IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンリツオートメイション株式会社の特許一覧

特開2023-174644制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法
<>
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図1
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図2
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図3
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図4
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図5
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図6
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図7
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図8
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図9
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図10
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図11
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図12
  • 特開-制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174644
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20231201BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20231201BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20231201BHJP
   H04N 23/667 20230101ALI20231201BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231201BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20231201BHJP
   H04N 23/61 20230101ALI20231201BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N7/18 D
H04N7/18 G
H04N7/18 F
H04N23/66
H04N23/667
G03B15/00 Q
G03B7/091
G03B15/00 S
H04N23/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023076480
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】592259060
【氏名又は名称】サンリツオートメイシヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大
【テーマコード(参考)】
2H002
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
2H002GA15
5C054CC02
5C054CF06
5C054CF07
5C054CH08
5C054DA09
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054FC12
5C054FC14
5C054FC15
5C054FD01
5C054FD07
5C054GB01
5C054HA19
5C054HA31
5C122EA55
5C122EA63
5C122EA65
5C122EA67
5C122FA18
5C122FH09
5C122FH11
5C122GA01
5C122GA23
5C122GC75
5C122HA13
5C122HA35
(57)【要約】
【課題】複数の撮像装置を用いて移動体を監視するシステムの規模を小さくする。
【解決手段】制御装置2は、追尾対象の移動体の画像データと、撮像装置1の撮像領域の一部の領域である引継領域と、を記憶する記憶部22と、撮像装置1が撮像することにより生成された撮像画像データを取得する画像データ取得部231と、撮像画像データにおいて移動体の位置を検出する物体検出部232と、物体検出部232が検出した移動体を追尾するように撮像装置1を制御する追尾制御部233と、撮像画像データにおける引継領域において物体検出部232が移動体を検出したことを条件として、引継先の撮像装置1を制御する引継先の制御装置2に追尾開始指令データを送信するデータ通信部234と、を有する。
【選択図】図4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像装置を制御する制御装置であって、
追尾対象の移動体の画像データと、前記撮像装置の撮像領域の一部の領域である引継領域と、を記憶する記憶部と、
前記撮像装置が撮像することにより生成された撮像画像データを取得する画像データ取得部と、
前記撮像画像データにおいて前記移動体の位置を検出する物体検出部と、
前記物体検出部が検出した前記移動体を追尾するように前記撮像装置を制御する追尾制御部と、
前記撮像画像データにおける前記引継領域において前記物体検出部が前記移動体を検出したことを条件として、引継先撮像装置を制御する引継先制御装置に追尾開始指令データを送信するデータ通信部と、
を有する制御装置。
【請求項2】
前記記憶部は、複数の前記引継領域それぞれに関連付けて前記引継先制御装置を記憶し、
前記データ通信部は、前記撮像画像データにおける複数の前記引継領域のうち1つの前記引継領域において前記物体検出部が前記移動体を検出した場合に、前記移動体が検出された前記引継領域に関連付けられた前記引継先制御装置に前記追尾開始指令データを送信する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記追尾制御部は、前記データ通信部が前記追尾開始指令データを送信した後に、前記移動体の追尾を開始した前記引継先制御装置から追尾終了指令データを受信した場合に、前記移動体の追尾を終了するように前記撮像装置を制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記追尾制御部は、前記移動体が前記撮像装置よりも前記引継先撮像装置に近い状態になった場合に、前記追尾開始指令データを送信可能なメインモードから、前記追尾開始指令データを送信できないサブモードに切り替える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記追尾制御部が前記メインモードから前記サブモードに切り替えた場合に、前記データ通信部は、前記引継先制御装置に、前記サブモードから前記メインモードに切り替えるためのメインモード切替指令を送信する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記データ通信部は、前記引継先撮像装置の位置を基準とする前記移動体の位置を示す座標データを前記引継先制御装置から受信し、
