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特開2023-174647効率的な伝播を示す空気パルス発生装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174647
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】効率的な伝播を示す空気パルス発生装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20231201BHJP
   H04R 1/22 20060101ALI20231201BHJP
   H04R 17/10 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H04R3/00 330
H04R3/00 310
H04R1/22 310
H04R17/10
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023086577
(22)【出願日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】63/346,848
(32)【優先日】2022-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/347,013
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/353,588
(32)【優先日】2022-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/353,610
(32)【優先日】2022-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/354,433
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/428,085
(32)【優先日】2022-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/433,740
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/434,474
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/435,275
(32)【優先日】2022-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/436,103
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/447,758
(32)【優先日】2023-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/447,835
(32)【優先日】2023-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/459,170
(32)【優先日】2023-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/321,752
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】任 頡
(72)【発明者】
【氏名】陳 磊
【テーマコード(参考)】
5D004
5D018
5D019
5D220
【Fターム(参考)】
5D004DD01
5D018AA10
5D019AA13
5D019FF01
5D019GG08
5D220AA44
(57)【要約】
【課題】従来技術の欠点を改善する空気パルス発生装置を提供する。
【解決手段】空気パルス発生装置は、膜構造を有する。膜構造は、空気パルス発生装置が複数の空気パルスを生成するように作動される。空気パルス発生装置内には、ホーン形状の出口が形成され、複数の空気パルスはホーン形状の出口を介して伝播される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気パルス発生装置であって、
膜構造を有し、
該膜構造は、当該空気パルス発生装置が複数の空気パルスを生成するように作動され、
当該空気パルス発生装置の内部には、ホーン形状の出口が形成され、前記複数の空気パルスは、前記ホーン形状の出口を介して伝播される、空気パルス発生装置。
【請求項2】
前記前記ホーン形状の出口の寸法は、前記膜構造から周囲に向かって徐々に広がる、請求項1に記載の空気パルス発生装置。
【請求項3】
支持構造を有し、
前記ホーン形状の出口は、前記支持構造の間に形成される、請求項1に記載の空気パルス発生装置。
【請求項4】
前記膜構造は、フラップ対を有し、
前記フラップ対は、前記支持構造に固定される、請求項3に記載の空気パルス発生装置。
【請求項5】
当該空気パルス発生装置内には導管が形成され、
前記導管は、第1のチャンバと、通路と、前記ホーン形状の出口とを有する、請求項1に記載の空気パルス発生装置。
【請求項6】
前記第1のチャンバの寸法は、前記膜構造から前記通路に向かって狭くなっている、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項7】
前記第1のチャンバは、前記膜構造の第1の側により形成される、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項8】
前記第2のチャンバは、前記膜構造の第2の側により形成される、請求項7に記載の空気パルス発生装置。
【請求項9】
前記膜構造は、フラップ対を含み、
前記フラップ対は、差動モード移動を実施するように作動される、請求項8に記載の空気パルス発生装置。
【請求項10】
前記膜構造により第3のチャンバが形成され、
前記第1のチャンバおよび前記第3のチャンバは、オリフィスを介して接続される、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項11】
前記第1のチャンバは、半閉塞されている、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項12】
前記第1のチャンバの高さは、当該空気パルス発生装置の作動周波数に対応する波長の5分の1未満である、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項13】
前記第1チャンバの幅は、当該空気パルス発生装置の作動周波数に対応する波長の半分未満である、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項14】
サブアセンブリを有し、
前記通路および前記ホーン形状の出口は、前記サブアセンブリ内に形成される、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項15】
前記第1のチャンバは、前記膜構造と前記サブアセンブリの間に形成される、請求項14に記載の空気パルス発生装置。
【請求項16】
キャップ構造を有し、
前記通路および前記ホーン形状の出口は、前記キャップ構造内に形成され、
前記第1のチャンバは、前記膜構造と前記キャップ構造の間に形成される、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項17】
前記導管の長さは、当該空気パルス発生装置の作動周波数に対応する波長の4分の1である、請求項5に記載の空気パルス発生装置。
【請求項18】
空気パルス発生装置に配置され、または空気パルス発生装置内に配置されたサブアセンブリであって、
当該サブアセンブリ内に形成された導管を有し、
前記導管は、通路およびホーン形状の出口を有し、
当該サブアセンブリは、膜構造を有する装置と共に組み立てられ、または組み立てられる予定である、サブアセンブリ。
【請求項19】
前記ホーン形状の出口の寸法は、周囲に向かって広がっている、請求項18に記載のサブアセンブリ。
【請求項20】
前記導管は、第1のチャンバを有する、請求項18に記載のサブアセンブリ。
【請求項21】
前記第1のチャンバの寸法は、前記通路に向かって狭くなっている、請求項20に記載のサブアセンブリ。
【請求項22】
当該サブアセンブリは、真ちゅうのマウスピース状の断面プロファイルを有する領域を有し、
前記第1のチャンバは、前記真ちゅうのマウスピース状の断面プロファイルを有する前記領域と前記膜構造の間に形成される、請求項20に記載のサブアセンブリ。
【請求項23】
前記第1のチャンバは、半閉塞されている、請求項20に記載のサブアセンブリ。
【請求項24】
前記第1のチャンバは、当該サブアセンブリと前記装置の間に形成される、請求項20に記載のサブアセンブリ。
【請求項25】
当該サブアセンブリには、面取り部が形成されている、請求項18に記載のサブアセンブリ。
【請求項26】
当該サブアセンブリは、3D印刷技術または精密射出成形法によって形成される、請求項18に記載のサブアセンブリ。
【請求項27】
当該サブアセンブリは、MEMS(小型電気機械システム)製造プロセスにより形成される、請求項18に記載のサブアセンブリ。
【請求項28】
前記装置は、MEMS(小型電気機械システム)製造プロセスにより形成される、請求項18に記載のサブアセンブリ。
【請求項29】
前記膜構造は、超音波空気圧力変化を形成するように作動され、
前記空気パルス発生装置は、前記超音波空気圧力変化に応じて複数の空気パルスを生成し、
前記複数の空気パルスは、前記ホーン形状の出口を介して周囲に向かって伝搬する、請求項18に記載のサブアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気パルス発生装置に関し、特に、波を効率的に伝播することができる空気パルス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカドライバおよび背面エンクロージャは、スピーカ産業における2つの主要な設計課題である。従来のスピーカでは、例えば、20Hzから20kHzまでの全オーディオ周波数帯域を網羅することは容易ではない。高い忠実性で十分に高い音圧レベル(SPL)を有する音を生成するため、従来のスピーカの背面エンクロージャの放射/移動の表面および体積/サイズの両方が、十分に大きいことが必要とされる。
【0003】
従って、従来のスピーカが直面する設計上の課題を克服しつつ、小型の音生成装置をどのように設計するかが、この分野における重要な目的となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、従来技術の欠点を改善する空気パルス発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある実施形態では、空気パルス発生装置であって、
膜構造を有し、
該膜構造は、当該空気パルス発生装置が複数の空気パルスを生成するように作動され、
当該空気パルス発生装置の内部には、ホーン形状の出口が形成され、前記複数の空気パルスは、前記ホーン形状の出口を介して伝播される、空気パルス発生装置が提供される。
【0006】
本開示のある実施形態では、空気パルス発生装置に配置され、または空気パルス発生装置内に配置されたサブアセンブリであって、
当該サブアセンブリ内に形成された導管を有し、
前記導管は、通路およびホーン形状の出口を有し、
当該サブアセンブリは、膜構造を有する装置と共に組み立てられ、または組み立てられる予定である、サブアセンブリが提供される。
【0007】
本発明のこれらおよび他の目的は、各種図面および図面に示された好適実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態による復調駆動信号および変調駆動信号の波形を示す図である。
