(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174600
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】接着剤用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231130BHJP
C11D 1/82 20060101ALI20231130BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20231130BHJP
C11D 3/18 20060101ALI20231130BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20231130BHJP
C11D 3/28 20060101ALI20231130BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L21/304 647B
C11D1/82
C11D3/43
C11D3/18
C11D3/20
C11D3/28
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086468
(22)【出願日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2022087164
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃平
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003AA02
4H003AA03
4H003AC21
4H003BA12
4H003DA09
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB03
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB20
4H003ED02
4H003ED04
4H003FA04
5F157AA66
5F157AA96
5F157BD02
5F157BF02
5F157BF23
5F157BF32
5F157BF53
5F157BF54
5F157BF72
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一態様において、接着剤の除去性に優れる接着剤用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本開示は、一態様において、ウエハ3に残留する接着剤2を除去するための接着剤用洗浄剤組成物であって、有機溶剤と、界面活性剤と、を含有し、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、有機溶剤の含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、界面活性剤の含有量が0.03質量%以上5質量%以下であるる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤組成物であって、
有機溶剤(成分A)と、界面活性剤(成分B)と、を含有し、
成分Bは、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、
成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、
成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤用洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分Aは、グリコールエーテル、炭化水素及びピロリドン化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の接着剤用洗浄剤組成物。
【請求項3】
グリコールエーテルが、下記式(I)で表される化合物を含む、請求項2に記載の接着剤用洗浄剤組成物。
R-O-(AO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上6以下の炭化水素基を示し、AOは、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)を示し、nはAOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【請求項4】
前記シリコーン系界面活性剤のHLBが、2以上8以下である、請求項1から3のいずれかに記載の接着剤用洗浄剤組成物。
【請求項5】
水を含有しないか、水の含有量が10質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の接着剤用洗浄剤組成物。
【請求項6】
塩基性化合物の含有量が、1質量%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の接着剤用洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記接着剤は、3次元集積回路の製造工程で用いられる接着剤である、請求項1から6のいずれかに記載の接着剤用洗浄剤組成物。
【請求項8】
ウエハに残留する接着剤を除去するための接着剤除去剤であって、
有機溶剤(成分A)と、界面活性剤(成分B)と、を含有し、
成分Bは、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、
成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、
成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤除去剤。
【請求項9】
(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、
(2)ウエハの固定部材との接着面とは反対側の面を研磨する工程と、
(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、
(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、
(5)分離されたウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程と、
を含む半導体基板の製造方法であって、
前記洗浄剤が、有機溶剤(成分A)と、界面活性剤(成分B)と、を含有し、成分Bは、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、洗浄剤組成物である、
半導体基板の製造方法。
【請求項10】
(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、
