(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174612
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電気化学発光ナノプローブ、その調製方法、核酸特異的サイト修飾の電気化学発光検出方法、抗体による電気化学発光検出方法のキット、及び電気化学発光ナノプローブ用ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
G01N 21/66 20060101AFI20231130BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20231130BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01N21/66
G01N33/543 541A
G01N33/53 M
G01N33/53 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087169
(22)【出願日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】202210592343.6
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】シュ チチ
(72)【発明者】
【氏名】ウー シャオティエン
(72)【発明者】
【氏名】ヂィー フアンシィェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ヂィエ
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043EA06
(57)【要約】
【課題】核酸特異的サイト修飾を簡便、高感度、迅速、かつ汎用性が高い電気化学発光検出方法を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る電気化学発光ナノプローブの調製方法は、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程とを含む。前記二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を識別するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、
二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、
を含み、
前記二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を識別するように構成される、
電気化学発光ナノプローブの調製方法。
【請求項2】
前記無機酸化物ナノ粒子は、二酸化ケイ素ナノ粒子、二酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、又は酸化鉄ナノ粒子、或いは二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化鉄が被覆されているナノ粒子である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記無機酸化物ナノ粒子は、二酸化ケイ素ナノ粒子である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記二次抗体は、前記特異的抗体の汎用部分を識別するタンパク質である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
前記金属錯体イオンは、トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯体イオン(Ru(bpy)3
2+)である、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、を含み、前記二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を識別するように構成される電気化学発光ナノプローブの調製方法により調製される、
電気化学発光ナノプローブ。
【請求項7】
捕捉核酸が修飾されている磁性ビーズを第1反応試薬として、検出される試料と混合し、試料中の標的核酸の修飾を識別及び捕捉する第1工程と、
核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を第2反応試薬として標的核酸の特異的サイト修飾に捕捉及び標識を行う第2工程と、
金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、を含み、前記二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を識別するように構成される電気化学発光ナノプローブの調製方法により調製される電気化学発光ナノプローブを第3反応試薬として第2工程で得られた磁性ビーズ捕捉核酸-標的核酸-特異的抗体との複合体に検出信号標識を行う第3工程と、
前記第3工程で得られた磁性ビーズ捕捉核酸-標的核酸-特異的抗体-ナノプローブとの複合体を電極表面に置き、共反応剤を添加した後に電気化学発光検出を行い、電気化学発光信号の有無及び強度に基づいて前記標的核酸の修飾に対して定性及び定量分析を行う第4工程とを含む、
核酸特異的サイト修飾の電気化学発光検出方法。
【請求項8】
前記標的核酸は、DNA(deoxyribonucleic acid)又はRNA(ribonucleic acid)である、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項9】
前記特異的サイト修飾は、メチル化修飾、メチロール化修飾、又はプソイドウリジン化修飾である
請求項7に記載の検出方法。
【請求項10】
前記捕捉核酸は、末端にビオチンが結合され、ビオチン-ストレプトアビジン反応により前記磁性ビーズに修飾されている、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項11】
前記共反応剤は、トリプロピルアミンである、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項12】
前記電極は、ガラス炭素電極、ITO(Indium Tin Oxide)電極、スクリーン印刷電極から選択される一種である、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項13】
前記第4工程で使用される電気化学発光電解質のpHは6.5以上である、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項14】
前記共反応剤の濃度は10mM以上である、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項15】
前記特異的抗体の濃度は1μg/mL以上である、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項16】
前記特異的抗体添加後のインキュベーション時間は10分間以上である、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項17】
前記電気化学発光ナノプローブの濃度は4μg/mL以上である、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項18】
前記電気化学発光ナノプローブ添加後のインキュベーション時間は15分間以上である、
