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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174634
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】再剥離型粘着シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231201BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231201BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231201BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
B32B27/30 A
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087289
(22)【出願日】2022-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑江 英志
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK51A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA02A
4F100CB00A
4F100DD01A
4F100DD01C
4F100EH46
4F100EJ86
4F100EJ98
4F100JK06
4F100JK06A
4F100JK07A
4F100JL14B
4F100JL14C
4F100YY00A
4F100YY00C
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004BA04
4J004CA06
4J004CB02
4J004CD08
4J004DB05
4J004FA01
4J040DF021
4J040EF282
4J040JB09
4J040KA16
4J040LA02
4J040LA08
4J040MA10
4J040PA25
(57)【要約】
【課題】印刷物等と被着体とを貼り合わせることができ、貼り直しが容易にできる粘着シートを低コストで提供する。
【解決手段】粘着シート10は、第1の面と、第1の面より面積が小さい第2の面とを有する粘着剤層3を備え、基材を持たない再剥離型粘着シートである。粘着剤層3の23℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率は1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値は0.4以上となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面に対向し、前記第1の面より面積が小さい第2の面とを有する粘着剤層を備え、基材を持たない再剥離型粘着シートであって、
前記粘着剤層の23℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率は1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値は0.4以上である再剥離型粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層の前記第1の面は平坦で、前記第2の面には凹凸が形成されている、請求項1に記載の再剥離型粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の前記第2の面の被着体に対する接地面積は前記粘着剤層の平面面積全体の20%以上60%以下である、請求項1に記載の再剥離型粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層の前記第1の面はシート状の印刷物の背面に貼り合わせられ、前記粘着剤層の前記第2の面は被着体に貼り合わせられることで、前記印刷物の前記被着体への固定に使用される、請求項1に記載の再剥離型粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層の前記第2の面の被着体に対する23℃、相対湿度50%での貼り付け後24時間経過時の常態粘着力は、0.1N/25mm以上10N/25mm未満である、請求項1に記載の再剥離型粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤を用いて形成されている、請求項1に記載の再剥離型粘着シート。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の粘着剤層と、
前記粘着剤層の前記第1の面に貼り合わされ、平坦な剥離面を有する第1の剥離ライナーと、
