(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174866
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】流体アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20231201BHJP
F15B 15/18 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
F15B15/14 340Z
F15B15/14 350
F15B15/14 380D
F15B15/18
F15B15/14 345Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179318
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2019145247の分割
【原出願日】2019-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】二俣 圭吾
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB01
3H081CC23
3H081DD19
3H081DD22
3H081DD37
(57)【要約】
【課題】流体アクチュエータを軽量化する。
【解決手段】流体アクチュエータ10は、内部空間が第1流体室20Aと第2流体室20Bとに区画され、軸線方向A側の端部に第1取付部22zを有するシリンダ20と、流体室内の圧力に応じて軸線方向に往復動作するピストンロッド30とを備えている。シリンダ20における第1流体室20Aを区画する壁部は鉄系合金で構成されている。シリンダ20における第2流体室20Bを区画する径方向の壁部はアルミニウム合金で構成されている。ピストンロッド30は、鉄系合金で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画され前記軸線方向の一方の端部に他の物体に対する取付部を有するシリンダと、
複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドとを備え、
前記シリンダは、前記軸線方向の一方の最も端に位置する流体室を区画する壁部が鉄系合金で構成され、前記軸線方向の一方の最も端に位置する前記流体室よりも他方に位置する流体室を区画する径方向の壁部がアルミニウム合金で構成され、
前記ピストンロッドは、鉄系合金で構成されている
流体アクチュエータ。
【請求項2】
前記シリンダに取り付けられ前記流体室に給排される流体の流体回路が内部に収容されたマニホールドを備え、
前記マニホールドは、アルミニウム合金で構成されている
請求項1に記載の流体アクチュエータ。
【請求項3】
前記流体回路と前記流体室とは、前記マニホールドから前記シリンダへと延びる配管を介して接続されている
請求項2に記載の流体アクチュエータ。
【請求項4】
前記ピストンによって2室に区画された前記流体室のうちの前記軸線方向の一方を第1区分室、前記軸線方向の他方を第2区分室としたとき、
前記第1区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積と前記第2区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積とは異なっている
請求項1~3のいずれか一項に記載の流体アクチュエータ。
【請求項5】
前記流体室の数は2つであり、
一方の前記流体室においては、2室の区分室のうちの前記断面積の大きい区分室が前記軸線方向の一方に位置しており、
他方の前記流体室においては、2室の区分室のうちの前記断面積の大きい区分室が前記軸線方向の他方に位置している
請求項4に記載の流体アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に流体室が区画されている。シリンダの内部にはピストンが収容されており、このピストンによって流体室が2室に分けられている。流体室に供給される流体の圧力が変化することによりピストンが往復動し、そのピストンの往復動に伴って、ピストンに取り付けられた対象物が動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような流体アクチュエータにおいては、流体室に供給される流体の圧力や外部からの衝撃に耐えられるように、シリンダ等の材質として、剛性の高い材料が利用される。しかし、一般に、ステンレス鋼等のようにある程度の剛性を有する材料は、重量も大きい。そのため、流体アクチュエータの軽量化が難しい。