(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174588
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】特に操舵システムの電気モータを動作させるための制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/028 20160101AFI20231130BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231130BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H02P29/028
H02M7/48 E
H02M7/48 M
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085206
(22)【出願日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】10 2022 205 268.4
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パウル レマー
【テーマコード(参考)】
5H501
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501BB08
5H501CC04
5H501DD04
5H501EE08
5H501HA08
5H501HB07
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501KK06
5H501LL52
5H501MM09
5H501MM11
5H740AA08
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H770AA13
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770GA03
5H770GA04
5H770JA19Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一次ドライバユニットの障害及び/又は故障が発生している少なくとも1つのエラー動作状態においてパワーエレクトロニクスを駆動するように設けられた二次ドライバユニットと、を備えた制御装置を提供する。
【解決手段】二次ドライバユニット(20)が、パワーエレクトロニクス(16)の少なくとも1つのパワースイッチ(22)のスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有する電流源(24)を有し、電流源(24)の絶対値が、通常動作状態においては、第1の限界値を下回る第1の値に設定されており、エラー動作状態においては、第2の限界値を上回る第2の値に設定されていることが提案される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に操舵システム(14)の電気モータ(12)を動作させるための制御装置(10)であって、
パワーエレクトロニクス(16)と、
通常動作状態において前記パワーエレクトロニクス(16)を駆動するように設けられた一次ドライバユニット(18)と、
前記一次ドライバユニット(18)に対して並列に接続されていて、前記一次ドライバユニット(18)の障害及び/又は故障が発生している少なくとも1つのエラー動作状態において前記パワーエレクトロニクス(16)を駆動するように設けられた二次ドライバユニット(20)と、
を備えた制御装置(10)において、
前記二次ドライバユニット(20)は、前記パワーエレクトロニクス(16)の少なくとも1つのパワースイッチ(22)のスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有する電流源(24)を有し、
前記電流源(24)の絶対値は、前記通常動作状態においては、第1の限界値を下回る第1の値に設定されており、前記エラー動作状態においては、第2の限界値を上回る第2の値に設定されている、
ことを特徴とする制御装置(10)。
【請求項2】
前記電流源(24)は、
前記少なくとも1つのパワースイッチ(22)をスイッチオン及び/又は閉成するために正の電流値を供給するように、かつ、
前記少なくとも1つのパワースイッチ(22)をスイッチオフ及び/又は開放するために負の電流値を供給するように
設けられている、請求項1に記載の制御装置(10)。
【請求項3】
前記第1の限界値は、最大で10mAであり、
前記第2の限界値は、少なくとも100mAである、
請求項1又は2に記載の制御装置(10)。
【請求項4】
前記一次ドライバユニット(18)は、前記パワーエレクトロニクス(16)の少なくとも1つのパワースイッチ(22)のスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有するさらなる電流源(26)を有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御装置(10)。
【請求項5】
前記一次ドライバユニット(18)を駆動するための一次計算ユニット(28)と、
前記二次ドライバユニット(20)を駆動するための二次計算ユニット(30)と、
スイッチング論理回路(32)と、
が設けられており、
前記スイッチング論理回路(32)は、
前記一次ドライバユニット(18)及び前記二次ドライバユニット(20)に電気的に接続されており、
前記一次計算ユニット(28)の信号(34)と前記二次計算ユニット(30)の信号(36)とに依存して、前記一次ドライバユニット(18)又は前記二次ドライバユニット(20)の動作をイネーブルするための少なくとも1つの制御信号(38,40)を供給するように設けられている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の制御装置(10)。
【請求項6】
前記スイッチング論理回路(32)は、前記一次ドライバユニット(18)と前記二次ドライバユニット(20)との同時動作を阻止するように設けられている、
請求項5に記載の制御装置(10)。
【請求項7】
前記スイッチング論理回路(32)は、前記制御信号(38,40)を生成する際に、ウォッチドッグユニット(46,48)の少なくとも1つの監視信号(42,44)を考慮するように設けられている、
請求項5又は6に記載の制御装置(10)。
【請求項8】
前記スイッチング論理回路(32)は、ディスクリート回路として構成されている、
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の制御装置(10)。
【請求項9】