前記粘着剤層の前記第2の面に貼り合わされ、凹凸が形成された剥離面を有する第2の剥離ライナーとを備えている、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、基材を持たない粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
フロアシート、掲示物及びステッカー等の印刷物を被着体に貼り付けるために両面粘着シートが使用されることがある。この場合、粘着シートの剥離後に糊残りが少ないことに加え、粘着シートの貼り直しやすさが求められることがある。
【0003】
特開2017-119790(特許文献1)には、粘着剤層のみを有し、印刷物を被着体と貼り合わせるために使用される装飾用粘着シートが記載されている。同文献には、芯材と、芯材の一方の面に形成された第1の粘着剤層と、芯材の他方の面に形成された第2の粘着剤層とを備えた装飾用粘着シートも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-119790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装飾用粘着シートは、一方の面を印刷物と貼り合わせ、他方の面を被着体と貼り合わせた後、貼り直すことが想定されていない。このため、粘着剤層のみを有する粘着シートの場合、被着体から剥がす際に印刷物の材質によっては粘着剤層が被着体側に転着する可能性がある。
【0006】
被着体への転着を防ぐために、芯材の一方の面(印刷物側)に強粘着性の第1の粘着剤層を設け、芯材の他方の面(被着体側)に再剥離性を示す第2の粘着剤層を設けることが考えられるが、この場合、粘着剤層のみを有する粘着シートに比べて製造工程が多くなり、製造コストが高くなる。
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明の目的は、印刷物と被着体とを貼り合わせることができ、貼り直しが容易にできる粘着シートを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された粘着シートの一例は、第1の面と、前記第1の面に対向し、前記第1の面より面積が小さい第2の面とを有する粘着剤層を備え、基材を持たない再剥離型粘着シートである。前記粘着剤層の23℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率は1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値は0.4以上であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示された粘着シートは比較的低コストで作製可能で、印刷物等を被着体に貼り合わせるのに使用される場合、印刷物等の貼り直しを容易にしうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本明細書に開示された実施形態の一例に係る粘着シートを示す断面図である。
図2図2は、剥離ライナーを剥がした状態で粘着剤層側から見た場合の粘着シートを示す平面図である。
図3図3は、実施形態の一例に係る粘着シートの使用方法の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[粘着シートの構成]
図1は、本明細書に開示された実施形態の一例である、粘着シート10を示す断面図であり、図2は、第2の剥離ライナー1を剥がした状態で粘着剤層3側から見た場合の粘着シート10を示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、粘着シート10は、第1の面が平坦で第2の面に凹凸が形成された粘着剤層3を備えた再剥離型粘着シートである。ここで、本明細書でいう凹凸とは、ある基準面から見て溝等の凹部のみが形成されている場合や、凸部のみが形成されている場合も含むものとする。
【0013】
図1及び図2に示す例では、粘着剤層3の上部(第1の面側)が一体的に形成され、粘着剤層3の下部(第2の面側)に格子状の溝9が形成されている。すなわち、粘着剤層3の第2の面には、複数の凸部7が縦方向及び横方向に一定の間隔を空けて形成されている。凸部7の形状は特に限定されないが、図1及び図2に示すように、水平断面が四辺形で厚み方向の断面が台形の錐台形状をしていてもよい。
【0014】
縦方向及び横方向に延びる溝9の幅は特に限定されないが、例えば50μm以上800μm以下であってもよく、100μm以上500μm以下程度であってもよい。図2に示す凸部7の縦方向及び横方向の長さは例えば100μm以上800μm以下であってもよく、150μm以上500μm以下であってもよい。溝9の深さは特に限定されないが、例えば10μm以上100μm以下であってもよく、15μm以上60μm以下であってもよい。
【0015】