前記追尾制御部は、前記物体検出部が検出した前記撮像装置の位置を基準とする前記移動体の位置と、前記座標データが示す前記引継先撮像装置の位置に対する前記移動体の位置と、前記撮像装置の位置を基準とする前記引継先撮像装置の位置と、に基づいて、前記移動体が前記撮像装置よりも前記引継先撮像装置に近い状態になったか否かを判定する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記データ通信部が前記引継先制御装置に前記追尾開始指令データを送信した後に、前記物体検出部が前記移動体を検出できない状態になった場合に、
前記追尾制御部は前記撮像装置による前記移動体の追尾を終了し、
前記データ通信部は、前記追尾開始指令データを送信できないサブモードで動作中の前記引継先制御装置を前記追尾開始指令データを送信可能なメインモードに切り替えるためのメインモード切替指令を送信する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記追尾制御部は、前記撮像装置に前記移動体を追尾させていない状態で、前記データ通信部が引継元撮像装置に対応する引継元制御装置から前記追尾開始指令データを受信したことに応じて、前記移動体の追尾を開始する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記追尾制御部は、前記データ通信部が前記引継元制御装置から、前記追尾開始指令データを送信できないサブモードから前記追尾開始指令データを送信可能なメインモードに切り替えるためのメインモード切替指令を受信したことに応じて、前記サブモードから前記メインモードに切り替える、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記記憶部は、前記引継元撮像装置の位置を記憶し、
前記追尾制御部は、前記撮像領域のうち、前記引継元撮像装置の位置に基づいて選択した領域において前記移動体の追尾を開始するように前記撮像装置を制御する、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
前記データ通信部は、前記引継先制御装置に前記追尾開始指令データを送信した場合に、前記引継元制御装置に、前記引継元撮像装置による前記移動体の追尾を終了させるための追尾終了指令データを送信する、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項12】
第1撮像装置を制御する第1制御装置と、第2撮像装置を制御する第2制御装置と、第3撮像装置を制御する第3制御装置と、を備え、
前記第1制御装置は、
追尾対象の移動体の画像データと、前記第1撮像装置の撮像領域の一部の領域であり前記第2撮像装置に対応する第12引継領域と、を記憶する第1記憶部と、
前記第1撮像装置が撮像することにより生成された第1撮像画像データを取得する第1画像データ取得部と、
前記第1撮像画像データにおいて前記移動体の位置を検出する第1物体検出部と、
前記第1物体検出部が検出した前記移動体を追尾するように前記第1撮像装置を制御する第1追尾制御部と、
前記第1撮像画像データにおける前記第12引継領域において前記第1物体検出部が前記移動体を検出したことを条件として、第2制御装置に第1追尾開始指令データを送信する第1データ通信部と、
を有し、
前記第2制御装置は、
追尾対象の前記移動体の画像データと、前記第2撮像装置の撮像領域の一部の領域であり前記第3撮像装置に対応する第23引継領域と、を記憶する第2記憶部と、
前記第2撮像装置が撮像することにより生成された第2撮像画像データを取得する第2画像データ取得部と、
前記第2撮像画像データにおいて前記移動体の位置を検出する第2物体検出部と、
前記第2物体検出部が検出した前記移動体を追尾するように前記第2撮像装置を制御する第2追尾制御部と、
前記第1追尾開始指令データを受信する第2データ通信部と、
を有し、
前記第2追尾制御部は、前記第2データ通信部が前記第1追尾開始指令データを受信したことに応じて前記移動体の追尾を開始するように前記第2撮像装置を制御する、
移動体追尾システム。
【請求項13】
前記第1記憶部は、前記第1撮像装置の撮像領域の一部の領域であり前記第3撮像装置に対応する第13引継領域をさらに記憶し、
前記第1データ通信部は、第2制御装置に第1追尾開始指令データを送信した後に、前記第13引継領域において前記第1物体検出部が前記移動体を検出したことを条件として、前記第3制御装置に前記第1追尾開始指令データを送信し、前記第2制御装置に追尾終了指令データを送信する、
請求項12に記載の移動体追尾システム。
【請求項14】
前記第2記憶部は、前記第2撮像装置の撮像領域の一部の領域であり前記第1撮像装置に対応する第21引継領域をさらに記憶し、
前記第1データ通信部は、前記第1追尾開始指令データを送信した後に、前記移動体が前記第1撮像装置よりも前記第2撮像装置に近い状態になった場合に、追尾開始指令データを送信できないサブモードから、前記追尾開始指令データを送信可能なメインモードに切り替えるためのメイン切替指令データを前記第2制御装置に送信し、
前記第2データ通信部は、前記メイン切替指令データを受信した後に、前記移動体が前記第2撮像装置よりも前記第1撮像装置に近い状態になった場合に、前記第1制御装置を前記メインモードに切り替えるための前記メイン切替指令データを前記第1制御装置に送信する、
請求項12に記載の移動体追尾システム。
【請求項15】
コンピュータに、
撮像装置が撮像することにより生成された撮像画像データを取得するステップと、
前記撮像画像データにおいて追尾対象の移動体の位置を検出するステップと、
検出した前記移動体を追尾するように前記撮像装置を制御するステップと、
前記撮像画像データにおける所定の引継領域において前記移動体を検出したことを条件として、引継先撮像装置を制御する引継先制御装置に追尾開始指令データを送信するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータが実行する、
撮像装置が撮像することにより生成された撮像画像データを取得するステップと、
前記撮像画像データにおいて追尾対象の移動体の位置を検出するステップと、
検出した前記移動体を追尾するように前記撮像装置を制御するステップと、
前記撮像画像データにおける所定の引継領域において前記移動体を検出したことを条件として、引継先撮像装置を制御する引継先制御装置に追尾開始指令データを送信するステップと、
