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特開2023-174611農業用組成物、苗木製品及び植物の栽培方法
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  • 特開-農業用組成物、苗木製品及び植物の栽培方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174611
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】農業用組成物、苗木製品及び植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20231130BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231130BHJP
   A01N 63/20 20200101ALI20231130BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20231130BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20231130BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
A01P3/00
A01N63/20
A01G7/00 605Z
A01G7/06 Z
C12N15/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087139
(22)【出願日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2022086296
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】田中 江梨子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正幸
(72)【発明者】
【氏名】槙嶋 理華子
(72)【発明者】
【氏名】梅木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西條 雄介
【テーマコード(参考)】
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065BA22
4B065CA47
4H011AA01
4H011BB21
(57)【要約】
【課題】病害抑制効果に優れる農業用組成物と、上述の農業用組成物を用いた苗木と、上述の農業用組成物を用いた植物の栽培方法とを提供する。
【解決手段】農業用組成物は、ロイコバクター属微生物を含有する。苗木製品は、養土と、前記養土によって栽培される苗木とを備える。前記苗木及び前記養土のうち少なくとも1つは、上述の農業用組成物によって処理されている。植物の栽培方法は、植物の栽培方法であって、上述の農業用組成物によって前記植物を処理する工程を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイコバクター属微生物を含有する、農業用組成物。
【請求項2】
前記ロイコバクター属微生物は、配列番号1で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を含む、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項3】
前記ロイコバクター属微生物は、受託番号NITE P-03634で寄託された株である、請求項2に記載の農業用組成物。
【請求項4】
アルカリゲネス属微生物を更に含有する、請求項1又は2に記載の農業用組成物。
【請求項5】
前記アルカリゲネス属微生物は、配列番号2で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を有する、請求項4に記載の農業用組成物。
【請求項6】
前記ロイコバクター属微生物の含有量Lに対して、前記アルカリゲネス属微生物の含有量Aの比率(A/L)は、0.0001以上100.0以下である、請求項4に記載の農業用組成物。
【請求項7】
前記比率(A/L)は、0.5以上15.0以下である、請求項6に記載の農業用組成物。
【請求項8】
ステノトロホモナス属微生物を更に含有する、請求項1又は2に記載の農業用組成物。
【請求項9】
前記ステノトロホモナス属微生物は、配列番号3で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を有する、請求項8に記載の農業用組成物。
【請求項10】
前記ロイコバクター属微生物の含有量Lに対して、前記ステノトロホモナス属微生物の含有量Sの比率(S/L)は、0.0001以上100.0以下である、請求項8に記載の農業用組成物。
【請求項11】
前記比率(S/L)は、0.5以上15.0以下である、請求項10に記載の農業用組成物。
【請求項12】
青枯病防除に用いられる、請求項1又は2に記載の農業用組成物。
【請求項13】
養土と、前記養土によって栽培される苗木とを備える苗木製品であって、
前記苗木及び前記養土のうち少なくとも1つが請求項1又は2に記載の農業用組成物によって処理されている、苗木製品。
【請求項14】
植物の栽培方法であって、
請求項1又は2に記載の農業用組成物によって前記植物を処理する工程を備える、植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用組成物、苗木製品及び植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青枯病は、農業上深刻な被害をもたらす病害の一つであり、ナス科植物を代表とする200種以上の植物に感染して枯死させる。青枯病は、土壌細菌である青枯病菌(Ralstonia solanacearum)が植物の根、茎等から感染し、主に導管内で青枯病菌が増殖することで発病する。現在のところ、青枯病を発病した植物に対して有効な化学農薬は存在しない。また、青枯病菌は、土壌中で長期に渡って生存し続けることができる。そのため、青枯病が農地で一度発生してしまうと、その農地において青枯病を根絶することは困難である。現在、青枯病への対策としては、植物の栽培前に化学薬品(例えば、クロルピクリン)によって土壌消毒を行うことが多い。
【0003】
一方、最近では、農業における持続可能性が重視されている。このような流れの中で、上述の化学薬品による土壌消毒は、持続可能性の観点から改善の余地がある。そのため、農業では、青枯病を始めとする様々な病害に対して、持続可能性の高い防除手段が模索されている。このような防除手段として、例えば、植物と共生している天然微生物を用いた生物的防除が検討されている。青枯病に有効な生物的防除として、例えば、フェノール耐性を有する抗菌性物質非産生蛍光性細菌を使用する青枯病防除方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-268826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の防除方法によっても、青枯病を始めとする各種病害に対する防除効果は十分ではない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、病害抑制効果に優れる農業用組成物と、上述の農業用組成物を用いた苗木製品と、上述の農業用組成物を用いた植物の栽培方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面によれば、農業用組成物は、ロイコバクター属微生物を含有する。