電気モータ(12)と、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の制御装置(10)とを備えたアクチュエータアセンブリ(50)。
【請求項10】
請求項9に記載の少なくとも1つのアクチュエータアセンブリ(50)を備えた操舵システム(14)。
【請求項11】
特に請求項1乃至8のいずれか一項に記載の制御装置(10)を用いて電気モータ(12)を動作させるための方法であって、
パワーエレクトロニクス(16)が、
通常動作状態においては、一次ドライバユニット(18)を用いて駆動され、
前記一次ドライバユニット(18)の障害及び/又は故障が発生しているエラー動作状態においては、前記一次ドライバユニット(18)に対して並列に接続された二次ドライバユニット(20)を用いて駆動される、
方法において、
前記二次ドライバユニット(20)は、前記パワーエレクトロニクス(16)の少なくとも1つのパワースイッチ(22)のスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有する電流源(24)を有し、
前記電流源(24)の絶対値は、前記通常動作状態においては、第1の限界値を下回る第1の値に設定され、前記エラー動作状態においては、第2の限界値を上回る第2の値に設定される、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、特に操舵システムの電気モータを動作させるための制御装置と、特にそのような制御装置を用いて電気モータを動作させるための方法とに関する。さらに、本発明は、このような制御装置を備えたアクチュエータアセンブリと、このようなアクチュエータアセンブリを備えた操舵システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、ハーフブリッジドライバ及び/又はゲートドライバの形態の複数のドライバユニットを備えた、電気モータを動作させるための制御装置が公知であり、これらの複数のドライバユニットを、それぞれ異なるパワーエレクトロニクスを駆動するように、又は、単一のパワーエレクトロニクスを駆動するように設けることができる。後者の場合には、複数のドライバユニットを、例えば、冗長性の要求を満たすために使用することができ、したがって、エラーケースにおいてもパワーエレクトロニクスの駆動を達成することができ、ひいては電気モータの動作を維持することができる。しかしながら、複数のドライバユニットが並列に接続されていて、かつ、同一のパワーエレクトロニクスを駆動するように設けられている場合には、動作時に、一次ドライバユニット及び/又はアクティブなドライバユニットから二次ドライバユニット及び/又はパッシブなドライバユニットへの電流の流れを阻止する必要があり、又は、少なくとも低減させる必要がある。公知の制御装置においては、このために、例えば追加的なスイッチ及び/又は抵抗が使用される。しかしながら、これらの公知の手段は、出力効率の低下をもたらし、追加的な手間及び追加的なコストに結び付いている。
【0003】
さらに、後から公開された独国特許出願公開第102021211208号明細書から、上位概念に記載の形式の制御装置及び方法が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102021211208号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記のことを起点として、特に、効率に関して改善された特性を有する制御装置と、電気モータを動作させるための方法とを提供することにある。この課題は、請求項1,9,10及び11に記載の特徴によって解決され、その一方で、本発明の有利な実施形態及び発展形態については、従属請求項を参照することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
本発明は、特に操舵システムの電気モータを動作させるための制御装置であって、パワーエレクトロニクスと、通常動作状態においてパワーエレクトロニクスを駆動するように設けられた一次ドライバユニットと、一次ドライバユニットに対して並列に接続されていて、一次ドライバユニットの障害及び/又は故障が発生している少なくとも1つのエラー動作状態においてパワーエレクトロニクスを駆動するように設けられた二次ドライバユニットと、を備えた制御装置を起点とする。
【0007】
二次ドライバユニットが、パワーエレクトロニクスの少なくとも1つのパワースイッチのスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有する特に集積された電流源を有し、電流源の絶対値が、通常動作状態においては、第1の限界値を下回る第1の値に設定されており、エラー動作状態においては、第2の限界値を上回る第2の値に設定されていることが提案される。特に、第1の限界値は、第2の限界値以下である。さらに、第2の限界値は、少なくとも1つのパワースイッチのスイッチング状態に依存して、特に、エラー動作状態において二次ドライバユニットによってパワースイッチのスイッチング状態を変更することができるように選択されている。第1の限界値及び第2の限界値はさらに、特に振幅限界値として構成されている。さらに、一次ドライバユニットは、通常動作状態においてアクティブ状態にある。したがって、本明細書においては、通常動作状態において、一次ドライバユニットは、アクティブであり、二次ドライバユニットは、パッシブ及び/又は非アクティブである。二次ドライバユニットは、本明細書においては、エラー動作状態において一次ドライバユニットの代わりに使用されるように設けられている。エラー動作状態においては、特に電流源の電流強度を変更することによって二次ドライバユニットをアクティブ化することができ、及び/又は、アクティブ状態に移行させることができ、これにより、二次ドライバユニットは、エラー動作状態においてアクティブ状態にある。したがって、エラー動作状態においては、一次ドライバユニットは、パッシブ及び/又は非アクティブであり、二次ドライバユニットは、アクティブである。このような実施形態により、効率、特に、出力効率、制御効率、エネルギ効率、構造スペース効率、コンポーネント効率、及び/又は、コスト効率を改善することができる。さらに、特に計算労力を最小化することができ、及び/又は、制御アルゴリズムを簡単にすることができる。
【0008】