(2)ウエハの固定部材との接着面とは反対側の面を研磨する工程と、
(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、
(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、
(5)分離されたウエハに残留する接着剤を接着剤除去剤で除去する工程と、
を含む半導体基板の製造方法であって、
前記接着剤除去剤が、有機溶剤(成分A)と、界面活性剤(成分B)と、を含有し、成分Bは、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤除去剤である、
半導体基板の製造方法。
【請求項11】
固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程を含み、
前記洗浄剤が、有機溶剤(成分A)と、界面活性剤(成分B)と、を含有し、成分Bは、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、洗浄剤組成物である、
洗浄方法。
【請求項12】
固定部材に接着剤で固定されたウエハが、230℃以上の温度での加熱処理を経たものである、請求項11に記載の洗浄方法。
【請求項13】
固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を接着剤除去剤で除去する工程を含み、
前記接着剤除去剤が、有機溶剤(成分A)と、界面活性剤(成分B)と、を含有し、成分Bは、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤除去剤である、
接着剤除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤用洗浄剤組成物、並びに、これを用いる半導体基板の製造方法及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が飛躍的に進んでおり、3次元集積回路(3DIC)技術が注目されている。3DIC技術は、ウエハをシリコン貫通電極(TSV)等によって結線しながら多層に積層する技術である。ウエハを多層に積層する際、回路が形成されたウエハの裏面(回路が形成されていない面)を研磨によって薄型化し、さらに裏面に電極形成を行うなどの加工が必要である。
薄型化前のウエハは固定部材(支持体)に接着剤で接着(仮接着)されており、研磨や電極形成等の加工を経た後、ウエハが固定部材から分離される。固定部材から分離されたウエハには接着剤が残留していることが多く、その後の工程に不具合を生じることがある。そのため、ウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄工程が行われている。
【0003】
このような接着剤等の残留物を除去するための組成物が各種開発されている。
例えば、特許文献1には、剥離した半導体回路形成基板または支持基板に付着した接着剤層を洗浄するリワーク溶剤であって、少なくともアミン系溶媒、および特定のグリコールエーテル系溶媒を含有するリワーク溶剤が開示されている。
また、接着剤以外の残留物を除去するための組成物では、例えば、特許文献2には、ドライエッチング残渣物を除去する処理液として、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくとも1種のヒドロキシアリルアミン化合物と、有機塩基性化合物と、アルコール系溶剤と、界面活性剤とを含有する半導体デバイス用の処理液が提案されている。同文献の実施例では、例えばアルコール系溶剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル60質量%、界面活性剤としてセチルトリメチルアンモニウムブロミド0.1質量%を含む処理液が開示されている。
特許文献3には、フォトレジスト除去用ストリッパー組成物として、重量平均分子量95g/mol以上の鎖状アミン化合物、重量平均分子量90g/mol以下の鎖状アミン化合物、環状アミン化合物、炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が窒素に1~2置換されたアミド系化合物、及び、極性有機溶媒を含む、フォトレジスト除去用ストリッパー組成物が提案されている。同文献の実施例では、極性有機溶媒としてジエチレングリコールモノメチルエーテル55.5質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル20.0質量%、界面活性剤としてポリエーテル変形したポリジメチルシロキサン0.01質量%を含むストリッパー除去用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2016/021646号
【特許文献2】WO2019/187868号
【特許文献3】特表2017-527838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元集積回路(3DIC)の製造過程において、固定部材(支持体)に接着剤で接着(仮接着)されたウエハを研磨した後の電極形成等の加工は、150℃以上の高温下で行われることがあり、接着剤が加熱によって変質すると、除去し難しい傾向にある。洗浄時組成物には、このような接着剤に対する除去性(洗浄性)に優れたものが要求される。
しかしながら、特許文献1~3で提案されているような組成物では、接着剤に対する除去性が十分ではない。
【0006】
そこで、本開示は、接着剤の除去性に優れる接着剤用洗浄剤組成物、並びに、これを用いる半導体基板の製造方法及び洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、ウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤組成物であって、有機溶剤(成分A)と界面活性剤(成分B)とを含有し、成分Bはフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤用洗浄剤組成物に関する。
【0008】
本開示は、一態様において、ウエハに残留する接着剤を除去するための接着剤除去剤であって、有機溶剤(成分A)と界面活性剤(成分B)とを含有し、成分Bはフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤除去剤に関する。
【0009】
本開示は、一態様において、(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、(2)ウエハの固定部材との接着面とは反対側の面を研磨する工程と、(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、(5)分離されたウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程と、を含む半導体基板の製造方法であって、前記洗浄剤が、有機溶剤(成分A)と界面活性剤(成分B)とを含有し、成分Bはフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、洗浄剤組成物である、半導体基板の製造方法に関する。
