(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174561
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】塩基性分子に補助された直接接合法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080558
(22)【出願日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】2205052
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フルネル フランク
(72)【発明者】
【氏名】カルヴェ アズィリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ラレー ヴァンソン
(72)【発明者】
【氏名】モラル クリストフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2つの基板の直接接合による多層構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1基材(1)と第2基材(2)との間の直接接合による、多層構造体(100)の製造方法であって第1接合面(3)及び第2接合面(4)をそれぞれ含む第1基材(1)及び第2基材(2)を与えることと、第1基材(1)と前記第2基材(2)との間に直接接合界面(6)を形成するために、第1接合面(3)及び第2接合面(4)を接触させることと、少なくとも直接接合界面(6)を塩基性環境に配置することと、多層構造体(100)を得るために、20~350℃の温度で熱処理を施すことと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材(1)と第2基材(2)との間の直接接合による、多層構造体(100)の製造方法であって、
a)第1接合面(3)及び第2接合面(4)をそれぞれ含む第1基材(1)及び第2基材(2)を与えることと、
b)前記第1基材(1)と前記第2基材(2)との間に直接接合界面(6)を形成するために、前記第1接合面(3)及び前記第2接合面(4)を接触させることと、
c)少なくとも前記直接接合界面(6)を塩基性環境に配置することと、
d)前記多層構造体(100)を得るために、20~1000℃の温度で熱処理を施すことと
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記直接接合界面(6)を前記塩基性環境に配置する、前記c)のステップは、約1時間~80日間行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法において、
前記第1接合面(3)及び/又は前記第2接合面(4)は、少なくとも部分的に、自然酸化物、熱又は堆積酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化銅及びこれらの材料の組合せから選択される材料から構成された親水性膜(5)によって形成されている、製造方法。
【請求項4】
前記第1接合面(3)及び前記第2接合面(4)は、完全に平坦である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記塩基性環境は、塩基性水溶液(8)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法において、
前記塩基性水溶液(8)は、脱イオン水に、NaOH、KOH、Na2CO3、NH4OH、アミノアルコール及びこれらの塩基性化合物の混合物から選択される、塩基性化合物を、溶解させることによって形成され、前記アミノアルコールは、特に、2-(ジメチルアミノ)エタノールDMAE、N,N-ジエチル-2-アミノ-エタノール、モノエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、アミノメタノール、N-メチルヒドロキシルアミン、ジエタノールアミン、ジメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン及びこれらのアミノアルコールの混合物から選択される、製造方法。
【請求項7】
