(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174589
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20231130BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231130BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20231130BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085266
(22)【出願日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022085409
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺倉 精太郎
(72)【発明者】
【氏名】安達 慶高
(72)【発明者】
【氏名】清井 仁
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA05
4C087ZB26
(57)【要約】
【課題】CAR発現細胞の増殖能を高める技術を提供すること。
【解決手段】CUL5遺伝子の発現を低下させること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CUL5遺伝子の発現が低下するように改変されており、且つキメラ抗原受容体を発現する、細胞。
【請求項2】
リンパ球細胞である、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の細胞を含有する、医薬組成物。
【請求項4】
がんの治療、予防、又は改善用である、請求項3に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キメラ抗原受容体を発現する細胞の製造に有用なポリヌクレオチド等に関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor。以下、「CAR」とも呼ぶ)は、抗体の特異性に従って抗原に結合し、これにより標的細胞の傷害・サイトカイン放出・刺激後のT細胞分裂を起こすことができる。遺伝子導入によってT細胞に特異性を与えることが可能であり、細胞の調製は内在性の腫瘍特異的T細胞レセプター(TCR)陽性T細胞を培養増幅する場合に比べて総じて容易である。また、CARを利用した治療法(CAR-T療法)は、抗体療法と比べて高い細胞傷害活性を示すこと、1回の輸注で抗原刺激によって自律的に増幅するために複数回の治療が必要ない点において優れている。TCR遺伝子導入では、HLAとその上に提示されるペプチドの複合体を標的としているために、患者が特定のHLAを持つ場合にのみ治療可能であるが(HLA拘束性)、CARにはHLA拘束性がない点においてより有利である。即ち、腫瘍細胞に標的抗原が陽性であれば、標的抗原陽性の全ての患者を対象として治療が可能である。
【0003】
キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法はCD19CAR-Tにおいて、世界各国で薬品として承認されるに至っている。その臨床効果は高く、種々の悪性腫瘍に対して臨床的有用性が期待されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CAR-T療法後の再発・治療抵抗性はCAR-T細胞が患者体内で生存・活躍する時間が短いことが問題であると考えられる。この問題を解消するためには、CAR-T細胞の増殖能(特に、標的抗原に接触後の増殖能)を高めることが望ましい。また、効率的にCAR-T細胞を得ることも重要である。
【0006】
そこで、本発明は、CAR発現細胞の増殖能を高める技術を提供することを課題とする。また、本発明は、CAR発現細胞を効率的に得る技術を提供することも課題とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、CUL5遺伝子の発現を低下させることによりCAR発現細胞の増殖能が高まることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドの発現カセット、及びキメラ抗原受容体の発現カセットを含む、ポリヌクレオチド。
【0009】
項2. 前記CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドが、CUL5特異的siRNA、CUL5特異的miRNA、及びCUL5特異的アンチセンスポリヌクレオチドからなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載のポリヌクレオチド。
【0010】
項3. 前記CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドが、CUL5特異的siRNAである、項1に記載のポリヌクレオチド。
【0011】
項4. ベクターである、項1に記載のポリヌクレオチド。
【0012】
項5. ウイルスベクター又はウイルスゲノムである、項1に記載のポリヌクレオチド。
【0013】
項6. 前記キメラ抗原受容体の標的抗原ががん抗原である、項1に記載のポリヌクレオチド。
【0014】
項7. 項1~6のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【0015】
項8. 前記CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドによりCUL5遺伝子の発現が低下しており、且つキメラ抗原受容体を発現する、項7に記載の細胞。
【0016】
項9. リンパ球細胞である、項8に記載の細胞。
【0017】
項10. 項7に記載の細胞を含有する、医薬組成物。
【0018】
項11. がんの治療、予防、又は改善用である、項10に記載の医薬組成物。
【0019】
項12. CUL5遺伝子の発現が低下するように改変されており、且つキメラ抗原受容体を発現する、細胞。
【0020】
項13. リンパ球細胞である、項12に記載の細胞。
【0021】
項14. 項12又は13に記載の細胞を含有する、医薬組成物。
【0022】
項15. がんの治療、予防、又は改善用である、項14に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、CAR発現細胞の増殖能を高める技術を提供することができる。さらに、本発明の好ましい一態様によれば、CAR発現細胞を効率的に得る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】試験例1で得たCARコンストラクトの模式図を示す。
【
図2】試験例2のGW-CRISPR screening(1次スクリーニング)の概要を示す。
【
図3】試験例2の2次スクリーニングの結果を示す。dayは初回刺激からの経過日数を示す。縦軸は、day30のGFP陽性細胞割合(%)からday0のGFP陽性細胞割合(%)を除してなる値(%)である。横軸に、細胞に発現させたgRNAを示す。
【
図4】試験例2の2次スクリーニングの結果を示す。縦軸は、GFP陽性細胞割合(%)である。横軸中、Dは初回刺激からの経過日数を示す。***は群間でP<0.001であることを示す。
【
図5】試験例2の2次スクリーニングにおいてCUL5に対するgRNAを発現させた場合のCUL5発現量をウェスタンブロッティングで測定した結果を示す。縦軸は、CUL5発現量のβアクチン発現量に対する比を示す。横軸は発現させたgRNAを示す。*は群間でP<0.05であること、**は群間でP<0.01であることを示す。
【
図6】試験例3で測定した細胞分裂の程度を示す。縦軸は、蛍光強度を示す。蛍光強度が低い程、分裂が亢進していることを示す。横軸中、CtrlはコントロールgRNAを発現させた場合を示し、CUL5 KOはCUL5 gRNAを発現させた場合を示す。*は群間でP<0.05であることを示す。
【
図7】試験例3で測定した細胞内サイトカイン陽性細胞の割合(縦軸)を示す。横軸に、刺激細胞を示す。各刺激細胞の2つのカラムの内、左側がコントロールgRNAを発現させた場合を示し、右側がCUL5 gRNAを発現させた場合を示す。*は群間でP<0.05であることを示す。
【
図8】試験例4で測定した、左図:エフェクターメモリーT細胞(T
EM:CD45RA(-)CCR7(-))及び右図:セントラルメモリーT細胞(T
CM:CD45RA(-)CCR7(+))の割合(縦軸)を示す。横軸中、CtrlはコントロールgRNAを発現させた場合を示し、CUL5 KOはCUL5 gRNAを発現させた場合を示す。**は群間でP<0.01であることを示す。
【
図9】試験例5で測定した、腫瘍細胞の発するluminescence(縦軸)を示す。横軸は、腫瘍細胞接種からの経過日数を示す。Ctrl CARはコントロールgRNAを発現させたCAR-T細胞を投与した場合を示し、CUL5KO CARはCUL5 gRNAを発現させたCAR-T細胞を投与した場合を示し、tEGFR-TはtEGFRを発現させたT細胞を投与した場合を示す。
【
図10】試験例5で測定した生存率(縦軸)を示す。横軸は、腫瘍細胞接種からの経過日数を示す。Ctrl CARはコントロールgRNAを発現させたCAR-T細胞を投与した場合を示し、CUL5KO CARはCUL5 gRNAを発現させたCAR-T細胞を投与した場合を示し、tEGFR-TはtEGFRを発現させたT細胞を投与した場合を示す。*は群間でP<0.05であること、***は群間でP<0.001であること、****は群間でP<0.0001であることを示す。
【
図11】試験例6で得たTwo-in-one vectorの模式図を示す。
【