【0010】
本開示は、一態様において、(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、(2)ウエハの固定部材との接着面とは反対側の面を研磨する工程と、(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、(5)分離されたウエハに残留する接着剤を接着剤除去剤で除去する工程と、を含む半導体基板の製造方法であって、前記接着剤除去剤が、有機溶剤(成分A)と界面活性剤(成分B)とを含有し、成分Bはフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤除去剤である、半導体基板の製造方法に関する。
【0011】
本開示は、一態様において、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程を含み、前記洗浄剤が、有機溶剤(成分A)と界面活性剤(成分B)とを含有し、成分Bはフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、洗浄剤組成物である、洗浄方法に関する。
【0012】
本開示は、一態様において、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を接着剤除去剤で除去する工程を含み、前記接着剤除去剤が、有機溶剤(成分A)と界面活性剤(成分B)とを含有し、成分Bはフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤除去剤である、接着剤除去方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、接着剤の除去性に優れる接着剤用洗浄剤組成物、並びに、これを用いる半導体基板の製造方法及び洗浄方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の半導体基板の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本開示の半導体基板の製造方法の一実施形態における各工程を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、有機溶剤及び特定の界面活性剤をそれぞれ所定量含有する洗浄剤組成物を用いることで、接着剤を効率よく除去できるという知見に基づく。
【0016】
本開示は、一態様において、ウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤組成物であって、有機溶剤(成分A)と、界面活性剤(成分B)と、を含有し、成分Bは、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、接着剤用洗浄剤組成物(以下、「本開示の洗浄剤組成物」ともいう)に関する。
【0017】
本開示によれば、接着剤の除去性に優れる洗浄剤組成物を提供できる。そして、本開示の洗浄剤組成物を用いることで、高い収率で高品質の半導体基板を得ることができる。
【0018】
本開示の効果発現の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。
本開示の洗浄剤組成物では、有機溶剤(成分A)がウエハに残留する接着剤内に浸透し、膨潤させることによって接着剤の接着面に対して応力を生じさせて接着剤の剥離を促進すると考えられる。さらに、特定の界面活性剤(成分B)を併用して適切量の有機溶剤(成分A)を接着剤表面に吸着させることで洗浄剤組成物が接着剤内に浸透しやすくなり接着剤の剥離を促進すると考えられる。適切量の有機溶剤(成分A)を接着剤表面に吸着させるという観点で、特定の界面活性剤(成分B)の併用量には適する量が存在すると考えられる。
但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0019】
[有機溶剤(成分A)]
本開示の洗浄剤組成物に含まれる有機溶剤(以下、「成分A」ともいう)としては、例えば、グリコールエーテル(成分A1)、炭化水素(成分A2)及びピロリドン化合物(成分A3)から選ばれる少なくとも1種を含む有機溶剤が挙げられる。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。成分A中のグリコールエーテル(成分A1)、炭化水素(成分A2)及びピロリドン化合物(成分A3)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0020】
<グリコールエーテル(成分A1)>
グリコールエーテル(以下、「成分A1」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、接着剤の除去性向上の観点から、下記式(I)で表される化合物含むことが挙げられる。成分A1中の下記式(I)で表される化合物の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
R-O-(AO)n-H (I)
【0021】
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上6以下の炭化水素基を示し、AOは、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)を示し、nはAOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
上記式(I)において、Rは、接着剤の除去性向上の観点から、フェニル基又は炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基が更に好ましい。AOは、同様の観点から、エチレンオキシ基(EO)が好ましい。nは、同様の観点から、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0022】
上記式(I)で表される化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル等のモノフェニルエーテル;炭素数1以上6以下のアルキル基を有する、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のモノアルキルエーテル;等が挙げられる。これらのなかでも、上記式(I)で表される化合物としては、接着剤の除去性向上の観点から、炭素数1以上6以下のアルキル基を有する、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のモノアルキルエーテルが好ましい。上記式(I)で表される化合物としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルグリコール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