【0008】
本発明の他の局面によれば、苗木製品は、養土と、前記養土によって栽培される苗木とを備える。前記苗木及び前記養土のうち少なくとも1つは、上述の農業用組成物によって処理されている。
【0009】
本発明の他の局面によれば、植物の栽培方法は、植物の栽培方法であって、上述の農業用組成物によって前記植物を処理する工程を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、病害抑制効果に優れる農業用組成物と、病害に対する耐性に優れる苗木製品と、病害の発生を抑制できる植物の栽培方法とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロイコバクター属微生物(H87-6)のゲノム配列に基づいて作成した分子系統樹を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態:農業用組成物>
本発明の第1実施形態は、農業用組成物に係る。農業用組成物は、ロイコバクター属微生物を含有する。
【0013】
農業用組成物は、上述の構成を備えることにより、病害抑制効果に優れる。農業用組成物は、青枯病防除に用いる農業用組成物として特に好適である。以下、発明者が農業用組成物を完成させるに至った経緯を簡単に説明する。
【0014】
従来から天然微生物を用いた生物的防除の可能性が検討され、各種天然微生物が土壌等からスクリーニングされている。しかし、従来の天然微生物を用いた生物的防除は、試験管レベル(in vitro)では優れた病害抑制効果を示すが、実際の圃場においては安定して効果を発揮することは困難である。これは、従来の生物的防除に用いられる天然微生物は、圃場に生息する土着の微生物との生存競争に負けてしまうためと推察される。
【0015】
発明者は、自然界に存在する微生物の多くが他の微生物と共生関係を構築しているという事実に着目した。そして、生物的防除に有効な天然微生物のスクリーニングに新しいアプローチで取り組んだ。
【0016】
具体的には、無農薬栽培又は減農薬栽培されている健康なトマトの根部から、トマトと共生している微生物を抽出した。そして、抽出された微生物の中から、青枯病に対する病害抑制効果を有する微生物をスクリーニングした。このようなスクリーニングでは、まず寒天培地上に微生物のコロニーを形成させる。コロニーの多くは、単一種の微生物により形成されるコロニーである。従来のスクリーニングでは、単一種の微生物により形成されるコロニーから抽出した単一種の微生物をスクリーニングする。一方、寒天培地上に形成されたコロニーの中には、共生関係にある複数種の微生物により形成される共生コロニーも存在する。発明者は、共生コロニーから抽出された複数種の微生物を含む微生物群をスクリーニングした。このスクリーニングでは、単独では生育速度又は病害抑制効果が不十分であるが、他の微生物との共生関係によって優れた病害抑制効果を発揮する微生物を漏らさずスクリーニングできると考えられる。
【0017】
発明者は、上述のスクリーニング及び更なる分析の結果、優れた病害抑制効果を有する微生物群(以下、便宜上「微生物群(H87-C5)」と記載する)を見出した。微生物群(H87-C5)は、2018年に滋賀県の圃場で栽培されたトマト(品種:千果)の根部を由来とする微生物群である。微生物群(H87-C5)には、2種のロイコバクター(Leucobacter)属微生物、1種類のアルカリゲネス(Alcaligenes)属微生物及び3種類のステノトロホモナス(Stenotrophomonas)属微生物から成る。これらの微生物は、単独でも優れた病害抑制効果を発揮するが、2種以上を組み合わせて使用することで更に優れた病害抑制効果を発揮する。以上の知見に基づいて、発明者は、農業用組成物を完成させた。
【0018】
微生物群(H87-C5)に含まれる6種の微生物のうち、1種のロイコバクター属微生物(以下、便宜上微生物(H87-6)と記載する)は、2022年4月22日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受託番号NITE P-03634(受領番号NITE AP-03634)で寄託されている。
【0019】
微生物群(H87-C5)に含まれる6種の微生物の属、寄託状況及び16SrRNA遺伝子の配列を下記表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
微生物群(H87-C5)が病害抑制効果を示す理由は不明であるが、例えば、微生物群(H87-C5)が抗生物質を生産する可能性、及び微生物群(H87-C5)が植物の免疫を活性化させる可能性が考えられる。発明者は、青枯病菌が一面に塗布された寒天培地上に微生物群(H87-C5)を少量滴下すると、滴下した微生物群(H87-C5)の周囲の青枯病菌の育成が阻害されることを確認している。この結果から、微生物群(H87-C5)は、抗生物質を生産する可能性がある。
【0022】
農業用組成物の態様は、有効成分としてロイコバクター属微生物と、必要に応じて含まれるアルカリゲネス属微生物又はステノトロホモナス属微生物とを含有する限り特に限定されない。農業用組成物に含有される上述の微生物は、乾燥状態又は凍結状態でもよい。また、農業用組成物は、上述の微生物のみを含有してもよいが、担体(例えば、水、緩衝液、培地、グリセロール溶液及び多孔質体)、各種添加剤(例えば、pH調整剤、保湿剤、防腐剤、賦形剤、乳化剤及び防カビ剤)、及び他の植物に有用な成分(例えば、殺虫成分、除草成分、成長促進成分、肥料成分及び抗生物質)を更に含有してもよい。更に、農業用組成物は、例えば、上述の微生物を染み込ませた養土であってもよい。
【0023】
(ロイコバクター属微生物)
ロイコバクター属微生物としては、例えば、下記表2に示す種が挙げられる。下記表2において、「NBRC」と記載されている4種は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター(NBRC)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)が分譲を行っている。また、この4種以外の他のロイコバクター属微生物についても、市販品の購入、研究機関からの分譲、又は土壌等の自然界からのスクリーニングによって入手できる。
【0024】
【表2】
【0025】
ロイコバクター属微生物は、配列番号1で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を含むことが好ましい。配列番号1で表される塩基配列は、微生物群(H87-C5)に含まれるロイコバクター属微生物(微生物(H87-6)及び(H87-25))の16SrRNA遺伝子の塩基配列である。ここで、16SrRNA遺伝子の塩基配列は、微生物の同定において一般的に用いられる配列である。特定の2種の微生物において、16SrRNA遺伝子の塩基配列の相同性が90.0%以上である場合、2種の微生物は近縁種であるとされる。また、特定の2種の微生物において、16SrRNA遺伝子の塩基配列の相同性が98.0%以上である場合、2種の微生物は同種である可能性が高いとされる。配列番号1で表される塩基配列と相同性が90.0%以上の16SrRNA遺伝子を含むロイコバクター属微生物は、微生物(H87-6)及び(H87-25-1)の同種又は近縁種であるため、特に優れた病害抑制効果を発揮すると判断される。同様に、ロイコバクター属微生物の含む16SrRNA遺伝子は、配列番号1で表される塩基配列と98.0%以上の相同性を有することがより好ましく、100.0%の相同性を有することが更に好ましい。