請求項7に記載の検出方法。
【請求項19】
金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、を含み、前記二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を識別するように構成される電気化学発光ナノプローブの調製方法により調製される電気化学発光ナノプローブを含む、
抗体による電気化学発光検出方法のキット。
【請求項20】
金属錯体イオンが添加された無機酸化物を備える、
電気化学発光ナノプローブ用ナノ粒子。
【請求項21】
金属錯体イオンが添加された無機酸化物ナノ粒子と、当該無機酸化物ナノ粒子と結合した二次抗体とを含む、
電気化学発光ナノプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、電気化学発光ナノプローブ、その調製方法、核酸特異的サイト修飾の電気化学発光検出方法、抗体による電気化学発光検出方法のキット、及び電気化学発光ナノプローブ用ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸、例えばDNA(deoxyribonucleic acid)及びRNA(ribonucleic acid)には様々な化学修飾が存在し、これらの化学修飾は核酸配列を変更しない前提で、調節メカニズムとして遺伝子の発現を動的に調節する。
【0003】
DNAメチル化(DNA methylation)はシトシンの5番目の炭素原子に発生し、安定的に遺伝できる見かけの修飾であり、動植物ゲノムに広く存在する。DNAメチル化は哺乳動物の成長発育過程において様々な生理学的過程に広く関与し、遺伝子サイレンシング、ゲノムインプリンティング(genomic imprinting)、X染色体不活性化及び疾患の発生等を含む。
【0004】
一部の腫瘍の発生が特定の遺伝子の高メチル化イベントに伴い、かつ遺伝子の局所的な高メチル化イベントが細胞の悪性増殖より早く発生するので、特定の遺伝子のメチル化レベルの検出は腫瘍早期予測及び診断の重要な根拠の一つとすることができる。例えば、早期の結腸癌(CRC:colorectal cancer)スクリーニング検出は、見かけの遺伝的バイオマーカーに基づいて行われ、FDA(Food and Drug Administration)は既に特定遺伝子プロモーターCpGメチル化の増加を検出することによりCRCの早期スクリーニング及び補助診断を行うことを認定した(非特許文献1参照)。また、腫瘍の種類によって高メチル化を発生する癌抑制遺伝子が異なり、例えば卵巣癌においては癌抑制遺伝子であるRASSF1A、BRCA1、APC、CDKN2A等が高メチル化状態を呈し、乳癌においては癌抑制遺伝子であるPCDHB15、WBSCRF17、IGF1、GYPC等が高メチル化状態を呈する(非特許文献2参照)。これらの特定の腫瘍抑制遺伝子のメチル化レベルを検出することにより、特定の腫瘍のスクリーニング及び診断を強化することだけでなく、腫瘍に対する決定的治療の効果評価及び予後観察にも役立つ。
【0005】
現在、DNAメチル化検出の標準方法は亜硫酸水素塩処理(バイサルファイト処理)であり、具体的に、亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素ナトリウムでDNAを処理することにより、DNA中のシトシン(C)をウラシル(U)に変換することができる。これに対し、メチル化された5-メチルシトシン(5-mC)が変化しないように保持され、これにより次のPCR又はシークエンシングにより5-mCとCを区別することができ、メチル化DNAの検出を実現できる。
【0006】
しかし、亜硫酸水素塩処理はストリンジェントな化学的及び温度条件下で核酸の前処理を行う必要があり、かつPCR又はシークエンシングの検出操作が複雑であり、専門技術者及び専門的な装置を必要とする。これらの理由から該検出方法の効率は低く、時間がかかり、コストが高くなる。したがって、簡便で迅速な高感度のメチル化DNA検出方法を開発する必要がある。
【0007】
最近では、特異的抗体がメチル化部位を認識することによるメチル化DNA検出方法が注目されている。このような検出方法は核酸の前処理を必要とせず、かつ特異的抗体に異なるプローブを標識することにより、電気化学的(例えば非特許文献3)、蛍光等の検出を行うことができる。
【0008】
近年開発されたECL(Electrochemiluminescence)技術は既に生物学的分析、例えば腫瘍タンパク質標識物質の検出に広く応用されている(例えば非特許文献4)。ECL技術は、電気化学的原理を利用して電極表面で電気化学反応を行って励起状態を生成して特異的な発光を引き起こす方法である。ECLはエレクトロルミネセンスであるため、蛍光と比べて、励起光源を追加する必要がなく、かつ光退色及び光干渉等の影響がないため、装置が簡単であり、コストが低く、背景信号が低く、検出感度が高いなどの利点を有する。
【0009】
しかしながら、従来の技術では、核酸特異的サイト修飾を検出するための十分なECL検出方法がない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yvette N Lamb et al.,Epi proColon (R) 2.0 CE:A Blood-Based Screening Test for Colorectal Cancer,Mol Diagn Ther. 2017 Apr; 21(2): 225-232
【非特許文献2】Tingting Hong, Selective detections of epigenetic modification in DNA, Wuhan University, 2017, Ph.D dissertation
【非特許文献3】Eloy Povedano et al.,Amperometric Bioplatforms To Detect Regional DNA Methylation with Single-Base Sensitivity,Anal. Chem,2020,92,5604-12
【非特許文献4】Xiaoming Zhou et al.,Synthesis, labeling and bioanalytical applications of a tris(2,2`-bipyridyl)Ruthenium(II)-based electrochemiluminescence probe,Nat Protoc 2014 May;9(5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、核酸特異的サイト修飾を簡便、高感度、迅速、かつ汎用性が高い電気化学発光検出方法を提供することである。更に、本実施形態は、上記検出方法に用いられる電気化学発光ナノプローブ、その調製方法、及び上記検出方法に用いられるキットを提供する。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態に係る電気化学発光ナノプローブの調製方法は、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程とを含む。前記二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を識別するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態の一つの実施形態に係る電気化学発光検出方法の検出フローを示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電気化学発光検出方法に用いられる反応試薬1の調製方法を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電気化学発光検出方法に用いられる反応試薬3の調製方法を示す模式図である。
