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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174603
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】疑わしい制御バルブ性能検出
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G05B23/02 301Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】46
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086500
(22)【出願日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】17/824,152
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512132022
【氏名又は名称】フィッシャー-ローズマウント システムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、シュー
(72)【発明者】
【氏名】ビール、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ニクソン、マーク ジェイ.
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB02
3C223FF04
3C223FF06
3C223FF13
3C223FF24
3C223FF42
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】プロセスプラント内の絞り制御バルブ(本明細書では「バルブ」とも呼ばれる)の疑わしい性能を検出するための技法が本明細書で説明される。
【解決手段】N個の期間の各々について、コンピューティングデバイスは、バルブに関連するプロセスパラメータについてのプロセスパラメータ値を決定及び分析して、期間についてのバルブの状態を判定する。コンピューティングデバイスは、N個の期間にわたるバルブの状態を比較して、N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたってバルブが良好に動作しているか否かを判定する。バルブがN個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたって良好に動作していないと判定したことに応答して、コンピューティングデバイスは、バルブが不十分に動作している疑いがあると判定し、ユーザに表示するために、疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェースに提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスプラント内の疑わしいバルブを検出するための方法であって、前記方法は、
N個の期間の各々について、
1つ以上のプロセッサによって、前記期間中のバルブに関連する1つ以上のプロセスパラメータの1つ以上のプロセスパラメータ値を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、前記期間の前記バルブの状態を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記N個の期間にわたる前記バルブの状態を比較して、前記N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたって前記バルブが良好に動作しているか否かを判定することと、
前記バルブが前記N個の期間の少なくとも前記サブセットの少なくとも前記閾値部分にわたって良好に動作していないと決定したことに応答して、前記バルブが疑わしいバルブであると決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、ユーザに表示するために前記疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェースに提供することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上のプロセスパラメータは、バルブ開度、コントローラ出力、設定点、プロセス利得、又はプロセス変数のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定することは、
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、不感帯値を含む前記バルブについての1つ以上の性能メトリックを決定することと、
前記不感帯値を閾値不感帯パーセンテージと比較することと、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きいと判定することに応答して、前記期間の前記バルブの疑わしい状態を決定することと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の性能メトリックは、コントローラ出力の変化及びバルブ開度の変化を更に含み、前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定することは、
前記期間にわたる前記コントローラ出力の変化を前記バルブ開度の変化と比較することと、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きく、前記コントローラ出力の変化が前記バルブ開度の変化を超えると決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの前記疑わしい状態を決定することと、を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きくない、又は前記コントローラ出力の変化が前記バルブ開度の変化を超えないと決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの良好な動作状態を決定することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセスプラントを実行するプロセスの動作モードを決定することと、
第1のインスタンスにおいて、
前記動作モードが手動であると決定したことに応答して、前記不感帯値を前記閾値不感帯パーセンテージと比較して、前記バルブの状態を決定することと、
第2のインスタンスにおいて、
前記動作モードが自動であると決定したことに応答して、前記不感帯値を前記閾値不感帯パーセンテージと比較し、前記コントローラ出力の変化を前記バルブ開度の変化と比較して、前記バルブの状態を決定することと、を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセスのプロセスタイプを決定することと、
前記期間の設定点値の変化を決定することと、
前記プロセスタイプが統合プロセスであると決定したことに応答して、前記設定点値の前記変化を設定点の第1の閾値変化と比較することと、
前記設定点値の前記変化が設定点の前記第1の閾値変化を超えると決定したことに応答して、前記バルブの設定点変化状態を決定することと、を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセスタイプが統合プロセスでないと決定したことに応答して、前記設定点値の前記変化を設定点の第2の閾値変化と比較することと、
前記設定点値の前記変化が設定点の前記第2の閾値変化を超えると決定したことに応答して、前記バルブの前記設定点変化状態を決定することと、を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プロセスの前記動作モードは、前記プロセスタイプが前記統合プロセスであるとき、前記設定点値の前記変化が前記第1の閾値を超えないこと、又は前記プロセスタイプが前記統合プロセスでないとき、前記設定点値の前記変化が前記第2の閾値を超えないことの決定に応答して決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定することは、
前記期間のコントローラ出力の変化を決定することと、
前記期間のプロセス変数値の変化を決定することと、
前記期間のプロセス利得値を決定することと、
前記コントローラ出力の前記変化と前記プロセス利得値との積を前記プロセス変数値の前記変化と比較することと、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きく、前記コントローラ出力の変化と前記プロセス利得値との積が前記プロセス変数値の前記変化を超えると決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの前記疑わしい状態を決定することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きくなく、又は前記コントローラ出力の変化と前記プロセス利得値との積が前記プロセス変数値の前記変化を超えないと決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの良好な動作状態を決定すること、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセスプラントを実行するプロセスの動作モードを決定することと、
第1のインスタンスにおいて、
前記動作モードが手動であると決定したことに応答して、前記不感帯値を前記閾値不感帯パーセンテージと比較して、前記バルブの状態を決定することと、
第2のインスタンスにおいて、
前記動作モードが自動であると決定することに応答して、前記不感帯値を前記閾値不感帯パーセンテージと比較し、前記コントローラ出力の変化と前記プロセス利得値との積を前記プロセス変数の前記変化と比較して、前記バルブの状態を決定することと、を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセスのプロセスタイプを決定することと、
前記期間の設定点値の変化を決定することと、
前記プロセスタイプが統合プロセスであると決定したことに応答して、前記設定点値の前記変化を設定点の第1の閾値変化と比較することと、
前記設定点値の前記変化が設定点の前記第1の閾値変化を超えると決定したことに応答して、前記バルブの設定点変化状態を決定することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プロセスタイプが統合プロセスでないと決定したことに応答して、前記設定点値の前記変化を設定点の第2の閾値変化と比較することと、
前記設定点値の前記変化が設定点の前記第2の閾値変化を超えると決定したことに応答して、前記バルブの前記設定点変化状態を決定することと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセスの前記動作モードは、前記プロセスタイプが前記統合プロセスであるとき、前記設定点値の前記変化が前記第1の閾値を超えないこと、又は前記プロセスタイプが前記統合プロセスでないとき、前記設定点値の前記変化が前記第2の閾値を超えないことの決定に応答して決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記疑わしいバルブを検出したことに応答して、前記プロセスプラント内で実行するプロセスの動作をシャットダウンすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
1つ以上のプロセスパラメータ値を分析することは、
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、不感帯値、コントローラ出力の変化、又はバルブ開度の変化のうちの少なくとも1つを、楕円当てはめアルゴリズムを使用して決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
楕円当てはめアルゴリズムを使用して、前記不感帯値、前記コントローラ出力の変化、又は前記バルブ開度の変化のうちの少なくとも1つを決定することは、
コントローラ出力値の関数としてバルブ開度値のグラフをプロットすることと、
楕円を前記グラフに当てはめることと、
前記楕円の1つ以上の特性に基づいて、前記不感帯値、前記コントローラ出力の変化、又は前記バルブ開度の変化のうちの少なくとも1つを決定することと、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記楕円の前記1つ以上の特性は、前記楕円の長軸の長さ、前記楕円の短軸の長さ、及び前記楕円の回転角を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1つ以上のプロセスパラメータ値を分析することは、
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、不感帯値、コントローラ出力の変化、又はプロセス変数値の変化のうちの少なくとも1つを、楕円当てはめアルゴリズムを使用して決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
楕円当てはめアルゴリズムを使用して、前記不感帯値、前記コントローラ出力の変化、又は前記プロセス変数値の前記変化のうちの少なくとも1つを決定することは、
コントローラ出力値の関数としてプロセス変数値のグラフをプロットすることと、
楕円を前記グラフに当てはめることと、
