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特開2023-174748ハイドロブラスト水回収装置用の分離機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174748
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ハイドロブラスト水回収装置用の分離機
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/00 20060101AFI20231201BHJP
   B01D 36/04 20060101ALI20231201BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B01D23/02 A
B01D36/04
B01D21/02 P
B01D21/02 Q
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172882
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2020001685の分割
【原出願日】2020-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116AA08
4D116BB01
4D116BC03
4D116BC05
4D116BC71
4D116DD04
4D116FF12B
4D116FF17B
4D116GG02
4D116GG12
4D116KK02
4D116QA51C
4D116QA51E
4D116QA51F
4D116VV09
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】ハイドロブラスト処理の施工日数を短縮することができるハイドロブラスト水回収装置用の分離機を提供する。
【解決手段】ハイドロブラスト水回収装置用の分離機1は、ハイドロブラスト水BWからダストを分離する第1のトラップ14を備える。この第1のトラップ14は、ハイドロブラスト水BWを通過させる複数の貫通孔14aを有し、分離させたダストを第1の槽11側の表面14bから落下させる部材によって構成される。第1のトラップ14で分離されたダストは、当該第1のトラップ14に保持されることなく落下するため、第1の槽11内に堆積する。一定時間が経過したら、第1の槽11内に堆積したダストを除去すればよく、フィルタ交換のように、第1のトラップ14を外して交換する必要がなくなる。フィルタ交換時のように、ハイドロブラスト処理の工程を中断させることなく連続運転が可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロブラスト水を回収してダストを分離するハイドロブラスト水回収装置用の分離機であって、
第1の槽と、
前記第1の槽に対して前記ハイドロブラスト水の出口側に隣り合う第2の槽と、
前記第1の槽と第2の槽との間に設けられ、前記ハイドロブラスト水から前記ダストを分離する第1のトラップと、を備え、
前記第1のトラップは、前記ハイドロブラスト水を通過させる複数の貫通孔を有し、分離させた前記ダストを前記第1の槽側の表面から落下させる部材によって構成される、ハイドロブラスト水回収装置用の分離機。
【請求項2】
前記第2の槽に対して前記ハイドロブラスト水の前記出口側に隣り合う第3の槽と、
前記第2の槽と前記第3の槽との間に設けられ、前記ハイドロブラスト水から前記ダストを分離する第2のトラップと、を備え、
前記第2のトラップは、前記第2の槽と前記第3の槽とを仕切ると共に、上端側で前記第2の槽の空間と前記第3の槽の空間とを連通させる開口部を有する壁部によって構成される、請求項1に記載のハイドロブラスト水回収装置用の分離機。
【請求項3】
前記第1の槽には、底側において上下の空間を仕切ると共に複数の貫通孔が形成された仕切り部材が設けられ、
前記第1の槽の側壁部には、前記仕切り部材の上側に開閉可能なダスト排出部が形成される、請求項1又は2に記載のハイドロブラスト水回収装置用の分離機。
【請求項4】
ハイドロブラスト水を回収してダストを分離するハイドロブラスト水回収装置用の分離機であって、
第2の槽と、
前記第2の槽に対して前記ハイドロブラスト水の出口側に隣り合う第3の槽と、
前記第2の槽と第3の槽との間に設けられ、前記ハイドロブラスト水から前記ダストを分離する第2のトラップと、を備え、