前記塩基性水溶液(8)は、塩基性化合物のモル濃度が、10-7~5mol/l、例えば10-6~1mol/l、特に0.01~0.5mol/lである、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記塩基性環境は、脱イオン水と、N,N-ジエチルエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、アミノエタノール、N-メチルジエタノールアミン、アミノメタノール、N-メチルヒドロキシルアミン、ジエタノールアミン、ジメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエチル-N-N-エタノール、アンモニア及びそれらの組み合わせから選択される塩基性化合物とを含む、塩基性原液(11)の気密封入体(9)中での蒸発により、気相(8’)中での塩基性分子で飽和された雰囲気である、製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記第1基材(1)及び前記第2基材(2)は、各々、Si、Ge、InP、AsGa、SiC、及びGaNなどの半導体、LNO、LTO、並びにそれらの組合せから選択される材料によって形成されている、製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記a)のステップにおいて与えられる前記第1基材(1)及び前記第2基材(2)は、各々、25~300mm、特に200mm又は300mmの直径を有するシリコン基材を含み、前記第1接合面(3)及び前記第2接合面(4)は、各々、酸化ケイ素から構成された連続的な親水性膜(5)によって完全に形成され、
前記c)のステップは、前記b)のステップにおいて得られた前記直接接合界面(6)を、21~40日間にわたって、前記塩基性環境に配置することを含み、前記塩基性環境は、NaOHの溶解によって形成された、モル濃度が10-7~0.01mol/l、例えば、約10-3mol/lである、塩基性水溶液(8)であり、
前記d)のステップは、5J/m2超えの接合エネルギーを有する第1基材(1)と第2基材(2)との間の直接接合を得るために、約300℃で熱処理を施すことを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接接合の分野に関する。本発明は、特に、直接接合による多層構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直接接合は現在周知の技術であり、例えば、撮像装置の製造のための、SOITEC社又はSTMicroelectronics社によるSOIの製造などの、産業用途に利用されている。本明細書で理解されるように、直接接合は、接合される表面間の界面に物質を追加することなく、特に、液体の厚い層をともなわず、2つの表面間を自発的に接合させることである。それにもかかわらず、表面上に吸着された水の、厚さが0.25~1.25nmであり、それゆえこれらの表面が肉眼では乾燥している、単分子層をいくつか有することが可能である。
【0003】
直接接合は従来、周囲温度及び周囲圧力で実施されるが、そうされる必要はない。
【0004】
直接接合の重要な特徴は、その接着エネルギー、すなわち、自発的に接合させるために利用可能なエネルギーにある。これは、ファンデルワールス力が備えられるように、2つの表面が原子スケールで接触するように、2つの表面を変形させることを可能にするエネルギーである。この接着エネルギーは、部分的には、接合波(l’onde de collage)の伝播の時間を指し、例えば、接合波は2つの200mmのシリコン基材の直接接合のために、従来では9秒で伝播する。例えば、ケイ素又は親水性酸化ケイ素の2つの面について、接着エネルギーは、典型的には30~100mJ/m2である。
【0005】
直接接合の別の重要な特徴は、その接着エネルギー、又は別の呼び方では、接合エネルギーである。これは、2つの接合面を分離するために必要なエネルギーである。約145nmの熱酸化物で覆われた2つのシリコン基材の接合の文脈では、この接着エネルギーは、典型的には0.14~6J/m2である。
【0006】
自発的な接合を得るために、表面は一般に、直接接合にとって大きな弊害となる有機汚染物及び微粒子汚染物が除去される。例えば、180℃での、96%硫酸と30%過酸化水素と(3:1)の混合液を用いて得られたカロ酸ベースの溶液、及び、70℃でのSC1(30%アンモニア、30%過酸化水素及び脱イオン水(1:1:5)の混合液)を用いて、予め接合面の洗浄が行われる。あるいは、他の酸化力の強い洗浄溶液、例えばオゾンやその他を含有する水溶液を、ガス状オゾンの存在下でUV光にさらす処理をして、使用してもよい。クリーンルーム内、カロ及び70℃でのSC1ベースの化学洗浄をした、SiO2-SiO2接合(例えば、約145nmの熱酸化物で覆われた2つのシリコン基材)の接着エネルギーは、接合直後で、熱処理なしで、約140mJ/m2である。
【0007】
接合エネルギーはまた、周囲温度で行われた接合の後に施される熱処理にも従って大きくなる。接着エネルギーは、熱処理の温度の関数として増加する。例えば、SiO2-SiO2接合エネルギーは、表面処理にもよるが、500℃で3J/m2に達するまでゆっくり上昇し、その後800℃まで上昇しない。
【0008】
接合エネルギーを更に増加させるために、別の解決策では、接触前にプラズマ処理を行う。酸化物-酸化物接合のための窒素(N2)プラズマでは、接合エネルギーは300℃の処理温度で約5J/m2に急速に増大する。
【発明の概要】
