(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174623
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】外壁パネルおよびこれを用いた外壁の構造、ならびに外壁パネルの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
E04B1/94 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132444
(22)【出願日】2023-08-16
(62)【分割の表示】P 2022085915の分割
【原出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】白坂 光
(72)【発明者】
【氏名】塩田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】與田 香二
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA04
2E001FA52
2E001GA12
2E001HA03
2E001HA32
2E001HB02
2E001HE01
2E001HF12
2E001KA01
2E001MA04
(57)【要約】
【課題】 建築物の外壁の水平方向に複数枚並べて配置される外壁パネルの縦目地において、簡易な構造により防耐火性能および水密性を十分に確保でき、施工性にも優れた外壁パネルおよびこれを用いた外壁の構造、ならびに外壁パネルの施工方法を提供する。
【解決手段】 耐火性能を有するパネル本体と、
互いに隣接する二枚の外壁パネルの間に形成される縦目地を封止するように、前記パネル本体の側端部に設けられる、難燃性ゴムからなる封止部材と、を備える外壁パネルを建築物の周囲に水平方向に複数枚並べて接続することにより構成される外壁の構造であって、前記二枚の外壁パネルの間に形成される縦目地に、不燃断熱材が設けられている、外壁の構造。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性能を有するパネル本体と、
互いに隣接する二枚の外壁パネルの間に形成される縦目地を封止するように、前記パネル本体の側端部に設けられる、難燃性ゴムからなる封止部材と、
を備える外壁パネルを建築物の周囲に水平方向に複数枚並べて接続することにより構成される外壁の構造であって、
前記二枚の外壁パネルの間に形成される縦目地に、不燃断熱材が設けられている、外壁の構造。
【請求項2】
前記不燃断熱材は、石こうボードである、請求項1に記載の外壁の構造。
【請求項3】
前記パネル本体は、該パネル本体のうち屋外側となる面を構成する鋼板と、前記鋼板の内側に設けられた不燃断熱材とを含んで構成されている、請求項1または2に記載の外壁の構造。
【請求項4】
前記パネル本体の前記側端部は、互いに隣接する二枚の前記外壁パネルが接続されるときに相互に係合するように凹凸状に形成されている、請求項1または2に記載の外壁の構造。
【請求項5】
前記パネル本体の前記側端部には、隣接する他の前記外壁パネルの前記パネル本体の前記封止部材が係入する溝部が設けられている、請求項1または2に記載の外壁の構造。
【請求項6】
前記パネル本体のうち屋外側となる面は、他の前記外壁パネルと接続されたときに形成される前記縦目地を隠蔽するように、該縦目地の屋外側まで延出している、請求項1または2に記載の外壁の構造。
【請求項7】
前記外壁パネルは、前記側端部に沿う方向の寸法が、前記側端部と直交する方向の寸法よりも大きい長尺状に形成されている、請求項1または2に記載の外壁の構造。
【請求項8】
前記外壁パネルが縦張りされて前記建築物の横胴縁に固定されている、請求項1または2に記載の外壁の構造。
【請求項9】
前記外壁パネルが前記建築物の横胴縁に、前記建築物の屋内側からブラインドファスナで固定されている、請求項1または2に記載の外壁の構造。
【請求項10】
複数枚の前記外壁パネルが、継目水切板を挟むようにして建築物の高さ方向に接続され、前記継目水切板の上側の前記外壁パネルの下端面および前記継目水切板の下側の前記外壁パネルの上端面は前記継目水切板に密着している、請求項1または2に記載の外壁の構造。
【請求項11】
建築物の周囲に水平方向に複数枚並べられて接続されることにより前記建築物の外壁を構成する外壁パネルであって、
耐火性能を有するパネル本体と、
互いに隣接する二枚の前記外壁パネルの間に形成される縦目地を封止するように、前記パネル本体の側端部に設けられる、難燃性ゴムからなる封止部材と、
を備え、
前記外壁パネルは、前記側端部に沿う方向の寸法が、前記側端部と直交する方向の寸法よりも大きい長尺状に形成されている、外壁パネル。
【請求項12】
前記パネル本体は、該パネル本体のうち屋外側となる面を構成する鋼板と、前記鋼板の屋内側に設けられた不燃断熱材とを含んで構成されている、請求項11に記載の外壁パネル。
【請求項13】
前記パネル本体の前記側端部は、互いに隣接する二枚の前記外壁パネルが接続されるときに相互に係合するように凹凸状に形成されている、請求項11または12に記載の外壁パネル。
【請求項14】
前記パネル本体の前記側端部には、隣接する他の前記外壁パネルの前記パネル本体の前記封止部材が係入する溝部が設けられている、請求項11または12に記載の外壁パネル。
【請求項15】
前記パネル本体のうち屋外側となる面は、他の前記外壁パネルと接続されたときに形成される前記縦目地を隠蔽するように、該縦目地の屋外側まで延出している、請求項11または12に記載の外壁パネル。
【請求項16】
前記パネル本体の側端部のうち、前記封止部材よりも屋外側となる部位に、温度発泡性を有する耐火被覆材が設けられている、請求項11または12に記載の外壁パネル。