【
図4A】
図4Aは、実施例1で調製されたECLナノプローブの特徴づけ結果を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、実施例1で調製されたECLナノプローブの特徴づけ結果を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、実施例1で調製されたECLナノプローブの特徴づけ結果を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、実施例1で調製されたECLナノプローブの特徴づけ結果を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、実施例1で調製されたECLナノプローブの特徴づけ結果を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1で調製されたECLナノプローブの保存時間とECL強度との関係を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の測定結果を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の測定結果を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例3で調製されたRu@SiO
2の異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、実施例3で調製されたRu@SiO
2の異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の異なる検出条件でのECL応答状況を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の異なる検出条件でのECL応答状況を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の異なる検出条件でのECL応答状況を示す図である。
【
図9D】
図9Dは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の異なる検出条件でのECL応答状況を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例3で調製されたECLセンサ体系による標的核酸の検出原理を示す蛍光検証図である。
【
図11A】
図11Aは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の異なる濃度のメチル化DNAにおけるECL応答状況を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の異なる濃度のメチル化DNAにおけるECL応答状況を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施形態のECL検出方法の選択性についての評価結果を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、本実施形態のECL検出方法の安定性についての評価結果を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、本実施形態のECL検出方法の安定性についての評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本実施形態の具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態についての説明は本実施形態の発明構想を説明するためだけであり、本実施形態を限定するものではない。
【0015】
本実施形態は、ナノプローブによる核酸特異的サイト修飾の電気化学発光検出方法、及び上記検出方法に用いられる電気化学発光ナノプローブ及びその調製方法、上記検出方法に用いられるキット等を提供する。
【0016】
本実施形態の一つの実施態様は、ナノプローブによる核酸特異的サイト修飾の電気化学発光検出方法であって、捕捉核酸が修飾されている磁性ビーズを反応試薬1(第1反応試薬)として、検出される試料と混合し、試料中の標的核酸の修飾を識別及び捕捉する工程1(第1工程)と、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を反応試薬2(第2反応試薬)として標的核酸の特異的サイト修飾に捕捉及び標識を行う工程2(第2工程)と、上記の調製方法により調製される電気化学発光ナノプローブを反応試薬3(第3反応試薬)として工程2で得られた磁性ビーズ捕捉核酸-標的核酸-特異的抗体との複合体に検出信号標識を行う工程3(第3工程)と、工程3で得られた磁性ビーズ捕捉核酸-標的核酸-特異的抗体-ナノプローブとの複合体を電極表面に置き、共反応剤を添加した後に電気化学発光検出を行い、電気化学発光信号の有無及び強度に基づいて前記標的核酸の修飾に対して定性及び定量分析を行う工程4(第4工程)とを含む、核酸特異的サイト修飾の電気化学発光検出方法(以下、ECL検出方法とも記す)に関する。
【0017】
本実施形態は、電気化学発光法により核酸特異的サイト修飾を検出し、前記核酸は、例えばDNA又はRNAである。前記核酸特異的サイト修飾は特に限定されず、例えばDNAのメチル化修飾(例えば5-メチルシトシンのメチル化、以下、5mCとも記す)、ヒドロキシメチル化修飾(例えば5-メチルシトシンのヒドロキシメチル化、以下5hmCとも記す)、RNAのプソイドウリジン化修飾(例えばアデニンの6番目のNのメチル化、以下にm6Aとも記す)等であってもよい。なお、ヒドロキシメチル化修飾は、メチロール化修飾とも呼ばれる。
【0018】
電気化学発光システムは、発光試薬に応じて主に二種類に分ける:(1)金属錯体電気化学発光システム、(2)縮合環芳香族炭化水素類及びヒドラジド類を含む有機化合物電気化学発光システム。常用の電気化学発光金属錯体は、Ru、Os、Re、Ir、Cr、Pd、Al、Cd、Pt、Mo、Tb、Eu等の金属イオン錯体を含む。そのうち、Ru、Ir、Os、Reの金属錯体が良好な電気化学発光特性を有するため注目されている。
【0019】
Ruの金属錯体において、トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯体イオン(Ru(bpy)3
2+)は水溶性が高く、化学的性能が安定し、酸化還元が可逆的で、発光効率が高く、応用できるpH範囲が広く、電気化学的に再生でき、励起状態寿命が長いなどの特徴により広く応用されている。ここで、Ru(bpy)3
2+は、共反応剤であるトリプロピルアミン(TPrA)との反応により低電位条件下でのECL検出が可能となり、Ru(bpy)3
2+とトリプロピルアミンTPrAとの反応式は以下のとおりである。
【0020】
【0021】
本実施形態の電気化学発光検出方法は、好ましくはルテニウム(II)錯体イオン系により行われるが、他の金属錯体イオン系、例えばイリジウム(III)錯体イオン体系などを用いて行うこともできる。
【0022】
図1は、本実施形態の電気化学発光検出方法の検出フローを示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態のECL検出方法において反応試薬1、反応試薬2、及び反応試薬3が使用される。
【0023】
