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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174551
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】光学多層構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20231130BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231130BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20231130BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231130BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231130BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20231130BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B7/023
C08L79/08 Z
C08K3/013
C08G73/10
G02B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077489
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0063866
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0063876
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0054300
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム チュン ホ
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB25
2K009CC33
2K009CC42
2K009DD02
4F100AA01A
4F100AA11A
4F100AA20A
4F100AA21A
4F100AA22A
4F100AA25A
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4F100AA40A
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4F100AT00B
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4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DE01A
4F100EH46A
4F100EH46C
4F100EJ08C
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4F100GB41
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4F100JK10D
4F100JK12
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4F100JL04
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4J043PA04
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4J043RA35
4J043SA06
4J043SA54
4J043SA85
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA32
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB012
4J043UB172
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4J043VA021
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043WA09
4J043XA16
4J043YA06
4J043ZB11
4J043ZB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カール(curl)現象が良好に改善され、表面硬度が著しく上昇した光学多層構造体を提供する。
【解決手段】シロキサン構造を含むポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせと、無機粒子とを含むポリイミド前駆体組成物から形成されるポリイミド飛散防止層が基板のいずれか一面または両面上に形成された構造を含む光学多層構造体とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一面上に形成され、下記化学式1の構造を含むポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせ、および無機粒子を含むポリイミドフィルムを含む飛散防止層と、
前記基板の他の一面上に形成されるハードコーティング層と、
を含む、光学多層構造体。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-5アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-10アリールであり、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【請求項2】
前記ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、下記化学式2で表されるジアミンから誘導された単位をさらに含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
[化学式2]
【化2】
前記化学式2中、
11およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC1-20の1価の有機基であり、
11は、-SO-、-O-、または-C(=O)O-であるか、またはこれらのいずれか1つ以上の結合を含むC1-20の2価の有機基であり、および
前記化学式2は、フッ素原子結合を含まない。
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、フッ素系ジアミンから誘導された単位をさらに含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項4】
前記フッ素系ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、および1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項3に記載の光学多層構造体。
【請求項5】
前記RおよびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-3アルキルであり、
前記RおよびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-8アリールであり、および
前記LおよびLは、それぞれ独立して、C1-5アルキレンである、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項6】
前記化学式1の構造が下記化学式3の構造である、請求項1に記載の光学多層構造体。
[化学式3]
【化3】
前記化学式3中、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【請求項7】
前記R11およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC1-10の1価の有機基であり、および
前記L11は、-SO-、-O-、または-C(=O)O-であるか、またはこれらのいずれか1つ以上の結合を含むC1-15の2価の有機基である、請求項2に記載の光学多層構造体。
【請求項8】
前記L11は、-SO-、-O-、または-C(=O)O-であるか、またはこれらのいずれか1つ以上と、C1-10アルキル、C5-18シクロアルキレン、およびC6-18アリーレンからなる群から選択されるいずれか1つ以上との組み合わせである、請求項2に記載の光学多層構造体。
【請求項9】
前記無機粒子は、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、チタン酸バリウム、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項10】
前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するシロキサン系化合物を含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項11】
前記ハードコーティング層と基板との間に前記飛散防止層をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学多層構造体。
【請求項12】
基板の一面上にポリイミド前駆体組成物を塗布および乾燥して飛散防止層を形成するステップと、
前記基板の他の一面上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化してハードコーティング層を形成するステップと、
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学多層構造体の製造方法。
【請求項13】
基板の両面上にポリイミド前駆体組成物を塗布および乾燥して飛散防止層を形成するステップと、
前記基板上に形成された飛散防止層のいずれか1つの飛散防止層上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化してハードコーティング層を形成するステップと、
を含む、請求項11に記載の光学多層構造体の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルム。
【請求項15】