前記楕円の1つ以上の特性に基づいて、前記不感帯値、前記コントローラ出力の変化、又は前記プロセス変数値の前記変化のうちの少なくとも1つを決定することと、を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記楕円の前記1つ以上の特性は、前記楕円の長軸の長さ、前記楕円の短軸の長さ、及び前記楕円の回転角を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
プロセスプラント内の疑わしいバルブを検出するためのコンピューティングデバイスであって、前記コンピューティングデバイスは、
1つ以上のプロセッサ、及び
前記1つ以上のプロセッサに連結され、内部に命令を記憶する非一時的コンピュータ可読メモリを備え、前記命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記コンピューティングデバイスに、
N個の期間の各々について、
前記期間中のバルブに関連する1つ以上のプロセスパラメータの1つ以上のプロセスパラメータ値を決定させ、
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、前記期間の間の前記バルブの状態を決定させ、
前記N個の期間にわたる前記バルブの状態を比較して、前記N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたって前記バルブが良好に動作しているか否かを判定させ、
前記バルブが前記N個の期間の少なくとも前記サブセットの少なくとも前記閾値部分にわたって良好に動作していないと判定したことに応答して、前記バルブが疑わしいバルブであると決定させ、
ユーザに表示するために前記疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェースに提供させる、コンピューティングデバイス。
【請求項24】
前記1つ以上のプロセスパラメータは、バルブ開度、コントローラ出力、設定点、プロセス利得、又はプロセス変数のうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項25】
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定するために、前記命令は、前記コンピューティングデバイスに、
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、不感帯値を含む前記バルブについての1つ以上の性能メトリックを決定させ、
前記不感帯値を閾値不感帯パーセンテージと比較させ、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きいと判定することに応答して、前記期間の前記バルブの疑わしい状態を決定させる、請求項24に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項26】
前記1つ以上の性能メトリックは、コントローラ出力の変化及びバルブ開度の変化を更に含み、前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定するために、前記命令は、前記コンピューティングデバイスに更に、
前記期間にわたる前記コントローラ出力の変化を前記バルブ開度の変化と比較させ、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きく、前記コントローラ出力の変化が前記バルブ開度の変化を超えると決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの前記疑わしい状態を決定させる、請求項25に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項27】
前記命令は更に、前記コンピューティングデバイスに、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きくない、又は前記コントローラ出力の変化が前記バルブ開度の変化を超えないと決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの良好な動作状態を決定させる、請求項26に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項28】
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定するために、前記命令は更に、前記コンピューティングデバイスに、
前記期間のコントローラ出力の変化を決定させ、
前記期間のプロセス変数値の変化を決定させ、
前記期間のプロセス利得値を決定させ、
前記コントローラ出力の前記変化と前記プロセス利得値との積を前記プロセス変数値の前記変化と比較させ、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きく、前記コントローラ出力の変化と前記プロセス利得値との積が前記プロセス変数値の前記変化を超えると決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの前記疑わしい状態を決定させる、請求項25に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項29】
前記命令は更に、前記コンピューティングデバイスに、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きくなく、又は前記コントローラ出力の変化と前記プロセス利得値との積が前記プロセス変数値の前記変化を超えないと決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの良好な動作状態を決定させる、請求項28に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項30】
プロセス制御システムであって、
バルブを制御するように構成されたコントローラと、
プロセスプラント内で実行されるプロセスプラントエンティティの動作を制御するように構成された前記バルブと、
コンピューティングデバイスであって、
1つ以上のプロセッサ、及び
前記1つ以上のプロセッサに連結され、内部に命令を記憶する非一時的コンピュータ可読メモリを含む、コンピューティングデバイスと、を備え、前記命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記コンピューティングデバイスに、
N個の期間の各々について、
前記期間中の前記バルブに関連する1つ以上のプロセスパラメータについての1つ以上のプロセスパラメータ値を決定させ、前記1つ以上のプロセスパラメータは、前記コントローラからの出力、バルブ開度、前記プロセスプラントエンティティについてのプロセス変数、前記プロセス変数と前記コントローラ出力との間のプロセス利得、又は不感帯のうちの少なくとも1つを含み、
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、前記期間の間の前記バルブの状態を決定させ、
前記N個の期間にわたる前記バルブの状態を比較して、前記N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたって前記バルブが良好に動作しているか否かを判定させ、
前記バルブが前記N個の期間の少なくとも前記サブセットの少なくとも前記閾値部分にわたって良好に動作していないと判定したことに応答して、前記バルブが疑わしいバルブであると決定させ、
ユーザに表示するために前記疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェースに提供させる、プロセス制御システム。
【請求項31】
前記1つ以上のプロセスパラメータは、バルブ開度、コントローラ出力、設定点、プロセス利得、又はプロセス変数のうちの少なくとも1つを含む、請求項30に記載のプロセス制御システム。
【請求項32】
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定するために、前記命令は、前記コンピューティングデバイスに、
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、不感帯値を含む前記バルブについての1つ以上の性能メトリックを決定させ、
前記不感帯値を閾値不感帯パーセンテージと比較させ、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きいと判定することに応答して、前記期間の前記バルブの疑わしい状態を決定させる、請求項31に記載のプロセス制御システム。
【請求項33】
前記1つ以上の性能メトリックは、コントローラ出力の変化及びバルブ開度の変化を更に含み、前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定するために、前記命令は、前記コンピューティングデバイスに更に、
前記期間にわたる前記コントローラ出力の変化を前記バルブ開度の変化と比較させ、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きく、前記コントローラ出力の変化が前記バルブ開度の変化を超えると決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの前記疑わしい状態を決定させる、請求項32に記載のプロセス制御システム。
【請求項34】
前記命令は更に、前記コンピューティングデバイスに、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きくない、又は前記コントローラ出力の変化が前記バルブ開度の変化を超えないと決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの良好な動作状態を決定させる、請求項33に記載のプロセス制御システム。
【請求項35】
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して前記バルブの状態を決定するために、前記命令は更に、前記コンピューティングデバイスに、
前記期間のコントローラ出力の変化を決定させ、
前記期間のプロセス変数値の変化を決定させ、
前記期間のプロセス利得値を決定させ、
前記コントローラ出力の前記変化と前記プロセス利得値との積を前記プロセス変数値の前記変化と比較させ、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きく、前記コントローラ出力の変化と前記プロセス利得値との積が前記プロセス変数値の前記変化を超えると決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの前記疑わしい状態を決定させる、請求項32に記載のプロセス制御システム。
【請求項36】
前記命令は更に、前記コンピューティングデバイスに、
前記不感帯値が前記閾値不感帯パーセンテージよりも大きくなく、又は前記コントローラ出力の変化と前記プロセス利得値との積が前記プロセス変数値の前記変化を超えないと決定したことに応答して、前記期間の前記バルブの良好な動作状態を決定させる、請求項35に記載のプロセス制御システム。
【請求項37】
移動時間窓を使用して疑わしいバルブ検出における誤警報確率を低減するための方法であって、前記方法は、
1つ以上のプロセッサによって、N個の期間の各々についてプロセスプラント内のバルブの状態を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記バルブが良好に動作していることを前記バルブの状態が示す前記N個の期間の少なくともサブセットの割合を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記割合が閾値割合未満であると判定したことに応答して、ユーザに表示するために、前記バルブが疑わしいバルブであるというインジケーションをユーザインターフェースに提供することと、を含む、方法。
【請求項38】
前記バルブの前記状態を決定することは、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記N個の期間の各々の間の前記バルブに関連する1つ以上のプロセスパラメータの1つ以上のプロセスパラメータ値を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、各期間の前記バルブの前記状態を決定することと、を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上のプロセスパラメータは、バルブ開度、コントローラ出力、設定点、プロセス利得、又はプロセス変数のうちの少なくとも1つを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
1つ以上のプロセスパラメータ値を分析することは、
前記1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、不感帯値、コントローラ出力の変化、又はバルブ開度の変化のうちの少なくとも1つを、楕円当てはめアルゴリズムを使用して決定することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
楕円当てはめアルゴリズムを使用して、前記不感帯値、前記コントローラ出力の変化、又は前記バルブ開度の変化のうちの少なくとも1つを決定することは、
コントローラ出力値の関数としてバルブ開度値のグラフをプロットすることと、
楕円を前記グラフに当てはめることと、
前記楕円の1つ以上の特性に基づいて、前記不感帯値、前記コントローラ出力の変化、又は前記バルブ開度の変化のうちの少なくとも1つを決定することと、を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