【0009】
しかしながら、プラズマの使用は特定の基材に対して適用できない場合があり、並びに/又は、その使用により時間が長くなり及び/若しくは方法のコストにより、工業化がより困難になる。プラズマ処理はまた、数ナノメートル(1~10nm)の厚さにわたり表面を改質する。この改質は将来デバイスに影響を与え得る。例えば、シリコン板では、プラズマは、厚さ及び品質の点で制御が困難な酸化物層を生じさせる。酸化ケイ素表面では、N2プラズマなどの特定のプラズマは、将来デバイスの電気的動作を妨害し得る界面電荷の問題を引き起こす。
【0010】
特許文献FR1912269には、直接接合法を行う間2つの表面を接触させる前に、Si及び/又はSiO2表面を、親水性官能基及び塩基性官能基を含む特定の分子にさらすことで、100~500℃の範囲での熱処理後、接合された組立体の接着エネルギーの著しい増大がもたらされたことも示されている。接合前に表面をさらすことは、液体プロセスまたは気体プロセスによって行われ得る。
【0011】
本発明の目的の1つは、実施が簡単であり、前記の欠点を克服することを可能にする直接接合法を提案することにある。この目的のために、本発明は、第1基材と第2基材との間の直接接合による多層構造体の製造方法を提案し、この方法は以下のステップを含む:
a)第1接合面及び第2接合面をそれぞれ含む第1基材及び第2基材を与えること、
b)前記第1基材と前記第2基材との間に直接接合界面を形成するために、前記第1接合面及び前記第2接合面を接触させること、
c)少なくとも前記直接接合界面を塩基性環境に配置すること、
d)前記多層構造体を得るために、20~1000℃、特に100~500℃、例えば150~250℃、の温度で熱処理を施すること。
【0012】
このようにして行われる直接接合法により、塩基性環境下での処理のステップc)を欠いた直接接合法により得られる多層構造体よりも、大きな接合エネルギーを有する多層構造体を得ることができる。大きな接合エネルギーは、低温、すなわち1000℃未満の温度、好ましくは500℃以下、更により好ましくは200℃の温度で得られる。
【0013】
これらの接合温度は、多くの用途及び/又は多くの基材と適合し、その性質並びに/又は電子部品及び/若しくは光電子部品の存在により、必要な熱収支(budgets thermiques)が小さい。さらに、この方法は多くの材料に適用可能であり、かつ安価である。この方法は、接合後に良好な機械的強度を有する多層構造体をもたらし、スマートカット(Smart Cut)(登録商標)などの後続の方法、及び/又は例えば機械的薄化などの、組立体に機械的応力を発生させる任意の方法と両立する。さらに、塩基性環境の使用は表面が直接接した後にのみ行われるので、この方法は接着エネルギーに影響を及ぼさない。例えば、接合波は、約200mmのシリコン基材については常に9秒以内で伝播する。
【0014】
接合後の熱処理は、当業者には「接合アニーリング」としても知られている。
【0015】
一可能性によれば、ステップd)による熱処理は、周囲温度から最終温度への温度上昇によって行われ、その上昇温度は、例えば0.1~10℃/分、より具体的には0.5~5℃/分、200~300℃の最終温度に達するまで、数時間、例えば2時間、行われる。
【0016】
一可能性によれば、直接接合界面を塩基性環境に配置するステップc)は、約1時間~80日行われる。このステップの時間は、第1及び第2基材の直径とともに長くなる。塩基性分子は、実際には、ステップc)の環境の塩基性分子は一様で均一な接合エネルギーを得るために、直接接合界面全体にわたって移動する時間を有することが必要である。また、多層構造体の直径が大きいほど、ステップc)の時間が長くなる。
【0017】
一構成によれば、第1接合面及び/又は第2接合面は、少なくとも部分的に、自然酸化物、熱又は堆積酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化銅、及びこれらの材料の組合せから選択される材料から構成された親水性膜によって形成されている。
【0018】
典型的には、酸化銅の親水性膜は、SiO2によって分離された銅パッドから構成されたハイブリッド膜である。銅パッドは、空気中で、ほぼ瞬時に自然酸化銅で覆われる。
【0019】
親水性膜が酸化物から構成されている場合、それは、例えば、堆積酸化物、熱処理によって得られた薄い酸化物膜(熱酸化物とも呼ばれる)及び/又は化学処理によって得られた薄い酸化物膜(自然酸化物又は化学酸化物とも呼ばれる)によって形成される。
【0020】
一変形形態によれば、第1及び/又は第2基材は、アルミナなどの酸化材料から構成されており、それは本質的には親水性の材料であるので、第1接合面及び/又は第2接合面は、第1及び/又は第2基材のそれぞれの材料によって形成されている。これは、追加の親水性膜の存在を排除するものではない。
【0021】