【請求項17】
前記耐火被覆材は、隣接する他の前記外壁パネルとの間に形成される前記縦目地の内部となる領域に設けられている、請求項16に記載の外壁パネル。
【請求項18】
前記耐火被覆材は、耐火塗料または耐火シートにより構成されている、請求項16に記載の外壁パネル。
【請求項19】
請求項11または12に記載の外壁パネルを建築物の周囲に水平方向に複数枚並べて接続することにより構成される外壁の構造であって、
前記外壁パネルが縦張りされて前記建築物の横胴縁に固定されている、外壁の構造。
【請求項20】
前記外壁パネルが前記建築物の横胴縁に、前記建築物の屋内側からブラインドファスナで固定されている、請求項19に記載の外壁の構造。
【請求項21】
複数枚の前記外壁パネルが、継目水切板を挟むようにして建築物の高さ方向に接続され、前記継目水切板の上側の前記外壁パネルの下端面および前記継目水切板の下側の前記外壁パネルの上端面は前記継目水切板に密着している、請求項19に記載の外壁の構造。
【請求項22】
請求項11または12に記載の外壁パネルの施工方法であって、
前記外壁パネルの前記パネル本体を前記建築物の横胴縁に、前記建築物の屋内側からブラインドファスナで固定する、外壁パネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁を構成する外壁パネルおよびこれを用いた外壁の構造、ならびに外壁パネルの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防火性能や耐火性能を有する外壁パネルを複数枚並べて接続することにより構成される外壁では、外壁パネルどうしの接続部の目地部にも、防火性能や耐火性能を備える必要がある。外壁パネルどうしの接続部の目地部には、水密性も要求される。そして、外壁パネルどうしの接続部の目地部の施工性も確保する必要がある。
【0003】
これらの要求に対し、例えば特許文献1には、水平方向に隣り合う外壁パネルどうしの間に形成される縦目地の目地部耐火構造が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の技術では、外壁パネルが横張り状に配置された状態、すなわち、水平方向に延びる外壁パネルが複数枚上下方向に並べられた状態で、縦胴縁に固定されて構成された外壁パネルユニットを用いている。そして、この外壁パネルユニットを複数枚並べて接続することにより、建築物の外壁を構成している。そして、水平方向に隣り合う外壁パネルユニットの外壁パネルの間に形成される縦目地内に密封部材を介在させるとともに、その屋内側には、縦目地の両側の外壁パネルユニットを跨ぐようにして不燃断熱材を取り付けている。この不燃断熱材は、縦目地の両側の外壁パネルユニットの外壁パネルを支持する縦胴縁の間の全幅に渡って設けられ、縦胴縁に設けられた断熱材押え部材により押さえ付けられて固定されている。このようにして、密封部材により縦目地の水密性を確保するとともに、不燃断熱材により縦目地の防耐火性能を確保している。また、不燃断熱材は、縦目地の両側の外壁パネルユニットの縦胴縁の間に、屋内側から取り付けることができるため、無足場施工が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6511252号
【特許文献2】特許第6414857号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】一般財団法人建材試験センター「防耐火性能試験・評価業務方法書」、2021年7月、p.14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示される外壁パネルの縦目地の目地部耐火構造では、縦目地を跨ぐようにして取り付けられる不燃断熱材は、外壁パネルユニットの外壁パネルを支持する縦胴縁に設けられた断熱材押え部材により押さえ付けられて固定されている。この縦胴縁は、建築物の高さ方向に延びているため、特許文献1に開示される外壁パネルの縦目地の目地部耐火構造は、水平方向に延びる横目地には適用できない。特許文献1には、各外壁パネルユニットにおいて、外壁パネルが縦張り状に配置された状態、すなわち、上下方向に延びる外壁パネルが複数枚水平方向に並べられた状態で、横胴縁に固定されている例については、記載されていない。特許文献1に開示されるように、外壁パネルが横張りされる場合は、雨水や塵が滞留しやすい横目地が多くなるため、外壁パネルが縦張りされる場合に比べ、一般的に防水性能や耐久性が劣り、外壁の汚損も発生しやすい。
【0007】
また、特許文献1に開示される技術では、外壁パネルユニットの外壁パネルを支持する縦胴縁を用いて、縦目地を跨ぐようにして不燃断熱材を固定しているが、このような構造では、縦目地の両側に縦胴縁が配置されている必要があり、縦胴縁の本数を多くする必要も生じる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、建築物の外壁の水平方向に複数枚並べて配置される外壁パネルの縦目地において、簡易な構造により防耐火性能および水密性を十分に確保でき、施工性にも優れた外壁パネルおよびこれを用いた外壁の構造、ならびに外壁パネルの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 建築物の周囲に水平方向に複数枚並べられて接続されることにより前記建築物の外壁を構成する外壁パネルであって、耐火性能を有するパネル本体と、互いに隣接する二枚の前記外壁パネルの間に形成される縦目地を封止するように、前記パネル本体の側端部に設けられる、難燃性ゴムからなる封止部材と、前記パネル本体の側端部のうち、前記封止部材よりも屋外側となる部位に設けられる、温度発泡性を有する耐火被覆材と、を備える外壁パネル。