図12】Two-in-one vectorを用いたCAR-T細胞調整のスキーム(刺激開始前)を示す。
【
図13】試験例7で測定したCAR-T細胞の数(縦軸)を示す。左側のカラムは方法1の場合を示し、右側のカラムは方法2の場合(Two-in-one vectorを使用した場合)を示す。***は群間でP<0.001であることを示す。
【
図14】試験例7でCUL5発現量をウェスタンブロッティングで測定した結果を示す。CtrlはGFPに対するshRNAを発現させた場合を示し、CUL5 KDはCUL5に対するshRNAを発現させた場合を示す。
【
図15】試験例7で測定したCAR-T細胞の増殖を表す。縦軸はCAR-T細胞の数を示す。横軸は、初回刺激からの経過日数を示す。**は群間でP<0.01であることを示す。
【
図16】試験例8で測定した、腫瘍細胞の発するluminescence(縦軸)を示す。横軸は、腫瘍細胞接種からの経過日数を示す。CtrlはGFPに対するshRNAを発現させたCAR-T細胞を投与した場合を示し、CUL5KDはCUL5に対するshRNAを発現させたCAR-T細胞を投与した場合を示す。MockはCAR-T細胞を投与していない場合を示す。
【
図17】試験例9で測定した、腫瘍体積(縦軸)を示す。横軸は、腫瘍細胞接種からの経過日数を示す。shGFP CD19CAR-TはGFPに対するshRNAを発現させた場合を示し、shCUL5 CD19CAR-TはCUL5に対するshRNAを発現させた場合を示し、tEGFR-TはtEGFRを発現させたT細胞を投与した場合を示す。*は群間でP<0.05であること、**は群間でP<0.01であることを示す。
【
図18】試験例9で測定した、生存率(縦軸)を示す。横軸は、腫瘍細胞接種からの経過日数を示す。shGFP CD19CAR-TはGFPに対するshRNAを発現させた場合を示し、shCUL5 CD19CAR-TはCUL5に対するshRNAを発現させた場合を示し、tEGFR-TはtEGFRを発現させたT細胞を投与した場合を示す。*は群間でP<0.05であることを示す。
【
図19】試験例11のluminescenceの撮影像を示す。写真左側に腫瘍細胞接種からの経過日数を示す。写真上方に採用した細胞内ドメイン及びshRNAを示す。
【
図20】試験例11で測定した、腫瘍体積(縦軸)を示す。横軸は、腫瘍細胞接種からの経過週数を示す。凡例に、採用した細胞内ドメイン及びshRNAを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0026】
1.定義
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0027】
アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS,Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。また、塩基配列の『同一性』も上記に準じて定義される。
【0028】
本明細書中において、「保存的置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸残基;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
【0029】
本明細書において、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、特に制限されず、天然、人工のいずれのものも包含する。具体的には、DNA、RNA等の他にも、次に例示するように、公知の化学修飾が施されたものであってもよい。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2´-O-Me)、CH2CH2OCH3(2´-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、ヌクレオチドの糖部の2´酸素と4´炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したものであるBNA(LNA)等もまた、用いられ得る。
【0030】
本明細書中において、「CDR」とは、Complementarity Determining Regionの略であり、相補性決定領域とも称される。CDRとは、イムノグロブリン又はT細胞受容体の可変領域に存在する領域であり、抗体又はT細胞受容体の抗原への特異的な結合に深く関与する領域である。なお、「軽鎖CDR」とはイムノグロブリンの軽鎖可変領域に存在するCDRであり、「重鎖CDR」とはイムノグロブリンの重鎖可変領域に存在するCDRのことを意味する。T細胞受容体においても、α鎖、β鎖、γ鎖、δ鎖等があり、これらのCDRについても同様である。
【0031】
本明細書中において、「可変領域」とは、CDR1~CDR3(以下、単に「CDRs1-3」という)を含む領域のことを意味する。これらのCDRs1-3の配置順序は特に限定はされないが、好ましくは、N末端側からC末端側の方向に、CDR1、CDR2、及びCDR3の順か、若しくはこの逆の順に、連続又は後述するフレームワーク領域(FR)と称される他のアミノ酸配列を介して、配置された領域を意味する。なお、「重鎖可変領域」とは、イムノグロブリンにおいて、上述の重鎖CDRs1-3が配置された領域であり、「軽鎖可変領域」とは、イムノグロブリンにおいて、上述の軽鎖CDRs1-3が配置された領域である。T細胞受容体においても、α鎖、β鎖、γ鎖、δ鎖等があり、これらのCDRについても同様である。
【0032】
各可変領域の上記CDR1-3以外の領域は、上述するようにフレームワーク領域(FR)と称される。特に可変領域のN末端と上記CDR1との間の領域をFR1、CDR1とCDR2との間の領域をFR2、CDR2とCDR3との間の領域をFR3、CDR3と可変領域のC末端との間をFR4とそれぞれ定義される。
【0033】
2.ポリヌクレオチド
本発明は、その一態様において、CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドの発現カセット、及びキメラ抗原受容体の発現カセットを含む、ポリヌクレオチド(本明細書において、「本発明のポリヌクレオチド」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0034】
本発明のポリヌクレオチドは、CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドの発現カセットを含む。CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドの発現カセットを含む本発明のポリヌクレオチドを用いてCAR発現細胞を調製することにより、CAR発現細胞の増殖能を高めることができる。 CUL5遺伝子は、Cullin-5 mRNA/タンパク質を発現する遺伝子である。Cullin-5タンパク質は複数のSCF様ECS (Elongin-Cullin 2/5-SOCS-box protein) E3ユビキチン-プロテインリガーゼ複合体のコアコンポーネントであり、標的タンパク質のユビキチン化とその後のプロテアソーム分解を媒介する。CUL5遺伝子発現抑制とは、Cullin-5 mRNA/タンパク質の発現量を抑制することである。CUL5遺伝子の由来生物種としては、特に制限されず、例えばヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカなどの種々の哺乳類動物が挙げられる。ヒトCUL5遺伝子は、NCBI gene ID:8065の遺伝子である。
【0035】
種々の生物種由来Cullin-5タンパク質のアミノ酸配列及びCullin-5 mRNAの塩基配列は公知である。具体的には、例えば、ヒトCullin-5タンパク質としては配列番号30に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(NCBI Reference Sequence:NP_003469.2)が挙げられ、ヒトCullin-5 mRNAとしては配列番号31に示される塩基配列からなるmRNA(NCBI Reference Sequence:NM_003478.6)が挙げられる。また、Cullin-5タンパク質及びCullin-5 mRNAとしては、上記のスプライシングバリアントも包含され得る。
【0036】
発現抑制対象であるCUL5遺伝子から発現するCullin-5タンパク質は、その本来の活性、すなわちユビキチンE3リガーゼ活性を有するE3ユビキチン-プロテインリガーゼ複合体を形成する限りにおいて、置換、欠失、付加、挿入などのアミノ酸変異を有していてもよい。変異としては、活性がより損なわれ難いという観点から、好ましくは置換、より好ましくは保存的置換が挙げられる。
【0037】
発現抑制対象であるCUL5遺伝子から発現するCullin-5 mRNAも、該mRNAから翻訳されるタンパク質が、その本来の活性、すなわちユビキチンE3リガーゼ活性を有するE3ユビキチン-プロテインリガーゼ複合体を形成する限りにおいて、置換、欠失、付加、挿入などの塩基変異を有していてもよい。変異としては、該mRNAから翻訳されるタンパク質においてアミノ酸置換が生じない変異やアミノ酸の保存的置換が生じる変異が好ましい。
【0038】
発現抑制対象であるCUL5遺伝子から発現するCullin-5タンパク質の好ましい具体例としては、下記(A)に記載するタンパク質及び下記(B)に記載するタンパク質:
(A)配列番号30のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及び
(B)配列番号30のいずれかに示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つユビキチンE3リガーゼ活性を有するE3ユビキチン-プロテインリガーゼ複合体を形成するタンパク質
からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0039】
上記(B)において、同一性は、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上である。
【0040】
上記(B)に記載するタンパク質の一例としては、例えば
(B’)配列番号30のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つユビキチンE3リガーゼ活性を有するE3ユビキチン-プロテインリガーゼ複合体を形成するタンパク質
が挙げられる。
【0041】
上記(B’)において、複数個とは、例えば2~50個であり、好ましくは2~20個であり、より好ましくは2~10個であり、よりさらに好ましくは2又は3個である。
【0042】
発現抑制対象であるCUL5遺伝子から発現するCullin-5 mRNAの好ましい具体例としては、下記(C)に記載するmRNA及び下記(D)に記載するmRNA:
(C)配列番号31のいずれかに示される塩基配列からなるmRNA、及び
(D)配列番号31のいずれかに示される塩基配列と85%以上の同一性を有する塩基配列からなり、且つユビキチンE3リガーゼ活性を有するE3ユビキチン-プロテインリガーゼ複合体を形成するタンパク質をコードするmRNA
からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0043】
上記(D)において、同一性は、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上である。
【0044】
上記(D)に記載するmRNAの一例としては、例えば
(D’)配列番号31のいずれかに示される塩基配列に対して1若しくは複数個の塩基が置換、欠失、付加、又は挿入された塩基配列からなり、且つユビキチンE3リガーゼ活性を有するE3ユビキチン-プロテインリガーゼ複合体を形成するタンパク質をコードするmRNAが挙げられる。
【0045】
上記(D’)において、複数個とは、例えば2~200個であり、好ましくは2~100個であり、より好ましくは2~50個であり、よりさらに好ましくは2~10個である。
【0046】
CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドとしては、CUL5タンパク質、CUL5 mRNAなどの発現量を抑制し得るポリヌクレオチドである限り特に制限されず、例えばCUL5特異的small interfering RNA(siRNA)、CUL5特異的microRNA(miRNA)、CUL5特異的アンチセンスポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0047】
なお、発現抑制とは、Cullin-5タンパク質の発現量を、例えば70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下に抑制することを意味し、その発現量を0とすることをも包含する。
【0048】
CUL5特異的siRNAは、CUL5遺伝子の発現を特異的に抑制する二本鎖RNA分子である限り特に制限されない。一実施形態において、siRNAは、例えば、18塩基以上、19塩基以上、20塩基以上、又は21塩基以上の長さであることが好ましい。また、siRNAは、例えば、25塩基以下、24塩基以下、23塩基以下、又は22塩基以下の長さであることが好ましい。ここに記載するsiRNAの長さの上限値及び下限値は任意に組み合わせることが想定される。例えば、下限が18塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ;下限が19塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ;下限が20塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ;下限が21塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さの組み合わせが想定される。
【0049】
siRNAは、shRNA(small hairpin RNA)であっても良い。shRNAは、その一部がステムループ構造を形成するように設計することができる。例えば、shRNAは、ある領域の配列を配列aとし、配列aに対する相補鎖を配列bとすると、配列a、スペーサー、配列bの順になるようにこれらの配列が一本のRNA鎖に存在するようにし、全体で45~60塩基の長さとなるように設計することができる。配列aは、標的となるCUL5をコードする塩基配列の一部の領域の配列であり、標的領域は特に限定されず、任意の領域を候補にすることが可能である。そして配列aの長さは19~25塩基、好ましくは19~21塩基である。
【0050】
CUL5特異的siRNAは、5’又は3’末端に、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基の長さは、通常2~4塩基程度である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いると核酸の安定性を向上させることができる場合がある。このような付加的塩基の配列としては、例えばug-3’、uu-3’、tg-3’、tt-3’、ggg-3’、guuu-3’、gttt-3’、ttttt-3’、uuuuu-3’などの配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
siRNAは、3'末端に突出部配列(オーバーハング)を有していてもよく、具体的には、dTdT(dTはデオキシチミジンを表わす)を付加したものが挙げられる。また、末端付加がない平滑末端(ブラントエンド)であってもよい。siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖が異なる塩基数であってもよく、例えば、アンチセンス鎖が3'末端及び5'末端に突出部配列(オーバーハング)を有している「asymmetrical interfering RNA(aiRNA)」を挙げることができる。典型的なaiRNAは、アンチセンス鎖が21塩基からなり、センス鎖が15塩基からなり、アンチセンス鎖の両端で各々3塩基のオーバーハング構造をとる。
【0052】
CUL5特異的siRNAの標的配列の位置は特に制限されるわけではないが、一実施形態において、5’-UTR及び開始コドンから約50塩基まで、並びに3’-UTR以外の領域から標的配列を選択することが望ましい。選択された標的配列の候補群について、標的以外のmRNAにおいて16-17塩基の連続した配列に相同性がないかどうかを、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)などのホモロジー検索ソフトを用いて調べ、選択した標的配列の特異性を確認することが好ましい。特異性が確認された標的配列について、AA(もしくはNA)以降の19-21塩基にTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するセンス鎖と、該19-21塩基に相補的な配列及びTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するアンチセンス鎖とからなる2本鎖RNAをsiRNAとして設計してもよい。また、siRNAの前駆体であるshRNAは、ループ構造を形成しうる任意のリンカー配列(例えば、5-25塩基程度)を適宜選択し、上記センス鎖とアンチセンス鎖とを該リンカー配列を介して連結することにより設計することができる。
【0053】
siRNA及び/又はshRNAの配列は、種々のwebサイト上に無料で提供される検索ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、以下を挙げることができる。
Ambionが提供するsiRNA Target Finder(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/siRNA_finder.html)pSilencer(登録商標)Expression Vector用インサートデザインツール(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/psilencer_converter.html)RNAi Codexが提供するGeneSeer(http://codex.cshl.edu/scripts/newsearchhairpin.cgi)。
【0054】
siRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90~約95℃で約1分程度変性させた後、約30~約70℃で約1~約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、siRNAの前駆体となるshRNAを合成し、これを、RNA切断タンパク質ダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製することもできる。
【0055】
CUL5特異的miRNAは、CUL5遺伝子の翻訳を阻害する限り任意である。例えば、miRNAは、siRNAのように標的mRNAを切断するのではなく、標的の3’非翻訳領域(UTR)に対合してその翻訳を阻害してもよい。miRNAは、pri-miRNA(primary miRNA)、pre-miRNA(precursor miRNA)、及び成熟miRNAのいずれでもよい。miRNAの長さは特に制限されず、pri-miRNAの長さは通常数百~数千塩基であり、pre-miRNAの長さは通常50~80塩基であり、成熟miRNAの長さは通常18~30塩基である。一実施形態において、CUL5特異的miRNAは、好ましくはpre-miRNA又は成熟miRNAであり、より好ましくは成熟miRNAである。このようなCUL5特異的miRNAは、公知の手法で合成してもよく、合成RNAを提供する会社から購入してもよい。
