(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174761
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】哺乳類細胞へのCAS9の抗体媒介性送達
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20231201BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20231201BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231201BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231201BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231201BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20231201BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20231201BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20231201BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231201BHJP
A61P 5/38 20060101ALI20231201BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 5/26 20060101ALI20231201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20231201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20231201BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231201BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20231201BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231201BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231201BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231201BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/31 ZNA
C12N5/10
C12N15/13
A61K47/68
A61K47/66
A61K47/56
A61K47/54
A61K48/00
A61P19/00
A61P27/02
A61P5/38
A61P7/00
A61P9/00
A61P5/26
A61P35/00
A61P7/06
A61P43/00 105
A61P25/14
A61P13/12
A61P19/08
A61P37/02
A61P3/00
A61P35/02
A61K39/395 L
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023173587
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2020514489の分割
【原出願日】2018-09-10
(31)【優先権主張番号】62/557,021
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブ・コーン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・デウィット
(72)【発明者】
【氏名】アリク・シャムス
(72)【発明者】
【氏名】ダナ・ヴィー・フォス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB27
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC30
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA58
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA67
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA33
4C084ZA51
4C084ZA55
4C084ZA81
4C084ZA96
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC08
4C084ZC10
4C084ZC21
4C085AA21
4C085BB11
4C085BB31
4C085GG01
4C085GG08
4C085GG10
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、エレクトロポレーションを用いない細胞へのCasエフェクターRNPの送達のための方法及び組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、哺乳類細胞において遺伝子編集を実行するためのコンストラクトであって、細胞表面マーカーと結合するターゲティング部分を含み、前記ターゲティング部分は、前記細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体を形成したクラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼを含むリボ核タンパク質複合体に取り付けられている、コンストラクトに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類細胞において遺伝子編集を実行するためのコンストラクトであって、
細胞表面マーカーと結合するターゲティング部分を含み、前記ターゲティング部分は、前記細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体を形成したクラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼを含むリボ核タンパク質複合体に取り付けられている、コンストラクト。
【請求項2】
前記ターゲティング部分が、抗体、DNA/RNA又はペプチドアプタマー、アンチカリン、レクチン、及びDARPINからなる群から選択される、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項3】
前記クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが、II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼである、請求項1又は2に記載のコンストラクト。
【請求項4】
前記クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが、Cas9ポリペプチドであり、前記対応するCRISPR/CasガイドRNAが、Cas9ガイドRNAである、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項5】
前記Cas9タンパク質が、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9タンパク質(spCas9)又はその機能的部分、スタフィロコッカス・アウレウスCas9タンパク質(saCas9)又はその機能的部分、ストレプトコッカス・サーモフィラスCas9タンパク質(stCas9)又はその機能的部分、髄膜炎菌Cas9タンパク質(nmCas9)又はその機能的部分、及びトレポネーマ・デンティコラCas9タンパク質(tdCas9)又はその機能的部分からなる群から選択される、請求項4に記載のコンストラクト。
【請求項6】
前記Cas9タンパク質が、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9タンパク質(spCas9)を含む、請求項5に記載のコンストラクト。
【請求項7】
前記Cas9タンパク質が、スタフィロコッカス・アウレウスCas9タンパク質(saCas9)を含む、請求項5に記載のコンストラクト。
【請求項8】
前記Cas9タンパク質が、ストレプトコッカス・サーモフィラスCas9タンパク質を含む、請求項5に記載のコンストラクト。
【請求項9】
前記Cas9タンパク質が、髄膜炎菌Cas9タンパク質(nmCas9)を含む、請求項5に記載のコンストラクト。
【請求項10】
前記Cas9タンパク質が、トレポネーマ・デンティコラCas9タンパク質(tdCas9)を含む、請求項5に記載のコンストラクト。
【請求項11】
前記クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが、高忠実度(HiFi)変異Cas9ポリペプチドであり、前記対応するCRISPR/CasガイドRNAが、Cas9ガイドRNAである、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項12】
前記変異cas9が、Alt-R(登録商標)CRISPR-Cas9を含む、請求項11に記載のコンストラクト。
【請求項13】
前記変異cas9が、.R691A Cas9変異体を含む、請求項11に記載のコンストラクト。
【請求項14】
前記変異cas9が、1、2、又は3つの核局在化シグナル(NLS)で強化されたCas9を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項15】
前記NLSが、SV40 T抗原(PKKKRKV(配列番号32))、SV40 Vp3(KKKRK(配列番号33))、アデノウイルスEla(KRPRP(配列番号34))、ヒトc-myc(PAAKRVKLD(配列番号35)、RQRRNELKRSP(配列番号36))、ヌクレオプラスミン(KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号37))、アフリカツメガエルN1(VRKKRKTEEESPLKDKDAKKSKQE(配列番号38))、マウスFGF3(RLRRDAGGRGGVYEHLGGAPRRRK(配列番号39));PARP(KRKGDEVDGVDECAKKSKK(配列番号40))、M9ペプチド、NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号41)、及びそれらの誘導体からなる群から選択されるNLSを含む、請求項14に記載のコンストラクト。
【請求項16】
前記クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが、V型又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼである、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項17】
前記クラス2のCRISPR/Casポリペプチドが、Cpf1ポリペプチド又はその機能的部分、C2c1ポリペプチド又はその機能的部分、C2c3ポリペプチド又はその機能的部分、及びC2c2ポリペプチド又はその機能的部分からなる群から選択される、請求項16に記載のコンストラクト。
【請求項18】
前記クラス2のCRISPR/Casポリペプチドが、Cpf1ポリペプチドを含む、請求項17に記載のコンストラクト。
【請求項19】
前記ガイドRNAが、1つ又は複数の架橋化核酸を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項20】
前記架橋化核酸が、1つ又は複数のN-メチル置換BNA(2',4'-BNANC[N-Me])を含む、請求項19に記載のコンストラクト。
【請求項21】
前記ガイドRNAが、1つ又は複数のロックド核酸(LNA)を含む、請求項19に記載のコンストラクト。
【請求項22】
前記ターゲティング部分が、内在化受容体に結合する、請求項1から21のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項23】
前記ターゲティング部分が、CD45、CD3、erbB2、Her2、CD22、CD74、CD19、CD20、CD33、CD40、MUC1、IL-15R、HLA-DR、EGP-1、EGP-2、G250、前立腺特異膜抗原(PSMA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)、及び胎盤性アルカリホスファターゼからなる群から選択される受容体に結合する、請求項1から22のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項24】
前記ターゲティング部分が、CD45に結合する、請求項23に記載のコンストラクト。
【請求項25】
前記ターゲティング部分が、CD33に結合する、請求項23に記載のコンストラクト。
【請求項26】
前記ターゲティング部分が、CD3に結合する、請求項23に記載のコンストラクト。
【請求項27】
前記ターゲティング部分が、抗体を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項28】
前記ターゲティング部分が、内在化抗体を含む、請求項27に記載のコンストラクト。
【請求項29】
前記ターゲティング部分が、抗CD3抗体を含む、請求項27に記載のコンストラクト。
【請求項30】
前記抗体が、OKT3、m291、フォラルマブ、及びCA-3からなる群から選択される抗体を含む、請求項29に記載のコンストラクト。
【請求項31】
前記抗体が、OKT3を含む、請求項29に記載のコンストラクト。
【請求項32】
前記ターゲティング部分が、抗CD45抗体を含む、請求項27に記載のコンストラクト。
【請求項33】
前記ターゲティング部分が、抗CD33抗体を含む、請求項27に記載のコンストラクト。
【請求項34】
前記抗体が、全長免疫グロブリンである、請求項27から33のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項35】
前記抗体が、Fv、Fab、(Fab')2、(Fab')3、IgGΔCH2、ユニボディ、及びミニボディからなる群から選択される、請求項27から33のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項36】
前記抗体が、単鎖抗体である、請求項27から33のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項37】
前記抗体が、scFvである、請求項36に記載のコンストラクト。
【請求項38】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項27から37のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項39】
前記ターゲティング部分が、非共有結合の相互作用によって前記Casエンドヌクレアーゼに取り付けられている、請求項1から38のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項40】
前記非共有結合の相互作用が、ビオチン/アビジン相互作用を含む、請求項39に記載のコンストラクト。
【請求項41】
前記非共有結合の相互作用が、抗体結合ペプチドと前記ターゲティング部分との間の相互作用を含む、請求項39に記載のコンストラクト。
【請求項42】
前記非共有結合の相互作用が、前記ターゲティング部分と、プロテインA、プロテインG、プロテインL、プロテインZ、プロテインLG、プロテインLA、及びプロテインAGからなる群から選択される抗体結合タンパク質との間の相互作用を含む、請求項39又は41に記載のコンストラクト。
【請求項43】
前記非共有結合の相互作用が、前記ターゲティング部分と、PAM、D-PAM、D-PAM-θ、TWKTSRISIF(配列番号4)、FGRLVSSIRY(配列番号5、Fc-III、EPIHRSTLTALL、HWRGWV(配列番号7)、HYFKFD(配列番号8)、HFRRHL(配列番号9)、NKFRGKYK(配列番号10)、NARKFYKG(配列番号11)、KHRFNKD(配列番号12)からなる群から選択される結合部分との間の相互作用を含む、請求項39又は41に記載のコンストラクト。
【請求項44】
前記非共有結合の相互作用が、前記ターゲティング部分と、FcB6.1ペプチドとの間の相互作用を含む、請求項39又は41に記載のコンストラクト。
【請求項45】
前記抗体結合ペプチド又は前記結合部分が、切断可能なリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、請求項41から44のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項46】
前記リンカーが、切断可能なリンカーを含む、請求項45に記載のコンストラクト。
【請求項47】
前記切断可能なリンカーが、ジスルフィドリンカー又は酸不安定性のリンカーを含む、請求項53に記載のコンストラクト。
【請求項48】
前記リンカーが、ヒドラゾン、アセタール、cis-アコニット酸様アミド、シリルエーテルからなる群から選択される部分を含む酸標識リンカーを含む、請求項47に記載のコンストラクト。
【請求項49】
前記リンカーが、Phe-Lys、又はVal-Citを含む、請求項47に記載のコンストラクト。
【請求項50】
前記ターゲティング部分が、前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、請求項1から38のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項51】
前記ターゲティング部分が、切断不可能なリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、請求項50に記載のコンストラクト。
【請求項52】
前記ターゲティング部分が、切断可能なリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、請求項50に記載のコンストラクト。
【請求項53】
前記ターゲティング部分が、ジスルフィドリンカー又は酸不安定性のリンカーを含む切断可能なリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、請求項50に記載のコンストラクト。
【請求項54】
前記ターゲティング部分が、ヒドラゾン、アセタール、cis-アコニット酸様アミド、シリルエーテルからなる群から選択される部分を含む酸標識リンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、請求項50に記載のコンストラクト。
【請求項55】
前記ターゲティング部分が、Table 2(表2)に示される非アミノ酸非ペプチドリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、請求項50に記載のコンストラクト。
【請求項56】
前記ターゲティング部分が、ポリペプチドを含み、前記ターゲティング部分及びCasエンドヌクレアーゼが、融合タンパク質を含む、請求項1から38のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項57】
前記融合タンパク質が、前記Casエンドヌクレアーゼに直接取り付けられた前記ターゲティング部分を含む、請求項56に記載のコンストラクト。
【請求項58】
前記融合タンパク質が、アミノ酸によって前記Casエンドヌクレアーゼに取り付けられた前記ターゲティング部分を含む、請求項56に記載のコンストラクト。
【請求項59】
前記融合タンパク質が、ペプチドリンカーによって前記Casエンドヌクレアーゼに取り付けられた前記ターゲティング部分を含む、請求項56に記載のコンストラクト。
【請求項60】
前記リンカーが、プロテアーゼによって切断可能なアミノ酸配列を含む、請求項59に記載のコンストラクト。
【請求項61】
前記リンカーが、カテプシンによって切断可能なアミノ酸配列を含む、請求項60に記載のコンストラクト。
【請求項62】
前記ペプチドリンカーが、ジペプチドであるバリン-シトルリン(Val-Cit)、又はPhe-Lysを含む、請求項59から61のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項63】
前記融合タンパク質が、Table 2(表2)に示されるアミノ酸又はペプチドリンカーによって前記Casエンドヌクレアーゼに取り付けられた前記ターゲティング部分を含む、請求項56に記載のコンストラクト。
【請求項64】
請求項1から63のいずれか一項に記載のコンストラクト及び医薬的に許容される担体を含む医薬製剤。
【請求項65】
前記製剤が、腹膜内投与、局所投与、経口投与、吸入投与、経皮投与、真皮下のデポー投与、及び直腸内投与からなる群から選択される方式による投与用である、請求項64に記載の製剤。
【請求項66】
前記製剤が、単位用量製剤である、請求項64又は65に記載の製剤。
【請求項67】
細胞において遺伝子編集を実行する方法であって、前記細胞を、請求項1から63のいずれか一項に記載のコンストラクトと接触させることを含み、前記ガイドRNAは、前記Casエンドヌクレアーゼを、前記細胞のゲノム中の特異的な場所にガイドする、方法。
【請求項68】
前記細胞が、エクスビボにおける細胞である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞が、処置しようとする対象由来の細胞である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞が、線維芽細胞、血液細胞(例えば、赤血球、白血球)、肝臓細胞、腎臓細胞、神経細胞、並びに幹細胞(例えば、胚性幹細胞、成体幹細胞(例えば、造血幹細胞、神経幹細胞及び間葉幹細胞))、T細胞、及び誘導多能性幹細胞(iPSC)からなる群から選択される細胞を含む、請求項68又は69に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が、対象においてインビボであり、前記接触させることが、前記組成物を前記対象に投与することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
腹膜内投与、局所投与、経口投与、吸入投与、経皮投与、真皮下のデポー投与、及び直腸内投与からなる群から選択される経路を介して、前記コンストラクトを投与することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
請求項64から66のいずれか一項に記載の医薬製剤を投与することを含む、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
前記対象が、ヒトである、請求項69から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記対象が、非ヒト哺乳動物である、請求項69から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記細胞に、ドナー鋳型核酸を導入することを更に含む、請求項67から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症、副腎白質ジストロトフィー、アイカルディ症候群、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、アルファ-サラセミア、アンドロゲン不感受性症候群、アペール症候群、不整脈原性右室異形成、毛細血管拡張性運動失調症、バース症候群、ベータ-サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、クリグラー-ナジャー症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、糖原病IV型、ヘモクロマトーシス、ベータ-グロビンの第6コドンにおけるヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー-ギーディオン症候群、白血球接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖沈着症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン-ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー-ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン-テイビ症候群、サンフィリッポ症候群、重症複合免疫不全(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス-マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ-サックス病、血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群、トリーチャー‐コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペル‐リンダウ病、ワーデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット-アルドリッチ症候群、及びX連鎖リンパ増殖症候群、例えば、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病及びテイ-サックス病)、ムコ多糖症(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)、及び血友病等の他の疾患からなる群から選択される疾患の処置を含む、請求項67から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
がんの処置を含む、請求項67から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記がんが、固形腫瘍を含むか;及び/又は
前記がんが、がん幹細胞を含むか;及び/又は
前記がんが、乳がん、前立腺がん、結腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、膵臓がん、腎細胞(腎臓)がん、膠芽腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連のがん(例えば、カポジ肉腫、リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、胆管がん、肝外のがん、膀胱がん、骨がん(例えば、ユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫)、脳幹グリオーマ、脳腫瘍(例えば、星細胞腫、脳及び脊髄の腫瘍、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(例えば、小児、消化管)、心臓腫瘍、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、管がん(例えば、胆汁、肝外)、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜がん、上衣細胞腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼のがん(例えば、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、骨の線維性組織球腫、悪性及び骨肉腫、胆嚢がん、胃の(胃)がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば、卵巣がん、睾丸がん、頭蓋外のがん、性腺外のがん、中枢神経系)、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹がん、ヘアリーセル白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん(例えば、腎細胞、ウィルムス腫瘍、及び他の腎臓腫瘍)、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞、口唇口腔がん、肝臓がん(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺がん(例えば、小児、非小細胞、小細胞)、リンパ腫(例えば、AIDS関連、バーキット(例えば、非ホジキンリンパ腫)、皮膚T細胞(例えば、菌状息肉腫、セザリー症候群)、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系(CNS))、マクログロブリン血症、ワルデンストレーム、男性乳がん、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、黒色腫(例えば、小児、眼球内(目))、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性頸部扁平上皮がん、正中線癌、口こうがん、多発性内分泌腺腫症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん、口唇及び中咽頭がん、骨肉腫、膵内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫症、パラガングリオーマ、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、クロム親和性細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂及び尿管、移行上皮がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、ユーイング、カポジ、骨肉腫、横紋筋肉腫、軟部組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚がん(例えば、黒色腫、メルケル細胞癌、基底細胞癌、非メラノーマ性)、小腸がん、扁平上皮癌、原発不明の頸部扁平上皮がん、胃(胃の)がん、睾丸がん、咽喉がん、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺がん、絨毛性腫瘍、尿管及び腎盂がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍からなる群から選択されるがんを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記がんが、液性がん(例えば、白血病)を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記がんが、固形腫瘍(例えば、黒色腫)を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記細胞が、T細胞を含む、請求項78から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記T細胞を再活性化する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記細胞が、間質細胞を含む、請求項78から81のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる2017年9月11日に出願されたUSSN62/557,021の利益及び優先権を主張する。
政府支援の陳述
[該当なし]
【背景技術】
【0002】
特定の組織、細胞、及び/又は細胞内位置に生理活性因子を送達するための試薬及び方法を開発することに大きな注目が向けられている。例えば、大きい分子、例えばアンチセンス若しくはRNAi分子又はタンパク質は通常、細胞膜を貫通することができないため、このような化合物の送達は困難であり、それらの送達が可能な場合でも、目的の組織への選択性が欠如している可能性があり、それゆえにオフターゲットの薬理作用のリスクを増加させ、深刻な安全性の懸念をもたらす。更に、標的とする送達部位への選択的な薬物送達は、多くの場合、細胞透過性の分子が選択的ではないことが多いため困難である。
【0003】
遺伝子治療の場合、ほとんどの遺伝子編集薬剤は、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス等のウイルス由来ベクター中にカプセル化されたプラスミドDNAを介して送達されることが多い。残念なことに、このタイプのアプローチには、患者にとって深刻な問題があり、それは主として、i)挿入変異誘発のリスクが増加すること、ii)ウイルスベクターとクッパー細胞との相互作用における肝毒性のリスクが増加すること、及びiii)処置した細胞に対する免疫原性応答によって発生する患者への薬理学的利益がほんの一時的であることである。遺伝子編集薬剤を送達するより有効でより安全な方法を発見する試みはこれまで、とらえどころがないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,091,513号
【特許文献2】米国特許第5,132,405号
【特許文献3】米国特許第4,956,778号
【特許文献4】WO2007/059782
【特許文献5】米国特許第5,831,012号
【特許文献6】米国特許第4,885,172号A
【特許文献7】米国特許第4,618,492号
【特許文献8】米国特許第4,542,225号
【特許文献9】米国特許第4,625,014号
【特許文献10】欧州特許出願第188,256号
【特許文献11】米国特許第4,671,958号
【特許文献12】米国特許第4,659,839号
【特許文献13】米国特許第4,414,148号
【特許文献14】米国特許第4,699,784号
【特許文献15】米国特許第4,680,338号
【特許文献16】米国特許第4,569,789号
【特許文献17】米国特許第4,589,071号
【特許文献18】米国特許第4,458,066号
【特許文献19】米国特許第5,789,538号
【特許文献20】米国特許第5,925,523号
【特許文献21】米国特許第6,007,988号
【特許文献22】米国特許第6,013,453号
【特許文献23】米国特許第6,410,248号
【特許文献24】米国特許第6,140,466号
【特許文献25】米国特許第6,200,759号
【特許文献26】米国特許第6,242,568号
【特許文献27】WO98/37186
【特許文献28】WO98/53057
【特許文献29】WO00/27878
【特許文献30】WO01/88197
【特許文献31】GB2,338,237
【特許文献32】WO02/077227
【特許文献33】米国特許第8,906,616号
【特許文献34】米国特許第8,895,308号
【特許文献35】米国特許第8,889,418号
【特許文献36】米国特許第8,889,356号
【特許文献37】米国特許第8,871,445号
【特許文献38】米国特許第8,865,406号
【特許文献39】米国特許第8,795,965号
【特許文献40】米国特許第8,771,945号
【特許文献41】米国特許第8,697,359号
【特許文献42】米国特許出願公開第2014/0068797号
【特許文献43】米国特許出願公開第2014/0170753号
【特許文献44】米国特許出願公開第2014/0179006号
【特許文献45】米国特許出願公開第2014/0179770号
【特許文献46】米国特許出願公開第2014/0186843号
【特許文献47】米国特許出願公開第2014/0186919号
【特許文献48】米国特許出願公開第2014/0186958号
【特許文献49】米国特許出願公開第2014/0189896号
【特許文献50】米国特許出願公開第2014/0227787号
【特許文献51】米国特許出願公開第2014/0234972号
【特許文献52】米国特許出願公開第2014/0242664号
【特許文献53】米国特許出願公開第2014/0242699号
【特許文献54】米国特許出願公開第2014/0242700号
【特許文献55】米国特許出願公開第2014/0242702号
【特許文献56】米国特許出願公開第2014/0248702号
【特許文献57】米国特許出願公開第2014/0256046号
【特許文献58】米国特許出願公開第2014/0273037号
【特許文献59】米国特許出願公開第2014/0273226号
【特許文献60】米国特許出願公開第2014/0273230号
【特許文献61】米国特許出願公開第2014/0273231号
【特許文献62】米国特許出願公開第2014/0273232号
【特許文献63】米国特許出願公開第2014/0273233号
【特許文献64】米国特許出願公開第2014/0273234号
【特許文献65】米国特許出願公開第2014/0273235号
【特許文献66】米国特許出願公開第2014/0287938号
【特許文献67】米国特許出願公開第2014/0295556号
【特許文献68】米国特許出願公開第2014/0295557号
【特許文献69】米国特許出願公開第2014/0298547号
【特許文献70】米国特許出願公開第2014/0304853号
【特許文献71】米国特許出願公開第2014/0309487号
【特許文献72】米国特許出願公開第2014/0310828号
【特許文献73】米国特許出願公開第2014/0310830号
【特許文献74】米国特許出願公開第2014/0315985号
【特許文献75】米国特許出願公開第2014/0335063号
【特許文献76】米国特許出願公開第2014/0335620号
【特許文献77】米国特許出願公開第2014/0342456号
【特許文献78】米国特許出願公開第2014/0342457号
【特許文献79】米国特許出願公開第2014/0342458号
【特許文献80】米国特許出願公開第2014/0349400号
【特許文献81】米国特許出願公開第2014/0349405号
【特許文献82】米国特許出願公開第2014/0356867号
【特許文献83】米国特許出願公開第2014/0356956号
【特許文献84】米国特許出願公開第2014/0356958号
【特許文献85】米国特許出願公開第2014/0356959号
【特許文献86】米国特許出願公開第2014/0357523号
【特許文献87】米国特許出願公開第2014/0357530号
【特許文献88】米国特許出願公開第2014/0364333号
【特許文献89】米国特許出願公開第2014/0377868号
【特許文献90】米国特許第4,786,505号
【特許文献91】米国特許第4,853,230号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Remington's Pharmaceutical Sciences (Martin E W [1995] Easton Pa.、Mack Publishing Company、第19版
【非特許文献2】Fundamental Immunology、W.E. Paul編、Raven Press、N.Y.(1993)
【非特許文献3】Hustonら(1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA、85: 5879~5883
【非特許文献4】Reiterら(1995) Protein Eng. 8: 1323~1331
【非特許文献5】Zetscheら(2015) Cell、163(3):759~771
【非特許文献6】Makarovaら(2015) Nat. Rev. Microbiol. 13(11): 722~736
【非特許文献7】Shmakovら(2015) Mol. Cell. 60(3): 385~397
【非特許文献8】Cox及びEllington (2001) Bioorganic & Med. Chem. 9(10): 2525~2531
【非特許文献9】Coxら(2002) Comb. Chem. High Throughput Screen. 5(4): 289~299
【非特許文献10】Coxら(2002) Nucl. Acids Res. 30(20): e108
【非特許文献11】Nevesら(2010) Biophys. Chem. 153(1): 9~16
【非特許文献12】Baughら(2000) J. Mol. Biol. 301(1): 117~128
【非特許文献13】Dieckmannら(1995) J. Cell. Biol. 59:56~56
【非特許文献14】Colasら(1996) Nature、380: 548~550
【非特許文献15】Spolarら(1994) Science、263: 777~784
【非特許文献16】Reverdattoら(2015) Curr. Top. Med. Chem. 15: 1082~1101
【非特許文献17】Huangら(2011) Nucl. Acids Res. 40(1): D271~277
【非特許文献18】Woodmanら(2005) J. Mol Biol. 352: 1118~1133
【非特許文献19】Hoffmannら(2010) PEDS、23(5): 403~413
【非特許文献20】Stadlerら(2011) PEDS、24(9): 751~763
【非特許文献21】Tiedeら(2014) PEDS、27(5): 145~155
【非特許文献22】Stumpp及びAmstutz (2007) Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 10(2): 153~159
【非特許文献23】Schlehuber及びSkerra (2005) Expert. Opin. Biol. Ther. 5(11): 1453~1462
【非特許文献24】Kolfschotenら(2007) Science 317: 1554~1557
【非特許文献25】Nordら(1997) Nat. Biotechnol. 15: 772~777
【非特許文献26】Ronmarkら(2002) Eur. J. Biochem.、269: 2647~2655
【非特許文献27】Nielsenら(2000) Pharmaceut. Sci. Technol. Today、3(8): 282~291
【非特許文献28】Zhou及びMarks (2012) Meth. Enzym. 502: 43~66
【非特許文献29】Harmer及びSamuel (1989) J. Immunol. Meth. 122(1): 115~221
【非特許文献30】Perezら(2013) Drug Discov. Today、1~13
【非特許文献31】Doroninaら 92013) Nat. Biotechnol. 21(7): 778~784
【非特許文献32】Saitoら(2013) Adv. Drug Deliv. Rev. 55(2): 199~215
【非特許文献33】Burkeら(2009) Bioconjug. Chem. 20(6): 1242~1250
【非特許文献34】Dubowchikら(2002) Bioconjug. Chem. 13(4): 855~869
【非特許文献35】Dubowchikら(2002) Bioorg. Med. Chem. Lett. 12(11): 1529~1532
【非特許文献36】Doroninaら(2003) Nat. Biotechnol. 21(7): 778~784
【非特許文献37】Jeffreyら(3006) Bioconjug. Chem. 17(3): 831~840
【非特許文献38】Rodrigoら(2015) Antibodies、4: 259~277
【非特許文献39】Konradら(2011) Bioconjug. Chem. 22: 2395~2403
【非特許文献40】Kihlbergら(1996) Eur. J. Biochem. 240: 556~563
【非特許文献41】Nilssonら(1987) Protein Eng. Des. Sel. 1: 107~113
【非特許文献42】Ghitescuら(1991) J. Histochem. Cytochem. 39: 1057~1065
【非特許文献43】Akerstrom及びBjorck (1986) J. Biol. Chem. 261: 10240~10247
【非特許文献44】Svenssonら(1998) Eur. J. Biochem. 258: 890~896
【非特許文献45】Eyら(1978) Immunochemistry, 15: 429~436
【非特許文献46】Akerstromら(1986) J. Biol. Chem. 261: 10240~10247
【非特許文献47】Fassinaら(2006) J. Mol. Recognit. 9: 564~569
【非特許文献48】Verdolivaら(2002) J. Immunol. Meth. 271: 77~88
【非特許文献49】Dinonら(2011) J. Mol. Recognit. 24: 1087~1094
【非特許文献50】Krookら(1998) J. Immunol. Meth. 221: 151~157
【非特許文献51】DeLanoら(2000) Science、287: 1279~1283
【非特許文献52】Ehrlichら(2001) J. Biochem. Biophys. Meth. 49: 443~454
【非特許文献53】Yangら(2006) J. Peptide Res. 66: 110~137
【非特許文献54】Yangら(2009) J. Chromatogr. A、1216: 910~918
【非特許文献55】Menegattiら(2016) J. Chromatogr. A、1445: 93~104
【非特許文献56】Sugitaら(2013) Biochem. Eng. J. 79: 33~40
【非特許文献57】Yoo及びChoi(2015) BioChip J. 10: 88~94
【非特許文献58】Choeら(2016) Materials、9: 994
【非特許文献59】Strauchら(2014) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、111(2): 675~680
【非特許文献60】Borlinghausら(1987) Cancer Res. 47: 4071~4075
【非特許文献61】Narangら(1979) Meth. Enzymol. 68: 90~99
【非特許文献62】Brownら(1979) Meth. Enzymol. 68: 109~151
【非特許文献63】Beaucageら(1981) Tetra. Lett.、22: 1859~1862
【非特許文献64】R. Scopes (1982) Protein Purification、Springer-Verlag、N.Y.
