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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174562
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】強塩基に補助された直接接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080561
(22)【出願日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】2205048
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フルネル フランク
(72)【発明者】
【氏名】カルヴェ アズィリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ラレー ヴァンソン
(72)【発明者】
【氏名】モラル クリストフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2つの基材間の直接接合方法及びそのような方法で得ることができる組立体を提供する。
【解決手段】方法は、第1の親水性接合面3及び第2の親水性接合面4をそれぞれ含む第1基材1及び第2基材2を与えるステップと、第1の親水性接合面及び/又は第2の親水性接合面に、強塩基分子と脱イオン水とを含む塩基性溶液を堆積させるステップと、第1の親水性接合面及び/又は第2の親水性接合面において、強塩基分子から生じるカチオンが、約10~1015原子/cmの濃度になるまで、第1の親水性接合面及び/又は第2の親水性接合面を乾燥させるステップと、自発的な直接接合並びに直接接合界面6を含む第1基材1及び第2基材2から構成された組立体を得るために、第1の親水性接合面及び第2の親水性接合面を接触させるステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの基材(1,2)間の直接接合方法であって、
a)第1の親水性接合面(3)及び/又は第2の親水性接合面(4)をそれぞれ含む第1基材(1)及び第2基材(2)を与えるステップと、
b)前記第1の親水性接合面(3)及び/又は前記第2の親水性接合面(4)に、強塩基分子と脱イオン水とを含む塩基性溶液(B)を堆積させるステップと、
c)前記第1の親水性接合面(3)及び/又は前記第2の親水性接合面(4)において、前記強塩基分子から生じるカチオンが、約10~1015原子/cmの濃度になるように、前記第1の親水性接合面(3)及び/又は前記第2の親水性接合面(4)を乾燥させるステップと、
d)自発的な直接接合、並びに直接接合界面(6)を含む前記第1基材(1)及び前記第2基材(2)から構成された組立体(7)を得るために、前記第1の親水性接合面(3)及び前記第2の親水性接合面(4)を接触させるステップと
を含む、直接接合方法。
【請求項2】
c)の前記乾燥させるステップは、前記第1の親水性接合面(3)及び前記第2の親水性接合面(4)が、HOの1~5の原子単分子層で覆われるように行われる、請求項1に記載の直接接合方法。
【請求項3】
前記強塩基分子は、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、の塩基及びこれらの塩基の混合物から選択される、請求項1又は2に記載の直接接合方法。
【請求項4】
前記塩基性溶液(B)は、前記脱イオン水中に、濃度10-8~10-2mol/lの前記強塩基分子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の直接接合方法。
【請求項5】
c)のステップは、前記第1の親水性接合面(3)及び/又は前記第2の親水性接合面(4)を、例えば約2000回転/分の回転速度で、特に45秒間、遠心分離させることによって実施される、請求項1~4のいずれか1項に記載の直接接合方法。
【請求項6】
前記d)のステップで得られた前記組立体(7)に、50~500℃、特に50~350℃、特に60~250℃の温度で、熱処理を施すステップe)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の直接接合方法。
【請求項7】
前記第1基材(1)及び前記第2基材(2)は、シリコンから構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の直接接合方法。
【請求項8】
前記第1の親水性接合面(3)及び/又は前記第2の親水性接合面(4)は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化銅及びこれらの材料の混合物から選択される材料中の親水性膜(5)によって、少なくとも部分的に形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の直接接合方法。
