(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174548
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20231130BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231130BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231130BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20231130BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20231130BHJP
H10K 59/131 20230101ALI20231130BHJP
G09G 3/32 20160101ALI20231130BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 624B
G09G3/20 623Y
G09G3/20 641T
G09F9/30 365
G09F9/33
H10K59/12
H10K59/131
G09G3/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076135
(22)【出願日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2022086125
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023029818
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521515757
【氏名又は名称】厦門天馬顕示科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 玄士朗
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C094
5C380
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC31
3K107CC41
3K107DD39
3K107EE04
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3K107HH05
5C080AA06
5C080BB05
5C080CC03
5C080EE29
5C080FF11
5C080HH09
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
5C080KK02
5C080KK43
5C094AA02
5C094AA21
5C094BA03
5C094BA23
5C094BA27
5C094CA19
5C094DB01
5C094DB04
5C094FB02
5C094FB14
5C094FB19
5C380AA01
5C380AA02
5C380AB06
5C380AB24
5C380AB34
5C380AC07
5C380AC08
5C380BB02
5C380CA12
5C380CA57
5C380CC26
5C380CC33
5C380CC63
5C380CD024
5C380CD034
5C380CD044
5C380DA06
(57)【要約】
【課題】表示品質を向上する。
【解決手段】画素回路は、第1ゲート電極と第2ゲート電極とを含み、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御する駆動トランジスタと、第1データ線と第1ゲート電極に接続され、走査線に与えられた走査信号によってONまたはOFFに制御される第1スイッチトランジスタと、第2データ線と第2ゲート電極に接続され、走査線に与えられた走査信号によってONまたはOFFに制御される第2スイッチトランジスタとを含む。制御回路は、各画素回路において、第2データ信号の電圧を予め設定された関係に従って第1データ信号の電圧に応じて変化させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置であって、
表示パネルと、
前記表示パネルを制御する制御回路と、
を含み、
前記表示パネルは、
複数の発光素子と前記複数の発光素子の各発光素子の発光を制御する画素回路と、
前記画素回路に第1データ信号を供給する第1データ線と、
前記画素回路に第2データ信号を供給する第2データ線と、
前記画素回路を制御するための1つ以上の走査線と、
を含み、
前記画素回路は、
半導体層に第1ゲート絶縁層を介して対向する第1ゲート電極と、前記半導体層に第2ゲート絶縁層を介して対向する第2ゲート電極とを含み、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御する、駆動トランジスタと、
前記第1データ線と前記第1ゲート電極に接続され、前記走査線に与えられた走査信号によってONまたはOFFに制御される第1スイッチトランジスタと、
前記第2データ線と前記第2ゲート電極に接続され、前記走査線に与えられた走査信号によってONまたはOFFに制御される第2スイッチトランジスタと、
を含み、
前記制御回路は、
前記第1スイッチトランジスタがONの状態で前記第1ゲート電極に前記第1データ線を介して第1データ信号を供給した後、前記第1スイッチトランジスタをOFFし、
前記第2スイッチトランジスタがONの状態で前記第2ゲート電極に前記第2データ線を介して第2データ信号を供給した後、前記第2スイッチトランジスタをOFFし、
各画素回路において、前記第2データ信号の電圧を予め設定された関係に従って前記第1データ信号の電圧に応じて変化させる、
表示装置。
【請求項2】
表示装置であって、
表示パネルと、
前記表示パネルを制御する制御回路と、
を含み、
前記表示パネルは、
複数の発光素子と前記複数の発光素子の各発光素子の発光を制御する画素回路と、
前記画素回路に第1データ信号及び第2データ信号を供給するデータ線と、
前記画素回路を制御するための第1走査線及び第2走査線と
を含み、
前記画素回路は、
半導体層に第1ゲート絶縁層を介して対向する第1ゲート電極と、前記半導体層に第2ゲート絶縁層を介して対向する第2ゲート電極とを含み、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御する、駆動トランジスタと、
前記データ線と前記第1ゲート電極に接続され、前記第1走査線に与えられた第1走査信号によってONまたはOFFに制御される第1スイッチトランジスタと、
前記データ線と前記第2ゲート電極に接続され、前記第2走査線に与えられた第2走査信号によってONまたはOFFに制御される第2スイッチトランジスタと、
を含み、
前記制御回路は、
前記第1スイッチトランジスタがONの状態で前記第1ゲート電極に前記データ線を介して第1データ信号を供給した後、前記第1スイッチトランジスタをOFFし、
前記第2スイッチトランジスタがONの状態で前記第2ゲート電極に前記データ線を介して第2データ信号を供給した後、前記第2スイッチトランジスタをOFFし、
各画素回路において、前記第2データ信号の電圧を予め設定された関係に従って前記第1データ信号の電圧に応じて変化させる、
表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表示装置であって、
前記制御回路は、前記発光素子の最低階調レベルを含む、最低階調レベルから最高階調レベルに至る階調範囲の少なくとも一部において、前記第2データ信号に、前記第1データ信号の電圧変化に対して、逆方向の電圧変化を持たせる、表示装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の表示装置であって、
前記駆動トランジスタはN型薄膜トランジスタであり、
前記画素回路は、
前記第1ゲート電極と前記駆動トランジスタのソース領域との間に接続された第1容量素子と、
前記第2ゲート電極と前記駆動トランジスタの前記ソース領域との間に接続された第2容量素子と、
をさらに含む、
表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記駆動トランジスタは、酸化物半導体薄膜トランジスタである、
表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記画素回路は、前記第1ゲート電極と前記駆動トランジスタのドレイン領域との間に接続された第3容量素子をさらに含む、
表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記画素回路は、前記第2ゲート電極と前記駆動トランジスタの前記ドレイン領域との間に接続された第4容量素子をさらに含む、
表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置であって、
前記第4容量素子の容量値は、前記第3容量素子の容量値より小さい、
表示装置。
【請求項9】
表示装置であって、
表示パネルと、
前記表示パネルを制御する制御回路と、
を含み、
前記表示パネルは、
複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各発光素子の発光を制御する画素回路と、を含み、
前記画素回路は、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御する、駆動トランジスタを含み、
前記駆動トランジスタは、半導体層に第1ゲート絶縁層を介して対向する第1ゲート電極と、前記半導体層に第2ゲート絶縁層を介して対向する第2ゲート電極と、を含み、
