(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174638
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】アンダーウェア並びにアンダーシャツ及びアンダーパンツ
(51)【国際特許分類】
A41H 43/04 20060101AFI20231201BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20231201BHJP
A41B 9/06 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A41H43/04 Z
A41D13/12 136
A41H43/04 A
A41B9/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087293
(22)【出願日】2022-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】522198793
【氏名又は名称】株式会社石川技研
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆志
【テーマコード(参考)】
3B011
3B128
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB08
3B011AC00
3B128FB01
3B128FB06
3B128FC00
3B211AA01
3B211AB08
3B211AC00
(57)【要約】
【課題】生地にオーガニックコットンを用いることで肌への刺激をより低くしたアンダーウェア並びにアンダーシャツ及びアンダーパンツを提供することを目的とする。
【解決手段】生地がオーガニックコットンで構成されるアンダーウェアであって、アンダーシャツ10は前身頃12及び前袖部13を備える前地11と、後身頃15及び後袖部16を備える後地14と、肩線20及び袖丈21が連続して接着剤で接合される上側接合部30と、脇線22及び袖下23が連続して接着剤で接合される下側接合部31と、を備え、アンダーパンツ50は脇線60a,60bの前後が連続した生地で構成される右地51及び左地52と、前股上61及び尻ぐり62が接着剤で接合される股上接合部70a,70bと、股下63a,63bが接着剤で接合される股下接合部71a,71bと、右地及び左地の上端が外側に筒状に折り返されて接着剤で接合されるウエスト接合部72と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
敏感肌用のアンダーウェアであって、
無縫製であることを特徴とするアンダーウェア。
【請求項2】
請求項1に記載の前記アンダーウェアがアンダーシャツであって、
前身頃、及び前記前身頃から連続する前袖部を備える前地と、
後身頃、及び前記後身頃から連続する後袖部を備える後地と、
前記前身頃と前記後身頃の肩線、及び前記前袖部と前記後袖部の袖丈が連続して接着剤で接合される上側接合部と、
前記前身頃と前記後身頃の脇線、及び前記前袖部と前記後袖部の袖下が連続して接着剤で接合される下側接合部と、
を備えることを特徴とするアンダーシャツ。
【請求項3】
前記上側接合部と前記下側接合部が、前記生地を裁断したまま何も処理をしていない無処理状態で前記前地と前記後地を折り返しなしで重ね合わせている請求項2に記載のアンダーシャツ。
【請求項4】
平行する複数の前記接着剤が隣接する接着剤との間に隙間を空けて、前記上側接合部と前記下側接合部の長手方向に連続して塗布されており、
少なくとも両外側に塗布される接着剤で前記前地と前記後地を接合するとともに、縁部のほつれを防止している請求項3に記載のアンダーシャツ。
【請求項5】
袖口、襟ぐり、及び裾廻りの端部が外側に折り返されて接着されている請求項4に記載のアンダーシャツ。
【請求項6】
前記袖口、前記襟ぐり、及び前記裾廻りの端部のうち少なくとも1つ以上が、接着に代えて縫製されている請求項5に記載のアンダーシャツ。
【請求項7】
前記前地及び前記後地が、組成が綿100%のオーガニックコットンであり、有効繊維長35mm以上の綿を60重量%以上含む60~120英式番手の紡績糸からなる生地である請求項2ないし6のいずれか1項に記載のアンダーシャツ。
【請求項8】
前記紡績糸が100英式番手を超えて120英式番手以下である請求項7に記載のアンダーシャツ。