<炭化水素(成分A2)>
炭化水素(以下、「成分A2」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、接着剤の除去性向上の観点から、例えば、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の有機溶剤が挙げられる。脂環式炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン等のシクロアルカンが挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)が挙げられる。
【0024】
成分A2の炭素数は、接着剤の除去性向上の観点から、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、そして、同様の観点から、14以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、9以下が更に好ましい。
成分A2が脂環式炭化水素である場合、成分A2の炭素数は、同様の観点から、5以上が好ましく、そして、14以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。
成分A2が芳香族炭化水素である場合、成分A2の炭素数は、同様の観点から、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、7以上が更に好ましく、そして、14以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。
【0025】
<ピロリドン化合物(成分A3)>
ピロリドン化合物(以下、「成分A3」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、接着剤の除去性向上の観点から、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【0027】
上記式(II)において、接着剤の除去性向上の観点から、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上8以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基又は水酸基であることが好ましく、R1、R2、R3、R4のいずれか一つが炭素数1以上8以下の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1以上6以下の炭化水素基であることが更に好ましく、メチル基、エチル基、ビニル基のいずれかであることが更に好ましい。
【0028】
上記式(II)で表される化合物としては、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロリドン、1-フェニル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-オクチル-2-ピロリドン、3-ヒドロキシプロピル-2-ピロリドン、4-ヒドロキシ-2-ピロリドン、4-フェニル-2-ピロリドン及び5-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。上記式(II)で表される化合物としては、接着剤の除去性向上の観点から、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロリドン、1-フェニル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-オクチル-2-ピロリドン及び5-メチル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン及び1-ビニル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)がさらに好ましい。
【0029】
成分Aとしては、接着剤の除去性向上の観点から、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルグリコール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、シクロヘキサン、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
成分Aは、接着剤の除去性向上の観点から、成分A1単独、又は、成分A1と成分A2との組み合わせが好ましい。
【0030】
本開示の洗浄剤組成物中の成分Aの含有量は、接着剤の除去性向上、洗浄剤組成物としての安定性の観点から、90質量%以上であって、94質量%以上が好ましく、95質量%以上が更に好ましく、そして、接着剤の除去性向上、洗浄剤組成物としての安定性の観点から、99.97質量%以下であって、99.5質量%以下が好ましく、99.3質量%以下がより好ましく、99.1質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物中の成分Aの含有量は、90質量%以上99.97質量%以下であって、90質量%以上99.5質量%以下が好ましく、90質量%以上99.3質量%以下がより好ましく、95質量%以上99.1質量%以下が更に好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0031】
本開示において「洗浄剤組成物中の各成分の含有量」とは、洗浄時、すなわち、洗浄剤組成物の洗浄への使用を開始する時点での各成分の含有量とすることができる。
本開示の洗浄剤組成物中の各成分の含有量は、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物中の各成分の配合量とみなすことができる。
【0032】
[界面活性剤(成分B)]
本開示の洗浄剤組成物に含まれる界面活性剤(以下、「成分B」ともいう)は、一又は複数の実施形態において、フッ素系界面活性剤(成分B1)及びシリコーン系界面活性剤(成分B2)から選ばれる少なくとも1種である。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せもよい。
【0033】
<フッ素系界面活性剤(成分B1)>
フッ素系界面活性剤(以下、「成分B1」)としては、接着剤の除去性向上の観点から、パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用することができる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、AGCセイミケミカル株式会社のサーフロン(登録商標)S661、S647、S651等が挙げられる。