【0056】
CUL5特異的アンチセンスポリヌクレオチドとは、CUL5遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含む核酸であって、該mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、CUL5タンパク質合成を抑制する機能を有する核酸である。アンチセンスポリヌクレオチドは、例えば、DNA、RNA、又はDNA/RNAキメラであることができる。アンチセンスポリヌクレオチドがDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性リボヌクレアーゼH(RNase H)に認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こす。したがって、RNase Hによる分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標的配列は、mRNA中の配列だけでなく、CUL5遺伝子の初期翻訳産物におけるイントロン領域の配列であってもよい。イントロン配列は、ゲノム配列と、CUL5遺伝子のcDNA塩基配列とをBLAST、FASTAなどのホモロジー検索プログラムを用いて比較することにより、決定することができる。
【0057】
CUL5特異的アンチセンスポリヌクレオチドの標的領域は、該アンチセンスポリヌクレオチドがハイブリダイズすることにより、結果としてCUL5タンパク質への翻訳が阻害されるものであればその長さは制限されない。CUL5特異的アンチセンスポリヌクレオチドは、CUL5をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよい。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の問題などを考慮すれば、約10~約40塩基、特に約15~約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、これらに限定されるものではない。より具体的には、CUL5遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域又は3’端ヘアピンループなどをアンチセンスポリヌクレオチドの好ましい標的領域として選択しうるが、それらに限定されるものではない。
【0058】
CUL5特異的アンチセンスポリヌクレオチドは、CUL5遺伝子のmRNAや初期転写産物とハイブリダイズしてタンパク質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるこれらの遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写を阻害し得るもの(アンチジーン(antigene))であってもよい。
【0059】
CUL5特異的siRNA、CUL5特異的miRNA、及びCUL5特異的アンチセンスポリヌクレオチドなどは、CUL5遺伝子のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。また、各種修飾を含むアンチセンスポリヌクレオチドも、いずれも公知の手法により、化学的に合成することができる。
【0060】
CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドの発現カセット(発現カセット1)は、プロモーターと、当該プロモーターの制御下にあるCUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドコード配列を含む。プロモーターの制御下となるように、通常、プロモーターの下流にコード配列を配置する。利用可能なプロモーターとしては、例えばCMVプロモーター、EF1プロモーター、SV40プロモーター、MSCVプロモーター、hTERTプロモーター、βアクチンプロモーター、CAGプロモーターなどのRNA polymerase II(poII)系プロモーター; マウス及びヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNase P RNAプロモーター、ヒトバリン-tRNAプロモーターなどのRNA polymerase III(polIII)系プロモーターなどが挙げられ、これらの中でも、短いRNAの転写を正確に行うことができるという観点から、polIII系プロモーターが好ましい。プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。ここで、「プロモーターがコード配列に作動可能に連結している」とは、「プロモーターの制御下にコード配列が配置されている」ことと同義であり、通常、プロモーターの3'末端側に直接又は他の配列を介してコード配列が連結されることになる。コード配列の下流にはポリA付加シグナル配列を配置する。ポリA付加シグナル配列の使用によって転写を終了させる。ポリA付加シグナル配列としてはSV40のポリA付加配列、ウシ由来成長ホルモン遺伝子のポリA付加配列等を用いることができる。
【0061】
本発明のポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体の発現カセットを含む。キメラ抗原受容体の発現カセットを含む本発明のポリヌクレオチドを用いてCAR発現細胞を調製することにより、CAR発現細胞を効率的に得ることができる。
【0062】
キメラ抗原受容体は、標的抗原に結合することができ、且つ標的抗原の結合により、免疫細胞の活性化に必要なシグナルを細胞内に伝達することができるものである限り、特に制限されない。キメラ抗原受容体は、典型的には、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナルドメインを含む。
【0063】
抗原結合性ドメインは、キメラ抗原受容体が細胞膜上に配置された際に細胞外に配置されるドメインであり、抗原を認識して、当該抗原に結合することができるドメインである限り、特に制限されない。抗原として、具体的には、例えばCD19、GD2、GD3、CD20、CD37、CEA、HER2、EGFR、type III mutant EGFR、CD38、BCMA、MUC-1、PSMA、WT1、cancer testis antigen(例えばNY-ESO-1、MAGE-A4等)、mutation peptide(例えばk-ras、h-ras、p53等)、hTERT、PRAM、TYRP1、メソテリン、PMEL、ムチン等、さらにはこれらの断片とMHCとの複合体(pMHC)等が挙げられる。これらの中でも、本発明の一態様において、好ましくはCD19が挙げられる。抗原結合性ドメインは、通常、抗原に対する抗体又はT細胞受容体のCDR(例えば、抗体のCDRであれば、重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び軽鎖CDR3)の内の1つ以上、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ以上、より好ましくは6つ全てを有する。抗原結合性領域は、より好ましくは抗原に対する抗体又はT細胞受容体の可変領域(抗体の場合であれば、例えば重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域)を含む。
【0064】
抗原結合性ドメインは、単鎖抗体構造を採ることが好ましく、scFv構造を採ることがより好ましい。scFv構造のように重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む場合、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とは、通常、リンカーを介して連結されている。リンカーは、抗原結合性が著しく損なわれない限り特に制限されず、任意である。リンカーとしては、好ましくはグリシン或いはグリシンとセリンから構成されるリンカー(GGSリンカー、GSリンカー、GGGリンカー等)である。リンカーの長さは特に限定されない。リンカーのアミノ酸残基数は、例えば5~30、好ましくは10~25である。重鎖可変領域と軽鎖可変領域との配置関係は特に制限されず、N末端側が軽鎖可変領域である態様と、N末端側が重鎖可変領域である場合のいずれでも採用可能である。該配置関係は、好ましくは前者である。
【0065】
膜貫通ドメインは、本発明のキメラ抗原受容体が細胞膜上に配置された際に細胞膜内に配置されるドメインであり、キメラ抗原受容体を構成し得るものである限りにおいて、特に制限されない。膜貫通ドメインとしては、例えば、CD28、CD3ε、CD8α、CD3、CD4、4-1BB等の膜貫通領域を用いることができる。各因子の膜貫通領域は、公知であるか、或いは公知の配列情報から(例えば膜貫通領域の予測プログラム等を利用して)容易に決定することができる。また、人工的に構築したポリペプチドからなる膜貫通ドメインを用いることにしてもよい。これらの膜貫通ドメインは、キメラ抗原受容体の機能を著しく阻害しない限り、適宜変異が導入されていてもよい。
【0066】
膜貫通ドメインとしては、好ましくはCD28の膜貫通領域を採用することができる。CD28の膜貫通領域の具体例としては、下記(a)に記載するアミノ酸配列又は下記(b)に記載するアミノ酸配列:
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有し、且つ本発明のキメラ抗原受容体が細胞膜上に配置された際に細胞膜内に配置され得るアミノ酸配列
が挙げられる。
【0067】
