(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174681
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】香料保持装置、香り提供装置及び香料カートリッジ
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20231201BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20231201BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61L9/12
A61L9/01 Q
B65D85/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155490
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2021161097の分割
【原出願日】2017-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2016130696
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016143635
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 修二
(72)【発明者】
【氏名】寒川 恒俊
(72)【発明者】
【氏名】野本 航也
(72)【発明者】
【氏名】石垣 祐次
(72)【発明者】
【氏名】中野 嗣己
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直行
【テーマコード(参考)】
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
3E068CC01
3E068CE03
3E068CE08
3E068EE13
3E068EE21
3E068EE28
4C180AA03
4C180AA13
4C180CA06
4C180EB06Y
4C180EC01
4C180FF07
4C180GG17
4C180GG19
4C180HH05
4C180HH09
4C180JJ01
4C180LL02
4C180LL06
4C180LL11
4C180LL12
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を回避しつつ、香りの持続性を向上させることが可能な香料保持装置を提供する。
【解決手段】香料カートリッジケースと、前記香料カートリッジケースと係合可能に構成された香料カートリッジとを備え、前記香料カートリッジは、前記香料カートリッジケースの中心軸に平行に形成された、香料を保持する保持空間と、前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放する第1の開口部と、前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放し、前記保持空間を挟んで前記第1の開口部の反対側に設けられた第2の開口部とを有し、前記保持空間の少なくとも一部は、前記香料を保持する材料で形成され、前記保持空間は、少なくとも第1の区分領域及び第2の区分領域を含む、互いに結合する複数の区分領域を有する、香料保持装置を提供する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料カートリッジケースと、
前記香料カートリッジケースと係合可能に構成された香料カートリッジと、
を備え、
前記香料カートリッジは、
前記香料カートリッジ内に設けられ、前記香料カートリッジケースの中心軸に平行に形成された、香料を保持する保持空間と、
前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放する第1の開口部と、
前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放し、前記保持空間を挟んで前記第1の開口部の反対側に設けられた第2の開口部と、
を有し、
前記保持空間の少なくとも一部は、前記香料を保持する材料で形成され、
前記保持空間は、少なくとも第1の区分領域及び第2の区分領域を含む、互いに結合する複数の区分領域を有し、
前記第1の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して平行に延伸し、
前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記第1の区分領域の延長線上に設けられ、
前記第2の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して垂直方向に前記第1の区分領域と連結する、
香料保持装置。
【請求項2】
前記香料は液体香料であり、
前記液体香料は、前記香料を保持する材料に浸潤する、
請求項1に記載の香料保持装置。
【請求項3】
前記香料カートリッジは、
複数の前記保持空間を有する、
請求項1又は2に記載の香料保持装置。
【請求項4】
前記複数の保持空間は、一種類以上の前記香料を保持する、請求項3に記載の香料保持装置。
【請求項5】
前記香料カートリッジは、前記香料カートリッジケースの中心軸を中心にして回転可能に設けられる、請求項3又は4に記載の香料保持装置。
【請求項6】
前記第1の開口部及び前記第2の開口部のうちの一方の開口部が設けられた、前記香料カートリッジの面を覆うように、前記香料カートリッジケースに装着されるカバーをさらに備え、
前記カバーは、前記香料カートリッジが回転して前記複数の保持空間のうちの1つの前記一方の開口部と連通することで、前記香料の成分を放出する香り放出口を有する、
請求項5に記載の香料保持装置。
【請求項7】
前記香り放出口の内径は、前記保持空間の内径以上の大きさである、請求項6に記載の香料保持装置。
【請求項8】
前記香料カートリッジケースは、円柱形状である、請求項1~7のいずれか1項に記載の香料保持装置。
【請求項9】
前記香料カートリッジは、円柱、直方体、又は、立方体の形状である、請求項1~8のいずれか1項に記載の香料保持装置。
【請求項10】
前記保持空間の断面形状は、円形、楕円形、四角形、又は、長方形である、請求項1~9のいずれか1項に記載の香料保持装置。
【請求項11】
香料カートリッジケースと、
前記香料カートリッジケースと係合可能に構成され、保持空間を有する香料カートリッジと、
前記保持空間へ空気を供給する送風源と、
を備え、
前記香料カートリッジは、
前記香料カートリッジ内に設けられ、前記香料カートリッジケースの中心軸に平行に形成された、香料を保持する前記保持空間と、
前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放する第1の開口部と、
前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放し、前記保持空間を挟んで前記第1の開口部の反対側に設けられた第2の開口部と、
を有し、
前記保持空間の少なくとも一部は、前記香料を保持する材料で形成され、
前記保持空間は、少なくとも第1の区分領域及び第2の区分領域を含む、互いに結合する複数の区分領域を有し、
前記第1の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して平行に延伸し、
前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記第1の区分領域の延長線上に設けられ、
前記第2の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して垂直方向に前記第1の区分領域と連結する、
香り提供装置。
【請求項12】
前記送風源は、駆動制御信号を取得すると、前記保持空間に空気を供給する、請求項11に記載の香り提供装置。
【請求項13】
前記送風源は、無線接続を介して、前記駆動制御信号を外部装置から取得する、請求項12に記載の香り提供装置。
【請求項14】
香料カートリッジケースと係合可能に構成された香料カートリッジであって、
香料カートリッジ内に設けられ、前記香料カートリッジケースの中心軸に平行に形成された、香料を保持する保持空間と、
前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放する第1の開口部と、
前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放し、前記保持空間を挟んで前記第1の開口部の反対側に設けられた第2の開口部と、
を備え、
前記保持空間の少なくとも一部は、前記香料を保持する材料で形成され、
前記保持空間は、少なくとも第1の区分領域及び第2の区分領域を含む、互いに結合する複数の区分領域を有し、
前記第1の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して平行に延伸し、
前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記第1の区分領域の延長線上に設けられ、
前記第2の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して垂直方向に前記第1の区分領域と連結する、
香料カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香料保持装置、香り提供装置及び香料カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香りを提供する香り提供装置に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、香料保持体が格納された格納装置に空気を供給し、気化した香料を空気の流れによって放出させることにより香りを提供する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の技術では、香りの持続性を向上させるために香料の量を増加させた場合、香料を保持する部材を大型化する必要が生じ得る。香料を保持する部材を大型化した場合、香りを提供する装置自体が大型化するおそれがある。香り提供装置においては、装置の大型化を回避しつつ、香りの持続性をより向上させることが望ましい。
【0005】