前記第2のトラップは、前記第2の槽と前記第3の槽とを仕切ると共に、上端側で前記第2の槽と前記第3の槽とを連通させる開口部を有する壁部によって構成される、ハイドロブラスト水回収装置用の分離機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロブラスト水回収装置用の分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイドロブラスト水を回収してダストを分離するハイドロブラスト水回収装置用の分離機として、特許文献1に記載されたものが知られている。このハイドロブラスト水回収装置用の分離機は、ハイドロブラスト水の入口側から出口側に順に設けられた第1の槽、第2の槽、及び第3の槽を備えている。第1の槽と第2の槽との間には、ハイドロブラスト水を透過させると共に所定の大きさのダストを保持する第1のフィルタが設けられている。また、第2の槽と第3の槽との間には、第1のフィルタよりも目が細かい第2のフィルタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-143610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来のハイドロブラスト水回収装置用の分離機は、フィルタを用いてハイドロブラスト水からダストを分離している。このようなフィルタは、定期的に目詰まりを起こす。そのため、フィルタを交換するために、分離機を止める必要がある。この場合、ハイドロブラスト処理を中断する必要があり、施工の日数がのびるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ハイドロブラスト処理の施工日数を短縮することができるハイドロブラスト水回収装置用の分離機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイドロブラスト水回収装置用の分離機は、ハイドロブラスト水を回収してダストを分離するハイドロブラスト水回収装置用の分離機であって、第1の槽と、第1の槽に対してハイドロブラスト水の出口側に隣り合う第2の槽と、第1の槽と第2の槽との間に設けられ、ハイドロブラスト水からダストを分離する第1のトラップと、を備え、第1のトラップは、ハイドロブラスト水を通過させる複数の貫通孔を有し、分離させたダストを第1の槽側の表面から落下させる部材によって構成される。
【0007】
本発明のハイドロブラスト水回収装置用の分離機は、第1の槽と第2の槽との間に設けられ、ハイドロブラスト水からダストを分離する第1のトラップを備える。この第1のトラップは、ハイドロブラスト水を通過させる複数の貫通孔を有し、分離させたダストを第1の槽側の表面から落下させる部材によって構成される。第1のトラップで分離されたダストは、当該第1のトラップに保持されることなく落下するため、第1の槽内に堆積する。従って、一定時間が経過したら、第1の槽内に堆積したダストを除去すればよく、フィルタ交換のように、第1のトラップを外して交換する必要がなくなる。すなわち、フィルタ交換時のように、ハイドロブラスト処理の工程を中断させることなく連続運転が可能となる。以上より、ハイドロブラスト処理の施工日数を短縮することができる。
【0008】
ハイドロブラスト水回収装置用の分離機は、第2の槽に対してハイドロブラスト水の出口側に隣り合う第3の槽と、第2の槽と第3の槽との間に設けられ、ハイドロブラスト水からダストを分離する第2のトラップと、を備え、第2のトラップは、第2の槽と第3の槽とを仕切ると共に、上端側で第2の槽の空間と第3の槽の空間とを連通させる開口部を有する壁部によって構成されてよい。従って、第2の槽に入り込んだハイドロブラスト水に含まれるダストは、第2のトラップの壁部で堰き止められることで、第2の槽の底側へ落下していき、堆積する。その一方、ダストから分離されたハイドロブラスト水の上澄み液は、壁部を越流して、第2のトラップの開口部を介して第3の槽へ流入する。従って、一定時間が経過したら、第2の槽内に堆積したダストを除去すればよく、フィルタ交換のように、第2のトラップを外して交換する必要がなくなる。すなわち、フィルタ交換時のように、ハイドロブラスト処理の工程を中断させることなく連続運転が可能となる。
【0009】
第1の槽には、底側において上下の空間を仕切ると共に複数の貫通孔が形成された仕切り部材が設けられ、第1の槽の側壁部には、仕切り部材の上側に開閉可能なダスト排出部が形成されてよい。この場合、第1のトラップで分離されたダストは、仕切り部材上に堆積する。そして、仕切り部材上に堆積したダストは、ダスト排出部を開放することで、当該ダスト排出部から排出可能になる。
【0010】
