IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

特開2023-174596経中隔組織穿刺装置、システム、及び方法
<>
  • 特開-経中隔組織穿刺装置、システム、及び方法 図1
  • 特開-経中隔組織穿刺装置、システム、及び方法 図2
  • 特開-経中隔組織穿刺装置、システム、及び方法 図3
  • 特開-経中隔組織穿刺装置、システム、及び方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174596
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】経中隔組織穿刺装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023086013
(22)【出願日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】17/825,073
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ライラ・マージアーノ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK20
4C160KK32
4C160KK36
4C160KK37
(57)【要約】
【課題】組織穿刺システムを提供すること。
【解決手段】組織穿刺システムは、ガイドワイヤとハンドルとを含む。ガイドワイヤは、患者の器官に挿入され、器官の組織を、電源からの電気信号を伝導し、かつガイドワイヤの遠位表面と組織との間に誘導される電流を組織に印加することによって、穿刺するように構成されている。ハンドルは、(i)電源とガイドワイヤの近位表面との間を電気的に接続し、かつ(ii)組織へ遠位表面を移動させるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織穿刺システムであって、
ガイドワイヤであって、患者の器官に挿入され、前記器官の組織を、電源からの電気信号を伝導し、かつ前記ガイドワイヤの遠位表面と前記組織との間に誘導される電流を前記組織に印加することによって、穿刺するように構成されている、ガイドワイヤと、
ハンドルであって、(i)前記電源と前記ガイドワイヤの近位表面との間を電気的に接続し、かつ(ii)前記組織へ前記遠位表面を移動させるように構成されている、ハンドルと、を備える、組織穿刺システム。
【請求項2】
第1の表面及び前記近位表面以外の前記ガイドワイヤの少なくとも一部分が、電気絶縁層でコーティングされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハンドルが、(i)前記ハンドルの軸に沿って延在しており、前記ガイドワイヤの所与の部分を収容し、かつ前記所与の部分を前記ハンドルの外側表面から電気的に絶縁するように構成された内側中空管と、(ii)前記近位表面を、前記ハンドルと前記電源との間を電気的に結合するケーブルに固定するように構成された固定アセンブリと、を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記固定アセンブリが、(i)前記内側中空管の近位端に位置決めされ、かつ前記ケーブルに電気的に接続された制御可能な固定グリップと、(ii)前記制御可能な固定グリップを制御して前記ガイドワイヤの前記近位表面を把持及び解放するように構成された固定ノブと、を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御可能な固定グリップが、前記ケーブルに電気的に接続され、かつ前記内側中空管の壁に対して移動されるように構成された1つ又は2つ以上の導電性プレートを備え、前記固定ノブが、前記1つ又は2つ以上の導電性プレートを、(i)前記1つ又は2つ以上の導電性プレートと前記近位表面との間を結合するための第1の方向、及び(ii)前記1つ又は2つ以上の導電性プレートと前記近位表面との間を結合解除するための第2の方向に移動させるように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気信号が、少なくとも1000ボルトの電圧を含み、前記器官が、心臓を含み、前記組織が、前記心臓の第1の腔と第2の腔との間の中隔を含み、前記遠位表面を前記中隔上に配置し、前記電気信号を印加することに応答して、前記ガイドワイヤが、前記第1の腔と前記第2の腔との間の前記中隔に経中隔穿刺を実行するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記電気信号が、パルス不可逆電気穿孔法信号を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記患者の皮膚に結合された不関電極を備えて、前記遠位表面と、前記患者の身体及び前記皮膚と、前記不関電極とを含む電気回路を形成し、前記電気信号が、単極信号を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記電気信号が、単極パルス信号を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記電気信号が、双極パルス信号を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
経中隔穿刺システムを生成するための方法であって、前記方法は、
(i)第1の表面部分及び近位表面部分と、(ii)前記第1の表面部分と前記近位表面部分との間の、電気絶縁層でコーティングされた追加部分と、を有する導電性ガイドワイヤの少なくとも一部を、ハンドルの内側中空管に挿入することと、
少なくとも遠位表面部分を前記ハンドルの遠位端の外に位置決めすることと、
前記近位表面部分と電源との間を電気的に結合することと、を含み、前記電源は、器官の組織に、前記遠位表面部分と前記組織との間に誘導される電流を印加するための電気信号を生成するように構成されている、方法。
【請求項12】
