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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174553
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法及び焼結機
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
C22B1/20 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077839
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2022086591
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 一洋
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆英
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA33
4K001CA36
4K001CA40
4K001CA41
4K001CA43
4K001CA46
(57)【要約】
【課題】焼結鉱を製造する際に、装入層内における炭材の燃焼と焼結原料の溶融の進行状況とを精度良く測定し、炭材の燃焼及び焼結原料の溶融の進行状況を必要に応じて適正化する。
【解決手段】焼結鉱の製造方法であって、循環移動するパレット26に焼結原料を装入して装入層を形成させ、点火炉20を用いて前記装入層の上表層を点火し、前記装入層の下方から空気を吸引して前記焼結原料に含まれる炭材を燃焼させて焼結ケーキとし、その後、前記焼結ケーキを排鉱部から排出して焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、点火後の装入層の収縮量または収縮速度を測定し、前記装入層の収縮量または収縮速度が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動するパレットに焼結原料を装入して装入層を形成させ、点火炉を用いて前記装入層の上表層を点火し、前記装入層の下方から空気を吸引して前記焼結原料に含まれる炭材を燃焼させて焼結ケーキとし、その後、前記焼結ケーキを排鉱部から排出して焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、
点火後の装入層の収縮量を測定し、前記装入層の収縮量が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整することを特徴とする、焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
循環移動するパレットに焼結原料を装入して装入層を形成させ、点火炉を用いて前記装入層の上表層を点火し、前記装入層の下方から空気を吸引して前記焼結原料に含まれる炭材を燃焼させて焼結ケーキとし、その後、前記焼結ケーキを排鉱部から排出して焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、
点火後の装入層の収縮速度を測定し、前記装入層の収縮速度が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整することを特徴とする、焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記測定を、パレットの幅方向において2つ以上の場所で測定し、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量のうちのいずれか1つまたは2つ以上を前記パレットの幅方向で調整することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
前記測定を、パレットの移動方向において2つ以上の場所で測定することを特徴とする、請求項3に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項5】
前記測定は、前記装入層の上面の高さ位置を測定することを特徴とする、請求項4に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項6】
前記測定は、前記装入層に接触せずに測定することを特徴とする、請求項5に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項7】
循環移動するパレットと、前記パレットに焼結原料を装入して装入層を形成する給鉱部と、前記装入層の表層の炭材に点火する点火炉と、前記パレットの下方に設置された、前記装入層の下方から空気を吸引する風箱とを有し、前記焼結原料に含まれる炭材の燃焼熱によって焼結原料を焼結する焼結機であって、
点火後の前記装入層の収縮量を測定する位置測定装置を有し、前記装入層の収縮量が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整する機能を有することを特徴とする、焼結機。
【請求項8】