図3図1の装置に対応するシミュレーション結果を示す図である。
図4図1のAPG装置の音圧レベルのシミュレートされた周波数応答をプロットした図である。
図5図1の装置に対応するシミュレーション結果を示した図である。
図6図1の装置に対応するシミュレーション結果を示した図である。
図7】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図8】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図9図1の装置のエネルギー伝達比の周波数応答を示した図である。
図10図8の装置のエネルギー伝達比の周波数応答を示した図である。
図11図8の装置の製造方法の一工程を示した図である。
図12】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図13】本発明の実施形態に係る駆動信号配線方式を示した図である。
図14図12の装置の周波数に対するSPL測定結果を示した図である。
図15図12の装置のピークツーピーク電圧に対するSPL測定結果を示した図である。
図16】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図17】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図18図17の装置と同様の装置のFEM(有限要素法)シミュレーション圧力プロファイルのスナップ写真を示した図である。
図19図17の装置の周波数に対するイヤー(耳)カプラSPL測定結果を示した図である。
図20】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図21】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図22】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図23】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図24】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図25】本発明の一実施形態による仮想バルブの開放のタイミング整合(timing alignment)を示した図である。
図26】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の概略図である。
図27】本発明の一実施形態による仮想バルブの開放のタイミング整合を示した図である。
図28】異なる程度の非対称性を有する1つの動作周期内の全周期パルスを示した図である。
図29】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の上面図の概略図である。
図30図29の空気パルス発生装置の上面図の概略図である。
図31】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の上面図である。
図32図31の空気パルス発生装置の2組の変調(復調)駆動信号の波形を示した図である。
図33】本発明の一実施形態による空気パルス発生装置の上面図である。
図34】各構成素子の機能およびそれらの対応する周波数領域効果のシステム斜視図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の基本的な態様は、空気パルス発生装置に関し、より詳細には、変調手段および復調手段を備える空気パルス発生装置に関し、前記変調手段は、周波数fUCを有する超音波空気圧力波/変動(UAW)を生成し、UAWの振幅は、音声信号SSの電気的(アナログまたはデジタル)表現である、入力オーディオ信号SINに従って変調される。次に、この振幅変調された超音波空気圧力波/変化(AMUAW)は、前記復調手段により同期復調され、AMUAWに埋め込まれたスペクトル成分は、±n fUC(nは正の整数)だけシフトされる。ここで、nは、正の整数である。この同期復調の結果、音声信号SSに対応するAMUAWのスペクトル成分は、部分的にベースバンドに移され、その結果、可聴音声信号SSが再生される。ここで、振幅変調された超音波空気圧力波/変化AMUAWは、超音波搬送周波数fUCを有するキャリア成分に対応し、変調成分は、入力オーディオ信号SINに対応する。
【0010】
図1には、本発明の一実施形態による空気パルス発生(APG)装置100の概略図を示す。装置100は、入力(オーディオ)信号SINに応じて音響音を生成する音響生成装置として適用されてもよいが、これに限定されない。
【0011】
装置100は、装置層12およびチャンバ画定層11を有する。装置層12は、壁124L、124Rと、フラップ101、103、105、および107までエッチングされる薄膜層を支持する支持構造123R、123Lとを有する。一実施形態において、装置層12は、例えば、123L/Rおよび124R/Lを形成するためにエッチングされる厚さが250~500μmのSi基板を使用して、MEMS(小型電気機械システム)製造プロセスにより製造されてもよい。一実施形態では、このSi基板の上で、シリコンオンインシュレータSOIまたはPOLYオンインシュレータPOI層で構成された、典型的には厚さ3~6μmの薄層がエッチングされ、フラップ101、103、105および107が形成される。
【0012】
チャンバ画定層(「キャップ」構造とも称され/命名され得る)11は、一対のチャンバ側壁110R、110Lと、チャンバ天井117とを有する。一実施形態では、チャンバ画定層(またはキャップ構造)11は、MEMS製造技術を使用して製造されてもよい。このチャンバ画定層11と装置層12の間に、共振チャンバ115が形成される。
【0013】
換言すれば、装置100は、膜構造10とキャップ構造11とを有し、それらの間にチャンバ115が形成されていると見なされてもよい。膜構造10は、変調部分104と復調部分102とを含むものとして見ることができる。(変調)フラップ105および107を有する変調部分104は、チャンバ115内に超音波空気/音波を形成、作動するように構成され、空気/音波は、時間および空間の両方で変化する一種の空気圧力変化として見ることができる。一実施形態では、超音波空気/音響波または空気圧力変化は、超音波搬送周波数fUCを有する振幅DSB-SC(両側波帯抑圧搬送波)変調空気/音響波であってもよい。超音波搬送周波数fUCは、例えば、160kHzから192kHzの範囲内であってもよく、これは、人間の可聴音の最大周波数よりも有意に大きい。
【0014】
以降、空気波および音響波という用語は、相互互換的に使用する。
【0015】
(復調)フラップ101および103を有する復調部102は、変調部102と同期して動作するように構成され、変調部104によって生成されたDSB-SC変調音響波のスペクトル成分を±n×fUCだけシフトし、ここでnは正の整数であり、チャンバ115内の超音波空気波に従って、複数の空気パルスを周囲に向かって生成し、複数の空気パルスのベースバンド周波数成分(チャンバ115内の超音波空気波に従って復調部102により生成される)は、入力(オーディオ)信号SINとなり、または入力(オーディオ)信号SINに対応/関連する。複数の空気パルスの低周波数成分は、可聴スペクトル(例えば、20または30kHz未満)内にある複数の空気パルスの周波数成分を表す。本願では、ベースバンドは通常、可聴スペクトルと称されてもよいが、これに限定されない。
【0016】
換言すれば、音生成用途において、変調部104は、入力オーディオ信号SINに従って変調された空気波を形成するように作動されてもよく、復調部102は、変調部104と同期して動作し、入力オーディオ信号SINとして(または入力オーディオ信号SINに対応する/関連する)その低周波数成分を有する、複数の空気パルスを生成する。通常、fUC≧96kHz≒5×20kHzのような、fUCが人間の最高可聴周波数よりもはるかに高い音生成用途では、複数の空気パルスに対する自然な/環境的なローパスフィルタリング効果(壁、床、天井、調度品などの物理的環境、または音波などの高い伝搬損失、および外耳道、鼓膜、槌骨、キヌタ骨、アブミ骨のような人間の聴覚システムにより引き起こされる)により、聴取者が知覚するのは、入力オーディオ信号SINにより表される可聴音または音楽だけである。
【0017】
例示的に、図34には、変調(復調)動作の前後の信号の周波数スペクトルを示すことにより、変調(復調)動作の効果を概念的/概略的に示す。図34において、変調動作は、振幅変調された超音波音響/空気波UAWを生成し、音響信号SSの電気的(アナログまたはデジタル)表現である入力オーディオ信号SINに従って、W(f)として示されるスペクトルを有するSIN/SSのスペクトルは、図34においてS(f)として表される。Z(f)として示されるスペクトルを有する超音波パルスアレイUPA(複数のパルスを含む)を生成する同期復調動作は、超音波音響/空気波UAWのスペクトル成分を±n×fUC(nは整数)だけシフトする(ステップを含む)と見なすことができ、音響信号SSに対応する超音波空気波UAWのスペクトル成分は、部分的にベースバンドに搬送される。従って、Z(f)から分かるように、超音波パルスアレイUPAのベースバンド成分は、振幅変調されたUAW W(f)と比較して有意である。超音波パルスアレイUPAは、周囲に向かって伝搬する。自然/物理的な環境および人間の聴覚システムの固有のローパスフィルタリング効果により、音声信号SSに対応する結果として生じるスペクトルY(f)を再生することができる。
【0018】
正弦波搬送波を使用する従来のDSB-SC振幅変調とは異なり、W(f)は、±3×fUC、±5×fUC、およびより高次のfUCの高調波(図34には図示せず)における成分を有することが留意される。これは、本発明の変調の搬送波は、純粋に正弦波ではないからである。
【0019】
再度図1を参照すると、同期復調動作の一実施形態として、復調部102が作動され、変調された空気波のピークに対応する/整合された時間および位置に、開口112が形成されてもよい。換言すれば、変調された空気波が開口112の位置でピークに達する際、復調部102は、開口112もピークに達するように、作動してもよい。
【0020】
図1に示す実施形態では、復調部102は、側壁110Lと110Rの間の中心位置に開口112を形成し、これは、表面対表面または111L対111Rを有し、両者の間で(実質的に)λUCだけ離間し、フラップ101および103の先端が、側壁111Lおよび111Rから、または側壁表面111Lおよび111Rから、(実質的に)λUC/2だけ離れていることを意味する。ここでλUCは、超音波搬送周波数fUCに対応する波長を表し、すなわちλUC=C/fUCであり、Cは音速である。
【0021】
一実施形態では、復調部102は、超音波搬送周波数fUCに同期したバルブ開放速度で開口112を形成するように作動されてもよい。本発明において、バルブ開放速度が超音波搬送周波数fUCに同期するとは、通常、バルブ開放速度が超音波搬送周波数fUCに有理数を乗じた値、すなわち、fUC×(N/M)であることを意味する。ここで、NおよびMは整数である。一実施形態では、(開口112の)バルブ開放速度は、超音波搬送周波数fUCであってもよい。例えば、バルブ/開口112は、作動周期TCYごとに開くことができ、ここで作動周期TCYは、超音波搬送周波数fUCの逆数であり、すなわち、TCY=1/fUCである。
【0022】
また本発明において、変調(復調)部分102/104は、変調(復調)フラップ対を示すために使用される。また、開口112を形成する復調部(またはフラップ対)102は、仮想バルブとみなされ、特定のバルブ/復調駆動信号に従って(周期的に)開閉運動を行い、開口112を形成してもよい。
