシートの構成の説明を行う。ロールシートは、一定の幅の連続シートを紙管401にロール状に巻き付けたものである。画像形成装置100は、ロールシート200を画像形成装置内に保持し、ロールシート200からシートを引き出しながら搬送する。そして、引き出したシートに記録を行う。
<ロールシートホルダ>
図5から
図7を用いて、ロールシートホルダ501の説明を行う。
【0015】
図5はロールシート200を装着した状態のロールシートホルダ501を示す図である。ロールシートホルダ501は、ロールシートホルダ501の回転軸となるコア502、コア502に取り付けられロールシートホルダの回転軸方向に沿って移動可能な第1フランジ503、コア502に着脱可能な第2フランジ504、を備えている。
【0016】
図6はロールシートをセットせずに、コア502に第2フランジ504を取り付けた状態のロールシートホルダ501である。ロールシートホルダ501は、ロールシート200をセットするときにロールシートホルダ501を立てるための台座601、ロールシートホルダ501を画像形成装置100にセットした状態で画像形成装置100からの駆動力をロールシートホルダ501に伝えてロールシートを巻き取るための駆動ギア505、従動コロ506と従動コロ516とを備えている。駆動ギア505にはトルクリミッタが内蔵されている。画像形成装置100からの駆動力により発生したたるみを巻き取ることができる。さらに、ロールシート200が引き出されるときには、駆動ギア505はコア502に対して所定の抵抗を発生させながら空転する。第2フランジ504は後述するスライダに取り付けられている。また、台座601は、ロールシートホルダを机上等に置いた際に転がりにくくなるように、六角形の形状としている。
【0017】
図7と
図8を用いて、コア502内部の機構と第1フランジ503の動作について説明を行う。説明の便宜上、
図7ではコア502の内部を表示している。
図7は、コア502に第2フランジ504を取り付けていない状態の図である。
図7は、第1フランジ503に力を加えていない状態であり、
図8は第1フランジ503に下方向の力を加えた状態を示している。第1フランジ503はコア502に沿って移動可能である。コア502の内部にはラックアンドピニオンの機構が設けてあり、第1ラック508は第1フランジ503と固定され、第2ラック509はスライダ507と固定されている。第1ラック508と第2ラック509はそれぞれピニオンギア514と噛み合っている。
図7の状態から
図8のように第1フランジ503に対して矢印Aの方向に力を加えると、第1フランジ503はコア502にガイドされながらコア502の長手方向に沿って移動する。
図8に示す姿勢においては、第1フランジ503は下方向に移動する。このとき、ラックアンドピニオンの機構により、スライダ507は第1フランジ503が移動した距離と等距離だけ、逆方向(
図8における上方向)に移動する。なお、スライダ507については後述する。第1フランジ503は、付勢部材としてのバネ510でコア502の中央側に向けて付勢されている。第1フランジ503は、第1フランジ503にバネ510による付勢力以外の力が加わっていないときには、移動可能な範囲でコア502の中央に最も近い場所、つまり
図7においては、移動可能な範囲の上限位置に停止した状態となる。
【0018】
図8は移動可能な範囲で最も外側、即ち下方に第1フランジ503を位置させたときの状態を位置している。このときの第1フランジ503の位置は、画像形成装置100にセット可能な最大幅のロールシートをセットしたときの位置でもある。また、
図7における第1フランジ503の位置は、画像形成装置100にセット可能な最小幅のロールシートをセットしたときの位置である。
<ロールシートのセット方法>
図9から
図12を用いて、ユーザがロールシートホルダ501にロールシート200をセットするときの動作について説明を行う。なお、説明の便宜上、ロールシート200の断面とともにコア502の内部を表示している。
【0019】
図9に示すように、ユーザは、台座601を接地させてロールシートホルダ501を立てた状態とし、コア502がロールシート200の紙管401の内部に入るように、ロールシートを保持する。
【0020】
次に、
図10に示すように、ユーザは、第1フランジ503に設けられた爪511に紙管401の内壁が嵌まるように、ロールシート200を第1フランジ503にセットする。第1フランジ503は、ロールシート200の重量による荷重を受けて、ロールシート200と一緒にコア502に沿って、移動可能な範囲の下限位置すなわち最も外側の位置まで移動する。このとき、第1フランジ503が下方に移動するのに連動して、スライダ507は上方に同じ距離だけ移動する。スライダ507は紙管401の中を通過可能な大きさとなっている。
【0021】
次に、