循環移動するパレットと、前記パレットに焼結原料を装入して装入層を形成する給鉱部と、前記装入層の表層の炭材に点火する点火炉と、前記パレットの下方に設置された、前記装入層の下方から空気を吸引する風箱とを有し、前記焼結原料に含まれる炭材の燃焼熱によって焼結原料を焼結する焼結機であって、
点火後の前記装入層の収縮速度を測定する位置測定装置を有し、前記装入層の収縮速度が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整する機能を有することを特徴とする、焼結機。
【請求項9】
前記位置測定装置は、パレットの幅方向において2つ以上の場所を測定し、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量のうちのいずれか1つまたは2つ以上を前記パレットの幅方向で調整する機能を有することを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の焼結機。
【請求項10】
前記位置測定装置は、パレットの移動方向において2つ以上の場所を測定することを特徴とする、請求項9に記載の焼結機。
【請求項11】
前記位置測定装置は、前記装入層の上面の高さ位置を測定することを特徴とする、請求項10に記載の焼結機。
【請求項12】
前記位置測定装置は、前記装入層に接触せずに測定することを特徴とする、請求項11に記載の焼結機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用原料である焼結鉱の製造方法、及び、焼結鉱を製造する焼結機に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉用原料である焼結鉱は、一般に、鉄鉱石粉、製鉄所内回収粉、焼結鉱篩下粉などの鉄含有原料と、石灰石及びドロマイトなどの含CaO原料と、粉コークスや無煙炭などの炭材(固体燃料)とを焼結原料として、無端移動型焼結機であるドワイトロイド焼結機(以下、「焼結機」と記載する)を用いて製造される。
【0003】
焼結原料は、焼結機の無端移動式のパレットに装入され、装入層が形成される。装入層の厚み(高さ)は400~800mm前後である。その後、装入層の上方に設置された点火炉により、この装入層中の炭材に点火される。パレットの下に設置されている風箱を介して空気を下方に吸引することにより、装入層中の炭材を順次燃焼させる。この燃焼は、パレットの移動に伴って次第に下層に且つ前方に進行する。このときに発生する燃焼熱によって、焼結原料が燃焼、溶融し、焼結ケーキが生成される。その後、得られた焼結ケーキは、排鉱部において破砕され、クーラーで冷却され、整粒されて成品焼結鉱となる。
【0004】
上述した焼結機では、焼結鉱の強度及び歩留まり向上の観点から、装入層内における炭材の燃焼と焼結原料の溶融の進行状況とを把握して適正化することが重要であり、例えば、特許文献1には、装入層内の温度及び焼結速度の測定を目的とした、パレットの底面から突出し、温度測定部を2以上備える温度測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-243443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
【0007】
即ち、特許文献1では、装入層内の温度を温度測定装置で測定しているが、例えば、装入層内に生じた局所的な空隙や装入層とパレットとの境界を通して空気が過剰に吸引されるなどの外乱因子により、炭材の燃焼及び焼結原料の溶融の進行状況に拘わらず、装入層内の温度は低下する。そのため、装入層内の温度は、必ずしも装入層内における炭材の燃焼及び焼結原料の溶融の進行状況のみを反映するものでは無く、炭材の燃焼及び焼結原料の溶融の進行の指標として用いるには誤差が大きいという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、焼結鉱を製造する際に、装入層内における炭材の燃焼と焼結原料の溶融の進行状況とを精度良く測定し、必要に応じて、炭材の燃焼及び焼結原料の溶融の進行状況を適正化できる焼結鉱の製造方法及び焼結機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]循環移動するパレットに焼結原料を装入して装入層を形成させ、点火炉を用いて前記装入層の上表層を点火し、前記装入層の下方から空気を吸引して前記焼結原料に含まれる炭材を燃焼させて焼結ケーキとし、その後、前記焼結ケーキを排鉱部から排出して焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、
点火後の装入層の収縮量を測定し、前記装入層の収縮量が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整することを特徴とする、焼結鉱の製造方法。
[2]循環移動するパレットに焼結原料を装入して装入層を形成させ、点火炉を用いて前記装入層の上表層を点火し、前記装入層の下方から空気を吸引して前記焼結原料に含まれる炭材を燃焼させて焼結ケーキとし、その後、前記焼結ケーキを排鉱部から排出して焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、