図示しないが、凸部7の水平断面は四辺形以外に円形や三角形、五角形、六角形であってもよい。また、図1に示す例では各凸部7は一体的に形成された粘着剤層3の一部であるが、粘着剤層3は一体的に形成されていなくてもよく、互いに所定の間隔を空けて分散配置された複数の凸部7により構成されていてもよい。ただし、この場合には凸部7の面のうち印刷物に貼り合わされる面(第1の面)の面積が被着体に貼り合わされる面(第2の面)の面積よりも大きくなるようにする。これにより、粘着剤層3の第1の面の面積(凸部7の第1の面の合計面積)は、第2の面の面積(凸部7の第2の面の合計面積)よりも大きくなる。
【0016】
上述の構成により、粘着剤層3の第2の面の被着体に対する接地面積は、粘着剤層3の平面面積よりも小さくなっている。粘着剤層3の第2の面の被着体に対する接地面積は、例えば平面面積全体の20%以上60%以下であれば好ましく、30%以上50%以下であればより好ましい。
【0017】
粘着剤層3の第1の面を印刷物に貼り合わせた後で粘着剤層3の第2の面を被着体に貼り付ける場合、粘着剤層3の第2の面の被着体に対する接地面積が、粘着剤層3の平面面積よりも小さくなっていることにより、印刷物と粘着剤層3との密着力を粘着剤層3と被着体との粘着力よりも小さくしやすくなる。その結果、粘着剤層3付きの印刷物を貼り直しする場合に、粘着剤層3の被着体への転着を生じにくくすることができる。
【0018】
粘着剤層3の第2の面の被着体に対する接地面積は、例えば平面面積全体の20%以上60%以下とすることにより、被着体に対する十分な粘着力を維持させつつ、粘着剤層3の被着体への転着をより効果的に抑えることができる。
【0019】
また、溝9又は凸部7同士の隙間が平面視において粘着剤層3の一端から他端に連通していることにより、被着体に貼り付けられる際に空気が噛み込んだり、アウトガスにより浮きや剥がれが発生するのを抑えることができる。
【0020】
粘着剤層3の23℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率は1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値は0.4以上となっている。
【0021】
貯蔵弾性率は、樹脂の硬さを表す指標であるが、粘着剤層3の第2の面の接地面積を第1の面よりも小さくする構成に加え、粘着剤層3の貯蔵弾性率を1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下とすることで、被着体への糊残りが生じにくく、且つ印刷物との密着性を良好にすることができる。また、(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値を0.4以上であることにより、高温処理後の被着体への糊残りや汚染を生じにくくすることができる。
【0022】
粘着剤層3の形成に使用される粘着剤は特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、アクリルーウレタン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系及びゴム系粘着剤から選ばれた1種又は2種以上の混合物であってもよい。使用される粘着剤としては、水系粘着剤、溶剤系粘着剤、無溶剤タイプの粘着剤等を使用できる。粘着剤として、植物等由来の材料を含むバイオマス粘着剤を用いてもよい。また、粘着剤層3がロジン系やテルペン系等の植物由来の粘着付与剤を1質量%以上100質量%以下含んでいてもよい。
【0023】
粘着剤層3の形成に用いられる粘着剤は、糊残りや被着体汚染を起こしにくい、いわゆる再剥離型の粘着剤であってもよい。このような再剥離型の粘着剤は合成してもよいが、市販されているものであってもよい。
【0024】
粘着剤層3の第2の面の被着体に対する23℃、相対湿度50%での粘着力(常態粘着力)は、被着体の材質によって異なるものの、貼り付け後20分時点で0.1N/25mm以上9N/25mm以下程度である。
【0025】
また、貼り付け後24時間時点での被着体に対する常態粘着力は、例えば0.1N/25mm以上10N/25mm未満である。粘着力が0.1N/25mm未満になると、被着体からの意図しない剥離や脱落が生じやすくなる。粘着力が10N/25mm以上になると、粘着シート10を貼り付けた印刷物等の位置合わせや貼り直しがしにくくなる。
【0026】
粘着力の調整は、使用する粘着剤を適宜選定する他、粘着剤層3と被着体との接地面積を変えることでも可能である。粘着剤層3の厚みを薄くすることで粘着力を下げることもできる。
【0027】
粘着剤層3の厚み(図1における粘着剤層3の上面から凸部7の下面までの厚さ)は任意であってよいが、例えば10μm以上200μm以下であってもよく、15μm以上100μm以下であってもよく、20μm以上50μm以下であってもよい。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の粘着剤層3は、第1の面に平坦な剥離面を有する第1の剥離ライナー5が貼り合わせられ、第2の面に凹凸が形成された剥離面を有する第2の剥離ライナー1が貼り合わせられた積層体20として提供されてもよい。
