IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174750
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】植物賦活剤
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/06 20060101AFI20231201BHJP
   A01G 22/22 20180101ALI20231201BHJP
   A01G 22/40 20180101ALI20231201BHJP
   A01G 22/60 20180101ALI20231201BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20231201BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20231201BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20231201BHJP
   A01N 37/42 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A01G7/06 A
A01G22/22
A01G22/40
A01G22/60
A01P21/00
A01N25/08
A01N37/36
A01N37/42
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172939
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2020110886の分割
【原出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 謙太
(72)【発明者】
【氏名】水野 克秀
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
【Fターム(参考)】
2B022AB11
2B022AB15
2B022AB17
2B022EA01
4H011AB03
4H011BA01
4H011BB06
4H011BC03
4H011BC08
4H011BC19
4H011DA02
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】作業性が良好で、かつ輸送コストが低減された植物賦活剤を提供することを目的とする。
【解決手段】オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および炭水化物を含む固形状の植物賦活剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および炭水化物を含む固形状の植物賦活剤。
【請求項2】
前記炭水化物が多糖類、糖アルコール、および食物繊維から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の植物賦活剤。
【請求項3】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が以下の式(I):
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である。
【請求項4】
請求項3記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1の炭化水素基の炭素数が8~10であり、R2のアルキル基の炭素数が4~6であるオキソ脂肪酸である。
【請求項5】
請求項4記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むオキソ脂肪酸である。
【請求項6】
請求項5記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、R2が、炭素数5のアルキル基であるオキソ脂肪酸である。
【請求項7】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、ケトオクタデカジエン酸である。
【請求項8】
請求項7記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸である。
【請求項9】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が、以下の式(II)および/または(III):
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R4 (II)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R4 (III)
(式中、
3は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
4は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない)
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である。
【請求項10】
請求項9記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、
3の炭化水素基が6個~8個の炭素原子を有し、
4の炭化水素基が4個~6個の炭素原子を有する。
【請求項11】
請求項10記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、
3が、-(CH2n-(nは4~12である整数)の構造であり、
4が、Cn2n+1-(nは2~8である整数)の構造である。
【請求項12】
請求項11記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、
3が、炭素数7の直鎖の飽和炭化水素基(-(CH27-)であり、
4が、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)である。
【請求項13】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、ヒドロキシオクタデセン酸である。