【0026】
なお、本明細書において、遺伝子の相同性とは、「BLAST (Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズム」により求められる相同性をいう。BLASTを使用する際の詳細な条件は、実施例に記載の条件と同様とすることができる。
【0027】
実施例で説明する通り、ロイコバクター属微生物(H87-6)のゲノム配列(配列番号5)は、近縁な種(Average nucleotide identity(ANI)≧95%)がデータベース上に存在せず、新種の可能性がある。ロイコバクター属微生物としては、配列番号5で表されるゲノム配列とのANIが95%以上である微生物が好ましく、受託番号NITE P-03634で寄託されているロイコバクター属微生物(H87-6)が最も好ましい。
【0028】
なお、受託番号NITE P-03634で寄託されているロイコバクター属微生物(H87-6)と最も近縁な種は、Leucobacter komagataeであった。そのため、ロイコバクター属微生物としては、Leucobacter komagataeも比較的好ましい。
【0029】
ロイコバクター属微生物は、例えば、R2A培地、NYBG培地、TBS培地又は2×YT培地を用いて25℃で2日~4週間程度培養することにより増殖させることができる。
【0030】
(アルカリゲネス属微生物)
農業用組成物は、アルカリゲネス属微生物を更に含むことが好ましい。アルカリゲネス属微生物は、単独でも一定の病害抑制効果を発揮するが、ロイコバクター属微生物と組み合わせることで更に優れた病害抑制効果を発揮する。このように、農業用組成物が共生関係にある2種以上の微生物を含有することにより、圃場に生息する土着の微生物との生存競争において有利に働くと判断される。
【0031】
ロイコバクター属微生物の含有量Lに対して、アルカリゲネス属微生物の含有量Aの比率(A/L)は、0.0001以上100.0以下が好ましく、0.5以上15.0以下が更に好ましく、0.5以上2.0以下又は8.0以上12.0以下が特に好ましい。比率(A/L)を0.0001以上100.0以下とすることで、農業用組成物は、更に優れた病害抑制効果を発揮する。なお、本明細書において、微生物の含有量は、濁度(OD600)によって定量されるものとする。
【0032】
アルカリゲネス属微生物としては、例えば、下記表3に示す種が挙げられる。下記表3において、「NBRC」と記載されている12種は、上述のNBRCが分譲を行っている。また、この12種以外の他のアルカリゲネス属微生物についても、市販品の購入、研究機関からの分譲、又は土壌等の自然界からのスクリーニングによって入手できる。
【0033】
【表3】
【0034】
アルカリゲネス属微生物は、配列番号2で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を含むことが好ましい。配列番号2で表される塩基配列は、微生物群(H87-C5)に含まれるアルカリゲネス属微生物(微生物(H87-33))の16SrRNA遺伝子の塩基配列である。配列番号2で表される塩基配列と相同性が90.0%以上の16SrRNA遺伝子を含むアルカリゲネス属微生物は、微生物(H87-33)の同種又は近縁種であるため、特に優れた病害抑制効果を発揮すると判断される。同様に、アルカリゲネス属微生物の含む16SrRNA遺伝子は、配列番号2で表される塩基配列と98.0%以上の相同性を有することがより好ましく、100.0%の相同性を有することが更に好ましい。
【0035】
実施例に示すように、微生物(H87-33)は、Alcaligenes faecalisと同種である可能性が高い。そのため、アルカリゲネス属微生物としては、Alcaligenes faecalisが好ましい。
【0036】
アルカリゲネス属微生物は、例えば、R2A培地、NYBG培地、TBS培地又は2×YT培地を用いて25℃で2日~4週間程度培養することにより増殖させることができる。
【0037】
(ステノトロホモナス属微生物)
農業用組成物は、ステノトロホモナス属微生物を更に含むことが好ましい。ステノトロホモナス属微生物は、単独でも一定の病害抑制効果を発揮するが、ロイコバクター属微生物と組み合わせることで更に優れた病害抑制効果を発揮する。
【0038】
ロイコバクター属微生物の含有量Lに対して、ステノトロホモナス属微生物の含有量Sの比率(S/L)は、0.0001以上100.0以下が好ましく、0.0001以上100.0以下が好ましく、0.5以上15.0以下が更に好ましく、0.5以上2.0以下又は8.0以上12.0以下が特に好ましい。比率(S/L)を0.0001以上100.0以下とすることで、農業用組成物は、更に優れた病害抑制効果を発揮する。
【0039】
ステノトロホモナス属微生物としては、例えば、下記表4に示す種が挙げられる。下記表4において、「NBRC」と記載されている2種は、上述のNBRCが分譲を行っている。また、この2種以外の他のステノトロホモナス属微生物についても、市販品の購入、研究機関からの分譲、又は土壌等の自然界からのスクリーニングによって入手できる。
【0040】
【表4】
【0041】
ステノトロホモナス属微生物は、配列番号3で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を含むことが好ましい。配列番号3で表される塩基配列は、微生物群(H87-C5)に含まれるアルカリゲネス属微生物(微生物(H87-40)、(H87-54)及び(H87-67))の16SrRNA遺伝子の塩基配列である。配列番号3で表される塩基配列と相同性が90.0%以上の16SrRNA遺伝子を含むステノトロホモナス属微生物は、微生物(H87-40)、(H87-54)及び(H87-67)の同種又は近縁種であるため、特に優れた病害抑制効果を発揮すると判断される。同様に、ステノトロホモナス属微生物の含む16SrRNA遺伝子は、配列番号3で表される塩基配列と98.0%以上の相同性を有することがより好ましく、100.0%の相同性を有することが更に好ましい。
【0042】
実施例に示すように、微生物(H87-40)、(H87-54)及び(H87-67)は、Stenotrophomonas maltophiliaと同種である可能性が高い。そのため、ステノトロホモナス属微生物としては、Stenotrophomonas maltophiliaが好ましい。
【0043】
ステノトロホモナス属微生物は、例えば、R2A培地、NYBG培地、TBS培地又は2×YT培地を用いて25℃で2日~4週間程度培養することにより増殖させることができる。
【0044】
(特に好ましい組成)
農業用組成物は、ロイコバクター属微生物と、アルカリゲネス属微生物と、ステノトロホモナス属微生物とを含有することが好ましい。この場合、ロイコバクター属微生物の含有量Lと、アルカリゲネス属微生物の含有量Aと、ステノトロホモナス属微生物の含有量Sとの比(L:A:S)は、「1.0:5.0~15.0:0.2~5.0」又は「1.0:0.2~5.0:5.0~15.0」が好ましく、「1.0:8.0~12.0:0.5~2.0」又は「1.0:0.5~2.0:8.0~12.0」がより好ましい。
【0045】
<第2実施形態:苗木製品>
本発明の第2実施形態は、苗木製品に係る。苗木製品は、養土と、養土によって栽培される苗木とを備える。苗木製品は、苗木及び養土のうち少なくとも1つが上述の農業用組成物によって処理されている。
【0046】