この関連における「制御装置」とは、アクチュエータアセンブリの、有利には操舵システムのうちの少なくとも1つの部分、特にサブアセンブリであって、少なくとも1つの動作状態においてアクチュエータアセンブリの少なくとも1つの電気モータの動作を制御するように設けられている部分、特にサブアセンブリであると理解されるべきである。電気モータは、特にサーボモータとして、有利にはブラシレスモータとして、特に有利には非同期モータ又は永久励磁式の同期モータとして構成されている。好ましくは、電気モータは、この場合、電動パワーステアリングの一部であり、特に電気的な操舵支援を生成するように設けられている。この場合、電気モータは、例えば、3相、6相、9相又は12相の電気モータとして構成可能である。さらに、パワーエレクトロニクスは、インバータユニットとして、特に出力段及び/又はブリッジ回路として構成されており、電気モータに電流供給及び/又は給電するように設けられている。このために、パワーエレクトロニクスは、特に複数の、好ましくは電界効果トランジスタとして構成された、例えばMOSFETの形態のパワースイッチを含む。
【0009】
さらに、「ドライバユニット」とは、少なくとも部分的に電気的及び/又は電子的に構成されたユニットであって、パワーエレクトロニクスに、特にパワーエレクトロニクスの少なくとも1つのパワースイッチの制御端子に電気的に接続されていて、少なくとも1つのパワースイッチを駆動するように、かつ、特に少なくとも1つのパワースイッチのための制御電圧及び/又は制御電流を供給するように設けられたユニットであると理解されるべきである。好ましくは、ドライバユニットは、パワーエレクトロニクスの全てのパワースイッチを駆動するように設けられている。有利には、ドライバユニットは、この場合、ハーフブリッジドライバ及び/又はゲートドライバとして構成されている。さらに、一次ドライバユニットは、有利にはマスタドライバユニットとして構成されており、その一方で、二次ドライバユニットは、スレーブドライバユニットとして構成されている。一次ドライバユニットと二次ドライバユニットとは、相互に冗長的に構成されており、好ましくは同一構造に構成されている。特に有利には、一次ドライバユニット及び/又は二次ドライバユニットは、集積された電子回路として構成されている。有利には、一次ドライバユニットは、通常動作状態において、特にパワーエレクトロニクスの駆動によって電気モータのモータトルクと、好ましくは電気モータのアシストトルクとを設定するように設けられている。二次ドライバユニットは、一次ドライバユニットとの作用接続を有し、特に、エラー動作状態において一次ドライバユニットの代わりに使用されるように、かつ、パワーエレクトロニクスの駆動と、ひいては電気モータの動作の制御とを引き受けるように設けられている。有利には、通常動作状態における一次ドライバユニットと、エラー動作状態における二次ドライバユニットとは、パワーエレクトロニクスを駆動するために少なくとも部分的に同一の及び/又は同一の、特に既存のアセンブリ及び接続線路を使用するように、かつ、特に同一のパワースイッチを駆動するように、ひいては電気モータの同一の相を動作させるように設けられている。さらに、一次ドライバユニットと二次ドライバユニットとは、相互に無関係に動作可能である。特に、この場合、一次ドライバユニットは、もっぱら通常動作状態においてパワーエレクトロニクスを駆動するように、かつ、これによって電気モータのモータトルクと、好ましくは電気モータのアシストトルクとを変更する及び/又は変化させるように設けられている。さらに、二次ドライバユニットは、有利には、もっぱらエラー動作状態においてパワーエレクトロニクスを駆動するように、かつ、これによって電気モータのモータトルクと、好ましくは電気モータのアシストトルクとを変更する及び/又は変化させるように設けられている。「ドライバユニットが、設定可能な電流強度を有する電流源を有する」とは、特に、電流源又はドライバユニットによって供給される電流値を、好ましくは、ソフトウェア技術的に、又は、対応する駆動によって変更することができ、これによってドライバユニットの電流強度及び/又は電流レベルを適合させることができることであると理解されるべきである。この場合、電流源は、ドライバユニットの、特にパワーエレクトロニクスに接続された出力部に電気的に接続されており、これにより、ドライバユニットの、特にパワーエレクトロニクスに伝送される出力信号を、電流強度を変更することによって変化させることができる。これにより、ドライバユニットの出力部は、少なくとも2つの異なる状態をとることができ、第1の状態は、アクティブ状態に相当し、第2の状態は、非アクティブ状態に相当する。「ドライバユニットが、集積された電流源を有する」という表現は、特に、電流源が、ドライバユニットの、例えば駆動エレクトロニクスの他のコンポーネントと共に構造的なユニットとして、例えば集積された電子回路として構成されていることであると理解されるべきである。特に、電流源は、この場合、外部の配線を介して実現されない。さらに、「一次ドライバユニットの障害及び/又は故障」とは、特に、一次ドライバユニット自体の、及び/又は、例えばエネルギ供給部のような、一次ドライバユニットと協働する周辺アセンブリの障害及び/又は故障と、これによって引き起こされる一次ドライバユニットの障害とであると理解されるべきである。「設けられている」とは、特に、特別にプログラミングされること、設計されていること、及び/又は、設置されていることであると理解されるべきである。あるオブジェクトがある所定の機能のために設けられているとは、特に、そのオブジェクトが少なくとも使用状態及び/又は動作状態において、この所定の機能を満たすこと及び/又は実行することであると理解されるべきである。
【0010】
さらに、電流源が、特にエラー動作状態において、少なくとも1つのパワースイッチをスイッチオン及び/又は閉成するために正の電流値を供給するように、かつ、少なくとも1つのパワースイッチをスイッチオフ及び/又は開放するために負の電流値を供給するように設けられていることが提案される。したがって、電流源は、少なくとも1つのパワースイッチをスイッチオン及び/又は閉成するために、パワースイッチの制御端子の方向における電流の流れを生成するように、かつ、少なくとも1つのパワースイッチをスイッチオフ及び/又は開放するために、上記の方向とは逆の方向における電流の流れを生成するように設けられている。好ましくは、少なくとも1つのパワースイッチは、この場合、電界効果トランジスタとして構成されており、電界効果トランジスタのキャパシタンスは、正の電流によって充電され、負の電流によって放電される。これにより、特に有利には簡単な制御を達成することができる。
【0011】
さらに、第1の限界値が、最大で10mA、好ましくは最大で1mA、特に好ましくは最大で0.1mAであり、及び/又は、第2の限界値が、少なくとも100mA、好ましくは少なくとも300mA、特に好ましくは少なくとも500mAであることが提案される。この場合、第1の限界値及び第2の限界値は、特にピーク電流に関連している。これにより、規定されたスイッチング状態を有するパワーエレクトロニクスの特に確実な駆動を達成することができる。