【請求項9】
請求項1に記載の前記アンダーウェアがアンダーパンツであって、
脇線の前後が連続した前記生地で構成される右地と、
脇線の前後が連続した前記生地で構成される左地と、
前記右地と前記左地の前股上及び尻ぐりが接着剤で接合される股上接合部と、
前記右地の股下、及び前記左地の股下が接着剤で接合される股下接合部と、
前記右地及び前記左地の上端が外側に筒状に折り返されて接着剤で接合されるウエスト接合部と、
を備えることを特徴とするアンダーパンツ。
【請求項10】
前記股上接合部、前記股下接合部及び前記ウエスト接合部が、前記生地を裁断したまま何も処理をしていない無処理状態で、折り返しなしで重ね合わされている請求項9に記載のアンダーパンツ。
【請求項11】
平行する複数の前記接着剤が隣接する接着剤との間に隙間を空けて、前記股上接合部、前記股下接合部の長手方向に連続して塗布されており、
少なくとも両外側に塗布される接着剤で前記右地と前記左地を接合するとともに、縁部のほつれを防止している請求項10に記載のアンダーパンツ。
【請求項12】
裾下の端部が外側に折り返されて接着されている請求項11に記載のアンダーパンツ。
【請求項13】
前記右地及び前記左地とは別に筒状のウエスト布地を備え、
前記ウエスト接合部に代えて、前記ウエスト布地の下端と前記右地及び前記左地の上端とが縫製されている請求項11に記載のアンダーパンツ。
【請求項14】
前記右地及び前記左地が、組成が綿100%のオーガニックコットンであり、有効繊維長35mm以上の綿を60重量%以上含む60~120英式番手の紡績糸からなる生地である請求項9ないし13のいずれか1項に記載のアンダーパンツ。
【請求項15】
前記紡績糸が100英式番手を超えて120英式番手以下である請求項14に記載のアンダーパンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトピー性皮膚炎等の症状があったり、少しの刺激で皮膚がかぶれたりする、アレルギー体質の敏感肌にも優しいアンダーウェア並びにアンダーシャツ及びアンダーパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アトピー性皮膚炎に代表される敏感肌に好適な肌着を提供することを目的として、特開平8-199401号公報(特許文献1)に、表地が純綿布で裏地がガ-ゼ状の粗目の木綿布である二層の生地で、長袖上着を縫製し、その長袖の口先端には同じく前記二層の生地で手袋を連続的に形成すると共に、首部には同じく前記二層の生地でタ-トルネックを連続形成し、また前記長袖上着の腹部に折返し留めバックルを装着した布ベルトを付設し肌着が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている肌着では、各パーツを縫製によって接合している。このため、縫製箇所の糸が肌に触れて刺激を与えていた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、接合部で基本的に糸を使用しない無縫製として、皮膚への刺激を低減させることにある。また、本発明の別の目的は、肌との摩擦が比較的強くなりやすい肩の周囲や太ももの外側にある縫製箇所をなくし、皮膚への刺激をより低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアンダーウェアは、
敏感肌用のアンダーウェアであって、
無縫製であることを特徴とする。
【0007】
本発明のアンダーシャツの好ましい例によれば、無縫製であるため、縫製箇所の糸による肌への刺激を低減させることができる。
【0008】
本発明のアンダーシャツは、
無縫製のアンダーシャツであって、
前身頃、及び前記前身頃から連続する前袖部を備える前地と、
後身頃、及び前記後身頃から連続する後袖部を備える後地と、
前記前身頃と前記後身頃の肩線、及び前記前袖部と前記後袖部の袖丈が連続して接着剤で接合される上側接合部と、
前記前身頃と前記後身頃の脇線、及び前記前袖部と前記後袖部の袖下が連続して接着剤で接合される下側接合部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のアンダーシャツによれば、アームホールがなく、当該部分に生地と生地とを接合する箇所がない。このため、肌との接触が強くなりやすい肩の周囲に接合部が存在せず、肌への刺激を低減させることができる。また、上側接合部と下側接合部に糸を使用しておらず、糸による肌への刺激もなくすことができる。