を有する移動体追尾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を追尾するための制御装置、移動体追尾システム、プログラム及び移動体追尾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体を撮影可能な複数のカメラを用いて移動体を監視するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7058806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムは、レーダーにより計測された移動体の位置に基づいて、複数のカメラを制御する中央制御装置が、移動体を撮影するカメラを選択していた。このように、従来のシステムにおいては、移動体の位置を計測するための装置と、複数のカメラを制御する中央制御装置とが必要であり、システム規模が大きくなってしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、複数の撮像装置を用いて移動体を監視するシステムの規模を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の制御装置は、所定の撮像装置を制御する制御装置であって、追尾対象の移動体の画像データと、前記撮像装置の撮像領域の一部の領域である引継領域と、を記憶する記憶部と、前記撮像装置が撮像することにより生成された撮像画像データを取得する画像データ取得部と、前記撮像画像データにおいて前記移動体の位置を検出する物体検出部と、前記物体検出部が検出した前記移動体を追尾するように前記撮像装置を制御する追尾制御部と、前記撮像画像データにおける前記引継領域において前記物体検出部が前記移動体を検出したことを条件として、引継先撮像装置を制御する引継先制御装置に追尾開始指令データを送信するデータ通信部と、を有する。
【0007】
前記記憶部は、複数の前記引継領域それぞれに関連付けて前記引継先制御装置を記憶し、前記データ通信部は、前記撮像画像データにおける複数の前記引継領域のうち1つの前記引継領域において前記物体検出部が前記移動体を検出した場合に、前記移動体が検出された前記引継領域に関連付けられた前記引継先制御装置に前記追尾開始指令データを送信してもよい。
【0008】
前記追尾制御部は、前記データ通信部が前記追尾開始指令データを送信した後に、前記移動体の追尾を開始した前記引継先制御装置から追尾終了指令データを受信した場合に、前記移動体の追尾を終了するように前記撮像装置を制御してもよい。
【0009】
前記追尾制御部は、前記移動体が前記撮像装置よりも前記引継先撮像装置に近い状態になった場合に、前記追尾開始指令データを送信可能なメインモードから、前記追尾開始指令データを送信できないサブモードに切り替えてもよい。
【0010】
前記追尾制御部が前記メインモードから前記サブモードに切り替えた場合に、前記データ通信部は、前記引継先制御装置に、前記サブモードから前記メインモードに切り替えるためのメインモード切替指令を送信してもよい。
【0011】
前記データ通信部は、前記引継先撮像装置の位置を基準とする前記移動体の位置を示す座標データを前記引継先制御装置から受信し、前記追尾制御部は、前記物体検出部が検出した前記撮像装置の位置を基準とする前記移動体の位置と、前記座標データが示す前記引継先撮像装置の位置に対する前記移動体の位置と、前記撮像装置の位置を基準とする前記引継先撮像装置の位置と、に基づいて、前記移動体が前記撮像装置よりも前記引継先撮像装置に近い状態になったか否かを判定してもよい。
【0012】
前記データ通信部が前記引継先制御装置に前記追尾開始指令データを送信した後に、前記物体検出部が前記移動体を検出できない状態になった場合に、前記追尾制御部は前記撮像装置による前記移動体の追尾を終了し、前記データ通信部は、前記追尾開始指令データを送信できないサブモードで動作中の前記引継先制御装置を前記追尾開始指令データを送信可能なメインモードに切り替えるためのメインモード切替指令を送信してもよい。
【0013】
前記追尾制御部は、前記撮像装置に前記移動体を追尾させていない状態で、前記データ通信部が引継元撮像装置に対応する引継元制御装置から前記追尾開始指令データを受信したことに応じて、前記移動体の追尾を開始してもよい。
【0014】
前記追尾制御部は、前記データ通信部が前記引継元制御装置から、前記追尾開始指令データを送信できないサブモードから前記追尾開始指令データを送信可能なメインモードに切り替えるためのメインモード切替指令を受信したことに応じて、前記サブモードから前記メインモードに切り替えてもよい。
【0015】
前記記憶部は、前記引継元撮像装置の位置を記憶し、前記追尾制御部は、前記撮像領域のうち、前記引継元撮像装置の位置に基づいて選択した領域において前記移動体の追尾を開始するように前記撮像装置を制御してもよい。
【0016】
前記データ通信部は、前記引継先制御装置に前記追尾開始指令データを送信した場合に、前記引継元制御装置に、前記引継元撮像装置による前記移動体の追尾を終了させるための追尾終了指令データを送信してもよい。
【0017】
本発明の第2の態様の移動体追尾システムは、第1撮像装置を制御する第1制御装置と、第2撮像装置を制御する第2制御装置と、第3撮像装置を制御する第3制御装置と、を備える。前記第1制御装置は、追尾対象の移動体の画像データと、前記第1撮像装置の撮像領域の一部の領域であり前記第2撮像装置に対応する第12引継領域と、を記憶する第1記憶部と、前記第1撮像装置が撮像することにより生成された第1撮像画像データを取得する第1画像データ取得部と、前記第1撮像画像データにおいて前記移動体の位置を検出する第1物体検出部と、前記第1物体検出部が検出した前記移動体を追尾するように前記第1撮像装置を制御する第1追尾制御部と、前記第1撮像画像データにおける前記第12引継領域において前記第1物体検出部が前記移動体を検出したことを条件として、第2制御装置に第1追尾開始指令データを送信する第1データ通信部と、を有する。
【0018】
前記第2制御装置は、追尾対象の前記移動体の画像データと、前記第2撮像装置の撮像領域の一部の領域であり前記第3撮像装置に対応する第23引継領域と、を記憶する第2記憶部と、前記第2撮像装置が撮像することにより生成された第2撮像画像データを取得する第2画像データ取得部と、前記第2撮像画像データにおいて前記移動体の位置を検出する第2物体検出部と、前記第2物体検出部が検出した前記移動体を追尾するように前記第2撮像装置を制御する第2追尾制御部と、前記第1追尾開始指令データを受信する第2データ通信部と、を有する。前記第2追尾制御部は、前記第2データ通信部が前記第1追尾開始指令データを受信したことに応じて前記移動体の追尾を開始するように前記第2撮像装置を制御する。
【0019】
前記第1記憶部は、前記第1撮像装置の撮像領域の一部の領域であり前記第3撮像装置に対応する第13引継領域をさらに記憶し、前記第1データ通信部は、第2制御装置に第1追尾開始指令データを送信した後に、前記第13引継領域において前記第1物体検出部が前記移動体を検出したことを条件として、前記第3制御装置に前記第1追尾開始指令データを送信し、前記第2制御装置に追尾終了指令データを送信してもよい。
【0020】