特定の例によれば、第1接合面は疎水性であり(例えば、シリコン表面の不動態化及びシリコン上への水素グラフトによって得られる疎水性シリコンから構成されている)、第2接合面は親水性である。第2接合面は、少なくとも部分的に、自然酸化物(第2基材の材料に応じて、シリコン、AsGa、InPなど)、(シリコンの)熱酸化物、堆積酸化物、窒化ケイ素、酸化銅及びこれらの化合物の組合せから選択される親水性膜によって形成され、あるいは、第2接合面は、酸化物であり、したがって親水性である、第2基材の材料から構成されている。第2の親水性面を疎水性面と接触させることにより、後者の最初の疎水性特性が親水性特性に変化し、これにより直接接合が可能になる。
【0022】
具体的には、第1接合面及び第2接合面は、全体的に平坦である。言い換えれば、第1及び第2接合面は、微視的なスケールでプレートを形成する凹部又はパターンを欠いている。
【0023】
第1接合面及び/又は第2接合面は、1オングストロームRMSのオーダーの、典型的には5オングストロームRMS未満の、粗さを有する。
【0024】
第1接合面及び/又は第2接合面は、5nm未満の山谷粗さを有する。
【0025】
一可能性によれば、第1基材及び第2基材は、厳密に2.5cm超えの直径を有する。
【0026】
有利には、ステップa)は、接触のステップb)を行う前に、第1接合面及び第2接合面を乾燥させることを更に含む。乾燥後、第1接合面及び第2接合面は、各々、第1接合面及び第2接合面が巨視的なスケールで乾燥しているように、H2Oの単原子層が最大でも1~5つしか残っていない面を有する。
【0027】
具体的には、塩基性環境は塩基性水溶液である。また、ステップc)は、前記塩基性水溶液中に少なくとも直接接合界面を浸漬することを含む。言い換えれば、ステップb)で得られた多層組立体は、直接接合界面が前記塩基性溶液中に浸漬される限り、塩基性水溶液中に全体的又は部分的に浸漬される。
【0028】
一構成によれば、塩基性水溶液は、pHが、厳密には7.5を超え、特に8を超え、例えば9を超える。
【0029】
一可能性によれば、塩基性水溶液は、脱イオン水中に、NaOH、KOH、Na2CO3、NH4OH、アミノアルコール及びこれらの化合物の混合物から選択される塩基性化合物を溶解することによって形成され、前記アミノアルコールは、特に、ジメチルアミノエタノール(又はDMAE、CAS:108-01-0)、N,N-ジエチル-2-アミノ-エタノール(又はDEAE、CAS:100-37-8)、モノエタノールアミン(CAS:141-43-5)、N-メチルジエタノールアミン(又はMDEA、CAS:105-59-9)、アミノメタノール(CAS:3088-27-5)、N-メチルヒドロキシルアミン(CAS:593-77-1)、ジエタノールアミン(又はDEA、CAS:111-42-2)、ジメタノールアミン(CAS:7487-32-3)、トリエタノールアミン(CAS:102-71-6)、トリメタノールアミン(CAS:14002-32-5)及びこれらのアミノアルコールの混合物から選択される。
【0030】
1つの特徴によれば、塩基性溶液は、塩基性化合物のモル濃度が、10-7~5mol/l、例えば10-6~1mol/l、特に0.01~0.5mol/lである。少量の塩基は、強力な接合を確実にするのに十分であり、これにより、ステップを安価にし得る。もちろん、より大きなモル濃度であってもよいが、得られる結果がより良くなるわけではない。
【0031】
別の一実施形態によれば、塩基性環境は、脱イオン水と、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-アミノエタノール、N-メチルジエタノールアミン、アミノメタノール、N-メチルヒドロキシルアミン、ジエタノールアミン、ジメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエチル-N-N-エタノール、アンモニア及びこれらの化合物の混合物から選択される塩基性化合物とを含む、塩基性原液の気密封入体中での蒸発により、気相中での塩基性分子で飽和された雰囲気である。
【0032】
一可能性によれば、塩基性原液は、脱イオン水中に溶解された、モル濃度が10-7~5mol/lのアミノアルコールを含む。ガス状アミノアルコールで飽和されたガス状環境を得るために、塩基性原液は、気密封入体内に1時間配置される。そして、ステップb)で得られた多層組立体は、気相中の塩基性分子で飽和された雰囲気に直接接合界面をさらすために、気密封入体の中に配置される。
【0033】
一構成によれば、ステップd)において施される熱処理の温度は、20~1000℃、特に100~500℃、特に150~250℃である。
【0034】
一可能性によれば、第1基材及び第2基材は、各々、Si、Ge、InP、AsGa、SiC、GaNなどの半導体;LNO(ランタンニッケル酸化物LaNiO3の頭字語)、LTO(チタン酸リチウムLi2TiO3の頭字語)及びそれらの組合せから独立して選択される材料によって形成されている。
【0035】