本発明のハイドロブラスト水回収用分離機は、ハイドロブラスト水を回収してダストを分離するハイドロブラスト水回収装置用の分離機であって、第2の槽と、第2の槽に対してハイドロブラスト水の出口側に隣り合う第3の槽と、第2の槽と第3の槽との間に設けられ、ハイドロブラスト水からダストを分離する第2のトラップと、を備え、第2のトラップは、第2の槽と第3の槽とを仕切ると共に、上端側で第2の槽と第3の槽とを連通させる開口部を有する壁部によって構成される。
【0011】
本発明のハイドロブラスト水回収装置用の分離機は、第2の槽と第3の槽との間に設けられ、ハイドロブラスト水からダストを分離する第2のトラップを備える。この第2のトラップは、第2の槽と第3の槽とを仕切ると共に、上端側で第2の槽と第3の槽とを連通させる開口部を有する壁部によって構成される。従って、第2の槽に入り込んだハイドロブラスト水に含まれるダストは、第2のトラップの壁部で堰き止められることで、第2の槽の底側へ落下していき、堆積する。その一方、ダストから分離されたハイドロブラスト水の上澄み液は、壁部を越流して、第2のトラップの開口部を介して第3の槽へ流入する。従って、一定時間が経過したら、第2の槽内に堆積したダストを除去すればよく、フィルタ交換のように、第2のトラップを外して交換する必要がなくなる。すなわち、フィルタ交換時のように、ハイドロブラスト処理の工程を中断させることなく連続運転が可能となる。以上より、ハイドロブラスト処理の施工日数を短縮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハイドロブラスト処理の施工日数を短縮することができるハイドロブラスト水回収装置用の分離機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る分離機を備えるハイドロブラスト水回収装置を示す概略構成図である。
図2図1に示す分離機の内部構成を示す概略断面図である。
図3】比較例に係る分離機の内部構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のハイドロブラスト水回収装置用の分離機の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る分離機1を備えるハイドロブラスト水回収装置100を示す概略構成図である。ハイドロブラスト水回収装置100は、ハイドロブラスト機110の研掃に伴って生じるハイドロブラスト水BWを回収するための装置である。ハイドロブラスト機110は、研掃の対象である鋼板PL上に、走行移動可能な状態で搭載される。ハイドロブラスト機110には、腹部中央部に鋼板PLの表面に向けて高圧水を噴射するジェットガン111と、ジェットガン111を囲んで機体の周囲を覆うように取付けられたスカート112が備えられている。スカート112は、鋼板PLの表面とで囲まれる空間(ブラスト部)を形成する。このようなハイドロブラスト機110に対して、ハイドロブラスト水回収装置100が設けられる。ハイドロブラスト水回収装置100は、バキュームホース2と、バキューム装置3と、分離機1と、を備える。
【0016】
バキュームホース2は、ハイドロブラスト機110で生じたハイドロブラスト水BWを吸引するホースである。バキュームホース2の一端部は、ハイドロブラスト機110のスカート112で囲まれるブラスト部に連通している。バキュームホース2の他端部は、バキューム装置3に接続されている。また、バキュームホース2の中途位置には、分離機1が設けられる。なお、バキュームホース2のうち、分離機1とハイドロブラスト機110との間の部分を上流側ホース部2aと称し、分離機1とバキューム装置3との間の部分を下流側ホース部2bと称する場合がある。
【0017】
バキューム装置3は、バキュームホース2を介して、ハイドロブラスト機110からハイドロブラスト水BWを吸引する装置である。バキューム装置3は、ハイドロブラスト機110のブラスト部を真空引きすることで、ハイドロブラスト水BWを吸引する。
【0018】
分離機1は、ハイドロブラスト水BWを回収してダストを分離する装置である。分離機1は、ハイドロブラスト機110からバキュームホース2の上流側ホース部2aを介して流入させる。当該ハイドロブラスト水BWは、水の中に研掃で生じた様々な大きさのダストを含んでいる。従って、分離機1は、ダスト及びエアを分離させた状態のハイドロブラスト水BWを、バキュームホース2の下流側ホース部2bを介してバキューム装置3へ流出させる。
【0019】