前記第2記憶部は、前記第2撮像装置の撮像領域の一部の領域であり前記第1撮像装置に対応する第21引継領域をさらに記憶し、前記第1データ通信部は、前記第1追尾開始指令データを送信した後に、前記移動体が前記第1撮像装置よりも前記第2撮像装置に近い状態になった場合に、追尾開始指令データを送信できないサブモードから、前記追尾開始指令データを送信可能なメインモードに切り替えるためのメイン切替指令データを前記第2制御装置に送信し、前記第2データ通信部は、前記メイン切替指令データを受信した後に、前記移動体が前記第2撮像装置よりも前記第1撮像装置に近い状態になった場合に、前記第1制御装置を前記メインモードに切り替えるための前記メイン切替指令データを前記第1制御装置に送信してもよい。
【0021】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、撮像装置が撮像することにより生成された撮像画像データを取得するステップと、前記撮像画像データにおいて追尾対象の移動体の位置を検出するステップと、検出した前記移動体を追尾するように前記撮像装置を制御するステップと、前記撮像画像データにおける所定の引継領域において前記移動体を検出したことを条件として、引継先撮像装置を制御する引継先制御装置に追尾開始指令データを送信するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0022】
本発明の第4の態様の移動体追尾方法は、コンピュータが実行する、撮像装置が撮像することにより生成された撮像画像データを取得するステップと、前記撮像画像データにおいて追尾対象の移動体の位置を検出するステップと、検出した前記移動体を追尾するように前記撮像装置を制御するステップと、前記撮像画像データにおける所定の引継領域において前記移動体を検出したことを条件として、引継先撮像装置を制御する引継先制御装置に追尾開始指令データを送信するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数の撮像装置を用いて移動体を監視するシステムの規模を小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】移動体追尾システムSの概要を説明するための図である。
図2】移動体追尾システムSの概要を説明するための図である。
図3】移動体の追尾を引き継ぐ動作の概要を説明するための図である。
図4】制御装置2の構成を示す図である。
図5】追尾制御部233及びデータ通信部234の動作を説明するための図である。
図6】追尾制御部233及びデータ通信部234の動作を説明するための図である。
図7】追尾制御部233及びデータ通信部234の動作を説明するための図である。
図8】移動体Bが撮像装置1-1よりも撮像装置1-2に近い状態になったか否かを判定する方法を説明するための図である。
図9】3台の撮像装置1が引継動作を実行する場合の動作の一例を説明するための図である。
図10】3台の撮像装置1が引継動作を実行する場合の動作の他の例を説明するための図である。
図11】3台の撮像装置1が引継動作を実行する場合の動作の他の例を説明するための図である。
図12】撮像装置1が引継動作を実行する場合の動作の他の例を説明するための図である。
図13】制御装置2の状態の遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[移動体追尾システムSの概要]
図1及び図2は、移動体追尾システムSの概要を説明するための図である。移動体追尾システムSは、複数の撮像装置1(図1においては、撮像装置1-1~撮像装置1-N、Nは5以上の整数)を用いて、移動体を撮影するためのシステムである。撮像装置1は、例えば動画像を撮影することができるカメラであるが、定期的に静止画を撮影可能なカメラであってもよい。また、移動体追尾システムSが有する撮像装置1の数は2台以上の任意の数であってよい。移動体は、人、車又は飛行体のように、時間の経過とともに位置を変えることができる物体である。
【0026】
図2に示すように、移動体追尾システムSは、複数の撮像装置1と、複数の撮像装置1を制御する複数の制御装置2と、ユーザ装置3と、を有する。複数の制御装置2のいずれかが、ユーザ装置3の機能を有していてもよい。撮像装置1が制御装置2の構成及び機能を有していてもよい。複数の撮像装置1と、複数の制御装置2と、ユーザ装置3と、は、ネットワーク(例えばイントラネット又はインターネット)を介してデータを送受信することができる。
【0027】
制御装置2は例えばコンピュータであり、予め関連付けられた撮像装置1を制御する。具体的には、制御装置2は、撮像装置1に撮影を開始させたり、撮影を停止させたり、撮像装置1の撮影方向を変化させたりするための制御データを撮像装置1に送信する。制御装置2は、追尾するべき移動体が撮像装置1の撮像領域に含まれるように撮像装置1のズーム、チルト、パン、ロールの少なくともいずれかを変化させることにより、撮像装置1に移動体を追尾させる。図2においては、制御装置2がネットワークを介して複数の撮像装置1に接続されているが、制御装置2は、ネットワークを介することなく、制御する対象の撮像装置1に直接接続されていてもよい。
【0028】
ユーザ装置3は、移動体追尾システムSを管理又は利用するユーザが使用するコンピュータである。ユーザ装置3は、移動体追尾システムSを動作させるための操作画面を表示し、ユーザによる操作を受け付ける。ユーザ装置3は、移動体追尾システムSの動作を開始するための操作を受け付けると、複数の撮像装置1及び複数の制御装置2に動作を開始させるための指示を送信する。ユーザ装置3は、移動体追尾システムSの動作を終了するための操作を受け付けると、複数の撮像装置1及び複数の制御装置2に動作を終了させるための指示を送信する。
【0029】
複数の撮像装置1は、それぞれに対応する制御装置2の制御により移動体を撮影し、移動体を追尾するように撮影方向を変化させる。追尾するべき移動体がいないにもかかわらず複数の撮像装置1が移動体を追尾すると消費電力が大きくなる。そこで、本実施形態に係る複数の制御装置2は、移動体の位置に応じて、移動体の撮影に適した撮像装置1が移動体を追尾する。一例として、複数の制御装置2は、引継領域によって関連付けられたそれぞれの制御装置2との間で制御データを送受信することにより、移動体の追尾を他の制御装置2から引き継いだり、移動体の追尾を他の制御装置2に引き継いだりする。
【0030】
図3は、移動体の追尾を引き継ぐ動作の概要を説明するための図である。それぞれの撮像装置1の撮像領域には引継領域が設定されている。移動体を追尾している撮像装置1の引継領域に移動体が入った場合に、当該撮像装置1を制御する制御装置2は、引継領域に対応する他の撮像装置1を制御する制御装置2に対して、追尾を開始することを指示するための追尾開始指令データを送信する。
【0031】
図3に示す例においては、撮像装置1-1から撮像装置1-2に追尾を引き継ぐための引継領域R12と、撮像装置1-2から撮像装置1-1に追尾を引き継ぐための引継領域R21とが設定されている。引継領域は、例えば、それぞれの撮像装置1が生成した撮像画像データに基づく撮像画像を表示したユーザ装置3において、ユーザが引継領域の輪郭線又は頂点を指定することにより設定される。それぞれの撮像装置1に対して設定された輪郭線又は頂点を特定するための座標がユーザ装置3から制御装置2に送信され、それぞれの制御装置2が、引継領域を特定するためのデータを記憶している。なお、図3に示す引継領域は四辺形であるが、引継領域の形状は任意である。