【0034】
<シリコーン系界面活性剤(成分B2)>
シリコーン系界面活性剤(以下、「成分B2」ともいう)としては、接着剤の除去性向上の観点から、ポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンとしては、直鎖型ポリエーテル変性シリコーン、直鎖型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーン、分岐型ポリエーテル変性シリコーン、分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。これらのなかでも、接着剤の除去性向上の観点から、直鎖型ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、例えば、PEG-12ジメチコン等のポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体が挙げられる。
【0035】
成分B2のHLBは、接着剤の除去性向上の観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましく、そして、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。より具体的には、成分BのHLBは、2以上8以下が好ましく、3以上7以下がより好ましく、4以上6以下が更に好ましい。本開示において、界面活性剤のHLBは、グリフィン法により求められる値である。
【0036】
本開示の洗浄剤組成物中の成分Bの含有量は、接着剤の除去性向上の観点から、0.03質量%以上であって、0.075質量%以上が好ましく、0.25質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.75質量%以上が更に好ましく、そして、接着剤の除去性向上、洗浄剤組成物としての安定性の観点から、5質量%以下であって、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物中の成分Bの含有量は、0.03質量%以上5質量%以下であって、0.075質量%以上4質量%以下が好ましく、0.25質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下が更に好ましく、0.75質量%以上2質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0037】
[水(成分C)]
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、水を含有しないか、水の含有量が10質量%以下であることが挙げられる。水(以下、「成分C」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。
【0038】
本開示の洗浄剤組成物が水(成分C)を含有する場合、本開示の洗浄剤組成物中の成分Cの含有量は、成分A、成分B及び後述する任意成分を除いた残余とすることができる。具体的には、本開示の洗浄剤組成物中の成分Cの含有量は、接着剤の除去性向上の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0質量%(すなわち、含まないこと)が更に好ましい。
【0039】
[その他の成分]
本開示の洗浄剤組成物は、前記成分A~B以外に、必要に応じて水(成分C)又はその他の成分をさらに含有することができる。その他の成分としては、通常の洗浄剤に用いられうる成分を挙げることができ、例えば、成分A以外の溶剤、アルカリ剤、アミン、成分B以外の界面活性剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、高分子化合物、可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0040】
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくとも1種のヒドロキシルアミン化合物を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物中のヒドロキシルアミン化合物の含有量は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄時組成物は、一又は複数の実施形態において、塩基性化合物を実質的に含まないことが好ましい。例えば、本開示の洗浄剤組成物中の塩基性化合物の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、重量平均分子量95g/mol以上の鎖状アミン化合物を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物中の重量平均分子量95g/mol以上の鎖状アミン化合物の含有量は、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、重量平均分子量90g/mol以下の鎖状アミン化合物を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物中の重量平均分子量90g/mol以下の鎖状アミン化合物の含有量は、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、環状アミン化合物を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物中の環状アミン化合物の含有量は、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの含有量は、好ましくは70質量%未満、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン及びN-置換エタノールアミンから選ばれる少なくとも1種の溶媒を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物中の前記溶媒の含有量は、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、エッチャントを実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物中のエッチャントの含有量は、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
【0041】
[洗浄剤組成物の製造方法]
