(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174571
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】支持脚体、及び、支持脚体ユニット
(51)【国際特許分類】
E04F 15/024 20060101AFI20231130BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
E04F15/024 603D
E04F15/02 101F
E04F15/024 603Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082427
(22)【出願日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2022085328
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398062574
【氏名又は名称】カナフレックスコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金尾 茂樹
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA03
2E220AA11
2E220AA25
2E220AA39
2E220AA60
2E220AB08
2E220AC03
2E220CA14
2E220CA17
2E220CA22
2E220CA30
2E220CA42
2E220CA63
2E220CA70
2E220DA02
2E220DB20
2E220GA25X
2E220GA26Z
2E220GA27X
2E220GA27Z
2E220GB01Z
2E220GB05X
2E220GB22X
2E220GB22Z
2E220GB23Z
2E220GB32Z
2E220GB35Z
2E220GB37Z
(57)【要約】
【課題】電気配線の短絡、信号障害等が発生し難いとともに、床下の熱が支持脚体を介して室内に伝わるのを効果的に抑制することができ、しかも安価で十分な耐久性及び支持強度を確保可能な支持脚体を提供する。
【解決手段】建築物の床基礎10の上方に間隔Iを置いて敷設される床板11を支持する支持脚体1であって、前記床基礎10上に設置される下部脚体2と、該下部脚体2の上方に設置される上部脚体3と、を備え、前記下部脚体2及び前記上部脚体3の一方は、螺旋状に延びるねじ山41が外周面に形成された雄ねじ部4を有し、前記下部脚体2及び前記上部脚体3の他方は、前記ねじ山41に対応したねじ溝61が内周面に形成された雌ねじ部6を有し、前記雄ねじ部4及び雌ねじ部6が、繊維補強セメント材を主体として構成されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体であって、
前記床基礎上に設置される下部脚体と、該下部脚体の上方に設置される上部脚体と、を備え、
前記下部脚体及び前記上部脚体の一方は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、
前記下部脚体及び前記上部脚体の他方は、前記ねじ山に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、
前記雄ねじ部及び雌ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成されている、支持脚体。
【請求項2】
前記繊維補強セメント材は、金属繊維以外の繊維からなる補強繊維を有し、該補強繊維は、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維等の有機繊維又は無機繊維である請求項1記載の支持脚体。
【請求項3】
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との間には、両者を接合する接合材が充填されている、請求項1に記載の支持脚体。
【請求項4】
前記下部脚体の下部には、前記床基礎上に載置される台座部が設けられている、請求項1に記載の支持脚体。
【請求項5】
前記上部脚体の上部には、前記床板を支持する支持部が設けられている、請求項1に記載の支持脚体。
【請求項6】
前記下部脚体及び前記上部脚体が、繊維補強セメント材を主体として構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の支持脚体。
【請求項7】
建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体であって、
螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、
前記雄ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成され、
前記ねじ山に対応したねじ溝を有する雌ねじ部材と螺合された状態で使用される、支持脚体。
【請求項8】
建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体であって、
螺旋状に延びるねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、
前記雌ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成され、
前記ねじ溝に対応したねじ山を有する雄ねじ部材と螺合された状態で使用される、支持脚体。
【請求項9】
建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体ユニットであって、
前記床基礎上に設置可能な寸法の異なる複数の下部脚体と、該下部脚体の上方に設置される上部脚体と、を備え、