前記電気絶縁層を前記第1の表面部分及び前記近位表面部分から除去することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ハンドルが、前記ハンドルと前記電源との間を電気的に結合するケーブルに前記近位表面を固定するように構成された固定アセンブリを備え、前記内側中空管が、前記ハンドルの軸に沿って延在しており、前記ガイドワイヤの少なくとも前記近位表面部分を収容し、かつ少なくとも前記近位表面部分を前記ハンドルの外側表面から電気的に絶縁するように構成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記固定アセンブリが、(i)前記内側中空管の近位端に位置決めされ、かつ前記ケーブルに電気的に接続された制御可能な固定グリップと、(ii)前記制御可能な固定グリップを制御して前記ガイドワイヤの前記近位表面を把持及び解放するように構成された固定ノブと、を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記制御可能な固定グリップが、前記ケーブルに電気的に接続され、かつ前記内側中空管の壁に対して移動されるように構成された1つ又は2つ以上の導電性プレートを備え、(i)前記近位表面部分と前記電源との間を電気的に結合することが、前記1つ又は2つ以上の導電性プレートを第1の方向に移動させることを含み、(ii)前記近位表面部分と前記電源との間を電気的に結合解除することが、前記1つ又は2つ以上の導電性プレートを第2の方向に移動させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電源が、少なくとも1000ボルトの電圧を有するパルス不可逆電気穿孔法信号を生成するように構成されている、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療デバイスに関し、具体的には、いくつかの実施例では、ガイドワイヤを使用したパルス高電圧電気信号の印加によるものを含む、組織に経中隔孔を形成するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
身体組織に孔を形成するための様々な技術が公開されている。
【0003】
例えば、米国特許第6,565,562号は、近位端及び遠位端を含むガイドワイヤを記載しており、遠位端は、RF電流が印加されるときに穿孔を作り出し、RF電流が印加されないときに穿孔が作り出されるのを防止するための導電性の露出した先端を含む。
【0004】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と一緒に読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の一実施例による、カテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施例による、図1のガイドワイヤ上に装着されたハンドルの概略断面図である。
図3】本開示の一実施例による、患者の心臓に経中隔孔を形成するための方法を概略的に示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施例による、図2の経中隔穿刺システムを使用する方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
概説
いくつかの医療処置は、組織穿刺を必要とする。例えば、心臓の左心房の組織アブレーションでは、カテーテルが右心房に挿入され、小さな外科的通路が心房中隔に形成され、それを通してカテーテルを左心房に直接送り込むことができる。原理的には、カテーテル(又は別のカテーテル)の鋭利な遠位端を使用して中隔に孔を切断することが可能であるが、そのような切断は、処置を複雑にする場合があり、安全性の問題を引き起こす場合がある。例えば、(i)孔の位置が不正確である(例えば、必要とされる点ではなく組織の最も弱い点に形成される)場合、医師は、計画された経路よりも長くカテーテルをナビゲートしなければならない場合があり、(ii)計画された孔よりも大きい孔は、患者の心臓の安全性を危険にさらす場合がある。
【0007】
以下に記載の本開示の実施例は、取り付け可能なハンドルをガイドワイヤに装着することを使用して組織穿刺を改善するための方法及びシステムを提供し、ハンドルは、ガイドワイヤの先端が、穿孔されることが意図される組織の表面上の事前定義された位置に電流を印加することを可能にするために、電気信号発生器への電気接続を作り出す。
【0008】
いくつかの実施例では、患者の心臓の組織を穿刺するためのシステムは、(i)少なくとも約1000V、本実施例では約1200V~2000Vの電圧を有する電気パルスを印加するように構成された電気信号発生器と、(ii)以下、詳細に記載され、かつ電気信号発生器に(例えば、ケーブルを介して)接続されたガイドワイヤを備えるカテーテルと、(iii)本明細書で不可逆電気穿孔法(irreversible electroporation、IRE)信号と呼ばれる単極パルスフィールドアブレーション信号及び/又は電界をガイドワイヤと不関電極との間に印加することによって誘導される電流を使用して組織穿刺を穿孔するために患者の皮膚(例えば、患者の胴体)に取り付けられたパッチ電極(本明細書では不関電極とも呼ばれる)と、を備える。
【0009】
いくつかの実施例では、カテーテルは、ガイドワイヤを備え、ガイドワイヤは、患者の器官(例えば、心臓)に挿入され、心臓の組織を、電気信号発生器からの単極IRE信号を伝導し、かつガイドワイヤの遠位表面と組織との間に誘導される電流を組織に印加することによって、穿刺するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施例では、カテーテルはハンドルを備え、ハンドルは、(i)電気信号発生器とガイドワイヤの近位表面との間を電気的に接続し、かつ(ii)穿孔されることが意図される組織へガイドワイヤの遠位表面を移動させるように構成されている。
【0011】
いくつかの実施例では、ガイドワイヤは、(i)電気信号発生器に電気的に接続し、かつ(ii)組織に電流を印加するために遠位表面及び近位表面から除去される電気絶縁層でコーティングされている。
【0012】
いくつかの実施例では、ハンドルは、(i)ハンドルの軸(例えば、長手方向軸)に沿って延在しており、ガイドワイヤの所与の部分を収容し、かつ所与の部分をハンドルの外側表面から電気的に絶縁するように構成された内側中空管と、(ii)ガイドワイヤの近位表面を、ハンドルと電気信号発生器との間に電気的に結合されたケーブルに固定するように構成された固定アセンブリと、を備える。
【0013】
いくつかの実施例では、固定アセンブリは、(i)内側中空管の近位端に位置決めされ、かつケーブルに電気的に接続された制御可能な固定グリップと、(ii)制御可能な固定グリップを制御してガイドワイヤの近位表面を把持及び解放するように構成された固定ノブと、を備える。本実施例では、ノブは、長手方向軸を中心に回転可能であり、(i)固定グリップをガイドワイヤの近位表面に締め付けるために第1の方向(例えば、時計回り)に回転されるときに、把持を行い、(ii)第2の反対方向(例えば、反時計回り)に回転されるときに、固定アセンブリからの近位表面の解放を行うように構成されている。本実施例では、制御可能な固定グリップは、ガイドワイヤの近位表面を把持して電気的に接続するために内側中空管の壁に対して移動するように構成された1つ又は2つ以上の導電性プレートを備える。
【0014】