苗木製品は、苗木及び養土のうち少なくとも1つが上述の農業用組成物によって処理されていることにより、苗木の表面、苗木の内部、及び養土のうち少なくとも一部(以下、処理部と記載することがある)において、農業用組成物に由来するロイコバクター属微生物が大量に含まれる。例えば、苗木製品は、上述の農業用組成物によって処理されていない市販の同種の苗木製品と比較して、処理部において2倍以上の量(好ましくは5倍以上の量)のロイコバクター属微生物が含まれる。
【0047】
苗木製品において、苗木となる植物としては、例えば、ナス科植物、イネ科植物、ウリ科植物、キク科植物、アブラナ科植物及びセリ科植物が挙げられる。ナス科植物としては、例えば、ナス属植物(例えば、ナス、トマト及びジャガイモ)、トウガラシ属植物及びタバコ属植物が挙げられる。苗木となる植物としては、ナス科植物が好ましく、トマトがより好ましい。
【0048】
<第3実施形態:植物の栽培方法>
本発明の第3実施形態は、植物の栽培方法に係る。植物の栽培方法は、上述の農業用組成物によって植物を処理する工程を備える。
【0049】
植物の栽培方法において栽培される植物としては、上述の苗木となる植物として挙げたものと同様の植物を挙げることができる。
【0050】
農業用組成物によって植物を処理する方法としては、例えば、液体状の農業用組成物に植物の種子を浸漬させる方法、植物の表面に液体状の農業用組成物を塗布する方法、植物を栽培する土壌に予め農業用組成物を投与する方法、及び植物が栽培されている圃場に農業用組成物を散布する方法が挙げられる。また、接ぎ木で植物を栽培する場合、農業用組成物によって処理された台木用植物を、栽培する植物(穂木)の台木として使用する方法も挙げられる。
【0051】
ここで、植物の栽培方法では、病害抑制効果を高める観点から、植物のライフサイクルのなるべく早い段階で植物を農業用組成物で処理することが好ましいと判断される。そのため、農業用組成物によって植物を処理する方法としては、液体状の農業用組成物に植物の種子を浸漬させる方法が好ましい。浸漬時間としては、例えば、30分以上4時間以下とすることができる。
【実施例0052】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
[濁度の測定]
実施例において、濁度(OD600)の測定は、吸光光度計(WPA社製「CO7500」)を使用して行った。
【0054】
[培地]
実施例において使用した培地の調製方法を記載する。各培地の組成を下記表5に示す。なお、各培地の原料の詳細を以下に示す。
粉末R2A培地:R2A培地「ダイゴ」(日本製薬株式会社製)
ペプトン:バクトペプトン(Difco Laboratories社製)
粉末PDA寒天培地:Potato Dxtrose Agar(Difco Laboratories社製)
粉末TSB培地:TRYPTONE SOYA BROTH(OXOID社製)
酵母エキス:Bacto Yeast Extract(Difco Laboratories社製)
【0055】
(R2A培地)
水900mLに、下記表5に示す成分(粉末R2A培地3.2g)を添加し、攪拌した。次に、混合液に水を添加し、混合液の全量を1000mLにメスアップした。次に、混合液を121℃で15分間オートクレーブした。これにより、R2A培地を得た。
【0056】
(R2A寒天培地、PDA寒天培地、TSB培地、TSB寒天培地、素寒天培地、2×YT培地及び2×YT寒天培地)
水に添加する成分を下記表5及び表6に示す通りに変更した以外は、R2A培地の調製と同様の方法により、R2A寒天培地、PDA寒天培地(ポテトデキストロース寒天培地)、TSB培地、TSB寒天培地、素寒天培地、2×YT培地及び2×YT寒天培地を調製した。
【0057】
(NYGB培地)
水900mLに、下記表5に示す成分(ペプトン5.0g、酵母エキス3.0g、グリセロール20mL)を添加し、攪拌した。得られた混合液にNaOH水溶液及び塩酸を滴下し、混合液のpHを7.0に調整した。次に、混合液に水を添加し、混合液の全量を1000mLにメスアップした。次に、混合液を121℃で15分間オートクレーブした。これにより、NYGB培地を得た。
【0058】
(NYGB寒天培地、CPG培地及びCPG寒天培地)
水に添加する成分を下記表5及び表6に示す通りに変更した以外は、NYGB培地の調製と同様の方法により、NYGB寒天培地、CPG培地及びCPG寒天培地を調製した。
【0059】
(TTC寒天培地)
水900mLに、下記表6に示す成分(ペプトン10.0g、カザミノ酸1.0g、ブドウ糖5.0g及び寒天18.0g)を添加し、攪拌した。得られた混合液にNaOH水溶液及び塩酸を滴下し、混合液のpHを7.0に調整した。次に、混合液に水を添加し、混合液の全量を1000mLにメスアップした。次に、混合液を121℃で15分間オートクレーブした。次に、混合液の液温が50℃~60℃になるまで混合液を放冷させた。次に、孔径0.2μmのフィルターでろ過滅菌した1.0質量%テトラゾリウムクロライド(2,3,5-Triphenyl tetrazolium chloride)溶液を混合液に添加した。1.0質量%テトラゾリウムクロライド溶液の添加量は、混合液におけるテトラゾリウムクロライドの含有割合が50mg/Lとなる量とした。これにより、TTC寒天培地を得た。
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
<スクリーニング>
以下の方法により、農業用組成物に用いる微生物のスクリーニングを行った。まず、自然界から2000種の微生物サンプルを分離した。
【0063】
[微生物分離源]
無農薬又は減農薬の圃場(滋賀県)で栽培されているトマト(品種:千果)の根部を採取した。得られた根部に付着した土を水道水で洗い流した。その後、根部を石鹸水で10分間洗浄した。その後、根部を水道水で10分間洗浄した。その後、根部を1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬した。その後、根部を70質量%エタノール水溶液に2分間浸漬した。その後、根部を滅菌水で洗浄した。このようにして洗浄及び表面殺菌した根部を、微生物分離源とした。
【0064】
[コロニー採取]
次に、微生物分離源をすり潰し、滅菌水で希釈することで抽出液を得た。得られた希釈液を、直径9cmのシャーレ内に作製された5種類の寒天培地(素寒天培地、R2A寒天培地、ポテトデキストロース寒天培地(PDA寒天培地)、NYGB寒天培地及びTSB寒天培地)にそれぞれ50μLずつ塗布した。各寒天培地を25℃で保持することにより、微生物分離源に含まれていた微生物を培養した。各寒天培地には、培養に伴って徐々に微生物のコロニーが形成された。培養開始から2日後から4週間後にかけて、各寒天培地に形成されたコロニーを採取し続けた。この際、同種の微生物を重複して採取することを避けるため、コロニーの外観が同一であるコロニーは採取しないようにした。即ち、採取期間(培養開始から2日後~4週間後)中、各寒天培地に新しい外観のコロニー(今まで採取したコロニーとは外観が異なるコロニー)が形成された場合に、そのコロニーを採取するようにした。
【0065】
採取されたコロニーの多くは、共生関係にある複数種の微生物により形成される共生コロニーであった。なお、上述のコロニーの採取において使用した寒天培地(コロニーが形成された寒天培地)を「分離用寒天培地」と称呼することがある。
【0066】
[グリセロールストックの作製]