【0023】
一実施形態において、変調部104は、図1に示す圧力プロファイルP104および空気流プロファイルU104のように、共振チャンバ115内にモード2(または2次高調波)共振(または定在波)を実質的に生成してもよい。この点に関して、側壁表面111Lと111Rとの間の間隔は、超音波搬送周波数fUCに対応する全波長λUCを実質的に定め、すなわち、W115≒λUC=C/fUCである。さらに、図1に示した実施形態では、変調フラップ105/107の自由端は、側壁110L/110Rにより配置される。
【0024】
変調された空気波を生成する変調と開口112を形成する復調との間に、相互変調(またはクロスカップリング)が発生する可能性があり、生じる音質を劣化し得ることに留意する必要がある。音質を向上させるために、相互変調(またはクロスカップリング)を最小限に抑えることが望ましい。これを達成するため(すなわち、変調と復調との間のクロスカップリングを最小化するため)、変調フラップ105および107は、共通モード移動を有するように駆動され、復調フラップ101および103は、差動モード移動を有するように駆動される。変調フラップ105および107が共通モード移動を有するとは、フラップ105および107が同時に作動/駆動され、同じ方向に向かって移動することを意味する。復調フラップ101および103が差動モード移動を有するとは、フラップ101および103が同時に作動され、反対方向に動くことを意味する。さらに、一実施形態では、フラップ101および103は、(実質的に)同じ変位/大きさで、反対方向に向かって移動するように作動されてもよい。
【0025】
復調部102は、図1に示す復調部102によって形成された圧力プロファイルP102および空気流プロファイルU102として、共振チャンバ115内にモード1(または1次高調波)共振(または定在波)を実質的に生成してもよい。従って、復調部102は、W115≒λD_V/2のような、バルブ動作/駆動周波数fD_V(バルブ/復調-駆動信号に対応する)で作動する。ここで、λD_V=C/fD_Vであり、バルブ動作/駆動周波数は、超音波搬送周波数Fucの半分、すなわち、fD_V=fuc/2である。
【0026】
共通モード移動および差動モード移動は、変調(復調)駆動信号により、駆動できる。図2には、復調駆動信号S101、S103、および変調駆動信号SMの波形を示す。変調駆動信号SMは、変調フラップ105および107を駆動するために使用される。復調駆動信号(またはバルブ駆動信号)S101、S103は、それぞれ、復調フラップ101、103を駆動するために使用される。
【0027】
一実施形態では、変調駆動信号SMは、入力オーディオ信号SINに従って変調されるパルス振幅変調(PAM)信号とみなすことができる。さらに、従来のPAM信号とは異なり、信号SMの(定電圧に対する)極性は、1作動サイクル(周期)TCY内でトグル切り替えられる。一般に、変調駆動信号SMは、(定電圧に対して)交番極性を有するパルスを含み、パルスのエンベロープ/振幅は、入力オーディオ信号SINのAC(交流電流)成分と(実質的に)同じであるか、またはそれに比例/対応する。換言すれば、変調駆動信号SMは、パルス振幅変調信号を有し、または定電圧に対して交互の極性を有するPAM変調されたパルスを有するものと見なすことができる。図2に示される実施形態では、変調駆動信号SMのトグリング速度は、2×fucであり、これは、変調駆動信号SM内のパルスの極性が1作動周期TCY内で2回交番/トグルすることを意味する。
【0028】
復調駆動信号S101およびS103は、等しい振幅で(一定の/平均電圧に対して)反対の極性を有する2つの駆動パルスを含む。言い換えれば、特定の時間において、所与のS101が(一定の/平均電圧に対して)第1の極性を有する第1のパルスを含み、S103が(一定の/平均電圧に対して)第2の極性を有する第2のパルスを含む場合、第1の極性は、第2の極性とは反対である。図2に示されるように、復調駆動信号S101/S103のトグリング速度は、fucであり、これは、復調駆動信号S101/S103内のパルスの極性が、1つの動作周期TCY内で1回交番/トグリングすることを意味する。従って、変調駆動信号(SM)のトグリング速度は、復調駆動信号S101/S103のトグリング速度の2倍である。
【0029】
S101/S103の傾き(および関連する陰領域)は、電圧レベル間の遷移中のエネルギー再利用を表す簡略図である。なお、信号S101、S103の遷移期間は、重なっていることが留意される。エネルギー再利用は、フラップ101/Rの圧電アクチュエータのほとんどが容量性負荷である場合、LC発振器の特性を使用することにより実現されてもよい。エネルギー再利用概念の詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第11,057,692号が参照され得る。なお、圧電アクチュエータは、一実施形態として提供されており、これに限定されるものではないことに留意する必要がある。
【0030】
フラップ対102が差動的に駆動されることを強調するため、信号S101およびS103は、-SVおよび+SVで表されてもよく、これは、この対の駆動信号が同じ波形を有するものの、極性が異なることを示す。説明では、図2に示すように、-SVはS101に対するものであり、+SVはS103に対するものであるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、S101は+SVであり、S103は-SVであってもよい。
【0031】
別の実施形態では、DCバイアス電圧VBIASがあり、駆動信号S101=VBIAS-SV、S103=VBIAS+SVのような状況下では、VBIAS≠103であってもよい。そのような変形形態は、本開示の範囲内であると見なされる必要がある。
【0032】
さらに、図2には、変調駆動信号SMと復調駆動信号±SVの間のトグリング速度の違いを示す。変調駆動信号SMと復調駆動信号±SVとの間の相対的な位相遅延は、タイミング整合を意味し、これは、実際の要件に従って調整されてもよい。
【0033】
一実施形態では、信号SMおよび±SVを生成する駆動回路は、変調駆動信号SMと復調駆動信号±SVとの間に(相対)遅延を生成するように構成されたサブ回路を有してもよい。遅延を生成するサブ回路の詳細は、限定されない。既知の技術をサブ回路に組み込むことができる。サブ回路が遅延を生成してタイミング整合要件(後に詳述される)を満たすことができる限り、本発明の要件が満たされるため、これは本発明の範囲内である。
【0034】
フラップ101および103の先端は、実質的に同じ位置(側壁111Lと111Rとの間の中心位置)にあり、その位置では、実質的に同じ空気圧を受けることが留意される。また、フラップ101および103は差動的に移動する。従って、フラップ101および103の先端の動きは、アナログ差動OP増幅器回路の分野で知られている、共通モード除去と同様の共通モード除去挙動を有し、これは、復調フラップ101および103の先端の変位差、または|d101-d103|が、変調フラップ105および107によって形成される空気圧により、ほとんど影響を受けないことを意味する。
【0035】
共通モード除去または変調器-復調器分離は、図3により説明することができる。図3には、装置100の等価回路モデルから生成されたシミュレーション結果を示す。曲線d101およびd103は、それぞれ、フラップ101および103の先端の移動/変位を表す。図3から分かるように、d101およびd103は、変調フラップ105/107によって生成される音圧に起因してかなり大きく変動するが(P104)、図3のd101-d103により示される曲線によって表される差動運動は、(実質的に)一定のままである。すなわち、バルブ開口112の幅/間隙は、変調部分104が動作する際も一定のままである。換言すれば、変調器の動きは、復調器の機能および特性に対して無視できるほどの影響しかもたらさず、これが「変調器対復調器分離(modulator-to-demodulator-isolation)」が意味するものである。
【0036】
一方、復調器対変調器分離(demodulator-to-modulator-isolation)に関しては、フラップ101/103がチャンバ115内に1次高調波共振または定在波を生成するため、図1から分かるように、P102によってフラップ105およびフラップ107に加えられる圧力は、実質的に同じ大きさで反対の極性を有し、フラップ105およびフラップ107の動きに、同じ大きさであるが反対の極性の変化を生じさせる(P102による)。これは、同じ大きさであるが反対の極性で変化する2つの超音波(一方は105、他方は107)を生成する。これら2つの超音波は、バルブ開口112の上方の位置(図1に示される点線領域によって示される)まで伝搬すると、それらは1つの圧力に合体される。この「合流」の場所は、105および107の先端から等しい距離で、X軸またはX方向に沿った装置100の中心で生じるため、P102に誘起される変化は、相互に相殺/補償され、復調器/仮想バルブの動作の干渉から大きく解放された、正味の残余が生成される。
【0037】
例示的に、図4には、SINが10トーン等振幅試験信号(650~22kHz内であり、等しい対数スケール間隔を有する)であり、装置100の等価回路シミュレーションモデルが使用される条件下で、装置100から1メートル離れて測定されたSPL(音圧レベル)のシミュレートされた周波数応答がプロットされている。現シミュレーションでは、超音波搬送周波数は、fuc=192kHzに設定され、バルブ動作周波数は、fD_V=fUC/2=96kHzに設定される。
【0038】
復調器対変調器分離は、約96kHz(図4においてブロック矢印で示されている)付近に、無関係なスペクトル成分が存在しないことにより説明することができる。これは、高いレベルの分離を示す。
【0039】
結果として、これら2つのフラップ対(101/103対105/107)の動きの干渉は、共通モード(変調器上)に対する差動モード(復調器上)の直交/配置を通じて、最小化される。
【0040】
また、バルブが開いたままである時間の割合、すなわちデューティファクタは、装置100の出力に影響を及ぼす重要な要因である。駆動電圧S101およびS103の振幅を高めると、フラップ101および103の運動の振幅が増加し、これは、バルブ開口112の最大開放幅を増大させ、駆動電圧を上昇させることにより、バルブ開口のデューティファクタも上昇する。すなわち、駆動電圧S101、S103により、バルブ開口112のデューティファクタおよびバルブ開口112の最大開放幅/ギャップを決定することができる。
【0041】
前述の等価回路シミュレーションモデルの1つから生成される図5に示される例のように、バルブ開放のデューティファクタが50%に近づくと、V(開放)>0とラベル付けされた曲線として示される各バルブ開放の期間は、バルブ開口112(図1の点線領域によって示される)の上部の位置で振幅変調された超音波定在波の同じ半周期と重なる。バルブ開口112の開閉を、図5においてV(p_vlv)でラベル付けされた曲線として示されるチャンバ内定在波に同期させ、タイミング調整することにより、V(ep_vlv)でラベル付けされた曲線として示される、良好に形成された出力圧力パルスが生成される。
【0042】