上記(b)において、同一性は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0068】
上記(b)に記載するアミノ酸配列の一例としては、例えば
(b’)配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列であって、且つ本発明のキメラ抗原受容体が細胞膜上に配置された際に細胞膜内に配置され得るアミノ酸配列
が挙げられる。
【0069】
上記(b’)において、複数個とは、例えば2~5個であり、好ましくは2~3個であり、より好ましくは2個である。
【0070】
本発明の一態様において、抗原結合性ドメインと膜貫通ドメインとは、直接又は比較的短いスペーサーを介して連結されることが好ましい。本発明のキメラ抗原受容体において、抗原結合性ドメインと膜貫通ドメインとの間の構成アミノ酸残基数は、例えば400以下、300以下、又は250以下であることができ、100以下であることが特に好ましい。当該構成アミノ酸残基数は、好ましくは0~60、より好ましくは0~40、さらに好ましくは0~30である。本発明の特に好ましい態様において、当該アミノ酸残基数は、1以上、4以上、又は8以上であり、また25以下、20以下、又は15以下であり、また1~25、4~20、又は8~15である。スペーサーの配列は特に限定されないが、例えばIgG、好ましくはヒトIgG(例えばサブタイプIgG1やIgG4)のヒンジ部又はその一部、ヒンジ部とCH2の一部、或いは膜貫通ドメインに利用する因子(例えばCD28)の一部等の配列をスペーサーに用いることができる。なお、ヒンジ部又はその一部の配列を利用することにより、柔軟性に富むスペーサーが構成されることを期待できる。
【0071】
細胞内シグナルドメインは、本発明のキメラ抗原受容体が細胞膜上に配置された際に細胞内に配置されるドメインであり、免疫細胞のエフェクター機能の発揮に必要なシグナルを伝達すること、即ち、抗原結合性ドメインが抗原と結合した際、免疫細胞の活性化に必要なシグナルを伝達することが可能なドメインである。 細胞内シグナルドメインは、好ましくは細胞内活性化ドメインを含む。細胞内活性化ドメインとしては、例えば、CD3ζの他、FcεRIγ等の細胞内ドメインを用いることができる。好ましくは、CD3ζが用いられる。CD3は、抗原受容体の機能を阻害しない限り、適宜変異が導入されていてもよい。CD3に変異を導入する場合は、ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)が含まれるよう行うことが好ましい。
【0072】
細胞内活性化ドメインの具体例としては、下記(c)に記載するアミノ酸配列又は下記(d)に記載するアミノ酸配列:
(c)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は
(d)配列番号5に示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有し、且つ免疫細胞の活性化作用を有するアミノ酸配列
が挙げられる。
【0073】
上記(d)において、同一性は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0074】
上記(d)に記載するアミノ酸配列の一例としては、例えば
(d’)配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列であって、且つ免疫細胞の活性化作用を有するアミノ酸配列
が挙げられる。
【0075】
上記(d’)において、複数個とは、例えば2~15個であり、好ましくは2~10個であり、より好ましくは2~5個、さらに好ましくは2~3個である。
【0076】
細胞内シグナルドメインは、好ましくは共刺激因子の細胞内ドメインを含む。共刺激因子の細胞内ドメインは、T細胞などが有する共刺激因子に由来する細胞内ドメインであればよく特に限定はされない。例えば、OX40、4-1BB、GITR、CD79a、CD40、CD27、CD278及びCD28等からなる群より選択される1種以上の細胞内ドメインを適宜選択して使用することができる。本発明の一態様において、CD79a細胞内ドメインとCD40細胞内ドメインがタンデムに連結されたドメインを採用することができる。
【0077】
細胞内ドメインの具体例としては、下記(e)に記載するアミノ酸配列又は下記(f)に記載するアミノ酸配列:
(e)配列番号4及び30~32のいずれかに示されるアミノ酸配列、又は
(f)配列番号4及び30~32のいずれかに示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有し、且つ免疫細胞の活性化作用を有するアミノ酸配列
が挙げられる。
【0078】
上記(f)において、同一性は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0079】
上記(f)に記載するアミノ酸配列の一例としては、例えば
(f’)配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列であって、且つ免疫細胞の活性化作用を有するアミノ酸配列
が挙げられる。
【0080】
上記(f’)において、複数個とは、例えば2~15個であり、好ましくは2~10個であり、より好ましくは2~5個、さらに好ましくは2~3個である。
【0081】
本発明のキメラ抗原受容体は、上記以外の他の領域を含むことができる。他の領域としては、例えばCARの細胞膜上への輸送を促すためにリーダー配列(シグナルペプチド)(例えば、GM-CSFレセプターのリーダー配列)、スペーサー/リンカー(例えば膜貫通領域と細胞内シグナルドメインの間、細胞内シグナルドメイン内の各ドメイン間)等が挙げられる。
【0082】
尚、これまでにCARを利用した実験、臨床研究などの報告がいくつかあり(例えばRossig C, et al. Mol Ther 10:5-18, 2004; Dotti G, et al. Hum Gene Ther 20:1229-1239, 2009; Ngo MC, et al. Hum Mol Genet 20 (R1):R93-99, 2011; Ahmed N, et al. Mol Ther 17:1779-1787, 2009; Pule MA, et al. Nat Med 14:1264-1270, 2008; Louis CU, et al. Blood 118:6050-6056, 2011; Kochenderfer JN, et al. Blood 116:4099-4102, 2010; Kochenderfer JN, et al. Blood 119 :2709-2720, 2012; Porter DL, et al. N Engl J Med 365:725-733, 2011; Kalos M, et al. Sci Transl Med 3:95ra73,2011; Brentjens RJ, et al. Blood 118:4817-4828, 2011; Brentjens RJ, et al. Sci Transl Med 5:177 ra38, 2013)、これらの報告を参考にして本発明のキメラ抗原受容体を構築することができる。
【0083】
本発明のキメラ抗原受容体の特に好ましい一態様としては、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナルドメインがこの順に配置されてなるコア領域を含むキメラ抗原受容体が挙げられる。各ドメインは、直接又はスペーサー/リンカーを介して連結されている。
【0084】
本発明のキメラ抗原受容体は、公知のタンパク質タグ、シグナル配列等のタンパク質又はペプチドが付加されたものであってもよい。タンパク質タグとしては、例えばビオチン、Hisタグ、FLAGタグ、Haloタグ、MBPタグ、HAタグ、Mycタグ、V5タグ、PAタグ、蛍光タンパク質タグ等が挙げられる。
【0085】
キメラ抗原受容体の発現カセット(発現カセット2)は、プロモーターと、当該プロモーターの制御下にあるキメラ抗原受容体コード配列を含む。プロモーターの制御下となるように、通常、プロモーターの下流にコード配列を配置する。利用可能なプロモーターとしては、例えばCMVプロモーター、EF1プロモーター、SV40プロモーター、MSCVプロモーター、hTERTプロモーター、βアクチンプロモーター、CAGプロモーターなどのRNA polymerase II(poII)系プロモーターなどが挙げられる。プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。ここで、「プロモーターがコード配列に作動可能に連結している」とは、「プロモーターの制御下にコード配列が配置されている」ことと同義であり、通常、プロモーターの3'末端側に直接又は他の配列を介してコード配列が連結されることになる。コード配列の下流にはポリA付加シグナル配列を配置する。ポリA付加シグナル配列の使用によって転写を終了させる。ポリA付加シグナル配列としてはSV40のポリA付加配列、ウシ由来成長ホルモン遺伝子のポリA付加配列等を用いることができる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、発現カセット1、発現カセット2、以外に、他の配列を含んでいてもよい。他の配列としては、エンハンサー配列、リプレッサー配列、インスレーター配列、複製基点、レポータータンパク質(例えば、蛍光タンパク質等)コード配列、薬剤耐性遺伝子コード配列などが挙げられる。
【0087】