前記第1ゲート電極に第1データ信号が与えられ、前記第2ゲート電極に第2データ信号が与えられた状態で、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御し、
前記制御回路は、各画素回路を、複数の表示モードから選択した一つの表示モードによって制御し、
前記複数の表示モードは、前記第1データ信号と前記第2データ信号との間のそれぞれ異なる関係及び前記第1データ信号と前記発光素子の輝度レベルとの間のそれぞれ異なる関係により定義され、
前記制御回路は、前記第1データ信号及び前記第2データ信号を制御して各画素回路の前記駆動電流を生成する、
表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の表示装置であって、
前記複数の表示モードにおいて、映像データと前記第1データ信号との関係は共通である、
表示装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の表示装置であって、
前記複数の表示モードにおいて、前記発光素子の最低階調レベルを含む、最低階調レベルから最高階調レベルに至る階調範囲の少なくとも一部において、前記第2データ信号が、前記第1データ信号の電圧変化に対して、逆方向の電圧変化を持つ、
表示装置。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の表示装置であって、
前記複数の表示モードの内の一つにおいて、前記発光素子の最高階調レベルを含む、最低階調レベルから最高階調レベルに至る階調範囲の少なくとも一部において、前記第2データ信号が、前記第1データ信号の電圧の変化に対して、超線形な関係をもって変化する、
表示装置。
【請求項13】
請求項1、2又は9に記載の表示装置であって、
前記制御回路は、前記第1データ信号と表示モード制御信号とに基づき、前記第2データ信号を生成する、
表示装置。
【請求項14】
請求項1、2又は9に記載の表示装置であって、
前記発光素子は、無機LED又は有機LEDである、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(Organic Light-Emitting Diode)素子は電流駆動型の自発光素子であるため、バックライトが不要となる上に、低消費電力、高視野角、高コントラスト比が得られるなどのメリットがあり、フラットパネルディスプレイの開発において期待されている。
【0003】
アクティブマトリックス(AM)タイプのOLED表示装置は、画素を選択するトランジスタと、画素に電流を供給する駆動トランジスタとを含む。OLED表示装置におけるトランジスタは、TFT(Thin Film Transistor)であり、LTPS(Low Temperature Poly-silicon)TFTや、酸化物半導体TFTが使用される。業務用モニタ、PC用モニタ、TV等の中型から大型のOLED表示装置においては、アレイ工程のプロセス温度が低く、大型のマザーガラスで製造が可能な、酸化物半導体TFTで構成されたバックプレーンを採用することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0126485号
【特許文献2】韓国特許出願公開第2019-0078750号
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0027709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OLED素子に与えられる発光電流量は、駆動トランジスタによって制御される。そのため、階調レベルに応じて駆動トランジスタの制御信号を適切に生成することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルを制御する制御回路と、を含む。前記表示パネルは、複数の発光素子と前記複数の発光素子の各発光素子の発光を制御する画素回路と、前記画素回路に第1データ信号を供給する第1データ線と、前記画素回路に第2データ信号を供給する第2データ線と、前記画素回路を制御するための1つ以上の走査線と、を含む。前記画素回路は、半導体層に第1ゲート絶縁層を介して対向する第1ゲート電極と、半導体層に第2ゲート絶縁層を介して対向する第2ゲート電極とを含み、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御する、駆動トランジスタと、前記第1データ線と前記第1ゲート電極に接続され、前記走査線に与えられた走査信号によってONまたはOFFに制御される第1スイッチトランジスタと、前記第2データ線と前記第2ゲート電極に接続され、前記走査線に与えられた走査信号によってONまたはOFFに制御される第2スイッチトランジスタとを含む。前記制御回路は、前記第1スイッチトランジスタがONの状態で前記第1ゲート電極に前記第1データ線を介して第1データ信号を供給した後、前記第1スイッチトランジスタをOFFし、前記第2スイッチトランジスタがONの状態で前記第2ゲート電極に前記第2データ線を介して第2データ信号を供給した後、前記第2スイッチトランジスタをOFFし、各画素回路において、前記第2データ信号の電圧を予め設定された関係に従って前記第1データ信号の電圧に応じて変化させる。
【0007】
本開示の一態様の表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルを制御する制御回路と、を含む。前記表示パネルは、複数の発光素子と前記複数の発光素子の各発光素子の発光を制御する画素回路と、前記画素回路に第1データ信号及び第2データ信号を供給するデータ線と、前記画素回路を制御するための第1走査線及び第2走査線とを含む。前記画素回路は、半導体層に第1ゲート絶縁層を介して対向する第1ゲート電極と、半導体層に第2ゲート絶縁層を介して対向する第2ゲート電極とを含み、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御する、駆動トランジスタと、前記データ線と前記第1ゲート電極に接続され、前記第1走査線に与えられた第1走査信号によってONまたはOFFに制御される第1スイッチトランジスタと、前記データ線と前記第2ゲート電極に接続され、前記第2走査線に与えられた第2走査信号によってONまたはOFFに制御される第2スイッチトランジスタとを含む。前記制御回路は、前記第1スイッチトランジスタがONの状態で前記第1ゲート電極に前記データ線を介して第1データ信号を供給した後、前記第1スイッチトランジスタをOFFし、前記第2スイッチトランジスタがONの状態で前記第2ゲート電極に前記データ線を介して第2データ信号を供給した後、前記第2スイッチトランジスタをOFFし、各画素回路において、前記第2データ信号の電圧を予め設定された関係に従って前記第1データ信号の電圧に応じて変化させる。
【0008】
本開示の一態様の表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルを制御する制御回路とを含む。前記表示パネルは、複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各発光素子の発光を制御する画素回路と、を含む。前記画素回路は、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御する、駆動トランジスタを含む。前記駆動トランジスタは、半導体層に第1ゲート絶縁層を介して対向する第1ゲート電極と、前記半導体層に第2ゲート絶縁層を介して対向する第2ゲート電極と、を含み、前記第1ゲート電極に第1データ信号が与えられ、前記第2ゲート電極に第2データ信号が与えられた状態で、前記発光素子へ供給する駆動電流を制御する。前記制御回路は、各画素回路を、複数の表示モードから選択した一つの表示モードによって制御する。前記複数の表示モードは、前記第1データ信号と前記第2データ信号との間のそれぞれ異なる関係及び前記第1データ信号と前記発光素子の輝度レベルとの間のそれぞれ異なる関係により定義される。前記制御回路は、前記第1データ信号及び前記第2データ信号を制御して各画素回路の前記駆動電流を生成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、表示装置の表示品質を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】表示装置であるOLED表示装置の構成例を模式的に示す。
【
図2】本明細書の一実施形態に係る画素回路及び制御信号の構成例を示す。
【
図3】駆動トランジスタの断面構造を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図2に示す画素回路を制御する信号のタイミングチャートを示す。
【
図5】異なる第2データ信号Vdata2における、第1データ信号Vdata1と駆動トランジスタがOLED素子に与える発光電流との関係のシミュレーション結果を示す。
【
図6】
図2に示す画素回路のデバイスを積層方向において見た平面構造を模式的に示す、平面図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII´切断線での断面構造を模式的に示す。
【
図8】
図6におけるVIII-VIII´切断線での断面構造を模式的に示す。
【
図9】本明細書の一実施形態に係る画素回路及び制御信号の構成例を示す。
【
図10】
図9に示す画素回路の駆動タイミングチャートを示す。
【
図11】
図9に示す画素回路のデバイスを積層方向において見た平面構造を模式的に示す、平面図である。
【
図13】データドライバに含まれる、一つの画素回路列に対する第1データ信号Vdata1及び第2データ信号Vdata2を出力するための回路構成例を示す。
【
図14】第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2との間の関係の例を示す。
【