【請求項14】
請求項13記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸である。
【請求項15】
請求項13記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸である。
【請求項16】
前記炭水化物が多糖類である請求項1~15のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【請求項17】
前記炭水化物が糖アルコールである少なくとも1種である請求項1~15のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【請求項18】
前記炭水化物が食物繊維である請求項1~15のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【請求項19】
前記植物賦活剤は、アブラナ科、イネ科、マメ科、ナス科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科植物から選択される植物に対して使用される請求項1~18のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物賦活剤に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物植物や園芸植物の供給効率を向上させること等を目的として、植物の生長を調整する技術が開発されてきた。温度条件や日照条件の最適化や施肥などの対策に加え、生長促進、休眠抑制、ストレス抑制等の植物生長調節作用を有する植物賦活剤を用いて植物を賦活させる方法が報告されている。
【0003】
特許文献1には、オキソ脂肪酸またはその塩もしくはエステルを有効成分として含むことを特徴とする植物賦活剤が報告されている。特許文献1に記載の植物賦活剤は、植物への優れた抵抗性誘導効果および生長促進効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/168860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の植物賦活剤は、有効成分が水に分散、溶解しており、植物賦活剤を調製して、農地に搬送するための輸送コストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、輸送コストを低減できかつ高い植物賦活効果を発揮する植物賦活剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究した結果、輸送コストに大きく寄与する溶媒である水を除去するとともに、水に分散、溶解している植物賦活剤としての有効成分である脂肪酸を保持剤に保持させて固形化することで、輸送コストを低減できることに想到した。
【0008】
また、単純に溶媒である水を除去しただけでは、植物賦活剤としての有効成分である脂肪酸は親油性基を有しているため、固形物同士で凝集したり、固形物を保管・運搬用の袋に袋詰めすると袋の内壁に脂肪酸の固形物が付着してしまったり、粉体散布機を用いて脂肪酸の固形物を散布しようとしてもノズルやホースに詰まってしまうという新たな課題が発生する。しかしながら、本発明者らは、保持剤として炭水化物を採用することで、固形物同士の凝集もなく、保管・運搬用の袋内壁への固形物の付着も防止できることを知見するに至り、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および炭水化物を含む固形状の植物賦活剤に関する。
【0010】
固形状の植物賦活剤が、粉末または粒状であることが望ましい。
【0011】
前記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が以下の式(I):
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である植物賦活剤が好ましい。
【0012】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1の炭化水素基の炭素数が8~10であり、R2のアルキル基の炭素数が4~6であるオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0013】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0014】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、R2が、炭素数5のアルキル基であるオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0015】
前記オキソ脂肪酸が、ケトオクタデカジエン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0016】
前記オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0017】
前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が、以下の式(II)および/または(III):
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R4 (II)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R4 (III)
(式中、
3は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
4は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない)
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である植物賦活剤が好ましい。
【0018】
前記水酸化脂肪酸が、R3の炭化水素基が6個~8個の炭素原子を有し、R4の炭化水素基が4個~6個の炭素原子を有する植物賦活剤が好ましい。
【0019】