具体的に、反応試薬1は捕捉核酸が修飾されている磁性ビーズであり、捕捉核酸は、標的核酸に対して設計され、標的核酸と相補的な核酸配列を有し、両者が安定で特異的にハイブリダイゼーションすることができる。捕捉核酸は、本分野の一般的な方法により合成することができるし、市販品を直接に使用することもできる。
【0024】
図2は、本実施形態の電気化学発光検出方法に用いられる反応試薬1の調製方法を示す模式図である。
図2に示すように、捕捉核酸配列が、末端にビオチンが修飾されてもよく、磁性ビーズにストレプトアビジンが結合されてもよく、ビオチン-ストレプトアビジン反応により捕捉核酸が磁性ビーズに修飾される。ストレプトアビジンが結合されている磁性ビーズ(以下S-MBsとも記す)は本分野の一般的な方法により合成することができ、市販品を直接に使用することもできる。上記ビオチン-ストレプトアビジンとの結合方式は本分野に最も慣用される方式であるが、捕捉核酸と磁性ビーズとの結合方式がこれに限定されず、捕捉核酸を磁性ビーズに結合できる任意の方式を用いることができる。
【0025】
反応試薬2は標的核酸の特異的サイト修飾に対する特異的抗体(以下一次抗体とも記す)であり、当該抗体は特異的サイト修飾に応じて本分野の抗体の一般的な調製方法により調製されてもよく、市販品を直接に使用してもよい。前記一次抗体は、例えば、DNAのメチル化シトシン(5mC)又はヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に対する抗体である。
【0026】
反応試薬3は、本実施形態で調製された電気化学発光ナノプローブ(以下、ECLナノプローブとも記す)、即ち、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子である。
【0027】
本実施形態の一つの実施形態は、電気化学発光ナノプローブの調製方法であって、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程とを含む、電気化学発光ナノプローブ(以下、ECLナノプローブとも記す)の調製方法に関する。二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を識別するように構成される。
【0028】
本実施形態のECLナノプローブの調製には、ナノ材料をキャリアとして使用され、ナノ材料は、巨大な表面積又は多孔質構造を有するため、大量の発光体を搭載して超感度検出に用いられることができる。高安定性、低コスト、及び修飾しやすさという点から、本実施形態に用いられるナノ材料は無機酸化物ナノ粒子を使用することが好ましい。無機酸化物ナノ粒子としては、具体的に、二酸化ケイ素ナノ粒子、二酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、又は酸化鉄ナノ粒子、或いは二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、又は酸化鉄等が表面に被覆されているナノ粒子が挙げられる。そのうち、二酸化ケイ素ナノ粒子がより好ましい。
【0029】
本実施形態のECLナノプローブの調製方法は、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加する工程を含む。添加方法としては、本分野の常用添加方法、例えば電気化学法、ゾルゲル法、イオン交換法、加水分解沈殿法などを用いることができるが、これに限定されず、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加できる任意の方法を用いることができる。言い換えると、電気化学発光ナノプローブ用ナノ粒子は、金属錯体イオンが添加された無機酸化物を備える。
【0030】
本実施形態のECLナノプローブの調製方法は、二次抗体を金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程をさらに含む。ここで、二次抗体と金属添加無機酸化物ナノ粒子との結合方式は、好ましくは共有結合方式により行われるが、他の方式、例えば静電吸着等を使用することもできる。共有結合を形成する結合の方式としては、具体的に、カルボキシ-アミノ結合、アルデヒド基-アミノ結合等が挙げられる。共有結合を形成する反応について、特に限定されないが、好ましくは室温で反応でき、かつ反応が迅速で、結合効率が高い共有結合反応である。言い換えると、電気化学発光ナノプローブは、金属錯体イオンが添加された無機酸化物ナノ粒子と、当該無機酸化物ナノ粒子と結合した二次抗体とを含む。
【0031】
図3は、本実施形態の電気化学発光検出方法に用いられる反応試薬3の調製方法を示す模式図である。
図3において、トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯体イオン(Ru(bpy)
3
2+)を金属錯体イオンの例とし、EDC/NHS系(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)/N-ヒドロキシスクシンイミド系)を用いて二次抗体(以下Ab2とも記す)を金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させる。具体的に、Ru(bpy)
3
2+を二酸化ケイ素ナノ粒子に添加し、ルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子(以下、Ru@SiO
2とも記す)を得る。次に、Ru@SiO
2をカルボキシル化させ、カルボキシル化ルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子(以下、COOH-Ru@SiO
2とも記す)を形成する。次に、EDC/NHS系を用いて二次抗体をCOOH-Ru@SiO
2に結合させ、二次抗体修飾されたルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子(以下、Ab2-Ru@SiO
2とも記す)を形成する。
【0032】
本実施形態のECLナノプローブでは、一つのナノビーズ当たりにいずれも大量の金属錯体イオンを結合させることができるため、電気化学信号を顕著に増幅することができ、それによりECL検出の感度を大幅に向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態のECLナノプローブにおいて、1つのナノビーズ当たりにいずれも複数の二次抗体分子を結合させることができ、それによりナノプローブと一次抗体との結合効率を向上させることができる。
【0034】
これにより、本実施形態のECLナノプローブを用いることにより、ECL検出の感度を大幅に向上させることができ、核酸特異的サイト修飾に対する検出はfMレベルまでに達することができる。
【0035】
本実施形態の二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する一次抗体を識別する。当該二次抗体は、好ましくは一次抗体と核酸特異的サイト修飾との結合特異的部分に対して設計されるものではなく、一次抗体の汎用部分に対して設計されるものである。すなわち、本実施形態の二次抗体は、好ましくは一次抗体(特異的抗体)の汎用部分を識別するタンパク質である。これにより、本実施形態は、抗体による様々なECL検出方法に用いられる汎用ECLナノプローブを提供することができる。前記二次抗体は特に限定されず、本分野の一般的な抗体の調製方法により調製することができ、市販品を直接に使用することもできる。なお、汎用部分は、定常領域とも呼ばれる。
【0036】