請求項14に記載のウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学多層構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置の基板およびカバーウィンドウなどの素材として、強化ガラスを代替可能な次世代素材として注目されている。フィルムをディスプレイ装置に適用するためには、固有の黄色度特性を改善し、無色透明な性能を与えることが必須であり、さらに、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用可能にするためには、機械的物性の向上が伴わなければならないため、ディスプレイ装置用ポリイミドフィルムの要求性能が益々高度化している。
【0003】
特にユーザが望むときに曲げたり折り畳んだりできるフレキシブルディスプレイ装置は、外部衝撃または曲がったり折り畳まれたりする過程で容易に割れないように柔軟な構造に設計されることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-1993652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、熱膨張-収縮挙動が緩和されたポリイミド飛散防止層が基板の一面上に形成され、前記基板の他の一面上にハードコーティング層が形成された構造を含むか、または
前記飛散防止層が基板の両面上に形成された構造を含む光学多層構造体であって、カール(curl)現象が良好に改善され、表面硬度が著しく上昇した光学多層構造体を提供する。
【0006】
他の一実施形態は、前記光学多層構造体の製造方法を提供する。
また他の一実施形態は、前記光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルムおよびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、基板と、
前記基板の一面上に形成され、下記化学式1の構造を含むポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせ、および無機粒子を含むポリイミドフィルムを含む飛散防止層と、
前記基板の他の一面上に形成されるハードコーティング層と、を含む、光学多層構造体を提供する。
【0008】
[化学式1]
【化1】
【0009】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-5アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-10アリールであり、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【0010】
一実施形態において、前記光学多層構造体は、前記基板とハードコーティング層との間に飛散防止層をさらに含んでもよい。
【0011】
他の一実施形態は、基板の一面上にポリイミド前駆体組成物を塗布および乾燥して飛散防止層を形成するステップと、前記基板の他の一面上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化してハードコーティング層を形成するステップと、を含む、前述した一実施形態に係る光学多層構造体の製造方法を提供する。
【0012】
また他の一実施形態は、基板の両面上にポリイミド前駆体組成物を塗布および乾燥して飛散防止層を形成するステップと、前記基板上に形成された飛散防止層のいずれか1つの飛散防止層上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化してハードコーティング層を形成するステップと、を含む、前述した一実施形態に係る光学多層構造体の製造方法を提供する。
【0013】
さらに他の一実施形態は、前述した一実施形態に係る光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルムを提供する。
さらに他の一実施形態は、前述した一実施形態に係るウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示は、シロキサン構造を含むポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせと、無機粒子とを含むポリイミド前駆体組成物から形成されるポリイミド飛散防止層が基板のいずれか一面または両面上に形成された構造を含む光学多層構造体に関する。一実施形態に係る前記光学多層構造体は、カール現象が低減され、基板の反りが最小化されるとともに、表面の硬度が著しく向上するため、機械的特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものである。
図2】一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載された実施の形態は種々の異なる形態に変形されてもよく、一実施形態に係る技術が以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。さらに、明細書の全体にわたって、ある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0017】
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。一例として、組成の含量が10%~80%または20%~50%に限定された場合、10%~50%または50%~80%の数値範囲も本明細書に記載されたものと解釈しなければならない。本明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0018】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「約」は、明示された値の30%、25%、20%、15%、10%、または5%以内の値とみなすことができる。
【0019】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0020】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、オリゴマー(oligomer)および重合体(polymer)を含んでもよく、単独重合体および共重合体を含んでもよい。前記共重合体は、ランダム共重合体(random copolymer)、ブロック共重合体(block copolymer)、グラフト共重合体(graft copolymer)、交互共重合体(alternating copolymer)、グラジエント共重合体(gradient copolymer)、またはこれらを全て含んでもよい。
【0021】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリイミド」は、イミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0022】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、ポリイミドフィルムは、ポリイミドを含むフィルムであってもよく、具体的に、ジアミン化合物溶液に酸無水物化合物を溶液重合してポリアミック酸を製造した後にイミド化することで製造される高耐熱性フィルムであってもよい。
【0023】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
【0024】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子が置換基で置換されたことを意味し、例えば、前記置換基は、重水素、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-30アリール基、C7-30アリールアルキル基、C1-30アルコキシ基、C1-20ヘテロアルキル基、C3-20ヘテロアリールアルキル基、C3-30シクロアルキル基、C3-15シクロアルケニル基、C6-15シクロアルキニル基、C2-30ヘテロ環基、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0025】
超薄型強化ガラス(Ultra thin glass、UTG)は、ディスプレイカバーウィンドウに用いられる強化ガラス素材部品であり、UTG上の耐飛散コーティングのためにポリイミドフィルムをコーティングする方法が知られているが、UTGとポリイミド膜との熱膨張係数(Thermal expansion coefficient)差により、乾燥ステップでフィルムにカールが発生する問題が解決されていない。一方、従来のカール現象改善用材料は、柔軟な構造を導入するなどによりカール現象を一部改善したりもしたが、柔軟な特性により表面の硬度が著しく低下するという問題があった。そこで、一実施形態では、ポリイミド前駆体分子内にStress relaxation segmentを導入し、UTG上にコーティングした際に、カール現象を最小化するとともに、表面硬度の低下を最小化することができるポリイミド前駆体およびそれを含む組成物を提供する。
【0026】
一実施形態は、基板と、
前記基板の一面上に形成され、下記化学式1の構造(または、それを含む構造単位)を含むポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせ、および無機粒子を含むポリイミドフィルムを含む飛散防止層と、
前記基板の他の一面上に形成されるハードコーティング層と、を含む、光学多層構造体を提供する。
【0027】
[化学式1]
【化2】
【0028】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-5アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-10アリールであり、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数であってもよい。
【0029】
一実施形態において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-3アルキル、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-2アルキル、または非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたメチルであってもよい。また、前記RおよびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC4-8アリール、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-8アリール、または非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたフェニルであってもよい。また、前記LおよびLは、それぞれ独立して、C1-5アルキレン、C2-5アルキレン、またはプロピレンであってもよい。前記1種以上のハロゲンで置換されたアルキルまたはアリールは、I、Br、Cl、および/またはFから選択される1種以上のハロゲンが1個以上置換されたものであってもよい。