採取されたコロニーを、直径6cmのシャーレ内に作製された寒天培地に移植した。この際、R2A寒天培地、NYBG寒天培地及びTSB寒天培地から採取されたコロニーは、同種の寒天培地に移植した。一方、PDA寒天培地及び素寒天培地から採取されたコロニーは、それぞれ、2×YT寒天培地に移植した。移植後の各コロニーを、それぞれ、25℃で培養した。各コロニーに含まれる微生物が十分に増殖した後、増殖した微生物を回収してグリセロール含有分散媒に分散させた(グリセロール濃度15体積%)。このようにして得られたサンプル(以下、グリセロールストックと記載する)を-80℃で凍結保存した。上述の操作により、2000種の微生物サンプルのグリセロールストックを得た。
【0067】
なお、上述のグリセロールストックの作製において使用した寒天培地(R2A寒天培地、NYBG寒天培地、TSB寒天培地及び2×YT寒天培地)から寒天を除いた液体培地(R2A培地、NYBG培地、TSB培地及び2×YT培地)を、「分離用液体培地」と称呼することがある。
【0068】
次に、2000種の各微生物のそれぞれに対して、シードリングバイオアッセイ及びポット試験を行い、病害抑制効果を評価した。まず、各試験で使用する青枯病菌含有懸濁液及び微生物懸濁液の準備方法を説明した後、各試験の詳細を説明する。
【0069】
[青枯病菌含有懸濁液の準備]
評価用の青枯病菌として、Ralstonia pseudosolanacearum三保1株(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の農業生物資源ジーンバンク事業から受領)を使用した。上述の青枯病菌のグリセロールストック(-80℃保存)をTTC寒天培地のプレートに塗布し、温度30℃で2日間培養した。これにより、TTC寒天培地のプレートにコロニーが形成された。次に、TTC寒天培地のプレートからコロニー(菌体)を数10μL掻き取った。次に、12.5mLのCPG培地が入っているフラスコに、上述の菌体を投入し、温度30℃で24時間培養した。なお、培養中、フラスコを攪拌速度200rpmで攪拌した。
【0070】
次に、培養により得られた培養液を4000rpmで25分間遠心分離し、上澄み液及び沈殿物(青枯病菌)を得た。遠心分離後、上澄み液を捨て、沈殿物に滅菌水12.5mLを投入した。次に、ピッティングによって沈殿物及び滅菌水を懸濁し、懸濁液を得た。次に、懸濁液を4000rpmで25分間遠心分離し、上澄み液及び沈殿物(青枯病菌)を得た。遠心分離後、上澄み液を捨て、底に残った沈殿物を回収した。次に、沈殿物を水に懸濁することにより、青枯病菌含有懸濁液を調製した。青枯病菌含有懸濁液の調製においては、青枯病菌含有懸濁液の濁度(OD600)が1.0となるように、沈殿物及び水の使用量を調整した。得られた青枯病菌含有懸濁液を以下で用いた。
【0071】
[微生物懸濁液の準備]
各微生物サンプルのグリセロールストック(-80℃保存)を、シャーレ内に作製された寒天培地に塗布し、温度25℃で4~6日間培養した。培養に用いた寒天培地としては、各微生物サンプルを分離する際に使用した分離用寒天培地と同種の観点培地を用いた。これにより、寒天培地上にコロニーを形成させた。次に、寒天培地からコロニー(菌体)を数μL掻き取った。次に、2mLの液体培地が入っているフラスコに、上述の菌体を投入し、温度28℃で2日間培養した。なお、培養中、フラスコを攪拌速度200rpmで攪拌した。培養に用いた液体培地としては、各微生物サンプルを分離する際に使用した分離用液体培地と同種の液体培地を用いた。
【0072】
次に、培養により得られた培養液を3000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液及び沈殿物(微生物サンプル)を得た。遠心分離後、上澄み液を捨て、沈殿物に滅菌水2mLを投入した。次に、ピッティングによって沈殿物及び滅菌水を懸濁し、懸濁液を得た。次に、懸濁液を3000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液及び沈殿物(微生物サンプル)を得た。遠心分離後、上澄み液を捨て、底に残った沈殿物を回収した。沈殿物を水に懸濁することにより、微生物懸濁液を調製した。微生物懸濁液の調製においては、微生物懸濁液の濁度(OD600)が0.1となるように、沈殿物及び水の使用量を調整した。このようにして、2000種の微生物サンプルのいずれかを含む微生物懸濁液を2000種調製した。
【0073】
[シードリングバイオアッセイ]
シャーレにトマト(品種:千果)の種子12個を投入した。このシャーレに微生物懸濁液(OD600:0.1)を投入し、2時間静置した。微生物懸濁液の投入量は、種子が微生物懸濁液に十分に浸漬する量とした。これにより、種子を微生物懸濁液で処理した。
【0074】
赤玉土及び野菜養土(ヤンマーアグリ株式会社製「H-150」)を赤玉土:野菜養土=3:1の体積比率で混合し、培土を調製した。植物培養試験管(φ40mm)に、培土30mL及び滅菌水8mLを投入した。次に、微生物懸濁液で処理した後の種子12個を植物培養試験管に投入(播種)した。次に、植物培養試験管に、微生物懸濁液(OD600:0.1)2mLを灌注した。次に、植物培養試験管にバーミキュライト1mLを投入した。この際、バーミキュライトが種子を覆うようにした。次に、植物培養試験管に播種された種子を温度28℃で9日間栽培した。
【0075】
(シードリングバイオアッセイでの発病低減率)
次に、植物培養試験管に青枯病菌含有懸濁液(OD600:1.0)4mLを灌注した。次に、植物培養試験管に播種された種子を温度32℃で3週間栽培した。その後、植物培養試験管において、発芽した個体の数(発芽数)と、発芽した個体のうち青枯病を発病した個体の数(発病数)とを計測した。同様の試験を植物培養試験管3本で行い、各植物培養試験管での発病数及び発芽数の合計をそれぞれ総発病数及び総発芽数とした。「発病率=100×総発病数/総発芽数」を算出した。得られた発病率を発病率Xとした。
【0076】
コントロール試験として、微生物懸濁液の代わりに滅菌水を用い、それ以外は上述した操作と同様の操作を行い、発病率を求めた。得られた発病率を発病率Yとした。「発病低減率=(発病率Y-発病率X)/発病率Y」を算出した。得られた発病低減率を、シードリングバイオアッセイにおける病害抑制効果の評価値とした。
【0077】
[微生物の有力候補]
2000種の微生物懸濁液を用いて、上述のシードリングバイオアッセイを行い、2000種の微生物サンプルのそれぞれの病害抑制効果を求めた。発病低減率が50%を超えていた微生物サンプルを、農業用組成物に用いる微生物の有力候補とした。有力候補として選抜された9種類の微生物サンプルの便宜上の名称と、シードリングバイオアッセイにおける発病低減率とを下記表7に示す。
【0078】
【表7】
【0079】
上述の9種類の微生物サンプルについて、実際の圃場に比較的近い条件の試験であるポット試験を行い、病害抑制効果を更に評価した。
【0080】
[ポット試験]
シャーレにトマト(品種:千果)の種子12個を投入した。このシャーレに微生物懸濁液(OD600:0.1)を投入し、2時間静置した。微生物懸濁液の投入量は、種子が微生物懸濁液に十分に浸漬する量とした。これにより、種子を微生物懸濁液で処理した。
【0081】
セルトレイの各穴(縦30mm×横30mm)に、上述の野菜養土を投入した。次に、セルトレイの各穴に、微生物懸濁液で処理された種子を1粒ずつ播種した。次に、セルトレイの各穴に、微生物懸濁液(OD600:0.1)2mLを灌注した。次に、セルトレイの各穴に、バーミキュライト5mLを投入した。この際、バーミキュライトが種子を覆うようにした。次に、セルトレイの各穴に播種された種子を、温度25~28℃で3週間栽培した。これにより、種子が成長して苗を形成した。
【0082】
