(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174640
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】カモ類及び魚類にたいする食害抑制組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/20 20060101AFI20231201BHJP
A01P 19/00 20060101ALI20231201BHJP
A01N 37/18 20060101ALI20231201BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20231201BHJP
A01N 37/44 20060101ALI20231201BHJP
A01N 65/22 20090101ALI20231201BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20231201BHJP
A01M 29/06 20110101ALI20231201BHJP
【FI】
A01N37/20
A01P19/00
A01N37/18 Z
A01N25/10
A01N37/44
A01N65/22
A01M29/12
A01M29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022098445
(22)【出願日】2022-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】595063433
【氏名又は名称】杉本 正志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 正志
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA06
2B121AA07
2B121CC22
2B121EA21
2B121EA30
2B121FA13
4H011AE02
4H011BB06
4H011BB22
4H011BC19
4H011DA10
4H011DG02
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の食害鳥類および食害魚類忌避組成物の欠点を解決し、人体や自然環境に優しい化学物質を用い、生分解性のゴム的性状の食害カモ類及び食害魚類忌避組成物を提供する。
【手段】課題を解決するために、本発明は、主成分とする軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として痺れる刺激成分のキク科オランダセンニチ由来のスピラントールかミカン科山椒由来のサンショオールを混合して煉り合わせて成形された食害魚類忌避組成物に関するものでる。
その上、主成分とする軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として甘味芳香剤のアントラ二ル酸メチル、アントラ二ル酸ジメチル、グローブ(百里香)、バニリン(バニラ)、ベンゾール(安息香)等を単独か混合して高温で煉り合わせて、紐状に成形されていることを特徴とする食害カモ類忌避組成物である。人体や自然環境に悪影響を与えないゴム的性状のカモ類及び食害魚類忌避組成物を提供する。
軟質ゴムはシリコーンゴムウレタンゴム、スチレン系TPE、オレフィン系TPE、ポリエステル系TPE、ブタジエン系TPE、ウレタン系TPE、塩化ビニール系TPE、エステル系TPE、ゲルとしてはシリコーンゲル、アクリル樹脂ゲル、軟質樹脂としては塩化ビニール樹脂、ポリオレフィン樹脂であるカモ類及び食害魚類忌避組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分とする80~95重量%の軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として5~20重量%の痺れる刺激成分のキク科オランダセンニチ由来のスピラントールかミカン科山椒由来のサンショオールを混合して高温で煉り合わせて、紐状に成形されていることを特徴とする食害魚類に特化した忌避組成物。
【請求項2】
主成分とする80~95重量%の軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として5~20重量%の甘味芳香剤のアントラ二ル酸メチル、アントラ二ル酸ジメチル、グローブ(百里香)、バニリン(バニラ)、ベンゾール(安息香)等を単独か混合して高温で煉り合わせて、紐状に成形されていることを特徴とするカモ類に特化した忌避組成物。
【請求項3】
請求項1、2の軟質ゴムや軟質樹脂またゲルはシリコーンゴムウレタンゴム、スチレン系TPE、オレフィン系TPE、ポリエステル系TPE、ブタジエン系TPE、ウレタン系TPE、塩化ビニール系TPE、エステル系TPE、ゲルとしてはシリコーンゲル、アクリル樹脂ゲル、軟質樹脂としては塩化ビニール樹脂、ポリオレフィン樹脂であるカモ類および食害魚類忌避組成物。