図5において、V(d2)-V(d3)でラベル付けされた曲線は、フラップ101および103の変位の差、すなわちd101-d103を表し、V(開口)でラベル付けされた曲線は、仮想バルブ112の開放の度合いを表す。|V(d2)-V(d3)|>THであるとき、V(開放)>0であり、ここでTHは、フラップ101および103の厚さ、フラップ101と103との間のスリットの幅、境界層厚さなどのパラメータによって定義される閾値である。好適に形状化されたV(ep_vlv)は、高い対称性を有するV(p_vlv)とは異なり、V(ep_vlv)によって示されるパルスが高度に非対称であることを表してもよい。出力圧力パルスの非対称性は、空気パルス発生装置、または略してAPG装置、により生成される空気パルスの低周波数成分(すなわち可聴帯域の周波数成分)を示し、これはAPG装置にとって望ましい特徴である。非対称性が高いほど、空気パルスのベースバンド周波数成分が強くなる。図5の縮小図は、図6に示されており、図には1.68kHzのベースバンド音声信号のエンベロープに対応する、V(ep_vlv)の非対称性が示されている。本発明において、開口(112)は、フラップ(101)とフラップ(103)の変位の差が閾値より大きい場合、例えば、|V(d2)-V(d3)|>THであるとき、開放/形成され、または開放状態にあり、そうでないとき、閉止され、または閉止状態にある。
【0043】
さらに、最大出力は、|V(d2)-V(d3)|>THとして定義されるバルブ開放のデューティファクタが、50%またはそれよりわずかに大きいとき、例えば55~60%の範囲において生じることが観察されるが、これに限定されない。しかしながら、バルブ開放のデューティファクタが、80~85%のような、50%よりも十分に高いとき、チャンバ内超音波定在波の半周期よりも多くがバルブを通過し、異なる極性を有する定在波の部分が互いに相殺され、装置100からのより低い正味SPL出力が得られる。従って、通常、バルブ開放のデューティファクタを50%近くに維持し、典型的には50%~70%の範囲に維持することが望ましい(45%から70%の間の範囲のデューティファクタは、本発明の範囲内である)。
【0044】
デューティファクタに加えて、変調器対復調器分離を確実にするため、復調フラップ101/103の共振周波数fR_Vは、超音波搬送周波数fucから十分に逸脱することが提案され、これは別の設計因子となる。
【0045】
50%に等しいバルブ開放のデューティファクタの制約の下、フラップ101/103の任意の所与の厚さに対して、共振対駆動比(fR_V:fD_VまたはfR_V/fD_V)が高いほど、バルブがより広く開放され得ることが(等価回路シミュレーションモデルから)観察できる。装置100の出力は、バルブが開く最大幅と正の関係があり、従って、共振対駆動比を1より大きくすることが望ましい。
【0046】
しかしながら、fR_VがfUC±max(fSOUND)の範囲内にあるとき、フラップ101/103は、AM超音波定在波と共振し始め、超音波エネルギーの一部は、フラップ101/103の共通モード変形に変換される。ここで、max(fSOUND)は、入力オーディオ信号SINの最大周波数を表してもよい。フラップ101/Rのそのような共通モード変形は、フラップ101/103の上部の体積を変化させ、その結果、影響を受けた周波数範囲にわたって、バルブ開口112の近傍で、チャンバ105内の圧力の変動が生じ、SPL出力の低下が生じる。
【0047】
バルブ共振によって誘発される周波数応答変動を回避するため、(fUC±max(fSOUND))×Mの範囲外の共振周波数を有するフラップ101/103を設計することが好ましい。ここで、Mは、製造誤差、温度、高さなどの因子をカバーするための安全マージンであるが、これに限定されない。経験則として、通常、fR_V≦(fUC-20kHz)×0.9の場合のように、fUCより著しく低いか、またはfR_V≧(fUC+20kHz)×1.1のように、fUCより著しく高いfR_Vを有することが望ましい。20kHzは、人の最も高い可聴周波数としてよく受け入れられているため、20kHzが使用されることに留意する必要がある。HD/Hi-Resオーディオのような用途では、30kHzまたは40kHzがmax(fSOUND)として採用されてもよく、前述の式は、それに応じて修正され得る。
【0048】
また、w(t)およびz(t)は、振幅変調された超音波音響/空気波UAWおよび超音波パルスアレイUPA(複数のパルスを含む)についての時間の関数を表すと仮定される。開口112は、超音波搬送周波数fUCの開口率で周期的に形成されるため、r(t)として示され、r(t)=z(t)/w(t)として表すことができる、w(t)に対するz(t)の比の関数は、超音波搬送周波数fUCの開口率を有し、周期的である。換言すれば、z(t)は、時間領域におけるw(t)とr(t)との乗算、すなわちz(t)=r(t)・w(t)と見なすことができ、UAWに対して実行される同期復調動作は、時間領域におけるw(t)とr(t)との乗算と見なすことができる。これは、Z(f)が周波数領域におけるW(f)とR(f)の畳み込みと見なされ得ること、すなわち、Z(f)=R(f)*W(f)であり、ここで、*は畳み込み演算子を表し、UAWに対して実行される同期復調演算は、周波数領域におけるW(f)とR(f)との畳み込みと見なされ得ることを意味する。r(t)が周波数fUCのレートを有する時間領域において周期的であるとき、R(f)は、周波数領域において離散的であり、R(f)の周波数/スペクトル成分は、fUCにより等間隔に離間されることが留意される。従って、W(f)のR(f)との畳み込み、または同期復調動作は、W(f)(またはUAWのスペクトル成分)を±n×fUC(ここでnは整数)だけシフトするステップを有する/含む。ここで、r(t)/w(t)/z(t)とR(f)/W(f)/Z(f)は、フーリエ変換対を形成する。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態によるAPG装置200の概略図である。装置200は、装置100と同様であり、従って、同じ参照符号が使用される。装置100とは異なり、装置200は、さらに、包囲構造(エンクロージャ)14を有する。包囲構造14とキャップ構造11の間にチャンバ125が形成される。ベント113L/Rは、線135/137によって示されるように、超音波定常圧力波P104のノード上で、それぞれ、側壁111L/RからλUC/4に位置する天井117内に形成されることが留意される。
【0050】
図7におけるベント113L/Rの目的は、(112L/Rと113L/Rとの間の2本の破線の両方向矢印の曲線で示されるような)復調動作中に生成された空気流がチャンバ115から通気できるようにすることであり、これにより、チャンバ115の内側の平均圧力と周囲の外側の平均圧力との間の差が最小化され、チャンバ125の機能は、空気流によってチャンバ125に運ばれるスペクトル成分を妨害し、これらの空気流が追加の可聴音響信号を形成することを防止することである。ベント113L/Rを定常圧力波のノード上に配置することにより、fUCを囲むスペクトル成分がチャンバ115から出ることが防止され、復調によりUPA(超音波パルスアレイ)が形成され、所望のAPPS(空気圧パルススピーカ)効果が生成される。
【0051】
本発明において、通常、APPS効果を有するAPG装置とは、超音波搬送周波数でAPG装置によって出力される空気パルス内に埋め込まれたベースバンド周波数成分(特に可聴帯域の周波数成分)が、観察可能であるだけでなく、相応の強度も有することを表す。APPS効果を生成するAPG装置では、電気入力信号SINのスペクトルは、APG装置による複数の空気パルスの生成を介して、可聴スペクトル(搬送波周波数と比較して低周波数)のベースバンド内で音響的に再生されることになり、これは、音生成用途での使用に適する。APPS効果を通じて生成されるベースバンドの強度は、APG装置によって生成されるエアパルスの非対称性の量または程度に関連する。なお、非対称性については後述する。
【0052】
装置100または200の支持構造123Lおよび123Rは、(X軸に対して)平行で真っ直ぐな壁を有し、123Lと123Rとの間の空間/チャネルは、音響出口として機能することが留意される。FEM(有限要素法)を用いたシミュレーション結果では、周波数が350kHzを超えると、X方向に沿った横方向の定在波が123L/123Rの壁の間に形成され始め、出力が自己消滅し始めることが示されている。そのような横共振誘導自己無効化現象は、123L-123Rの壁の高さ(Z方向)にわたるエネルギー伝達比を低下させる。
【0053】
この問題を回避するため、ホーン形状の出口が提案される。例えば、図8は、本発明の実施形態によるAPG装置300の一部の概略図である。装置100と同様、装置300は、フラップ101および103を有し、これらは、支持構造123L”および123R”上にそれぞれ固定され、出口320を介して周囲環境に向かう複数の空気パルスを生成する開口112を形成するように構成される。直線状で平行な壁を有する装置100の支持構造123Lおよび123Rとは異なり、装置300の支持構造123L”および123R”の壁は斜めであり、X軸またはX方向に対して非直角な角度θを有する。ホーン形状の出口320が形成される。非直角な角度θは、実際の要求に応じて設計されてもよい。一実施形態において、非直角な角度θは、54.7°であってもよいが、これに限定されない。本発明において、ホーン形状の出口とは、一般に、出口寸法またはトンネル寸法が膜構造から周囲環境に向かって徐々に広くなる出口を表す。
【0054】
図9および図10には、それぞれ、フラップ101および103の8つの異なる変位に対する、装置100および300のエネルギー伝達比の周波数応答を示す。ここで、Dvv=kは、各フラップの先端の変位がkμMであり、2kμMの差動運動が生じることを意味する。図9および図10は、FEMを用いてシミュレーションされたものである。図9図10とを比較することにより、装置100は、周波数が170kHzを超えて上昇するとともに、いくつかのジャンプおよびディップを伴い、170kHzを超えてロールオフを開始するような、エネルギー伝達比を生成する。一方、装置300は、約120kHzを超えて上昇傾向を保持し、170kHzを超える周波数に対してより平滑な周波数応答を伴うエネルギー伝達比を生成する。これは、装置300のエネルギー伝達比の周波数応答(170kHz超)が、装置100のものよりもはるかに滑らかであることを意味し、このことは、超音波パルスレート(すなわち、超音波搬送周波数fUC)およびその高次高調波(例えば、n×fUC)で動作するAPG装置にとって有益である。さらに、装置300は、装置100によって生成されるものよりも約5倍高いエネルギー伝達比を生成する。従って、図9および図10から、ホーン形状の出口がAPG装置に対してより良好なエネルギー伝達比をもたらすことを説明することができる。
【0055】
図11には、2つの異なる角度で壁をエッチングする2段階エッチング/製造方法の実施形態を示す。最初に、123R”/123L”の壁は、(図11(b)に示されるように)テーパ角度でエッチングされ、次に、テーパ壁は、スプレーコーティング方法を使用して、(図11(c)に示されるように)フォトレジストまたはスピンオン誘電体によって覆われる。次に、フォトレジストまたはスピンオン誘電体は、(図11(d)に示すように)フォトリソグラフィ法によってパターニングされ、その後、(図11(e)に示すように)124Lおよび124Rの壁が直角にエッチングされる。上述した製造方法は、説明目的に過ぎず、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0056】
図12は、本発明の一実施形態によるAPG装置400の概略図である。装置400は、米国特許出願第17/553,806号の図7から変更され、本発明の図1に示される装置100と同様である。装置100とは異なり、装置400は、フラップ対102のみを含む(フラップ対104は含まない)。フラップ対102は、変調動作(超音波搬送波周波数fUCで振幅変調された空気圧変動を形成すること)、および復調動作(周波数fUCで振幅変調された超音波搬送波に同期して開口112を形成し、前記振幅変調された超音波空気圧力変化のエンベロープに従って空気パルスを生成すること)の両方を実行するように構成される。