プロセスプラント内の疑わしいバルブを検出するための方法であって、前記方法は、
1つ以上のプロセッサによって、バルブに関連する1つ以上の動的プロセスパラメータに対する1つ以上の動的プロセスパラメータ値を決定することであって、前記1つ以上の動的プロセスパラメータは、時定数、プロセス利得、不感時間のうちの少なくとも1つに基づいて決定される動的コントローラ出力を含む、ことと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上の動的プロセスパラメータ値を分析して、前記バルブの状態を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記バルブの前記状態に従って、前記バルブが疑わしいバルブであるというインジケーションを、ユーザに表示するためにユーザインターフェースに提供することと、を含む、方法。
【請求項43】
前記1つ以上のプロセッサによって、N個の期間の各々について前記バルブの前記状態を決定することと、
前記バルブが疑わしいバルブであるというインジケーションを提供することは、前記N個の期間の前記バルブの状態に基づいて、前記バルブが前記N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたって良好に動作していないと判定したことに応答して、前記インジケーションを提供することと、を更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記1つ以上の動的プロセスパラメータ値を分析することは、
前記1つ以上の動的プロセスパラメータ値を分析して、不感帯値、コントローラ出力の変化、又はプロセス変数値の変化のうちの少なくとも1つを、楕円当てはめアルゴリズムを使用して決定することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
楕円当てはめアルゴリズムを使用して、前記不感帯値、前記コントローラ出力の変化、又は前記プロセス変数値の前記変化のうちの少なくとも1つを決定することは、
動的コントローラ出力値の関数としてプロセス変数値のグラフをプロットすることと、
楕円を前記グラフに当てはめることと、
前記楕円の1つ以上の特性に基づいて、前記不感帯値、前記コントローラ出力の変化、又は前記プロセス変数値の前記変化のうちの少なくとも1つを決定することと、を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記楕円の前記1つ以上の特性は、前記楕円の長軸の長さ、前記楕円の短軸の長さ、及び前記楕円の回転角を含む、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロセス制御システムに関し、より詳細には、プロセス制御システム内の絞り制御バルブ(本明細書では「バルブ」とも呼ばれる)の疑わしい性能を検出するための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、石油、医薬品、紙製品処理、工業、又は他のプロセスプラントにおいて使用されるもの等の分散型プロセス制御システムは、典型的には、アナログバス、デジタルバス、又はアナログ/デジタル連結バスを介して、あるいは無線通信リンク又はネットワークを介して、1つ以上のフィールドデバイスと通信可能に連結される、1つ以上のプロセスコントローラを含む。例えば、バルブ、バルブポジショナ、スイッチ、及びトランスミッタ(例えば、温度、圧力、レベル、及び流速センサ)であり得るフィールドデバイスは、プロセス環境内に配置され、概して、バルブの位置の調整、圧力、温度等のプロセスパラメータの測定等の物理的機能又はプロセス制御機能を行って、プロセスプラント又はシステム内で実行中の1つ以上のプロセスを制御する。周知のFieldbusプロトコルに準拠するフィールドデバイス等のスマートフィールドデバイスはまた、制御計算、アラーム機能、及びコントローラ内で一般に実装される他の制御機能も実行し得る。プロセスコントローラは、これもまた典型的にはプラント環境内に位置付けられるが、フィールドデバイスによって行われるプロセス測定を指示する信号及び/又はフィールドデバイスに関する他の情報を受信し、例えば、プロセス制御判断を行い、受信した情報に基づき制御信号を生成し、HART(登録商標)、WirelessHART(登録商標)、及びFOUNDATION(登録商標)Fieldbusフィールドデバイス等の、フィールドデバイスで実行される制御モジュール又はブロックと連携する、異なる制御モジュールを実行するコントローラアプリケーションを実行する。コントローラの制御モジュールは、通信線又はリンクを通じて、制御信号をフィールドデバイスに送信し、それによって、プロセスプラント又はシステムの少なくとも一部の動作を制御する。
【0003】
フィールドデバイス及びコントローラからの情報は、制御室若しくはより厳しいプラント環境から離れた他の場所に典型的に配置される、オペレータワークステーション、パーソナルコンピュータ若しくはコンピューティングデバイス、データヒストリアン、レポートジェネレータ、集中データベース、又は他の集中管理コンピューティングデバイス等の1つ以上の他のハードウェアデバイスに対して、通常、データハイウェイを通じて利用可能にされる。これらのハードウェアデバイスの各々は、典型的には、プロセスプラントにわたって、又はプロセスプラントの一部分にわたって集中化される。これらのハードウェアデバイスは、例えば、オペレータが、プロセス制御ルーチンの設定の変更、コントローラ若しくはフィールドデバイス内の制御モジュールの動作の修正、プロセスの現在の状態の閲覧、フィールドデバイス及びコントローラによって生成されたアラームの閲覧、担当者の訓練若しくはプロセス制御ソフトウェアの試験を目的としたプロセスの動作のシミュレーション、構成データベースの保守及び更新等の、プロセスの制御及び/又はプロセスプラントの動作に関する機能を行うことを可能にし得るアプリケーションを実行する。ハードウェアデバイス、コントローラ、及びフィールドデバイスにより利用されるデータハイウェイは、有線通信パス、無線通信パス、又は有線及び無線通信パスの組み合わせを含むことができる。
【0004】
例として、Emerson Automation Solutionsによって販売されている、DeltaV(商標)制御システムは、プロセスプラント内の多様な場所に配置された異なるデバイス内に記憶され、それらの異なるデバイスによって実行される複数のアプリケーションを含む。1つ以上のワークステーション又はコンピューティングデバイス内に備わる構成アプリケーションは、ユーザによる、プロセス制御モジュールの作成又は変更、及びデータハイウェイを経由した、これらのプロセス制御モジュールの、専用分散型コントローラへのダウンロードを可能にする。典型的には、これらの制御モジュールは、通信可能に相互接続された機能ブロックで構成され、これらの機能ブロックは、それに対する入力に基づき制御スキーム内で機能を実行し、出力を制御スキーム内の他の機能ブロックに提供するオブジェクト指向プログラミングプロトコル内のオブジェクトである。また、構成アプリケーションは、データをオペレータに対して表示するため、かつオペレータによるプロセス制御ルーチン内の設定点等の設定の変更を可能にするために閲覧アプリケーションが使用するオペレータインターフェースを、構成設計者が作成又は変更することを可能にし得る。各専用コントローラ、及びいくつかの場合においては、1つ以上のフィールドデバイスは、実際のプロセス制御機能を実装するために、それらに割り当てられてダウンロードされた制御モジュールを実行するそれぞれのコントローラアプリケーションを記憶及び実行する。閲覧アプリケーションは、1つ以上のオペレータワークステーション(又はオペレータワークステーション及びデータハイウェイと通信可能に接続された1つ以上のリモートコンピューティングデバイス)上で実行され得、この閲覧アプリケーションは、コントローラアプリケーションからデータハイウェイを経由してデータを受信し、ユーザインターフェースを使用してこのデータをプロセス制御システム設計者、オペレータ、又はユーザに表示して、オペレータのビュー、エンジニアのビュー、技師のビュー等のいくつかの異なるビューのうちのいずれかを提供し得る。データヒストリアンアプリケーションが、典型的には、データハイウェイにわたって提供されたデータの一部又は全てを収集及び記憶するデータヒストリアンデバイスに記憶され、それによって実行される一方で、構成データベースアプリケーションが、現在のプロセス制御ルーチン構成及びそれと関連付けられたデータを記憶するために、データハイウェイに取り付けられた更に離れたコンピュータで実行され得る。代わりに、構成データベースは、構成アプリケーションと同じワークステーションに位置付けられてよい。
【0005】
例えば、プロセスプラントは、石油精製所におけるプロセス流の制御からタンクファームにおける流体レベルの維持まで、多種多様な用途においてバルブを使用する。典型的に自動化されたバルブは、可変オリフィス又は通路のように機能することによって、そのような流体の流れ又は圧力低下を管理するために使用される。バルブプラグ等の内部バルブ構成要素の位置を制御することによって、通過する製品の量、又はバルブ本体によって生成される差圧を正確に調節することができる。典型的な比例積分微分(PID)制御ループが図2に示されている。図2に示すように、PID制御ループでは、コントローラは、設定点値を有し、コントローラ出力(OUT)を生成して制御バルブに送信し、制御バルブは、プロセス変数(PV)が設定点の値を達成するようにプロセスを変更する。バルブはコントローラ出力に従って開閉し、プロセスパラメータ値はバルブの移動に従って調整される。次いで、調整されたプロセスパラメータ値は、トランスミッタを介してコントローラにフィードバックされ、コントローラは、それに応じて出力を調整し続ける。
【0006】
いくつかのシナリオでは、バルブは、不感帯、分解能、ロストモーション、内部摩擦、可変流量利得、可変応答時間などに起因して、制御出力信号に適切に応答しない場合がある。これは、劣った製品、エネルギー消費の増加、生産能力の低下などにつながる性能低下をもたらす場合がある。結果として、いくつかのプロセス制御システムでは、プロセスプラントにおける一貫性、経済性、及び安全性を確保するために、制御バルブの性能状態(本明細書では「状態」とも呼ばれる)が監視される。しかしながら、典型的なバルブ監視システムは不正確であり、非常に多くの誤警報を発生する。
【発明の概要】
【0007】
図2を参照すると、プロセス上の負荷Lの変化は、プロセスパラメータとバルブ位置との間の関係を変化させる可能性があり、これは、不十分なバルブ性能の誤ったインジケーションを引き起こす可能性があることに留意されたい。プロセスプラントにおいて性能が不十分であると疑われるバルブを正確に検出するために、オペレータワークステーション又は携帯用ユーザインターフェースデバイス等のコンピューティングデバイスは、移動時間窓を使用して、N個の窓又は期間にわたるバルブ性能を分析する。例えば、N個の窓の各々は30分の期間を有してもよく、Nは10個の窓であってもよい。このシナリオでは、プロセスは5時間続くことがある。各期間について、コンピューティングデバイスは、バルブに関連するプロセスパラメータのプロセスパラメータ値を分析して、特定の期間についてのバルブの状態を決定する。いくつかの実装形態では、バルブ状態は、良好、疑わしい、又はバルブ状態が設定点変化等の期間にわたって無視されるべきであることを示す別の状態であってもよい。次いで、コンピューティングデバイスは、バルブが、N個の期間の閾値部分未満(例えば、20%)、又はバルブ状態が無視されないN個の期間のサブセットの閾値部分未満の間、必要に応じて機能するとき、不十分に機能すると疑われるバルブ(本明細書では「疑わしいバルブ」とも呼ばれる)を検出する。
【0008】
移動時間窓を使用し、N個の期間にわたるいくつかのバルブ状態を使用して疑わしいバルブを検出することによって、誤検出の数又は誤警報確率を大幅に低減することができる。良好に動作しているバルブは、時々、数時間期間にわたって不十分に動作することがあるが、コンピューティングデバイスは、不十分に動作すると疑われるバルブの場合よりも、移動時間窓にわたってより頻繁に良好な動作を検出する。したがって、移動時間窓は、コンピューティングデバイスが、良好に動作しているバルブと、要件未満で動作しているバルブとをより正確に区別することを可能にする。
【0009】
更に、コンピューティングデバイスは、バルブに関連するプロセスパラメータに関する期間中のプロセスパラメータ値に基づいて、特定の期間中のバルブ状態を決定する。プロセスパラメータは、バルブ開度、コントローラ出力、設定点(SP)、プロセス利得、又はバルブに結合されたプロセスプラントエンティティのプロセス変数(PV)を含むことができる。例えば、プロセスプラントエンティティは、タンクであってもよく、プロセス変数は、タンク充填レベル、タンク充填体積、流体圧力、又は流体流量であってもよい。
【0010】
いくつかの実装形態では、バルブ開度センサは、バルブのバルブ開度値を取得し、バルブ開度値をコンピューティングデバイスに提供する。これらの実装形態では、コンピューティングデバイスは、期間にわたるコントローラ出力値及び期間にわたるバルブ開度値を使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、バルブ開度の変化、及び/又は不感帯などのバルブの性能メトリックを推定することによって、特定の期間におけるバルブ状態を決定する。不感帯は、入力信号が、出力信号における観察可能な変化を開始することなく、方向の反転を伴って変動され得る範囲であり得る。不感帯は、入力スパンのパーセンテージであってもよい。分解能は、出力の動きが観察される一方向における入力信号の最小ステップ増分であってもよい。分解能は、入力スパンのパーセンテージであってもよい。