前記下部脚体及び前記上部脚体の一方は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、
前記下部脚体及び前記上部脚体の他方は、前記ねじ山に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、
前記雄ねじ部及び雌ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成されている、支持脚体ユニット。
【請求項10】
建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体ユニットであって、
前記床基礎上に設置される下部脚体と、該下部脚体の上方に設置可能な寸法の異なる複数の上部脚体と、を備え、
前記下部脚体及び前記上部脚体の一方は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、
前記下部脚体及び前記上部脚体の他方は、前記ねじ山に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、
前記雄ねじ部及び雌ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成されている、支持脚体ユニット。
【請求項11】
建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体であって、
前記床基礎上に設置される下部脚体と、該下部脚体の上方に設置される上部脚体と、を備え、
前記下部脚体及び前記上部脚体の一方は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、
前記下部脚体及び前記上部脚体の他方は、前記ねじ山に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、
前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部が、金属から構成され、前記雄螺子部及び前記雌螺子部以外の部分が、繊維補強セメント材から構成され、該繊維補強セメント材は、全体に対する体積比において70%~99%である支持脚体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床基礎の上方に間隙を置いて敷設される床板を支持する支持脚体、及び、支持脚体ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床スラブ等からなる床基礎上に間隙を置いて敷設されるフロアパネル等からなる床板の支持脚体(フロア支持脚)として、床基礎上に設置されるベースプレートと、このベースプレート上に立設された棒状体からなる支持ボルトと、この支持ボルトに螺合された筒状体からなる筒ナットと、上面にフロアパネルからなる床板を支持する金属製の板状体からなる支持板(台座)を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この支持脚体は、前記筒ナットに対する支持ポルトの螺合位置を変化させることにより、支持脚体の設置高さを調節し得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された支持脚体を構成する支持ボルト及び筒ナット等の各部材は、鋼材等からなる金属材で構成されているため、信号伝達用の電気配線が支持脚体に近接した位置に配置されることに起因して電磁ノイズが発生したり、電気配線が支持脚体に絡んで短絡が生じたりする可能性がある。また、金属材により形成された前記支持脚体は、製造コストが高く付くとともに、錆が生じ易いために耐久性が劣るという欠点がある。しかも、金属材製の支持脚体は熱伝導率が高いために、床下部の熱が支持脚体を介して室内に伝わり易く、建築物の保温性を維持することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、前述の状況に鑑み、電気配線の短絡や信号障害等を生じることがないとともに、床下の熱が支持脚体を介して室内に伝わるのを効果的に抑制することができ、しかも安価で十分な耐久性及び支持強度を確保することができる支持脚体、及び、支持脚体ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る支持脚体は、建築物の床基礎の上方に間隙を置いて敷設される床板を支持する支持脚体であって、前記床基礎上に設置される下部脚体と、該下部脚体の上方に設置される上部脚体と、を備え、前記下部脚体及び前記上部脚体の一方は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、前記下部脚体及び前記上部脚体の他方は、前記ねじ山に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、前記雄ねじ部及び雌ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成されたものである。
【0007】
この構成によれば、信号伝達用の電気配線が支持脚体に近接した位置に配設されている場合においても、金属材からなる支持脚体のように電磁ノイズが発生したり、電気配線が支持脚体に絡んで短絡が生じたりすることがないとともに、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合量を変化させることにより、支持脚体の設置高さを調節することが可能である。また、金属材からなる支持脚体に比べて熱伝導率が極めて低いので、床下の熱が支持脚体を介して室内に伝達されるのを効果的に抑制して、建築物の保温性を効果的に維持することができる。さらに、鋼材からなる支持脚体のように錆を生じることがないので、優れた耐久性が得られる等の利点がある。
【0008】
