(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174725
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231201BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20231201BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20231201BHJP
【FI】
H01L29/78 617T
H01L29/78 618B
H01L27/04 B
H10B12/00 621Z
H10B12/00 671C
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171145
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021096408の分割
【原出願日】2017-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2016028586
(32)【優先日】2016-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016193217
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】神長 正美
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】羽持 貴士
(72)【発明者】
【氏名】保坂 泰靖
【テーマコード(参考)】
5F038
5F083
5F110
【Fターム(参考)】
5F038AC04
5F038BG03
5F038BG05
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5F110QQ04
5F110QQ05
5F110QQ06
5F110QQ09
5F110QQ11
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、電界効果移動度を向上させると
共に信頼性を向上させる。
【解決手段】酸化物半導体膜を有する半導体装置であって、半導体装置は、第1の絶縁膜
と、第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上の第2の絶縁膜及び第3の絶
縁膜と、第2の絶縁膜上のゲート電極と、を有する。特に第2の絶縁膜は酸化窒化シリコ
ン膜を含み、酸素プラズマ処理によって過剰酸素を有することで、酸化物半導体膜への酸
素供給を効率良く行うことができる。
【選択図】
図44
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体膜を有するトランジスタを備えた半導体装置であって、
前記トランジスタは、
基板上に、酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上のゲート電極と、を有し、
前記ゲート絶縁層は、酸化窒化シリコン膜を有し、
前記基板上の前記ゲート絶縁層を昇温脱離ガス分析法で測定した結果において、酸素分子に相当する質量電荷比M/z=32の放出量の最大のピークは、基板温度が150℃以上、350℃以下に出現する半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
昇温脱離ガス分析法の測定時における基板温度範囲は、80℃から500℃までである半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有する半導体装置及びその作製方法、該半導体装置
を有する表示装置、並びに電子機器に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の
一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様は
、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マタ
ー)に関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、
記憶装置、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶装
置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電気
光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、半
導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が
注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のよう
な電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリ
コン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されて
いる。
【0005】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm3未満である
インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いた
トランジスタが開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、アモルファスシリコンを用いたトランジスタより
も動作が速く、多結晶シリコンを用いたトランジスタよりも製造が容易であるものの、電
気的特性が変動しやすく信頼性が低いという問題点が知られている。例えば、バイアス-
熱ストレス試験(BT試験)前後において、トランジスタのしきい値電圧は変動してしま
う。なお、本明細書において、しきい値電圧とは、トランジスタを「オン状態」にするた
めに必要なゲートの電圧をいう。そして、ゲート電圧とは、ソースの電位を基準としたゲ
ートの電位との電位差をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸化物半導体膜をチャネル領域に用いるトランジスタにおいて、酸化物半導体膜中に形成
されうる酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与える。例えば、酸化物半導体膜中に酸
素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、キャリア供給源となる。酸化物半導
体膜中にキャリア供給源が生成されると、酸化物半導体膜を有するトランジスタの電気特
性の変動、代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。
【0009】
例えば、酸化物半導体膜中に酸素欠損が多すぎると、トランジスタのしきい値電圧がマイ
ナス側にシフトしてしまい、ノーマリーオンの特性になる。よって、酸化物半導体膜中、
特にチャネル領域においては、酸素欠損が少ない、あるいはノーマリーオンの特性になら
ない程度の酸素欠損量であることが好ましい。
【0010】
また、ゲート絶縁膜にキャリアトラップセンターがあると、トランジスタのしきい値電圧
シフトの原因となる。キャリアトラップセンターの量は少ない方が望ましいが、ゲート絶
縁膜成膜後にプラズマ処理を例とする処理をした場合、増えることがある。
【0011】
上記問題に鑑み、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、電
気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることを課題の1つとする。または、
本発明の一態様は、新規な半導体装置を提供することを課題の1つとする。または、本発
明の一態様は、新規な表示装置を提供することを課題の1つとする。
【0012】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態
様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書
等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出
することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有するトランジスタを備えた半導体装置であって、
トランジスタは、基板上に、酸化物半導体膜と、その上のゲート絶縁層と、その上のゲー
ト電極と、を有する。ゲート絶縁層は、酸化窒化シリコン膜を有する。基板上のゲート絶
縁層は、昇温脱離ガス分析法で分析したとき、酸素分子に相当する質量電荷比M/z=3
2の放出量の最大のピークは基板温度が150℃以上、350℃以下に出現する結果が得
られることを特徴とする。
【0014】
この態様において、昇温脱離ガス分析法における測定時の温度範囲は、80℃から500
℃までであると好ましい。
【0015】
また、上記各態様において、酸化物半導体膜は、Inと、M(MはAl、Ga、Y、また
はSn)と、Znと、を有すると好ましい。また、上記各態様において、酸化物半導体膜
は、結晶部を有し、結晶部は、c軸配向性を有すると好ましい。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、上記各態様のいずれか一つに記載の半導体装置と、表示素
子と、を有する表示装置である。また、本発明の他の一態様は、該表示装置とタッチセン
サとを有する表示モジュールである。また、本発明の他の一態様は、上記各態様のいずれ
か一つに記載の半導体装置、上記表示装置、または上記表示モジュールと、操作キーまた
はバッテリとを有する電子機器である。
【0017】
また本発明の他の一態様は、酸化物半導体膜を有するトランジスタを備えた半導体装置の
作製方法であって、基板上に酸化物半導体膜を成膜し、その上に、少なくとも酸化窒化シ
リコン膜を含むゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層に酸素プラズマ処理を実施する。ゲ
ート絶縁層上にゲート電極を成膜した後、150℃以上、450℃以下にて熱処理を行い
、酸化物半導体膜に、ゲート絶縁層中の酸素を拡散させ、酸化物半導体膜の導電率を低く
する。
【0018】
上記各態様において、酸素プラズマ処理は、350℃以下の基板温度で処理すると好まし
い。また上記各態様において、酸化窒化シリコン膜は、プラズマCVD法にて、350℃
以下の基板温度で成膜すると好ましい。
【0019】
また本発明の他の一態様は、酸化物半導体膜を有するトランジスタを備えた半導体装置の
作製方法であって、基板上に酸化物半導体膜を成膜し、その上に、少なくとも酸化窒化シ
リコン膜を含むゲート絶縁層を形成し、その上に酸素を含む雰囲気で酸化物半導体をスパ
ッタリング法にて成膜する。これによりゲート絶縁層に酸素を添加しつつゲート絶縁層上
にゲート電極を形成した後、150℃以上450℃以下の加熱処理を行い、酸化物半導体
膜に、ゲート絶縁層中の酸素を拡散させ、酸化物半導体膜の導電率を低くする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、電気特性の変動
を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、本発明の一態様により、
新規な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な表示
装置を提供することができる。
【0021】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は
、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面
、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図8】本発明に係る酸化物半導体の原子数比の範囲を説明する図。
【
図10】本発明の一態様に係る酸化窒化シリコン膜の評価結果を示す図。
【
図11】本発明の一態様に係る酸化窒化シリコン膜の評価結果を示す図。
【
図12】本発明の一態様に係る酸化窒化シリコン膜の評価結果を示す図。
【
図14】本発明の一態様に係る酸素拡散の効果を示す図。
【
図23】表示装置を説明するブロック図及び回路図。
【
図24】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
【
図25】本発明の一態様を説明するためのグラフおよび回路図。
【
図26】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
【
図27】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
【
図28】本発明の一態様を説明するためのブロック図、回路図および波形図。
【
図29】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
【
図36】トランジスタのId-Vg特性としきい値電圧シフトを説明する図。
【
図46】本発明の一態様に係る半導体装置の回路図。
【
図47】本発明の一態様に係る半導体装置の回路図。
【
図50】本発明の一態様に係るトランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性。
【
図51】本発明の一態様に係るトランジスタのGBT試験結果を示す図。
【
図52】本発明の一態様に係るトランジスタの電流ストレス特性。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異
なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態
及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場
合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模
式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0025】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混
同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0026】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置
関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係
は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した
語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0027】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む
少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン
領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間に
チャネル領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流
を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が
主として流れる領域をいう。
【0028】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動
作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細
書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする
。
【0029】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの
」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの
」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタ
などのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有す
る素子などが含まれる。
【0030】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度
で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また
、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をい
う。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0031】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替
えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更
することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」と
いう用語に変更することが可能な場合がある。
【0032】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状
態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは
、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vg
sがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソー
スの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型
のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vth
よりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0033】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。従って、トランジスタのオフ
電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在す
ることを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態、
所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、または、十分に低減されたオフ電流が得られる
Vgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0034】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイン
電流が1×10-9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10-13
Aであり、Vgsが-0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-19Aであり、Vgs
が-0.8Vにおけるドレイン電流が1×10-22Aであるようなnチャネル型トラン
ジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが-0.5Vにおいて、
または、Vgsが-0.5V乃至-0.8Vの範囲において、1×10-19A以下であ
るから、当該トランジスタのオフ電流は1×10-19A以下である、と言う場合がある
。当該トランジスタのドレイン電流が1×10-22A以下となるVgsが存在するため
、当該トランジスタのオフ電流は1×10-22A以下である、と言う場合がある。
【0035】
また、本明細書等では、チャネル幅Wを有するトランジスタのオフ電流を、チャネル幅W
あたりを流れる電流値で表す場合がある。また、所定のチャネル幅(例えば1μm)あた
りを流れる電流値で表す場合がある。後者の場合、オフ電流の単位は、電流/長さの次元
を持つ単位(例えば、A/μm)で表される場合がある。
【0036】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は
、特に記載がない場合、室温、60℃、85℃、95℃、または125℃におけるオフ電
流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証
される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例え
ば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トラン
ジスタのオフ電流がI以下である、とは、室温、60℃、85℃、95℃、125℃、当
該トランジスタが含まれる半導体装置の信頼性が保証される温度、または、当該トランジ
スタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の
温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指
す場合がある。
【0037】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある。
本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、1
V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、または
20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体
装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等
において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電
流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2
.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含まれ
る半導体装置の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体
装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVg
sの値が存在することを指す場合がある。
【0038】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流
は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0039】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また
、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに、
ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0040】
また、本明細書等において、トランジスタのしきい値電圧とは、トランジスタにチャネル
が形成されたときのゲート電圧(Vg)を指す。具体的には、トランジスタのしきい値電
圧とは、ゲート電圧(Vg)を横軸に、ドレイン電流(Id)の平方根を縦軸にプロット
した曲線(Vg-√Id特性)において、最大傾きである接線を外挿したときの直線と、
ドレイン電流(Id)の平方根が0(Idが0A)との交点におけるゲート電圧(Vg)
を指す場合がある。あるいは、トランジスタのしきい値電圧とは、チャネル長をL、チャ
ネル幅をWとし、Id[A]×L[μm]/W[μm]の値が1×10-9[A]となる
ゲート電圧(Vg)を指す場合がある。
【0041】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が十
分に低い場合は、「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶
縁体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書等
に記載の「半導体」は、「絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本明
細書等に記載の「絶縁体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。または
、本明細書等に記載の「絶縁体」を「半絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0042】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が十
分に高い場合は、「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導
電体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書等
に記載の「半導体」は、「導電体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本明
細書等に記載の「導電体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0043】
また、本明細書等において、半導体の不純物とは、半導体膜を構成する主成分以外をいう
。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより
、半導体にDOS(Density of States)が形成されることや、キャリ
ア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸
化物半導体を有する場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元
素、第2族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に
、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒
素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を
形成する場合がある。また、半導体がシリコンを有する場合、半導体の特性を変化させる
不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第
15族元素などがある。
【0044】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の、過剰酸素領域を有するゲート絶縁膜を有する半導
体装置について説明する。また、本発明の一態様の半導体装置の作製方法について、説明
する。
【0045】
<1-1.半導体装置の構成例1>
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し
、
図1(C)は、
図1(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当
する。なお、
図1(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100の
構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また
、一点鎖線X1-X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1-Y2方向をチャネル幅方向
と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても
図1(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0046】
図1(A)(B)(C)に示すトランジスタ100は、所謂トップゲート構造のトランジ
スタである。
【0047】
トランジスタ100は、基板102上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の酸化物半導体
膜108と、酸化物半導体膜108上の絶縁膜110と、絶縁膜110上の導電膜112
と、絶縁膜104、酸化物半導体膜108、及び導電膜112上の絶縁膜116と、を有
する。
【0048】
また、酸化物半導体膜108は、Inと、M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Z
nと、を有すると好ましい。
【0049】
なお、酸化物半導体膜108は、導電膜112と重なり、且つ絶縁膜104と接し、且つ
絶縁膜110と接する第1の領域108iと、絶縁膜116と接する第2の領域108n
と、有する。また、第2の領域108nは、第1の領域108iよりもキャリア密度が高
い領域である。すなわち、本発明の一態様の酸化物半導体膜108は、キャリア密度の異
なる2つの領域を有する。
【0050】
なお、第1の領域108iのキャリア密度は、1×105cm-3以上1×1018cm
-3未満が好ましく、1×107cm-3以上1×1017cm-3以下がより好ましく
、1×109cm-3以上5×1016cm-3以下がさらに好ましく、1×1010c
m-3以上1×1016cm-3以下がさらに好ましく、1×1011cm-3以上1×
1015cm-3以下がさらに好ましい。
【0051】
図1(A)(B)(C)および本発明の一態様を実施するための形態では酸化物半導体膜
108が単層とする例を中心に示すが、キャリア密度が異なる膜の積層構造としても良い
。例えば、酸化物半導体膜108を、第1の酸化物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上
の第2の酸化物半導体膜との、2層の積層構造として形成してもよい。第1の酸化物半導
体膜を、第2の酸化物半導体膜よりもキャリア密度を高めることで、キャリア密度が異な
る領域を有する酸化物半導体膜を形成することができる。
【0052】
上記第1の酸化物半導体膜としては、第2の酸化物半導体膜よりもわずかに酸素欠損量を
増やす、あるいは第2の酸化物半導体膜よりもわずかに不純物濃度を増やせばよい。
【0053】
第1の酸化物半導体膜のキャリア密度を高めるためには、第1の酸化物半導体膜に酸素欠
損を形成する元素を添加し、当該酸素欠損と水素等とを結合させればよい。当該酸素欠損
を形成する元素としては、代表的には、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄
、塩素、希ガス等が挙げられる。また、希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン
、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。なお、酸化物半導体膜中に酸素欠損を
形成する元素としては、上述した元素の中でも、窒素が特に好ましい。
【0054】
例えば、第1の酸化物半導体膜の形成時において、成膜ガスとしてアルゴンガスと一酸化
二窒素ガスとを用いて形成することで、第1の酸化物半導体膜が窒素元素を有する構成と
することができる。この場合、第1の酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜よりも窒
素濃度が高い領域を有する。
【0055】
すなわち、第1の酸化物半導体膜は、キャリア密度が高められ、わずかにn型である。キ
ャリア密度が高められた酸化物半導体膜を、「Slightly-n」と呼称する場合が
ある。
【0056】
例えば、トランジスタのゲートに印加する電圧(Vg)が0Vを超えて30V以下の場合
において、第1の酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×1016cm-3を超えて1×
1018cm-3未満が好ましく、1×1016cm-3を超えて1×1017cm-3
以下がより好ましい。
【0057】
また、第1の酸化物半導体膜のキャリア密度を高めた場合、第1の酸化物半導体膜は、第
2の酸化物半導体膜よりも結晶性が低くなる場合がある。この場合、酸化物半導体膜10
8は、結晶性が低い酸化物半導体膜と、結晶性が高い酸化物半導体膜との積層構造を有す
る。また、酸化物半導体膜の結晶性と、酸化物半導体膜の膜密度との間には相関があり、
結晶性が高い酸化物半導体膜ほど膜密度が高い。したがって、酸化物半導体膜108は、
膜密度が低い酸化物半導体膜と、膜密度が高い酸化物半導体膜との積層構造を有する。
【0058】
なお、酸化物半導体膜108の結晶性としては、例えば、X線回折(XRD:X-Ray
Diffraction)を用いて分析する、あるいは、透過型電子顕微鏡(TEM:
Transmission Electron Microscope)を用いて分析す
ることで解析することができる。また、酸化物半導体膜108の膜密度としては、例えば
、X線反射率法(XRR:X-ray Reflectometer)を用いることで測
定することができる。
【0059】
また、第2の領域108nは、絶縁膜116と接する。絶縁膜116は、窒素または水素
を有する。そのため、絶縁膜116中の窒素または水素が第2の領域108n中に添加さ
れる。第2の領域108nは、絶縁膜116から窒素または水素が添加されることで、さ
らにキャリア密度が高くなる。
【0060】
また、トランジスタ100は、絶縁膜116上の絶縁膜118と、絶縁膜116、118
に設けられた開口部141aを介して、第2の領域108nに電気的に接続される導電膜
120aと、絶縁膜116、118に設けられた開口部141bを介して、第2の領域1
08nに電気的に接続される導電膜120bと、を有していてもよい。
【0061】
なお、本明細書等において、絶縁膜104を第1の絶縁膜と、絶縁膜110を第2の絶縁
膜と、絶縁膜116を第3の絶縁膜と、絶縁膜118を第4の絶縁膜と、それぞれ呼称す
る場合がある。また、導電膜112は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜120a
は、ソース電極としての機能を有し、導電膜120bは、ドレイン電極としての機能を有
する。
【0062】
また、絶縁膜110は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜110は、酸
化窒化シリコン膜からなる過剰酸素領域を有する。絶縁膜110が過剰酸素領域を有する
ことで、酸化物半導体膜108が有する第1の領域108i中に過剰酸素を供給すること
ができる。特に本発明では、絶縁膜110は、絶縁膜110の成膜後に300℃以下、好
ましくは250℃以下の基板温度にて酸素プラズマ処理により酸素が添加される。これに
より絶縁膜110中の過剰酸素を酸化物半導体膜に従来より格段に多く供給することがで
きることを特徴とする。尚、本発明の一態様における酸素プラズマ処理とは、酸素を含む
プラズマ処理を意味する。例えば、プラズマ処理時に使用するガスは、膜中に酸素を添加
する効果を妨げない、酸素以外のガスを含んでも良い。例えば、プラズマ処理時に使用す
るガスは、流量比において90%の酸素と10%のアルゴンであってもよい。
【0063】
本発明の一態様の絶縁膜110は、酸化窒化シリコン膜の単層あるいは酸化窒化シリコン
膜を有する積層構造であり、TDS(Thermal Desorption Spec
troscopy:昇温脱離ガス分析法)分析にて、酸素分子に相当する質量電荷比M/
z=32の放出量の測定温度範囲内で最大のピークの基板温度が150℃以上300℃以
下、理想的には150℃以上250℃以下であることを特徴とする。尚、以下TDS分析
したときの、酸素分子の放出特性は、質量電荷比32での放出特性と同義とする。TDS
分析にて測定温度範囲は代表的には80℃から500℃の範囲であり、500℃を超える
分析結果については酸素分子の放出特性から除く。第1の領域108iに形成される酸素
欠損を絶縁膜110中の過剰酸素により補填することで、信頼性の高い半導体装置を提供
することができる。尚、本明細書中ではTDS分析の測定に関して、基板温度は基板表面
温度を意味する。
【0064】
従来技術の酸化窒化シリコン膜に酸素を添加する方法として、N2OガスやNO2ガスを
用いたプラズマ処理が挙げられる。しかし本発明者らは、酸化窒化シリコン膜にN2Oガ
スやNO2ガスを用いたプラズマ処理を行った場合、電子のトラップセンターが増大する
ことを確認した。この原因の一つとして絶縁膜110に含まれる酸化窒化シリコン膜にお
いて窒素酸化物(NOx)が増大することが挙げられる。トランジスタ100にバイアス
-熱ストレス試験(BT試験)をしたとき、特にゲート電極にプラスバイアスストレスを
加えたとき、しきい値電圧がプラスシフトすることを避けるためには、窒素酸化物(NO
x)が増えるようなN2OガスやNO2ガスを用いたプラズマ処理を行わないと良い。す
なわち本発明の一態様の特徴である絶縁膜110成膜後に酸素プラズマ処理をする方法は
有効である。
【0065】
また、酸化物半導体膜108は、Inの原子数比がMの原子数比より高い領域を有すると
好ましい。酸化物半導体膜108が、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有す
ることで、トランジスタ100の電界効果移動度を高くすることができる。具体的には、
トランジスタ100の電界効果移動度が10cm2/Vsを超える、さらに好ましくはト
ランジスタ100の電界効果移動度が30cm2/Vsを超えることが可能となる。
【0066】
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートドラ
イバ(とくに、ゲートドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチ
プレクサ)に用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)半導体装置または表示装置
を提供することができる。
【0067】
酸化物半導体膜108中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、キャリ
ア供給源となる。酸化物半導体膜108中にキャリア供給源が生成されると、酸化物半導
体膜108を有するトランジスタ100の電気特性の変動、代表的にはしきい値電圧のシ
フトが生じる。したがって、酸化物半導体膜108、特に第1の領域108iにおいては
、酸素欠損が少ないほど好ましい。
【0068】
第1の領域108i中に形成される酸素欠損は、絶縁膜110が有する過剰酸素により補
填される。したがって、酸化物半導体膜108が有する第1の領域108iは、不純物濃
度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。なお、不純物濃度が低く、欠陥準
位密度の低い、すなわち酸素欠損の少ないことを高純度真性または実質的に高純度真性と
よぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が
少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該酸化物半導体膜にチャネ
ル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリ
ーオンともいう)になることが少ない。
【0069】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低
いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×106μm
でチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレ
イン電圧)が0.1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナラ
イザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。
【0070】
図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aは、基板102上の導電膜106を
有することで、
図1(A)(B)(C)に示すトランジスタ100をなす構造に、導電膜
106が加えられている。すなわち
図2(A)(B)(C)のトランジスタは、導電膜1
12と導電膜106とをゲート電極として用いることができる。
【0071】
図2(A)(B)(C)の構造にて、導電膜112と導電膜106とを同電位でゲート電
極として用い、絶縁膜110成膜後の処理条件を変えたトランジスタ201、トランジス
タ202、トランジスタ203のId-Vg特性を
図36(A)に示す。Id-Vg特性
の測定条件は、基板温度は室温とし、Id=0.1Vと、Id=10Vと、の2条件とし
、Vgを-15Vから+20Vまでの範囲で変化させた。
図36(A)には条件206と
、条件207とのトランジスタのId-Vg特性を示す。条件206とは、チャネルのサ
イズ条件がL=2μm、W=50μmであり、条件207とは、チャネルのサイズ条件が
L=6μm、W=50μmである。Id-Vg特性は、導電膜112と導電膜106とを
ゲート電極として用いて測定している。また、Id=0.1Vと10Vとの特性を重ね書
きし、さらに特定の基板の面内にて複数のトランジスタの測定結果を重ね書きして示して
いる。
【0072】
トランジスタ201、トランジスタ202、及びトランジスタ203、の絶縁膜110は
酸化窒化シリコンからなり、成膜条件はいずれも同じである。トランジスタ201は、絶
縁膜110成膜後に、N2Oプラズマ処理、酸素プラズマ処理、のいずれも行わず、導電
膜112の形成を行った。トランジスタ202は、絶縁膜110成膜後に、N2Oプラズ
マ処理を行い、導電膜112の形成を行った。トランジスタ203は、絶縁膜110成膜
後に、酸素プラズマ処理を行い、導電膜112の形成を行った。その後トランジスタ20
1、トランジスタ202、及びトランジスタ203、の絶縁膜110に対して250℃を
上限とした熱処理を行った。
【0073】
トランジスタ201のId-Vg特性は、しきい値電圧が大きくマイナスシフトしている
。これに対してトランジスタ202、およびトランジスタ203、のId-Vg特性は、
しきい値電圧が0V付近である。すなわち絶縁膜110成膜後のN2Oプラズマ処理、あ
るいは酸素プラズマ処理、は絶縁膜110中の過剰酸素を増やす手段として有効であると
いえる。
【0074】
一方、
図36(B)にはトランジスタ202と、トランジスタ203と、のBT試験の結
果を示す。縦軸はId-Vg特性におけるしきい値電圧のシフト量(ΔVth)であり、
単位は[V]である。このBT試験を行ったトランジスタのチャネルのサイズはL=3μ
m、W=50μmである。BT試験条件は、ゲートバイアスを+30Vまたは-30V、
白色LED光による10000lxの照度下または暗状態、BT試験時間60minとし
た。すなわちプラスゲートバイアスストレスPBTS、マイナスゲートバイアスストレス
NBTS、光プラスゲートバイアスストレスPBITS、光マイナスゲートバイアススト
レスNBITS、の計4条件にてBT試験を行った。またBT試験を行っている最中、お
よびId-Vg特性の測定中は、基板温度60℃とした。
【0075】
トランジスタ202のBT試験結果でのプラスゲートバイアスストレスPBTSによるし
きい値電圧シフトはおよそ+8Vであるのに対し、トランジスタ203の同しきい値電圧
シフトは+2V程度であった。これは絶縁膜110に含まれる酸化窒化シリコン膜におい
ては、電子のトラップセンターとなる窒素酸化物(NOx)が、トランジスタ203の絶
縁膜110中より、トランジスタ202の絶縁膜110中の方が、多いことを示している
。
【0076】
以上のように、本発明の一態様の半導体装置においては、ゲート絶縁膜に含まれる酸化窒
化シリコン膜中の窒素酸化物(NOx)の増加を防ぎつつ、過剰酸素を酸化物半導体膜に
供給することができるゲート絶縁膜を酸化物半導体層の上方へ形成し、酸化物半導体層へ
の酸素供給を十分な量にて行うことで、酸化物半導体層の酸素欠陥を少なくし、トランジ
スタの信頼性を向上させることが実現できる。よって、信頼性の優れた半導体装置を提供
することができる。
【0077】
<1-2.半導体装置の構成要素>
次に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0078】
[基板]
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンを材料
とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基
板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられ
たものを、基板102として用いてもよい。なお、基板102として、ガラス基板を用い
る場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200
mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800
mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大
型の表示装置を作製することができる。
【0079】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100
を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けてもよ
い。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分
離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐熱
性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0080】
[第1の絶縁膜]
絶縁膜104としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(P
LD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。また、絶縁膜104と
しては、例えば、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層または積層して形成することが
できる。なお、酸化物半導体膜108との界面特性を向上させるため、絶縁膜104にお
いて少なくとも酸化物半導体膜108と接する領域は酸化物絶縁膜で形成することが好ま
しい。また、絶縁膜104として加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで
、加熱処理により絶縁膜104に含まれる酸素を、酸化物半導体膜108に移動させるこ
とが可能である。
【0081】
絶縁膜104の厚さは、50nm以上、または100nm以上3000nm以下、または
200nm以上1000nm以下とすることができる。絶縁膜104を厚くすることで、
絶縁膜104の酸素放出量を増加させることができると共に、絶縁膜104と酸化物半導
体膜108との界面における界面準位、並びに酸化物半導体膜108に含まれる酸素欠損
を低減することが可能である。
【0082】
絶縁膜104として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化
シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn酸化物な
どを用いればよく、単層または積層で設けることができる。本実施の形態では、絶縁膜1
04として、窒化シリコン膜と、酸化窒化シリコン膜との積層構造を用いる。このように
、絶縁膜104を積層構造として、下層側に窒化シリコン膜を用い、上層側に酸化窒化シ
リコン膜を用いることで、酸化物半導体膜108中に効率よく酸素を導入することができ
る。
【0083】
[導電膜]
ゲート電極として機能する導電膜112、ソース電極として機能する導電膜120a、ド
レイン電極として機能する導電膜120bとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、アル
ミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タン
タル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(N
i)、鉄(Fe)、コバルト(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素を
成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成するこ
とができる。
【0084】
また、導電膜112、120a、120bには、インジウムと錫とを有する酸化物(In
-Sn酸化物)、インジウムとタングステンとを有する酸化物(In-W酸化物)、イン
ジウムとタングステンと亜鉛とを有する酸化物(In-W-Zn酸化物)、インジウムと
チタンとを有する酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムとチタンと錫とを有する酸化
物(In-Ti-Sn酸化物)、インジウムと亜鉛とを有する酸化物(In-Zn酸化物
)、インジウムと錫とシリコンとを有する酸化物(In-Sn-Si酸化物)、インジウ
ムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物(In-Ga-Zn酸化物)等の酸化物導電体また
は酸化物半導体を適用することもできる。
【0085】
ここで、酸化物導電体について説明を行う。本明細書等において、酸化物導電体をOC(
Oxide Conductor)と呼称してもよい。酸化物導電体としては、例えば、
酸化物半導体に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー
準位が形成される。この結果、酸化物半導体は、導電性が高くなり導電体化する。導電体
化された酸化物半導体を、酸化物導電体ということができる。一般に、酸化物半導体は、
エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電体
は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物半導体である。したがって、酸化物導電体は
、ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光性
を有する。
【0086】
特に、導電膜112に上述の酸化物導電体を用いると、絶縁膜110中に過剰酸素を添加
することができるので好適である。
【0087】
また、導電膜112、120a、120bには、Cu-X合金膜(Xは、Mn、Ni、C
r、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu-X合金膜を用いる
ことで、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可
能となる。
【0088】
また、導電膜112、120a、120bには、上述の金属元素の中でも、特にチタン、
タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有
すると好適である。特に、導電膜112、120a、120bとしては、窒化タンタル膜
を用いると好適である。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、且つ、銅または水素に対
して、高いバリア性を有する。また、窒化タンタル膜は、さらに自身からの水素の放出が
少ないため、酸化物半導体膜108と接する導電膜、または酸化物半導体膜108の近傍
の導電膜として、最も好適に用いることができる。
【0089】
また、導電膜112、120a、120bを、無電解めっき法により形成することができ
る。当該無電解めっき法により形成できる材料としては、例えば、Cu、Ni、Al、A
u、Sn、Co、Ag、及びPdの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を用いること
が可能である。特に、CuまたはAgを用いると、導電膜の電気抵抗を低くすることがで
きるため、好適である。
【0090】
[第2の絶縁膜]
本発明の一態様のトランジスタ100のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜110は、単
層もしくは積層構造であり、プラズマ化学気相堆積法により形成される酸化窒化シリコン
膜を有する。また絶縁膜110には酸素プラズマ処理を行う。
【0091】
本発明の一態様の絶縁膜110は、TDS分析したとき、測定温度範囲内で酸素分子に相
当する質量電荷比M/z=32の放出量の最大のピークの基板温度が150℃から300
℃の間であることを特徴とする。以下、
図37から
図44にて本発明の一態様の絶縁膜1
10すなわち酸素プラズマ処理を行った酸化窒化シリコン膜の特性について説明する。
【0092】
酸化窒化シリコン膜中の過剰な酸素原子は、熱励起により脱離するが、その脱離温度は膜
中での原子の結合状態等により異なる。また酸化窒化シリコン膜中の多くの酸素原子は、
広い温度領域にて脱離する。そこで過剰な酸素原子を酸化窒化シリコン膜中に低温で含ま
せた後、酸化物半導体膜に酸素原子を供給する工程にて高温とすると、酸化物半導体膜に
供給される酸素原子量を多くすることができる。
【0093】
酸化窒化シリコン膜をプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)にて成膜するとき、基板
温度が高い条件で成膜された酸化窒化シリコン膜は、ち密で電気絶縁耐圧特性に優れ、耐
薬品性も高い。これらの利点のみ考えれば、半導体素子中に酸化窒化シリコン膜を用いる
場合、酸化窒化シリコン膜の成膜時の基板温度は高い方が望ましい。一方で、酸化物半導
体をチャネルに用いたトランジスタのゲート絶縁膜として酸化窒化シリコン膜を用いる際
には、酸化窒化シリコン膜中の過剰な酸素原子を酸化物半導体膜へより効果的に供給する
ことが、信頼性を高める上で重要である。
【0094】
過剰な酸素原子を多くするために、本実施の形態では、酸化窒化シリコン膜を成膜した後
に、酸化窒化シリコン膜に酸素プラズマ処理を行う。そしてこの酸素プラズマ処理すると
きの基板温度は、350℃以下、好ましくは250℃以下とする。また酸化窒化シリコン
膜は、該膜中の過剰な酸素原子量を多くしたいときには成膜時基板温度を低くする。
【0095】
酸化窒化シリコン膜に処理する、酸素プラズマ処理の条件を変化させることにより、より
酸化物半導体膜中への酸素の供給を多くすることができる例を以下に示す。
図37は、以
下に示す試料をTDS分析したときの、酸素分子に相当する質量電荷比M/z=32での
放出量の結果である。試料は無アルカリガラス基板上に酸化窒化シリコン膜を100nm
の厚さで成膜し、その後、酸化窒化シリコン膜に酸素プラズマ処理を行った。TDS分析
したときの、酸素分子の放出量の定量を行うために用いたデータは、基板温度範囲におい
て80℃から450℃までのものである。酸素プラズマ処理に用いるガスは酸素のみであ
る。酸化窒化シリコン膜はプラズマCVD法でSiH
4ガス、およびN
2Oガスを用い、
成膜時基板温度は350℃にて成膜した。酸素プラズマ処理時の基板温度は350℃であ
る。
【0096】
図37から、40Paから250Paの範囲で、酸素プラズマ処理圧力が小さいほど、ま
た放電電力が高いほど、酸化窒化シリコン膜からの過剰な酸素原子が、酸素分子となって
より多く放出することがわかる。
【0097】
図38は、以下に示す試料をTDS分析したときの、水分子に相当する質量電荷比M/z
=18での放出量の結果である。
図38(A)に試料221、
図38(B)に試料222
、
図38(C)に試料223の結果を示す。いずれの試料も無アルカリガラス基板上にI
GZO膜を100nm成膜し、次いで酸化窒化シリコン膜を100nmの厚さで成膜した
。酸化窒化シリコン膜はプラズマCVD法でSiH
4ガス、およびN
2Oガスを用いて成
膜時基板温度は350℃にて成膜した。その後、酸化窒化シリコン膜に、試料222には
放電電力500Wで、試料223には放電電力3000Wで、酸素プラズマ処理を行った
。縦軸は放出量を示すシグナルの強度である。
【0098】
TDS分析の試料にIGZO膜を形成するときは、ターゲットとして酸化物を用いてスパ
ッタ成膜を行った。ターゲット中の原子数比がインジウム:ガリウム:亜鉛=4:2:4
.1である。成膜時の基板温度は130℃、成膜ガス流量比はAr:O2=9:1、成膜
圧力は0.6Paである。
【0099】
図38にて各試料の120℃付近の水分子の放出量を比較すると、試料221が最も多く
、次いで試料222が多く、試料223は少ない。これは、酸化窒化シリコン膜への酸素
プラズマ処理が表面吸着水を減らしたことが原因の一つと考えられる。
【0100】
図39(A)、
図39(B)の各図は、試料221、試料222、試料223の各膜中の
水素濃度を二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass
Spectrometry)にて測定した結果である。SIMSの分析は、基板側から酸
化窒化シリコン膜表面側に向かってプロファイル測定を行った。矢印220はプロファイ
ル測定した方向を示す。
図39の各図中には、酸化窒化シリコン膜内のプロファイル21
6、IGZO膜内のプロファイル217、基板内のプロファイル218、が示されている
。
【0101】
図39(A)は、酸素プラズマ処理の放電電力を条件振りし、酸化窒化シリコン膜中の水
素濃度を定量したSIMS分析結果を示す。
図39(B)は、同様にIGZO膜中の水素
濃度を定量したSIMS分析結果を示す。試料221が酸素プラズマ処理無し条件、試料
222が放電電力500W条件、試料223が放電電力3000W条件、である。
【0102】
図39の横軸は膜面に垂直な深さ方向である。横軸の0nmはSIMS測定の便宜上の位
置であり、領域225が酸化窒化シリコン膜の表面付近に相当する。
図39(A)では領
域225の水素濃度において、酸素プラズマ処理をした条件である試料222、試料22
3は、酸素プラズマ処理無しの試料221に比べて低い。ここから、
図38にて120℃
付近の水分子の放出量に差がでたのは、酸化窒化シリコン膜への酸素プラズマ処理が表面
吸着水を減らしたから、と考えられる。
【0103】
また
図39(B)において、酸素プラズマ処理をした条件では、IGZO膜中の水素濃度
が減っていることがわかる。このとき、放電電力が大きいほどIGZO膜中の水素濃度は
低減される。酸化窒化シリコン膜への酸素プラズマ処理は、酸化窒化シリコン膜表面のみ
ならず、IGZO膜すなわち酸化物半導体膜中の水素濃度の低減にも有効である。
【0104】
図39(C)、
図39(D)の各図は、試料226、227、228の各膜中の水素濃度
をSIMSにて測定した結果である。酸化窒化シリコン膜への酸素プラズマ処理無しの試
料226、即ち試料221と同じ条件を用いて作製された試料である。また、試料227
は、試料226の作製工程において、酸素プラズマ処理におけるチャンバー内ガス圧力条
件200Paとして作製された試料であり、試料228は、同チャンバー内ガス圧力条件
を40Paとした試料である。
図39(C)は酸化窒化シリコン膜中の水素濃度を定量し
、
図39(D)はIGZO膜中の水素濃度を定量している。酸素プラズマ処理時のチャン
バー内ガス圧力条件において40Paから200Paの範囲では、圧力が小さいほど酸化
物半導体膜中の水素濃度を低減できると考えられる。
【0105】
図40は以下に示す試料をTDS分析したときの、酸素分子に相当する質量電荷比M/z
=32での放出量の結果である。いずれの試料も無アルカリガラス基板上にIGZO膜を
100nm成膜し、次いで酸化窒化シリコン膜を100nmの厚さで成膜した。酸化窒化
シリコン膜はプラズマCVD法でSiH
4ガス、およびN
2Oガスを用いて成膜時基板温
度は350℃にて成膜した。さらに放電電力3000W、チャンバー内ガス圧力200P
aで、酸素プラズマ処理を行った。
【0106】
それぞれのTDS分析に用いた試料において、酸素プラズマ処理時間は、
図40(A)は
30sec、
図40(B)は60sec、
図40(C)は100sec、
図40(D)は
300sec、
図40(E)は600secである。これらは基板温度220℃にて酸素
プラズマ処理を行った。また、
図40(F)は30sec、
図40(G)は60sec、
図40(H)は100sec、
図40(I)は300secである。これらは基板温度3
50℃にて酸素プラズマ処理を行った。
【0107】
図40からは、酸化窒化シリコン膜への酸素プラズマ処理する時間が長いほど、酸素の放
出量が大きいことがわかる。また、酸素プラズマ処理するときの基板温度が低いと、酸素
の放出量が大きいことがわかる。
【0108】
図41には、
図40で示される酸素放出量を、横軸に処理時間、縦軸に酸素放出量として
示す。破線231は基板温度220℃にて酸素プラズマ処理を行った結果(
図40(A)
乃至
図40(E))から得られた値を示す。実線232は基板温度350℃にて酸素プラ
ズマ処理を行った結果(
図40(F)乃至
図40(I))から得られた値を示す。酸素プ
ラズマ処理基板温度350℃条件の酸素放出量は、酸素プラズマ処理時間を長くすると、
2×10
14分子/cm
2未満で飽和するのに対し、同基板温度220℃条件の酸素放出
量は、酸素プラズマ処理時間を長くしても、少なくとも1.2×10
15分子/cm
2で
飽和しなかった。つまり酸素放出量を高めるためには酸素プラズマ処理するときの基板温
度は350℃と比較すると220℃がより望ましいことがわかる。
【0109】
図42には、無アルカリガラス基板上に酸化窒化シリコン膜を100nmの厚さで成膜し
、その後、酸化窒化シリコン膜に酸素プラズマ処理を行った試料をTDS分析したときの
、酸素分子に相当する質量電荷比M/z=32での放出量を示す。酸化窒化シリコン膜は
プラズマCVD法でSiH
4ガス、およびN
2Oガスを用いて成膜した。
図42(A)は
酸化窒化シリコン膜成膜時の温度を350℃としたときの結果であり、測定温度において
80℃から450℃までの範囲での放出量は5.17×10
14分子/cm
2であった。
図42(B)は酸化窒化シリコン膜成膜時の温度を220℃としたときの結果であり、測
定温度において80℃から450℃までの範囲での放出量は1.47×10
15分子/c
m
2であった。
【0110】
図42(A)と
図42(B)とが異なる一つの理由としては、以下が考えられる。酸化窒
化シリコン膜成膜時の温度が低い、すなわち220℃の条件では、膜密度が小さく、膜中
の空隙が多い。この空隙が過剰酸素が添加される余地となり、より多くの過剰酸素を吸収
または供給することができる可能性がある。
【0111】
このように、酸化窒化シリコン膜から、過剰酸素を酸化物半導体膜に供給するためには、
酸化窒化シリコン膜に220℃を例とする、350℃以下の低い基板温度にて酸素プラズ
マ処理をすること、放電電力を高くすること、放電時のチャンバー内圧力を小さくするこ
と、酸素プラズマ処理時間を長くすること、および酸化窒化シリコン膜の成膜温度を低く
することが有効である。また、酸化窒化シリコン膜が過剰酸素の供給源となるように形成
されれば、酸化窒化シリコン膜の膜厚を厚くすることも有効である。
【0112】
一方、酸化物半導体膜上に酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法で成膜するとき、成膜
条件によっては酸化物半導体膜の電気抵抗が下がる可能性がある。
図43は、石英ガラス
基板上にIGZO膜を50nmの厚さで成膜し、その上に酸化窒化シリコン膜を成膜した
試料の、IGZO膜の電気抵抗値を示す。各試料は基板一辺が1cmの正方形とし、その
四隅の2mm角にて酸化窒化シリコン膜を除去し、IGZO膜と電気的に接触する2mm
角の電極を形成した。この電極を端子として、隣り合う電極同士間の電気抵抗値を測定し
た。単位はΩである。
【0113】
酸化窒化シリコン膜はプラズマCVD法でSiH
4ガス、およびN
2Oガスを用いて成膜
した。酸化窒化シリコン膜の膜厚は、0nmすなわち成膜処理しない条件から、60nm
まで条件振りを行った。
図43(A)の結果の各試料は酸化窒化シリコン膜の成膜時基板
温度は350℃にて成膜し、
図43(B)の結果の各試料は酸化窒化シリコン膜の成膜時
基板温度は220℃にて成膜した。
図43中の破線235は、酸化窒化シリコン膜成膜前
のIGZO膜の電気抵抗値である。
【0114】
プラズマCVD法により酸化窒化シリコン膜を成膜するとき、チャンバー内の水素プラズ
マ雰囲気によりIGZO膜中に水素が拡散し、酸素欠損と水素等とが結合し、酸化窒化シ
リコン膜の電気抵抗が下がる可能性が考えられる。酸化窒化シリコン膜の電気抵抗が下が
る傾向は、
図43(A)で示される基板温度350℃の条件の方が、
図43(B)で示さ
れる基板温度220℃の条件より顕著である。これは、基板温度が高くなるにつれ、IG
ZO膜中への水素の拡散、および酸素欠損と水素等との結合が促進されたため、と考えら
れる。この見地から考えると、プラズマCVD法により酸化窒化シリコン膜を成膜すると
きの基板温度は低い方が望ましい。
【0115】
本発明者らは、酸素プラズマ処理の効果を確認するため、酸化物半導体膜と、酸素プラズ
マ処理を行った酸化窒化シリコン膜を構造中に有する表示装置を作製した。この表示装置
を分解し、該表示装置から画素電極を除去することで得られたトランジスタをTDS分析
したときの酸素分子に相当する質量電荷比M/z=32での放出量の結果を
図44に示す
。いずれの測定した試料も、有機樹脂は除去してある。酸化窒化シリコン膜成膜後にて、
試料241は酸素プラズマ処理は無しとした。また試料242は酸素プラズマ処理120
sec、試料243は酸素プラズマ処理600sec、の処理をおこなった。また表示装
置の構造は本発明の一態様の構造とは異なるものの、IGZO膜上に酸化窒化シリコン膜
を有しており、酸化窒化シリコン膜成膜後あるいは酸素プラズマ処理後のプロセス温度上
限は250℃である。
【0116】
一方、酸化物半導体膜と、ゲート絶縁膜に酸化窒化シリコン膜を有する、本発明の一態様
とは別の市販の表示装置を分解し、画素電極を除去した状態の試料244を用意した。こ
の試料244をTDS分析したときの酸素分子に相当する質量電荷比M/z=32での放
出量を
図44中に表す。
【0117】
酸化窒化シリコン膜に酸素プラズマ処理を行わない条件の試料241は150℃以下にT
DS分析の測定温度範囲内で最大のピークが表れるのに対して、同酸素プラズマ処理を行
った条件の試料242、試料243は150℃から350℃の間に測定温度範囲内で最大
のピークが表れた。一方、本発明の一態様とは別の市販の表示装置の試料条件では、35
0℃から450℃の間に測定温度範囲内で最大のピークが表れた。このように、市販の表
示装置の試料は、酸化窒化シリコン膜に酸素プラズマ処理を行った条件で作製された試料
と、最大ピークが表れるときの試料温度にて区別することができる。
【0118】
酸素プラズマ処理を行った酸化窒化シリコン膜は十分に過剰酸素を含んでいることから、
その後の工程にて熱処理を行い酸化物半導体膜に酸素を供給し、半導体装置や表示装置が
完成した後でも、本発明の特徴である酸素プラズマ処理を行った酸化窒化シリコン膜をT
DS分析すると、酸素分子に相当する質量電荷比M/z=32での放出量にて150℃か
ら350℃の間に測定温度範囲内で最大のピークが表れる。完成した半導体装置や表示装
置が有するトランジスタ中の酸化物半導体膜においても、この温度範囲で熱処理すると、
導電率が下がることがわかる。
【0119】
トランジスタの作製工程においては、酸化窒化シリコン膜に酸素プラズマ処理を行った後
、150℃以上、好ましくは200℃以上、さらに好ましくは250℃以上、にて熱処理
することで、酸化物半導体膜に酸素を供給することができる。但し熱処理温度が450℃
を超えると、熱処理ガス雰囲気によっては酸化物半導体膜中の酸素が水素と結合し水とな
って放出するので、450℃以下が好ましい。また金属材料を含む膜が形成されている場
合、同様に酸化物半導体膜中の酸素を吸収するので、この場合も適宜熱処理温度上限を決
定する。
【0120】
絶縁膜110は、上記酸化窒化シリコン膜の単層ではなく、プラズマ化学気相堆積法、ス
パッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、
窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジ
ルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜
、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を用い、2層の積層構造、
または3層以上の積層構造としてもよい。
【0121】
また、トランジスタ100のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜108と接する
絶縁膜110は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素
を含有する領域(過剰酸素領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜11
0は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜110に過剰酸素領域を
設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜110を形成する、もしくは成膜後の絶縁
膜110を酸素雰囲気下で熱処理すればよい。
【0122】
また、絶縁膜110として、酸化ハフニウムを積層構造中の一つの膜として用いる場合、
以下の効果を奏する。酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘
電率が高い。したがって、酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜110の膜厚を大
きくできるため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、
オフ電流の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化
ハフニウムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。した
がって、オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウ
ムを用いることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられ
る。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。
【0123】
また、絶縁膜110は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴法(
ESR:Electron Spin Resonance)で観察されるシグナルが少
ない方が好ましい。例えば、上述のシグナルとしては、g値が2.001に観察されるE
’センターに起因するシグナルが挙げられる。なお、E’センターは、シリコンのダング
リングボンドに起因する。絶縁膜110としては、E’センター起因のスピン密度が、3
×1017spins/cm3以下、好ましくは5×1016spins/cm3以下で
ある酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜を用いればよい。
【0124】
また、絶縁膜110には、上述のシグナル以外に二酸化窒素(NO2)に起因するシグナ
ルが観察される場合がある。当該シグナルは、Nの核スピンにより3つのシグナルに分裂
しており、それぞれのg値が2.037以上2.039以下(第1のシグナルとする)、
g値が2.001以上2.003以下(第2のシグナルとする)、及びg値が1.964
以上1.966以下(第3のシグナルとする)に観察される。
【0125】
例えば、絶縁膜110として、二酸化窒素(NO2)に起因するシグナルのスピン密度が
、1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3未満である絶縁
膜を用いると好適である。
【0126】
なお、二酸化窒素(NO2)を含む窒素酸化物(NOx)は、絶縁膜110中に準位を形
成する。当該準位は、酸化物半導体膜108のエネルギーギャップ内に位置する。そのた
め、窒素酸化物(NOx)が、絶縁膜110及び酸化物半導体膜108の界面に拡散する
と、当該準位が絶縁膜110側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラ
ップされた電子が、絶縁膜110及び酸化物半導体膜108界面近傍に留まるため、トラ
ンジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。したがって、絶縁膜110
としては、窒素酸化物の含有量が少ない膜を用いると、トランジスタのしきい値電圧のシ
フトを低減することができる。
【0127】
窒素酸化物(NOx)の放出量が少ない絶縁膜としては、例えば、酸化窒化シリコン膜を
用いることができる。当該酸化窒化シリコン膜は、TDS分析において、窒素酸化物(N
Ox)の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量
が1×1018分子/cm3以上5×1019分子/cm3以下である。なお、上記のア
ンモニアの放出量は、TDS分析の測定における加熱処理の温度が50℃以上650℃以
下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。
【0128】
窒素酸化物(NOx)は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応するため、アンモ
ニアの放出量が多い絶縁膜を用いることで窒素酸化物(NOx)が低減される。
【0129】
なお、絶縁膜110をSIMSで分析した場合、膜中の窒素濃度が6×1020atom
s/cm3以下であると好ましい。
【0130】
[酸化物半導体膜]
酸化物半導体膜108としては、先に示す材料を用いることができる。
【0131】
酸化物半導体膜108がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜する
ために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In>Mを満たすこと
が好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:
M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1
等が挙げられる。
【0132】
また、酸化物半導体膜108が、In-M-Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲッ
トとしては、多結晶のIn-M-Zn酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。多結
晶のIn-M-Zn酸化物を含むターゲットを用いることで、結晶性を有する酸化物半導
体膜108を形成しやすくなる。なお、成膜される酸化物半導体膜108の原子数比は、
上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%
の変動を含む。例えば、酸化物半導体膜108に用いるスパッタリングターゲットの組成
がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される酸化物半導体膜1
08の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0133】
また、酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5e
V以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、ト
ランジスタ100のオフ電流を低減することができる。
【0134】
また、酸化物半導体膜108の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以
上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0135】
また、酸化物半導体膜108は、非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述
するCAAC-OS(C Axis Aligned Crystalline Oxi
de Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含
む。
【0136】
[第3の絶縁膜]
絶縁膜116は、窒素または水素を有する。絶縁膜116としては、例えば、窒化物絶縁
膜が挙げられる。該窒化物絶縁膜としては、具体的には、窒化シリコン、窒化酸化シリコ
ン、酸化窒化シリコン等を含む膜が挙げられる。絶縁膜116に含まれる水素濃度は、1
×1022atoms/cm3以上であると好ましい。また、絶縁膜116は、酸化物半
導体膜108の第2の領域108nと接する。したがって、絶縁膜116と接する第2の
領域108n中の不純物(窒素または水素)濃度が高くなり、第2の領域108nのキャ
リア密度を高めることができる。
【0137】
[第4の絶縁膜]
絶縁膜118としては、酸化物絶縁膜を用いることができる。また、絶縁膜118として
は、酸化物絶縁膜と、窒化物絶縁膜との積層膜を用いることができる。絶縁膜118とし
て、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸
化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn酸化物などを用いればよい。
【0138】
また、絶縁膜118としては、外部からの水素、水等のバリア膜として機能する膜である
ことが好ましい。
【0139】
絶縁膜118の厚さは、30nm以上500nm以下、または100nm以上400nm
以下とすることができる。
【0140】
<1-3.トランジスタの構成例2>
次に、
図1(A)(B)(C)に示すトランジスタと異なる構成について、
図2(A)(
B)(C)を用いて説明する。
【0141】
図2(A)は、トランジスタ100Aの上面図であり、
図2(B)は
図2(A)の一点鎖
線X1-X2間の断面図であり、
図2(C)は
図2(A)の一点鎖線Y1-Y2間の断面
図である。
【0142】
図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aは、基板102上の導電膜106と
、導電膜106上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の酸化物半導体膜108と、酸化物
半導体膜108上の絶縁膜110と、絶縁膜110上の導電膜112と、絶縁膜104、
酸化物半導体膜108、及び導電膜112上の絶縁膜116と、を有する。
【0143】
トランジスタ100Aは、先に示すトランジスタ100の構成に加え、導電膜106と、
開口部143と、を有する。
【0144】
なお、開口部143は、絶縁膜104、110に設けられる。また、導電膜106は、開
口部143を介して、導電膜112と、電気的に接続される。よって、導電膜106と導
電膜112には、同じ電位が与えられる。なお、開口部143を設けずに、導電膜106
と、導電膜112と、に異なる電位を与えてもよい。または、開口部143を設けずに、
導電膜106を遮光膜として用いてもよい。例えば、導電膜106を遮光性の材料により
形成することで、第1の領域108iに照射される下方からの光を抑制することができる
。
【0145】