第1及び第2基材は、同一の性質又は異なる性質のものであってもよい。
【0036】
特定の一実施形態によれば、ステップa)において与えられる第1基材及び第2基材は、各々、25~300mm、例えば100~300mm、特に200mm又は300mmの直径を有するシリコン基材を含み、第1接合面及び第2接合面は、各々、酸化ケイ素の膜によって形成され、
ステップc)は、ステップb)において得られた直接接合界面を、21~40日間、特に30日間にわたって、塩基性環境に配置することを含み、その塩基性環境はNaOHの溶解によって形成された、モル濃度が10-7~0.01mol/l、特に約10-3mol/lである、塩基性水溶液であり、
ステップd)は、5J/m2超えの接合エネルギーを有する第1基材と第2基材との間の直接接合を得るために、約300℃で熱処理を施すことを含む。
【0037】
接合エネルギーは、例えば、F. Fournel, L. Continni, C. Morales, J. Da Fonseca, H. Moriceau, F. Rieutord, A. Barthelemy, 及びI. Radu, Journal of Applied Physics 111, 104907 (2012)の論文に記載されているように、無水雰囲気中で強制変位を行う二重てこ法により測定される。
【0038】
実施形態の一変形例によれば、ステップa)において与えられる第1基材は、1つ以上の第1の接合層(vignettes)の第2基材への直接接合を得るために、第1基材の接合層形成(vignetage)に由来する1つ以上の第1の接合層を含む。
【0039】
第1接合面は、1つ以上の第1の接合層の露出面によって境界が決まる。
【0040】
別の変形例によれば、ステップa)において与えられる第2基材は、1つ以上の第1の接合層と1つ以上の第2の接合層との間の直接接合を得るために、第2基材の接合層形成に由来する1つ以上の第2の接合層を含む。
【0041】
第2接合面は、1つ以上の第2の接合層の露出部によって境界が決まる。
【0042】
別の特徴によれば、本発明に係る多層構造体の製造方法は、単独で又は組み合わせて考慮される以下の任意の特徴の1つ以上を含む:
- 第1基材及び/又は第2基材は、厚さが、50マイクロメートルより大きく、好ましくは100マイクロメートルより大きく、例えば厚さが約725マイクロメートルである。第1基材及び/又は第2基材は、自己支持性であるように十分に厚い層であってもよい。
【0043】
- 第1基材及び第2基材は、性質の異なる材料の少なくとも2つの層の積層体である。
【0044】
- 第1及び第2基材における、それぞれ第1接合面及び第2接合面は、各々、少なくとも部分的に、自然酸化物、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化銅又はこれらの材料の組み合わせの、親水性膜によって形成されている。
【0045】
- 第1及び第2基材における、それぞれ第1接合面及び/又は第2接合面は、各々、自然酸化物、酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸化銅の、連続した親水性膜により、完全に形成されている。
【0046】
- 接触前には、第1接合面又は第2接合面のみが、親水性である。
【0047】
- 第1基材及び/又は第2基材は、それぞれ第1及び/又は第2接合面に開口する凹部を含む。
【0048】
- 第1接合面及び第2接合面は、ステップb)での接触よりも前に添加されるいかなる材料も含まない。
【0049】
- この方法は、接合面を接触させるステップb)の前に、第1及び第2基材の接合面にプラズマ処理を施すステップを含む。したがって、大きな接合エネルギーを維持しながら、熱収支の温度を実質的に低下させることが可能である。
【0050】
- 第1接合面及び第2接合面の乾燥は、特に2000回転/分、45秒間の、第1及び第2基材の遠心分離を含む。
【0051】
- 第1接合面及び第2接合面の乾燥は、マランゴニ効果を用いた乾燥を含む。
【0052】
- 第1接合面及び/又は第2接合面は、ステップb)の前に、オゾン処理水で洗浄される。
【0053】
- 第1接合面及び/又は第2接合面は、ステップb)の前に、SC1の処理及び/又はSC2の処理により、洗浄される。
【0054】
- ステップb)による接触は、好ましくは、相対湿度が約75%若しくはそれよりも低い雰囲気下で、又は減圧下(<5.10-2ミリバール)で、又は無水雰囲気下(<0.5ppm)で、常温にて行われる。
【0055】
- ステップa)で与えられる第1基材及び第2基材は、各々、50~300mm、例えば100~200mm、の直径を有するシリコン基材を含み、第1接合面及び第2接合面は、各々、酸化ケイ素の膜によって形成され、ステップc)はステップb)で得られた直接接合界面を、塩基性環境中に1~40日間にわたって配置することを含み、特に塩基性環境は、モル濃度が10-7~5mol/l、特に10-7~10-2mol/l、例えば10-3mol/lのNaOHの塩基性水溶液であり、ステップd)は、第1基材と第2基材との間に、接合エネルギーが5J/m2を超える直接接合を得るために、300℃で熱処理を施すことを含む。