【0011】
コンピューティングデバイスは、楕円当てはめアルゴリズムを使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、バルブ開度の変化、及び/又は不感帯を推定することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、コントローラ出力値の関数としてバルブ開度値のグラフをプロットし、値に楕円を当てはめ、楕円の特性を使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、バルブ開度の変化、及び/又は不感帯を推定することができる。他の実装形態では、コンピューティングデバイスは、バルブインデックス計算を使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、バルブ開度の変化、及び/又は不感帯を推定することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、コントローラ出力値の関数としてバルブ開度値のグラフをプロットし、グラフの頂点を使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、バルブ開度の変化、及び/又は不感帯を推定することができる。
【0012】
次いで、コンピューティングデバイスは、期間にわたるコントローラ出力の推定された変化、バルブ開度の推定された変化、及び/又は推定された不感帯などの性能メトリックに基づいて、期間のバルブ状態を決定し得る。例えば、期間の不感帯が閾値不感帯パーセンテージを超える場合、コンピューティングデバイスは、期間のバルブ状態が疑わしいと判定してもよい。期間の不感帯が閾値不感帯パーセンテージを超えない場合、コンピューティングデバイスは、期間のバルブ状態が良好であると判定してもよい。別の例では、コントローラ出力の変化が、期間のバルブ開度の変化よりも大きいか、又は所定の定数(γ)を乗じたバルブ開度の変化よりも大きい場合、コンピューティングデバイスは、その期間のバルブ状態が疑わしいと判定することができる。コントローラ出力の変化が、期間のバルブ開度の変化よりも大きくないか、又は所定の定数(γ)を乗じたバルブ開度の変化よりも大きくない場合、コンピューティングデバイスは、その期間のバルブ状態が良好であると判定することができる。より一般的には、コンピューティングデバイスは、バルブが性能メトリックに従って制御出力信号に適切に応答するとき、バルブが良好に動作していることを検出することができる。コンピューティングデバイスは、性能メトリックに従って出力信号を制御するためにバルブが適切に応答しないとき、バルブが不十分に動作している疑いがあることを検出することができる。
【0013】
他の実装形態では、バルブ開度データは利用不可能又はアクセス不可能である。例えば、バルブは、バルブ開度センサに通信可能に結合されない。これらの実装形態では、コンピューティングデバイスは、期間にわたるコントローラ出力値及び期間にわたるプロセス変数値を使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、プロセス変数の変化、及び/又は不感帯を推定することによって、特定の期間におけるバルブ状態を決定する。コンピューティングデバイスは、楕円当てはめアルゴリズムを使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、プロセス変数の変化、及び/又は不感帯を推定することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、プロセス変数値のグラフをコントローラ出力値の関数としてプロットし、楕円を値に当てはめ、楕円の特性を使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、プロセス変数の変化、及び/又は不感帯を推定することができる。
【0014】
次いで、コンピューティングデバイスは、期間にわたるコントローラ出力の推定された変化、プロセス変数の推定された変化、及び/又は推定された不感帯に基づいて、期間のバルブ状態を決定することができる。例えば、期間の不感帯が閾値不感帯パーセンテージを超える場合、コンピューティングデバイスは、期間のバルブ状態が疑わしいと判定してもよい。期間の不感帯が閾値不感帯パーセンテージを超えない場合、コンピューティングデバイスは、期間のバルブ状態が良好であると判定してもよい。別の例では、コントローラ出力の変化とプロセス利得との積が、期間のプロセス変数の変化よりも大きいか、又はプロセス変数の変化に所定の定数(γ)を乗じたものよりも大きい場合、コンピューティングデバイスは、その期間のバルブ状態が疑わしいと判定することができる。コントローラ出力の変化とプロセス利得との積が、期間のプロセス変数の変化よりも大きくないか、又はプロセス変数の変化に所定の定数(γ)を乗じたものよりも大きくない場合、コンピューティングデバイスは、その期間のバルブ状態が良好であると判定することができる。
【0015】
また、いくつかの実装形態では、コントローラ出力値は動的コントローラ出力値である。コンピューティングデバイスは、コントローラ出力値、プロセス利得、時定数(TC)、及び不感時間(DT)に基づいて動的コントローラ出力値を決定することができる。次いで、コンピューティングデバイスは、動的コントローラ出力値を使用して、不感帯、コントローラ出力の変化、及びバルブ開度又はプロセス変数の変化を決定する。動的コントローラ出力値を使用することによって、不感帯の推定の精度は、出力とPVとの間の非線形性を低減すること、及び/又はノイズを低減することによって改善される。
【0016】
一実装形態では、方法は、プロセスプラント内の疑わしいバルブを検出する。N個の期間の各々について、方法は、期間のバルブに関連する1つ以上のプロセスパラメータの1つ以上のプロセスパラメータ値を決定することと、期間のバルブの状態を決定するために1つ以上のプロセスパラメータ値を分析することとを含む。本方法はまた、N個の期間にわたるバルブ状態を比較して、バルブがN個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたって良好に動作しているか否かを判定することを含む。N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたってバルブが良好に動作していないと判定することに応答して、本方法は、バルブが疑わしいバルブであると判定することと、オペレータ、エンジニア、機器技術者、保守要員、又は何らかの他のプロセスプラント要員などのユーザに表示するために、疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェースに提供することとを含む。インジケーションは、状態、アラート、又は通知として提供され得る。
【0017】
別の実装形態では、プロセスプラント内の疑わしいバルブを検出するためのコンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサに結合され、内部に命令を記憶する非一時的コンピュータ可読メモリとを含む。命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、コンピューティングデバイスに、N個の期間の各々について、期間中のバルブに関連する1つ以上のプロセスパラメータの1つ以上のプロセスパラメータ値を決定させ、1つ以上のプロセスパラメータ値を分析して、期間のバルブの状態を決定させる。命令は更に、コンピューティングデバイスに、N個の期間にわたるバルブ状態を比較させて、N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分の間、値が良好に動作しているか否かを判定させる。N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたってバルブが良好に動作していないと判定することに応答して、命令は、コンピューティングデバイスに、バルブが疑わしいバルブであると判定させ、オペレータ、エンジニア、機器技術者、保守要員、又は何らかの他のプロセスプラント要員などのユーザに表示するために、疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェースに提供させる。インジケーションは、状態、アラート、又は通知として提供され得る。
【0018】
更に別の実装形態では、プロセス制御システムは、バルブを制御するように構成されたコントローラと、プロセスプラント内で実行されるプロセスプラントエンティティの動作を制御するように構成されたバルブと、コンピューティングデバイスとを含む。コンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサに結合され、内部に命令を記憶する非一時的コンピュータ可読メモリとを含む。命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、コンピューティングデバイスに、N個の期間の各々について、期間中のバルブに関連する1つ以上のプロセスパラメータについての1つ以上のプロセスパラメータ値を決定させ、1つ以上のプロセスパラメータは、コントローラからの出力、バルブ開度、プロセスプラントエンティティについてのプロセス変数、プロセス変数とコントローラ出力との間のプロセス利得、又は不感帯のうちの少なくとも1つを含み、1つ以上のプロセスパラメータ値を分析させて、各期間のバルブの状態を決定させる。命令は更に、コンピューティングデバイスに、N個の期間にわたるバルブ状態を比較させて、N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分の間、値が良好に動作しているか否かを判定させる。N個の期間の少なくともサブセットの少なくとも閾値部分にわたってバルブが良好に動作していないと判定することに応答して、命令は、コンピューティングデバイスに、バルブが疑わしいバルブであると判定させ、オペレータ、エンジニア、機器技術者、保守要員、又は何らかの他のプロセスプラント要員などのユーザに表示するために、疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェースに提供させる。インジケーションは、状態、アラート、又は通知として提供され得る。
【0019】
別の実装形態では、方法は、移動時間窓を使用して、疑わしいバルブ検出における誤警報確率を低減する。本方法は、N個の期間の各々についてプロセスプラント内のバルブの状態を決定することと、バルブが良好に動作していることをバルブ状態が示すN個の期間の少なくともサブセットの割合を決定することと、割合が閾値割合未満であると判定したことに応答して、ユーザに表示するために、バルブが疑わしいバルブであるというインジケーションをユーザインターフェースに提供することと、を含む。
【0020】
更に別の実装形態では、方法は、プロセスプラント内の疑わしいバルブを検出する。本方法は、バルブに関連する1つ以上の動的プロセスパラメータに対する1つ以上の動的プロセスパラメータ値を決定することを含む。1つ以上の動的プロセスパラメータは、時定数、プロセス利得、又は不感時間のうちの少なくとも1つに基づいて決定される動的コントローラ出力を含む。本方法は、1つ以上の動的プロセスパラメータ値を分析してバルブの状態を決定することと、バルブの状態に従ってバルブが疑わしいバルブであるというインジケーションを、オペレータ、エンジニア、機器技術者、保守要員、又は何らかの他のプロセスプラント要員などのユーザに表示するためにユーザインターフェースに提供することとを更に含む。インジケーションは、状態、アラート、又は通知として提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】とりわけ、プロセスプラント又はプロセス制御システムの様々な例示的な構成要素、プロセス制御システム自体、並びに他の例示的なシステム及び/又はネットワークの間の相互接続を示す例示的なプロセスプラントのブロック図である。
図2】コントローラ、バルブ、及びバルブに結合されたプロセスプラントエンティティを含む例示的な制御ループのブロック図である。
図3】時間の関数としてのコントローラ出力値及びプロセス変数値、並びにコントローラ出力値の関数としてのプロセス変数値の例示的なグラフを示す。
図4A】時間の関数としてのコントローラ出力値及びバルブ開度値、並びにコントローラ出力値の関数としてのバルブ開度値の例示的なグラフを示す。
図4B】時間の関数としてのコントローラ出力値及びバルブ開度値、並びにコントローラ出力値の関数としてのバルブ開度値の例示的なグラフを示す。
図4C】時間の関数としてのコントローラ出力値及びバルブ開度値、並びにコントローラ出力値の関数としてのバルブ開度値の例示的なグラフを示す。
図5】コントローラ出力値と、プロセスダイナミクスを使用して決定される動的コントローラ出力値との間の関係の例示的なブロック図を示す。
図6A】コントローラ出力値の関数としてプロセス変数値の第1のグラフをプロットし、動的コントローラ出力値の関数としてプロセス変数値の第2のグラフをプロットすることによる、楕円当てはめアルゴリズムを使用する不感帯推定の例示的比較を図示する。
図6B】コントローラ出力値の関数としてプロセス変数値の第1のグラフをプロットし、動的コントローラ出力値の関数としてプロセス変数値の第2のグラフをプロットすることによる、楕円当てはめアルゴリズムを使用する不感帯推定の例示的比較を図示する。
図7】オペレータワークステーション等のコンピューティングデバイスによって実装され得る、バルブ開度データが利用可能である場合に移動時間窓を使用してプロセスプラント内の疑わしいバルブを検出するための例示的方法のフロー図である。