前記水酸化脂肪酸が、R3が、-(CH2n-(nは4~12である整数)の構造であり、R4が、Cn2n+1-(nは2~8である整数)の構造である植物賦活剤が好ましい。
【0020】
前記水酸化脂肪酸が、R3が、炭素数7の直鎖の飽和炭化水素基(-(CH27-)であり、R4が、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)である植物賦活剤が好ましい。
【0021】
前記水酸化脂肪酸が、ヒドロキシオクタデセン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0022】
前記水酸化脂肪酸が、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸(下記構造式(1))である植物賦活剤が好ましい。
【0023】
【化1】
【0024】
前記水酸化脂肪酸が、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸(下記構造式(2))である植物賦活剤が好ましい。
【0025】
【化2】
【0026】
なお、前記オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸の誘導体としては、それぞれ、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸のエステルが望ましい。また、前記オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸の塩としては、後述されるが、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩を使用できる。
【0027】
前記炭水化物が、多糖類、糖アルコールおよび食物繊維から選ばれる少なくとも1種である植物賦活剤が好ましい。
【0028】
前記炭水化物が、多糖類であって、当該多糖類は、プルランおよびデキストリンから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0029】
前記炭水化物が、糖アルコールであって、当該糖アルコールが、キシリトール、エリスリトールおよびマルチトールから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0030】
前記炭水化物が食物繊維であり、当該食物繊維が、セルロースおよびポリデキストロースから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0031】
前記植物賦活剤は、アブラナ科、イネ科、マメ科、ナス科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科植物から選択される植物に対して使用される植物賦活剤であることが好ましい。
【0032】
本発明で使用される炭水化物は、一次粒子または繊維が集合した凝集体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の植物賦活剤は、高い病害抵抗性誘導効果および生長促進効果を発揮し、かつ作業性が良好で、搬送や保管のコストも低減され得る。
【発明を実施するための形態】
【0034】
植物賦活剤
本発明の植物賦活剤は、「オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩」と「水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩」とから選ばれる少なくとも1種の化合物および炭水化物を含み、固形状であることを特徴とする。
【0035】
本発明における「植物賦活」とは、何らかの形で植物の生長活動を活性化または維持するように調整することを意味するものであり、生長促進(茎葉の拡大、塊茎塊根の生長促進等を包含する概念である)、休眠抑制、植物のストレス(例えば病害など)に対する抵抗性を誘導、付与し、抗老化等の植物生長調節作用を包含する概念である。
【0036】
本発明の植物賦活剤は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物を植物賦活効果のための有効成分として含む。オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物は、植物の茎葉または根の一部に施用されることによって、植物に生長促進効果を付与することができる。本発明の植物賦活剤が接種された植物体において、未処理植物と比較して、植物の生長指標である葉の長さおよび葉の重さの増加、塊茎または塊根の生長促進が確認されることから、本発明の植物賦活剤は植物に生長促進効果を付与していると考えられる。本発明の植物賦活剤を用いることによって、植物体の生育を促進し、野菜や穀物、果物等の植物体の収量増加をもたらすことができる。本発明の植物賦活剤の植物生長促進効果は非常に高く、この結果、商品作物の優れた収量増加効果や向上された収穫効率をもたらすことができる。さらに、本発明の植物賦活剤は、植物の茎葉または根の一部に施用することにより、植物体において抵抗性誘導に関係するサリチル酸経路を活性化することができ、この結果、植物に病害などへの抵抗性を誘導することができる。
【0037】
本発明の植物賦活剤において、上記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物が、植物賦活作用を示す有効成分である。本発明は、この植物賦活作用を示す有効成分と炭水化物とを含み、固形状であることを特徴とする。植物賦活作用を示す有効成分が、脂肪酸であり親油性基を有しているため、植物賦活剤中に溶媒として存在する水を乾燥除去して固形成分(粉末、粒状)としても、親油性基同士の付着がおこり、流動性が悪く、固形成分同士が凝集したり、また、固形成分が保管・運搬用の袋や容器の内壁に付着してしまい、取り出しにくくなったり、粉末散布機で散布する場合に、ノズルやホースに付着するという問題が発生してしまう。本発明では植物賦活作用を示す有効成分が炭水化物を構成する一次粒子や繊維の凝集体中の空隙中に保持されると推定されるため、固形成分同士が相互に癒着して凝集してしまうことがなく、取扱いが容易になる。また、固形成分が保管・運搬用の袋や容器の内壁に付着することなく、簡単に取り出すことができ、作業性も向上する。さらに、粉末散布機で散布する場合に、ノズルやホースに付着することもないため、固形成分の散布にあたり省力化が可能である。