[2] 前記パネル本体の前記側端部は、互いに隣接する二枚の前記外壁パネルが接続されるときに相互に係合するように凹凸状に形成されている、[1]に記載の外壁パネル。
[3] 前記パネル本体の前記側端部には、隣接する他の前記外壁パネルの前記パネル本体の前記封止部材が係入する溝部が設けられている、[1]または[2]に記載の外壁パネル。
[4] 前記耐火被覆材は、隣接する他の前記外壁パネルとの間に形成される前記縦目地の内部となる領域に設けられている、[1]~[3]のいずれかに記載の外壁パネル。
[5] 前記耐火被覆材は、耐火塗料または耐火シートにより構成されている、[1]~[4]のいずれかに記載の外壁パネル。
[6] 前記パネル本体のうち屋外側となる面は、他の前記外壁パネルと接続されたときに形成される前記縦目地を隠蔽するように、該縦目地の屋外側まで延出している、[1]~[5]のいずれかに記載の外壁パネル。
[7] 前記外壁パネルは、前記側端部に沿う方向の寸法が、前記側端部と直交する方向の寸法よりも大きい長尺状に形成されている、[1]~[6]のいずれかに記載の外壁パネル。
[8] 前記パネル本体は、該パネル本体のうち屋外側となる面を構成する鋼板と、前記鋼板の屋内側に設けられた不燃断熱材とを含んで構成されている、[1]~[7]のいずれかに記載の外壁パネル。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の外壁パネルを建築物の周囲に水平方向に複数枚並べて接続することにより構成される外壁の構造であって、前記外壁パネルが縦張りされて前記建築物の横胴縁に固定されている、外壁の構造。
[10] 前記外壁パネルが前記建築物の横胴縁に、前記建築物の屋内側からブラインドファスナで固定されている、[9]に記載の外壁の構造。
【0010】
ここで、ブラインドファスナとは、被締結部材の表面側のみからの作業により、ファスナの先端部が被締結部材の裏面側で横方に広がることで、被締結部材の締結が行われるものをいう。具体的には、被締結部材に設けた孔にブラインドファスナが挿入された状態で、ファスナ先端部と連結された芯棒を引き抜いたり、ファスナ先端部に設けられたねじ穴にねじを螺入するなどにより、ファスナ先端部が手前に引き寄せられるように変形する。この結果、ファスナ先端部が横方に拡がって被締結部材の裏面側に係合し、被締結部材の締結が行われる。ブラインドファスナの具体例としては、例えば、ロックリベット、ブラインドリベット、バルブタイトリベット、プッシュボタンクリップ等のクリップ、ポップナット、ジャックナット、ウェルナット、スクリューグロメットなどが挙げられる。
[11] 複数枚の前記外壁パネルが、継目水切板を挟むようにして建築物の高さ方向に接続され、前記継目水切板の上側の前記外壁パネルの下端面および前記継目水切板の下側の前記外壁パネルの上端面は前記継目水切板に密着している、[9]または[10]に記載の外壁の構造。
[12] [1]~[8]のいずれかに記載の外壁パネルの施工方法であって、
前記外壁パネルの前記パネル本体を前記建築物の横胴縁に、前記建築物の屋内側からブラインドファスナで固定する、外壁パネルの施工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外壁パネルおよびこれを用いた外壁の構造、ならびに外壁パネルの施工方法によれば、建築物の外壁の水平方向に複数枚並べて配置される外壁パネルの縦目地において、簡易な構造により防耐火性能および水密性を十分に確保できるとともに、優れた施工性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)~
図1(c)は、本発明の第一の実施形態に係る外壁パネルを用いて構成された外壁を示す水平断面図、正面図、および縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一の実施形態に係る外壁パネルのパネル本体の側端部を拡大して示す水平断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一の実施形態に係る外壁パネルどうしの接続部を拡大して示す水平断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一の実施形態に係る外壁パネルどうしの接続部が火災時の加熱を受けた状態を示す。
【
図5】
図5は、本発明の第一の実施形態の変形例の外壁パネルどうしの接続部が火災時の加熱を受けた状態を示す。
【
図6】
図6は、本発明の第一の実施形態に係る外壁パネルを、建築物の高さ方向に複数枚接続して構成された外壁を示す。
【
図7】
図7は、本発明の第一の実施形態に係る外壁パネルを、建築物の高さ方向に複数枚接続して構成された外壁の他の例を示す。
【
図8】
図8は、本発明の第二の実施形態に係る外壁パネルどうしの接続部を拡大して示す水平断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第三の実施形態に係る外壁パネルどうしの接続部を拡大して示す水平断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の外壁パネルどうしの間に形成される縦目地の目地幅と、耐火塗料の塗布厚とを、模式的に示す水平断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第四の実施形態に係る外壁パネルどうしの接続部を拡大して示す水平断面図である。
【
図12】
図12は、参考例の外壁パネルのパネル本体の側端部を拡大して示す水平断面図である。
【
図13】
図13は、参考例の外壁パネルどうしの接続部を拡大して示す水平断面図である。
【
図14】