図8】N個の期間のうちの特定の期間についてバルブの状態を決定するための図7の方法の詳細な方法のフロー図である。
図9】オペレータワークステーション等のコンピューティングデバイスによって実装され得る、バルブ開度データが利用可能でない場合に移動時間窓を使用してプロセスプラント内の疑わしいバルブを検出するための例示的方法のフロー図である。
図10】N個の期間のうちの特定の期間についてバルブの状態を決定するための図9の方法の詳細な方法のフロー図である。
図11A】N個の期間の各々についてのバルブ状態と、バルブが疑わしいバルブであるか否かを決定するための、N個の期間にわたるバルブ状態と、N個の期間の少なくともサブセットの閾値部分との比較とを含む、疑わしいバルブ分析の例示的な結果を示す。
図11B】N個の期間の各々についてのバルブ状態と、バルブが疑わしいバルブであるか否かを決定するための、N個の期間にわたるバルブ状態と、N個の期間の少なくともサブセットの閾値部分との比較とを含む、疑わしいバルブ分析の例示的な結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、オンライン又はランタイム動作中に産業プロセスを制御するように構成された例示的なプロセスプラント100のブロック図である。プロセスプラント100(本明細書においては、同義でプロセス制御システム100又はプロセス制御環境100とも称される)は、プラント100内の産業プロセスの動作を制御するために、フィールドデバイスにより行われたプロセス及び/又は多のタイプの測定値を示す信号を受信し、この情報を処理して制御ルーチンを実装し、有線又は無線プロセス制御通信リンク又はネットワークにより他のフィールドデバイスへと送信される制御信号を生成する、1つ以上のプロセスコントローラを含む。典型的には、少なくとも1つのフィールドデバイスが物理的機能(例えば、バルブの開放又は閉鎖、温度の増加又は減少、測定の実行、条件の感知等)を実行して、プロセスの運転を制御する。ある種類のフィールドデバイスは、I/Oデバイスを使用してコントローラと通信する。プロセスコントローラ、フィールドデバイス及びI/Oデバイスは、有線又は無線であってよく、任意の数及び組み合わせの有線及び無線プロセスコントローラ、フィールドデバイス及びI/Oデバイスが、プロセスプラント環境又はシステム100内に含まれてよい。
【0023】
例えば、図1は、入力/出力(I/O)カード126及び128を介して有線フィールドデバイス115~122に通信可能に接続され、無線ゲートウェイ135及びプロセス制御データハイウェイ又はバックボーン110を介して無線フィールドデバイス140~146に通信可能に接続されるプロセスコントローラ111を示す。プロセス制御データハイウェイ110は、1つ以上の有線及び/又は無線通信リンクを含むことができ、例えば、イーサネット(登録商標)プロトコル、IP又は他のパケットプロトコルなどの任意の所望の又は適切な又は通信プロトコルを使用して実装され得る。いくつかの構成(図示せず)では、コントローラ111は、バックボーン110以外の、又はバックボーンに加えて、1つ以上の通信プロトコル、データプロトコル、及び/又は産業オートメーションプロトコル、例えば、Wi-Fi又は他のIEEE 802.11準拠の無線ローカルエリアネットワークプロトコル、モバイル通信プロトコル(例えば、WiMAX、LTE、又は他のITU-R互換プロトコル)、Bluetooth(登録商標)、HART(登録商標)、WirelessHART(登録商標)、HART-IP、Profibus、FOUNDATION(登録商標)Fieldbusなどをサポートする任意の数の他の有線又は無線通信リンクを使用することなどによって、1つ以上の通信ネットワークを使用することによって、無線ゲートウェイ135に通信可能に接続され得る。
【0024】
コントローラ111は、例として、Emerson Process Managementによって販売されている、DeltaV(商標)コントローラであり得るが、フィールドデバイス115~122及び140~146のうちの少なくともいくつかを使用して、バッチプロセス又は連続プロセスを実装するように動作してもよい。ある実施形態においては、プロセス制御データハイウェイ110に対して通信可能に接続されるのに加えて、コントローラ111はまた、例えば標準的な4~20mAデバイス、I/Oカード126、128、及び/又はFOUNDATION(登録商標)Fieldbusプロトコル、HART(登録商標)プロトコル、WirelessHART(登録商標)プロトコル等の任意のスマート通信プロトコルと関連付けられた、任意の所望のハードウェア及びソフトウェアを使用して、フィールドデバイス115~122及び140~146のうちの少なくともいくつかとも通信可能に接続される。図1において、コントローラ111、フィールドデバイス115~122及びI/Oカード126、128は、有線デバイスであり、フィールドデバイス140~146は、無線フィールドデバイスである。当然ながら、有線フィールドデバイス115~122及び無線フィールドデバイス140~146は、任意の他の所望の規格(複数可)又はプロトコル、例えば今後開発される任意の規格又はプロトコルを含む任意の有線又は無線プロトコルに適合することができる。
【0025】
図1のプロセスコントローラ111は、1つ以上のプロセス制御ルーチン138(例えば、メモリ132内に記憶されている)を実装又は監督するプロセッサ130を含む。プロセッサ130は、フィールドデバイス115~122及び140~146と、並びにコントローラ111と通信可能に接続された他のノードと、通信するように構成される。本明細書に記載される任意の制御ルーチン又はモジュールは、そのように所望される場合は、その一部を異なるコントローラ又は他のデバイスによって実装又は実行させてもよいことに留意されたい。同様に、プロセス制御システム100内で実装される本明細書に記載の制御ルーチン又はモジュール138は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア等を含む任意の形態を取ってよい。制御ルーチンは、オブジェクト指向プログラミング、ラダー論理、シーケンシャル機能チャート、機能ブロックダイアグラム、又は任意の他のソフトウェアプログラミング言語若しくは設計パラダイムを使用したもの等の任意の所望のソフトウェアフォーマットにおいて実装されてもよい。制御ルーチン138は、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み取り専用メモリ(ROM)等の任意の所望の種類のメモリ132に記憶され得る。同様に、制御ルーチン138は、例えば1つ以上のEPROM、EEPROM、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は任意の他のハードウェア若しくはファームウェア要素にハードコードされてもよい。したがって、コントローラ111は、任意の所望の様式で制御ストラテジ又は制御ルーチンを実装するように構成することができる。
【0026】
コントローラ111は、一般に機能ブロックと称されるものを使用して制御ストラテジを実装し、各機能ブロックは、全体の制御ルーチンのオブジェクト又は他の部分(例えば、サブルーチン)であり、他の機能ブロックと共に(リンクと呼ばれる通信を介して)動作して、プロセス制御システム100内にプロセス制御ループを実装する。制御ベースの機能ブロックは、典型的には、トランスミッタ、センサ、又は他のプロセスパラメータ測定デバイスに関連付けられたものなどの入力機能と、PID、ファジー論理などの制御を実行する制御ルーチンに関連付けられた制御機能などの制御機能と、又は、プロセス制御システム100内で何らかの物理的機能を実行するために、バルブなどの何らかのデバイスの動作を制御する出力機能のうちのうちの1つを実行する。当然のことながら、ハイブリッド及び他の種類の機能ブロックが存在する。機能ブロックはコントローラ111内に記憶され、それによって実行されてもよく、これは典型的には、これらの機能ブロックが制御に使用され、標準的な4~20mAデバイス及びHART(登録商標)デバイス又はProfibusデバイス等のいくつかの種類のスマートフィールドデバイスに使用されるかあるいはそれと関連するときに成り立ち、あるいは機能ブロックは、フィールドデバイス又はIOカードそのものの内部に記憶され、それによって実装されてもよく、これはFOUNDATION(登録商標)Fieldbusデバイスの場合に成り立ち得る。コントローラ111は、1つ以上の制御ループを実装し得、機能ブロックのうちの1つ以上を実行することで実行される、1つ以上の制御ルーチン138を含んでもよい。
【0027】
有線フィールドデバイス115~122は、センサ、バルブ、トランスミッタ、ポジショナ等の任意の種類のデバイスであってよく、一方でI/Oカード126及び128は、任意の所望の通信又はコントローラプロトコルに適合する任意のタイプのI/Oデバイスであってもよい。図1においては、フィールドデバイス115~118は、アナログ回線又はアナログデジタル結合回線を通じてI/Oカード126と通信する、標準的な4~20mAデバイス又はHART(登録商標)デバイスであり、一方で、フィールドデバイス119~122は、FOUNDATION(登録商標)Fieldbus通信プロトコルを用いて、デジタルバスを通じてI/Oカード128と通信する、FOUNDATION(登録商標)Fieldbusフィールドデバイス等のスマートデバイスである。しかし、いくつかの実施形態では、有線フィールドデバイス115、116及び118~121のうちの少なくともいくつか並びに/又はI/Oカード126、128のうちの少なくともいくつかは、加えて又は代わりに、プロセス制御データハイウェイ110を使用して、及び/又は他の好適な制御システムプロトコル(例えば、プロフィバス、DeviceNet、Foundation Fieldbus、ControlNet、Modbus、HART等)を使用することによって、コントローラ111と通信し得る。
【0028】
図1では、無線フィールドデバイス140~146は、WirelessHART(登録商標)プロトコル等の無線プロトコルを使用して、無線プロセス制御通信ネットワーク170を介して通信する。そのような無線フィールドデバイス140~146は、(例えば、無線プロトコル又は別の無線プロトコルを使用して)無線通信するようにも構成される無線ネットワーク170の1つ以上の他のデバイス又はノードと直接通信し得る。無線で通信するようには構成されていない他のノードと通信するために、無線フィールドデバイス140~146は、プロセス制御データハイウェイ110又は別のプロセス制御通信ネットワークに接続される無線ゲートウェイ135を利用してもよい。無線ゲートウェイ135は、無線通信ネットワーク170の種々の無線デバイス140~158へのアクセスを提供する。特に、無線ゲートウェイ135は、無線デバイス140~158、有線デバイス115~128、及び/又はプロセス制御プラント100の他のノード又はデバイス間の通信可能な結合を提供する。例えば、無線ゲートウェイ135は、プロセス制御データハイウェイ110を使用することによって、及び/又はプロセスプラント100の1つ以上の他の通信ネットワークを使用することによって、通信可能な結合を提供し得る。
【0029】
有線フィールドデバイス115~122と同様に、無線ネットワーク170の無線フィールドデバイス140~146は、プロセスプラント100内で、物理的制御機能、例えば、バルブの開放若しくは閉鎖、又はプロセスパラメータの測定値の取得を実行する。しかしながら、無線フィールドデバイス140~146は、ネットワーク170の無線プロトコルを使用して通信するように構成されている。このように、無線フィールドデバイス140~146、無線ゲートウェイ135、及び無線ネットワーク170の他の無線ノード152~158は、無線通信パケットの生産者でありコンシューマである。
【0030】
プロセスプラント100のいくつかの構成では、無線ネットワーク170は、非無線デバイスを含む。例えば、図1では、図1のフィールドデバイス148は、従来の4-20mAデバイスであり、フィールドデバイス150は、有線HART(登録商標)デバイスである。ネットワーク170内で通信するために、フィールドデバイス148及び150は、無線アダプタ152A、152Bのうちのそれぞれを介して、無線通信ネットワーク170と接続される。無線アダプタ152A、152Bは、WirelessHARTなどの無線プロトコルをサポートし、かつFoundation(登録商標)フィールドバス、プロフィバス、DeviceNetなどの1つ以上の他の通信プロトコルもサポートし得る。更に、いくつかの構成では、無線ネットワーク170は、無線ゲートウェイ135と有線通信する独立した物理デバイスであり得るか、又は無線ゲートウェイ135内に一体化され得る、1つ以上のネットワークアクセスポイント155A、155Bを含む。また、無線ネットワーク170はまた、無線通信ネットワーク170内の1つの無線デバイスから別の無線デバイスにパケットを転送するための1つ以上のルータ158を含み得る。図1では、無線デバイス140~146及び152~158は、無線通信ネットワーク170の無線リンク160を経由して、及び/又はプロセス制御データハイウェイ110を介して、互いに、及び無線ゲートウェイ135と通信する。
【0031】
図1では、プロセス制御システム100は、データハイウェイ110に通信可能に接続された1つ以上のオペレータワークステーション171を含む。オペレータワークステーション171を介して、オペレータは、プロセスプラント100のランタイム動作の閲覧及び監視に加えて、必要であり得る任意の診断、是正、保守、及び/又は他の処置を取り得る。オペレータワークステーション171のうちの少なくともいくつかは、例えば、プラント100のバックエンド環境など、プラント100の中又は近くの、種々の保護された領域に配置されてよく、場合によっては、オペレータワークステーション171のうちの少なくともいくつかは、遠隔地に配置されてよいが、それにもかかわらずプラント100と通信接続する。オペレータワークステーション171は、有線又は無線コンピューティングデバイスであり得る。