【非特許文献65】Deutscher (1990) Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification.、Academic Press, Inc. N.Y.
【非特許文献66】Debinskiら(1993) J. Biol. Chem.、268: 14065~14070
【非特許文献67】Kreitman及びPastan (1993) Bioconjug. Chem.、4: 581~585
【非特許文献68】Buchnerら(1992) Anal. Biochem.、205: 263~270
【非特許文献69】Godde及びBickerton (2006) J. Mol. Evol. 62: 718~729
【非特許文献70】Lillestolら(2006) Archaea 2: 59~72
【非特許文献71】Makarovaら(2006) Biol. Direct 1:7.
【非特許文献72】Sorekら(2008) Nat. Rev. Microbiol. 6: 181~186
【非特許文献73】Jansenら(2002) Mol. Microbiol. 43: 1565~1575
【非特許文献74】Makarovaら、(2002) Nucl. Acids Res. 30: 482~496
【非特許文献75】Haftら(2005) PLoS Comput. Biol. 1: e60
【非特許文献76】Fonfaraら((2013) Nuc Acid Res 42(4):2377~2590
【非特許文献77】Jinekら(2012) Science 337:816
【非特許文献78】Haleら(2008) RNA、14: 2572~2579
【非特許文献79】Tangら(2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、99: 7536~7541
【非特許文献80】Tangら(2005) Mol. Microbiol. 55: 469~481
【非特許文献81】Brounsら(2008) Science 321: 960~964
【非特許文献82】Congら(2013) Sciencexpress/10.1126/science.1231143
【非特許文献83】Hwangら(2013) Nat. Biotechnol.、31(3):227
【非特許文献84】Fagerlundら(2015) Genom. Bio. 16: 251
【非特許文献85】Tsai (2014) Nat. Biotechnol. doi:10.1038/nbt.2908
【非特許文献86】Leiら((2013) Cell、152(5): 1173~1183
【非特許文献87】Vakulskasら(2018) Nat. Med.、24: 1216~1224
【非特許文献88】Kalderonら(1984) Cell、39(3 Pt 2): 499~509
【非特許文献89】Dingwallら(1988) J. Cell Biol. 107(3): 841~84
【非特許文献90】Mattaj及びEnglmeier (1998) Annu. Rev. Biochem. 67(1): 265~306
【非特許文献91】Leeら(2006) Cell、126 (3): 543~558
【非特許文献92】Jinekら(2012) Science、337(6096): 816~821
【非特許文献93】Chylinskiら(2013) RNA Biol. 10(5):726~737
【非特許文献94】Maら、(2013) Biomed. Res. Int. 2013: 270805
【非特許文献95】Houら(2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、110(39): 15644~15649
【非特許文献96】Pattanayakら(2013) Nat. Biotechnol. 31(9): 839~843
【非特許文献97】Qiら(2013) Cell、152(5): 1173~1183
【非特許文献98】Wangら(2013) Cell、153(4): 910~918
【非特許文献99】Chenら(2013) Nucl. Acids Res. 41(20): e19
【非特許文献100】Chengら(2012) Cell Res. 23(10): 1163~1171
【非特許文献101】Choら(2013) Genetics、195(3): 1177~1180
【非特許文献102】DiCarloら(2013) Nucl. Acids Res. 41(7): 4336~4343
【非特許文献103】Dickinsonら(2013) Nat. Meth. 10(10): 1028~1034
【非特許文献104】Ebinaら(2013) Sci. Rep. 3: 2510
【非特許文献105】Fujiiら(2013) Nucl. Acids Res. 41(20): e187
【非特許文献106】Huら(2013) Cell Res. 23(11): 1322~1325
【非特許文献107】Jiangら(2013) Nucl. Acids Res. 41(20): e188
【非特許文献108】Larsonら(2013) Nat. Protoc. 8(11): 2180~2196
【非特許文献109】Maliら(2013) Nat. Meth. 10(10): 957~963
【非特許文献110】Nakayamaら(2013) Genesis、51(12): 835~843
【非特許文献111】Ranら(2013) Nat. Protoc. 8(11): 2281~2308
【非特許文献112】Ranら(2013) Cell 154(6): 1380~1389
【非特許文献113】Walshら(2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、110(39): 15514~15515
【非特許文献114】Yangら(2013) Cell、154(6): 1370~1379
【非特許文献115】Brinerら(2014) Mol. Cell、56(2): 333~339
【非特許文献116】Sander及びJoung (2014) Nature Biotech 32(4):347
【非特許文献117】Esveltら(2013) Nat. Meth. 10(11): 1116
【非特許文献118】Youら(2006) Nucleic Acids Res. 34: e60
【非特許文献119】Vester及びWengel (2004) Biochem. 43: 13233~1324
【非特許文献120】Vester及びWengel (2004) Biochem. 43: 13233~132429
【非特許文献121】Cromwellら(2018) Nat. Comm. 9: 1448
【非特許文献122】Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure、第4版、N.Y. Wiley-Interscience
【非特許文献123】Sjodahl (1977) Eur. J. Biochem. 73(2): 343~351
【非特許文献124】Choeら(2016) Materials 9(12): 994
【非特許文献125】Rouetら(2018) J. Am. Chem. Soc. 140(21): 6596~6603
【非特許文献126】Kungら(1979) Science、206(4416): 347~349
【非特許文献127】Kuhn及びWeiner (2016) Immunotherapy、8(8): 889~906
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施態様において、エレクトロポレーションを用いない細胞へのCasエフェクターRNPの送達のための方法及び組成物が提供される。特に、ガイドRNAと複合体を形成したCasエフェクターの抗体が媒介する取込みが、低いレベルの抗体受容体を有する細胞よりも高いレベルの抗体受容体を発現する細胞(標的)を特異的に編集できることは、驚くべき発見であった。細胞へのCasエフェクターのターゲティングは、ターゲティング部分として抗体を使用して実証されるが、他のターゲティング部分も使用できると考えられる(例えば、
図5を参照)。このようなターゲティング部分としては、とりわけ、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチドアプタマー、アンチカリン(anticalin)、レクチン、DARPIN、抗体等が挙げられる。
【0007】
本明細書において予期される様々な実施態様は、必ずしもこれらに限定されないが、以下の1つ又は複数を挙げることができる。
【0008】
実施形態1:哺乳類細胞において遺伝子編集を実行するためのコンストラクトであって、細胞表面マーカーと結合するターゲティング部分を含み、前記ターゲティング部分は、細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体を形成したクラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼを含むリボ核タンパク質複合体に取り付けられている、コンストラクト。
【0009】
実施形態2:前記ターゲティング部分が、抗体、DNA/RNA又はペプチドアプタマー、アンチカリン、レクチン、及びDARPINからなる群から選択される、実施形態1に記載のコンストラクト。
【0010】
実施形態3:前記クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが、II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼである、実施形態1から2のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0011】
実施形態4:前記クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが、Cas9ポリペプチドであり、前記対応するCRISPR/CasガイドRNAが、Cas9ガイドRNAである、実施形態1から3のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0012】
実施形態5:前記Cas9タンパク質が、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質(spCas9)又はその機能的部分、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質(saCas9)又はその機能的部分、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質(stCas9)又はその機能的部分、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)Cas9タンパク質(nmCas9)又はその機能的部分、及びトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質(tdCas9)又はその機能的部分からなる群から選択される、実施形態4に記載のコンストラクト。
【0013】
実施形態6:前記Cas9タンパク質が、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9タンパク質(spCas9)を含む、実施形態5に記載のコンストラクト。
【0014】
実施形態7:前記Cas9タンパク質が、スタフィロコッカス・アウレウスCas9タンパク質(saCas9)を含む、実施形態5に記載のコンストラクト。
【0015】
実施形態8:前記Cas9タンパク質が、ストレプトコッカス・サーモフィラスCas9タンパク質を含む、実施形態5に記載のコンストラクト。
【0016】
実施形態9:前記Cas9タンパク質が、髄膜炎菌Cas9タンパク質(nmCas9)を含む、実施形態5に記載のコンストラクト。
【0017】
実施形態10:前記Cas9タンパク質が、トレポネーマ・デンティコラCas9タンパク質(tdCas9)を含む、実施形態5に記載のコンストラクト。
【0018】
実施形態11:前記クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが、高忠実度(HiFi)変異Cas9ポリペプチドであり、前記対応するCRISPR/CasガイドRNAが、Cas9ガイドRNAである、実施形態1から3のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0019】
実施形態12:前記変異cas9が、Alt-R(登録商標)CRISPR-Cas9を含む、実施形態11に記載のコンストラクト。
【0020】
実施形態13:前記変異cas9が、.R691A Cas9変異体を含む、実施形態11に記載のコンストラクト。
【0021】
実施形態14:前記変異cas9が、1、2、又は3つの核局在化シグナル(NLS)で強化されたCas9を含む、実施形態11から13のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0022】
実施形態15:前記NLSが、SV40 T抗原(PKKKRKV(配列番号32))、SV40 Vp3(KKKRK(配列番号33))、アデノウイルスEla(KRPRP(配列番号34))、ヒトc-myc(PAAKRVKLD(配列番号35)、RQRRNELKRSP(配列番号36))、ヌクレオプラスミン(KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号37))、アフリカツメガエルN1(VRKKRKTEEESPLKDKDAKKSKQE(配列番号38))、マウスFGF3(RLRRDAGGRGGVYEHLGGAPRRRK(配列番号39));PARP(KRKGDEVDGVDECAKKSKK(配列番号40))、M9ペプチド、NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号41)、及びそれらの誘導体からなる群から選択されるNLSを含む、実施形態14に記載のコンストラクト。
【0023】
実施形態16:前記クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼが、V型又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼである、実施形態1から3のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0024】
実施形態17:前記クラス2のCRISPR/Casポリペプチドが、Cpf1ポリペプチド又はその機能的部分、C2c1ポリペプチド又はその機能的部分、C2c3ポリペプチド又はその機能的部分、及びC2c2ポリペプチド又はその機能的部分からなる群から選択される、実施形態16に記載のコンストラクト。
【0025】
実施形態18:前記クラス2のCRISPR/Casポリペプチドが、Cpf1ポリペプチドを含む、実施形態17に記載のコンストラクト。
【0026】
実施形態19:前記ガイドRNAが、1つ又は複数の架橋化核酸を含む、実施形態1から18のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0027】
実施形態20:前記架橋化核酸が、1つ又は複数のN-メチル置換BNA(2',4'-BNANC[N-Me])を含む、実施形態19に記載のコンストラクト。
【0028】
実施形態21:前記ガイドRNAが、1つ又は複数のロックド核酸(LNA)を含む、実施形態19に記載のコンストラクト。
【0029】
実施形態22:前記ターゲティング部分が、内在化受容体に結合する、実施形態1から21のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0030】
実施形態23:前記ターゲティング部分が、CD45、CD3、erbB2、Her2、CD22、CD74、CD19、CD20、CD33、CD40、MUC1、IL-15R、HLA-DR、EGP-1、EGP-2、G250、前立腺特異膜抗原(PSMA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)、及び胎盤性アルカリホスファターゼからなる群から選択される受容体に結合する、実施形態1から22のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0031】
実施形態24:前記ターゲティング部分が、CD45に結合する、実施形態23に記載のコンストラクト。
【0032】
実施形態25:前記ターゲティング部分が、CD33に結合する、実施形態23に記載のコンストラクト。
【0033】
実施形態26:前記ターゲティング部分が、CD3に結合する、実施形態23に記載のコンストラクト。
【0034】
実施形態27:前記ターゲティング部分が、抗体を含む、実施形態1から23のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0035】
実施形態28:前記ターゲティング部分が、内在化抗体を含む、実施形態27に記載のコンストラクト。
【0036】
実施形態29:前記ターゲティング部分が、抗CD3抗体を含む、実施形態27に記載のコンストラクト。
【0037】
実施形態30:前記抗体が、OKT3、m291、フォラルマブ(foralumab)、及びCA-3からなる群から選択される抗体を含む、実施形態29に記載のコンストラクト。
【0038】
実施形態31:前記抗体が、OKT3を含む、実施形態29に記載のコンストラクト。
【0039】
実施形態32:前記ターゲティング部分が、抗CD45抗体を含む、実施形態27に記載のコンストラクト。
【0040】
実施形態33:前記ターゲティング部分が、抗CD33抗体を含む、実施形態27に記載のコンストラクト。
【0041】
実施形態34:前記抗体が、全長免疫グロブリンである、実施形態27から33のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0042】
実施形態35:前記抗体が、Fv、Fab、(Fab')2、(Fab')3、IgGΔCH2、ユニボディ(unibody)、及びミニボディ(minibody)からなる群から選択される、実施形態27から33のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0043】
実施形態36:前記抗体が、単鎖抗体である、実施形態27から33のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0044】
実施形態37:前記抗体が、scFvである、実施形態36に記載のコンストラクト。
【0045】
実施形態38:前記抗体が、ヒト抗体である、実施形態27から37のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0046】
実施形態39:前記ターゲティング部分が、非共有結合の相互作用によって前記Casエンドヌクレアーゼに取り付けられている、実施形態1から38のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0047】
実施形態40:前記非共有結合の相互作用が、ビオチン/アビジン相互作用を含む、実施形態39に記載のコンストラクト。
【0048】
実施形態41:前記非共有結合の相互作用が、抗体結合ペプチドと前記ターゲティング部分との間の相互作用を含む、実施形態39に記載のコンストラクト。
【0049】
実施形態42:前記非共有結合の相互作用が、前記ターゲティング部分と、プロテインA、プロテインG、プロテインL、プロテインZ、プロテインLG、プロテインLA、及びプロテインAGからなる群から選択される抗体結合タンパク質との間の相互作用を含む、実施形態39又は41のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0050】
実施形態43:前記非共有結合の相互作用が、前記ターゲティング部分と、PAM、D-PAM、D-PAM-θ、TWKTSRISIF(配列番号4)、FGRLVSSIRY(配列番号5、Fc-III、EPIHRSTLTALL、HWRGWV(配列番号7)、HYFKFD(配列番号8)、HFRRHL(配列番号9)、NKFRGKYK(配列番号10)、NARKFYKG(配列番号11)、KHRFNKD(配列番号12)からなる群から選択される結合部分との間の相互作用を含む、実施形態39又は41のいずれか一方に記載のコンストラクト。
【0051】
実施形態44:前記非共有結合の相互作用が、前記ターゲティング部分と、FcB6.1ペプチドとの間の相互作用を含む実施形態39又は41のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0052】
実施形態45:前記抗体結合ペプチド又は前記結合部分が、切断可能なリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、実施形態41から44のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0053】
実施形態46:前記リンカーが、切断可能なリンカーを含む、実施形態45に記載のコンストラクト。
【0054】
実施形態47:前記切断可能なリンカーが、ジスルフィドリンカー又は酸不安定性のリンカーを含む、実施形態53に記載のコンストラクト。
【0055】
実施形態48:前記リンカーが、ヒドラゾン、アセタール、cis-アコニット酸様アミド、シリルエーテルからなる群から選択される部分を含む酸標識リンカーを含む、実施形態47に記載のコンストラクト。
【0056】
実施形態49:前記リンカーが、Phe-Lys、又はVal-Citを含む、実施形態47に記載のコンストラクト。
【0057】
実施形態50:前記ターゲティング部分が、前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、実施形態1から38のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0058】
実施形態51:前記ターゲティング部分が、切断不可能なリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、実施形態50に記載のコンストラクト。
【0059】
実施形態52:前記ターゲティング部分が、切断可能なリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、実施形態50に記載のコンストラクト。
【0060】
実施形態53:前記ターゲティング部分が、ジスルフィドリンカー又は酸不安定性のリンカーを含む切断可能なリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、実施形態50に記載のコンストラクト。
【0061】
実施形態54:前記ターゲティング部分が、ヒドラゾン、アセタール、cis-アコニット酸様アミド、シリルエーテルからなる群から選択される部分を含む酸標識リンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、実施形態50に記載のコンストラクト。
【0062】
実施形態55:前記ターゲティング部分が、Table 2(表2)に示される非アミノ酸非ペプチドリンカーを介して前記Casエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている、実施形態50に記載のコンストラクト。
【0063】
実施形態56:前記ターゲティング部分が、ポリペプチドを含み、前記ターゲティング部分及びCasエンドヌクレアーゼが、融合タンパク質を含む、実施形態1から38のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0064】
実施形態57:前記融合タンパク質が、前記Casエンドヌクレアーゼに直接取り付けられた前記ターゲティング部分を含む、実施形態56に記載のコンストラクト。
【0065】
実施形態58:前記融合タンパク質が、アミノ酸によって前記Casエンドヌクレアーゼに取り付けられた前記ターゲティング部分を含む、実施形態56に記載のコンストラクト。
【0066】
実施形態59:前記融合タンパク質が、ペプチドリンカーによって前記Casエンドヌクレアーゼに取り付けられた前記ターゲティング部分を含む、実施形態56に記載のコンストラクト。
【0067】
実施形態60:前記リンカーが、プロテアーゼによって切断可能なアミノ酸配列を含む、実施形態59に記載のコンストラクト。
【0068】
実施形態61:前記リンカーが、カテプシンによって切断可能なアミノ酸配列を含む、実施形態60に記載のコンストラクト。
【0069】
実施形態62:前記ペプチドリンカーが、ジペプチドであるバリン-シトルリン(Val-Cit)、又はPhe-Lysを含む、実施形態59から61のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【0070】
実施形態63:前記融合タンパク質が、Table 2(表2)に示されるアミノ酸又はペプチドリンカーによって前記Casエンドヌクレアーゼに取り付けられた前記ターゲティング部分を含む、実施形態56に記載のコンストラクト。
【0071】
実施形態64:実施形態1から63のいずれか一項に記載のコンストラクト及び医薬的に許容される担体を含む医薬製剤。
【0072】
実施形態65:前記製剤が、腹膜内投与、局所投与、経口投与、吸入投与、経皮投与、真皮下のデポー投与、及び直腸内投与からなる群から選択される方式による投与用である、実施形態64に記載の製剤。
【0073】
実施形態66:前記製剤が、単位用量製剤である、実施形態64から65のいずれか一項に記載の製剤。
【0074】
実施形態67:細胞において遺伝子編集を実行する方法であって、前記細胞を、実施形態1から63のいずれか一項に記載のコンストラクトと接触させることを含み、前記ガイドRNAは、前記Casエンドヌクレアーゼを、前記細胞のゲノム中の特異的な場所にガイドする、方法。
【0075】
実施形態68:前記細胞が、エクスビボにおける細胞である、実施形態67に記載の方法。
【0076】
実施形態69:前記細胞が、処置しようとする対象由来の細胞である実施形態68に記載の方法。
【0077】
実施形態70:前記細胞が、線維芽細胞、血液細胞(例えば、赤血球、白血球)、肝臓細胞、腎臓細胞、神経細胞、並びに幹細胞(例えば、胚性幹細胞、成体幹細胞(例えば、造血幹細胞、神経幹細胞及び間葉幹細胞)、T細胞、及び誘導多能性幹細胞(iPSC)からなる群から選択される細胞を含む、実施形態68から69のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
実施形態71:前記細胞が、対象においてインビボであり、前記接触させることが、前記組成物を前記対象に投与することを含む、実施形態67に記載の方法。
【0079】
実施形態72:腹膜内投与、局所投与、経口投与、吸入投与、経皮投与、真皮下のデポー投与、及び直腸内投与からなる群から選択される経路を介して、前記コンストラクトを投与することを含む、実施形態71に記載の方法。
【0080】
実施形態73:実施形態64から66のいずれか一項に記載の医薬製剤を投与することを含む、実施形態71から72のいずれか一項に記載の方法。
【0081】
実施形態74:前記対象が、ヒトである、実施形態69から73のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
実施形態75:前記対象が、非ヒト哺乳動物である、実施形態69から73のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
実施形態76:前記細胞に、ドナー鋳型核酸を導入することを更に含む、実施形態67から75のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
実施形態77:軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症、副腎白質ジストロトフィー、アイカルディ症候群、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、アルファ-サラセミア、アンドロゲン不感受性症候群、アペール症候群、不整脈原性右室異形成、毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangictasia)、バース症候群、ベータ-サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、クリグラー-ナジャー症候群(Crigler-Najjer Syndrome)、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常(fibrodysplasia ossificans progressive)、脆弱X症候群、ガラクトース血症(galactosemis)、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(generalized gangliosidoses)(例えば、GM1)、糖原病IV型、ヘモクロマトーシス、ベータ-グロビンの第6コドンにおけるヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー-ギーディオン症候群、白血球接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖沈着症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症(nephrogenic diabetes insipdius)、神経線維腫症、ニーマン-ピック病(Neimann-Pick disease)、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー-ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン-テイビ症候群、サンフィリッポ症候群、重症複合免疫不全(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス-マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ-サックス病、血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群、トリーチャー‐コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペル‐リンダウ病(von Hippel-Landau disease)、ワーデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット-アルドリッチ症候群、及びX連鎖リンパ増殖症候群からなる群から選択される疾患の処置を含む、実施形態67から76のいずれか一項に記載の方法。他のこのような疾患としては、例えば、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病及びテイ-サックス病)、ムコ多糖症(mucopolysaccahidosis)(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)、及び血友病が挙げられる。
【0085】
実施形態78:前記方法が、がんの処置を含む、実施形態67から76のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
実施形態79:
前記がんが、固形腫瘍を含むか;及び/又は
前記がんが、がん幹細胞を含むか;及び/又は
前記がんが、乳がん、前立腺がん、結腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、膵臓がん、腎細胞(腎臓)がん、膠芽腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連のがん(例えば、カポジ肉腫、リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、胆管がん、肝外のがん、膀胱がん、骨がん(例えば、ユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫)、脳幹グリオーマ、脳腫瘍(例えば、星細胞腫、脳及び脊髄の腫瘍、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(例えば、小児、消化管)、心臓腫瘍、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、管がん(例えば、胆汁、肝外)、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜がん、上衣細胞腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼のがん(例えば、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、骨の線維性組織球腫、悪性及び骨肉腫、胆嚢がん、胃の(胃)がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば、卵巣がん、睾丸がん、頭蓋外のがん、性腺外のがん、中枢神経系)、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹がん、ヘアリーセル白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん(例えば、腎細胞、ウィルムス腫瘍、及び他の腎臓腫瘍)、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞、口唇口腔がん、肝臓がん(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺がん(例えば、小児、非小細胞、小細胞)、リンパ腫(例えば、AIDS関連、バーキット(例えば、非ホジキンリンパ腫)、皮膚T細胞(例えば、菌状息肉腫、セザリー症候群)、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系(CNS))、マクログロブリン血症、ワルデンストレーム、男性乳がん、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、黒色腫(例えば、小児、眼球内(目))、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性頸部扁平上皮がん、正中線癌、口こうがん、多発性内分泌腺腫症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん、口唇及び中咽頭がん、骨肉腫、膵内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫症、パラガングリオーマ、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、クロム親和性細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂及び尿管、移行上皮がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、ユーイング、カポジ、骨肉腫、横紋筋肉腫(rhadomyosarcoma)、軟部組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚がん(例えば、黒色腫、メルケル細胞癌、基底細胞癌、非メラノーマ性)、小腸がん、扁平上皮癌、原発不明の頸部扁平上皮がん、胃(胃の)がん、睾丸がん、咽喉がん、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺がん、絨毛性腫瘍、尿管及び腎盂がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍からなる群から選択されるがんを含む、実施形態78に記載の方法。
【0087】
実施形態80:前記がんが、液性がん(例えば、白血病)を含む、実施形態78に記載の方法。
【0088】
実施形態81:前記がんが、固形腫瘍(例えば黒色腫)を含む、実施形態78に記載の方法。
【0089】
実施形態82:前記細胞が、T細胞を含む、実施形態78から81のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
実施形態83:前記T細胞を再活性化する、実施形態82に記載の方法。
【0091】
実施形態84:前記細胞が、間質細胞を含む、実施形態78から81のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
定義