点火後の装入層の収縮速度を測定し、前記装入層の収縮速度が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整することを特徴とする、焼結鉱の製造方法。
[3]前記測定を、パレットの幅方向において2つ以上の場所で測定し、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量のうちのいずれか1つまたは2つ以上を前記パレットの幅方向で調整することを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の焼結鉱の製造方法。
[4]前記測定を、パレットの移動方向において2つ以上の場所で測定することを特徴とする、上記[3]に記載の焼結鉱の製造方法。
[5]前記測定は、前記装入層の上面の高さ位置を測定することを特徴とする、上記[4]に記載の焼結鉱の製造方法。
[6]前記測定は、前記装入層に接触せずに測定することを特徴とする、上記[5]に記載の焼結鉱の製造方法。
[7]循環移動するパレットと、前記パレットに焼結原料を装入して装入層を形成する給鉱部と、前記装入層の表層の炭材に点火する点火炉と、前記パレットの下方に設置された、前記装入層の下方から空気を吸引する風箱とを有し、前記焼結原料に含まれる炭材の燃焼熱によって焼結原料を焼結する焼結機であって、
点火後の前記装入層の収縮量を測定する位置測定装置を有し、前記装入層の収縮量が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整する機能を有することを特徴とする、焼結機。
[8]循環移動するパレットと、前記パレットに焼結原料を装入して装入層を形成する給鉱部と、前記装入層の表層の炭材に点火する点火炉と、前記パレットの下方に設置された、前記装入層の下方から空気を吸引する風箱とを有し、前記焼結原料に含まれる炭材の燃焼熱によって焼結原料を焼結する焼結機であって、
点火後の前記装入層の収縮速度を測定する位置測定装置を有し、前記装入層の収縮速度が所定の範囲内になるように、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量、前記パレットの移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整する機能を有することを特徴とする、焼結機。
[9]前記位置測定装置は、パレットの幅方向において2つ以上の場所を測定し、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、前記装入層の厚み、前記空気の吸引量のうちのいずれか1つまたは2つ以上を前記パレットの幅方向で調整する機能を有することを特徴とする、上記[7]または上記[8]に記載の焼結機。
[10]前記位置測定装置は、パレットの移動方向において2つ以上の場所を測定することを特徴とする、上記[9]に記載の焼結機。
[11]前記位置測定装置は、前記装入層の上面の高さ位置を測定することを特徴とする、上記[10]に記載の焼結機。
[12]前記位置測定装置は、前記装入層に接触せずに測定することを特徴とする、上記[11]に記載の焼結機。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、焼結中の焼結原料装入層の収縮量または収縮速度を測定するので、装入層内における炭材の燃焼と焼結原料の溶融の進行状況とを精度良く測定することができ、必要に応じて炭材の燃焼及び焼結原料の溶融の進行状況を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る焼結鉱の製造方法を実施する際に用いる焼結機の一例を示す側面模式図である。
図2図1に示す焼結機の斜視模式図である。
図3】炭材の配合量を変化させて焼結中の装入層の収縮量を調査した結果を示す図である。
図4】炭材の配合量を変化させることにより、装入層の収縮量を変化させて、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度を調査した結果を示す図である。
図5】炭材の配合量を変化させて、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度を調査した結果を示す図である。
図6】炭材の少ない領域に天然ガスを0.4体積%添加して焼結中の装入層の収縮量を調査した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法を実施する際に用いる焼結機10の一例を示す側面模式図である。また、図2は、図1に示す焼結機10の斜視模式図である。
【0013】
鉄鉱石粉、製鉄所内回収粉、焼結鉱篩下粉などの鉄含有原料と、石灰石及びドロマイトなどの含CaO原料と、粉コークスや無煙炭などの炭材(固体燃料)とを含む焼結原料は、焼結機10の給鉱部40に設けられたサージホッパー12からロールフィーダー14で切り出されて、循環移動する無端移動式のパレット26に装入され、パレット26の内部に焼結原料の装入層が形成される。このとき、装入層の厚み(高さ)は、サージホッパー12の下部にパレット26の幅方向に沿って複数設置された分割ゲート16の開度を調整することによって制御される。本実施形態において、分割ゲート16は、例えば、図2に示すように8つに分割されており、それぞれの分割ゲート16には、パレット26の幅方向の位置の順に対応付けてゲート番号(1~8)が割り振られている。