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体アクチュエータを軽量化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための流体アクチュエータは、柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画され前記軸線方向の一方の端部に他の物体に対する取付部を有するシリンダと、複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドとを備え、前記シリンダは、前記軸線方向の一方の最も端に位置する流体室を区画する壁部が鉄系合金で構成され、前記軸線方向の一方の最も端に位置する前記流体室よりも他方に位置する流体室を区画する径方向の壁部がアルミニウム合金で構成され、前記ピストンロッドは、鉄系合金で構成されている。
【0007】
シリンダにおいては、例えば取付部の近傍等、基本的には剛性が求められる。また、シリンダにおいては、隣り合う流体室を仕切る壁部等、シリンダの軸線上に位置する壁部には、ピストンの動作に伴う圧力が作用することから、こうした壁部にも剛性が求められる。一方で、流体室の径方向外側を区画する壁部には、ピストンの動作に伴う圧力が作用し難い。そのため、取付部から離れた位置であれば、流体室の径方向外側を区画する壁部には、結合部の近傍ほどの剛性は要求されない。こうした壁部をアルミニウム合金とすることでシリンダを軽量化できる。つまり、流体アクチュエータを軽量化できる。
【0008】
流体アクチュエータは、前記シリンダに取り付けられ前記流体室に給排される流体の流体回路が内部に収容されたマニホールドを備え、前記マニホールドは、アルミニウム合金で構成されていてもよい。このように、シリンダに取り付けられるマニホールドをアルミニウム合金とすることで、流体アクチュエータを軽量化できる。
【0009】
流体アクチュエータにおいて、前記流体回路と前記流体室とは、前記マニホールドから前記シリンダへと延びる配管を介して接続されていてもよい。
上記構成のようにマニホールドとシリンダとを配管で接続すれば、シリンダにおける流体室が設けられる位置の近傍にまでマニホールドを拡大する必要はなく、マニホールドを小型化できる。
【0010】
流体アクチュエータにおいては、前記ピストンによって2室に区画された前記流体室のうちの前記軸線方向の一方を第1区分室、前記軸線方向の他方を第2区分室としたとき、前記第1区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積と前記第2区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積とは異なっていてもよい。
【0011】
ピストンロッドに取り付けられている他の物体が動作することに応じてピストンロッドが動作することがある。このとき、ピストンロッドが動作する瞬間では、第1区分室と第2区分室とにおいて流体の流出入が略無い状態でピストンロッドが動作しようとする。上記構成においては、第1区分室と第2区分室とで断面積が異なっている。そのため、流体室においてピストンが軸線方向の中央近傍に位置している状態では、第1区分室と第2区分室とで容量が異なる。この場合、第1区分室と第2区分室とにおいて流体の流出入が略無い状態では、ピストンに対してつぎの一方向に力が作用する。すなわち、第1区分室と第2区分室とのうち、断面積が大きいことに付随して容量の大きい区分室の側から、断面積が小さいことに付随して容量の小さい区分室の側へと力が作用する。例えば、第1区分室と第2区分室とのうち直交断面積の大きい側がランダムに入れ替わるようにして複数の流体室が並んでいれば、ピストンロッドには、シリンダの軸線方向の一方に作用する力と他方に作用する力とが働く。これらの力を受けることで、ピストンロッドは軸線方向に動き難くなる。そのため、ピストンロッドの動作を抑える上で好適である。
【0012】
流体アクチュエータにおいては、前記流体室の数は2つであり、一方の前記流体室においては、2室の区分室のうちの前記断面積の大きい区分室が前記軸線方向の一方に位置しており、他方の前記流体室においては、2室の区分室のうちの前記断面積の大きい区分室が前記軸線方向の他方に位置していてもよい。
【0013】