用語「対象」、「個体」、及び「患者」は、同義的に使用でき、ヒト、加えて、非ヒト哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ、ウシ、有蹄動物、ウサギ等)を指す。様々な実施形態において、対象は、医師又は病院の他の医療従事者のケアを受けている、外来患者としての、又は他の臨床的な状況における、ヒト(例えば、成人男性、成人女性、若年層男性、若年層女性、男児、女児)であり得る。特定の実施形態において、対象は、医師又は他の医療従事者のケア又は処方を受けていなくてもよい。
【0093】
用語「処置する」は、例えば病状又は疾患を処置することに関して使用される場合、その病状若しくは疾患の1つ若しくは複数の症状の緩和及び/若しくは排除、及び/又はその病状若しくは疾患の1つ若しくは複数の症状の進行の遅延及び/若しくは発生率若しくは重症度の低減、及び/又はその病状若しくは疾患の防止を指す。処置という用語は、病状又は疾患の発生の遅延又は発生の防止を含む予防的処置を指す場合もある。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「選択的なターゲティング」又は「特異的な結合」は、本明細書に記載されるコンストラクトを含むターゲティングリガンドの使用を指す。特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、ガイドRNAと複合体を形成したCasエンドヌクレアーゼに取り付けられる。典型的には、リガンドは、標的、例えば目的の細胞表面上に発現される受容体又は他の生体分子成分と特異的/選択的に相互作用する。ターゲティングリガンドとしては、ペプチド、抗体、アプタマー、ターゲティングペプチド、多糖類等の分子及び/又は材料を挙げることができる。
【0095】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すものとして本明細書では同義的に使用される。この用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマーに加えて、天然に存在するアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0096】
「アビジン/ビオチン」相互作用は、ビオチンと、アビジン又はアビジンバリアント、これらに限定されないが、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン等との結合反応を指す。
【0097】
「医薬的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、必ずしもこれらに限定されないが、標準的な医薬的に許容される担体のいずれかを含む。本明細書において予期される医薬組成物は、医薬的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができる。医薬的に許容される担体としては、希釈剤、アジュバント、及びビヒクル、加えて、担体、及び不活性、非毒性の固体若しくは液体増量剤、希釈剤、又は本発明の活性成分と反応しない封入材料を挙げることができる。その例としては、これらに限定されないが、リン酸緩衝食塩水、生理的食塩水、水、及びエマルジョン、例えば油/水エマルジョンが挙げられる。担体は、例えば、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。製剤は、当業者に周知であり容易に入手可能な多数の情報源に記載されている。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Martin E W [1995] Easton Pa.、Mack Publishing Company、第19版)は、本明細書に記載される薬物送達ナノ担体(例えば、LBでコーティングされたナノ粒子)と共に使用できる製剤を記載している。
【0098】
「抗体」は、本明細書で使用される場合、標的(例えば、標的ポリペプチド)に結合すること(例えば、特異的に結合すること)が可能な、実質的に免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによってコードされた、又はそれに由来する1つ又は複数のポリペプチドからなるタンパク質を指す。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子、加えて、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、これらは順に、免疫グロブリンのクラスであるIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEをそれぞれ定義する。
【0099】
典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一な対で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する。各鎖のN末端は、主として抗原認識に関与する約100から110又はそれより多くのアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。
【0100】
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして存在するか、又は様々なペプチダーゼでの消化によって産生された様々なよく特徴付けられたフラグメントとして存在する。したがって、例えばペプシンは、ヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、それ自体はジスルフィド結合によってVH-CH1に合体した軽鎖であるFabの二量体であるF(ab)'2を産生する。F(ab)'2は、穏やかな条件下で還元されて、ヒンジ領域中のジスルフィド結合を破断し、それによって(Fab')2二量体をFab'単量体に変換することができる。Fab'単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を含むFabである(他の抗体フラグメントのより詳細な説明についてはFundamental Immunology、W.E. Paul編、Raven Press、N.Y.(1993)を参照)。様々な抗体フラグメントがインタクトな抗体の消化の観点で定義されているが、当業者は、このようなFab'フラグメントは、化学的に、又は組換えDNA手法を利用することのいずれかによってデノボ合成できることを理解しているものと予想される。したがって、抗体という用語はまた、本明細書で使用される場合、抗体全体の改変によって産生された抗体フラグメント、又は組換えDNA手法を使用してデノボ合成された抗体フラグメントのどちらも含む。特定の好ましい抗体としては、単鎖抗体(単一のポリペプチド鎖として存在する抗体)、より好ましくは、可変重鎖及び可変軽鎖が一体化して(直接的に、又はペプチドリンカーを介して)、連続するポリペプチドを形成する単鎖Fv抗体(sFv又はscFv)が挙げられる。単鎖Fv抗体は、共有結合で連結されたVH-VLヘテロ二量体であり、これは、直接合体したか又はペプチドをコードするリンカーによって合体したかのいずれかのVH及びVLをコードする配列を含む核酸から発現させることができる。Hustonら(1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA、85: 5879~5883。VH及びVLは単一のポリペプチド鎖としてそれぞれに接続されているが、VH及びVLドメインは非共有結合によって会合している。線状ファージの表面上に発現される第1の機能的な抗体分子は単鎖Fv's(scFv)であったが、代替の発現戦略も成功している。例えば、鎖の一方(重鎖又は軽鎖)がg3キャプシドタンパク質に融合し、相補鎖が可溶性分子としてペリプラズムに排出されると、Fab分子をファージ上に提示することができる。2つの鎖は、同じレプリコン上にコードされていてもよいし、又は異なるレプリコン上にコードされていてもよく、重要なポイントは、各Fab分子中の2つの抗体鎖が翻訳後修飾によって集合し、二量体が、鎖の一方の例えばg3pへの連結を介してファージ粒子に取り込まれることである(例えば、米国特許第5733743号を参照)。天然に凝集した、ただし化学的に分離された軽鎖及び重鎖ポリペプチド鎖を、抗体V領域から、抗原-結合部位の構造に実質的に類似した3次元構造にフォールディングする分子に変換するscFv抗体及び多数の他の構造が当業者公知である(例えば、米国特許第5,091,513号、5,132,405号、及び4,956,778号を参照)。特定の実施形態において、抗体には、ファージ上に提示された全てのもの(例えば、scFv、Fv、Fab及びジスルフィドで連結されたFv(例えば、Reiterら(1995) Protein Eng. 8: 1323~1331を参照)、加えてアフィボディ、ナノボディ、ユニボディ等が含まれるものとする。
【0101】
用語「特異的に結合する」は、本明細書で使用される場合、生体分子(例えば、タンパク質、核酸、抗体等)に対して述べられる場合、分子(例えば、タンパク質及び他の生体物質)のヘテロジニアスな集団中の生体分子の存在を決定付ける結合反応を指す。したがって、指示された条件(例えば、抗体の場合、イムノアッセイ条件、又は核酸の場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で、特定されたリガンド又は抗体は、その特定の「標的」分子に結合し、サンプル中に存在する他の分子には有意な量で結合しない。
【0102】
クラス2のCRISPRシステムにおいて、エフェクター複合体の機能(例えば、標的DNAの切断)は、単一のエンドヌクレアーゼによって行われる(例えば、Zetscheら(2015) Cell、163(3):759~771; Makarovaら(2015) Nat. Rev. Microbiol. 13(11): 722~736;及びShmakovら(2015) Mol. Cell. 60(3): 385~397を参照)。そのようなものとして、用語「クラス2のCRISPR/Casタンパク質」は、本明細書において、クラス2のCRISPRシステム由来のエンドヌクレアーゼ(標的核酸を切断するタンパク質)を含むものとして使用される。したがって、用語「クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ」は、本明細書で使用される場合、II型CRISPR/Casタンパク質(例えば、Cas9)、V型CRISPR/Casタンパク質(例えば、Cpf1、C2c1、C2C3)、及びVI型CRISPR/Casタンパク質(例えば、C2c2)を含む。これまでのところ、クラス2のCRISPR/Casタンパク質は、II型、V型、及びVI型CRISPR/Casタンパク質を含むが、この用語はまた、対応するガイドRNAに結合しRNP複合体を形成するのに好適なあらゆるクラス2のCRISPR/Casタンパク質を含むことも意味する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9のアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。
【
図2】フランシセラ・ツラレンシスcpf1のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【
図3】ビオチン/ストレプトアビジン連結を介してCas9にコンジュゲートした抗体を図式的に例示する図である。
【
図4】CRISPR/Casエンドヌクレアーゼリボ核タンパク質複合体に抗体を取り付けるための化学的にコンジュゲートした抗体結合タンパク質の使用を例示する図である。
【
図5】リンカー(例えば、切断可能な、又は切断不可能なリンカー)によってCasエフェクター(例えば、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む複合体)に取り付けられた細胞ターゲティング部分(例えば、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチドアプタマー、アンチカリン、レクチン、DARPIN、抗体等)を図式的に例示する図である。
【
図6】Cas9-Abコンジュゲートが安定であることを示す図である。複数のコンジュゲート=四量体ストレプトアビジンを介した複数のCas9/Ab。1:1の化学量論に最適化されていない。
【
図7】BFPをサイレンシングすることによるアッセイ編集が、ddPCR及びNGSと非常によく相関することを示す図である。
【
図8】Cas9-抗CD45が、CD45を多く含む細胞を選択的に編集することを示す図である。
【
図9】パネルA及びBは、LNA(2',4'-BNA)(
図9、パネルA)、及びBNA
NC(2',4'-BNA
NC[NMe])の構造を例示する(
図9、パネルB)。
【
図10A】パネルA~Cは、細胞のターゲティング及びエンドソーム脱出に関してCas9を操作することを例示する。パネルA:T細胞特異的ゲノム編集のためのAb-Cas9RNP複合体。Cas9タンパク質(シアン色)をプロテインAフラグメント(黄色)に融合させ、これがT細胞の特異的結合及び内在化を誘導するOKT3抗体(青色)ときつく結合する。RNPは、ガイドRNA(灰色)を含有する。
【
図10B】パネルB:Cas9prA融合体のヌクレオフェクション(左)は、未改変Cas9RNP(右)のレベルと類似したレベルのCD4KOを産生する。3日に観察された細胞;技術的な2連。
【
図10C】パネルC:保持体積の著しいシフトは、Cas9prAと抗CD3Ab OKT3との複合体形成を実証する。サイズ排除クロマトグラフィーを、Superose 6 Increase 10/300GLカラムを使用して実行した。
【
図11】パネルA~Cは、Cas9RNPのT細胞へのAb指向型のターゲティングを例示する。パネルA:30分後のCas9prA(Alexa Fluor 488で標識された)及びT細胞の共局在化。OKT3との複合体形成は、Cas9prA単独又は非特異的なIgGと複合体を形成したものと比較して共局在化を促進する。パネルB:PBMCの環境下における蛍光標識されたCas9prA:OKT3のT細胞への優先的な結合。B細胞の低バックグラウンドの結合が30分で観察される。パネルC:Cas9prA:OKT3は、Cas9prA:IgGと比較して、30分後にT細胞受容体及びCD3の内在化を誘導する。類似の内在化がOKT3単独(示されていない)で観察される。
【発明を実施するための形態】
【0104】
CRISPR/Cas9は、これまでに利用不可能であった精度で遺伝学的「編集」を可能にするRNAガイドターゲティングゲノム編集ツールである。CRISPR/Cas9は、とりわけ、細胞株及び動物における遺伝子ノックアウト、ノックインSNP、挿入、及び欠失を容易にする。CRISPR/Cas9ゲノム編集システムは、典型的には、2つの要素、Cas9、エンドヌクレアーゼ、及びガイドRNA(sgRNA)を利用する。ガイドRNAは、Casエンドヌクレアーゼを標的ゲノム中の特異的な場所にガイドする。3'末端に存在するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM、例えば、配列NGG)があると、Cas9エンドヌクレアーゼは標的DNA二重鎖をほどき、ガイドRNAが標的配列を認識したとき両方の鎖を切断し、それによって標的ゲノムの改変が可能になる。
【0105】
Casエフェクター(エンドヌクレアーゼ)は、エレクトロポレーションによってリボ核タンパク質(タンパク質+ガイドRNA)として細胞に送達されることが多い。このエクスビボのアプローチは、体から細胞を取り出すこと、それらにショックを与えること、次いで遺伝子編集後にそれらを再び移植することを必要とする。代替として、CRISPR/Casシステムは、Caseエンドヌクレアーゼ及びガイドRNAをコードする核酸コンストラクトを含むベクター(例えば、AAV)として細胞に導入される。しかしながら、このようなコンストラクトを使用する細胞のトランスフェクションは、典型的には極めて非効率的である。
【0106】
様々な実施形態において、エレクトロポレーションを用いない細胞へのCasエフェクターRNPの送達のための方法及び組成物が提供される。特定には、ガイドRNAと複合体を形成したCasエフェクターの抗体が媒介する取込みが、低いレベルの抗体受容体を有する細胞よりも高いレベルの抗体受容体を発現する細胞(標的)を特異的に編集できることは、驚くべき発見であった。これは、ガイドRNAと複合体を形成したCasエンドヌクレアーゼに取り付けられた抗体を含むコンストラクトを使用して達成される(例えば、
図3を参照)。また、抗体(本明細書に記載されるような)に加えて多数の他のターゲティング部分が、標的細胞にCaseエフェクター(例えば、ガイドRNAと複合体を形成したCas9)を送達するのに有効であり得ることも考えられる。
【0107】
図6で示されるように、抗体-Casエンドヌクレアーゼ複合体は、極めて安定である。更に、抗体指向型のCasエンドヌクレアーゼは、標的細胞に遺伝子編集を実行するのに効果的であることが実証された(例えば、
図7を参照)。加えて、遺伝子編集は、抗体標的を高いレベルで発現する細胞に優先的であった(例えば、
図8を参照)。
【0108】
このアプローチは、インビボでの編集に変化させることができる。具体的には、本明細書で提供される教示を考慮して、抗体指向型のCasエフェクター(例えば、ガイドRNAと複合体を形成した)は、インサイチュで送達され、特定の組織又は目的の細胞型にターゲティングできると考えられる。このアプローチは、細胞への貫通を改善するか又はエンドソーム脱出を増加させる試薬で更に強化することができる。Cas-ガイドRNA複合体を異なる抗体又は他の(例えば、合成)細胞表面ターゲティング分子とカップリングすることによって、多種多様の細胞をターゲティングすることができる。
【0109】
インサイチュで遺伝子編集試薬を送達し、それらを特異的な組織にホーミングさせる能力は、遺伝病の処置にとって革新的な進歩である。エクスビボの編集が使用可能な場合でさえも(例えば鎌状赤血球症)、インサイチュの編集を実行することがはるかに好ましいと予想される。加えて、数々の遺伝病は、標的細胞又は組織(例えば、肺、脳等)を取り出すことができないため、インサイチュの編集でしか治癒しない可能性がある。また遺伝子編集試薬のインサイチュのホーミングは、遺伝病以外にも極めて有用であり得る。例えば、インサイチュのT細胞の編集は、免疫腫瘍学にとって大きな進歩であり得る。
【0110】
したがって、特定の実施形態において、哺乳類細胞において遺伝子編集を実行するためのコンストラクトであって、コンストラクトは、細胞表面マーカー(例えば、受容体)と結合するターゲティング部分を含み、前記ターゲティング部分(例えば、抗体、アプタマー、アンチカリン、レクチン、DARPIN等)は、細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体を形成したクラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼを含む複合体に取り付けられている、コンストラクト(例えば、
図3を参照)が提供される。特定の実施形態において、ターゲティング部分は、アビジン/ストレプトアビジン連結を介してCasエンドヌクレアーゼに取り付けられていてもよい。特定の実施形態において、ターゲティング部分がタンパク質を含む場合(例えば、ターゲティング部分が抗体又はその部分を含む場合)、ターゲティング部分は、Casエンドヌクレアーゼとの融合タンパク質として提供することができ、ターゲティング部分は、Casエンドヌクレアーゼに直接取り付けられているか、又はアミノ酸を介して、若しくはペプチドリンカーを介して取り付けられている。特定の実施形態において、ターゲティング部分は、Caseエンドヌクレアーゼに化学的にコンジュゲートされている(例えば、切断可能又は切断不可能なリンカーを介して)。
【0111】
本明細書に記載されるコンストラクト及び医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤も提供される。加えて、コンストラクト又は医薬製剤の使用方法であって、インサイチュ又はエクスビボで細胞中の標的ゲノムを編集するのにコンストラクトを利用する、方法が提供される。
【0112】
様々な例示的なターゲティング部分及びCasエンドヌクレアーゼ、加えてこれら2つを取り付けてコンストラクトを提供する方法は、後述される。
【0113】
ターゲティング部分
本明細書に記載されるコンストラクトは、細胞表面マーカーと結合するターゲティング部分を含み、前記ターゲティング部分は、細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体を形成したクラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼを含む複合体に取り付けられている。様々な実施形態において、ターゲティング部分は、細胞表面マーカーに結合することが可能なあらゆる部分を含み得る。例示的な細胞表面マーカーとしては、これに限定されないが、細胞表面受容体が挙げられる。例示的な細胞表面マーカーとしては、これらに限定されないが、CD45、CD3、erbB2、Her2、CD22、CD74、CD19、CD20、CD33、CD40、MUC1、IL-15R、HLA-DR、EGP-1、EGP-2、G250、前立腺特異膜抗原(PSMA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)、胎盤性アルカリホスファターゼ等が挙げられる。特定の実施形態において、マーカーは、CD45を含む。特定の実施形態において、マーカーは、CD3を含む。特定の実施形態において、ターゲティング部分は、細胞表面マーカーに特異的に結合する部分を含む。
【0114】
例示的な結合部分としては、これらに限定されないが、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチドアプタマー、アンチカリン、レクチン、DARPIN、抗体等が挙げられる。
【0115】
核酸アプタマーは、小分子、タンパク質、核酸等の様々な分子標的に結合する、更には細胞、組織及び生物体にも結合するように、インビトロでの選択を複数回繰り返すこと、又はそれと等しくSELEX(試験管内進化法)によって操作された核酸種である。アプタマーは、抗体の分子認識特性に匹敵する分子認識特性を提供する。アプタマーは、その識別力のある認識に加えて、アプタマーは完全に試験管中で操作でき、化学合成によって容易に産生され、所望の貯蔵特性を有し、治療適用において免疫原性をほとんど惹起しないために、抗体を超える利点を提供する。
【0116】
アプタマーの選択/調製方法は当業者周知である。更に、インビトロでの選択プロセスは自動化されており(例えば、Cox及びEllington (2001) Bioorganic & Med. Chem. 9(10): 2525~2531; Coxら(2002) Comb. Chem. High Throughput Screen. 5(4): 289~299; Coxら(2002) Nucl. Acids Res. 30(20): e108を参照)、選択実験の継続時間が6週間から3日に短縮される。
【0117】
DNA及びRNAアプタマーの両方は、様々な標的にロバストな結合親和性を示す(例えば、Nevesら(2010) Biophys. Chem. 153(1): 9~16; Baughら(2000) J. Mol. Biol. 301(1): 117~128; Dieckmannら(1995) J. Cell. Biol. 59:56~56を参照)。DNA及びRNAアプタマーは、同じ標的に対して選択されている。近年、スマートアプタマー、及びスマートリガンドの概念が一般的に導入されており、これは、アプタマー-標的相互作用の事前に定義された平衡(Kd)速度(koff/kon)、及び熱力学的(ΔH、ΔS)パラメーターを用いてアプタマーを選択するというものである。カイネティックキャピラリー電気泳動は、スマートアプタマーの選択に使用される技術である。これは、数回の選択でアプタマーを得る。
【0118】
ペプチドアプタマー(Colasら(1996) Nature、380: 548~550)は、特異的な標的分子と結合するように選択又は操作された人工タンパク質である。これらのタンパク質は、典型的には、タンパク質の足場によって提示された可変配列の1つ又は複数のペプチドループからなる。それらは、典型的にはコンビナトリアルライブラリーから単離され、その後、定方向変異又は複数回の可変領域の変異誘発及び選択によって改善されることが多い。インビボにおいて、ペプチドアプタマーは、細胞タンパク質標的と結合することができる。特定の実施形態において、アプタマーの可変領域を形成するペプチドは、足場と同じポリペプチド鎖の一部として合成され、そのN及びC末端への連結によってそこに拘束される。この二重の構造的な拘束は、可変領域が受け入れることができるコンフォメーションの多様性を減少させ(Spolarら(1994) Science、263: 777~784)、この立体配座の多様性の低減は、標的との相互作用により可変領域が単一のコンフォメーションを受け入れる場合、分子の結合のエントロピーコストを低くする。結果として、ペプチドアプタマーは、抗体により示される結合親和性(ナノモル範囲)に匹敵する結合親和性でそれらの標的としっかり結合することができる。
【0119】
ペプチドアプタマーの足場は、典型的には、小さく秩序だった可溶性のタンパク質である。第1の足場は、今日広く使用されており、これは、大腸菌(Escherichia coli)のチオレドキシンであるtrxA遺伝子産物(TrxA)である(例えば、Colasら(1996) Nature、380: 548~550; Reverdattoら(2015) Curr. Top. Med. Chem. 15: 1082~1101を参照)。これらの分子において、TrxA-Cys-Gly-Pro-Cys-(配列番号3)活性部位ループ中のGly-Proモチーフの代わりに、可変配列の単一のペプチドが提示される。TrxAへの改善としては、隣接するシステインをセリンで置換して、ループの塩基で起こり得るジスルフィド結合の形成を防ぐこと、D26A置換を導入してオリゴマー化を低減すること、及び特定の細胞中での発現のためにコドンを最適化することが挙げられる。
【0120】
ペプチドアプタマー選択は、様々なシステムを使用して行うことができるが、最も使用されるものは、現在のところ酵母2ハイブリッドシステムである。またペプチドアプタマーは、ファージディスプレイ、並びに他の表面ディスプレイ技術、例えばmRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌ディスプレイ及びイーストディスプレイによって構築されたコンビナトリアルペプチドライブラリーからも選択することができる。これらの実験手順はバイオパニングとしても公知である。バイオパニングから得られるペプチドのなかでも、ミモトープをペプチドアプタマーの一種とみなすことができる。コンビナトリアルペプチドライブラリーからパニングされた全てのペプチドが、特殊なデータベースに名称MimoDBと共に保存されている(例えば、Huangら(2011) Nucl. Acids Res. 40(1): D271~277を参照)。
【0121】
アフィマー(affimer)タンパク質は、ペプチドアプタマーの進化したものであり、これは、特異的な標的タンパク質に対して高親和性の結合表面を提供するペプチドループを提示するように操作された小さく高度に安定なタンパク質である。これは、シスタチンのシステインプロテアーゼ阻害剤ファミリー由来の、低分子量、すなわち12~14kDaのタンパク質である[36](例えば、Woodmanら(2005) J. Mol Biol. 352: 1118~1133; Hoffmannら(2010) PEDS、23(5): 403~413; Stadlerら(2011) PEDS、24(9): 751~763; Tiedeら(2014) PEDS、27(5): 145~155を参照)。
【0122】
アフィマーの足場は、シスタチンタンパク質のフォールディングをベースとした安定なタンパク質である。これは、抗体と類似した高い親和性及び特異性で様々な標的タンパク質と結合するようにランダム化することができる2つのペプチドループとN末端配列とを提示する。タンパク質の足場上へのペプチドの安定化は、ペプチドがとる可能性のあるコンフォメーションを拘束し、したがって遊離ペプチドのライブラリーと比較して結合親和性及び特異性を増加させる。
【0123】
他のタンパク質の足場としては、これに限定されないが、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPin)が挙げられ、これは、標的結合に関して抗体を超える利点を提供することができる非免疫グロブリンタンパク質の一つのクラスである(例えば、Stumpp及びAmstutz (2007) Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 10(2): 153~159を参照)。DARPinは、例えば、キナーゼ、プロテアーゼ及び薬物を排出する膜タンパク質の阻害にうまく使用されている。また細胞表面マーカー(例えば、HER2)を特異的にターゲティングするDARPinも生成されており、インビトロでの診断とインビボでの腫瘍ターゲティングの両方で機能することが示された。DARPinは、小さいサイズ及び高い安定性等のその好都合な分子特性のために有用である。低コストでの細菌産生及び多くの標的特異的なDARPinの迅速な生成のために、DARPinは、本質的にあらゆる所望の標的に対するターゲティング部分によく適している。加えて、DARPinは、多重特異的な様式で容易に生成することができ、エフェクターDARPinを特異的な臓器にターゲティングする能力、又は数々のDARPinで構成される1つの分子で複数の受容体をターゲティングする能力をもたらす。
【0124】
アンチカリンは、リポカリンの足場をベースとした操作されたリガンド結合タンパク質の別のクラスである(例えば、Schlehuber及びSkerra (2005) Expert. Opin. Biol. Ther. 5(11): 1453~1462を参照)。リポカリンタンパク質の構造は、4つの構造的に高度に可変なループを支えるコンパクトで硬いβ-バレルを特徴とする。これらのループは、異なる標的分子の特異的な複合体形成のためのポケットを形成する。天然リポカリンはヒト血漿及び体液中に存在し、そこでそれらは通常、ビタミン、ステロイド又は代謝化合物の輸送において機能する。ループ領域のターゲティング変異誘発及び生化学的な選択技術を使用して、低分子量物質と高分子タンパク質標的の両方にとって新規のリガンド特異性を有するバリアントを生成することができる。このような「アンチカリン」は、その小さいサイズ、典型的には160から180残基、単一のポリペプチド鎖のロバストな三次構造及び組成のために、生産の経済性、貯蔵中の安定性、より速い薬物動態学、及びより優れた組織貫通に関して、抗体を超える数々の利点を提供することができる。
【0125】
特定の実施形態において、Casエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体に取り付けられたターゲティング部分は、抗体を含む。特定の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。このような抗体としては、全長免疫グロブリン(例えば、IgG、IgA、IgM等)、加えて、抗体フラグメント、例えば、これらに限定されないが、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fv、Fv'、Fd、Fd'、scFv、hsFvフラグメント、単鎖抗体、ラクダ抗体、ダイアボディ等が挙げられる。このような抗体を産生する方法は当業者周知である。このような抗体は、市販されている(例えば、Pacific Immunology、Ramona CA、ABClonal、Woburn、MAによるもの等を参照)。
【0126】
特定の実施形態において、抗体のターゲティング部分は、ユニボディとして構築することができる。ユニボディ技術は、ある種の小さい抗体様式より長い治療時間域が予想される、安定でより小さい抗体様式を産生する抗体技術である。特定の実施形態において、ユニボディは、抗体のヒンジ領域を取り去ることによってIgG4抗体から産生される。完全サイズのIgG4抗体とは異なり、半分の分子フラグメントは、非常に安定であり、ユニボディと呼ばれる。IgG4分子を半分にすることで、ユニボディ上に標的と結合できる唯一の領域が残る。ユニボディを産生する方法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるPCT公報WO2007/059782で詳細に記載される(Kolfschotenら(2007) Science 317: 1554~1557も参照)。
【0127】
特定の実施形態において、抗体のターゲティング部分は、アフィボディ分子として構築することができる。アフィボディ分子は、ブドウ球菌のプロテインAのIgG結合ドメインの一つに由来する58アミノ酸残基のタンパク質ドメインをベースとした親和性タンパク質のクラスである。この3つのヘリックスバンドルドメインは、コンビナトリアルファージミドライブラリーの構築のための足場として使用されており、このライブラリーから、ファージディスプレイ技術を使用して所望の分子をターゲティングするアフィボディバリアントを選択することができる(例えば、Nordら(1997) Nat. Biotechnol. 15: 772~777; Ronmarkら(2002) Eur. J. Biochem.、269: 2647~2655を参照)。アフィボディ及び方法の詳細は当業者公知である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,831,012号を参照)。
【0128】
特定の実施形態において、ターゲティング部分に使用される抗体は、内在化抗体である。内在化抗体を、例えばファージディスプレイライブラリーから産生する方法は、当業者周知である(例えば、Nielsenら(2000) Pharmaceut. Sci. Technol. Today、3(8): 282~291) Zhou及びMarks (2012) Meth. Enzym. 502: 43~66等を参照)。
【0129】
抗体のCasポリペプチドへの取り付け
Casエフェクター(例えば、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む複合体)をターゲティング部分にカップリングする方法は、当業者周知である。その例としては、これらに限定されないが、ビオチン及びアビジン又はストレプトアビジン(例えば、米国特許第4,885,172号Aを参照)、典型的なビオチン/アビジンの代替物(例えば、FITC/抗FITC(例えば、Harmer及びSamuel (1989) J. Immunol. Meth. 122(1): 115~221を参照)、ジゴキシゲニン(dioxigenin)/抗ジゴキシゲニン等)の使用が挙げられ、これは、例えば、二機能性のカップリング剤、例えばグルタルアルデヒド、ジイミドエステル、芳香族及び脂肪族ジイソシアネート、ジカルボン酸のビス-p-ニトロフェニルエステル、芳香族ジスルホニルクロリド及び二機能性のハロゲン化アリール、例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン;p,p'-ジフルオロm,m'-ジニトロジフェニルスルホン、スルフヒドリル反応性マレイミド等を使用する従来の化学的コンジュゲーションによってなされる。ターゲティング部分がポリペプチドを含む特定の実施形態において、Casエンドヌクレアーゼ(Casエフェクター)は、ターゲティング部分との融合タンパク質として発現させることができる。このような例において、融合は、Casエンドヌクレアーゼ間で直接であってもよいし、又は介在するアミノ酸を介してもよいし、又はペプチドリンカーを介してもよい。特定の実施形態において、ペプチドリンカーは、存在する場合、酵素的に切断可能なペプチドリンカーであってもよい。
【0130】
上述したように、特定の実施形態において、ターゲティング部分(例えば、抗体、レクチン、アプタマー、アンチカリン、レクチン、DarPIN)は、リンカー(リンキング剤)を介して、Casエフェクター(例えば、casエンドヌクレアーゼ)に取り付けられる。「リンカー」又は「リンキング剤」は、本明細書で使用される場合、2つ以上の分子を合体させるのに使用される分子である。特定の実施形態において、リンカーは、典型的には、両方の分子(例えば、ターゲティング部分及びCasエンドヌクレアーゼ)と共有結合を形成することが可能である。好適なリンカーは当業者周知であり、その例としては、これらに限定されないが、直鎖又は分岐鎖の炭素リンカー、複素環式の炭素リンカー、又はペプチドリンカーが挙げられる。特定の実施形態において、リンカーは、上述したように、構成要素であるアミノ酸に、それらの側基を介して(例えば、システインへのジスルフィド結合を介して)合体していてもよいし、一方で他の実施形態において、リンカーは、末端アミノ酸のアルファ炭素アミノ及びカルボキシル基が存在する場合、それらに合体することになる。