図15】本明細書の一実施形態に係る画素回路及び制御信号の構成例を示す。
【
図17】
図16に示す画素回路の駆動タイミングチャートを示す。
【
図18】
図16に示す画素回路のデバイスを積層方向において見た平面構造を模式的に示す、平面図である。
【
図19】第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2との間の関係の例を示す。
【
図20】
図19に示す第1と第2データ信号との関係による効果を示すグラフである。
【
図21】階調レベルと第1データ信号Vdata1との関係の例を示す。
【
図22】HDR駆動しない場合の、制御電圧Vdata2と階調電圧Vdata1との間の関係の例を示す。
【
図23】HDRモードにおける、制御電圧Vdata2と階調電圧Vdata1の関係の例を示す。
【
図24】HDRモードにおける階調電圧Vdata1と階調電流(輝度)I_oledとの関係の例と、標準モードにおける階調電圧Vdata1と階調電流(輝度)I_oledとの関係の例を示す。
【
図26】マイクロLED画素回路の構造例を模式的に示す平面図である。
【
図28】マイクロLED表示装置の表示部を模式的に示す斜視図である。
【
図31】一枚の画像内に、標準モード表示領域とHDRモード表示領域といった、異なる階調特性を持つ画像を混在させる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照して実施形態を具体的に説明する。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【0012】
以下において、OLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置のように、発光電流により発光する発光素子を使用する発光型表示装置における、発光素子の発光電流制御を改善するための技術を開示する。
【0013】
本明細書の一実施形態において、駆動トランジスタは、デュアルゲート構造を有する。つまり、駆動トランジスタは、チャネル領域を挟む第1ゲート電極と第2ゲート電極とを含む。第1ゲート電極及び第2ゲート電極とチャネル領域との間にはゲート絶縁層が介在する。
【0014】
駆動トランジスタは、階調レベルに応じた発光電流を発光素子に与えることで、その輝度を制御する。発光電流は、駆動トランジスタの第1ゲート電極及び第2ゲート電極のゲート電圧に応じて変化する。
【0015】
表示パネルを制御する制御回路は、第1ゲート電極に第1データ信号(第1ゲート電圧)を与えると共に、第2ゲート電極に第2データ信号(第2ゲート電圧)を与える。第1ゲート電圧は、所望の階調レベル応じた値を有する。階調レベルは、発光素子の輝度レベルに対応付けられる。より低い階調レベルはより暗い輝度を示し、より高い階調レベルはより明るい輝度を示す。
【0016】
少なくとも一部の階調範囲(輝度範囲)において、第2データ信号は、第1データ信号の変化と共に変化する。第1データ信号依存して変化する第2データ信号は、駆動トランジスタのスレッショルド係数を所望の値に制御することを可能とする。
【0017】
本明細書の一実施形態は、各画素回路において、第2データ信号の電圧を予め設定された関係に従って、第1データ信号の電圧に応じて変化させる。階調レベルに応じた第2データ信号の変化の態様は、第1データ信号の変化の態様と異なる。
【0018】
本明細書の一実施形態において、第2データ信号は、第1データ信号と逆極性の変化を示す。つまり、第2データ信号は、第1データ信号の増加と共に減少し、第1データ信号の減少と共に増加する。本明細書の一実施形態において、一部の範囲は、最低階調レベルから、より高い第1階調レベルまでの連続範囲(低階調範囲と呼ぶ)である。第1階調レベルは、最高階調レベルあり、全階調範囲で第2データ信号は、第1データ信号と逆極性の変化を示してもよい。第1階調レベル以上の範囲において、例えば、第2データ信号は一定であってもよく、第1データ信号と同極性の変化を示してもよい。
【0019】
第1データ信号をVdata1、第2データ信号をVdata2と表す。低階調範囲において、例えば、Vdata1とVdta2とは、次の関係を有してもよい。Vdata2=V0+k×Vdata1。ここで、V0は定数であり、kは負の係数である。Vdata1とVdata2との関係は、OLED表示装置の設計に従って任意の関数で表され得る。
【0020】
デュアルゲート構造の駆動トランジスタに、変化が逆極性を示すゲート電圧を二つのゲート電極に与えることで、駆動トランジスタのスレッショルド係数を大きくし、階調レベルに応じたより正確な発光電流を発光素子に与えることができる。特に、低階調範囲における当該制御は、階調レベル間の電位差(電圧差)を大きくし、低階調範囲の発光制御をより容易として、表示ムラを効果的に抑制することが可能となる。
【0021】
酸化物半導体TFT(Thin Film Transistor)は、特に小さいスレッショルド係数を示し、一般に0.2V/decadeより小さい。そのため、酸化物半導体TFTを駆動トランジスタとして使用する画素回路において、上記ゲート電圧制御は特に大きな効果を奏することができる。
【0022】
駆動トランジスタは、1フレーム期間又はそれより長い期間において、第1データ信号及び第2データ信号を保持し続けることが重要である。本明細書の一実施形態に係る画素回路は、第1スイッチトランジスタ及び第2スイッチトランジスタを含む。第1スイッチトランジスタは、第1ゲート電極と、第1データ信号を伝送するデータ線との間の導通をON/OFFする。第2スイッチトランジスタは、第2ゲート電極と、第2データ信号を伝送するデータ線との間の導通をON/OFFする。
【0023】
第1データ信号を伝送するデータ線と第2データ信号を伝送するデータ線とは共通であってもよく、異なっていてもよい。第1スイッチトランジスタは、ON状態において第1データ信号をデータ線から第1ゲート電極に与えた後、OFFされる。第2スイッチトランジスタは、ON状態において第2データ信号をデータ線から第2ゲート電極に与えた後、OFFされる。
【0024】
これにより、第1データ信号及び第2データ信号は、それぞれ、第1ゲート電極及び第2ゲート電極において、1フレームの間保持される。表示装置は、1フレームの間において、画素行を順次選択して全ての画素行にデータ信号を書き込み、次のデータ信号の書き込みまで全ての画素行でデータ信号を維持して、表示画像を維持する。画像表示のためのデータ信号は、外部から受信した映像データのフレームに基づき生成される。
【0025】
なお、本開示において説明するデュアルゲート構造を有する駆動トランジスタの制御方法及びそれを含む画素回路は、OLED素子と異なる種類の自発光素子の表示装置に適用することができる。
【0026】
[表示装置構成]
図1は、表示装置であるOLED表示装置10の構成例を模式的に示す。
図1における横方向はX軸方向であり、縦方向はX軸方向に垂直なY軸方向である。OLED表示装置10は、OLED素子(発光素子)が形成されるTFT(Thin Film Transistor)基板100と、有機発光素子を封止する封止基板150と、を含んで構成されている。
【0027】
TFT基板100と封止基板150との間には、例えば、乾燥窒素などの不活性ガスが封入されており、封止されている。他の構造の封止構造部、例えば、封止基板150に代えて薄膜封止を使用する封止構造部が利用されてもよい。
【0028】
TFT基板100の表示領域125の外側のカソード電極形成領域114の周囲に、走査回路131、132、ドライバIC134、デマルチプレクサ136が配置されている。ドライバIC134は、FPC(Flexible Printed Circuit)135を介して外部の装置と接続される。走査回路131、132はTFT基板100の走査線を駆動する。
【0029】
ドライバIC134は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて実装される。ドライバIC134は、走査回路131、132に電源及びタイミング信号(制御信号)を与える。さらに、ドライバIC134は、デマルチプレクサ136に、データ信号を与える。
【0030】
デマルチプレクサ136は、ドライバIC134の一つのピンの出力を、d本(dは2以上の整数)のデータ線に順次出力する。デマルチプレクサ136は、ドライバIC134からのデータ信号の出力先データ線を、走査期間内にd回切り替えることで、ドライバIC134の出力ピン数のd倍のデータ線を駆動する。
【0031】
表示領域125は、複数のOLED素子及び複数のOLED素子それぞれの発光を制御する複数の画素回路を含む。カラーOLED表示装置において、各OLED素子は、例えば、赤、青又は緑のいずれかの色を発光する。複数の画素回路は、画素回路アレイを構成する。複数のOLED素子及び複数の画素回路は、例えば、マトリックス状に配列される。
【0032】
後述するように、各画素回路は、デュアルゲート構造を有する駆動TFT(駆動トランジスタ)と、駆動TFTの二つゲート電極それぞれと共通データ線又は異なるデータ線との間に接続された二つのスイッチトランジスタと、を含む。二つのスイッチトランジスタは、それぞれ、対応するゲート電極にデータ信号を与えると共に、データ信号がゲート電電極で1フレーム期間維持されるようにON/OFFされる。二つのゲート電極のデータ信号(ゲート電圧)は、駆動TFTのコンダクタンスをアナログ的に変化させ、階調レベルに対応した順バイアス電流をOLED素子に供給する。
【0033】
[画素回路構成]
図2は、本明細書の一実施形態に係る画素回路及び制御信号の構成例を示す。画素回路は、l段目(lは整数)の画素回路行に含まれている。画素回路は、ゲート電極、ソース領域及びドレイン領域を持った4つのトランジスタ(TFT)M1~M4を含む。本例において、全てのトランジスタM1~M4はN型TFTである。N型TFTは、例えば、酸化物半導体TFTである。