これにより、本実施形態の一つの実施形態は、上記本実施形態のECLナノプローブの調製方法により調製されるECLナノプローブをさらに提供する。好ましくは、本実施形態のECLナノプローブは、抗体によるECL検出方法に用いられる汎用ECLナノプローブである。
【0037】
本実施形態で調製されたECLナノプローブが、貯蔵安定性に優れ、例えば常温の保存条件下で10日間以上保存することができる。そのため、本実施形態のECLナノプローブは、調製後にそのまま使用することができるが、一定の時間を保存した後に必要な時に使用することもできる。
【0038】
これにより、本実施形態のもう一つの実施態様は、上記本実施形態のECLナノプローブを含む、抗体による電気化学発光検出方法に用いられるキットを提供する。つまり、抗体による電気化学発光検出方法のキットは、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させることで、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、を含み、前記二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体を識別するように構成される電気化学発光ナノプローブの調製方法により調製される電気化学発光ナノプローブを含む。
【0039】
キットでは、本実施形態のECLナノプローブに加え、使用目的に応じて必要な様々な試薬、例えば反応試薬1、2及び使用説明書等を含むことができる。
【0040】
本実施形態のECL検出方法は具体的には
図1に示すように、以下の工程1~4を含んでもよい。
【0041】
工程1:反応試薬1(例えば、S-MBs/B-Cap)を検出される試料(例えば標的DNA)と混合し、試料中の標的核酸を識別・捕獲する。B-Capに結合されている捕捉核酸(例えば、捕捉DNA)は標的DNA配列と配列相補するように設計されるため、検出される試料を添加した後にハイブリダイゼーションにより標的核酸と結合できる。これにより、標的DNAが磁性ビーズに捕捉される。
【0042】
また、S-MBs/B-Capが標的DNAを識別した後、免疫試薬の非特異的吸着を防止するように、反応系をブロッキングしてもよい。ブロッキングは異種タンパク質又は洗浄剤、例えば、Tween-20、BSA、動物血清、脱脂乳粉等を採用することができ、好ましくはBSAを採用する。
【0043】
工程2:反応試薬2(例えば、Ab-5mC)を添加し、標的DNAを捕捉・標識する。反応試薬2である一次抗体は核酸特異的サイト修飾に対する特異的抗体に応じて設計され、標的核酸における特異的サイト修飾を識別することができる。これにより、標的核酸の特異的サイト修飾を捕捉・標識し、例えば磁性ビーズ捕捉DNA-標的DNA-Ab-5mCとの複合体を形成する。
【0044】
また、高いECL信号強度を得る点から、好ましくは一次抗体濃度、一次抗体添加後のインキュベーション時間等を最適化する。一次抗体濃度として、例えば1.0μg/mL以上であってもよく、具体的に2.0μg/mL以上、2.5μg/mL以上、5μg/mL以上、10μg/mL以上、20μg/mL以上等であってもよく、好ましくは2.5μg/mL~20μg/mLである。一次抗体のインキュベーション時間として、例えば5min~80minであってもよく、具体的に5min、10min、20min、30min、40min、50min、60min、70min、80minであってもよく、好ましくは20min~40minである。
【0045】
工程3:反応試薬3(例えば、Ab2-Ru@SiO2)を添加し、標的DNAに検出信号標識を行う。反応試薬3に結合されている二次抗体は、工程2で形成された複合体と特異的に結合することができるため、該複合物に検出信号標識を行い、例えば磁性ビーズ捕捉DNA-標的DNA-Ab-5mC-Ab2-Ru@SiO2との複合体を形成することができる。
【0046】
また、高ECL信号強度を得る点から、好ましくはECLナノプローブ濃度、ECLナノプローブ添加後のインキュベーション時間などを最適化する。ECLナノプローブ濃度として、例えば1μg/mL以上であってもよく、具体的に3μg/mL以上、4μg/mL以上、6μg/mL以上、9μg/mL以上、12μg/mL以上、15μg/mL以上、18μg/mL以上であってもよく、好ましくは4μg/mL~15μg/mLである。ECLナノプローブのインキュベーション時間として、例えば5min~80minであってもよく、具体的には5min、10min、20min、30min、40min、50min、60min、70min、80minであってもよく、好ましくは20min~40minである。
【0047】
工程4:工程3で得られた複合物を電極表面に置き、電気化学発光検出を行う。ここで、高いECL信号強度を得る点から、好ましくはECL検出電解液のpH値及び共反応剤(例えばTPrA)の濃度を最適化する。ECL検出電解液のpH値として、例えば5.0~10.0であってもよく、具体的に、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、10.0であってもよく、好ましくは6.5以上であり、さらに好ましくは7.4である。共反応剤の濃度としては、例えば5.0~160.0mMであってもよく、具体的に10.0mM以上、20.0mM以上、40.0mM以上、80.0mM以上であってもよく、好ましくは20.0mM~80.0mMであり、より好ましくは40.0mM~80.0mMである。
【0048】
なお、工程3で得られた複合体は
図1の右側に示すように、磁性ビーズと、捕捉DNAと、標的DNAと、一次抗体と、ECLナノプローブで形成された複合体であり、当該複合物を電極表面に置くと電気化学発光信号を生成することができる。
【0049】
ECL信号の有無及び強度に基づいて検出される試料の核酸特異的サイト修飾に対して定性及び定量分析を行うことができ、例えば反応系においてECL信号が検出されない場合、検出される試料に核酸特異的サイト修飾が含まれなく、上記複合物が形成されずに電気化学発光信号を生成することができないと判断する。また、本実施形態の実施例において検証されているように、電気化学発光の強度とメチル化DNA濃度の対数が線形関係を呈するため、電気化学発光の強度に基づいてメチル化DNAを定量分析することができる。
【0050】
本実施形態において、電気化学発光信号の検出は本分野に慣用される電気化学的化学分析システムを使用して検出することができる。使用される電極は、一般的な電極であってもよく、例えばガラス炭素電極、ITO(Indium Tin Oxide)電極、又はスクリーン印刷電極等からの一種である。本実施形態において、好ましくは白金ワイヤ電極、Ag/AgCl参照電極及びガラス炭素作用電極(GCE)が配置されている標準三電極システムを使用する。
【0051】
なお、本実施形態のECL検出方法は上記工程に限定されない。上記工程において、まず一次抗体を標的核酸-捕捉核酸とのハイブリッド生成物に結合させ、次に本実施形態のECLナノプローブを添加して一次抗体-二次抗体との抗体複合体を形成するが、一次抗体と二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子とを結合させて一次抗体-二次抗体の抗体複合体を形成させた後、該抗体複合体を標的核酸-捕捉プローブとのハイブリッド生成物に結合させてもよい。これによっても、同様に磁性ビーズ捕捉核酸-標的核酸-一次抗体-ECLナノプローブの複合体を形成することができる。さらに、本実施形態において、一次抗体を二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子に直接修飾させた後に、全体でECLナノプローブとして検出に用いられることもできる。
【0052】
(実施例)