【0010】
本発明のアンダーシャツの好ましい例は、
前記上側接合部と前記下側接合部が、前記生地を裁断したまま何も処理をしていない無処理状態で前記生地同士を折り返しなしで重ね合わせている。
【0011】
本発明のアンダーシャツの好ましい例によれば、上側接合部と下側接合部において生地の端部が無処理状態であり、さらに生地の端部において折り返し等をせずに、互いの生地を単に重ね合わせているだけである。このため、接合部に余分な突起が生じることがない。
【0012】
本発明のアンダーシャツの好ましい例は、
平行する複数の前記接着剤が隣接する接着剤との間に隙間を空けて、前記上側接合部と前記下側接合部の長手方向に連続して塗布されており、
少なくとも両外側に塗布される接着剤で前記前地と前記後地を接合するとともに、縁部のほつれを防止している。
【0013】
本発明のアンダーシャツの好ましい例によれば、複数の接着剤が接合部の長手方向に沿って川の字状に塗布されている。このため、少なくとも生地の縁部が接着され、生地のほつれを防止できる。また、複数の接着剤同士の隙間や接着剤の本数を調整することで、接合部の肌触りや強度を調整することができる。
【0014】
本発明のアンダーシャツの好ましい例は、
袖口、襟ぐり、及び裾廻りの端部が外側に折り返されて接着されている。
【0015】
本発明のアンダーシャツの好ましい例は、
前記袖口、前記襟ぐり、及び前記裾廻りの端部のうち少なくとも1つ以上が、接着に代えて縫製されている。
【0016】
本発明のアンダーシャツの好ましい例によれば、襟ぐり、袖口、及び裾廻りの内側において、肌へ当接される段差がなく滑らかである。また、襟ぐり、袖口、及び裾廻りを接着する構成では、当該部分にも糸を使用していないため、糸による肌への刺激がない。
【0017】
本発明のアンダーシャツの好ましい例は、
前記前地及び前記後地が、組成が綿100%のオーガニックコットンであり、有効繊維長35mm以上の綿を60重量%以上含む60~120英式番手の紡績糸からなる生地である。
【0018】
本発明のアンダーシャツの好ましい例は、
前記紡績糸が100英式番手を超えて120英式番手以下である。
【0019】
これらの本発明のアンダーシャツの好ましい例によれば、超長綿といわれる綿を用いた比較的細い紡績糸を用い、スムース編みとしているため、生地の表面が滑らかであり、肌への刺激を少なくすることができる。また、生地にオーガニックコットンを用いているため、残留農薬が少なく、肌への刺激を低減させることができる。
【0020】
本発明のアンダーパンツは、
無縫製のアンダーパンツであって、
脇線の前後が連続した前記生地で構成される右地と、
脇線の前後が連続した前記生地で構成される左地と、
前記右地と前記左地の前股上及び尻ぐりが接着剤で接合される股上接合部と、
前記右地の股下、及び前記左地の股下が接着剤で接合される股下接合部と、
前記右地及び前記左地の上端が外側に筒状に折り返されて接着剤で接合されるウエスト接合部と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明のパンツによれば、肌と擦れやすい脇線が連続した生地で構成されて、当該部分に接合部がない。また、他の接合部においても糸を使用していない。このため、肌への刺激を低減させることができる。
【0022】
本発明のアンダーパンツの好ましい例は、
前記股上接合部、前記股下接合部及び前記ウエスト接合部が、前記生地を裁断したまま何も処理をしていない無処理状態で折り返しなしで重ね合わされている。
【0023】
本発明のアンダーパンツの好ましい例は、
平行する複数の前記接着剤が隣接する接着剤との間に隙間を空けて、前記股上接合部、前記股下接合部の長手方向に連続して塗布されており、
少なくとも両外側に塗布される接着剤で前記右地と前記左地を接合するとともに、縁部のほつれを防止している。
【0024】
本発明のアンダーパンツの好ましい例は、
裾下の端部が外側に折り返されて接着されている。
【0025】
本発明のアンダーパンツの好ましい例は、
前記右地及び前記左地とは別に筒状のウエスト布地を備え、
前記ウエスト接合部に代えて、前記ウエスト布地の下端と前記右地及び前記左地の上端とが縫製されている。
【0026】
本発明のアンダーパンツの好ましい例は、
前記前地及び前記後地が、組成が綿100%のオーガニックコットンであり、有効繊維長35mm以上の綿を60重量%以上含む60~120英式番手の紡績糸からなる生地である。