【請求項9】
前記a)のステップにおいて与えられる前記第1基材(1)は、前記第1基材(1)の接合層形成から生じる1つ以上の第1の接合層(8)を含むことによって、1つ以上の第1の接合層の前記第2基材(2)への直接接合を得る、請求項1~8のいずれか1項に記載の直接接合方法。
【請求項10】
第1の親水性接合面(3)及び第2の親水性接合面(4)をそれぞれ含む、シリコンから構成された第1基材(1)及び第2基材(2)を備える、組立体(7)であって、
前記第1の親水性接合面(3)及び前記第2の親水性接合面(4)は、直接接合によって接合されており、強塩基分子が、前記第1の親水性接合面(3)及び前記第2の親水性接合面(4)間の直接接合界面(6)において、約10~1015原子/cm、特に約1010~1014原子/cmの濃度で設けられている、組立体(7)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接接合の分野に関する。本発明は特に、2つの基材間の直接接合方法に関する。第2の態様によれば、本発明は、そのような方法で得ることができる組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
直接接合は、現在よく知られた技術であり、例えば、撮像装置の製造のための、SOITEC社又はSTMicroelectronics社によるSOIの製造などの、産業用途に利用されている。本明細書で理解されるように、直接接合は、接合される表面間の界面に物質を追加することなく、特に、液体の厚い層なしで、すなわち、100nm超えの厚さを有する層なしで、2つの表面間を自発的に接合させることである。それにもかかわらず、これらの表面が肉眼では乾燥しているように、厚さが0.25~1.25nmの、表面上に吸着された水の単分子層をいくつか有することが可能である。
【0003】
直接接合の重要な特徴は、その接着エネルギー、すなわち、自発的に接合させるために利用可能なエネルギーにある。これは、ファンデルワールス力が備えられるように、2つの表面が原子スケールで接触するように、2つの表面を変形させることを可能にするエネルギーである。例えば、ケイ素又は親水性酸化ケイ素の2つの表面について、接着エネルギーは、典型的には30~100mJ/mである。この接着エネルギーは、部分的には、接合波(l’onde de collage)の伝播の時間を指し、例えば、接合波は2つの200mmのシリコン基材の直接接合のために、従来では9秒で伝播する。
【0004】
直接接合の別の重要な特徴は、その接着エネルギー、又は別の呼び方では、接合エネルギーである。これは、2つの接合面を分離するために必要なエネルギーである。厚さ約145nmの熱酸化物で覆われた2つのシリコン基材の接合の文脈では、この接着は、典型的には0.14~6J/mである。
【0005】
自発的な接合を得て、かつ経時的に安定した多層構造体を製造するために、表面は一般に、直接接合にとって大きな弊害となる有機汚染物及び微粒子汚染物が除去される。例えば、180℃での、96%硫酸と30%過酸化水素と(3:1)の混合物を用いて得られたカロ酸ベースの溶液、及び、70℃でのSC1(30%アンモニア、30%過酸化水素及び脱イオン水(1:1:5)の混合液)を用いて、予め、接合される表面の洗浄が行われる。あるいは、他の酸化力の強い洗浄溶液、例えばオゾンやその他を含有する水溶液を、ガス状オゾンの存在下でUV光にさらす処理をして、使用してもよい。クリーンルーム雰囲気内で、カロ及び70℃でのSC1ベースの化学洗浄をした、SiO-SiO接合(例えば、約145nmの熱酸化物で覆われた2つのシリコン基材)の接着エネルギーは、接合直後で、熱処理なしで、約140mJ/mである。
【0006】
接合エネルギーはまた、室温で行われた接合の後に施される熱処理にも従って大きくなる。接着エネルギーは、熱処理の温度の関数として増大する。例えば、SiO-SiOの接合エネルギーは、表面処理にもよるが、500℃で3J/mに達するまでゆっくり増大し、その後800℃まで増大しない。
【0007】
接合エネルギーを更に増大させるために、別の解決策では、接触前にプラズマ処理を行う。酸化物-酸化物接合のための窒素(N)プラズマでは、接合エネルギーは300℃の処理温度で約5J/mに急速に増大する。
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、プラズマの使用は特定の基材に対して適用できない場合があり、並びに/又は、その使用により時間が長くなり及び/若しくは方法のコストにより、工業化がより困難になる。プラズマ処理はまた、数ナノメートル(1~10nm)の厚さにわたり表面を改質する。この改質は将来デバイスに影響を与え得る。例えば、シリコン板では、プラズマは、厚さ及び品質の点で制御が困難な酸化物層を生じさせる。酸化ケイ素表面では、Nプラズマなどの特定のプラズマは、将来デバイスの電気的動作を妨害し得る界面電荷の問題を引き起こす。