以下に実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、これらの実施例は例示に過ぎず、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
なお、本実施例で使用されている全ての試薬はいずれも分析純度レベルである。
【0054】
また、使用される各略語の意味は以下のとおりである:
Ru(bpy)3
2+:トリス(2,2’-ビピリジン)ジクロロルテニウム(II)六水和物
TEOS:オルトケイ酸テトラエチル
NH4OH:アンモニア水
Ru@SiO2:ルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子
Ab2-Ru@SiO2:二次抗体修飾済のルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子
CTES:Carboxyethylsilanetriol Na salt
COOH-Ru@SiO2:カルボキシル化ルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子
DI水:脱イオン水
EDC:N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド塩酸塩
NHS:N-ヒドロキシスクシンイミド
MES:2-(N-モルホリン)エタノールスルホン酸
PBS:リン酸塩緩衝液
BSA:ウシ血清タンパク質
S-MBs:ストレプトアビジン磁性ビーズ
B-Cap:ビオチン-捕捉DNA
T:DNA試料
Ab-5mC:抗5-メチルシトシン抗体
【0055】
(実施例1:反応試薬3(ECLナノプローブ)の調製)
(1)Ru@SiO2の調製
手順1)7.5 mLのシクロヘキサン(Aladdin(中国、上海))、1.8 mLのn-ヘキサノール(TCI chemicals(中国、上海))、1.77 mLのTriton X-100(Sigma(中国、上海))を15分間混合し、
手順2)340μLのRu(bpy)3
2+(Sigma(中国、上海))(40mM)水溶液を添加し、30分間混合し、
手順3)100μLのTEOS(Sigma(中国、上海))を添加し、30分間混合し、
手順4)60μLのNH4OH(Macklin(中国、上海))を添加し、遮光条件下24h混合し、Ru@SiO2を得た。
【0056】
(2)Ab2-Ru@SiO2の調製
手順1)50μLのCTES(J&K Scientific(中国、上海))を添加し、遮光条件下7h混合し、COOH-Ru@SiO2を得た。
手順2)15 mLのアセトン、エタノール、DI水で順次に洗浄し、10,000 rpmで10min遠心分離し、DI水に分散し、
手順3)10μLの50 mg/mL COOH-Ru@SiO2を取って500μLのEDC/NHS(50 mg/mL each in 25mM MES(PH5.5)、EDCとNHSはいずれもJ&K Scientific(中国、上海)から購入)で35min活性化させる;次に、10mM PBS(pH7.4)で12000 rpmで5min洗浄した後に、1 mLの10mM PBSに分散させ、
手順4)20μLの2 mg/mL Ab2(ウサギ抗マウスIgG抗体(製品番号:ab6709)、Abcam(中国、上海)から購入)を添加し、60 rpmで4 h振とうし、
手順5)12000rpmで25mM MES緩衝液、及び10mM PBSで5min洗浄し、Ab2-Ru@SiO2を得た。
手順6)最後に、得られたAb2-Ru@SiO2を4°Cで0.1%BSA(KeyGEN BioTECH(中国、江蘇))/5mM PBS緩衝液に使用の時まで保存した。
【0057】
(実施例2:ECLナノプローブの特徴づけ)
A:TEMによるCOOH-Ru@SiO
2形成の確認
実施例1で得られたCOOH-Ru@SiO
2ナノ粒子をJEM-2100透過電子顕微鏡(日本電子、JEOL)で撮影した。得られた透過電子顕微鏡写真(TEM)を
図4Aに示す。なお、
図4A及び
図4Bは、実施例1で調製されたECLナノプローブの特徴づけ結果を示す図である。
図4Aには実施例1で得られたCOOH-Ru@SiO
2のTEM写真を示し、
図4BにはDLSにより得られたCOOH-Ru@SiO
2(a)及びAb2-Ru@SiO
2(b)の粒径分布図を示す。
【0058】
図4Aから分かるように、得られたCOOH-Ru@SiO
2ナノ粒子は、均一に分散し、大きさが均一で、直径が約30nmの球状粒子である。
【0059】
B:動的光散乱(DLS)法によるAb2-Ru@SiO
2形成の確認
90 Plus/BI-MAS機器(米国、Brookhaven)を用いて動的光散乱(DLS)法を用いてそれぞれCOOH-Ru@SiO
2及びAb2-Ru@SiO
2の粒径分布を測定した。結果を
図4Bに示す。
【0060】
図4Bから分かるように、COOH-Ru@SiO
2(a)の水和粒径は50nm程度で分布し、粒径分布が狭く、サイズが均一であり、かつ単分散性を有する。Ab2-Ru@SiO
2(b)の水和粒径は約70nmであり、COOH-Ru@SiO
2より僅かに大きく、Ab2とRu@SiO
2とのカップリングが成功し、分散性が高く、凝集現象が発生しないことを示す。
【0061】
C:Ab2-Ru@SiO
2に結合されているルテニウム分子の個数と結合されている抗体の個数の確認
単一のRu@SiO
2に結合されているルテニウム分子の個数を得るために、実施例1で得られたAb2-Ru@SiO
2をNanodrop-2000C紫外光-可視光分光光度計(米国、Thermon)を用いて紫外光―可視光スペクトル(UV)の定量分析を行った。結果を
図5Aに示す。なお、
図5A、
図5B、及び
図5Cは、実施例1で調製されたECLナノプローブの特徴づけ結果を示す図である。
図5AにはAb2-Ru@SiO
2ナノプローブの紫外可視スペクトルを示し、
図5Bには[Rubyp
3
2+]の457nmでの濃度検量線を示し、
図5CにはBSA標準品の620nmでの濃度検量線を示す。
【0062】
図5Aに示すように、100μg/mLのRu@SiO
2の457nmにおける吸光度Aは0.26であり、
図5Bの[Ru(bpy)
3]
2+濃度検量線に基づいて100μg/mLのRu@SiO
2における[Ru(bpy)
3]
2+の濃度は12.53μg/mLである。これにより、1 mLRu@SiO
2における[Ru(bpy)
3]
2+分子の個数がN
[Ru(bpy)3]2+=NA・n=NA・m
Ru/M
Ru=1.01×10
16と推定した。さらに、単一のRu@SiO
2に包まれた[Ru(bpy)
3]
2+分子個数=N
[Rubpy3]2+/N
Ru@SiO2=3.1×10
4を得た。
【0063】
プレートリーダー用Bradford法タンパク質定量キット(Sangon Biotech(中国、上海))により実施例1で得られたAb2-Ru@SiO2中のAb2の620nmにおける吸光度を測定した結果、Ab2-Ru@SiO2中のAb2の吸光度A620は0.63である。
【0064】
図5CのBSAタンパク質検量線に基づいてAb2-Ru@SiO
2におけるAb2の濃度が73.11μg/mLであり、IgG-Ab2のモル質量MAb2=150 KD=1.5×10
5g/molを得て、1 mLの73.11μg/mL Ab2におけるAb2の個数NAb2=NA・n=NA・mAb2/MAb2=2.94×10
14を得た。
【0065】
2 mgのRu@SiO2におけるRu@SiO2の個数に基づいて、1 mLの1 mg/mL Ru@SiO2におけるRu@SiO2の個数N2が3.22×1013である。これにより、単一のRu@SiO2に結合されている抗体の個数=NAb2/N2=2.9421014/3.22×1013≒9を得た。