【0030】
一実施形態において、前記xおよびyは、それぞれ独立して、1~100、1~50、1~30、または1~20であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、例えば、xとyの和を100とする際、xが1~99であり、yが99~1であるか、または、xが10~90であり、yが90~10であってもよい。
【0031】
一実施形態において、前記化学式1の構造は、下記化学式3のジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン(dimethylsiloxane-diphenylsiloxane、DMS-DPS)構造であってもよい。
【0032】
[化学式3]
【化3】
【0033】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、前記化学式1で表される構造を含むジアミンから誘導された単位を含んでもよく、前記化学式1の構造を含むジアミンの一例としては、下記構造を有するShin-etsu社製のX-22-1660B-3が挙げられる。
【0034】
【化4】
【0035】
この際、前記aおよびbは、それぞれ独立して、1以上の整数であるか、または1~50、1~30、または1~20であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、例えば、aとbの和を100とする際、aが1~99であり、bが99~1であるか、または、aが10~90であり、bが90~10であってもよい。
【0036】
一実施形態に係るポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、前記化学式1の構造を含むことで、それを超薄型強化ガラスにコーティングした際に、異種層間の熱的特性差によるカール現象を最小化することができる。
【0037】
一実施形態において、前記飛散防止層は、ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせと、無機粒子とを含むポリイミド前駆体組成物から形成されてもよい。
【0038】
前記ポリイミド前駆体組成物は、分配係数が負の溶媒および/または分配係数が正の溶媒を含んでもよい。分配係数が負の溶媒の例としては、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルプロパンアミド(DMPA)、N-エチルピロリドン(NEP)、またはメチルピロリドン(NMP)が挙げられる。また、分配係数が正の溶媒の例としては、シクロヘキサノン(CHN)、N,N-ジエチルプロパンアミド(DEPA)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、またはN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)が挙げられる。
【0039】
特定の理論に拘束しようとするものではないが、一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物は、分配係数が負の溶媒および正の溶媒の両方を含む混合溶媒を用いることで、カール現象を効果的に改善することができる。または、一実施形態では、分配係数が負の溶媒および正の溶媒の両方を用いることで、組成物(溶液)の均一性を著しく高め、白濁現象、相分離現象を改善することができ、これにより、無色透明なポリイミドフィルムを製造することができる。また、前記分配係数が負の溶媒および正の溶媒の両方を用いることで、ポリイミドフィルムを基板にコーティングした場合、異種層間の熱的特性差によるカール現象を最小化することができる。しかし、前記溶媒は、ポリイミド前駆体の単量体に応じて異なって採用できるものであり、必ずしも特定の溶媒または溶媒の組み合わせに限定されるものではない。
【0040】
一実施形態において、ポリイミド前駆体組成物に含まれる溶媒が分配係数が負の溶媒と正の溶媒の混合溶媒である場合、前記分配係数が負の溶媒と正の溶媒の質量比は5:5~9.5:0.5であってもよい。または、前記質量比は5:5~9:1、6:4~9:1、6.5:3.5~9:1、7:3~9:1、または7.5:2.5~8.5:1.5であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0041】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物に含まれる溶媒は、少なくとも1つ、具体的には1個以上、2個以上、3個以上、または1個~3個のヒドロキシ基(-OH)を分子内に含んでもよい。または、前記溶媒は、エーテル基(-O-)およびオキソ基(=O)のいずれか1つ以上を含む溶媒であってもよい。
【0042】
一実施形態において、前記化学式1の構造を含む単位は、ポリイミド前駆体の総重量に対して20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、20重量%~70重量%、20重量%~60重量%、25重量%~60重量%、30重量%~55重量%、または20重量%~50重量%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0043】
一実施形態において、前記化学式1の構造を含む単位は、ポリイミド前駆体に含まれるジアミンから誘導された単位の総重量に対して30重量%以上で含まれてもよい。または、例えば、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、40重量%~90重量%、40重量%~80重量%、または40重量%~60重量%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0044】
一実施形態において、前記化学式1の構造を含む単位は、ポリイミド前駆体に含まれる単量体中のジアミンの総モル数に対して50モル%~99モル%、60モル%~99モル%、70モル%~99モル%、75モル%~99モル%、70モル%~95モル%、80モル%~95モル%、90モル%~95モル%、または約93モル%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
一実施形態において、前記化学式1の構造を含む単位は、前記化学式1の構造を含む酸無水物および/またはジアミンから誘導された単位であってもよい。この際、前記酸無水物および/またはジアミンは、分子量が3000g/mol以上、3500g/mol以上、4000g/mol以上、3000g/mol~5500g/mol、3500g/mol~5000g/mol、または4000g/mol~5500g/molであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0046】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、下記化学式2で表されるジアミンから誘導された単位をさらに含んでもよい。
【0047】
[化学式2]
【化5】
【0048】
前記化学式2中、
11およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC1-20の1価の有機基であり、
11は、-SO-、-O-、または-C(=O)O-であるか、またはこれらのいずれか1つ以上の結合を含むC1-20の2価の有機基であり、および
前記化学式2は、フッ素原子結合を含まない。
【0049】
一実施形態において、前記R11およびR21は、それぞれ独立して、C1-15の1価の有機基、C1-10の1価の有機基、C1-8の1価の有機基、C1-5の1価の有機基、またはC1-3の1価の有機基であってもよく、例えば、前記有機基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、オキソ(=O)、エステル、アミド、またはこれらの組み合わせから選択されてもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0050】
一実施形態において、前記L11は、-SO-、-O-、および-C(=O)O-のいずれか1つ以上の結合を含む、C1-18の2価の有機基、C1-15の2価の有機基、C1-10の2価の有機基、またはC1-6の2価の有機基であるか、または-SO-、-O-、および-C(=O)O-のいずれか1つ以上と、C1-10アルキル、C5-18シクロアルキレン、およびC6-18アリーレンからなる群から選択されるいずれか1つ以上との組み合わせであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記L11は、例えば、-SO-、-O-、-C(=O)O-、
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】
、または
【化11】
であってもよい。また、前記L11は、ヒドロキシ基、チオール基、ニトロ基、シアノ基、C1-10アルキル、C6-20アリール、またはC5-20シクロアルキルで置換されていてもよい。しかし、フッ素原子結合は含まない。
【0051】
一実施形態において、前記化学式2の構造で表されるジアミンは、例えば、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-Oxydianiline、ODA)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-Bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane、BAPP)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-Diaminodiphenyl sulfone、4,4’-DDS)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-Diaminodiphenyl sulfone、3,3’-DDS)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-Bis(3-aminophenoxy)benzene、133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-Bis(4-aminophenoxy)benzene、134APB)、または1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4-Bis(4-aminophenoxy)benzene、144APB)であってもよい。一実施形態において、前記ポリイミド前駆体は、化学式2の構造で表されるジアミンを1個以上または2個以上含むことに限定はない。
【0052】