そこで、本開示では、装置の大型化を回避しつつ、香りの持続性を向上させることが可能な、新規かつ改良された香料保持装置、香り提供装置及び香料カートリッジを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、香料カートリッジケースと、前記香料カートリッジケースと係合可能に構成された香料カートリッジとを備え、前記香料カートリッジは、前記香料カートリッジ内に設けられ、前記香料カートリッジケースの中心軸に平行に形成された、香料を保持する保持空間と、前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放する第1の開口部と、前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放し、前記保持空間を挟んで前記第1の開口部の反対側に設けられた第2の開口部とを有し、前記保持空間の少なくとも一部は、前記香料を保持する材料で形成され、前記保持空間は、少なくとも第1の区分領域及び第2の区分領域を含む、互いに結合する複数の区分領域を有し、前記第1の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して平行に延伸し、前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記第1の区分領域の延長線上に設けられ、前記第2の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して垂直方向に前記第1の区分領域と連結する、香料保持装置が提供される。
【0007】
また、本開示によれば、香料カートリッジケースと、前記香料カートリッジケースと係合可能に構成され、保持空間を有する香料カートリッジと、前記保持空間へ空気を供給する送風源とを備え、前記香料カートリッジは、前記香料カートリッジ内に設けられ、前記香料カートリッジケースの中心軸に平行に形成された、香料を保持する前記保持空間と、前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放する第1の開口部と、前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放し、前記保持空間を挟んで前記第1の開口部の反対側に設けられた第2の開口部とを有し、前記保持空間の少なくとも一部は、前記香料を保持する材料で形成され、前記保持空間は、少なくとも第1の区分領域及び第2の区分領域を含む、互いに結合する複数の区分領域を有し、前記第1の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して平行に延伸し、前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記第1の区分領域の延長線上に設けられ、前記第2の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して垂直方向に前記第1の区分領域と連結する、香り提供装置が提供される。さらに、本開示によれば、香料カートリッジケースと係合可能に構成された香料カートリッジであって、香料カートリッジ内に設けられ、前記香料カートリッジケースの中心軸に平行に形成された、香料を保持する保持空間と、前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放する第1の開口部と、前記保持空間を前記香料カートリッジの外部に開放し、前記保持空間を挟んで前記第1の開口部の反対側に設けられた第2の開口部と、を備え、前記保持空間の少なくとも一部は、前記香料を保持する材料で形成され、前記保持空間は、少なくとも第1の区分領域及び第2の区分領域を含む、互いに結合する複数の区分領域を有し、前記第1の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して平行に延伸し、前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記第1の区分領域の延長線上に設けられ、前記第2の区分領域は、前記香料カートリッジケースの中心軸に対して垂直方向に前記第1の区分領域と連結する、香料カートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本開示によれば、装置の大型化を回避しつつ、香りの持続性を向上させることが可能である。
【0009】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、又は上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果又は本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に係る香り提供装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る香り提供装置の分解斜視図である。
【
図3】同実施形態に係る香り提供装置の軸方向断面図である。
【
図4】同実施形態に係る香り提供装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】同実施形態に係る香り提供装置のシステム構成の他の例を示すブロック図である。
【
図6】同実施形態に係る香料カートリッジの構成の一例を示す斜視図である。
【
図7】同実施形態に係る香料カートリッジを軸方向に見た正面図である。
【
図8】
図7の香料カートリッジのA-A断面を含む斜視図である。
【
図9】
図6の香料カートリッジのB-B断面図である。
【
図10】同実施形態に係る香料カートリッジの保持空間の構成を示す斜視図である。
【
図11】
図7の香料カートリッジの通風流路のC-C断面図である。
【
図12】第1の変形例に係る香料カートリッジの斜視図である。
【
図13】第1の変形例に係る香料カートリッジを径方向に見た側面図である。
【
図14】第1の変形例に係る香料カートリッジを軸方向に見た側面図である。
【
図15】第1の変形例に係る香料カートリッジの通風流路の構成について説明するための模式図である。
【
図16】第2の変形例に係る香料カートリッジの斜視図である。
【
図17】第2の変形例に係る香料カートリッジを径方向に見た側面図である。
【
図18】第2の変形例に係る香料カートリッジを軸方向に見た側面図である。
【
図19】第2の変形例に係る香料カートリッジの通風流路の構成について説明するための模式図である。
【
図20】第3の変形例に係る香料カートリッジの斜視図である。
【
図21】第3の変形例に係る香料カートリッジを径方向に見た側面図である。
【
図22】第3の変形例に係る香料カートリッジを軸方向に見た側面図である。
【
図23】第3の変形例に係る香料カートリッジの通風流路の構成について説明するための模式図である。
【
図24】第4の変形例に係る香料カートリッジの斜視図である。
【
図25】第4の変形例に係る香料カートリッジを径方向に見た側面図である。
【
図26】第4の変形例に係る香料カートリッジを軸方向に見た側面図である。
【
図27】第4の変形例に係る香料カートリッジの通風流路の構成について説明するための模式図である。
【
図28】第5の変形例を適用した香料カートリッジの構成の一例を示す斜視図である。
【
図29】封止部材の別の構成例について説明するための斜視図である。
【
図30】第6の変形例を適用した香料カートリッジの構成の一例を示す斜視図である。
【
図31】第7の変形例を適用した香料カートリッジの構成の一例を示す斜視図である。
【
図32】第8の変形例を適用した香料カートリッジの構成の一例を示す斜視図である。
【
図37】香料漏出防止構造の一例を示す説明図である。
【
図38】香料漏出防止構造の別の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.香り提供装置
2.香料保持部材(香料カートリッジ)
3.変形例
4.カバー及び保持部の保護構造
5.香料漏出防止構造
【0013】
<1.香り提供装置>
図1~
図3を参照して、本開示の実施の形態に係る香り提供装置1について説明する。
図1は、香り提供装置1を示す斜視図であり、
図2は、香り提供装置1の分解斜視図であり、
図3は、香り提供装置1の軸方向断面図である。なお、以下の説明において、香り提供装置1のうち、香料保持部材200が配置された方向を前方側といい、ベース部700が配置された方向を後方側という。
【0014】
本実施形態に係る香り提供装置1は、カバー100と、香料保持部材としての香料カートリッジ200と、カートリッジケース300と、プリズム部500と、回転操作部600と、ベース部700とを備える。かかる香り提供装置1は、香料カートリッジ200に設けられた複数の通風流路210から選択される所望の通風流路210に空気を流し、それぞれの通風流路210の内周面に保持された香料を気化させつつ放出させる装置となっている。例えば、香り提供装置1では、香料カートリッジ200の通風流路210に、図示しないエアポンプにより供給される空気を流すことにより、湿潤状態の香料が気化し、空気とともに通風流路210から放出される。
【0015】
かかる香り提供装置1は、例えば、限られた範囲に香りを放出する装置として用いられ得る。例えば、ユーザが、自らの顔の近くで1回あるいは複数回香りを放出させ、気分をリラックスさせるように、香り提供装置1が用いられてもよい。この場合、本実施形態に係る香り提供装置1は、香りを広範囲に拡散させることがないため、周囲の人に香りを感知させにくくすることができる。
【0016】
カートリッジケース300は、軸方向両端のうち、後方側の端部が開口した円筒状の外形を有する。カートリッジケース300は、内部に、香料カートリッジ200を保持する。カートリッジケース300は、前方側の端面に、軸心を中心とする円形の開口部330を有する。また、カートリッジケース300は、開口部330の周囲に、香料カートリッジ200の通風流路210とそれぞれ連通する孔310を有する。
【0017】
カートリッジケース300の内周面には軸方向に沿って延びる係止突部340が設けられている(
図3を参照。)。かかる係止突部340は、香料カートリッジ200がカートリッジケース300に挿入された際に、香料カートリッジ200の外周面に設けられた係止溝240に係合する(
図3を参照。)。これにより、香料カートリッジ200とカートリッジケース300とが位置決めされ、通風流路210と孔310とが連通する。係止突部がカートリッジケース300に設けられ、係止溝が香料カートリッジ200に設けられてもよい。
【0018】
また、カートリッジケース300は、後方側の端部に、複数のツメ部341を有する(
図2を参照。)。ツメ部341は、カートリッジケース300の後方側の端部の位置を部分的に軸方向にずらすことによって、等間隔で形成されている。