例えば、シリンダの軸線方向の一方の流体室では第2区分室よりも第1区分室の方が断面積が大きく、他方の流体室では第1区分室よりも第2区分室のほうが断面積が大きいものとする。この場合、ピストンロッドに取り付けられている他の物体が動作することに応じてピストンロッドが動作する瞬間、すなわち第1区分室と第2区分室とにおいて流体の流出入が略無い状態では、ピストンが流体室における軸線方向の中央近傍に位置していれば、ピストンに対してつぎの方向に力が作用する。軸線方向の一方の流体室では、第1区分室から第2区分室の側へ、すなわちシリンダの軸線方向の他方へと力が作用する。軸線方向の他方の流体室では、第2区分室から第1区分室の側へ、すなわちシリンダの軸線方向の一方へと力が作用する。つまり、シリンダの軸線方向に関してシリンダの中央へ向かうように両側からピストンロッドに力が作用することから、ピストンロッドを中央近傍の位置に保持し易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体アクチュエータを軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】流体アクチュエータシステムにおける第1切替パターンを表した概略図。
【
図3】流体アクチュエータシステムにおける第1切替パターンを表した概略図。
【
図4】流体アクチュエータシステムにおける第2切替パターンを表した概略図。
【
図5】流体アクチュエータシステムにおける第3切替パターンを表した概略図。
【
図6】流体アクチュエータシステムにおける第4切替パターンを表した概略図。
【
図7】流体アクチュエータシステムにおける第5切替パターンを表した概略図。
【
図11】流体アクチュエータの変更例を表した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、流体アクチュエータを備える流体アクチュエータシステムの一実施形態を説明する。流体アクチュエータシステムは、航空機のフラップの動作に用いられるシステムである。
【0017】
先ず、流体アクチュエータについて説明する。
図1に示すように、流体アクチュエータ10のシリンダ20は、第1シリンダ体22を有する。第1シリンダ体22の本体22mは、円筒状になっている。この第1シリンダ体22の本体22mの中心軸線Xが、シリンダ20の中心軸線になっている。第1シリンダ体22の本体22mは、軸線方向A側の端が端壁22aで塞がれている。この端壁22aにおいては、平面視円形状の底部貫通孔22bが貫通している。底部貫通孔22bの中心軸線は、第1シリンダ体22の本体22mの中心軸線Xと一致している。また、第1シリンダ体22の本体22mの外周面からは、他の物体をシリンダ20に取り付けるための第1取付部22zが外側へ張り出している。第1取付部22zは、板状になっている。第1取付部22zは、第1シリンダ体22の本体22mの軸線方向A側の端部に位置している。図示は省略するが、第1取付部22zには、流体アクチュエータ10を他の物体へ取り付けるためのボルトが挿通されるボス等が設けられている。この実施形態では、第1取付部22zを介して第1シリンダ体22が航空機の機体に取り付けられている。なお、軸線方向において、第1取付部22zが位置する側が「軸線方向の一方」に相当する「軸線方向A側」であり、A側の反対方向が「軸線方向の他方」に相当する「軸線方向B側」である。
【0018】
第1シリンダ体22の本体22mの外周面からは、フランジ22fが外側へ張り出している。フランジ22fは、第1シリンダ体22の本体22mの軸線方向B側の端に位置している。フランジ22fは、第1シリンダ体22の本体22mの端の全周に亘っている。第1シリンダ体22の本体22mの外周壁においては、ポート孔Pが貫通している。ポート孔Pは、第1シリンダ体22の本体22mの軸線方向の中央を挟んでA側とB側とに1つずつ設けられている。第1シリンダ体22の材料は、ステンレスになっている。すなわち、第1シリンダ体22の本体22m、端壁22a、第1取付部22z、フランジ22fのそれぞれを構成する壁部は全て、鉄系合金であるステンレスで構成されている。
【0019】
第1シリンダ体22の本体22mの軸線方向B側の端面には、平面視で円環状の第2シリンダ体24が配置されている。第2シリンダ体24は、第1シリンダ体22の本体22mと同軸で設けられている。第2シリンダ体24の内径は、第1シリンダ体22の本体22mの内径よりも小さく、第1シリンダ体22の底部貫通孔22bの径よりも大きくなっている。第2シリンダ体24の材料は、ブロンズになっている。
【0020】
第2シリンダ体24に対して第1シリンダ体22とは反対側には、円筒状の第3シリンダ体26が配置されている。第3シリンダ体26は、第2シリンダ体24と同軸で設けられている。第3シリンダ体26の内径及び外径はそれぞれ、第1シリンダ体22の本体22mの内径及び外径と同じなっている。第3シリンダ体26の外周面からは、フランジ26fが外側へ張り出している。フランジ26fは、第3シリンダ体26の軸線方向A側の端に位置している。フランジ26fは、第3シリンダ体26の端の全周に亘っている。フランジ26fの外径は、第1シリンダ体22のフランジ22fの外径と同じになっている。フランジ26fは、第1シリンダ体22のフランジ22fとの間に第2シリンダ体24を挟み込んだ状態で、第1シリンダ体22のフランジ22f及び第2シリンダ体24と共に図示しないボルトで一体に結合されている。