一実施形態に係るポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、前記化学式1の構造を含む単位を含むとともに、フッ素原子を含まない化学式2で表されるジアミンから誘導された単位をさらに含むことで、それにより製造されたポリイミドフィルムが、無色透明であるとともに、ガラス基板間に発生する残留応力が低く、高い接着性と機械的物性、そして約100℃~180℃の適切なガラス転移温度を有するようにすることができる。
【0053】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、フッ素系ジアミンから誘導された単位をさらに含んでもよい。前記フッ素系ジアミンは、フッ素原子を含むジアミンを意味する。前記フッ素系ジアミンの例としては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]hexafluoropropane、HFBAPP)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane、BAHF)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenylether)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル(4,4’-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)biphenyl)、または1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(1,4-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)benzene)などが挙げられる。
【0054】
それのみならず、前記ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、本明細書に開示された技術分野で通常用いられるジアミンから誘導された単位をさらに含んでもよい。例えば、前記ジアミンから誘導された単位は、芳香族ジアミンから誘導された単位を含んでもよく、前記芳香族ジアミンは、少なくとも1つの芳香族環を含むジアミンであってもよく、前記芳香族環は、単環であるか、2個以上の芳香族環が縮合した縮合環であるか、または2個以上の芳香族環が単結合、置換もしくは非置換のC1-5アルキレン基、またはOまたはC(=O)により連結された非縮合環であってもよい。例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)-hexafluoropropane、6FAP)、p-フェニレンジアミン(p-Phenylenediamine、pPDA)、m-フェニレンジアミン(m-Phenylenediamine、mPDA)、p-メチレンジアニリン(p-methylenedianiline、pMDA)、またはm-メチレンジアニリン(m-methylenedianiline、mMDA)から誘導された単位をさらに含んでもよい。
【0055】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせは、当該分野で通常用いられる酸無水物から誘導された単位を含んでもよい。例えば、前記酸無水物は、芳香族環を含む酸無水物、脂肪族環を含む酸無水物、テトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、前記酸無水物は、エチレングリコールビス(4-トリメリテート無水物)(Ethylene glycol bis(4-trimellitate anhydride)、TMEG-100)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4’-Oxydiphthalic anhydride、ODPA)、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(2,2-Bis[4-(2,3-dicarboxyphenoxy)phenyl]propane dianhydride)、4,4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(4,4’-(3,4-Dicarboxyphenoxy)diphenylsulfide dianhydride)、ピロメリット酸二無水物(Pyromellitic dianhydride、PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic dianhydride、CBDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Benzophenonetetracarboxylic dianhydride、BTDA)、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(4,4’-(4,4’-Isopropylidenediphenoxy)bis(phthalic anhydride)、BPADA)、3,3,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2-Bis-(3,4-dicarboxylphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(p-Phenylene bis(trimellitate anhydride)、TMHQ)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(2,2-Bis(4-hydroxyphenyl)propanedibenzoate-3,3’,4,4’-tetracarboxylic dianhydride、ESDA)、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(Naphthalenetetracarboxylic dianhydride、NTDA)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の酸無水物であってもよい。
例えば、前記酸無水物は、下記化学式4または化学式5で表される化合物であってもよい。
【0056】
[化学式4]
【化12】
【0057】
前記化学式4中、
は、それぞれ独立して、C3-10脂肪族環またはC4-10芳香族環であり、Yは、単結合、置換もしくは非置換のC1-20脂肪族鎖、置換もしくは非置換のC3-10脂肪族環、および/または置換もしくは非置換のC4-10芳香族環を含むリンカーであってもよい。具体的に、Yは、C1-20アルキレン、C1-10アルキレン、C1-5アルキレン、C3-10シクロアルキレン、C4-10アリーレン、C1-20アルキレンにより連結された2個以上のC3-10シクロアルキレン、C1-20アルキレンにより連結された2個以上のC4-10アリーレンを含んでもよい。
【0058】
[化学式5]
【化13】
【0059】
前記化学式5中、
は、それぞれ独立して、C3-10脂肪族環またはC4-10芳香族環であり、Yは、単結合、置換もしくは非置換のC1-20脂肪族鎖、置換もしくは非置換のC3-10脂肪族環、および/または置換もしくは非置換のC4-10芳香族環を含むリンカーであってもよい。具体的に、Yは、C1-20アルキレン、C1-10アルキレン、C1-5アルキレン、C3-10シクロアルキレン、C4-10アリーレン、C1-20アルキレンにより連結された2個以上のC3-10シクロアルキレン、C1-20アルキレンにより連結された2個以上のC4-10アリーレンを含んでもよい。
【0060】
具体的に、前記酸無水物は、下記化学式で表される化合物群のいずれか1つ以上であってもよい。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】
【0061】
一実施形態において、前記酸無水物は、ポリイミド前駆体の単量体の総モル数を基準として約30モル%~70モル%、40モル%~60モル%、45モル%~55モル%、または約50モル%で含まれてもよい。または、前記酸無水物は、ポリイミド前駆体の総重量に対して20重量%~70重量%、20重量%~60重量%、30重量%~60重量%、20重量%~50重量%、30重量%~50重量%、または約40重量%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0062】
一実施形態に係る無機粒子は、無機ナノ粒子であってもよく、平均直径は、例えば、5nm~50nmであってもよく、または、例えば、5nm~30nm、または5nm~20nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0063】
前記平均直径は、例えば、光学顕微鏡で粒子を観察して測定するか、SEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)、SPM(Scanning Probe Microscope)、STM(Scanning Tunneling Microscope)、AFM(Atomic Force Microscope)を用いて測定するか、または粒度分析器を用いて測定することができる。例えば、無機粒子を含む組成物にレーザ粒度分析器を用いてレーザを照射し、回折と粒度の大きさの相関関係から粒子の大きさを推論して得ることができる。例えば、D50、D10、またはD90値であってもよい。または、例えば、面積平均(Ma)、数平均(Mn)、または体積平均(Mv)値であってもよい。
【0064】
一実施形態において、前記無機粒子は、例えば、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、チタン酸バリウム、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。前記無機ナノ粒子は、有機溶媒に分散した形態で前記ポリイミド樹脂と混合されてもよく、分散性を向上させるために表面処理された物質であってもよい。例えば、一実施形態に係る無機粒子は、表面がC1-5アルコキシ基で置換されたものであってもよく、具体的に例を挙げると、メトキシ基またはエトキシ基で置換されたものであってもよい。一方、前記表面処理は、公知の表面処理方法を限定なく採択して行うことができるため、特に限定されない。
【0065】
一実施形態において、前記無機粒子は、化学式1で表される化合物の置換基に化学的に結合していてもよい。また、一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、前記無機粒子を含むことで、従来の飛散防止層の表面硬度の低下現象を著しく良好に改善することができる。したがって、一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物から形成された飛散防止層は、化学式1で表される単位を含むことで、柔軟性を高めて熱膨張-収縮挙動を緩和し、これにより、基板の反り現象を最小化するとともに、無機粒子を含むことで、表面硬度を良好に改善することができる。