図11に示すように、ユーザは、ロールシート200よりも上に位置しているスライダ507に第2フランジ504を嵌める。第2フランジ504をスライダ507に嵌めると、不図示のロック機構により第2フランジ504とスライダ507が係合される。そしてユーザが第2フランジ504をロールシート200による荷重に抗して下方に押すと、係合した第2フランジ504とスライダ507が、コア502に沿って一緒に下方へ移動する。このとき、第1フランジ503とロールシート200は、コア502に沿って一緒に上方へ移動する。上述のように、第1フランジ503は、付勢部材としてのバネ510でコア502の中央側に向けて付勢されている。そのため、ユーザが第2フランジ504をロールシート200による荷重に抗して下方に押す場合、ユーザによる下方に押す力は、ロールシート200による荷重力から上記の付勢力を減じた力で済む。本実施形態では、第2フランジ504が移動可能な範囲の下限に位置するときに、バネ510による付勢力が8Nとなるバネ510を用いた。
【0022】
第2フランジ504の下方への移動は、
図12に示すように、第2フランジ504とロールシート200とが接触したところで停止する。このとき、ロールシートは、第2フランジ504に設けられた爪512が紙管401の内壁に嵌まることで、コア502とロールシート200とが同軸となるように固定される。スライダ507には不図示のクラッチが内蔵されており、第2フランジ504がスライダ507に取り付けられているときには、スライダ507はコア502の中央へ向かう方向(
図12における下方)にのみ移動が可能であり、反対方向(
図12における上方)には移動できないようになっている。このようなクラッチの構成を、本実施形態では、説明上、ワンウェイクラッチと呼ぶ。そのため、
図12に示す状態となったあとに、ユーザが第2フランジ504を押す力を解除しても、第1フランジ503、第2フランジ504、ロールシート200の位置は変わらない。これは、ロールシート200による荷重が第1フランジ503に係ることで第1フランジ503は下方に移動しようとするが、スライダ507はラックアンドピニオンの機構によって上方に移動しようとし、スライダ507に内蔵されたワンウェイクラッチがその移動を妨げるためである。
【0023】
図12の状態とすることで、ロールシートホルダ501へのロールシート200のセットは完了する。この状態となったロールシートホルダ501を画像形成装置100に取り付けることで、ロールシートホルダ501から引き出したロールシート200を搬送ユニット201で搬送することが可能となる。
【0024】
ここで、上記のワンウェイクラッチの機構について説明する。
図18(a)及び
図18(b)は、本実施形態におけるワンウェイクラッチの機構を説明するための図である。上述のように、スライダ507に内蔵されている
図18(a)及び
図18(b)に示す機構により、第2フランジ504がスライダ507に取り付けられているときには、スライダ507はコア502の中央へ向かう方向にのみ移動が可能となり、反対方向(図中の上方向)への移動が制限される。
【0025】
図18(a)は、第2フランジ504をスライダ507に取り付けていない状態のスライダ507の内部を示す図である。
図18(b)は、第2フランジ504をスライダ507に取り付けた状態のスライダ507の内部を示す図である。
図18(a)の状態は、
図10の状態と対応しており、第1フランジ503は、ロールシート200の重量による荷重を受けて、ロールシート200と一緒にコア502に沿って、移動可能な範囲の下限位置すなわち最も外側の位置まで移動する。そして、第1フランジ503が下方に移動するのに連動して、スライダ507は上方に同じ距離だけ移動する。
【0026】
図18(a)に示すように、スライダ507の内部には、クラッチ板801が構成されている。クラッチ板801にはコア502を通すことが可能なように穴が設けられており、その穴にコア502が通った状態となっている。また、穴壁とコア502の間にクリアランスが生じるように穴のサイズが規定されており、クラッチ板801の一部である軸部802の下には支持部803が設けられている。そのため、クラッチ板801は、軸部802を軸として矢印Bの向きに回動可能である。また、クラッチ板801は、矢印Bの反対向きには、規制部804により水平方向より上側には回動不可なように構成されている。スライダ507にはさらに、トリガ部材805が構成され、付勢バネ806により上向きの力が付勢されている。そのため、クラッチ板801は、当接しているトリガ部材805により上向きに付勢される。その結果、クラッチ板801は、規制部804に押し当てられ、水平状態を保った状態となる。
【0027】
第2フランジ504をスライダ507に嵌めると、不図示のロック機構により第2フランジ504とスライダ507が係合され、
図18(b)の状態となる。