【0019】
香料カートリッジ200は、円筒形状を有する。香料カートリッジ200には、送風源の一例であるエアポンプから供給される空気が通過する複数の通風流路210が設けられる。通風流路210には、香料が湿潤状態で保持される。香料は、通風流路210の内表面に付着した状態で保持される。香料は、例えば、精油、あるいは、エタノールで希釈された精油等であってもよい。通風流路210は1つであってもよく、あるいは複数であってもよい。本実施形態に係る香り提供装置1では、5つの通風流路210を有する香料カートリッジ200が用いられる。香料カートリッジ200については後で詳細に説明する。
【0020】
保持部400は、軸方向両端のうち、前方側の端部が開口した円筒状の外形を有する。保持部400は、カートリッジケース300の後方側を保持する。保持部400は、後方側の端面に、軸心を中心とする円形の開口部430を有する(
図3を参照。)。また、保持部400は、開口部430の周囲に、香料カートリッジ200の通風流路210とそれぞれ連通する孔410を有する(
図3を参照。)。
【0021】
保持部400の前方側の開口にはカートリッジケース300の後端が挿入される。保持部400は、内周面に、カートリッジケース300のツメ部341が配置される複数の受容凹部441を有する。受容凹部441の数は、ツメ部341の数に対応している。ツメ部341及び受容凹部441の数は、香料カートリッジ200の通風流路210の数に一致している。これにより、香料カートリッジ200を保持したカートリッジケース300を任意の回転位相で保持部400に保持させることにより、複数の通風流路210が保持部400の孔410に連通する。
【0022】
カートリッジケース300の外側には、カバー100が装着される。カバー100は、軸方向両端のうち、後方側の端部が開口した円筒状の外形を有する。カバー100は、前方側の端面に、香料カートリッジ200の複数の通風流路210のうちいずれか1つと連通し得る香り放出口112を有する。香料カートリッジ200のいずれかの通風流路210を通過し、気化した香料の成分を含む空気が、当該香り放出口112を介して外部に放出される。香り放出口112の内径は特に限定されないが、香料カートリッジ200の通風流路210を流れる空気の流れを妨げないためには、香り放出口112の内径が、少なくとも通風流路210の内径以上であってもよい。
【0023】
カバー100は、前方側の端面の内側面から軸方向に延びる固定軸114を備える(
図3を参照。)。固定軸114は、カートリッジケース300の開口部330及び香料カートリッジ200の軸方向孔230内に挿通される。カバー100は、固定軸114を回転軸として、香料カートリッジ200を保持するカートリッジケース300に対して相対回転可能になっており、相対位置によって、香り放出口112に連通する通風流路210が切り替えられる。固定軸114の先端には、軸心に沿って切断した半体からなる図示しない係合部が設けられている。かかる係合部は、ベース部700の固定軸760と嵌合され、かつ、取付及び取外しが可能な形状であればよく、上記の形状に限られない(
図3を参照。)。
【0024】
回転操作部600は、カバー100、カートリッジケース300、香料カートリッジ200及び保持部400のさらに外周に配置される。回転操作部600は、外周筒部610と、錘状部620と、内周筒部630とを有する。内周筒部630は、内周面に係止突部636を有する。外周筒部610と内周筒部630とは、錘状部620を介して接続されている。錘状部620の大径側端部は、外周筒部610の内周面のうちの軸方向の中央部に接続されている。また、錘状部620の小径側端部は、内周筒部630の前方側端部に接続されている。錘状部620の前方側の空間にはプリズム部500が配置されている。プリズム部500は、軸心を中心とする軸方向孔530を有する。軸方向孔530には、カバー100、カートリッジケース300及び香料カートリッジ200が配置される。
【0025】
回転操作部600の内周筒部630の内部に、カバー100、カートリッジケース300、香料カートリッジ200及び保持部400が挿入される。このとき、保持部400の外周面に設けられた複数の係止溝部440のいずれかに、内周筒部630の係止突部636が配置される。これにより、保持部400、及び、保持部400に保持されたカートリッジケース300及び香料カートリッジ200が、回転操作部600と一体的に回転可能になっている。また、カバー100は、カートリッジケース300、香料カートリッジ200及び保持部400とは相対回転可能であることから、回転操作部600とカバー100も相対回転可能になっている。
【0026】
回転操作部600、カバー100、香料カートリッジ200、カートリッジケース300及び保持部400等は、ベース部700に支持される。ベース部700は、前方側の面の中央部に、回転操作部600の内周筒部630が挿入される、断面円形の凹部740を有する。また、ベース部700は、前方側の面の外縁部に、回転操作部600の外周筒部610が配置される、環状の段差部725を有する。段差部725に外周筒部610が配置され、凹部740に回転操作部600の内周筒部630が配置され、さらに、内周筒部630の内側に、保持部400、香料カートリッジ200等が配置される。
【0027】
ベース部700は、凹部740の底面に立設し、前方側に延びる固定軸760を有する。固定軸760は、保持部400の開口部430及び香料カートリッジ200の軸方向孔230内に挿通される。例えば、固定軸760は香料カートリッジ200の軸方向孔230に軽圧入され、これにより、回転操作部600、カバー100、香料カートリッジ200、カートリッジケース300及び保持部400等がベース部700に支持される。
【0028】
固定軸760の先端には、軸心に沿って切断した半体からなる図示しない係合部が設けられている。固定軸760の係合部は、香料カートリッジ200の軸方向孔230内において、カバー100の固定軸114の先端の係合部に対して、180°軸回転した状態で嵌め合わされる。これにより、カバー100とベース部700との相対回転が不可能になる。これにより、回転操作部600、香料カートリッジ200、カートリッジケース300及び保持部400がベース部700に対して相対回転可能になる。ただし、カバー100の係合部と同様に、係合部は、カバー100の固定軸114と嵌合され、かつ、取付及び取外しが可能な形状であればよく、上記の形状に限られない。
【0029】
また、ベース部700は、凹部740の底面に空気の供給口750を有する。ベース部700は、内部に、図示しないエアポンプ、バッテリ及び回路基板等を備える。エアポンプは送風源の一態様であり、バッテリから供給される電力によって駆動されて、空気の供給口750に空気を導入する。エアポンプは、例えば、圧電素子に対して交流電流を供給することによりダイヤフラムを変形させて、空気の吸引及び圧送を行う、ダイヤフラム式のポンプであってもよい。バッテリは、放電のみが行われ交換可能にされた電池でもよいし、充放電可能にされた二次電池であってもよい。エアポンプの駆動のオンオフは、スイッチ操作部730を操作することにより行われる。例えば、スイッチ操作部730を押すことによって、回路基板のスイッチング素子が電気的に接続され、バッテリからエアポンプへと電力が供給される。これにより、空気の供給口750を介して香料カートリッジ200へと空気が供給される。
【0030】
例えば、スイッチ操作部730の押下を繰り返すごとに、通電のオンオフが切り替わるようになっていてもよく、スイッチ操作部730を押下している間、通電がオンの状態で維持されるようになっていてもよい。回路基板上には、香り提供装置1の作動状態を示す、LED(Light Emitting Diode)等の光源に例示されるような他の電子部品が実装されていてもよい。また、香り提供装置1を、リモートコントローラやスマートホン等により操作可能にするには、回路基板上に通信装置が実装されていてもよい。
【0031】
なお、香料カートリッジ200に向けて空気を供給する送風器はエアポンプに限られず、例えば、ファンを回転させる形式の送風器であってもよい。また、香料カートリッジ200に向けて空気を供給する送風器は、電動式のものでなくてもよく、手動式のものでもよい。空気を供給する手段を手動式のものとした場合、バッテリ、スイッチ操作部730及び回路基板が省略されていてもよい。
【0032】
また、凹部740の底面には、位置決め用の突部770が設けられている。かかる突部770は、回転操作部600の係止突部636が配置される保持部400の係止溝部440に係止される。保持部400の外周面には、香料カートリッジ200の通風流路210の数と同数の係止溝部440が等間隔で設けられている。突部770がいずれかの係止溝部440に係止される状態で、いずれかの通風流路210が空気の供給口750に連通する。したがって、回転操作部600を回転させることによって、空気の供給口750に連通する通風流路210が切り替えられる。
【0033】
かかる突部770は、ばね等によって前方側に付勢されていてもよい。すなわち、香料カートリッジ200を回転させている間は、ばねが縮む等により突部770が後退し、いずれかの係止溝部440が突部770の位置に一致したときに、突部770が係止溝部440側に突き出るようになっていてもよい。これにより、ベース部700と保持部400等との距離を変えることなく、保持部400や回転操作部600等を回転させることができる。
【0034】
図4は、香り提供装置1のシステム構成の一例を示すブロック図である。バッテリ810は、回路基板820及びスイッチング素子830を介して、エアポンプ840と電気的に接続されている。スイッチ操作部730の操作に応じて、バッテリ810の電力がエアポンプ840に供給される。エアポンプ840が駆動され、香料カートリッジ200の通風流路210に空気が流されると、通風流路210の内面に保持された香料が気化し、空気とともに香りが放出される。また、
図18の例では、回転操作部600が手動で回転させられ、エアポンプ840から供給される空気が導入される香料カートリッジ200の通風流路210が切り替え可能になっている。
【0035】
図5は、別の香り提供装置1Aのシステム構成を示すブロック図である。
図5に示す例では、回転操作部600、カートリッジケース300又は保持部400がモータ850により回転させられ、エアポンプ840から供給される空気が導入される香料カートリッジ200の通風流路210が切り替え可能になっている。
【0036】
<2.香料保持部材(香料カートリッジ)>
次に、
図6~
図11を参照して、上記の香り提供装置1で使用され得る香料保持部材としての香料カートリッジ200について説明する。