次に、分離機1の詳細な構成について、図2を参照して説明する。図2は、分離機1の内部構成を示す概略断面図である。分離機1は、内部にハイドロブラスト水BWを貯留することができるタンクによって構成される。分離機1は、第1の槽11と、第2の槽12と、第3の槽13と、第1のトラップ14と、第2のトラップ16と、を備える。なお、ハイドロブラスト機110からハイドロブラスト水BWが供給される側を「入口側」とし、バキューム装置3へハイドロブラスト水BWが流出する側を「出口側」と称する場合がある。図2においては、紙面右側が入口側に該当し、紙面左側が出口側に該当する。なお、以降の説明では、紙面表裏方向を「幅方向」と称する場合がある。
【0020】
第1の槽11は、分離機1の中で最もハイドロブラスト水BWの入口側に設けられる槽である。第2の槽12は、第1の槽11に対してハイドロブラスト水BWの出口側に隣り合う槽である。第1の槽11と第2の槽12との間には、第1のトラップ14が設けられる。第3の槽13は、第2の槽12に対してハイドロブラスト水BWの出口側に隣り合う槽である。第2の槽12と第3の槽13との間には、第2のトラップ16が設けられる。第3の槽13は、分離機1の中で最もハイドロブラスト水BWの出口側に設けられる槽である。
【0021】
具体的に、第1の槽11は、天井壁部21と、側壁部22と、底壁部23と、第1のトラップ14と、幅方向に対向する一対の側壁部(不図示)と、によって区画された空間である。側壁部22は、第1のトラップ14に対して入口側で対向する壁部である。底壁部23は、側壁部22の下端から、第1のトラップ14の下端へ向かうに従って、下方へ向かうように傾斜する。第2の槽12は、天井壁部21と、底壁部24と、第1のトラップ14と、第2のトラップ16と、幅方向に対向する一対の側壁部(不図示)と、によって区画された空間である。第2の槽12の天井壁部21は、第1の槽11の天井壁部21から連続した壁部となっている。第3の槽13は、天井壁部21と、側壁部26と、底壁部24と、第2のトラップ16と、幅方向に対向する一対の側壁部(不図示)と、によって区画された空間である。側壁部26は、第2のトラップ16に対して入口側で対向する壁部である。天井壁部21は、第2の槽12の天井壁部21から連続した壁部となっている。底壁部24は、第2の槽12の底壁部24から連続した壁部となっている。
【0022】
第1の槽11の天井壁部21には、ハイドロブラスト水BWを流入させる入口側口金31が設けられている。第3の槽13の天井壁部21には、ハイドロブラスト水BWを流出させる出口側口金32が設けられている。出口側口金32には、バキューム圧調整弁32aが設けられている。このバキューム圧調整弁32aは、チャンバー内の真空圧を調整して、ハイドロブラスト機110のブラスト部の真空圧をコントロールするようになっている。第3の槽13の側壁部26には、第3の槽13に貯留されたハイドロブラスト水BWを排出する排出ポンプ33が設けられている。なお、第2の槽12の幅方向における一方側(紙面裏側)の側壁部には、第2の槽12に堆積したダストを排出するダスト排出部37が設けられている。同じく、第3の槽13の幅方向の一方側の側壁部には、第3の槽13に堆積したダストを排出するダスト排出部38が設けられている。
【0023】
第1の槽11には、底側において上下の空間を仕切ると共に複数の貫通孔34aが形成された仕切り部材34が設けられる。この仕切り部材34は、側壁部22の下端から、出口側へ向かって水平方向へ広がる。なお、仕切り部材34は、ヒンジ35aを介して開閉する開閉部35を有している。仕切り部材34を通過して底壁部23上に堆積したダストを除去する場合は、開閉部35を開ける。また、第1の槽11の側壁部22には、仕切り部材34の上側に開閉可能なダスト排出部36が形成される。このダスト排出部36は、仕切り部材34の貫通孔34aを通過することなく、当該仕切り部材34上に堆積したダストを取り出すことができる高さ位置に設けられる。
【0024】
第1のトラップ14は、第1の槽11と第2の槽12との間に設けられ、ハイドロブラスト水BWからダストを分離する。第1のトラップ14は、底壁部23から天井壁部21まで広がっており、幅方向に対向する一対の側壁部同士の間で広がる。第1のトラップ14は、ハイドロブラスト水BWを通過させる複数の貫通孔14aを有し、分離させたダストを第1の槽11側の表面14bから落下させる部材によって構成される。第1のトラップ14は、主に、大粒の砂、ペンキの塊などを濾過することができる。第1のトラップ14は、入口側口金31から第1の槽11に流入し、当該第1の槽11に貯留されたハイドロブラスト水BWが、出口側に吸引されることで第2の槽12に流入する際に、当該ハイドロブラスト水BWに含まれるダストを除去する。
【0025】