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、前記成分A~B及び必要に応じて上述の任意成分(成分C、その他の成分)を公知の方法で配合することにより製造できる。例えば、本開示の洗浄剤組成物は、少なくとも前記成分A~Bを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、少なくとも前記成分A~Bを配合する工程を含む、洗浄剤組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A~B及び必要に応じて上述した任意成分(成分C、その他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の好ましい配合量は、上述した本開示の洗浄剤組成物の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
【0042】
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を除去するために用いることができる。すなわち、本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、接着剤除去剤(以下、「本開示の接着剤除去剤」ともいう)である。
【0043】
[被洗浄物]
本開示の洗浄剤組成物又は本開示の接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、接着剤が付着した基板(ウエハ)から接着剤を除去するために使用される。すなわち、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物又は本開示の接着剤除去剤の、接着剤が付着した基板から接着剤を除去するための使用に関する。
被洗浄物としては、例えば、接着剤が付着した基板(ウエハ)が挙げられる。基板としては、一又は複数の実施形態において、半導体基板が挙げられる。半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ等のウエハが挙げられる。また、基板としては、一又は複数の実施形態において、接合、実装のための部位であるパッド及び/又はランドを有する基板が挙げられる。パッド及びランドの部材としては、例えば、金や銅等の金属が挙げられる。
接着剤が付着した基板(ウエハ)としては、一又は複数の実施形態において、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後のウエハ等が挙げられる。固定部材から分離した後のウエハは、一又は複数の実施形態において、金属パッドを有し、金属パッドに接着剤が付着した基板である。したがって、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物の、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後にウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤としての使用に関する。本開示は、その他の態様において、本開示の接着剤除去剤の、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後にウエハに残留する接着剤を除去するための除去剤としての使用に関する。固定部材に接着剤で固定されたウエハは、一又は複数の実施形態において、230℃以上の温度での加熱処理を経たものである。前記加熱処理は、一又は複数の実施形態において、後述する加工工程における加熱処理が挙げられる。
接着剤が付着した基板(ウエハ)としては、一又は複数の実施形態において、3次元集積回路(3DIC)の製造工程で用いられる接着剤が付着した基板が挙げられる。したがって、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物の、3次元集積回路の製造工程で用いられる接着剤を除去するための洗浄剤としての使用に関する。本開示は、その他の態様において、本開示の接着剤除去剤の、3次元集積回路の製造工程で用いられる接着剤を除去するための除去剤としての使用に関する。
接着剤が付着した基板(ウエハ)は、一又は複数の実施形態において、230℃以上の温度での加熱処理を経たものである。前記加熱処理は、一又は複数の実施形態において、後述する加工工程における加熱処理が挙げられる。
【0044】
[半導体基板の製造方法]
本開示は、一態様において、(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、(2)ウエハの固定部材との接着面とは反対側の面を研磨する工程と、(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、(5)分離されたウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程と、を含む半導体基板の製造方法であって、前記洗浄剤が、有機溶剤(成分A)と界面活性剤(成分B)とを含有し、成分Bはフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、洗浄剤組成物である、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板製造方法」ともいう)に関する。工程(5)で用いる前記洗浄剤は、一又は複数の実施形態において、上述した本開示の洗浄剤組成物である。
【0045】
本開示の半導体基板の製造方法について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本開示の半導体基板の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図2は、本開示の半導体基板の製造方法の一実施形態における各工程を説明するための概略図である。
【0046】
<工程(1):接着工程>
工程(1)は、ウエハ3を固定部材1に接着剤2で接着する工程(接着工程)である(ステップS1)。工程(1)は、一又は複数の実施形態において、ウエハ又は固定部材の表面に接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程(1-1)と、ウエハと固定部材とを接着剤層を介して貼り合わせ、加熱処理して接合する工程(1-2)と、を含む。
【0047】
工程(1)に用いるウエハとしては、例えば、直径100~500mm、厚さ50~2,000μmのシリコンウエハやガラスウエハ等が挙げられる。工程(1)に用いるウエハは、一又は複数の実施形態において、金属パッドを有する基板である。
【0048】
工程(1)に用いる固定部材としては、特に限定されないが、例えば、直径100~500mm、厚さ50~20,000μmのシリコンウエハ、ガラス板等の基板が挙げられる。
【0049】