【0038】
本発明で用いられる炭水化物は、多糖類、糖アルコールおよび食物繊維から選ばれる少なくとも1種以上であることが望ましい。
【0039】
多糖類としては、例えば、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、グリコーゲン、デキストリン、シクロデキストリン、ジェランガム、カラギーナン、プルラン、カードラン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、キトサン、タイユータンガムなどが挙げられる。多糖類は、1種あるいは2種以上が含まれてもよい。本発明で用いられる多糖類としては、プルランおよびデキストリンから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0040】
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール、マルトテトライトールなどが挙げられる。糖アルコールは、1種あるいは2種以上が含まれてもよい。本発明で用いられる糖アルコールとしては、キシリトール、エリスリトールおよびマルチトールから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0041】
食物繊維としては、例えば、イソマルトデキストリン、ヘミセルロース、ペクチン、ポリデキストロース、アルギン酸およびその塩、ラミナリン、グアーガム、グアーガム分解物、グルコマンナン、イヌリン、フコイダン、セルロース、リグニン、プロトペクチン、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、および酢酸セルロースなどの水酸基の一部または全てが、例えばメトキシ基やアセトキシ基などの置換基で置換されたセルロース誘導体、アラビアガム、ローカストビーンガムなどが挙げられる。食物繊維は、1種あるいは2種以上が含まれてもよい。本発明で用いられる食物繊維としては、セルロースおよびポリデキストロースから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0042】
これらの炭水化物は、一次粒子や繊維が集合してより大きな粒子もしくは粉末となっているが、一次粒子間や繊維間の隙間に脂肪酸を保持すると考えられ、炭水化物を含む植物賦活剤を乾燥して得られる本願発明の固形成分の表面が実質的に炭水化物で覆われている状態となると推定されるため、固形成分に良好な流動性が与えられ、固形成分同士が凝集したり、袋や容器の壁面に付着することがなく、また、粉末散布機を用いて固形成分の粉末を散布してもノズルやホースが詰まることがなく、植物賦活効果を維持しながら省力化を図ることができる。
【0043】
本発明の植物賦活剤中の炭水化物の含有量は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量に対する重量比で10倍~5000倍であることが望ましい。植物賦活剤としての機能を損なうことなく、固形成分同士の凝集や固形成分が袋や容器に付着することを防止できるからである。
【0044】
本発明の植物賦活剤における固形成分は、粉末もしくは粒状であることが望ましい。取扱性および作業性が向上するからである。粉末状である場合は、平均粒子径が、0.1~500μmであることが望ましい。また、粒状である場合は、平均粒径は、0.5mmを超え、30mm以下であることが望ましい。
【0045】
なお、本発明における固形成分の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により乾式測定で粒度分布を測定し、体積基準で累積50%の時点での粒子径をもって平均粒子径とする。
【0046】
上述の平均粒子径または平均粒形を有する粉末または粒状の固形成分は、一次粒子が凝集した二次粒子(顆粒粒子)から構成されていてもよい。適度に凝集した二次粒子が形成されることにより粒子の表面に脂肪酸の分子がさらに露出されにくくなり、固形成分の流動性が向上し得る。
【0047】
本発明の植物賦活剤の固形成分は、さらにpH緩衝剤からなる固形成分を含んでいてもよい。pH緩衝剤としては、例えばリン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、三ポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素アンモニウムなどの塩や有機酸などを使用することができる。
【0048】
本発明の植物賦活剤は、上述のように、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。本発明のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、以下の式(I):
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が好適に使用され得る。
【0049】
本発明の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1の炭化水素基の炭素数は8~10であり、R2のアルキル基の炭素数は4~6である。また、別の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1は式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含んでいる。さらに、別の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1は、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、R2は、炭素数5のアルキル基であることが好ましい。
【0050】