【0066】
D:Ab2-Ru@SiO
2の保存安定性
実施例1で得られたAb2-Ru@SiO
2を1%BSA含有水溶液に4°C遮光で保存し、5日間ごとにそのECL信号を測定した。結果を
図6に示す。なお、
図6は、実施例1で調製されたECLナノプローブの保存時間とECL強度との関係を示す図である。
【0067】
なお、実施例部分において、ECLはいずれもMPI-A多機能電気化学発光分析システム(中国、西安Remex)、標準三電極システムの電解セルで測定した。前記標準三電極システムに白金ワイヤ電極と、Ag/AgCl参照電極と、直径が5mMのガラス炭素作用電極(GCE)が配置されている。
【0068】
三電極システムを用いてECL検出電解液(0.1M PBS、0.1M KNO3、40mM TPrA、PH7.4)でECL応答を記録し、電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)(実験はCHI 630 D電気化学ワークステーション(中国、上海辰華)で行った。)を用いて0から+1.25 Vまで連続的に電位走査を行い、走査速度が100 mV/sであり、光電子増倍管(PMT)の電圧が600 Vに設定される。また、全てのECL測定はいずれも室温で行い、以下も同様である。
【0069】
図6から分かるように、Ab2-Ru@SiO
2プローブは、ECL強度が20日間内にほとんど変化しないため、1%BSA含有水溶液に優れた貯蔵安定性を有することが検証された。
【0070】
(実施例3:ECL検出方法)
本実施例で使用されたDNA配列はいずれも上海Sangon Biotechにより合成・精製された。使用する配列を具体的に表1に示す。
【0071】
【0072】
(1)DNA試料の準備
下記の配列を含むDNA試料(T)を準備する。
陰性コントロール配列:0×5mC-RASSF1A(T0)(配列番号2)
標的DNA配列:7×5mC-RASSF1A(T5mC)(配列番号3)
非目標DNA配列:7×5mC-PCDHGB7(TP)(配列番号5)
【0073】
(2)反応試薬1(S-MBs/B-Cap)の調製:
手順1)TE緩衝液(2M NaClを含有するB&W緩衝液、pH7.5)で2μLS-MBs(BioMag(江蘇、無錫))を洗浄し、
手順2)25μLの0.1μM B-Cap(in pH7.5 TE緩衝液)と混合し、37℃で15分間インキュベートし、
手順3)10mM PBSで洗浄し、余分なB-Capを洗浄し、S-MBs/B-Capを得た。
【0074】
(3)標的DNAへの識別
手順1)50μLのT(in 10mM PBS)を添加し、37℃で30分間インキュベートし、
手順2)次に10mM PBSで洗浄し、未反応のTを除去した。
【0075】
(4)5mCへのAb-5mCによる識別
手順1)50μLの2%BSA(in 10mM PBS)を添加し、37℃で30分間インキュベートし、
手順2)50μLのAb-5mC(製品番号:ab10805、Abcam(中国、上海)、2.5μg/mL)を添加し、37℃で20分間インキュベートし、
手順3)その後に10mM PBSで洗浄し、未反応のAb-5mCを洗浄した。
【0076】
(5)ECLナノプローブによる標識
手順1)50μLのAb2-Ru@SiO2(6μg/mL)を添加し、37℃で20分間インキュベートし、
手順2)その後に10mM PBSで洗浄し、65μL 10mM PBSに分散させた。
【0077】
(6)ECL検出
手順1)上記S-MBs/B-Cap-T-Ab-5mC-Ab2-Ru@SiO2との複合体(以下、複合体と略称する)溶液をGCE電極に滴下し、乾燥した後にECL電解液(0.1M PBS、0.1M KNO3、40mM TPrA、pH7.4)に浸漬し、
手順2)0~1.25Vで電位走査を行い、PMT600でECLを収集した。
【0078】
(実施例4:ECLセンサ体系の特徴づけ)
以下、実施例3で得られた上記複合物を含むGCE電極検出システムを本実施形態のECLセンサ体系とも称する。
【0079】
(1)本実施形態のECLセンサ体系の測定
実施例3で調製されたECLセンサ体系の各ステップの結果に対して、電気化学的サイクリックボルタンメトリー実験(CV)及び電気化学インピーダンススペクトルスコピー(EIS)テストを行い、ここでは、CVはCHI630D電気化学ワークステーション(中国、上海辰華)で行い、EISテストはDH7000(中国、江蘇東華)で測定した。結果を
図7に示す。なお、
図7A及び
図7Bは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の測定結果を示す図である。
図7AはECLセンサ体系が段階的に修飾されたことを示すサイクリックボルタンメトリー(CV)図であり、
図7BはECLセンサ体系が段階的に修飾されたことを示す電気化学インピーダンススペクトルスコピー(EIS)図である。
【0080】
図7において、aが裸GCE電極を表し、bがS-MBs/GCEを表し、cが表示B-Cap/S-MBs/GCEを表し、dがBSA/B-Cap/S-MBs/GCEを表し、eがT/BSA/B-Cap/S-MBs/GCEを表し、fがAb-5mC/T/BSA/B-Cap/S-MBs/GCEを表し,gがAb2-Ru@SiO
2/Ab-5mC/T/BSA/B-Cap/S-MBs/GCEを表す。
【0081】
図7から分かるように、磁性ガラス炭素電極の裸電極(a)又はS-MB及び異なる複合体(b-g)が修飾されているS-MB及び複合体について、S-MB及び複合体をGCEに添加した後に、磁性ビーズ及び複合体の導電性が低いため、電極表面の抵抗が段階的に増加し、電子伝達効率が減少し、対応する酸化還元電流が段階的に減少し(
図7A:a-g)、EISインピーダンスが段階的に増加した(
図7B:a-g)。
【0082】
(2)本実施形態のECLセンサ体系の電気化学的パラメータについての最適化
実施例3で使用されているECL検出電解液のpH値及びTPrA濃度を変更し、pHを6.0~8.5の範囲内で変化させ、TPrA濃度を10mM~80mMの範囲内で変化させる。結果を
図8A及び
図8Bに示す。
図8A及び
図8Bは、実施例3で調製されたRu@SiO
2の異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図であり、
図8Aは異なるTPrA濃度とECL強度との関係を示す図であり、
図8BはECL検出電解液の異なるpHとECL強度との関係を示す図である。
【0083】
図8から分かるように、ECL検出電解液のpH値が6.5以上である場合、いずれも良好なECL強度を得ることができ、ここでpH値が7.4である場合、ECL信号強度が最も高く、最適なpHである。また、TPrA濃度が10mM以上である場合、いずれも良好な結果を得ることができ、ここでTPrAが40mMである場合、ECL信号強度が最も高く、最適なTPrA濃度である。
【0084】
実施例3におけるAb-5mC濃度、Ab-5mCインキュベーション時間、Ab2-Ru@SiO
2濃度、Ab2-Ru@SiO
2インキュベーション時間を変更し、Ab-5mC濃度を0~20μg/mLの範囲内で変化させ、Ab-5mCインキュベーション時間を10~40分間の範囲内で変化させ、Ab2-Ru@SiO
2濃度を3~15μg/mLの範囲内で変化させ、Ab2-Ru@SiO
2インキュベーション時間を10~30分間の範囲内で変化させ、結果を
図9A~
図9Dに示す。
図9A~
図9Dは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の異なる検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図9Aは異なるAb-5mC濃度とECL強度との関係を示す図であり、