次に、直径60mmのポットに、上述の苗を移植した。次に、苗を25~28℃で9日間栽培した。これにより、本葉4葉の苗に成長させた。次に、上述の苗を栽培しているポットに、底面給水によって青枯病菌含有懸濁液(OD600:1.0)2mLを供給した。これにより、苗に青枯病菌を接種した。次に、苗を32℃で2週間栽培した。その後、苗が青枯病を発病したか否かを観察した。ポット試験は、各微生物サンプルについて、8本の苗(n=8)に対して行った。
【0083】
(ポット試験での発病低減率)
ポット試験の結果から、「発病率=100×発病した苗の数/苗の総数(8本)」を算出した。得られた発病率を発病率xとした。
【0084】
コントロール試験として、微生物懸濁液の代わりに滅菌水を用い、それ以外は上述した操作と同様の操作を行い、発病率を求めた。得られた発病率を発病率yとした。「発病低減率=(発病率y-発病率x)/発病率y」を算出した。得られた発病低減率を、ポット試験における病害抑制効果の評価値とした。
【0085】
[微生物サンプル(H87)の選抜]
上述の9種類の微生物サンプルに対応する微生物懸濁液を用いて、上述のポット試験を3回行った。そして、3回のポット試験において、発病低減率の平均値が正の値であり、かつ少なくとも1回のポット試験において発病低減率が30%以上であった微生物サンプルを合格とした。そして、合格した微生物サンプルについては、更なる確認のために、対応する微生物懸濁液を用いて4回目のポット試験を行った。一方、上述の条件を満たさなかった微生物サンプルについては、不合格とし、4回目のポット試験は行わなかった。4回のポット試験における発病低減率の平均値を、その微生物サンプルの病害抑制効果の最終評価とした。なお、4回目のポット試験を行わなかった微生物サンプルは、病害抑制効果なしと判断した(下記表8における「-」)。評価結果を下記表8に示す。
【0086】
【表8】
【0087】
ポット試験において、最も優れた病害抑制効果を示した微生物サンプル(H87)を、農業用組成物に用いる微生物のベースとした。次に、微生物サンプル(H87)について、更なる解析を行った。
【0088】
[微生物サンプル(H87)を構成する微生物の単離]
微生物サンプル(H87)は、共生コロニーに由来し、共生関係にある複数種の微生物を含有する微生物サンプルであった。微生物サンプル(H87)は、上述の「コロニー採取」において、NYGB寒天培地に形成されたコロニーに由来する微生物サンプルであった。そこで、以下の点を変更した以外は、上述の「コロニー採取」と同様の方法により、微生物サンプル(H87)を構成する各微生物の単離を行った。
【0089】
詳しくは、上述の「コロニー採取」においては、微生物分離源から調製した抽出液を5種類の寒天培地に塗布した。これに対して、微生物サンプル(H87)を構成する微生物の単離においては、微生物サンプル(H87)を、NYGB寒天培地に塗布した。これにより、微生物サンプル(H87)を構成する微生物に由来するコロニーを80種採取した。採取したコロニーに対して、上述の「グリセロールストックの作製」と同様の操作を行うことにより、微生物サンプル(H87)を構成する微生物として単離された微生物サンプルのグリセロールストックを作製した。
【0090】
微生物サンプル(H87)を構成する微生物の中には、好ましくない微生物(例えば、病害抑制効果とは無関係の微生物、及び青枯病の発病を逆に促進する微生物)が含まれている可能性がある。そこで、微生物サンプル(H-87)から採取された微生物サンプルに対して、上述のシードリングバイオアッセイを行い、各微生物サンプルの病害抑制効果を求めた。このシードリングバイオアッセイでは、好ましくない微生物の排除を目的とする。シードリングバイオアッセイにおいて、発病低減率の閾値を高くしすぎると、他の微生物の病害抑制効果を増進する機能を有するものの、単独では病害抑制効果が弱い微生物まで排除してしまうおそれがある。そのため、このシードリングバイオアッセイでは、発病低減率の閾値を10%超に設定した。
【0091】
発病低減率が10%を超えていた微生物サンプルの便宜上の名称と、シードリングバイオアッセイにおける発病低減率とを下記表9に示す。このようにして、微生物サンプル(H87)が病害抑制効果を発揮するために必要な微生物の候補として、7種の微生物サンプルを単離した。
【0092】
【表9】
【0093】
[微生物群(H87-C0)~(H87-C7)の作製]
上述の7種の微生物サンプルを混合し、微生物サンプル(H87-C0)を再構築した。詳しくは、7種の微生物サンプルについて、上述の「微生物懸濁液の準備」と同様の方法により、微生物懸濁液を得た。得られた7種の微生物サンプルの微生物懸濁液を等量ずつ混合することにより、微生物群(H87-C0)の懸濁液を得た。微生物群(H87-C0)は、微生物サンプル(H87)と比較し、好ましくない微生物が含まれていないため、より優れた病害抑制効果を発揮すると判断される。
【0094】
また、上述の7種の微生物サンプルの中には、単独で病害抑制効果を有するものの、他の微生物の病害抑制効果を阻害する効果も有し、トータルでは微生物サンプル(H87)の病害抑制効果を低下させている微生物サンプルが含まれる可能性がある。そこで、別途、7種の微生物サンプルの微生物懸濁液を下記表10の通りに等量ずつ混合することにより、微生物群(H87-C1)~(H87-C7)の懸濁液を得た。微生物群(H87-C1)~(H87-C7)は、微生物群(H87-C0)から1種の微生物サンプルを除いたものに相当する。微生物群(H87-C1)~(H87-C7)は、他の微生物の病害抑制効果を阻害する微生物サンプルの有無を見つけるために作製した。
【0095】
【表10】
【0096】
[微生物群(H87-C0)~(H87-C7)の評価]
微生物群(H87-C0)~(H87-C7)の懸濁液、及び滅菌水(コントロール)を用いて、上述のポット試験を3回行った。この際、病害抑制効果をより詳細に解析するため、以下の方法で発病度を評価した。
【0097】
(ポット試験での発病度)
ポット試験後、8本の苗(n=8)について、青枯病が発病しているか否かを観察した。この際、青枯病が発病している苗については、葉の総数と、萎れている葉の数とを計測した。そして、各苗の発病程度を下記基準に沿って判断した。
【0098】
(苗の発病程度)
程度0:発病なし。
程度1:葉の総数のうち25%以下の葉が萎れている。
程度2:葉の総数のうち25%超50%以下の葉が萎れている。
程度3:葉の総数のうち50%超75%以下の葉が萎れている。
程度4:葉の総数のうち75%超の葉が萎れている。
【0099】
8本の苗について、各苗の発病程度の合計値を算出した。例えば、8本の苗のうち、1本の苗が程度0、2本の苗が程度1、2本の苗が程度2、2本の苗が程度3、1本の苗が程度4であった場合、「0×1+1×2+2×2+3×2+4×1=16」を発病程度の合計値とした。発病程度の合計値に基づいて、下記式により発病度を算出した。3回行ったポット試験の各回での発病度の平均値を、微生物群(H87-C0)~(H87-C7)の病害抑制効果の評価値とした。評価結果を下記表11に示す。
「発病度=Σ(苗の発病程度の合計値)×100/(苗の総数(8本))×4」
【0100】
【表11】
【0101】
表11に示すように、微生物群(H87-C0)~(H87-C7)は、いずれも、コントロールよりも発病度が低かった。即ち、微生物群(H87-C0)~(H87-C7)は、病害抑制効果を発揮した。この中でも、微生物群(H87-C5)は、微生物群(H87-C0)よりも優れた病害抑制効果を発揮した。微生物群(H87-C5)は、上述の通り、微生物(H87-6)、(H87-25)、(H87-33)、(H87-40)、(H87-54)及び(H87-67)の混合物であった。このことから、上述の6種の微生物は、単独でも病害抑制効果を発揮し、組み合わされることで病害抑制効果が向上すると判断される。