本発明のオキソ脂肪酸としては、具体的には、ケトオクタデカジエン酸が挙げられる。例えば、ケトオクタデカジエン酸としては、これらに限定される訳ではないが、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸(9-oxoODA)、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)、5-オキソ-6,8-オクタデカジエン酸、6-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、8-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、10-オキソ-8,12-オクタデカジエン酸、11-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、12-オキソ-9,13-オクタデカジエン酸および14-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸ならびにそれらの異性体等が挙げられる。
【0051】
なお、オキソ脂肪酸の誘導体としては、エステルが望ましい。本発明のオキソ脂肪酸のエステルとしては、これらに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができる。また、オキソ脂肪酸の塩としては、例えばアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩や例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、コバルト塩、マンガン塩などの金属塩等が挙げられるが、肥料などに含まれる塩などの農業上容認可能な1種以上の塩であれば特に限定されない。
【0052】
本発明の水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、以下の式(II)および/または(III)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R4 (II)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R4 (III)
(式中、
3は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
4は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない)
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が好適に使用され得る。
【0053】
本発明の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3の炭化水素基は6個~8個の炭素原子を有し、R4の炭化水素基は4個~6個の炭素原子を有する。また、別の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3は、-(CH2n-(nは4~12である整数)の構造であり、R4は、Cn2n+1-(nは2~8である整数)の構造である。さらに、別の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3は、炭素数7の直鎖の飽和炭化水素基(-(CH27-)であり、R4は、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)であることが好ましい。
【0054】
本発明の水酸化脂肪酸としては、具体的には、ヒドロキシオクタデセン酸が挙げられる。例えば、ヒドロキシオクタデセン酸としては、これらに限定される訳ではないが、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸およびそれらの異性体が挙げられる。
【0055】
なお、水酸化脂肪酸の誘導体としては、エステルが望ましい。本発明の水酸化脂肪酸のエステルとしては、これらに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができる。また、水酸化脂肪酸の塩としては、例えばアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩や例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、コバルト塩、マンガン塩などの金属塩等が挙げられるが、肥料などに含まれる塩などの農業上容認可能な1種以上の塩であれば特に限定されない。
【0056】
なお、本明細書において例示されている化合物に異性体が存在する場合、特に記載のない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0057】
本発明の植物賦活剤は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物として、上述のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩や上述の水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩のうちの少なくとも一つを含んでいればよく、すなわち、例えば、2種以上のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩または水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩を含んでいてもよいし、少なくとも1種のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩および少なくとも1種の水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩を含んでいてもよい。
【0058】
本発明のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物を炭水化物中に保持させるための方法は、特に限定されず、例えば、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物を適当な溶媒に溶解または分散させた溶液中に、炭水化物を溶解または分散させ、溶媒を除去することでオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物が炭水化物中に含有された固形状の植物賦活剤が得られる。使用する溶媒としては、特に限定されない。