図6は、香料カートリッジ200の斜視図を示し、
図7は、香料カートリッジ200を径方向に見た側面図を示す。また、
図8は、
図7のA-A断面を含む香料カートリッジ200の斜視図であり、
図9は、
図6のB-B断面を示す。また、
図10は、保持空間250を示す斜視図であり、
図11は、通風流路210の構成を説明するための模式図であって、
図7のC-C断面上の通風流路210を示す。
【0037】
香料カートリッジ200は、本体部202と、軸方向孔230と、複数の通風流路210とを有する。本体部202は、円筒状の外形を有する。本体部202には、軸心を中心とする軸方向孔230が設けられている。軸方向孔230は、カバー100及びベース部700の装着時のガイドとして利用され得る。なお、香料カートリッジ200の外形は円筒状に限られない。例えば、香料カートリッジ200の外形は、円柱、直方体、立方体、その他の適宜の形状とすることができる。
【0038】
それぞれの通風流路210の内面の少なくとも一部には、例えば、精油、あるいは、精油をエタノールで希釈した液体の香料が湿潤状態で付着して保持される。例えば、液体の香料が通風流路210内に充填された後、空気等の高圧のガスを通風流路210内に所定時間供給することで、余剰の液体の香料が噴き出されて通風流路210の内表面に湿潤状態で香料を付着させることができる。本実施形態に係る香料カートリッジ200は、通風流路210内に液体の香料が充填されるものではなく、香料カートリッジ200から液体の香料が漏れ出るおそれがない。
【0039】
通風流路210は、本体部202の軸心の周りに等間隔で配置されている。これにより、香料カートリッジ200を一定の回転角度で軸回転させることにより、空気を流す通風流路210の切り替えが可能になっている。各通風流路210に保持される香料は、すべて同一であってもよいし、一部あるいは全部が異なってもよい。各通風流路210にすべて同一の香料が保持される場合には、ユーザのお気に入りの香りを長期間にわたって楽しむことができる。また、各通風流路210に異なる香料が保持される場合には、空気を供給可能な通風流路210を切り替えることによって、放出させる香りを切り替えることができる。したがって、例えば、気分によって香りを切り替えることができる。
【0040】
本実施形態に係る香料カートリッジ200では、5つの通風流路210が60°等間隔で配置される一方、1つの通風流路が省力されている。通風流路の形成が省略された部分211は、香り提供装置1を使用しない間にカバー100の香り放出口112に位置合わせされて、香料カートリッジ200から香りが逃げ出さないようにされる。なお、通風流路210の数は、5個に限られない。
【0041】
香料カートリッジ200の本体部202は、例えば、精油等からなる香料が浸潤しやすいように、有機高分子材料により構成され得る。かかる有機高分子材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、フェノール樹脂、オレフィン樹脂、ナイロン、ポリエステル、合成ゴム、シリコン樹脂、天然ゴム、タンパク質、核酸、脂質、多糖類のうちのいずれか1つ、あるいは、混合物が用いられ得る。ただし、本体部202は、上記の例に限られない。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、ポリイミド樹脂等の高分子樹脂や、ステンレス、アルミニウム等の金属、石英等の無機結晶、又はガラスのうちの一種又は複数の材料が用いられてもよい。
【0042】
なお、香料カートリッジ200は、例えば3Dプリンタを用いて製造することができ、香料カートリッジ200の構成材料として、3Dプリンタに適した材料が選択されてもよい。
【0043】
香料カートリッジ200は、本体部202の外周面に係止溝240を有する。かかる係止溝240は、カートリッジケース300の内周面に設けられた係止突部340とともに、カートリッジケース300と香料カートリッジ200との位置決めに用いられる。また、係止溝240と係止突部340とが嵌まり合うことにより、カートリッジケース300と香料カートリッジ200との相対回転が不可能になって、カートリッジケース300及び香料カートリッジ200を一体として回転させることができる。
【0044】
それぞれの通風流路210は、本体部202の内部に設けられた保持空間250と、保持空間250を本体部202の外部に開放する第1の開口部213及び第2の開口部214とを有する。香料の大部分は、主として保持空間250の内表面に湿潤状態で付着して保持される。第1の開口部213及び第2の開口部214は、それぞれ本体部202の軸方向の両端面に形成されている。第1の開口部213は、保持空間250内に空気を導入させるための導入口であり、第2の開口部214は、保持空間250から香り成分を含む空気を導出させるための導出口である。第1の開口部213又は第2の開口部214の少なくとも1つが、本体部202の外周面上に設けられてもよい。
【0045】
本実施形態に係る香料カートリッジ200では、香料が通風流路210の内周面に湿潤状態で保持されるため、第1の開口部213及び第2の開口部214は、液体の香料の漏出を妨げ得る機能を有することを要しない。また、第1の開口部213又は第2の開口部214のいずれか一方の内径が小さすぎると、通風流路210に空気を流す際の圧力損失が大きくなるおそれがある。このため、第1の開口部213及び第2の開口部214の内径は、例えば、500~3,000μmの範囲内とすることができる。
【0046】
また、通風流路210を構成する保持空間250は、香料が付着される表面の面積が大きくなるように造形されている。本実施形態に係る香料カートリッジ200では、保持空間250は、直径が3,000μm以下の複数の区分領域251,253,255が結合されて構成されている(
図8~
図10を参照。)。流路の断面の内径が数十~数百μmの流路は、「マイクロ流路」とも呼ばれる。各区分領域251,253,255の内径が小さいほど、各区分領域251,253,255内における空気の流れに乱流が発生しにくくなり、空気の流れは層流になりやすくなる。
【0047】
また、エアポンプの出力が一定である場合において、各区分領域251,253,255の内径が小さいほど、通風流路210内での空気の流速は速くなる。これにより、本実施形態に係る香り提供装置1では、香り放出口112から放出される香り成分を含む空気の直進性が向上される。したがって、香り提供装置1のユーザに向けて香り成分を含む空気を吐出させることによって、ユーザの周囲へ影響を与えることなくユーザは香りの提供を受けることができる。
【0048】
また、このような内径を有する区分領域251,253,255は、その内表面に液体の香料を湿潤状態で付着させて保持させることで、少量の香料を安定的に保持することができる。したがって、使用時において、香料を都度滴下することなく、香料カートリッジ200の使用期間を延ばすことができる。
【0049】
また、比較的小さい内径の区分領域251,253,255を結合した保持空間250であれば、保持空間250の体積に対する表面積の割合を高くすることができ、少量の香料で、高濃度の香料を気化させて空気とともに放出させることができる。さらに、比較的小さい内径の区分領域251,253,255を結合した保持空間250であれば、香料カートリッジ200に複数の通風流路210が形成される場合であっても、香料カートリッジ200の外形を小さくすることができ、香料カートリッジ200の持ち運び、ひいては、香り提供装置1の持ち運びを容易にすることができる。
【0050】
図9~
図11を参照して、保持空間250の構成例について具体的に説明する。香料カートリッジ200の周方向断面に現れる保持空間250の形状は、略長丸状になっている。かかる略長丸状の保持空間250が、香料カートリッジ200の軸方向に沿って延びる3つの区分領域251,253,255に区分されている。つまり、3つの区分領域251,253,255は、香料カートリッジ200の軸方向に沿って並列に配置されている。このうちの第1の区分領域251の延長上に、第1の開口部213及び第2の開口部214が設けられている。
【0051】
第1の区分領域251は、保持空間250の長丸状断面の長手方向の一端側に位置する。第1の区分領域251は、軸方向に沿って配列された複数のリング状表面増加部261を有する。リング状表面増加部261は、保持空間250の内表面の面積を増加させるための構造部であり、一部において保持空間250の内面に連結されている。
【0052】
第2の区分領域253は、保持空間250の長丸状断面の長手方向の中央に位置する。第2の区分領域253は、軸方向に沿って配列された複数のリング状表面増加部262と、それぞれのリング状表面増加部262の内周部に形成された複数のクロス状表面増加部264とを有する。第2の区分領域253のリング状表面増加部262は、一部において保持空間250の内面に連結され、他の一部は、第1の区分領域251のリング状表面増加部261と一体化されている。
【0053】
また、クロス状表面増加部264は、例えば、香料カートリッジ200の軸線に直交する断面に沿って形成され、4本の単位辺が第2の区分領域253の略中心で交差するように構成されている。かかるクロス状表面増加部264は、第2の区分領域253の軸心から径方向に延びる単位辺を所定の回転角度(例えば90°)で回転させた複数の単位辺により構成され得る。各単位辺の端部は、リング状表面増加部262の内周面に連結されている。
【0054】
軸方向に沿って配列されたリング状表面増加部262及びクロス状表面増加部264の間隔は、第1の区分領域251のリング状表面増加部261の間隔と同一となっている。このため、第1の区分領域251において軸方向に配列された隣り合うリング状表面増加部261の間隙と、第2の区分領域253において軸方向に配列された隣り合うリング状表面増加部262の間隙とは、連通している。
【0055】
第3の区分領域255は、保持空間250の長丸状断面の長手方向の他端側に位置する。第3の区分領域255は、第2の区分領域253と同様に、軸方向に沿って配列された複数のリング状表面増加部263と、それぞれのリング状表面増加部263の内周部に形成された複数のクロス状表面増加部265とを有する。第3の区分領域255のリング状表面増加部263は、一部において保持空間250の内面に連結され、他の一部は、第2の区分領域253のリング状表面増加部262と一体化されている。また、クロス状表面増加部265の各単位辺の端部は、リング状表面増加部263の内周面に連結されている。
【0056】