【0131】
典型的には、リンカーは、ターゲティング部分及び/又はCasエンドヌクレアーゼ上の対応する官能基と反応性を有する官能基を含む。二機能性のリンカーは、ターゲティング部分(例えば、抗体)上の基と反応性を有する1つの官能基と、Casエンドヌクレアーゼ上の基と反応性を有する別の官能基とを有し、所望のコンジュゲートを形成するのに使用することができる。ヘテロ二機能性リンカーは、典型的には、それぞれターゲティング部分上の部位及びCasエンドヌクレアーゼ上の部位と反応する2つ以上の異なる反応性基を含む。例えば、システイン等のヘテロ二機能性架橋剤は、アミン反応性基を含んでいてもよく、チオール反応性基は、誘導体化されたペプチド上のアルデヒドと相互作用することができる。ヘテロ二機能性架橋剤に好適な反応性基の追加の組合せとしては、例えば、アミン及びスルフヒドリル反応性基;カルボニル及びスルフヒドリル反応性基;アミン及び光反応性基;スルフヒドリル及び光反応性基;カルボニル及び光反応性基;カルボキシレート及び光反応性基;並びにアルギニン及び光反応性基が挙げられる。
【0132】
このような反応及び官能基は、例示的であり、非限定的である。他の例示的な好適な反応性基としては、これらに限定されないが、チオール(-SH)、カルボキシレート(COOH)、カルボキシル(-COOH)、カルボニル、アミン(NH2)、ヒドロキシル(-OH)、アルデヒド(-CHO)、アルコール(ROH)、ケトン(R2CO)、活性水素、エステル、スルフヒドリル(SH)、ホスフェート(-PO3)、又は光反応性部分が挙げられる。アミン反応性基としては、これらに限定されないが、例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド及びグリオキサール、エポキシド及びオキシラン、炭酸、アリール化剤(arylating agent)、イミドエステル、カルボジイミド、及び無水物が挙げられる。チオール反応性基としては、これらに限定されないが、例えば、ハロアセチル及びアルキルハロゲン化物誘導体、マレイミド、アジリジン、アクリロイル誘導体、アリール化剤、並びにチオール-ジスルフィド変換試薬が挙げられる。カルボキシレート反応性基としては、これらに限定されないが、例えば、ジアゾアルカン及びジアゾアセチル化合物、例えばカルボニルジイミダゾール及びカルボジイミドが挙げられる。ヒドロキシル反応性基としては、これらに限定されないが、例えば、エポキシド及びオキシラン、カルボニルジイミダゾール、過ヨウ素酸塩との酸化、N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート又はN-ヒドロキシルスクシンイミジル(succimidyl)クロロホルメート、酵素による酸化、アルキルハロゲン、及びイソシアネートが挙げられる。アルデヒド及びケトン反応性基としては、これらに限定されないが、例えば、シッフ塩基形成又は還元アミノ化のためのヒドラジン誘導体が挙げられる。活性水素反応性基としては、これらに限定されないが、例えば、マンニッヒ縮合反応及びヨウ素化反応のためのジアゾニウム誘導体が挙げられる。光反応性基としては、これらに限定されないが、例えば、アリールアジド及びハロゲン化アリールアジド、ベンゾフェノン、ジアゾ化合物、及びジアジリン誘導体が挙げられる。
【0133】
化学的コンジュゲーション
特定の実施形態において、ターゲティング部分(例えば、抗CD3抗体、抗CD45抗体等)は、Casエフェクター(例えば、Casエンドヌクレアーゼ)に化学的にコンジュゲートされている。分子を化学的にコンジュゲートする手段は当業者周知である。
【0134】
2つの分子をコンジュゲートするための手順は、合体させる部分の化学構造に従って様々である。ポリペプチドは、典型的には、他のペプチド上、又はリンカー上の好適な官能基と反応させて分子をそこに合体させるのに利用可能な、様々な官能基;例えば、カルボン酸(COOH)又は遊離アミン(-NH2)基を含有する。
【0135】
例えば、抗体(又は他のポリペプチドターゲティング部分)のコンジュゲーションの一般的なアプローチは、利用可能なリジン又は還元されたシステインジスルフィドを使用してコンジュゲートを形成することを含み得る。天然アミノ酸としてのリジン及びシステインは、抗体中に存在することが多く、反応に容易に利用できる。例えば、シスチンの還元から生じたチオール基及びリジンの一級アミノ基は、直接活用することができる。特定の例示的な、ただし非限定的な実施形態において、リジン中の第一アミンは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルリンカーと容易に反応して、安定なアミド結合を形成し、多数の市販のリンカーは、この方法に頼っている。特定の実施形態において、リジンのアミンも、2-イミノチオラン(imiothiolane)(トラウト試薬)を介したリンカー又はペイロードへの接続のためのペンダントチオールを有するアミジンを作製するのに使用することができる。
【0136】
別の例示的な、ただし非限定的な例において、ターゲティング部分(例えば、抗体)中の天然アミノ酸としてのシステインは、ジスルフィド架橋を介して係留することができる。適切な条件下で、ジスルフィド結合は、DL-ジチオスレイトール(DTT)又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)によって選択的に還元され、反応性チオール基を提供することができる。抗体上の取り付け部位としての遊離のチオール基は、様々な化学反応、例えばマイケル付加、a-ハロカルボニルアルキル化及びジスルフィド形成を介して、小さいリンカー分子とコンジュゲートすることができる。加水分解されたスクシンイミド-チオエーテルリンカーは、一般的な有用な連結である。
【0137】
特定の実施形態において、抗体は、連結部位を提供するために、遺伝子コード化された天然にはないアミノ酸を含んでいてもよい。ターゲティング部分中の広く利用されている天然にはないアミノ酸としては、とりわけ、パラ-アセチルPhe、パラ-アジドPhe、プロピニル-Tyr等を挙げることができる。
【0138】
特定の実施形態において、リンカーは、切断可能なリンカーを含む。切断可能なリンカーとしては、化学的に切断可能なリンカーと、酵素的に切断可能なリンカーの両方が挙げられる。
【0139】
多数の異なる化学的に切断可能なリンカーが当業者公知である(例えば、米国特許第4,618,492号;4,542,225号、及び4,625,014号を参照)。例示的な化学的に切断可能なリンカーとしては、これらに限定されないが、酸不安定性のリンカー、ジスルフィドリンカー等が挙げられる。酸不安定性のリンカーは、血液中で遭遇するpHレベルで安定であるが、リソソーム中の低いpH環境に遭遇すると不安定になり、分解するように設計される。酸感受性リンカーとしては、これらに限定されないが、ヒドラゾン、アセタール、cis-アコニット酸様アミド、及びシリルエーテルが挙げられる(例えば、Perezら(2013) Drug Discov. Today、1~13を参照)。ヒドラゾンは、容易に合成され、pH7で183時間及びpH5で4.4時間の血漿内半減期を有すことから、それらが、リソソーム中で見出される条件のような酸性条件下で選択的に切断可能であることを示す(例えば、Doroninaら 92013) Nat. Biotechnol. 21(7): 778~784を参照)。
【0140】
ジスルフィド架橋は、細胞の還元性の環境を利用する切断可能なリンカーである(例えば、Saitoら(2013) Adv. Drug Deliv. Rev. 55(2): 199~215を参照)。内在化及び分解の後、ジスルフィド架橋は、リソソームに薬物を放出することができる。
【0141】
酵素的に切断可能なリンカーは、酵素(例えば、プロテアーゼ)によって切断されるように選択される。プロテアーゼで切断可能なリンカーは、典型的には、血液/血漿中で安定であるが、リソソーム酵素によって切断されると標的細胞中のリソソーム内部では遊離の薬物を迅速に放出するように設計される。様々な実施形態において、それらは、リソソーム内部で高いレベルのプロテアーゼ活性を利用することができる。最も一般的な酵素的切断配列は、ジペプチドであるバリン-シトルリンと、自壊性(self-immolative)リンカーであるp-アミノベンジルアルコール(PAB)との組合せである。アミド連結されたPABの切断は、二酸化炭素の1,6-消去と、親アミンの形態での遊離の薬物の付随する放出を引き起こす(例えば、Burkeら(2009) Bioconjug. Chem. 20(6): 1242~1250を参照)。
【0142】
Debowchik及び共同研究者は、ジペプチドリンカーのライブラリーをスクリーニングして、酵素加水分解によるドキソルビシン放出の速度を測定した(例えば、Dubowchikら(2002) Bioconjug. Chem. 13(4): 855~869; Dubowchikら(2002) Bioorg. Med. Chem. Lett. 12(11): 1529~1532を参照)。彼らは、Phe-Lysが8分の半減期で最も迅速に切断され、次に、それに極めて近い程度でVal-Lysが9分の半減期で切断されたことを見出した。全く対照的に、Val-Citは、240分の半減期を示した。彼らはまた、PAB基が除去されると、おそらく酵素結合との立体的な干渉のために切断速度が落ちることも見出した。
【0143】
別の研究で、ジペプチドリンカーであるPhe-Lys及びVal-Cit並びに類似のヒドラゾンリンカーによって連結されたオーリスタチン誘導体MMAEの効力を比較した。Val-Citリンカーは、ヒト血漿中においてヒドラゾンリンカーより100倍より高く安定であることを証明した。最も重要なことに、Phe-Lysリンカーは、ヒト血漿中において実質的にVal-Citほど安定ではなかったことが、その現在の人気の説明となっている(例えば、Doroninaら(2003) Nat. Biotechnol. 21(7): 778~784を参照)。
【0144】
非ペプチドの酵素的に切断可能なリンカーも当業者公知である。グルクロニドリンカーは、リソソーム酵素ベータグルクロニダーゼによって切断される親水性糖基を取り込んでいる。フェノールのバックボーンから糖が切断されると、PAB基の自壊によりコンジュゲートした部分が放出される(例えば、Jeffreyら(3006) Bioconjug. Chem. 17(3): 831~840を参照)。
【0145】
特定の実施形態において、Casエフェクター(例えば、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む複合体)に抗体を合体するのに使用されるリンカーは、抗体(例えば、抗体のFc領域)に結合する(例えば、非共有結合によって結合する)タンパク質を含む。哺乳類のイムノグロビン(immunoglobin)と結合する多数の細菌タンパク質が公知であり、その例としては、これらに限定されないが、プロテインA、G、L、Z、及びそれらの組換え(融合タンパク質)誘導体が挙げられる(例えば、Table 1(表1); Rodrigoら(2015) Antibodies、4: 259~277; Konradら(2011) Bioconjug. Chem. 22: 2395~2403; Kihlbergら(1996) Eur. J. Biochem. 240: 556~563; Nilssonら(1987) Protein Eng. Des. Sel. 1: 107~113; Ghitescuら(1991) J. Histochem. Cytochem. 39: 1057~1065; Akerstrom及びBjorck (1986) J. Biol. Chem. 261: 10240~10247; Svenssonら(1998) Eur. J. Biochem. 258: 890~896を参照)。
【0146】
【0147】
抗体の定常領域に結合し、Casエフェクターに抗体を連結させるのに使用できる多数の環状ペプチドが公知である。このようなペプチドの例としては、これらに限定されないが、PAM(Fassinaら(2006) J. Mol. Recognit. 9: 564~569)、D-PAM(Verdolivaら(2002) J. Immunol. Meth. 271: 77~88)、D-PAM-θ(Dinonら(2011) J. Mol. Recognit. 24: 1087~1094)、TWKTSRISIF(配列番号4)及びFGRLVSSIRY(配列番号5、Krookら(1998) J. Immunol. Meth. 221: 151~157)、Fc-III(DeLanoら(2000) Science、287: 1279~1283)、EPIHRSTLTALL(配列番号6、Ehrlichら(2001) J. Biochem. Biophys. Meth. 49: 443~454)、HWRGWV(配列番号7、Yangら(2006) J. Peptide Res. 66: 110~137)、HYFKFD(配列番号8、Yangら(2009) J. Chromatogr. A、1216: 910~918)、HFRRHL(配列番号9、Menegattiら(2016) J. Chromatogr. A、1445: 93~104)、NKFRGKYK(配列番号10)及びNARKFYKG(配列番号11、Sugitaら(2013) Biochem. Eng. J. 79: 33~40)、KHRFNKD(配列番号12、Yoo及びChoi(2015) BioChip J. 10: 88~94)等(例えば、Choeら(2016) Materials、9: 994を参照)が挙げられる。
【0148】
特定の実施形態において、抗体結合タンパク質(ペプチド)は、リンカーによってCasエンドヌクレアーゼに取り付けられる(例えば、
図4を参照)。特定の実施形態において、Casエンドヌクレアーゼに抗体結合タンパク質を取り付けるリンカーは、本明細書に記載される切断可能なリンカー又は切断不可能なリンカーを含む。
【0149】
特定の実施形態において、Casエフェクターは、高いpHで抗体(例えば、抗体のFc領域)に結合するが、それより低いpHで抗体を放出するペプチドを含むリンカーによって、ターゲティング部分に連結される。特定の実施形態において、ペプチドは、FcB6.1ペプチドを含む(例えば、Strauchら(2014) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、111(2): 675~680を参照。
【0150】
ペプチド又はタンパク質に様々な分子を取り付けるための多くの手順及びリンカー分子が公知である(例えば、欧州特許出願第188,256号;米国特許第4,671,958号、4,659,839号、4,414,148号、4,699,784号;4,680,338号;4,569,789号;及び4,589,071号;並びにBorlinghausら(1987) Cancer Res. 47: 4071~4075を参照)。化学的コンジュゲーションに好適な例示的な非ペプチドリンカーは、Table 2(表2)に示される。
【0151】
融合タンパク質
ターゲティング部分がポリペプチドを含む(例えば、抗体又は他の結合タンパク質である)特定の実施形態において、ペプチドは、Casエンドヌクレアーゼに直接融合していてもよいし、アミノ酸を介して融合していてもよいし、又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。特定の実施形態において、Casエンドヌクレアーゼに取り付けられたターゲティング部分は、化学的ペプチド合成方法を直接使用して簡単に合成される。
【0152】
特定の実施形態において、Casエンドヌクレアーゼに取り付けられたターゲティング部分は、融合タンパク質として組換え発現する(例えば、直接融合させる、アミノ酸を介して合体させる、又はリンカーを介して合体させる)ことができる。一般的に、これは、融合タンパク質をコードするDNA配列を作り出すこと、発現カセット中に、特定のプロモーターの制御下にDNAを入れること、宿主中でタンパク質を発現させること、発現されたタンパク質を単離すること、及び必要があればタンパク質を復元することを含む。
【0153】
融合タンパク質をコードするDNAは、例えば、適切な配列のクローニング及び制限、又はNarangら(1979) Meth. Enzymol. 68: 90~99のホスホトリエステル方法;Brownら(1979) Meth. Enzymol. 68: 109~151のホスホジエステル方法;Beaucageら(1981) Tetra. Lett.、22: 1859~1862のジエチルホスホラミダイト方法;及び米国特許第4,458,066号の固体支持体方法等の方法による直接の化学合成を含むあらゆる好適な方法によって調製することができる。
【0154】
化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生産する。これは、相補配列とのハイブリダイゼーションによって、又は鋳型として一本鎖を使用するDNAポリメラーゼでの重合によって二本鎖DNAに変換することができる。当業者は、DNAの化学合成は約100塩基の配列に限定されるが、より短い配列のライゲーションによって、それより長い配列を得ることができることを認識していると予想される。
【0155】
代替として、部分配列をクローニングし、適切な制限酵素を使用して適切な部分配列を切断してもよい。次いでフラグメントをライゲートして、所望のDNA配列を生産することができる。
【0156】
特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質をコードするDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等のDNA増幅方法を使用してクローニングすることができる。したがって、例えば、治療的部分「D」は、NdeIの制限部位を含有するセンスプライマー及びHindIIIの制限部位を含有するアンチセンスプライマーを使用してPCRで増幅することができる。これは、ターゲティング部分をコードし、末端制限部位を有する核酸を生産する。同様に、相補的制限部位を有するCasエンドヌクレアーゼ及び/又はCasP-L(ここでLは、アミノ酸又はペプチドリンカーである)を提供することができる。配列のライゲーション及びベクターへの挿入は、融合タンパク質をコードするベクターを生産する。
【0157】
上述したように、ターゲティング部分及びCasエンドヌクレアーゼは直接一つに合体させてもよいが、当業者は、それらは1つ又は複数のアミノ酸からなるリンカーによって分離できることを理解しているものと予想される。一般的に、スペーサーは、タンパク質を合体させるか、又はそれらの間の数個の最小の距離又は他の空間的な関係を保つこと以外の特異的な生物学的活性を有さないと予想される。しかしながら、スペーサーの構成要素であるアミノ酸は、分子のいくつかの特性、例えばフォールディング、正味の電荷、又は疎水性に影響を与えるように選択することができる。特定の実施形態において、リンカーは、酵素的切断部位を含んでいてもよい。
【0158】
融合タンパク質をコードする核酸配列は、大腸菌(E.coli)、他の細菌宿主、酵母、並びに様々な高等真核細胞、例えばCOS、CHO及びHeLa細胞株、並びに骨髄腫細胞株等の様々な宿主細胞で発現させることができる。組換えタンパク質の遺伝子は、各宿主にとって適切な発現制御配列に作動可能に連結されると予想される。大腸菌の場合、これは、プロモーター、例えばT7、trp、又はラムダプロモーター、リボソーム結合部位、及び好ましくは転写終結シグナルを含む。真核細胞の場合、制御配列は、プロモーター、及び好ましくは免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルス等に由来するエンハンサー、及びポリアデニル化配列を含むと予想され、スプライスドナー及びアクセプター配列を含む場合もある。
【0159】
プラスミドは、大腸菌の場合は塩化カルシウム形質転換、及び哺乳類細胞の場合はリン酸カルシウム処理又はエレクトロポレーション等の周知の方法によって、選ばれた宿主細胞に移入させることができる。プラスミドで形質転換された細胞は、amp、gpt、neo及びhyg遺伝子等のプラスミドに含有される遺伝子によって付与された抗生物質に対する耐性によって選択することができる。
【0160】
組換え融合タンパク質は、発現されたら、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等の当業界の標準的手順に従って精製することができる(概して、R. Scopes (1982) Protein Purification、Springer-Verlag、N.Y.; Deutscher (1990) Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification.、Academic Press, Inc. N.Y.を参照)。少なくとも約90から95%の均一性を有する実質的に純粋な組成物が好ましく、医薬品としての使用のためには98から99%又はそれより高い均一性が最も好ましい。次いで、要求に応じて部分的に、又は均一になるまで精製したら、ポリペプチドは、治療的に使用することができる。
【0161】
当業者は、化学合成、生物学的発現、又は精製の後、融合タンパク質は、構成要素であるポリペプチドの天然のコンフォメーションと実質的に異なるコンフォメーションを有する可能性があることを認識していると予想される。この場合、ポリペプチドを変性及び還元し、次いでポリペプチドを好ましいコンフォメーションに再フォールディングさせることが必要な場合がある。タンパク質を還元及び変性させて再フォールディングを誘導する方法は、当業者周知である(Debinskiら(1993) J. Biol. Chem.、268: 14065~14070; Kreitman及びPastan (1993) Bioconjug. Chem.、4: 581~585;及びBuchnerら(1992) Anal. Biochem.、205: 263~270を参照)。
【0162】
当業者は、融合タンパク質の生物学的活性を減らすことなくそれらに改変をなすことができることを認識していると予想される。ある種の改変を行うことで、クローニング、発現、又はターゲティング分子の融合タンパク質への取込みを容易にすることができる。このような改変は、当業者周知であり、そのようなものとしては、例えば、開始部位を提供するためのアミノ末端に付加されたメチオニン、又は都合よく配置された制限部位又は終止コドンを作り出すためのいずれかの末端に配置された追加のアミノ酸が挙げられる。
【0163】
上記で示したように、様々な実施形態において、アミノ酸、又はペプチドリンカーは、ターゲティング部分をCasエンドヌクレアーゼに合体させるのに使用される。様々な実施形態において、ペプチドリンカーは、相対的に短く、典型的には、約20アミノ酸以下、又は約15アミノ酸以下、又は約10アミノ酸以下、又は約8アミノ酸以下、又は約5アミノ酸以下、又は約3アミノ酸以下であるか、又は単一のアミノ酸である。好適な例示的なリンカーとしては、これらに限定されないが、Table 2(表2)に示されるアミノ酸又はペプチドリンカーが挙げられる。
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
CRISPR/Casシステム
近年、真核生物RNAi経路と平行して起こるという仮説が立てられている古細菌及び多くの細菌におけるRNA媒介ゲノム防御経路の存在について興味深い証拠が出現している(総論については、Godde及びBickerton (2006) J. Mol. Evol. 62: 718~729; Lillestolら(2006) Archaea 2: 59~72; Makarovaら(2006) Biol. Direct 1:7.; Sorekら(2008) Nat. Rev. Microbiol. 6: 181~186を参照)。この経路は、CRISPR-Casシステム又は原核生物RNAi(pRNAi)として知られ、2つの進化的に、多くの場合は物理的に連結された遺伝子座:システムのRNA成分をコードするCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats:クラスター化された等間隔にスペーサーが入った短鎖反復回文配列)遺伝子座と、タンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座とに起因すると考えられる(例えば、Jansenら(2002) Mol. Microbiol. 43: 1565~1575; Makarovaら、(2002) Nucl. Acids Res. 30: 482~496; Makarovaら(2006) Biol. Direct 1:7; Haftら(2005) PLoS Comput. Biol. 1: e60を参照)。微生物宿主中のCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子の組合せ、加えて、CRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラミングすることが可能な非コードRNAエレメントを含有する。個々のCasタンパク質は、真核生物RNAi機構のタンパク質成分と有意な配列類似性を共有しないが、類似の予測される機能(例えば、RNA結合、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ等)を有する(例えば、Makarovaら(2006) Biol. Direct 1:7を参照)。CRISPR関連(cas)遺伝子は、CRISPRリピート-スペーサーアレイと結合していることが多い。40種より多くの異なるCasタンパク質ファミリーが説明されている。これらのタンパク質ファミリーのなかでも、Cas1が、様々なCRISPR/Casシステム間で遍在していると考えられる。cas遺伝子とリピート構造との特定の組合せが、8つのCRISPRサブタイプ(Ecoli、Ypest、Nmeni、Dvulg、Tneap、Hmari、Apern、及びMtube)を定義するのに使用されており、そのうちいくつかは、リピートに結合する未知のタンパク質(repeat-associated mysterious protein:RAMP)をコードする追加の遺伝子モジュールと結合している。1つより多くのCRISPRサブタイプが、単一のゲノム中に存在する可能性がある。CRISPR/Casサブタイプの散在性の分布は、このシステムが微生物進化の間に遺伝子水平伝播に供されることを示唆する。
【0170】
II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)
天然II型CRISPR/Casシステムにおいて、Cas9は、一緒に二本鎖DNA破断(DSB)を生成するか、又は個々に一本鎖DNA破断(SSB)を生成できるCas9中の2つのヌクレアーゼ活性部位を含むメカニズムによって、標的の認識及び切断のためのcrRNA及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)を有する二重ガイドRNAを使用するRNAガイドエンドヌクレアーゼとして機能する。II型CRISPRエンドヌクレアーゼCas9及び操作された二重ガイドRNA(dgRNA)又は単一ガイドRNA(sgRNA)は、所望のDNA配列にターゲティングすることができるリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成する。二重-RNA複合体又はキメラ単一ガイドRNAによってガイドされると、Cas9は、二本鎖DNA(dsDNA)標的核酸内に部位特異的なDSB又はSSBを生成し、これらは非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え(HDR)のいずれかによって修復される。
【0171】
上述したように、様々な実施形態において、II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼに取り付けられた抗体(例えば、内在化抗体)を含むコンストラクトが提供される。II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼの1つのタイプである。一部の場合において、II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質である。Cas9タンパク質は、Cas9ガイドRNAとの複合体を形成する。ガイドRNAは、標的核酸の配列(標的部位)(本明細書の他所で記載されるような)に相補的なヌクレオチド配列(ガイド配列)を有することによってCas9-ガイドRNA複合体への標的特異性を提供する。複合体のCas9タンパク質は、部位-特異的な活性を提供する。言い換えれば、Cas9タンパク質は、標的核酸配列(例えば、染色体の配列、又は染色体外の配列、例えば、エピソームの配列、ミニサークルの配列、ミトコンドリアの配列、葉緑体の配列等)内の標的部位(例えば、標的部位で安定化された)がCas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントと結合することによって、そこにガイドされる。
【0172】
II型CRISPRは、初期にS.ピオゲネスで説明され、最もよく特徴付けられたシステムの1つであり、4つの逐次工程で標的とするDNA二本鎖破断を実行する。第1に、CRISPR遺伝子座から、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイ及びtracrRNAが転写される。第2に、tracrRNAがプレcrRNAのリピート領域にハイブリダイズし、プレcrRNAの、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプロセシングを媒介し、この場合プロセシングは、Cas9タンパク質の存在下で二本鎖特異的なRNアーゼIIIによって起こる。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、crRNA上のスペーサーと、標的認識のための追加の必要条件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間でワトソン-クリック塩基対形成を介して、Cas9を標的DNAに方向付ける。加えて、tracrRNAは、crRNAとその3'末端で塩基対を形成し、この結合がCas9活性を始動させるため、tracrRNAも存在していなければならない。最後に、Cas9が標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内の二本鎖破断を作り出す。CRISPR/Casシステムの活性は、典型的には、(i)「適合」と呼ばれるプロセスで、外来のDNA配列をCRISPRアレイに挿入して、将来的な攻撃を防止すること;(ii)関連タンパク質の発現、加えてアレイの発現及びプロセシング、それに続いて(iii)外来の核酸でのRNA媒介干渉によって起こる。したがって、細菌細胞において、いわゆる「Cas」タンパク質のうちいくつかは、CRISPR/Casシステムの天然の機能に関与する。
【0173】
Cas9タンパク質は、標的核酸と結合する、及び/若しくはそれを改変することができ(例えば、切断する、ニックを入れる、メチル化する、脱メチル化する等)、並びに/又は標的核酸に関連するポリペプチド(例えば、Cas9タンパク質が活性を有する融合パートナーを含む場合)と結合する、及び/若しくはそれを改変することができる(例えば、ヒストンテールのメチル化又はアセチル化)。一部の場合において、Cas9タンパク質は、天然に存在するタンパク質である(例えば、細菌及び/又は古細菌の細胞中に天然に存在する)。他の場合、Cas9タンパク質は、天然に存在するポリペプチドではない(例えば、Cas9タンパク質は、バリアントCas9タンパク質、キメラタンパク質等である)。
【0174】
II型CRISPRシステムが、多くの様々な細菌で見出されている。Fonfaraら((2013) Nuc Acid Res 42(4):2377~2590)による利用可能なゲノムでのBLAST検索から、細菌のうち347種においてCas9オーソログが見出された。加えて、このグループは、S.ピオゲネス、S.ミュータンス(S. mutans)、S. サーモフィラス(S. therophilus)、C.ジェジュニ(C. jejuni)、髄膜炎菌、P.ムルトシダ(P. multocida)及びF.ノビシダ(F. novicida)由来のCas9オーソログを使用する、インビトロにおけるDNA標的のCRISPR/Cas切断を実証した。したがって、用語「Cas9」は、DNA結合ドメイン及び2つのヌクレアーゼドメインを含むRNAガイドDNAヌクレアーゼを指し、この場合、Cas9をコードする遺伝子は、いずれの好適な細菌由来であってもよい。
【0175】
典型的なCas9タンパク質は、少なくとも2つのヌクレアーゼドメインを有し、1つのヌクレアーゼドメインはHNHエンドヌクレアーゼに類似し、他方はRuvエンドヌクレアーゼドメインに似ている。HNH型ドメインは、crRNAに相補的なDNA鎖を切断することに関与すると考えられ、一方でRuvドメインは、非相補鎖を切断する。特定の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼドメインの一方のみが機能的であり、Casニッカーゼが生じるように操作することができる(例えば、Jinekら(2012) Science 337:816を参照)。ニッカーゼは、酵素が機能的ではなくなるように、酵素の触媒ドメイン中のアミノ酸の特異的な変異によって、又はドメインの一部又は全部の短縮化によって生成することができる。Cas9は2つのヌクレアーゼドメインを含むため、このアプローチは、いずれかのドメインで採用することができる。二本鎖破断は、標的DNAにおいて、2つのこのようなCas9ニッカーゼの使用によって達成することができる。ニッカーゼはそれぞれDNAの一つの鎖を切断し、2つ使用すれば二本鎖破断を生じることになる。
【0176】
CRISPR遺伝子座の一次産物は、インベーダー標的配列を含有する短いRNAとみられ、これは、それらの経路中における仮説上の役割に基づきガイドRNA又は原核生物サイレンシングRNA(psiRNA)と呼ばれる(例えば、Makarovaら(2006) Biol. Direct 1:7; Haleら(2008) RNA、14: 2572~2579を参照)。RNA分析は、CRISPR遺伝子座転写物がリピート配列内で切断されて、個々のインベーダー標的配列及びフランキングリピートフラグメントを含有する約60から70ntのRNA中間体を放出することを示す(例えば、Tangら(2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、99: 7536~7541; Tangら(2005) Mol. Microbiol. 55: 469~481; Lillestolら(2006) Archaea 2: 59~72; Brounsら(2008) Science 321: 960~964; Haleら(2008) RNA、14: 2572~2579を参照)。古細菌パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)において、これらの中間体RNAは更に、豊富な安定な約35から45ntの成熟psiRNAにプロセシングされる(Haleら 2008. RNA、14: 2572~2579)。
【0177】
crRNA-tracrRNA複合体の必要条件は、通常crRNAとtracrRNAとのアニーリングによって形成されるヘアピンを含む操作された「単一ガイドRNA」(sgRNA)の使用によって回避することができる(Jinekら(2012) Science 337:816; Congら(2013) Sciencexpress/10.1126/science.1231143を参照)。S.ピオゲネス(S. pyrogenes)において、操作されたtracrRNA:crRNA融合体、又はsgRNAは、Cas9をガイドして、Cas結合RNAと標的DNAとの間に二本鎖RNA:DNAヘテロ二量体が形成されると標的DNAを切断する。このCas9タンパク質及びPAM配列を含有する操作されたsgRNAを含むシステムは、RNAでガイドされるゲノム編集に使用されおり、ZFNやTALENに類似する編集効率でのインビボでのゼブラフィッシュ胎芽のゲノム編集に有用であった(Hwangら(2013) Nat. Biotechnol.、31(3):227を参照)。
【0178】