【0057】
図12において、U104およびP104は、変調駆動信号SMに応答してフラップ対102によって形成される圧力プロファイルおよび空気流プロファイルを表し、U102およびP102は、復調駆動信号±SVに応答してフラップ対102によって形成される圧力プロファイルおよび空気流プロファイルを表す。ここで、復調駆動信号は、±SVで表され、フラップ対102が復調動作を実行するために差動的に駆動される(復調駆動信号+SVおよび-SVが同じ大きさであるが反対の極性を有することを意味する)ことが強調される。例えば、上記S101および/またはS103は、-SVおよび/または+SVによって表されてもよい。
【0058】
換言すれば、変調器および復調器は、フラップ対102において/として、共同設置される。装置100と同様、装置400のフラップ対102の膜構造10は、変調を実行する共通モード移動だけでなく、復調を実行する差動モード移動を有するように作動される。
【0059】
すなわち、「変調動作」と「復調動作」は、同じフラップ対102により同時に行われる。これにより、図13に示すような、新たな駆動信号配線方式により、「変調動作」と「復調動作」の併置が実現される。装置400がフラップ101/103上に配置されたアクチュエータ101A/103Aを有し、アクチュエータ101A/103Aが上部電極および下部電極を有する場合、上部電極および下部電極の両方が、変調駆動信号SMおよび復調駆動信号±SVを受信してもよい。
【0060】
一実施形態では、アクチュエータ101A/103Aの一方の電極は、共通モードの変調駆動信号SMを受信し、他方の電極は、差動モードの復調駆動信号S101(-SV)/S103(+SV)を受信してもよい。例えば、図13に示すダイアグラム431および433には、図12に示す領域430の詳細を示す。ダイアグラム431および432に示されるように、アクチュエータ101A/103Aの下部電極は、共通モードの変調駆動信号SMを受信し、アクチュエータ101A/103Aの上部電極は、差動モードの復調駆動信号S101(-SV)/S103(+SV)を受信する。好適なバイアス電圧VBIASが、下部電極(ダイアグラム432に示す)または上部電極(ダイアグラム433に示す)のいずれかに印加されてもよく、バイアス電圧VBIASは、実際の要求に従って決定することができる。
【0061】
ある実施形態(図433に示される)では、アクチュエータ101A/103Aの一方の電極は、共通モードの変調駆動信号SMおよび差動モードの復調駆動信号S101(-SV)/S103(+SV)の両方を受信してもよく、他方の電極は、適切にバイアスされる。ダイアグラム433に示される実施形態では、下部電極は、共通モードの変調駆動信号SMおよび差動モードの復調駆動信号S101(-SV)/S103(+SV)を受信し、上部電極は、バイアスされる。
【0062】
図13に示される駆動信号配線方式では、一方のアクチュエータ(例えば、101A)の印加信号が-SM-SVであり、または-SM-SVを有し、他方のアクチュエータ(例えば、103A)の印加信号が-SM+SVであり、または-SM+SVを有するという目標を達成する(VBIASは考慮されない)。駆動信号配線方式は、実際の状況/要件に応じて修正または変更されてもよいことが留意される。フラップ対102に印加される2つの印加信号間の共通モード信号成分が変調駆動信号SM(+VBIAS)を有し、フラップ対102に印加される2つの印加信号間の差動信号成分が復調駆動信号SVを有する限り、本発明の要件は満たされ、本発明の範囲内に属する。ここで(または一般に)、2つの任意の信号aとbとの間の共通モードの信号成分は、(a+b)/2として表される一方、2つの任意の信号aとbの間の差動モードの信号成分は、(a-b)/2として表されてもよい。
【0063】
さらに、(駆動信号SMの結果としての)変調動作と(駆動信号±SVの結果としての)復調動作との間のクロスカップリングを最小限に抑えるため、一実施形態では、フラップ101および103は、それらの機械的構造、寸法、および電気的特性の両方において鏡面/対称の対に構成されることが留意される。例えば、フラップ101のカンチレバー長さは、103のカンチレバー長さと等しくする必要があり、フラップ101の膜構造は、フラップ103と同じにする必要があり、仮想バルブ112の位置は、フラップ101およびフラップ103の2つの支持壁110の間の中心とし、またはそこから等間隔に離間される必要があり、フラップ101上に堆積されるアクチュエータパターンは、フラップ103のパターンをミラー投影する必要があり、フラップ101および103の上に堆積されるアクチュエータに対する金属配線は、対称にする必要がある。ここで、鏡面/対称の対(またはフラップ101および103が鏡面/対称である)のため、いくつかの項目が名称化されるが、これに限定されない。
【0064】
図14には、IEC711閉塞耳エミュレータにおける装置400の物理的実施形態の周波数応答測定結果の組を示す。ダイアグラム431に示される駆動方式を用いて装置400が駆動され、下部電極用の変調駆動信号SMのためのVrmsは、6Vrmsであり、上部電極用の復調駆動信号±SVのためのVpp(ピークツーピーク電圧)は、5Vppから30Vppで掃引され、GRAS RA0401イヤーシミュレータが、音響結果を測定するために使用される。装置400の作動周波数(すなわち、超音波搬送周波数fUC)は、160kHzであり、装置寸法は、それに応じて設計される(例えば、C=336m/sの場合、W115≒λUC=C/fUC≒2.10mm)。図14から分かるように、装置400は、低周波数帯域で高いSPLの音を生成することができる(100Hz未満の周波数に対して少なくとも99dB)。
【0065】
さらに、図15には、図14に示した装置400の測定結果の解析を示す。図15では、図14の100Hz(太い破線)および19Hz(太い実線)におけるSPLがVvtop(Vpp)に対してプロットされており、ここでVvtop(Vpp)は、接続図431に示されるように、上部電極に印加される復調駆動信号のピーク同士の間電圧である。図14および図15から、Vvtopが増加するにつれて、SPLが増加することがわかる。また、装置100の等価集中回路モデルのシミュレーション結果においても、(バルブ駆動または)復調駆動信号の振幅が増加するにつれて、SPLが増加することが示されている。従って、本発明の空気パルス発生装置により生成される音の音量は、復調駆動信号の振幅を介して制御され得ることがわかる。
【0066】
図14および図15からの結果に基づき、変調器-復調器共配置の概念が検証され、装置400により実行される変調(振幅変調された超音波空気圧力変化を形成する)および復調(非対称空気パルスを生成するように同期して開口を形成する)では、APPS効果が好適に生成されることを意味すると結論付けることができる。従って、チャンバ幅(例えば、装置100のW115)を縮小することが可能となってもよい。
【0067】
例えば、図16は、本発明の一実施形態によるAPG装置500の概略図である。装置500は、装置400と同様であり、フラップ対102は、図13に示す駆動方式のうちの1つを介して駆動されるが、これに限定されない。装置400と比較して、装置500のチャンバ幅W115’は、半分に減少している。一実施形態では、装置500のチャンバ幅W115’は、λUC/2であってもよい。
【0068】
さらに、図12の115または図16の115’のようなチャンバ内の定在波は必要ではなく、これは、チャンバ幅(W115)がλUCまたはλUC/2である(に関連する)必要がなく、側壁111R/111R’と111L/111L’との間で、平面波を形成/維持/反射する必要がないことを意味する。チャンバの形状を変更して、他の要因を最適化することは、自由/柔軟であり、例えば、音生成効率を高めるためにチャンバの長さを低減することができ、これは、装置の面積(mm2)当たりのSPLによって評価することができる。
【0069】
図17は、本発明の一実施形態によるAPG装置600の概略図である。装置600は、サブアセンブリ610および640を有してもよい。一実施形態において、サブアセンブリ610および640は、既知のMEMSプロセスを介して製造されてもよく、ドライフィルムまたは他の適切なダイ取り付け材料/方法のような接合材料または接着材料を使用して、層620を介して互いに接合されてもよい。サブアセンブリ610それ自体は、フラップ対102または膜構造10を含むAPG装置(図26および関連する段落で後に詳述される)として見ることができる。サブアセンブリ640は、キャップ構造として見てもよい。
【0070】
装置500と同様、装置600は、図13に示す駆動方式のうちの1つを介して駆動される、フラップ101および103を有するフラップ対102を有するが、これに限定されない。装置600のフラップ対102は、超音波搬送周波数fUCを有する振幅変調超音波空気圧力変化を形成し、超音波搬送周波数fUCと同期した速度で開口112を形成し、超音波空気圧力変化に従って、出口を介し周囲に向かって、複数の空気パルスを生成するように作動される。
【0071】
装置500とは異なり、装置600内には導管630が形成される。導管630は、仮想バルブ112(フラップ101と103との間のスリット)の上方の空気体積を外部環境に接続する。導管630は、チャンバ631、通路632および出口633(またはゾーン631乃至633)を有する。チャンバ631は、膜構造10とキャップ構造(サブアセンブリ)640との間に形成される。通路632および出口633は、キャップ構造(サブアセンブリ)640内に形成される。
【0072】
チャンバ631は、半閉塞圧縮チャンバとみなすことができ、圧縮チャンバ631内の空気圧は、共通モードの変調駆動信号SMに応答して、圧縮または希薄化されてもよく、超音波空気圧力変化/波が生成され、これがオリフィス613を介して通路632に直接供給されてもよい。通路632は、導波管としての役割を果たし、その形状および寸法は、ゾーン/チャンバ631内で生成された圧力変動/パルスが効率的に外方に伝搬できるように最適化される。出口633は、反射/偏向を最小限に抑制にし、周囲に対する音響エネルギー結合を最大化するように構成される。これを達成するため、出口633のトンネル寸法(例えば、X方向の幅)は、周囲に向かって徐々に広くなり、出口633は、ホーン形状を有してもよい。
【0073】
一実施形態では、開口112(フラップ対102または膜構造10と等しい)と表面650との間の導管630の長さ/距離L630は、(実質的に)fUCに対応する4分の1波長λUC/4(例えば、±10%の公差を有する)であってもよい。例えば、fUC=192kHzの場合、L630は、450μmであってもよいが、これに限定されない。(再度図16を参照すると)空気圧力波(空気圧力変化の一種として)がX方向に沿って、装置500のチャンバ115’(または装置100内のチャンバ115)内を伝搬し、仮想バルブ(開口)112と側壁表面111L’/111R’との間の距離がλUC/4であることが観測されることが留意される。図17では、装置600は、Z方向と整合するように空気波伝搬経路を90°だけ折り畳み/回転させ、空気波または空気圧力パルスがZ方向を介して周囲に向かって直接放出されると見なされてもよい。
【0074】