【0032】
制御装置2-1は、制御対象の撮像装置1-1から撮像装置1-2に追尾を引き継ぐための引継領域R12に移動体が含まれる状態になった場合に、引継領域R12に関連付けられた撮像装置1-2を制御する制御装置2-2に対して、追尾を開始させるための追尾開始指令データを送信する。追尾開始指令データを受信した制御装置2-2は、制御する撮像装置1-2が生成した撮像画像データにおいて移動体を検出し、検出した移動体を追尾するように撮像装置1-2を制御する。
【0033】
撮像装置1-2が撮像可能な範囲の全体から制御装置2-2が移動体を検出しようとすると、移動体を検出するまでに要する時間が長くなる。そこで、制御装置2-2は、制御装置2-1から追尾開始指令データを受信した場合、制御装置2-1に対応する引継領域R21内で移動体の検出を開始する。引継領域R21が引継領域R12の近くに設定されていれば、制御装置2-1が追尾開始指令データを送信した後に移動体が引継領域R21に含まれる蓋然性が高いので、制御装置2-2が速やかに移動体を検出することができる。
【0034】
制御装置2が移動体を追尾する間、制御装置2はメインモード又はサブモードのいずれかで動作する。メインモードは、追尾を引き継がせる対象である引継先制御装置に追尾開始指令データを送信可能なモードである。サブモードは、追尾開始指令データを送信できないモードである。本実施の形態においては、移動体を追尾する複数の制御装置2のうち、移動体に近い方の制御装置2がメインモードで動作し、サブモードの制御装置2に各種の指令データを送信するように構成されている。制御装置2がメインモードで動作している間、当該制御装置2に対応する撮像装置1はメインカメラとなり、制御装置2がサブモードで動作している間、当該制御装置2に対応する撮像装置1はサブカメラとなる。
【0035】
詳細については後述するが、制御装置2-2は、メインモードで動作する制御装置2-1から追尾開始指令データを受信したことに応じてサブモードで移動体の追尾を開始する。メインモードで動作している制御装置2-1は、移動体の位置が撮像装置1-1よりも撮像装置1-2の方が近い状態になった場合に、制御装置2-2をメインモードに切り替えるためのメインモード切替指令データを送信し、制御装置2-1はサブモードに切り替わる。
【0036】
制御装置2-2は、メインモードで動作している間に、追尾の引継先の制御装置2(例えば制御装置2-3)に追尾開始指令データを送信した時点で、追尾の引継元の制御装置2-1に対して追尾終了指令データを送信する。制御装置2-1は、追尾終了指令データを受信すると、撮像装置1-1に移動体の追尾を終了させる。このように、移動体追尾システムSにおいては、互いに関連付けられた複数の制御装置2が追尾開始指令、追尾終了指令、メインモード切替指令を送受信することで、移動体の移動に応じて移動体を追尾する撮像装置1を切り替えることができる。また、移動体を追尾する制御装置2が切り替わり、複数の制御装置2のうち2台の制御装置2が移動体を追尾するので、移動体追尾システムSの消費電力を最小限に抑えることができる。
【0037】
なお、図3においては、撮像領域内に1つの引継領域が設定されているが、撮像領域内に複数の引継領域が設定されていてもよい。この場合、それぞれの引継領域に撮像装置1が関連付けられる。制御装置2は、それぞれの引継領域に移動体が含まれる状態になった場合、それぞれの引継領域に関連付けられた撮像装置1を制御する制御装置2に対して追尾開始指令データを送信する。以下、制御装置2の構成及び動作を詳細に説明する。
【0038】
[制御装置2の構成]
図4は、制御装置2の構成を示す図である。制御装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、を有する。制御部23は、画像データ取得部231と、物体検出部232と、追尾制御部233と、データ通信部234と、を有する。
【0039】
通信部21は、撮像装置1、他の制御装置2及びユーザ装置3との間でデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信部21は、対応する撮像装置1が送信した撮像画像データを受信する。通信部21は、例えば、記憶部22に記憶されたカメラIDが含まれている撮像画像データを受信し、受信した撮像画像データを画像データ取得部231に入力する。通信部21は、受信した撮像画像データを記憶部22に記憶させることにより、撮像画像データを画像データ取得部231に入力してもよい。
【0040】
また、通信部21は、データ通信部234から入力された制御データを撮像装置1に送信する。制御装置2がネットワークを介して複数の撮像装置1に接続されている場合、通信部21は、自身が制御する対象となる撮像装置1のカメラIDを含む制御データを送信する。
【0041】
さらに、通信部21は、他の制御装置2に対して追尾開始指令データを送信したり、他の制御装置2から追尾終了指令データを受信したりする。通信部21は、例えば、制御装置2がメインモードで動作している場合に、引継領域に関連付けられた撮像装置1を制御する制御装置2に対して追尾開始指令データを送信する。また、通信部21は、制御装置2が追尾していない状態で、メインモードで動作している他の制御装置2から追尾開始指令データを受信する。
【0042】
また、通信部21は、ユーザ装置3から入力された設定データを受信し、受信した設定データを追尾制御部233に通知する。通信部21は、受信した設定データを記憶部22に記憶させることにより、設定データを追尾制御部233に通知してもよい。
【0043】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部22は、ユーザ装置3から送信された設定データ、及び通信部21が撮像装置1から受信した撮像画像データを一時的に記憶する。
【0044】
また、記憶部22は、移動体を追尾するために使用するデータを記憶する。具体的には、記憶部22は、追尾対象の移動体の画像データを記憶する。追尾対象の移動体の画像データは、例えばユーザ装置3においてユーザが指定した画像データであり、人、車又は飛行体のように、撮像装置1が追尾して撮像した結果を記録する対象の移動体の特徴が示された画像データである。記憶部22は、人、車又は飛行体のそれぞれに関連付けて、複数の画像データを記憶してもよい。
【0045】
また、記憶部22は、制御装置2が制御する対象の撮像装置1の撮像領域の一部の領域である引継領域を記憶する。記憶部22は、複数の引継領域それぞれに関連付けて引継先の制御装置2を記憶してもよい。
【0046】
具体的には、記憶部22は、制御部23が制御する撮像装置1と異なる撮像装置1又は他の制御装置2に関連付けて、引継領域の外周を特定するための三次元空間座標を記憶する。三次元空間における原点は任意であるが、例えば、それぞれの撮像装置1の初期状態におけるレンズの中心位置である。三次元空間座標は、例えば、原点に対応する撮像装置1の初期状態における撮影方向(例えば撮像装置1の正面方向)に対する左右方向の角度及び上下方向の角度により表される極座標である。