第1のトラップ14を構成する部材として、金属の平板に、多数の貫通孔14aを形成したパンチングメタルが挙げられる。当該パンチングメタルは、貫通孔14a以外の第1の槽11側の表面14bは、滑らかな平面になっている。従って、ハイドロブラスト水BWから分離されたダストは、第1のトラップ14の表面14bに留まることなく、底側へ落下する。落下したダストは、仕切り部材34上に堆積する。なお、第1のトラップ14を構成する部材は、パンチングメタルに限定されず、多数の貫通孔を有する樹脂性の板部材であってもよく、金網のように、線材を編むことで貫通孔を形成した部材であってもよい。金網の表面14bは、パンチングメタルのように滑らかな平面とはなっていないが、フィルタとは異なり、粗い状態で編まれた線材には、ダストは捕捉されにくく、ハイドロブラスト水BWから分離された後は表面14bから落下する。なお、繊維質の材料を面材として構成したフィルタは、分離したダストを捕捉して落下しないように保持する性質を有する。従って、第1のトラップ14を構成する部材には、フィルタは含まれない。
【0026】
第2のトラップ16は、第2の槽12と第3の槽13との間に設けられ、ハイドロブラスト水BWからダストを分離する。第2のトラップ16は、主に、第1のトラップ14で分離するダストよりも粒径が小さい微粒子を分離する。第2のトラップ16は、第2の槽12と第3の槽13とを仕切ると共に、上端側で第2の槽12の空間と第3の槽13の空間とを連通させる開口部OPを有する壁部41によって構成される。壁部41は、第2の槽12から第3の槽13へのダストの流れを堰き止める。堰き止められたダストは、第2の槽12の底側へ沈殿してゆく一方、ダストから分離されたハイドロブラスト水BWの上澄み液UWは、壁部41の上端を越流して、開口部OPを介して第3の槽13へ流れ込む。
【0027】
開口部OPの大きさは特に限定されないが、壁部41でダストを十分に堰き止め、且つ、上澄み液UWを良好に越流させることができる大きさであれば、特に限定されない。開口部OPは、壁部41の上端と天井壁部21との間に形成され、幅方向の全域に広がっている。なお、開口部OPの面積は、出口側口金32の断面積と略等しくしてよい。これにより、開口部OPを通過する空気の量と、出口側口金32で吸引する空気の量のバランスを取ることができる。なお、第3の槽13には、天井壁部21から下方へ延びる邪魔板42が設けられる。邪魔板42は、開口部OPから出口側へ離間した位置にて、当該開口部OPと対向する。これにより、出口側口金32の吸引によって形成される空気の流れが、開口部OPに直接作用することを抑制することができる。従って、越流した上澄み液UWが出口側口金32に吸引されることを抑制できる。
【0028】
第2のトラップ16の壁部41から越流したハイドロブラスト水BWは、第3の槽13に貯留される。このとき、ハイドロブラスト水BW中に残存したダストは、第3の槽13の底側に沈殿する。第3の槽13のハイドロブラスト水BWが所定量となると、排出ポンプ33が、第3の槽13内のハイドロブラスト水BWを外部へ排出する。
【0029】
次に、本実施形態に係る分離機1の作用・効果について説明する。
【0030】
まず、図3を参照して、比較例に係る分離機200について説明する。分離機200において、第1の槽11と第2の槽12との間には、ハイドロブラスト水を透過させると共に所定の大きさのダストを保持する第1のフィルタ51が設けられている。また、第2の槽12と第3の槽13との間には、第1のフィルタ51よりも目が細かい第2のフィルタ52が設けられている。
【0031】
このような比較例に係る分離機200は、フィルタ51,52を用いてハイドロブラスト水BWからダストを分離している。このようなフィルタ51,52は、ダストがフィルタに留まることで、定期的に目詰まりを起こす。そのため、フィルタ51,52を交換するために、分離機200を止める必要がある。この場合、ハイドロブラスト処理を中断する必要があり、施工の日数がのびるという問題があった。
【0032】
これに対し、本実施形態に係るハイドロブラスト水回収装置用の分離機1は、第1の槽11と第2の槽12との間に設けられ、ハイドロブラスト水BWからダストを分離する第1のトラップ14を備える。この第1のトラップ14は、ハイドロブラスト水BWを通過させる複数の貫通孔14aを有し、分離させたダストを第1の槽11側の表面14bから落下させる部材によって構成される。第1のトラップ14で分離されたダストは、当該第1のトラップ14に保持されることなく落下するため、第1の槽11内に堆積する。従って、一定時間が経過したら、第1の槽11内に堆積したダストを除去すればよく、フィルタ交換のように、第1のトラップ14を外して交換する必要がなくなる。すなわち、フィルタ交換時のように、ハイドロブラスト処理の工程を中断させることなく連続運転が可能となる。以上より、ハイドロブラスト処理の施工日数を短縮することができる。また、現場の手待ちの削減も可能となる。