【0027】
本発明のアンダーパンツの好ましい例は、
前記紡績糸が100英式番手を超えて120英式番手以下である。
【0028】
これらの本発明のアンダーパンツによれば、上記のアンダーシャツと同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0029】
上述したように、本発明のアンダーウェア並びにアンダーシャツ及びアンダーパンツによれば、接合部で基本的に糸を使用しない無縫製として、皮膚への刺激を低減させることができる。また、肌との摩擦が比較的強くなりやすい肩の周囲や太ももの外側にある縫製箇所をなくし、皮膚への刺激をより低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアンダーシャツの正面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るアンダーパンツの正面図である。
【
図13】アンダーパンツの他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明のアンダーウェア並びにアンダーシャツ及びアンダーパンツの実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
本実施形態のアンダーウェアは、生地同士の接合に糸を使用せずに、接着剤で接合する無縫製で製作されている。
【0033】
また、本実施形態のアンダーウェアは、その生地にオーガニックコットンを使用している。オーガニックコットンとは、3年以上農薬や化学肥料を使わない農地で栽培された綿のことであり、例えばGOTS(Global Organic Textile Standard、詳細はhttp://joca.gr.jp/gots-detail/参照。)、OCS(Organic Content Standard、詳細はhttps://jsl.life/learning/ocs/参照。)等の認証を受けた綿のことを意図する。このようなオーガニックコットンを用いることで、残留農薬等がなく肌への刺激が少ないアンダーウェアを提供できる。
【0034】
また、生地の組成は、綿100%であることが好ましい。この生地には、有効繊維長35mm以上の綿を60重量%以上含む60~120英式番手の紡績糸をスムース編みにしたものが採用される。有効繊維長35mm以上の綿として、例えば海島綿、ギザ綿、スーピマ綿、新疆綿等が挙げられる。これは、超長綿といわれる有効繊維長が35mm以上の綿を使用すると、肌触りの優しい生地ができるためである。また、糸の太さとしては60~120英式番手が好ましく、100英式番手を超えて120英式番手以下のものがより好ましい。これは、紡績糸に細いものを使用すると生地の表面が滑らかになるためであり、100英式番手を超えて120英式番手以下のものはそれがより顕著になるからである。
【0035】
ここで、生地の組成は綿100%でなくとも構わない。この生地の組成が綿100%でない例を説明する。例えば、吸放湿性能に優れつつ汗を吸着しやすいレーヨンを5~95%、天然素材で肌への刺激が少ない綿を5~95%含むものが挙げられる。また、ポリウレタンを5~15%含有させることも可能である。
【0036】
次に、アンダーウェアの例として、アンダーシャツ10の実施形態を説明する。
図1ないし
図4に示すように、本実施形態のアンダーシャツ10は無縫製であり、前地11と、後地14と、上側接合部30と、下側接合部31とを備える。前地11は、前身頃12及び前身頃12から連続する前袖部13を備える1枚の生地である。後地14は、後身頃15及び前記後身頃15から連続する後袖部16を備える1枚の生地である。なお、本実施形態のアンダーシャツ10は長袖で説明しているが、半袖、7分袖等であってもよい。また、前地11と後地14の裁断であるが、生地の伸縮しにくい方向を縦にして、伸縮しやすい方向が横になるようにして裁断することが好ましい。
【0037】
上側接合部30は、前身頃12と後身頃15の肩線20、及び前袖部13と後袖部16の袖丈21が連続して接着剤32a,32b,32c(
図5及び
図6参照)で接合される箇所である。ここでは、
図2及び
図3の破線a1部分と破線b1部分とが重ね合わされ、破線a2部分と破線b2部分とが重ね合わされて接着される。下側接合部31は、前身頃12と後身頃15の脇線22、及び前袖部13と後袖部16の袖下23が連続して接着剤32a,32b,32cで接合される箇所である。ここでは、