【0047】
記憶部22は、引継領域に対応する他の撮像装置1の位置を示す情報をさらに記憶してもよい。当該情報は、例えば、三次元空間における撮像装置1の原点と他の撮像装置1の原点との相対位置を示す情報である。当該情報は、それぞれの撮像装置1が生成した撮像画像データにおいて検出された移動体の位置に基づいて、追尾制御部233が、それぞれの撮像装置1から移動体までの距離を三角測量の原理で算出するために用いられる。
【0048】
制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、画像データ取得部231、物体検出部232、追尾制御部233及びデータ通信部234として機能する。
【0049】
画像データ取得部231は、通信部21を介して、制御装置2が制御する対象の撮像装置1が撮像することにより生成された撮像画像データを取得する。画像データ取得部231は、撮像画像データを物体検出部232に入力する。撮像画像データには、撮像装置1の撮影方向を示すデータ(例えばチルト量及びパン量を示すデータ)が含まれていてもよい。
【0050】
物体検出部232は、画像データ取得部231から入力された撮像画像データにおいて移動体の位置を検出する。具体的には、物体検出部232は、撮像画像データにおいて、記憶部22に記憶された追尾対象の移動体の画像データとの類似度が閾値以上の画像領域を探索し、類似度が閾値以上の画像領域の中心位置を移動体の位置として検出する。物体検出部232は、移動体の位置を検出したことを追尾制御部233に通知する。物体検出部232は、例えば追尾制御部233から移動体の位置の検出を開始する指示を受けた後に、一定の周期で移動体の位置を検出する。
【0051】
追尾制御部233は、物体検出部232が検出した移動体を追尾するように撮像装置1を制御する。追尾制御部233は、例えば、データ通信部234を介して、物体検出部232が検出した移動体が撮像中の画像における中心位置に近づくように撮影方向を変化させるための制御データを撮像装置1に送信することにより、撮像装置1の撮影方向を制御する。制御データは、チルト量又はパン量の少なくともいずれかを含む。制御データは、ロール量又はズーム量の少なくともいずれかをさらに含んでもよい。
【0052】
データ通信部234は、通信部21を介して、撮像装置1、他の制御装置2、及びユーザ装置3との間でデータを送受信する。データ通信部234は、例えば、追尾制御部233からの指示に基づいて制御データを撮像装置1に送信する。データ通信部234は、追尾制御部233からの指示に基づいて、他の制御装置2に追尾開始指令データ及び追尾終了指令データを送信する。また、データ通信部234は、他の制御装置2が送信した追尾開始指令データ及び追尾終了指令データを受信する。データ通信部234は、ユーザ装置3が送信した設定データ(例えば引継領域を示すデータ)を受信し、受信した設定データを記憶部22に記憶させる。
【0053】
データ通信部234は、追尾制御部233の指示に基づいて、撮像画像データにおける引継領域において物体検出部232が移動体を検出したことを条件として、制御装置2に記憶された引継領域に対応する引継先の撮像装置1を制御する引継先の他の制御装置2に追尾開始指令データを送信する。一例として、データ通信部234は、制御装置2がメインモードで動作している間に物体検出部232が引継領域において移動体を検出したことを条件として、他の制御装置2に追尾開始指令データを送信する。データ通信部234は、撮像画像データにおける複数の引継領域のうち1つの引継領域において物体検出部232が移動体を検出した場合に、移動体が検出された引継領域に関連付けられた引継先制御装置に追尾開始指令データを送信する。
【0054】
以下、追尾制御部233及びデータ通信部234により実行される引継動作を詳細に説明する。以下の説明において追尾制御部233が実行する処理の一部をデータ通信部234が実行してもよく、データ通信部234が実行する処理の一部を追尾制御部233が実行してもよい。
【0055】
[引継動作の詳細]
図5から図7は、追尾制御部233及びデータ通信部234の動作を説明するための図である。図5は、撮像装置1-1がメインモードで移動体Bを追尾しており、撮像装置1-2が移動体Bを追尾していない状態を示している。撮像装置1-1には、撮像装置1-2に引き継ぐための引継領域R12が設定されており、撮像装置1-2には、撮像装置1-1に引き継ぐための引継領域R21が設定されている。図5の状態において、制御装置2-1の追尾制御部233は、移動体Bの移動に応じて撮影方向を変化させるように撮像装置1-1を制御する。
【0056】
図6は、移動体Bが引継領域R12に入った状態を示している。撮像装置1-1を制御する制御装置2-1のデータ通信部234は、移動体Bが引継領域R12に含まれる状態になると、記憶部22において引継領域R12に関連付けられている制御装置2-2に対して追尾開始指令データを送信する。制御装置2-2の追尾制御部233は、撮像装置1-2に移動体Bを追尾させていない状態で、データ通信部234が引継元の撮像装置1-1に対応する引継元の制御装置2-1から追尾開始指令データを受信したことに応じて、移動体の追尾を開始する。この時点では、移動体Bが撮像装置1-2よりも撮像装置1-1に近い状態であり、制御装置2-1はメインモードでの動作を継続し、制御装置2-2は他の制御装置2に追尾開始指令データを送信できないサブモードで動作する。
【0057】
引継先の制御装置2-2の追尾制御部233が、撮像装置1-2が撮像可能な全ての領域において移動体Bを探索するように撮像装置1-2を動かすと、移動体Bを検出するまでに長時間を要する。そこで、記憶部22は、引継元の撮像装置1-1の位置を記憶し、制御装置2-2の追尾制御部233は、撮像領域のうち、引継元の撮像装置1-1の位置に基づいて選択した領域(例えば引継領域R21)において移動体の追尾を開始するように撮像装置1を制御する。
【0058】
追尾制御部233がこのように動作することで、物体検出部232が短時間で移動体Bを検出することができるので、追尾制御部233が速やかに移動体Bの追尾を開始することができる。図6に示す状態においては、移動体Bが引継領域R21に入っていないので、物体検出部232が移動体Bを検出できておらず、物体Bが引継領域R21に入った時点で物体検出部232が移動体Bを検出することになる。
【0059】
図7は、移動体Bが撮像装置1-1よりも撮像装置1-2に近い位置まで移動した状態を示している。制御装置2-1の追尾制御部233は、移動体Bが撮像装置1-1よりも引継先の撮像装置1-2に近い状態になった場合に、追尾開始指令データを送信可能なメインモードから、追尾開始指令データを送信できないサブモードに切り替わる。追尾制御部233がメインモードからサブモードに切り替わった場合に、データ通信部234は、引継先の制御装置2-2に、サブモードからメインモードに切り替えるためのメインモード切替指令データを送信する。制御装置2-2の追尾制御部233は、データ通信部234が引継元の制御装置2-1から、サブモードからメインモードに切り替えるためのメインモード切替指令を受信したことに応じて、サブモードからメインモードに切り替える。