【0034】
トランジスタM1は、OLED素子E1への発光電流量を制御する駆動トランジスタである。トランジスタM1は、第1ゲート電極G1及び第2ゲート電極G2を含む、デュアルゲート構造を有する。駆動トランジスタM1のドレイン領域は、正電源電位PVDDを伝送する電源線241に接続されている。駆動トランジスタM1は、電源線241からOLED素子E1に与える発光電流量を、ゲート電極G1及びG2におけるゲート電圧に応じて制御する。
【0035】
画素回路は、保持容量素子Cst1及びCst2を含む。保持容量素子Cst1は、第3容量素子であり、正電源電位PVDDを伝送する電源線241と駆動トランジスタM1の第1ゲート電極G1との間に接続されている。保持容量素子Cst1は、駆動トランジスタM1の第1ゲート電極G1と電源線241との間の電圧を保持する。駆動トランジスタM1のドレイン領域は電源線241に接続され、ドレイン電位は正電源電位PVDDである。
【0036】
保持容量素子Cst1と、第1ゲート電極G1のゲート容量に蓄積される電荷によって、第1ゲート電極G1のゲート電圧を保持する。第1ゲート電極G1のゲート電圧は、第1データ線201により伝送される第1データ信号Vdata1に応じた値である。設計によっては、保持容量素子Cst1は省略してもよい。
【0037】
保持容量素子Cst2は、第4容量素子であり、正電源電位PVDDを伝送する電源線241と駆動トランジスタM1の第2ゲート電極G2との間に接続されている。保持容量素子Cst2は、駆動トランジスタM1の第2ゲート電極G2と電源線241との間の電圧を保持する。
【0038】
保持容量素子Cst2と、第2ゲート電極G2のゲート容量に蓄積される電荷によって、第2ゲート電極G2のゲート電圧を保持する。第2ゲート電極G2のゲート電圧は、第2データ線202により伝送される第2データ信号Vdata2に応じた値である。本明細書の一実施形態において、保持容量素子Cst2の容量値及び面積は、保持容量素子Cst1より小さい。これにより、駆動トランジスタM1を適切に制御しつつ、画素回路の実装がより容易となる。設計によっては、保持容量素子Cst2は省略してもよい。
【0039】
トランジスタM2は、第1データ信号Vdata1を供給する画素回路を選択し、第1ゲート電極G1に対して第1データ信号(電圧)Vdata1を与えるための第1スイッチトランジスタである。トランジスタM2のソース/ドレイン領域(ソース領域又はドレイン領域)の一方は、第1ゲート電極G1と第1保持容量素子Cst1との間のノードに接続され、他方は第1データ信号Vdata1を伝送するデータ線201に接続されている。
【0040】
トランジスタM2のゲート電極は、例えば、走査回路131からの選択信号S2を伝送する伝送線212に接続されている。トランジスタM2は、選択信号S2により制御される。トランジスタM2がONのとき、トランジスタM2は、ドライバIC134からデータ線201を介して供給される第1データ信号Vdata1を、第1ゲート電極G1及び第1保持容量素子Cst1に与える。
【0041】
トランジスタM4は、第2データ信号Vdata2を供給する画素回路を選択し、第2ゲート電極G2に対して第2データ信号(電圧)Vdata2を与えるための第2スイッチトランジスタである。トランジスタM4のソース/ドレイン領域の一方は、第2ゲート電極G2と第2保持容量素子Cst2との間のノードに接続され、他方は第2データ信号Vdata2を伝送するデータ線202に接続されている。
【0042】
トランジスタM4のゲート電極は、例えば、走査回路131からの選択信号S2を伝送する伝送線212に接続されている。トランジスタM4は、選択信号S2により制御される。トランジスタM4がONのとき、トランジスタM4は、ドライバIC134からデータ線202を介して供給される第2データ信号Vdata2を、第2ゲート電極G2及び第2保持容量素子Cst2に与える。
【0043】
OLED素子E1のカソードは、カソード電源電位PVEEを与える電源線204に接続されている。
図2の例において、OLED素子E1のアノードは駆動トランジスタM1のソース領域と接続されている。トランジスタM3は、駆動トランジスタM1のソース領域及びOLED素子E1のアノードへのリセット電位Vrstの供給のために動作する。
【0044】
トランジスタM3のソース/ドレイン領域の一方はリセット電位Vrstを伝送する電源線242に接続され、他方は駆動トランジスタM1のソース領域及びOLED素子E1のアノードに接続されている。リセット電位Vrstは、例えばカソード電源電位PVEEと同電位又はそれより低い電位でもよい。これらが同電位(例えば接地電位)である場合、リセット電位Vrstとカソード電源電位PVEEの伝送線(電源線)を共用できる。カソード電源電位PVEEを、正電源電位PVDDと比較して負電源電位と呼ぶことがある。
【0045】
トランジスタM3のゲート電極は選択信号S3を伝送する制御信号線213に接続され、トランジスタM3は、選択信号S3により制御される。トランジスタM3は、走査回路131からの選択信号S3によりONにされると、電源線242により伝送されたリセット電位Vrstを、駆動トランジスタM1のソース領域及びOLED素子E1のアノードへ与える。
【0046】
画素回路は、容量素子C1及びC2を含む。これらの容量値及び面積は他例えば同一である。容量素子C1は、第1容量素子であり、駆動トランジスタM1の第1ゲート電極G1とソース領域との間に接続されている。容量素子C2は、第2容量素子であり、駆動トランジスタM1の第2ゲート電極G2とソース領域との間に接続されている。
【0047】
上述のように、駆動トランジスタM1のソース電位はリセット電位Vrstに一旦充電される。OLED素子E1の発光期間中、駆動トランジスタM1のソース電位は、発光電流値(駆動電流値)で定まる電位VAまで上昇する。そのため、電位変化分(VA-Vrst)を容量素子C1、C2によって駆動トランジスタM1のゲート電位に追加する(Bootstrap)ことで、駆動トランジスタM1の定電流動作を実現できる。
【0048】
[駆動トランジスタの構造]
図3は、駆動トランジスタM1の断面構造を模式的に示す断面図である。絶縁性基板SUB上に下地層ULが積層され、その上に、駆動トランジスタM1が形成されている。本明細書において、基板からより遠い側を上側、基板により近い側を下側と呼ぶ。
【0049】
駆動トランジスタM1は、第2ゲート電極G2と、第2ゲート電極G2と酸化物半導体層OSとの間のゲート絶縁層GI2を含む。第2ゲート電極G2は、ボトムゲート電極であり、絶縁層GI2を第2ゲート絶縁層又はボトムゲート絶縁層とも呼ぶ。酸化物半導体層OSは、金属酸化物で形成されている。
【0050】
酸化物半導体層OSは、ソース領域SR、ドレイン領域DR、面内方向においてソース領域SR及びドレイン領域DRの間のチャネル領域CRを含む。第2ゲート絶縁層GI2は、例えば、シリコン酸化物層、又は、シリコン酸化物(上側)/シリコン窒化物(下側)の積層である。
【0051】
酸化物半導体層OSは、第2ゲート絶縁層GI2上に直接(接触して)形成されている。金属酸化物は、例えば、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)である。ソース領域SR、ドレイン領域DRは、低抵抗化された金属酸化物で形成されている。チャネル領域CRは、低抵抗化されていない金属酸化物(半導体)で形成されている。
【0052】
第2ゲート電極G2は、第2ゲート絶縁層GI2を挟んでチャネル領域CRと対向している。第2ゲート電極G2、第2ゲート絶縁層GI2及びチャネル領域CRは、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されている。第2ゲート絶縁層GI2は、チャネル領域CR及び第2ゲート電極G2と接触している。第2ゲート電極G2には、第2データ信号Vdata2に応じた信号電圧が与えられる。
【0053】
駆動トランジスタM1は、さらに、第1ゲート電極G1と、積層方向において第1ゲート電極G1とチャネル領域CRとの間に存在するゲート絶縁層GI1を含む。第1ゲート電極G1は、トップゲート電極であり、絶縁層GI1を第1ゲート絶縁層又はトップゲート絶縁層とも呼ぶ。
【0054】
第1ゲート絶縁層GI1は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、又はこれらの積層膜である。チャネル領域CR、第1ゲート絶縁層GI1及び第1ゲート電極G1は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されており、第1ゲート絶縁層GI1は、チャネル領域CR及び第1ゲート電極G1と接触している。
【0055】
第1ゲート電極G1には、第1データ信号Vdata1に応じた信号電圧が与えられる。第1ゲート電極G1は、ソース領域SR、ドレイン領域DRの形成のためのマスクとして使用され得る(セルフアライン)。また、第1ゲート電極G1は、チャネル領域CRへの外光を遮蔽できる。
【0056】
第1ゲート電極G1及びそれより下の層は、層間絶縁層ILD及びその上のパッシベーション層PASで覆われている。これらは、絶縁層である。ソース電極SEは、層間絶縁層ILD及び第1ゲート絶縁層GI1を貫通して、ソース領域SRに接触している。ドレイン電極DEは、層間絶縁層ILD及び第1ゲート絶縁層GI1を貫通して、ドレイン領域DRに接触している。
【0057】
[画素回路動作]
図4は、
図2に示す画素回路を制御する信号のタイミングチャートを示す。
図4は、l番目の行を選択し、データ信号を画素回路に書き込むためのタイミングチャートを示す。具体的には、
図4は、選択信号S2、選択信号S3、第1データ信号Vdata1、第2データ信号Vdata2を示す。上下に延びる破線の間隔は一定であり、1H期間を示す。
【0058】