いくつかの実施例では、ガイドワイヤの遠位表面は、非外傷性先端を有するカテーテルのシースに挿入される。医療処置中、医師は、心臓の第1の腔と第2の腔との間(例えば、右心房と左心房との間)の中隔の表面に向かってガイドワイヤを移動させる。続いて、医師は、ガイドワイヤの遠位表面をシースから延出し、遠位表面を、中隔表面上の穿刺されることが意図される位置に、又は中隔の表面に近接して配置する。遠位表面を中隔上に配置し、IRE信号を印加することに応答して、ガイドワイヤは、電流を印加し、右心房と左心房との間の中隔に経中隔穿刺を実行するように構成されている。いくつかの実施例では、ガイドワイヤは、シースの拡張器内に埋め込まれたままであってもよい。拡張器は、中隔に対して配置されてもよく、エネルギーは、ガイドワイヤによって中隔に直接接触することなく、拡張器内の生理食塩水を通して送達されてもよい。
【0015】
開示されるシステム、方法、及び装置は、既知の従来の外傷性針及びRF針又はガイドワイヤと比較して、非熱パルス電流を使用した組織穿刺を可能にし、これは、精度を改善し、組織テンティングの量を低減し、中隔に形成される経中隔孔のサイズを改善し、中隔を穿刺するために必要とされる時間を低減し、全てが、IREアブレーション処置の文脈において適用される実施例において、より少ない交換を伴うより合理化された処置を可能にする。
【0016】
本明細書に開示される特定の実施例は、高電圧パルス電圧(IRE)信号の使用に特に言及するが、本明細書に開示されるハンドル装置は、代替として、RF信号を生成するように構成された電気シグネチャ発生器(RF発生器と称されることもある)からのRF信号の印加によって経中隔穿刺を可能にするように、利用可能なガイドワイヤに装着されてもよいことに留意する。パルス高電圧IRE発生器か、若しくはRF発生器か、又はそれらの組み合わせかの選択は、医師の好み及び/又は経中隔アクセスを必要とする処置の治療段階(例えば、左心房におけるアブレーション)のために選択されたモダリティに依存してもよく、その結果、単一の発生器が、処置の経中隔穿刺及びアブレーション段階の両方に使用され得ることが予想される。
【0017】
システムの説明
図1は、本開示の一実施例による、カテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステム20の概略描写図である。
【0018】
いくつかの実施例では、システム20は、心臓手術を実行するように構成された心臓カテーテル22と、制御コンソール24とを備える。本明細書に記載の実施例では、カテーテル22は、電気解剖学的信号を感知すること、及び/又は心臓26内の組織のアブレーションなど、任意の好適な治療目的及び/又は診断目的で使用され得る。本開示の文脈及び特許請求の範囲では、「アブレーション」という用語は、高周波(radiofrequency、RF)アブレーション処置、又はRFアブレーションとは異なる不可逆電気穿孔法(IRE)処置を指す。IREは、例えば、高電圧印加パルスを使用して組織細胞をアブレーションすることによって不整脈を治療するために使用され得る。細胞破壊は、膜内外電位差が閾値を超えて細胞死及び損傷の形成をもたらす場合に生じる。IREベースのアブレーション処置では、高電圧単極又は双極電気パルスが、アブレーションされるべき組織と接触する1つ又は2つ以上の電極に印加され、心臓26内の標的場所に損傷を形成し、それによって、心臓内の不整脈を治療するようにする。IRE処置の一例は、例えば、米国特許出願公開第2022/0031385号として公開された米国特許出願第16/940,767号に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。カテーテル22の構造及び機能は、以下、詳細に記載される。
【0019】
いくつかの実施例では、コンソール24は、カテーテル22を介して信号を受信し、かつ本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御する、好適なフロントエンド回路及びインターフェース回路を有するプロセッサ33、典型的には汎用コンピュータを備える。コンソール24は、プロセッサ33から心臓26のマップ27などの画像表示項目及び/又はテキスト表示項目を受信して、マップ27に表示するように構成されているユーザディスプレイ35を更に備える。
【0020】
いくつかの実施例では、マップ27は、任意の好適な技術を使用して生成された任意の好適な種類の三次元(three-dimensional、3D)解剖学的マップを備えてもよい。例えば、解剖学的マップは、好適な医療撮像システムを使用することによって生成された解剖学的画像を使用して、又はBiosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)によって製造されているCARTO(商標)システムで利用可能な高速解剖学的マッピング(fast anatomical mapping、FAM)技術を使用して、又は任意の他の好適な技術を使用して、若しくは上記の任意の好適な組み合わせを使用して、生成されてもよい。
【0021】
いくつかの実施例では、コンソール24は、CARTO(商標)の障害及び/又は特定の電極のペーシングの障害の場合に記録するように構成された記録ユニット38を備える。コンソール24は、患者インターフェースユニット(patient interface unit、PIU)44を備え、このPIUは、取得及び処理される場所及び心電図(electrocardiogram、ECG)信号を示す信号を生成し、コンソール24とシステム20の複数のエンティティ(例えば、カテーテル22)との間で信号を交換するように構成されている。
【0022】
ここで、挿入図23を参照する。いくつかの実施例では、アブレーション処置を実行する前に、医師30は、心臓26内の対象とする組織の電気解剖学的(electro-anatomical、EA)マッピングを実行するように、テーブル29上に横たわる患者28の血管系を通って1つ又は2つ以上のカテーテルを挿入する。EAマッピングに基づいて、医師30は、RFアブレーション又はIRE処置を計画する。
【0023】
いくつかの実施例では、カテーテル22は、ガイドワイヤ66と、遠位端アセンブリ40と、を備え、バルーンの表面上に配設された複数のアブレーション電極を有するバルーンカテーテルなどである。この実施例では、医師30は、心臓26の左心房57の表面上の意図された場所でIRE処置を行うことを意図している。臨床的考慮のために、この処置は、(i)患者28の血管系を通した、心臓26の右心房53へのガイドワイヤ66の挿入、(ii)右心房53と左心房57との間の中隔55における孔54(本明細書において経中隔孔とも呼ばれる)を穿刺すること、(iii)ガイドワイヤ66を、孔54を通して左心房57における意図された場所へと通すこと、(iv)バルーンをガイドワイヤ66に沿って左心房57における意図された位置へと移動させること、及び(v)バルーンを意図された組織と接触させて配置し、IRE信号を組織に印加することによって、IRE処置を行うことを必要とすることに留意する。
【0024】