工程(1)に用いる接着剤としては、基板を固定部材に接合でき、研磨工程及び加工工程に耐えることが可能な耐久性を有し、かつ、分離工程で基板を固定部材から容易に分離できるものであれば特に限定されないが、例えば、3DICの製造工程で用いられる接着剤が挙げられる。3DICの製造工程で用いられる接着剤としては、例えば、ポリシロキサン系、アクリル系、又はメタクリル系の接着剤(接着剤組成物)が挙げられる。具体的には、特開2021-161196号公報に記載された接着剤組成物が挙げられる。
工程(1)で用いる接着剤組成物は、一又は複数の実施形態において、接着剤成分としてポリシロキサン、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルを含むものが挙げられ、さらに白金族金属触媒、剥離剤成分、溶媒等を含むものであってもよい。
工程(1)で用いる接着剤組成物の粘度は、塗布方法、膜厚等に応じて、含有成分の濃度等を適宜変更することで調整できる。
【0050】
工程(1-1)において、接着剤(接着剤組成物)の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法等が挙げられる。
接着剤(接着剤組成物)の塗布層(接着剤層)の膜厚は、例えば、5~500μmが挙げられる。
工程(1-1)は、一又は複数の実施形態において、ウエハの金属パッドを有する面と固定部材とを接着剤で接着することを含む。
【0051】
工程(1-2)において、加熱処理の温度は、例えば、80℃以上が挙げられ、接着剤が過度に硬化するのを抑制する観点から、150℃以下が好ましい。
加熱処理の時間は、例えば、30秒以上が挙げられ、接着剤層やその他の部材の変質を抑制する観点から、10分以下が好ましい。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
加熱処理後の接着剤層の膜厚としては、例えば、5μm以上100μm以下が挙げられる。
【0052】
<工程(2):研磨工程>
工程(2)は、ウエハ3の固定部材1との接着面とは反対側の面(裏面)3aを研磨する工程(研磨工程)である(ステップS2)。
研磨方法としては、例えば、砥粒等による機械研磨、化学機械研磨等の研磨方法が挙げられる。
工程(2)において、研磨後のウエハ(薄型化されたウエハ)の厚さは、200μm以下が好ましく、例えば、50μm~200μmが挙げられる。
【0053】
<工程(3):加工工程>
工程(3)は、ウエハ3の研磨された面(薄型化されたウエハの裏面)3aを加工する工程(加工工程)である(ステップS3)。
工程(3)としては、一又は複数の実施形態において、電極形成工程、金属配線形成工程、保護膜形成工程等が挙げられる。例えば、電極等の形成のための金属スパッタリング、ウェットエッチング、レジスト塗布、パターン形成、レジスト剥離、ドライエッチング、金属メッキ形成、シリコン貫通電極(TSV)形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成などの従来公知の加工工程が挙げられる。
工程(3)において、前記加工は、一又は複数の実施形態において、150℃以上の高温下で行われる。TSV等の電極形成を行う場合、例えば、250℃以上350℃以下の加熱処理が行われることがある。
【0054】
<工程(4):分離工程>
工程(4)は、加工されたウエハ3と固定部材1とを分離する工程(分離工程)である(ステップS4)。
分離方法としては、例えば、溶剤剥離、レーザ剥離、機械的な剥離等が挙げられる。
【0055】
<工程(5):洗浄工程>
工程(5)は、分離されたウエハ3に残留する接着剤(接着剤残渣)2aを洗浄剤で除去する工程(洗浄工程)である(ステップS5)。分離されたウエハは、一又は複数の実施形態において、接着剤が付着した基板(上述した被洗浄物)であり、例えば、金属パッドに接着剤が付着した基板が挙げられる。
工程(5)で用いる洗浄剤としては、上述した本開示の洗浄剤組成物が挙げられる。
接着剤の除去方法としては、例えば、浸漬洗浄が挙げられる。浸漬洗浄の浸漬条件としては、例えば、洗浄剤の温度は、40℃以上70℃以下が好ましく、浸漬時間は、1分以上60分以下が好ましい。洗浄剤に超音波振動が付与されていると好ましく、例えば、25~50kHzが好ましく、基板へのダメージを抑制する観点から、35~45kHzがより好ましい。
洗浄後の基板は、水洗い又はアルコールによるリンスを行い、乾燥させてもよい。
【0056】
工程(5)は、一又は複数の実施形態において、分離されたウエハに残留する接着剤を接着剤除去剤で除去する工程である。工程(5)で用いる接着剤除去剤としては、上述した本開示の接着剤除去剤が挙げられる。
すなわち、本開示の半導体基板の製造方法は、一又は複数の実施形態において、(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、(2)ウエハの固定部材との接着面とは反対側の面を研磨する工程と、(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、(5)分離されたウエハに残留する接着剤を本開示の接着剤除去剤で除去する工程と、を含む半導体基板の製造方法である。
【0057】
[洗浄方法]
本開示は、一態様において、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程(洗浄工程)を含み、前記洗浄剤が、有機溶剤(成分A)と界面活性剤(成分B)とを含有し、成分Bはフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であり、成分Aの含有量が90質量%以上99.97質量%以下であり、成分Bの含有量が0.03質量%以上5質量%以下である、洗浄剤組成物である、洗浄方法(以下、「本開示の洗浄方法」ともいう)に関する。前記洗浄剤は、一又は複数の実施形態において、上述した本開示の洗浄剤組成物である。
本開示の洗浄方法において、接着剤の除去方法は、上述した本開示の半導体基板製造方法における工程(5)の除去方法と同じ方法が挙げられる。
本開示の洗浄方法において、固定部材に接着剤で接着されたウエハは、一又は複数の実施形態において、好ましくは230℃以上、より好ましくは270℃以上の温度での加熱処理を経たものである。230℃以上の温度での加熱処理としては、例えば、回路が形成された基板に、半導体チップなどのデバイス及び別の回路が形成された基板等を、はんだ又は金属微粒子を用いて接合するための加熱処理が挙げられる。加熱処理の工程は、工程(3)の加工工程の後、工程(4)の前で行うことが挙げられる。
本開示の洗浄方法における被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、本開示の半導体基板製造方法における工程(1)~(4)を経た後のウエハが挙げられる。
【0058】
本開示の洗浄方法における洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を接着剤除去剤で除去する工程(除去工程)である。前記除去工程における接着剤除去剤としては、上述した本開示の接着剤除去剤が挙げられる。