発現カセット内に検出用遺伝子(レポーター遺伝子、細胞又は組織特異的な遺伝子、選択マーカー遺伝子など)、エンハンサー配列、WRPE配列等を含めることにしてもよい。検出用遺伝子は、発現カセットの導入の成否や効率の判定、CAR遺伝子の発現の検出又は発現効率の判定、CAR遺伝子が発現した細胞の選択や分取等に利用される。一方、エンハンサー配列の使用によって発現効率の向上が図られる。検出用遺伝子としては、ネオマイシンに対する耐性を付与するneo遺伝子、カナマイシン等に対する耐性を付与するnpt遺伝子(Herrera Estrella、EMBO J. 2(1983)、987-995)やnptII遺伝子(Messing & Vierra.Gene 1 9:259-268(1982))、ハイグロマイシンに対する耐性を付与するhph遺伝子(Blochinger & Diggl mann,Mol Cell Bio 4:2929-2931)、メタトレキセートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Bourouis et al.,EMBO J.2(7))等(以上、マーカー遺伝子)、ルシフェラーゼ遺伝子(Giacomin、P1. Sci. 116(1996)、59~72;Scikantha、J. Bact. 178(1996)、121)、β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、GFP(Gerdes、FEBS Lett. 389(1996)、44-47)やその改変体(EGFPやd2EGFPなど)等の蛍光タンパク質の遺伝子(以上、レポーター遺伝子)、細胞内ドメインを欠く上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子等の遺伝子を用いることができる。検出用遺伝子は、例えば、バイシストロニック性制御配列(例えば、リボソーム内部認識配列(IRES))や自己開裂ペプチドをコードする配列を介してCAR遺伝子に連結している。自己開裂ペプチドの例はThosea asigna virus由来の2Aペプチド(T2A)であるが、これに限定されるものではない。自己開裂ペプチドとして蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2Aペプチド(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)由来の2Aペプチド(E2A)、porcine teschovirus(PTV-1)由来の2Aペプチド(P2A)等が知られている。
【0088】
本発明のポリヌクレオチドは、直鎖状のポリヌクレオチドであってもよいし、環状のポリヌクレオチド(ベクターなど)であってもよい。ベクターは、プラスミドベクター、又はウイルスベクターであり得る。また、ベクターは、例えば、クローニング用ベクター又は発現用ベクターであり得る。発現用ベクターとしては、大腸菌、又は放線菌等の原核細胞用のベクター、或いは、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳類細胞等の真核細胞用のベクターを挙げることができる。より具体的には、ウイルスベクターとしてレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクター等が挙げられ、非ウイルスベクターの例としては、各種プラスミドベクター、リポソームベクター、正電荷型リポソームベクター(Felgner, P.L., Gadek, T.R., Holm, M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 84:7413-7417, 1987)、YACベクター、BACベクターを挙げることができる。
【0089】
本発明のポリヌクレオチドは、後述の本発明の細胞を得る際に細胞に与えるダメージを低減できるという観点から、好ましくは、ウイルスベクター、又はウイルスゲノムである。本発明のポリヌクレオチドは、より好ましくは、レトロウイルスベクター、又はレトロウイルスゲノム、或いはレンチウイルスベクター、又はレンチウイルスゲノムである。本発明のポリヌクレオチドは、特に好ましくは、レンチウイルスベクター、又はレンチウイルスゲノムである。
【0090】
3.細胞
本発明は、その一態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む、細胞(本明細書において、「本発明の細胞1」と示すこともある。)に関する。また、本発明は、その一態様において、CUL5遺伝子の発現が低下するように改変されており、且つキメラ抗原受容体を発現する、細胞(本明細書において、「本発明の細胞2」と示すこともある。)に関する。本明細書においては、本発明の細胞1と本発明の細胞2をまとめて、「本発明の細胞」と示すこともある。以下に、これらについて説明する。
【0091】
3-1.本発明の細胞1
本発明のポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む方法により本発明の細胞1を得ることができる。当該細胞の一態様においては、CUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドによりCUL5遺伝子の発現が低下しており、且つキメラ抗原受容体を発現する。本発明の細胞1におけるCullin-5タンパク質の発現量は、対照細胞(本発明のポリヌクレオチドを導入しない以外は同条件で処理した細胞)におけるCullin-5タンパク質の発現量に対して、例えば70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下であることができる。
【0092】
本発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する方法は、特に制限されないが、細胞へのダメージを低減しCAR発現細胞の作製効率及び増殖能をより高めるという観点から、本発明のポリヌクレオチドを含むウイルスを導入する方法であることが好ましい。これにより、エレクトロポレーション法やリポフェクション法等の細胞へのダメージが懸念される方法を使用せずに、導入することができる。
【0093】
本発明のポリヌクレオチドが導入される細胞(CAR発現用細胞)として、CD4陽性CD8陰性T細胞、CD4陰性CD8陽性T細胞、iPS細胞から調製されたT細胞、αβ-T細胞、γδ-T細胞、NK細胞、NKT細胞等を挙げることができる。上記の如きリンパ球又は前駆細胞を含むものであれば、様々な細胞集団を用いることができる。末梢血から採取されるPBMC(末梢血単核細胞)は好ましい標的細胞の一つである。即ち、好ましい一態様では、PBMCに対して遺伝子導入操作を行う。PBMCは常法に従って又は準じて調製することができる。
【0094】
本発明のポリヌクレオチドの導入の前にCAR発現用細胞を活性化させておくことが好ましい。例えば、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で刺激し、CAR発現用細胞を活性化させることができる。例えば、抗CD3抗体と抗CD28抗体で培養面をコートした培養容器(例えば培養皿)で培養することによって、抗CD3抗体及び抗CD28抗体による刺激を加えることができる。抗CD3抗体と抗CD28抗体がコートされた磁気ビーズ(例えば、VERITAS社が提供するDynabeads T-Activator CD3/CD28)を利用して当該刺激を行うことも可能である。
【0095】
細胞の生存率/増殖率を高めるために、活性化処理の際、T細胞増殖因子が添加された培養液を使用することが好ましい。T細胞増殖因子としてはIL-2、IL-15、IL-7等を用いることができる。IL-2、IL-15、IL-7等のT細胞増殖因子は常法に従って調製することができる。また、市販品を利用することもできる。ヒト以外の動物種のT細胞増殖因子の使用を排除するものではないが、通常、T細胞増殖因子はヒト由来のもの(組換え体であってもよい)を用いる。
【0096】
典型的には、その適用(患者への投与)のため、本発明のポリヌクレオチド導入後の細胞(本発明のポリヌクレオチド導入リンパ球)を増殖させる。例えば、T細胞増殖因子が添加された培養液を用いて本発明のポリヌクレオチド導入リンパ球を培養する(必要に応じて継代培養する)。この培養に加え、CAR発現用細胞の活性化の場合と同様の処理(再活性化)を行うことにしてもよい。
【0097】
尚、CAR発現用細胞及び本発明のポリヌクレオチド導入リンパ球の培養には、血清(ヒト血清、ウシ胎仔血清など)を添加した培地を用いてもよいが、無血清培地を採用することにより、臨床応用する際の安全性が高く、且つ血清ロット間の差による培養効率の違いが出にくいという利点を有する細胞を調製することが可能になる。血清を用いる場合には、自己血清、即ち、CAR遺伝子導入リンパ球の投与を受ける患者から採取した血清を用いることが好ましい。
【0098】
3-2.本発明の細胞2
細胞を、CUL5遺伝子の発現が低下するように改変し、さらにキメラ抗原受容体を発現させることにより、本発明の細胞2を得ることができる。本発明の細胞2におけるCullin-5タンパク質の発現量は、対照細胞(CUL5遺伝子の発現が低下するように改変しない以外は同条件で処理した細胞)におけるCullin-5タンパク質の発現量に対して、例えば70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下であることができる。CUL5遺伝子の発現を低下させることにより、CAR発現細胞の増殖能を高めることができる。 CUL5遺伝子の発現を低下させる改変としては、例えば遺伝子欠損(遺伝子破壊)、タンパク質コード領域における変異、スプライシング調節領域における変異、発現制御領域(例えば、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー等)における変異等が挙げられる。当該改変は、例えばCRSPR/Casシステムなどの遺伝子編集システムを利用して行うことができる。
【0099】
キメラ抗原受容体を発現させる方法は、特に制限されない。例えば、キメラ抗原受容体の発現カセットを含むポリヌクレオチドを細胞に導入することにより、キメラ抗原受容体を発現させることができる。