図2及び
図3の破線a3部分と破線b3部分とが重ね合わされ、破線a4部分と破線b4部分とが重ね合わされて接着される。
【0038】
次に、
図5を参照して、上側接合部30と下側接合部31の詳細を説明する。ここでは、上側接合部30と下側接合部31を単に接合部36と表現して、前地11と後地14も単に生地33,34と表現する(
図6(A)~(D)も同様。)。なお、一方の生地33と他方の生地34のどちらが上になっても構わない。本図に示すように、接合部36は、生地33,34の縁部35a,35bにおいて生地33,34を折り返す等の処理はしておらず、単に互いの生地33,34を重ね合わせているだけである。また、生地33,34の縁部35a,35bは裁断されたままで何も処理されていない無処理状態である。
【0039】
また、接合部36では、平行する複数の接着剤32a,32b,32cが、接合部36の長手方向に、隣接する接着剤との間に隙間sを空けて連続して塗布されている。本実施形態では、3本のノズル(図示せず)からそれぞれ接着剤32a,32b,32cを吐出させて、川の字状に接着剤32a,32b,32cを塗布している。これら複数本の接着剤の役目を説明すると、両外側の接着剤32a,32cで、重ね合わされる生地33,34の縁部35a,35bのほつれを防止しつつ、一方の生地33と他方の生地34とを接合している。そして、両外側の接着剤32a,32cの間に塗布される接着剤32bで接合部36の強度を高めている。また、隙間sを設けることで、接合部36の柔軟性を保っている。
【0040】
ここで、接合部36の強度を高めようとするならば、接着剤の本数を増やして隙間sが実質的に無くなるようにすればよい。係る場合、接合部36における接着剤の塗布方向がおよそ縦方向であるとともに、生地の伸縮しにくい方向も縦方向であるため、アンダーシャツ10の着心地に大きな影響を与えることがない(後述するアンダーパンツ50においても同様。)。他方で、接合部36の柔軟性を出そうとするならば、本実施形態のように隙間sを空けて接着剤32a,32b,32cを塗布すればよく、さらなる柔軟性を求めるなら接着剤の本数を減らして、両外側の接着剤32a,32cのみにすればよい。係る場合、生地の伸縮しやすい方向が横にして裁断されいているため、隙間sによって伸縮性も保たれる(後述するアンダーパンツ50においても同様。)。
【0041】
次に、
図6(A)~(D)を参照して、接合部36の接合方法を説明する。先ず、
図6(A)に示すように、一方の生地33を用意する。次に、
図6(B)に示すように、一方の生地33に接着剤32a,32b,32cを複数本、隙間sを空けて塗布する。次に、
図6(C)に示すように、他方の生地34を重ね合わせる。次に、
図6(D)に示すように、重ね合わせた生地33,34にローラー等(図示せず)で圧力をかければよい。なお、
図5及び
図6(A)~(D)に係る説明は、後述する股上接合部70a,70bと股下接合部71a,71bにも適用される。
【0042】
次に、
図7を参照して、袖口24の処理を説明する。
図7は、袖口24の断面を模式的に表わした図である。
図7に示すように、袖口24の端部27は外側に折り返されて接着剤32a,32b,32cで接合されている。これは、
図2及び
図3の破線a5,a6,b5,b6で折り返して接着したものである。この袖口24の端部27の縁部35cも生地を裁断したままの何も処理されていない無処理状態である。また、襟ぐり25及び裾廻り26も、袖口24同様に無処理状態の端部が外側に折り返されて接着されている。襟ぐり25は
図2及び
図3の破線a7,b7で折り返され、裾廻り26は破線a8,b8で折り返される。
【0043】
なお、上記の接合(接着)箇所は、その全てを川の字状に塗布した接着剤32a,32b,32cで接合することが好ましいが、製造上の理由により、その一部を接着テープ等で代用しても構わない。例えば、上側接合部30と下側接合部31は接着剤32a,32b,32cを用い、袖口24、襟ぐり25、及び裾廻り26は接着テープ等を用いることができる。また、袖口24、襟ぐり25、及び裾廻り26の少なくとも1つ以上を、接着に代えて縫製で接合することも可能である。係る場合、本実施形態のアンダーシャツは、主要部分が無縫製のアンダーシャツと表現することもできる。
【0044】
次に、アンダーウェアの例としてアンダーパンツ50の実施形態を説明する。
図8ないし