図14は、参考例の外壁パネルの効果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の外壁パネルおよびこれを用いた外壁の構造、ならびに外壁パネルの施工方法の実施形態について、具体的に説明する。
<第一の実施形態>
1)外壁パネルおよびこれを用いた外壁の構造
図1(a)~
図1(c)に、本発明の第一の実施形態に係る外壁パネルを用いて構成された外壁の水平断面図、正面図、および縦断面図を、それぞれ示す。
【0014】
図1(a)~
図1(c)に示すように、本実施形態の外壁パネル1Aは、建築物の周囲に水平方向に複数枚並べられて接続されることにより、建築物の外壁を構成するものである。本実施形態の外壁パネル1Aは、側端部に沿う方向の寸法が、側端部と直交する方向の寸法よりも大きい長尺状に形成されている。外壁パネル1Aは、長さが12m以下となるように製造するのが一般的であり、この程度の長さであれば、運搬上の制約を受けることなく、建設現場に容易に搬入できる。そのため、本実施形態の外壁パネル1Aを用いて、工場、倉庫等の平屋や2階建ての建築物の外壁を構成する際には、建築物の高さ方向に複数枚の外壁パネル1Aを接続することなく、外壁の全高を一枚の外壁パネル1Aで構成できる。
【0015】
図1(a)~
図1(c)に示すように、本実施形態の外壁の構造は、外壁パネル1Aを建築物の周囲に水平方向に複数枚並べて接続することにより構成される。具体的には、上述のとおり長尺状に形成された外壁パネル1Aが、建築物の高さ方向に沿って縦張りされ、建築物の外周に沿って設けられた間柱5の間に水平方向に架設された横胴縁4に、屋内側からブラインドファスナ2により留め付けられている。建築物の外周に設けられる横胴縁4は、建築物の高さ方向に、例えば2700mm以下の間隔で設けられることが一般的であり、この程度の間隔であれば、外壁パネル1Aの建築物への固定強度は十分に確保される。本実施形態の外壁パネル1Aに特有の構成により、横胴縁4の間隔を小さくする必要は生じない。
【0016】
また、建築物の外周に沿う地盤上には立ち上がりコンクリート6が設けられており、この立ち上がりコンクリート6の上端部と外壁パネル1Aの下端部との間に、水切板61が介装されている。水切板61は、外壁パネル1Aの屋外側の面に沿って流れ落ちる雨水を、立ち上がりコンクリート6の屋外側に排出する機能を有する。そして、壁パネル1Aの下端部は、立ち上がりコンクリート6に固定された水切板61に、屋内側からブラインドファスナ2により留め付けられている。
【0017】
本実施形態の外壁の構造では、長尺状に形成された外壁パネル1Aが、建築物の高さ方向に沿って縦張りされるため、雨水や塵が滞留しやすい横目地が発生しないか、横目地の数が極めて少なくなる。よって、横張りされる外壁パネルに比べて防水性能や耐久性を確保しやすく、外壁の汚損も発生しにくい。そして、外壁パネル1Aどうしの間に形成される縦目地1Jが竪樋として機能し、雨水の排水を促進するので、外壁の屋外側から屋内側への雨水の侵入を防ぎ、外壁パネルが横張りされて構成される外壁よりも水密性に優れている。
【0018】
図2に、本実施形態の外壁パネル1Aのパネル本体10の側端部10eを拡大して示す。また、
図3に、本実施形態の外壁パネル1Aどうしが接続された状態を拡大して示す。
【0019】
図2に示すように、外壁パネル1Aは、耐火性能を有するパネル本体10と、難燃性ゴムからなる封止部材14と、温度発泡性を有する耐火被覆材15と、を備えて、構成されている。
【0020】
このうち、パネル本体10は、パネル本体10のうち屋外側となる面を構成する鋼板11と、屋内側となる面を構成する鋼板12と、鋼板11の屋内側、すなわち鋼板11、12の間に設けられた、不燃断熱材13とを含んで構成されている。
【0021】
本実施形態の外壁パネル1Aのパネル本体10は、厚さが75mmに形成され、鋼板11として、板厚0.5mmの溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板を用い、鋼板12として、板厚0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板を用いている。鋼板11、12の種類および板厚は、外壁パネル1Aに要求される仕様に応じて変更可能である。また、本実施形態の外壁パネル1Aでは、不燃断熱材13としては、例えば、密度80kg/m
3、厚さ44mmのロックウールを用いている。不燃断熱材13の材質、密度、厚さも、外壁に要求される防耐火性能のレベル等に応じて変更可能である。
図2に示すように、不燃断熱材13は、パネル本体10の屋内側となる面を構成する鋼板12に接するように配置されており、パネル本体10の屋外側となる面を構成する鋼板11と不燃断熱材13との間には、厚さ30mmの空気層が形成されている。空気層の厚さが小さくなるように不燃断熱材13の厚さを大きくしたり、空気層が無くなるように不燃断熱材13を鋼板11、12の間の全空間に充填したりすれば、外壁パネル1Aの防耐火性能をさらに高めることができる。
【0022】
パネル本体10のうち屋内側となる面を構成する鋼板12は、上述のとおり、屋内側からブラインドファスナ2により、建築物の横胴縁4または水切板61に留め付けられる。ただし、不燃断熱材13が、直接ブラインドファスナ2により留め付け可能な素材から構成されている場合には、パネル本体10のうち屋内側となる面を構成する鋼板12を設けなくても良い。
【0023】
図2および
図3に示すように、パネル本体10の側端部10eは、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Aが接続されるときに相互に係合するように凹凸状に形成されている。このようにすると、