図18には、本発明の一実施形態による、装置600と同様の装置のFEMシミュレーションされた圧力プロファイルのスナップ写真を示す。図18において、補助的な矢印は、圧力値の極性/符号を表すために提示される。装置600と図18に示す装置との違いは、チャンバ631と通路632との間の境界面で、サブアセンブリ640に面取り部635が追加され、空気流の乱れが最小限に抑制されていることである。図18において、ゾーン631内の圧力は、約+500Paであり、633に近いゾーン632内の圧力は、約-500Paである。最も明るいゾーンは、圧力ノード平面を提供する。
【0075】
ゾーン632内のノード平面は、波伝搬の適切な形成を示し、ノード平面632と装置の外側のノード平面との間の空間/距離は、約1.2*λ/2(ここで、λ=346(m/s)/192(kHz))であり、これは、λ/2に近い(かつそれよりわずかに大きい)ことが留意される。これは、音速での中断されない圧力波伝播が存在することを意味する。換言すれば、図18に示すように、装置600の膜構造により生成された圧力パルスまたは空気波は、周囲に向かって放射される。
【0076】
図19には、物理的に実施された装置600の周波数に対するIEC711閉塞耳カプラSPL測定の結果を示す。20Vppおよび15Vppを有する復調駆動信号±SVに対応する結果がプロットされている。また表1において、最大SPLを生成するための装置400および600のパラメータが比較される。
【0077】
【表1】
図14図19および表1からわかるように、装置600は、より低い入力振幅で装置400よりもわずかに高いSPLを達成することができ、同時にダイサイズを40%低減することができる。これは、導管630を有する装置600は、消費される電力および占有されるシリコンの空間/面積の両方の点で、より効率的であることを意味する。
【0078】
一般に、チャンバ631の幅W631は、λUC/2よりも著しく小さく、例えば、装置600の例では、W631≒570μMであり、λUC/2≒900μMである。ゾーン631がチャンバ圧縮を実行するためには、チャンバ631の寸法は、λUCよりも十分に小さくする必要がある。一実施形態では、チャンバ631の高さH631は、λUC/5未満、すなわち、H631<λUC/5であってもよい。チャンバ631の幅(すなわち、X方向の寸法)は、膜構造10から通路632に向かって、階段状またはテーパ状に狭くなっていてもよいことが留意される。これらの場合は、いずれも本発明の範囲に属する。
【0079】
図20は、本発明の一実施形態によるAPG装置700の概略図である。装置600と同様、装置700は、サブアセンブリ710および740を有し、その中に形成される導管730を有する。サブアセンブリ710は、MEMSプロセスにより製造されてもよく、APG装置として見なされてもよい。サブアセンブリ710内にチャンバ705が形成される。サブアセンブリ710は、それ自体、APG装置であってもよく、米国特許第11,172,310号に開示される圧搾モード動作と、第11,043,197号に開示される仮想バルブと、図13に示される駆動スキームとの組み合わせとして見ることができる、ここで、第11,172,310号および第11,043,197号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
導管730は、チャンバ731と、通路/導波管732と、ホーン形状の出口733(またはゾーン731乃至733)とを有し、仮想バルブ112の下側の空気体積を外側の周囲雰囲気に接続する。装置600とは異なり、サブアセンブリ740は、3D印刷法、精密射出成形法、スタンピング等のような技術を介して形成/製造されてもよい。通路/導波管732は、サブアセンブリ740のキャップ上にエッチングされたオリフィス713である第1の区画と、サブアセンブリ710内に形成された第2の区画とを有し、両者の間には、外乱を最小限にするための面取り735が追加されてもよい。チャンバ705および731は、重なり合っている。フラップ101および103により生成される圧力変動/波は、通路/導波管732に直接供給される。
【0081】
図21は、本発明の一実施形態によるAPG装置800の概略図である。装置800は、サブアセンブリ810および840を有する。サブアセンブリ810は、装置500と同じまたは類似の構造を有してもよく、これは、MEMSプロセスにより製造することができ、APG装置として見ることができ、図13に示す方式の1つによって駆動されるフラップ101および103を有してもよい。仮想バルブ(開口)112が形成される。サブアセンブリ840は、3D印刷法、精密射出成形法、精密スタンピング法のような技術を介して、形成/製造されてもよい。サブアセンブリ810は、変調(復調)動作を介して、複数の空気流パルスを生成することが留意される。
【0082】
仮想バルブ112の下の空気容積を周囲の外部環境に接続する導管830は、装置840内に形成される。導管830は、(圧縮)チャンバ831と、通路/導波管832と、ホーン形状の出口833(またはゾーン631乃至633)とを有する。圧縮チャンバ831は、複数の空気流パルスを複数の空気圧パルスに変換するように構成される。具体的には、チャンバ831は、圧力パルスΔPn∝P0_n・ΔMn/M0_n(式1)を生成し、ここで、M0_nは、パルスサイクルnの開始前のチャンバ831内の空気質量であり、ΔMnは、パルスサイクルnの空気流パルスに関連する空気質量である。式1は、空気流パルスを空気圧パルスに変換することを表し、変換された空気圧パルスは、通路/導波管832内に伝搬する。一実施形態では、ゾーン831内のサブアセンブリ840は、真ちゅうマウスピース状の断面プロファイルを有してもよい。
【0083】
通路/導波管832は、圧縮チャンバ831に接近した、整合した、またはその±15%以内であるインピーダンスを有し、ゾーン831内で生成された圧力パルスの周囲に向かった外向きの伝搬効率が最大化されてもよい。一実施形態では、伝搬効率は、通路832の断面積を適切に選択することにより、最適化されてもよい。
【0084】
図21に示す実施形態では、出口833のトンネル寸法(例えば、X方向の幅)は、ホーン形状が形成されるように、区分的(piece-wise)線形態様(ここでθ1<θ2)に従って、周囲に向かって徐々に広くなる。出口のホーン形状は、実際の仕様に従って設計されてもよいことが留意される。出口のトンネル寸法は、多項式態様、純線形態様、区分的線形態様、放物線態様、指数関数態様、双曲線態様等に従って広げることができるが、これらに限定されない。出口のトンネル寸法が周囲に向かって徐々に広くなる限り、本発明の仕様は満たされ、これは本発明の範囲に属する。
【0085】
ゾーン831においてチャンバ圧縮を実行するため、チャンバ/ゾーン831の寸法は、作動周波数fUCに対応する波長λUCよりも十分に小さくすることが提案される。例えば、fUC=160kHzでλUC=(346/160)=2.16mmの実施形態の場合、高さH831は、λUC/10~λUC/60の範囲(例えば、H831=λUC/35=62μm)であってもよく、幅W815は、λUC/5~λUC/30の範囲(例えば、115μm乃至350μmの範囲のW815)であってもよいが、これに限定されない。
【0086】
膜構造10は、空間の容積を、一方の側の共振チャンバ805と他方の側の圧縮チャンバ831とにサブ分割し、この再分割の性質により、チャンバ805およびチャンバ831の空間から観測されるような、フラップ101および103の共通モード移動による変位は、同じ大きさであるが、方向/極性が逆になることが留意される。換言すれば、フラップ101および103の共通モード移動とともに、押し引き(プッシュプル)の動作が形成され、そのような押し引きの動作は、フラップ101および103にわたる圧力差を増加させ(例えば、2倍にし)、従って、仮想バルブ112が開放された際に、空気流が高められる。
【0087】
具体的には、体積V1を有する圧縮チャンバ831および体積V2を有する共振チャンバ805に対して、体積差DV(DV<<V1,V2と仮定)をもたらす膜/フラップの動きは、ΔPV1=1-V1/(V1-DV)=-DV/(V1-DV)≒-DV/V1としてのV1における圧力変化、およびΔPV2=1-V2/(V2+V)=DV/(V2+DV)≒DV/V2としてのV2における圧力変化を引き起こす。2つの体積の間の圧力差は、ΔPV2-ΔPV1=DV/(V2+DV)+DV/(V1-DV)であってもよい。V1≒V2≒Vaのとき、ΔPV2-ΔPV1≒DV/(Va+DV)+DV/(Va-DV)=DV・2Va/(Va2-DV2)≒2・DV/Va≒2・ΔPV2であり、これは、プッシュプル動作が、フラップ101および103によって分離された2つのサブ空間の間の圧力差を2倍にできることを意味する。
【0088】
図22は、本発明の一実施形態によるAPG装置900の概略図である。装置900は、サブアセンブリ910および940を有する。サブアセンブリ910は、MEMSプロセスによって製造されてもよく、APG装置と見なされてもよい。サブアセンブリ940は、3D印刷によって製造されてもよい。また、装置700またはサブアセンブリ710と同様、サブアセンブリ940は、米国特許第11,172,310号に開示されている圧搾モード動作、米国特許第11,043,197号に開示されている仮想バルブ、および図13に示されている駆動方式の組み合わせとして見なされてもよい。装置900では、圧搾モード動作チャンバ905と圧縮チャンバ931とが分離されているが、装置700では、圧搾モード動作チャンバおよび圧縮チャンバは、チャンバ731として統合されている。
【0089】
サブアセンブリ810およびサブアセンブリ910の効果は、空気流パルス発生の場合と似ているが、それらの動作原理は異なる。サブアセンブリ810は共振を利用するのに対して、アセンブリ910は、膜(フラップ101、103)の動きによって生じる圧搾モード動作チャンバ905の圧縮および希薄化を利用する。従って、チャンバ幅W905は、もはやλUCとのいかなる関係も満たす必要はなく、従って、チャンバ905のサイズは、実用的/所望の程度に縮小されてもよい。
【0090】
図23は、本発明の一実施形態によるAPG装置A00の概略図である。共振は必要ではないため、チャンバ905のような、チャンバの矩形断面の制限を排除することができ、圧力波の発生または周囲への波の伝播を最適化するための形状がよりフレキシブルとなる。例えば、チャンバA05またはサブアセンブリA40は、真ちゅう製のマウスピース状の断面を有してもよい。
【0091】
図23の装置A00の別の態様は、「直接圧力結合」である。装置900の場合のように最初にオリフィス913を通過する代わりに、装置A00の圧縮チャンバA05内で生成された圧力波は、導管A32に直接結合され、その後出口A33を介して周囲に放出される。圧縮チャンバと導管/出口との間のそのような直接結合は、オリフィス913により生じる損失を排除し、その結果、装置900を上回る有意な効率改善が生じる。
【0092】
図24は、本発明の一実施形態によるAPG装置B00の概略図である。装置B00は、装置A00と同様である。装置A00とは異なり、装置B00は、さらに(キャップ)構造B11を有し、キャップ構造B11と膜構造10との間にチャンバB05が形成される。膜構造10の一方の側に形成されるチャンバA05と、膜構造10の他方の側に形成されるチャンバB05とを用いて、プッシュプル動作が実施されてもよく、これにより、空気流パルスが強化されてもよい。
【0093】
サブアセンブリ810および910により生成された空気パルスは、空気流パルスと見なされてもよく、サブアセンブリ840および940は、トランペット状の断面プロファイルを有する空気流-空気圧変換器と見なされてもよいことが留意される。一方、サブアセンブリ610、710、A10、およびB10により生成される空気パルスは、空気圧パルスと見なされてもよく、これにより、復調された/非対称の空気圧パルスが直接形成され、装置800および900よりも効率的であってもよい。