軸方向に沿って配列されたリング状表面増加部263及びクロス状表面増加部265の間隔は、第1の区分領域251のリング状表面増加部261、あるいは、第2の区分領域253のリング状表面増加部262及びクロス状表面増加部264の間隔と同一となっている。このため、第2の区分領域253において軸方向に配列された隣り合うリング状表面増加部262の間隙と、第3の区分領域255において軸方向に配列された隣り合うリング状表面増加部263の間隙とは、連通している。
【0057】
例えば、それぞれのリング状表面増加部261,262,263又はクロス状表面増加部264,265の幅(軸方向の長さ)は、5~1,000μmとすることができる。また、それぞれのリング状表面増加部261,262,263又はクロス状表面増加部264,265の厚さ(軸方向に直交する方向の長さ)は、5~500μmとすることができる。
【0058】
これらのリング状表面増加部261,262,263及びクロス状表面増加部264,265は、流束を妨げないように空気が通過する空間を確保しつつ、保持空間250の内面の表面積を増加させることができる。したがって、液体の香料が表面に付着し、その濡れ性や表面張力、界面における化学的な相互作用によって、重力や空気の流れに逆らって、通風流路210の内部に湿潤状態で保持される香料の量を増加させることができる。したがって、香料カートリッジ200の使用期間を延ばすことができる。本実施形態に係る香料カートリッジ200では、第2の区分領域253及び第3の区分領域255内の表面積が、第1の区分領域251内の表面積よりも大きいために、第2の区分領域253及び第3の区分領域255は、それぞれ第1の区分領域251よりも多くの香料を保持することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る香料カートリッジ200においては、第1の区分領域251全体の容積に対するリング状表面増加部261の体積の比率が、第2の区分領域253全体の容積に対するリング状表面増加部262及びクロス状表面増加部264の体積の比率よりも小さい。また、第2の区分領域253全体の容積に対するリング状表面増加部262及びクロス状表面増加部264の体積の比率と、第3の区分領域255全体の容積に対するリング状表面増加部263及びクロス状表面増加部265の体積の比率とは同程度になっている。このため、区分領域251,253,255ごとに、空気が通過する際の圧力損失が異なる。
【0060】
具体的に、第1の区分領域251は、第2の区分領域253及び第3の区分領域255よりも、空気が通過する際の圧力損失が小さい。したがって、第1の区分領域251は、第2の区分領域253及び第3の区分領域255に比べて空気が通過しやすくなっている。このため、第1の開口部213を介して通風流路210に導入された空気の一部あるいは全部が第2の区分領域253及び第3の区分領域255を通過しつつ、圧力損失の小さい第1の区分領域251に戻されながら、第2の開口部214を介して導出される。空気中の香り成分の濃度を高めることができる。
【0061】
また、第1の区分領域251、第2の区分領域253、及び第3の区分領域255は複数個所で連通しており、保持空間250全体としての断面積が著しく小さくなる部分は存在しない。このため、保持空間250を通過する空気の圧力損失が小さく抑えられている。さらに、保持空間250を本体部202の外部に連通する第1の開口部213及び第2の開口部214の内径も比較的大きく形成され得る。したがって、高濃度の香り成分を含む空気の流量を確保することができ、効率的に香りを放出させることができる。
【0062】
通風流路210は、香料カートリッジ200の軸方向に沿って真っ直ぐに設けられてもよいし、軸方向から傾けて設けられてもよい。ただし、第1の開口部213から第2の開口部214までの流路長が長すぎると、通過する空気の圧力損失が大きくなる場合があるため、通風流路210は、できるだけ香料カートリッジ200の軸方向に沿って真っ直ぐ設けられるとよい。
【0063】
なお、本実施形態に係る香料カートリッジ200では、5つの通風流路210のそれぞれの保持空間250内に形成されたクロス状表面増加部の各単位辺の延在方向がすべて同一となっているが、かかる単位辺の延在方向は、通風流路210ごとに、あるいは、区分領域ごとに異なっていてもよい。また、本実施形態に係る香料カートリッジ200では、クロス状表面増加部264,265は4つの単位辺により十字状に構成されているが、単位辺の数は4つに限られない。例えば、8つの単位辺が45°の回転角度ごとに設ける等、適宜の数の単位辺を等間隔、あるいは、適宜の間隔で回転させたクロス状表面増加部であってもよい。
【0064】
これらの表面増加部は、流束を妨げないように、空気が通過する空間を維持しつつ、通風流路210の内面の表面積を増加させることができる。したがって、液体の香料が表面に付着し、その濡れ性や表面張力、界面における化学的な相互作用によって、重力や空気の流れに逆らって、通風流路210の内部に保持される香料の量を増加させることができる。
【0065】
通風流路210内に形成される表面増加部は、リング状表面増加部及びクロス状表面増加部に限られず、適宜の平面形状であってよい。ただし、表面増加部の平面形状が、各区分領域の軸線を中心とする回転対称あるいは点対称となっていることにより、各区分領域251,253,255内において、香料を均等な密度で保持させることができる。
【0066】
また、各区分領域251,253,255において、複数の表面増加部を軸方向に配列させる場合、表面増加部が、通風流路210の軸方向に並進対称となるように配置されてもよい。さらに、複数の表面増加部を軸方向に配列させる場合、表面増加部は、任意の軸に対して鏡映対称となるように配置されてもよい。ただし、複数の表面増加部は、並進対称又は鏡映対称に配列されていなくてもよく、複数の表面増加部は、空気の流れの圧力損失を著しく増大させることがない限り、任意の形状あるいは配列で設けられ得る。
【0067】
また、通風流路210の第2の開口部214の向きは、本体部202の軸方向に平行であってもよいし、その他の任意の角度であってもよい。また、通風流路210の断面形状は、その内面に液体の香料を付着させて保持することができ、通風流路210に空気を流すことができる形態であれば、特に限定されない。通風流路210の断面形状は、例えば、円形、楕円形、四角形、長方形、その他の適宜の形状とすることができる。
【0068】
また、香り提供装置1を、個人で香りを楽しむ装置として利用する場合、放出される香りが広い範囲に拡散しないように、放出される香りの直進性を向上させてもよい。例えば、通風流路210が、その内周面に螺旋溝を備えてもよい。通風流路210が螺旋溝を有することにより、ジャイロ効果によって、通風流路210を流れて放出される空気の直進性を向上させることができる。あるいは、通風流路210の出口開口部に、開口端に向けて縮径するテーパ部を設けてもよい。出口開口部が、このようなテーパ部を備えることにより、放出される空気の流速が高められて、直進性を向上させることができる。
【0069】
このような微小な内径を有する第1の区分領域251、第2の区分領域253、及び第3の区分領域255を含む保持空間250、あるいは、第1の開口部213及び第2の開口部214は、例えば、3Dプリンタを用いて積層造形法によって形成され得る。このため、各区分領域251,253,255又は第1の開口部213,214の内径、あるいは、表面増加部の構成部分がマイクロ単位の微小な寸法を有する場合であっても、香料カートリッジ200を容易に得ることができる。
【0070】
<3.変形例>
以上では、香料カートリッジ200の一例について説明したが、香料カートリッジ200における通風流路210の構成は係る例に限定されない。以下、異なる態様の通風流路を有する香料カートリッジの変形例の幾つかを説明する。
【0071】
(3-1.第1の変形例)
図12~
図15は、第1の変形例に係る香料カートリッジ1100の説明図である。
図12は、香料カートリッジ1100を示す斜視図であり、本体部1102内に形成された6つの通風流路1110のうちの1つの通風流路1110が透過して示されている。また、
図14は、香料カートリッジ1100を径方向に見た側面図であり、
図15は、香料カートリッジ1100を軸方向に見た正面図である。また、
図16は、通風流路1110の構成を分かりやすく示した模式図である。
【0072】
香料カートリッジ1100は、本体部1102と、本体部1102の軸心を中心とする軸方向孔1150と、複数の通風流路1110とを有する。第1の変形例に係る香料カートリッジ1100は、6つの通風流路1110を有するが、通風流路1110は1つであってもよく、4つ以下あるいは7つ以上であってもよい。第1の変形例に係る香料カートリッジ1100の通風流路1110は、保持空間1120と、保持空間1120を本体部1102の外部に連通する第1の開口部1113及び第2の開口部1114とを有する。
【0073】
それぞれの通風流路1110において、第1の開口部1113及び第2の開口部1114は、本体部1102の軸方向の両端面に開口している。また、それぞれの保持空間1120は、香料カートリッジ1100の軸方向に沿って形成された第1の区分領域としての主流路1130と、複数個所において主流路1130に接続された第2の区分領域としての複数の容量部1135とを有する。主流路1130は、例えば、500~3,000μmの内径を有していてもよい。
【0074】
容量部1135は、香料カートリッジ1100の径方向に見たときの平面形状が矢先状を有する。また、容量部1135は、香料カートリッジ1100の軸方向に見たときの平面形状が略楕円形状を有する。
図14に示した例では、容量部1135が成す楕円形状は、短軸の長さに対する長軸の長さの比が比較的大きい形状になっている。また、容量部1135の両端部側は、香料カートリッジ1100の軸方向に沿う断面形状が円形となっている(
図15を参照。)。なお、容量部1135の形状は、上記の例に限られない。また、図示した例では、通風流路1110は4つの容量部1135を有するが、容量部1135の数は特に限定されない。また、複数の容量部1135が軸方向に配置される間隔は均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0075】
かかる保持空間1120は、主流路1130を空気が流れる際の圧力損失は小さく、通風流路1110に供給された空気は主として主流路を流れる。一方、容量部1135は、主流路1130との接続部分以外は閉じられた空間となっており、空気が通過しにくくなっている。主流路1130を空気が流れる際に、容量部1135の内表面に浸潤状態で付着して保持された香料は少しずつ気化し、気化した香り成分が空気の流れに乗って第2の開口部1114から外部に放出される。主流路1130を流れる空気の一部を容量部1135側に入り込みやすくするために、主流路1130と容量部1135との接続部分の面積が大きくされてもよい。