また、トランジスタ100Aの構成とする場合、導電膜106は、第1のゲート電極(ボ
トムゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電膜112は、第2のゲート電極(ト
ップゲート電極ともいう)としての機能を有する。また、絶縁膜104は、第1のゲート
絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜110は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する
。
【0146】
導電膜106としては、先に記載の導電膜112、120a、120bと同様の材料を用
いることができる。特に導電膜106として、銅を含む材料により形成することで電気抵
抗を低くすることができるため好適である。例えば、導電膜106を窒化チタン膜、窒化
タンタル膜、またはタングステン膜上に銅膜を設ける積層構造とし、導電膜120a、1
20bを窒化チタン膜、窒化タンタル膜、またはタングステン膜上に銅膜を設ける積層構
造とすると好適である。この場合、トランジスタ100Aを表示装置の画素トランジスタ
及び駆動トランジスタのいずれか一方または双方に用いることで、導電膜106と導電膜
120aとの間に生じる寄生容量、及び導電膜106と導電膜120bとの間に生じる寄
生容量を低くすることができる。したがって、導電膜106、導電膜120a、及び導電
膜120bを、トランジスタ100Aの第1のゲート電極、ソース電極、及びドレイン電
極として用いるのみならず、表示装置の電源供給用の配線、信号供給用の配線、または接
続用の配線等に用いる事も可能となる。
【0147】
このように、
図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aは、先に説明したトラ
ンジスタ100と異なり、酸化物半導体膜108の上下にゲート電極として機能する導電
膜を有する構造である。トランジスタ100Aに示すように、本発明の一態様の半導体装
置には、複数のゲート電極を設けてもよい。
【0148】
また、
図2(B)(C)に示すように、酸化物半導体膜108は、第1のゲート電極とし
て機能する導電膜106と、第2のゲート電極として機能する導電膜112のそれぞれと
対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。
【0149】
また、導電膜112のチャネル幅方向の長さは、酸化物半導体膜108のチャネル幅方向
の長さよりも長く、酸化物半導体膜108のチャネル幅方向全体は、絶縁膜110を間に
挟んで導電膜112に覆われている。また、導電膜112と導電膜106とは、絶縁膜1
04、及び絶縁膜110に設けられる開口部143において接続されるため、酸化物半導
体膜108のチャネル幅方向の側面の一方は、絶縁膜110を間に挟んで導電膜112と
対向している。
【0150】
別言すると、導電膜106及び導電膜112は、絶縁膜104、110に設けられる開口
部143において接続され、且つ酸化物半導体膜108の側端部よりも外側に位置する領
域を有する。
【0151】
このような構成を有することで、トランジスタ100Aに含まれる酸化物半導体膜108
を、第1のゲート電極として機能する導電膜106及び第2のゲート電極として機能する
導電膜112の電界によって電気的に取り囲むことができる。トランジスタ100Aのよ
うに、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成され
る酸化物半導体膜108を電気的に取り囲むトランジスタのデバイス構造をSurrou
nded channel(S-channel)構造と呼ぶことができる。
【0152】
トランジスタ100Aは、S-channel構造を有するため、導電膜106または導
電膜112によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導体膜108に
印加することができるため、トランジスタ100Aの電流駆動能力が向上し、高いオン電
流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トラ
ンジスタ100Aを微細化することが可能となる。また、トランジスタ100Aは、酸化
物半導体膜108が導電膜106、及び導電膜112によって取り囲まれた構造を有する
ため、トランジスタ100Aの機械的強度を高めることができる。
【0153】
なお、トランジスタ100Aのチャネル幅方向において、酸化物半導体膜108の開口部
143が形成されていない側に、開口部143と異なる開口部を形成してもよい。
【0154】
また、トランジスタ100Aに示すように、トランジスタが、半導体膜を間に挟んで存在
する一対のゲート電極を有している場合、一方のゲート電極には信号Aが、他方のゲート
電極には固定電位Vbが与えられてもよい。また、一方のゲート電極には信号Aが、他方
のゲート電極には信号Bが与えられてもよい。また、一方のゲート電極には固定電位Va
が、他方のゲート電極には固定電位Vbが与えられてもよい。
【0155】
信号Aは、例えば、導通状態または非導通状態を制御するための信号である。信号Aは、
電位V1、または電位V2(V1>V2とする)の2種類の電位をとるデジタル信号であ
ってもよい。例えば、電位V1を高電源電位とし、電位V2を低電源電位とすることがで
きる。信号Aは、アナログ信号であってもよい。
【0156】
固定電位Vbは、例えば、トランジスタのしきい値電圧VthAを制御するための電位で
ある。固定電位Vbは、電位V1、または電位V2であってもよい。この場合、固定電位
Vbを生成するための電位発生回路を、別途設ける必要がなく好ましい。固定電位Vbは
、電位V1、または電位V2と異なる電位であってもよい。固定電位Vbを低くすること
で、しきい値電圧VthAを高くできる場合がある。その結果、ゲートーソース間電圧V
gsが0Vのときのドレイン電流を低減し、トランジスタを有する回路のリーク電流を低
減できる場合がある。例えば、固定電位Vbを低電源電位よりも低くしてもよい。一方で
、固定電位Vbを高くすることで、しきい値電圧VthAを低くできる場合がある。その
結果、ゲート-ソース間電圧Vgsが高電源電位のときのドレイン電流を向上させ、トラ
ンジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。例えば、固定電位Vbを低電
源電位よりも高くしてもよい。
【0157】
信号Bは、例えば、導通状態または非導通状態を制御するための信号である。信号Bは、
電位V3、または電位V4(V3>V4とする)の2種類の電位をとるデジタル信号であ
ってもよい。例えば、電位V3を高電源電位とし、電位V4を低電源電位とすることがで
きる。信号Bは、アナログ信号であってもよい。
【0158】
信号Aと信号Bが共にデジタル信号である場合、信号Bは、信号Aと同じデジタル値を持
つ信号であってもよい。この場合、トランジスタのオン電流を向上し、トランジスタを有
する回路の動作速度を向上できる場合がある。このとき、信号Aにおける電位V1及び電
位V2は、信号Bにおける電位V3及び電位V4と、異なっていても良い。例えば、信号
Bが入力されるゲートに対応するゲート絶縁膜が、信号Aが入力されるゲートに対応する
ゲート絶縁膜よりも厚い場合、信号Bの電位振幅(V3-V4)を、信号Aの電位振幅(
V1-V2)より大きくしても良い。そうすることで、トランジスタの導通状態または非
導通状態に対して、信号Aが与える影響と、信号Bが与える影響と、を同程度とすること
ができる場合がある。
【0159】
信号Aと信号Bが共にデジタル信号である場合、信号Bは、信号Aと異なるデジタル値を
持つ信号であってもよい。この場合、トランジスタの制御を信号Aと信号Bによって別々
に行うことができ、より高い機能を実現できる場合がある。例えば、トランジスタがnチ
ャネル型である場合、信号Aが電位V1であり、かつ、信号Bが電位V3である場合のみ
導通状態となる場合や、信号Aが電位V2であり、かつ、信号Bが電位V4である場合の
み非導通状態となる場合には、一つのトランジスタでNAND回路やNOR回路等の機能
を実現できる場合がある。また、信号Bは、しきい値電圧VthAを制御するための信号
であってもよい。例えば、信号Bは、トランジスタを有する回路が動作している期間と、
当該回路が動作していない期間と、で電位が異なる信号であっても良い。信号Bは、回路
の動作モードに合わせて電位が異なる信号であってもよい。この場合、信号Bは信号Aほ
ど頻繁には電位が切り替わらない場合がある。
【0160】
信号Aと信号Bが共にアナログ信号である場合、信号Bは、信号Aと同じ電位のアナログ
信号、信号Aの電位を定数倍したアナログ信号、または、信号Aの電位を定数だけ加算も
しくは減算したアナログ信号等であってもよい。この場合、トランジスタのオン電流が向
上し、トランジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。信号Bは、信号A
と異なるアナログ信号であってもよい。この場合、トランジスタの制御を信号Aと信号B
によって別々に行うことができ、より高い機能を実現できる場合がある。
【0161】
信号Aがデジタル信号であり、信号Bがアナログ信号であってもよい。または信号Aがア
ナログ信号であり、信号Bがデジタル信号であってもよい。
【0162】
トランジスタの両方のゲート電極に固定電位を与える場合、トランジスタを、抵抗素子と
同等の素子として機能させることができる場合がある。例えば、トランジスタがnチャネ
ル型である場合、固定電位Vaまたは固定電位Vbを高く(低く)することで、トランジ
スタの実効抵抗を低く(高く)することができる場合がある。固定電位Va及び固定電位
Vbを共に高く(低く)することで、一つのゲートしか有さないトランジスタによって得
られる実効抵抗よりも低い(高い)実効抵抗が得られる場合がある。
【0163】
なお、トランジスタ100Aのその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様であ
り、同様の効果を奏する。
【0164】
また、トランジスタ100A上にさらに、絶縁膜を形成してもよい。その場合の一例を図
3(A)(B)に示す。
図3(A)(B)は、トランジスタ100Bの断面図である。ト
ランジスタ100Bの上面図としては、
図2(A)に示すトランジスタ100Aと同様で
あるため、ここでの説明は省略する。
【0165】
図3(A)(B)に示すトランジスタ100Bは、導電膜120a、120b、及び絶縁
膜118上に絶縁膜122を有する。それ以外の構成については、トランジスタ100A
と同様であり、同様の効果を奏する。
【0166】
絶縁膜122は、トランジスタ等に起因する凹凸等を平坦化させる機能を有する。絶縁膜
122としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成される。該
無機材料としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シ
リコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜等が挙げられる。該有機材料として
は、例えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる。
【0167】
<1-4.トランジスタの構成例3>
次に、
図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aと異なる構成について、
図4
を用いて説明する。
【0168】
図4(A)(B)は、トランジスタ100Cの断面図である。なお、トランジスタ100
Cの上面図としては、
図2(A)に示すトランジスタ100Aと同様であるため、ここで
の説明は省略する。
【0169】
図4(A)(B)に示すトランジスタ100Cは、導電膜112の積層構造、導電膜11
2の形状、及び絶縁膜110の形状がトランジスタ100Aと異なる。
【0170】
トランジスタ100Cの導電膜112は、絶縁膜110上の導電膜112_1と、導電膜
112_1上の導電膜112_2と、を有する。例えば、導電膜112_1として、酸化
物導電膜を用いることにより、絶縁膜110に過剰酸素を添加することができる。上記酸
化物導電膜としては、スパッタリング法を用い、酸素ガスを含む雰囲気にて形成すること
ができる。また、上記酸化物導電膜としては、例えば、インジウムと錫とを有する酸化物
、タングステンとインジウムとを有する酸化物、タングステンとインジウムと亜鉛とを有
する酸化物、チタンとインジウムとを有する酸化物、チタンとインジウムと錫とを有する
酸化物、インジウムと亜鉛とを有する酸化物、シリコンとインジウムと錫とを有する酸化
物、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物等が挙げられる。
【0171】
また、
図4(B)に示すように、開口部143において、導電膜112_2と、導電膜1
06とが接続される。開口部143を形成する際に、導電膜112_1となる導電膜を形
成した後、開口部143を形成することで、
図4(B)に示す形状とすることができる。
導電膜112_1に酸化物導電膜を適用した場合、導電膜112_2と、導電膜106と
が接続される構成とすることで、導電膜112と導電膜106との接続抵抗を低くするこ
とができる。
【0172】
また、トランジスタ100Cの導電膜112及び絶縁膜110は、テーパー形状である。
より具体的には、導電膜112の下端部は、導電膜112の上端部よりも外側に形成され
る。また、絶縁膜110の下端部は、絶縁膜110の上端部よりも外側に形成される。ま
た、導電膜112の下端部は、絶縁膜110の上端部と概略同じ位置に形成される。
【0173】
トランジスタ100Cの導電膜112及び絶縁膜110をテーパー形状とすることで、ト
ランジスタ100Aの導電膜112及び絶縁膜110が矩形の場合と比較し、絶縁膜11
6の被覆性を高めることができるため好適である。
【0174】
なお、トランジスタ100Cのその他の構成は、先に示すトランジスタ100Aと同様で
あり、同様の効果を奏する。
【0175】
<1-5.半導体装置の作製方法>
次に、
図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aの作製方法の一例について、
図5乃至
図7を用いて説明する。なお、
図5乃至
図7は、トランジスタ100Aの作製方
法を説明するチャネル長(L)方向、及びチャネル幅(W)方向の断面図である。
【0176】
まず、基板102上に導電膜106を形成する。次に、基板102、及び導電膜106上
に絶縁膜104を形成し、絶縁膜104上に島状の酸化物半導体膜108i_0を形成す
る(
図5(A)参照)。
【0177】
導電膜106としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態にお
いては、導電膜106として、スパッタリング装置を用い、厚さ50nmのタングステン
膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成する。
【0178】
なお、導電膜106となる導電膜の加工方法としては、ウエットエッチング法及びドライ
エッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態では、ウエットエ
ッチング法にて銅膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタングステン膜をエ
ッチングすることで導電膜を加工し、導電膜106を形成する。
【0179】
絶縁膜104としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(P
LD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。本実施の形態において
は、絶縁膜104として、プラズマCVD装置を用い、厚さ400nmの窒化シリコン膜
と、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜とを形成する。
【0180】
また、絶縁膜104を形成した後、絶縁膜104に酸素を添加してもよい。絶縁膜104
に添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等
がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法
等がある。また、絶縁膜上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介して絶縁膜
104に酸素を添加してもよい。
【0181】
上述の酸素の脱離を抑制する膜として、インジウム、亜鉛、ガリウム、錫、アルミニウム
、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、またはタングステ
ンの1以上を有する導電膜あるいは半導体膜を用いて形成することができる。
【0182】
また、プラズマ処理で酸素の添加を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸素
プラズマを発生させることで、絶縁膜104への酸素添加量を増加させることができる。
【0183】
島状の酸化物半導体膜108i_0は、例えば単層とすることができる。より好ましくは
第1の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜と、を積層して形成することができる。
上記積層して形成するとき第1の酸化物半導体膜の形成条件としては、第2の酸化物半導
体膜よりも基板温度または酸素流量比のいずれか一方または双方を低くすると好ましい。
【0184】
具体的には、第1の酸化物半導体膜の形成条件としては、基板温度を室温以上150℃未
満、好ましくは100℃以上140℃以下とし、酸素流量比を、0%を超えて30%未満
とする。また、第2の酸化物半導体膜の形成条件としては、基板温度を150℃以上35
0℃以下、好ましくは基板温度を160℃以上200℃以下とし、酸素流量比を30%以
上100%以下とする。
【0185】
上記のような形成条件とすることで、キャリア密度の異なる酸化物半導体膜を積層して形
成することができる。なお、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜を真空中で
連続して形成することで、各界面に不純物が取り込まれないため、より好適である。
【0186】
なお、酸化物半導体膜108i_0を加熱して成膜することで、酸化物半導体膜108の
結晶性を高めることができる。一方で、基板102として、大型のガラス基板(例えば、
第6世代乃至第10世代)を用いる場合、酸化物半導体膜108を成膜する際の基板温度
を200℃以上300℃以下とした場合、基板102が変形する(歪むまたは反る)場合
がある。よって、大型のガラス基板を用いる場合においては、酸化物半導体膜108の成
膜する際の基板温度を100℃以上200℃未満とすることで、ガラス基板の変形を抑制
することができる。
【0187】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして
用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、より
好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガスを用
いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0188】
また、スパッタリング法で酸化物半導体膜を成膜する場合、スパッタリング装置における
チャンバーは、酸化物半導体膜にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライ
オポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、高真空(5×10-7Paから1×
10-4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時
における、チャンバー内のH2Oに相当するガス分子(M/z=18に相当するガス分子
)の分圧を1×10-4Pa以下、好ましく5×10-5Pa以下とすることが好ましい
。
【0189】
また、第1の酸化物半導体膜の形成条件としては、In-Ga-Zn酸化物半導体ターゲ
ット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法に
より形成する。また、第1の酸化物半導体膜の形成時の基板温度を130℃とし、成膜ガ
スとして流量20sccmの酸素ガスと、流量180sccmのアルゴンガスとを用いる
(酸素流量比10%)。
【0190】
また、第2の酸化物半導体膜の形成条件としては、In-Ga-Zn酸化物半導体ターゲ
ット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法に
より形成する。また、第2の酸化物半導体膜の形成時の基板温度を170℃とし、成膜ガ
スとして流量60sccmの酸素ガスと、流量140sccmのアルゴンガスとを用いる
(酸素流量比30%)。
【0191】
なお、上記においては、第1の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜とを、基板温度
及び酸素流量比を変えることによって、キャリア密度の異なる酸化物半導体膜を積層する
構成について例示したが、これに限定されない。例えば、第1の酸化物半導体膜の形成時
において、不純物元素を添加することで、第2の酸化物半導体膜とキャリア密度の異なる
酸化物半導体膜を形成してもよい。当該不純物元素としては、水素、ホウ素、炭素、窒素
、フッ素、リン、硫黄、塩素、希ガス等が挙げられる。
【0192】
なお、第1の酸化物半導体膜中に添加する不純物元素としては、上述した元素の中でも、
窒素が特に好ましい。例えば、第1の酸化物半導体膜の形成時において、アルゴンガス及
び窒素ガスを成膜ガスとして用いる、あるいはアルゴンガス及び一酸化二窒素ガスを成膜
ガスとして用いることで、第1の酸化物半導体膜中に窒素を添加することができる。
【0193】
また、第1の酸化物半導体膜の形成時において、不純物元素を用いる場合、不純物元素を
添加したくない膜、例えば、第2の酸化物半導体膜に不純物元素の混入を避けるために、
第1の酸化物半導体膜を形成するチャンバーを、独立して設けると好適である。
【0194】
また、第1の酸化物半導体膜を形成後に、第1の酸化物半導体膜中に不純物元素を添加し
てもよい。第1の酸化物半導体膜形成後に不純物元素を添加する方法としては、例えば、
ドーピング処理またはプラズマ処理を用いることができる。
【0195】
また、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行い、
第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜の脱水素化または脱水化をしてもよい。
加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、または250℃以上45
0℃以下、または300℃以上450℃以下である。
【0196】
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒
素を含む不活性ガス雰囲気で行うことができる。または、不活性ガス雰囲気で加熱した後
、酸素雰囲気で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水など
が含まれないことが好ましい。処理時間は3分以上24時間以下とすればよい。
【0197】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで
、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱処
理時間を短縮することができる。
【0198】
酸化物半導体膜を加熱しながら成膜する、または酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理
を行うことで、酸化物半導体膜において、SIMSにより得られる水素濃度を5×101
9atoms/cm3以下、または1×1019atoms/cm3以下、5×1018
atoms/cm3以下、または1×1018atoms/cm3以下、または5×10
17atoms/cm3以下、または1×1016atoms/cm3以下とすることが
できる。
【0199】
次に、絶縁膜104及び酸化物半導体膜上に絶縁膜110_0を形成する。(
図5(B)
参照)。
【0200】
絶縁膜110_0としては、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を、プラズマ化学
気相堆積装置(PECVD装置、または単にプラズマCVD装置という)を用いて形成す
ることができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気
体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシ
ラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化
二窒素、二酸化窒素等がある。
【0201】
また、絶縁膜110_0として、堆積性気体の流量に対する酸化性気体の流量を20倍よ
り大きく100倍未満、または40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100Pa
未満、または50Pa以下とするプラズマCVD装置を用いることで、欠陥量の少ない酸
化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0202】
また、絶縁膜110_0として、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置さ
れた基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内に
おける圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa
以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、絶縁膜110
_0として、緻密である酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができ
る。
【0203】
また、絶縁膜110_0を、マイクロ波を用いたプラズマCVD法を用いて形成してもよ
い。マイクロ波とは300MHzから300GHzの周波数域を指す。マイクロ波は、電
子温度が低く、電子エネルギーが小さい。また、供給された電力において、電子の加速に
用いられる割合が少なく、より多くの分子の解離及び電離に用いられることが可能であり
、密度の高いプラズマ(高密度プラズマ)を励起することができる。このため、被成膜面
及び堆積物へのプラズマダメージが少なく、欠陥の少ない絶縁膜110_0を形成するこ
とができる。
【0204】
また、絶縁膜110_0を、有機シランガスを用いたCVD法を用いて形成することがで
きる。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)
、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラ
シロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキ
サメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、ト
リスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)などのシリコン含有化合物を
用いることができる。有機シランガスを用いたCVD法を用いることで、被覆性の高い絶
縁膜110_0を形成することができる。
【0205】
本実施の形態では絶縁膜110_0として、プラズマCVD装置を用い、厚さ100nm
の酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0206】
次に、絶縁膜110_0上の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶
縁膜110_0、及び絶縁膜104の一部をエッチングすることで、導電膜106に達す
る開口部143を形成する(
図5(C)参照)。
【0207】
開口部143の形成方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のいず
れか一方または双方を用いればよい。本実施の形態においては、ドライエッチング法を用
い、開口部143を形成する。
【0208】
次に、開口部143を覆うように、導電膜106及び絶縁膜110_0上に導電膜112
_0を形成する。また、導電膜112_0として、例えば金属酸化膜を用いる場合、導電
膜112_0の形成時に導電膜112_0から絶縁膜110_0中に酸素が添加される場
合がある(
図5(D)参照)。
【0209】
なお、
図5(D)において、絶縁膜110_0中に添加される酸素を矢印で模式的に表し
ている。また、開口部143を覆うように、導電膜112_0を形成することで、導電膜
106と、導電膜112_0とが電気的に接続される。
【0210】
導電膜112_0として、金属酸化膜を用いる場合、導電膜112_0の形成方法として
は、スパッタリング法を用い、形成時に酸素ガスを含む雰囲気で形成することが好ましい
。形成時に酸素ガスを含む雰囲気で導電膜112_0を形成することで、絶縁膜110_
0中に酸素を好適に添加することができる。なお、導電膜112_0の形成方法としては
、スパッタリング法に限定されず、その他の方法、例えばALD(Atomic Lay
er Deposition)法を用いてもよい。
【0211】
本実施の形態においては、導電膜112_0として、スパッタリング法を用いて、膜厚が
100nmのIn-Ga-Zn酸化物であるIGZO膜(In:Ga:Zn=4:2:4
.1(原子数比)を成膜する。また、導電膜112_0の形成前、または導電膜112_
0の形成後に、絶縁膜110_0中に酸素添加処理を行ってもよい。当該酸素添加処理の
方法としては、絶縁膜104の形成後に行うことのできる酸素の添加と同様とすればよい
。
【0212】
次に、導電膜112_0上の所望の位置に、リソグラフィ工程によりマスク140を形成
する(
図6(A)参照)。
【0213】
次に、マスク140上から、エッチングを行い、導電膜112_0、及び絶縁膜110_
0を加工する。また、導電膜112_0及び絶縁膜110_0の加工後に、マスク140
を除去する。導電膜112_0、及び絶縁膜110_0を加工することで、島状の導電膜
112、及び島状の絶縁膜110が形成される(
図6(B)参照)。
【0214】
本実施の形態においては、ドライエッチング法を用い、導電膜112_0、及び絶縁膜1
10_0を加工する。
【0215】
なお、導電膜112、及び絶縁膜110の加工の際に、導電膜112が重畳しない領域の
酸化物半導体膜の膜厚が薄くなる場合がある。または、導電膜112、及び絶縁膜110
の加工の際に、酸化物半導体膜が重畳しない領域の絶縁膜104の膜厚が薄くなる場合が
ある。また、導電膜112_0、及び絶縁膜110_0の加工の際に、エッチャントまた
はエッチングガス(例えば、塩素など)が酸化物半導体膜中に添加される、あるいは導電
膜112_0、または絶縁膜110_0の構成元素が酸化物半導体膜中に添加される場合
がある。
【0216】
次に、絶縁膜104、酸化物半導体膜、及び導電膜112上に絶縁膜116を形成する。
なお、絶縁膜116を形成することで、絶縁膜116と接する酸化物半導体膜は、第2の
領域108nとなる。また、絶縁膜110と接する酸化物半導体膜は第1の領域108i
となる。これにより、第1の領域108i、及び第2の領域108nを有する酸化物半導
体膜108が形成される(
図6(C)参照)。
【0217】
絶縁膜116としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態にお
いては、絶縁膜116として、プラズマCVD装置を用い、厚さ100nmの窒化酸化シ
リコン膜を形成する。また、当該窒化酸化シリコン膜の形成時において、プラズマ処理と
、成膜処理との2つのステップを220℃の温度で行う。当該プラズマ処理としては、成
膜前に流量100sccmのアルゴンガスを、チャンバー内に導入し、チャンバー内の圧
力を40Paとし、RF電源(27.12MHz)に1000Wの電力を供給する。また
、成膜処理としては、流量50sccmのシランガスと、流量5000sccmの窒素ガ
スと、流量100sccmのアンモニアガスとを、チャンバー内に導入し、チャンバー内
の圧力を100Paとし、RF電源(27.12MHz)に1000Wの電力を供給する
。
【0218】
絶縁膜116が、窒化酸化シリコン膜を含むことで、絶縁膜116に接する第2の領域1
08nに窒化酸化シリコン膜中の窒素または水素を供給することができる。また、絶縁膜
116の形成時の温度を上述の温度とすることで、絶縁膜110に含まれる過剰酸素が外
部に放出されるのを抑制することができる。
【0219】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成する(
図7(A)参照)。
【0220】
絶縁膜118としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態にお
いては、絶縁膜118として、プラズマCVD装置を用い、厚さ300nmの酸化窒化シ
リコン膜を形成する。
【0221】
次に、絶縁膜118の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁膜1
18及び絶縁膜116の一部をエッチングすることで、第2の領域108nに達する開口
部141a、141bを形成する(
図7(B)参照)。
【0222】
絶縁膜118及び絶縁膜116をエッチングする方法としては、ウエットエッチング法及
びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態において
は、ドライエッチング法を用い、絶縁膜118、及び絶縁膜116を加工する。
【0223】
次に、開口部141a、141bを覆うように、第2の領域108n、及び絶縁膜118
上に導電膜を形成し、当該導電膜を所望の形状に加工することで導電膜120a、120
bを形成する(
図7(C)参照)。
【0224】
導電膜120a、120bとしては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実
施の形態においては、導電膜120a、120bとして、スパッタリング装置を用い、厚
さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成する。
【0225】
なお、導電膜120a、120bとなる導電膜の加工方法としては、ウエットエッチング
法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態では
、ウエットエッチング法にて銅膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタング
ステン膜をエッチングすることで導電膜を加工し、導電膜120a、120bを形成する
。
【0226】
以上の工程により、
図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aを作製すること
ができる。
【0227】
なお、トランジスタ100Aを構成する膜(絶縁膜、金属酸化膜、酸化物半導体膜、導電
膜等)としては、上述の形成方法の他、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、
真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、ALD法を用いて形成することができる
。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリン
グ法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。
熱CVD法の例として、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法が挙げられる。
【0228】
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャ
ンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行
う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズマ
ダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
【0229】
MOCVD法などの熱CVD法は、上記記載の導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜、金属酸
化膜などの膜を形成することができ、例えば、In-Ga-Zn-O膜を成膜する場合に
は、トリメチルインジウム(In(CH3)3)、トリメチルガリウム(Ga(CH3)
3)、及びジメチル亜鉛を用いる(Zn(CH3)2)。これらの組み合わせに限定され
ず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(Ga(C2H5)3)を用いるこ
ともでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(Zn(C2H5)2)を用いることもで
きる。
【0230】
また、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハ
フニウム前駆体を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフ
ニウム(TDMAH、Hf[N(CH3)2]4)やテトラキス(エチルメチルアミド)
ハフニウムなどのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O
3)の2種類のガスを用いる。
【0231】
また、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒と
アルミニウム前駆体を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA、Al(CH3)3)
など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。他の材料
としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アル
ミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)などが
ある。
【0232】
また、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロ
ロジシランを被成膜面に吸着させ、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給
して吸着物と反応させる。
【0233】
また、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6ガス
とB2H6ガスを順次導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2
ガスとを用いてタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを
用いてもよい。
【0234】
また、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-Zn-O膜
を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを用いてIn-O層を形成し、そ
の後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスとを用いてGaO層を形成し、更にその後Zn(