【0059】
溶媒を除去する方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥、熱風乾燥、真空乾燥などを採用することができる。したがって、本発明の植物賦活剤は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および炭水化物を含有する乾燥固形物(乾燥粉体)であってもよい。乾燥粉体の固形分率は、80%以上、好ましくは90%以上である。輸送コストが顕著に低減され得る。
【0060】
本発明のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、両者を混合して使用してもよい。
【0061】
本発明の植物賦活剤においてはまた、本発明のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物と炭水化物からなる固形状の植物賦活剤は、錠剤化されていてもよく、または被覆層によりコーティングされていてもよい。耐水性、耐久性、保存性を向上させることができるからである。
【0062】
前記被覆層は、ポリアミド樹脂、硝酸セルロースなどの透過性物質を用いて形成されてもよく、例えばポリビニルアルコールやゼラチンなどの天然高分子などを使用できる。
【0063】
本発明の植物賦活剤は、必要に応じて、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物以外の他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、脂肪酸、界面活性剤、結合剤、溶剤、吸収剤、分解防止剤、無機塩、賦形剤等の農業上容認可能な添加剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明の植物賦活剤の取り扱い易さは安息角によって評価する。安息角とは、一定の高さの漏斗から10gの粉体を自由落下させて、自発的に崩れることなく安定を保つ時に、形成する粉体堆積物の山の斜面と水平面とのなす角度をいう。凝集性の高い粉体の場合には山が高くなり、それに伴って安息角が大きくなる。従って、本発明では、安息角が小さいほど、凝集性が低く、袋や容器の内壁面に付着しにくいと言える。本発明の固形状の植物賦活剤の安息角は、例えば、55°以下程度、好ましくは50°以下程度であり、一般に25°以上である。安息角が上記の上限値以下である場合、粉体の流動性が良い。安息角の測定の一例としては、JIS R 9301-2-2に準じ、粉体特性評価装置(例えば筒井理化学器械(株)製 ABD粉体特性測定器)を用いて行うことができ、例えば実施例に記載する方法により測定することができる。
【0065】
本発明の植物賦活剤は、任意の方法で植物に施用することができる。例えば、畑にそのまま均一散布して使用するか、あるいは田面水中にそのまま散布すればよい。また、植穴処理剤、作条散布剤、株元散布剤あるいは箱処理剤としても使用することができる。また、本発明の植物賦活剤の製剤としての形態(剤型)も、特に限定されるものではなく、例えば、粉剤(一般粉剤、DL粉剤、フローダストなど)、粒剤または粉粒剤(微粒剤、微粒剤Fなど)とすることができ、また、顆粒状、シート状、ブロック状および膜状などの形態とされてもよく、これらは公知の製造法に従って製造され得る。施用された植物において、本発明の植物賦活剤は、取り扱いやすく、機械による散布が容易であるため、省力化が可能である。
【0066】
本発明の植物賦活剤を施用することのできる植物は、特に限定されるものではなく、植物一般に対して良好に用いることができる。例えば、アブラナ科、イネ科、マメ科、ナス科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科の植物に対して、好適に施用され得る。また、施用の対象となる植物は野生型の植物に限定されず、例えば変異体や形質転換体等であってもよい。また、それぞれの植物の品種も特に限定されない。
【0067】
また、本発明の植物賦活剤は、強力な抵抗性誘導効果を示す植物賦活剤として利用できることを見出しており、さまざまな植物の成長促進効果や果実の収量増加効果、病害抑制効果を示すことを知見している。例えば病害抑制に関して効果のある具体的な例としては、キュウリ、スイカ、メロン、カボチャなどウリ科の葉の灰色カビ病、つる割れ病、つる枯病、ベト病、トマト、ナス、ジャガイモなどナス科の青枯れ病、萎凋病、半身萎凋病、立枯病、褐色根腐病、バラやイチゴなどバラ科植物のうどん粉病、黒星病、灰色カビ病、炭疽病、ホウレンソウなどヒユ科のベト病、ハクサイ、キャベツ、コマツナなどアブラナ科の黒腐病、軟腐病、斑点細菌病、リゾクトニア病、ニンジンなどセリ科の白絹病、イネ科植物のいもち病などに有効である。
【実施例0068】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
実施例1
(1)9(S),10(S),13(S)-トリヒドロキシ-11(E)-オクタデセン酸(200mg/L エタノール溶液、ラローダンファインケミカルズ社製)100mL、および、9(S),12(S),13(S)-トリヒドロキシ-10(E)-オクタデセン酸(200mg/L エタノール溶液、ラローダンファインケミカルズ社製)100mLを水に溶解させて1Lとし、0.004wt%の固形分溶液を調製した。
(2)(1)で調製した溶液に、炭水化物としてプルラン(東京化成工業(株)製)25gを添加し、攪拌して溶解させた。プルランは、植物賦活剤成分である水酸化脂肪酸に対する重量比で625倍である。
(3)(2)で調製した溶液を結晶皿に1L入れ、-80℃のディープフリーザーで16時間冷凍した後、キムタオルをかぶせて輪ゴムで止め、凍結乾燥機(東京理化器械(株)製 FDU-1200)で48時間凍結乾燥させた。そして、凍結乾燥機を停止させ、粉体化して植物賦活剤を約25g得た。
【0070】
実施例2
(1)9(S),10(S),13(S)-トリヒドロキシ-11(E)-オクタデセン酸(200mg/L エタノール溶液、ラローダンファインケミカルズ社製)100mL、および、9(S),12(S),13(S)-トリヒドロキシ-10(E)-オクタデセン酸(200mg/L エタノール溶液、ラローダンファインケミカルズ社製)100mLを水に溶解させて1Lとし、0.004wt%の固形分溶液を調製した。