いくつかの実施例では、孔54の穿刺は、ガイドワイヤ66、又は同じカテーテル若しくは右心房53に挿入された別のカテーテルの任意の他のガイドワイヤを使用して実行されてもよい。本実施例では、ガイドワイヤ66は、任意の好適な既製のガイドワイヤを備え、Boston Scientific Corporation(Marlborough,Massachusetts)によって生成されるガイドワイヤのAmplatzファミリーから選択されるガイドワイヤなどである。例えば、Amplatz Super Stiff(商標)ガイドワイヤは、中隔55に孔54を穿刺するために、本明細書に記載及び特許請求の範囲に記載のシステム、装置、及び方法論と併せて、新規方式で使用されてもよい。ガイドワイヤ66の構造及び機能、並びに穿刺プロセスは、以下の図2及び図3において詳細に記載される。他の実施例では、ガイドワイヤ66は、任意の他の好適なタイプのガイドワイヤを備え得る。
【0025】
ここで、再び図1の全体図を参照する。いくつかの実施例では、カテーテル22の近位端は、心臓26の組織から感知電極(図示せず)によって感知された心電図(ECG)信号と、EAマッピングを行うための位置信号(以下で説明する)とをプロセッサ33に転送するために、とりわけPIU44のインターフェース回路(図示せず)に接続される。
【0026】
いくつかの実施例では、PIU44は、電気信号発生器49などの電源に接続され、電源は、PIU44のハウジング内にパッケージングされる。代替的な実施例では、電気信号発生器は、PIU44のハウジングの外部にあってもよく、好適なケーブルを使用してPIU44に電気的に接続されてもよい。
【0027】
いくつかの実施例では、電気信号発生器49は、少なくとも1000V、この実施例では、約1200V~2000Vの電圧を有する単極パルス電気信号を印加するように構成されている。いくつかの実施例では、システム20は、本明細書においてパッチ電極とも呼ばれる不関電極48を備え、この不関電極は、患者28の皮膚(例えば、患者の胴の裏側)に取り付けられ、ケーブル21を介してPIU44に電気的に接続される。便宜的には、好適な電気信号発生器は、IREアブレーション処置を行うために使用されるものと同じであってもよい。これは、治療処置の経中隔アクセス及びアブレーション段階の各々のための別個の電気発生器の必要性を除去する。多くの好適な電気信号発生器のうちの1つが、Biosense Webster Israel Ltd.に譲渡された「Pulse Generator for Irreversible Electroporation」と題する米国特許出願公開第20210161592(A1)号によって開示されている。更に、この実施例では、単極パルス信号が記載されているが、他の実施形態は、特に、例えば、ガイドワイヤ又は針が1つ又は2つ以上の遠位電極対を装備し得る場合、双極パルスを利用し得る。
【0028】
いくつかの実施例では、システム20は、ガイドワイヤ66と不関電極48との間に約1200V、又は1800V、又は2000V(又は任意の他の高電圧)を有する1つ又は2つ以上の単極パルス不可逆電気穿孔法(IRE)信号を印加することによって誘導される電気を使用して、中隔55の組織を穿刺するように構成されている。穿刺構成要素及びプロセスは、以下の図2においてより詳細に記載される。本明細書において使用される場合、高電圧は、少なくとも約1000Vである。
【0029】
本開示の文脈において及び特許請求の範囲において、任意の数値又は数値の範囲について用いられる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。
【0030】
いくつかの実施例では、孔54を形成し、遠位端アセンブリ40を左心房57内の標的場所に挿入した後、医師30は、バルーンのアブレーション電極を標的場所と接触させて配置し、IRE信号又はRFアブレーション信号などの電気信号を標的場所に印加し得る。
【0031】
いくつかの実施例では、システム20は、ガイドワイヤに取り付けられ、電気信号発生器への電気的接続を作り出すように構成された取り付け可能なハンドル32を備えて、ガイドワイヤが、医師30によって、(i)ガイドワイヤ66を右心房53内に誘導し、(ii)中隔55に孔54を生成し、(iii)ガイドワイヤ66を左心房57内でIRE処置を行うための標的場所に誘導し、(iv)バルーンを左心房57の表面上の標的場所に接触させて1つ又は2つ以上のIRE信号を標的場所に印加するために遠位端アセンブリ40を移動させるために使用され得る。ハンドル32の特徴は、以下、図2に詳細に記載される。いくつかの実施例では、ハンドルは、エンドユーザ(例えば、医療専門家)によってガイドワイヤ(本明細書において記載されるような一般的に利用可能なガイドワイヤを含むが、それに限定されない)に装着されて、ガイドワイヤの遠位表面と電気信号発生器との間に電気接続を形成することが可能であるように構成されてもよい。
【0032】
いくつかの実施例では、患者28の血管系及び心臓26内の遠位端アセンブリ40の位置は、磁気位置追跡システムの位置センサ(図示せず)を使用して測定される。本実施例では、コンソール24は、駆動回路41を備えており、これは、テーブル29に横たわっている患者28の外部の既知の位置、例えば、患者の胴体の下に配置された磁場発生装置36を駆動するように構成されている。位置センサは、遠位端に連結されており、磁界発生装置36からの感知された外部磁界に応答して位置信号を発生するように構成されている。位置信号は、位置追跡システムの座標系におけるカテーテル22の遠位端の位置を示す。
【0033】
この位置感知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されている。
【0034】
いくつかの実施例では、位置追跡システムの座標系は、システム20及びマップ27の座標系と位置合わせされており、その結果、プロセッサ33は、解剖学的マップ又はEAマップ(例えば、マップ27)の上方に遠位端アセンブリ40の位置を表示するように構成されている。
【0035】
いくつかの実施例では、プロセッサ33は、典型的には、本明細書に記載の機能を実行するソフトウェアにプログラムされている汎用コンピュータを備える。このソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードしてもよく、その代わりに又は更に、磁気メモリ、光メモリ若しくは電子メモリなどの非一時的有形媒体に提供しかつ/又は格納してもよい。
【0036】
システム20のこの特定の構成は、本開示の実施例によって対処される特定の問題を示し、そのようなシステムの性能を向上させる際のこれらの実施例の応用を実証するために、例として示されている。しかしながら、本開示の実施例は、この特定の種類の例示的なシステムに決して限定されるものではなく、本明細書に記載の原理は、他の種類の医療システムにも同様に適用されてもよい。
【0037】
ハンドルを装着し、ガイドワイヤを介してIRE信号を印加することによって誘導される電流を使用して心臓中隔を穿孔する。
【0038】