【0076】
ここまでに説明した点以外、第1の変形例に係る香料カートリッジ1100は、上記の実施形態に係る香料カートリッジ200と同様に構成することができる。
【0077】
第1の変形例に係る香料カートリッジ1100においても、通風流路1110の保持空間1120は、空気が主として通過する主流路1130以外に、内表面に香料を湿潤状態で保持可能な容量部1135を有する。したがって、通風流路1110の内部に湿潤状態で保持される香料の量を増加させることができる。したがって、香料カートリッジ1100の使用期間を延ばすことができる。また、第1の変形例に係る香料カートリッジ1100においても、主流路1130又は容量部1135の少なくとも一方の内部に表面増加部が設けられる場合には、通風流路1110に保持される香料の量をさらに増加させることができる。
【0078】
また、第1の変形例に係る香料カートリッジ1100は、主流路1130、第1の開口部1113、及び第2の開口部1114の内径が、通風流路1110を流れる空気の圧力損失が著しく小さくならないように構成されている。したがって、高濃度の香り成分を含む空気の流量を確保することができ、効率的に香りを放出させることができる。
【0079】
(3-2.第2の変形例)
図16~
図19は、第2の変形例に係る香料カートリッジ1200の説明図である。
図16は、香料カートリッジ1200を示す斜視図であり、本体部1202内に形成された6つの通風流路1210のうちの1つの通風流路1210が透過して示されている。また、
図17は、香料カートリッジ1200を径方向に見た側面図であり、
図18は、香料カートリッジ1200を軸方向に見た正面図である。また、
図19は、通風流路1210の構成を分かりやすく示した模式図である。
【0080】
香料カートリッジ1200は、本体部1202と、本体部1202の軸心を中心とする軸方向孔1250と、複数の通風流路1210とを有する。第2の変形例に係る香料カートリッジ1200は、6つの通風流路1210を有するが、通風流路1210は1つであってもよく、4つ以下あるいは7つ以上であってもよい。通風流路1210は、保持空間1220と、保持空間1220を本体部1202の外部に連通する第1の開口部1213及び第2の開口部1214とを有する。
【0081】
第2の変形例に係る香料カートリッジ1200の通風流路1210の保持空間1220は、第1の変形例に係る香料カートリッジ1100の保持空間1120と同様に構成し得る第1の区分領域としての主流路1230と、第2の区分領域としての複数の容量部1235とを有する。第2の変形例では、複数の容量部1235の両端側が、それぞれ第3の区分領域及び第4の区分領域としての第1の接続流路1137及び第2の接続流路1139により接続されている。
【0082】
つまり、それぞれの容量部1135の両端のうちの一端部のすべてが、香料カートリッジ1200の軸方向に延びる第1の接続流路1237に連通し、他端部のすべてが、香料カートリッジ1200の軸方向に延びる第2の接続流路1239に連通している。このため、第2の変形例に係る香料カートリッジ1200では、第1の接続流路1237及び第2の接続流路1239の内表面にも香料を湿潤状態で保持させることができ、保持される香料の量がさらに増加し得る。
【0083】
また、第2の変形例に係る香料カートリッジ1200では、容量部1235を介して、主流路1230と、第1の接続流路1237又は第2の接続流路1239との間を空気が行き来することができる。したがって、第2の開口部1214から放出される空気中の香り成分の濃度を高くすることができる。また、第2の変形例に係る香料カートリッジ1200では、第1の変形例に係る香料カートリッジ1100に比べて、通風流路1210を流れる空気の流量を増加させることができ、より効率的に香りを放出させることができる。
【0084】
(3-3.第3の変形例)
図20~
図23は、第3の変形例に係る香料カートリッジ1300の説明図である。
図20は、香料カートリッジ1300を示す斜視図であり、本体部1302内に形成された6つの通風流路1310のうちの1つの通風流路1310が透過して示されている。また、
図22は、香料カートリッジ1300を径方向に見た側面図であり、
図23は、香料カートリッジ1300を軸方向に見た正面図である。また、
図24は、通風流路1310の構成を分かりやすく示した模式図である。
【0085】
香料カートリッジ1300は、本体部1302と、本体部1302の軸心を中心とする軸方向孔1350と、複数の通風流路1310とを有する。第3の変形例に係る香料カートリッジ1300は、6つの通風流路1310を有するが、通風流路1310は1つであってもよく、4つ以下あるいは7つ以上であってもよい。第3の変形例に係る香料カートリッジ1300の通風流路1310は、保持空間1320と、保持空間1320を本体部1302の外部に連通する第1の開口部1313及び第2の開口部1314とを有する。
【0086】
それぞれの通風流路1310において、第1の開口部1313及び第2の開口部1314は、本体部1302の軸方向の両端面に開口している。また、それぞれの保持空間1320は、香料カートリッジ1300の軸方向に沿って形成された第1の区分領域としての主流路1330と、複数個所において主流路1330に接続された第2の区分領域としての容量部1335とを有する。主流路1330は、例えば、500~3,000μmの内径を有していてもよい。主流路1330には、8つの単位辺が45°ずつ等間隔で設けられたクロス状表面増加部1341が設けられている。かかるクロス状表面増加部1341は、主流路1330の軸方向に複数配列されていてもよい。
【0087】
容量部1335は、香料カートリッジ1300の周方向断面上での断面積が、主流路1330の断面積よりも大きくされている。例えば、容量部1335は、本体部1302の円周方向に沿う長軸を有する長円形状の断面を有してもよい。この場合、長円形状の断面の短軸方向の長さが50~3,000μmであり、長軸方向の長さが100~6,000μmであってもよい。また、容量部1335は、長円形状の断面の長軸上に、プレート状表面増加部1343を有している。プレート状表面増加部1343は、香料カートリッジ1300の径方向に所定の厚さを有し、香料カートリッジ1300の軸方向に沿って形成されている。プレート状表面増加部1343の軸方向の長さは適宜設定され得る。例えば、5~3,000μmの長さのプレート状表面増加部1343が、5~3,000μmの隙間をもって複数配列されてもよい。
【0088】
容量部1335は、複数の連通路1337を介して主流路1330に連通している一方、第1の開口部1313及び第2の開口部1314を介することなく本体部1302の外部に開放されていない。連通路1337は、例えば、50~3,000μmの内径を有してもよい。また、図示した例では、通風流路1310は4つの連通路1337を有するが、連通路1337の数は特に限定されない。また、複数の連通路1337が軸方向に配置される間隔は均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0089】
かかる保持空間1320では、断面積の違いにより、主流路1330を空気が流れる際の圧力損失と、容量部1335を空気が流れる際の圧力損失とが異なっている。複数の連通路1337のうち、第1の開口部1313の最も近くに配置されている連通路1337aは、主流路1330から容量部1335に向かって傾斜して形成されている。これにより、第1の開口部1313を介して通風流路1310内に供給された空気は、容量部1335にも導入されやすくなっている。
【0090】
ここまでに説明した点以外、第3の変形例に係る香料カートリッジ1300は、上記の実施形態に係る香料カートリッジ200と同様に構成することができる。
【0091】
第3の変形例に係る香料カートリッジ1300においても、通風流路1310の保持空間1320は、空気が主として通過する主流路1330以外に、内表面に香料を湿潤状態で保持可能な容量部1335と、主流路1330と容量部1335とを連通する複数の連通路1337とを有する。したがって、通風流路1310の内部に湿潤状態で保持される香料の量を増加させることができる。したがって、香料カートリッジ1300の使用期間を延ばすことができる。また、第3の変形例に係る香料カートリッジ1300においても、主流路1330又は容量部1335の内部にクロス状表面増加部1341又はプレート状表面増加部1343が設けられる場合には、通風流路1310に保持される香料の量をさらに増加させることができる。
【0092】
また、第3の変形例に係る香料カートリッジ1300では、容量部1335を介して、主流路1330と、容量部1335との間を空気が行き来することができる。したがって、第2の開口部1314から放出される空気中の香り成分の濃度を高くすることができる。また、第3の変形例に係る香料カートリッジ1300は、主流路1330、第1の開口部1313、及び第2の開口部1314の内径が、通風流路1310を流れる空気の圧力損失が著しく小さくならないように構成されている。したがって、高濃度の香り成分を含む空気の流量を確保することができ、効率的に香りを放出させることができる。
【0093】
(3-4.第4の変形例)
図24~
図27は、第4の変形例に係る香料カートリッジ1400の説明図である。
図24は、香料カートリッジ1400を示す斜視図であり、本体部1402内に形成された6つの通風流路1410のうちの1つの通風流路1410が透過して示されている。また、
図25は、香料カートリッジ1400を径方向に見た側面図であり、
図26は、香料カートリッジ1400を軸方向に見た正面図である。また、
図27は、通風流路1410の構成を分かりやすく示した模式図である。
【0094】
香料カートリッジ1400は、本体部1402と、本体部1402の軸心を中心とする軸方向孔1450と、複数の通風流路1410とを有する。第4の変形例に係る香料カートリッジ1400は、6つの通風流路1410を有するが、通風流路1410は1つであってもよく、4つ以下あるいは6つ以上であってもよい。第4の変形例に係る香料カートリッジ1400の通風流路1410は、保持空間1420と、保持空間1420を本体部1402の外部に連通する第1の開口部1413及び第2の開口部1414とを有する。
【0095】