【0021】
第3シリンダ体26の外周壁においては、ポート孔が貫通している。ポート孔は、第3シリンダ体26の軸線方向の中央を挟んでA側とB側とにそれぞれ設けられている。なお、第3シリンダ体26のポート孔は、
図1に示す断面とは異なる位置に設けられているため、
図1には示されていない。第3シリンダ体26の材料はアルミニウム合金になっている。すなわち、第3シリンダ体26を構成する全ての壁部は、アルミニウム合金で構成されている。
【0022】
第3シリンダ体26における軸線方向B側の端部には、平面視で円環状の第4シリンダ体28が配置されている。第4シリンダ体28は、第3シリンダ体26の内部に配置されている。第4シリンダ体28は、第3シリンダ体26と同軸で設けられている。第4シリンダ体28の外径は、第3シリンダ体26の内径と同じになっている。すなわち、第4シリンダ体28は、第3シリンダ体26における軸線方向B側の端を塞ぐようにして設けられている。第4シリンダ体28の材料は、ステンレスになっている。
【0023】
上記のとおり、第1シリンダ体22、第2シリンダ体24、第3シリンダ体26、及び第4シリンダ体28を一体的に組み合わせたシリンダ20は、全体としては円筒の両端を塞いだような形状なっている。すなわち、シリンダ20は、柱状の内部空間を有する。シリンダ20における軸線方向A側の底部は第1シリンダ体22の端壁22aによって構成され、B側の底部は第4シリンダ体28によって構成されている。また、シリンダ20の内部空間は、第2シリンダ体24を境界として、軸線方向に2室に分けられている。つまり、シリンダ20の内部には、シリンダ20の軸線方向に並ぶようにして、当該軸線方向A側に位置する第1流体室20Aと、軸線方向B側に位置する第2流体室20Bとが区画されている。
【0024】
シリンダ20の外周面には、第1流体室20A及び第2流体室20Bに給排される作動油の回路(以下、油圧回路と称する。)が内部に収容されたマニホールド14が取り付けられている。マニホールド14は、全体としては直方体状になっている。マニホールド14は、シリンダ20の軸線方向に関して、第3シリンダ体26の延在範囲の略全域に亘っている。マニホールド14は、第3シリンダ体26の外周面をシリンダ20の軸線方向に沿うようにしてシリンダ20と一体に配置されている。マニホールド14は、第3シリンダ体26のフランジ26fを介して図示しないボルトでシリンダ20に取り付けられている。マニホールド14の材料はアルミニウム合金になっている。
【0025】
マニホールド14からは、配管16が延びている。配管16は、4つ設けられている。なお、
図1では、配管を2つのみ示している。それぞれの配管16は、マニホールド14の内部の油圧回路に繋がっている。上記のように、シリンダ20には、4つのポート孔Pが存在している。上記した4つの配管16は、ポート孔P毎に設けられていて、それぞれのポート孔Pに接続されている。この結果として、流体回路とシリンダ20の内部空間とが接続されている。
【0026】
シリンダ20の内部には、ピストンロッド30が配置されている。ピストンロッド30は、全体としては円筒状の第1ピストン体40を備えている。第1ピストン体40は、その軸線方向の途中の位置で外径と内径との双方が一体的に変化していて軸線方向の途中に段差を有する。そのため、第1ピストン体40は、その軸線方向のA側寄りの部分とB側寄りの部分とで外径が異なっているとともに、A側寄りの部分とB側寄りの部分とで内径も異なっている。具体的には、第1ピストン体40におけるA側寄りの部分を構成する大径部42の外径42Lよりも、B側寄りの部分を構成する小径部44の外径44Lの方が小さくなっている。この小径部44の外径44Lは、大径部42の内径42Pよりも小さくなっている。したがって、小径部44の内径も、大径部42の内径42Pよりも小さくなっている。大径部42と小径部44との境界は段差になっている。
【0027】
第1ピストン体40の外周面からは、第1ピストン46が外側へ張り出している。第1ピストン46は、大径部42における軸線方向A側の端に位置している。第1ピストン46は、大径部42の端の全周に亘っている。第1ピストン46の外周面においては、当該外周面の全周に亘って溝が窪んでいる。この溝には、当該第1ピストン46とシリンダ20との間の隙間を塞ぐためのシール部材Sが装着されている。また、第1ピストン体40において、小径部44における軸線方向B側の端部は、外周面にねじが切られたねじ部44zになっている。なお、小径部44における軸線方向B側の端は塞がれている。この端を塞いでいる壁部の内面においては、取付溝44wが窪んでいる。このように、第1ピストン体40は、第1ピストン46と、第1ピストン46から軸線方向B側へ延びている大径部42と、大径部42から軸線方向B側へ延びている小径部44とを備えている。そして、大径部42における軸線方向A側の端は、第1ピストン体40の内部の柱状の空間を軸線方向A側に開口する開口部42bとなっている。