【0012】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、一次ドライバユニットが、パワーエレクトロニクスの少なくとも1つのパワースイッチの、特に既述したパワースイッチのスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有する特に集積されたさらなる電流源を有することが提案される。好ましくは、通常動作状態におけるさらなる電流源の絶対値は、第2の限界値を上回る第3の値に設定されている。これに対して、エラー動作状態においては、さらなる電流源を非アクティブ化することができ、又は、さらなる電流源の絶対値を、第1の限界値を下回る第4の値に設定することができる。この場合、第3の値及び第4の値は、第1の値及び第2の値とは異なるものとしてよい。しかしながら、好ましくは、第3の値は、第2の値と同一であり、及び/又は、第4の値は、第1の値と同一である。さらに、さらなる電流源は、特に通常動作状態において、少なくとも1つのパワースイッチをスイッチオン及び/又は閉成するために正の電流値を供給するように、かつ、少なくとも1つのパワースイッチをスイッチオフ及び/又は開放するために負の電流値を供給するように設けられている。したがって、さらなる電流源は、少なくとも1つのパワースイッチをスイッチオン及び/又は閉成するために、パワースイッチの制御端子の方向における電流の流れを生成するように、かつ、少なくとも1つのパワースイッチをスイッチオフ及び/又は開放するために、上記の方向とは逆の方向における電流の流れを生成するように設けられている。これにより、同等のコンポーネントを有する有利には対称的な構造を実現することができ、これにより、コスト効率を改善することができる。さらに、エラー動作状態において一次ドライバユニットを切り離すための追加的な遮断スイッチ又は他の手段を省略することができる。
【0013】
さらに、制御装置が、一次ドライバユニットを駆動するための一次計算ユニットと、特に一次計算ユニットに対して冗長的な、二次ドライバユニットを駆動するための二次計算ユニットとを含むことが提案される。「計算ユニット」とは、特に情報入力部と、情報処理部と、情報出力部とを有する電気的及び/又は電子的なユニットであると理解されるべきである。有利には、計算ユニットはさらに、例えばマイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つの動作メモリと、少なくとも1つの入力手段及び/又は出力手段と、少なくとも1つの動作プログラムとを有する。一次計算ユニットはさらに、一次ドライバユニットとの電気的接続を有し、一次ドライバユニットを駆動するための一次駆動信号を供給するように設けられている。二次計算ユニットは、二次ドライバユニットとの電気的接続を有し、二次ドライバユニットを駆動するための二次駆動信号を供給するように設けられている。さらに、一次計算ユニットは、好ましくは二次ドライバユニットとの電気的接続を有しておらず、その一方で、二次計算ユニットは、有利には一次ドライバユニットとの電気的接続を有していない。これにより、有利には簡単な構造を有する冗長的な制御論理回路を提供することができる。
【0014】
好ましくは、制御装置はさらに、スイッチング論理回路を含み、スイッチング論理回路は、一次ドライバユニット及び二次ドライバユニットに電気的に接続されており、一次計算ユニットの、特に一次駆動信号とは異なる信号と、二次計算ユニットの、特に二次制御信号とは異なる信号とに依存して、一次ドライバユニット又は二次ドライバユニットの動作をイネーブルするための少なくとも1つの制御信号を供給するように設けられている。したがって、スイッチング論理回路は、少なくとも1つの制御信号を用いて一次ドライバユニット及び/又は二次ドライバユニットの動作をイネーブルするように設けられている。好ましくは、スイッチング論理回路は、それぞれのドライバユニットに対して別個の制御信号を供給するように設けられている。特に好ましくは、スイッチング論理回路はさらに、特にソフトウェア技術的又はハードウェア技術的な手段を用いて一次ドライバユニットと二次ドライバユニットとの同時動作を阻止するように設けられている。これにより、特に動作確実性を高めることができる。
【0015】
さらに、スイッチング論理回路が、制御信号を生成する際に、ウォッチドッグユニットの少なくとも1つの監視信号を考慮するように設けられていることが提案される。特に好ましくは、スイッチング論理回路は、制御信号を生成する際に、一次ウォッチドッグユニットの少なくとも1つの一次監視信号と、特に一次ウォッチドッグユニットに対して冗長的な二次ウォッチドッグユニットの少なくとも1つの二次監視信号とを考慮するように設けられている。特に、この場合、制御装置は、ウォッチドッグユニットを含み得るものであり、又は、第1のウォッチドッグユニット及び第2のウォッチドッグユニットを含み得るものである。これにより、動作確実性をさらに高めることができる。
【0016】
スイッチング論理回路は、例えば、集積回路として構成されるものとしてもよいし、又は、ドライバユニット内に集積されるものとしてもよい。しかしながら、スイッチング論理回路が、ディスクリート回路として構成されている場合には、特にフレキシブルな装置を達成することができる。
【0017】
さらに、本発明は、電気モータ、特に既述した電気モータと、上述した制御装置とを備えた、アクチュエータアセンブリに関する。特に好ましくは、制御装置及び電気モータは、この場合、特に車両において、好ましくは自動車において使用されるように設けられた操舵システムの一部である。
【0018】
さらに、特に上述した制御装置を用いて電気モータを動作させるための方法であって、パワーエレクトロニクスが、通常動作状態においては、一次ドライバユニットを用いて駆動され、一次ドライバユニットの障害及び/又は故障が発生しているエラー動作状態においては、一次ドライバユニットに対して並列に接続された二次ドライバユニットを用いて駆動され、二次ドライバユニットは、パワーエレクトロニクスの少なくとも1つのパワースイッチのスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有する特に集積された電流源を有し、電流源の絶対値は、通常動作状態においては、第1の限界値を下回る第1の値に設定され、エラー動作状態においては、第2の限界値を上回る第2の値に設定される、方法が提案される。これにより、既述した利点を達成することができる。特に、効率、特に、出力効率、制御効率、エネルギ効率、構造スペース効率、コンポーネント効率、及び/又は、コスト効率を改善することができる。さらに、特に計算労力を最小化することができ、及び/又は、制御アルゴリズムを簡単にすることができる。
【0019】
ここで、制御装置、アクチュエータアセンブリ、操舵システム及び方法は、上述した用途及び実施形態に限定されるべきものではない。特に、制御装置、アクチュエータアセンブリ、操舵システム及び方法は、本明細書に記載された機能を満たすために、本明細書に記載された数とは異なる数の個々の要素、コンポーネント及びユニットを有し得る。