【0033】
ハイドロブラスト水回収装置用の分離機1は、第2の槽12に対してハイドロブラスト水BWの出口側に隣り合う第3の槽13と、第2の槽12と第3の槽13との間に設けられ、ハイドロブラスト水BWからダストを分離する第2のトラップ16と、を備え、第2のトラップ16は、第2の槽12と第3の槽13とを仕切ると共に、上端側で第2の槽12の空間と第3の槽13の空間とを連通させる開口部OPを有する壁部41によって構成されてよい。従って、第2の槽12に入り込んだハイドロブラスト水BWに含まれるダストは、第2のトラップ16の壁部41で堰き止められることで、第2の槽12の底側へ落下していき、堆積する。その一方、ダストから分離されたハイドロブラスト水BWの上澄み液UWは、壁部41を越流して、第2のトラップ16の開口部OPを介して第3の槽13へ流入する。従って、一定時間が経過したら、第2の槽12内に堆積したダストを除去すればよく、フィルタ交換のように、第2のトラップ16を外して交換する必要がなくなる。すなわち、フィルタ交換時のように、ハイドロブラスト処理の工程を中断させることなく連続運転が可能となる。
【0034】
なお、トラップの順序は、貫通孔14aを有する部材による第1のトラップ14が上流側に配置され、壁部41による第2のトラップ16が下流側に配置されることが好ましい。すなわち、第1の槽11と第2の槽12との間で壁部41を用いてダストを分離しようとした場合、大きな粒径のダストが流れに乗ってそのまま越流してしまい、十分にダストを分離できない可能性がある。また、第2の槽12と第3の槽13との間でパンチングメタル等でダストを分離しようとした場合、粒径の小さい微粒子を上手く分離することができず、それらを分離するために、貫通孔14aを過剰に小さくすることも難しい可能性がある。その反面、本実施形態のような順序であれば、パンチングメタル等で大きな粒径のダストを分離し、壁部41が粒径の小さなダストを良好に堰き止めて分離することができる。
【0035】
第1の槽11には、底側において上下の空間を仕切ると共に複数の貫通孔34aが形成された仕切り部材34が設けられ、第1の槽11の側壁部22には、仕切り部材34の上側に開閉可能なダスト排出部36が形成される。この場合、第1のトラップ14で分離されたダストは、仕切り部材34上に堆積する。そして、仕切り部材34上に堆積したダストは、ダスト排出部36を開放することで、当該ダスト排出部36から排出可能になる。
【0036】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、分離機は、第1のトラップ14及び第2のトラップ16を同時に有している必要はなく、一方のトラップをフィルタによって構成してもよい。そのような場合であっても、二つのフィルタを用いる比較例に係る分離機200よりは、フィルタ交換の時間を短縮できるため、工期の短縮の効果を得ることができる。
【0038】
また第1の槽11の底側に設けられる仕切り部材34を省略してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…分離機、11…第1の槽、12…第2の槽、13…第3の槽、14…第1のトラップ、16…第2のトラップ、34…仕切り部材、36…ダスト排出部、41…壁部、100…ハイドロブラスト水回収装置、OP…開口部。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロブラスト水を回収してダストを分離するハイドロブラスト水回収装置用の分離機であって、
第1の槽と、
前記第1の槽に対して前記ハイドロブラスト水の出口側に隣り合う第2の槽と、
前記第1の槽と第2の槽との間に設けられ、前記ハイドロブラスト水から前記ダストを分離する第1のトラップと、を備え、
前記第1のトラップの下流側に、
前記第1のトラップを通過した粒径の小さいダストを沈殿させる第2のトラップと、
沈殿したダストを排出するダスト排出部と、が設けられる、ハイドロブラスト水回収装置用の分離機。
【請求項2】
前記第2のトラップは壁部であり、前記ハイドロブラスト水は前記壁部を越流する、請求項1に記載のハイドロブラスト水回収装置用の分離機。
【請求項3】
前記ダスト排出部は、前記第2の槽の側壁部において、底壁部から上方へ離間した位置に設けられる、請求項1又は2に記載のハイドロブラスト水回収装置用の分離機。