【0100】
上記で説明していない事項については、「3-1.本発明の細胞1」の説明を援用する。
【0101】
3-3.本発明の細胞
本発明の細胞の由来細胞は、特に制限されない。本発明の細胞を、本発明のキメラ抗原受容体の精製において使用する目的であれば、由来細胞としては、タンパク質発現に使用できる細胞(例えば、昆虫細胞、真核細胞、哺乳類細胞等)等が挙げられる。
【0102】
本発明の細胞は好ましくはリンパ球細胞(例えば、T細胞(例えばCD4陽性CD8陰性T細胞、CD4陰性CD8陽性T細胞、iPS細胞から調製されたT細胞、αβ-T細胞、γδ-T細胞等)、NK細胞、NKT細胞等)である。これらの細胞は、好ましくは本発明のキメラ抗原受容体を発現する細胞であり、より具体的な態様においては、これらの細胞は、本発明のキメラ抗原受容体が細胞膜上に発現しており、好ましくは本発明のキメラ抗原受容体が抗原結合性ドメインを細胞膜外に露出した状態で発現している。
【0103】
キメラ抗原受容体を発現するT細胞等は抗原結合性領域で抗原を認識した後、その認識シグナルをT細胞等の内部に伝達し、細胞傷害活性を惹起させるシグナルを作動させ、これに連動して該細胞が抗原を発現する他の細胞または組織に対して攻撃または細胞傷害活性を発揮することができる。
【0104】
このような機能を発揮する細胞がCTLである場合、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)と呼ばれる。NK細胞などの細胞傷害活性を発揮する可能性を有する細胞もキメラ抗原受容体T細胞と同様に、抗原結合性領域が抗原と結合することにより、細胞傷害活性を発揮できる。従って、本発明のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞(特に、細胞傷害活性を有する宿主細胞)は、医薬組成物の有効成分として有用である。
【0105】
4.医薬組成物
本発明は、その一態様において、本発明の細胞を含有する、医薬組成物(本明細書において、「本発明の医薬組成物」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0106】
本発明の医薬組成物は、細胞製剤として、抗原結合性ドメインの標的抗原を発現する腫瘍/がん(標的疾患)の治療、予防、又は改善に広く利用することができる。標的疾患は固形がん及び血液がんを含む。標的疾患としては、例えば各種B細胞性悪性リンパ腫(B細胞性急性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、びまん性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、MALTリンパ腫、血管内B細胞性リンパ腫、CD20陽性ホジキンリンパ腫など)、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(CMML,JMML,CML,MDS/MPN-UC)、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、肺がん、大腸がん、卵巣がん、乳がん、脳腫瘍、胃がん、肝がん、舌がん、甲状腺がん、腎臓がん、前立腺がん、子宮がん、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫等が挙げられる。「治療」とは、標的疾患に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。「予防」とは、疾病(障害)又はその症状の発症/発現を防止又は遅延すること、或いは発症/発現の危険性を低下させることをいう。一方、「改善」とは、疾病(障害)又はその症状が緩和(軽症化)、好転、寛解、又は治癒(部分的な治癒を含む)することをいう。
【0107】
本発明の医薬組成物には、本発明の細胞が治療上有効量含有される。例えば1回の投与用として、1×10 4個~1×10 10個の細胞を含有させることができる。細胞の保護を目的としてジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン等、細菌の混入を阻止する目的で抗生物質等、細胞の活性化、増殖又は分化誘導などを目的とした各種の成分(ビタミン類、サイトカイン、成長因子、ステロイド等)等の成分を細胞製剤に含有させることができる。
【0108】
本発明のCAR遺伝子導入リンパ球又は細胞製剤の投与経路は特に限定されない。例えば、静脈内注射、動脈内注射、門脈内注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、又は腹腔内注射によって投与する。全身投与によらず、局所投与することにしてもよい。局所投与として、目的の組織・臓器・器官への直接注入を例示することができる。投与スケジュールは、対象(患者)の性別、年齢、体重、病態などを考慮して作成すればよい。単回投与の他、連続的又は定期的に複数回投与することにしてもよい。
【実施例0109】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0110】
試験例1.CARコンストラクトのデザイン及び作製
N末端側から、
抗CD19 scFvドメイン(アミノ酸配列:配列番号1、塩基配列:配列番号9)、IgG4ヒンジ部(アミノ酸配列:配列番号2、塩基配列:配列番号10)、
CD28膜貫通ドメイン(アミノ酸配列:配列番号3、塩基配列:配列番号11)、
CD28細胞内ドメイン(アミノ酸配列:配列番号4、塩基配列:配列番号12)、
CD3ζ細胞内ドメイン(アミノ酸配列:配列番号5、塩基配列:配列番号13)、
5アミノ酸スペーサー、
T2A配列(アミノ酸配列:配列番号6、塩基配列:配列番号14)、Truncated EGFRドメイン(アミノ酸配列:配列番号7、塩基配列:配列番号15)の順に配置されてなるCARコンストラクト(
図1、アミノ酸配列:配列番号8、塩基配列:配列番号16)をデザインし、当該CARのコード配列(塩基配列:配列番号16)を、その両末端側に付加した制限酵素認識配列を利用して、レトロウイルスベクター(ベクター名:pLZRS-BMN-Z)に組込んだ。
【0111】
なお、抗CD19 scFvドメイン及びTruncated EGFRドメインの配列には、N末端に付加されたGM-CSFレセプターリーダー配列を含む。
【0112】
試験例2.CAR-T細胞増殖因子のスクリーニング
GW(Genome Wide)-CRISPR screeningにより、CAR-T細胞増殖因子のスクリーニングを行った。概要を
図2に示す。具体的には以下のようにして行った。
【0113】
3名の健常ドナーから採血を行い、CD8陽性リンパ球を免疫磁気ビーズ(Myltenii)を用いて分取、そのCD8陽性細胞をCD3/CD28ビーズで刺激し増殖を開始した(Day0)。 Day1にGW-gRNAを発現するレンチウイルスを遺伝子導入し、Day2にCas9タンパクを電気穿孔法で導入した。Day3にCD19CARと遺伝子導入マーカーとして細胞内ドメインを欠くEGFR (truncated EGFR, tEGFR)からなるCARコンストラクト(試験例1)をパッケージしたレトロウイルスを遺伝子導入した。Day7にtEGFR を遺伝子導入マーカーとして陽性細胞をbiotin化EGFR抗体およびanti-biotin microbeadsを用いてtEGFR陽性細胞(CD19CAR陽性細胞)を純化した。Day10まで培養継続し、その後は10日ごとに100Gy放射線照射処理したRaji細胞株(CD19+, バーキットリンパ腫由来細胞株)を用いて繰り返し刺激を3回行い、Day40に残った細胞を採取した。Day10のCAR-T細胞とDay40のCAR-T細胞から採取したDNAを用いてgRNA配列を決定・定量を行った。ドナーごとのノックアウトされた遺伝子の順位をGFOLD解析を用いて行った。GFOLD解析を統合し上位10位以内でT細胞に発現が見られることが報告される遺伝子として6個の遺伝子を抽出した。
【0114】
続いて、2次スクリーニングを行った。GW-gRNA Libraryに代えて、上記で抽出された6つの遺伝子それぞれを標的とする2種のgRNAのいずれかの発現カセットを含むレンチウイルスベクター(ベクター名:pLV-EGFP-U6)を使用する以外は、
図2のスキームに従って、CAR-T細胞を調製した。gRNAの標的配列は以下の通りである。
SMCO2遺伝子(NCBI gene ID:341346)
gRNA1:配列番号17
gRNA2:配列番号18
TSR2遺伝子(NCBI gene ID:90121)
gRNA1:配列番号19
gRNA2:配列番号20
PKM遺伝子(NCBI gene ID:5315)
gRNA1:配列番号21
gRNA2:配列番号22
CUL5遺伝子(NCBI gene ID:8065)
gRNA1(#4690):配列番号23
gRNA2(#8377):配列番号24
KLRC1遺伝子(NCBI gene ID:3821)
gRNA1:配列番号25
gRNA2:配列番号26
ING3遺伝子(NCBI gene ID:54556)
gRNA1:配列番号27
gRNA2:配列番号28
【0115】
結果を
図3及び
図4に示す。CUL5を抑制した場合のみ、GFP陽性割合が高まった。なお、Day7におけるCUL5発現量をウェスタンブロッティングで測定した結果を
図5に示す。
【0116】
試験例3.CUL5ノックアウトの効果の解析1
5名のドナー由来のそれぞれの細胞を用い、GW-gRNA Libraryに代えてCUL5を標的とする2種のgRNA(試験例2)のいずれかの発現カセットを含むレンチウイルスベクターを使用する以外は、
図2のスキームに従って、CAR-T細胞を調製した。
【0117】
Day10に放射線照射したRaji細胞で刺激した後4日目(通算14日目)のCAR-T細胞をCellTrace Violetで染色し、72時間後(通算17日目)の細胞分裂の程度をフローサイトメトリーを用いてCellTrace Violetの希釈により測定した。結果を