【0094】
また、内部に導管が形成されたサブアセンブリまたはトランペット状の断面プロファイルを有する導管を有するサブアセンブリは、これに限られるものではないが、本出願人によって出願された米国特許第10,425,732号、第11,172,310号などに開示されているAPG装置、または第8,861,752号のような他の装置に適用されてもよい。
【0095】
図25には、本発明のAPG装置の仮想バルブ(VV)112の開放のタイミング整合の図を示す。図25において、実線の曲線は、変調駆動信号SMによって生成されるフラップ共通モード移動を表し、背景の暗さは、仮想バルブに対応する音響抵抗を表す。より暗い陰影は、より高い抵抗(VV閉止、チャンバ内の体積が周囲から切断される)を意味し、より明るい陰影は、より低い抵抗(VV開放、チャンバ内の体積が周囲に接続される)を意味する。
【0096】
図25(a)では、仮想バルブ(VV)112の開状態のタイミングは、チャンバ内の圧力の最大値(第1のピーク)が達成されるように合わされ、これは、典型的にはフラップがそれらの最も正の(第1のピーク)共通モード変位に到達するわずか前にある。一方、仮想バルブ112の閉状態のタイミングは、チャンバ内の圧力の最小値(第2のピーク)が達成されるように合わされ、これは、典型的にはフラップがそれらの最も負の(第2のピーク)共通モード変位に到達するわずか前にある。VV112の最大開口がチャンバ内の圧力の第1のピークに位置合わせされる、図25(a)に示されるタイミング整合は、空気流パルスのパルス振幅を最大化するためのものであり、これは、装置100乃至500(チャンバを有するが、導管が形成されていない)に好適であってもよい。
【0097】
一方、図25(b)では、仮想バルブ112の開状態のタイミングは、自動車産業におけるガス/ピストンエンジンのバルブタイミングに示唆されるように、第1の方向に向かって移動する膜(フラップ)の共通モード移動の最大速度に整合される一方、仮想バルブ112の閉状態のタイミングは、第1の方向と反対の第2の方向に向かって移動する膜(フラップ)の共通モード移動の最大速度に整合される。第1の方向は、膜構造から周囲に向かう方向である。図25(b)に示されるタイミング整合は、空気流パルスの体積を最大化することであり、これは、装置600、または装置700乃至900、A00、およびB00(その中に形成される導管を有するチャンバ)に好適であってもよい。
【0098】
図26は、本発明の一実施形態によるAPG装置C00の概略図である。装置C00は、先に示したAPG装置と同様であり、フラップ101および103を有する。フラップ101および103は、図13に示される駆動方式により駆動されてもよい。
【0099】
これらの装置とは異なり、装置C00はキャップ構造を備えていない。前述のAPG装置と比較して、装置C00は、より単純な構造を有し、より少ないフォトリソグラフィエッチングステップで十分であり、複雑な導管製作ステップが排除され、2つのサブ部材またはサブアセンブリを一緒に結合する必要性が回避される。装置C00の製造コストは、大幅に削減される。
【0100】
圧縮されるキャップ構造の下にチャンバが形成されていないため、装置C00によって生成される音圧は、主にフラップ(101および103)の移動の加速から生じる。(復調駆動信号±SVに応答した)仮想バルブ112の開放のタイミングを、(変調駆動信号SMに応答した)フラップ101および103の共通モード移動の加速のタイミングに整合させることにより、装置C00は、非対称空気(圧力)パルスを生成することができる。
【0101】
フラップ101および103を囲む空間は2つのサブ空間に分割されることが留意される。1つはZ>0、すなわち+Zサブ空間であり、1つはZ<0、すなわち-Zサブ空間である。フラップ101および103の任意の共通モード移動に対して、1対の音響圧力波が生成され、1つはサブ空間+Z内にあり、1つはサブ空間-Z内にある。これらの2つの音響圧力波は、同じ大きさであるが反対の極性である。その結果、仮想バルブ112が開にされると、仮想バルブ112の近傍における2つの空気体積間の圧力差は、互いに中和される。従って、差動モード移動のタイミングがそのピークに達するとき、すなわち、タイミングVV112がその最大開口に達するタイミングは、そのピークに到達する共通モード移動の加速のタイミングに合わされ、共通モード移動によって生成されるはずの音圧は、仮想バルブ112の開口により抑制/除去され、フラップ101および103の2つの対向する側での2つの音圧間で自動中和が生じる。ここで、2つの音圧は、同じ大きさであるが反対の極性を有する。これは、仮想バルブ112が開かれた際、装置C00が(ほぼ)正味0の空気圧を生成することを意味する。従って、仮想バルブ112の開放期間が、共通モードフラップ移動の加速の(2つの)極性の1つの期間と重複すると、装置C00は、非対称の高い、単一端(SE)またはSEのような空気圧波形/パルスを生成し得る。
【0102】
本発明において、SE(のような)波形とは、あるレベルに対して(実質的に)単極性であることを意味し得る。SE音響圧力波は、周囲圧力(例えば、1ATM)に対して(実質的に)単極である波形を表してもよい。
【0103】
図27には、本発明の一実施形態による仮想バルブ(VV)の開放のタイミング整合の図を示す。図27に示すタイミング整合方式は、装置C00に適用されてもよい。図27(a)において、実線/破線/点線の曲線は、変調駆動信号SMに応答する膜(フラップ101および103)の共通モード移動の変位/速度/加速度を表し、図25と同様、背景の濃さは、VV112の開閉動作によって生じる音響抵抗を表す。説明のため、図27(a)の膜/フラップ運動の波形は、一定の振幅を有する正弦波であると仮定され(または近似的にプロットされ)、速度/加速度波形は、変位波形の1次/2次導関数である。図27(a)に示されるように、ピークVVの開放のタイミングは、前述のように、第1の方向に向かう共通モード膜/フラップ移動の第1のピーク加速度のタイミングに整合され、そのようなタイミング整合の結果、サブ空間+Zおよび-Zで生じる2つの音響圧力波の間で自動中和が生じ、図27(b)のSE空気圧波形の平坦部分として示されるように、正味の音響圧力が抑制される。
【0104】
また、図27(a)に示されるように、VVが閉止されるタイミングは、第2の方向に向かう共通モード膜/フラップ移動の第2のピーク加速度のタイミングに整合され、第2の方向は、第1の方向と反対である。VVは、第2のピーク加速度の間/付近で閉であるため、フラップ101および103の第2のピーク加速度によって生成される音圧は、フラップ101および103から遠ざかるように放射することができ、その結果、図27(b)のSE空気圧波形の正弦半波部分により示されるような、極めて非対称な音圧波が生じる。
【0105】
仮想バルブ112の開放は、音響圧力パルスの強度/振幅を決定するのではなく、「正味0に近い圧力」(または自動中和)の効果がどの程度強いかを定めることが留意される。仮想バルブ112の開放が広いとき、「正味0の圧力」の効果は強く、自動中和が完全となり、非対称性は、強く/明確となり、強い/顕著なベースバンド信号またはAPPS効果が得られる。逆に、仮想バルブ112の開放が狭いとき、「正味0の圧力」の効果は弱く、自動中和は不完全であり、非対称性が低下する結果、弱いベースバンド信号またはAPPS効果が生じる。
【0106】
FEMシミュレーションにおいて、装置C00は、20Hzで145dBのSPLを生成することができる。FEMシミュレーションから、装置C00によって生成されるSPLが、装置600によって生成されるSPL(20Hzで約157dBのSPL)よりも約12dB低い場合でも、同じ駆動条件下では、装置C00のTHD(全高調波歪み)は、装置600のTHDよりも10~20dB低くなることが観測される。従って、シミュレーションでは、装置C00、キャップ構造を有さないAPG装置、またはその中に形成されたチャンバを有さないAPG装置の有効性が検証される。
【0107】
チャンバ内のピーク圧力または共通モード膜移動のピーク速度/加速度のタイミングに整合されるVV開放のタイミングの記述は、±e%の誤差が許容可能であることを暗示的に示唆されることが留意される。すなわち、VV開放のタイミングがチャンバ内のピーク圧力または共通モード膜移動のピーク速度/加速度の(1±e%)に整合される場合も、本発明の範囲内であり、ここで、e%は、実際の仕様に応じて、1%、5%、または10%であってもよい。
【0108】
パルス非対称性に関し、図28には、異なる非対称性の度合いを有する全周期パルス(1作動周期TCY内)を示す。本発明では、p1に対するp2の比により、非対称性の度合いを評価してもよい。ここで、p1>p2であり、p1は、レベルに対して第1極性を有する第1の半周期パルスのピーク値を表し、p2は、レベルに対して第2極性を有する第2の半周期パルスのピーク値を表す。音響領域において、レベルは、周囲圧力(0音圧)または0音響空気流のいずれかの周囲条件に対応してもよく、本発明における空気パルスは、空気流パルスまたは空気圧パルスのいずれかを表してもよい。
【0109】
図28(a)には、r=p2/p1>80%である全周期パルスを示す。図28(a)に示す全周期パルスまたはr=p2/p1≒1の全周期パルスは、非対称性が小さい。図28(b)には、40%≦r=p2/p1≦60%の全周期パルスを示す。図28(b)に示す全周期パルス、またはr=p2/p1≒50%の全周期パルスは、非対称性のメジアン値を有する。図28(c)には、r=p2/p1<30%の全周期パルスを示す。図28(c)に示す全周期パルス、またはr=p2/p1→0の全周期パルスは、非対称性が高い。
【0110】
前述のように、非対称性の度合いが高いほど、APPS効果、および超音波空気パルスのベースバンドスペクトル成分が強くなる。本発明において、非対称性空気パルスとは、少なくとも非対称性のメジアン値を有する空気パルスを表し、r=p2/p1≦60%を意味する。
【0111】
本発明のAPG装置の復調動作は、変調動作によって生成される超音波空気圧力変化の振幅に従って、非対称空気パルスを生成することであることが留意される。1つの観点では、本発明の復調動作は、無線通信システムにおけるAM(振幅変調)包絡線検出器における整流器に類似している。
【0112】
無線通信システムでは、良く知られているように、無線AM(ノンコヒーレント)復調器の一種である包絡線検波器は、整流器およびローパスフィルタを有する。包絡線検出器は、その入力振幅変調信号に対応する包絡線を生成する。包絡線検出器の入力振幅変調信号は、通常高い対称性を有し、r=p2/p1→1である。整流器の1つの目標は、整流された振幅変調信号がr=p2/p1→0で高度に非対称となるように、対称振幅変調信号を変換することである。高度に非対称な整流されたAM信号をローパスフィルタリングした後、振幅変調された信号に対応する包絡線が回復される。
【0113】
対称超音波空気圧力変化(r=p2/p1→1)を非対称空気パルス(r=p2/p1→0)に変える本発明の復調動作は、AM復調器としての包絡線検出器の整流器に類似しており、ローパスフィルタリング動作は、自然環境および人間の聴覚システム(またはマイクロフォンなどの音感知装置)に残され、入力オーディオ信号SINに対応する音/音楽が回復され、聴取者によって知覚され、または音感知機器によって測定され得る。
【0114】
APG装置の復調動作にとって、非対称性を生成することは重要である。本発明では、パルス非対称性は、超音波空気圧力変化を生成する膜(フラップ)移動に整合される、開放の適切なタイミングに依存する。図25および図27に示されるように、異なるAPG構成は、タイミング整合の異なる方法を有する。換言すれば、開口112を形成するタイミングは、APG装置によって生成される複数の空気パルスが非対称となるように指定される。