また、前記繊維補強セメント材は、金属繊維以外の繊維からなる補強繊維を有し、該補強繊維は、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維等の有機繊維又は無機繊維であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、雄ねじ部及び雌ねじ部に生成されたクラックを前記補強繊維によって補修する自己修復機能が得られる。このため、支持脚体の設置後に雄ねじ部及び雌ねじ部にクラックが生成された場合に、このクラックを埋める補修を行ったり、下部脚体及び上部脚体を交換したりするという煩雑な作業を要することなく、支持脚体の耐久性を十分に維持することができる。また、補強繊維が金属繊維以外の繊維であるため、電気配線が支持脚体に絡んでも短絡が生じることがない。このため、短絡を防止しながらも、補強繊維によって支持脚体を補強できる。よって、金属の支持脚体と同様に、重い荷重を支持できる。
【0010】
また、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との間には、両者を接合する接合材が充填されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、支持脚体の設置後に、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合部にがたつきが生じるのを効果的に防止して、下部脚体と上部脚体との連結状態を安定して維持することができる。
【0012】
また、前記下部脚体の下部には、前記床基礎上に載置されるブロック状体からなる台座部が設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、下部脚体の下部に設けられたブロック状体と床基礎との接触面積を十分に確保することができるため、下部脚体の下端部に応力が集中することに起因した損傷の発生を効果的に防止することができる。しかも、下部脚体の重心を下方に位置させることにより、支持脚体の載置状態を安定して維持することができる。
【0014】
また、前記上部脚体の上部には、前記床板を支持する床板支持部が設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、床板支持部により支持される床板の支持面積を十分に確保することできるため、単一の支持脚体により複数個の床板を安定して支持できる等の利点がある。
【0016】
また、前記下部脚体及び前記上部脚体が、繊維補強セメント材を主体として構成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、下部脚体及び上部脚体が、繊維補強セメント材を主体として構成されているため、金属材からなる支持脚体と異なり電磁ノイズが発生しない等の効果をより高めることができる。
【0018】
また、本発明に係る支持脚体は、建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体であって、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、前記雄ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成され、前記ねじ山に対応したねじ溝を有する雌ねじ部材と螺合された状態で使用されるものであってもよい。
【0019】
この構成によれば、適宜の材料で形成された雌ねじ部材とともに、床板を支持することができる。
【0020】
また、本発明に係る支持脚体は、建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体であって、螺旋状に延びるねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、前記雌ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成され、前記ねじ溝に対応したねじ山を有する雄ねじ部材部材と螺合された状態で使用されるものであってもよい。
【0021】
この構成によれば、適宜の材料で形成された雌ねじ部材とともに、床板を支持することができる。
【0022】
本発明の支持脚体ユニットは、建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体ユニットであって、前記床基礎上に設置可能な寸法の異なる複数の下部脚体と、該下部脚体の上方に設置される上部脚体と、を備え、前記下部脚体及び前記上部脚体の一方は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、前記下部脚体及び前記上部脚体の他方は、前記ねじ山に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、前記雄ねじ部及び雌ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成されている。
【0023】
この支持脚体ユニットによれば、上部脚体と、この上部脚体に螺合できる寸法の異なる複数の下部脚体を備えておくことにより、床基礎と床板との間隔の高さに対応して下部脚体を選択することができる。このため、床基礎と床板との間隔の高さについて、広い範囲で対応できる。
【0024】
また、本発明の支持脚体ユニットは、建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体ユニットであって、前記床基礎上に設置される下部脚体と、該下部脚体の上方に設置可能な寸法の異なる複数の上部脚体と、を備え、前記下部脚体及び前記上部脚体の一方は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、前記下部脚体及び前記上部脚体の他方は、前記ねじ山に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、前記雄ねじ部及び雌ねじ部が、繊維補強セメント材を主体として構成されている。