【0056】
- 第1及び第2基材は、50mmの直径を有し、ステップc)の時間は、約1~2日である。
【0057】
- 第1及び第2基材は、100mmの直径を有し、ステップc)の時間は、約4~6日である。
【0058】
- 第1及び第2基材は、200mmの直径を有し、ステップc)の時間は、約15~20日である。
【0059】
- 少なくとも直接接合界面を配置するステップc)は、塩基性環境で、大気圧において、周囲温度から100℃の間の温度の、例えば約50~60℃の温度で行われる。
【0060】
- 第1及び第2基材は、300mmの直径を有し、ステップc)の時間は、約35~40日である。
【0061】
- 熱処理を施すステップd)は、ステップc)に伴って行われる。
【0062】
- 熱処理を施すステップd)は、ステップc)の時間よりも短い時間で、ステップc)の実施中に行われる。
【0063】
本発明の他の態様、目的及び利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面を参照した、そのいくつかの変形実施形態の以下の説明によって、より明らかになるであろう。説明の残りの部分では、簡略化のために、異なる実施形態の同一、類似又は同等の要素には同じ参照番号が付されている。図面は、それらの可読性を改善するために、表されたすべての要素の縮尺を必ずしも順守するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る方法のステップa)及びb)を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る方法のステップc)を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る方法のステップd)を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る方法のステップa)及びb)を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る方法のステップc)を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る方法のステップd)を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態の変形例に係る方法のステップc)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1~3に示すように、本発明の直接接合法は、第1基材1と第2基材2とを接触させるステップ(
図1のステップa及びb)と、塩基性環境、すなわちpHが厳密に7.5を超える塩基性水溶液8、に配置するステップ(
図2のステップc)と、塩基性環境に配置するステップc)を行わずに得られる接合エネルギーを超える接合エネルギーを有する多層構造体100を得るための、接合アニーリング熱処理ステップ(
図3のステップd)とを含む。第1及び第2基材1,2は、シリコンにより構成され、200mmの直径及び725マイクロメートルの厚さを有する。これら2つ基材1,2は、それぞれ、シリコンの自然酸化物(図示せず)により構成された第1接合面3と、シリコンの熱酸化物(厚さ145nmの酸化物の親水性膜5)から構成された第2接合面4とを含む。第1及び第2の表面3,4は、オゾン処理水、SC1(それぞれの体積比が1:1:5である、30%アンモニア、30%過酸化水素及び脱イオン水の混合物)、それに続くSC2(それぞれの体積比が1:1:5である、30%塩酸、30%過酸化水素及び水の混合物)での洗浄により、接触前に準備される。これらの洗浄は、直接接合において大きな弊害となる有機汚染物及び微粒子汚染物を除去することを可能にする。図示しない変形例によれば、接触前に表面を準備するステップは、従来のプラズマ処理を含む。
【0066】
そして、第1及び第2接合面3,4は、自発的な直接接合のために接触させられる(ステップb)。このようにして得られた多層組立体7の直接接合界面6は、脱イオン水中、モル濃度約10-3mol/lであるNaOHの塩基性水溶液8から構成された塩基性環境中に配置される(ステップc)。
【0067】
多層組立体7の塩基性水溶液8への浸漬は30日間維持され、その終わりに、多層組立体7は、300℃での接合アニーリング熱処理に供される(ステップd-周囲温度から300℃まで1℃/分で2時間の温度上昇)。得られた多層構造体100への接合のエネルギーの測定は、シリコン基材1,2の破壊をもたらし、基材1,2の剥離をもたらさない。これは、得られた接合エネルギーがシリコンの破壊エネルギーである5J/m2よりも大きいことを示している。塩基性環境に浸漬するステップc)なしで行われる同じ方法は、500℃でのアニーリング後に4J/m2の接合エネルギーをもたらす。