図11に示すように、本実施形態のアンダーパンツ50は無縫製であり、右地51と、左地52と、股上接合部70a,70bと、股下接合部71a,71bと、ウエスト接合部72とを備える。なお、アンダーシャツ10の袖の長さ同様に、アンダーパンツ50の丈の長さも、5分丈、7分丈、8分丈等、任意の長さにすることができる。
【0045】
右地51は、脇線60aの前後が連続した1枚の生地であり、アンダーパンツ50の右側を構成する生地である。左地52は、脇線60bの前後が連続した1枚の生地であり、アンダーパンツ50の左側を構成する生地である。また、右地51と左地52の裁断であるが、生地の伸縮しにくい方向を縦にして、伸縮しやすい方向が横になるようにして裁断することが好ましい。
【0046】
股上接合部70a,70bは、右地51と左地52の前股上61及び尻ぐり62が接着剤32a,32b,32c(
図5及び
図6(A)~(D)参照)で接合される箇所である。ここでは、
図10及び
図11の破線c1部分と破線d1部分とが重ね合わされて接合され、破線c2部分と破線d2部分とが重ね合わされて接着される。股下接合部71a,71bは、右地51の股下63aと股下63b、及び左地52の股下63aと股下63bが接着剤32a,32b,32cで接合される箇所である。ここでは、
図10の破線c3部分と破線c4部分とが重ね合わされて接着され、
図11の破線d3部分と破線d4部分とが重ね合わされて接着される。なお、上述したアンダーシャツ同様に、d3部分とd4部分のどちらの部分が上になっても構わない。
【0047】
なお、上記の股上接合部70a,70b、及び股下接合部71a,71bも、
図5に示すように、その縁部35a,35bにおいて生地33,34を折り返す等の処理はしておらず、単に互いの生地を重ね合わせているだけである。また、生地33,34の縁部35a,35bは裁断されたままで何も処理されていない無処理状態である。また、接着剤32a,32b,32cを川の字状に塗布して接着する構成も同じである。
【0048】
ウエスト接合部72は、
図10及び
図11の破線c5,d5で右地51と左地52の上端が外側に折り返されて、c6部分とc7部分、及びd6部分とd7部分が重ね合わされて接着されている。そして、
図12に示すように、ウエスト接合部72によって筒状のウエスト部54が形成され、このウエスト部54の中にゴム紐55等が通される。また、ウエスト接合部72は、生地の縁部35dを折り返す等の処理はしておらず、そのまま重ね合わせているだけである。また、縁部35dは裁断されたままで何も処理されていない無処理状態である。
【0049】
さらに、裾下64も、その縁部が何も処理されていない無処理状態で外側に折り返されて接着され、
図7に示す袖口24同様の状態になる。ここでは、
図10及び
図11の破線c8,d8で外側に折り返される。なお、裾下64は、接着に代えて縫製で接合することも可能である。係る場合、本実施形態のアンダーパンツは、主要部分が無縫製のアンダーパンツと表現することもできる。
【0050】
次に、
図13を参照して、他の実施形態に係るアンダーパンツ150を説明する。本実施形態のアンダーパンツ150は、右地151と、左地152と、股上接合部170と、股下接合部171と、ウエスト布地153と、ウエスト布切替接合部174とを備える。右地151、左地152、股上接合部170、及び股下接合部171は上記の実施形態に係るアンダーパンツ50と同様である。
【0051】
ウエスト布地153は、筒状に構成されてその中にゴム紐等が通されるものであり、上記の実施形態のウエスト部54に代えて設けられる。ウエスト布地153は、その下端と右地151及び左地152の上端とが縫製173によって接合されている。また、ウエスト布地153の長手方向の端同士は、ウエスト布切替接合部174として、左右どちらか一方の脇線に該当する箇所で接着剤により接合される。このように、ウエスト布地153を別に備える構成することで、ウエスト部分の強度と耐久性を向上させたアンダーパンツ150としている。このアンダーパンツ150も、主要部分が無縫製のアンダーパンツ150と表現することができる。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態のアンダーウェアによれば、生地にオーガニックコットンを使用するとともに、超長綿といわれる有効繊維長35mm以上の綿をスムース編みにしたものを採用し、さらに紡績糸に比較的細いものを使用している。これらにより、肌触りが良くかつ肌への刺激が少ないアンダーウェアとすることができる。