図3に示すように、外壁パネル1Aの側端部10eが緊密に接続されるので、外壁パネル1Aの側端部10eが平坦に形成されている場合に比べて、外壁パネル1Aの縦目地1Jの防耐火性能および水密性を一層高めることができる。
【0024】
また、封止部材14は、クロロプレンゴムなどの難燃性ゴムからなり、
図2に示すように、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Aの間に形成される縦目地1Jを封止するように、パネル本体10の側端部10eに設けられ、レインバリアおよびウィンドバリアとして機能する。そして、パネル本体10の側端部10eには、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Aが接続されるときに、隣接する他の外壁パネル1Aのパネル本体10の封止部材14が係入する溝部10gが設けられている。このようにすると、
図3に示すように、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Aが接続されるときに、パネル本体10の側端部10eに設けられた溝部10gに、隣接する他の外壁パネル1Aのパネル本体10の封止部材14が係入する。よって、外壁パネル1Aどうしの間に形成される縦目地1Jが密封され、外壁パネル1Aの縦目地1Jの水密性を一層高めることができる。
【0025】
また、
図2に示すように、耐火被覆材15は、パネル本体10の側端部10eの鋼板11の表面のうち、封止部材14よりも屋外側となる部位に設けられている。耐火被覆材15は、屋外側の火災時の加熱により膨張して、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Aの間に形成される縦目地1Jのうち、封止部材14より屋外側となる部位をさらに閉塞するものである。
【0026】
互いに隣接する二枚の外壁パネル1Aの間に形成される縦目地1Jは、難燃性ゴムからなる封止部材14によって封止され、屋外側と屋内側とが絶縁されているが、封止部材14のみでは、縦目地1Jの防耐火性能は必ずしも十分でない。そこで、上述のように耐火被覆材15を設けると、縦目地1Jの屋外側から屋内側への熱伝達を効果的に遮断できる。
【0027】
耐火被覆材15は、封止部材14よりも屋外側となる部位に設ける必要がある。耐火被覆材15が、封止部材14よりも屋内側に設けられていると、縦目地1Jが屋外側の火災時の加熱を受けるとき、封止部材14により火炎が遮られて、耐火被覆材15が発泡温度に到達しにくく、耐火被覆材15の防耐火性能を発揮しにくくなるためである。本実施形態の外壁パネル1Aでは、耐火被覆材15は、パネル本体10の側端部10eのうち、縦目地1Jの内面となる領域に加えて、縦目地1Jを中心として水平方向に所定の幅にわたってパネル本体10の屋外側の面を覆うように設けられている。
【0028】
図4に、本実施形態の外壁パネル1Aどうしの接続部が屋外側の火災時の加熱を受けたときの状態を示す。
【0029】
図4に示すように、温度発泡性を有する耐火被覆材15は、屋外側の火災時の加熱を受けることにより膨張して、縦目地1Jのうち封止部材14より屋外側となる部位をさらに閉塞して、防耐火性能を発揮する。
【0030】
また、
図5には、上述の外壁パネル1Aの耐火被覆材15の設置範囲を、パネル本体10の側端部10eのうち、縦目地1Jの内面となる領域のみに変更した外壁パネル1Bにおいて、外壁パネル1Bどうしの接続部が屋外側の火災時の加熱を受けたときの状態を示す。この外壁パネル1Bのように、耐火被覆材15が、パネル本体10の側端部10eのうち縦目地1Jの内面となる領域のみに設けられる場合も、屋外側の火災時の加熱を受けて膨張する耐火被覆材15により、縦目地1Jの内部が完全に閉塞されて、防耐火性能を発揮する。
【0031】
ただし、
図4に示すように、耐火被覆材15を、パネル本体10の側端部10eのうち、縦目地1Jの内面となる領域だけでなく、縦目地1Jを中心として水平方向に所定の幅にわたってパネル本体10の屋外側の面を覆うように余長を設けることが好ましい。このようにすると、後述するように、耐火被覆材15の防耐火性能が十分に発揮されるとともに、耐火被覆材15自体の耐候性などの耐久性も高めることができる。なお、不燃断熱材13を構成するロックウールの密度が大きいほど、耐火被覆材15の余長を小さくすることができる。
【0032】
上述の耐火被覆材15は、具体的には、温度発泡性を有する耐火塗料または耐火シートにより構成され、パネル本体10の側端部10eの鋼板11に、耐火塗料を塗布するか、耐火シートを貼付することにより設けられる。このように、耐火塗料を塗布、または耐火シートを貼付する簡易な構造により、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Aの間に形成される縦目地1Jに、十分な防耐火性能を容易に備えることができる。そして、耐火塗料を塗布、または耐火シートを貼付しても、パネル本体10の側端部10eの納まりはほとんど変わらない。よって、パネル本体10の側端部10eに耐火被覆材15が設けられていない従来の外壁パネルと同様の水密性および施工性を確保できる。
【0033】
耐火塗料としては、株式会社グローケミカル製の「GC耐火塗料」などを使用できる。「GC耐火塗料」は、表面温度が約250℃になると発泡を開始し、当初の塗装皮膜の厚さの10倍から20倍の厚さに膨張して断熱層を形成し、耐火性能を発揮するものである。「GC耐火塗料」またはこれ同等の性能を有する耐火塗料を用いる場合には、耐火塗料16の塗布厚を1mm程度とし、縦目地1Jの内面、および縦目地1Jを中心として水平方向に60mm以上180mm以下の幅にわたってパネル本体10の屋外側の面に塗布することが好ましい。このようにすると、耐火塗料の防耐火性能が十分に発揮されるとともに、耐火塗料自体の耐候性などの耐久性も高めることができる。