【0014】
パレット26に形成された装入層は、パレット26とともに焼結機10の下流側に向かって移動する。分割ゲート16の下流側にはレベル計18が設けられている。レベル計18は、分割ゲート16の分割数と同数の8個設けられ、それぞれの分割ゲート16の下流側に1つ設けられている。それぞれのレベル計18には、分割ゲート番号と同じ番号が割り振られており、それぞれのレベル計18は、同じ番号が割り振られている分割ゲート16の装入層の厚みをそれぞれ測定する。本実施形態では、レベル計18として超音波レベル計を用いている。
【0015】
それぞれのレベル計18は、装入層の厚みを計測し、測定した厚みデータを制御装置32に出力する。制御装置32は、入力された厚みデータに基づいて、装入層の厚みが、パレット26の幅方向で同等になるように、または、指定された厚みになるように、それぞれの分割ゲート16の開度を制御する。
【0016】
給鉱部40の下流側に設置された点火炉20によって、装入層の上表層が点火される。さらに、ブロワー24によって空気が吸引され、パレット26の下方に機長方向に複数設けられた風箱22を通じて装入層内の空気が下方に吸引されるとともに、上方から装入層内に空気が導入され、焼結原料に含まれる炭材が燃焼する。ブロワー24の回転速度を調整することで、吸引される空気量を調整できるように構成されている。
【0017】
炭材の燃焼による燃焼熱によって焼き固められた焼結原料は、焼結鉱の塊である焼結ケーキとなる。焼結ケーキは、排鉱部42から排出される。排鉱部42から排出される焼結ケーキは、パレット26から落下する直前にパレット26の幅方向に亀裂が生じて破断する。
【0018】
その後、焼結ケーキは、排鉱部42から落下し、破砕され、クーラー(図示せず)で冷却されて、整粒され、例えば、粒径5.0mm超えの塊成物からなる成品焼結鉱となる。
【0019】
制御装置32は、格納部34と制御部36とを有する。制御装置32は、例えば、ワークステーションやパソコンなどの汎用コンピュータである。格納部34は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカードなどの情報記録媒体及びその読み書き装置である。格納部34には、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法の実施に必要なプログラムや、当該プログラム実行中に使用するデータなどが予め格納されている。制御部36は、例えば、CPUなどであって、格納部34に格納されたプログラムやデータを用いて焼結機10の動作を制御する。
【0020】
本実施形態に係る焼結機10には、パレット26の装入層の上表層に、天然ガスなどの気体燃料や重油などの液体燃料を上方から供給するための噴射ノズル(図示せず)が、パレット26の幅方向の複数箇所及びパレット26の移動方向の複数箇所に設置されている。また、複数の噴射ノズルのうちで、選択した特定の噴射ノズルのみ、気体燃料や液体燃料を噴射できる機能を有している。
【0021】
点火後の装入層では炭材の燃焼による焼結原料の温度上昇及び溶融が、装入層上面から下面に向かって進行していく。この焼結の過程で装入層が収縮することが知られている。収縮は全方向で進行するが、装入層の自重の影響で、収縮のほとんどは装入層上面の高さの低下として観察される。
【0022】
本発明者らは、焼結条件を変化させて装入層上面の高さ位置を測定して収縮挙動を観察し、以下の知見を得た。
【0023】
(1)焼結による装入層の収縮率は、炭材の配合量に応じて増加し、焼結反応が過不足なく進行する適正な炭材配合量(4.0~4.4質量%)では10~20%に達する。適正な炭材配合量近傍で炭材の配合量を1質量%増加したときの装入層の収縮率の増加は、7%以上であり、炭材の配合率の7倍以上変化した。このことから、装入層の収縮に対しては、炭材自体の焼失による体積減少の寄与は少なく、焼結層が溶融して空隙が充填されることが大きく寄与しており、装入層の収縮は焼結の進行を的確に反映していると考えられる。
【0024】
また、分割ゲートの開度調整のみで変動させ得る装入密度には限界があり、さらに装入密度と収縮率の相関は弱い。つまり、分割ゲートの開度調整で装入層の収縮率を目標範囲に制御するのは困難である。一方、上記記載や、後述する図3に示すように、原料中の炭材配合量と装入層の収縮率との間には強い相関があり、かつ収縮量の変動幅も大きい。このため、成品焼結鉱の歩留およびTI強度を推定、制御するためのパラメータとして、炭材配合量は好適といえる。炭材の配合量の調整は、炭材配合量を予め所定値に調整した焼結原料をサージホッパー12に装入し、当該焼結原料をパレット26に装入することによって行われる。
【0025】
(2)炭材の配合量が適正値よりも少ないと、装入層の点火から収縮開始までの時間が長くなることがわかった。但し、収縮開始後の収縮速度の差は、炭材配合量の影響が少なく、微小であった。
【0026】
図3に、装入層の初期高さを600mmとし、炭材の配合量を3.2~5.0質量%の範囲で変化させて焼結中の収縮量を調査した結果を示す。炭材の配合量が3.2質量%の場合には、収縮停滞期(点火から収縮開始までの時間)が約19分であるのに対し、炭材の配合量が5.0質量%の場合には、収縮停滞期は約4分であった。炭材の配合量が適正値の4.2質量%の場合は、収縮停滞期は約7分であった。また、図3から、収縮開始後の収縮速度の差は微小であることがわかった。