図18(b)では、第2フランジ504は、トリガ部材805を下に押し下げ、その結果、付勢バネ806は縮む。すると、クラッチ板801とトリガ部材805は離間するので、クラッチ板801は、自重により、軸部802を軸として矢印Bの向きに回動する。
【0028】
クラッチ板801が回動して斜めの状態になると、
図19(b)に示すように、クラッチ板801の穴壁の角がコア502に食い込む状態(引っ掛かり)となる。そのため、斜めの状態になったクラッチ板801は、その斜めの状態で上方向へスライド移動しようとしても、部材間(クラッチ板801の穴壁の角とコア502の間)の摩擦が大きくなり、当該方向への移動が制限される。言い換えれば、スライダ507の上方向への移動が制限される。本実施形態では、上記のようなワンウェイクラッチの機構により、ユーザは第2フランジ504を押し下げた位置で停止させることができる。また、第2フランジ504を押し下げた位置で固定させるために押し下げ操作以外の操作を必要としないので、ユーザは第2フランジ504をより簡易に取り付けることができる。
【0029】
上記では、クラッチ板801とトリガ部材805が離間すると、クラッチ板801が自重により矢印Bの向きに回動すると説明した。しかしながら、規制部804の近傍に、クラッチ板801を下方向に付勢するような付勢バネが設けられても良い。それにより、クラッチ板801が斜めの状態での上方向への移動をより効果的に制限することができる。
<ロールシートの別のセット方法>
これまで説明したロールシートホルダ501へのロールシート200のセット方法とは異なる方法について、
図13から
図15を用いて説明する。以下の説明においても、ロールシート200の断面とともにコア502の内部を表示している。紙管401に巻き付けられているシートの量が少なくロールシート200の重量が軽い場合、ロールシート200を第1フランジ503にセットしたときに、ロールシート200による第1フランジ503への荷重よりもバネ510による付勢力が優位となり、ロールシート200と第1フランジ503が下方に移動しないことがある。そのような場合について、説明を行う。
【0030】
図13は、ユーザが第1フランジ503にロールシート200をセットした状態である。ロールシートの重量による荷重よりもバネ510による付勢力が優位となり、第1フランジ503は初期の位置すなわち移動可能な範囲の上限位置から移動しない。このとき、スライダ507も初期位置から移動しないため、スライダ507は移動可能な範囲の下限位置にあり、紙管401の内部位置している。次に、
図14に示すように、ユーザは第2フランジ504の爪512を紙管401の内壁に嵌めて、第1フランジ503と第2フランジ504とでロールシート200を挟んだ状態とする。次に、ユーザは、第2フランジ504を下方に押す。すると、第1フランジ503、第2フランジ504、ロールシート200は一緒に下方へ移動し、スライダ507は第1フランジ503の移動に連動して紙管401の内部を上方へ移動する。その後、
図15に示すように、第1フランジ503、第2フランジ504、ロールシート200の移動は、第2フランジ504とスライダ507が係合したところで停止する。
<異なる幅のロールシートをセットした場合の説明>
本実施形態のロールシートホルダでは、幅が異なるロールシートをセットした場合でも、ロールシートの幅方向の中央位置が同じ位置となる。
図12とともに
図16と
図17を用いてその仕組みを説明する。以下の説明においても、ロールシート200の断面とともにコア502の内部を表示している。
【0031】
図16は幅の狭いロールシート220を第1フランジ503にセットした状態である。ロールシート220は、ロールシートホルダ501にセット可能なロールシートのうち、最も幅の狭いものである。
図16の第1フランジ503とスライダ507は初期位置すなわち移動可能な範囲で最も中央寄りの位置にある。
図17は第2フランジ504を取り付けた状態である。第2フランジ504とスライダ507は不図示のロック機構によって係合され、第2フランジ504はスライダ507に内蔵された不図示のワンウェイクラッチによって外側(
図17の上方)への移動を制限され、ロールシート220はロールシートホルダ501に固定される。
【0032】
ここで、
図17と
図12とでロールシートホルダ501にセットしたときのロールシート200、ロールシート220の幅方向における中央の位置を比較すると、同じ位置となる。これは、ラックアンドピニオンの機構により、第1フランジ503とスライダ507が等距離だけ反対方向に動く構成となっているためである。そのため、スライダ507と係合している第2フランジ504と第1フランジ503との位置関係についても同様となる。そして、ロールシートホルダ501にセットされるロールシート200は、その幅方向における両端の位置を第1フランジ503と第2フランジ504とで規制されるので、ロールシートの幅方向のサイズにかかわらず、幅方向における中央の位置が同じとなる。