【0028】
第1ピストン体40の小径部44は、第2ピストン体50における円筒状の筒状体51に挿通されている。筒状体51の内径51Pは、第1ピストン体40の小径部44の外径44Lと同じになっている。また、筒状体51の外径51Lは、第1ピストン体40の大径部42の内径42Pと同じになっている。
【0029】
第2ピストン体50の筒状体51の外周面からは、第2ピストン52が外側へ張り出している。第2ピストン52は、筒状体51における軸線方向A側の端に位置している。第2ピストン52は、筒状体51の端の全周に亘っている。第2ピストン52の外径は、第1ピストン体40の第1ピストン46の外径と同じになっている。第2ピストン52の外周面においては、当該外周面の全周に亘って溝が窪んでいる。この溝には、第2ピストン52とシリンダ20との間の隙間を塞ぐためのシール部材Sが装着されている。
【0030】
第2ピストン体50の筒状体51における軸線方向A側の端面は、第1ピストン体40における大径部42の外周面と小径部44の外周面との境界の段差面40aに当接している。ここで、筒状体51の軸線方向の長さは、第1ピストン体40の小径部44の長さよりも短くなっている。この結果として、筒状体51は、第1ピストン体40の小径部44の全域を覆っておらず、小径部44における軸線方向B側の端部、すなわちねじ部44zは筒状体51から露出している。
【0031】
第2ピストン体50の筒状体51から露出している上記のねじ部44zには、ピストンロッド30に他の物体を取り付けるためのピストンエンド60が螺合されている。具体的には、ピストンエンド60は、円柱状の結合部62を有する。結合部62は、第1ピストン体40及び第2ピストン体50と同軸で配置されている。結合部62の外径は、第2ピストン体50の筒状体51の外径と同じになっている。結合部62における軸線方向A側の端面においては、結合穴62aが窪んでいる。結合穴62aの内面には、ねじが切られている。そして、結合穴62aに第1ピストン体40のねじ部44zが螺合されている。一方で、結合穴62aの径方向外側において、当該結合部62の軸線方向A側の端面は、第2ピストン体50の筒状体51における軸線方向B側の端面に当接している。結合部62は、第1ピストン体40の段差面40aとの間に筒状体51を圧縮した状態で挟み込んでいる。なお、結合部62における軸線方向B側の端面からは、他の物体を取り付けるための第2取付部64が張り出している。この実施形態では、第2取付部64は、航空機のフラップに取り付けられている。
【0032】
以上のように構成されたピストンロッド30は、当該ピストンロッドの中心軸線とシリンダ20の中心軸線とが一致した状態でつぎのようにしてシリンダ20に収容されている。ピストンロッド30は、シリンダ20における軸線方向B側の底部である第4シリンダ体の内側の孔部を通じて、シリンダ20の軸線方向B側からA側へ向けてシリンダ20の内部に挿入されている。ピストンロッド30の第1ピストン体40は、シリンダ20の第2シリンダ体24の内側の孔部を通じて、当該第2シリンダ体24よりも軸線方向のA側とB側とに跨って配置されている。そして、第1ピストン体40の第1ピストン46は、シリンダ20の第2シリンダ体24よりも軸線方向A側に位置している。詳細には、第1ピストン46は、第1シリンダ体22における2つのポート孔Pの間に位置している。また、第1ピストン体40の大径部42の一部は、第2シリンダ体24の内側の孔部に位置している。また、第2ピストン体50の第2ピストン52は、第2シリンダ体24よりも軸線方向B側に位置している。詳細には、第2ピストン52は、第3シリンダ体26における2つのポート孔の間に位置している。第2ピストン体50の筒状体51の一部は、第4シリンダ体28の内側の孔部に位置している。そして、ピストンエンド60は、シリンダ20の外側に位置している。なお、第1ピストン46の外径は、第1シリンダ体22の本体22mの内径と一致している。第1ピストン体40の大径部42の外径42Lは、第2シリンダ体24の内径と一致している。第2ピストン52の外径は、第3シリンダ体26の内径と一致している。第2ピストン体50の筒状体51の外径51Lは、第4シリンダ体28の内径と一致している。
【0033】