CH3)2ガスとO3ガスとを用いてZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこ
の例に限らない。また、これらのガスを用いてIn-Ga-O層やIn-Zn-O層、G
a-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O3ガスに代えてAr等の
不活性ガスで水をバブリングして得られたH2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO
3ガスを用いる方が好ましい。
【0235】
また、本実施の形態において、トランジスタが酸化物半導体膜を有する場合の例を示した
が、本発明の一態様は、これに限定されない。本発明の一態様では、トランジスタが酸化
物半導体膜を有さなくてもよい。一例としては、トランジスタのチャネル領域、チャネル
領域の近傍、ソース領域、またはドレイン領域において、Si(シリコン)、Ge(ゲル
マニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、などを有
する材料で形成してもよい。
【0236】
なお、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合
わせて用いることができる。
【0237】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1に示した本発明の一態様に用いることのできるト
ランジスタの変形例を示す。
【0238】
図4(A)(B)に示すトランジスタ100Cにて、導電膜112形成時に絶縁膜110
よりトランジスタのチャネル長方向に対して短く形成し、ドーピング処理またはプラズマ
処理により不純物元素を添加する、あるいは加熱処理をすることで、
図45で示すように
、第1の領域108iと第2の領域108nとの間に、領域108n_2を設けても良い
。このとき領域108n_2の導電率は、第1の領域108iより高く、第2の領域10
8nより低い。このような領域108n_2を形成することにより、半導体装置あるいは
表示装置の動作時に、トランジスタにおけるドレイン端部の電界強度が局所的に大きくな
るのを防ぐことができる。
【0239】
なお、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合
わせて用いることができる。
【0240】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、本発明の一態様に用いることのできる、酸化物半導体について
説明する。
【0241】
<2-1.酸化物半導体の組成>
酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウ
ムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、
イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、
チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム
、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれ
た一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0242】
ここでは、酸化物半導体が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するInMZnOである
場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなど
とする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、
ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、
ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして
、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0243】
<構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けら
れる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis ali
gned crystalline oxide semiconductor)、多結
晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semi
conductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorpho
us-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体
などがある。
【0244】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結
し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領
域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の
向きが変化している箇所を指す。
【0245】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合が
ある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。
なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウン
ダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界
の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向におい
て酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変
化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0246】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素
M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構
造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換
可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)
層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M
)層と表すこともできる。
【0247】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3
nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ
結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。した
がって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体
と区別が付かない場合がある。
【0248】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半
導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like
OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0249】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の
酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc
-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0250】
<原子数比>
次に、
図8(A)、
図8(B)、および
図8(C)を用いて、本発明に係る酸化物半導体
が有するインジウム、元素Mおよび亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明する。な
お、
図8(A)、
図8(B)、および
図8(C)には、酸素の原子数比については記載し
ない。また、酸化物半導体が有するインジウム、元素M、および亜鉛の原子数比のそれぞ
れの項を[In]、[M]、および[Zn]とする。
【0251】
図8(A)、
図8(B)、および
図8(C)において、破線は、[In]:[M]:[Z
n]=(1+α):(1-α):1の原子数比(-1≦α≦1)となるライン、[In]
:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):2の原子数比となるライン、[In]:
[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):3の原子数比となるライン、[In]:[
M]:[Zn]=(1+α):(1-α):4の原子数比となるライン、および[In]
:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):5の原子数比となるラインを表す。
【0252】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比(β≧0)とな
るライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、[In]
:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]
=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子
数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるラ
インを表す。
【0253】
また、
図8(A)、
図8(B)、および
図8(C)に示す、[In]:[M]:[Zn]
=0:2:1の原子数比、およびその近傍値の酸化物半導体は、スピネル型の結晶構造を
とりやすい。
【0254】
また、酸化物半導体中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。例
えば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の近傍値である場合、スピネ
ル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、原子数比が[In]:
[M]:[Zn]=1:0:0の近傍値である場合、ビックスバイト型の結晶構造と層状
の結晶構造との二相が共存しやすい。酸化物半導体中に複数の相が共存する場合、異なる
結晶構造の間において、結晶粒界が形成される場合がある。
【0255】
図8(A)に示す領域Aは、酸化物半導体が有する、インジウム、元素M、および亜鉛の
原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
【0256】
酸化物半導体は、インジウムの含有率を高くすることで、酸化物半導体のキャリア移動度
(電子移動度)を高くすることができる。従って、インジウムの含有率が高い酸化物半導
体はインジウムの含有率が低い酸化物半導体と比較してキャリア移動度が高くなる。
【0257】
一方、酸化物半導体中のインジウムおよび亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度が
低くなる。従って、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、およびその近
傍値である場合(例えば
図8(C)に示す領域C)は、絶縁性が高くなる。
【0258】
従って、本発明の一態様の酸化物半導体は、キャリア移動度が高く、かつ、結晶粒界が少
ない層状構造となりやすい、
図8(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ま
しい。
【0259】
特に、
図8(B)に示す領域Bでは、領域Aの中でも、CAAC-OSとなりやすく、キ
ャリア移動度も高い優れた酸化物半導体が得られる。
【0260】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結
晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりに
くいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低
下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物
半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定
する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
【0261】
なお、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4.1、およびその近傍
値を含む。近傍値には、例えば、[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。
また、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=5:1:6、およびその近傍値、および
[In]:[M]:[Zn]=5:1:7、およびその近傍値を含む。
【0262】
なお、酸化物半導体が有する性質は、原子数比によって一義的に定まらない。同じ原子数
比であっても、形成条件により、酸化物半導体の性質が異なる場合がある。例えば、酸化
物半導体をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子
数比の膜が形成される。また、成膜時の基板温度によっては、ターゲットの[Zn]より
も、膜の[Zn]が小さくなる場合がある。従って、図示する領域は、酸化物半導体が特
定の特性を有する傾向がある原子数比を示す領域であり、領域A乃至領域Cの境界は厳密
ではない。
【0263】
[酸化物半導体を有するトランジスタ]
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0264】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、結晶粒界におけるキャリア散乱等を減
少させることができるため、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる
。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0265】
また、トランジスタのチャネル領域には、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いること
が好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜
中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物
濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。例
えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好ましくは1×10
11/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10-9/
cm3以上とすればよい。
【0266】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低
いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0267】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長
く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い
酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合
がある。
【0268】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を
低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近
接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アル
カリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0269】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0270】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物
半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素
の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(
SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により
得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017at
oms/cm3以下とする。
【0271】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形
成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が
含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。こ
のため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが
好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×101
6atoms/cm3以下にする。
【0272】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア
密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に
用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体におい
て、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃
度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×101
8atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さら
に好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0273】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため
、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子
が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャ
リアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用い
たトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素は
できる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIM
Sにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1
019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、
さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
【0274】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、
安定した電気特性を付与することができる。
【0275】
<バンド図>
続いて、該酸化物半導体を2層構造、または3層構造とした場合について述べる。酸化物
半導体S1、酸化物半導体S2、および酸化物半導体S3の積層構造、および積層構造に
接する絶縁体のバンド図と、酸化物半導体S2および酸化物半導体S3の積層構造、およ
び積層構造に接する絶縁体のバンド図と、酸化物半導体S1および酸化物半導体S2の積
層構造、および積層構造に接する絶縁体のバンド図と、について、
図9を用いて説明する
。
【0276】
図9(A)は、絶縁体I1、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、
および絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。また、
図9(B
)は、絶縁体I1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、および絶縁体I2を有する積
層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。また、
図9(C)は、絶縁体I1、酸化物半
導体S1、酸化物半導体S2、および絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図
の一例である。なお、バンド図は、理解を容易にするため絶縁体I1、酸化物半導体S1
、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、および絶縁体I2の伝導帯下端のエネルギー準
位(Ec)を示す。
【0277】
酸化物半導体S1、酸化物半導体S3は、酸化物半導体S2よりも伝導帯下端のエネルギ
ー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体S2の伝導帯下端のエネルギー準位
と、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0.
15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であることが
好ましい。すなわち、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の電子親和力と、酸化物半導
体S2の電子親和力との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以
下、または1eV以下であることが好ましい。
【0278】
図9(A)、
図9(B)、および
図9(C)に示すように、酸化物半導体S1、酸化物半
導体S2、酸化物半導体S3において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化す
る。換言すると、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようなバ
ンド図を有するためには、酸化物半導体S1と酸化物半導体S2との界面、または酸化物
半導体S2と酸化物半導体S3との界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低く
するとよい。
【0279】
具体的には、酸化物半導体S1と酸化物半導体S2、酸化物半導体S2と酸化物半導体S
3が、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合
層を形成することができる。例えば、酸化物半導体S2がIn-Ga-Zn酸化物半導体
の場合、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3として、In-Ga-Zn酸化物半導体、
Ga-Zn酸化物半導体、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0280】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物半導体S2となる。酸化物半導体S1と酸化物
半導体S2との界面、および酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面における欠陥
準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、
高いオン電流が得られる。
【0281】
トラップ準位に電子が捕獲されることで、捕獲された電子は固定電荷のように振る舞うた
め、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。酸化物半導体S1、
酸化物半導体S3を設けることにより、トラップ準位を酸化物半導体S2より遠ざけるこ
とができる。当該構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向にシフト
することを防止することができる。
【0282】
酸化物半導体S1、および酸化物半導体S3は、酸化物半導体S2と比較して、導電率が
十分に低い材料を用いる。このとき、酸化物半導体S2、酸化物半導体S2と酸化物半導
体S1との界面、および酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面が、主にチャネル
領域として機能する。例えば、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3には、
図8(C)に
おいて、絶縁性が高くなる領域Cで示す原子数比の酸化物半導体を用いればよい。なお、
図8(C)に示す領域Cは、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、およびその近傍
値、[In]:[M]:[Zn]=1:3:2およびその近傍値、および[In]:[M
]:[Zn]=1:3:4、およびその近傍値である原子数比を示している。
【0283】
特に、酸化物半導体S2に領域Aで示される原子数比の酸化物半導体を用いる場合、酸化
物半導体S1および酸化物半導体S3には、[M]/[In]が1以上、好ましくは2以
上である酸化物半導体を用いることが好ましい。また、酸化物半導体S3として、十分に
高い絶縁性を得ることができる[M]/([Zn]+[In])が1以上である酸化物半
導体を用いることが好適である。
【0284】
<2-2.酸化物半導体をトランジスタに用いる構成>
続いて、酸化物半導体をトランジスタに用いる構成について説明する。
【0285】
なお、酸化物半導体をトランジスタに用いることで、結晶粒界におけるキャリア散乱等を
減少させることができるため、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができ
る。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0286】
また、トランジスタのチャネル領域には、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いること
が好ましい。例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好ま
しくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、
1×10-9/cm3以上とすればよい。
【0287】
なお、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少
ないため、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場
合がある。
【0288】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長
く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い
酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合
がある。
【0289】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を
低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近
接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アル
カリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0290】
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0291】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物
半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素
の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(
SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により
得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017at
oms/cm3以下とする。
【0292】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形
成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が
含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。こ
のため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが
好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×101
6atoms/cm3以下にする。
【0293】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア
密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に
用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体におい
て、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃
度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×101
8atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さら
に好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0294】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため
、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子
が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャ
リアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用い
たトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素は
できる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIM
Sにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1
019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、
さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
【0295】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いること
で、安定した電気特性を付与することができる。
【0296】
また、酸化物半導体膜は、エネルギーギャップが2eV以上、または2.5eV以上、ま
たは3eV以上であると好ましい。
【0297】
また、酸化物半導体膜の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上10
0nm以下、さらに好ましくは3nm以上60nm以下である。
【0298】
また、酸化物半導体膜がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜する
ために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=
1:1:0.5、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In
:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:
1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Z
n=5:1:7等が好ましい。
【0299】
なお、成膜される酸化物半導体膜の金属元素の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリン
グターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%程度変動することが
ある。例えば、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2
:4.1を用いる場合、成膜される酸化物半導体膜の原子数比は、In:Ga:Zn=4
:2:3近傍となる場合がある。また、スパッタリングターゲットとして、原子数比がI
n:Ga:Zn=5:1:7を用いる場合、成膜される酸化物半導体膜の原子数比は、I
n:Ga:Zn=5:1:6近傍となる場合がある。
【0300】
<2-3.酸化物半導体の構造>
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cl
oud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0301】
CAC-OSとは、例えば、酸化物半導体を構成する元素が、0.5nm以上10nm以
下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構
成である。なお、以下では、酸化物半導体において、一つあるいはそれ以上の金属元素が
偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm
以上2nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状
ともいう。
【0302】
なお、酸化物半導体は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムお
よび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イッ
トリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲ
ルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、
タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含
まれていてもよい。
【0303】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OS(CAC-OSの中でもIn-G
a-Zn酸化物を、特にCAC-IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物
(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸
化物(以下、InX2ZnY2OZ2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)
とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaOX3(X3は0よりも大きい実数)とする
。)、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、GaX4ZnY4OZ4(X4、Y4、および
Z4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状とな
り、モザイク状のInOX1、またはInX2ZnY2OZ2が、膜中に均一に分布した
構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0304】
つまり、CAC-OSは、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、
またはInOX1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合酸化物半導体
である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比
が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第
2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0305】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場
合がある。代表例として、InGaO3(ZnO)m1(m1は自然数)、またはIn(
1+x0)Ga(1-x0)O3(ZnO)m0(-1≦x0≦1、m0は任意数)で表
される結晶性の化合物が挙げられる。
【0306】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。なお、
CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa-b面において
は配向せずに連結した結晶構造である。
【0307】
一方、CAC-OSは、酸化物半導体の材料構成に関する。CAC-OSとは、In、G
a、Zn、およびOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観
察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれ
モザイク状にランダムに分散している構成をいう。従って、CAC-OSにおいて、結晶
構造は副次的な要素である。
【0308】
なお、CAC-OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。
例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含ま
ない。
【0309】
なお、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が
主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0310】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム
、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン
、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネ
シウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれている場合、CAC-OSは、一部
に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とする
ナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成を
いう。
【0311】
CAC-OSは、例えば基板を意図的に加熱しない条件で、スパッタリング法により形成
することができる。また、CAC-OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスと
して、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、及び窒素ガスの中から選ばれたい
ずれか一つまたは複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガ
スの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好まし
くは0%以上10%以下とすることが好ましい。
【0312】
CAC-OSは、X線回折(XRD:X-ray diffraction)測定法のひ
とつであるOut-of-plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに
、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折から、測定領域
のa-b面方向、およびc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0313】
またCAC-OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照
射することで得られる電子線回折パターンにおいて、リング状に輝度の高い領域と、該リ
ング領域に複数の輝点が観測される。従って、電子線回折パターンから、CAC-OSの
結晶構造が、平面方向、および断面方向において、配向性を有さないnc(nano-c
rystal)構造を有することがわかる。
【0314】
また例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線
分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectros
copy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaOX3が主成分である領域と
、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、偏在し、混合し
ている構造を有することが確認できる。
【0315】
CAC-OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IG
ZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC-OSは、GaOX3などが主成分で
ある領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と、に互い
に相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0316】
ここで、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域は、GaOX3
などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY
2OZ2、またはInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化
物半導体としての導電性が発現する。従って、InX2ZnY2OZ2、またはInOX
1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果
移動度(μ)が実現できる。
【0317】
一方、GaOX3などが主成分である領域は、InX2ZnY2OZ2、またはInOX
1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaOX3などが
主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なス
イッチング動作を実現できる。
【0318】
従って、CAC-OSを半導体素子に用いた場合、GaOX3などに起因する絶縁性と、
InX2ZnY2OZ2、またはInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用するこ
とにより、高いオン電流(Ion)、および高い電界効果移動度(μ)を実現することが
できる。
【0319】
また、CAC-OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、CAC-OSは、デ
ィスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0320】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み
合わせて実施することができる。
【0321】
(実施の形態4)
本発明の一態様のトランジスタ100の有する、導電膜112に酸化物導電体を用いると
、絶縁膜110中に過剰酸素を添加することができ、さらにそれを酸化物半導体膜108
が有する第1の領域108iに拡散できるので、好適である。このとき、酸化窒化シリコ
ン膜を含む絶縁膜110の欠陥も減らすことができる可能性がある。本実施の形態では、
導電膜112に酸化物導電体を用いたときの、絶縁膜110の欠陥について説明する。
【0322】
酸化窒化シリコン膜中の欠陥は、酸化窒化シリコン膜の上下に電界をかけたときのリーク
電流に影響を与える。すなわち、酸化窒化シリコン膜の上に金属膜を形成する条件と、酸
化窒化シリコン膜の上に酸化物導電体を形成する条件と、にてそれぞれMOS(Meta
l-Oxide-Silicon)サンプルを形成し、これらMOSの酸化窒化シリコン
膜のリーク電流の評価から、それぞれの酸化窒化シリコン膜中の欠陥の情報を得ることが
できる。
【0323】
導電膜112に酸化物導電体を用いたときの、絶縁膜110の欠陥について評価するため
、以下の2つのサンプルを準備する。第1のMOSサンプル317は、P型を付与する不
純物が添加されたシリコン基板上に、酸化窒化シリコン膜が10nmの厚さで形成され、
その上に金属膜が形成される。
【0324】
第2のMOSサンプル318は、P型を付与する不純物が添加されたシリコン基板上に、
酸化窒化シリコン膜が10nmの厚さで形成され、その上に酸化物導電膜が形成され、そ
の上に金属膜が形成される。
【0325】
金属膜は、30nmの膜厚の窒化チタンと、その上の135nmの膜厚のタングステンと
、その上の200nmの膜厚のアルミニウムである。また酸化物導電膜は、In-Ga-
Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、1
00%の酸素ガス雰囲気にて、スパッタリング法にて成膜する。
【0326】
高電界領域において、酸化窒化シリコン膜中を流れる電流はFowler-Nordhe
im(F-N)電流が支配的である。F-N電流は、式1のJFNで表される。
【0327】
【0328】
式1より、ln(J/E2)と1/Eとをプロットすることで直線が得られるが、深い欠
陥準位があった場合、F-Nプロットの一部は直線から外れることになる。この直線から
外れた領域はledge領域と言い、F-N電流の電子が深い欠陥準位にトラップされる
過程に起因する。つまり捕獲された電子は固定電荷を形成するため、I-Vカーブの平行
シフトを促し、ledge領域が形成される。この平行シフト量から、トラップされた電
荷密度を見積もることができる。
【0329】
図10(A)には、MOS構造において、metal領域310と、oxide領域31
1と、silicon領域312のエネルギーバンド図を示す。
【0330】
oxide領域311に相当する膜は、第1のMOSサンプル317と、第2のMOSサ
ンプル318と、のそれぞれの場合、酸化窒化シリコン膜である。metal領域310
に相当する膜は、第1のMOSサンプル317の場合は金属膜であり、第2のMOSサン
プル318の場合は酸化物導電膜と、その上の金属膜である。
【0331】
酸化窒化シリコン膜の上下に電圧を加えると、
図10(A)のようにmetal領域31
0の電子の、oxide領域311中のトラップ314への注入315が起きる。
【0332】
そこでトラップ準位にプラスの電荷がトラップされることを想定する式2と、トラップ準
位にマイナスの電荷がトラップされることを想定する式3と、電荷注入前後のI-Vカー
ブシフト量(ΔVg)とから、トラップ電荷密度(Qt(t))及びトラップ電荷重心位
置316(x(_))を見積もることができる。式2においてtoxはoxide領域31
1の厚さを意味する。
【0333】
【0334】
ここでトラップ電荷重心位置316は、oxide領域311中の、silicon領域
312との界面からの距離で表される。またトラップ電荷密度の電荷注入時間依存性から
oxide領域311中の全トラップ電荷の面密度を算出することができる。
【0335】
こうして得られるoxide領域中の全トラップ電荷の面密度を
図10(B)に、トラッ
プ電荷重心位置を
図10(C)に示す。このように、第1のMOSサンプル317に比べ
て、第2のMOSサンプル318は、酸化窒化シリコン膜の全トラップ電荷の面密度が低
減されること、及びトラップ電荷重心位置316が電極の反対側に移動すること、がわか
る。
【0336】
このとき得られたF-Nプロット(
図11(A)参照)において、第2のMOSサンプル
318の測定結果では第1のMOSサンプル317に見られるledge領域321が消
失している。
図11(A)の縦軸はln(J/E
2) [A/MV
2]であり、これは単
位面積あたりのリーク電流に相当する。
図10及び
図11より、第2のMOSサンプル3
18において、酸化物導電膜を酸化窒化シリコン膜上に形成していることにより、酸化窒
化シリコン膜中のトラップ電荷(深い欠陥準位に捕獲された電子)密度が低減しているこ
とがわかる。
【0337】
図11(B)には、第1のMOSサンプル317と、第2のMOSサンプル318との構
造を模式的に示す。いずれもシリコン319と、酸化窒化シリコン膜326と、金属膜3
25を有する。第2のMOSサンプル318は、酸化物導電膜313を有する。金属膜3
25を酸化窒化シリコン膜326上に形成した第1のMOSサンプル317では、酸化窒
化シリコン膜326中のトラップ電荷327の重心位置328はほぼ中央に位置しており
、酸化窒化シリコン膜326中に欠陥が平均的に存在すると考えられる(
図11(B)参
照)。これに対して、酸化物導電膜313を用いた場合には、トラップ電荷327の重心
位置329はシリコン319と酸化窒化シリコン膜326との界面に近い位置にあり、ト
ラップ電荷密度も小さい。以上の結果より、酸化物導電膜313の成膜によって、酸化窒
化シリコン膜326中の欠陥密度は、酸化物導電膜313に近い領域では低減されている
と考えられる。
【0338】
このように、本発明の一態様のトランジスタ100において、導電膜112に酸化物導電
体を用いたとき、絶縁膜110の欠陥密度を低減させる効果があることがわかる。
【0339】
(実施の形態5)
本実施の形態では、基板温度を350℃として酸化窒化シリコン膜を成膜して絶縁膜11
0を形成するときの、トランジスタ100の特性について示す。
【0340】
本発明の一態様のトランジスタ100のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜110として
、望ましい特徴は、欠陥の少なさ、酸化物半導体膜108へ与えるダメージの低さ、酸化
物半導体膜108への過剰酸素の供給、が挙げられる。
【0341】
実施の形態1では、本発明の一態様のトランジスタ100のゲート絶縁膜として機能する
絶縁膜110として、プラズマ化学気相堆積法により形成される酸化窒化シリコン膜を用
いた。酸化窒化シリコン膜成膜時の温度が低い条件では、空隙が過剰酸素が添加される余
地となり、より多くの過剰酸素を吸収または酸化物半導体膜に供給することができること
を示した。
【0342】
酸化窒化シリコン膜成膜時の温度が高い条件では、膜密度が大きい、すなわち欠陥が少な
い膜を形成することができる。そこで酸化物半導体膜108が有する第1の領域108i
上に、基板温度を350℃として酸化窒化シリコン膜を成膜し、次いで基板温度を220
℃として酸化窒化シリコン膜を成膜する、すなわち絶縁膜110を積層構造とする構造も
高信頼性を得る目的として有効である。
【0343】
この絶縁膜110を積層する場合の生産性を考慮すると、成膜温度は一定であることが望
ましい。
【0344】
図12(A)に、酸化窒化シリコン膜のwetエッチングレートを比較した結果を示す。
試料351、試料352とも、ガラス上に酸化窒化シリコン膜を形成した。成膜時基板温
度は、試料351は220℃であり、試料352は350℃である。
【0345】
試料351、試料352とも、酸化窒化シリコン膜はプラズマCVD法で成膜され、使用
したガスは、SiH4=20sccm、N2O=3000sccmである。成膜圧力は2
00Paであり、成膜電力は100Wである。wetエッチングに使用した溶液はHF(
0.5%)であり、温度は室温である。
【0346】
図12(A)に示されるように、試料352の方がエッチングレートが小さい。このこと
から、酸化窒化シリコン膜は、成膜時基板温度において350℃で成膜するときは、22
0℃で成膜するときより緻密な膜が得られると言える。
【0347】
図12(B)に、酸化窒化シリコン膜のFT-IR測定を比較した結果を示す。試料35
3、試料354とも、シリコンウエハ上に酸化窒化シリコン膜を形成した。成膜時基板温
度は、試料353は220℃であり、試料354は350℃である。
図12(B)中の波
数1050cm
-1において縦軸と平行に描かれた点線357は、Si-O結合に起因す
る波数である。
【0348】
試料353、試料354とも、酸化窒化シリコン膜はプラズマCVD法で成膜され、使用
したガスは、SiH4=20sccm、N2O=3000sccmである。成膜圧力は2
00Paであり、成膜電力は100Wである。
【0349】
図12(B)に示されるように、試料354の方がわずかではあるものの、Si-Oの結
合密度が大きい結果が得られる。このことからも、酸化窒化シリコン膜は、成膜時基板温
度において350℃で成膜するときは、220℃で成膜するときより緻密な膜が得られる
と言える。
【0350】
図12(C)は、酸化窒化シリコン膜の窒素酸化物(NO
x)濃度について、ESR法で
比較される結果を示す。縦軸はスピン密度である。試料355、試料356とも、ガラス
上に酸化物半導体膜を10nmの厚さで形成し、酸化窒化シリコン膜を20nmの厚さで
形成し、その上に酸化物導電膜を100nmの厚さで形成する。但し酸化物導電膜はES
R測定前に除去する。
【0351】
酸化窒化シリコン膜の成膜時基板温度は、試料355は220℃であり、試料356は3
50℃である。また、試料355、試料356とも、酸化物半導体膜はIn-Ga-Zn
酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、90%
のアルゴンガスと10%の酸素ガスとの雰囲気にて、基板温度130℃にてスパッタリン
グ法にて成膜する。酸化窒化シリコン膜は、プラズマCVD法で成膜され、使用するガス
は、SiH4=20sccm、N2O=3000sccmである。成膜圧力は200Pa
であり、成膜電力は100Wである。酸化物導電膜は、In-Ga-Zn酸化物ターゲッ
ト(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いてスパッタリング法にて成
膜する。
【0352】
図12(C)には酸化窒化シリコン膜成膜後と、上記酸化物導電膜除去後との、窒素酸化
物(NO
x)由来のスピン密度[spins/cm
3]を示す。このように、酸化窒化シ
リコン膜は、成膜時基板温度において350℃で成膜するときは、220℃で成膜すると
きより窒素酸化物(NO
x)濃度が小さい膜が得られると言える。
【0353】
これらの結果から、緻密で低欠陥で、窒素酸化物(NO
x)濃度が小さい、成膜時基板温
度が350℃条件の酸化窒化シリコン膜を絶縁膜110に用いる事が好ましいと考えられ
る。しかしながら、
図43(A)で示されるように、成膜時基板温度が350℃条件の酸
化窒化シリコン膜を絶縁膜110に用いると、酸化物半導体膜108が低抵抗化してしま
う。
【0354】
この酸化物半導体膜108の低抵抗化を避ける方法として、次の方法が挙げられる。1つ
は絶縁膜110成膜後のプラズマCVD装置での酸素プラズマ処理361である(
図13
(A)参照)。もう1つは絶縁膜116を成膜後の熱処理である(
図13(B)参照)。
これらの処理により酸化物半導体膜108への過剰酸素362の供給を強化することがで
きる。特にこれらの処理を併用することが好ましい。
【0355】
絶縁膜110成膜後のプラズマCVD装置での酸素プラズマ処理361は、例えば実施例
1で示される方法で可能である。また、絶縁膜116を成膜後の熱処理は、例えば、窒素
雰囲気で350℃にて1hrの条件にて、行うことができる。
【0356】
また、絶縁膜116を成膜後の熱処理が、酸化物半導体膜への酸素添加に有効であること
を示す目的で行った実験の結果を
図14(A)及び(B)にて説明する。本実験で評価す
る試料は、ガラス基板上に酸化物半導体膜を100nmの厚さで形成し、その上に酸化窒
化シリコン膜を100nmの厚さで形成し、その上に酸化物導電膜を100nmの厚さで
形成し、その上に窒化シリコン膜を100nmの厚さで形成した。
【0357】
酸化物半導体膜は、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4
.1[原子数比])を用いて、90%のアルゴンガスと10%の酸素ガスとの雰囲気にて
、基板温度130℃にてスパッタリング法にて成膜する。
【0358】
酸化窒化シリコン膜は基板温度を220℃としたプラズマCVD法で、成膜条件の異なる
2層を積層して成膜される。まず第1の成膜条件は、使用するガスとして、SiH4=5
0sccm、N2O=2000sccmである。成膜圧力は20Paであり、成膜電力は
100Wである。第1の成膜条件で30nm成膜する。この酸化窒化シリコン膜中のNO
xの量は少ない。第2の成膜条件は、使用するガスとして、SiH4=160sccm、
N2O=4000sccmである。成膜圧力は200Paであり、成膜電力は1500W
である。第2の成膜条件で70nm成膜する。
【0359】
酸化物導電膜は、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.
1[原子数比])を用いて、成膜条件の異なる2層を積層して成膜される。まず第1の成
膜条件は、100%の18Oガスの雰囲気にて、基板温度170℃にてスパッタリング法
にて成膜する。第1の成膜条件で10nm成膜する。第2の成膜条件は、90%のアルゴ
ンガスと10%の18Oガスとの雰囲気にて、基板温度170℃にてスパッタリング法に
て成膜する。第2の成膜条件で90nm成膜する。
【0360】
窒化シリコン膜の成膜は、基板温度を220℃とし、流量50sccmのシランガスと、
流量5000sccmの窒素ガスと、流量100sccmのアンモニアガスをチャンバー
内に導入し、圧力を200Paとし、プラズマCVD装置内に設置された平行平板の電極
間に1000WのRF電力を供給して行う。
【0361】
その後、試料365は熱処理無しとし、試料366は250℃の温度にて窒素雰囲気で熱
処理を行い、試料367は350℃の温度にて窒素雰囲気で熱処理を行う。
【0362】
図14(A)及び(B)は、試料365、試料366、試料367、のSIMS分析によ
る
18O濃度分布評価結果である。
18Oは、試料365、試料366、試料367、に
て酸化物導電膜形成時のみ使用しているため、他の膜中での
18O濃度が高い場合、
18
Oは酸化物導電膜から拡散したものと考えられる。SIMS分析は、基板側から膜表面側
に向かって掘削しながらプロファイル評価を行った。
【0363】
図14(A)及び(B)にて、横軸は試料の表面からの深さを示し、縦軸は酸化物導電膜
368と、酸化窒化シリコン膜369と、酸化物半導体膜370と、の中の
18Oを検出
したSIMSのシグナルを示す。
図14(A)では酸化窒化シリコン膜369中にて
18
O濃度の定量をしている。また
図14(B)では、同様に酸化物半導体膜370中にて
1
8O濃度の定量をしている。
【0364】
図14(A)及び(B)の結果から判るように、窒化シリコン膜の成膜後に、熱処理を行
う事で、酸化窒化シリコン膜中の酸素をより多く酸化物半導体膜中に拡散させることがで
きる。
【0365】
また、熱処理をどの工程にて行えば、酸化物半導体膜への酸素添加に有効かを調査する目
的で行った実験の結果を
図14(C)に示す。
【0366】
本実験で評価する試料は、石英基板上に酸化物半導体膜が40nmの厚さで形成され、そ
の上に酸化窒化シリコン膜が150nmの厚さで形成され、その上に酸化物導電膜が10
0nmの厚さで形成され、その上に窒化シリコン膜が100nmの厚さで形成されている
。
図14(C)は、横軸に作製工程を示し、縦軸に上記酸化物半導体膜の抵抗を示した。
以下に作製方法を示す。
【0367】
まず、基板上に酸化物半導体膜を成膜する(工程A)。酸化物半導体膜の成膜条件は、試
料365乃至試料367の条件と同じである。この工程A後に酸化物半導体膜の抵抗値を
測定する。
【0368】
次に、酸化物半導体膜上に酸化窒化シリコン膜を成膜する(工程B)。酸化窒化シリコン
膜の成膜は、プラズマCVD法で行い、基板温度を350℃とし、使用するガスとして、
SiH4=20sccm、N2O=3000sccmを用いる。成膜圧力は200Paで
あり、成膜電力は100Wである。この工程B後に酸化物半導体膜の抵抗を測定する。
【0369】
次いで350℃の温度にて窒素雰囲気で熱処理を行う(工程C)。この工程C後に酸化物
半導体膜の抵抗を測定する。
【0370】
次いで基板温度を350℃にて、酸素プラズマ処理を行う(工程D)。酸素プラズマ処理
の条件は、流量3000sccmの酸素をチャンバー内に導入し、圧力を40Paとし、
プラズマCVD装置内に設置された平行平板の電極間に3000WのRF電力を供給して
250secの時間にて行う。この工程D後に酸化物半導体膜の抵抗を測定する。
【0371】
次いで酸化物導電膜の成膜を行う(工程E)。酸化物導電膜の成膜条件は、試料365乃
至試料367の条件と同じである。この工程E後に酸化物半導体膜の抵抗を測定する。
【0372】
次いで窒化シリコン膜の成膜を行う(工程F)。窒化シリコン膜の成膜条件は、試料36
5乃至試料367の条件と同じである。この工程F後に酸化物半導体膜の抵抗を測定する
。
【0373】
次いで250℃の温度にて窒素雰囲気で熱処理を行う(工程G1)。この工程G1後に酸
化物半導体膜の抵抗を測定する。また別の試料では、250℃ではなく350℃の温度に
て窒素雰囲気で熱処理を行った(工程G2)。この工程G2後に酸化物半導体膜の抵抗を
測定する。
【0374】
図14(C)にて、工程A乃至工程G1、工程G2、の後の各酸化物半導体膜の抵抗値で
示されるように、酸化窒化シリコン成膜工程で酸化物半導体膜の抵抗値は下がるものの、
窒化シリコン膜成膜後に350℃にてベークすることで、大幅に上がることがわかる。尚
、工程Aと、工程G2と、の後において酸化物半導体膜の抵抗値は、抵抗測定装置の上限
である4.0×10
7Ωより大きかった。
【0375】
このことから、窒化シリコン膜成膜後に350℃にて熱処理することでより過酸素化が促
進していることが分かる。この過酸素化の促進は
図14(A)及び(B)で示される、S
IMSによる
18Oの濃度でも説明されている。
【0376】
酸化窒化シリコン膜の成膜後の酸素プラズマ処理と、窒化シリコン膜成膜後の350℃の
温度での熱処理と、を併用したとき、350℃条件の酸化窒化シリコン膜を絶縁膜110
に用いて作製されたトランジスタ100は、基板温度を350℃として酸化窒化シリコン
膜を成膜し、次いで基板温度を220℃として酸化窒化シリコン膜を成膜して絶縁膜11
0に用いて作製されたトランジスタ100と、同等の信頼性が得られた。尚、ここでいう
信頼性は、バイアス-熱ストレス試験で評価される信頼性であり、後述する実施例1に示
す。
【0377】
すなわち、酸化物半導体膜108に十分な過剰酸素の供給を行う処理をすることで、緻密
で欠陥密度の小さい、基板温度を350℃として酸化窒化シリコン膜を絶縁膜110に用
いることができる。これにより、生産性を改善することができる。
【0378】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができる。
【0379】
(実施の形態6)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示した半導体装置を有する表示装置の一例
について、
図15乃至
図20を用いて以下説明を行う。
【0380】
図15は、表示装置の一例を示す上面図である。
図15に示す表示装置700は、第1の
基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドライ
バ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回路
部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と、
第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、第
1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すなわ
ち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は、
第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお、
図15には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設け
られる。
【0381】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている領
域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ
回路部706と、それぞれ電気的に接続されるFPC端子部708(FPC:Flexi
ble printed circuit)が設けられる。また、FPC端子部708に
は、FPC716が接続され、FPC716によって画素部702、ソースドライバ回路
部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号等が供給される。また、画素部7
02、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部7
08には、信号線710が各々接続されている。FPC716により供給される各種信号
等は、信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドラ
イバ回路部706、及びFPC端子部708に与えられる。
【0382】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示装
置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を画
素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定さ
れない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良い
、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この場
合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結晶
半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に形成する
構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるもの
ではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法などを
用いることができる。
【0383】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲートド
ライバ回路部706は、複数のトランジスタを有している。
【0384】
また、表示装置700は、様々な素子を有することが出来る。該素子の一例としては、例
えば、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機
EL素子、無機EL素子、LEDなど)、発光トランジスタ素子(電流に応じて発光する
トランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク素子、電気泳動素子、エレクトロ
ウェッティング素子、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・エ
レクトロ・メカニカル・システム)ディスプレイ(例えば、グレーティングライトバルブ
(GLV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャッ
ター(DMS)素子、インターフェロメトリック・モジュレーション(IMOD)素子な
ど)、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
【0385】
また、EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放
出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED
)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conduction
Electron-emitter Display)などがある。液晶素子を用いた
表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶デ
ィスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレ
イ)などがある。電子インク素子又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電
子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実
現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するよう
にすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有
するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を
設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0386】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等
を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RG
B(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの画
素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配列
のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素によって、異なる2色
を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上
追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい
。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表
示の表示装置に適用することもできる。
【0387】
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色発光(
W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともいう
。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)
、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで、
着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層を
有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない領
域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配置
することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2割
から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発光
素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、Wを、それぞれの発光色を有す
る素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合より
も、さらに消費電力を低減できる場合がある。
【0388】
また、カラー化方式としては、上述の白色発光からの発光の一部をカラーフィルタを通す
ことで赤色、緑色、青色に変換する方式(カラーフィルタ方式)の他、赤色、緑色、青色
の発光をそれぞれ用いる方式(3色方式)、または青色発光からの発光の一部を赤色や緑
色に変換する方式(色変換方式、量子ドット方式)を適用してもよい。
【0389】
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について、
図16乃至
図18を用いて説明する。なお、
図16及び
図17は、
図15に示す一点鎖線
Q-Rにおける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、
図1
8は、
図15に示す一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用
いた構成である。
【0390】
まず、
図16乃至
図18に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分について
以下説明する。
【0391】
<3-1.表示装置の共通部分に関する説明>
図16乃至
図18に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と、
ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、シール材712と、を有する。
また、引き回し配線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トラン
ジスタ750及び容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トラ
ンジスタ752を有する。
【0392】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、
図3(A)(B)に示すトランジスタ1
00Bと同様の構成である。なお、トランジスタ750及びトランジスタ752の構成に
ついては、先の実施の形態に示す、その他のトランジスタを用いてもよい。
【0393】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半
導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くすることができる。よって、画像信
号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く
設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力
を抑制する効果を奏する。
【0394】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため
、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示
装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドラ
イバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として
、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の
部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジ
スタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0395】
容量素子790は、トランジスタ750が有する第1のゲート電極として機能する導電膜
と同一の導電膜を加工する工程を経て形成される下部電極と、トランジスタ750が有す
るソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜、または第2のゲート電極として機
能する導電膜、と同一の導電膜を加工する工程を経て形成される上部電極と、を有する。
また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ750が有する第1のゲート絶縁膜
として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程を経て形成される絶縁膜、及びトラ
ンジスタ750上の保護絶縁膜として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程を経
て形成される絶縁膜が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘電体
膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0396】
また、
図16乃至
図18において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容量
素子790上に平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0397】
また、
図16乃至
図18においては、画素部702が有するトランジスタ750と、ソー
スドライバ回路部704が有するトランジスタ752と、を同じ構造のトランジスタを用
いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、画素部702と、ソースド
ライバ回路部704とは、異なるトランジスタを用いてもよい。具体的には、画素部70
2にトップゲート型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704にボトムゲート
型のトランジスタを用いる構成、あるいは画素部702にボトムゲート型のトランジスタ
を用い、ソースドライバ回路部704にトップゲート型のトランジスタを用いる構成など