【0025】
この支持脚体ユニットによれば、下部脚体と、この下部脚体に螺合できる寸法の異なる複数の上部脚体を備えておくことにより、床基礎と床板との間隔の高さに対応して下部脚体を選択することができる。このため、床基礎と床板との間隔の高さについて、広い範囲で対応できる。
【0026】
また、本発明の支持脚体は、床基礎上に設置される下部脚体と、下部脚体の上方に設置される上部脚体と、を備え、下部脚体及び上部脚体の一方は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成された雄ねじ部を有し、下部脚体及び前記上部脚体の他方は、前記ねじ山に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部を有し、雄ねじ部及び雌ねじ部が、金属から構成され、前記雄螺子部及び前記雌螺子部以外の部分が、繊維補強セメント材から構成され、該繊維補強セメント材は、全体に対する体積比において70%~99%である支持脚体。
【0027】
この支持脚体は、大部分が繊維補強セメント材から構成されているため、電気配線が支持脚体に近接した位置に配設されている場合においても、電磁ノイズが発生したり、電気配線が支持脚体に絡んで短絡が生じたりすることがない。また、全体として、熱伝導率が極めて低いので、床下の熱が支持脚体を介して室内に伝達されるのを効果的に抑制することができる。また、雄螺子部及び雌螺子部が金属から構成されているため、螺合部の強度が高くなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る支持脚体によれば、電気配線の短絡や信号障害等を生じることがないとともに、床下の熱が支持脚体を介して室内に伝わるのを効果的に抑制することができ、しかも安価で十分な耐久性及び支持強度を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る支持脚体の第一実施形態を示す断面図である。
【
図2】第一実施形態に係る支持脚体の斜視図である。
【
図3】第一実施形態に係る支持脚体の設置状態を示す断面図である。
【
図4】下部脚体と上部脚体との連結状態を示す断面図である。
【
図5】第一実施形態に係る支持脚体の設置位置を示す平面図である。
【
図6】第一実施形態に係る支持脚体の変形例を示す断面図である。
【
図7】第一実施形態に係る支持脚体の別の変形例を示す断面図である。
【
図8】第一実施形態に係る支持脚体のさらに別の変形例を示す断面図である。
【
図9】第一実施形態に係る上部脚体のさらに別の変形例を示す断面図である。
【
図10】本発明に係る支持脚体の第二実施形態を示す断面図である。
【
図11】本発明に係る支持脚体の第三実施形態を示す正面図である。
【
図12】本発明に係る支持脚体の第四実施形態を示す断面図である。
【
図13】本発明に係る支持脚体の第五実施形態を示す断面図である。
【
図14】
図13に示す支持脚体の使用状態を示す正面図であり、同図(a)は、S寸の下部脚体により床板11を支持した状態を示す断面図であり、同図(b)は、M寸の下部脚体により床板11を支持した状態を示す断面図であり、同図(c)は、L寸の下部脚体により床板11を支持した状態を示す断面図である。
【
図15】本発明に係る支持脚体ユニットの第六実施形態を示す断面図である。
【
図16】本発明に係る支持脚体ユニットの第七実施形態を示す断面図である。
【
図17】本発明に係る支持脚体の第八実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る支持脚体の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0031】
(第一実施形態)
図1~
図5は、本発明の第一実施形態に係る支持脚体1を示している。この支持脚体1は、例えば
図3に示すように、建築物の床スラブ等からなる床基礎10の上方に、一定の間隔Iを置いて敷設されるフロアパネル等からなる床板11を支持するものであって、床基礎10上に設置される下部脚体2と、該下部脚体2の上方に設置される上部脚体3と、を備えている。
【0032】
下部脚体2及び上部脚体3の一方(当第一実施形態では下部脚体2)は、螺旋状のねじ山41が外周面に形成された雄ねじ部4を有し、この雄ねじ部4の下方には、床基礎10上に載置される台座部5が設けられている。雄ねじ部4は、
図1及び
図4に示すように、例えば58mm程度の外径Aと、60mm程度の高さBとを有する円柱状体からなっている。台座部5は、一辺の長さCが雄ねじ部4の外径よりも大きな値である例えば100mm程度に設定された正方形の平面視形状と、82mm程度の高さDと、を有するブロック状体からなっている。なお、台座部5の平面視形状は、正方形に限られず、円形または正六角形等の種々の形状に変形可能である。
【0033】
下部脚体2及び上部脚体3の他方(当第一実施形態では上部脚体3)は、例えば一辺の長さEが100mm程度に設定された正方形の平面視形状と、88mm程度の上下寸法Fと、を有するブロック状体からなっている。そして、上部脚体3の下部には、前記ねじ山41に対応したねじ溝61が内周面に形成された筒状体からなる雌ねじ部6が設けられている。また、上部脚体3の上部には、雌ねじ部6の上端部を覆う壁部からなる床板支持部7が設けられている。雌ねじ部6の上下寸法Gは、例えば60mm程度に設定され、かつ床板支持部7の厚みHは、例えば28mm程度に設定されている。なお、上部脚体3の平面視形状は、正方形に限られず、円形または正六角形等の種々の形状に変形可能である。
【0034】
当第一実施形態では、