<ロールシートの取り外し方法>
ロールシートホルダ501からロールシート200を取り外すときには、セットするときと逆の手順で行う。ユーザは、まずロールシート200がセットされたロールシートホルダ501を台座601が設置するように立てる(
図12)。次に第2フランジ504に設けられた一対のリリースレバー513を操作して、第2フランジ504とスライダ507の係合を解除し、第2フランジ504をスライダ507から取り外す。第2フランジ504とスライダ507との係合が解除されると、スライダ507に内蔵されているワンウェイクラッチによる移動方向の制限が解除される。
【0033】
ワンウェイクラッチによる移動方向の制限の解除について、
図18(a)及び
図18(b)を参照しながら説明する。
図18(b)が、ユーザがロールシートホルダ501を立てた状態に対応する。そのときに、ユーザはリリースレバー513を操作して第2フランジ504とスライダ507の係合を解除し、第2フランジ504をスライダ507から取り外す。すると、トリガ部材805には、付勢バネ806により上方向の力が付勢される。その結果、トリガ部材805はクラッチ板801を上に押し上げ、クラッチ板801は規制部804に当接し、
図18(a)及び
図19(a)に示すように水平状態となる。この状態は、ワンウェイクラッチによる移動制限が解除された状態である。
ワンウェイクラッチによる移動制限が解除されると、ロールシート200の重量により第1フランジ503が下方に移動し、移動範囲の最も下方の位置で停止する(
図11)。その後、第1フランジ503からロールシート200を取り外す。
【0034】
以上、説明したように、本発明によれば、ロールシートの幅方向の大きさが異なる場合でも、ロールシートの幅方向の中央の位置が変わらないように、ロールシートを保持できる画像形成装置を提供することが可能となる。
【0035】
本実施形態の開示は、以下の画像形成装置を含む。
(項目1)
ロール状に巻かれた連続するシートに画像を形成して記録を行う画像形成装置であって、
前記ロール状に巻かれたシートを保持するロールシートホルダと、
前記ロール状に巻かれた状態から引き出したシートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送する前記連続するシートに画像を形成して記録を行う記録手段と、
を有し、
前記ロールシートホルダは、
保持する前記ロール状のシートの回転軸となるコアと、
前記コアに取り付けられ前記コアの長手方向に沿って移動可能な第1のフランジと、
前記第1のフランジに連動し、前記コアの長手方向に沿って、前記第1のフランジの移動に対して逆方向に等距離だけ移動するスライダと、
前記スライダに対して着脱可能な第2のフランジと、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
(項目2)
前記スライダはクラッチを備え、前記クラッチは、前記スライダに前記第2のフランジが装着されている状態において、前記スライダの前記第1のフランジと接近する方向への移動を制限せず、前記スライダの前記第1のフランジと離間する方向への移動を制限することを特徴とする項目1に記載の画像形成装置。
(項目3)
前記クラッチは、前記コアと前記スライダ内の部材との間の摩擦が大きくなることで、前記スライダの前記第1のフランジと離間する方向への移動を制限することを特徴とする項目2に記載の画像形成装置。
(項目4)
前記コアは、前記部材に設けられた穴を通るように構成されていることを特徴とする項目3に記載の画像形成装置。
(項目5)
前記コアと、前記部材の穴壁との間にはクリアランスが設けられていることを特徴とする項目4に記載の画像形成装置。
(項目6)
前記クラッチは、前記第2のフランジが前記スライダに対して装着されると、前記スライドの前記第1のフランジと離間する方向への移動を制限することを特徴とする項目2乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(項目7)
前記ロールシートホルダにより保持された前記ロール状に巻かれたシートの中央の位置は、前記搬送手段の搬送方向に対する幅が第1サイズの場合と、前記第1サイズと異なる第2サイズの場合とで変わらないことを特徴とする項目1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(項目8)
前記記録手段は、前記連続するシートにラベル画像を連続的に形成して記録を行うことを特徴とする項目1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0036】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0037】
200 ロールシート
501 ロールシートホルダ
502 コア
503 第1フランジ
504 第2フランジ
507 スライダ