【請求項3】
請求項2の忌避組成物の色調がピンク系であることを特徴とするカモ類忌避組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主成分とする軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として痺れる刺激成分のキク科オランダセンニチ由来のスピラントールかミカン科山椒由来のサンショオールを混合して煉り合わせて成形された、人体や自然環境に悪影響を与えない紐状の食害魚類に特化した忌避組成物に関するものである。
また、主成分とする軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として甘味芳香剤のアントラ二ル酸メチル、アントラ二ル酸ジメチル、グローブ(百里香)、バニリン(バニラ)、ベンゾール(安息香)等を単独か混合して高温で煉り合わせて、紐状に成形されていることを特徴とするカモ類に特化した忌避組成物である。
【背景技術】
【0002】
近年、特に増えてきている鳥類及び魚類による被害は社会的な問題として拡大している。その例として、レンコンといった農作物の食害、養殖ノリ葉体、マガキ稚貝、大型海藻の食害、住宅街およびその他の建築物、貯水池などへの糞害、魚類や鳥類による被害はますます拡大している。
【0003】
食害鳥類の被害から作物及び建築物を守るため用いられている駆除方法として反射板、警報音、点滅閃光、超音波など、また、食害魚類の駆除方法としても反射板、音波、点滅閃光、囲い網など防除方法が取られているが、結果、鳥類(カモ類)、魚類(クロダイ)には効果がなかったり短期的であったり、また、食害魚類からの防御方法として設置された囲い網の場合では、網目が約10cmと狭く、藻類などの付着物が付きやすく、潮通しが悪くなり藻類の生育条件を悪くしてしまう。その上、悪天候で囲い網が壊れたり、浮いてしまったりで食害魚類が侵入してしまい、事業規模的には、囲い網購入費、施設の維持管理費、労力などの負担が大きく実用的な防御技術とは言えない。しかし、囲い網以外の良い防御方法が見つからないのが現状である。
【0004】
上記の方法以外に、農家が作物を守るために主に用いられている物に忌避剤がある。味覚や臭覚的効果および刺激などにより、鳥類の飛来を防止する物質や、鳥類が餌として摂餌した場合に異常な生理・代謝反応を示す忌避剤である。
【0005】
しかし、害鳥忌避剤の大部分が、農薬および化学物質であるため、人体や自然環境に悪影響を及ぼす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2021-171993
【特許文献2】特願2021-130315
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の食害鳥類および食害魚類忌避組成物の欠点を解決し、人体や自然環境に優しい化学物質を用い、生分解性の紐状のカモ類及び食害魚類忌避組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、本発明は、主成分とする軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として痺れる刺激成分のキク科オランダセンニチ由来のスピラントールかミカン科山椒由来のサンショオールを混合して煉り合わせて成形された食害魚類忌避組成物に関するものである。
また、主成分とする軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として甘味芳香剤のアントラ二ル酸メチル、アントラ二ル酸ジメチル、グローブ(百里香)、バニリン(バニラ)、ベンゾール(安息香)等を単独か混合して高温で煉り合わせて、紐状に成形されていることを特徴とするカモ類忌避組成物である。人体や自然環境に悪影響を与えないゴム的性状の食害カモ類及び食害魚類忌避組成物を提供する。
【0009】
軟質ゴムはシリコーンゴムウレタンゴム、スチレン系TPE、オレフィン系TPE、ポリエステル系TPE、ブタジエン系TPE、ウレタン系TPE、塩化ビニール系TPE、エステル系TPE、ゲルとしてはシリコーンゲル、アクリル樹脂ゲル、軟質樹脂としては塩化ビニール樹脂、ポリオレフィン樹脂であるカモ類及び食害魚類忌避組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わる食害魚類忌避組成物とカモ類忌避組成物は、ゴム的性状の組成物として、農作物の被害ばかりでなく水産養殖物、住宅街およびその他の建築物、貯水池などへの適用しやすい形状であり、主成分とする軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと副成分として痺れる刺激成分のキク科オランダセンニチ由来のスピラントールかミカン科山椒由来のサンショオールを混合して煉り合わせて紐状に成形され、広範囲に忌避効果が長期間持続する食害魚類忌避組成物に関するものである。