【0066】
一実施形態において、前記無機粒子は、ポリイミド前駆体組成物の全重量に対して1重量%~30重量%、2重量%~25重量%、5重量%~20重量%、または1重量%~25重量%で含まれてもよいが、必ずしも上記範囲に限定されるものではない。
【0067】
一実施形態において、ポリイミド前駆体組成物の固形分含量は、ポリイミド前駆体組成物の総重量を基準として40重量%以下、10重量%~40重量%、35重量%以下、30重量%以下、または20重量%~40重量%であってもよい。ここで、固形分は、ポリアミック酸および/またはポリイミドであってもよい。
【0068】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体および/またはポリイミドの分子量は500g/mol~200,000g/mol、または10,000g/mol~100,000g/molであってもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0069】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物は、ブルー系の顔料および染料のいずれか1つ以上をさらに含んでもよい。
前記ブルー系の顔料または染料の最大吸収波長は、黄色系の波長範囲を含む範囲であれば特に限定されないが、例えば、520nm~680nm、520nm~650nm、550nm~650nm、または550nm~620nmであってもよい。前述した範囲の最大吸収波長を有する顔料または染料を用いることで、一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物から製造されるポリイミドフィルムの青色または紫色波長の光吸収現象を効果的に相殺させ、黄色度をさらに効果的に改善することができる。さらに、ポリイミド前駆体組成物の製造に用いられる単量体の種類および組成、またはポリイミドフィルムの光学的物性に応じて無機顔料の最大吸収波長範囲を適宜選択することで、フィルムの黄色度、屈折率、厚さ方向の位相差などの光学的物性までさらに良好にすることができる。
【0070】
前記顔料としては、ブルー系の顔料または520nm~680nmの最大吸収波長を有する公知の顔料を特に限定なく用いてもよく、例えば、天然鉱物;または亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、およびアルミニウムから選択される1つ以上の金属またはその金属酸化物;を含む無機顔料であってもよい。前記顔料は、分散剤と共に顔料分散液に含まれて用いられてもよい。
【0071】
前記無機顔料の平均粒度は30nm~100nmであってもよい。または、前記平均粒度は、必ずしも限定されるものではないが、例えば、50nm~100nm、または70nm~100nmであってもよい。前記無機顔料の平均粒度は、例えば、分散液中で測定されるか、またはポリイミドフィルム内で測定されてもよい。また、例えば、前記顔料の分散前の固相の平均粒度は、例えば、10nm~70nmであってもよく、例えば、30nm~70nmであってもよく、または50nm~70nmであってもよい。
【0072】
前記顔料は、分散性を向上させるために、超音波などの手段が用いられてもよく、分散剤を用いてもよい。前記分散剤は、顔料間の凝集を防止し、顔料の分散性および分散安定性の向上が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、顔料に吸着する官能基および分散媒(前記有機溶媒)に親和性が高い官能基を有してもよく、前記2種類の官能基のバランスを調節して分散剤を決めることができる。前記分散剤は、被分散物である顔料の表面状態に合わせて多様な種類が用いられてもよい。例えば、一実施形態に係る顔料分散剤は、酸性官能基を有してもよく、この場合、酸性官能基が顔料に吸着してもよい。前記酸性官能基は、例えば、カルボン酸(carboxylic acid)であってもよい。
【0073】
前記染料としては、ブルー系の染料または520nm~680nmの最大吸収波長を有する公知の染料を特に限定なく用いてもよく、例えば、酸性染料、直接染料、媒染染料などが挙げられる。または、カラーインデックス(The society of Dyers and Colourists出版)、または染色ノート(色染社)に記載されている公知の染料が挙げられる。または、化学構造としては、アゾ系染料、シアニン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、アントラキノン系染料、ナフトキノン系染料、キノンイミン系染料、メチン系染料、アゾメチン系染料、スクアリリウム系染料、アクリジン系染料、スチリル系染料、クマリン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、インディゴ系染料などが挙げられる。
【0074】
一実施形態において、前記顔料は、ポリイミド前駆体組成物に含まれるポリアミック酸および/またはポリイミド固形分を基準として10ppm~1,500ppmであってもよく、または、例えば、100ppm~1,500ppm、または500ppm~1,500ppmであってもよい。ここで、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド固形分は、ポリアミック酸および/またはポリイミドを意味し得る。
【0075】
一実施形態において、前記染料は、ポリイミド前駆体組成物に含まれるポリアミック酸および/またはポリイミド固形分を基準として10ppm~500ppmであってもよく、または、例えば、10ppm~300ppm、10ppm~200ppm、50ppm~200ppm、または80ppm~200ppmであってもよい。ここで、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド固形分は、ポリアミック酸および/またはポリイミドを意味し得る。
【0076】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物は、本明細書に開示された技術分野で通常用いられる添加剤をさらに含んでもよく、例えば、難燃剤、接着力向上剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、または可塑剤をさらに含んでもよい。
【0077】
一実施形態において、前記基板は、超薄型強化ガラス(Ultra thin glass、UTG)基板であってもよい。または、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレンアクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂などから製造されてもよく、これらの樹脂を単独でまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0078】
一実施形態において、前記基板の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm~50μm、5μm~50μm、10μm~50μm、10μm~40μm、20μm~50μm、20μm~40μm、または25μm~35μmであってもよい。
【0079】
本明細書で用いられる用語「前面」は、多層構造体の積層構造において、ユーザにより近い方向の面を意味し得る。その逆に、「後面」は、多層構造体の積層構造において、ユーザからより遠い方向の面を意味し得る。一実施形態に係る積層構造において、ディスプレイ表示素子は、最後面に位置してもよい。
【0080】
一実施形態において、前記飛散防止層は、基板のいずれか一面(例えば、基板の背面(後面)に形成されてもよい)のみに形成されるか(図1)、または基板の前面および後面(両面)に形成されてもよい(図2)。
【0081】
一実施形態において、前記飛散防止層が基板のいずれか一面に形成される場合、前記飛散防止層は、基板の一面(例えば、後面(背面))上に形成されてもよく、例えば、基板の一面に接して形成されてもよい。また、前記飛散防止層が形成されていない基板の他の一面(例えば、前面)上にはハードコーティング層が形成され、例えば、基板の他の一面に形成されてもよい(背面積層)。また、前記飛散防止層の一面(例えば、基板と接しない他の一面)には表示素子が位置してもよい。
【0082】
一実施形態において、前記飛散防止層が基板の両面に形成される場合、前記光学多層構造体は、前記背面積層の場合において、前記基板とハードコーティング層との間に前記飛散防止層をさらに含む形態であってもよい。
【0083】
この場合、前記飛散防止層は、例えば、基板の両面に接して形成されてもよい。前記基板の両面に形成された飛散防止層のいずれか1つの飛散防止層上(例えば、前面)にはハードコーティング層が形成される。また、ハードコーティング層が形成されていない他の飛散防止層の一面には表示素子が位置してもよい。
【0084】
一実施形態に係る光学多層構造体は、基板のいずれか一面上に飛散防止層が形成され、基板の他の一面上にハードコーティング層が形成されることで(背面積層、図1)、基板のいずれか一面上に飛散防止層が形成され、ハードコーティング層が飛散防止層上に形成される(片面積層)光学多層構造体に比べて、カール現象および表面硬度の低下現象が良好に改善されることができる。
【0085】
一実施形態に係る光学多層構造体は、基板の両面上に飛散防止層が形成され、形成された飛散防止層(2層の飛散防止層のいずれか1層または1層以上)上にハードコーティング層が形成されることで(両面積層、図2)、基板のいずれか一面上に飛散防止層が形成され、ハードコーティング層が飛散防止層上に形成される(片面積層)光学多層構造体に比べて、カール現象および表面硬度の低下現象が良好に改善されることができる。
【0086】
一実施形態に係る光学多層構造体は、前記ポリイミド前駆体組成物から形成されたポリイミドを含むことで、耐飛散特性が強化されるとともに、ハードコーティング層および基板との相互作用により基板の反り現象および表面硬度の低下現象を最小化することができる。
【0087】
一実施形態において、前記飛散防止層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm~100μm、1μm~80μm、1μm~50μm、1μm~30μm、5μm~20μm、または5μm~15μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0088】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、ハードコーティング層形成用組成物が硬化して形成されてもよく、例えば、ハードコーティング層形成用組成物を光硬化後に熱硬化した複合ハードコーティング層であってもよい。