図4に示すように、ねじ山41の断面形状が、外窄まりの台形に形成されるとともに、ねじ溝61の断面形状が、内広がりの台形状に形成されている。そして、ねじ溝61の幅寸法が、前記ねじ山41の幅寸法よりもやや大きく形成されることにより、下部脚体2の雄ねじ部4と上部脚体3の雌ねじ部6との間に一定の隙間8が形成された状態で、両者が螺合されるように構成されている。隙間8の寸法は、特に限定されないが、下部脚体2と上部脚体3とを互いに回動できる一方で、床板11から下へ圧力が付加された場合に、雄ねじ部4のねじ山41と雌ねじ部6のねじ溝61との静止摩擦力によって、下部脚体2と上部脚体3とが互いに固定される程度であることが好ましい。
【0035】
上述の下部脚体2及び上部脚体3は、例えばセメント、水、補強繊維を混練した混練物を成形型内に充填して、養生固化することで得られる比較的に軽量で高い圧縮強度と、0.9~2.0程度の比重と、を有する繊維補強セメント材を主体として形成されている。前記セメントの材質は、特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等、各種セメントを使用できる。また、前記補強繊維としては、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維、バサルト繊維等が挙げられる。
【0036】
下部脚体2及び上部脚体3を、繊維補強セメント材に砂を混入した繊維補強モルタル、もしくは繊維補強セメント材に、砂利及び砕石等を混入した繊維補強コンクリートにより構成してもよい。なお、下部脚体2及び上部脚体3の軽量化を目的として、発泡剤や起泡剤等を用いて繊維補強セメント材の内部に独立気泡および連続気泡等の気泡、あるいは樹脂発泡体を混入することにより、多孔質の繊維補強セメント材により下部脚体2及び上部脚体3を構成してもよい。
【0037】
また、雄ねじ部4及び雌ねじ部6の間に形成された隙間8には、例えば、酢酸ビニル-アクリル系、スチレン-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系、スチレン-ブタジエン系、ニトリルゴム系、クロロプレンゴム系、変性シリコーン系、シアノアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系、メラミン系、ユリア系、ポリアミド系、ニトロセルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル系等の合成樹脂製接着剤等からなる接合材25が充填されている(
図4参照)。これにより、支持脚体1の設置後に、雄ねじ部4と雌ねじ部6とが一体に接合されるように構成されている。
【0038】
なお、前記合成樹脂製接着剤等からなる接合材25に代え、ポリウレア樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂または不飽和ポリエステル樹脂等からなる合成樹脂と、砂等の細骨材とが混合された樹脂モルタルを用いてもよい。この樹脂モルタルは、セメントやモルタル等に比べて作業性が良いので、前記隙間8内に樹脂モルタルを充填して固化させる作業を容易に行うことができる。しかも、前記樹脂モルタルは、一般的に優れた接合力、防水性、耐薬品性、耐磨耗性等を有しているとともに、空隙のない好適な仕上がりを実現可能であるという利点がある。
【0039】
床板11は、支持脚体1の下部脚体2及び上部脚体3と同様に、例えばセメント、水、補強繊維を混練した混練物を成形型内に充填して、養生固化することで得られる繊維補強セメント材を主体としたコアパネル12と、その表裏両面に設けられたアルミニュウム合金等の金属板またはFRP材等からなる被覆層13,13とを有している(
図4参照)。この被覆層13,13として、コアパネル12よりも高い引張強度を有する素材、例えばポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維、バサルト繊維等などの繊維材により構成されたシート状体を用いてもよい。その中でも、特に軽くて強い炭素繊維強化プラスチックを主体として織物状等に加工された炭素繊維シートからなる被覆層13,13を用いることが好ましい。なお、床板11として、天然木材又は合成樹脂材等からなる従来周知の素材を使用可能であることは勿論である。
【0040】
上述の構成を有する支持脚体1により床板11を支持する場合、予め製造工場で作成された下部脚体2及び上部脚体3を建築現場に搬入する。そして、下部脚体2の雄ねじ部4もしくは上部脚体3の雌ねじ部6の少なくとも一方に、両者を接合する接合材25を塗布した状態で、雄ねじ部4と雌ねじ部6とを螺合する。このようにして下部脚体2と上部脚体3とが一体に連結されてなる複数の支持脚体1を構成し、これを床基礎10上の所定位置に配設する。
【0041】
例えば、
図5に示すように、予め一定の大きさに形成された複数の床板11の側辺部を互いに当接させた状態で建築物の床基礎10の上方に敷設する施工現場において、各床板11のコーナ部が集合した集合部15の下方に、支持脚体1を位置させるように配設する。また、接合材25が硬化する前に、下部脚体2及び上部脚体3の何れか一方を回動操作して、雄ねじ部4と雌ねじ部6との螺合量Jを変化させることにより、床板11の設置面が水平状態となるように各支持脚体1の高さ調節を行う。
【0042】
具体的には、
図4に示すように、床基礎10と床板11との間隔Iが200mmに設定された施工現場において、上述の寸法を有する下部脚体2及び上部脚体3からなる支持脚体1を用いる場合、下部脚体2の雄ねじ部4と上部脚体3の雌ねじ部6との螺合量Jを、例えば30mmに設定する。これにより、台座部5の上面と、雌ねじ部6の下面との間に30mmの間隙Kが形成されるとともに、支持脚体1の上下寸法が、床基礎10と床板11との間隔Iに対応した値、つまり200mmに設定されることになる。次いで、上部脚体3の床板支持部7上に床板11を載置した後、必要に応じて図略の係止具により各床板11のコーナ部を上部脚体3の床板支持部7に固定する。係止具は、電磁ノイズの発生を防止する等の本発明の効果を高めるために、金属製以外の樹脂等の材料から形成されていることが好ましい。