図2は、本開示の実施例による、中隔55に孔54を穿孔するために使用されるハンドル32及びガイドワイヤ66の概略断面図である。
【0039】
本開示の文脈及び特許請求の範囲において、少なくともハンドル32、ガイドワイヤ66及び電気信号発生器49を含むアセンブリは、本明細書では、組織穿刺システム又は経中隔穿刺システムとも呼ばれる。
【0040】
いくつかの実施例では、ハンドル32は、ハンドル32の軸59(例えば、長手方向軸)に沿って延在し、ガイドワイヤ66の所与の部分61を収容し、所与の部分61をハンドル32の外側表面63から電気的に絶縁するように構成された内側中空管60を備える。本実施例では、ガイドワイヤ66は、ハンドル32の開口部62を通して内側中空管60に挿入される。
【0041】
いくつかの実施例では、ハンドル32は固定アセンブリ69を備え、固定アセンブリ69は、ガイドワイヤ66の近位表面77を、本明細書でケーブル58と呼ばれる電気ケーブルに固定するように構成され、電気ケーブル58は、カテーテル22の編組に含まれ(したがって、上記の図1には示されていない)、ハンドル32と電気信号発生器49(上記の図1に示す)との間に電気的に結合される。有利なことに、この実施例では、開示された固定アセンブリは、ハンドル32が従来のガイドワイヤ66に着脱可能に取り付けられることを可能にし、経中隔穿刺のために導電性遠位先端99に通電する目的で、ガイドワイヤが電気信号発生器49に電気的に接続されることを可能にする。ハンドル32がガイドワイヤ66を接続する電気信号発生器は、医師によっていずれのモダリティが選択され得るかによらず、処置、例えば、IRE又はRFアブレーションの治療段階の間、治療カテーテルに電気信号を提供するために、同じ発生器49であり得る。代表的には、ガイドワイヤ66は、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド(polyether block amide、PEBA)、又は生体適合性及び電気絶縁性の両方である任意の他の好適なタイプのコーティングフィルムなどであるが、これらに限定されない)電気絶縁フィルム68でコーティングされる。
【0042】
いくつかの実施例では、電気絶縁フィルム68は、ガイドワイヤ66の遠位表面及び近位表面から除去される。より具体的には、ガイドワイヤ66の近位表面77及び遠位表面78は、導電性であり、電気絶縁フィルム68を除去した後、それらの表面は、近位表面77が、本明細書に記載のように、固定アセンブリ69を使用してケーブル58に電気的に結合されるように露出される。ケーブル58は、電気信号発生器49とハンドル32との間で約1200V、又は1800V、又は2000V(又は、標的組織の不可逆的電気穿孔法を誘導するために任意の他の好適なもの、例えば、少なくとも1000V)のIREパルスを伝導するように構成され、したがって、ハンドル32は、医師30が高電圧IREパルスによって通電されることから保護するための電気絶縁カバー56を備える。ハンドル32は、ケーブル58がガイドワイヤ66の近位表面77と接続する開口部74を備える。いくつかの実施例では、供給されたガイドワイヤ66は、遠位表面及び近位表面に絶縁フィルムを有していなくてもよく、したがって、除去ステップが省略されてもよいことに留意する。また、絶縁フィルムが存在する更に他の実施例では、固定アセンブリの伝導性プレートは、導電性鋭利部を備え得る。そのような実施例では、ねじアセンブリ72を使用してハンドルを所定の位置にねじ込むことなどによってハンドルを取り付ける行為によって、鋭利物(図示せず)が絶縁フィルム68を貫通し、ガイドワイヤがケーブル58に接続され、最終的に電気信号発生器49に接続されるようにする。
【0043】
いくつかの実施例では、固定アセンブリ69は、(i)内側中空管60の近位端に位置決めされ、かつケーブル58に電気的に接続された制御可能な固定グリップ70と、(ii)固定グリップ70を制御してガイドワイヤ66の近位表面77を把持及び解放するように構成された固定ノブ52と、を備える。
【0044】
いくつかの実施例では、固定グリップ70は、ケーブル58に電気的に接続され、内側中空管60の壁に対して移動されるように構成された1つ又は2つ以上の導電性プレートを備える。いくつかの実施例では、固定ノブ52は、軸59及び内側中空管60の壁に対してプレートを移動させるように構成されたねじアセンブリ72を備える。
【0045】
いくつかの実施例では、固定ノブ52を第1の方向(例えば、時計回り)に回転させることに応答して、固定グリップ70のプレートは、近位表面77に向かって移動され、近位表面77と結合され(すなわち、把持し)、それによって、ケーブル58と近位表面77との間を電気的に接続する。固定ノブ52を第2の反対方向(例えば、反時計回り)に回転させることに応答して、固定グリップ70のプレートは、近位表面77から離れるように移動され、近位表面77から結合解除され、それによって、ケーブル58と近位表面77との間を電気的に切断する。
【0046】
いくつかの実施例では、ガイドワイヤ66は、患者28の血管系内でその組織を切断することなく移動されるように構成された非外傷性遠位端(図示せず)を有するシース71内に挿入される。上記の図1に記載されるように、医師30は、シース71内の遠位表面78を、中隔55に穿孔されることが意図される場所に向かって移動させ、その後、遠位表面78を延在させ、ガイドワイヤ66の遠位表面78の遠位先端99と不関電極48(上記の図1に示される)との間に単極IRE信号を印加することによって誘導される電流を、意図される場所に印加する。場合によっては、IRE信号の印加は、誘導電流の近傍でプラズマ88を生成してもよい。公知のガイドワイヤの遠位先端99は、概して、電気的であり、したがって、本明細書に説明される方式で構成されるときに、パルス高電圧の印加のための電極としての役割を果たし得る。したがって、本明細書に記載のように構成されるときに、これは、典型的に必要とされる、経中隔穿刺デバイス(従来の鋭利又はRF針ガイドワイヤであるかどうかにかかわらず)を挿入する追加の交換ステップを不要にし得る。
【0047】
いくつかの実施例では、例えばガイドワイヤ66に結合された1つ又は2つ以上の位置センサ(図示せず)からの位置信号に基づいて、プロセッサ33は、遠位表面78及び/又は遠位先端99の位置をマップ27上に表示するように構成される。代替的に、ガイドワイヤ66は、インピーダンスベースの場所感知を使用して表示されてもよい。そのような実施例では、医師30は、遠位表面78を中隔55の表面上の所望の場所に誘導し、ガイドワイヤ66へのIRE信号の印加に応答して誘導される電流が、中隔55における所望の場所で組織の孔54を穿刺する。遠位端アセンブリ40を左心房57に挿入するときに、カテーテル22のあらゆる過剰な移動は、中隔55の孔54のサイズを増加させ得ることに留意する。したがって、バルーンを移動させて左心房57内の標的組織をアブレーションする間、カテーテル22の過剰な移動を低減するために、孔54などの経中隔孔を正確な位置に形成することが重要である。更に、放電される単極パルス高電圧電流は、約1秒未満で中隔55を穿刺することを可能にし、これは、針の鋭い縁を使用して中隔55を切断すること、又はRF針若しくはガイドワイヤによってRF信号を印加することによって中隔55を穿孔することよりも速い。より短い穿刺持続時間は、孔54の質を改善し、穿刺プロセス中に心臓26に引き起こされ得る損傷を低減し得ることに留意する。前述のように、開示される例示的なシステム及び方法は、アブレーション処置を行うために使用されるものと同じ電気信号発生器及びガイドワイヤを利用し得るため、従来の鋭利又はRF針を挿入する別個のステップを要求する他の経中隔穿刺処置と比較して、より少ない交換が必要とされ得る。