それぞれの通風流路1410において、第1の開口部1413及び第2の開口部1414は、本体部1402の軸方向の両端面に開口している。また、それぞれの保持空間1420は、香料カートリッジ1400の軸方向に沿って形成された第1の区分領域としての主流路1430と、複数個所において主流路1430に接続された第2の区分領域としての容量部1435とを有する。主流路1430は、例えば、500~3,000μmの内径を有していてもよい。
【0096】
容量部1435は、香料カートリッジ1400の周方向断面上での断面積が、主流路1430の断面積よりも大きくされている。例えば、容量部1435は、香料カートリッジ1400の周方向断面上の断面形状が略いちょう型であってもよい。また、各容量部1435の厚さ(香料カートリッジ1400の軸方向に沿う方向の長さ)は、例えば、10~5,000μmであってもよい。主流路1430は、複数の容量部1435のそれぞれの中央部を貫通するように設けられている。通風流路1410に設けられる容量部1435の数は特に限定されない。また、複数の容量部1435が軸方向に配置される間隔は均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0097】
かかる保持空間1420は、主流路1430を空気が流れる際の圧力損失は小さく、通風流路1410に供給された空気は主として主流路を流れる。一方、容量部1435は、主流路1430との接続部分以外は閉じられた空間となっており、空気が通過しにくくなっている。主流路1430を空気が流れる際に、容量部1435の内表面に浸潤状態で付着して保持された香料は少しずつ気化し、気化した香り成分が空気の流れに乗って第2の開口部1414から外部に放出される。主流路1430を流れる空気の一部を容量部1435側に入り込みやすくするために、主流路1430と容量部1435との接続部分の面積が大きくされてもよい。
【0098】
ここまでに説明した点以外、第4の変形例に係る香料カートリッジ1400は、上記の実施形態に係る香料カートリッジ200と同様に構成することができる。
【0099】
第4の変形例に係る香料カートリッジ1400においても、通風流路1410の保持空間1420は、空気が主として通過する主流路1430以外に、内表面に香料を湿潤状態で保持可能な容量部1435を有する。したがって、通風流路1410の内部に湿潤状態で保持される香料の量を増加させることができる。したがって、香料カートリッジ1400の使用期間を延ばすことができる。また、第4の変形例に係る香料カートリッジ1400においても、主流路1430又は容量部1435の少なくとも一方の内部に表面増加部が設けられる場合には、通風流路1410に保持される香料の量をさらに増加させることができる。
【0100】
また、第4の変形例に係る香料カートリッジ1400では、容量部1435を介して、主流路1430と、容量部1435との間を空気が行き来することができる。したがって、第2の開口部1414から放出される空気中の香り成分の濃度を高くすることができる。また、第4の変形例に係る香料カートリッジ1400は、主流路1430、第1の開口部1413、及び第2の開口部1414の内径が、通風流路1410を流れる空気の圧力損失が著しく小さくならないように構成されている。したがって、高濃度の香り成分を含む空気の流量を確保することができ、効率的に香りを放出させることができる。
【0101】
(3-5.第5の変形例)
図28及び
図29は、上記実施形態に係る香料カートリッジ200の保管時又は輸送時等の未使用時に貼付される封止部材260を備えた香料カートリッジ200の例を示している。
図28は、封止部材260が貼付された香料カートリッジ200の一例を示す説明図である。第5の変形例では、香料カートリッジ200の通風流路210の第1の開口部213及び第2の開口部214が封止部材260によって封止されている。封止部材260は、香料カートリッジ200の使用時に、香料カートリッジ200から取り外される。これにより、香料カートリッジ200の未使用時において、香料カートリッジ200内へ外部から空気が侵入することを抑制することができる。したがって、香料の酸化を抑制することができる。
【0102】
封止部材260は、例えば、熱融着フィルムであってもよい。あるいは、封止部材260は、樹脂フィルムであって、接着剤等により香料カートリッジ200の両端面に貼付されてもよい。また、封止部材260は、複数の第1の開口部213又は複数の第2の開口部214それぞれの全部又は一部を封止可能であってもよい。例えば、
図28に示したように、複数の第1の開口部213又は複数の第2の開口部214が、それぞれ1枚の封止部材260により封止されてもよい。
【0103】
あるいは、
図29に示したように、第1の開口部213又は第2の開口部214が、個別の封止部材260aによりそれぞれ封止されてもよい。第1の開口部213及び第2の開口部214が個別に封止されることにより、香料カートリッジ200の使用時において、ユーザの使用したい香料に対応する通風流路210の封止部材260aを個別に香料カートリッジ200から取り外すことができる。これにより、使用しない通風流路210の封止部材260aを取り外すことなく香り提供装置を利用することができ、個々の通風流路210の香りの持続性を高めることができる。
【0104】
(3-6.第6の変形例)
図30は、外周面に遮光部材270を備えた香料カートリッジ200の例を示している。
図30は、第6の変形例に係る香料カートリッジ200の構成の一例を示す説明図である。第6の変形例では、光を遮る部材である遮光部材270によって、香料カートリッジ200の外周面の一部又は全部が覆われる。例えば、
図30に示したように、遮光部材270は、香料カートリッジ200の未使用時において、香料カートリッジ200のすべての外周面を覆うように設けられる。これにより、香料カートリッジ200の未使用時において、香料カートリッジ200内に保持される香料に対して、太陽光や照明光等の光が照射されることを抑制することができる。ゆえに、香料の酸化を抑制することができる。
【0105】
(3-7.第7の変形例)
図31は、第7の変形例に係る香料カートリッジ200を示す説明図である。第7の変形例に係る香料カートリッジ200の通風流路210の第2の開口部214には、開口端へ向かうにつれて縮径するテーパ部221が設けられる。第2の開口部214がテーパ部221を備えることにより、第2の開口部214を介して放出される空気を絞ることができる。これにより、放出される空気の拡散を抑制することができる。したがって、放出される空気の直進性をより向上させることができ、香り提供装置1を個人使用に適した装置とし得る。
【0106】
なお、テーパ部221により第2の開口部214の縮径が開始される位置やテーパ部221のテーパ角は、第2の開口部214の寸法や通風流路210へ供給される空気の圧力等に応じて適宜設定され得る。また、第2の開口部214と連通するカバー100の香り放出口112に先端側へ向かうにつれて縮径するテーパ部を設けることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0107】
(3-7.第8の変形例)
図32は、第8の変形例に係る香料カートリッジ200を示す説明図である。第8の変形例に係る香料カートリッジ200の通風流路210の第2の開口部214の内周面には、螺旋形状の溝223が設けられる。第2の開口部214が螺旋溝223を備えることにより、第2の開口部214から放出される空気に旋回力が与えられ、ジャイロ効果により直進性が向上する。したがって、放出される空気の直進性をより向上させることができる。なお、螺旋溝223の数又は横断面形状は、
図32に示した例に限定されず、他の数又は他の横断面形状であってもよい。
【0108】
<4.カバー及び保持部の保護構造>
次に、香料カートリッジ200を保持するカバー100及び保持部400の保護構造について説明する。上述のとおり、本実施形態に係る香り提供装置1では、通風流路210の内周面に、精油、あるいは、エタノールで希釈された精油等の液体の香料を湿潤状態で付着させた香料カートリッジ200が使用され得る。かかる香料カートリッジ200を保持するカバー100又は保持部400が有機高分子樹脂組成物により構成されている場合、香料カートリッジ200から漏れ出る液体の香料や、気化した香料によって、カバー100又は保持部400が劣化するおそれがある。つまり、有機高分子樹脂組成物は薬剤耐性が低いために、液体の香料又は気化した香料により、いわゆるケミカルアタックを受けて、劣化するおそれがある。
【0109】
これに対して、カバー100又は保持部400それぞれの少なくとも内面に、撥油性の塗膜を積層し、又は、撥油性構造を設けることにより、香料によるケミカルアタックから、カバー100又は保持部400を保護することができる。カバー100又は保持部400は、それぞれ撥油性の塗膜及び撥油性構造をともに有してもよい。
【0110】
カバー100又は保持部400の少なくとも一方に対して撥油性の塗膜を積層する場合、当該撥油性の塗膜としては、例えば、フッ素樹脂を含む高分子材料が用いられ得る。かかるフッ素樹脂を含む高分子材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。ただし、撥油性の塗膜は、上記の例示した塗膜に限られない。
【0111】
ここで、撥油性の塗膜の膜厚が薄すぎると、ケミカルアタックからの保護効果が不十分となる場合がある。一方、撥油性の塗膜の膜厚が厚すぎると、カバー100又は保持部400の生産効率が低下したり、生産コストが増大したりする場合がある。したがって、表面に積層される撥油性の塗膜の膜厚は、例えば0.1~100μmとし得る。また、撥油性の塗膜は、カバー100又は保持部400のそれぞれにおいて、少なくとも香料カートリッジ200を保持する内面に積層されていればよいが、カバー100又は保持部400のそれぞれにおいて、全面に積層されていてもよい。
【0112】
撥油性の塗膜の積層方法は特に限定されない。浸漬法又は吹き付け法等の適宜の方法により、カバー100又は保持部400の表面に撥油性の塗膜を積層することができる。
【0113】
また、カバー100又は保持部400の少なくとも一方の内面に撥油性構造を設ける場合、当該撥油性構造は、例えば、カバー100又は保持部400の表面に形成される微細構造により構成され得る。かかる微細構造は、例えば、1μm以下の凸部あるいは凹部により構成され得る。
【0114】
図33~
図35は、撥油性構造の例を示している。
図33に示す撥油性構造は、カバー100又は保持部400の表面に形成された矩形の凸部(あるいは凹部)11の繰り返しパターンにより構成されている。また、
図34に示す撥油性構造は、カバー100又は保持部400の表面に形成された三角形の凸部13の繰り返しパターンにより構成されている。さらに、