すなわち、本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、固定部材に接着剤で接着されたウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を本開示の接着剤除去剤で除去する工程を含む接着剤除去方法である。
【0059】
[キット]
本開示は、一態様において、本開示の洗浄方法及び本開示の半導体基板製造方法のいずれかに使用するためのキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物を製造するためのキットである。本開示のキットによれば、接着剤の除去性に優れる洗浄剤組成物を得ることができる。
【0060】
本開示のキットとしては、一又は複数の実施形態において、成分Aを含有する溶液(第1液)と、成分Bを含有する溶液(第2液)とを、相互に混合されない状態で含み、第1液と第2液とは使用時に混合される、キット(2液型洗浄剤組成物)が挙げられる。第1液と第2液とが混合された後、必要に応じて成分C(水)で希釈されてもよい。第1液及び第2液の各々には、必要に応じて上述した任意成分が含まれていてもよい。
【実施例0061】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
1.実施例1~12及び比較例1~5の洗浄剤組成物の調製
表1に示す各成分を表1に記載の配合量(質量%、有効分)で配合し、それを攪拌して混合することにより、実施例1~12及び比較例1~5の洗浄剤組成物を調製した。
【0063】
実施例1~12及び比較例1~5の洗浄剤組成物の調製には、下記のものを使用した。
(成分A)
BDG(ブチルジグリコール)[日本乳化剤株式会社製、(成分A1)]
シクロヘキサン[富士フィルム和光純薬株式会社製、(成分A2)]
N-メチルピロリドン(NMP)[富士フィルム和光純薬株式会社製、(成分A3)]
ブチルグリコール[日本乳化剤株式会社製、(成分A1)]
エチルジグリコール[富士フィルム和光純薬株式会社製、(成分A1)]
ヘキシルジグリコール[日本乳化剤株式会社製、(成分A1)]
(成分B)
フッ素系界面活性剤1[AGCセイワケミカル株式会社製、サーフロンS-611]
フッ素系界面活性剤2[AGCセイワケミカル株式会社製、サーフロンS-647]
フッ素系界面活性剤3[AGCセイワケミカル株式会社製、サーフロンS-651]
シリコーン系界面活性剤(PEG12-ジメチコン)[ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ダウ・ケミカル株式会社製、DOWSIL SH 3775 M FLUID、HLB=5]
(非成分B)
ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル[花王株式会社製、エマルゲン109P]
(成分C)
水[オルガノ株式会社製純水装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
【0064】
2.実施例1~12及び比較例1~5の洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1~12及び比較例1~5の洗浄剤組成物について下記評価を行った。
【0065】
[洗浄性(接着剤の除去性)の評価]
200mLビーカーに実施例1~12及び比較例1~5の洗浄剤組成物を200mL添加して60℃に加温し、超音波洗浄器(アズワン株式会社製、ASU―20M)で超音波(40kHz、360W)を当てながら、金属パッド上に接着剤残渣が付着したテストピースを60℃の洗浄剤組成物に30分間浸漬させた。そして、テストピースを洗浄剤組成物から取り出し、室温下でエタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、特級)を約20秒間流しかけてすすいだ後、室温で静置乾燥させた。
テストピース上に接着剤の残存有無を目視にて調べた後、光学顕微鏡「デジタルマイクロスコープVHX-2000」(株式会社キーエンス製)を用いて、洗浄試験後のテストピース上に残存する接着剤の有無を20倍に拡大して目視観察し、接着剤が除去された金属パッドの個数を元に下記式により洗浄率を算出し、下記の評価基準に基づき洗浄性(接着剤の除去性)を評価した。結果を表1に示した。
洗浄率=(洗浄前に接着剤が存在したパッド数-洗浄後に接着剤が存在したパッド数)/(洗浄前に接着剤が存在したパッド数)×100
<評価基準>
A:洗浄率90%以上
B:洗浄率80%以上90%未満
C:洗浄率70%以上80%未満
D:洗浄率70%未満
なお、テストピースには、金属パッドを有し、金属パッド上に接着剤が存在するテストピースを用いた。テストピースは15mm×15mmのサイズで、ピッチ900μmで並ぶ直径450μmの金属パッドの全面に接着剤(接着剤層)が存在している。具体的には直径450μmの金でできた金属パッドが、間隔450μmで、格子点状に配置されている。接着剤には、アクリル系接着剤を用いた。接着剤層は、金属パッドの全面に接着剤を塗布後、260℃20分間の加熱処理することで形成されたものである。加熱処理後の接着剤層の膜厚は50μmである。
【0066】
[Al電極ダメージの評価]
100mLビーカーに実施例1~12及び比較例1~5の洗浄剤組成物を100mL添加して60℃に加温し、超音波洗浄器(アズワン株式会社製、ASU―20M)で超音波(40kHz、360W)を当てながら、テストピースを60℃の洗浄剤組成物に60分間浸漬させる。そして、テストピースを洗浄剤組成物から取り出し、室温下でエタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、特級)を約20秒間流しかけてすすいだ後、室温で静置乾燥させる。
光学顕微鏡「デジタルマイクロスコープVHX-2000」(株式会社キーエンス製)を用いて、洗浄試験後のテストピースを100倍に拡大して目視で確認し、下記の評価基準に基づきAl電極へのダメージ性を評価する。結果を表1に示した。
なお、テストピースは、15mm×15mmのサイズで、シリコンウエハ上に3mm×2.5mmのサイズのAl電極を隙間なく有している。
<評価基準>
A:電極に変色は見られない
B:電極に変色は見られないが、光沢がわずかに減少
C:電極に変色は見られないが、光沢が減少
D:電極に変色が見られる
【0067】
【0068】
表1に示すとおり、実施例1~12の洗浄剤組成物は、成分Bを含まない比較例1、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(非成分B)を用いた比較例2、成分Bの含有量が0.03質量%未満の比較例3、成分Aの含有量が90質量%未満の比較例4~5に比べて、接着剤の除去性に優れていることがわかった。また、実施例1~12の洗浄剤組成物は、Al電極へのダメージを抑制できていることもわかった。