したがって、特定の実施形態において、本明細書に記載されるコンストラクトで使用されるCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ複合体(例えば、内在化抗体に取り付けられた)は、Casタンパク質と、Casタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに方向付け、それとハイブリダイズすることが可能な少なくとも1から2つのリボ核酸(例えば、gRNA)とを含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されるコンストラクトで使用されるCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、Casタンパク質と、Casタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに方向付け、それとハイブリダイズすることが可能な1つのリボ核酸(例えば、gRNA)とを含む。
【0179】
「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用され、ペプチド結合によって合体した一連のアミノ酸残基(すなわち、アミノ酸のポリマー)を指し、改変されたアミノ酸(例えば、リン酸化された、糖化された、グリコシル化(glycosolated)された等)及びアミノ酸類似体を含む。例示的なポリペプチド又はタンパク質としては、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、相同体、パラログ、フラグメント、並びに上記のものの他の均等物、バリアント、及び類似体が挙げられる。
【0180】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、コアCasタンパク質を含む。例示的なCasコアタンパク質としては、これらに限定されないが、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8及びCas9が挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、大腸菌サブタイプのCasタンパク質(CASS2としても公知)を含む。大腸菌サブタイプの例示的なCasタンパク質としては、これらに限定されないが、Cse1、Cse2、Cse3、Cse4、及びCas5eが挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、YpestサブタイプのCasタンパク質(CASS3としても公知)を含む。Ypestサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、これらに限定されないが、Csy1、Csy2、Csy3、及びCsy4が挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、NmeniサブタイプのCasタンパク質(CASS4としても公知)を含む。Nmeniサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、これらに限定されないが、Csn1及びCsn2が挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、DvulgサブタイプのCasタンパク質(CASS1としても公知)を含む。Dvulgサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Csd1、Csd2、及びCas5dが挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、TneapサブタイプのCasタンパク質(CASS7としても公知)を含む。Tneapサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、これらに限定されないが、Cst1、Cst2、Cas5tが挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、HmariサブタイプのCasタンパク質を含む。Hmariサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、これらに限定されないが、Csh1、Csh2、及びCas5hが挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、ApernサブタイプのCasタンパク質(CASS5としても公知)を含む。Apernサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、これらに限定されないが、Csa1、Csa2、Csa3、Csa4、Csa5、及びCas5aが挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、MtubeサブタイプのCasタンパク質(CASS6としても公知)を含む。Mtubeサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、これらに限定されないが、Csm1、Csm2、Csm3、Csm4、及びCsm5が挙げられる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、RAMPモジュールCasタンパク質を含む。例示的なRAMPモジュールCasタンパク質としては、これらに限定されないが、Cmr1、Cmr2、Cmr3、Cmr4、Cmr5、及びCmr6が挙げられる。
【0181】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9タンパク質(spCas9)又はその機能的部分である(例えば、
図1、UniProtKB-Q99ZW2(CAS9_STRP1)を参照)。一部の実施形態において、Casタンパク質は、スタフィロコッカス・アウレウスCas9タンパク質(saCas9)又はその機能的部分である。一部の実施形態において、Casタンパク質は、ストレプトコッカス・サーモフィラスCas9タンパク質(stCas9)又はその機能的部分である。一部の実施形態において、Casタンパク質は、髄膜炎菌Cas9タンパク質(nmCas9)又はその機能的部分である。一部の実施形態において、Casタンパク質は、トレポネーマ・デンティコラCas9タンパク質(tdCas9)又はその機能的部分である。一部の実施形態において、Casタンパク質は、他のあらゆる細菌種由来のCas9タンパク質又はその機能的部分である。
【0182】
V型及びVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ
特定の実施形態において、本明細書において予期される組成物は、これらに限定されないが、V型又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、ゲノム編集エンドヌクレアーゼが、V型又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼである)(例えば、Cpf1、C2c1、C2c2、C2c3)に取り付けられた抗体(例えば、内在化抗体)を含む。V型及びVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼの1つのタイプである。V型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼの例としては、これらに限定されないが、Cpf1、C2c1、及びC2c3が挙げられる。VI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼの例は、C2c2である。一部の場合において、対象のゲノムにターゲティングする組成物は、V型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpf1、C2c1、C2c3)を含む。一部の場合において、V型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、Cpf1タンパク質である。一部の場合において、対象のゲノムにターゲティングする組成物は、VI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、C2c2)を含む。
【0183】
II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼのように、V型及びVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、対応するガイドRNAと複合体を形成する。ガイドRNAは、標的核酸の配列(標的部位)(本明細書の他所で記載されるような)に相補的なヌクレオチド配列(ガイド配列)を有することによってエンドヌクレアーゼ-ガイドRNA RNP複合体への標的特異性を提供する。複合体のエンドヌクレアーゼは、部位特異的な活性を提供する。言い換えれば、エンドヌクレアーゼは、ガイドRNAのタンパク質結合セグメントとのその結合によって、標的核酸配列(例えば、染色体の配列又は染色体外の配列、例えば、エピソームの配列、ミニサークルの配列、ミトコンドリアの配列、葉緑体の配列等)内の標的部位(例えば、標的部位で安定化された)にガイドされる。
【0184】
V型及びVI型CRISPR/Casタンパク質(例えば、cpf1、C2c1、C2c2、及びC2c3ガイドRNA)に関する例及び指針は、当業界において見出すことができ、例えば、Zetscheら(2015) Cell、163(3):759~771; Makarovaら(2015) Nat. Rev. Microbiol. 13(11): 722~736; Shmakovら(2015) Mol. Cell、60(3):385~397等を参照されたい。
【0185】
一部の場合において、V型又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpf1、C2c1、C2c2、C2c3)は、酵素的に活性であり、例えば、V型又はVI型CRISPR/Casポリペプチドは、ガイドRNAに結合すると、標的核酸を切断する。一部の場合において、V型又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpf1、C2c1、C2c2、C2c3)は、対応する野生型、V型又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpf1、C2c1、C2c2、C2c3)と比べて低減した酵素活性を示し、DNA結合活性を保持する。
【0186】
一部の場合、V型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、Cpf1タンパク質又はその機能的部分である(例えば、
図2、UniProtKB-A0Q7Q2(CPF1_FRATN)を参照)。Cpf1タンパク質は、V型CRISPRシステムのメンバーであり、約1300アミノ酸を含むポリペプチドである。Cpf1は、RuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有する。Cas9とは異なり、Cpf1は、単一のリボヌクレアーゼドメインを使用して互い違いのパターンで標的DNAを切断する。互い違いのDNA二本鎖破断は、4又は5ntの5'オーバーハングをもたらす。
【0187】
CRISPR-Cpf1システムは、フランキセラ属種で同定され、これは、ヒト細胞においてロバストなDNA干渉を媒介するクラス2のCRISPR-Casシステムである。Cpf1及びCas9は、機能的に保存されているが、それらのガイドRNAや基質特異性等の多くの観点で異なる(Fagerlundら(2015) Genom. Bio. 16: 251を参照)。Cas9とCpf1タンパク質との主要な差は、Cpf1はtracrRNAを利用せず、したがってcrRNAのみを必要とすることである。FnCpf1 crRNAは、42~44ヌクレオチドの長さ(19ヌクレオチドのリピート及び23~25ヌクレオチドのスペーサー)であり、二次構造を保持する配列の変化を許容する単一のステムループを含有する。加えて、Cpf1 crRNAは、Cas9にとって必要な約100ヌクレオチドの操作されたsgRNAより有意に短く、FnCpf1の場合のPAMの必要条件は、置き換えられた鎖上で5'-TTN-3'及び5'-CTA-3'であることである。Cas9とCpf1の両方が標的DNA中で二本鎖破断を作製するが、Cas9は、そのRuvC-及びHNH様ドメインを使用して、ガイドRNAのシード配列内に平滑末端化された断面を作製し、それに対してCpf1は、RuvC様ドメインを使用して、シードの外側に互い違いの断面を生じる。Cpf1は重要なシード領域から離れて互い違いの断面を作り出すため、NHEJは標的部位を破壊することはなく、それゆえに、所望のHDR組換え事象が起こるまで、Cpf1は確実に同じ部位を切断し続けることができる。したがって、本明細書に記載される方法及び組成物において、用語「Cas」は、Cas9及びCfp1タンパク質の両方を含むことが理解される。したがって、「CRISPR/Casシステム」は、本明細書で使用される場合、ヌクレアーゼ及び/又は転写因子システムの両方を含むCRISPR/Cas及び/又はCRISPR/Cfp1システムの両方を指す。
【0188】
したがって、本明細書に記載されるコンストラクト(例えば、Casタンパク質に取り付けられた抗体)の特定の実施形態において、Casタンパク質は、あらゆる細菌種由来のCpf1又はその機能的部分である。一部の態様において、Cpf1は、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)U112タンパク質又はその機能的部分である。一部の態様において、Cpf1は、アシダミノコッカス属種のBV3L6タンパク質又はその機能的部分である。一部の態様において、Cpf1は、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)細菌ND2006タンパク質又はその機能的部分である。
【0189】
特定の実施形態において、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の、又は改変されたCasタンパク質の、「機能的部分」又は「機能的な誘導体」であり得る。天然配列のポリペプチドの「機能的な誘導体」は、天然配列のポリペプチドに共通する定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能的な誘導体」としては、これらに限定されないが、対応する天然配列のポリペプチドに共通する生物学的活性(例えば、エンドヌクレアーゼ活性)を有するという条件で、天然配列のフラグメント及び天然配列ポリペプチドの誘導体、並びにそのフラグメントが挙げられる。「機能的部分」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))と複合体を形成して、標的ポリヌクレオチド配列を切断するその能力を保持するCasポリペプチドの部分を指す。一部の実施形態において、機能的部分は、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択される、作動可能に連結したCas9タンパク質の機能性ドメインの組合せを含む。一部の実施形態において、機能的部分は、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択される、作動可能に連結したCpf1タンパク質の機能性ドメインの組合せを含む。一部の実施形態において、機能性ドメインは、複合体を形成する。一部の実施形態において、Cas9タンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。一部の実施形態において、Cas9タンパク質の機能的部分は、HNHヌクレアーゼドメインの機能的部分を含む。一部の実施形態において、Cpf1タンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。
【0190】
特定の実施形態において、本明細書において予期される生物学的活性は、DNA基質をフラグメントに加水分解する機能的な誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドの両方のアミノ酸配列バリアント、共有結合の改変、及びそれらの融合体を含む。一部の態様において、機能的な誘導体は、天然に存在するCasタンパク質の単一の生物学的な特性を含んでいてもよい。他の態様において、機能的な誘導体は、天然に存在するCasタンパク質の生物学的特性の一部を含んでいてもよい。
【0191】
前述したことを考慮して、用語「Casポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、全長Casポリペプチド、Casポリペプチドの酵素的に活性なフラグメント、及びCasポリペプチドの酵素的に活性な誘導体、又はそれらのフラグメントを含む。Casポリペプチドの好適な誘導体又はそのフラグメントとしては、これらに限定されないが、Casタンパク質の変異体、融合体、共有結合の改変、又はそれらのフラグメントが挙げられる。Casタンパク質は、Casタンパク質又はそのフラグメント、加えてCasタンパク質の誘導体又はそのフラグメントを含み、これらは、細胞から得てもよいし、又は化学的に合成してもよいし、組換え発現してもよいし、若しくはこれらの手順の組合せによって得てもよい。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞であってもよいし、又はCasタンパク質を天然に産生し、より高い発現レベルで内因性Casタンパク質を産生するように、又は内因性Casと同一か又は異なるCasをコードする外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であってもよい。一部の場合において、細胞は、Casタンパク質を天然に産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作されている。
【0192】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、1つ又は複数のアミノ酸置換又は改変を含む。一部の実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換を含む。一部の場合において、置換及び/又は改変は、タンパク質分解を防止若しくは低減することができ、及び/又は細胞中のポリペプチドの半減期を延長することができる。一部の実施形態において、Casタンパク質は、ペプチド結合の置き換え(例えば、尿素、チオ尿素、カルバメート、スルホニル尿素等)を含んでいてもよい。一部の実施形態において、Casタンパク質は、天然に存在するアミノ酸を含んでいてもよい。一部の実施形態において、Casタンパク質は、代替のアミノ酸(例えば、D-アミノ酸、ベータ-アミノ酸、ホモシステイン、ホスホセリン等)を含んでいてもよい。一部の実施形態において、Casタンパク質は、ある部分を含むような改変(例えば、ペグ化、グリコシル化、脂質化、アセチル化、末端のキャッピング等)を含んでいてもよい。
【0193】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるコンストラクトで使用されるCasタンパク質は、官能性を変更するように変異されていてもよい。例示的な選択方法、例えばファージディスプレイ及び2ハイブリッドシステム等は、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,410,248号;6,140,466号;6,200,759号;及び6,242,568号;加えてWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197及びGB2,338,237に開示されている。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の強化は、例えばWO02/077227に記載されている。
【0194】
一部の実施形態において、例えば、Cas9タンパク質は、HNHドメインで変異させることにより、crRNAに相補的なDNA鎖の切断をできなくなっている。他の例示的な、ただし非限定的な実施形態において、Cas9は、Rvuドメインで変異させることにより、非相補DNA鎖の切断をできなくなっている。これらの変異により、Cas9ニッカーゼが生じる可能性がある。一部の実施形態において、2つのCasニッカーゼを2つの別個のcrRNAと共に使用してDNAをターゲティングすることにより、標的DNA中に、特定された距離で離れて2つのニックが生じる。他の例示的な、ただし非限定的な実施形態において、Cas9タンパク質が標的DNAの切断をできなくなるように、HNH及びRvuエンドヌクレアーゼドメインの両方が変更される。
【0195】
特定の実施形態において、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)は、短縮化されたCasタンパク質を含む。1つの例示的な、ただし非限定的な実施形態において、Cas9は、crRNA又はsgRNA及び標的DNAとの相互作用に関与するドメインのみを含む。
【0196】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるコンストラクトを含むCasタンパク質は、異なる機能性ドメインに融合したCasタンパク質又はその短縮化を含む。一部の態様において、機能性ドメインは、活性化又は抑制ドメインである。他の態様において、機能性ドメインは、ヌクレアーゼドメインである。一部の実施形態において、ヌクレアーゼドメインは、FokIエンドヌクレアーゼドメインである(例えば、Tsai (2014) Nat. Biotechnol. doi:10.1038/nbt.2908を参照)。一部の実施形態において、FokIドメインは、二量体化ドメイン中に変異を含む。
【0197】
CRISPR/Casシステムはまた、遺伝子発現を阻害するように使用することができる。例えば、Leiら((2013) Cell、152(5): 1173~1183を参照)は、エンドヌクレアーゼ活性を欠く触媒的に死んでいるCas9は、ガイドRNAと共発現されると、転写伸長、RNAポリメラーゼ結合、又は転写因子結合に特異的に干渉できるDNA認識複合体を生成することを示した。このシステムは、CRISPR干渉(CRISPRi)と呼ばれており、標的とする遺伝子の発現を効率的に抑制することができる。特定の実施形態において、本明細書に記載されるコンストラクトは、CRISPRi複合体に取り付けられた抗体(例えば、内在化抗体)を含む。
【0198】
変異CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ
編集特異性を改善する、及び/又は編集効率を改善する多数の変異エンドヌクレアーゼが作り出されている。このような変異エンドヌクレアーゼとしては、これに限定されないが、高忠実度(HiFi)Cas9等が挙げられる。
【0199】
1つの例示的な、ただし非限定的な実施形態において、変異エンドヌクレアーゼは、単一の点変異、p.R691Aを含むCas9を含む(例えば、Vakulskasら(2018) Nat. Med.、24: 1216~1224を参照。
【0200】
別の例示的な、ただし非限定的な変異エンドヌクレアーゼは、Integrated DNA Technologies (Skokie、Illinois)からのAlt-R(登録商標)S.p. HiFi Cas9ヌクレアーゼを含む。
【0201】
特定の実施形態において、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ又はHiFiエンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼの細胞ヌクレアーゼへの輸送を強化するために、1、2、3、若しくは4つの、又はそれより多くの核局在化シグナルの付加によって改変されている。核局在化シグナル又は配列(NLS)は、核輸送による細胞核への移入のためにタンパク質を「タグ付けする」アミノ酸配列である。典型的には、このシグナルは、タンパク質表面上に露出した正電荷を有するリジン又はアルギニンの1つ又は複数の短い配列からなる。
【0202】
特定の実施形態において、NLSは、1つの部分からなるか又は2つの部分からなるかのいずれかとして更に分類することができる。これらの2つの間の主要な構造的な差は、2つの部分からなるNLS中の2つの塩基性アミノ酸クラスターは、相対的に短いスペーサー配列によって分離されていることであり(したがって、2つの部分からなるとは、2パートである)、一方で1つの部分からなるNLSはそうではない。発見すべき第1のNLSは、SV40ラージT抗原(1つの部分からなるNLS)中の配列PKKKRKV(配列番号29)であった(Kalderonら(1984) Cell、39(3 Pt 2): 499~509)。ヌクレオプラスミンのNLSであるKR[PAATKKAGQA]KKKK(配列番号30)は、遍在する2つの部分からなるシグナルのプロトタイプであり、これは、約10アミノ酸のスペーサーによって分離した塩基性アミノ酸の2つのクラスターである(Dingwallら(1988) J. Cell Biol. 107(3): 841~84)。両方のシグナルは、インポーチンαによって認識される。インポーチンαは、それ自体2つの部分からなるNLSを含有し、これはインポーチンβによって特異的に認識される。後者を実際の移入媒介物とみなすことができる。
【0203】
1つの部分からなるNLSの1つの例示的なコンセンサス配列は、K-K/R-X-K/R(配列番号31)であり、式中Xは、任意のアミノ酸である(Dingwalら、上記)。他のNLSとしては、これらに限定されないが、hnRNP A1の酸性M9ドメイン、酵母転写リプレッサーMatα2中の配列KIPIK、及びU snRNPの複合シグナルが挙げられる。これらのNLSのほとんどは、インポーチンα様タンパク質の介入がなくともインポーチンβファミリーの特異的な受容体によって直接認識されると考えられる(例えば、Mattaj及びEnglmeier (1998) Annu. Rev. Biochem. 67(1): 265~306を参照)。PY-NLSとして公知のNLSのクラスが提唱されている(Leeら(2006) Cell、126 (3): 543~558を参照。このPY-NLSモチーフは、その中でプロリン-チロシンアミノ酸が対合しているためにこのように命名され、これは、タンパク質をインポーチンβ2(トランスポーチン又はカリオフェリンβ2としても公知)に結合させることを可能にし、次いでカーゴタンパク質を核に転移させる。
【0204】
特定の実施形態において、NLSは、1つの部分からなるNLS、例えば、これらに限定されないが、SV40T抗原(PKKKRKV(配列番号32))、SV40Vp3(KKKRK(配列番号33))、アデノウイルスEla(KRPRP(配列番号34))、ヒトc-myc(PAAKRVKLD(配列番号35)、RQRRNELKRSP(配列番号36))、及びそれらの誘導体等を含む。一部の実施形態において、ペプチドは、2つの部分からなるNLS、例えば、これらに限定されないが、ヌクレオプラスミン(KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号37))、アフリカツメガエルN1(VRKKRKTEEESPLKDKDAKKSKQE(配列番号38))、マウスFGF3(RLRRDAGGRGGVYEHLGGAPRRRK(配列番号39))、PARP(KRKGDEVDGVDECAKKSKK(配列番号40))、及びそれらの誘導体等を含む。一部の実施形態において、NLSは、非古典的なNLS、例えばM9ペプチド、NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号41)を含む。
【0205】
ガイドRNA(CRISPR/Casエンドヌクレアーゼの場合)
様々な実施形態において、本明細書に記載されるコンストラクトは、Casタンパク質を含む複合体及び1又は2つのRNA(ガイドRNA)に取り付けられた抗体(例えば、内在化抗体)を含む。特定の実施形態において、複合体は、単一ガイドRNAに取り付けられたCasタンパク質を含む。
【0206】
クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9タンパク質;V型又はVI型CRISPR/Casタンパク質;Cpf1タンパク質等)に結合し、複合体を標的核酸内の特異的な場所にターゲティングする核酸分子は、本明細書では「ガイドRNA」又は「CRISPR/Casガイド核酸」又は「CRISPR/CasガイドRNA」と称される。
【0207】
様々な実施形態において、ガイドRNAは、典型的には標的核酸の配列に相補的なヌクレオチド配列を含むガイド配列(本明細書では標的配列とも称される)を含むターゲティングセグメントを包含することによって、複合体(RNP複合体)への標的特異性を提供する。
【0208】
ガイドRNAは、それが対応するタンパク質によって名付けることができる。例えば、クラス2のCRISPR/CasエンドヌクレアーゼがCas9タンパク質である場合、対応するガイドRNAは、「Cas9ガイドRNA」と称することができる。同様に、別の例として、クラス2のCRISPR/CasエンドヌクレアーゼがCpf1タンパク質である場合、対応するガイドRNAは、「Cpf1ガイドRNA」と称することができる。
【0209】
一部の実施形態において、ガイドRNAは、2つの別個の核酸分子(又は単一分子内の2つのシーケンシングされたもの):「アクチベーター」及び「ターゲター(targeter)」を含み、本明細書では「二重ガイドRNA」、「二重分子ガイドRNA」、「2分子ガイドRNA」、又は「dgRNA」と称される。一部の実施形態において、ガイドRNAは、1つの分子であり(例えば、一部のクラス2のCRISPR/Casタンパク質の場合、対応するガイドRNAは、単一分子であり;一部の場合において、アクチベーター及びターゲターは、例えば介在するヌクレオチドを介して、互いに共有結合で連結されている)、ガイドRNAは、「単一ガイドRNA」、「単一分子ガイドRNA」、「1分子ガイドRNA」、又は単に「sgRNA」と称される。
【0210】
Cas9ガイドRNA
Cas9タンパク質に結合し、複合体を標的核酸内の特異的な場所にターゲティングする核酸分子は、本明細書では「Cas9ガイドRNA」と称される。特定の実施形態において、Cas9ガイドRNAは、2つのセグメント、すなわち第1のセグメント(本明細書では「ターゲティングセグメント」と称される);及び第2のセグメント(本明細書では「タンパク質結合セグメント」と称される)を含むと言うことができる。「セグメント」は、分子のセグメント/セクション/領域、例えば、核酸分子中のヌクレオチドの連続するストレッチを意味する。セグメントは、セグメントが1つより多くの分子の領域を含み得るような複合体の領域/セクションを意味する場合もある。
【0211】
様々な実施形態において、Cas9ガイドRNAの第1のセグメント(ターゲティングセグメント)は、典型的には、標的核酸(例えば、標的ssRNA、標的ssDNA、二本鎖標的DNAの相補鎖等)内の特異的な配列(標的部位)に相補的である(したがってその配列とハイブリダイズする)ヌクレオチド配列(ガイド配列)を含む。タンパク質結合セグメント(又は「タンパク質結合配列」)は、Cas9ポリペプチドと相互作用する(結合する)。対象Cas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントは、典型的には、互いにハイブリダイズして二本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖)を形成するヌクレオチドの2つの相補的ストレッチを含む。標的核酸(例えば、ゲノムDNA)の部位特異的な結合及び/又は切断は、Cas9ガイドRNA(Cas9ガイドRNAのガイド配列)と標的核酸との間の塩基対合の相補性によって決定された場所(例えば、標的遺伝子座の標的配列)で起こり得る。
【0212】
Cas9ガイドRNA及びCas9タンパク質は、複合体を形成する(例えば、非共有結合の相互作用を介して結合する)。Cas9ガイドRNAは、ガイド配列(標的核酸の配列に相補的なヌクレオチド配列)を含むターゲティングセグメントを包含することによって、複合体への標的特異性を提供する。複合体のCas9タンパク質は、部位特異的な活性(例えば、切断活性、又はCas9タンパク質がCas9融合ポリペプチドである、すなわち融合パートナーを有する場合、Cas9タンパク質によって提供される活性)を提供する。言い換えれば、Cas9タンパク質は、Cas9ガイドRNAとのその結合によって、標的核酸配列(例えば、染色体の核酸、例えば染色体中の標的配列;染色体外の核酸中の、例えば、エピソームの核酸、ミニサークル、ssRNA、ssDNA等の標的配列;ミトコンドリアの核酸中の標的配列;葉緑体の核酸中の標的配列;プラスミド中の標的配列;ウイルス核酸中の標的配列等)にガイドされる。
【0213】
「ガイド配列」は、Cas9ガイドRNAの「標的配列」とも称され、これは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を考慮に入れることができる点を除いて、Cas9ガイドRNAがCas9タンパク質をあらゆる所望の標的核酸のあらゆる所望の配列にターゲティングできるように、改変することができる。したがって、例えば、Cas9ガイドRNAは、真核細胞中の核酸、例えば、ウイルス核酸、真核生物の核酸(例えば、真核生物の染色体、染色体の配列、真核生物のRNA等)中の配列等と相補性を有する(例えば、それとハイブリダイズする)配列(ガイド配列)を含むターゲティングセグメントを有していてもよい。
【0214】
一部の実施形態において、Cas9ガイドRNAは、2つの別個の核酸分子:「アクチベーター」及び「ターゲター」を含み、本明細書では「二重Cas9ガイドRNA」、「二重分子Cas9ガイドRNA」、又は「2分子Cas9ガイドRNA」、「二重ガイドRNA」、又は「dgRNA」と称される。一部の実施形態において、アクチベーター及びターゲターは、互いに共有結合で連結されており(例えば、介在するヌクレオチドを介して)、ガイドRNAは、「単一ガイドRNA」、「Cas9単一ガイドRNA」、「単一分子Cas9ガイドRNA」、又は「1分子Cas9ガイドRNA」、又は単に「sgRNA」と称される。
【0215】
様々な実施形態において、Cas9ガイドRNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」/「ターゲター」/「crRNA」/「crRNAリピート」)分子及び対応するtracrRNA様(「トランス作用性CRISPR RNA」/「アクチベーター」/「tracrRNA」)分子を含む。crRNA様分子(ターゲター)は、典型的には、Cas9ガイドRNAのターゲティングセグメント(一本鎖)と、Cas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の半分を形成するヌクレオチドのストレッチ(「二重鎖形成セグメント」)の両方を含む。対応するtracrRNA様分子(アクチベーター/tracrRNA)は、典型的には、ガイド核酸のタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の他方の半分を形成するヌクレオチドのストレッチ(二重鎖形成セグメント)を含む。言い換えれば、crRNA様分子のヌクレオチドのストレッチは、tracrRNA様分子のヌクレオチドのストレッチに相補的であり、それとハイブリダイズして、Cas9ガイドRNAのタンパク質-結合ドメインのdsRNA二重鎖を形成する。そのようなものとして、各ターゲター分子は、対応するアクチベーター分子(ターゲターとハイブリダイズする領域を有する)を有すると言うことができる。様々な実施形態において、ターゲター分子は、加えて、ターゲティングセグメントを提供する。したがって、様々な実施形態において、ターゲター及びアクチベーター分子(対応する対として)は、ハイブリダイズして、Cas9ガイドRNAを形成することができる。所与のcrRNA又はtracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が見出されている種に特徴的である。対象の二重Cas9ガイドRNAは、あらゆる対応するアクチベーターとターゲターとの対を含んでいてもよい。
【0216】
用語「アクチベーター」又は「アクチベーターRNA」は、本明細書では、Cas9二重ガイドRNAの(それゆえに、「アクチベーター」及び「ターゲター」が例えば介在するヌクレオチドによって一緒に連結されている場合、Cas9単一ガイドRNAの)tracrRNA様分子(tracrRNA:「トランス作用性CRISPR RNA」)を意味するものとして使用される。したがって、例えば、Cas9ガイドRNA(dgRNA又はsgRNA)は、典型的には、アクチベーター配列(例えば、tracrRNA配列)を含む。tracr分子(tracrRNA)は、CRISPR RNA分子(crRNA)とハイブリダイズしてCas9二重ガイドRNAを形成する天然に存在する分子である。用語「アクチベーター」は、本明細書において、天然に存在するtracrRNAを含むものとして使用されるが、改変(例えば、短縮化、配列バリエーション、塩基改変、バックボーン改変、連結改変等)を有するtracrRNAを含むものとしても使用され、この場合、アクチベーターは、tracrRNAの少なくとも1つの機能を保持する(例えば、Cas9タンパク質が結合するdsRNA二重鎖に寄与する)。一部の場合において、アクチベーターは、Cas9タンパク質と相互作用することができる1つ又は複数のステムループを提供する。アクチベーターは、tracr配列(tracrRNA配列)を有すると称することができ、一部の場合において、tracrRNAであるが、用語「アクチベーター」は、天然に存在するtracrRNAに限定されない。