【0102】
[拮抗試験]
以下の方法により、微生物群(H87-C0)及び(H87-C5)と、微生物(H87-6)、(H87-25)、(H87-33)、(H87-40)、(H87-54)及び(H87-67)を評価対象として、拮抗試験を行った。まず、直径9cmのシャーレ内に、CPG寒天培地を形成した。次に、CPG寒天培地上に、青枯病菌含有懸濁液(OD600:1.0)200μLを滴下した。次に、CPG寒天培地上に滴下した青枯病菌含有懸濁液を、コンラージ棒を用いて全面に塗り広げた。次に、評価対象の微生物懸濁液(OD600:0.1)及び滅菌水(コントロール)を、異なる位置(スポット)にそれぞれ15μLずつ滴下した。その後、CPG寒天培地を30℃で2日間静置し、青枯病菌及び滴下した微生物懸濁液に含まれる微生物を培養した。
【0103】
培養により、CPG寒天培地上のほぼ全面で、青枯病菌が増殖した。一方、評価対象を滴下した位置(スポット)の周囲には、青枯病菌が増殖しないリング状の領域(阻止円)が形成された。コントロール(滅菌水)を滴下した位置の周囲には、阻止円が形成されなかった。阻止円は、評価対象が青枯病菌の増殖を阻害したことを示す。阻止円のサイズが大きいほど、評価対象が青枯病菌の増殖を効果的に阻害したことを示す。拮抗試験の結果を下記表12に示す。なお、下記表12において、拮抗試験の結果の説明は、以下に示す通りである。
【0104】
(拮抗試験の結果)
-:阻止円が形成されなかった。
+:外径20mm以下の阻止円が形成された。
++:外径20mm超30mm以下の阻止円が形成された。
+++:外径30mm超の阻止円が形成された。
【0105】
【表12】
【0106】
表12に示す通り、各評価対象は、阻止円を形成した。このことから、各評価対象は、青枯病菌の増殖を阻害することで病害抑制効果を発揮すると判断される。また、微生物群(H87-C5)は、微生物群(H87-C0)よりも大きい阻止円を形成した。微生物群(H87-C5)を構成する6種の微生物は、単独でも一定の病害抑制効果を発揮した。これらの結果は、上述のポット試験の結果と概ね一致していた。
【0107】
<微生物の同定>
微生物群(H87-C5)を構成する微生物(H87-6)、(H87-25)、(H87-33)、(H87-40)、(H87-54)及び(H87-67)について、属種の同定を行った。また、微生物群(H87-C5)に含めなかった微生物(H87-50)についても、属種の同定を行った。
【0108】
対象となる微生物のグリセロールストックを、シャーレ内に形成されたNYGB寒天培地に画線培養した。次に、NYGB寒天培地を25℃で4~6日間静置することにより、対象となる微生物に由来するコロニーをNYGB寒天培地上に形成させた。
【0109】
次に、NYGB寒天培地上に形成されたコロニーを掻き取り、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRでは、以下の配列の16SrRNA遺伝子増幅用のDNA増幅プライマーを用いた。このDNA増幅プライマーは、細菌の16SrRNA遺伝子の超可変領域であるV1領域-V5領域を含む領域(以下、特定領域と記載する)を増幅するためのDNA増幅プライマーであった。PCRにより、特定領域に係るDNAを増幅した。
Fwプライマー(27F):AGAGTTTGATCCTGGCTCAG
Rvプライマー(907R):CCGTCAATTCMTTTRAGTTT
【0110】
PCRを行った後、得られた反応生成物に含まれるDNAをアガロース電気泳動で分離し、特定領域に係るDNAを単離した。次に、単離したDNAをシークエンスし、特定領域の塩基配列を解析した。このようにして、上述のコロニーに含まれる微生物の特定領域の塩基配列を解析した。
【0111】
微生物(H87-6)は、特定領域の塩基配列の解析において、配列番号1で表される塩基配列を有する微生物を含むコロニーであった。
【0112】
同様に、微生物(H87-25)、(H87-33)、(H87-40)、(H87-50)、(H87-54)、(H87-67)の解析を行った。結果を下記表13に示す。
【0113】
16SrRNA遺伝子解析による細菌の系統分類方法に準拠し、微生物(H87-6)の同定を行った。16SrRNA遺伝子解析においては、NCBI(アメリカ国立生物工学情報センター)で提供されているBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を利用した。詳しくは、BLASTを用いて、配列番号1で表される塩基配列と、データベースに登録された様々な微生物の塩基配列との相同性を解析した。配列番号1で表される塩基配列と最も相同性の高い16SrRNA遺伝子を有する微生物は、微生物(H87-6)と同種又は近縁種であると判断される。
【0114】
配列番号1で表される塩基配列は、Leucobacter komagataeの16SrRNA遺伝子と非常に高い相同性を有していた(下記表14)。そのため、微生物(H87-6)は、ロイコバクター属微生物であると判断した。また、微生物(H87-6)は、Leucobacter komagataeの同種又は近縁種である可能性が高いと判断した。
【0115】
同様の解析を、他の微生物に対しても行った。結果を下記表13に示す。なお、下記表13において、「WGSS」、「CG」及び「CS」は、それぞれ、「whole genome shotgun sequence」、「complete genome」及び「complete sequence」の略語を示す。
【0116】
【表13】
【0117】
以上の通り、発明者は、高い病害抑制効果を有する微生物群(H87-C5)を自然界からスクリーニングすることに成功した。微生物群(H87-C5)には、2種のロイコバクター属微生物、1種のアルカリゲネス属微生物及び3種のステノトロホモナス属微生物が含まれていた。ロイコバクター属微生物、アルカリゲネス属微生物及びステノトロホモナス属微生物は、単独でも病害抑制効果を発揮するが、組み合わされることで更に優れた病害抑制効果を発揮した。微生物群(H87-C5)に含まれていた微生物(H87-6)については、上述の特許微生物寄託センターに寄託を行った。
【0118】
<ゲノム解析>
微生物(H87-6)について、ゲノム解析を行った。その結果、配列番号5で示すゲノム配列を得た。ゲノム解析の方法としては、具体的には、NucleoSpin@Microbial DNA(Macherey-Nagel.社製)を使用し、使用説明書に従ってゲノムDNAを抽出した(ゲノム配列の解析は、株式会社生物技研において実施された)。ゲノムDNAは、AMPure XP(BECKMAN COULTER社製)を使用し精製した。次に、精製したゲノムDNAを、g-tube(Covaris社製)を使用し断片化した。次に、断片化したゲノムDNAについて、SMRTbell(登録商標)Express Template Prep Kit 2.0(PacBio社製)を使用して、Procedure&Checklist-Preparing HiFi Libraries from Low DNA Input Using SMRTbell(登録商標)Express Template Prep Kit 2.0のマニュアル通りにライブラリーを調製した。Binding kit 2.2(PacBio社製)を使用してマニュアル通りに作製されたライブラリーのポリメラーゼ複合体を使用して、Sequel IIe(PacBio社製)によってシーケンシングを行った。
【0119】