【0032】
例示的なプロセス制御システム100は、構成アプリケーション172A及び構成データベース172Bを含むものとして更に示され、それら各々は、データハイウェイ110にも通信可能に接続される。上述したように、構成アプリケーション172Aの種々のインスタンスは、ユーザによるプロセス制御モジュール及び/又は多のタイプのモジュールの作成又は変更、及びこれらのモジュールを、データハイウェイ110を介して、コントローラ111へ及び/又はプロセス制御システム100の多のデバイスのダウンロードを可能にするため、並びにオペレータがプロセス制御ルーチン内でデータを閲覧し、データ設定を変更することができることを介して、ユーザによるオペレータインターフェースの作成又は変更を可能にするために、1つ以上のコンピューティングデバイス(図示せず)を実行してよい。構成データベース172Bは、作成された(例えば、構成された)モジュール及び/又はオペレータインターフェースを記憶する。概して、構成アプリケーション172A及び構成データベース172Bは、構成アプリケーション172Aのうちの複数のインスタンスが、プロセス制御システム100内で同時に実行され得るにもかかわらず、集中化され、プロセス制御システム100に対して単一の論理的外観を有してよく、構成データベース172Bは、複数のデータ記憶デバイスにまたがって実装され得る。したがって、構成アプリケーション172A、構成データベース172B、及びそれに対するユーザインターフェース(図示せず)は、制御及び/又は表示モジュール用の構成又は開発システム172を含む。典型的には、構成システム172のユーザインターフェースは、プラント100がリアルタイムで動作しているか否かにかかわらず、構成及び開発エンジニアによって利用されるので、構成システム172のユーザインターフェースは、オペレータワークステーション171とは異なるが、必ずしもそうである必要はないオペレータワークステーション171は、プロセスプラント100のリアルタイム動作中(ここではプロセスプラント100の「ランタイム」動作とも交換可能に呼ばれる)にオペレータによって利用される。
【0033】
また、例示のプロセス制御システム100は、データ履歴アプリケーション173A及びデータ履歴データベース173Bを含み、それら各々がまた、データハイウェイ110に通信可能に接続される。データ履歴アプリケーション173Aは、データハイウェイ110をわたって提供されたデータのいくつか又は全てを収集し、長期にわたる記憶のために、データを履歴化するか、又は履歴データベース173B内に記憶するように動作する。構成アプリケーション172A及び構成データベース172Bと同様に、データ履歴アプリケーション173A及び履歴データベース173Bは、データ履歴アプリケーション173Aのうちの複数のインスタンスが、プロセス制御システム100内で同時に実行され得るにも関わらず、集中化され、プロセス制御システム100に対して単一の論理的外観を有してよく、データ履歴173Bは、複数の物理的データ記憶デバイスにまたがって実装されてよい。
【0034】
いくつかの構成では、プロセス制御システム100は、他の無線プロトコル、例えばWi-Fi又は他のIEEE802.11準拠の無線ローカルエリアネットワークプロトコル、モバイル通信プロトコル、例えばWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)又は他のITU-R(国際電気通信連合無線通信部門(International Telecommunication Union Radiocommunication Sector))互換性プロトコル、短波無線通信、例えば近距離無線通信通信(NFC)及びBluetooth(登録商標)、又は他の無線通信プロトコルを用いて、他のデバイスと通信する1つ以上の他の無線アクセスポイント174を含む。典型的には、そのような無線アクセスポイント174は、無線ネットワーク170とは異なり、かつ無線ネットワーク170とは異なる無線プロトコルをサポートする、それぞれの無線プロセス制御通信ネットワークを経由して、手持ち式又は他の携帯用コンピューティングデバイス(例えば、ユーザインターフェースデバイス175)による通信を可能にする。例えば、無線又は携帯用ユーザインターフェースデバイス175は、プロセスプラント100内のオペレータ(例えば、オペレータワークステーション171のうちの1つのインスタンス)によって利用される、モバイルワークステーション又は診断試験機器であってよい。無線又は携帯用ユーザインターフェースデバイス175はまた、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、又はオペレータ、エンジニア、機器技術者、保守要員、又は何らかの他のプロセスプラント要員等のユーザによって利用される通知を受信するための他のデバイスであってもよい。一部のシナリオにおいては、携帯用コンピューティングデバイスに加えて、1つ以上のプロセス制御デバイス(例えば、コントローラ111、フィールドデバイス115~122、又は無線デバイス135、140~158)もまた、アクセスポイント174によってサポートされる無線プロトコルを用いて通信する。
【0035】
いくつかの構成では、プロセス制御システム100は、近接したプロセス制御システム100外側にあるシステムへの1つ以上のゲートウェイ176、178を含む。典型的には、そのようなシステムは、プロセス制御システム100によって生成された情報、又はプロセス制御システム100の運転が基づく情報の需要者又は供給元である。例えば、プロセス制御プラント100は、近接したプロセスプラント100を別のプロセスプラントに通信可能に接続するためのゲートウェイノード176を含み得る。加えて又は代替的に、プロセス制御プラント100は、近接したプロセスプラント100を、外部の公衆又はプライベートシステム、例えば研究所システム(例えば、研究所情報管理システム又はLIMS)、オペレータラウンドデータベース、荷役システム、保守管理システム、製品在庫管理システム、製造スケジュール管理システム、天気データシステム、出荷及び運搬システム、包装システム、インターネット、別のプロバイダのプロセス制御システム、又は他の外部システムと通信可能に接続するためのゲートウェイノード178を含み得る。
【0036】
図1は有限数のフィールドデバイス115~122及び140~146、無線ゲートウェイ35、無線アダプタ152、アクセスポイント155、ルータ1158、並びに例示のプロセスプラント100内に含まれる無線プロセス制御通信ネットワーク170と共に単一の無線コントローラ111を示すのみであるが、これは例示的かつ非限定的実施形態であるに過ぎないことが留意される。任意の数のコントローラ111がプロセス制御プラント又はシステム100内に含まれてもよく、コントローラ111のうちのいずれが、任意の数の有線又は無線デバイス及びネットワーク115~122、140~146、135、152、155、158、及び170と通信して、プラント100内でのプロセスを制御してもよい。
【0037】
オペレータの役割の1つは、疑わしいバルブについて、オペレータワークステーション171又は携帯用ユーザインターフェースデバイス175を介して、プロセスプラント100のランタイム動作を監視することであり得る。疑わしいバルブが検出されると、オペレータワークステーション171は、疑わしいバルブのユーザインターフェース上に、状態、アラート、アラーム、又は通知等のインジケーションを提示してもよい。次いで、オペレータは、バルブの性能を監視することによってインジケーションに応答して、バルブが良好に動作していないことを更に確実にし、バルブが良好に動作していないときにプロセスの動作を停止して、バルブを修理又は交換することができる。他の実装形態では、プロセスは、バルブが良好に動作していないと判定したことに応答して、(例えば、オペレータワークステーション171又は別のコンピューティングデバイスからの制御信号から)自動的にシャットダウンすることができる。他のユーザ、例えば、制御エンジニア、保守技術者、機器技術者、又は何らかの他のプロセスプラント要員もまた、オペレータワークステーション171又は携帯用ユーザインターフェースデバイス175を介して、バルブ監視役割を行い得る。
【0038】
バルブの状態を決定するために、オペレータワークステーション171又は携帯用ユーザインターフェースデバイス175等のコンピューティングデバイスは、プロセス制御システム100内のコントローラ、フィールドデバイス、及び/又はプロセスプラントエンティティ(例えば、ポンプ、タンク、ミキサ等)からセンサデータを受信する。センサデータは、バルブに結合されたプロセスプラントエンティティについてのバルブ開度値、コントローラ出力値、SP値、又はPV値など、バルブに関連するプロセスパラメータについてのプロセスパラメータ値を含むことができる。コンピューティングデバイスは、特定の期間(例えば、30分)にわたるいくつかのインスタンスにおいてこれらの値を取得し得る。次いで、コンピューティングデバイスは、期間についてのバルブ開度値、コントローラ出力値、SP値、及び/又はPV値を使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、バルブ開度の変化、PVの変化、及び/又は不感帯など、バルブについての性能メトリックを推定することができる。次いで、コンピューティングデバイスは、期間にわたるコントローラ出力の推定された変化、バルブ開度の推定された変化、及び/又は推定された不感帯に基づいて、期間のバルブの状態を決定することができる。
【0039】
いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、バルブ開度値が利用可能であるとき、バルブの状態を決定するためにバルブ開度値を使用する。そうでなければ、バルブ開度値が利用不可能又はアクセス不可能であるとき、コンピューティングデバイスは、PV値を使用して、バルブの状態を決定する。
【0040】
また、いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、楕円当てはめアルゴリズムを使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、PVの変化、及び/又は不感帯を推定する。例えば、コンピューティングデバイスは、コントローラ出力値の関数としてPV値のグラフをプロットし、値に楕円を当てはめ、楕円の特性を使用して、期間にわたるコントローラ出力の変化、PVの変化、及び/又は不感帯を推定することができる。図3は、時間の関数としてのコントローラ出力値及びプロセス変数値の第1の例示的なグラフ300と、コントローラ出力値の関数としてのプロセス変数値の第2の例示的なグラフ350とを示す。コントローラ出力の変化、PVの変化、及び/又は不感帯を推定するために、コンピューティングデバイスは、楕円352をグラフ350内の値に当てはめる。次いで、コンピューティングデバイスは、楕円の長軸の長さ、楕円の短軸の長さ、及び楕円の回転角などの楕円の特性を識別する。次いで、コンピューティングデバイスは、楕円の特性を使用して、コントローラ出力の変化、PVの変化、及び/又は不感帯を推定する。より具体的には、コンピューティングデバイスは、以下の式に従って、コントローラ出力の変化、PVの変化、及び/又は不感帯を推定する:
【0041】
【数1】

式中、mは楕円の主アクセスの長さであり、nは楕円の副アクセスの長さであり、φは楕円の回転角である。
【0042】
次いで、コンピューティングデバイスは、不感帯推定値を閾値不感帯パーセンテージ(例えば、2%)と比較し得る。コンピューティングデバイスはまた、コントローラ出力の変化(Δ出力推定)とプロセス利得(K)との積を、PVの変化(ΔPV推定)又はPVの変化(ΔPV推定)に所定の定数(γ)を乗算したものと比較することができ、ここでγは1~1.1の間であり得る。不感帯推定値が閾値不感帯パーセンテージ(不感帯推定≦2%)以下である場合、及び/又はコントローラ出力の変化とプロセス利得(K)との積が、PVの変化に所定の定数(Δ出力推定*K≦γΔPV推定)を乗じたもの以下である場合、コンピューティングデバイスは、バルブが特定の期間にわたって良好に動作していると判定する。そうでない場合、コンピューティングデバイスは、バルブの状態が特定の期間にわたって疑わしいと判定する。いくつかの実装形態では、次いで、コンピューティングデバイスは、アラート、アラーム、又は通知等の疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェース上に提供する。他の実装形態では、コンピューティングデバイスは、バルブが疑わしいか否かの最終判定を行い、状態、アラート、アラーム、又は通知をユーザに提供する前に、N個の期間にわたってバルブの状態を分析する。
【0043】
バルブ開度値が利用可能であるときなどのいくつかのシナリオでは、楕円当てはめアルゴリズムは、コントローラ出力の変化、バルブ開度/バルブ位置リードバック(RB)の変化、及び/又は不感帯メトリックを過大評価し得る。例えば、システムが自動モードに設定され、SP変化又は負荷外乱のない定常状態において、バルブが図4Aに示すような連続的なスティックジャンプステップのみを経る場合、楕円当てはめアルゴリズムは、これらのメトリックを過大評価する可能性がある。このシナリオでは、コンピューティングデバイスは、バルブインデックス計算を使用して、コントローラ出力の変化、RBの変化、及び/又は不感帯を推定することができる。