【0048】
システム20、ハンドル32、及び遠位端アセンブリ66のこの特定の構成は、本発明の実施例によって対処される特定の問題を例示するために、かつ組織穿刺、特に中隔の穿刺のために構成されているそのようなシステムの性能を向上させる際にこれらの実施例の適用を実証するために、例として示されている。しかしながら、本発明の実施例は、この特定の種類の例示的なシステム又はハンドルに決して限定されるものではなく、本明細書に記載の原理は、他の種類のハンドル、マニピュレータ、及び医療システムに同様に適用され得る。
【0049】
図3は、本開示の実施例による、心臓26の中隔55における孔54のような中隔孔を穿刺するための方法を概略的に例示するフローチャートである。
【0050】
この方法は、不関電極結合ステップ100で始まり、医師30又はシステム20の任意の他のユーザが、上記の図1に記載のように、不関電極48を含むパッチを患者28の皮膚に結合する。
【0051】
ガイドワイヤ挿入ステップ102では、医師30は、カテーテル22のガイドワイヤ66の少なくとも遠位表面78を患者28の血管系内に挿入し、ハンドル32を使用して表面78を心臓26の右心房53内に誘導する。(i)少なくとも表面78がシース71内に挿入されて、表面78を右心房53内に誘導する間、患者28の任意の組織への損傷を防止し、(ii)(近位表面77を含む)ガイドワイヤ66の少なくとも一部がハンドル32の内側中空管60内に挿入され、近位表面77は、上記の図2に詳細に記載のように、制御可能な固定グリップ70及びケーブル58を介して電気信号発生器49に電気的に接続されることに留意する。
【0052】
ガイドワイヤ位置決めステップ104では、医師30は、遠位表面78、より具体的には遠位先端99を、中隔55の組織に穿刺されることが意図された場所に位置決めし、遠位表面78、患者28の身体、及び不関電極48を含む電気回路を形成するように、遠位表面78を延在させて遠位先端99を組織に露出させる。
【0053】
いくつかの実施例では、遠位表面78が中隔55の組織に近接しているか又は接触して配置されているときに1つ又は2つ以上のIRE信号を印加することに応答して、ガイドワイヤ66は、上記の図1及び図2で詳細に記載のように、遠位表面78と組織との間に誘導された電流を組織に印加するように構成されている。プラズマ88は、電流の放電に応答して形成され得る。
【0054】
本方法を終了する穿刺ステップ106では、医師30は、電気信号発生器49を制御するためにプロセッサ33を使用して、1つ又は2つ以上のIRE信号を印加し、遠位表面78と中隔55の組織との間の電流(IRE信号を伝導することによって誘導される)を中隔55に印加することによって、中隔55の表面上の場所で孔54を穿刺する。
【0055】
いくつかの実施例では、中隔55に孔54を形成した後に、医師は、左心房57の標的組織に1つ又は2つ以上のIREパルス信号及び/又はRFアブレーション信号を印加するためのバルーンを有する遠位端アセンブリ40を、孔54を通して左心房57に挿入してもよい。追加的又は代替的に、医師30は、左心房57内で任意の他の好適な医療処置を行うために、孔54を通して左心房57内に任意の他の好適なタイプのカテーテルを挿入してもよい。
【0056】
代替例では、図3の方法は、任意の好適なタイプの医療処置を行うために、患者28又は任意の他の患者の任意の他の器官に適用される任意の他の組織を穿刺するために必要な変更を加えて使用されてもよい。
【0057】
図4は、本開示の一実施例による、ハンドル32及びガイドワイヤ66を含む経中隔穿刺システムを生成するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【0058】
この方法は、ガイドワイヤ66を受容し、ガイドワイヤ66の近位表面77及び遠位表面78から電気絶縁フィルム68を除去するコーティング除去ステップ200から始まる。他の実施例では、ガイドワイヤ66の表面77及び78は、すでに露出されていてもよく(すなわち、電気絶縁フィルム68でコーティングされていなくてもよく)、その結果、ステップ200は、方法から排除されてもよい。
【0059】
ガイドワイヤ挿入ステップ202では、近位表面77を含むガイドワイヤ66の少なくとも一部は、上記の図2に示され記載されたように、ハンドル32の内側中空管60に挿入される。
【0060】
遠位表面位置決めステップ204では、ガイドワイヤ66の少なくとも表面78(及び典型的には追加の部分)は、上記の図2に記載のように、ハンドル32の遠位端において開口部62の外に位置決めされる。
【0061】
本方法を終了する近位表面結合ステップ206では、表面77は、制御可能な固定グリップ70及びケーブル58の導電性プレートを介して電気信号発生器49に電気的に結合される。いくつかの実施例では、電気信号発生器49によって1つ又は2つ以上のIRE信号を生成することに応答して、医師30が遠位表面78を中隔55の表面のような患者28の任意の組織に近接又は接触させて配置するときに、上記の図2及び図3で詳細に記載のように、遠位表面78とそれぞれの組織との間に電流が誘導される。
【0062】
上記のように、医療処置中、医師30は、ガイドワイヤ66上で遠位端アセンブリ40を左心房57内に挿入してもよい。いくつかの実施例では、方法は、遠位端アセンブリ40及び/又はカテーテル22及びシステム20の他の部分に関連する他の構成要素の生成に関連する追加のステップを含んでもよい。
【0063】
本明細書に記載の実施例は、主に、患者の心臓における経中隔孔を穿刺することに対処するが、本明細書に記載の方法及びシステムはまた、患者の任意の他の器官に適用される組織穿刺などの他の用途において使用され得る。
【実施例0064】
経中隔穿刺システム(22)であって
(a)患者の器官(26)に挿入されるように構成されているガイドワイヤ(66)であって、電源(49)からの電気信号を伝導し、かつガイドワイヤ(66)の遠位表面(78)と組織(55)との間に誘導される電流を組織(55)に印加することによって、器官(26)の組織(55)を穿刺するように構成されている、ガイドワイヤ(66)と、