【0029】
第1の剥離ライナー5と第2の剥離ライナー1とで保護されることにより、粘着シート10はロール状での運搬が可能になり、取り扱いが容易となる。
【0030】
図1に示す例では、第2の剥離ライナー1の剥離面には格子状の凸状体11が形成されており、凸状体11は溝9に対応した形状となっている。このような凸状体11は、公知のエンボス加工によって容易に形成することができる。
【0031】
第1の剥離ライナー5を粘着剤層3から剥離するのに要する剥離力A1は、第2の剥離ライナー1を粘着剤層3から剥離するのに要する剥離力A2よりも小さくなっていてもよい。この構成により、粘着シート10の使用時にまず第1の剥離ライナー5を剥がして粘着剤層3を印刷物等に貼り合わせ、その後第2の剥離ライナー1を剥がして被着体に貼り付けることが容易となる。
【0032】
第1の剥離ライナー5及び第2の剥離ライナー1は、それぞれ上質紙やグラシン紙等の表面に目止め層及び剥離剤層が形成された積層構造を有していてもよいし、ポリエチレンテレフタレート(PET)等、樹脂フィルムの表面にシリコーン系又はフッ素系の剥離剤層が設けられた積層体であってもよい。
【0033】
環境対策として、樹脂フィルムの材料の一部又は全部にリサイクル材料を使用してもよいし、表面に樹脂製のラミネート層を設けない、リサイクルが容易な紙製の剥離ライナーを使用してもよい。
【0034】
図3は、実施形態の一例に係る粘着シート10の使用方法の例を示す断面図である。粘着シート10は、例えばシート状の印刷物13を被着体15に貼り付けるために使用される。印刷物13の材質は特に限定されず、各種の紙や合成紙、樹脂フィルム又はこれらの積層物であってもよい。樹脂フィルムとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、PETフィルム等のポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等を使用してもよく、片面又は両面に印刷可能な公知の易接着層が形成されていてもよい。
【0035】
被着体15は特に限定されず、壁面や床、窓ガラス、掲示板、樹脂板等であってもよい。被着体15の材質も特に限定されず、板状又はシート状のABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、PVCであってもよく、ガラス板や金属板等であってもよい。
【0036】
本実施形態の粘着シート10を備えた積層体20は、例えば第2の剥離ライナー1の剥離面に粘着剤及び硬化剤を含む塗液を塗工し、乾燥させて粘着剤層3を形成させた後、第1の剥離ライナー5の剥離面を粘着剤層3と貼り合わせることにより作製することができる。このため、粘着シート10は、芯材の両側に互いに性質の異なる粘着剤層を設けた両面粘着シートに比べて少ない工程数で製造することができ、比較的低コストで製造可能となっている。積層体20の作製方法は上述の手順に限られず、第1の剥離ライナー5の剥離面に塗液を塗工後に乾燥させることにより、粘着剤層3を形成してもよい。
【0037】
なお、凸部7を形成するために凹凸を有する第2の剥離ライナー1を使用する例を説明したが、粘着剤層3が一体的に形成されていない場合、独立した個々の凸部7は、第1の剥離ライナー5の剥離面又は第2の剥離ライナー1の剥離面にグラビア塗工やスロットダイ塗工等により形成してもよい。
【0038】
以上で説明した本実施形態の粘着シート10は、本発明の実施形態の一例であって、粘着剤層3の厚みや材質、溝9及び凸部7の形状、形成位置、サイズ等は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【実施例0039】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0040】
[粘着剤組成物の作製及び剥離ライナーの準備]
市販のアクリル系再剥離型粘着剤A、Bの溶液にそれぞれ適量の市販のイソシアネート系硬化剤を混合して粘着剤組成物A、Bを作製した。強粘着型の市販のアクリル系粘着剤C、Dの溶液にそれぞれ適量の市販のイソシアネート系硬化剤を混合して粘着剤組成物C、Dを作製した。
【0041】
次に、平坦な剥離面を有し、上質紙を基材とする軽剥離用の第1の剥離ライナーと、凹凸が形成された剥離面を有し、上質紙を基材とする重剥離用の第2の剥離ライナーと、平坦な剥離面を有し、上質紙を基材とする重剥離用の第3の剥離ライナーとを準備した。第2の剥離ライナーとして、日榮新化(株)製の剥離紙「MX3」を使用した。第2の剥離ライナーは、幅が110μmの格子状の凸状体が剥離面に形成されており、凹部の開口部上端は1辺が330μmの正方形、開口部の底面は1辺が230μmの正方形であった。開口部の深さは25μmであった。