【0034】
また、耐火シートとしては、例えば、特許文献2に開示される「柔軟性を有する耐火シート、積層型耐火シート」や、積水化学工業株式会社製の熱膨張耐火材「フィブロック」(登録商標)などを使用できる。このような耐火シートを用いても、上述の耐火塗料と同等の耐火性能および耐久性を得ることができる。耐火シートの貼付範囲は、耐火塗料と同様に、縦目地1Jの内面、および縦目地1Jを中心として水平方向に60mm以上180mm以下の幅にわたってパネル本体10の屋外側の面に貼付することが好ましい。このようにすると、耐火シートの防耐火性能が十分に発揮されるとともに、耐火シート自体の耐候性などの耐久性も高めることができる。
【0035】
非特許文献1に規定されている防火性能試験方法では、屋外側から30分間で20℃から842℃まで上昇する温度で加熱する試験条件に対して、屋内側の表面温度の温度上昇が平均で140℃以下、最高で180℃以下であること等が要求されている。上述のように、耐火被覆材15を、パネル本体10の側端部10eの表面のうち、封止部材14よりも屋外側となる部位に設けることにより、縦目地1J部分においても、この要求水準を満たすことができる。
【0036】
耐火被覆材15を構成する耐火塗料や耐火シートの種類、塗布厚またはシート厚、余長は、外壁に要求される防耐火性能のレベルに応じて適宜変更することが好ましい。
【0037】
耐火被覆材15を構成する耐火塗料の塗布または耐火シートの貼付は、外壁パネル1Aを製作する工場で行うか、または建設現場において外壁パネル1Aを建築物に取り付ける現場建て方よりも前に行うことが好ましい。このようにすると、後述するように、建築物の屋内側からの作業により、外壁パネル1Aを建築物に取り付けることができるため、無足場施工が可能となり、施工性に優れる。
2)外壁パネルの施工方法
図2および
図3を参照して、本実施形態の外壁パネルの施工方法について説明する。
【0038】
本実施形態の外壁パネルの施工方法は、建築物の屋内側からの作業により、上述の外壁パネル1Aを建築物の横胴縁4にブラインドファスナ2により固定することにより、実現される。
【0039】
上述のように、耐火被覆材15を構成する耐火塗料の塗布または耐火シートの貼付は、外壁パネル1Aを製作する工場で行うか、または建設現場において外壁パネル1Aを建築物に取り付ける現場建て方よりも前に行うことが好ましい。このようにすると、建築物の屋内側からの作業により、外壁パネル1Aを建築物に取り付けることができるため、無足場施工が可能となる。
【0040】
このように構成された外壁パネル1Aの建て方時には、外壁パネル1Aを建築物の周囲に水平方向に複数枚並べる。そして、
図2および
図3に示すように、水平方向に並ぶ二枚の外壁パネル1Aのうちの一方の外壁パネル1Aのパネル本体10の側端部10eに設けられた封止部材14を、他方の外壁パネル1Aのパネル本体10の側端部10eに設けられた溝部10gに係入させる。これと同時に、水平方向に並ぶ二枚の外壁パネル1Aのうちの一方の外壁パネル1Aのパネル本体10の側端部10eに設けられた溝部10gに、他方の外壁パネル1Aのパネル本体10の側端部10eに設けられた封止部材14を係入させる。
【0041】
そして、この状態で、
図1(a)~
図1(c)に示すように、建築物の屋内側からの作業により、複数枚の外壁パネル1Aの各々を建築物の横胴縁4にブラインドファスナ2により固定する。このように、本実施形態の外壁パネルの施工方法では、建築物の屋内側からの作業により、外壁パネル1Aを建築物に取り付けることができるため、無足場施工が可能となり、施工性に優れる。
3)建築物の高さ方向の外壁パネルの接続
図6および
図7に、建築物の階数が大きく、一枚の外壁パネル1Aでは長さが不足する場合などに、本実施形態の外壁パネル1Aを、建築物の高さ方向に複数枚接続して構成された外壁の例を示す。
図6には、建築物の外壁に沿って設けられた横胴縁4とほぼ同じ高さで外壁パネル1Aどうしが接続される例を、
図7には、建築物の床スラブ7とほぼ同じ高さで外壁パネル1Aどうしが接続される例を、それぞれ示している。
【0042】
図6に示す例では、建築物の外壁に沿って設けられた横胴縁4の屋外側に、継目水切板3が取り付けられている。また、
図7に示す例では、建築物の床スラブ7を支持する小梁70にアングル胴縁71が取り付けられ、このアングル胴縁71の屋外側に、継目水切板3が取り付けられている。
【0043】
そして、
図6および
図7に示すように、外壁パネル1Aの下端面および上端面は平坦に形成されており、継目水切板3の上側の外壁パネル1Aの下端面および継目水切板3の下側の外壁パネル1Aの上端面が継目水切板3に密着している。このように、継目水切板3の上側および下側の外壁パネル1Aが、継目水切板3を挟むようにして、建築物の高さ方向に接続するように配置される。そして、この状態で、継目水切板3の上側の外壁パネル1Aの下端部および継目水切板3の下側の外壁パネル1Aの上端部が横胴縁4またはアングル胴縁71にブラインドファスナ2で固定される。このブラインドファスナ2による固定も、建築物の屋内側からの作業により実施できる。
【0044】
このように、上下に並ぶ外壁パネル1Aの間に継目水切板3を介在させ、外壁パネル1Aの下端面および上端面が継目水切板3に密着するように配置されるので、建築物の高さ方向の外壁パネル1Aの接続部は、防耐火性能上の弱点となることがない。
<第二の実施形態>
図8に、本実施形態の第二の実施形態に係る外壁パネル1Cの接続部を示す。
【0045】