【0044】
図4Aは、時間の関数としてのコントローラ出力値及びバルブ開度値の例示的なグラフ400を示す。グラフ400に示されるように、バルブ開度値は、ステップ関数において1つの値から次の値にステップ又はジャンプする。図4Bは、コントローラ出力値の関数としてのバルブ開度値の例示的なグラフ430を示す。グラフ430内の値は長方形432を形成し、楕円434はグラフ430内の値を過大評価する。したがって、コンピューティングデバイスは、楕円当てはめアルゴリズムの代わりにバルブインデックス計算を使用する。コンピューティングデバイスは、長方形432の4つの頂点の座標を使用し、座標を使用して不感帯及びバルブジャンプを推定する。より具体的には、コンピューティングデバイスは、以下の式に従って、コントローラ出力の変化、RBの変化、及び/又は不感帯を推定する:
【0045】
【数2】

ここで、Hmax図4Cに示す長方形462の右下座標(x,y)、Hminは左上座標(x,y)、
【0046】
【数3】

は右上座標(x,y)、
【0047】
【数4】

は左下座標(x,y)とする。いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、最初に、楕円当てはめアルゴリズムを使用して、コントローラ出力の変化、RBの変化、及び/又は不感帯を決定する。次に、コンピューティングデバイスは、RBの変化(Δ出力推定-ΔRB推定)によって減算されたコントローラ出力の変化が閾値差(例えば、5%)以上である場合に、楕円当てはめアルゴリズムの代わりにバルブインデックス計算を使用するように切り替えることができる。
【0048】
いくつかのシナリオでは、プロセスダイナミクスがプロセスに影響を及ぼす可能性があり、その結果、偽陽性の疑わしいバルブ検出が増加する可能性がある。これは、コントローラが手動モードにあるときにより頻繁に発生し、プロセスダイナミクスが不感帯推定を誇張する可能性がある。これらのシナリオでは、例えば楕円当てはめアルゴリズム又はバルブインデックス計算を使用して、バルブの状態を判定するために、コントローラ出力値の代わりに動的コントローラ出力値が使用される。図5は、コントローラ出力値502と動的コントローラ出力値504との間の関係の例示的なブロック図500を示す。より具体的には、動的コントローラ出力値は、以下の式に従って決定される。
【0049】
【数5】
【0050】
コンピューティングデバイスは、モデル推定アルゴリズムを使用して、特定の時間における特定のインスタンスにおけるSP値、コントローラ出力値、及び/又はPV値の間の差に基づいて、特定のインスタンスにおけるプロセス利得(K)、不感時間(DT)、及び時定数(TC)を決定する。例えば、DTは、コントローラ出力値が変化する時間とPV値が変化し始める時間との間の時間差に基づいて決定され得る。TCは、PV値が変化し始める時間と、PV値がコントローラ出力値の変化の結果としてのPV値の総変化の閾値割合(例えば、63%)に達する時間との間の時間差に基づいて決定することができる。プロセス利得は、PVの変化率の変化とコントローラ出力の変化との比として決定することができる。
【0051】
コンピューティングデバイスは、式6に従って動的コントローラ出力値を決定することができる。次いで、コンピューティングデバイスは、動的コントローラ出力値の関数としてPV/バルブ開度値のグラフをプロットし、楕円をその値に当てはめ、楕円の特性を使用することによって、コントローラ出力の変化、PV/バルブ開度の変化、及び/又は不感帯を推定することができる。他の実装形態では、コンピューティングデバイスは、動的コントローラ出力値の関数としてPV/バルブ開度値のグラフをプロットし、バルブインデックス計算を使用して、コントローラ出力の変化、PVの変化/バルブ開度の変化、及び/又は不感帯を推定することができる。
【0052】
図6は、コントローラ出力値の関数としてPV値の第1のグラフ600をプロットし、動的コントローラ出力値の関数としてPV値の第2のグラフ650をプロットすることによる、楕円当てはめアルゴリズムを使用する不感帯推定の例示的な比較を示す。動的コントローラ出力値を含まない第1のグラフ600に適合される楕円602を使用して、コンピューティングデバイスは、不感帯を12.38%で推定し、これは、コンピューティングデバイスがバルブの状態を疑わしいものとして識別することをもたらし得る。対照的に、動的コントローラ出力値を含む第2のグラフ652に適合される楕円652を使用して、コンピューティングデバイスは、不感帯を0.21%で推定し、これは、コンピューティングデバイスがバルブの状態を良好として識別することをもたらし得る。このシナリオにおいて動的コントローラ出力値を使用することは、閾値不感帯パーセンテージが、例えば、1%又は2%であるとき、偽陽性の疑わしいバルブ検出を防止する。
【0053】
動的コントローラ出力値を使用して決定された不感帯に基づいてバルブの状態を決定することに加えて、又はその代替として、コンピューティングデバイスは、動的コントローラ出力値を使用して、コントローラ出力の変化及び/又はPV/バルブ開度の変化に基づいてバルブの状態を決定することができる。いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、次いで、バルブの状態に基づいて、状態、アラート、アラーム、又は通知等の疑わしいバルブのインジケーションをユーザインターフェース上に提供するか否かを判定する。他の実装形態では、コンピューティングデバイスは、バルブが疑わしいか否かの最終判定を行い、状態、アラート、アラーム、又は通知をユーザに提供する前に、N個の期間にわたってバルブの状態を分析する。
【0054】
図7は、バルブ開度データが利用可能であるときに移動時間窓を使用してプロセスプラント100内の疑わしいバルブを検出するための例示的な方法700の流れ図であり、この方法は、オペレータワークステーション171又は携帯用ユーザインターフェースデバイス175などのコンピューティングデバイスによって実装され得る。
【0055】
ブロック702において、コンピューティングデバイスは、バルブ開度データが利用可能であることを決定し、バルブの状態を決定するためにバルブ開度(RB)、SP、及びコントローラ出力値を使用することを決定する。いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、コントローラ出力値をプロセス利得、不感時間、及び時定数などのプロセスダイナミクスと組み合わせることによって、コントローラ出力値の代わりに動的コントローラ出力値を使用する(例えば、コントローラが手動モードにあるとき)。
【0056】
ブロック704において、コンピューティングデバイスは、バルブの状態を決定するためのN個の期間又は窓を選択する。コンピューティングデバイスは、各移動時間窓の持続時間と、N個の時間窓の数とを選択し得る。いくつかの実装形態では、各期間/窓は等しい持続時間を有し得る。また、いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、コントローラ111が実行しているプロセスのタイプに基づいて、各移動時間窓の持続時間を選択することができる。例えば、プロセスが自己調整プロセスである場合、コンピューティングデバイスは、30分の移動時間窓を選択することができる。プロセスが統合されている場合、コンピューティングデバイスは、60分の移動時間窓を選択し得る。より具体的には、コンピューティングデバイスは、自己調整プロセス及び統合プロセスの各々について、以下の式に従って各移動時間窓の持続時間を選択することができる:
【0057】
【数6】

ここで、hは移動時間窓の秒単位の持続時間であり、Resetはプロセスのリセット値又は時定数(TC)である。
【0058】
コンピューティングデバイスはまた、各期間内のバルブ開度、コントローラ出力、及び/又はSP値を収集するサンプリングレートを選択してもよい。例えば、コンピューティングデバイスは、新たなバルブ開度、コントローラ出力、及び/又はSP値を1秒に1回、1分に1回など収集してもよい。いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、サンプリングレートを、コントローラ111がSP又はコントローラ出力を変更するレートに設定してもよい。サンプリングレートは、プロセス時定数(図5のTC)によって影響され得る。
【0059】
次いで、ブロック706及び708において、コンピューティングデバイスは、N個の期間のうちの現在の(i)期間についてのコントローラ出力値(OUT)、SP値(SP)、及びバルブ開度値(RB)を取得する。コントローラ出力値、SP値、及びバルブ開度値はそれぞれ、値のアレイを含むことができ、各アレイ内の要素の数は、サンプリングレート及び期間の持続時間に基づく。
【0060】
ブロック710において、コンピューティングデバイスは、OUTの関数としてRBのグラフをプロットし、グラフ内の値に楕円を当てはめることによって、第iの期間について楕円当てはめアルゴリズムを実行する。次いで、コンピューティングデバイスは、楕円の長軸の長さ、楕円の短軸の長さ、及び楕円の回転角などの楕円の特性を識別する。次いで、コンピューティングデバイスは、上記のように式(1)~(3)に従って楕円の特性を使用して、第iの期間についてのコントローラ出力の変化(ΔOUT)、バルブ開度の変化(ΔRB)、及び/又は不感帯を推定する(ブロック712)。
【0061】
ブロック714において、コンピューティングデバイスは、ΔOUTをΔRBと比較して、楕円当てはめアルゴリズムの代わりにバルブインデックス計算を使用して、ΔOUT、ΔRB、及び不感帯推定値を決定するか否かを決定する。例えば、コンピューティングデバイスは、ΔRBによって減算されたΔOUTが閾値差(例えば、5%)以上である場合に、バルブインデックス計算の使用に切り替えることができる。ΔOUTからΔRBを減算したものが閾値差以上である場合、コンピューティングデバイスは、バルブインデックス計算を使用し(ブロック716)、バルブインデックス計算を使用して第iの期間のΔOUT、ΔRB、及び不感帯推定値を更新する(ブロック718)。より具体的には、コンピューティングデバイスは、RBのグラフによって形成される長方形432の4つの頂点の座標をOUTの関数として使用し、上記のように式(4)及び(5)に従ってΔOUT、ΔRB、及び不感帯を推定する。
【0062】
次いで、ブロック720において、コンピューティングデバイスは、ΔOUT、ΔRB、及び楕円当てはめアルゴリズム(ブロック712)又はバルブインデックス計算(ブロック718)を介して決定された不感帯推定値を使用して、第iの期間のバルブの状態を決定する。いくつかの実装形態では、バルブの状態は、良好、疑わしい、又はバルブ状態が設定点変化等の第iの期間にわたって無視されるべきであることを示す別の状態であってもよい。バルブの状態を決定する方法は、図8を参照してより詳細に説明される。
【0063】
図8に示すように、ブロック802において、コンピューティングデバイスは、第iの期間についてのΔOUT、ΔRB、及び不感帯推定値を使用して、第iの期間におけるバルブの状態を決定する。ブロック804において、コンピューティングデバイスは、コントローラ111によって実行されるプロセスのプロセスタイプが統合プロセスであるか否かを判定する。プロセスが統合プロセスである場合、任意の設定点変化(SP>0)は、バルブ状態が設定点変化であるとコンピューティングデバイスが判定することをもたらし、バルブ状態は、第iの期間にわたって無視される(ブロック806)。そうではなく、プロセスタイプが自己調整プロセスなどの別のプロセスタイプである場合、設定点値の変化(SP)は、閾値設定点変化(例えば、1%)と比較される(ブロック808)。SPが閾値設定点変化を超える(例えば、SP>1%)場合、コンピューティングデバイスは、バルブ状態が設定点変化であると決定し、バルブ状態は、第iの期間にわたって無視される。
【0064】
そうではなく、設定点変化が対応するプロセスタイプについての閾値設定点変化を超えない場合、コンピューティングデバイスは、コントローラ111の動作モードを決定する(ブロック810)。コントローラ111が手動モードで動作している場合、コンピューティングデバイスは、不感帯推定値を閾値不感帯パーセンテージ(例えば、2%)と比較する(ブロック814)。第iの期間についての不感帯推定値が閾値不感帯パーセンテージを超える場合、コンピューティングデバイスは、第iの期間についてバルブ状態が疑わしいと判定する。一方、第iの期間についての不感帯推定値が閾値不感帯パーセンテージを超えない場合、コンピューティングデバイスは、第iの期間についてバルブ状態が良好であると判定する。
【0065】
コントローラ111が手動モードで動作しておらず、代わりに、例えば、自動モードで動作している場合、コンピューティングデバイスは、不感帯推定値を閾値不感帯パーセンテージ(例えば、2%)と比較し、ΔOUTを、所定の定数(γ)によって乗算されたΔRBと比較し、ここで、γは、1~1.1であり得る(ブロック812)。不感帯推定値が閾値不感帯パーセンテージよりも大きく、ΔOUTがγΔRBよりも大きい場合、コンピューティングデバイスは、バルブ状態が第iの期間にわたって疑わしいと判定する。そうでない場合、コンピューティングデバイスは、第iの期間についてバルブ状態が良好であると判定する。
【0066】
図7に戻ると、第iの期間についてのバルブの状態の判定に応答して、コンピューティングデバイスは、iがNに等しいか否かを判定する(ブロック722)。iがNに等しくない場合、コンピューティングデバイスは、iをインクリメントし、次の期間のバルブの状態を決定する(ブロック708)。次いで、コンピューティングデバイスは、iがNに等しくなるまで、各期間についてこのプロセスを繰り返す。
【0067】