【0042】
<実施例1>
コンマ型コーターを用いて第2の剥離ライナーの凹凸を有する剥離面上に粘着剤組成物Aを塗工して乾燥させて粘着剤層を形成した後、第1の剥離ライナーの平坦な剥離面を粘着剤層と貼り合わせて粘着シートを備えた積層体を作製した。乾燥後の粘着剤層の厚みは30μmとした。次いで、積層体を40℃の環境に72時間置き、エージングを行った。粘着剤層には第1の剥離ライナーの凹凸面の形状が転写された結果、幅110μmの格子状の溝と、この溝によって区画され、一辺が330μmの正方形の頂部と一辺が230μmの正方形の底部を有する凸部とが形成された。
【0043】
<実施例2>
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Bを用いて塗工を行ったこと以外は実施例1と同様の方法により、粘着シートを備えた積層体を作製した。
【0044】
<比較例1>
重剥離側の剥離ライナーを第2の剥離ライナーから第3の剥離ライナーに変更した以外は実施例1と同様の方法により、粘着シートを備えた積層体を作製した。
【0045】
<比較例2>
重剥離側の剥離ライナーを第2の剥離ライナーから第3の剥離ライナーに変更した以外は実施例2と同様の方法により、粘着シートを備えた積層体を作製した。
【0046】
<比較例3>
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Cを用いて塗工を行ったこと以外は実施例1と同様の方法により、粘着シートを備えた積層体を作製した。
【0047】
<比較例4>
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Dを用いて塗工を行ったこと以外は比較例1と同様の方法により、粘着シートを備えた積層体を作製した。
【0048】
<比較例5>
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Dを用いて塗工を行ったこと以外は実施例1と同様の方法により、粘着シートを備えた積層体を作製した。
【0049】
実施例1、2及び比較例1~5で作製した積層体の構成を表1にまとめた。
【0050】
【表1】
【0051】
[試験方法]
<粘着剤層の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、損失正接(tanδ)、ガラス転移温度Tgの測定>
粘着シートの粘着剤層の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、損失正接の測定は、以下の方法で行った。まず、調製した粘着剤組成物A~Dの各々を用いて厚み50μmの粘着剤層を有する基材レステープを作製した。次いで、この基材レステープを40℃、72時間の条件でエージングした。次いで、粘着剤層のみを総厚さが1mmになるまで積層した後、直径8mmの大きさに打ち抜いてタブレットを作製した。このタブレットをレオメーター(製品名:AR2000ex)のプレート間に挟み、周波数1Hz、ひずみ量0.05%、測定温度:-40~100℃の条件で貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を測定した。また、損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’の値を損失正接として算出した。損失正接が最大となった温度を粘着剤層のガラス転移温度として読み取った。
【0052】
<接地面積率の算出方法>
粘着シートの積層体から軽剥離側の第1の剥離ライナーを剥がしてシート状の支持体に貼り合わせた後、重剥離側の第2の剥離ライナー又は第3の剥離ライナーを剥がして透明なPETフィルムと貼り合わせ、2kgゴムローラーを2往復させて圧着した。この状態で、粘着シートの任意の領域(流れ方向1cm×幅方向1cmの正方形の領域)を顕微鏡を用いて撮影し、「100×(PETフィルムと粘着剤層との接地面積の合計面積)/(領域全体の面積)」により接地面積の割合(すなわち、接地面積率)を算出した。
【0053】
<粘着力の測定>
印刷物を被着体に貼り付ける際に問題が生じるか否かを評価するため、印刷物を想定した支持体に粘着シート(粘着剤層)を貼り合わせた場合の被着体に対する粘着力を測定した。
【0054】
上記の実施例及び比較例で作製した積層体から幅25mm、長さ100mmの試験片を切り出し、軽剥離側の剥離ライナー(第1の剥離ライナー)を剥がした後、粘着剤層の露出面を各種支持体に貼り合わせた。圧着は2kgローラーを1往復させて行った。支持体としては、両面に易接着処理が施された厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡(株)製コスモシャイン(登録商標)A4360)、易接着処理がされていない厚さ50μmのPETフィルム((東洋紡(株)製エステル(登録商標)フィルムE5001)、白色PVCフィルム及び厚さ80μmのポリプロピレン製合成紙((株)ユポ・コーポレーション製ユポSGS80)を用いた。