【0020】
図面
さらなる利点は、以下の図面の説明から明らかとなる。図面には、本発明の実施例が図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】電気モータと制御装置とを含むアクチュエータアセンブリを備えた例示的な操舵システムの一部を示す斜視図である。
【
図2】制御装置及び電気モータを示す概略原理図である。
【
図3】制御装置のドライバユニットと、制御装置のパワーエレクトニクスのパワースイッチとを示す詳細図である。
【
図4】電気モータを動作させるための方法の主要な方法ステップを備えた例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例の説明
以下の実施例は、例示的に操舵システムに関する。しかしながら、本発明は、基本的に、操舵システムにおける使用に限定されているわけではなく、例えば、ワイパ装置、ウィンドウリフタシステム、及び/又は、駆動システムのような車両の他の分野においても、及び/又は、他のエレクトロニクスシステム、例えば家庭用機器及び/又は工作機械の分野においても、使用可能である。
【0023】
図1は、例示的な操舵システム14の少なくとも一部を斜視図において示している。操舵システム14は、本実施例においては、電気的に支援される操舵システムとして構成されている。操舵システム14は、例えば、従来の操舵システムとして構成されており、サーボステアリングの形態の電動パワーステアリングを含む。さらに、操舵システム14は、車両(図示せず)において、特に自動車において使用されるように設けられている。操舵システム14は、組み付けられた状態において車両の車輪(図示せず)との作用接続を有し、車両の走行方向に影響を与えるように設けられている。しかしながら、これに代えて、電動スーパーインポーズドステアリング及び/又はアクティブステアリングを備えた操舵システムを構成することも考えられる。さらに、操舵システムを、原則的に、ステアバイワイヤ式の操舵システム及び/又は後車軸ステアリングとして構成することもできる。さらに、商用車において使用するための対応する操舵システムを設けることが可能である。
【0024】
操舵システム14は、例示的にラック式のステアリングギヤとして構成されたステアリングギヤ52を含み、このステアリングギヤ52は、操舵入力を車輪の操舵運動に変換するように設けられている。そのために、ステアリングギヤ52は、本実施例においては特にラックとして構成された少なくとも1つのステアリング調整要素54を含む。
【0025】
さらに、操舵システム14は、少なくとも1つのアクチュエータアセンブリ50を含む。アクチュエータアセンブリ50は、操舵アクチュエータとして構成されており、ステアリング調整要素54との作用接続を有する。アクチュエータアセンブリ50は、操舵トルクを供給するように設けられている。本実施例においては、アクチュエータアセンブリ50は、アシストトルク及び/又はサーボトルクの形態の操舵トルクを供給するように、かつ、特に操舵支援のためにステアリングギヤ52に導入するように設けられている。しかしながら、これに代えて、アクチュエータアセンブリを、電動スーパーインポーズドステアリング及び/又はアクティブステアリングの一部とすることもでき、特に付加操舵角及び/又は可変伝達比を供給するように設けることもできる。さらに、アクチュエータアセンブリを、ステアバイワイヤ式の操舵システムの一部とすることもできる。この場合、アクチュエータアセンブリを、特に車輪操舵角調整器において使用されるように、かつ、特に車両の走行方向を直接的に制御するための操舵トルクを供給するように設けることができる。さらに、この場合、アクチュエータアセンブリを、ステアバイワイヤ式の操舵システムの操作ユニットにおいて使用されるように、かつ、フィードバックトルク及び/又は戻しトルクを操舵ハンドルに供給するように設けることもできる。さらに、アクチュエータアセンブリを、冒頭において述べたように操舵システムとは無関係に使用することもできる。
【0026】
アクチュエータアセンブリ50は、公知の電気モータ12を含む。電気モータ12は、特に永久励磁式の同期モータとして構成されている。電気モータ12はさらに、多相の電気モータとして構成されている。本実施例においては、電気モータ12は、例示的に3相の電気モータとして構成されている。電気モータ12は、ステアリングギヤ52、特にステアリング調整要素54に作用接続されている。電気モータ12は、操舵トルクを生成するように設けられている。この場合、電気モータ12は、本明細書においては電動パワーステアリングの一部であり、特に電気的な操舵支援を生成するために使用される。しかしながら、電気モータを、原則的に、6相又は12相の電気モータとして構成することもできる。
【0027】
さらに、アクチュエータアセンブリ50は、制御装置10を有する(特に、
図2も参照)。制御装置10は、本実施例においては、制御機器として、特にステアリング制御機器として構成されている。制御装置10は、電気モータ12との作用接続を有し、電気モータ12の動作を制御するように設けられている。
【0028】
制御装置10は、一次計算ユニット28を含む。一次計算ユニット28は、例えば、マイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)を含む。さらに、一次計算ユニット28は、少なくとも1つの動作メモリ(図示せず)を含み得る。さらに、一次計算ユニット28は、少なくとも1つの一次計算ルーチンと、少なくとも1つの一次制御ルーチンとを有する、動作メモリに格納された少なくとも1つの動作プログラムを含む。
【0029】
さらに、制御装置10は、公知のパワーエレクトロニクス16を含む。パワーエレクトロニクス16は、一次計算ユニット28に作用接続されており、一次計算ユニット28の下流に制御技術的に接続されている。さらに、パワーエレクトロニクス16は、電気モータ12に作用接続されている。パワーエレクトロニクス16は、本明細書においては出力段として、特にB6ブリッジ回路として構成されており、特に相互に同一に構成された複数のインバータ56を含み、電気モータ12のそれぞれの相には、これらのインバータ56のうちの1つが対応付けられている。これらのインバータ56の各々は、特に相互に同一に構成された2つのパワースイッチ22、特にハイサイドパワースイッチ及びローサイドパワースイッチを含む。見易くするために、
図2においては、複数のインバータ56のうちの1つと、複数のパワースイッチ22のうちの1つとにだけ参照符号が付されている。これらのインバータ56の各々は、例えば、車載バッテリの形態のエネルギ源58の整流された脈動電圧を相電流に変換して、電気モータ12に、特に電気モータ12の厳密に1つの相に供給するように設けられている。