(b)ハンドル(32)であって、(i)電源(49)とガイドワイヤ(66)の近位表面(77)との間を電気的に接続し、(ii)組織(55)に向かって遠位表面(78)を移動させるように構成されている、ハンドル(32)と、を含む、システム。
【実施例0065】
第1の表面及び近位表面以外のガイドワイヤの少なくとも一部分は、電気絶縁層でコーティングされている、実施例1に記載のシステム。
【実施例0066】
ハンドルが、(i)ハンドルの軸に沿って延在しており、ガイドワイヤの所与の部分を収容し、かつ所与の部分をハンドルの外側表面から電気的に絶縁するように構成された内側中空管と、(ii)近位表面を、ハンドルと電源との間を電気的に結合するケーブルに固定するように構成された固定アセンブリと、を含む、実施例1に記載のシステム。
【実施例0067】
固定アセンブリが、(i)内側中空管の近位端に位置決めされ、かつケーブルに電気的に接続された制御可能な固定グリップと、(ii)制御可能な固定グリップを制御してガイドワイヤの近位表面を把持及び解放するように構成された固定ノブと、を含む、実施例3に記載のシステム。
【実施例0068】
制御可能な固定グリップが、ケーブルに電気的に接続され、かつ内側中空管の壁に対して移動されるように構成された1つ又は2つ以上の導電性プレートを含み、固定ノブが、1つ又は2つ以上の導電性プレートを、(i)1つ又は2つ以上の導電性プレートと近位表面との間を結合するための第1の方向、及び(ii)1つ又は2つ以上の導電性プレートと近位表面との間を結合解除するための第2の方向に移動させるように構成されている、実施例4に記載のシステム。
【実施例0069】
電気信号が、少なくとも1000ボルトを有する無線周波数(RF)信号を含み、器官が、心臓を含み、組織が、心臓の第1の腔と第2の腔との間の中隔を含み、遠位表面を中隔上に配置し、電気信号を印加することに応答して、ガイドワイヤが、第1の腔と第2の腔との間の中隔に経中隔穿刺を実行するように構成されている、実施例1~5に記載のシステム。
【実施例0070】
電気信号は、パルス不可逆電気穿孔法信号を含む、実施例6に記載のシステム。
【実施例0071】
患者の皮膚に結合された不関電極を含んで、遠位表面と、患者の身体及び皮膚と、不関電極とを含む電気回路を形成し、電気信号が、単極信号を含む、実施例1~7に記載のシステム。
【実施例0072】
少なくとも、遠位表面を患者に挿入するときに、少なくとも遠位表面を覆って嵌合するように構成されたシースを含む、実施例1~8に記載のシステム。
【実施例0073】
電気信号が、双極パルス信号を含む、実施例6に記載のシステム。
【実施例0074】
方法であって、
ハンドルをガイドワイヤに装着することであって、ハンドルを装着することによって、ガイドワイヤの遠位先端と電気信号発生器との間に電気的接続を作り出す、装着することと、
患者の器官内にガイドワイヤの少なくとも遠位表面を挿入し、かつ器官の組織に、遠位表面と組織との間に誘導される電流を印加することと、
遠位表面を、組織において穿刺されることが意図される場所に位置決めすることと、
電気信号を伝導し、かつ遠位表面と組織との間に電流を印加することによって、場所において組織を穿刺することと、を含む、方法。
【実施例0075】
電気信号が、少なくとも1000ボルトの電圧を有する電気信号を含み、器官が、心臓を含み、組織が、心臓の第1の腔と第2の腔との間の中隔を含み、組織を穿刺することが、第1の腔と第2の腔との間の中隔に経中隔穿刺を形成することを含む、実施例11に記載の方法。
【実施例0076】
RF信号が、パルス不可逆電気穿孔法信号を含む、実施例12に記載の方法。
【実施例0077】
患者の皮膚に不関電極を結合して、遠位表面と、患者の身体及び皮膚と、不関電極とを含む電気回路を形成することを含む、実施例11~13に記載の方法。
【実施例0078】
経中隔穿刺システムを生成するための方法であって、方法は、
(i)第1の表面部分及び近位表面部分と、(ii)第1の表面部分と近位表面部分との間の、電気絶縁層でコーティングされた追加部分と、を有する導電性ガイドワイヤの少なくとも一部を、ハンドルの内側中空管に挿入することと、
少なくとも遠位表面部分をハンドルの遠位端の外に位置決めすることと、
近位表面部分と電源との間を電気的に結合することと、を含み、電源は、器官の組織に、遠位表面部分と組織との間に誘導される電流を印加するための電気信号を生成するように構成されている、方法。
【実施例0079】
電気絶縁層を第1の表面部分及び近位表面部分から除去することを含む、実施例15に記載の方法。
【実施例0080】
ハンドルが、ハンドルと電源との間を電気的に結合するケーブルに近位表面を固定するように構成された固定アセンブリを含み、内側中空管が、ハンドルの軸に沿って延在しており、ガイドワイヤの少なくとも近位表面部分を収容し、かつ少なくとも近位表面部分をハンドルの外側表面から電気的に絶縁するように構成されている、実施例15又は16に記載の方法。
【実施例0081】
固定アセンブリが、(i)内側中空管の近位端に位置決めされ、かつケーブルに電気的に接続された制御可能な固定グリップと、(ii)制御可能な固定グリップを制御してガイドワイヤの近位表面を把持及び解放するように構成された固定ノブと、を備える、実施例17に記載の方法。
【実施例0082】
制御可能な固定グリップが、ケーブルに電気的に接続され、かつ内側中空管の壁に対して移動されるように構成された1つ又は2つ以上の導電性プレートを備え、(i)近位表面部分と電源との間を電気的に結合することが、1つ又は2つ以上の導電性プレートを第1の方向に移動させることを含み、(ii)近位表面部分と電源との間を電気的に結合解除することが、1つ又は2つ以上の導電性プレートを第2の方向に移動させることを含む、実施例18に記載の方法。
【実施例0083】
電源が、少なくとも1000ボルトの電圧を有するパルス不可逆電気穿孔法信号を生成するように構成されている、実施例15~19に記載の方法。
【0084】
上に記載される実施例は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で具体的に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に説明されている様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの双方、並びに前述の説明を一読すると当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び変更例を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0085】
〔実施の態様〕
(1) 組織穿刺システムであって、
ガイドワイヤであって、患者の器官に挿入され、前記器官の組織を、電源からの電気信号を伝導し、かつ前記ガイドワイヤの遠位表面と前記組織との間に誘導される電流を前記組織に印加することによって、穿刺するように構成されている、ガイドワイヤと、