【0009】
また、文献FR1312269に記載されているように、親水性表面に、アルコール官能基及びアミノアルコールなどの塩基性官能基を有する少量の分子を接合前に添加することも可能であり、これにより、プラズマ処理を必要とせずに、直接接合エネルギーを増大させる。
【0010】
本発明の目的の1つは、従来技術の欠点を改善することにある。この目的のために、本発明は、2つの基材間の直接接合方法を提案し、この方法は、以下のステップを含む:
a)第1の親水性接合面及び第2の親水性接合面をそれぞれ含む第1基材及び第2基材を与えるステップ、
b)前記第1及び/又は第2の親水性接合面に、強塩基分子と脱イオン水とを含む塩基性溶液を堆積させるステップ、
c)前記第1及び/又は第2の親水性接合面において、前記強塩基分子から生じるカチオンが、約10~1015原子/cmの濃度になるように、前記第1及び/又は第2の親水性接合面を乾燥させるステップ、
d)自発的な直接接合、並びに直接接合界面を含む前記第1基材及び前記第2基材から構成された組立体を得るために、前記第1及び第2の親水性接合面を接触させるステップ。
【0011】
このようにしてなされる、この直接接合方法は、自発的かつ即時的な直接接合である。実際、親水性接合面上の塩基性分子の非常に低い濃度は、接着エネルギーを変更せず、原子スケールで接触させるように表面を変形させることが可能である。それは、分子が存在しない場合と同じ接合エネルギーを達成するために、より低い接合アニーリング温度を必要とする。プラズマ処理を行う必要はない。プラズマ処理は依然として可能であり、所定のアニーリング温度について得られる接合エネルギーを低減しない。このようにして得られた組立体は耐久性があり、第1基材を特定の方法で第2基材と接触させたままにすることも、いかなる圧力も加えることも、組立体を特定の接合エネルギー強化環境に置くことさえも必要とすることなく、従来のマイクロエレクトロニクスツールによって即座に取り扱うことができる。さらに、塩基性溶液を堆積させるステップb)、及びステップc)の乾燥は、サイクル時間を著しく長くしない。これらは、実施するのがシンプルなステップであり、安価である。非常に少量で使用される強塩基分子は、安価である。
【0012】
本明細書では、「強塩基」という表現は、pKaが水中で14以上である塩基を意味する。強塩基は、HO中で完全に解離し、溶液中でOHイオンとカチオンとを与える。
【0013】
「親水性表面」という用語は、水の少なくとも1つの単分子層が、相対湿度が少なくとも1%の空気中での周囲圧力(すなわち、1バールの範囲)で、その表面に吸着されることを意味する。水滴の角度が90°未満、好ましくは50°未満、さらにより好ましくは5°未満である場合、表面は親水性であると言われる。
【0014】
一可能性によれば、乾燥させるステップc)は、第1の親水性接合面及び第2の親水性接合面が、HOの1~5の原子単分子層(厚さ0.25~1.25nm)で覆われるように行われる。したがって、これらの表面は巨視的なスケールで乾燥しており、表面上の残留水の任意の原子単分子層は、親水性表面の乾燥後に従来通りに得られる。
【0015】
一構成によれば、前記強塩基分子は、無機分子、特にアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物又はこれらの分子の混合物から構成されている。
【0016】
一可能性によれば、強塩基分子は、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、の塩基、及びこれらの塩基の混合物から選択される。
【0017】
特定の実施形態によれば、塩基性溶液は、第1及び/又は第2の親水性接合面上に、スピンコートによって堆積される。このスピンコートは、プレートの調節可能な回転速度、例えば0~500回転/分の回転速度により、塩基性溶液を均質に広げることを可能にする。この方法は、考慮される表面全体が十分に覆われることを確実する。
【0018】
具体的には、塩基性溶液は、脱イオン水中に、濃度10-8~10-2mol/lの強塩基分子を含む。
【0019】
有利には、ステップc)は、第1及び/又は第2の親水性接合面(3,4)を、例えば約2000回転/分の回転速度で、特に45秒間、遠心分離させることによって実施される。その遠心分離は、特に、ステップb)におけるスピンコートの後に、同じ装置を使用し、第1及び第2基材を移動させないように実施される。
【0020】
別の構成によれば、ステップb)は、塩基性溶液中に第1及び/又は第2の親水性接合面を浸漬することによって実施される。
【0021】
別の変形例によれば、ステップc)は、マランゴニ乾燥によって実施される。
【0022】
一可能性によれば、本方法は、ステップd)で得られた組立体に、50~500℃、特に50~350℃、特に60~250℃の温度で、熱処理を施すステップe)をさらに含む。この接合アニーリング熱処理により、低温、すなわち500℃以下のまま、接合エネルギーをさらに強化することができる。