【0030】
さらに、制御装置10は、一次ドライバユニット18を含む。一次ドライバユニット18は、一次計算ユニット28との電気的接続を有し、一次計算ユニット28の下流に制御技術的に接続されている。一次計算ユニット28は、一次ドライバユニット18を駆動するための一次駆動信号60を供給するように設けられている。さらに、一次ドライバユニット18は、パワーエレクトロニクス16との電気的接続を有する。したがって、一次ドライバユニット18は、一次計算ユニット28とパワーエレクトロニクス16との間に制御技術的に配置されている。一次ドライバユニット18は、集積された電子回路として構成されている。一次ドライバユニット18は、ハーフブリッジドライバ及び/又はゲートドライバとして、本明細書においては特に3重のハーフブリッジドライバとして構成されている。一次ドライバユニット18は、複数のパワースイッチ22のうちの少なくとも1つを駆動するように、かつ、特に少なくとも1つのパワースイッチ22のための制御電圧及び/又は制御電流を供給するように設けられている。本明細書においては、一次ドライバユニット18は、例示的にパワーエレクトロニクス16の全てのパワースイッチ22を駆動するように設けられている。本実施例においては、一次ドライバユニット18は、少なくとも通常動作状態において、一次計算ユニット28と共にパワーエレクトロニクス16を駆動するように設けられている。
【0031】
操舵システム14は、運転者及び/又は車両操縦に対して直接的な影響を及ぼす安全性に関連した車両コンポーネントであるので、一次ドライバユニット18自体の、及び/又は、例えばエネルギ供給部のような、一次ドライバユニット18と協働する周辺アセンブリの障害及び/又は故障と、これによって引き起こされる一次ドライバユニット18の障害とが発生しているエラー動作状態において、対応する安全性コンセプトが必要とされる。
【0032】
この理由から、制御装置10はさらに、二次計算ユニット30及び二次ドライバユニット20を含む。
【0033】
二次計算ユニット30は、一次計算ユニット28とは別個に構成されている。二次計算ユニット30は、一次計算ユニット28に対して冗長的に構成されている。さらに、二次計算ユニット30は、例えば通信チャネル(図示せず)を介して一次計算ユニット28に通信するように接続可能である。二次計算ユニット30は、例えばマイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのさらなるプロセッサ(図示せず)を含む。さらに、二次計算ユニット30は、少なくとも1つのさらなる動作メモリ(図示せず)を含み得る。さらに、二次計算ユニット30は、少なくとも1つの二次計算ルーチンと、少なくとも1つの二次制御ルーチンとを有する、さらなる動作メモリに格納された少なくとも1つのさらなる動作プログラムを含む。
【0034】
二次ドライバユニット20は、一次ドライバユニット18とは別個に構成されている。二次ドライバユニット20は、一次ドライバユニット18に対して冗長的に構成されている。二次ドライバユニット20はさらに、一次ドライバユニット18と同一構造に構成されている。しかしながら、基本的に、特に二次ドライバユニットが非常動作を提供するためだけに設けられている場合には、一次ドライバユニットと二次ドライバユニットとを相互に異なるように構成することもできる。さらに、二次ドライバユニット20は、二次計算ユニット30との電気的接続を有し、二次計算ユニット30の下流に制御技術的に接続されている。二次計算ユニット30は、二次ドライバユニット20を駆動するための二次駆動信号62を供給するように設けられている。さらに、二次ドライバユニット20は、パワーエレクトロニクス16との電気的接続を有する。二次ドライバユニット20は、二次計算ユニット30とパワーエレクトロニクス16との間に制御技術的に配置されている。したがって、本明細書においては、二次ドライバユニット20は、一次ドライバユニット18に対して並列に接続されている。二次ドライバユニット20は、集積された電子回路として構成されている。二次ドライバユニット20は、ハーフブリッジドライバ及び/又はゲートドライバとして、本明細書においては特に3重のハーフブリッジドライバとして構成されている。二次ドライバユニット20は、複数のパワースイッチ22のうちの少なくとも1つ、特に一次ドライバユニット18と同一のパワースイッチ22を駆動するように、かつ、特に少なくとも1つのパワースイッチ22のための制御電圧及び/又は制御電流を供給するように設けられている。本明細書においては、二次ドライバユニット20は、例示的にパワーエレクトロニクス16の全てのパワースイッチ22を駆動するように設けられている。
【0035】
二次ドライバユニット20は、少なくともエラー動作状態において、二次計算ユニット30と共にパワーエレクトロニクス16を駆動するように設けられている。二次ドライバユニット20は、通常動作状態においては、純粋にパッシブな動作モード及び/又はスタンバイ動作モードにあり、もっぱらエラー動作状態においてパワーエレクトロニクス16を駆動するように設けられている。本実施例においては、二次ドライバユニット20は、エラー動作状態において一次ドライバユニット18の代わりに使用されるように、かつ、パワーエレクトロニクス16の駆動と、ひいては電気モータ12の動作の制御とを引き受けるように設けられている。二次ドライバユニット20はさらに、パワーエレクトロニクス16を駆動するために少なくとも部分的に同一の及び/又は同一の、特に既存のアセンブリ及び接続線路を使用するように、かつ、同一のパワースイッチ22を駆動するように設けられている。
【0036】
したがって、本明細書においては、一次ドライバユニット18と二次ドライバユニット20とは、並列に接続されており、同一のパワーエレクトロニクス16を駆動するように設けられており、一次ドライバユニット18は、通常動作状態においてアクティブであり、二次ドライバユニット20は、エラー動作状態においてアクティブである。
【0037】
少なくとも1つのパワースイッチ22のスイッチング状態を制御するために、一次ドライバユニット18及び二次ドライバユニット20は、設定可能な電流強度を有するそれぞれ1つの集積された電流源24,26を有する(
図3も参照)。本明細書においては、電流源24,26は、この場合、パワースイッチ22を駆動するためのゲート・ソース間電圧を生成するために使用される。電流源24,26は、少なくとも1つのパワースイッチ22をスイッチオン及び/又は閉成するために正の電流値を供給するように、かつ、少なくとも1つのパワースイッチ22をスイッチオフ及び/又は開放するために負の電流値を供給するように設けられている。
【0038】