【0217】
用語「ターゲター」又は「ターゲターRNA」は、本明細書において、Cas9二重ガイドRNAの(それゆえに、「アクチベーター」及び「ターゲター」が例えば介在するヌクレオチドによって一緒に連結されている場合、Cas9単一ガイドRNAの)crRNA様分子(crRNA:「CRISPR RNA」)を指すものとして使用される。したがって、例えば、Cas9ガイドRNA(dgRNA又はsgRNA)は、典型的には、ターゲティングセグメント(これは、標的核酸とハイブリダイズする(それに相補的である)ヌクレオチドを含む)、及び二重鎖形成セグメント(例えば、crRNAの二重鎖形成セグメント、これは、crRNAリピートと称する場合もある)を含む。ターゲターのターゲティングセグメント(標的核酸の標的配列とハイブリダイズするセグメント)の配列は、所望の標的核酸とハイブリダイズするように使用者によって改変されるため、ターゲターの配列は、天然に存在しない配列であることが多いと予想される。しかしながら、様々な実施形態において、ターゲターの二重鎖形成セグメント(以下でより詳細に説明される)は、アクチベーターの二重鎖形成セグメントとハイブリダイズするものであり、これは、天然に存在する配列(例えば、これは、天然に存在するcrRNAの二重鎖形成セグメントの配列を含んでいてもよく、この二重鎖は、crRNAリピートと称する場合もある)を含んでいてもよい。したがって、ターゲター(例えば、二重鎖形成セグメント)の一部はcrRNA由来の天然に存在する配列をしばしば含むという事実にもかかわらず、ターゲターという用語は、本明細書では、天然に存在するcrRNAと区別するために使用される。しかしながら、用語「ターゲター」は、天然に存在するcrRNAを含む。
【0218】
様々な実施形態において、Cas9ガイドRNAはまた、以下の3パート:(i)標的配列(標的核酸の配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列);(ii)アクチベーター配列(上述した通り)(一部の場合において、tracr配列と称される);及び(iii)アクチベーター配列の少なくとも一部にハイブリダイズして二本鎖化された二重鎖を形成する配列を含むと言うこともできる。ターゲターは、(i)及び(iii)を有し、一方でアクチベーターは、(ii)を有する。
【0219】
Cas9ガイドRNA(例えば、二重ガイドRNA又は単一ガイドRNA)は、いずれの対応するアクチベーターとターゲターとの対で構成されていてもよい。一部の場合において、二重鎖形成セグメントは、アクチベーターとターゲターとの間で交換されていてもよい。言い換えれば、一部の場合において、ターゲターは、tracrRNAの二重鎖形成セグメント由来のヌクレオチドの配列を含み(この配列は通常、アクチベーターの一部であると予想される)、一方でアクチベーターは、crRNAの二重鎖形成セグメント由来のヌクレオチドの配列(この配列は通常、ターゲターの一部と予想される)を含む。
【0220】
上述したように、ターゲターは、典型的には、Cas9ガイドRNAのターゲティングセグメント(一本鎖)と、Cas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の半分を形成するヌクレオチドのストレッチ(「二重鎖形成セグメント」)の両方を含む。対応するtracrRNA様分子(アクチベーター)は、典型的には、Cas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の他方の半分を形成するヌクレオチドのストレッチ(二重鎖形成セグメント)を含む。言い換えれば、ターゲターのヌクレオチドのストレッチは、アクチベーターのヌクレオチドのストレッチに相補的であり、それとハイブリダイズして、Cas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖を形成する。そのようなものとして、各ターゲターは、対応するアクチベーター(ターゲターとハイブリダイズする領域を有する)を有すると言うことができる。ターゲター分子は、加えて、ターゲティングセグメントを提供する。したがって、ターゲター及びアクチベーター(対応する対として)がハイブリダイズして、Cas9ガイドRNAを形成する。所与の天然に存在するcrRNA又はtracrRNA分子の特定の配列は、RNA分子が見出されている種に特徴的である。好適なアクチベーター及びターゲターの例は当業界において周知である。
【0221】
様々な実施形態において、Cas9ガイドRNA(例えば、二重ガイドRNA又は単一ガイドRNA)は、いずれの対応するアクチベーターとターゲターとの対で構成されていてもよい。
【0222】
Cas9ガイドRNAのターゲティングセグメント
対象のガイド核酸の第1のセグメントは、典型的には、ガイド配列(例えば、標的配列)(標的核酸中の配列(標的部位)に相補的なヌクレオチド配列)を含む。言い換えれば、対象のガイド核酸のターゲティングセグメントは、配列特異的な方式で、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)により標的核酸(例えば、二本鎖DNA(dsDNA))と相互作用することができる。そのようなものとして、ターゲティングセグメントのヌクレオチド配列は様々であってもよく(標的に応じて)、Cas9ガイドRNA及び標的核酸が相互作用すると予想される標的核酸内の場所を決定することができる。Cas9ガイドRNAのターゲティングセグメントは、標的核酸(例えば、ゲノムDNA等の真核生物の標的核酸)内のいずれの所望の配列(標的部位)にハイブリダイズするように改変(例えば、遺伝子工学によって)/設計することができる。
【0223】
特定の実施形態において、ターゲティングセグメントは、7以上のヌクレオチド(nt)(例えば、8以上、9以上、10以上、12以上、15以上、20以上、25以上、30以上、又は40以上のヌクレオチド)の長さを有していてもよい。一部の場合において、ターゲティングセグメントは、7から100ヌクレオチド(nt)(例えば、7から80nt、7から60nt、7から40nt、7から30nt、7から25nt、7から22nt、7から20nt、7から18nt、8から80nt、8から60nt、8から40nt、8から30nt、8から25nt、8から22nt、8から20nt、8から18nt、10から100nt、10から80nt、10から60nt、10から40nt、10から30nt、10から25nt、10から22nt、10から20nt、10から18nt、12から100nt、12から80nt、12から60nt、12から40nt、12から30nt、12から25nt、12から22nt、12から20nt、12から18nt、14から100nt、14から80nt、14から60nt、14から40nt、14から30nt、14から25nt、14から22nt、14から20nt、14から18nt、16から100nt、16から80nt、16から60nt、16から40nt、16から30nt、16から25nt、16から22nt、16から20nt、16から18nt、18から100nt、18から80nt、18から60nt、18から40nt、18から30nt、18から25nt、18から22nt、又は18から20nt)の長さを有していてもよい。
【0224】
標的核酸のヌクレオチド配列(標的部位)に相補的なターゲティングセグメントのヌクレオチド配列(標的配列)は、10nt以上の長さを有していてもよい。例えば、標的核酸の標的部位に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、12nt以上、15nt以上、18nt以上、19nt以上、又は20nt以上の長さを有していてもよい。一部の場合において、標的核酸のヌクレオチド配列(標的部位)に相補的なターゲティングセグメントのヌクレオチド配列(標的配列)は、12nt以上の長さを有する。一部の場合において、標的核酸のヌクレオチド配列(標的部位)に相補的なターゲティングセグメントのヌクレオチド配列(標的配列)は、18nt以上の長さを有する。
【0225】
例えば、特定の実施形態において、標的核酸の標的配列に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、10から100ヌクレオチド(nt)(例えば、10から90nt、10から75nt、10から60nt、10から50nt、10から35nt、10から30nt、10から25nt、10から22nt、10から20nt、12から100nt、12から90nt、12から75nt、12から60nt、12から50nt、12から35nt、12から30nt、12から25nt、12から22nt、12から20nt、15から100nt、15から90nt、15から75nt、15から60nt、15から50nt、15から35nt、15から30nt、15から25nt、15から22nt、15から20nt、17から100nt、17から90nt、17から75nt、17から60nt、17から50nt、17から35nt、17から30nt、17から25nt、17から22nt、17から20nt、18から100nt、18から90nt、18から75nt、18から60nt、18から50nt、18から35nt、18から30nt、18から25nt、18から22nt、又は18から20nt)の長さを有していてもよい。一部の場合において、標的核酸の標的配列に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、15ntから30ntの長さを有する。一部の場合において、標的核酸の標的配列に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、15ntから25ntの長さを有する。一部の場合において、標的核酸の標的配列に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、18ntから30ntの長さを有する。一部の場合において、標的核酸の標的配列に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、18ntから25ntの長さを有する。一部の場合において、標的核酸の標的配列に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、18ntから22ntの長さを有する。一部の場合において、標的核酸の標的部位に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、20ヌクレオチドの長さである。一部の場合において、標的核酸の標的部位に相補的なターゲティングセグメントの標的配列は、19ヌクレオチドの長さである。
【0226】
特定の実施形態において、ターゲティングセグメントの標的配列(ガイド配列)と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、60%以上(例えば、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)であり得る。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の7個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり、100%である。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、約20個の連続するヌクレオチドにわたり60%以上である。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の14個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、14ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の7個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、20ヌクレオチドの長さとみなすことができる。
【0227】
一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の7個の連続する最も5'側のヌクレオチド(これは、Cas9ガイドRNAの標的配列の最も3'側のヌクレオチドに相補的であり得る)にわたり100%である。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の8個の連続する最も5'側のヌクレオチド(これは、Cas9ガイドRNAの標的配列の最も3'側のヌクレオチドに相補的であり得る)にわたり100%である。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の9個の連続する最も5'側のヌクレオチド(これは、Cas9ガイドRNAの標的配列の最も3'側のヌクレオチドに相補的であり得る)にわたり100%である。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の10個の連続する最も5'側のヌクレオチド(これは、Cas9ガイドRNAの標的配列の最も3'側のヌクレオチドに相補的であり得る)にわたり100%である。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の17個の連続する最も5'側のヌクレオチド(これは、Cas9ガイドRNAの標的配列の最も3'側のヌクレオチドに相補的であり得る)にわたり100%である。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の18個の連続する最も5'側のヌクレオチド(これは、Cas9ガイドRNAの標的配列の最も3'側のヌクレオチドに相補的であり得る)にわたり100%である。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、約20個の連続するヌクレオチドにわたり、60%以上(例えば、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。
【0228】
一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の7個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、7ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の8個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、8ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の9個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、9ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の10個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、10ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の11個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、11ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の12個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、12ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の13個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、13ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の14個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、14ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の17個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、17ヌクレオチドの長さとみなすことができる。一部の場合において、ターゲティングセグメントの標的配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の18個の連続する最も5'側のヌクレオチドにわたり100%であり、残りの部分にわたり0%か又はそれに近い低さである。このような場合において、標的配列は、18ヌクレオチドの長さとみなすことができる。
【0229】
Cas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメント
対象のCas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントは、典型的には、Cas9タンパク質と相互作用する。Cas9ガイドRNAは、結合したCas9タンパク質を、上述したターゲティングセグメントを介して標的核酸内の特異的なヌクレオチド配列にガイドする。Cas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントは、典型的には、互いに相補的であり、ハイブリダイズして二本鎖化されたRNA二重鎖(dsRNA二重鎖)を形成するヌクレオチドの2つのストレッチを含む。したがって、タンパク質結合セグメントは、dsRNA二重鎖を含んでいてもよい。一部の場合において、タンパク質結合セグメントはまた、Cas9ガイドRNAのステムループ1(「ネクサス」)も含む。例えば、一部の場合において、Cas9ガイドRNAのアクチベーター(dgRNA又はsgRNA)は、(i)タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖に寄与する二重鎖形成セグメント;及び(ii)例えばステムループ1(「ネクサス」)を形成する、二重鎖形成セグメントの3'のヌクレオチドを含む。例えば、一部の場合において、タンパク質結合セグメントは、Cas9ガイドRNAのステムループ1(「ネクサス」)を含む。一部の場合において、タンパク質結合セグメントは、dsRNA二重鎖の3'に(この場合3'は、アクチベーター配列の二重鎖形成セグメントに対してである)、5以上のヌクレオチド(nt)(例えば、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、75以上、又は80以上のnt)を含む。
【0230】
アクチベーターとターゲターとの間に形成するガイドRNAのdsRNA二重鎖(sgRNA又はdgRNA)は、時には本明細書において「ステムループ」と称される。加えて、多くの天然に存在するCas9ガイドRNA(例えば、S.ピオゲネス(S. pygogenes)ガイドRNA)のアクチベーター(アクチベーターRNA、tracrRNA)は、アクチベーターの二重鎖形成セグメントの3'にある3つのステムループ(3つのヘアピン)を有する。アクチベーターの二重鎖形成セグメントに最も近い(二重鎖形成セグメントの3'の)ステムループは、「ステムループ1」と呼ばれ(本明細書では「ネクサス」とも称される);次のステムループは、「ステムループ2」と呼ばれ(本明細書では「ヘアピン1」とも称される);次のステムループは、「ステムループ3」と呼ばれる(本明細書では「ヘアピン2」とも称される)。
【0231】
一部の場合において、Cas9ガイドRNA(sgRNA又はdgRNA)(例えば、全長Cas9ガイドRNA)は、ステムループ1、2、及び3を有する。一部の場合において、アクチベーター(Cas9ガイドRNAのアクチベーター)は、ステムループ1を有するが、ステムループ2を有さず、ステムループ3を有さない。一部の場合において、アクチベーター(Cas9ガイドRNAのアクチベーター)は、ステムループ1及びステムループ2を有するが、ステムループ3を有さない。一部の場合において、アクチベーター(Cas9ガイドRNAのアクチベーター)は、ステムループ1、2、及び3を有する。
【0232】
一部の場合において、Cas9ガイドRNA(dgRNA又はsgRNA)のアクチベーター(例えば、tracr配列)は、(i)タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖に寄与する二重鎖形成セグメント;及び(ii)二重鎖形成セグメントの3'にヌクレオチドのストレッチ(例えば、本明細書では3'テールと称される)を含む。一部の場合において、追加の二重鎖形成セグメントの3'のヌクレオチドは、ステムループ1を形成する。一部の場合において、Cas9ガイドRNA(dgRNA又はsgRNA)のアクチベーター(例えば、tracr配列)は、(i)タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖に寄与する二重鎖形成セグメント;及び(ii)二重鎖形成セグメントの3'に、5以上のヌクレオチド(例えば、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、60以上、70以上、又は75以上のヌクレオチド)を含む。一部の場合において、Cas9ガイドRNA(dgRNA又はsgRNA)のアクチベーター(アクチベーターRNA)は、(i)タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖に寄与する二重鎖形成セグメント;及び(ii)二重鎖形成セグメントの3'に、5以上のヌクレオチド(例えば、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、60以上、70以上、又は75以上のヌクレオチド)を含む。
【0233】
一部の場合において、Cas9ガイドRNA(dgRNA又はsgRNA)のアクチベーター(例えば、tracr配列)は、(i)タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖に寄与する二重鎖形成セグメント;及び(ii)二重鎖形成セグメントの3'に、ヌクレオチドのストレッチ(例えば、本明細書では3'テールと称される)を含む。一部の場合において、二重鎖形成セグメントの3'のヌクレオチドのストレッチは、5から200ヌクレオチド(nt)の範囲の長さ(例えば、5から150nt、5から130nt、5から120nt、5から100nt、5から80nt、10から200nt、10から150nt、10から130nt、10から120nt、10から100nt、10から80nt、12から200nt、12から150nt、12から130nt、12から120nt、12から100nt、12から80nt、15から200nt、15から150nt、15から130nt、15から120nt、15から100nt、15から80nt、20から200nt、20から150nt、20から130nt、20から120nt、20から100nt、20から80nt、30から200nt、30から150nt、30から130nt、30から120nt、30から100nt、又は30から80nt)を有する。一部の場合において、アクチベーターRNAの3'テールのヌクレオチドは、野生型配列である。多数の異なる代替配列が使用できることが認識されていると予想される。
【0234】
様々なCas9タンパク質及びCas9ガイドRNAの例(加えて、標的とする核酸中に存在するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に関する必要条件に関する情報)は、当業界において見出すことができる(例えば、Jinekら(2012) Science、337(6096): 816~821; Chylinskiら(2013) RNA Biol. 10(5):726~737; Maら、(2013) Biomed. Res. Int. 2013: 270805; Houら(2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、110(39): 15644~15649; Pattanayakら(2013) Nat. Biotechnol. 31(9): 839~843; Qiら(2013) Cell、152(5): 1173~1183; Wangら(2013) Cell、153(4): 910~918; Chenら(2013) Nucl. Acids Res. 41(20): e19; Chengら(2012) Cell Res. 23(10): 1163~1171; Choら(2013) Genetics、195(3): 1177~1180; DiCarloら(2013) Nucl. Acids Res. 41(7): 4336~4343; Dickinsonら(2013) Nat. Meth. 10(10): 1028~1034; Ebinaら(2013) Sci. Rep. 3: 2510; Fujiiら(2013) Nucl. Acids Res. 41(20): e187; Huら(2013) Cell Res. 23(11): 1322~1325; Jiangら(2013) Nucl. Acids Res. 41(20): e188; Larsonら(2013) Nat. Protoc. 8(11): 2180~2196; Maliら(2013) Nat. Meth. 10(10): 957~963; Nakayamaら(2013) Genesis、51(12): 835~843; Ranら(2013) Nat. Protoc. 8(11): 2281~2308; Ranら(2013) Cell 154(6): 1380~1389; Walshら(2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、110(39): 15514~15515; Yangら(2013) Cell、154(6): 1370~1379; Brinerら(2014) Mol. Cell、56(2): 333~339;並びに米国特許及び特許出願公開第8,906,616号;8,895,308号;8,889,418号;8,889,356号;8,871,445号;8,865,406号;8,795,965号;8,771,945号;8,697,359号;2014/0068797号;2014/0170753号;2014/0179006号;2014/0179770号;2014/0186843号;2014/0186919号;2014/0186958号;2014/0189896号;2014/0227787号;2014/0234972号;2014/0242664号;2014/0242699号;2014/0242700号;2014/0242702号;2014/0248702号;2014/0256046号;2014/0273037号;2014/0273226号;2014/0273230号;2014/0273231号;2014/0273232号;2014/0273233号;2014/0273234号;2014/0273235号;2014/0287938号;2014/0295556号;2014/0295557号;2014/0298547号;2014/0304853号;2014/0309487号;2014/0310828号;2014/0310830号;2014/0315985号;2014/0335063号;2014/0335620号;2014/0342456号;2014/0342457号;2014/0342458号;2014/0349400号;2014/0349405号;2014/0356867号;2014/0356956号;2014/0356958号;2014/0356959号;2014/0357523号;2014/0357530号;2014/0364333号;及び2014/0377868号を参照;これらの全ては、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0235】
特定の実施形態において、代替のPAM配列も利用することができ、その場合、PAM配列は、NGGの代替として、S.ピオゲネスCas9を使用するNAGであってもよい(Hsu (2014)上記)。追加のPAM配列としては、最初のGが欠失したものも挙げることができる(例えば、Sander及びJoung (2014) Nature Biotech 32(4):347を参照)。S.ピオゲネスによってコードされたCas9 PAM配列に加えて、他の細菌源由来のCas9タンパク質に特異的な他のPAM配列を使用することができる。例えば、以下のTable 3(表3)に示すPAM配列(出典は、上記のSander及びJoung、及びEsveltら(2013) Nat. Meth. 10(11): 1116)が、これらのCas9タンパク質に特異的である。
【0236】
【0237】
したがって、特定の実施形態において、S.ピオゲネスCRISPR/Casシステムと併用するのに好適な標的配列は、以下のガイドラインに従って選ぶことができる:[n17、n18、n19、又はn20](G/A)G(配列番号49)。代替として、特定の実施形態において、PAM配列は、ガイドラインG[n17、n18、n19、n20](G/A)G(配列番号50)に従っていてもよい。S.ピオゲネスではない細菌由来のCas9タンパク質の場合、S.ピオゲネスPAM配列を代替のPAMで置き換えた同じガイドラインを使用してもよい。
【0238】
V型及びVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼに対応するガイドRNA(例えば、Cpf1ガイドRNA)
V型又はVI型CRISPR/Casタンパク質(例えば、Cpf1、C2c1、C2c2、C2c3)に結合し、複合体を標的核酸内の特異的な場所にターゲティングするガイドRNAは、本明細書では、全体的に「V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA」と言及される。より具体的な用語の例は、「Cpf1ガイドRNA」である。
【0239】
様々な実施形態において、V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)は、30ヌクレオチド(nt)から200nt、例えば、30ntから180nt、30ntから160nt、30ntから150nt、30ntから125nt、30ntから100nt、30ntから90nt、30ntから80nt、30ntから70nt、30ntから60nt、30ntから50nt、50ntから200nt、50ntから180nt、50ntから160nt、50ntから150nt、50ntから125nt、50ntから100nt、50ntから90nt、50ntから80nt、50ntから70nt、50ntから60nt、70ntから200nt、70ntから180nt、70ntから160nt、70ntから150nt、70ntから125nt、70ntから100nt、70ntから90nt、又は70ntから80nt)の合計長さを有していてもよい。一部の場合において、V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)は、少なくとも30nt(例えば、少なくとも40nt、少なくとも50nt、少なくとも60nt、少なくとも70nt、少なくとも80nt、少なくとも90nt、少なくとも100nt、又は少なくとも120nt)の合計長さを有する。
【0240】
一部の場合において、Cpf1ガイドRNAは、35nt、36nt、37nt、38nt、39nt、40nt、41nt、42nt、43nt、44nt、45nt、46nt、47nt、48nt、49nt、又は50ntの合計長さを有する。
【0241】
Cas9ガイドRNAのように、V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)は、標的核酸と結合するセグメント及び二重鎖を形成する領域(例えば、一部の場合において、2つの二重鎖形成セグメントから形成されたもの、すなわち、互いにハイブリダイズして二重鎖を形成するヌクレオチドの2つのストレッチ)を含んでいてもよい。
【0242】
様々な実施形態において、V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)の標的核酸と結合するセグメントは、15ntから30nt、例えば、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25nt、26nt、27nt、28nt、29nt、又は30ntの長さを有していてもよい。一部の場合において、標的核酸と結合するセグメントは、23ntの長さを有する。一部の場合において、標的核酸と結合するセグメントは、24ntの長さを有する。一部の場合において、標的核酸と結合するセグメントは、25ntの長さを有する。
【0243】
特定の実施形態において、V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)のガイド配列は、15ntから30nt(例えば、15から25nt、15から24nt、15から23nt、15から22nt、15から21nt、15から20nt、15から19nt、15から18nt,17から30nt、17から25nt、17から24nt、17から23nt、17から22nt、17から21nt、17から20nt、17から19nt、17から18nt、18から30nt、18から25nt、18から24nt、18から23nt、18から22nt、18から21nt、18から20nt、18から19nt、19から30nt、19から25nt、19から24nt、19から23nt、19から22nt、19から21nt、19から20nt、20から30nt、20から25nt、20から24nt、20から23nt、20から22nt、20から21nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25nt、26nt、27nt、28nt、29nt、又は30nt)の長さを有していてもよい。一部の場合において、ガイド配列は、17ntの長さを有する。一部の場合において、ガイド配列は、18ntの長さを有する。一部の場合において、ガイド配列は、19ntの長さを有する。一部の場合において、ガイド配列は、20ntの長さを有する。一部の場合において、ガイド配列は、21ntの長さを有する。一部の場合において、ガイド配列は、22ntの長さを有する。一部の場合において、ガイド配列は、23ntの長さを有する。一部の場合において、ガイド配列は、24ntの長さを有する。
【0244】
特定の実施形態において、V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)のガイド配列は、対応する長さの標的核酸配列と100%の相補性を有していてもよい。ガイド配列は、対応する長さの標的核酸配列と100%未満の相補性を有していてもよい。例えば、V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)のガイド配列は、標的核酸配列に相補的ではない1、2、3、4、又は5ヌクレオチドを有していてもよい。例えば、一部の場合において、ガイド配列が25ヌクレオチドの長さを有し、標的核酸配列が25ヌクレオチドの長さを有する場合、一部の場合において、標的核酸と結合するセグメントは、標的核酸配列に100%の相補性を有する。別の例として、一部の場合において、ガイド配列が25ヌクレオチドの長さを有し、標的核酸配列が25ヌクレオチドの長さを有する場合、一部の場合において、標的核酸と結合するセグメントは、1個の非相補的ヌクレオチド、及び標的核酸配列と相補的な24個のヌクレオチドを有する。別の例として、一部の場合において、ガイド配列が25ヌクレオチドの長さを有し、標的核酸配列が25ヌクレオチドの長さを有する場合、一部の場合において、標的核酸と結合するセグメントは、2個の非相補的ヌクレオチド、及び標的核酸配列と相補的な23個のヌクレオチドを有する。
【0245】
特定の実施形態において、V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)の(例えば、ターゲターRNA又はアクチベーターRNAの)二重鎖形成セグメントは、15ntから25nt(例えば、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、又は25nt)の長さを有していてもよい。
【0246】