【0027】
(3)焼結中の装入層の収縮量と、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度とには良好な相関があった。
【0028】
図4に、装入層の初期高さを600mmとし、炭材の配合量を変化させることにより、装入層の収縮量を変化させて、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度を調査した結果を示す。図4に示すように、焼結中の装入層の収縮量と、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度とには良好な相関が認められた。ここで、TI強度とは、JIS M 8712:2022に規定される回転強度指数である。
【0029】
(4)図5に、装入層の初期高さを600mmとし、炭材の配合量を変化させて、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度を調査した結果を示す。図5に示すように、焼結原料への炭材配合率と、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度との間には明確な相関が認められた。このため、焼結中の装入層の収縮量が小さくなって、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度が小さくなることが予測される場合には、焼結原料への炭材配合率を多くすればよいことがわかった。図5は、図4の横軸の収縮量を炭材配合量に代えたグラフである。
【0030】
(5)炭材の配合量が適正値よりも少なく、装入層の収縮量が小さい場合でも、天然ガスなどの気体燃料や重油などの液体燃料を装入層上方から供給して、焼結反応の進行を促進させることで、装入層の収縮量は増加することがわかった。このため、焼結中の装入層の収縮率が小さくなって、焼結後の焼結鉱の歩留まり及びTI強度が小さくなることが予測される場合には、天然ガスなどの気体燃料や重油などの液体燃料を装入層の上方から添加する、または、添加量を増加すればよいことがわかった。
【0031】
図6は、装入層の幅が800mmで、装入層の初期高さを400mmとし、炭材の配合量を変化させて、炭材の少ない領域に天然ガスを0.4体積%添加して焼結中の装入層の収縮量を調査した結果を示す図である。天然ガスを添加することで、熱不足が解消されて装入層の収縮量が確保できることがわかった。
【0032】
上記知見に基づき、本実施形態に係る焼結機10では、焼結中の装入層の収縮量及び収縮速度を測定するための位置測定装置28が設けられている。位置測定装置28は、点火炉20の下流側に設けられており、位置測定装置28は、点火炉20から出た装入層の上表層の位置を測定し、測定した高さ位置データを制御装置32に出力する。
【0033】
<位置測定装置28の測定機構>
位置測定装置28の測定対象は、装入層の外表面であるので、1200℃以上に達する装入層の内部よりも低温である。そのため、位置測定装置28として、接触式の重錘やアーム付きローラーを用いて装入層の上面の高さ位置を測定することも可能である。但し、耐久性の観点からは、位置測定装置28は、超音波距離計のような非接触式であることが好ましい。
【0034】
測定視野及び測定深度の広さ、位置解像度の高さ、測定点数の多さ、測定速度の速さの観点からは、位置測定装置28は、レーザースキャナのような非接触光学式であることがさらに好ましい。レーザースキャナとしては、例えば、Leica社製3Dスキャナー ScanStation Pシリーズが挙げられるが、レーザーを反射するガルバノミラーの微小な動作によって高速スキャンを実現しているものが多く、装入層の直上に設置して鉛直下向きの測定をしようとすると、測定の精度や速度が低下するなどの制約が発生する場合が有る(制約が発生しない機種も有るが、高速高精度の機種ほど制約が大きい傾向が有る)。
【0035】
そのような場合には、装入層の直上では無く、斜め上方に設置して斜め下向きに測定すればよい。俯角(下方に在る物体への視線が水平と成す角)が小さいほど、前記の測定の精度や速度が低下するなどの制約が少なくなるが、装入層の上面へのレーザーの入射角が小さいと、装入層の上面の凹凸により測定位置に死角ができたり、高さの測定精度が低下したりするので、俯角は15度以上とすることが好ましい。
【0036】
焼結機10の長さ方向(パレット26の移動方向)の広い範囲で測定する場合に、位置測定装置28から遠い場所に対しては俯角が不足することがある。そのような場合には位置測定装置28を複数設置すればよい。
【0037】
<位置測定装置28の測定対象位置>
位置測定装置28の測定は、焼結反応にともなう装入層の収縮を把握することが目的であるので、焼結反応が開始する点火炉20よりも下流側で測定する必要がある。なかでも、焼結反応が進行し終えたと見做される排鉱部42またはその上流側の近傍(例えば、排鉱部42から2m以内)で測定すれば、焼結後の焼結ケーキの焼結の進行度を把握することができる。
【0038】