【0089】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んで形成されてもよく、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を含むシロキサン(Siloxane)系樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物が硬化する場合、優れた硬度および低い曲げ特性を有することができる。
【0090】
前記エポキシ基は、環状エポキシ基、脂肪族エポキシ基、および芳香族エポキシ基から選択されるいずれか1つ以上であってもよく、前記シロキサン樹脂は、シリコン原子と酸素原子が共有結合を形成した高分子化合物を意味し得る。
【0091】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン(Silsesquioxane)樹脂であってもよく、具体的には、シルセスキオキサン樹脂のケイ素原子にエポキシ基が直接置換されるか、または前記ケイ素原子に置換された置換基にエポキシ基が置換されたものであってもよく、より具体的には、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が置換されたシルセスキオキサン樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0092】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、重量平均分子量が1,000g/mol~20,000g/mol、1,000g/mol~18,000g/mol、または2,000g/mol~15,000g/molであってもよい。重量平均分子量が前述した範囲である場合、前記ハードコーティング層形成用組成物の流動性、塗布性、硬化反応性などがさらに向上することができる。
【0093】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するシロキサン系化合物は、下記化学式6で表されるアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。
【0094】
[化学式6]
61 Si(OR624-n
【0095】
前記化学式6中、R61は、炭素数3~6のエポキシシクロアルキル基またはオキシラニル基で置換された直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル基を含んでもよく、R62は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~7のアルキル基であり、nは、1~3の整数であってもよい。
【0096】
前記化学式6で表されるアルコキシシラン化合物は、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0097】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、ハードコーティング層形成用組成物の全重量に対して20重量%~70重量%、または20重量%~50重量%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0098】
一実施形態において、ハードコーティング層形成用組成物は、優れた流動性および塗工性を有することができ、また、ハードコーティング層形成用組成物の硬化時に均一な硬化が可能であるため、過硬化によるクラックなどの物理的欠陥を効果的に防止することができ、優れた硬度を示すことができる。
【0099】
一実施形態において、前記ハードコーティング層の厚さは1μm~100μm、1μm~80μm、1μm~50μm、1μm~30μm、1μm~20μm、または3μm~15μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0100】
一実施形態において、前記光学多層構造体は、付着促進層、帯電防止層、耐指紋層、スクラッチ防止層、低屈折層、低反射層、撥水層、反射防止層、および/または衝撃吸収層などをさらに含んでもよい。
【0101】
一実施形態に係る光学多層構造体は、
一実施形態に係るポリイミド飛散防止層形成用組成物(または、ポリイミド前駆体組成物)により形成された飛散防止層が基板の一面上に形成され、前記飛散防止層が形成されていない基板の他の一面上にハードコーティング層が形成された構造を含むか、または
前記飛散防止層が基板の両面上に形成され、形成された飛散防止層のいずれか1つの飛散防止層(例えば、前面の飛散防止層)上にハードコーティング層が形成された構造を含むことで、優れた表面硬度を有することができる。
【0102】
一実施形態に係る光学多層構造体は、表面硬度が1H以上であってもよい。または、例えば、5H以下、4H以下、2H以上、0.5H~5H、1H~4H、1H~3H、または2H~3Hであってもよい。前記表面硬度は、光学多層構造体の最外側の表面硬度であってもよく、または、光学多層構造体を構成する飛散防止層および/またはハードコーティング層の表面硬度であってもよい。一実施形態に係る前記表面硬度は、鉛筆硬度試験器を用いて、750gの重りの荷重をかけて測定することができ、具体的に、鉛筆と試験片の角度を約45゜に設置し、20mm/minの速度で10mmずつ測定することができる。この際、測定は、1つの試験片当たりに3回ずつ測定し、その平均値を表面硬度値として表すことができる。また、試験片のスクラッチが2個以上であれば不良と判定し、表面硬度値は、不良が発生する前の硬度値を意味し得る。
【0103】
一実施形態に係るポリイミド飛散防止層形成用組成物(または、ポリイミド前駆体組成物)により形成された飛散防止層が基板の一面上に形成され、前記飛散防止層が形成されていない基板の他の一面上にハードコーティング層が形成された構造を含むか、または
前記飛散防止層が基板の両面上に形成され、形成された飛散防止層のいずれか1つの飛散防止層(例えば、前面の飛散防止層)上にハードコーティング層が形成された構造を含むことで、基板の反り現象が良好に改善されることができる。一実施形態において、前記多層構造体または飛散防止層がコーティングされた基板(例えば、超薄型ガラス基板)の両端部を定規を用いて地面から高さを測定してカール量を計算した場合(または、両側でそれぞれ測定された値の平均を計算した場合)、その値が3.0mm以下、2.0mm以下、1.0mm以下、0.5mm以下、0.01mm~3.0mm、0.01mm~2.0mm、0.01~1.0mm、0.05~0.5mm、0.05mm~0.2mm、または約0.1mmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0104】
一実施形態は、飛散防止層が背面積層された光学多層構造体の製造方法を提供する。
具体的に、前記製造方法は、基板の一面上に前記化学式1の構造を含む酸無水物またはジアミンから誘導された単位を含むポリイミド前駆体、および無機粒子を含むポリイミド前駆体組成物を含む飛散防止層形成用組成物を塗布および乾燥して飛散防止層を形成するステップと、前記基板の他の一面上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化してハードコーティング層を形成するステップと、を含む。
【0105】
他の一実施形態は、飛散防止層が両面積層された光学多層構造体の製造方法を提供する。
具体的に、前記製造方法は、基板の両面上に前記化学式1の構造を含む酸無水物またはジアミンから誘導された単位を含むポリイミド前駆体組成物を塗布および乾燥して飛散防止層を形成するステップと、前記基板の両面上に形成された飛散防止層のいずれか1つの飛散防止層上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化してハードコーティング層を形成するステップと、を含む。
この際、前記ポリイミド前駆体組成物は、前述した一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物を同様に適用することができる。
【0106】
一実施形態において、前記飛散防止層は、飛散防止層形成用組成物を塗布した後に乾燥して形成されてもよく、前記乾燥は、例えば、二次乾燥ステップを含んでもよい。例えば、約30℃~60℃、40℃~60℃、または45℃~55℃の温度で、約30秒~120秒、30秒~90秒、または50秒~80秒間一次乾燥した後、約150℃~300℃、180℃~280℃、200℃~280℃、または200℃~250℃の温度で、約1分~30分、1分~20分、5分~20分、または5分~15分間二次乾燥するステップを含んでもよい。
【0107】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んで形成されてもよい。この際、前記架橋剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物を含んでもよく、例えば、前記架橋剤は、2個の3,4-エポキシシクロヘキシル基が連結された化合物を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合と構造および性質が類似してもよく、この場合、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物の架橋結合を促進させることができる。
【0108】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、熱開始剤および/または光開始剤をさらに含んで形成されてもよい。
一実施形態において、前記ハードコーティング層に熱開始剤を用いる場合、硬化半減期を短縮させることができ、低温条件においても迅速に熱硬化を行うことができるため、高温条件下で長期間熱処理を行う場合に発生する損傷および変形を防止することができる。前記熱開始剤は、ハードコーティング層形成用組成物に熱が加えられる際に、前記エポキシシロキサン樹脂または架橋剤の架橋反応を促進することができる。前記熱開始剤としては、カチオン性熱開始剤が用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0109】
また、ハードコーティング層の形成時には前記熱開始剤を用いた熱硬化と前記光開始剤を用いた光硬化を併用することで、ハードコーティング層の硬化度、硬度、柔軟性などを向上させることができる。例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を基材などに塗布し、紫外線を照射(光硬化)して少なくとも部分的に硬化させた後、追加的に熱を加えて(熱硬化)実質的に完全に硬化させてもよい。
【0110】