V型又はVI型CRISPR/CasガイドRNA(例えば、cpf1ガイドRNA)のRNA二重鎖は、5塩基対(bp)から40bp(例えば、5から35bp、5から30bp、5から25bp、5から20bp、5から15bp、5~12bp、5~10bp、5~8bp、6から40bp、6から35bp、6から30bp、6から25bp、6から20bp、6から15bp、6から12bp、6から10bp、6から8bp、7から40bp、7から35bp、7から30bp、7から25bp、7から20bp、7から15bp、7から12bp、7から10bp、8から40bp、8から35bp、8から30bp、8から25bp、8から20bp、8から15bp、8から12bp、8から10bp、9から40bp、9から35bp、9から30bp、9から25bp、9から20bp、9から15bp、9から12bp、9から10bp、10から40bp、10から35bp、10から30bp、10から25bp、10から20bp、10から15bp、又は10から12bp)の長さを有していてもよい。
【0247】
例示的な、ただし非限定的な例として、Cpf1ガイドRNAの二重鎖形成セグメントは、(5'から3'):AAUUUCUACUGUUGUAGAU(配列番号51)、AAUUUCUGCUGUUGCAGAU(配列番号52)、AAUUUCCACUGUUGUGGAU(配列番号53)、AAUUCCUACUGUUGUAGGU(配列番号54)、AAUUUCUACUAUUGUAGAU(配列番号55)、AAUUUCUACUGCUGUAGAU(配列番号56)、AAUUUCUACUUUGUAGAU(配列番号57)、AAUUUCUACUUGUAGAU(配列番号58)等から選択されるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。したがって、ガイド配列は、(5'から3')二重鎖形成セグメントに続いていてもよい。
【0248】
C2c1ガイドRNA(二重ガイド又は単一ガイド)のアクチベーターRNA(例えば、tracrRNA)の例示的な、ただし非限定的な例は、ヌクレオチド配列GAAUUUUUCAACGGGUGUGCCAAUGGCCACUUUCCAGGUGGCAAAGCCCGUUGAGCUUCUCAAAAAG(配列番号59)を含むRNAである。一部の例示的な、ただし非限定的な場合では、C2c1ガイドRNA(二重ガイド又は単一ガイド)は、ヌクレオチド配列GUCUAGAGGACAGAAUUUUUCAACGGGUGUGCCAAUGGCCACUUUCCAGGUGGCAAAGCCCGUUGAGCUUCUCAAAAAG(配列番号60)を含むRNAである。一部の例示的な、ただし非限定的な場合では、C2c1ガイドRNA(二重ガイド又は単一ガイド)は、ヌクレオチド配列UCUAGAGGACAGAAUUUUUCAACGGGUGUGCCAAUGGCCACUUUCCAGGUGGCAAAGCCCGUUGAGCUUCUCAAAAAG(配列番号61)を含むRNAである。C2c1ガイドRNA(二重ガイド又は単一ガイド)のアクチベーターRNA(例えば、tracrRNA)の非限定的な例は、ヌクレオチド配列ACUUUCCAGGCAAAGCCCGUUGAGCUUCUCAAAAAG(配列番号62)を含むRNAである。一部の例示的な、ただし非限定的な場合では、アクチベーターRNA(例えば、tracrRNA)のC2c1ガイドRNA(二重ガイド又は単一ガイド)の二重鎖形成セグメントは、ヌクレオチド配列AGCUUCUCA(配列番号63)又はヌクレオチド配列GCUUCUCA(配列番号64)(天然に存在するtracrRNA由来の二重鎖形成セグメントを含む)。
【0249】
C2c1ガイドRNA(二重ガイド又は単一ガイド)のターゲターRNA(例えば、crRNA)の1つの例示的な、ただし非限定的な例は、ヌクレオチド配列CUGAGAAGUGGCACNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN(配列番号65)を有するRNAであり、式中Nは、ガイド配列を表し、標的配列に応じて様々であると予想され、ここでは20Nが示されているが、様々な異なる長さが許容できる。一部の場合において、ターゲターRNA(例えば、crRNA)のC2c1ガイドRNA(二重ガイド又は単一ガイド)の二重鎖形成セグメントは、ヌクレオチド配列CUGAGAAGUGGCAC(配列番号66)を含むか、又はヌクレオチド配列CUGAGAAGU(配列番号67)を含むか、又はヌクレオチド配列UGAGAAGUGGCAC(配列番号68)を含むか、又はヌクレオチド配列UGAGAAGU(配列番号69)等を含む。
【0250】
V型又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ及びガイドRNAに関する例及び指針(加えて、標的とする核酸中に存在するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に関する必要条件に関する情報)は、当業界において見出すことができる(例えば、Zetscheら(2015) Cell、163(3): 759~771; Makarovaら(2015) Nat. Rev. Microbiol. 13(11): 722~736; Shmakovら(2015) Mol. Cell、60(3): 385~397等を参照)。
【0251】
改変されたガイドRNA
CRISPR RNA(crRNA)中の場所における架橋化核酸(BNA)に加えてロックド核酸(LNA)の取込みは、概してCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)によるオフターゲット切断を低減したことが発見されている。したがって、特定の実施形態において、本明細書に記載されるコンストラクトに取り込まれた、又はそれと共に使用されるガイドRNAは、1つ又は複数のBNA、及び/又はLNAを含む。
【0252】
ロックド核酸
特定の実施形態において、ガイドRNAは、1つ又は複数のロックド核酸(LNA)を含む(例えば、
図9、パネルAを参照)。LNAは、リボース中の2'酸素が4'炭素と共有結合を形成し、N型(C3'-endo型)の糖のパッカリング(puckering)及びA型へリックスの選好を誘発する、立体配座的に制限されたRNAヌクレオチドである(例えば、Youら(2006) Nucleic Acids Res. 34: e60を参照)。LNAは、RNAと比較して改善した塩基スタッキング及び熱安定性を示し、結果として相補的核酸への高度に効率的な結合及び改善されたミスマッチ識別をもたらす(例えば、Youら(2006) Nucleic Acids Res. 34:e60; Vester及びWengel (2004) Biochem. 43: 13233~1324を参照)。それらもまた、強化されたヌクレアーゼ耐性を示す(例えば、Vester及びWengel (2004) Biochem. 43: 13233~132429を参照)。
【0253】
したがって、本明細書に記載される様々なガイドRNAは、1つ又は複数のLNAを含んでいてもよい。特定の実施形態において、ガイドRNAは、1、2、3、4つ、又はそれより多くのLNAを含む。
【0254】
架橋化核酸(BNA)
架橋化核酸(BNA)は、改変されたRNAヌクレオチドである。これらは、拘束された、又はアクセス不能なRNA分子とも称されることもある。BNA単量体は、「固定された」C3'-endo型の糖のパッカリングを有する、5員環の、6員環の、又は更には7員環もの架橋構造を含有していてもよい。架橋は、リボースの2',4'位に合成的に取り込まれて、2',4'-BNA単量体をもたらす。この単量体は、標準的なホスホラミダイト(phosphoamidite)化学を使用してオリゴヌクレオチドポリマー構造に取り込ませることができる。BNAは、高い結合親和性及び安定性を有する構造的に固定されたオリゴヌクレオチドである。
【0255】
CRSIPRガイドRNAへの架橋化核酸(BNA)の取込みは、CRISPR特異性を有意に改善できることが発見されている。特定には、N-メチル置換BNA(2',4'-BNA
NC[N-Me])(例えば、
図9、パネルBを参照)は、Crispr crRNAに取り込まれると、CRISPR精度を10,000倍も改善できることが実証され(例えば、Cromwellら(2018) Nat. Comm. 9: 1448を参照)、これは、Cas9エンドヌクレアーゼ特異性を有意に改善することを示している。したがって、本明細書に記載される様々なガイドRNAは、1つ又は複数のBNAを含んでいてもよい。特定の実施形態において、ガイドRNAは、1、2、3、4、又はそれより多くBNA
NCを含む。
【0256】
標的ゲノムDNA
本明細書に記載されるコンストラクトは、標的ゲノムDNAで遺伝子編集を実行するのに効果的である。特定の実施形態において、標的ゲノムDNAは、真核細胞(例えば、植物、動物、真菌等の細胞)中のDNAである。特定の実施形態において、標的DNAは、哺乳動物(例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物)中のゲノムDNAである。標的ゲノムDNAは、例えば、標的ゲノムDNA中に存在する1つ又は複数のヌクレオチドの置換及び/又は挿入及び/又は欠失によってその中の配列が改変されることになるあらゆるゲノムDNAであってもよい。
【0257】
標的遺伝子(標的ゲノムDNA)としては、これらに限定されないが、様々な疾患又は状態に関与する遺伝子が挙げられる。一部の場合において、標的ゲノムDNAは、標的ゲノムDNAが機能しないポリペプチドをコードするように、又は標的ゲノムDNAによってコードされたポリペプチドが、検出可能ないかなる量でも合成されないように、又は標的ゲノムDNAによってコードされたポリペプチドが、通常の量より少ない量で合成されるように、変異を有する個体が疾患を有するように変異している。このような疾患としては、これらに限定されないが、軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症、副腎白質ジストロトフィー、アイカルディ症候群、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、アルファ-サラセミア、アンドロゲン不感受性症候群、アペール症候群、不整脈原性右室異形成、毛細血管拡張性運動失調症、バース症候群、ベータ-サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、クリグラー-ナジャー症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、糖原病IV型、ヘモクロマトーシス、ベータ-グロビンの第6コドンにおけるヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー-ギーディオン症候群、白血球接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖沈着症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン-ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー-ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン-テイビ症候群、サンフィリッポ症候群、重症複合免疫不全(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス-マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ-サックス病、血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群、トリーチャー‐コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペル‐リンダウ病、ワーデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット-アルドリッチ症候群、及びX連鎖リンパ増殖症候群が挙げられる。他のこのような疾患としては、例えば、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病及びテイ-サックス病)、ムコ多糖症(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)、及び血友病が挙げられる。
【0258】
例えば、一部の場合において、標的ゲノムDNAは、トリヌクレオチド反復疾患を引き起こす変異を含む。例示的なトリヌクレオチド反復疾患及びトリヌクレオチド反復疾患に関与する標的遺伝子は、トリヌクレオチド反復疾患と遺伝子として、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)ATN1又はDRPLA、HD(ハンチントン病)HTT(ハンチンチン)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症又はケネディ病におけるアンドロゲン受容体)X染色体、SCA1(脊髄小脳変性症1型)ATXN1、SCA2(脊髄小脳変性症2型)ATXN2、SCA3(脊髄小脳変性症3型又はマシャド-ジョセフ病)ATXN3、SCA6(脊髄小脳変性症6型)CACNA1A、SCA7(脊髄小脳変性症7型)ATXN7、SCA17(脊髄小脳変性症17型)TBP、FRAXA(脆弱X症候群)X染色体上のFMR1、FXTAS(脆弱X随伴振戦/失調症候群)X染色体上のFMR1、FRAXE(脆弱XE精神遅滞)X染色体上のAFF2又はFMR2、FRDA(フリードライヒ運動失調症)FXN又はX25、(フラタキシン発現低減)DM(筋緊張性ジストロフィー)DMPK、SCA8(脊髄小脳変性症8型)OSCA又はSCA8、SCA12(脊髄小脳変性症12型)PPP2R2B又はSCA12である。
【0259】
例えば、一部の場合において、好適な標的ゲノムDNAは、β-グロビン遺伝子、例えば、鎌状赤血球変異を有するβ-グロビン遺伝子である。別の例として、好適な標的ゲノムDNAは、ハンチントン遺伝子座、例えば、HTT遺伝子であり、この場合、HTT遺伝子は、ハンチントン病を引き起こす変異(例えば、35個より多くのCAGリピートを含むCAGリピート伸長)を含む。別の例として、好適な標的ゲノムDNAは、重症複合免疫不全を引き起こす変異を含むアデノシンデアミナーゼ遺伝子である。別の例として、好適な標的ゲノムDNAは、ガンマ-グロビン遺伝子の制御に関連する変異を含むBCL11A遺伝子である。別の例として、好適な標的ゲノムDNAは、BCL11aエンハンサーである。
【0260】
したがって、様々な実施形態において、本明細書に記載される方法は、上記で確認された病状の1つ又は複数の処置における本明細書に記載されるコンストラクト及び/又は医薬製剤の使用を含む。
【0261】
ドナーポリヌクレオチド
一部の場合において、本明細書に記載の組成物及び方法は、ドナー鋳型核酸(「ドナーポリヌクレオチド」)を更に含む。一部の場合において、本明細書に記載される方法は、標的DNAをドナーポリヌクレオチドと接触させることを更に含み、この場合、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの部分、ドナーポリヌクレオチドのコピー、又はドナーポリヌクレオチドのコピーの部分が、標的DNAに統合される(例えば、相同組換え修復を介して)。一部の場合において、本方法は、細胞をドナーポリヌクレオチドと接触させることを含まない(例えば、その結果として非相同末端結合が起こる)。ドナーポリヌクレオチドは、核酸を細胞に導入するためのあらゆる便利な技術を使用して標的細胞に導入することができる。
【0262】
標的DNA配列にポリヌクレオチド配列を挿入することが望ましい場合、挿入しようとするドナー配列を含むポリヌクレオチドが、細胞に提供される(例えば、標的DNAを、ゲノムをターゲティングする組成物(例えば、ゲノム編集エンドヌクレアーゼ;又はゲノム編集エンドヌクレアーゼ及びガイドRNA)に加えてドナーポリヌクレオチドと接触させる。「ドナー配列」又は「ドナーポリヌクレオチド」は、ゲノム編集エンドヌクレアーゼにより誘導された切断部位に挿入しようとする核酸配列を意味する。好適なドナーポリヌクレオチドは、一本鎖であってもよいし、又は二本鎖であってもよい。例えば、一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドは、一本鎖であり(例えば、一部の場合において、これは、オリゴヌクレオチドと称することができる)、一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドは、二本鎖である(例えば、一部の場合において、これは、ハイブリダイズされる2つの別個のオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい)。ドナーポリヌクレオチドは、切断部位において、ゲノム配列に対して十分な相同性を有すると予想され、例えば、切断部位に隣接する、例えば、100塩基又はそれ未満以内の塩基(例えば、切断部位の50塩基又はそれ未満、例えば、30塩基以内、15塩基以内、10塩基以内、5塩基以内、又は切断部位のすぐ隣)のヌクレオチド配列と、70%、80%、85%、90%、95%、又は100%の相同性を有すると予想され、それにより上記ヌクレオチド配列と、それと相同性を有するゲノム配列との間の相同組換え修復を維持することができる。ドナーとゲノム配列との間に、およそ25ヌクレオチド(nt)以上(例えば、30nt以上、40nt以上、50nt以上、60nt以上、70nt以上、80nt以上、90nt以上、100nt以上、150nt以上、200nt以上、等)の配列相同性(又は10から200ヌクレオチドの間のあらゆる整数値、又はそれより多く)が、相同組換え修復を維持することができる。例えば、一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドの5'及び/又は3'の隣接する相同性アーム(例えば、一部の場合において、隣接する相同性アームの両方)は、30ヌクレオチド(nt)以上の長さ(例えば、40nt以上、50nt以上、60nt以上、70nt以上、80nt以上、90nt以上、100nt以上等)であり得る。例えば、一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドの5'及び/又は3'の隣接する相同性アーム(例えば、一部の場合において、隣接する相同性アームの両方)は、30ntから500nt(例えば、30ntから400nt、30ntから350nt、30ntから300nt、30ntから250nt、30ntから200nt、30ntから150nt、30ntから100nt、30ntから90nt、30ntから80nt、50ntから400nt、50ntから350nt、50ntから300nt、50ntから250nt、50ntから200nt、50ntから150nt、50ntから100nt、50ntから90nt、50ntから80nt、60ntから400nt、60ntから350nt、60ntから300nt、60ntから250nt、60ntから200nt、60ntから150nt、60ntから100nt、60ntから90nt、60ntから80nt)の範囲の長さを有していてもよい。
【0263】
ドナー配列は、あらゆる長さを有していてもよく、例えば、10ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、250ヌクレオチド以上、500ヌクレオチド以上、1000ヌクレオチド以上、5000ヌクレオチド以上等であってもよい。
【0264】
ドナー配列は、典型的には、それと置き換えられるゲノム配列と同一ではない。そうではなく、ドナー配列は、相同組換え修復を維持するのに十分な相同性が存在する限り、ゲノム配列に対して少なくとも1つの又はそれより多くの単一の塩基の変更、挿入、欠失、転位又は再配列を含有していてもよい。一部の実施形態において、ドナー配列は、標的DNA領域と2つの隣接配列との間の相同組換え修復が標的領域に非相同配列の挿入をもたらすように、相同性を有する2つの領域が隣接する非相同配列を含む。またドナー配列は、目的とするDNA領域に相同ではない配列や、目的とするDNA領域への挿入を意図していない配列を含有するベクターのバックボーンを含んでいてもよい。一般的に、ドナー配列の相同な領域は、組換えが望ましいゲノム配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有すると予想される。特定の実施形態において、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は99.9%の配列同一性が存在する。ドナーポリヌクレオチドの長さに応じて、1%から100%の間のあらゆる値の配列同一性が存在し得る。
【0265】
一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドは、ウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;レンチウイルスベクター等)の一部として細胞に送達される(細胞に導入される)。例えば、ウイルスDNA(例えば、AAV DNA)は、ドナーポリヌクレオチド配列(ドナー配列)を含んでいてもよい(例えば、ウイルス、例えばAAVは、ドナーポリヌクレオチド配列を含むDNA分子を含んでいてもよい)。一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドは、ウイルスとして細胞に導入され(例えば、AAV、例えばドナーポリヌクレオチド配列は、ウイルスDNA、例えばAAV DNAの一部として存在する)、ゲノム編集エンドヌクレアーゼ(例えば、ZFN;Cas9タンパク質等)、及び該当する場合、ガイドRNAは、異なる経路によって送達される。例えば、一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドは、ウイルスとして細胞に導入され(例えば、AAV、例えばドナーポリヌクレオチド配列は、ウイルスDNA、例えばAAV DNAの一部として存在する)、Cas9タンパク質及びCas9ガイドRNAは、別個の発現ベクターの一部として送達される。一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドは、ウイルスとして細胞に導入され(例えば、AAV、例えばドナーポリヌクレオチド配列は、ウイルスDNA、例えばAAV DNAの一部として存在する)、Cas9タンパク質及びCas9ガイドRNAは、リボ核タンパク質複合体(RNP)の一部として送達される。一部の場合において、(i)ドナーポリヌクレオチドは、ウイルスとして細胞に導入され(例えば、AAV、例えばドナーポリヌクレオチド配列は、ウイルスDNA、例えばAAV DNAの一部として存在する)、(ii)Cas9ガイドRNAは、RNA又はRNAをコードするDNAのいずれかとして送達され、(iii)Cas9タンパク質は、タンパク質として、又はタンパク質をコードする核酸(例えば、RNA又はDNA)として送達される。
【0266】
一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドを含む組換えウイルスベクター(例えば、組換えAAVベクター)は、Cas9-ガイドRNA RNPが細胞に導入される前に、細胞に導入される。例えば、一部の場合において、ドナーポリヌクレオチドを含む組換えウイルスベクター(例えば、組換えAAVベクター)は、Cas9-ガイドRNA RNPが細胞に導入される前の、2時間から72時間(例えば、2時間から4時間、4時間から8時間、8時間から12時間、12時間から24時間、24時間から48時間、又は48時間から72時間)に細胞に導入される。
【0267】
使用方法
特定の実施形態において、細胞で遺伝子編集を実行すること方法が提供される、本方法は、細胞をコンストラクト(例えば、ターゲティング部分指向型のCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体)と接触させることを含む。ターゲティング部分(例えば、抗体)は、コンストラクトを標的細胞に方向付けるか、及び/又は細胞によるコンストラクトの取込みを媒介する。複合体中のガイドRNAは、典型的には、Casエンドヌクレアーゼを、前記細胞のゲノム中の特異的な場所にガイドする。
【0268】
特定の実施形態において、本方法は、エクスビボで、細胞で実行される。特定の実施形態において、本方法は、自己細胞移入を含む。したがって、例えば、処置しようとする対象から細胞を得て、細胞のゲノムを、本明細書に記載されるコンストラクトを使用して改変し、対象に細胞を移入し戻す。
【0269】
様々な例示的な、ただし非限定的な方法において、細胞は、あらゆる真核細胞、例えば植物細胞又は哺乳類細胞若しくは細胞株、例えば、これらに限定されないが、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)、並びにperC6細胞、加えて、昆虫細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(Spodopterafugiperda)(Sf)、又は真菌細胞、例えばサッカロマイセス属、ピチア属及びシゾサッカロマイセス属等であり得る。特定の実施形態において、細胞株は、CHO、MDCK又はHEK293細胞株である。
【0270】
初代細胞も、本明細書に記載されるようにして編集することができる。このような細胞としては、これらに限定されないが、線維芽細胞、血液細胞(例えば、赤血球、白血球)、肝臓細胞、腎臓細胞、神経細胞等が挙げられる。好適な細胞としてはまた、幹細胞、例えば、一例として、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞、神経幹細胞及び間葉幹細胞も挙げることができる。
【0271】
しかしながら、上記で説明したように、本明細書に記載されるコンストラクトは、インサイチュで、例えば、処置しようとする対象中で直接、遺伝子編集を実行するのに効果的である。したがって、特定の実施形態において、編集しようとする細胞は、対象中のインビボにおける細胞であり、接触は、対象にコンストラクト(又はコンストラクトを含む医薬製剤)を投与することを含む。特定の実施形態において、本方法は、腹膜内投与、局所投与、経口投与、吸入投与、経皮投与、真皮下のデポー投与、及び直腸内投与からなる群から選択される経路を介して、コンストラクトを投与することを含む。特定の実施形態において、対象は、ヒトであり、一方で他の実施形態において、対象は、非ヒト哺乳動物である。
【0272】
特定の実施形態において、本方法は、このような処置が必要な対象を処置することを含む。特定の実施形態において、対象は、軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症、副腎白質ジストロトフィー、アイカルディ症候群、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、アルファ-サラセミア、アンドロゲン不感受性症候群、アペール症候群、不整脈原性右室異形成、毛細血管拡張性運動失調症、バース症候群、ベータ-サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、クリグラー-ナジャー症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、糖原病IV型、ヘモクロマトーシス、ベータ-グロビンの第6コドンにおけるヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー-ギーディオン症候群、白血球接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖沈着症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン-ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー-ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン-テイビ症候群、サンフィリッポ症候群、重症複合免疫不全(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス-マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ-サックス病、血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群、トリーチャー‐コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペル‐リンダウ病、ワーデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット-アルドリッチ症候群、及びX連鎖リンパ増殖症候群からなる群から選択される病状を有する対象である。他のこのような疾患としては、例えば、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病及びテイ-サックス病)、ムコ多糖症(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)、及び血友病が挙げられる。
【0273】
医薬製剤
特定の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体を哺乳動物に投与して、1つ又は複数の細胞又は組織中のゲノムの1つ又は複数の領域を編集する。特定の実施形態において、コンストラクトは、このようなゲノムの編集によって処置/修正できる病状を処置するのに使用される。
【0274】
本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、「天然の」形態で投与してもよいし、又は必要に応じて、塩、エステル、アミド、又は誘導体が薬理学的に好適であれば、例えば本発明の方法において有効であれば、塩、エステル、アミド、誘導体等の形態で投与してもよい。本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の塩、エステル、アミド、及び他の誘導体は、合成有機化学の標準的な当業者公知の手順を使用して調製でき、例えば3月(1992年)のAdvanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure、第4版、N.Y. Wiley-Interscienceで説明されている。
【0275】
このような誘導体を製剤化する方法は、当業者公知である。例えば、医薬的に許容される塩は、塩を形成することが可能な官能基(例えば、本明細書に記載される化合物のカルボン酸官能基等)を有する本明細書に記載されるあらゆる化合物で調製することができる。医薬的に許容される塩は、親化合物の活性を保持し、それが投与される対象に、更にそれが投与される状況で、いかなる有害な又は好ましくない作用も付与しないあらゆる塩である。
【0276】
塩、エステル、アミド等としての本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体を医薬的に製剤化する方法は、当業者周知である。例えば、塩は、遊離塩基から、典型的には好適な酸との反応を含む従来の方法を使用して調製することができる。一般的に、薬物の塩基形態を、極性有機溶媒、例えばメタノール又はエタノール中に溶解させ、そこに酸を添加する。得られた塩は、沈殿させるか、又はそれより低い極性の溶媒の添加によって溶液から析出させてもよい。酸付加塩を調製するための好適な酸としては、これらに限定されないが、有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等、加えて無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の両方が挙げられる。酸付加塩は、好適な塩基での処理によって遊離塩基に再変換することができる。本明細書に記載される化合物の特定の特に好ましい酸付加塩としては、ハロゲン化物の塩を挙げることができ、例えば、塩化水素酸又は臭化水素酸を使用して調製することができる。逆に言えば、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の塩基性塩の調製は、類似の方式で、医薬的に許容される塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミン等を使用して調製することができる。特定の実施形態において、塩基性塩としては、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、及び銅塩が挙げられる。
【0277】
塩基性薬物の塩の形態を調製するために、対イオンのpKaは、薬物のpKaより、好ましくは少なくとも約2pH単位低い。同様に、酸性薬物の塩の形態を調製するために、対イオンのpKaは、薬物のpKaより、好ましくは少なくとも約2pH単位高い。これは、対イオンが溶液のpHをpHmaxより低いレベルにすることを可能にし、それにより、塩の溶解性が遊離の酸又は塩基の溶解性に打ち勝つ塩の安定状態に到達することができる。医薬品有効成分(API)及び酸又は塩基におけるイオン化可能な基のpKa単位の差の一般化された規則は、プロトンの移動をエネルギー的に好都合にすることを意味する。API及び対イオンのpKaが有意に異なっていない場合、固体の複合体が形成される可能性があるが、水性環境中で迅速に不均化を起こす可能性がある(例えば、薬物及び対イオンの個々の物体に崩壊する)。
【0278】
様々な実施形態において、対イオンは、医薬的に許容される対イオンである。好適なアニオン塩の形態としては、これらに限定されないが、酢酸塩、安息香酸塩、ベンジル酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラクトビオネート、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硫酸メチル、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、リン酸塩及び二リン酸塩、サリチル酸塩及びジサリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリエチルヨージド(triethiodide)、吉草酸塩等が挙げられ、一方で好適なカチオン性塩の形態としては、これらに限定されないが、アルミニウム、ベンザチン、カルシウム、エチレンジアミン、リジン、マグネシウム、メグルミン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、トロメタミン、亜鉛等が挙げられる。
【0279】
エステルの調製は、典型的には、活性薬剤(例えば、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体)の分子構造内に存在するヒドロキシル及び/又はカルボキシル基の官能化を含む。特定の実施形態において、エステルは、典型的には、遊離のアルコール基、例えば、式RCOOHのカルボン酸(式中Rは、アルキル(alky)であり、好ましくは低級アルキルである)由来の部分がアシルで置換された誘導体である。エステルは、必要に応じて従来の水素化分解又は加水分解手順を使用することによって、遊離酸に再変換することができる。
【0280】
アミドはまた、当業者公知の、又は関連する文献に記載される技術を使用して調製することもできる。例えば、アミドは、好適なアミン反応物を使用してエステルから調製してもよいし、又はそれらは、アンモニア又は低級アルキルアミンとの反応によって無水物又は酸塩化物から調製してもよい。
【0281】
様々な実施形態において、本明細書において特定される化合物は、本明細書に記載される病状/適応症(例えば、アミロイド形成性の病状)の1つ又は複数の予防的及び/又は治療的処置のための、例えばエアロゾルによる、又は経皮での、非経口、局部、経口、鼻(又はそうでなければ吸入)、直腸、又は局部投与に有用である。
【0282】
本明細書に記載される活性薬剤(例えば、ターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体)はまた、医薬的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて、薬理学的な組成物を形成することもできる。医薬的に許容される担体は、例えば組成物を安定化させる、又はターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の吸収を増加若しくは減少させるように作用する1つ又は複数の生理学的に許容される化合物を含有していてもよい。生理学的に許容される化合物としては、例えば、炭水化物、例えばグルコース、スクロース、若しくはデキストラン、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸若しくはグルタチオン、キレート剤、低分子量のタンパク質、保護剤及び取込み促進剤、例えば脂質、ターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体のクリアランス又は加水分解を低減する組成物、又は賦形剤若しくは他の安定剤及び/若しくは緩衝液を挙げることができる。