【0023】
しかしながら、特別な欠点も見出されないで、例えば高い接合エネルギーに達する制限以外の制限のために、必要であれば、例えば900℃、1100℃又は1200℃などのはるかに高い温度まで上げることが可能である。
【0024】
特定の実施形態によれば、第1及び第2基材は、シリコンから構成されている。
【0025】
一可能性によれば、第1の親水性接合面及び/又は第2の親水性接合面は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化銅及びこれらの材料の混合物から選択される材料中の親水性膜によって、少なくとも部分的に形成されている。
【0026】
親水性酸化ケイ素膜は、熱酸化物、堆積酸化物及び自然酸化物から選択される。
【0027】
一変形例によれば、ステップa)において与えられる第1基材は、第1基材の接合層形成(vignetage)から生じる1つ以上の第1の接合層(vignettes)を含むことによって、1つ以上の第1の接合層の第2基材への直接接合を得る。
【0028】
第1の親水性接合面は、1つ以上の第1の接合層の露出面によって画定される。
【0029】
別の変形形態によれば、ステップa)において与えられる第2基材は、第2基材の接合層形成から生じる1つ以上の第2の接合層を含むことによって、1つ以上の第1の接合層と、1つ以上の第2の接合層との間の直接接合を得る。
【0030】
第2の親水性接合面は、1つ以上の第2の接合層の露出面によって画定される。
【0031】
したがって、本発明は、1つ以上の第1の接合層の、例えば300mmの第2の基材における、1mm×1mmの表面との、直接接合を進行させることを可能にし、例えば、各々が約1mm×1mmの領域を有する、1つ以上の第1の接合層と、1つ以上の第2の接合層との、直接接合を進行させることを可能にする。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、第1の親水性接合面及び/又は第2の親水性接合面をそれぞれ含む、第1基材及び第2のシリコンの基材を備える、組立体を提案し、第1及び第2の親水性接合面は、直接接合によって接合され、強塩基分子が、第1及び第2の親水性接合面の間の直接接合界面において、約10~1015原子/cm、特に約1010~1014原子/cmの濃度で設けられている。
【0033】
これらの濃度は、ICPMS(誘導結合プラズマ質量分析法)などの質量分析法又はTXRF(全反射蛍光X線分析法)によって測定される。
【0034】
この組立体は、基材が接触した後に基材が分離しないために必要とされる接合エネルギーを有することが理解される。
【0035】
第1基材及び第2基材は、各々、LTO、LNO、ダイヤモンド、アルミナ及び半導体材料、特に、シリコン、ゲルマニウム、酸化ケイ素、ゲルマニウムの酸化物、窒化ケイ素、SiOC、SiC、InP、GaAs、GaN、並びにこれらの材料の組合せから選択される材料によって形成されている。
【0036】
第1及び/又は第2基材は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化銅又はこれらの化合物の混合物の層によって覆われている。
【0037】
例示的な実施形態によれば、ステップa)において与えられる第1基材及び第2基材は、100~300mm、特に200mmの直径を有するシリコン基材であり、第1の親水性接合面及び第2の親水性接合面は、各々、酸化ケイ素の親水性膜によって形成されている。
【0038】
他の特徴によれば、本発明に係る直接接合方法は、単独で又は組み合わせて考慮される以下の任意の特徴の1つ以上を含む。
【0039】
- ステップa)で与えられる第1及び第2の接合面は、微粒子状物質及び有機汚染物を取り除いてその表面を親水性にするために、カロ、SC1、オゾン処理水での処理によって調製される。
【0040】
- ステップd)において、第1の接合面及び第2の接合面は、室温で接触させられる。
【0041】
- 塩基性溶液のステップb)による堆積は、予め、脱イオン水中で強塩基分子を混合することによって得られる塩基性調製物を形成することを含む。
【0042】
- 一構成によれば、塩基性溶液は、脱イオン水中に質量濃度が10-8~10-4g・cm-3の、特に質量濃度が約10-5g・cm-3の、NaOHを含む。
【0043】
- ステップe)による接合アニーリング熱処理は、約2時間実施される。
【0044】
- 本方法のステップc)による接触は、大気圧下又は真空下で実施される。
【0045】
- 本方法のステップd)による熱処理は、大気圧下で実施される。
【0046】
- 本直接接合方法は、ステップd)において、又はステップd)の後に、第1及び/又は第2基材に外圧をなんら加えない。
【0047】
- 第1及び/又は第2の親水性接合面は、ステップd)の前では、原子単分子層を形成するのに必要な量よりも、又は第1及び/若しくは第2の親水性接合面の接合部位(des sites d'accroche)のすべてを満たすのに必要な量よりも、少ない量の、強塩基分子を有する。