【0043】
本発明の第一実施形態に係る支持脚体1は、上述のように建築物の床基礎10上に設置される下部脚体2と、その上方に設置される上部脚体3とを備え、下部脚体2が、螺旋状に延びるねじ山41が外周面に形成された雄ねじ部4を有するとともに、上部脚体3が、前記ねじ山41に対応した螺旋状のねじ溝61が内周面に形成された雌ねじ部6を有し、かつ雄ねじ部4及び雌ねじ部6が、繊維補強セメント材を主体として構成されたものであるため、支持脚体1に近接した位置に信号伝達用の電気配線を配設した場合においても、金属材からなる支持脚体のように電磁ノイズが発生したり、電気配線が支持脚体1に絡んで短絡が生じたりすることがないという利点がある。しかも、雄ねじ部4と雌ねじ部6との螺合量Jを変化させることにより、床板11の設置面が水平状態となるように各支持脚体1の設置高さを調節することが可能である。
【0044】
また、下部脚体2及び上部脚体3の主体である繊維補強セメント材は、従来の鉄筋コンクリートよりも軽量であるとともに、高強度コンクリートと同等の強度を有しているため、支持脚体1の重量が過大になるのを防止できるとともに、製造コストを安価に抑えつつ、必要な強度を得ることができる。さらに、本発明に係る支持脚体1は、金属材からなる支持脚体に比べて熱伝導率が極めて低いので、床下の熱が支持脚体1を介して室内に伝達されること等を効果的に抑制して、建築物の保温性を効果的に維持でき、しかも錆を生じることがないので、優れた耐久性が得られるという利点がある。
【0045】
上述の第一実施形態に示すように、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維、バサルト繊維等の有機繊維又は無機繊維からなる補強繊維を有する繊維補強セメントを主体として下部脚体2及び上部脚体3を構成した場合には、下部脚体2もしくは上部脚体3に生成されたクラックを前記補強繊維により補修する自己修復機能が得られる。このため、支持脚体1の設置後に下部脚体2及び上部脚体3にクラックが生成された場合に、このクラックを埋める補修を行ったり、下部脚体2もしくは上部脚体3を交換したりするという煩雑な作業を要することなく、支持脚体1の耐久性を効果的に向上させることができる。また、雄ねじ部4及び雌ねじ部6がセメント材を主体として構成されているため、ねじ山41とねじ溝61との静止摩擦力は、雄ねじ部4及び雌ねじ部6が金属から構成されている場合に比して大きい。このため、床板11を支持して使用している時に繰り返し振動等が負荷されても、雄ねじ部4及び雌ねじ部6が金属から構成されている場合と異なり、下部脚体2と上部脚体3とが互いに回動してしまうことがない。
【0046】
また、上述の第一実施形態に示すように、下部脚体2の雄ねじ部4と上部脚体3の雌ねじ部6との間に、両者を接合する合成樹脂製接着剤等からなる接合材25を充填した構成とすれば、支持脚体1の設置後に、雄ねじ部4と雌ねじ部6との螺合部にがたつきが生じるのを効果的に防止して、下部脚体2と上部脚体3との連結状態を安定して維持できるという利点がある。
【0047】
なお、下部脚体2及び上部脚体3の全体を繊維補強セメント材により形成してなる上述の第一実施形態に代え、少なくとも雄ねじ部4及び雌ねじ部6を繊維補強セメント材により形成し、その他の部分、例えば下部脚体2の台座部5、又は上部脚体3の床板支持部7等を、例えば通常のコンクリート材もしくは合成樹脂材等の他の素材で形成してもよい。
【0048】
支持脚体1の設置位置及び具体的寸法等は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。すなわち、床基礎10と床板11との間隔Iが前記200mmよりも小さい値、例えば150mmである場合には、
図6に示すように、下部脚体2の台座部5の高さD1を32mm程度に設定するとともに、雄ねじ部4と雌ねじ部6との螺合量Jを30mmに設定することにより、支持脚体1の上下寸法を前記150mmに対応した値とすることができる。
【0049】
一方、床基礎10と床板11との間隔Iが前記200mmよりも大きい値、例えば300mmである場合には、
図7に示すように、下部脚体2の台座部5の高さD2を182mm程度に設定するとともに、雄ねじ部4と雌ねじ部6との螺合量Jを30mmに設定することにより、支持脚体1の上下寸法を前記300mmに対応した値とすることができる。このように本発明では、繊維補強セメントを主体として下部脚体2及び上部脚体3を構成したため、その成形用型枠を変更するだけで、床基礎10と床板11との間隔Iに対応させて支持脚体1の上下寸法を種々の値に容易かつ適正に変化させることが可能である。また、下部脚体2の台座部5の高さD2の、台座部5の平面視正方形の一辺の長さCに対する倍率を、約14とし、台座部5を縦方向の長尺形状とすることも可能である。このように台座部5を縦方向の長尺形状とし場合においても、台座部5を含む下部脚体2全体を繊維補強セメント材で形成することにより、床板11及び床板11上の重量物を支持するのに十分な強度を確保することができる。
【0050】
上述の第一実施形態では、
図4に示すように、ブロック状体等からなる台座部5を下部脚体2の下部に設け、この台座部5を床基礎10上に載置するように構成したため、床基礎10と下部脚体2との接触面積を十分に確保することにより、台座部5の下端部に応力が集中することに起因した損傷の発生を効果的に防止することができる。また、下部脚体2の重心を下方に位置させることにより、支持脚体1の載置状態を安定して維持することができる。
【0051】
なお、床基礎10と床板11との間隔Iが、150mmよりもさらに小さい場合、例えば100mmである場合には、前記台座部5を省略し、