【0283】
他の生理学的に許容される化合物、特定には錠剤、カプセル剤、ジェルカップ等の調製で利用されるものとしては、これらに限定されないが、結合剤、希釈剤/増量剤、崩壊剤(disentegrant)、潤滑剤、懸濁化剤等が挙げられる。
【0284】
特定の実施形態において、経口用剤形(例えば、錠剤)を製造するために、例えば、賦形剤(例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、マンニトール等)、任意選択の崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムスターチグリコレート、クロスポビドン等)、結合剤(例えば、アルファ-デンプン、アラビアゴム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、シクロデキストリン等)、及び任意選択の潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000等)が1種又は複数の活性成分(例えば、ターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体)に添加され、得られた組成物は、圧縮される。必要に応じて、圧縮された生成物は、味をマスキングするため、又は腸での溶解若しくは持続放出するために、例えば公知の方法でコーティングされる。好適なコーティング材料としては、これらに限定されないが、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びEudragit(Rohm & Haas社、Germany;メタクリル酸-アクリル酸コポリマー)が挙げられる。
【0285】
他の生理学的に許容される化合物としては、微生物の増殖又は作用を防止するのに特に有用な、湿潤剤、乳化剤、分散剤又は保存剤が挙げられる。様々な保存剤は周知であり、そのようなものとしては、例えば、フェノール及びアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、生理学的に許容される化合物等の医薬的に許容される担体の選択は、例えば本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の投与経路、及びターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の特定の生理化学的な特徴に依存することを理解していると予想される。
【0286】
特定の実施形態において、賦形剤は、滅菌されており、一般的に有害物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。錠剤及びカプセル剤等の様々な経口用剤形の賦形剤にとって、滅菌は必要ではない。通常、USP/NF規格で十分である。
【0287】
医薬組成物は、投与方法に応じて様々な単位剤形で投与することができる。好適な単位剤形としては、これらに限定されないが、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、坐剤、パッチ、鼻内噴霧剤、注射可能物質、移植可能な持続放出製剤、粘膜接着性フィルム、局所用バーニッシュ、脂質複合体等が挙げられる。
【0288】
本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠の形成、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物は、従来の方式で、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の医薬的に使用できる製剤への加工を容易にする、1つ又は複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又は助剤を使用して製剤化することができる。適した製剤は、選ばれる投与経路に依存する。
【0289】
全身投与用の製剤としては、これらに限定されないが、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内又は腹膜内注射による投与用に設計されたもの、加えて、経皮、経粘膜、経口又は胚投与用に設計されたものが挙げられる。注射の場合、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、水溶液、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液、若しくは生理的緩衝食塩水、及び/又は特定のエマルジョン製剤中で製剤化することができる。溶液は、成形剤、例えば懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤を含有していてもよい。特定の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、使用前に好適なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水で構成するために、粉末形態で提供することができる。経粘膜投与の場合、透過させるバリアに適した浸透剤を製剤に使用することができる。このような浸透剤は、一般的に当業界において公知である。
【0290】
経口投与の場合、化合物は、ターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体形成を当業界において周知の医薬的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。このような担体は、本明細書に記載される化合物を、処置しようとする患者による経口摂取のための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等として製剤化することを可能にする。例えば、粉剤、カプセル剤及び錠剤等の経口固体製剤の場合、好適な賦形剤としては、増量剤、例えば、糖、例えばラクトース、スクロース、マンニトール及びソルビトール;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP);造粒剤;並びに結合剤が挙げられる。必要に応じて、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、若しくはアルギン酸、又はそれらの塩、例えばアルギン酸ナトリウム等が添加されてもよい。必要に応じて、固体剤形は、標準的な技術を使用して、糖でコーティング又は腸溶性コーティングしてもよい。
【0291】
経口液体調製物、例えば懸濁液等の場合、エリキシル及び溶液、好適な担体、賦形剤又は希釈剤としては、水、グリコール、油、アルコール等が挙げられる。加えて、矯味矯臭剤、保存剤、着色剤等が添加されていてもよい。口腔粘膜投与の場合、組成物は、従来の方式で製剤化された錠剤、ロゼンジ剤等の形態をとっていてもよい。
【0292】
吸入による投与の場合、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスの使用を伴う加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態でうまく送達される。加圧したエアロゾルの場合、投薬量単位は、定量を送達するバルブの提供によって決定することができる。化合物及び好適な粉末ベース、例えばラクトース又はデンプンの粉末混合物を含有する、吸入器又は注入器で使用するための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジを製剤化することもできる。
【0293】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、直腸又は膣用組成物、例えば坐剤又は保留浣腸、例えば、従来の坐剤基剤、例えばカカオバター又は他のグリセリドを含有するものに製剤化することができる。
【0294】
これまでに記載した製剤に加えて、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体はまた、デポー製剤として製剤化することもできる。このような長時間作用性製剤は、移植(例えば皮下又は筋肉内)によって、又は筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、好適なポリマー性材料若しくは疎水性材料(例えば許容できる油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に製剤化してもよいし、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤化してもよい。
【0295】
代替として、他の医薬品送達システムを採用することができる。リポソーム及びエマルジョンは、医薬活性を有する化合物を保護し送達するのに使用できる運搬手段の周知の例である。また、毒性が比較的大きいという代償はあるものの、ジメチルスルホキシド等の特定の有機溶媒も採用することができる。加えて、化合物は、持続放出システム、例えば治療剤を含有する固体ポリマーの半透性マトリックスを使用して送達してもよい。持続放出材料の様々な使用が確立されており、当業者周知である。持続放出カプセルは、その化学的性質に応じて、数週間から100日を超える期間にわたり化合物を放出することができる。治療試薬の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のための追加の戦略が採用される場合もある。
【0296】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体及び/又は製剤は、経口投与される。これは、錠剤、カプレット、ロゼンジ剤、液剤等の使用によって容易に達成される。
【0297】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、当業者に周知の標準的な方法に従って全身投与される(例えば、経口で、又は注射可能物質として)。他の実施形態において、薬剤は、従来の経皮薬物送達システム、例えば、経皮「パッチ」を使用して、皮膚を介して送達することもでき、この場合、本明細書に記載される化合物及び/又は製剤は、典型的には、皮膚に貼り付ける薬物送達デバイスとして役立つラミネートされた構造内に含有される。このような構造において、薬物組成物は、典型的には、上側の裏張り層を覆う層又は「リザーバ」中に含有される。用語「リザーバ」は、この状況において、皮膚表面への送達のための最終的に利用可能な所定量の「活性成分」を指すことが理解されると予想される。したがって、例えば、「リザーバ」は、パッチの裏張り層上の接着剤中、又は当業者公知の様々なマトリックス製剤のいずれかの中に活性成分を含み得る。パッチは、単一のリザーバを含有していてもよいし、又は複数のリザーバを含有していてもよい。
【0298】
1つの例示的な実施形態において、リザーバは、薬物送達中システムを皮膚に貼り付けるのに役立つ医薬的に許容される接触接着剤のポリマーマトリックスを含む。好適な皮膚接触接着剤の例としては、これらに限定されないが、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン等が挙げられる。代替として、薬物を含有するリザーバ及び皮膚接触接着剤は、リザーバを覆う接着剤と隔離された別個の層として存在し、このような接着剤は、この場合、上述したようなポリマーマトリックスのいずれかであってもよく、又は液体又はヒドロゲルリザーバであってもよく、又はある種の他の形態をとっていてもよい。これらのラミネート中の裏張り層は、デバイスの上面として役立ち、好ましくは、「パッチ」の主要な構造エレメントとして機能し、デバイスに、そのフレキシビリティーの大部分を付与する。裏張り層に選択された材料は、好ましくは、ターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体及び存在する他のあらゆる材料を実質的に透過させないものである。
【0299】
特定の実施形態において、1つ又は複数の本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、例えば、いつでも希釈可能な貯蔵容器中に(例えば、予め測定された体積で)、又は所定体積の水、アルコール、過酸化水素、又は他の希釈剤にいつでも添加できる可溶性カプセル中に「濃縮物」として提供することができる。
【0300】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、経口投与に好適である。様々な実施形態において、経口用組成物中の化合物は、コーティングされていてもよいし、又はコーティングされていなくてもよい。腸溶性コーティングされた粒子の調製は、例えば米国特許第4,786,505号及び4,853,230号に開示されている。
【0301】
様々な実施形態において、本明細書において予期される組成物は、典型的には、不適当な有害な副作用を起こすことなく薬理作用又は治療的改善を達成するのに有効な量での、本明細書に記載される様々なターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の1つ又は複数を含む。例示的な薬理作用又は治療的改善としては、これらに限定されないが、処置される病状の1つ又は複数の症状の低減又は中断が挙げられる。
【0302】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の典型的な用量は様々であり、患者個々の必要条件、並びに診断及び/又は処置しようとする疾患等の様々な要因に依存すると予想される。一般的に、化合物の1日用量は、1~1,000mg、又は1~800mg、又は1~600mg、又は1~500mg、又は1~400mgの範囲であり得る。1つの例示的な実施形態において、組成物中に存在する上述したターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の標準的な概算量は、典型的には約1から1,000mg、より好ましくは約5から500mg、最も好ましくは約10から100mgであり得る。特定の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、1回のみ投与されるか、又は経過観察のために必要に応じて投与される。特定の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、特定の期間にわたり1日1回、特定の実施形態において、1日2回投与され、特定の実施形態において、1日3回投与され、特定の実施形態において、1日4回、又は6回、又は6回、又は7回、又は8回投与される。
【0303】
特定の実施形態において、活性成分(本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体)は、全ての活性成分を含有する単一の経口用剤形の形態で製剤化される。このような経口製剤は、固体及び液体形態を含む。ことに留意されたい固体製剤は、典型的には、液体製剤と比較して安定性の改善を提供し、しばしばより優れた患者のコンプライアンスをもたらすことができる。
【0304】
1つの例示的な実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の1つ又は複数は、単一の固体剤形で、例えば、単層又は多層錠、懸濁錠剤、発泡錠、粉剤、ペレット剤、顆粒剤、又は複数のビーズを含むカプセル剤、加えて、カプセル内カプセル又は二区画のカプセルの形態で製剤化される。別の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、単一の液体剤形、例えば、使用前に再構成させる全ての活性成分又は乾燥懸濁液を含有する懸濁液の形態で製剤化されてもよい。
【0305】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、腸溶性コーティングされた遅延放出顆粒として、又は胃液との接触を回避するために、非腸溶性の時間依存性放出ポリマーでコーティングされた顆粒として製剤化される。好適なpH依存性の腸溶性コーティングされたポリマーの非限定的な例は、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸コポリマー、セラック、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、トリメリト酸酢酸セルロース、及び前述のもののいずれかの混合物である。好適な市販の腸溶性材料、例えば、EUDRAGIT L 100-55(登録商標)という商標で販売されている。このコーティングは、基材上にスプレーコーティングすることができる。
【0306】
例示的な腸溶性コーティングされていない時間依存性放出ポリマーとしては、例えば、胃液からの水分の吸収により胃の中で膨潤し、それにより粒子のサイズが大きくなり、厚いコーティング層が生じるような、1つ又は複数のポリマーが挙げられる。時間依存性放出コーティングは、一般的に、外部の水性媒体のpHとは無関係の浸食及び/又は拡散特性を有する。したがって、活性成分は、胃の中で拡散することによって粒子から徐放されるか、又は粒子がゆっくり浸食された後に粒子から徐放される。
【0307】
例示的な非腸溶性の時間依存性放出コーティングは、例えば、フィルム形成性化合物、例えばセルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、及び/又はEUDRAGIT(登録商標)ブランドのポリマーの非腸溶性形態等のアクリル系ポリマーである。他のフィルム形成性材料は、単独で、又は互いに、若しくは上記で列挙したものと組み合わせて使用することができる。これらの他のフィルム形成性材料としては、一般的に、例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、ゼイン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、及びエチルセルロース、加えて、他の医薬的に許容される親水性及び疎水性フィルム形成性材料が挙げられる。これらのフィルム形成性材料は、ビヒクルとして水を使用して、又は代替として溶媒系を使用して、基材コアに適用することができる。また含水アルコール系を採用して、フィルム形成のためのビヒクルとして機能させることもできる。
【0308】
本明細書に記載される化合物の時間依存性放出コーティングを作製するのに好適な他の材料としては、これらに限定されないが、例えば、水溶性多糖類ゴム、例えばカラギーナン、フコイダン、ガティガム、トラガカント、アラビノガラクタン、ペクチン、及びキサンタン;多糖類ゴムの水溶性塩、例えばアルギン酸ナトリウム、トラガカントナトリウム(sodium tragacanthin)、及びガティガムナトリウム(sodium gum ghattate);水溶性ヒドロキシアルキルセルロース(ここでアルキル要素は、1から7個の炭素の直鎖又は分岐鎖である)、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース;合成水溶性セルロースベースの薄膜形成物質(lamina former)、例えばメチルセルロース及びそのヒドロキシアルキルメチルセルロースであるセルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシブチルメチルセルロースからなる群から選択されるメンバー;他のセルロースポリマー、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム;並びに当業者公知の他の材料が挙げられる。この目的のために使用できる他の薄膜形成性材料としては、これらに限定されないが、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ゼラチン及びポリビニル-ピロリドンのブレンド、ゼラチン、グルコース、糖、ポビドン、コポビドン、ポリ(ビニルピロリドン)-ポリ(酢酸ビニル)コポリマーが挙げられる。
【0309】
ターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体及びその使用方法はヒトでの使用に関して本明細書で説明したが、それらは、動物、例えば、獣医学的使用にも好適である。したがって、特定の例示的な生物としては、これらに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ、有蹄動物、ウサギ等が挙げられる。
【0310】
前述の製剤及び投与方法は、例示を意図しており、限定ではない。本明細書で提供される教示を使用して、他の好適な製剤及び投与様式を容易に考案できることが理解されると予想される。
【0311】
キット
様々な実施形態において、本明細書に記載される薬剤(本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体)は、キットで提供することができる。特定の実施形態において、キットは、複数用量又は単回用量の容器中に封入された、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体を含む。特定の実施形態において、キットは、使用につき組み立てることができる成分パートを含んでいてもよい。例えば、凍結乾燥形態のターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体及び好適な希釈剤は、使用前組み合わせるために、別個の成分として提供されてもよい。特定の実施形態において、キットは、共投与用の、本明細書に記載されるターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体及び第2の治療剤を含んでいてもよい。活性薬剤及び第2の治療剤は、別個の成分パートとして提供されてもよい。キットは、複数の容器を含んでいてもよく、各容器は、ターゲティングCasエンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体の1つ又は複数の単位用量を保持する。容器は、好ましくは、例えば、本明細書に記載されるように、これらに限定されないが、経口投与の場合、錠剤、ゲルカプセル、持続放出カプセル等;非経口投与の場合、デポー製剤、プレフィルドシリンジ、アンプル、バイアル等;及び局所投与の場合、パッチ、医薬用パッド(medipad)、クリーム等の所望の投与様式に適合されている。
【0312】
特定の実施形態において、キットは、説明書/資料を更に含んでいてもよい。特定の実施形態において、資料は、組成物の投与が、これに限定されないが、例えばアナフィラキシー等のアレルギー反応等の有害反応を引き起こす可能性があることを示す。資料は、アレルギー反応が、単なる軽度のそう痒性発疹として顕在する場合もあれば、又は紅皮症、血管炎、アナフィラキシー、スティーヴンス-ジョンソン(Steven-Johnson)症候群等重度の場合もあることを示すものでもよい。特定の実施形態において、資料は、アナフィラキシーが、致死的な場合もあり、体内に何らかの外来物質が導入されると起こる可能性があることを示すものでもよい。特定の実施形態において、資料は、これらのアレルギー反応そのものは、じんましん又は発疹として顕在化して、致死性の全身性反応に発展する場合もあるが、曝露の直後、例えば10分以内に起こる可能性もあることを示すものでもよい。資料は更に、アレルギー反応が、対象に、感覚異常、低血圧、喉頭浮腫、精神状態変化、顔又は咽頭の血管浮腫、気道閉塞、気管支痙攣、じんましん及びそう痒、血清病、関節炎、アレルギー性腎炎、糸球体腎炎、一時的な関節炎(temporal arthritis)、好酸球増加症、又はそれらの組合せを経験させる可能性があることを示すものでもよい。
【0313】
説明書は、典型的には書面又は印刷物を含むが、それらに限定されない。このような説明を保存し、それらを最終使用者に伝達することが可能なあらゆる媒体が本明細書において予期される。このような媒体としては、これらに限定されないが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)等が挙げられる。このような媒体は、このような説明書を提供するインターネットサイトへのアドレスを含み得る。
【0314】
一部の実施形態において、キットは、例えば、ボックス、ボトル、チューブ、バイアル、容器、噴霧器、注入器、静脈(I.V.)バッグ、薬包紙等の1つ又は複数のパッケージング材料、並びに本明細書に記載される活性薬剤とパッケージング材料とを含む少なくとも1つの薬剤の単位剤形を含んでいてもよい。一部の実施形態において、キットはまた、目的の疾患の予防、治療、又は緩和処置として組成物を使用するための説明も含む。
【0315】
一部の実施形態において、製品は、例えば、ボックス、ボトル、チューブ、バイアル、容器、噴霧器、注入器、静脈(I.V.)バッグ、薬包紙等の1つ又は複数のパッケージング材料;及びパッケージング材料内に1つ又は複数の本明細書に記載されるアロステリックBACE阻害剤を含む少なくとも1つの薬剤の単位剤形を含む第1の組成物を含んでいてもよい。
【実施例0316】
以下の実施例は、特許請求された発明を例示するために提供されるが、それらを限定しない。
【0317】
(実施例1)
T細胞のインビボ適合性の細胞特異的ターゲティング及び編集の開発
この実施例において、本発明者らは、T細胞特異的マーカーであるCD3に対する抗体に係留したCas9 RNPによるT細胞の細胞特異的ターゲティングを実証する(例えば、
図10、パネルAを参照)。このターゲティングは、T細胞への特異的な結合及び取込みとそれに続く効率的なゲノム編集が可能なCas9 RNPのエンドサイトーシスを誘導すると予想される。
【0318】
予備的な研究
T細胞の分子ターゲティング
抗体(Ab)は、所与の細胞型の選択的なターゲティングの信頼できる十分特徴付けられた手段を表す。AbのCas9への補充を可能にするために、本発明者らは、Abの定常領域(F
c)と高親和性で結合できる、プロテインAのフラグメントが結合している融合コンストラクト、Cas9-prAを精製した(Sjodahl (1977) Eur. J. Biochem. 73(2): 343~351; Choeら(2016) Materials 9(12): 994)。この例示的な、ただし非限定的な実施形態において、本発明者らは、複合体をできる限り小さく維持するために、Cas9:Abの1:1の結合を確実にするこのアプローチを選ぶ。Cas9-prAは、初代T細胞へのヌクレオフェクション(例えばエレクトロポレーション)を介して十分に活性であることが観察された(
図10、パネルB)。フローサイトメトリー実験を容易にするために、Cas9及びCas9prAを、上述したようにAlexa Fluor 488で化学的に標識した(Rouetら(2018) J. Am. Chem. Soc. 140(21): 6596~6603)。サイズ排除クロマトグラフィーによりCas9prAとヘテロジニアスなIgG集団との複合体形成を確認した後、同じ検証を、よく特徴付けられた抗CD3AbであるOKT3(治療ではムロモナブとして使用される)で実行した(
図10、パネルC)(Kungら(1979) Science、206(4416): 347~349; Kuhn及びWeiner (2016) Immunotherapy、8(8): 889~906)。したがって本発明者らは、2つの蛍光性の複合体、Cas9prA:OKT3及びCas9prA:IgGを確立して、Cas9 RNPのT細胞への分子ターゲティングを方向付けるOKT3の能力について試験した。
【0319】
ガイドRNA(gRNA)に結合してRNPを形成するCas9prA:OKT3複合体を、ヘテロジニアスなIgGと複合体を形成したCas9prA RNP(陰性対照)と比較して、特異的にT細胞と会合する(例えば、T細胞に結合する、及び/又はT細胞に取り込まれる)その能力について試験した。OKT3は、蛍光標識されたCas9prAを、Cas9prA単独の場合又はCas9prAがヘテロジニアスなIgGに結合している場合より高い頻度でT細胞と結合するように方向付けた(
図11、パネルA)。
【0320】
末梢血単核細胞(PBMCs)で類似の実験を実行したところ、Cas9prA:OKT3 RNPが、30分後、優先的にT細胞に結合することが観察され、B細胞への結合はバックグラウンドレベルのみであった(
図11、パネルB)。T細胞のCas9prA:OKT3との共局在化(蛍光によって検出される)が、30分で表面TCRのレベルを劇的に減少させることが見出され、これは、Cas9prA:OKT3複合体の内在化の可能性を示唆する(
図11、パネルC)。OKT3は、CD3に結合するとTCRの内在化を開始させることができるため、これは予想外ではなかった(Kuhn及びWeiner (2016) Immunotherapy、8(8): 889~906)。
【0321】
本発明者らが知る限り、これは、細胞の混成集団においてゲノム編集酵素を特定の細胞型に優先的に結合させるのに使用される分子ターゲティングの最初の実証である。Cas9prAと本発明者らが選んだAbとの間の、非共有結合による、ただし高親和性の結合は、プラットフォームとして優れた多機能性が最適化される場合、単に2つの成分を混合することによって複合体が形成されることを意味する。
【0322】
本明細書に記載される実施例及び実施形態は単に例示の目的のためであり、その観点から様々な改変又は変更が当業者に示唆されることが理解され、本出願の本質及び範囲並びに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。本明細書において引用された全ての公報、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
前記ターゲティング部分が、抗体、DNA/RNA又はペプチドアプタマー、アンチカリン、レクチン、及びDARPINからなる群から選択される、請求項1に記載のコンストラクト。
軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症、副腎白質ジストロトフィー、アイカルディ症候群、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、アルファ-サラセミア、アンドロゲン不感受性症候群、アペール症候群、不整脈原性右室異形成、毛細血管拡張性運動失調症、バース症候群、ベータ-サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、クリグラー-ナジャー症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、糖原病IV型、ヘモクロマトーシス、ベータ-グロビンの第6コドンにおけるヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー-ギーディオン症候群、白血球接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖沈着症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン-ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー-ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン-テイビ症候群、サンフィリッポ症候群、重症複合免疫不全(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス-マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ-サックス病、血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群、トリーチャー‐コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペル‐リンダウ病、ワーデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット-アルドリッチ症候群、及びX連鎖リンパ増殖症候群、例えば、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病及びテイ-サックス病)、ムコ多糖症(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)、及び血友病等の他の疾患からなる群から選択される疾患の処置のための、又は、
がんの処置のための、又は、
固形腫瘍を含むがんの処置のための、又は、
がん幹細胞を含むがんの処置のための、又は、
乳がん、前立腺がん、結腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、膵臓がん、腎細胞(腎臓)がん、膠芽腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連のがん(例えば、カポジ肉腫、リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、胆管がん、肝外のがん、膀胱がん、骨がん(例えば、ユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫)、脳幹グリオーマ、脳腫瘍(例えば、星細胞腫、脳及び脊髄の腫瘍、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(例えば、小児、消化管)、心臓腫瘍、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、管がん(例えば、胆汁、肝外)、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜がん、上衣細胞腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼のがん(例えば、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、骨の線維性組織球腫、悪性及び骨肉腫、胆嚢がん、胃の(胃)がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば、卵巣がん、睾丸がん、頭蓋外のがん、性腺外のがん、中枢神経系)、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹がん、ヘアリーセル白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん(例えば、腎細胞、ウィルムス腫瘍、及び他の腎臓腫瘍)、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞、口唇口腔がん、肝臓がん(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺がん(例えば、小児、非小細胞、小細胞)、リンパ腫(例えば、AIDS関連、バーキット(例えば、非ホジキンリンパ腫)、皮膚T細胞(例えば、菌状息肉腫、セザリー症候群)、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系(CNS))、マクログロブリン血症、ワルデンストレーム、男性乳がん、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、黒色腫(例えば、小児、眼球内(目))、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性頸部扁平上皮がん、正中線癌、口こうがん、多発性内分泌腺腫症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん、口唇及び中咽頭がん、骨肉腫、膵内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫症、パラガングリオーマ、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、クロム親和性細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂及び尿管、移行上皮がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、ユーイング、カポジ、骨肉腫、横紋筋肉腫、軟部組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚がん(例えば、黒色腫、メルケル細胞癌、基底細胞癌、非メラノーマ性)、小腸がん、扁平上皮癌、原発不明の頸部扁平上皮がん、胃(胃の)がん、睾丸がん、咽喉がん、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺がん、絨毛性腫瘍、尿管及び腎盂がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍からなる群から選択されるがんを含むがんの処置のための、又は、
液性がん(例えば、白血病)を含むがんの処置のための、又は、
固形腫瘍(例えば、黒色腫)を含むがんの処置のための
請求項12又は13に記載の組成物。