【0068】
図示しない代替形態によれば、ステップa)において与えられる2つの基材1,2のうちの一方は、脆化面(un plan de fragilisation)を有する。接合アニーリング熱処理は、脆化面での破壊を可能にする熱収支に寄与する。そして、得られる多層構造体100は、破壊に起因する転写された薄層に接合された2つの基材1,2のうちの一方と、基材1,2のうちの他方のネガとを含む。
【0069】
図示しない変形例によれば、直接接合界面6の塩基性環境への浸漬時間は、25mm/lの基材について約5時間(直径200mmの基材について15日間)である。浸漬時間はまた、基材1,2の性質に応じた変数である。
【0070】
図4に示すように、シリコン酸化膜5が、第1及び第2基材1,2の接合面3,4を形成していてもよい。
図4は、直接接合界面6を形成するために接触させられる2つの接合面3,4を示す。
図5は、ステップb)で得られた多層組立体7を、モル濃度が10
-2mol/lであるアミノアルコールDMAE(2-(ジメチルアミノ)エタノールの頭字語)を含む塩基性水溶液8によって形成された塩基性環境中に配置することを含む、本方法のステップc)を示す。塩基性環境8は、直接接合界面6のレベルを覆い、浸漬は20日間維持される。そして、本方法のステップd)に従って、200℃で3時間、多層組立体7に接合強化熱処理が施される。
【0071】
これらの操作は、直接接合界面6の任意の点で、特に5J/m2を超える強化接合エネルギー(二重てこ法の実施中にシリコンの破壊を観察することによって得られる値)を得ることを可能にする。同じ直接接合法を、ステップc)を行わずに実施する場合、二重てこ法を実施するときに第1及び第2基材が分離し得る。
【0072】
図7に示す変形実施形態によれば、ステップb)で得られた組立体7は、気相8’中の塩基性分子で飽和された雰囲気によって形成された塩基性環境に配置される。この目的のために、本方法は、濃度が10
-4mol/lのエタノールアミンの塩基性原液11を、1時間蒸発させることにより、気相中の塩基性分子で飽和された気密封入体9の調製を提供する。そして、組立体は、浸漬(ステップc)の2倍の長さの間、封入体9内に配置される。直接接合界面6が、気相8’中の塩基性分子で飽和されたこの雰囲気中に浸された後、接合エネルギーを強化するために、組立体7は300℃で2時間熱処理される(ステップd)。最後に、二重てこ法によって測定される接合エネルギーは、5J/m
2より大きい。
【0073】
図示しない別の可能性によれば、2つの接合面3,4は、本方法のステップb)による接触の前にプラズマ処理され、ステップd)による熱アニーリングは約20~250℃の温度、例えば50℃で、数時間行われる。
【0074】
図示しない変形例によれば、第1及び/又は第2基材1及び2は、Ge、InP、AsGa、SiC、GaNから選択される材料から構成され、これらは、本質的に親水性接合面を有する、考えられる材料の自然酸化物、LNO及びLTOなどの親水性膜から構成された接合面を有する。
【0075】
図示しない更に別の変形例によれば、ステップa)において与えられる第1基材1は、露出面が第1接合面3である、いくつかの第1の接合層において形成されている。第1の接合層は、「チップ・ツー・ウェーハ」という表現によっても知られているチップ-プレート接合に従って、第2基材2(フルプレート)上に前記の方法に従って接合される。図示しない更に別の変形例によれば、第2基材2はまた、いくつかの第2の接合層において形成され、本発明に係る方法は、第1の接合層と第2の接合層との直接接合を可能にする。
【0076】
図示しない代替形態によれば、第1接合面3及び第2接合面4は、直接接合において銅酸化物の接合可能なハイブリッド表面を有するように、準備される。これらの第1及び第2の親水性の接合面3,4は、典型的には2.5マイクロメートルのSiO2によって隔てられた2.5マイクロメートルの側面を有する銅パッドから構成されている。そして、5マイクロメートルの「ピッチ」を有するハイブリッド表面と呼ぶ。そして、本方法のステップb)~d)が、前記のように再現される。
【0077】
したがって、本発明は、大きな接合エネルギーを有する2つの基材1,2間の直接接合をすることを含み、接合後熱アニーリングの温度を制限することを可能にする、多層構造体100の製造方法を提案する。塩基性環境の調製は安価であり、浸漬ステップc)は多くの材料に適用可能である。特に、熱膨張係数に著しい差のある材料の基材(又は厚い層)を接合することが可能である。さらに、第1及び第2基材1,2の材料がデバイスを含む場合、これらは、使用温度によって損傷されない。
【0078】
言うまでもなく、本発明は、例として前記した変形実施形態に限定されるものではなく、記載された本方法のすべての技術的に同等なもの及び変形例、並びにそれらの組合せを含む。
【外国語明細書】