が挙げられる。なお、上記のソースドライバ回路部704を、ゲートドライバ回路部と読
み替えてもよい。
【0398】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。信号線710として、例えば、銅元素を
含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能
となる。
【0399】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC716
を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレ
イン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。また、接続電極760は、
FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0400】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いること
ができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板を
用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられる
。
【0401】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構造
体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第
1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設けら
れる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。
【0402】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、カ
ラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する絶
縁膜734が設けられる。
【0403】
<3-2.液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図16に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜7
72、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705側
に設けられ、対向電極としての機能を有する。
図16に示す表示装置700は、導電膜7
72と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の配向状態が変わることに
よって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる。
【0404】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極として
機能する導電膜と電気的に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成さ
れ画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。
【0405】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反射
性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、例
えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料
を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、
または銀を含む材料を用いるとよい。
【0406】
導電膜772に可視光において反射性のある導電膜を用いる場合、表示装置700は、反
射型の液晶表示装置となる。また、導電膜772に可視光において透光性のある導電膜を
用いる場合、表示装置700は、透過型の液晶表示装置となる。
【0407】
また、導電膜772上の構成を変えることで、液晶素子の駆動方式を変えることができる
。この場合の一例を
図17に示す。また、
図17に示す表示装置700は、液晶素子の駆
動方式として横電界方式(例えば、FFSモード)を用いる構成の一例である。
図17に
示す構成の場合、導電膜772上に絶縁膜773が設けられ、絶縁膜773上に導電膜7
74が設けられる。この場合、導電膜774は、共通電極(コモン電極ともいう)として
の機能を有し、絶縁膜773を介して、導電膜772と導電膜774との間に生じる電界
によって、液晶層776の配向状態を制御することができる。
【0408】
また、
図16及び
図17において図示しないが、導電膜772または導電膜774のいず
れか一方または双方に、液晶層776と接する側に、それぞれ配向膜を設ける構成として
もよい。また、
図16及び
図17において図示しないが、偏光部材、位相差部材、反射防
止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相
差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなど
を用いてもよい。
【0409】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶
、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの
液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラ
ルネマチック相、等方相等を示す。
【0410】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい
。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリッ
ク相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現
しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成
物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度
が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要である。また配向膜を設けなくてもよい
のでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防
止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。ま
た、ブルー相を示す液晶材料は、視野角依存性が小さい。
【0411】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic)
モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Fring
e Field Switching)モード、ASM(Axially Symmet
ric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optical C
ompensated Birefringence)モード、FLC(Ferroel
ectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerro
electric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0412】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した
透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、
例えば、MVA(Multidomain Vertical Alignment)モ
ード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、
ASVモードなどを用いることができる。
【0413】
<3-3.発光素子を用いる表示装置>
図18に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜7
72、EL層786、及び導電膜788を有する。
図18に示す表示装置700は、発光
素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができる
。なお、EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0414】
有機化合物に用いることのできる材料としては、蛍光性材料または燐光性材料などが挙げ
られる。また、量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット材
料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、な
どが挙げられる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元素
グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜
鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb
)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子ド
ット材料を用いてもよい。
【0415】
また、上述の有機化合物、及び無機化合物としては、例えば、蒸着法(真空蒸着法を含む
)、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、塗布法、グラビア印刷法等の方法を用い
て形成することができる。また、EL層786としては、低分子材料、中分子材料(オリ
ゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子材料を含んでも良い。
【0416】
ここで、液滴吐出法を用いてEL層786を形成する方法について、
図21を用いて説明
する。
図21(A)乃至
図21(D)は、EL層786の作製方法を説明する断面図であ
る。
【0417】
まず、平坦化絶縁膜770上に導電膜772が形成され、導電膜772の一部を覆うよう
に絶縁膜730が形成される(
図21(A)参照)。
【0418】
次に、絶縁膜730の開口である導電膜772の露出部に、液滴吐出装置783より液滴
784を吐出し、組成物を含む層785を形成する。液滴784は、溶媒を含む組成物で
あり、導電膜772上に付着する(
図21(B)参照)。
【0419】
なお、液滴784を吐出する工程を減圧下で行ってもよい。
【0420】
次に、組成物を含む層785より溶媒を除去し、固化することによってEL層786を形
成する(
図21(C)参照)。
【0421】
なお、溶媒の除去方法としては、乾燥工程または加熱工程を行えばよい。
【0422】
次に、EL層786上に導電膜788を形成し、発光素子782を形成する(
図21(D
)参照)。
【0423】
このようにEL層786を液滴吐出法で行うと、選択的に組成物を吐出することができる
ため、材料のロスを削減することができる。また、形状を加工するためのリソグラフィ工
程なども必要ないために工程も簡略化することができ、低コスト化が達成できる。
【0424】
なお、上記説明した液滴吐出法とは、組成物の吐出口を有するノズル、あるいは1つ又は
複数のノズルを有するヘッド等の液滴を吐出する手段を有するものの総称とする。
【0425】
次に、液滴吐出法に用いる液滴吐出装置について、
図22を用いて説明する。
図22は、
液滴吐出装置1400を説明する概念図である。
【0426】
液滴吐出装置1400は、液滴吐出手段1403を有する。また、液滴吐出手段1403
は、ヘッド1405と、ヘッド1412とを有する。
【0427】
ヘッド1405、及びヘッド1412は制御手段1407に接続され、それがコンピュー
タ1410で制御することにより予めプログラミングされたパターンに描画することがで
きる。
【0428】
また、描画するタイミングとしては、例えば、基板1402上に形成されたマーカー14
11を基準に行えば良い。あるいは、基板1402の外縁を基準にして基準点を確定させ
ても良い。ここでは、マーカー1411を撮像手段1404で検出し、画像処理手段14
09にてデジタル信号に変換したものをコンピュータ1410で認識して制御信号を発生
させて制御手段1407に送る。
【0429】
撮像手段1404としては、電荷結合素子(CCD)や相補型金属-酸化物-半導体(C
MOS)を利用したイメージセンサなどを用いることができる。なお、基板1402上に
形成されるべきパターンの情報は記憶媒体1408に格納されたものであり、この情報を
基にして制御手段1407に制御信号を送り、液滴吐出手段1403の個々のヘッド14
05、ヘッド1412を個別に制御することができる。吐出する材料は、材料供給源14
13、材料供給源1414より配管を通してヘッド1405、ヘッド1412にそれぞれ
供給される。
【0430】
ヘッド1405の内部は、点線1406が示すように液状の材料を充填する空間と、吐出
口であるノズルを有する構造となっている。図示しないが、ヘッド1412もヘッド14
05と同様な内部構造を有する。ヘッド1405とヘッド1412のノズルを異なるサイ
ズで設けると、異なる材料を異なる幅で同時に描画することができる。一つのヘッドで、
複数種の発光材料などをそれぞれ吐出し、描画することができ、広領域に描画する場合は
、スループットを向上させるため複数のノズルより同材料を同時に吐出し、描画すること
ができる。大型基板を用いる場合、ヘッド1405、ヘッド1412は基板上を、
図22
中に示すX、Y、Zの矢印の方向に自在に走査し、描画する領域を自由に設定することが
でき、同じパターンを一枚の基板に複数描画することができる。
【0431】
また、組成物を吐出する工程は、減圧下で行ってもよい。吐出時に基板を加熱しておいて
もよい。組成物を吐出後、乾燥と焼成の一方又は両方の工程を行う。乾燥と焼成の工程は
、両工程とも加熱処理の工程であるが、その目的、温度と時間が異なるものである。乾燥
の工程、焼成の工程は、常圧下又は減圧下で、レーザ光の照射や瞬間熱アニール、加熱炉
などにより行う。なお、この加熱処理を行うタイミング、加熱処理の回数は特に限定され
ない。乾燥と焼成の工程を良好に行うためには、そのときの温度は、基板の材質及び組成
物の性質に依存する。
【0432】
以上のように、液滴吐出装置を用いてEL層786を作製することができる。
【0433】
【0434】
図18に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜772上に絶縁膜73
0が設けられる。絶縁膜730は、導電膜772の一部を覆う。なお、発光素子782は
トップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、EL層78
6が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション構造につ
いて、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜772側に光を射出するボトム
エミッション構造や、導電膜772及び導電膜788の双方に光を射出するデュアルエミ
ッション構造にも適用することができる。
【0435】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重なる
位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設けら
れている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。また
、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、
図18に
示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これに
限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色膜
736を設けない構成としてもよい。
【0436】
<3-4.表示装置に入出力装置を設ける構成例>
また、
図17及び
図18に示す表示装置700に入出力装置を設けてもよい。当該入出力
装置としては、例えば、タッチパネル等が挙げられる。
【0437】
図17に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成を
図19に、
図18に示
す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成を
図20に、それぞれ示す。
【0438】
図19は
図17に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成の断面図であり
、
図20は
図18に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成の断面図であ
る。
【0439】
まず、
図19及び
図20に示すタッチパネル791について、以下説明を行う。
【0440】
図19及び
図20に示すタッチパネル791は、基板705と着色膜736との間に設け
られる、所謂インセル型のタッチパネルである。タッチパネル791は着色膜736を形
成する前に、基板705側に形成すればよい。
【0441】
なお、タッチパネル791は、遮光膜738と、絶縁膜792と、電極793と、電極7
94と、絶縁膜795と、電極796と、絶縁膜797と、を有する。例えば、指やスタ
イラスなどの被検知体が近接することで、電極793と、電極794との相互容量の変化
を検知することができる。
【0442】
また、
図19及び
図20に示すトランジスタ750の上方においては、電極793と、電
極794との交差部を明示している。電極796は、絶縁膜795に設けられた開口部を
介して、電極794を挟む2つの電極793と電気的に接続されている。なお、
図19及
び
図20においては、電極796が設けられる領域を画素部702に設ける構成を例示し
たが、これに限定されず、例えば、ソースドライバ回路部704に形成してもよい。
【0443】
電極793及び電極794は、遮光膜738と重なる領域に設けられる。また、
図19に
示すように、電極793は、発光素子775と重ならないように設けられると好ましい。
また、
図20に示すように、電極793は、液晶素子782と重ならないように設けられ
ると好ましい。別言すると、電極793は、発光素子782及び液晶素子775と重なる
領域に開口部を有する。すなわち、電極793はメッシュ形状を有する。このような構成
とすることで、電極793は、発光素子782が射出する光を遮らない構成とすることが
できる。または、電極793は、液晶素子775を透過する光を遮らない構成とすること
ができる。したがって、タッチパネル791を配置することによる輝度の低下が極めて少
ないため、視認性が高く、且つ消費電力が低減された表示装置を実現できる。なお、電極
794も同様の構成とすればよい。
【0444】
また、電極793及び電極794が発光素子782と重ならないため、電極793及び電
極794には、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。または、電極79
3及び電極794が液晶素子775と重ならないため、電極793及び電極794には、
可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。
【0445】
そのため、可視光の透過率が高い酸化物材料を用いた電極と比較して、電極793及び電
極794の抵抗を低くすることが可能となり、タッチパネルのセンサ感度を向上させるこ
とができる。
【0446】
例えば、電極793、794、796には、導電性のナノワイヤを用いてもよい。当該ナ
ノワイヤは、直径の平均値が1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50nm
以下、より好ましくは5nm以上25nm以下の大きさとすればよい。また、上記ナノワ
イヤとしては、Agナノワイヤ、Cuナノワイヤ、またはAlナノワイヤ等の金属ナノワ
イヤ、あるいは、カーボンナノチューブなどを用いればよい。例えば、電極793、79
4、796のいずれか一つあるいは全部にAgナノワイヤを用いる場合、可視光における
光透過率を89%以上、シート抵抗値を40Ω/square以上100Ω/squar
e以下とすることができる。
【0447】
また、
図19及び
図20においては、インセル型のタッチパネルの構成について例示した
が、これに限定されない。例えば、表示装置700上に形成する、所謂オンセル型のタッ
チパネルや、表示装置700に貼り合わせて用いる、所謂アウトセル型のタッチパネルと
してもよい。
【0448】
このように、本発明の一態様の表示装置は、様々な形態のタッチパネルと組み合わせて用
いることができる。
【0449】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができる。
【0450】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、
図23を用
いて説明を行う。
【0451】
<4.表示装置の回路構成>
図23(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502とい
う)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(以
下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路506
という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成として
もよい。
【0452】
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されているこ
とが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504の
一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回路
部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated Bo
nding)によって、実装することができる。
【0453】
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置された
複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回路
部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ5
04aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するための
回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
【0454】
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、端
子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力する
。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力され
、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以下
、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲートド
ライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃至
GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号を
供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ504
aは、別の信号を供給することも可能である。
【0455】
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、端
子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元となる
信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路5
01に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、
スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信号
の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与えら
れる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有する
。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有する
。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも可
能である。
【0456】
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。ソ
ースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、画
像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを用
いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0457】
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを介
してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介して
データ信号が入力される。また、複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ5
04aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列目
の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ5
04aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(n
はY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
【0458】
図23(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路50
1の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドライ
バ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保護
回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することがで
きる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配線
に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び制
御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0459】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配
線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0460】
図23(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路506
を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:静
電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。た
だし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに保
護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続し
た構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成と
することもできる。
【0461】
また、
図23(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bによ
って駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例え
ば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成さ
れた基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実装
する構成としても良い。
【0462】
また、
図23(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図23(B)に示す構成と
することができる。
【0463】
図23(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容量
素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを適
用することができる。
【0464】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定さ
れる。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数
の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位(
コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の電
極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0465】
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモー
ド、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Mi
cro-cell)モード、OCB(Optically Compensated B
irefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqui
d Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liq
uid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Ver
tical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、又はTBA(
Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。ま
た、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrica
lly Controlled Birefringence)モード、PDLC(Po
lymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(
Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホス
トモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様々
なものを用いることができる。
【0466】
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイン
電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の電
極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線GL
_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、オン状態またはオフ状態になること
により、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0467】
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL)
に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される
。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。
容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0468】
例えば、
図23(B)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図23(A)に
示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ5
50をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0469】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで保
持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0470】
また、
図23(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図23(C)に示す構成と
することができる。
【0471】
また、
図23(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素子
562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554の
いずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
【0472】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる配
線(以下、データ線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ55
2のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気
的に接続される。
【0473】
トランジスタ552は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデータ
の書き込みを制御する機能を有する。
【0474】
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL_
aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン
電極の他方に電気的に接続される。
【0475】
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0476】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電気
的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552のソ
ース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0477】
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続さ
れ、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続さ
れる。
【0478】
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともい
う)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず、
無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0479】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与え
られ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0480】
図23(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図23(A)に示すゲー
トドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552をオ
ン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0481】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで保
持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554のソ
ース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電流
量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0482】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができる。
【0483】
(実施の形態8)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明したトランジスタの適用可能な回路構成の一
例について、
図24乃至
図27を用いて説明する。
【0484】
なお、本実施の形態においては、先の実施の形態で説明した酸化物半導体を有するトラン
ジスタを、OSトランジスタと呼称して以下説明を行う。
【0485】
<5.インバータ回路の構成例>
図24(A)には、駆動回路が有するシフトレジスタやバッファ等に適用することができ
るインバータの回路図を示す。インバータ800は、入力端子INに与える信号の論理を
反転した信号を出力端子OUTに出力する。インバータ800は、複数のOSトランジス
タを有する。信号S
BGは、OSトランジスタの電気特性を切り替えることができる信号
である。
【0486】
図24(B)は、インバータ800の一例である。インバータ800は、OSトランジス
タ810、およびOSトランジスタ820を有する。インバータ800は、nチャネル型
トランジスタのみで作製することができるため、CMOS(Complementary
Metal Oxide Semiconductor)でインバータ(CMOSイン
バータ)を作製する場合と比較して、低コストで作製することが可能である。
【0487】
なお、OSトランジスタを有するインバータ800は、Siトランジスタで構成されるC
MOS上に配置することもできる。インバータ800は、CMOSの回路に重ねて配置で
きるため、インバータ800を追加する分の回路面積の増加を抑えることができる。
【0488】
OSトランジスタ810、820は、フロントゲートとして機能する第1ゲートと、バッ
クゲートとして機能する第2ゲートと、ソースまたはドレインの一方として機能する第1