図8に示すように、本実施形態の外壁パネル1Cでは、第一の実施形態の外壁パネル1Aの耐火被覆材15が設けられる位置が変更されている。具体的には、本実施形態では、耐火被覆材15のうち、縦目地1Jを中心として水平方向に所定の幅にわたってパネル本体10の屋外側の面を覆うように設けられる余長部分が、パネル本体10の側端部10eの鋼板11の表面ではなく、パネル本体10の側端部10eの鋼板11の裏面に設けられている。耐火被覆材15のうち、縦目地1Jの内面となる領域については、第一の実施形態の外壁パネル1Aと同様に、パネル本体10の側端部10eの鋼板11の表面に設けられている。その他の点については、本実施形態の外壁パネル1Cは、第一の実施形態の外壁パネル1Aと同様に構成されている。
【0046】
本実施形態では、耐火被覆材15は、パネル本体10の側端部10eの鋼板11の裏面に設けられるため、縦目地1Jが屋外側の火災時の加熱を受けるとき、耐火被覆材15は直接火炎に接しない。しかし、鋼板11の熱伝導性は高く、かつ鋼板11の厚さは0.5mmと薄いため、鋼板11の裏面に設けられた耐火被覆材15は、支障なく発泡温度に到達する。パネル本体10の屋外側となる面を構成する鋼板11と不燃断熱材13との間には、上述のとおり、厚さ30mmの空気層が形成されているので、鋼板11の裏面に設けられた余長部分の耐火被覆材15が発泡温度に到達すると、この空気層内で膨張する。これにより、縦目地1Jの両側のパネル本体10内部の空気層が閉塞されて断熱効果が高められ、縦目地1Jの防耐火性能がさらに向上する。空気層の厚さは、耐火被覆材15の膨張率を考慮して適宜決定される。
【0047】
また、本実施形態の外壁パネル1Cでは、パネル本体10の屋外側の面を構成する鋼板11の表面に耐火被覆材15が露出せず、鋼板11の裏面側に隠蔽されるため、外壁パネル1Cにより構成される外壁の屋外側の面の意匠性が損なわれることがない。また、耐火被覆材15が外気中に露出しないことにより、耐火被覆材15の耐候性などの耐久性も高められる。
<第三の実施形態>
図9に、本実施形態の第三の実施形態に係る外壁パネル1Dの接続部を示す。
【0048】
図9に示すように、本実施形態の外壁パネル1Dでは、第一の実施形態の外壁パネル1Aのパネル本体10の屋外側の面を構成する鋼板11の形状のうち、縦目地1Jの内面となる領域の形状が変更されている。これにより、
図9に示すように、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Dの間に形成される縦目地1Jの目地幅Wが、第一の実施形態よりも小さくなっている。その他の点については、本実施形態の外壁パネル1Dは、第一の実施形態の外壁パネル1Aと同様に構成されている。
【0049】
本実施形態のように、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Dの間に形成される縦目地1Jの目地幅Wが小さくなると、縦目地1Jの屋外側と屋内側との間の断熱効果が高められ、縦目地1Jの防耐火性能がさらに向上する。
【0050】
図10に、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Dの間に形成される縦目地1Jの目地幅Wと、耐火被覆材15の厚さTとを、模式的に示す。
【0051】
上述のとおり、耐火塗料または耐火シートにより構成される耐火被覆材15は、火災により表面温度が約250℃になると発泡を開始し、当初の塗装皮膜の厚さの10倍から20倍の厚さに膨張して断熱層を形成し、耐火性能を発揮する。よって、縦目地1Jの目地幅Wは、耐火被覆材15の膨張率に対応する大きさに設定することが好ましい。
【0052】
表1に、耐火被覆材15の厚さTが1.0mm、1.5mm、2.0mmのときの、縦目地1Jの目地幅W(mm)の好適値を示す。
図10に示すように耐火被覆材15が縦目地1Jの内面の両側に設けられている場合、縦目地1Jの目地幅Wが20mmであれば、耐火被覆材15の厚さTを1.0mmとするのが適切である。また、耐火被覆材15が縦目地1Jの内面の片側に設けられる場合、縦目地1Jの目地幅Wが20mmであれば、耐火被覆材15の厚さTを2.0mmとするのが適切である。
【0053】
【0054】
<第四の実施形態>
図11に、本実施形態の第四の実施形態に係る外壁パネル1Eの接続部を示す。
【0055】
図11に示すように、本実施形態の外壁パネル1Eでは、パネル本体10のうち屋外側となる面を構成する鋼板11が、互いに隣接する二枚の外壁パネル1Eの間に形成される縦目地1Jを隠蔽するように、縦目地1Jの屋外側まで延出している。そして、耐火被覆材は、鋼板11により隠蔽された縦目地1Jの内面となる領域のみに設けられている。その他の点については、本実施形態の外壁パネル1Eは、第一の実施形態の外壁パネル1Aとほぼ同様に構成されている。
【0056】
本実施形態では、耐火被覆材15は、縦目地1Jの屋外側まで延出している鋼板11により隠蔽されるため、縦目地1Jが屋外側の火災時の加熱を受けるとき、耐火被覆材15は直接火炎に接しない。しかし、鋼板11の熱伝導性は高く、かつ鋼板11の厚さは0.5mmと薄いため、鋼板11により隠蔽された耐火被覆材15は、支障なく発泡温度に到達して膨張する。これにより、縦目地1Jの内部が、膨張した耐火被覆材15により閉塞されて断熱効果が高められ、縦目地1Jの防耐火性能がさらに向上する。
【0057】
また、本実施形態の外壁パネル1Eでは、パネル本体10の屋外側の面を構成する鋼板11の表面に耐火被覆材15が露出せず、鋼板11の裏面側に隠蔽されるため、外壁パネル1Eにより構成される外壁の屋外側の面の意匠性が損なわれることがない。また、耐火被覆材15が外気中に露出しないことにより、耐火被覆材15の耐候性などの耐久性も高められる。
<参考例>
本発明に係る外壁パネルの構成を一部変更した参考例の外壁パネル、およびこれを用いた外壁の構造について、以下に説明する。
【0058】
図12に、本参考例の外壁パネル9のパネル本体90の側端部90eを拡大して示す。また、