時刻T0より前の期間は発光期間である。選択信号S2、選択信号S3はLowである。この期間において、トランジスタM2~M4はOFFである。そのため、第1ゲート電極G1及び第2ゲート電極G2のゲート電圧が維持され、駆動トランジスタM1を介して、データ信号の階調に応じた一定の発光電流が、電源線241からOLED素子E1に与えられ、OLED素子E1は発光している。
【0059】
時刻T0からT1は、リセット期間である。時刻T0の直後、選択信号S3が、LowからHighに変化する。選択信号S2はLowのままである。選択信号S3に変化に応じて、トランジスタM3はONとなる。トランジスタM2及びM4はOFFのままである。トランジスタM3はONであるので、駆動トランジスタM1のソース領域及びOLED素子E1のアノードがリセット電位Vrstとなる。
【0060】
時刻T1の直前に、選択信号S3が、HighからLowに変化し、トランジスタM3はOFFとなる。時刻T1の直後に、選択信号S2が、LowからHighに変化する。選択信号S2に変化に応じて、トランジスタM2及びM4はONとなる。
【0061】
ON状態のトランジスタM2を介して、第1データ信号Vdata1が、第1ゲート電極G1に与えられる。同時に、ON状態のトランジスタM4を介して、第2データ信号Vdata2が、第2ゲート電極G2に与えられる。第1データ信号Vdata1及び第2データ信号Vdata2は、1H周期で、対応する画素行への電圧に変化する。上述のように、各画素に対する第1データ信号Vdata1及び第2データ信号Vdata2は、逆極性の変化を示す。
【0062】
図5は、異なる第2データ信号Vdata2における、第1データ信号Vdata1と駆動トランジスタM1がOLED素子に与える発光電流との関係のシミュレーション結果を示す。グラフの横軸は第1データ信号Vdata1を示し、縦軸は発光電流のlog値を示す。
【0063】
線351は、第2データ信号Vdata2=6.0+Vdata1における、第1データ信号Vdata1と発光電流との関係を示す。線352は、第2データ信号Vdata2=6.0における、第1データ信号Vdata1と発光電流との関係を示す。線353は、第2データ信号Vdata2=6.0-0.5*Vdata1における、第1データ信号Vdata1と発光電流との関係を示す。線354は、第2データ信号Vdata2=6.0-Vdata1における、第1データ信号Vdata1と発光電流との関係を示す。
【0064】
図5に示す例において、各線の第2データ信号Vdata2は、V0+k*Vdata1で与えられる。V0は6.0であり、kは、線に応じた値を示す。kの値が小さくなるほど、線の傾きは小さくなる、つまり、駆動トランジスタの閾値電圧Vthが増大し、スレッショルド係数(S係数)は大きくなる。このように、第1データ信号Vdata1の大きさに依存し、かつ、閾値電圧Vthが増大する性質を第2データ信号Vdata2に持たせることで、駆動トランジスタのS係数を大きくすることができる。このように、S係数の大きさは、比例係数kの値によって制御でき、表示性能上最も適切な値を任意に選択が可能である。
【0065】
[画素回路のデバイス構造]
図6は、
図2に示す画素回路のデバイスを積層方向において見た平面構造を模式的に示す、平面図である。
図6において、保持容量素子Cst2は省略されている。また、トランジスタM2、M3及びM4は、それぞれ、デュアルゲート構造を有し、上下のゲート電極には同一の制御信号が与えられる。
【0066】
図6は、画素回路における酸化物半導体層OS及び導体層を示す。斜線を含む矩形は、異なる導体層のコンタクト部を示す。コンタクト部は、積層方向に絶縁層を貫通するビアホール内に形成された導体部である。同一材料からなる同一層のパターンの含まれる要素は、同一タイプの線で表されている。
【0067】
伝送線212T、212Bは、選択信号S2を伝送する。伝送線213T、213Bは、選択信号S3を伝送する。第1データ線201は、第1データ信号Vdata1を伝送し、第2データ線202は、第2データ信号Vdata2を伝送する。電源線241は、正電源電位PVDDを伝送し、電源線242はリセット電位Vrstを伝送する。
【0068】
図2を参照して説明したように、画素回路は、トランジスタM1~M4を含む。トランジスタそれぞれの半導体層は、酸化物半導体層OSである。上述のように、駆動トランジスタM1は、第1ゲート電極G1及び第2ゲート電極G2を含む。第2ゲート電極G2、伝送線212B、213Bは、第1金属層のパターンに含まれる。第1ゲート電極G1、伝送線212T、213T及び電源線242は、第2金属層のパターンに含まれる。データ線201、202及び電源線241は、第3金属層のパターンに含まれる。絶縁基板から、第1金属層、第2金属層及び第3金属層の順に、これらは積層されている。
【0069】
コンタクト部CONT1は、トランジスタM2のソース/ドレイン領域と第1データ線201とのコンタクト部である。コンタクト部CONT2は、トランジスタM4のソース/ドレイン領域と第2データ線202とのコンタクト部である。コンタクト部CONT3は、OLED素子のアノード電極REと、画素回路とのコンタクト部である。アノード電極REは、第3金属層より上層である。
【0070】
図7は、
図6におけるVII-VII´切断線での断面構造を模式的に示す。
図7は、主に、トランジスタM1、M2及びM4を示す。ポリイミドやガラスで形成された基板SUB上に、画素回路の積層構造が形成されている。基板SUB上に、例えばシリコン窒化物層である、下地層ULが形成されている。
【0071】
第1金属層が、下地層UL上に積層されている。具体的には、選択信号S2を伝送する伝送線212B、駆動トランジスタM1の第2ゲート電極G2が図示されている。
図7に示すように、伝送線212Bの一部は、トランジスタM2及びM4それぞれのボトムゲート電極を構成する。第1金属層は、例えば、W、Mo、Ta等の金属又はこれらの合金で形成することができる。
【0072】
ゲート絶縁層GI2が、第1金属層を覆うように積層されている。ゲート絶縁層GI2は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物で形成される。酸化物半導体層OSが、ゲート絶縁層GI2上に積層されている。酸化物半導体層OSは、低抵抗化された二つのソース/ドレイン領域及びそれらの間の高抵抗のチャネル領域を含む。さらに、ゲート絶縁層GI1が、酸化物半導体層OSを覆うように積層されている。ゲート絶縁層GI1は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物で形成される。
【0073】
第2金属層が、ゲート絶縁層GI1上に積層されている。具体的には、選択信号S2を伝送する伝送線212T、駆動トランジスタM1の第1ゲート電極G1が図示されている。
図7に示すように、伝送線212Tの一部は、トランジスタM2及びM4それぞれのトップゲート電極を構成する。第2金属層は、例えば、W、Mo、Ta等の金属又はこれらの合金で形成することができる。
【0074】
層間絶縁層ILDが、第2金属層を覆うように積層されている。層間絶縁層ILDは、例えば、シリコン酸化物又はシリコン窒化物で形成できる。第3金属層が、層間絶縁層ILD上に形成されている。第3金属層は、例えば、Al単層又はTi/Al/Tiの積層構造を有することができる。
【0075】
第3金属層に含まれる要素として、
図7は、第1データ信号Vdata1の伝送線201、第2データ信号Vdata2の伝送線202、電源線241を示す。さらに、トランジスタM2のソース/ドレイン領域と駆動トランジスタM1の第1ゲート電極G1との間の接続部IC1及び、トランジスタM4のソース/ドレイン領域と駆動トランジスタM1の第2ゲート電極G2との間の接続部IC2を示す。
【0076】
伝送線201及び202は、それぞれ、層間絶縁層ILD及びゲート絶縁層GI1を貫通するコンタクトホールを介して、酸化物半導体層OSと直接接触している。相互接続部IC1は、層間絶縁層ILD及びゲート絶縁層GI1を貫通するコンタクトホールを介して、トランジスタM2の酸化物半導体層OSと直接接触し、ゲート絶縁層GI1を貫通するコンタクトホールを介して、駆動トランジスタM1の第1ゲート電極G1と直接接触している。
【0077】
相互接続部IC2は、層間絶縁層ILD及びゲート絶縁層GI1を貫通するコンタクトホールを介して、トランジスタM4の酸化物半導体層OSと直接接触し、層間絶縁層ILD、ゲート絶縁層GI1、ゲート絶縁層GI2を貫通するコンタクトホールを介して、駆動トランジスタM1の第2ゲート電極G2と直接接触している。
【0078】
パッシベーション層PAS及びその上の平坦化層PLNが、それらの下層を覆うように形成されている。これらは、有機又は無機絶縁体で形成することができる。OLED素子のアノード電極REが、平坦化層PLN上に形成されている。アノード電極REは、例えば、ITO/Ag/ITO構造又はIZO/Ag/IZO構造を有する。
【0079】
図8は、
図6におけるVIII-VIII´切断線での断面構造を模式的に示す。
図8は、主に、トランジスタM3、容量素子C2、保持容量素子Cst1及び駆動トランジスタM1を示す。以下においては、
図7に示されていない構成要素について主に説明する。
【0080】
第1金属層は、選択信号S3を伝送する伝送線213B及び容量素子C2の電極を含む。伝送線213Bの一部は、トランジスタM3のボトムゲート電極を構成する。容量素子C2は、第1金属層内の電極、トランジスタM3のソース/ドレイン領域及びそれらの間のゲート絶縁層GI2で構成される。
【0081】
第2金属層は、リセット電位Vrstを伝送する電源線242、選択信号S3を伝送する伝送線213Tを含む。伝送線213Tの一部は、トランジスタM3のトップゲート電極を構成する。
【0082】