【0053】
また、本実施形態のアンダーシャツ10によれば、無縫製で縫製糸を使用しておらず、糸による肌への刺激が無い。また、アンダーシャツ10が前地11と後地14のみによって構成されている。この構成によりアームホールがないことから、身体の比較的硬い箇所である肩の周囲に接合部がなく、肌との擦れを低減できる。特に、就寝時において体重がかかりやすい肩甲骨付近に接合部がないため、当該部分における肌の擦れを低減できる。また、上側接合部30と下側接合部31において、単に互いの生地が重ね合わされているだけであり、これらの接合部において突起が最小限である。また、生地の縁部35a,35bが裁断されたままで何も処理されていない無処理状態であり、当該部分においての段差を抑制できる。これらにより、肌への刺激が少ないアンダーシャツ10とすることができる。
【0054】
また、上側接合部30と下側接合部31において、複数の接着剤32a,32b,32cを隙間sを空けて川の字状に塗布しているため、生地の縁部35a,35bのほつれを防止するとともに、接合部における柔軟性や伸縮性を保つことができる。また、接着剤の本数を増減させることで、柔軟性と強度を自由に調整することができる。また、袖口24、襟ぐり25、裾廻り26が外側に折り返されて接着されており、アンダーシャツ10の内側に突起がない。これらにより当該部分においても肌への刺激を低減させることができる。
【0055】
また、本実施形態のアンダーパンツ50によれば、アンダーシャツ10同様に無縫製であり、糸による肌への刺激が無い。また、アンダーパンツ50は右地51と左地52のみによって構成されている。このため、肌と擦れやすい太ももの外側にある脇線60a,60bの接合部がなく、当該部分が1枚の生地によって連続している。特に、就寝時等において、足を横にしたときに脇線に接合部があると、そこに足の重さがかかることで刺激となって痒みを誘発するおそれがあるが、本実施形態のアンダーパンツ50は脇線がないためそのようなことがない。また、股上接合部70、股下接合部71、及びウエスト接合部72において、その縁部を折り返す等しておらず、互いの生地を重ね合わせているだけである。これにより、接合部において余分な突起が生じない。また、生地の縁部が裁断されたままで何も処理されていない無処理状態であり、当該部分においての段差を抑制できる。これらにより、肌への刺激が少ないアンダーパンツ50とすることができる。接着剤32a,32b,32cの塗布及び裾下64の処理についても、上記のアンダーシャツ10同様の作用効果を奏し、肌への刺激を低減させることができる。
【0056】
また、ウエスト部54の代わりにウエスト布地153を備えるアンダーパンツ150では、最も負荷がかかりやすいウエスト周りの強度と耐久性を向上させ、長期間にわたって使用することができる。
【0057】
また、本実施形態のアンダーシャツ10及びアンダーパンツ50を、アトピー性皮膚炎に悩む15人のモニターに1ヶ月間試してもらったところ、そのうち5人から回答が得られた。そして、その中の3人がアトピー性皮膚炎の症状が改善したと回答した。このことから、少なくともアトピー性皮膚炎の人の2割に効果があったと言える。
【0058】
なお、上述したアンダーウェア並びにアンダーシャツ10及びアンダーパンツ50は、本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0059】
10・・アンダーシャツ、11・・前地、12・・前身頃、13・・前袖部、14・・後地、15・・後身頃、16・・後袖部、
20・・肩線、21・・袖丈、22・・脇線(アンダーシャツ)、23・・袖下、24・・袖口、25・・襟ぐり、26・・裾廻り、27・・端部、
30・・上側接合部、31・・下側接合部、32a,32b,32c・・接着剤、33,34・・生地、35a,35b,35c,35d・・縁部、36・・接合部、
s・・隙間、
50,150・・アンダーパンツ、51,151・・右地、52,152・・左地、153・・ウエスト布地、54・・ウエスト部,55・・ゴム紐、
60a,60b・・脇線(アンダーパンツ)、61,161・・前股上、62・・尻ぐり、63a,63b,163・・股下、64,164・・裾下、
70a,70b,170・・股上接合部、71a,71b,171・・股下接合部、72・・ウエスト接合部、173・・縫製、174・・ウエスト布切替接合部