図35に示す撥油性構造は、カバー100又は保持部400の表面にナノパーティクル15が付着されて構成されている。撥油性構造は、これらの凸部あるいは凹部の繰り返しパターンでなくてもよく、凸部あるいは凹部の形態や密度が部分的に異なっていてもよい。
【0115】
カバー100又は保持部400が、これらの撥油性の塗膜又は撥油性構造の少なくとも一方を有することにより、薬剤耐性が向上する。これにより、カバー100又は保持部400を、香料カートリッジ200から漏れ出る液体の香料や、気化した香料によるケミカルアタックから保護することができる。
【0116】
<5.香料流出防止構造>
次に、カバー100及び保持部400の内部に保持される香料カートリッジ200から液体の香料が漏出した際に、当該液体の香料がさらにカバー100及び保持部400の外部に流出することを防ぐための香料流出防止構造について説明する。
【0117】
例えば、香料カートリッジ200が、通風流路210に対して液体の香料を再充填可能な再利用型の香料カートリッジである場合、カバー100又は保持部400のいずれかを取外して通風流路210に香料を注入する際に、通風流路210の他端側から香料が漏出することが考えられる。例えば、カバー100を取り外して、通風流路210の前方側の端部から液体の香料を注入する場合に、
図36に示すように、香料カートリッジ200のうち、保持部400に保持された後方側の端部が、外周面に凹凸のない円筒形状となっていると、香料カートリッジ200の通風流路210から液体の香料Lが漏出したときに、液体の香料Lは香料カートリッジ200と保持部400との隙間を伝って外部に流出し得る。
【0118】
香料カートリッジ200と保持部400との隙間が小さい場合には、毛細管現象によって液体の香料Lが外部に流出することも考えられる。液体の香料Lがカバー100及び保持部400のさらに外部に流出すると、周囲の構成部品を劣化させてしまったり、さらには、香り提供装置1の周囲の物や指等に香料を付着させてしまったりするおそれがある。
【0119】
図37は、香料流出防止構造を適用した香料カートリッジ200を示す説明図である。かかる香料流出防止構造は、香料カートリッジ200のうち、保持部400の内部に配置される部分の外周面に、周方向に延びる凹部290を有する。香料カートリッジ200が、外周面に、かかる凹部290を有することにより、香料カートリッジ200の通風流路210の後方側の端部から漏出する液体の香料は、香料カートリッジ200と保持部400との隙間を伝っていく途中で、凹部290内に捕集される。したがって、液体の香料が保持部400のさらに外部まで流出することを防止することができる。
【0120】
香料流出防止構造としての凹部290の断面形状は特に限定されない。
図37に示したように台形状の断面であってもよく、半円形状、半だ円形状、矩形状、又は三角形状等、種々の形状が採用され得る。また、凹部290の幅あるいは深さについても、特に限定されない。凹部290は、保持部400の内周面に対向する範囲に設けられればよい。また、凹部290は、香料カートリッジ200の内部に設けられている通風流路210との間の構造部分の厚さが過度に薄くならないように設けられるとよい。また、香料カートリッジ200の軸方向に沿って、複数の凹部が設けられてもよい。
【0121】
図38は、香料カートリッジ200の軸方向に沿って2つの凹部291,293を有する香料流出防止構造の例を示す説明図である。かかる香料流出防止構造では、香料カートリッジ200と保持部400との隙間を伝う液体の香料が1つ目の凹部291によって捕集される。また、仮に、液体の香料が1つ目の凹部291を飛び越えた場合には、当該液体の香料が2つ目の凹部293によって捕集される。したがって、かかる香料流出構造は、保持部400の外部への液体の香料の流出をより確実に防止することができる。
【実施例0122】
以下、上述した実施形態に係る香り提供装置1におけるカバー100及び保持部400の保護構造の例を説明する。以下の例では、香料カートリッジ200を保持するカバー100又は保持部400の少なくとも一方の内面に撥油性の塗膜を積層する場合と積層しない場合とでのカバー100又は保持部400の劣化の有無を比較した。
【0123】
例1~5では、カバー100又は保持部400の構成材料として適用可能な高分子樹脂としてのABS樹脂製の5個の試験片(5mm角、厚さ1mm)をフッ素コーティング剤(株式会社ハーベス製デュラサーフ(DS-5210S135))中に3分間浸漬させて、当該試験片にフッ素コーティングを行った。また、得られたそれぞれの試験片に対してアロマオイル(香料)を1ドロップずつ滴下してアルミパックに投入後、雰囲気温度65°、相対湿度80%RHの条件下で12時間保持した場合の各試験片の割れを目視により確認した。
【0124】
また、例6~10では、例1~5と同様にABS樹脂製の5個の試験片を用いる一方、フッ素コーティングを行わずに、同一条件下で12時間保持した場合の各試験片の割れを目視により確認した。結果を表1に示す。
【0125】
【0126】
表1に示したように、試験片の表面にフッ素コーティングを施した例1~5では割れが確認されなかった。一方、試験片の表面にフッ素コーティングを施していない例6~10ではすべて割れが確認された。したがって、カバー100又は保持部400の少なくとも内面にフッ素コーティングを施すことにより、液体の香料又は気化した香料によるケミカルアタックからカバー100又は保持部400を保護することができることが分かった。
【0127】
以上説明したように、本開示の実施の形態に係る香料保持部材(香料カートリッジ)の通風流路は、本体部の内部に設けられた保持空間と、保持空間を本体部の外部に開放する第1の開口部及び第2の開口部とを備える。かかる通風流路の内面には、香料が湿潤状態で付着して保持される。したがって、香り提供装置1の大型化を回避しつつ、香りの持続性を向上させることができる。また、本実施形態に係る香料カートリッジは、大部分の香料が保持される保持空間に対して、第1の開口部及び第2の開口部を介して空気が導入され、あるいは、放出される。保持空間にはその内面に香料が付着して保持されるため、液体の香料が漏れ出るおそれがなく、第1の開口部及び第2の開口部の内径を比較的大きくすることができる。このため、通風流路を流れる空気の流量を増加させることができ、香りを効率的に放出させることができる。
【0128】
また、本実施形態に係る香料カートリッジにおいて、保持空間が、内表面を増加させる表面増加部を有する場合には、保持空間内に保持可能な香料の量をさらに増加させることができる。したがって、香り提供装置1の大型化を回避しつつ、香りの持続性をさらに向上させることができる。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲は係る例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0130】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0131】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)本体部の内部に設けられて香料を保持する保持空間と、
前記保持空間を前記本体部の外部に開放する第1の開口部及び第2の開口部と、
を備え、
前記保持空間、前記第1の開口部、及び前記第2の開口部が通風流路を構成する香料保持部材。
(2)前記保持空間は、直径が3,000μm以下の区分領域を有する、前記(1)に記載の香料保持部材。
(3)前記保持空間は、直径が1,000μm以下の区分領域を有する、前記(2)に記載の香料保持部材。
(4)前記保持空間は、それぞれ直径が3,000μm以下の複数の区分領域が結合されて構成される、前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の香料保持部材。
(5)前記複数の流路構造は、直径が1,000μm以下の区分領域を少なくとも1つ含む、前記(4)に記載の香料保持部材。
(6)前記保持空間は、通風時の圧力損失が異なる複数の区分領域を有する、前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の香料保持部材。
(7)前記圧力損失が異なる前記複数の区分領域は、通風の流れに対して並列に設けられる、前記(6)に記載の香料保持部材。
(8)前記複数の区分領域は、少なくとも1つの区分領域内に、前記通風流路の表面積を増加させるための表面増加部を有することにより前記圧力損失が異なる、前記(6)又は(7)に記載の香料保持部材。
(9)前記表面増加部は、前記区分領域の所定の軸回りに回転対称となる構造部、前記区分領域の所定の軸方向に並進対称となる構造部、又は、前記区分領域の所定の軸方向に鏡映対称となる構造部を有する、前記(8)に記載の香料保持部材。
(10)前記表面増加部は、前記区分領域の所定の軸で交差するクロス状の構造部を含む、前記(8)又は(9)に記載の香料保持部材。
(11)前記複数の区分領域は、流路断面積が異なることにより前記圧力損失が異なる、前記(6)~(10)のいずれか1項に記載の香料保持部材。
(12)前記本体部が有機高分子材料からなり、前記香料が前記本体部に浸潤して保持される、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の香料保持部材。
(13)前記保持空間、前記第1の開口部、及び前記第2の開口部により構成される前記通風流路を複数備え、
複数の前記第1の開口部又は前記第2の開口部の少なくとも一方が、前記香料保持部材の所定の中心軸の周りに等間隔に配置される、前記(1)~(12)のいずれか1項に記載の香料保持部材。
(14)複数の前記第1の開口部又は前記第2の開口部の少なくとも一方が、前記香料保持部材の前記所定の中心軸の軸方向の両端面に配置される、前記(13)に記載の香料保持部材。
(15)前記第1の開口部又は前記第2の開口部を封止する封止部材を備える、前記(1)~(14)のいずれか1項に記載の香料保持部材。
(16)本体部の内部に設けられて香料を保持する保持空間と、前記保持空間を前記本体部の外部に開放する第1の開口部及び第2の開口部と、により構成される通風流路を有する香料保持部材と、
前記通風流路へ空気を供給する送風源と、
を備える香り提供装置。
前記第1の開口部及び前記第2の開口部のうちの一方の開口部が設けられた、前記香料カートリッジの面を覆うように、前記香料カートリッジケースに装着されるカバーをさらに備え、
前記カバーは、前記香料カートリッジが回転して前記複数の保持空間のうちの1つの前記一方の開口部と連通することで、前記香料の成分を放出する香り放出口を有する、
請求項5に記載の香料保持装置。