第3金属層は、電源線242とトランジスタM3のソース/ドレイン領域との間の相互接続部IC3を含む。相互接続部IC3は、層間絶縁層ILD及びゲート絶縁層GI1を貫通するコンタクトホールを介して、トランジスタM3の酸化物半導体層OSと直接接触し、層間絶縁層ILDを貫通するコンタクトホールを介して、電源線242と直接接触している。
【0083】
正電源電位の電源線241の一部は、保持容量素子Cst1の電極を構成する。保持容量素子Cst1は、電源線241、駆動トランジスタM1の第1ゲート電極G1及びそれらの間の層間絶縁層ILDで構成されている。
【0084】
[画素回路構成例]
図9は、本明細書の一実施形態に係る画素回路及び制御信号の構成例を示す。この画素回路は、駆動トランジスタM1の閾値電圧Vthを補償する。
図2に示す画素回路構成との相違を主に説明する。この画素回路は、
図2の画素回路構成に加えて、トランジスタM5及びM6を含む。これらは、N型TFTである。また、選択信号S4を伝送する伝送線214及び基準電源電位Vrefを伝送する電源線243が追加されている。基準電源電位Vrefの値は、例えば、正電源電位PVDDとリセット電源電位Vrstとの間の値であり、リセット電源電位Vrstより数V高い電位であってもよい。
【0085】
トランジスタM5は、駆動トランジスタM1の第1ゲート電極G1(
図9において符号省略)と基準電源電位の電源線243との間に接続されている。そのゲート電極は選択信号S4の伝送線214に接続されている。トランジスタM6は、駆動トランジスタM1の第2ゲート電極G2(
図9において符号省略)と基準電源電位の電源線243との間に接続されている。そのゲート電極は選択信号S4の伝送線214に接続されている。
【0086】
図10は、
図9に示す画素回路の駆動タイミングチャートを示す。具体的には、
図10は、(n-1)行目、n行目、n+1行目の画素回路行それぞれの、制御信号S2、S3、S4及びデータ信号Vdata1、Vdata2の時間変化を示す。隣接画素回路行の間において、同種の制御信号は、1Hだけ位相がずれている。
【0087】
n行目の画素回路の制御を例として説明する。時刻T10において、選択信号S4(n)が、LowからHighに変化する。これにより、トランジスタM5及びM6がONになる。また、選択信号S3(n)が、LowからHighに変化する。これにより、トランジスタM3がONになる。選択信号S2(n)はLowのままであり、トランジスタM2及びM4はOFFのままである。
【0088】
時刻T10から2H後の時刻T11において、選択信号S3(n)が、HighからLowに変化する。選択信号S4(n)はHighのままであり、選択信号S2(n)はLowのままである。選択信号S3(n)の変化に応答して、トランジスタM3がOFFになる。
【0089】
時刻T11から5H後の時刻T12において、選択信号S4(n)は、Highを維持する。選択信号S3(n)、S2(n)はLowのままである。時刻T11からT12の期間において、保持容量素子Cst1、Cst2には、駆動トランジスタM1の第1ゲート側及び第2ゲート側の閾値電圧Vthを補償する電圧が充電される。
【0090】
時刻T12から1H後の時刻T13において、選択信号S4(n)が、HighからLowに変化する。選択信号S4(n)の変化に応答して、トランジスタM5及びM6がOFFになる。選択信号S2(n)が、LowからHighに変化する。選択信号S3(n)はLowのままである。選択信号S2(n)の変化に応答して、トランジスタM2及びM4がONになる。データ信号Vdata1、Vdata2が画素回路に書き込まれる。
【0091】
時刻T13から1H後の時刻T14において、選択信号S2(n)が、HighからLowに変化する。選択信号S4(n)、S3(n)はLowのままである。選択信号S2(n)の変化に応答して、トランジスタM2及びM4がOFFになる。時刻T14に、n行目の画素回路行の発光期間が開始する。
【0092】
図11は、
図9に示す画素回路のデバイスを積層方向において見た平面構造を模式的に示す、平面図である。
図11において、保持容量素子Cst2は省略されている。
図6に示す画素回路例と同一の構成要素は、異なる形状を有していても、同一符号で指示されている。
図11は、
図6に示す画素回路の構成要素に加えて、トランジスタM5、M6、選択信号S4の伝送線214T、214B、及び基準電源電位Vrefの電源線243を示す。トランジスタM5、M6は酸化物半導体TFTである。
【0093】
トランジスタM5及びM6は、それぞれ、デュアルゲート構造を有し、上下のゲート電極には同一の制御信号が与えられる。伝送線214T、214Bは、選択信号S4を伝送する。伝送線214Tの一部は、トランジスタM5のトップゲート電極を構成し、他の一部はトランジスタM6のトップゲート電極を構成する。伝送線214Bの一部は、トランジスタM5のボトムゲート電極を構成し、他の一部はトランジスタM6のボトムゲート電極を構成する。伝送線214Bは第1金属層に含まれ、伝送線214Tは第2金属層に含まれる。
【0094】
基準電源電位Vrefの電源線243は、第2金属層に含まれる。相互接続部IC4は、電源線243とトランジスタM5のソース/ドレイン領域とをコンタクト部を介して接続する。相互接続部IC5は、電源線243とトランジスタM6のソース/ドレイン領域とをコンタクト部を介して接続する。
【0095】
図12は、表示装置の回路構成例を模式的に示す。画素回路は、
図9に示す構成を有する。表示装置は、表示領域はマトリックス状に配列された画素回路370を含む。
図12は、例として、一つの画素回路を符号370で指示している。画素回路の数及びサイズは、実際の構成とは異なる。
【0096】
制御回路は、表示領域の外側に配置されたデータドライバ351、及び電源回路352、走査回路361、362、363、を含む。データドライバ351は、画素回路列それぞれに第1データ信号Vdata1及び第2データ信号Vdata2を出力する。電源回路352は、画素回路370に、正電源電位PVDD、基準電源電位Vref及びリセット電源電位Vrstを供給する。データドライバ351、及び電源回路352は、例えば、ドライバIC134に含まれる。
【0097】
走査回路361は、画素回路行それぞれの選択信号S2を順次出力する。走査回路362は、画素回路行それぞれの選択信号S4を順次出力する。走査回路363は、画素回路行それぞれの選択信号S3を順次出力する。
【0098】
図13は、データドライバ351に含まれる、一つの画素回路列に対する第1データ信号Vdata1及び第2データ信号Vdata2を出力するための回路構成例を示す。データドライバ351は、第1DAコンバータ(DAC1)401及び第2DAコンバータ(DAC2)402、第1バッファアンプ405、及び第2バッファアンプ406を含む。第1DAコンバータ401は、DA変換のために基準電位(Vo)及び接地電位が与えられている。第2DAコンバータ402は、DA変換のために基準電位(-Vo)及び接地電位が与えられている。
【0099】
第1DAコンバータ401は、デジタルデータをアナログ信号に変換する。バッファアンプ405は第1DAコンバータ401からのアナログ信号を増幅して(等倍を含む)、第1データ信号Vdata1をデータ線に出力する。第2DAコンバータ402は、上記デジタルデータをアナログ信号に変換する。バッファアンプ406は第2DAコンバータ402からのアナログ信号を増幅して(等倍を含む)、第2データ信号Vdata2をデータ線に出力する。第2DAコンバータ402に与える基準電位の選び方で、第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2の関係として、望ましい特性を選択することが可能である。
【0100】
図14は、第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2との間の関係の例を示す。グラフの横軸は第1データ信号Vdata1を示し、縦軸は第2データ信号Vdata2を示す。実線451は、Vdata2=V0-Vdata1の関係を示す。また、破線452は、Vdata2=V0+k*Vdata1(k<-1)の関係を示す。二点鎖線453に示す関係において、低階調領域において、Vdata2は、Vdata1の増加と共に線形に減少し、特定の階調レベルからは、一定である。
【0101】
本明細書の一実施形態において、Vdata2は、映像表示のためのOLED素子の階調(輝度)範囲において、最低階調を含む少なくとも一部の連続領域において、Vdata1と逆極性の変化を示す。つまり、OLED素子の最低輝度を含む少なくとも一部の範囲において、Vdata2のVdata1に対する変化率は、0未満である。これにより、特に低階調において、階調レベル間の電位差(電圧差)を大きくし、低階調範囲の発光制御をより容易として、表示ムラを効果的に抑制することが可能となる。
【0102】
Vdata2とVdata1との関係は、
図14に示す例に限定されるものではない。例えば、Vdata2は、少なくとも一部の階調範囲において、Vdata1の増加と共に非線形に減少し、減少と共に非線形に増加してもよい。Vdata2のVdata1に対する変化率は、最低階調から最大階調の全域で0以下であってもよく、一部の階調範囲において、Vdata2のVdata1に対する変化率は、正であってもよい。
【0103】
図15は、本明細書の一実施形態に係る画素回路及び制御信号の構成例を示す。画素回路は、l段目(lは整数)の画素回路行に含まれている。以下において、
図2に示す画素回路との相違を主に説明する。
【0104】
図15の画素回路は、
図2の画素回路において、駆動トランジスタM1を、P型TFTの駆動トランジスタM11に置き換え、保持容量素子Cst1及びCst2を、保持容量素子Cst11及びCst12に置き換える。容量素子C1及びC2は省かれている。
【0105】