端子と、ソースまたはドレインの他方として機能する第2端子とを有する。
【0489】
OSトランジスタ810の第1ゲートは、OSトランジスタ810の第2端子に接続され
る。OSトランジスタ810の第2ゲートは、信号SBGを供給する配線に接続される。
OSトランジスタ810の第1端子は、電圧VDDを与える配線に接続される。OSトラ
ンジスタ810の第2端子は、出力端子OUTに接続される。
【0490】
OSトランジスタ820の第1ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジスタ
820の第2ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジスタ820の第1端子
は、出力端子OUTに接続される。OSトランジスタ820の第2端子は、電圧VSSを
与える配線に接続される。
【0491】
図24(C)は、インバータ800の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図24(C)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの信
号波形、信号S
BGの信号波形、およびOSトランジスタ810のしきい値電圧の変化に
ついて示している。
【0492】
信号SBGをOSトランジスタ810の第2ゲートに与えることで、OSトランジスタ8
10のしきい値電圧を制御することができる。
【0493】
信号SBGは、しきい値電圧をマイナスシフトさせるための電圧VBG_A、しきい値電
圧をプラスシフトさせるための電圧VBG_Bを有する。第2ゲートに電圧VBG_Aを
与えることで、OSトランジスタ810はしきい値電圧VTH_Aにマイナスシフトさせ
ることができる。また、第2ゲートに電圧VBG_Bを与えることで、OSトランジスタ
810は、しきい値電圧VTH_Bにプラスシフトさせることができる。
【0494】
前述の説明を可視化するために、
図25(A)には、トランジスタの電気特性の一つであ
る、Id-Vgカーブを示す。
【0495】
上述したOSトランジスタ810の電気特性は、第2ゲートの電圧を電圧V
BG_Aのよ
うに大きくすることで、
図25(A)中の破線840で表される曲線にシフトさせること
ができる。また、上述したOSトランジスタ810の電気特性は、第2ゲートの電圧を電
圧V
BG_Bのように小さくすることで、
図25(A)中の実線841で表される曲線に
シフトさせることができる。
図25(A)に示すように、OSトランジスタ810は、信
号S
BGを電圧V
BG_Aあるいは電圧V
BG_Bというように切り替えることで、しき
い値電圧をプラスシフトあるいはマイナスシフトさせることができる。
【0496】
しきい値電圧をしきい値電圧V
TH_Bにプラスシフトさせることで、OSトランジスタ
810は電流が流れにくい状態とすることができる。
図25(B)には、この状態を可視
化して示す。
【0497】
図25(B)に図示するように、OSトランジスタ810に流れる電流I
Bを極めて小さ
くすることができる。そのため、入力端子INに与える信号がハイレベルでOSトランジ
スタ820はオン状態(ON)のとき、出力端子OUTの電圧を急峻に下降させることが
できる。
【0498】
図25(B)に図示したように、OSトランジスタ810に流れる電流が流れにくい状態
とすることができるため、
図24(C)に示すタイミングチャートにおける出力端子の信
号波形831を急峻に変化させることができる。電圧VDDを与える配線と、電圧VSS
を与える配線との間に流れる貫通電流を少なくすることができるため、低消費電力での動
作を行うことができる。
【0499】
また、しきい値電圧をしきい値電圧V
TH_Aにマイナスシフトさせることで、OSトラ
ンジスタ810は電流が流れやすい状態とすることができる。
図25(C)には、この状
態を可視化して示す。
図25(C)に図示するように、このとき流れる電流I
Aを少なく
とも電流I
Bよりも大きくすることができる。そのため、入力端子INに与える信号がロ
ーレベルでOSトランジスタ820はオフ状態(OFF)のとき、出力端子OUTの電圧
を急峻に上昇させることができる。
図25(C)に図示したように、OSトランジスタ8
10に流れる電流が流れやすい状態とすることができるため、
図24(C)に示すタイミ
ングチャートにおける出力端子の信号波形832を急峻に変化させることができる。
【0500】
なお、信号S
BGによるOSトランジスタ810のしきい値電圧の制御は、OSトランジ
スタ820の状態が切り替わる以前、すなわち時刻T1やT2よりも前に行うことが好ま
しい。例えば、
図24(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がハイレベル
に切り替わる時刻T1よりも前に、しきい値電圧V
TH_Aから、しきい値電圧V
TH_
BにOSトランジスタ810のしきい値電圧を切り替えることが好ましい。また、
図24
(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がローレベルに切り替わる時刻T2
よりも前に、しきい値電圧V
TH_Bからしきい値電圧V
TH_AにOSトランジスタ8
10のしきい値電圧を切り替えることが好ましい。
【0501】
なお、
図24(C)のタイミングチャートでは、入力端子INに与える信号に応じて信号
S
BGを切り替える構成を示したが、別の構成としてもよい。例えば、しきい値電圧を制
御するための電圧は、フローティング状態としたOSトランジスタ810の第2ゲートに
保持させる構成としてもよい。当該構成を実現可能な回路構成の一例について、
図26(
A)に示す。
【0502】
図26(A)では、
図24(B)で示した回路構成に加えて、OSトランジスタ850を
有する。OSトランジスタ850の第1端子は、OSトランジスタ810の第2ゲートに
接続される。またOSトランジスタ850の第2端子は、電圧V
BG_B(あるいは電圧
V
BG_A)を与える配線に接続される。OSトランジスタ850の第1ゲートは、信号
S
Fを与える配線に接続される。OSトランジスタ850の第2ゲートは、電圧V
BG_
B(あるいは電圧V
BG_A)を与える配線に接続される。
【0503】
図26(A)の動作について、
図26(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
【0504】
OSトランジスタ810のしきい値電圧を制御するための電圧は、入力端子INに与える
信号がハイレベルに切り替わる時刻T3よりも前に、OSトランジスタ810の第2ゲー
トに与える構成とする。信号SFをハイレベルとしてOSトランジスタ850をオン状態
とし、ノードNBGにしきい値電圧を制御するための電圧VBG_Bを与える。
【0505】
ノードNBGが電圧VBG_Bとなった後は、OSトランジスタ850をオフ状態とする
。OSトランジスタ850は、オフ電流が極めて小さいため、オフ状態にし続けることで
、一旦ノードNBGに保持させた電圧VBG_Bを保持することができる。そのため、O
Sトランジスタ850の第2ゲートに電圧VBG_Bを与える動作の回数が減るため、電
圧VBG_Bの書き換えに要する分の消費電力を小さくすることができる。
【0506】
なお、
図24(B)及び
図26(A)の回路構成では、OSトランジスタ810の第2ゲ
ートに与える電圧を外部からの制御によって与える構成について示したが、別の構成とし
てもよい。例えば、しきい値電圧を制御するための電圧を、入力端子INに与える信号を
基に生成し、OSトランジスタ810の第2ゲートに与える構成としてもよい。当該構成
を実現可能な回路構成の一例について、
図27(A)に示す。
【0507】
図27(A)では、
図24(B)で示した回路構成において、入力端子INとOSトラン
ジスタ810の第2ゲートとの間にCMOSインバータ860を有する。CMOSインバ
ータ860の入力端子は、入力端子INに接続される。CMOSインバータ860の出力
端子は、OSトランジスタ810の第2ゲートに接続される。
【0508】
図27(A)の動作について、
図27(B)のタイミングチャートを用いて説明する。図
27(B)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの信号
波形、CMOSインバータ860の出力波形IN_B、及びOSトランジスタ810のし
きい値電圧の変化について示している。
【0509】
入力端子INに与える信号の論理を反転した信号である出力波形IN_Bは、OSトラン
ジスタ810のしきい値電圧を制御する信号とすることができる。したがって、
図25(
A)乃至
図25(C)で説明したように、OSトランジスタ810のしきい値電圧を制御
できる。例えば、
図27(B)における時刻T4となるとき、入力端子INに与える信号
がハイレベルでOSトランジスタ820はオン状態となる。このとき、出力波形IN_B
はローレベルとなる。そのため、OSトランジスタ810は電流が流れにくい状態とする
ことができ、出力端子OUTの電圧を急峻に下降させることができる。
【0510】
また、
図27(B)における時刻T5となるとき、入力端子INに与える信号がローレベ
ルでOSトランジスタ820はオフ状態となる。このとき、出力波形IN_Bはハイレベ
ルとなる。そのため、OSトランジスタ810は電流が流れやすい状態とすることができ
、出力端子OUTの電圧を急峻に上昇させることができる。
【0511】
以上説明したように本実施の形態の構成では、OSトランジスタを有するインバータにお
ける、バックゲートの電圧を入力端子INの信号の論理にしたがって切り替える。当該構
成とすることで、OSトランジスタのしきい値電圧を制御することができる。入力端子I
Nに与える信号によってOSトランジスタのしきい値電圧を制御することで、出力端子O
UTの電圧を急峻に変化させることができる。また、電源電圧を与える配線間の貫通電流
を小さくすることができる。そのため、低消費電力化を図ることができる。
【0512】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができる。
【0513】
(実施の形態9)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した酸化物半導体を有するトランジスタ(O
Sトランジスタ)を、複数の回路に用いる半導体装置の一例について、
図28乃至
図31
を用いて説明する。
【0514】
<6.半導体装置の回路構成例>
図28(A)は、半導体装置900のブロック図である。半導体装置900は、電源回路
901、回路902、電圧生成回路903、回路904、電圧生成回路905および回路
906を有する。
【0515】
電源回路901は、基準となる電圧VORGを生成する回路である。電圧VORGは、単
一の電圧ではなく、複数の電圧でもよい。電圧VORGは、半導体装置900の外部から
与えられる電圧V0を基に生成することができる。半導体装置900は、外部から与えら
れる単一の電源電圧を基に電圧VORGを生成できる。そのため半導体装置900は、外
部から電源電圧を複数与えることなく動作することができる。
【0516】
回路902、904および906は、異なる電源電圧で動作する回路である。例えば回路
902の電源電圧は、電圧VORGと電圧VSS(VORG>VSS)とを基に印加され
る電圧である。また、例えば回路904の電源電圧は、電圧VPOGと電圧VSS(VP
OG>VORG)とを基に印加される電圧である。また、例えば回路906の電源電圧は
、電圧VORGと電圧VSSと電圧VNEG(VORG>VSS>VNEG)とを基に印
加される電圧である。なお電圧VSSは、グラウンド電位(GND)と等電位とすれば、
電源回路901で生成する電圧の種類を削減できる。
【0517】
電圧生成回路903は、電圧VPOGを生成する回路である。電圧生成回路903は、電
源回路901から与えられる電圧VORGを基に電圧VPOGを生成できる。そのため、
回路904を有する半導体装置900は、外部から与えられる単一の電源電圧を基に動作
することができる。
【0518】
電圧生成回路905は、電圧VNEGを生成する回路である。電圧生成回路905は、電
源回路901から与えられる電圧VORGを基に電圧VNEGを生成できる。そのため、
回路906を有する半導体装置900は、外部から与えられる単一の電源電圧を基に動作
することができる。
【0519】
図28(B)は電圧V
POGで動作する回路904の一例、
図28(C)は回路904を
動作させるための信号の波形の一例である。
【0520】
図28(B)では、トランジスタ911を示している。トランジスタ911のゲートに与
える信号は、例えば、電圧V
POGと電圧V
SSを基に生成される。当該信号は、トラン
ジスタ911を導通状態とする動作時に電圧V
POG、非導通状態とする動作時に電圧V
SSとする。電圧V
POGは、
図28(C)に図示するように、電圧V
ORGより大きい
。そのため、トランジスタ911は、ソース(S)とドレイン(D)との間をより確実に
導通状態にできる。その結果、回路904は、誤動作が低減された回路とすることができ
る。
【0521】
図28(D)は電圧V
NEGで動作する回路906の一例、
図28(E)は回路906を
動作させるための信号の波形の一例である。
【0522】
図28(D)では、バックゲートを有するトランジスタ912を示している。トランジス
タ912のゲートに与える信号は、例えば、電圧V
ORGと電圧V
SSを基にして生成さ
れる。当該信号は、トランジスタ912を導通状態とする動作時に電圧V
ORG、非導通
状態とする動作時に電圧V
SSを基に生成される。また、トランジスタ912のバックゲ
ートに与える信号は、電圧V
NEGを基に生成される。電圧V
NEGは、
図28(E)に
図示するように、電圧V
SS(GND)より小さい。そのため、トランジスタ912のし
きい値電圧は、プラスシフトするように制御することができる。そのため、トランジスタ
912をより確実に非導通状態とすることができ、ソース(S)とドレイン(D)との間
を流れる電流を小さくできる。その結果、回路906は、誤動作が低減され、且つ低消費
電力化が図られた回路とすることができる。
【0523】
なお、電圧VNEGは、トランジスタ912のバックゲートに直接与える構成としてもよ
い。あるいは、電圧VORGと電圧VNEGを基に、トランジスタ912のゲートに与え
る信号を生成し、当該信号をトランジスタ912のバックゲートに与える構成としてもよ
い。
【0524】
また
図29(A)(B)には、
図28(D)(E)の変形例を示す。
【0525】
図29(A)に示す回路図では、電圧生成回路905と、回路906と、の間に制御回路
921によって導通状態が制御できるトランジスタ922を示す。トランジスタ922は
、nチャネル型のOSトランジスタとする。制御回路921が出力する制御信号S
BGは
、トランジスタ922の導通状態を制御する信号である。また回路906が有するトラン
ジスタ912A、912Bは、トランジスタ922と同じOSトランジスタである。
【0526】
図29(B)のタイミングチャートには、制御信号S
BGの電位の変化を示し、トランジ
スタ912A、912Bのバックゲートの電位の状態をノードN
BGの電位の変化で示す
。制御信号S
BGがハイレベルのときにトランジスタ922が導通状態となり、ノードN
BGが電圧V
NEGとなる。その後、制御信号S
BGがローレベルのときにノードN
BG
が電気的にフローティングとなる。トランジスタ922は、OSトランジスタであるため
、オフ電流が小さい。そのため、ノードN
BGが電気的にフローティングであっても、一
旦与えた電圧V
NEGを保持することができる。
【0527】
また、
図30(A)には、上述した電圧生成回路903に適用可能な回路構成の一例を示
す。
図30(A)に示す電圧生成回路903は、ダイオードD1乃至D5、キャパシタC
1乃至C5、およびインバータINVを有する5段のチャージポンプである。クロック信
号CLKは、キャパシタC1乃至C5に直接、あるいはインバータINVを介して与えら
れる。インバータINVの電源電圧を、電圧V
ORGと電圧V
SSとを基に印加される電
圧とすると、クロック信号CLKを与えることによって、電圧V
ORGの5倍の正電圧に
昇圧された電圧V
POGを得ることができる。なお、ダイオードD1乃至D5の順方向電
圧は0Vとしている。また、チャージポンプの段数を変更することで、所望の電圧V
PO
Gを得ることができる。
【0528】
また、
図30(B)には、上述した電圧生成回路905に適用可能な回路構成の一例を示
す。
図30(B)に示す電圧生成回路905は、ダイオードD1乃至D5、キャパシタC
1乃至C5、およびインバータINVを有する4段のチャージポンプである。クロック信
号CLKは、キャパシタC1乃至C5に直接、あるいはインバータINVを介して与えら
れる。インバータINVの電源電圧を、電圧V
ORGと電圧V
SSとを基に印加される電
圧とすると、クロック信号CLKを与えることによって、グラウンド、すなわち電圧V
S
Sから電圧V
ORGの4倍の負電圧に降圧された電圧V
NEGを得ることができる。なお
、ダイオードD1乃至D5の順方向電圧は0Vとしている。また、チャージポンプの段数
を変更することで、所望の電圧V
NEGを得ることができる。
【0529】
なお、上述した電圧生成回路903の回路構成は、
図30(A)で示す回路図の構成に限
らない。例えば、電圧生成回路903の変形例を
図31(A)乃至
図31(C)に示す。
なお、電圧生成回路903の変形例は、
図31(A)乃至
図31(C)に示す電圧生成回
路903A乃至903Cにおいて、各配線に与える電圧を変更すること、あるいは素子の
配置を変更することで実現可能である。
【0530】
図31(A)に示す電圧生成回路903Aは、トランジスタM1乃至M10、キャパシタ
C11乃至C14、およびインバータINV1を有する。クロック信号CLKは、トラン
ジスタM1乃至M10のゲートに直接、あるいはインバータINV1を介して与えられる
。クロック信号CLKを与えることによって、電圧V
ORGの4倍の正電圧に昇圧された
電圧V
POGを得ることができる。なお、段数を変更することで、所望の電圧V
POGを
得ることができる。
図31(A)に示す電圧生成回路903Aは、トランジスタM1乃至
M10をOSトランジスタとすることでオフ電流を小さくでき、キャパシタC11乃至C
14に保持した電荷の漏れを抑制できる。そのため、効率的に電圧V
ORGから電圧V
P
OGへの昇圧を図ることができる。
【0531】
また、
図31(B)に示す電圧生成回路903Bは、トランジスタM11乃至M14、キ
ャパシタC15、C16、およびインバータINV2を有する。クロック信号CLKは、
トランジスタM11乃至M14のゲートに直接、あるいはインバータINV2を介して与
えられる。クロック信号CLKを与えることによって、電圧V
ORGの2倍の正電圧に昇
圧された電圧V
POGを得ることができる。
図31(B)に示す電圧生成回路903Bは
、トランジスタM11乃至M14をOSトランジスタとすることでオフ電流を小さくでき
、キャパシタC15、C16に保持した電荷の漏れを抑制できる。そのため、効率的に電
圧V
ORGから電圧V
POGへの昇圧を図ることができる。
【0532】
また、
図31(C)に示す電圧生成回路903Cは、インダクタInd1、トランジスタ
M15、ダイオードD6、およびキャパシタC17を有する。トランジスタM15は、制
御信号ENによって、導通状態が制御される。制御信号ENによって、電圧V
ORGが昇
圧された電圧V
POGを得ることができる。
図31(C)に示す電圧生成回路903Cは
、インダクタInd1を用いて電圧の昇圧を行うため、変換効率の高い電圧の昇圧を行う
ことができる。
【0533】
以上説明したように本実施の形態の構成では、半導体装置が有する回路に必要な電圧を内
部で生成することができる。そのため半導体装置は、外部から与える電源電圧の数を削減
できる。
【0534】
なお、本実施の形態で示す構成等は、他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0535】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュール及び電子機器に
ついて、
図32乃至
図35を用いて説明を行う。
【0536】
<7-1.表示モジュール>
図32に示す表示モジュール7000は、上部カバー7001と下部カバー7002との
間に、FPC7003に接続されたタッチパネル7004、FPC7005に接続された
表示パネル7006、バックライト7007、フレーム7009、プリント基板7010
、バッテリ7011を有する。
【0537】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル7006に用いることができる。
【0538】
上部カバー7001及び下部カバー7002は、タッチパネル7004及び表示パネル7
006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0539】
タッチパネル7004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル7
006に重畳して用いることができる。また、表示パネル7006の対向基板(封止基板
)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル70
06の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0540】
バックライト7007は、光源7008を有する。なお、
図32において、バックライト
7007上に光源7008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例え
ば、バックライト7007の端部に光源7008を配置し、さらに光拡散板を用いる構成
としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射型
パネル等の場合においては、バックライト7007を設けない構成としてもよい。
【0541】
フレーム7009は、表示パネル7006の保護機能の他、プリント基板7010の動作
により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレー
ム7009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0542】
プリント基板7010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号
処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても
良いし、別途設けたバッテリ7011による電源であってもよい。バッテリ7011は、
商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0543】
また、表示モジュール7000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加
して設けてもよい。
【0544】
<7-2.電子機器1>
次に、
図33(A)乃至
図33(E)に電子機器の一例を示す。
【0545】
図33(A)は、ファインダー8100を取り付けた状態のカメラ8000の外観を示す
図である。
【0546】
カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッターボ
タン8004等を有する。またカメラ8000には、着脱可能なレンズ8006が取り付
けられている。
【0547】
ここではカメラ8000として、レンズ8006を筐体8001から取り外して交換する
ことが可能な構成としたが、レンズ8006と筐体が一体となっていてもよい。
【0548】
カメラ8000は、シャッターボタン8004を押すことにより、撮像することができる
。また、表示部8002はタッチパネルとしての機能を有し、表示部8002をタッチす
ることにより撮像することも可能である。
【0549】
カメラ8000の筐体8001は、電極を有するマウントを有し、ファインダー8100
のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0550】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する。
【0551】
筐体8101は、カメラ8000のマウントと係合するマウントを有しており、ファイン
ダー8100をカメラ8000に取り付けることができる。また当該マウントには電極を
有し、当該電極を介してカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示させ
ることができる。
【0552】
ボタン8103は、電源ボタンとしての機能を有する。ボタン8103により、表示部8
102の表示のオン・オフを切り替えることができる。
【0553】
カメラ8000の表示部8002、及びファインダー8100の表示部8102に、本発
明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0554】
なお、
図33(A)では、カメラ8000とファインダー8100とを別の電子機器とし
、これらを脱着可能な構成としたが、カメラ8000の筐体8001に、表示装置を備え
るファインダーが内蔵されていてもよい。
【0555】
図33(B)は、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示す図である。
【0556】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体820
3、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バッ
テリ8206が内蔵されている。
【0557】
ケーブル8205は、バッテリ8206から本体8203に電力を供給する。本体820
3は無線受信機等を備え、受信した画像データ等の映像情報を表示部8204に表示させ
ることができる。また、本体8203に設けられたカメラで使用者の眼球やまぶたの動き
を捉え、その情報をもとに使用者の視点の座標を算出することにより、使用者の視点を入
力手段として用いることができる。
【0558】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に複数の電極が設けられていてもよい。
本体8203は使用者の眼球の動きに伴って電極に流れる電流を検知することにより、使
用者の視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流を検知する
ことにより、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部8201
には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使用
者の生体情報を表示部8204に表示する機能を有していてもよい。また、使用者の頭部
の動きなどを検出し、表示部8204に表示する映像をその動きに合わせて変化させても
よい。
【0559】
表示部8204に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0560】
図33(C)(D)(E)は、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示す図であ
る。ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301と、表示部8302と、バン
ド状の固定具8304と、一対のレンズ8305と、を有する。
【0561】
使用者は、レンズ8305を通して、表示部8302の表示を視認することができる。な
お、表示部8302を湾曲して配置させると好適である。表示部8302を湾曲して配置
することで、使用者が高い臨場感を感じることができる。なお、本実施の形態においては
、表示部8302を1つ設ける構成について例示したが、これに限定されず、例えば、表
示部8302を2つ設ける構成としてもよい。この場合、使用者の片方の目に1つの表示
部が配置されるような構成とすると、視差を用いた3次元表示等を行うことも可能となる
。
【0562】
なお、表示部8302に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明の
一態様の半導体装置を有する表示装置は、極めて精細度が高いため、
図33(E)のよう
にレンズ8305を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、より
現実感の高い映像を表示することができる。
【0563】
<7-3.電子機器2>
次に、
図33(A)乃至
図33(E)に示す電子機器と、異なる電子機器の一例を
図34
(A)乃至
図34(G)に示す。
【0564】
図34(A)乃至
図34(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピ
ーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子
9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光
、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流
量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン
9008、等を有する。
【0565】
図34(A)乃至
図34(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な
情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、
カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)に
よって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネ
ットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う
機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する
機能、等を有することができる。なお、
図34(A)乃至
図34(G)に示す電子機器が
有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。また
、
図34(A)乃至
図34(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部を
有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能、
動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機
能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0566】
図34(A)乃至
図34(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0567】
図34(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置91
00は、表示部9001を大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上の
表示部9001を組み込むことが可能である。
【0568】
図34(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、
例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具体
的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、ス
ピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報
端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つ
の操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001の
一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001
の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールやS
NS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、電
子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッテ
リの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置
に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
【0569】
図34(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、
表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情
報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携帯
情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態
で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信した
電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置
に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示を
確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0570】
図34(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9
200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、
コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示
部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことが
できる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行すること
が可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズ
フリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有
し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また
接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006
を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0571】
図34(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である
。また、
図34(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、
図34(
F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化
する途中の状態の斜視図であり、
図34(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状態
の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した
状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末920
1が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に
支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより
、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させること
ができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げ
ることができる。
【0572】
次に、
図33(A)乃至
図33(E)に示す電子機器、及び
図34(A)乃至
図34(G
)に示す電子機器と異なる電子機器の一例を
図35(A)(B)に示す。
図35(A)(
B)は、複数の表示パネルを有する表示装置の斜視図である。なお、
図35(A)は、複
数の表示パネルが巻き取られた形態の斜視図であり、
図35(B)は、複数の表示パネル
が展開された状態の斜視図である。
【0573】
図35(A)(B)に示す表示装置9500は、複数の表示パネル9501と、軸部95
11と、軸受部9512と、を有する。また、複数の表示パネル9501は、表示領域9
502と、透光性を有する領域9503と、を有する。
【0574】
また、複数の表示パネル9501は、可撓性を有する。また、隣接する2つの表示パネル
9501は、それらの一部が互いに重なるように設けられる。例えば、隣接する2つの表
示パネル9501の透光性を有する領域9503を重ね合わせることができる。複数の表
示パネル9501を用いることで、大画面の表示装置とすることができる。また、使用状
況に応じて、表示パネル9501を巻き取ることが可能であるため、汎用性に優れた表示
装置とすることができる。
【0575】
また、
図35(A)(B)においては、表示領域9502が隣接する表示パネル9501
で離間する状態を図示しているが、これに限定されず、例えば、隣接する表示パネル95
01の表示領域9502を隙間なく重ねあわせることで、連続した表示領域9502とし
てもよい。
【0576】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有する
ことを特徴とする。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機器
にも適用することができる。
【0577】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができる。
【0578】
(実施の形態11)
<半導体回路>
本明細書等に開示したトランジスタは、OR回路、AND回路、NAND回路、およびN
OR回路などの論理回路や、インバータ回路、バッファ回路、シフトレジスタ回路、フリ
ップフロップ回路、エンコーダ回路、デコーダ回路、増幅回路、アナログスイッチ回路、
積分回路、微分回路、およびメモリ素子などの様々な半導体回路に用いることができる。
【0579】
本明細書等に開示したトランジスタを用いた半導体回路の一例を、
図46の回路図に示す
。なお、回路図において、酸化物半導体を用いたトランジスタであることを明示するため
に、酸化物半導体を用いたトランジスタの回路記号に「OS」を付している。
【0580】
図46(A)に示す半導体回路は、pチャネル型のトランジスタ281とnチャネル型の
トランジスタ282を直列に接続し、且つ、それぞれのゲートを接続した、インバータ回
路の構成例を示している。
【0581】
図46(B)に示す半導体回路は、pチャネル型のトランジスタ281とnチャネル型の
トランジスタ282を並列に接続した、アナログスイッチ回路の構成例を示している。
【0582】
図46(C)に示す半導体回路は、トランジスタ281a、トランジスタ281b、トラ
ンジスタ282a、およびトランジスタ282bを用いたNAND回路の構成例を示して
いる。NAND回路は、入力端子IN_Aと入力端子IN_Bに入力される電位の組み合
わせによって、出力される電位が変化する。
【0583】
<記憶装置>