【0048】
- 第1及び/又は第2の親水性接合面は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化銅又はこれらの材料の混合物から選択される材料中の連続的な親水性膜によって完全に形成されている。
【0049】
- 第1及び/又は第2の親水性接合面は、0.5nmのRMS(2乗平均平方根)未満の粗さを有する。
【0050】
- 第1及び/又は第2の親水性接合面は、自然酸化物を有するシリコンから構成されている。
【0051】
- 第1及び/又は第2の親水性接合面は平坦である。
【0052】
- 第1及び第2基材は、各々独立して、2~12インチ、特に200~300mmの直径を有する基材から選択される。
【0053】
- 1つ以上の第1の接合層及び/又は1つ以上の第2の接合層は、100μm~5mmの横寸法又は直径を有し、例えば、第1及び/又は第2の接合層は、その横寸法が100μm×100μmである略正方形の主表面を有する。
【0054】
- 第1及び/又は第2基材は、各々、塩基性溶液を堆積させるステップb)の前に、親水性フィルムによって覆われた、チップなどの少なくとも1つの電子部品を含む。
【0055】
- 第1及び第2基材は、各々独立して、固体基材(バルク)又は複合基材(いくつかの材料層)から選択される。
【0056】
- 第1基材及び第2基材は、同一の性質又は異なる性質のものでもよい。
【0057】
本発明の他の態様、目的及び利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面を参照した、2つの実施形態についての以下の説明によって、より良く明らかになるのであろう。以下の説明では、簡略化のために、異なる実施形態の同一、類似、又は同等の要素には、同じ参照番号が付されている。図面は、それらの可読性を向上させるために、必ずしも、表されたすべての要素の縮尺について厳密ではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る方法のステップb)及びステップc)による、第1基材の親水性表面へ塩基性溶液を堆積させること及び乾燥させることを示す概略図である。
図2図2は、図1の実施形態に係る方法のステップd)による、組立体を形成する第1基材及び第2基材を直接接合させることを示す概略図である。
図3図3は、図1の実施形態に係る方法のステップe)による、第1基材及び第2基材の組立体に施される熱処理を示す概略図である。
図4図4は、図1の実施形態により得られた接合エネルギーを比較する例と、対照例とを示すグラフである。
図5図5は、本発明の代替の実施形態に係る、第2基材への第1の接合層の直接接合を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1~3に示すように、本発明に係る方法は、親水性接合面3,4への第1及び第2基材1,2を与えること(ステップa)、表面3,4に塩基性溶液Bを堆積させること(ステップb)、それを乾燥させること(ステップc)、直接接合界面6を生成することによる、自発的な直接接合のために、直接接触させること(ステップd)、及びこのように形成された組立体7に、可能な接合アニーリングをすること(ステップe)を含む。特に、第1及び第2基材1,2は、725μmの厚さ及び200mmの直径を有するシリコンウエハである。それらは、各々、約145nmの厚さを有する熱酸化ケイ素の親水性膜5によって形成された接合面3,4を有する。これらの接合面3,4はカロ処理及びSC1処理によって洗浄され、有機汚染物及び微粒子汚染物の除去を可能にし、その結果、親水性表面3,4は接合の準備ができる。
【0060】
そして、脱イオン水中に強塩基分子を含む塩基性溶液が、第1基材1の親水性接合面3に、本方法のステップb)に従って、400rpmの回転速度でのスピンコートによって堆積される(図1)。予め、NaOHからなる強塩基を脱イオン水に溶解し、NaOHの濃度が約10-5g・cm-3の前記塩基性溶液を得た。図示しない変形例によれば、強塩基は、LiOH、KOH、RbOH、CsOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)及びこれらの塩基の混合物から選択される。
【0061】
本方法のステップc)によれば、親水性接合面3は、水の1~5の原子単分子層を含み、かつ強塩基分子が約1013原子/cmの濃度となるまで、遠心分離によって乾燥される。乾燥遠心分離は、約2000回転/分の速度で、約45秒間実施される。
【0062】