図6に示す。CUL5ノックアウトにより細胞分裂が亢進することが分かった。
【0118】
刺激後の細胞内サイトカイン産生を、細胞内サイトカイン染色によるフローサイトメトリーにより測定した。Control sgRNA導入CAR-TとCUL5KO CAR-TをそれぞれK562(CD19陰性)およびRaji (CD19陽性)で刺激し、4時間後の細胞内サイトカイン(IFN-γ)を染色した。結果を
図7に示す。CUL5ノックアウトによりサイトカイン産生が亢進することが分かった。
【0119】
試験例4.CUL5ノックアウトの効果の解析2
4名のドナー由来のそれぞれの細胞を用い、GW-gRNA Libraryに代えてCUL5を標的とする2種のgRNA(試験例2)のいずれかの発現カセットを含むレンチウイルスベクターを使用する以外は、
図2のスキームに従って、CAR-T細胞を調製した。
【0120】
Day10のCAR-T細胞をCD3/28 beadsおよびRaji細胞で初回刺激後、4日目の表面形質をフローサイトメトリーにより測定し、エフェクターメモリーT細胞(T
EM:CD45RA(-)CCR7(-))及びセントラルメモリーT細胞(T
CM:CD45RA(-)CCR7(+))の割合を算出した。結果を
図8に示す。CUL5ノックアウトによりエフェクターメモリーT細胞が増加することが分かった。
【0121】
試験例5.CUL5ノックアウトの効果の解析3
GW-gRNA Libraryに代えてCUL5を標的とする2種のgRNA(試験例2)のいずれかの発現カセットを含むレンチウイルスベクターを使用する以外は、
図2のスキームに従って、CAR-T細胞を調製した。
【0122】
NOD-Scid shi common gamma chain knock out mouse (NOG mouse)にホタル・ルシフェラーゼとGFPを恒常的に発現させたRaji細胞 (Raji/Luc細胞)をDay0に5.0x10e5静脈内注射し、Day7に各種T細胞(コントロールgRNAを発現させたCAR-T細胞、CUL5 gRNAを発現させたCAR-T細胞、tEGFRを発現させたT細胞)を1.0x10e6静脈内投与した。その後1週間ごとにルシフェリンを投与して腫瘍細胞の発するluminescenceを撮影した。
【0123】
結果を
図9及び10に示す。CUL5ノックアウトによりCAR-T細胞ではbioluminescent が経時的に低値を示し、生存も有意に良好であった。なお、tEGFR-T, n=6; control CAR-TとCUL5KO CAR-T, n=10, 3人の異なるドナーから作成したT細胞を用いて実験をおこなった。
【0124】
試験例6.Two-in-one vectorのデザイン及び作製1
N末端側から、
抗CD19 scFvドメイン(アミノ酸配列:配列番号1、塩基配列:配列番号9)、IgG4ヒンジ部(アミノ酸配列:配列番号2、塩基配列:配列番号10)、
CD28膜貫通ドメイン(アミノ酸配列:配列番号3、塩基配列:配列番号11)、
CD28細胞内ドメイン(アミノ酸配列:配列番号4、塩基配列:配列番号12)、
CD3ζ細胞内ドメイン(アミノ酸配列:配列番号5、塩基配列:配列番号13)、
5アミノ酸スペーサー、
T2A配列(アミノ酸配列:配列番号6、塩基配列:配列番号14)、
Truncated EGFRドメイン(アミノ酸配列:配列番号7、塩基配列:配列番号15)の順に配置されてなるCAR発現カセット、並びに
CUL5に対するshRNA(塩基配列:配列番号29)の発現カセット
それぞれを、その両末端側に付加した制限酵素認識配列を利用して、レンチウイルスベクター(ベクター名:pGreenPuro_shRNA(EF1))に組込んだ。CAR発現カセットのプロモーターはEF-1αプロモーターであり、shRNA発現カセットのプロモーターはH1プロモーターである。得られたCARコンストラクトの模式図を
図11に示す。 なお、抗CD19 scFvドメイン及びTruncated EGFRドメインの配列には、N末端に付加されたGM-CSFレセプターリーダー配列を含む。
【0125】
試験例7.Two-in-one vectorの効果の解析
方法1
3名のドナー由来のそれぞれの細胞を用い、GW-gRNA Libraryに代えてCUL5を標的とする2種のgRNA(試験例2)のいずれかの発現カセットを含むレンチウイルスベクターを使用する以外は、
図2のスキームに従って、CAR-T細胞を調製した。
【0126】
方法2
一方で、
図2のスキームの一部(刺激開始前のスキーム)を
図12のスキームに変更して、CAR-T細胞を調製した。具体的には、3名の健常ドナーから採血を行い、CD8陽性リンパ球を免疫磁気ビーズ(Myltenii)を用いて分取、そのCD8陽性細胞をCD3/CD28ビーズで刺激し増殖を開始した(Day0)。 Day1にTwo-in-one vector(試験例6)から得たレンチウイルスを遺伝子導入した。Day5にtEGFR を遺伝子導入マーカーとして陽性細胞をbiotin化EGFR抗体およびanti-biotin microbeadsを用いてtEGFR陽性細胞(CD19CAR陽性細胞)を純化した。Day10まで培養継続し、その後は10日ごとに100Gy放射線照射処理したRaji細胞株(CD19+, バーキットリンパ腫由来細胞株)を用いて繰り返し刺激を3回行い、Day40に残った細胞を採取した。
【0127】
方法3
また、方法2のコントロールとして、CUL5に対するshRNAの発現カセットに代えてGFPに対するshRNAの発現カセットを含むベクターを用いる以外は、方法2と同様にしてCAR-T細胞を調製した。
【0128】
上記方法のいずれについても、1x10e6個のCD8陽性細胞からCAR-T細胞の作製を開始した。
【0129】
CAR-T細胞の数をトリパンブルー染色により測定した。Day7におけるCAR-T細胞の数を
図13に示す。なお、Day 10におけるCUL5発現量をウェスタンブロッティングで測定した結果を
図14に示す。また、CAR-T細胞の増殖を
図15に示す。方法2のようにCUL5遺伝子発現抑制ポリヌクレオチドの発現カセット及びキメラ抗原受容体の発現カセットを含むポリヌクレオチドを用いてCUL5ノックダウンCAR-T細胞を作製することにより、CAR-T細胞の作製効率、増殖を大きく向上させることができることが分かった。
【0130】
試験例8.Two-in-one vectorの効果の解析2
試験例7の方法2及び方法3に従ってCAR-T細胞を調製した。
【0131】
NOD-Scid shi common gamma chain knock out mouse (NOG mouse、n=8~10)にホタル・ルシフェラーゼとGFPを恒常的に発現させたRaji細胞 (Raji/Luc細胞)をDay0に2.0x10e6静脈内注射し、Day7に各種T細胞を1.0x10e6静脈内投与した。その後1週間ごとにルシフェリンを投与して腫瘍細胞の発するluminescenceを撮影した。
【0132】
結果を
図16に示す。Two-in-one vectorによりCUL5ノックダウンさせたCAR-T細胞ではbioluminescent が経時的に低値を示した。
【0133】
試験例9.Two-in-one vectorの効果の解析3
試験例7の方法2及び方法3に従ってCAR-T細胞を調製した。
【0134】
NOD-Scid shi common gamma chain knock out mouse (NOG mouse)にホタル・ルシフェラーゼとGFPを恒常的に発現させたRaji細胞 (Raji/Luc細胞)をDay0に2.0x10e6静脈内注射し、Day10に各種T細胞を1.0x10e6静脈内投与した。その後1週間ごとにルシフェリンを投与して腫瘍細胞の発するluminescenceを撮影し、腫瘍体積を測定した。なお、腫瘍体積が1500mm3を超えた場合には安楽死処置した。
【0135】
腫瘍体積の測定結果を
図17に示し、生存率を
図18に示す。Two-in-one vectorによりCUL5ノックダウンさせたCAR-T細胞では、腫瘍増大が顕著に抑制され、さらに生存率も大きく向上した。
【0136】
試験例10.Two-in-one vectorのデザイン及び作製2
抗CD19 scFvドメインに代えて抗Eva1 scFvドメインを採用し、且つ細胞内ドメインとしてCD28細胞内ドメインに代えて4-1BB細胞内ドメイン(アミノ酸配列:配列番号30、塩基配列:配列番号33)或いはCD79a細胞内ドメイン(アミノ酸配列:配列番号31、塩基配列:配列番号34)-CD40細胞内ドメイン(アミノ酸配列:配列番号32、塩基配列:配列番号35)のタンデム連結ドメインを採用する以外は、試験例6と同様にしてレンチウイルスベクターを得た。
【0137】
試験例11.Two-in-one vectorの効果の解析4
試験例10のTwo-in-one vectorを用いる以外は試験例7の方法2及び方法3と同様にして、CAR-T細胞を調製した。
【0138】
NCI-H1975(NCI-H1975-firefly luciferase-GFP、ホタルルシフェレースとGFPを恒常的に発現する細胞)1x10e6をマウスの皮下に注射した。その14日後に0.5x10e5/マウスの各種T細胞(shCUL5-4-1BB-Eva1CAR-T, shGFP-4-1BB-Eva1CAR-T, shCUL5-CD79A/40-Eva1CAR-T, shGFP-CD79A/40-Eva1CAR-T)を静脈内投与した。その後一定期間毎にルシフェリンを投与して腫瘍細胞の発するluminescenceを撮影し、腫瘍体積を測定した。なお、腫瘍体積が2000mm3を超えた場合には安楽死処置した。
【0139】
luminescenceの撮影像を
図19に示し、腫瘍体積の測定結果を
図20に示す。