【0060】
追尾制御部233が、移動体Bが撮像装置1-1よりも撮像装置1-2に近い状態になったことを検出するために、データ通信部234は、引継先の撮像装置1-2の位置を基準とする移動体Bの位置を示す座標データを引継先の制御装置2-2から受信する。制御装置2-1の追尾制御部233は、物体検出部232が検出した撮像装置1-1の位置を基準とする移動体Bの位置と、データ通信部234が制御装置2-2から受信した座標データが示す引継先の撮像装置1-2の位置に対する移動体Bの位置と、撮像装置1-1の位置を基準とする引継先の撮像装置1-2の位置と、に基づいて、移動体Bが撮像装置1-1よりも引継先の撮像装置1-2に近い状態になったか否かを判定する。
【0061】
図8は、移動体Bが撮像装置1-1よりも撮像装置1-2に近い状態になったか否かを判定する方法を説明するための図である。追尾制御部233は、撮像装置1-1が生成した撮像画像データにおいて物体検出部232が検出した移動体Bの位置に基づいて、撮像装置1-1から移動体Bに向かうベクトルV1を特定する。また、追尾制御部233は、予め記憶部22に記憶された撮像装置1-1の位置に対する撮像装置1-2の位置(相対位置)と、データ通信部234が受信した撮像装置1-2の位置を基準とする移動体Bの位置とに基づいて、ベクトルV2を特定する。
【0062】
追尾制御部233は、ベクトルV1とベクトルV2との交点の位置が移動体Bの位置であることを特定する。追尾制御部233は、特定した移動体Bの位置と撮像装置1-1の位置との差に基づいて、撮像装置1-1から移動体Bまでの距離を算出する。追尾制御部233は、特定した移動体Bの位置と撮像装置1-2の位置との差に基づいて、撮像装置1-2から移動体Bまでの距離を算出する。追尾制御部233は、算出した2つの距離を比較することにより、移動体Bが撮像装置1-1よりも撮像装置1-2に近い状態になったか否かを判定する。
【0063】
ところで、移動体Bが撮像装置1との間に存在する障害物の後方に隠れてしまい、メインモードで動作している制御装置2が移動体Bを追尾できなくなる場合がある。このような場合、当該制御装置2がメインモードで動作をし続けると、移動体追尾システムSが移動体Bを追尾できない状態に陥るおそれがある。
【0064】
そこで、メインモードで動作している制御装置2-1のデータ通信部234が引継先の制御装置2-2に追尾開始指令データを送信した後に、物体検出部232が移動体を検出できない状態になった場合に、制御装置2-1の追尾制御部233は撮像装置1-1による移動体の追尾を終了する。そして、制御装置2-1のデータ通信部234は、サブモードで動作中の引継先の制御装置2-2をメインモードに切り替えるためのメインモード切替指令を制御装置2-2に送信する。これにより、移動体Bが撮像装置1-2よりも撮像装置1-1に近い状態であっても、撮像装置1-2がメインカメラとなり、制御装置2-2がメインモードで移動体Bを追尾することができる。
【0065】
図9は、3台の撮像装置1が引継動作を実行する場合の動作の一例を説明するための図である。図9は、3台の撮像装置1が移動体Bの追尾をしていない状態から開始しており、時間の経過につれて状態が右に移動していく。
【0066】
ユーザ装置3において、ユーザが撮像装置1-1に移動体Bの追尾を開始させるための操作をすると、撮像装置1-1がメインカメラになり、制御装置2-1がメインモードで動作する。その後、制御装置2-1の物体検出部232が、撮像装置1-1から撮像装置1-2に追尾を引き継ぐための引継領域R12に移動体Bが入ったことを検出すると、制御装置2-1のデータ通信部234は、追尾開始指令データを制御装置2-2に送信する。引継領域R12は、制御装置2-1の記憶部22が記憶している第12引継領域である。制御装置2-2が追尾開始指令データを受信すると、制御装置2-2はサブモードでの動作を開始し、撮像装置1-2がサブカメラになる。
【0067】
その後、移動体Bが撮像装置1-1よりも撮像装置1-2に近い位置まで移動したと制御装置2-1の追尾制御部233が判定すると、制御装置2-1のデータ通信部234は、メインモード切替指令データを制御装置2-2に送信する。制御装置2-1はサブモードに切り替わって撮像装置1-1がサブカメラになり、制御装置2-2はメインモードに切り替わって撮像装置1-2がメインカメラになる。
【0068】
その後、制御装置2-2の追尾制御部233が、撮像装置1-2から撮像装置1-3に追尾を引き継ぐための引継領域R23に移動体Bが入ったことを検出すると、制御装置2-2のデータ通信部234は、追尾開始指令データを制御装置2-3に送信し、追尾終了指令データを制御装置2-1に送信する。引継領域R23は、制御装置2-2の記憶部22が記憶している第23引継領域である。このように、データ通信部234は、引継先の制御装置2に追尾開始指令データを送信した場合に、引継元の制御装置2に、引継元の撮像装置1による移動体Bの追尾を終了させるための追尾終了指令データを送信する。
【0069】
引継元の制御装置2-1の追尾制御部233は、データ通信部234が追尾開始指令データを制御装置2-2に送信した後に、引継先の制御装置2-2から追尾終了指令データを受信した場合に、移動体Bの追尾を終了するように撮像装置1-1を制御する。具体的には、制御装置2-1の追尾制御部233は、制御装置2-1がサブモードになり、制御装置2-2がメインモードになり、制御装置2-2が制御装置2-3に対して追尾開始指令データを送信した場合に追尾終了指令データを受信して、移動体Bの追尾を終了する。
【0070】
これにより、制御装置2-3はサブモードで移動体Bの追尾を開始し、制御装置2-1は移動体Bの追尾を終了する。したがって、移動体追尾システムSにおいては、1台の撮像装置1がメインカメラとして動作し、他の1台の撮像装置1がサブカメラとして動作し、他の撮像装置1が移動体Bを追尾しない状態になる。移動体追尾システムSがこのように構成されていることで、移動体Bを追尾する動作を実行する撮像装置1の台数を2台にすることができるので、消費電力を削減することができる。
【0071】
また、移動体追尾システムSにおいては、全ての撮像装置1を制御する中央制御装置が設けられておらず、複数の撮像装置1のいずれかを制御する複数の制御装置2が互いに連携して動作する。移動体追尾システムSがこのように構成されていることにより、中央制御装置が全ての撮像装置1を制御する場合に比べて効率的な追尾監視システムを提供できる。
【0072】
図10及び図11は、3台の撮像装置1が引継動作を実行する場合の動作の他の例を説明するための図である。図10は、撮像装置1-1の撮像領域を示している。撮像領域内には、撮像装置1-2に引き継ぐための引継領域R12と、撮像装置1-3に引き継ぐための引継領域R13とが設定されている。移動体Bは、引継領域R12に入った後に、撮像装置1-1よりも撮像装置1-2に近い状態になる前に引継領域R12から出て引継領域R13に入っている。
【0073】