第1基材1及び第2基材2がそれらの親水性接合面3,4の自発的な直接接合によって直接接合界面6を生成するために、接触させられるよりも前に、第2基材2は、第1基材1と同じステップb)及びc)(図示せず)に供される。基材1,2の200mmを横切る接合波の伝播は約9秒である。これは、界面6に強塩基分子が存在しない場合の接合波の伝播時間と同等である。このことから、2つの親水性接合面3,4の接着エネルギーは、本方法のステップb)及びc)によっては変わらないことが推測される。ステップd)の終わりに得られる組立体7の接合エネルギーは、接合界面6に強塩基が存在しない場合に得られる接合エネルギー140mJ/mよりも大きく、その接合エネルギーは、本発明のこの実施形態によれば、特に約200mJ/mである。
【0063】
図示しない変形例によれば、ステップb)及びc)は、第1及び第2基材1,2のうちの一方のみに対して実施される。別の変形形態によれば、第1の親水性表面3及び第2の親水性表面4は、酸化ケイ素の膜5によってではなく、基材1,2の親水性シリコン(すなわち、シリコン表面における自然酸化物)によって形成されている。
【0064】
図3に示す一可能性によれば、ステップe)による接合アニーリング熱処理は、大気圧で組立体7に施される。その結果は、縦軸に接合エネルギーを示し、横軸に摂氏でのアニーリング温度を示す、図4の点線曲線によって示されている。接合エネルギーは、例えば、F. Fournel, L. Continni, C. Morales, J. Da Fonseca, H. Moriceau, F. Rieutord, A. Barthelemy, 及びI. Radu, Journal of Applied Physics 111, 104907 (2012)の論文に記載されているように、無水雰囲気中で強制変位を行う二重てこ法により測定される。その温度は組立体7に2時間適用され、そして周囲温度に戻った後、組立体7において測定が実施される。対照例では、接合面に強塩基分子が存在しないことを除いて本発明と同じように同時に直接接合が実施された(実線曲線)。図4に示すように、100℃、200℃、300℃及び500℃の温度で、塩基性分子により補助された直接接合が評価され、その接合エネルギーは、100℃から、補助されない直接接合に比べて著しく大きい。その差は、特に、本発明に係る補助された直接接合で4.5J/mに達する一方、補助されない接合では接合エネルギーが0.5J/m未満である、200℃における接合アニーリングの後に大きくなっている。
【0065】
300℃及び500℃でのアニーリング後は、測定の実施により基材の分離が必然となり、シリコン基材が破損したため、接合エネルギーの測定ができなかった(図4のグラフに×印で示されている)。したがって、直接接合エネルギーは、シリコンの破壊エネルギーである5J/mのよりも大きい。それゆえ、接合エネルギーは、300℃からこの値を超える。500℃での接合アニーリング後、補助されない直接接合では2.2J/mにしか達しなかった。
【0066】
図5に示す別の変形例によれば、ステップa)で与えられる第1基材1は、露出面が第1の親水性接合面3である、いくつかの第1の接合層8に形成されている。第1の接合層8は、チップ・ツー・ウェーハ接合に従って、第2のフルウェーハ基材2に、前記の方法に従って接合される。図示しない更に別の変形例によれば、第2基材2はまた、いくつかの第2の接合層に形成され、本発明に係る方法は、第1の接合層8と第2の接合層との直接接合を可能にする。
【0067】
図示しない代替形態によれば、第1の親水性接合面3及び第2の親水性接合面4は、少なくとも部分的に酸化銅の親水性膜5によって形成されている。具体的には、直径300mm、厚さ775μmの第1及び第2のシリコン基材1,2が、直接接合可能なハイブリッド酸化銅表面を有するように、調製される。これらの第1及び第2の親水性接合面3,4は、典型的には2.5μmのSiOによって分離された2.5μmの側面を有する銅パッドから構成されている。それは、5μmの「ピッチ」を有するハイブリッド表面である。これらの接合面3,4を完全に平坦かつ接合可能にする機械的-化学的研磨の直後で、かつ接合の直前に、脱イオン水中、10-5g/cmのNaOHの溶液を、ステップb)によるスピンコートによって、堆積させる。このスピンコートの後、2つの親水性表面3,4は、ステップc)に従って、2000回転/分で45秒間、遠心分離によって乾燥される。次いで、その2つの表面3,4が接触させられる。そして、接合波は、300mmを横切るのに約12秒かかり、これは、この塩基性分子がない接合と同等である。組立体7は、400℃で2時間アニーリングされる。音響顕微鏡では、特別な欠陥は観察されない。
【0068】
したがって、本発明によって導入される溶液は、温度の影響を受けやすい部材を有する基材に適用できるように、低温で実施される熱処理の有無にかかわらず、大きな径の基材を用いても、直接接合エネルギーを大幅に増大させることを可能にする。本方法は実施が簡単であり、塩基性溶液を堆積させ、表面を乾燥させるステップは迅速である。使用される塩基性溶液は安価であり、塩基の量は非常に少なく、これは基材1,2の接着エネルギーを変更せず、自発的な直接接合を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】