シリンダ20における軸線方向A側の底部である第1シリンダ体22の端壁22aには、板状の固定部材70が取り付けられている。固定部材70は、第1シリンダ体22の端壁22aに設けられている底部貫通孔22bをシリンダ20の外側から塞いでいる。固定部材70には、円筒状のガイド部材72が固定されている。ガイド部材72は、底部貫通孔22bを貫通してシリンダ20の内部へと延びている。すなわち、ガイド部材72は、シリンダ20における軸線方向A側の底部からB側へと延びている。ガイド部材72の外径は、底部貫通孔22bの径と同じになっている。また、ガイド部材72の外径72Lは、第1ピストン体40の大径部42の内径42Pと同じになっている。つまり、ガイド部材72の外径72Lは、第2ピストン体50の筒状体51の外径51Lとも同じになっている。ガイド部材72は、第1ピストン体40の内部に挿入されている。ガイド部材72は、シリンダ20の軸線方向に関して、第2シリンダ体24にまで至っている。
【0034】
ここで、第1ピストン体40の大径部42の内周面においては、周方向の全域に亘って保持溝42aが窪んでいる。保持溝42aは、大径部42における軸線方向A側の端部に位置している。保持溝42aには、第1ピストン体40とガイド部材72との間の隙間を塞ぐシール部材Sが装着されている。
【0035】
さて、シリンダ20にガイド部材72及びピストンロッド30が収容された状態では、シリンダ20における第1流体室20A及び第2流体室20Bがそれぞれ2室に分けられている。具体的には、第1流体室20Aは、第1ピストン体40の第1ピストン46によってシリンダ20の軸線方向に関して2室に分けられている。この2室のうち、シリンダ20の軸線方向A側に位置している第1区分室20A1の径方向内側は、ガイド部材72で区画されている。また、上記2室のうち、シリンダ20の軸線方向B側に位置している第2区分室20A2の径方向内側は、第1ピストン体40の大径部42で区画されている。上記のとおり、ガイド部材72の外径72Lは、大径部42の外径42Lよりも小さいことから、第1区分室20A1に関するシリンダ20の軸線方向と直交する断面積(以下、直交断面積と称する)は、第2区分室20A2に関する直交断面積よりも大きくなっている。
【0036】
第2流体室20Bは、第2ピストン体50の第2ピストン52によってシリンダ20の軸線方向に関して2室に分けられている。この2室のうち、シリンダ20の軸線方向A側に位置している第1区分室20B1の径方向内側は、第1ピストン体40の大径部42で区画されている。また、上記2室のうち、シリンダ20の軸線方向B側に位置している第2区分室20B2の径方向内側は、第2ピストン体50の筒状体51で区画されている。上記のとおり、第2ピストン体50の筒状体51の外径51Lは第1ピストン体40の大径部42の外径42Lよりも小さいことから、第2区分室20B2に関する直交断面積は、第1区分室20B1に関する直交断面積よりも大きくなっている。
【0037】
第1流体室20Aにおける第2区分室20A2の径方向内側と、第2流体室20Bにおける第1区分室20B1の径方向内側とが共に第1ピストン体40の大径部42で区画されていることから、これら双方の区分室20A2,20B1の直交断面積は同じになっている。また、第1流体室20Aにおける第1区分室20A1の径方向内側を区画するガイド部材72の外径72Lと、第2流体室20Bにおける第2区分室20B2の径方向内側を区画する第2ピストン体50の筒状体51の外径51Lとが同じであることから、これら双方の区分室20A1,20B2の直交断面積は同じになっている。
【0038】
さて、固定部材70からは、円筒状の外側部材74がシリンダ20の内部へと延びている。外側部材74は、ガイド部材72の内側でガイド部材72と同軸で設けられている。外側部材74の内側には、シリンダ20の軸線方向B側から、円柱状の内側部材76が挿入されている。内側部材76における軸線方向B側の端部は、第1ピストン体40の軸線方向B側の端部に設けられた上記の取付溝44wに固定されている。内側部材76は、ピストンロッド30が第1流体室20A及び第2流体室20Bの圧力に応じてシリンダ20の軸線方向に往復動作することに応じて、外側部材74に対する位置が変化する。外側部材74の内部には、内側部材76の位置に応じて磁界が変化するコイルが設けられていて、この磁界の変化は図示しない検出回路で検出される。こうした検出回路、外側部材74、及び内側部材76は、外側部材74に対する内側部材76の位置を検出することでピストンロッド30の位置を検出する差動トランス型位置検出器73を構成する。
【0039】
次に、流体アクチュエータシステムの流路系について説明する。流体アクチュエータシステムにおける流路は、流体アクチュエータの流体室毎、すなわち第1流体室20Aと第2流体室20Bとのそれぞれに関して設けられている。先ず、第1流体室20Aに係る流路について説明する。
【0040】
図示は省略するが、マニホールド14の内部には、作動油が貯留されたタンクが収容されている。タンクには第1供給通路112が接続されている。
図2に示すように、第1供給通路112の途中には、ポンプ114が取り付けられている。第1供給通路112におけるポンプ114よりも下流側には、作動油の逆流を規制する逆止弁115が設けられている。第1供給通路112におけるタンクとは反対側は、3位置4ポート弁である第1通路切替弁120に接続されている。