トランジスタM11は、OLED素子E1への発光電流量を制御する駆動トランジスタである。トランジスタM11は、デュアルゲート構造を有する。駆動トランジスタM11のソース領域は、正電源電位PVDDを伝送する電源線241に接続されている。駆動トランジスタM11は、電源線241からOLED素子E1に与える発光電流量を、二つのゲート電極G11、G12におけるゲート電圧に応じて制御する。
【0106】
画素回路は、保持容量素子Cst11及びCst12を含む。保持容量素子Cst11は、正電源電位PVDDを伝送する電源線241と駆動トランジスタM11の第1ゲート電極G11との間に接続されている。保持容量素子Cst11は、駆動トランジスタM11の第1ゲート電極G11と電源線241との間の電圧を保持する。駆動トランジスタM11のソース領域は電源線241に接続され、ソース電位は正電源電位PVDDである。
【0107】
保持容量素子Cst11は、第1ゲート電極G11のゲート電圧を、第1ゲート電極G11のゲート容量と共に、保持する。第1ゲート電極G11のゲート電圧は、第1データ線201により伝送される第1データ信号Vdata1に応じた値である。設計によっては、保持容量素子Cst11は省略してもよい。
【0108】
保持容量素子Cst12は、正電源電位PVDDを伝送する電源線241と駆動トランジスタM1の第2ゲート電極G12との間に接続されている。保持容量素子Cst12は、駆動トランジスタM11の第2ゲート電極G12と電源線241との間の電圧を保持する。
【0109】
保持容量素子Cst12は、第2ゲート電極G12のゲート電圧を、第2ゲート電極G12のゲート容量と共に、保持する。第2ゲート電極G12のゲート電圧は、第2データ線202により伝送される第2データ信号Vdata2に応じた値である。本明細書の一実施形態において、保持容量素子Cst12の容量値及び面積は、保持容量素子Cst11より小さい。これにより、駆動トランジスタM11を適切に制御しつつ、画素回路の実装がより容易となる。設計によっては、保持容量素子Cst12は省略してもよい。
【0110】
トランジスタM2のソース/ドレイン領域(ソース領域又はドレイン領域)の一方は、第1ゲート電極G11と第1保持容量素子Cst11との間のノードに接続され、他方は第1データ信号Vdata1を伝送するデータ線201に接続されている。トランジスタM2がONのとき、トランジスタM2は、ドライバIC134からデータ線201を介して供給される第1データ信号Vdata1を、第1ゲート電極G11及び第1保持容量素子Cst11に与える。
【0111】
トランジスタM4のソース/ドレイン領域の一方は、第2ゲート電極G12と第2保持容量素子Cst12との間のノードに接続され、他方は第2データ信号Vdata2を伝送するデータ線202に接続されている。トランジスタM4がONのとき、トランジスタM4は、ドライバIC134からデータ線202を介して供給される第2データ信号Vdata2を、第2ゲート電極G12及び第2保持容量素子Cst12に与える。
【0112】
図15の例において、OLED素子E1のアノードは駆動トランジスタM11のドレイン領域と接続されている。トランジスタM3のソース/ドレイン領域の一方はリセット電位Vrstを伝送する電源線242に接続され、他方は駆動トランジスタM11のドレイン領域及びOLED素子E1のアノードに接続されている。トランジスタM3は、走査回路131からの選択信号S3によりONにされると、電源線242により伝送されたリセット電位Vrstを、駆動トランジスタM11のドレイン領域及びOLED素子E1のアノードへ与える。
【0113】
図15に示す画素回路を制御する信号のタイミングチャートは、
図4に示すタイミングチャートと同様でよい。
【0114】
次に、画素回路の他の構成例を説明する。
図16は、画素回路の他の構成例を示す。
図16の画素回路は、共通のデータ線を介して、第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2を受信する。これにより、データ線の数を低減することができる。以下において、
図2に示す画素回路との相違を主に説明する。
【0115】
トランジスタM4のゲート電極は、選択信号S1を伝送する伝送線211に接続され、選択信号S1により、ON/OFFされる。選択信号S1は、不図示の走査回路から与えられ得る。伝送線211は、選択信号S2の伝送線212及び選択信号S3の伝送線213とは異なる。共通データ線205は、時分割によって、第1データ信号Vdata1及び第2データ信号Vdata2を伝送する。トランジスタM2及びM4それぞれの一つのソース/ドレイン領域は、共通データ線205に接続されている。
図2に示す保持容量素子Cst2は、省略されている。
【0116】
図17は、
図16に示す画素回路の駆動タイミングチャートを示す。具体的には、
図17は、(n-1)行目、n行目、(n+1)行目の画素回路行それぞれの、制御信号S1、S2、S3及びデータ信号Vdata1、Vdata2の時間変化を示す。隣接画素回路行の間において、同種の制御信号は、2Hだけ位相がずれている。
【0117】
n行目の画素回路の制御を例として説明する。時刻T20において、選択信号S3(n)が、LowからHighに変化する。これにより、トランジスタM3がONになる。また、選択信号S1(n)、S2(n)はLowのままであり、トランジスタM2及びM4はOFFのままである。
【0118】
時刻T20から1H後の時刻T21において、選択信号S1(n)が、LowからHighに変化する。選択信号S3(n)はHighのままであり、選択信号S2(n)はLowのままである。選択信号S1(n)の変化に応答して、トランジスタM4がONになる。第2データ信号Vdata2が、トランジスタM4を介して画素回路に書き込まれる。
【0119】
時刻T21から1H後の時刻T22において、選択信号S1(n)が、HighからLowに変化し、選択信号S2(n)は、LowからHighに変化する。選択信号S3(n)はHighのままである。選択信号S1(n)に変化に応答して、トランジスタM4がOFFになる。選択信号S2(n)に変化に応答して、トランジスタM2がONになる。第1データ信号Vdata1が、トランジスタM2を介して、画素回路に書き込まれる。
【0120】
時刻T22から1H後の時刻T23において、選択信号S2(n)が、HighからLowに変化する。選択信号S1(n)はLowのままであり、選択信号S3(n)はHighのままである。選択信号S2(n)の変化に応答して、トランジスタM2がOFFになる。
【0121】
時刻T23から1H後の時刻T24において、選択信号S3(n)が、HighからLowに変化する。選択信号S1(n)、S2(n)はLowのままである。選択信号S3(n)の変化に応答して、トランジスタM3がOFFになる。時刻T24に、n行目の画素回路行の発光期間が開始する。
【0122】
図18は、
図16に示す画素回路のデバイスを積層方向において見た平面構造を模式的に示す、平面図である。
図6に示す画素回路例と同一の構成要素は、異なる形状を有していても、同一符号で指示されている。
図18は、
図6に示すデータ線201、202に代えて、共通データ線205を示し、さらに、選択信号S1の伝送線211B、211Tを示す。
【0123】
トランジスタM2のソース/ドレイン領域は、コンタクト部CONT5を介して、共通データ線205と接続される。トランジスタM4のソース/ドレイン領域は、コンタクト部CONT6を介して、共通データ線205と接続される。
【0124】
伝送線211T、211Bは、選択信号S1を伝送する。伝送線211Tの一部は、トランジスタM4のトップゲート電極を構成し、伝送線211Bの一部は、トランジスタM4のボトムゲート電極を構成する。伝送線211Bは第1金属層に含まれ、伝送線211Tは第2金属層に含まれる。
【0125】
図19は、第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2との間の関係の例を示す。グラフの横軸は第1データ信号Vdata1を示し、縦軸は第2データ信号Vdata2を示す。
図19に示す例において、第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2との間の関係を示す関数は、連続する二つの線形関数で構成されている。具体的には、それらは、低階調領域における実線471で表される関数と、高階調領域における実線472で表される関数で構成されている。
【0126】
実線471の関係は、Vdata2=V0+η0*Vdata1(η0<0)で表される。実線472の関係は、Vdata2=V1+η1*Vdata1(η1>0)で表される。実線471に示す関係において、Vdata2は、Vdata1の増加と共に線形に減少する。実線472に示す関係において、Vdata2は、Vdata1の増加と共に線形に増加する。
【0127】
図19に示す例において、映像表示のためのOLED素子の低階調範囲、すなわちVdata1が0V~4Vの範囲において、Vdata2の変化はVdata1とは逆極性となる。これにより、低階調において、階調レベル間の電位差(電圧差)を大きくし、低階調範囲の発光制御をより容易として、表示ムラを効果的に抑制することが可能となる。また、高階調範囲で、Vdata2は、Vdata1と同極性の変化を示す。これにより、最大輝度の低下を抑制できる。このように、
図19に示す関係例は、最大輝度の低下を抑制しつつ、低階調領域だけ、データレンジを拡大し輝度変化を緩やかにすることができる。
【0128】
図20は、
図19に示す第1と第2データ信号との関係による効果を示すグラフである。横軸は第1データ信号Vdata1を示し、縦軸はOLED素子へ供給される電流I_oledを示す。電流I_oledが大きい程、OLED素子の輝度は大きい。線481は、
図19に示す第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2と関係での、第1データ信号Vdata1と電流I_oledとの関係を示す。