iがNに等しく、バルブ状態がN個の期間の各々について判定されたと判定したことに応答して、コンピューティングデバイスは、N個の期間の各々についてバルブ状態のセットを生成し(ブロック724)、バルブ状態が良好である期間の割合又はパーセンテージを計算する(ブロック726)。いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、良好でも疑わしいものでもないバルブ状態を除去又は無視する。次いで、コンピューティングデバイスは、バルブ状態が良好であるN個の期間の残りのサブセットの割合又はパーセンテージを計算する。例えば、図11Aに示されるように、コンピューティングデバイスは、45個の期間についてバルブ状態を決定する。N個の移動時間窓/期間にわたって、バルブ状態は20回良好であり、バルブ状態は22回疑わしいものであり、バルブ状態は3回良好でも疑わしいものでもなく、状態は設定点変化である。したがって、コンピューティングデバイスは、3つのインスタンスに対するバルブ状態を除去又は無視し、図11Bに示されるように、バルブ状態が良好である45の期間のうちの42の残りのサブセットの割合又はパーセンテージを、20を42で除算したもの、すなわち47.62%として計算する。
【0068】
次いで、コンピューティングデバイスは、割合又はパーセンテージを閾値割合又はパーセンテージ(例えば、20%)と比較して、バルブが疑わしいバルブであるか否かを判定する。バルブ状態が良好であるN個の期間の残りのサブセットの割合又はパーセンテージが閾値割合又はパーセンテージを超えない場合、コンピューティングデバイスは、バルブが疑わしいバルブであると決定する。次いで、コンピューティングデバイスは、疑わしいバルブのユーザインターフェース上に、状態、アラート、アラーム、又は通知などのインジケーションを提供することができる。ユーザは、バルブの性能を監視することによって状態、アラート、アラーム、又は通知に応答して、バルブが良好に動作していないことを更に確実にし、バルブが良好に動作していないときにプロセスの動作を停止して、バルブを修理又は交換することができる。他の実装形態では、プロセスは、バルブが疑わしいと判定したことに応答して、(例えば、オペレータワークステーション171又は別のコンピューティングデバイスからの制御信号から)自動的にシャットダウンすることができる。
【0069】
他の実装形態では、バルブ開度データは利用不可能又はアクセス不可能である。例えば、バルブは、バルブ開度センサに通信可能に結合されない。図9は、バルブ開度データが利用不可能であるときに移動時間窓を使用してプロセスプラント内の疑わしいバルブを検出するための例示的な方法900の流れ図であり、この方法は、オペレータワークステーション171又は携帯用ユーザインターフェースデバイス175などのコンピューティングデバイスによって実装され得る。
【0070】
ブロック902において、コンピューティングデバイスは、バルブ開度データが利用可能であることを決定し、バルブの状態を決定するためにPV、SP、及びコントローラ出力値を使用することを決定する。いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、コントローラ出力値をプロセス利得、不感時間、及び時定数などのプロセスダイナミクスと組み合わせることによって、コントローラ出力値の代わりに動的コントローラ出力値を使用する(例えば、コントローラが手動モードにあるとき)。
【0071】
ブロック904において、コンピューティングデバイスは、バルブの状態を決定するためのN個の期間又は窓を選択する。コンピューティングデバイスは、各移動時間窓の持続時間と、N個の時間窓の数とを選択し得る。いくつかの実装形態では、各期間/窓は等しい持続時間を有し得る。また、いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、コントローラ111が実行しているプロセスのタイプに基づいて、各移動時間窓の持続時間を選択することができる。例えば、プロセスが自己調整プロセスである場合、コンピューティングデバイスは、30分の移動時間窓を選択することができる。プロセスが統合されている場合、コンピューティングデバイスは、60分の移動時間窓を選択し得る。より具体的には、コンピューティングデバイスは、式7及び8に従って各移動時間窓の持続時間を選択することができる。
【0072】
コンピューティングデバイスはまた、各期間内のPV、コントローラ出力、及び/又はSP値を収集するサンプリングレートを選択してもよい。例えば、コンピューティングデバイスは、新たなPV、コントローラ出力、及び/又はSP値を1秒に1回、1分に1回など収集してもよい。いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、サンプリングレートを、コントローラ111がSP又はコントローラ出力を変更するレートに設定してもよい。
【0073】
次いで、ブロック906及び908において、コンピューティングデバイスは、N個の期間のうちの現在の(i)期間についてのコントローラ出力値(OUT)、SP値(SP)、及びPV値(PV)を取得する。コントローラ出力値、SP値、及びPV値はそれぞれ、値のアレイを含むことができ、各アレイ内の要素の数は、サンプリングレート及び期間の持続時間に基づく。
【0074】
ブロック910において、コンピューティングデバイスは、OUTの関数としてPVのグラフをプロットし、グラフ内の値に楕円を当てはめることによって、第iの期間について楕円当てはめアルゴリズムを実行する。次いで、コンピューティングデバイスは、楕円の長軸の長さ、楕円の短軸の長さ、及び楕円の回転角などの楕円の特性を識別する。次いで、コンピューティングデバイスは、上記のように式(1)~(3)に従って楕円の特性を使用して、第iの期間についてのコントローラ出力の変化(ΔOUT)、バルブ開度の変化(ΔPV)、及び/又は不感帯を推定する(ブロック912)。
【0075】
次に、ブロック914において、コンピューティングデバイスは、ΔOUT、ΔRB、及び不感帯推定値を使用して第iの期間のバルブの状態を判定する。いくつかの実装形態では、バルブの状態は、良好、疑わしい、又はバルブ状態が設定点変化等の第iの期間にわたって無視されるべきであることを示す別の状態であってもよい。バルブの状態を決定する方法は、図10を参照してより詳細に説明される。
【0076】
図10に示されるように、ブロック1002において、コンピューティングデバイスは、第iの期間におけるΔOUT、ΔPV、及び不感帯推定値を使用して、第iの期間におけるバルブの状態を決定する。ブロック1004において、コンピューティングデバイスは、コントローラ111によって実行されるプロセスのプロセスタイプが統合プロセスであるか否かを判定する。プロセスが統合プロセスである場合、任意の設定点変化(SP>0)は、バルブ状態が設定点変化であるとコンピューティングデバイスが判定することをもたらし、バルブ状態は、第iの期間にわたって無視される(ブロック1006)。そうではなく、プロセスタイプが自己調整プロセスなどの別のプロセスタイプである場合、設定点値の変化(SP)は、閾値設定点変化(例えば、1%)と比較される(ブロック1008)。SPが閾値設定点変化を超える(例えば、SP>1%)場合、コンピューティングデバイスは、バルブ状態が設定点変化であると決定し、バルブ状態は、第iの期間にわたって無視される。
【0077】
そうではなく、設定点変化が対応するプロセスタイプについての閾値設定値変化を超えない場合、コンピューティングデバイスは、コントローラ111の動作モードを決定する(ブロック1010)。コントローラ111が手動モードで動作している場合、コンピューティングデバイスは、不感帯推定値を閾値不感帯パーセンテージ(例えば、2%)と比較する(ブロック1014)。第iの期間についての不感帯推定値が閾値不感帯パーセンテージを超える場合、コンピューティングデバイスは、第iの期間についてバルブ状態が疑わしいと判定する。一方、第iの期間についての不感帯推定値が閾値不感帯パーセンテージを超えない場合、コンピューティングデバイスは、第iの期間についてバルブ状態が良好であると判定する。
【0078】
コントローラ111が手動モードで動作されておらず、代わりに例えば自動モードで動作されている場合、コンピューティングデバイスは、プロセスタイプが自己調整型であり、プロセス利得(K)が利用可能であるか否かを判定する(ブロック1011)。プロセスが自己調節式でないか、又はプロセス利得が利用不可能である場合、コンピューティングデバイスは、上述のように、不感帯推定値を閾値不感帯パーセンテージ(例えば、2%)と比較する(ブロック1014)。そうでなければ、プロセスが自己調節式であり、プロセス利得を有する場合、コンピューティングデバイスは、不感帯推定値を閾値不感帯パーセンテージ(例えば、2%)と比較し、ΔOUTとKとの積を、所定の定数γ)を乗じたΔPVと比較し、ここで、γは、1~1.1であり得る。不感帯推定値が閾値不感帯パーセンテージよりも大きく、ΔOUT がγΔPVよりも大きい場合、コンピューティングデバイスは、バルブ状態が第iの期間にわたって疑わしいと判定する。そうでない場合、コンピューティングデバイスは、第iの期間についてバルブ状態が良好であると判定する。
【0079】
図9に戻ると、第iの期間についてのバルブの状態の判定に応答して、コンピューティングデバイスは、iがNに等しいか否かを判定する(ブロック916)。iがNに等しくない場合、コンピューティングデバイスは、iをインクリメントし、次の期間のバルブの状態を決定する(ブロック908)。次いで、コンピューティングデバイスは、iがNに等しくなるまで、各期間についてこのプロセスを繰り返す。
【0080】
iがNに等しいと判定し、バルブ状態がN個の期間の各々について判定されたことに応答して、コンピューティングデバイスは、N個の期間の各々についてバルブ状態のセットを生成し(ブロック918)、バルブ状態が良好で期間の割合又はパーセンテージを計算する(ブロック920)。いくつかの実装形態では、コンピューティングデバイスは、良好でも疑わしいものでもないバルブ状態を除去又は無視する。次いで、コンピューティングデバイスは、バルブ状態が良好であるN個の期間の残りのサブセットの割合又はパーセンテージを計算する。
【0081】
次いで、コンピューティングデバイスは、割合又はパーセンテージを閾値割合又はパーセンテージ(例えば、20%)と比較して、バルブが疑わしいバルブであるか否かを判定する。バルブ状態が良好であるN個の期間の残りのサブセットの割合又はパーセンテージが閾値割合又はパーセンテージを超えない場合、コンピューティングデバイスは、バルブが疑わしいバルブであると決定する。次いで、コンピューティングデバイスは、疑わしいバルブのユーザインターフェース上に、状態、アラート、アラーム、又は通知などのインジケーションを提供することができる。ユーザは、バルブの性能を監視することによって状態、アラート、アラーム、又は通知に応答して、バルブが良好に動作していないことを更に確実にし、バルブが良好に動作していないときにプロセスの動作を停止して、バルブを修理又は交換することができる。他の実装形態では、プロセスは、バルブが疑わしいと判定したことに応答して、(例えば、オペレータワークステーション171又は別のコンピューティングデバイスからの制御信号から)自動的にシャットダウンすることができる。
【0082】
ソフトウェアに実装される場合、本明細書に記載されるアプリケーション、サービス、及びエンジンはいずれも、コンピュータ若しくはプロセッサのRAM若しくはROM等における磁気ディスク、レーザディスク、固体メモリデバイス、分子メモリ記憶デバイス、又は他の記憶媒体等の、任意の有形の非一時的コンピュータ可読メモリに記憶され得る。本明細書に開示される例示的システムは、他の構成要素の中でも、ハードウェア上で実行されるソフトウェア及び/又はファームウェアを含むように開示されているが、そのようなシステムは単に例示的であるに過ぎず、限定的であると見なされるべきではないことに留意されたい。例えば、これらのハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェア構成要素のうちのいずれか又は全てが、排他的にハードウェア内で、排他的にソフトウェア内で、あるいはハードウェア及びソフトウェアの任意の組み合わせで具現化され得ることが企図される。したがって、本明細書で説明された例示のシステムは、1つ以上のコンピュータ機器のプロセッサ上で実行されたソフトウェアに組み込まれるとして説明されているが、当業者においては、提供された例が、そのようなシステムを実施するための唯一の方法ではないことが容易に理解されよう。
【0083】
したがって、本発明は具体的な例に関して記載されてきたが、これらの例は例示的であるに過ぎず、本発明の限定であることを意図せず、変更、追加、又は削除が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される実施形態に対して行われ得ることが当業者には明らかであろう。
【0084】
任意の具体的な実施形態の特定の特色、構造、及び/又は特性は、他の特色の対応する使用を伴う、又は伴わない選択された特色の使用を含む、任意の好適な様式で、かつ/あるいは1つ及び/又はそれ以上の他の実施形態との任意の好適な組み合わせで、組み合わせてもよい。加えて、本発明の本質的な範囲又は趣旨に対して、特定の用途、状況、及び/又は材料を適合させるように、多くの修正がなされてもよい。本明細書に記載及び/又は例証された本発明の実施形態の他の変形及び/又は修正が、本明細書の教示の観点から可能であり、本発明の趣旨又は範囲の一部として見なされるべきことを理解されたい。本発明のある特定の態様は、例示的態様として本明細書に記載されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B