図8に示すように、ねじ山41が外周面に形成された円柱状の雄ねじ部4のみにより下部脚体2aを構成してもよい。この構成によれば、雄ねじ部4と雌ねじ部6との螺合量Jを十分に確保しつつ、下部脚体2の上下寸法Bが過大になるのを防止することができる。このため、床基礎10と床板11との間隔Iが上述のように狭い場合においても、これに対応させるように支持脚体1の上下寸法を設定することができる。
【0052】
図4に示すように、雌ねじ部6の上端部を覆う壁部からなる床板支持部7を上部脚体3の上部に設けてなる上述の第一実施形態に代え、上部脚体3の床板支持部7を省略し、
図9に示すように、ねじ溝61が内周面に形成された筒状の雌ねじ部6のみにより上部脚体3aを構成し、床板11を雌ねじ部6上に載置することも可能である。この構成によれば、雄ねじ部4と雌ねじ部6との螺合量を十分に確保しつつ、上部脚体3の上下寸法Gが過大になるのを防止することができる。このため、床基礎10と床板11との間隔Iが極めて狭い場合においても、これに対応させるように支持脚体1の上下寸法を設定することができる。
【0053】
一方、上述の第一実施形態に示すように、雌ねじ部6の上端部を覆う壁部からなる床板支持部7を上部脚体3の上部に設けた構成とした場合には、床板支持部7により支持される床板11の支持面積を十分に確保することできる。したがって、例えば
図5に示すように、複数枚の床板11のコーナ部が集合した集合部15の下方に支持脚体1を配設した場合においても、各床板11を安定して支持できるという利点がある。なお、支持脚体1の配設位置は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、例えば各床板11の中央部の下方に支持脚体1を配設し、一つの支持脚体1により一枚の床板11を支持するように構成してもよい。
【0054】
(第二実施形態)
【0055】
図10は、本発明の第二実施形態に係る支持脚体1Aを示している。この支持脚体1Aは、上述の第一実施形態とは逆に、螺旋状のねじ山41が外周面に形成された円柱状の雄ねじ部4が上部脚体3Aの下部に設けられるとともに、前記ねじ山41に対応したねじ溝61が内周面に形成された筒状の雌ねじ部6が下部脚体2Aの上部に設けられ、かつ上部脚体3Aの雄ねじ部4及び下部脚体2Aの雌ねじ部6が、繊維補強セメント材を主体として構成されたものである。この第二実施形態においても、支持脚体1Aに近接した位置に配設された信号伝達用の電気配線に電磁ノイズが発生したり、この電気配線が支持脚体1に絡んで短絡が生じたりするのを防止できるとともに、雄ねじ部4と雌ねじ部6との螺合量を変化させることにより、床板11の設置面が水平状態となるように各支持脚体1の設置高さを調節できる等の利点がある。
【0056】
上述の第二実施形態では、上部脚体3Aの上部に、雄ねじ部4よりも幅寸法の大きいブロック状体からなる床板支持部7Aが設けられ、この床板支持部7A上に床板11が載置されて支持されるようになっている。また、下部脚体2Aの下部には、雌ねじ部6の下端部を覆う壁部からなる台座部5Aが設けられ、この台座部5Aが床基礎10上に載置されるように構成されている。
【0057】
上述のように上部脚体3Aの上部にブロック状体からなる床板支持部7Aを設けた場合には、この床板支持部7Aにより支持される床板11の支持面積を十分に確保することできる。しかも、床基礎10と床板11との間隔Iが変化した場合に、ブロック状体からなる床板支持部7Aの厚みHを変化させることにより、支持脚体1Aの上下寸法を前記間隔Iに対応させることができる。なお、上部脚体3Aの上部に設けられたブロック状体からなる床板支持部7Aを省略し、円柱状の雄ねじ部4のみにより上部脚体3Aを構成してもよい。
【0058】
また、下部脚体2Aの下部に設けられた台座部5A、つまり雌ねじ部6の下端部を覆う壁部を省略し、筒状の雌ねじ部6のみにより下部脚体2Aを構成することも可能である。しかし、上述のように下部脚体2Aの下部に、雌ねじ部6の下端部を覆う壁部からなる台座部5Aを設け、この台座部5Aを床基礎10上に載置するように構成した場合には、下部脚体2Aの設置状態を安定させることができる。
【0059】
また、雌ねじ部6の下方に、この雌ねじ部6よりも幅寸法が大きい図略のブロック状体からなる台座部を設けた構成としもよい。この構成によれば、床基礎10と下部脚体2Aとの接触面積を、より増大させることができるため、下部脚体2Aの下端部に応力が集中することに起因した損傷の発生を効果的に防止することができる。しかも、下部脚体2Aの重心を下方に位置させることにより、支持脚体1Aの載置状態を、より安定して維持することができる。
【0060】
(第三実施形態)
また、本発明に係る支持脚体は、
図11に示すように、建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体1であって、螺旋状に延びるねじ山41が外周面に形成された雄ねじ部4を有し、雄ねじ部4が、繊維補強セメント材を主体として構成され、ねじ山41に対応したねじ溝100を有する雌ねじ部材104と螺合された状態で使用されるものである。この雌ねじ部材104の材料は、適宜選択され、繊維補強セメント以外の金属又は樹脂であってもよく、例えば市販のナット部材であってもよい。なお、
図11に示す支持脚体1は、上部脚体として図示しているが、その上下を反転し、第三実施形態に係る支持脚体1を下部脚体として使用してもよい。
【0061】
(第四実施形態)
また、本発明に係る支持脚体は、
図12に示すように、建築物の床基礎の上方に間隔を置いて敷設される床板を支持する支持脚体1であって、螺旋状に延びるねじ溝61が内周面に形成された雌ねじ部6を有し、雌ねじ部6が、繊維補強セメント材を主体として構成され、ねじ溝61に対応したねじ山106を有する雄ねじ部材110と螺合された状態で使用されるものである。この雄ねじ部材110の材料は、適宜選択され、繊維補強セメント以外の金属又は樹脂であってもよく、例えば市販のボルト部材であってもよい。なお、