排鉱部42またはその上流側の近傍よりもさらに上流側(例えば、点火炉20から排鉱部42までの行程の10~90%の範囲内)で測定し、つまり、パレット26の移動方向の2つ以上の場所で測定することで、その前またはその後の測定値と比較すれば、焼結後の焼結ケーキの焼結の進行度だけでなく、焼結の途中における焼結の進行速度も把握することができる。焼結の進行速度を把握することは、焼結の進行が速すぎて、カルシウムフェライト相の生成が阻害されたり、強度が低下したりすることを抑制するための情報として有効である。
【0039】
また、排鉱部42またはその上流側の近傍よりもさらに上流側で測定することにより、排鉱部42またはその上流側の近傍で測定した場合よりも焼結の進行度の高低をより早く把握することができるので、操業アクションをより早く執って焼結反応の進行を適正化することができる。
【0040】
さらに、位置測定装置28の測定をパレット26の移動方向と水平に直交する幅方向で2点以上とすれば、パレット26の幅方向で焼結の進行度に差が生じた場合でも、パレット26の幅方向に調整可能な、例えば、装入層上表層への気体燃料や液体燃料の供給量などを調整することにより、焼結の進行度を適正化することができる。
【0041】
<位置測定装置28の測定頻度>
位置測定装置28の測定頻度は、例えば、原料配合の変更時のように焼結反応の進行に変化が予測されるようなタイミングに限った低い頻度の測定でも効果があるが、焼結原料が焼結機の全長を通過する所用時間(例えば、20分)以内の間隔、さらに望ましくは2分以内の事実上の連続測定とみなせる間隔とすることにより、予期せぬ焼結原料の成分や粒度の変化などに対応できる。
【0042】
制御部36は、位置測定装置28から装入層上面の高さ位置データを取得すると、装入層上面の降下量から装入層の収縮量及び装入層の収縮速度を算出する。装入層の収縮量または収縮速度が適正でない場合には、装入層上表層への気体燃料の供給量、装入層上表層への液体燃料の供給量、焼結原料の炭材配合量、焼結原料の装入層の厚み、ブロワー24による空気の吸引量、パレット26の移動速度のうちのいずれか1つまたは2つ以上を調整して、装入層の収縮量または収縮速度を所定の範囲内に制御する。
【0043】
点火前の装入層の厚さは、分割ゲート16の開度から計算することができ、また、レベル計18による測定データを用いることもできる。さらに、位置測定装置28として、測定視野が広く、多数の測定点を高速に測定できるレーザースキャナのような非接触光学式の機器を用いれば、点火後の装入層の厚さと点火前の装入層の厚さの双方を同一の位置測定装置で測定することもできる。
【0044】
また、位置測定装置28としてレーザースキャナのような非接触光学式の機器を用いた場合は、高さ位置データを取得した上表層をパレット26の幅方向に2以上に分割し、当該分割した領域における平均高さ位置を算出することもできる。例えば、上表層をパレット26の幅方向に2つに分割する場合においては、幅方向の中央を境界として、手前側の領域における平均高さと、奥側の領域の平均高さを算出する。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、焼結中の焼結原料装入層の収縮量または収縮速度を測定するので、装入層内における炭材の燃焼と焼結原料の溶融の進行状況とを精度良く測定することができ、必要に応じて炭材の燃焼及び焼結原料の溶融の進行状況を適正化することができる。
【実施例0046】
[実施例1]
以下、図1図2に示した焼結機10と同じ装置を用いて、焼結鉱を製造した実施例を説明する。本実施例では、パレット26の幅方向に2つに分割した領域(領域1、領域2)で、焼結原料の装入層の収縮量に応じて、天然ガス添加量の調整を実施した(本発明例1)。本発明例1の結果と、天然ガスを添加しない比較例1の結果とを表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
このように、焼結機の幅方向に分割された領域ごとに、天然ガス添加量を調整して焼結原料装入層の収縮量の偏差を小さくすることにより、焼結歩留まりと製品TI強度とを改善できることが確認された。
【0049】
[実施例2]
図1図2に示した焼結機10と同じ装置を用いて、焼結鉱を製造した実施例を説明する。本実施例では、パレット26の幅方向に4つに分割した領域(領域1、領域2、領域3、領域4)で、焼結原料の装入層の収縮量に応じて、装入層厚みの調整を実施した(本発明例2)。本発明例2の結果と、装入層厚みの調整を実施しない比較例2の結果とを表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
このように、焼結機の幅方向に分割された領域ごとに、装入層厚みを調整して焼結原料装入層の収縮量の偏差を小さくすることにより、焼結歩留まりと製品TI強度とを改善できることが確認された。
【符号の説明】
【0052】
10 焼結機
12 サージホッパー
14 ロールフィーダー
16 分割ゲート
18 レベル計
20 点火炉
22 風箱
24 ブロワー
26 パレット
28 位置測定装置
32 制御装置
34 格納部
36 制御部
40 給鉱部
42 排鉱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6