【0055】
次いで、粘着シートから重剥離側の剥離ライナー(第2の剥離ライナー又は第3の剥離ライナー)を剥がし、被着体に貼り付けた後、2kgローラーを1往復させて圧着した。次いで、23℃、相対湿度50%で20分経過した時点と、同条件で24時間経過した時点とで支持体を被着体から剥がして粘着力を測定した。支持体の剥離は、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で万能材料試験機を用いて行った。
【0056】
被着体として、ABS樹脂板、アクリル樹脂板、ポリカーボネート(PC)板及び白色PVCフィルムを用いた。
【0057】
粘着力の測定と併せて、被着体汚染や粘着剤層の被着体への転着の有無を目視により確認した。
【0058】
また、上述の実施例又は比較例で作製した積層体から切り出した幅25mm、長さ100mmの試験片を80℃で240時間処理した後、23℃、相対湿度50%の条件下で被着体に対する粘着力を測定した。被着体汚染や粘着剤層の被着体への転着の有無も目視により確認した。
【0059】
[測定結果]
表2に、粘着剤層を形成する硬化後の粘着剤組成物A~Dの貯蔵弾性率、損失正接及びガラス転移温度を示す。
【0060】
【表2】
表2に示す結果から、粘着剤組成物Aにより形成された実施例1の粘着シート及び粘着剤組成物Bにより形成された実施例2の粘着シートでは、いずれも23℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値が0.4以上となっていることが確認できた。これに対し、粘着剤組成物Cにより形成された比較例3の粘着シート及び粘着剤組成物Dにより形成された比較例4、5の粘着シートでは、23℃での貯蔵弾性率が1.0×10Paより大きくなっており、且つ(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値が0.4未満となっていることが確認できた。
【0061】
また、第2の剥離ライナーを用いた場合、粘着シートと被着体との接地面積率は約30%となり、第3の剥離ライナーを用いた場合、粘着シートと被着体との接地面積率は約100%となることが確認できた。この結果は表1に記載する。
【0062】
各種支持体に実施例1、2及び比較例1~5で作製した粘着シートを貼り合わせた場合の粘着力の測定結果と、被着体から支持体を剥がした後の糊残りの有無を表3~6にまとめて示す。表3~6には、23℃、相対湿度50%条件における常態粘着力に加え、80℃で240時間処理した後の粘着力と被着体上での糊残りの有無も示す。
【0063】
糊残りについて、糊残りも被着体表面の汚染も見られない場合は「◎」、糊残りは見られないが被着体表面に貼り跡が残る場合は「〇」、凝集破壊による糊残りが見られる場合は「×」、被着体に粘着剤層が転着する場合を「××」と評価した。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
表3~6に示す結果から、粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値が0.4以上となっており、被着体側の面積が支持体側の面積よりも小さい実施例1、2の粘着シートを用いれば、いずれの支持体に貼り合わせた場合でも被着体に対する糊残りが見られないことが分かった。実施例1、2の粘着シートを用いた場合、80℃、240時間処理した場合にも糊残りは見られなかった。実施例1、2の粘着シートを用いた場合の常態粘着力は、いずれの被着体に対しても0.1N/25mm以上10N/25mm未満となっていた。
【0068】
これに対し、粘着剤層の貯蔵弾性率が上記範囲外で(80℃での貯蔵弾性率)/(23℃での貯蔵弾性率)の値が0.4未満である比較例3、5の粘着シートでは、被着体側の面積が支持体側の面積より小さかったとしても糊残りが生じたり(比較例3)、粘着剤層との密着性が悪い白色PVCフィルムを支持体とした場合の80℃、240時間処理後に粘着剤層の転着が見られたり(比較例5)することが分かった。
【0069】
また、実施例1、2の粘着シートと比較例1、2の粘着シートとの比較から、同一の粘着剤組成物を使用した場合でも粘着剤層の被着体側の面が平坦な場合は80℃、240時間処理後に粘着剤層の転着が見られる場合があることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本明細書に開示された粘着シートは、印刷物等を被着体に固定する部材として利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 第2の剥離ライナー
3 粘着剤層
5 第1の剥離ライナー
7 凸部
9 溝
10 粘着シート
11 凸状体
13 印刷物
15 被着体
20 積層体
図1
図2
図3