通常動作状態においては、二次ドライバユニット20の電流源24の絶対値は、第1の限界値を下回る第1の値に設定されており、一次ドライバユニット18のさらなる電流源26の絶対値は、第2の限界値を上回る第2の値に設定されている。第1の限界値は、最大で0.1mAであり、その一方で、第2の限界値は、少なくとも500mAである。この場合、限界値は、ピーク電流に関連している。使用される限界値により、通常動作状態において一次ドライバユニット18がアクティブであり、かつ、二次ドライバユニット20がパッシブ及び/又は非アクティブであることが達成される。
【0039】
エラー動作状態においては、二次ドライバユニット20は、二次ドライバユニット20の電流源24の電流強度を変更することによってアクティブ状態に移行させられ、その一方で、一次ドライバユニット18は、非アクティブ化され、又は、さらなる電流源26の電流強度を変更することによってパッシブ状態及び/又は非アクティブ状態に移行させられる。したがって、本明細書においては、それぞれの電流強度を用いて一次ドライバユニット18及び二次ドライバユニット20のアクティブ状態を制御することができる。したがって、エラー動作状態においては、二次ドライバユニット20の電流源24の絶対値は、第2の値に設定されており、その一方で、一次ドライバユニット18のさらなる電流源26の絶対値を、第1の値に設定することができる。しかしながら、基本的に、通常動作状態及び/又はエラー動作状態における電流源の値は、相互に異なるものとしてもよい。
【0040】
一次ドライバユニット18と二次ドライバユニット20との間でのスイッチングのために、制御装置10はさらに、スイッチング論理回路32を含む。スイッチング論理回路32は、一次計算ユニット28及び二次計算ユニット30に電気的に接続されている。スイッチング論理回路32はさらに、一次ドライバユニット18及び二次ドライバユニット20に電気的に接続されている。スイッチング論理回路32は、ディスクリート回路として構成されている。スイッチング論理回路32は、一次計算ユニット28の、一次駆動信号60とは異なる信号34と、二次計算ユニット30の、二次駆動信号62とは異なるさらなる信号36とに依存して、一次ドライバユニット18及び/又は二次ドライバユニット20の動作をイネーブルするための少なくとも1つの制御信号38,40を供給するように設けられている。本明細書においては、スイッチング論理回路32は、それぞれのドライバユニット18,20に対して別個の制御信号38,40を供給するように設けられている。さらに、スイッチング論理回路32は、一次ドライバユニット18と二次ドライバユニット20との同時動作を阻止するように設けられている。しかしながら、基本的に、スイッチング論理回路は、2つのドライバユニットに対して単一の制御信号のみを供給するように設けられるものとしてもよい。さらに、スイッチング論理回路は、集積回路として構成されるものとしてもよいし、又は、ドライバユニットのうちの少なくとも1つに集積されるものとしてもよい。
【0041】
動作確実性を高めるために、制御装置10は、本実施例においてはさらに、一次ウォッチドッグユニット46と、一次ウォッチドッグユニット46に対して冗長的に構成された二次ウォッチドッグユニット48とを含む。一次ウォッチドッグユニット46は、一次計算ユニット28及び/又は一次ドライバユニット18に対応付けられている。さらに、一次ウォッチドッグユニット46は、スイッチング論理回路32との電気的接続を有する。二次ウォッチドッグユニット48は、二次計算ユニット30及び/又は二次ドライバユニット20に対応付けられている。さらに、二次ウォッチドッグユニット48は、スイッチング論理回路32との電気的接続を有する。基本的に、制御装置は、厳密に1つのウォッチドッグユニットも含み得る。さらに、ウォッチドッグユニットを完全に省略することも考えられる。
【0042】
スイッチング論理回路32は、本明細書においては、制御信号38,40を生成する際に、一次ウォッチドッグユニット46の一次監視信号42と、二次ウォッチドッグユニット48の二次監視信号44とを考慮するように設けられている。
【0043】
この場合、一次ドライバユニット18については、イネーブルのために以下の論理:
EN_1=1かつWD_1=1かつEN_IG2=0の場合には、EN_IG1=1
又は、
EN_1=1かつWD_1=1かつ(EN_2=0又はWD_2=0)の場合には、EN_IG1=1
のうちの一方が成り立ち、この場合、イネーブルは、論理1によって実施される。
【0044】
ここで、EN_IG1は、一次ドライバユニット18のための制御信号38に相当し、EN_1は、一次計算ユニット28の信号34に相当し、EN_2は、二次計算ユニット30のさらなる信号36に相当し、WD_1は、一次ウォッチドッグユニット46の一次監視信号42に相当し、EN_IG2は、二次ドライバユニット20のためのさらなる制御信号40に相当し、WD_2は、二次ウォッチドッグユニット48の二次監視信号44に相当する。
【0045】
これに対して、二次ドライバユニット20については、イネーブルのために以下の論理:
EN_2=1かつWD_2=1かつEN_IG1=0の場合には、EN_IG2=1、
又は、
EN_2=1かつWD_2=1かつ(EN_1=0又はWD_1=0)の場合には、EN_IG2=1
のうちの一方が成り立ち、この場合にも、イネーブルは、論理1によって実施される。
【0046】
ここで、EN_IG2は、二次ドライバユニット20のためのさらなる制御信号40に相当し、EN_1は、一次計算ユニット28の信号34に相当し、EN_2は、二次計算ユニット30のさらなる信号36に相当し、WD_2は、二次ウォッチドッグユニット48の二次監視信号44に相当し、EN_IG1は、一次ドライバユニット18のための制御信号38に相当し、WD_1は、一次ウォッチドッグユニット46の一次監視信号42に相当する。
【0047】
最後に、
図4は、制御装置10を用いて電気モータ12を動作させるための例示的な方法の主要な方法ステップを備えた例示的なフローチャートを示している。
【0048】
方法ステップ70は、通常動作状態に相当する。この場合、一次ドライバユニット18は、一次計算ユニット28と共にパワーエレクトロニクス16を駆動するように設けられており、したがって、アクティブ状態にある。このために、一次ドライバユニット18のさらなる電流源26の絶対値は、第2の限界値を上回る第2の値に設定されている。これに対して、二次ドライバユニット20は、パッシブ状態及び/又は非アクティブ状態にある。このために、二次ドライバユニット20の電流源24の絶対値は、第1の限界値を下回る第1の値に設定されている。
【0049】