図11は、移動体Bが図10に示すように移動した場合に3台の撮像装置1が引継動作を実行する場合の動作を説明するための図である。図9と同様に、図11は、3台の撮像装置1が移動体Bの追尾をしていない状態から開始しており、時間の経過につれて状態が右に移動していく。
【0074】
ユーザ装置3において、ユーザが撮像装置1-1に移動体Bの追尾を開始させるための操作をすると、撮像装置1-1がメインカメラになり、制御装置2-1がメインモードで動作する。その後、制御装置2-1の物体検出部232が、撮像装置1-1から撮像装置1-2に追尾を引き継ぐための引継領域R12に移動体Bが入ったことを検出すると、制御装置2-1のデータ通信部234は、追尾開始指令データを制御装置2-2に送信する。制御装置2-2が追尾開始指令データを受信すると、制御装置2-2はサブモードでの動作を開始し、撮像装置1-2がサブカメラになる。
【0075】
その後、移動体Bが引継領域R12から出て、撮像装置1-1から撮像装置1-3に引き継ぐための引継領域R13に入ると、制御装置2-1のデータ通信部234は、追尾開始指令データを制御装置2-3に送信し、追尾終了指令データを制御装置2-2に送信する。これにより、制御装置2-2の追尾制御部233は移動体Bの追尾を終了し、制御装置2-3の追尾制御部233がサブモードで移動体Bの追尾を開始して、撮像装置1-3がサブカメラになる。移動体Bが撮像装置1-1よりも撮像装置1-3に近い状態になると、撮像装置1-3がメインカメラに切り替わる。このように、複数の引継領域が設定されている場合であっても、移動体追尾システムSにおいては1台の撮像装置1がメインカメラとして動作し、他の1台の撮像装置1がサブカメラとして動作する。
【0076】
図12は、撮像装置1が引継動作を実行する場合の動作の他の例を説明するための図である。図12に示す例は、移動体Bが撮像装置1-1から撮像装置1-2に近づいた後に、移動体Bが撮像装置1-1の方に戻る場合における撮像装置1-1及び撮像装置1-2の動作を示している。
【0077】
撮像装置1-1がメインカメラとして動作している状態で移動体Bが引継領域R12に入った場合、制御装置2-1は制御装置2-2に追尾開始指令データを送信する。その後、移動体Bが撮像装置1-1よりも撮像装置1-2に近い状態になったと制御装置2-1の追尾制御部233が判定した場合、制御装置2-1は、メインモード切替指令データを制御装置2-2に送信する。引継領域R21は、制御装置2-2の記憶部22が記憶している、撮像装置1-2から撮像装置1-1に追尾を引き継ぐための第21引継領域である。制御装置2-1はサブモードに切り替わり、撮像装置1-1はサブカメラになる。制御装置2-2はメインモードに切り替わり、撮像装置1-2はメインカメラになる。
【0078】
その後、制御装置2-2のデータ通信部234は、メイン切替指令データを受信した後に、移動体Bが撮像装置1-2よりも撮像装置1-1に近い状態になった場合に、制御装置2-1をメインモードに切り替えるためのメイン切替指令データを制御装置2-1に送信する。
【0079】
すなわち、制御装置2-2のデータ通信部234は、撮像装置1-2がメインカメラとして動作している状態で移動体Bが撮像装置1-2よりも撮像装置1-1に近い状態になったと制御装置2-2の追尾制御部233が判定した場合、制御装置2-2は、メインモード切替指令データを制御装置2-1に送信する。制御装置2-2はサブモードに切り替わり、撮像装置1-2はサブカメラになる。制御装置2-1及び制御装置2-2がこのように動作することで、移動体Bが引き返した場合であっても、2台の撮像装置1が連動して移動体Bを追尾することができる。
【0080】
[制御装置2の状態遷移]
図13は、制御装置2の状態の遷移を示す図である。図13に示す状態遷移図においては、制御装置2が移動体の追尾を停止している状態(S1)と、制御装置2がサブモードで移動体を追尾している状態(S2)と、制御装置2がメインモードで移動体を追尾している状態(S3)と、が示されている。
【0081】
追尾停止状態(S1)において、制御装置2が、他の制御装置2から追尾開始指令データを受信した場合、追尾サブモード状態(S2)に遷移する。また、制御装置2が、ユーザ装置3を介してユーザによる追尾開始操作を受け付けた場合、又は自動追尾設定を付けつけた場合、制御装置2は追尾メインモード状態(S3)に遷移する。
【0082】
追尾サブモード状態(S2)において、ユーザ装置3を介して制御装置2が追尾終了操作を受け付けた場合、追尾対象となる移動体を制御装置2が検出できない消失状態になった場合、又はメインモードで動作している他の制御装置2から制御装置2が追尾終了指令データを受信した場合、制御装置2は追尾停止状態(S1)に遷移する。
【0083】
また、追尾サブモード状態(S2)において、メインモードで動作している他の制御装置2から制御装置2がメインモード切替指令データを受信した場合、制御装置2は追尾メインモード状態(S3)に遷移する。
【0084】
追尾メインモード状態(S3)において、制御装置2は移動体を追尾し、他の制御装置2に対応する引継領域に移動体が含まれる状態になった場合、移動体が含まれる引継領域に対応する制御装置2に追尾開始指令データを送信する。この際、制御装置2は、サブモードで動作している他の制御装置2に追尾終了指令データを送信する。
【0085】
また、追尾メインモード状態(S3)において、移動体の位置が制御装置2よりもサブモードの制御装置2の方に近い状態になった場合、制御装置2は、サブモードの制御装置2にメインモード切替指令データを送信する。これにより、制御装置2は、追尾サブモード状態(S2)に遷移する。追尾メインモード状態(S3)において、制御装置2がユーザ装置3を介して追尾終了操作を受け付けた場合、又は追尾対象となる移動体を制御装置2が検出できない消失状態になった場合、制御装置2は追尾停止状態(S1)に遷移する。
【0086】
[移動体追尾システムSによる効果]
以上説明したように、移動体追尾システムSにおいては、複数の制御装置2が連携して複数の撮像装置1を制御することにより移動体を追尾する。撮像装置1は、物体検出部232が検出した移動体を追尾するように撮像装置1を制御する追尾制御部233と、撮像画像データにおける引継領域において物体検出部232が移動体を検出したことを条件として、引継先の撮像装置1を制御する引継先の制御装置2に追尾開始指令データを送信するデータ通信部234と、を有する。このように、予め設定された引継領域に移動体が含まれる状態になったことに応じて、制御装置2が他の制御装置2に移動体の追尾を開始させることで、複数の撮像装置1を制御する中央制御装置が不要であり、複数の撮像装置1を用いて移動体を監視するシステムの規模を小さくすることができる。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0088】
1 撮像装置
2 制御装置
3 ユーザ装置
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
231 画像データ取得部
232 物体検出部
233 追尾制御部
234 データ通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13