また、主成分とする軟質ゴムや軟質樹脂またはゲルと、副成分として甘味芳香剤のアントラ二ル酸メチル、アントラ二ル酸ジメチル、グローブ(百里香)、バニリン(バニラ)、ベンゾール(安息香)等を単独か混合して高温で煉り合わせた、軽さにより水面上に浮く性状であり、紐状に成形されていることを特徴とするカモ類忌避組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例によるカモ類に対する忌避組成物を示す写真。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、実施例により本発明を説明する。
【0013】
本発明では、釣り用のソフトルアーの製造販売会社に依頼して、養殖ノリ葉体の摘採機の応力がかかっても破壊することがない強度が強く軟質で、浮力が強いソフトルアーの原料となる熱可塑性のスチレン系エストラマ―(TPE)で組成物を作製して頂いた。スチレン系エストラマ―(TPE)ペレット80~95重量%と、カモ類の好物である5~20重量%のオキアミエキスを高温で煉り合わせ、また、鳥類のヘビに対する忌避反応は遺伝的な本能という説があるため、ヘビのような形状を付加するため紐状に押し出し成型し、色調はピンク色、黄色、緑色の3色の組成物を作成した。通年、温かい地下水が噴流している貯水池に、毎年、越冬のために渡来し、貯水池内や水辺を糞で汚している群れで生活する数十羽のカモ類に対して、組成物を水面に6m間隔で浮かしたところ、黄色と緑色の組成物には貯水池内に数十羽のカモ類が集まってきたが、ピンク色の組成物に対しては約20日間であったが数十羽のカモ類は貯水池内には入ろうとせず水辺に留まり忌避行動を取り2日過ぎに貯水池内に入ってきたにすぎなかった。この結果、オキアミエキスをという誘引刺激を上回る嫌忌反応を、ピンク色の紐状組成物で引き起こすことができピンク色の忌避効果であったことが証明できた。
【0014】
色調試験から、鳥類の忌避剤と言われているアントラ二ル酸メチル(ブドウの甘味芳香)を指標として甘味芳香剤が餌という誘引刺激を上回る嫌忌反応を見せるか試験を行った。主成分とするスチレン系エストラマ―(TPE)ペレット80~95重量%と副成分として5~20重量%のアントラ二ル酸メチルを混合し、高温で煉り合わせ、紐状に押し出し成型し、濃い緑色で、幅2cm厚さ5mm長さ200cmのカモ類忌避組成物を作成し、貯水池で休んでいる数十羽のカモ類に対して、組成物を水面に6m間隔で浮かしたところ長期(1ヶ月以上)にわたって貯水池内や水辺に姿を見せず、1ヶ月以上過ぎてから数羽のカモ類が水辺に姿を見せたが翌日には姿は無かった。また神奈川県内の森林に囲まれた某自然池に休んでいた数羽のカモ類に、バニラ甘味芳香剤であるグローブ(百里香)を精製水200mlに対して10g含有させ、高吸水ポリマー(吸水性樹脂)に吸水させて、芳香器に収容して水面に浮かしたところ、翌日にはカモ類の姿は無く、1ヶ月後も姿を見ることは無かった。この結果、ピンク色系の忌避効果と共に、甘味芳香がカモ類への顕著な逃避行動を取らせたと考える。
【0015】
マガキ稚貝食害魚類であるクロダイに対して、過去の実証試験から、クロダイにマガキ稚貝の誘引刺激を上回る逃避反応を引き起こさせるのはかなり難しいと考え、クロダイを忌避組成物に誘い寄せるために、主成分とするスチレン系エストラマ―(TPE)ペレット80~95重量%と副成分として5~20重量%のミカン科山椒由来のサンショオールとカキエキス混合物を作成し、比較対象として主成分とするスチレン系エストラマ―(TPE)ペレット80~95重量%と副成分として5~20重量%のアントラ二ル酸メチルを混合し、それぞれの混合物を別々に高温で煉り合わせ、細い昆布状に押し出し成型し、濃い緑色の幅2cm厚さ5mm長さ200cmの2種類の組成物を作成した。マガキ稚貝養殖施設において組成物に錘を付けて6m間隔で3m以深に垂下したところ、クロダイを忌避組成物に誘い寄せるために作成した。ミカン科山椒由来のサンショオールとカキエキスの混合組成物は、長期(1ヶ月以上)にわたってマガキ稚貝の食害が見られず、痺れる刺激成分がクロダイの好物であるカキエキスの誘引刺激を上回る逃避反応を引き起こすことができ、結果、マガキ稚貝の食害を抑制出来たと考える。また、比較対象とした(TPE)と甘味芳香剤であるアントラ二ル酸メチル混合の組成物には逃避反応が弱く、マガキ稚貝の食害が少なかった事から、組成物の形状に対して幾分忌避効果はあると考える。
【0016】
魚類等に対してL-メントール結晶、キク科オランダセンニチ由来のスピラントールやミカ山椒由来のサンショオールは「毒もみ」と言われている違法な漁法ですが、ヒトデサポニンと違い鰓の粘膜組織を傷つけずに、鰓の局部麻酔を誘導することが知られている。また、人体に対しては痺れる香辛料として利用されている。