図47(A)に示す半導体回路は、トランジスタ289のソースまたはドレインの一方を
、トランジスタ1281のゲートおよび容量素子257の一方の電極に接続した記憶装置
の構成例を示している。また、
図47(B)に示す回路は、トランジスタ289のソース
またはドレインの一方を、容量素子257の一方の電極に接続した記憶装置の構成例を示
している。
【0584】
図47(A)および
図47(B)に示す半導体回路は、トランジスタ289のソースまた
はドレインの他方から入力された電荷を、ノード256に保持することができる。トラン
ジスタ289に酸化物半導体を用いたトランジスタを用いることで、長期間に渡ってノー
ド256の電荷を保持することができる。
【0585】
図47(A)ではトランジスタ1281として、pチャネル型のトランジスタを示してい
るが、nチャネル型のトランジスタを用いてもよい。例えば、トランジスタ1281とし
て、トランジスタ281またはトランジスタ282を用いてもよい。また、トランジスタ
1281としてOSトランジスタを用いてもよい。
【0586】
ここで、
図47(A)および
図47(B)に示した半導体装置(記憶装置)について、詳
細に説明しておく。
【0587】
図47(A)に示す半導体装置は、第1の半導体を用いたトランジスタ1281と第2の
半導体を用いたトランジスタ289、および容量素子257を有している。
【0588】
トランジスタ289は、上記実施の形態に開示したOSトランジスタである。トランジス
タ289のオフ電流が小さいことにより、半導体装置の特定のノードに長期にわたり記憶
内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、またはリ
フレッシュ動作の頻度が極めて少なくすることが可能となるため、消費電力の低い記憶装
置となる。
【0589】
図47(A)において、配線251はトランジスタ1281のソースまたはドレインの一
方と電気的に接続され、配線252はトランジスタ1281のソースまたはドレインの他
方と電気的に接続される。また、配線253はトランジスタ289のソースまたはドレイ
ンの一方と電気的に接続され、配線254はトランジスタ289のゲートと電気的に接続
されている。そして、トランジスタ1281のゲート、トランジスタ289のソースまた
はドレインの他方、および容量素子257の電極の一方は、ノード256と電気的に接続
されている。また、配線255は容量素子257の電極の他方と電気的に接続されている
。
【0590】
図47(A)に示す記憶装置は、ノード256に与えられた電荷を保持可能という特性を
有することで、以下に示すように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0591】
〔書き込み動作、保持動作〕
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、配線254の電位を、トランジスタ
289がオン状態となる電位にする。これにより、配線253の電位が、ノード256に
与えられる。即ち、ノード256に所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異
なる二つの電位レベルを与える電荷(以下、「Lowレベル電荷」、「Highレベル電
荷」という。)のどちらかが与えられるものとする。その後、配線254の電位を、トラ
ンジスタ289がオフ状態となる電位とすることで、ノード256に電荷が保持される。
【0592】
なお、Highレベル電荷は、Lowレベル電荷よりもノード256に高い電位を与える
電荷とする。また、トランジスタ1281にpチャネル型のトランジスタを用いる場合、
Highレベル電荷およびLowレベル電荷は、どちらもトランジスタ1281のしきい
値電圧よりも高い電位を与える電荷とする。また、トランジスタ1281にnチャネル型
のトランジスタを用いる場合、Highレベル電荷およびLowレベル電荷は、どちらも
トランジスタ1281のしきい値電圧よりも低い電位である。すなわち、Highレベル
電荷とLowレベル電荷は、どちらもトランジスタ1281がオフ状態となる電位を与え
る電荷である。
【0593】
トランジスタ289のオフ電流は極めて小さいため、ノード256の電荷は長期間にわた
って保持される。
【0594】
〔読み出し動作〕
次に情報の読み出しについて説明する。配線251に配線252の電位と異なる所定の電
位(定電位)を与えた状態で、配線255に読み出し電位VRを与えると、ノード256
に保持されている情報を読み出すことができる。
【0595】
Highレベル電荷により与えられる電位をVH、Lowレベル電荷により与えられる電
位をVLとすると、読み出し電位VRは、{(Vth-VH)+(Vth+VL)}/2
とすればよい。なお、情報の読み出しをしないときの配線255の電位は、トランジスタ
1281にpチャネル型のトランジスタを用いる場合はVHより高い電位とし、トランジ
スタ1281にnチャネル型のトランジスタを用いる場合はVLより低い電位とすればよ
い。
【0596】
例えば、トランジスタ1281にpチャネル型のトランジスタを用いる場合、トランジス
タ1281のVthが-2Vであり、VHを1V、VLを-1Vとすると、VRを-2V
とすればよい。ノード256に書き込まれた電位がVHのとき、配線255にVRが与え
られると、トランジスタ1281のゲートにVR+VH、すなわち-1Vが印加される。
-1VはVthよりも高いため、トランジスタ1281はオン状態にならない。よって、
配線252の電位は変化しない。また、ノード256に書き込まれた電位がVLのとき、
配線255にVRが与えられると、トランジスタ1281のゲートにVR+VL、すなわ
ち-3Vが印加される。-3VはVthよりも低いため、トランジスタ1281がオン状
態になる。よって、配線252の電位が変化する。
【0597】
また、トランジスタ1281にnチャネル型のトランジスタを用いる場合、トランジスタ
1281のVthが2Vであり、VHを1V、VLを-1Vとすると、VRを2Vとすれ
ばよい。ノード256に書き込まれた電位がVHのとき、配線255にVRが与えられる
と、トランジスタ1281のゲートにVR+VH、すなわち3Vが印加される。3VはV
thよりも高いため、トランジスタ1281はオン状態になる。よって、配線252の電
位が変化する。また、ノード256に書き込まれた電位がVLのとき、配線255にVR
が与えられると、トランジスタ1281のゲートにVR+VL、すなわち1Vが印加され
る。1VはVthよりも低いため、トランジスタ1281はオン状態にならない。よって
、配線252の電位は変化しない。
【0598】
配線252の電位を判別することで、ノード256に保持されている情報を読み出すこと
ができる。
【0599】
図47(B)に示す半導体装置は、トランジスタ1281を有さない点が
図47(A)に
示した半導体装置と異なる。この場合も
図47(A)に示した半導体装置と同様の動作に
より情報の書き込みおよび保持が可能である。
【0600】
図47(B)に示す半導体装置における、情報の読み出しについて説明する。配線254
にトランジスタ289がオン状態になる電位が与えられると、浮遊状態である配線253
と容量素子257とが導通し、配線253と容量素子257の間で電荷が再分配される。
その結果、配線253の電位が変化する。配線253の電位の変化量は、ノード256の
電位(またはノード256に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0601】
例えば、ノード256の電位をV、容量素子257の容量をC、配線253が有する容量
成分をCB、電荷が再分配される前の配線253の電位をVB0とすると、電荷が再分配
された後の配線253の電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。した
がって、メモリセルの状態として、ノード256の電位がV1とV0(V1>V0)の2
つの状態をとるとすると、電位V1を保持している場合の配線253の電位(=(CB×
VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合の配線253の電
位(=(CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0602】
そして、配線253の電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる
。
【0603】
以上に示した記憶装置は、酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを
適用することで、長期にわたって記憶内容を保持することが可能となる。つまり、リフレ
ッシュ動作が不要となるか、またはリフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能
となるため、消費電力の低い半導体装置を実現することができる。また、電力の供給がな
い場合(ただし、電位は固定されていることが好ましい)であっても、長期にわたって記
憶内容を保持することが可能である。
【0604】
また、該記憶装置は、情報の書き込みに高い電圧が不要であるため、素子の劣化が起こり
にくい。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入
や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行わないため、絶縁体の劣化といった
問題が全く生じない。即ち、本発明の一態様に係る記憶装置は、従来の不揮発性メモリで
問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上した記憶装置で
ある。さらに、トランジスタの導通状態、非導通状態によって、情報の書き込みが行われ
るため、高速な動作が可能となる。
【0605】
<CPU>
次に、上述したトランジスタを用いたCPUの一例について説明する。
図48は、上述し
たトランジスタを一部に用いたCPUの構成例を示すブロック図である。
【0606】
図48に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithmet
ic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラク
ションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ
1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース1
198(Bus I/F)、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェ
ース1189(ROM I/F)を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基
板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は
、別チップに設けてもよい。もちろん、
図48に示すCPUは、その構成を簡略化して示
した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。例え
ば、
図48に示すCPUまたは演算回路を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含
み、それぞれのコアが並列で動作するような構成としてもよい。また、CPUが内部演算
回路やデータバスで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64
ビットなどとすることができる。
【0607】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクション
デコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタ
ラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ
1195に入力される。
【0608】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントロー
ラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制
御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御する
ための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラ
ム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク
状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアド
レスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0609】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ119
2、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、および
レジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタ
イミングコントローラ1195は、基準クロック信号を元に、内部クロック信号を生成す
る内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号を上記各種回路に供給する。
【0610】
図48に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジスタ
1196のメモリセルとして、上述したトランジスタや記憶装置などを用いることができ
る。
【0611】
図48に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの
指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ11
96が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量
素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が
選択されている場合、レジスタ1196内の記憶素子への、電源電圧の供給が行われる。
容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが
行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
【0612】
図49は、レジスタ1196として用いることのできる記憶素子の回路図の一例である。
記憶素子1730は、電源遮断で記憶データが揮発する回路1701と、電源遮断で記憶
データが揮発しない回路1702と、スイッチ1703と、スイッチ1704と、論理素
子1706と、容量素子1707と、選択機能を有する回路1720と、を有する。回路
1702は、容量素子1708と、トランジスタ1709と、トランジスタ1710と、
を有する。なお、記憶素子1730は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダク
タなどのその他の素子をさらに有していても良い。
【0613】
ここで、回路1702には、上述した記憶装置を用いることができる。記憶素子1730
への電源電圧の供給が停止した際、回路1702のトランジスタ1709のゲートには接
地電位(0V)、またはトランジスタ1709がオフする電位が入力され続ける構成とす
る。例えば、トランジスタ1709のゲートが抵抗等の負荷を介して接地される構成とす
る。
【0614】
スイッチ1703は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタ1713を用い
て構成され、スイッチ1704は、トランジスタ1713とは逆の導電型(例えば、pチ
ャネル型)のトランジスタ1714を用いて構成した例を示す。ここで、スイッチ170
3の第1の端子はトランジスタ1713のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1
703の第2の端子はトランジスタ1713のソースとドレインの他方に対応し、スイッ
チ1703はトランジスタ1713のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の
端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ1713のオン状態ま
たはオフ状態)が選択される。スイッチ1704の第1の端子はトランジスタ1714の
ソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1704の第2の端子はトランジスタ171
4のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ1704はトランジスタ1714のゲー
トに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通
(つまり、トランジスタ1714のオン状態またはオフ状態)が選択される。
【0615】
トランジスタ1709のソースとドレインの一方は、容量素子1708の一対の電極のう
ちの一方、およびトランジスタ1710のゲートと電気的に接続される。ここで、接続部
分をノードM2とする。トランジスタ1710のソースとドレインの一方は、低電源電位
を供給することのできる配線(例えばGND線)に電気的に接続され、他方は、スイッチ
1703の第1の端子(トランジスタ1713のソースとドレインの一方)と電気的に接
続される。スイッチ1703の第2の端子(トランジスタ1713のソースとドレインの
他方)はスイッチ1704の第1の端子(トランジスタ1714のソースとドレインの一
方)と電気的に接続される。スイッチ1704の第2の端子(トランジスタ1714のソ
ースとドレインの他方)は電源電位VDDを供給することのできる配線と電気的に接続さ
れる。スイッチ1703の第2の端子(トランジスタ1713のソースとドレインの他方
)と、スイッチ1704の第1の端子(トランジスタ1714のソースとドレインの一方
)と、論理素子1706の入力端子と、容量素子1707の一対の電極のうちの一方と、
は電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM1とする。容量素子1707の一対
の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電
源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる
。容量素子1707の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配
線(例えばGND線)と電気的に接続される。容量素子1708の一対の電極のうちの他
方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等
)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子170
8の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND
線)と電気的に接続される。
【0616】
なお、容量素子1707および容量素子1708は、トランジスタや配線の寄生容量等を
積極的に利用することによって省略することも可能である。
【0617】
トランジスタ1709のゲート電極には、制御信号WEが入力される。スイッチ1703
およびスイッチ1704は、制御信号WEとは異なる制御信号RDによって第1の端子と
第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択され、一方のスイッチの第1の端子と
第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間は非導通
状態となる。
【0618】
トランジスタ1709のソースとドレインの他方には、回路1701に保持されたデータ
に対応する信号が入力される。
図49では、回路1701から出力された信号が、トラン
ジスタ1709のソースとドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ1703の
第2の端子(トランジスタ1713のソースとドレインの他方)から出力される信号は、
論理素子1706によってその論理値が反転された反転信号となり、回路1720を介し
て回路1701に入力される。
【0619】
なお、
図49では、スイッチ1703の第2の端子(トランジスタ1713のソースとド
レインの他方)から出力される信号は、論理素子1706および回路1720を介して回
路1701に入力する例を示したがこれに限定されない。スイッチ1703の第2の端子
(トランジスタ1713のソースとドレインの他方)から出力される信号が、論理値を反
転させられることなく、回路1701に入力されてもよい。例えば、回路1701内に、
入力端子から入力された信号の論理値が反転した信号が保持されるノードが存在する場合
に、スイッチ1703の第2の端子(トランジスタ1713のソースとドレインの他方)
から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
【0620】
図49におけるトランジスタ1709は、上記実施の形態に例示したトランジスタ100
を用いることができる。また、ゲート電極には制御信号WEを入力し、バックゲート電極
には制御信号WE2を入力することができる。制御信号WE2は、一定の電位の信号とす
ればよい。当該一定の電位には、例えば、接地電位やトランジスタ1709のソース電位
よりも小さい電位などが選ばれる。制御信号WE2は、トランジスタ1709のしきい値
電圧を制御するための電位信号であり、トランジスタ1709の、ゲート電圧が0Vの時
のドレイン電流をより低減することができる。なお、トランジスタ1709としては、第
2ゲートを有さないトランジスタを用いることもできる。
【0621】
また、
図49において、記憶素子1730に用いられるトランジスタのうち、トランジス
タ1709以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板119
0にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層または
シリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、記憶素子
1730に用いられるトランジスタ全てを、チャネルが酸化物半導体層で形成されるトラ
ンジスタとすることもできる。または、記憶素子1730は、トランジスタ1709以外
のトランジスタを、チャネルが酸化物半導体層で形成されるトランジスタと、酸化物半導
体以外の半導体でなる層または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとを組
み合わせて用いてもよい。
【0622】
図49における回路1701には、例えばフリップフロップ回路を用いることができる。
また、論理素子1706としては、例えばインバータやクロックドインバータ等を用いる
ことができる。
【0623】
本発明の一態様における半導体装置では、記憶素子1730に電源電圧が供給されない間
は、回路1701に記憶されていたデータを、回路1702に設けられた容量素子170
8によってノードM2に保持することができる。
【0624】
また、前述した通り、OSトランジスタはオフ電流が極めて小さい。例えば、OSトラン
ジスタのオフ電流は、結晶性を有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオ
フ電流に比べて著しく低い。そのため、当該トランジスタをトランジスタ1709として
用いることによって、記憶素子1730に電源電圧が供給されない間も容量素子1708
に保持された信号は長期間にわたり保たれる。こうして、記憶素子1730は電源電圧の
供給が停止した間も記憶内容(データ)を保持することが可能である。
【0625】
また、スイッチ1703およびスイッチ1704を設けることによって、電源電圧供給再
開後に、回路1701が元のデータを保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
【0626】
また、回路1702において、ノードM2に保持された信号はトランジスタ1710のゲ
ートに入力される。そのため、記憶素子1730への電源電圧の供給が再開された後、ノ
ードM2に保持された信号に応じて、トランジスタ1710の状態(オン状態、またはオ
フ状態)が決まり、回路1702から読み出すことができる。それ故、ノードM2に保持
された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出すことが可能
である。
【0627】
このような記憶素子1730を、CPUが有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶
装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことが
できる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰する
ことができる。よって、CPU全体、もしくはCPUを構成する一つ、または複数の論理
回路において、短期間の電源停止が可能になり、電源停止の頻度を高めることができるた
め、消費電力を抑えることができる。
【0628】
本実施の形態では、記憶素子1730をCPUに用いる例として説明したが、記憶素子1
730は、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムL
SI、PLD(Programmable Logic Device)等のLSI、R
F-Id(Radio Frequency Identification)にも応用
可能である。
【0629】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができる。
【実施例0630】
本実施例においては、
図2に示すトランジスタ100Aに相当するトランジスタを作製し
、該トランジスタの信頼性試験を行った。本実施例においては、以下に示す試料381及
び試料382を作製し評価を行った。なお、試料381及び試料382は本発明の一態様
のトランジスタを有する試料である。また、試料381及び試料382は、チャネル長L
=3μm、チャネル幅W=50μmのトランジスタが形成された試料である。試料381
と試料382とは、それぞれ絶縁膜110の作製方法が異なる。
【0631】
本実施例で作製した試料381及び試料382について、以下説明を行う。なお、以下の
説明において、
図2に示すトランジスタ100Aに付記した符号を用いて説明する。
【0632】
まず、基板102上に導電膜106を形成した。基板102としては、ガラス基板を用い
た。また、導電膜106としては、厚さ10nmのチタン膜と、厚さ100nmの銅膜と
を、スパッタリング装置を用いて形成した。
【0633】
次に、基板102及び導電膜106上に絶縁膜104を形成した。絶縁膜104としては
、厚さ400nmの窒化シリコン膜と、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜とを、プラズ
マCVD装置を用いて形成した。
【0634】
絶縁膜104の成膜条件としては、基板温度を350℃とし、流量200sccmのシラ
ンガスと、流量2000sccmの窒素ガスと、流量100sccmのアンモニアガスを
チャンバー内に導入し、圧力を100Paとし、プラズマCVD装置内に設置された平行
平板の電極間に2000WのRF電力を供給して、厚さ50nmの窒化シリコン膜を成膜
し、次に、アンモニアガスの流量を2000sccmに変更して、厚さ300nmの窒化
シリコン膜を成膜し、次に、アンモニアガスの流量を100sccmに変更して、厚さ5
0nmの窒化シリコン膜を成膜した。続いて、基板温度を350℃とし、流量20scc
mのシランガスと、流量3000sccmの一酸化二窒素ガスをチャンバー内に導入し、
圧力を40Paとし、プラズマCVD装置内に設置された平行平板の電極間に100Wの
RF電力を供給して、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0635】
次に、絶縁膜104上に酸化物半導体膜108を形成した。酸化物半導体膜108として
は、スパッタリング装置を用いて形成した。
【0636】
酸化物半導体膜108としては、厚さ40nmのIGZO膜を、基板温度を130℃とし
、アルゴンガスと酸素ガスと流量比において9:1としてチャンバー内に導入し、圧力を
0.6Paとし、スパッタリング装置内に設置された酸化物半導体ターゲット(In:G
a:Zn=4:2:4.1[原子数比])に2500WのAC電力を投入して成膜した。
【0637】
次に、絶縁膜104及び酸化物半導体膜108上に絶縁膜110を形成した。
【0638】
試料381の絶縁膜110としては、膜厚が30nmの1層目の酸化窒化シリコン膜と、
膜厚が100nmの2層目の酸化窒化シリコン膜と、膜厚が20nmの3層目の酸化窒化
シリコン膜とをプラズマCVD装置を用いて形成した。1層目の酸化窒化シリコン膜の成
膜条件としては、基板温度を350℃とし、流量20sccmのシランガスと、流量30
00sccmの一酸化二窒素ガスとをチャンバー内に導入し、圧力を200Paとし、プ
ラズマCVD装置内に設置された平行平板の電極間に100WのRF電力を供給して成膜
した。また、2層目の酸化窒化シリコン膜の成膜条件としては、基板温度を220℃とし
、流量160sccmのシランガスと、流量4000sccmの一酸化二窒素ガスとをチ
ャンバー内に導入し、圧力を200Paとし、プラズマCVD装置内に設置された平行平
板の電極間に1500WのRF電力を供給して成膜した。また、3層目の酸化窒化シリコ
ン膜の成膜条件としては、1層目の酸化窒化シリコン膜の成膜条件と同じとした。
【0639】
一方、試料382の絶縁膜110としては、膜厚が150nmの酸化窒化シリコン膜を、
単層にて、プラズマCVD装置を用いて形成した。酸化窒化シリコン膜の成膜条件として
は、基板温度を350℃とし、流量20sccmのシランガスと、流量18000scc
mの一酸化二窒素ガスとをチャンバー内に導入し、圧力を200Paとし、プラズマCV
D装置内に設置された平行平板の電極間に100WのRF電力を供給して成膜した。
【0640】
このように、試料381と試料382とは、それぞれ絶縁膜110の作製方法が異なるが
、その他の工程は同じである。
【0641】
次に、試料381と試料382とを、基板温度を350℃とし、窒素雰囲気下で1時間熱
処理した。
【0642】
次に、試料381と試料382とを、基板温度を350℃にて、酸素プラズマ処理を行っ
た。酸素プラズマ処理の条件は、流量3000sccmの酸素をチャンバー内に導入し、
圧力を40Paとし、プラズマCVD装置内に設置された平行平板の電極間に3000W
のRF電力を供給して250secの時間にて行った。
【0643】
次に、絶縁膜110及び絶縁膜104の所望の領域を除去し、導電膜106に達する開口
部143を形成した。
【0644】
次に、開口部143を覆うように、絶縁膜110上に導電膜112を形成した。導電膜1
12としては、膜厚が10nmの1層目のIn-Ga-Zn酸化物と、膜厚が90nmの
2層目のIn-Ga-Zn酸化物とを、スパッタリング装置を用いて形成した。1層目の
In-Ga-Zn酸化物の成膜条件としては、基板温度を170℃とし、流量200sc
cmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、スパッタリング装置内
に設置された酸化物半導体ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]
)に2500WのAC電力を供給して成膜した。2層目のIn-Ga-Zn酸化物の成膜
条件としては、基板温度を170℃とし、流量180sccmのアルゴンガスと、流量2
0sccmの酸素ガスとをチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、スパッタリン
グ装置内に設置された酸化物半導体ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原
子数比])に2500WのAC電力を供給して成膜した。
【0645】
その後、絶縁膜110及び導電膜112を、ドライエッチング装置を用いて島状に加工し
、酸化物半導体膜108の表面の一部を露出させた。
【0646】
次に、絶縁膜104、酸化物半導体膜108、及び導電膜112上に絶縁膜116を形成
した。
【0647】
絶縁膜116は、プラズマ処理と、成膜処理との2つのステップにより形成された。プラ
ズマ処理としては、基板温度を220℃とし、流量100sccmのアルゴンガスをチャ
ンバー内に導入し、圧力を40Paとし、プラズマCVD装置内に設置された平行平板の
電極間に1000WのRF電力を供給して行った。続けて、基板温度を220℃とし、流
量50sccmのシランガスと、流量5000sccmの窒素ガスと、流量100scc
mのアンモニアガスとをチャンバー内に導入し、圧力を100Paとし、プラズマCVD
装置内に設置された平行平板の電極間に1000WのRF電力を供給して窒化シリコン膜
を100nmの膜厚にて成膜した。
【0648】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成した。
【0649】
絶縁膜118の成膜条件としては、基板温度を220℃とし、流量160sccmのシラ
ンガスと、流量4000sccmの一酸化二窒素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を2
00Paとし、プラズマCVD装置内に設置された平行平板の電極間に1500WのRF
電力を供給して酸化窒化シリコン膜を300nmの膜厚にて成膜した。
【0650】
次に、絶縁膜116、118の所望の領域を除去し、酸化物半導体膜108に達する開口
部141a、141bを形成した。
【0651】
開口部141a、141bの形成方法としては、ドライエッチング法を用いた。
【0652】
次に、開口部141a、141bを覆うように、絶縁膜118上に導電膜を形成し、当該
導電膜を島状に加工することで、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜12
0a、120bを形成した。
【0653】
導電膜120a、120bとしては、厚さ50nmのTi膜と、厚さ400nmのAl膜
と、厚さ100nmのTi膜と、を、スパッタリング装置を用いて形成した。
【0654】
次いで、平坦化膜として、アクリルを1.5μmの厚さにて形成した。
【0655】
次に、熱処理を行った。当該熱処理としては、基板温度を250℃とし、窒素雰囲気下で
1時間処理した。
【0656】
以上の工程により、本実施例の試料381及び試料382を作製した。なお、試料381
及び試料382の作製工程における最高温度は350℃であった。
【0657】
試料381のトランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性において、チャネル長が2μ
mのものを
図50(A)、チャネル長が3μmのものを
図50(B)、チャネル長が6μ
mのものを
図50(C)に示す。また試料382のトランジスタのドレイン電流-ゲート
電圧特性において、チャネル長が2μmのものを
図50(D)、チャネル長が3μmのも
のを
図50(E)、チャネル長が6μmのものを
図50(F)に示す。チャネル幅はいず
れも50μmである。またソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)は、0.
1Vと10Vとの測定条件にて測定した。また、各グラフには同じ基板上のトランジスタ
20個分の特性が重ね書きされている。
【0658】
図50(A)乃至(F)で示されるように、上記作製した試料381及び試料382のド
レイン電流-ゲート電圧特性(Id-Vg特性)はいずれも正常であった。
【0659】
また上記トランジスタの信頼性評価を行った。本実施例での信頼性評価試験条件としては
、ゲート電圧(Vg)を±30V、とし、ドレイン電圧(Vd)とソース電圧(Vs)を
0V(comm)とし、ストレス温度を60℃とし、ストレス印加時間を1時間とし、測
定環境をダーク環境及び光照射環境(白色LEDにて約10000lxの光を照射)の2
つの環境で、それぞれ行った。すなわち、トランジスタのソース電極とドレイン電極を同
電位とし、ゲート電極にはソース電極及びドレイン電極とは異なる電位を一定時間(ここ
では1時間)印加した。これらをGBT(Gate Bias Temperature
stress)試験とも言う。
【0660】
また、ゲート電極に与える電位がソース電極及びドレイン電極の電位よりも高い場合をプ
ラスストレスとし、ゲート電極に与える電位がソース電極及びドレイン電極の電位よりも
低い場合をマイナスストレスとした。したがって、測定環境と合わせて、プラスGBT(
ダーク)376、マイナスGBT(ダーク)377、プラスGBT(光照射)378、及
びマイナスGBT(光照射)379の合計4条件にて信頼性評価を実施した。
【0661】
なお、プラスGBT(ダーク)をPBTS(Positive Bias Temper
ature Stress)とし、マイナスGBT(ダーク)を、NBTS(Negat
ive Bias Temperature Stress)とし、プラスGBT(光照
射)をPBITS(Positive Bias Illumination Temp
erature Stress)とし、マイナスGBT(光照射)をNBITS(Neg
ative Bias Illumination Temperature Stre
ss)とする。
【0662】
試料381及び試料382のGBT試験結果を
図51に示す。また、
図51において、縦
軸がトランジスタのしきい値電圧の変化量(ΔVth)を示す。
【0663】
図51に示す結果から、本実施例で作製した試料381及び試料382が有するトランジ
スタは、GBT試験における、しきい値電圧の変化量(ΔVth)が、いずれも表示装置
を駆動させるために用いる仕様範囲内であった。したがって、試料381及び試料382
が有するトランジスタは、それぞれ高い信頼性を有することが確認された。
【0664】
特に、PBTSによるしきい値電圧の変化量は、試料382の方が試料381より小さい
。これは350℃で成膜された酸化窒化シリコン膜中には、窒素酸化物(NOx)の量が
小さいから、と考えることができる。
【0665】
試料381のトランジスタの、電流ストレス試験の前後にてId-Vgカーブを重ね書き
して、
図52(A)に示す。電流ストレス条件は、試料温度60℃、ドレイン電圧10V
、ソース電極とドレイン電極の間の電流(ドレイン電流)100nA、ストレス時間36
00secにて、試料を暗環境とした。電流ストレス試験を行ったトランジスタのチャネ
ル長は3μmで、チャネル幅は3μmである。このときのトランジスタのしきい値電圧V
thの変化は、0.08Vであり、電界効果移動度の変化は-1.45%であった。
【0666】
また試料382のトランジスタの同様の結果を、
図52(B)に示す。このときのトラン
ジスタのしきい値電圧Vthの変化は、0.014Vであり、電界効果移動度の変化は-
0.02%であった。
【0667】
試料381のトランジスタの電流ストレス試験中のドレイン電流の変化率を、
図52(C
)に示す。また試料382のトランジスタの同様の変化率を、
図52(D)に示す。この
ように、試料382のトランジスタは、試料381のトランジスタに比べて、電流ストレ
スによりドレイン電流の変化が小さい。すなわち、絶縁膜110に、基板温度を350℃
で成膜される、単層の酸化窒化シリコン膜を用いることで、電流ストレス試験による劣化
が抑制できていることがわかる。
【0668】
以上、本実施例に示す構成は、実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。