(2)(1)で調製した溶液に、炭水化物としてプルラン(東京化成工業(株)製)25gを添加し、攪拌して溶解させた。プルランは、植物賦活剤成分である水酸化脂肪酸に対する重量比で625倍である。
(3)(2)で調製した溶液を、熱風温度145℃、風量0.7m3/min、出口温度95℃、原料液供給量4.5g/minとして、スプレードライ装置(ヤマト科学(株)製 SD-1000)を用いて噴霧乾燥し、本発明の植物賦活剤の粉末を約20g得た。
【0071】
実施例3
(1)13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)((9Z,11E)-13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、ケイマンケミカル社製、100μg/100μLエタノール溶液)120mLを、水に溶解させて1Lとし、0.012wt%の13-oxoODAエマルジョン溶液を調製した。
(2)(1)で調製した溶液に炭水化物としてプルラン(東京化成工業(株)製)25gを添加し、攪拌して溶解させた。プルランは、オキソ脂肪酸に対する重量比で208倍である。
(3)(2)で調製した溶液を結晶皿に1L入れ、-80℃のディープフリーザーで16時間冷凍した後、キムタオルをかぶせて輪ゴムで止め、凍結乾燥機(東京理化器械(株)製 FDU-1200)で48時間凍結乾燥させた。そして、凍結乾燥機を停止させ、粉体化して植物賦活剤を約25g得た。
【0072】
実施例4
(1)13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)((9Z,11E)-13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、ケイマンケミカル社製、100μg/100μLエタノール溶液)120mLを、水に溶解させて1Lとし、0.012wt%の13-oxoODAエマルジョン溶液を調製した。
(2)(1)で調製した溶液に炭水化物としてプルラン(東京化成工業(株)製)25gを添加し、攪拌して溶解させた。プルランは、オキソ脂肪酸に対する重量比で208倍である。
(3)(2)で調製した溶液を、熱風温度145℃、風量0.7m3/min、出口温度95℃、原料液供給量4.5g/minとして、スプレードライ装置(ヤマト科学(株)製 SD-1000)を用いて噴霧乾燥し、本発明の植物賦活剤の粉末を約20g得た。
【0073】
実施例5
基本的に実施例1と同様であるが、炭水化物として、プルランに替えて食物繊維であるアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製 商品名キミカアルギンBL-2)25gを分散させて使用した。
【0074】
実施例6
基本的に実施例1と同様であるが、炭水化物として、プルランに替えて糖アルコールであるエリスリトール(三菱ケミカルフーズ(株)製)25gを溶解させて使用した。
【0075】
実施例7
基本的に実施例1と同様であるが、炭水化物として、プルランに替えてデキストリン(サンエイ糖化(株)製)25gを溶解させて使用した。
【0076】
比較例1
(1)9(S),10(S),13(S)-トリヒドロキシ-11(E)-オクタデセン酸(200mg/L エタノール溶液、ラローダンファインケミカルズ社製)100mL、および、9(S),12(S),13(S)-トリヒドロキシ-10(E)-オクタデセン酸(200mg/L エタノール溶液、ラローダンファインケミカルズ社製)100mLを水に溶解させて1Lとし、0.004wt%の固形分溶液を調製した。
(2)(1)で調製した溶液に、pH緩衝剤としてリン酸水素二カリウム25gを添加し、攪拌して溶解させた。
(3)(2)で調製した溶液を結晶皿に1L入れ、-80℃のディープフリーザーで16時間冷凍した後、キムタオルをかぶせて輪ゴムで止め、凍結乾燥機(東京理化器械(株)製 FDU-1200)で48時間凍結乾燥させた。そして、凍結乾燥機を停止させ、粉体化して植物賦活剤を約25g得た。
【0077】
比較例2
(1)13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)((9Z,11E)-13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、ケイマンケミカル社製、100μg/100μLエタノール溶液)120mLを、水に溶解させて1Lとし、0.012wt%の13-oxoODAエマルジョン溶液を調製した。
(2)(1)で調製した溶液にpH緩衝剤としてリン酸水素二カリウム25gを添加し、攪拌して溶解させた。
(3)(2)で調製した溶液を結晶皿に1L入れ、-80℃のディープフリーザーで16時間冷凍した後、キムタオルをかぶせて輪ゴムで止め、凍結乾燥機(東京理化器械(株)製 FDU-1200)で48時間凍結乾燥させた。そして、凍結乾燥機を停止させ、粉体化して植物賦活剤を約25g得た。
【0078】
(安息角測定)
実施例1~7、ならびに比較例1および2で得られた植物賦活剤粉末各10gについて、安息角を測定した。測定は、筒井理化学器械(株)製 ABD粉体特性測定器を測定装置として用い、各植物賦活剤粉体を一定の高さの漏斗から水平な基板の上に落下させ、生成した堆積物の角度を測定する注入法により行った。
(電子顕微鏡観察)
実施例1~7、ならびに比較例1および2で得られた粉末について電子顕微鏡観察したところ、一次粒子の凝集体と推認された。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から理解されるように、比較例1および2に比べて、炭水化物を添加した実施例1~7は、安息角が小さいことが理解される。
【0081】
以上の結果より、植物賦活剤の有効成分であるオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物と炭水化物からなる固形状の植物賦活剤は、良好な流動性を有することがわかる。したがって、本発明の固形状の植物賦活剤は、凝集しにくく、また保管・搬送用の袋や容器などにも付着しにくく、取り扱い性に優れ、さらに、粉末散布機を用いて散布してもノズルやホースに詰まりが発生しないため、省力化が可能である。