方法ステップ72においては、例えば、一次計算ユニット28、二次計算ユニット30、一次ウォッチドッグユニット46、及び/又は、二次ウォッチドッグユニット48を用いて、一次ドライバユニット18の障害及び/又は故障が特定される。この場合、一次ドライバユニット18の障害及び/又は故障を、一次ドライバユニット18自体の障害及び/又は故障に結び付けることができ、及び/又は、例えば、一次計算ユニット28、一次ウォッチドッグユニット46、スイッチング論理回路32の一部、及び/又は、エネルギ供給部のような、一次ドライバユニット18と協働するアセンブリに結び付けることができる。結果として、一次ドライバユニット18の代わりに二次ドライバユニット20が使用されることとなる。このために、一次ドライバユニット18は、スイッチング論理回路32の制御信号38と、これに関連するさらなる電流源26の電流強度の変更とによって非アクティブ化され、二次ドライバユニット20は、スイッチング論理回路32のさらなる制御信号40と、これに関連する電流源24の電流強度の変更とによってアクティブ化される。このために、二次ドライバユニット20の電流源24の絶対値は、第2の限界値を上回る第2の値に設定される。
【0050】
方法ステップ74は、エラー動作状態に相当する。この場合、二次ドライバユニット20は、二次計算ユニット30と共にパワーエレクトロニクス16を駆動するように設けられており、したがって、アクティブ状態にある。このために、二次ドライバユニット20の電流源24の絶対値は、第2の限界値を上回る第2の値に設定されている。これに対して、一次ドライバユニット18は、パッシブ状態及び/又は非アクティブ状態にある。さらに、この場合、例えば、二次計算ユニット30を用いて警告メッセージを生成し、対応する出力手段(図示せず)を用いて乗員に表示することができる。
【0051】
図4の例示的なフローチャートは、制御装置10を用いて電気モータ12を動作させるための方法を例示的に説明しているに過ぎない。特に、個々の方法ステップを変更してもよいし、又は、追加的な方法ステップを追加してもよい。例えば、一次ドライバユニット18の障害及び/又は故障を特定するために別個の監視ユニットを使用するものとしてもよい。さらに、ウォッチドッグユニットを省略することも考えられる。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に操舵システム(14)の電気モータ(12)を動作させるための制御装置(10)であって、
パワーエレクトロニクス(16)と、
通常動作状態において前記パワーエレクトロニクス(16)を駆動するように設けられた一次ドライバユニット(18)と、
前記一次ドライバユニット(18)に対して並列に接続されていて、前記一次ドライバユニット(18)の障害及び/又は故障が発生している少なくとも1つのエラー動作状態において前記パワーエレクトロニクス(16)を駆動するように設けられた二次ドライバユニット(20)と、
を備えた制御装置(10)において、
前記二次ドライバユニット(20)は、前記パワーエレクトロニクス(16)の少なくとも1つのパワースイッチ(22)のスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有する電流源(24)を有し、
前記電流源(24)の前記電流強度の絶対値は、前記通常動作状態においては、第1の限界値を下回る第1の値に設定されており、前記エラー動作状態においては、第2の限界値を上回る第2の値に設定されている、
ことを特徴とする制御装置(10)。
【請求項2】
前記電流源(24)は、
前記少なくとも1つのパワースイッチ(22)をスイッチオン及び/又は閉成するために正の電流値を供給するように、かつ、
前記少なくとも1つのパワースイッチ(22)をスイッチオフ及び/又は開放するために負の電流値を供給するように
設けられている、請求項1に記載の制御装置(10)。
【請求項3】
前記第1の限界値は、最大で10mAであり、
前記第2の限界値は、少なくとも100mAである、
請求項1に記載の制御装置(10)。
【請求項4】
前記一次ドライバユニット(18)は、前記パワーエレクトロニクス(16)の少なくとも1つのパワースイッチ(22)のスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有するさらなる電流源(26)を有する、
請求項1に記載の制御装置(10)。
【請求項5】
前記一次ドライバユニット(18)を駆動するための一次計算ユニット(28)と、
前記二次ドライバユニット(20)を駆動するための二次計算ユニット(30)と、
スイッチング論理回路(32)と、
が設けられており、
前記スイッチング論理回路(32)は、
前記一次ドライバユニット(18)及び前記二次ドライバユニット(20)に電気的に接続されており、
前記一次計算ユニット(28)の信号(34)と前記二次計算ユニット(30)の信号(36)とに依存して、前記一次ドライバユニット(18)又は前記二次ドライバユニット(20)の動作をイネーブルするための少なくとも1つの制御信号(38,40)を供給するように設けられている、
請求項1に記載の制御装置(10)。
【請求項6】
前記スイッチング論理回路(32)は、前記一次ドライバユニット(18)と前記二次ドライバユニット(20)との同時動作を阻止するように設けられている、
請求項5に記載の制御装置(10)。
【請求項7】
前記スイッチング論理回路(32)は、前記制御信号(38,40)を生成する際に、ウォッチドッグユニット(46,48)の少なくとも1つの監視信号(42,44)に依存するように設けられている、
請求項5に記載の制御装置(10)。
【請求項8】
前記スイッチング論理回路(32)は、ディスクリート回路として構成されている、
請求項5に記載の制御装置(10)。
【請求項9】
電気モータ(12)と、請求項1に記載の制御装置(10)とを備えたアクチュエータアセンブリ(50)。
【請求項10】
請求項9に記載の少なくとも1つのアクチュエータアセンブリ(50)を備えた操舵システム(14)。
【請求項11】
特に請求項1に記載の制御装置(10)を用いて電気モータ(12)を動作させるための方法であって、
パワーエレクトロニクス(16)が、
通常動作状態においては、一次ドライバユニット(18)を用いて駆動され、
前記一次ドライバユニット(18)の障害及び/又は故障が発生しているエラー動作状態においては、前記一次ドライバユニット(18)に対して並列に接続された二次ドライバユニット(20)を用いて駆動される、
方法において、
前記二次ドライバユニット(20)は、前記パワーエレクトロニクス(16)の少なくとも1つのパワースイッチ(22)のスイッチング状態を制御するために、設定可能な電流強度を有する電流源(24)を有し、
前記電流源(24)の前記電流強度の絶対値は、前記通常動作状態においては、第1の限界値を下回る第1の値に設定され、前記エラー動作状態においては、第2の限界値を上回る第2の値に設定される、
ことを特徴とする方法。
【外国語明細書】