図19に示す第1及び第2データ信号は、低階調域のみデータレンジを拡大することができる。
【0129】
以下において、高ダイナミックレンジ(HDR)モードでのデータ信号を説明する。HDRモードは、暗い画素の輝度を変化させることなく明るい画素の輝度を選択的に増大させ、表示画像のダイナミックレンジを拡大する。標準モードにおいて、明暗差の大きい映像の明るい部分を見やすくすると暗い部分がつぶれ、暗い部分を見やすくすると明るい部分が白飛びする。HDRモードは、暗い部分及び明るい部分のどちらも犠牲にすることがない表示が可能である。ドライバIC134を含む制御回路は、外部システムからの指示に従って、複数のモードから一つのモードと画素毎に選択する。なお、モード選択は表示領域全体に対して実行されてもよい。なお、3以上のモードが定義されていてもよく、それらの間において、第1データ信号と第2データ信号との関係が異なっていてよい。
【0130】
上述のように、本明細書の一実施形態の駆動方法は、第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2の組み合わせを画素毎に決定することで、画素毎に固有の電圧-発光特性を持たせることができる。つまり、HDR駆動(HDRモード)へ応用が可能となる。以下において、HDR駆動の例を、以下に説明する。
【0131】
図21は、階調レベルと第1データ信号Vdata1との関係の例を示す。
図21に示す例において、第1データ信号Vdata1は、階調レベルの増加に対して線形増加する関係を持つ。この関係は、例えば、通常モードとHDRモードに共通であってよい。つまり、全てのモードにおいて、映像データ(から決まる階調レベル)と第1データ信号との間の関係は共通であってよい。
【0132】
図22は、HDR駆動しない場合、ここでは、標準的なγ値=2.2の階調表示をする場合の、制御電圧Vdata2と階調電圧Vdata1との間の関係の例を示す。第1データ信号Vdata1を階調電圧、第2データ信号Vdata2を制御電圧と呼ぶ。上述のように、第1データ信号Vdata1は、映像データから決定される各画素の階調レベルに応じて決定される。制御電圧(第2データ信号)Vdata2は、予め設定された関数に従って、階調電圧Vdata1に基づき決まる。
【0133】
図22の例において、特定値以上の階調電圧範囲では、制御電圧Vdata2の増加率は略一定(線形変化)である。また、特定値以下において、制御電圧Vdata2は、階調電圧Vdata1の増加に対して線形増加する関係を持つ。その変化率は、高階調領域での変化率より大きい。
【0134】
図23は、HDRモードにおける、制御電圧Vdata2と階調電圧Vdata1の関係の例を示す。階調電圧Vdata1が2V~4Vの範囲において、制御電圧Vdata2は減少し、Vdata1とは逆極性(逆方向)の変化をする。階調電圧Vdata1が4Vより大きく最も高い階調レベルを含む高階調範囲では、Vdata2はVdata1の増加に対し、超線形(スーパリニア)な関係性をもって増大変化する。スーパリニアは線形(直線)を越えており、スーパリニアは線形関数よりも最終的に速く増加する関数を意味する。
図22に示す標準モードと比較して、制御電圧Vdata2の最大値と最小値との差分が、より大きい。
【0135】
図24は、HDRモードにおける階調電圧Vdata1と階調電流(輝度)I_oledとの関係の例491と、標準モードにおける階調電圧Vdata1と階調電流(輝度)I_oledとの関係の例492を示す。HDRモードでは、標準モードに比べ最大輝度が増大し、階調電圧Vdata1に対する階調電流の変化率の変化が緩やかになっている。階調電流の変化が緩やかであることにより、低~中輝度領域で目立つ表示のムラを低減し、かつ高い最大輝度を持つ表示が可能となる。上述のように、異なる表示モードは、第1データ信号と第2データ信号の間の異なる関係及び第1データ信号と発光素子の輝度レベルとの間の異なる関係により定義される。
【0136】
なお、第1データ信号Vdata1と第2データ信号Vdata2の組み合わせを画素毎に異ならせ、また、
図22と
図23の特性を切り替えることで、画素毎に異なる電圧-発光特性(モード)を持たせることが可能である。例えば、夜景の花火のような全体的には暗いが一部に非常に明るい部分がある画像の場合、暗い画素の輝度を変化させることなく、明るい画素の輝度だけを増大させて、表示画像のダイナミックレンジを拡大することが可能となるので、より臨場感が高い画像を表示することができる。
【0137】
以下において、発光素子として、OLED素子の代わりに、マイクロLEDチップ(素子)を使用する構成例を説明する。マイクロLEDチップは、無機化合物半導体を発光材料とする素子であり、OLED素子に比べ、信頼性が高く、高輝度で発光させる駆動を続けても発光効率の低下が小さい。このため、ダイナミックレンジの広い発光型表示装置として有望である。上記第1データ信号及び第2データ信号による発光素子の制御は、マイクロLEDチップを発光素子として用いたマイクロLED表示装置に適用可能である。
【0138】
図25は、マイクロLED画素回路の構成例を示す。
図9に示す画素回路との相違を主に説明する。マイクロLED画素回路は、
図9に示す画素回路のOLED素子E1に代えて、LEDチップL1を含む。LEDチップL1は、パッド247、248によって画素回路に接続されている。パッド247は、LEDチップL1のアノードと容量素子C1、C2及びトランジスタM1の接続ノードとを接続する。
【0139】
パッド248は、LEDチップL1のカソードとカソード電源電位PVEEを伝送するカソード配線CAとを接続する。上記他の構成例のように、第1データ信号を伝送するデータ線と第2データ信号を伝送するデータ線とは共通であってもよく、異なっていてもよい。共通データ線は、時分割で第1データ信号をと第2データ信号を伝送する。
【0140】
図26は、マイクロLED画素回路の構造例を模式的に示す平面図である。
図27は、
図26のY-Y´切断線での断面図を示す。
図26において、伝送線S31及びS32は、選択信号S3を伝送する。伝送線S21及びS22は、選択信号S2を伝送する。TFT基板にカソード配線CAが形成され、TFT基板とLEDチップL1はTFT基板上に形成されたパッド247、248によって電気的に接続される。
【0141】
図27を参照して、コンタクト部CONT7は接続電極CTと、トランジスタM1、M3他のソース/ドレイン等とを相互接続する。コンタクト部CONT8は、パッド247と接続電極CTとを相互接続する。コンタクト部CONT9は、パッド248とカソード配線CAとを相互接続する。
【0142】
LEDチップL1は、アノードAE、カソードCE及びそれらを覆う発光層E5を含む。アノードAE及びカソードCEは、それぞれ、半田SOLによって、パッド247及びPAD248に物理的及び電気的に接続されている。
【0143】
TFT基板の絶縁基板SUBとLEDチップL1との間にカソード配線CAが形成されている。LEDチップL1は、パッド247、248によって画素回路に電気的に接続される。接続はパターニングされた異方性導電フィルム(ACF)やソルダが使用される。パッドのない部分の空隙は、樹脂FILによって充填される。
【0144】
図28は、マイクロLED表示装置の表示部を模式的に示す斜視図である。TFT基板605上に、赤のLEDチップ601R、緑のLEDチップ601G、及び青のLEDチップ601Bが、マトリックス状に配列されている。また、
図28において、データ線又は電源線611及び伝送線612が例示されている。LEDチップを除いた場合に露出するパッド247、248が、説明のために示されている。
図29は、
図28におけるA-A´切断線での断面図である。TFT基板605上に実装されたLEDチップ601R、601G、601Bの間の領域は、隔壁材603が充填されている。隔壁材603には、例えば、表面反射率を下げるため黒色レジン等の黒色材が使われる。
【0145】
図30は、データドライバの例を示す。ここでは、階調電圧Vdata1は全ての画素で同一とし、制御電圧Vdata2を変化させることで階調特性を制御する例を説明する。演算器651は、表示モード制御信号に従って、画素単位で標準特性またはHDR特性を決定し、階調データD1とあらかじめ保持している変換テーブルTBLに従って制御データD2を生成する。
【0146】
変換テーブルTBLは、階調データD1と制御データD2の関係を規定し、表示モード毎に設定されている。その内容は、
図22又は
図23に示される関数関係をデジタル形式で表す。
【0147】
第1DAコンバータ401は、DA変換のために最大電位Vmax1及び最小電位Vmin1が与えられている。第2DAコンバータ402は、DA変換のために最大電位Vmax2及び最小電位Vmin2が与えられている。第1DAコンバータ401は、入力された階調データD1に従って階調電圧Vdata1を出力する。第2DAコンバータ402は、入力された制御データD2に従って制御電圧Vdata2を出力する。
【0148】
本実施形態の駆動方法を採用したTFT基板と高信頼なマイクロLEDを組み合わせることにより、輝度ダイナミックレンジの広い発光型表示装置を実現できる。
図31のように、一枚の画像内に、標準モード表示領域701とHDRモード表示領域702といった、異なる階調特性を持つ画像を混在させることも可能となる。
【0149】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0150】
10 OLED表示装置
100 TFT基板
125 表示領域
131、132 走査回路
134 ドライバIC
136 デマルチプレクサ
M3 駆動トランジスタ
G1 第1ゲート電極
G2 第2ゲート電極
C1、C2、Cst1、Cst2 容量素子
M2、M4 スイッチトランジスタ
201、202、205 データ線
211、212 選択信号の伝送線