ハンドルであって、(i)前記電源と前記ガイドワイヤの近位表面との間を電気的に接続し、かつ(ii)前記組織へ前記遠位表面を移動させるように構成されている、ハンドルと、を備える、組織穿刺システム。
(2) 第1の表面及び前記近位表面以外の前記ガイドワイヤの少なくとも一部分が、電気絶縁層でコーティングされている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記ハンドルが、(i)前記ハンドルの軸に沿って延在しており、前記ガイドワイヤの所与の部分を収容し、かつ前記所与の部分を前記ハンドルの外側表面から電気的に絶縁するように構成された内側中空管と、(ii)前記近位表面を、前記ハンドルと前記電源との間を電気的に結合するケーブルに固定するように構成された固定アセンブリと、を備える、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記固定アセンブリが、(i)前記内側中空管の近位端に位置決めされ、かつ前記ケーブルに電気的に接続された制御可能な固定グリップと、(ii)前記制御可能な固定グリップを制御して前記ガイドワイヤの前記近位表面を把持及び解放するように構成された固定ノブと、を備える、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記制御可能な固定グリップが、前記ケーブルに電気的に接続され、かつ前記内側中空管の壁に対して移動されるように構成された1つ又は2つ以上の導電性プレートを備え、前記固定ノブが、前記1つ又は2つ以上の導電性プレートを、(i)前記1つ又は2つ以上の導電性プレートと前記近位表面との間を結合するための第1の方向、及び(ii)前記1つ又は2つ以上の導電性プレートと前記近位表面との間を結合解除するための第2の方向に移動させるように構成されている、実施態様4に記載のシステム。
【0086】
(6) 前記電気信号が、少なくとも1000ボルトの電圧を含み、前記器官が、心臓を含み、前記組織が、前記心臓の第1の腔と第2の腔との間の中隔を含み、前記遠位表面を前記中隔上に配置し、前記電気信号を印加することに応答して、前記ガイドワイヤが、前記第1の腔と前記第2の腔との間の前記中隔に経中隔穿刺を実行するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記電気信号が、パルス不可逆電気穿孔法信号を含む、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記患者の皮膚に結合された不関電極を備えて、前記遠位表面と、前記患者の身体及び前記皮膚と、前記不関電極とを含む電気回路を形成し、前記電気信号が、単極信号を含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記電気信号が、単極パルス信号を含む、実施態様6に記載のシステム。
(10) 前記電気信号が、双極パルス信号を含む、実施態様6に記載のシステム。
【0087】
(11) 方法であって、
ハンドルをガイドワイヤに装着することであって、前記ハンドルを前記装着することによって、前記ガイドワイヤの遠位先端と電気信号発生器との間に電気的接続を作り出す、装着することと、
患者の器官に前記ガイドワイヤの少なくとも遠位表面を挿入し、かつ前記器官の組織に、前記遠位表面と前記組織との間に誘導される電流を印加することと、
前記遠位表面を、前記組織において穿刺されることが意図される場所に位置決めすることと、
前記電気信号を伝導し、かつ前記遠位表面と前記組織との間に前記電流を印加することによって、前記場所において前記組織を穿刺することと、を含む、方法。
(12) 前記電気信号が、少なくとも1000ボルトの電圧を有する電気信号を含み、前記器官が、心臓を含み、前記組織が、前記心臓の第1の腔と第2の腔との間の中隔を含み、前記組織を穿刺することが、前記第1の腔と前記第2の腔との間の前記中隔に経中隔穿刺を形成することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記電気信号が、パルス不可逆電気穿孔法信号を含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記患者の皮膚に不関電極を結合して、前記遠位表面と、前記患者の身体及び前記皮膚と、前記不関電極とを含む電気回路を形成することを含む、実施態様11に記載の方法。
(15) 経中隔穿刺システムを生成するための方法であって、前記方法は、
(i)第1の表面部分及び近位表面部分と、(ii)前記第1の表面部分と前記近位表面部分との間の、電気絶縁層でコーティングされた追加部分と、を有する導電性ガイドワイヤの少なくとも一部を、ハンドルの内側中空管に挿入することと、
少なくとも遠位表面部分を前記ハンドルの遠位端の外に位置決めすることと、
前記近位表面部分と電源との間を電気的に結合することと、を含み、前記電源は、器官の組織に、前記遠位表面部分と前記組織との間に誘導される電流を印加するための電気信号を生成するように構成されている、方法。
【0088】
(16) 前記電気絶縁層を前記第1の表面部分及び前記近位表面部分から除去することを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記ハンドルが、前記ハンドルと前記電源との間を電気的に結合するケーブルに前記近位表面を固定するように構成された固定アセンブリを備え、前記内側中空管が、前記ハンドルの軸に沿って延在しており、前記ガイドワイヤの少なくとも前記近位表面部分を収容し、かつ少なくとも前記近位表面部分を前記ハンドルの外側表面から電気的に絶縁するように構成されている、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記固定アセンブリが、(i)前記内側中空管の近位端に位置決めされ、かつ前記ケーブルに電気的に接続された制御可能な固定グリップと、(ii)前記制御可能な固定グリップを制御して前記ガイドワイヤの前記近位表面を把持及び解放するように構成された固定ノブと、を備える、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記制御可能な固定グリップが、前記ケーブルに電気的に接続され、かつ前記内側中空管の壁に対して移動されるように構成された1つ又は2つ以上の導電性プレートを備え、(i)前記近位表面部分と前記電源との間を電気的に結合することが、前記1つ又は2つ以上の導電性プレートを第1の方向に移動させることを含み、(ii)前記近位表面部分と前記電源との間を電気的に結合解除することが、前記1つ又は2つ以上の導電性プレートを第2の方向に移動させることを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記電源が、少なくとも1000ボルトの電圧を有するパルス不可逆電気穿孔法信号を生成するように構成されている、実施態様15に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】