前記光硬化により前記ハードコーティング層形成用組成物が半硬化または部分硬化することができ、前記半硬化または部分硬化したハードコーティング層形成用組成物は、前記熱硬化により実質的に完全に硬化することができる。例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化だけで硬化する際には、硬化時間が過度に長くなるか、または部分的に硬化が完全に行われないことがある。これに対し、前記光硬化に続き前記熱硬化を行う場合には、光硬化により硬化していない部分が熱硬化により実質的に完全に硬化することができ、硬化時間も減少することができる。
【0111】
また、一般的に、硬化時間の増加(例えば、露光時間の増加)により、既に適した程度に硬化した部分に過度なエネルギーが提供されることで過硬化が起こり得る。前記過硬化が行われる場合、ハードコーティング層が柔軟性を失うか、またはカール、クラックなどの機械的欠陥が発生し得る。これに対し、前記光硬化と前記熱硬化を併用する場合、前記ハードコーティング層形成用組成物を短時間に実質的に完全に硬化させることができ、ハードコーティング層の柔軟性を維持しながらも硬度をさらに向上させることができる。
【0112】
前記ハードコーティング層形成用組成物を先に光硬化し、追加的に熱硬化する方法について前述したが、光硬化および熱硬化の順が特にこれに限定されるものではない。すなわち、一部の実施形態では、前記熱硬化が先に行われた後に前記光硬化が行われてもよいことはいうまでもない。
【0113】
一実施形態において、前記熱開始剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1重量部~20重量部、または1重量部~20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、例えば、前記熱開始剤は、全ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01重量部~15重量部、0.1重量部~15重量部、または0.3重量部~10重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0114】
一実施形態において、前記光開始剤は、光カチオン開始剤を含んでもよい。前記光カチオン開始剤は、前記エポキシシロキサン樹脂およびエポキシ系単量体の重合を開始することができる。前記光カチオン開始剤としては、ヨードニウム塩、オニウム塩、および/または有機金属塩などを用いてもよく、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体などを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0115】
前記光開始剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1重量部~15重量部、または1重量部~15重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0116】
また、例えば、前記光開始剤は、全ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01重量部~10重量部、0.1重量部~10重量部、または0.3重量部~5重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0117】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の溶媒が用いられてもよい。
【0118】
前記溶媒の非限定的な例として、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)、ヘキサン系(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0119】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、無機充填剤をさらに含んでもよい。前記無機充填剤は、ハードコーティング層の硬度をさらに向上させることができる。
【0120】
前記無機充填剤は、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などが用いられてもよく、または、ハードコーティング層形成用組成物の他の成分との相溶性の面でシリカが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0121】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、滑剤をさらに含んでもよい。前記滑剤は、巻き取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などをさらに改善させることができる。
【0122】
前記滑剤の種類は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0123】
この他にも、前記ハードコーティング層形成用組成物は、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、熱的高分子化禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、潤滑剤、防汚剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0124】
一実施形態において、前記塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、およびスピンコーティングなどにより行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0125】
一実施形態は、一実施形態に係る光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルム、および前記ウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置を提供する。
【0126】
一実施形態に係る多層構造体は、カール現象が最小化されるだけでなく、表面硬度が高いため、ウィンドウカバーフィルムおよび/またはフレキシブルディスプレイパネルに効果的に適用することができる。
【0127】
前記ウィンドウカバーフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置の最外面ウィンドウ基板として用いることができる。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0128】
以下、実施例および実験例を以下に具体的に例示して説明する。ただし、後述する実施例および実験例は一実施態様の一部を例示するものにすぎず、本明細書に記載された技術がこれに限定されるものではない。
【0129】
<実施例1>
1-1.飛散防止層形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内に、プロピレングリコールメチルエーテル(Propyleneglycol methylether、PGME)とシクロヘキサノン(Cyclohexanone、CHN)を8:2の質量比で混合した溶媒を230g満たした。反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)29.0gおよびジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン(dimethylsiloxane-diphenylsiloxane、DMS-DPS)オリゴマージアミン化合物(Shin-etsu社、X-22-1660B-3、分子量4,400g/mol)29.6gを入れて溶解させた。これにエチレングリコールビス(4-トリメリテート無水物)(Ethylene glycol bis(4-trimellitate anhydride)、TMEG-100)40.0gを添加し、50℃で8時間、常温で24時間溶解させつつ撹拌し、ポリアミック酸樹脂を製造した。この際、各単量体は、(TFMB+X-22-1660B-3):TMEG-100=0.99:1.0のモル比となるようにした。その次に、N,N-ジメチルプロパンアミド(N,N-Dimethylpropanamide、DMPA)に30重量%で分散しているシリカナノ粒子(直径:15nm)を組成物の全重量の5重量%で添加した後に3時間撹拌し、固形分含量が23重量%のポリイミド-飛散防止層形成用組成物を製造した。
【0130】
1-2.ハードコーティング層形成用組成物の製造
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(2-(3,4-Epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane、ECTMS、TCI社)と水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して混合物を製造した後、250mLの2-neckフラスコに入れた。前記混合物にテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Tetramethylammoniumhydroxide、TMAH、Aldrich社)触媒0.1mL、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF、Aldrich社)100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレン(Methylene chloride、Aldrich社)で抽出し、抽出物をMgSOで水分を除去し、溶媒を真空乾燥させ、エポキシシロキサン系樹脂を得た。
【0131】
上記のように製造されたエポキシシロキサン系樹脂30g、架橋剤として(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート((3’,4’-Epoxycyclohexyl)methyl 3,4-epoxycyclohexanecarboxylate)10gおよびビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]アジペート(Bis[(3,4-epoxycyclohexyl)methyl]adipate)5g、光開始剤として(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート((4-Methylphenyl)[4-(2-methylpropyl)phenyl]iodoniumhexafluorophosphate)0.5g、メチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone)54.5gを混合し、ハードコーティング層形成用組成物を製造した。