得られた微生物(H87-6)のゲノム配列について、NCBIに登録されているゲノム配列との比較解析を上述のBLASTを用いて行った。その結果、微生物(H87-6)のゲノム配列と近縁(Average nucleotide identity(ANI)≧95%)な種は登録されていないことを確認した。そのため、微生物(H87-6)は、ロイコバクター属の新種である可能性があると判断した。
【0120】
次に、微生物(H87-6)のゲノム配列に基づいて、NCBIに登録されている他のロイコバクター属微生物のゲノム配列との系統関係を示す系統樹を作成した。系統樹の作成においては「Type strain genome server」(TYGS、https://tygs.dsmz.de/)を利用した。作成した分子系統樹を図1に示す。図1において、微生物(H87-6)のゲノム配列の位置は、「Leucobacter sp.H87-6」に示す。バーは、塩基配列の置換数の尺度を示す。図1に示すように、微生物(H87-6)と比較的近縁な種は、Leucobacter komagatae strain DSM 8803であった。
【0121】
<混合比率の検討>
上述の微生物サンプルのうち、微生物(H87-6)(L:ロイコバクター属)、微生物(H87-33)(A:アルカリゲネス属)及び微生物(H87-40)(S:ステノトロホモナス属)について、上述の「微生物懸濁液の準備」と同様の方法により、微生物懸濁液を得た。得られた微生物懸濁液を下記表14に示す混合比率(基準:濁度)で混合し、必要に応じて滅菌水で希釈することにより、サンプル(L1A1S1)、サンプル(L1A0.1S0.1)、サンプル(L1A10S1)及びサンプル(L1A1S10)を得た(何れも濁度(OD600)=0.5)。別途、コントロールとして、滅菌水を準備した。
【0122】
【表14】
【0123】
トマト(品種:千果)の種子を表面殺菌した。滅菌した紙製タオルを滅菌水に浸し、その上に上述の表面殺菌した種子を載置した。28℃で2日間静置することにより、種子を発根させた。これにより、発根した種子を得た。
【0124】
(サンプル(L1A1S1)の発病率xの測定)
上述の発根した種子10個をシャーレに投入した。このシャーレにサンプル(L1A1S1)(OD600:0.5)を投入し、室温で2時間静置した。これにより、発根した種子をサンプル(L1A1S1)で処理した。
【0125】
赤玉土及び野菜養土(ヤンマーアグリ株式会社製「H-150」)を赤玉土:野菜養土=3:1の体積比率(質量比率=6:1)で混合し、培土を調製した。植物培養試験管(φ40mm)に、培土30mL及び滅菌水8mLを投入した。次に、サンプル(L1A1S1)で処理した後の発根した種子10個を植物培養試験管に投入(播種)した。次に、植物培養試験管に、サンプル(L1A1S1)(OD600:0.5)2mLを灌注した。次に、植物培養試験管に播種された種子を温度25℃で9日間栽培した。
【0126】
次に、植物培養試験管に青枯病菌含有懸濁液(OD600:1.0)2.6mLを灌注した。なお、青枯病菌含有懸濁液(OD600:1.0)のCFUは、8×108cfu/mLであった。次に、植物培養試験管に播種された種子を温度32℃で10日間栽培した。その後、植物培養試験管において、青枯病を発病した個体の数(発病数)を計測した。発根した種子の総数10個のうちの発芽した種子の数(発芽種子数)に対する発病数の比率である発病率x(100×発病数/発芽種子数)を算出した。
【0127】
サンプル(L1A1S1)(OD600:0.5)の代わりに、サンプル(L1A0.1S0.1)(OD600:0.5)、サンプル(L1A10S1)(OD600:0.5)、サンプル(L1A1S10)(OD600:0.5)又はコントロールを用いた以外は、上述の試験と同様の操作を行い、各サンプル又はコントロールを用いた際の発病率xを求めた。また、コントロールの発病率xと、各サンプルの発病率xとを下記式に当てはめ、得られた数値を各サンプルの発病低減率とした。結果を下記表15に示す。
発病低減率[%]=(コントロールの発病率(86%)-各サンプルの発病率x)/コントロールの発病率(86%)
【0128】
【表15】
【0129】
表15に示すように、何れのサンプルも一定の発病低減率を示したが、最も発病低減率が高かったのはサンプル(L1A10S1)又はサンプル(L1A1S10)であった。そのため、農業用組成物において、ロイコバクター属微生物、アルカリゲネス属微生物及びステノトロホモナス属微生物の混合比率としては、ロイコバクター属微生物:アルカリゲネス属微生物:ステノトロホモナス属微生物=1:10:1又は1:1:10が好ましいと判断される。
【0130】
本願は、以下の付記を開示する。以下の付記は、本発明を限定するものではない。
【0131】
(付記1)
ロイコバクター属微生物を含有する、農業用組成物。
【0132】
(付記2)
前記ロイコバクター属微生物は、配列番号1で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を含む、付記1に記載の農業用組成物。
【0133】
(付記3)
前記ロイコバクター属微生物は、受託番号NITE P-03634で寄託された株である、付記2に記載の農業用組成物。
【0134】
(付記4)
アルカリゲネス属微生物を更に含有する、付記1~3の何れかに記載の農業用組成物。
【0135】
(付記5)
前記アルカリゲネス属微生物は、配列番号2で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を有する、付記4に記載の農業用組成物。
【0136】
(付記6)
前記ロイコバクター属微生物の含有量Lに対して、前記アルカリゲネス属微生物の含有量Aの比率(A/L)は、0.0001以上100.0以下である、付記4又は5に記載の農業用組成物。
【0137】
(付記7)
前記比率(A/L)は、0.5以上15.0以下である、付記6に記載の農業用組成物。
【0138】
(付記8)
ステノトロホモナス属微生物を更に含有する、付記1~7の何れかに記載の農業用組成物。
【0139】
(付記9)
前記ステノトロホモナス属微生物は、配列番号3で表される塩基配列と90.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を有する、付記8に記載の農業用組成物。
【0140】
(付記10)
前記ロイコバクター属微生物の含有量Lに対して、前記ステノトロホモナス属微生物の含有量Sの比率(S/L)は、0.0001以上100.0以下である、付記8又は9に記載の農業用組成物。
【0141】
(付記11)
前記比率(S/L)は、0.5以上15.0以下である、付記10に記載の農業用組成物。
【0142】
(付記12)
青枯病防除に用いられる、付記1~11の何れかに記載の農業用組成物。
【0143】
(付記13)
養土と、前記養土によって栽培される苗木とを備える苗木製品であって、
前記苗木及び前記養土のうち少なくとも1つが付記1~11の何れかに記載の農業用組成物によって処理されている、苗木製品。
【0144】
(付記14)
植物の栽培方法であって、
付記1~11の何れかに記載の農業用組成物によって前記植物を処理する工程を備える、植物の栽培方法。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、農業に用いることができる。
図1
【配列表】
2023174611000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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