図13に、本参考例の外壁パネル9どうしが接続された状態を拡大して示す。
【0059】
図12および
図13に示すように、本参考例の外壁パネル9では、第一の実施形態の外壁パネル1Aの耐火被覆材15が省略されている。そして、
図13に示すように、水平方向に互いに隣接する二枚の外壁パネル9が接続された後、これら二枚の外壁パネル9の間に形成される縦目地9Jの屋内側に、不燃断熱材95がビス96により留め付けられている。その他の点については、本実施形態の外壁パネル1Cは、第一の実施形態の外壁パネル1Aとほぼ同様に構成されている。
【0060】
本参考例では、縦目地9Jの屋内側に留め付けられる不燃断熱材95として、例えば、厚さ9.5mmの石こうボード、厚さ10mmのケイ酸カルシウム板などの耐火ボードを使用できる。そして、不燃断熱材95の幅Wを、適切な大きさに設定することにより、上述の非特許文献1で要求される防火性能を満たすことができる。
【0061】
本参考例の外壁の構造では、不燃断熱材95のビス96による留め付けは、建築物の屋内側から施工できる。そして、不燃断熱材95が留め付けられた外壁パネル9も、建築物の屋内側からの作業により、建築物の横胴縁4にブラインドファスナ2により固定できる。よって、無足場施工が可能となり、施工性に優れている。
【0062】
また、不燃断熱材95をビス96で留め付ける構成とすることにより、パネル本体90の側端部90eの納まりはほとんど変わらない。よって、従来の外壁パネルと同様の水密性および施工性を確保できる。
【0063】
本参考例における不燃断熱材95の幅Wとして必要な大きさについて、加熱試験を行って確認したので、これについて以下に説明する。
【0064】
本加熱試験では、
図13に示す形状の外壁パネル9どうしの接続部を試験対象とした。外壁パネル9のパネル本体90の厚さは75mmとした。パネル本体90の屋外側の面を構成する鋼板91として、板厚0.5mmの溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板を用い、パネル本体90の屋外側の面を構成する鋼板92として、板厚0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板を用いた。また、外壁パネル9のパネル本体90の鋼板91、92の間に形成される空間の全体に、不燃断熱材93としてロックウールを充填した。不燃断熱材93を構成するロックウールの密度は、40K(37~44kg/m
3)、80K(73~87kg/m
3)の二種類とした。
【0065】
外壁パネル9のパネル本体90内の不燃断熱材93として、密度40Kのロックウールを用いる場合については、縦目地9Jの屋内側に不燃断熱材95が設けられていない一例のみを試験対象とした。また、外壁パネル9のパネル本体90内の不燃断熱材93として、密度80Kのロックウールを用いる場合については、縦目地9Jの屋内側に不燃断熱材95が設けられていない例、不燃断熱材95として厚さ9.5mmの石こうボードを用いた例、不燃断熱材95として厚さ10mmのケイ酸カルシウム板を用いた例の三例を、試験対象とした。
【0066】
そして、上述の非特許文献1に規定されている防火性能試験方法に従って、縦目地9Jを含む外壁パネル9どうしの接続部に対し、屋外側から30分間で20℃から842℃まで上昇する加熱条件で、加熱試験を実施した。
【0067】
図14に、本加熱試験の結果得られた、外壁パネル9の屋内側の表面温度の温度上昇の分布を示す。
図14に示すとおり、縦目地9Jの中心からの距離が大きくなるほど、外壁パネル9の温度上昇が小さくなっている。また、不燃断熱材93として密度40Kのロックウールを用いた場合と、密度80Kのロックウールを用いた場合とを比較すると、前者よりも後者のほうが、外壁パネル9の温度上昇が小さくなっている。
【0068】
上述のとおり、非特許文献1では、屋内側の表面温度の温度上昇が平均で140℃以下、最高で180℃以下であること等が要求されている。これに対し、
図14に示すとおり、パネル本体90内部の不燃断熱材93として、密度40Kのロックウールを用いた場合には、縦目地9Jの中心からの距離が90mm以上であれば、屋内側の表面温度の平均温度上昇が、制限値140℃を下回っている。つまり、縦目地9Jの屋内側に留め付ける不燃断熱材95の幅Wは180mm以上確保すれば、非特許文献1に規定されている防耐火性能を備えるようにできる。
【0069】
また、パネル本体90内部の不燃断熱材93として、密度80Kのロックウールを用いた場合には、縦目地9Jの中心からの距離が60mm以上であれば、屋内側の表面温度の平均温度上昇が、制限値140℃を下回っている。つまり、縦目地9Jの屋内側に留め付ける不燃断熱材95の幅Wを120mm以上確保すれば、非特許文献1に規定されている防耐火性能を備えるようにできる。
【0070】
また、縦目地9Jの屋内側に不燃断熱材95として厚さ9.5mmの石こうボードを用いた例、不燃断熱材95として厚さ10mmのケイ酸カルシウム板を用いた試験例では、縦目地9Jの中心位置の温度上昇は、それぞれ103℃、109℃に抑えられた。
【符号の説明】
【0071】
1A~1E 外壁パネル
1J 縦目地
10 パネル本体
10e 側端部
10g 溝部
11、12 鋼板
13 不燃断熱材
14 封止部材(難燃性ゴム)
15 耐火被覆材(耐火塗料、耐火シート)
2 ブラインドファスナ
4 横胴縁
5 間柱
6 立ち上がりコンクリート
61 水切板
7 床スラブ
70 小梁
71 アングル胴縁
9 外壁パネル
9J 縦目地
90 パネル本体
90e 側端部
91、92 鋼板
93 不燃断熱材
94 封止部材(難燃性ゴム)
95 耐火ボード
96 ビス
T 耐火塗料の塗布厚
W 縦目地の目地幅