【0132】
1-3.光学多層構造体の製造
ガラス基板(UTG、30μm)の後面に上記で製造された飛散防止層形成用組成物をメイヤーバー#30で塗布し、50℃で1分間乾燥した後、230℃で10分間乾燥し、厚さ10μmのポリイミド飛散防止層を形成した。
【0133】
その次に、前記ガラス基板の前面に上記で製造されたハードコーティング層形成用組成物をメイヤーバー#10でコーティングし、60℃で5分間乾燥した後、1J/cmの紫外線を照射した後に120℃で15分間硬化させ、厚さ10μmのハードコーティング層を形成し、UTG光学多層構造体を製造した。
【0134】
<実施例2および実施例3>
飛散防止層形成用組成物の製造過程において、シリカナノ粒子を組成物の全重量の10重量%および20重量%でそれぞれ添加することを除いては、前記実施例1と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0135】
<実施例4>
4-1.飛散防止層形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内にDMPA 188gを満たした後、反応器の温度を常温に維持した状態で、DMS-DPSオリゴマージアミン化合物(Shin-etsu社、X-22-1660B-3、分子量4,340g/mol)0.0058molおよび1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-Bis(4-aminophenoxy)benzene、TPER)0.0502molを同じ温度で添加して溶解させた。これにTMEG-100 0.0561molを同じ温度で添加し、60℃で4時間撹拌した後、常温で24時間撹拌し、ポリアミック酸樹脂を製造した。その次に、DMPAに30重量%で分散しているシリカナノ粒子(直径:15nm)を組成物の全重量の5重量%で添加した後に3時間撹拌し、固形分含量が23重量%のポリイミド-飛散防止層形成用組成物を製造した。
【0136】
4-2.ハードコーティング層形成用組成物の製造
ECTMSと水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して混合物を製造した後、250mLの2-neckフラスコに入れた。前記混合物にTMAH触媒0.1mL、THF 100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレンで抽出し、抽出物をMgSOで水分を除去し、溶媒を真空乾燥させ、エポキシシロキサン系樹脂を得た。
【0137】
上記のように製造されたエポキシシロキサン系樹脂30g、架橋剤として(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート10gおよびビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]アジペート5g、光開始剤として(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート0.5g、メチルエチルケトン54.5gを混合し、ハードコーティング層形成用組成物を製造した。
【0138】
4-3.光学多層構造体の製造
ガラス基板(UTG、30μm)の後面に上記で製造された飛散防止層形成用組成物をメイヤーバー#30で塗布し、50℃で1分間乾燥した後、230℃で10分間乾燥し、厚さ10μmのポリイミド飛散防止層を形成した。
【0139】
その次に、前記ガラス基板の前面に上記で製造されたハードコーティング層形成用組成物をメイヤーバー#10でコーティングし、60℃で5分間乾燥した後、1J/cmの紫外線を照射した後に120℃で15分間硬化させ、厚さ10μmのハードコーティング層を形成し、UTG光学多層構造体を製造した。
【0140】
<実施例5および実施例6>
飛散防止層形成用組成物の製造過程において、シリカナノ粒子を組成物の全重量の10重量%および20重量%でそれぞれ添加することを除いては、前記実施例4と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0141】
<実施例7>
7-1.飛散防止層形成用組成物の製造
前記実施例1の1-1.飛散防止層形成用組成物の製造と同様に行った。
【0142】
7-2.ハードコーティング層形成用組成物の製造
前記実施例1の1-2.ハードコーティング層形成用組成物の製造と同様に行った。
【0143】
7-3.光学多層構造体の製造
ガラス基板(UTG、30μm)の前面に上記で製造された飛散防止層形成用組成物をメイヤーバー#30で塗布し、50℃で1分間乾燥した後、230℃で10分間乾燥し、厚さ10μmの第1ポリイミド飛散防止層を形成した。その次に、前記ガラス基板の後面に同様の方法で厚さ10μmの第2ポリイミド飛散防止層を形成した。
【0144】
その次に、前記形成された第1ポリイミド飛散防止層上に上記で製造されたハードコーティング層形成用組成物をメイヤーバー#10でコーティングし、60℃で5分間乾燥した後、1J/cmの紫外線を照射した後に120℃で15分間硬化させ、厚さ10μmのハードコーティング層を形成し、UTG光学多層構造体を製造した。
【0145】
<実施例8および実施例9>
飛散防止層形成用組成物の製造過程において、シリカナノ粒子を組成物の全重量の10重量%および20重量%でそれぞれ添加することを除いては、前記実施例7と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0146】
<実施例10>
10-1.飛散防止層形成用組成物の製造
前記実施例4の4-1.飛散防止層形成用組成物の製造と同様に行った。
【0147】
10-2.ハードコーティング層形成用組成物の製造
前記実施例4の4-2.ハードコーティング層形成用組成物の製造と同様に行った。
【0148】
10-3.光学多層構造体の製造
ガラス基板(UTG、30μm)の前面に上記で製造された飛散防止層形成用組成物をメイヤーバー#30で塗布し、50℃で1分間乾燥した後、230℃で10分間乾燥し、厚さ10μmの第1ポリイミド飛散防止層を形成した。その次に、前記ガラス基板の後面に同様の方法で厚さ10μmの第2ポリイミド飛散防止層を形成した。
【0149】
その次に、前記形成された第1ポリイミド飛散防止層上に上記で製造されたハードコーティング層形成用組成物をメイヤーバー#10でコーティングし、60℃で5分間乾燥した後、1J/cmの紫外線を照射した後に120℃で15分間硬化させ、厚さ10μmのハードコーティング層を形成し、UTG光学多層構造体を製造した。
【0150】
<実施例11および実施例12>
飛散防止層形成用組成物の製造過程において、シリカナノ粒子を組成物の全重量の10重量%および20重量%でそれぞれ添加することを除いては、前記実施例10と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0151】
<比較例1>
飛散防止層形成用組成物の製造過程において、シリカナノ粒子を添加しないことを除いては、前記実施例1と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0152】
<比較例2>
飛散防止層形成用組成物の製造過程において、シリカナノ粒子を添加しないことを除いては、前記実施例4と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0153】
<比較例3>
光学多層構造体の製造ステップにおいて、飛散防止層を基板の後面に形成し、ハードコーティング層を基板の前面に形成する代わりに、飛散防止層を基板の前面に形成し、ハードコーティング層を飛散防止層上に形成することを除いては、前記実施例1と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0154】
<比較例4>
光学多層構造体の製造ステップにおいて、飛散防止層を基板の後面に形成し、ハードコーティング層を基板の前面に形成する代わりに、飛散防止層を基板の前面に形成し、ハードコーティング層を飛散防止層上に形成することを除いては、前記実施例4と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0155】
<比較例5>
飛散防止層形成用組成物の製造過程において、シリカナノ粒子を添加しないことを除いては、前記実施例7と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0156】
<比較例6>
飛散防止層形成用組成物の製造過程において、シリカナノ粒子を添加しないことを除いては、前記実施例10と同様の方法でUTG光学多層構造体を製造した。
【0157】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造されたUTG光学多層構造体を用いて下記のような方法で基板の曲げ特性および表面硬度を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0158】
1.基板の反り(カール、curl)の測定
前記実施例および比較例で製造されたUTG光学多層構造体の両端部が地面からカールが発生した程度を定規を用いて測定し、カール量(mm)は、両側で測定された値の平均値で計算した。
【0159】
2.表面硬度の測定
鉛筆硬度試験器(Ocean Science社、COAD.607)を用いて、750gの重りの荷重をかけて鉛筆硬度を測定した。鉛筆(三菱社)と試験片の角度を45゜に設置し、20mm/minの速度で10mmずつ測定した。1つの試験片当たりに3回ずつ測定し、スクラッチが2個以上であれば不良と判定し、表面硬度は、不良が発生する前の硬度を表示した。
【0160】
【表1】
【0161】
前記表1から確認できるように、無機粒子であるシリカ粒子を含み、ポリイミド飛散防止層が基板の背面または両面に形成される実施例1~実施例12のUTG光学多層構造体は、比較例に比べて、カール現象が最小化されるだけでなく、著しく改善された表面硬度を有することを確認することができる。具体的に、実施例は、無機粒子を含まない比較例1、2、5、6に比べて、表面硬度の低下現象が著しく改善された。また、実施例は、飛散防止層が基板の前面に形成され、ハードコーティング層が飛散防止層上に形成された構造を含む比較例3、4に比べて、カール現象および表面硬度の低下現象が良好に改善された。
【0162】
以上、好ましい実施例および実験例により一実施形態を詳しく説明したが、一実施形態の範囲が特定の実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求範囲により解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0163】
100:光学多層構造体
10:ディスプレイ表示素子
20:基板
30:飛散防止層
40:ハードコーティング層
図1
図2