【0115】
非対称空気パルスを生成するAPG装置は、冷却、乾燥または他の機能を有し得る、空気ポンプ/移動用途にも適用されてもよい。
【0116】
さらに、適切なセルおよび信号経路配置によって電力消費を低減することができる。例えば、図29には、本発明の一実施形態によるAPG装置D00の上面図を示し、図30には、図29に示されるA-A’線に沿った装置D00の断面図を示す。装置D00は、アレイ状に配置されたD01~D08セルを有する。各セル(D0x)は、前述のAPG装置(例えば、400~C00)のうちの1つであってもよい。図30において、キャップ構造およびその中に形成された導管を有するサブアセンブリは、簡略化のために省略されている。装置D00内の全てのフラップが駆動信号方式431により駆動され、上部電極は、信号+SVまたは信号-SVのいずれかを受信し、下部電極は、SM-VBIASを受信すると仮定される。
【0117】
図29において、Y方向に沿って細長い長方形は、フラップまたはフラップ上に配置されたアクチュエータの上部電極を表す。背景の陰影は、アクチュエータの下部電極を表し、またはアクチュエータの下部電極が電気的に接続されていることを表してもよい。
【0118】
装置D00では、信号-SVを受信するフラップ(例えば、101)と、信号+SVを受信するフラップ(たとえば、103)とが空間的にインターリーブされる。例えば、セルD01のフラップ103が信号+SVを受信する際、セルD02のフラップ101は、信号-SVを受信するように提案される。これは、信号+SV、-SVが極性をトグルする際、または信号+SV、-SVの遷移期間中に、下部電極を通って容量性負荷の(放電)充電電流がX方向に流れ、下部電極の実効抵抗RBT,P(ここで、Pは並列電流の流れを表す)が、L/W≪1のため低くなり、装置D00の電力消費が低くなるからである。ここで、L/Wは、(放電)充電電流の観点からのチャネル長/幅を表す。
【0119】
一方、駆動信号-SV、+SVが{+SV,-SV}、{-SV,+SV}、{+SV,-SV}、{-SV,+SV}、{+SV,-SV}、{-SV,+SV}、{+SV,-SV}、{-SV,+SV}(図29には図示せず)のパターンで配線される場合、ここで、{…,…}は、1つのセルD0xの差動駆動信号の対を示し、負荷(放電)充電電流はY方向であり、下部電極の実効抵抗RBT,S(ここで、Sは直列電流の流れを表す)は、十分に大きくなり(すなわち、L/W≫1であるため、RBT,S≫RBT,P)、そのような方式の電力消費は、より高くなる。
【0120】
換言すれば、図29に示す配線方式を利用することにより(例えば、セルD01およびD02を採用した場合)、信号+SVを受信するセルD01のフラップ103が、信号-SVを受信するセルD02のフラップ101の隣に空間的に配置され、信号±SVの遷移期間が時間的に重複する場合、1つのフラップ(例えば、D01の103)の下部電極からの電流は、装置D00がパッドから離れ、別のパッドから装置D00に再び入る必要はなく、隣接するフラップ(例えば、D02の101)に直接移動する。従って、下部電極の実効抵抗が大幅に低減され、電力消費も低減される。
【0121】
また、動作周波数は、複数(例えば2つ)のセルを組み込むことによって高められてもよい。具体的には、本発明のAPG装置を使用する空気圧力パルススピーカ(APPS)音生成方式は、離散時間サンプリングシステムの一種である。一方では、通常、高い忠実度を達成するため、そのようなサンプリングされたシステムにおいて、サンプリングレートを上げることが望ましい。一方、必要な駆動電圧および電力消費を低減するためには、装置の作動周波数を低減することが望ましい。
【0122】
1つのAPG装置のサンプリングレートとして作動周波数を上げる代わりに、低いパルス/作動レートを有する(少なくとも)2つのグループ(サブシステム)を時間的および空間的にインターリーブすることにより、高いパルス/作動レートを達成することが効率的である。
【0123】
図31(空間的な配置を示す)は、本発明の実施形態によるAPG装置E00の上面図である。装置E00は、互いに隣接/隣り合って配置された2つのセルE11およびE12を有する。セルE11/E12は、本発明のAPG装置の1つであってもよい。
【0124】
図32(時間的な関係を示す)には、セルE11およびE12が意図された、2組の(復調)変調駆動信号AおよびBの波形を示す。Aの組は、復調駆動信号±SVおよび変調駆動信号SMを含み、Bの組は、復調駆動信号±SV’および変調駆動信号SM’を含む。図32の実施形態に示すように、信号組Bの復調駆動信号+SV’/-SV’は、信号組Aの復調駆動信号+SV/-SVの遅延されたバージョンである。さらに、信号組Bの信号+SV’/-SV’は、作動周期の半分であるTCY/2だけ遅延された信号組Aの信号+SV/-SVであり、ここで、TCY=1/fUCであり、fUCは、セルE11/E12の作動周波数を表す。組Bの変調駆動信号SM’は、組Aの変調駆動信号SMの反転、または極性反転バージョンと見なされてもよい。信号SMおよびSM’は、SM’=-SMまたはSM+SM’=Cの関係を有してもよく、ここで、Cはある定数またはバイアスである。例えば、組Aの変調駆動信号SMが期間T22内に電圧レベル(図32において破線で示す)に対して、負の極性のパルスを有する場合、組Bの変調駆動信号SM’は、期間T22内に電圧レベル(図32において破線で示す)に対して、正の極性のパルスを有する。
【0125】
組Aおよび組Bの一方をセルE11に提供し、組Aおよび組Bの他方をセルE12に提供することにより、装置E00は、パルス/サンプリングレートが2×fUCであるパルスアレイを生成してもよく、fUCは、各セルの作動周波数である。
【0126】
図33は、本発明の一実施形態によるAPG装置F00の上面図である。装置F00は、2×2のアレイに配置されたセルF11、F12、F21、およびF22を有する。装置F00におけるセルは、本発明のAPG装置の1つであってもよい。セルF11、F12、F21およびF22の2つは、信号組Aを受信し、他の2つのセルは、信号組Bを受信してもよい。
【0127】
一実施形態では、セルF11、F22は、信号組Aを受信し、セルF21、F22は、信号組Bを受信する。一実施形態では、セルF11、F22は、信号組Aを受信し、セルF12、F22は、信号組Bを受信する。一実施形態では、セルF11、F21は、信号組Aを受信し、セルF12、F22は、信号組Bを受信する。装置E00と同様、装置も、パルス/サンプリングレートが2×fUCであるパルスアレイを生成する。
【0128】
物理的な表面運動を用いて音響波を生成する従来のスピーカ(例えば、動的ドライバ)は、前方/後方放射波の相殺の問題に直面することが留意される。物理的表面が移動して、空気質量の動きが生じると、音波の対、すなわち前方放射波および後方放射波が生成される。2つの音波は、互いの大部分を相殺し、正味のSPLは、前方/後方放射波が単独で測定される場合に比べて、大きく低減される。
【0129】
前方/後方放射波の相殺問題に対して広く採用されている解決策は、背面エンクロージャまたは開放バッフルのいずれかを利用することである。両方の解決策は、関心の最も低い周波数の波長、例えば、230Hzの周波数に対して、1.5メートルの波長に相当する、物理的サイズ/寸法が必要となる。
【0130】
従来のスピーカと比較して、本発明のAPG装置は、数十平方mmしか占有せず(従来のスピーカよりもはるかに小さい)、特に低周波数において大きなSPLを生成する。
【0131】
これは、非対称な振幅変調空気パルスを生成することにより達成され、変調部分は、膜運動を介して対称振幅変調の空気圧変動を生成し、復調部分は、仮想バルブを介して非対称振幅変調の空気パルスを生成する。変調部および復調部は、同じ加工層に製造されたフラップ対によって実現され、製造/生産の複雑さが低減される。変調動作は、フラップ対の共通モード移動を介して実行され、復調動作は、フラップ対の差動モード移動を介して実行され、(共通モード移動を介する)変調動作および(差動モード移動を介する)復調動作は、単一のフラップ対により実施されてもよい。差動モード移動と共通モード移動の間の適切なタイミング整合により、出力空気パルスの非対称性が強化される。さらに、ホーン形状の出口またはトランペット状の導管は、伝播効率を改善することに役立つ。
【0132】
以上まとめると、本発明の空気パルス発生装置は、変調手段および復調手段を有する。変調駆動信号をフラップ対(102または104)に印加することにより実現され得る変調手段は、音響信号による超音波搬送周波数を有する、振幅変調された超音波音響/空気波を生成する。復調手段は、一対の復調駆動信号+SVおよび-SVをフラップ対(102)に印加することにより、またはフラップ対(102)を周期的に駆動して開口(112)を形成することにより、実現されてもよく、超音波音響/空気波UAWのスペクトル成分を±n×fUCだけシフトさせる同期復調動作が実施される。その結果、音響信号に対応する超音波空気波のスペクトル成分が可聴ベースバンドにシフトされ、音響信号が再生される。
【0133】
本発明の示唆を保持したまま、装置および方法の多くの修正および変更が行えることは、当業者には容易に理解される。従って、前述の開示は、添付の特許請求の範囲の境界によってのみ限定されるものと解される必要がある。
【0134】
(公知文献)
1 米国特許出願公開2022-0225032A1
2 米国特許出願公開2022-0224999A1
3 米国特許10,425,732B1
4 米国特許7,736,324B1
5 米国特許5,109,948A
6 米国特許4,942,939
7 米国特許4,646,733
8 米国特許出願公開2022/0047841A1
9 米国特許出願公開2014/0064036A1
10 米国特許出願公開2013/0279738A1
11 米国特許出願公開2012/0018244A1
12 米国特許出願公開2008/0121220A1
13 米国特許出願公開2005/0235988A1
14 米国特許出願公開2004/0024455A1
15 国際公開2016/202790A2
16 米国特許出願公開2020/0059719A1
17 米国特許出願公開2019/0116417A1
18 米国特許出願公開2018/0179048A1
19 米国特許出願公開2016/0366521A1
20 米国特許出願公開2012/0032892A1
21 米国特許出願公開2017/0201192A1
22 韓国特許出願公開10-2019-0116898A
23 韓国特許10-1901204B1
24 韓国特許出願公開10-2019-0043489A
25 韓国特許10-2093804B1
26 日本国出願公開2022-160366A
27 米国特許出願公開2019/0238974A1
28 米国特許出願公開2017/0041708A1
29 米国特許出願公開2014/0084396A1
30 米国特許出願公開2014/0341394A1
31 米国特許出願公開2016/0059206A1
32 米国特許出願公開2012/0081337A1
33 米国特許5,611,406A
34 米国特許出願公開2019/0020944A1
35 日本国出願公開2022-160367A
36 日本国出願公開2022-160368A
【符号の説明】
【0135】
100 空気パルス発生(APG)装置
12 装置層
11 チャンバ画定層
124L、124R 壁
101、103、105、107 フラップ
123R、123L 支持構造
図1
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図31
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【外国語明細書】