図12に示す支持脚体1は、上部脚体として図示しているが、その上下を反転し、第四実施形態に係る支持脚体1を下部脚体として使用してもよい。
【0062】
(第五実施形態)
また、
図13及び
図14に示すように、下部脚体及び上部脚体を使用して支持脚体ユニット1Uを構成してもよい。支持脚体ユニット1Uは、床基礎10上に設置可能な寸法の異なる複数の下部脚体2S,2M,2Lと、下部脚体2S等の上方に設置される上部脚体3と、を備える。下部脚体2S,2M,2Lは、螺旋状に延びるねじ山41が外周面に形成された雄ねじ部4を有する。上部脚体3は、ねじ山41に対応したねじ溝61が内周面に形成された雌ねじ部6を有する。下部脚体2S,2M,2L及び上部脚体3は、繊維補強セメント材から構成されている。
【0063】
図13及び
図14に示す支持脚体ユニット1Uによれば、上部脚体3と、この上部脚体3に螺合できる寸法の異なる複数の下部脚体2S,2M,2Lと、を備えておくことにより、床基礎10と床板11との間隔IS,IM,ILに対応して下部脚体を選択することができる。このため、床基礎10と床板11との間隔IS,IM,ILに対して対応でき、床板11の床基礎10に対する高さに対して、広い範囲で対応できる。なお、
図13及び
図14に示す支持脚体ユニット1Uにおいて、下部脚体2S,2M,2Lが雌螺子部を有し、上部脚体3が雄螺子部を有してもよい。
【0064】
(第六実施形態)
また、
図15に示す支持脚体ユニット1Uであってもよい。床基礎10上に設置される下部脚体2と、下部脚体2の上方に設置可能な寸法の異なる複数の上部脚体3S、3M、3Lと、を備える。下部脚体2は、螺旋状に延びるねじ山41が外周面に形成された雄ねじ部4を有する。上部脚体3S,3M,3Lは、ねじ山41に対応したねじ溝61が内周面に形成された雌ねじ部6を有する。下部脚体2及び上部脚体3S,3M,3Lは、繊維補強セメント材から構成されている。
【0065】
図15に示す支持脚体ユニット1Uによれば、下部脚体2と、この下部脚体2に螺合できる寸法の異なる複数の上部脚体3S,3M,3Lと、を備えておくことにより、床基礎10と床板11との間隔IS,IM,ILに対応して上部脚体を選択することができる。このため、床板11の床基礎10に対する高さに対して、広い範囲で対応できる。なお、
図15に示す支持脚体ユニット1Uにおいて、下部脚体2が雌螺子部を有し、上部脚体3S,3M,3Lが雄螺子部を有してもよい。
【0066】
(第七実施形態)
また、本発明に係る支持脚体は、
図16に示す支持脚体201であってもよい。支持脚体201は、建築物の床基礎210の上方に間隔を置いて敷設される床板211を支持する。支持脚体201は、床基礎210上に設置される下部脚体202と、下部脚体202の上方に設置される上部脚体203と、を備えている。下部脚体202は、螺旋状に延びるねじ山が外周面に形成されたボルト(雄ねじ部)204を有する。上部脚体203は、ねじ山241に対応したねじ溝が内周面に形成された雌ねじ部206を有する。雄ねじ部204及び雌ねじ部206が、金属から構成され、下部脚体202の台座部205及び上部脚体203の支持部207は、繊維補強セメント材から構成されている。繊維補強セメント材の成分は、上述の支持脚体1と同様である。なお、ボルト204は、ナット208によって、雌ねじ部206に固定される。
【0067】
図16に示す支持脚体201は、全体に対する体積比において70%~99%が繊維補強セメントから構成されている。このため、電気配線が支持脚体201に近接した位置に配設されている場合においても、電磁ノイズが発生したり、電気配線が支持脚体201に絡んで短絡が生じたりすることがない。また、全体として、熱伝導率が極めて低いので、床下の熱が支持脚体201を介して室内に伝達されるのを効果的に抑制することができる。また、雄螺子部204及び雌螺子部206が金属から構成されているため、螺合部の強度が高くなる。
【0068】
(第八実施形態)
また、
図1に示す下部脚体2において、台座部5を平面視円形に形成し、
図17に示すように、台座部5の周囲に台座部5に対してベアリング220を介して回転するリング222を設けてもよい。この場合、配線作業時に、リング222に接触する電気配線ケーブルの移動に伴ってリング222が回転することにより、スムーズな配線作業を行えるとともに、電気配線ケーブルが傷つくのを防止できる。なお、上部脚体3を平面視円形に形成し、上部脚体3の周囲にも、上部脚体3に対してベアリングを介して回転するリングを設けてもよい。台座部5及び上部脚体3がリングを備えることにより、電気配線ケーブルに接触するリングを増やして、よりスムーズに配線作業を行うことができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、本発明は、上述のものに限定されない。例えば、
図1又は
図4等において、断面形状が台形状のねじ山41を示すが、ねじ山の断面形状は、湾曲形状の凸部と湾曲形状の凹部が連続し角部を有しない形状であってもよい。この場合、電気配線ケーブルを傷つけることがないため、短絡を防止するという効果をより高めることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 支持脚体
1U 支持脚体ユニット
2,2A,2S,2M,2L 下部脚体
3,3A,3S,3M,3L 上部脚体
4 雄ねじ部
5,5A 台座部
6 雌ねじ部
7,7A 支持部
8 隙間
10 床基礎
11 床板
15 集合部
25 接合材
41 ねじ山
61 ねじ溝
201 支持脚体
202 下部脚体
203 上部脚体
204 ボルト(雄ねじ部)
205 台座部
206 雌ねじ部
207 支持部
208 ナット
210 床基礎
211 床板
220 ベアリング
222 リング