図9Bは異なるAb-5mCインキュベーション時間とECL強度との関係を示す図であり、
図9Cは異なるAb2-Ru@SiO
2濃度とECL強度との関係を示す図であり、
図9Dは異なるAb2-Ru@SiO
2インキュベーション時間とECL強度との関係を示す図である。
【0085】
図9A~
図9Dから分かるように、Ab-5mC濃度が1μg/mL以上である場合、いずれも良好なECL強度が得られ、ここでAb-5mC濃度が2.5μg/mL以上である場合、ECL信号強度が安定し、最適なAb-5mC濃度である。Ab-5mCインキュベーション時間が10分以上である場合、いずれも良好なECL強度が得られ、ここでAb-5mCインキュベーション時間が20分以上である場合、ECL信号強度が安定し、最適なAb-5mCインキュベーション時間である。Ab2-Ru@SiO
2濃度が4μg/mL以上である場合、いずれも良好なECL強度が得られ、ここでAb2-Ru@SiO
2濃度が6μg/mL以上である場合、ECL信号強度が安定し又はより高くなり、最適なAb2-Ru@SiO
2濃度である。Ab2-Ru@SiO
2インキュベーション時間が15分間以上である場合、いずれも良好なECL強度が得られ、ここでAb2-Ru@SiO
2インキュベーション時間が20分間以上である場合、ECL信号強度が安定し、最適なAb-5mCインキュベーション時間である。すなわち、電気化学発光ナノプローブの濃度は、4μg/mL以上が好適である。また、電気化学発光ナノプローブ添加後のインキュベーション時間は15分間以上が好適である。
【0086】
(実施例5:本実施形態のECL検出方法の実行可能性についての検証)
実施例3におけるTをそれぞれT0、T5mC、Tなしの背景溶液とし、上記実施例3のステップを行い、複合物を得た。
【0087】
複合物をPBSに分散させ、3μLを取ってITO導電ガラスに置き、620nmの励起波長を印加し、蛍光顕微鏡(Leica DMi8倒立顕微鏡、Photometrics Prime 95Bカメラが配置されている)で撮影し、得られた蛍光顕微鏡写真を
図10のa、b、cに示す。
図10は、実施例3で調製されたECLセンサ体系による標的核酸の検出原理を示す蛍光検証図である。
図10において、a、b及びcはそれぞれCy5-Pro核酸検出プローブを用いる時のブランク溶液(Tなし)、陰性コントロール配列(T
0)及び標的DNA配列(T
5mC)の蛍光イメージング図を示し、d、e及びfはそれぞれ蛍光標識二次抗体(Ab2-Alexa F647)を用いる時のブランク溶液(Tなし)、陰性コントロール配列(T
0)及び標的DNA配列(T
5mC)の蛍光イメージング図を示す。
【0088】
図10のa、b及びcに示すように、核酸と結合しないS-MB/B-Capは蛍光現象が見られず、T
0、T
5mCと結合した後、磁性ビーズにいずれも蛍光が生成された。この結果から、B-CapがT
0、T
5mCを捕捉することができ、メチル化サイトが二本鎖塩基の相補的なペアリングに影響を与えないことが分かった。また、B-CapがS-MBと結合することができることも分かった。
【0089】
実施例1におけるAb2の代わりに、Ab-5mCと特異的に結合できる蛍光標識二次抗体(Ab2-Alexa F647)を使用し、Ab2-Alexa F647-Ru@SiO
2を得て、実施例3に用いられる。上記と同様に実施例3で得られた複合体を蛍光顕微鏡で撮影した。結果を
図10のd、e、fに示す。
【0090】
図10のd、e及びfに示すように、Tと結合しなかった、及びT
0とを結合したS-MB/B-Capではいずれも蛍光がなく、T
5mCと結合した磁性ビーズでは明らかな蛍光が見られました。この結果から、Ab-5mCが標的DNA鎖上のメチル化サイトに結合することができることが分かった。
【0091】
上記結果から分かるように、本実施形態のECL検出方法は実現可能な方法である。
【0092】
(3)本実施形態のECLセンサ体系の検出限界測定
実施例3におけるT中のメチル化DNAの濃度を変更し、0.5pM~50,000pMの濃度範囲内で変化させ、結果を
図11A及び
図11Bに示す。
図11A及び
図11Bは、実施例3で調製されたECLセンサ体系の異なる濃度のメチル化DNAにおけるECL応答状況を示す図である。
図11Aは異なる濃度のメチル化DNAのECL応答曲線を示し、
図11Aにおいて、a~iはそれぞれ0.5pM、1pM、10pM、50pM、100pM、500pM、10nM及び50nMを示す。
図11Bは異なる濃度のメチル化DNAを検出する検量線を示し、n=3である。
【0093】
図11A及び
図11Bから分かるように、ECLの強度(I)はメチル化DNA濃度の増加に伴って増加し(
図11A)、ECLの強度(I)とメチル化DNA濃度の対数は線形関係を呈し(
図11B)、その相関係数は0.9915である。かつ、三倍SN比(signal-noise ratio)で計算されたメチル化DNAの最低検出限界(LOD)は0.13pMである。
【0094】
(4)本実施形態のECL検出方法の選択性についての検証
実施例3で調製されたECLセンサ体系を用いて、T
0、T
5mC及び背景溶液をそれぞれ測定し、その結果を
図12に示す。
図12は、本実施形態のECL検出方法の選択性についての評価結果を示す図である。
【0095】
図12に示すように、T
0と背景溶液ではECL信号がほとんど発生されず、T
5mCでは高いECL強度が発生された。これにより、本実施形態のECLセンサ体系は良好な選択性を有することが確認された。
【0096】
(5)本実施形態のECL検出方法の安定性についての検証
実施例3のECLセンサ体系について、T
5mCを含む電極に対して、0~250秒内で、0V~+1.25 Vの走査電位を10回連続的に印加し、その結果を
図13Aに示す。
図13A及び
図13Bは、本実施形態のECL検出方法の安定性についての評価結果を示す図である。
図13Aは本実施形態のECL検出方法の信号安定性についての評価結果を示す図であり、
図13Bは本実施形態のECL検出方法の長期検出安定性についての評価結果を示す図である。
【0097】
図13Aに示すように、ECL信号が安定した。これから、本実施形態のECL検出方法によるECL信号の安定性が良好であることが確認された。
【0098】
調製された反応試薬1(B-Cap/S-MB)をPBSに、4℃で保存し、7日ごとに500pMの目標DNA配列(RASSF1A)を含む試料に対してECL検出を行い、その結果を
図13Bに示す。
【0099】
図13Bに示すように、本実施形態の検出方法が、28日間内に高い検出安定性、良好な長期検出安定性を有することが示された。
【0100】
上記実施例の実験結果から分かるように、本実施形態の電気化学発光検出方法は簡単で、迅速で、検出効率が高く、コストが低くかつキット化可能であり、かつ検出の感度が高く、核酸特異的サイト修飾に対する検出限界はfMレベルまでに達することができる。
【0101】
以上、実施形態に基づいて本実施形態のECL検出方法、及び該検出方法に用いられるECLナノプローブ及びその調製方法等を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。本実施形態の趣旨を逸脱しない限り、実施の形態に当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も本実施形態の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1,2,3 反応試薬
【配列表】