【0041】
また、タンクには第1排出通路116が接続されている。第1排出通路116の途中には、補充用の作動油を貯留する第1コンペンセータ118が取り付けられている。第1排出通路116におけるタンクとは反対側は、第1通路切替弁120に接続されている。上記第1コンペンセータ118は、第1通路切替弁120側の圧力に応じて、貯留した作動油を第1通路切替弁120側へ供給する。また、第1コンペンセータ118は、第1通路切替弁120側から一定以上の圧力がかかると、タンクに向けて作動油を吐出する。
【0042】
第1通路切替弁120には、上記の第1供給通路112及び第1排出通路116に加え、第1区分室20A1用の中継通路122及び第2区分室20A2用の中継通路124も接続されている。第1通路切替弁120は、後述する制御装置100からの駆動信号に応じて、連通位置120a、遮断位置120b、及び反転連通位置120cの3つの位置に切り替えられ、第1流体室20Aへの作動油の給排を制御する。
図2に示すように、第1通路切替弁120が連通位置120aに切り替えられた場合、第1供給通路112と第1区分室20A1用の中継通路122とが連通され、第1排出通路116と第2区分室20A2の中継通路124とが連通される。
図3に示すように、第1通路切替弁120が反転連通位置120cに切り替えられた場合、第1供給通路112と第2区分室20A2用の中継通路124とが連通され、第1排出通路116と第1区分室20A1の中継通路122とが連通される。
図6に示すように、第1通路切替弁120が遮断位置120bに切り替えられた場合、第1供給通路112及び第1排出通路116は、第1区分室20A1用の中継通路122とも第2区分室20A2用の中継通路124とも連通が遮断される。
【0043】
図2に示すように、第1区分室20A1用の中継通路122における第1通路切替弁120とは反対側は、3位置4ポート弁である第1モード切替弁126に接続されている。また、第2区分室20A2用の中継通路124における第1通路切替弁120とは反対側も、第1モード切替弁126に接続されている。これらの中継通路122,124に加え、第1モード切替弁126には、第1区分室20A1用の連絡通路128及び第2区分室20A2用の連絡通路129が接続されている。第1区分室20A1用の連絡通路128における第1モード切替弁126とは反対側は、第1区分室20A1に接続されている。第2区分室20A2用の連絡通路129における第1モード切替弁126とは反対側は、第2区分室20A2に接続されている。
【0044】
第1モード切替弁126は、後述する制御装置100からの駆動信号に応じて、連通位置126a、通常遮断位置126b、減衰用遮断位置126cの3つの位置に切り替えられ、第1流体室20Aへの作動油の給排を制御する。
図2に示すように、第1モード切替弁126が連通位置126aに切り替えられた場合、第1モード切替弁126はノーマルモードとなる。そして、第1モード切替弁126が連通位置126aに切り替えられた場合、第1区分室20A1用の中継通路122と連絡通路128とが連通され、第2区分室20A2用の中継通路124と連絡通路129とが連通される。つまり、第1通路切替弁120を介して、第1区分室20A1と第2区分室20A2とのいずれか一方が第1供給通路112に連通され、いずれか他方が第1排出通路116に連通される。
【0045】
図7に示すように、第1モード切替弁126が減衰用遮断位置126cに切り替えられた場合、第1モード切替弁126はダンピングモードとなる。具体的には、第1モード切替弁126が減衰用遮断位置126cに切り替えられた場合、第1区分室20A1用の中継通路122と連絡通路128との連通が遮断され、第2区分室20A2用の中継通路124と連絡通路129との連通が遮断される。そして、第1区分室20A1用の連絡通路128と、第2区分室20A2用の連絡通路129とがオリフィス126sを介して連通される。すなわち、第1モード切替弁126が減衰用遮断位置126cに切り替えられた場合における当該第1モード切替弁126内の流路には、通路断面積が他の箇所よりも小さくなる箇所であって作動油の流れの抵抗となる箇所が設けられている。第1モード切替弁126が減衰用遮断位置126cに切り替えられた場合、こうした抵抗を介して第1区分室20A1と第2区分室20A2とが連通される。
【0046】
図6に示すように、第1モード切替弁126が通常遮断位置126bに切り替えられた場合、第1モード切替弁126はフリーモードとなる。第1モード切替弁126が通常遮断位置126bに切り替えられた場合、第1区分室20A1用の中継通路122と連絡通路128との連通が遮断され、第2区分室20A2用の中継通路124と連絡通路129との連通が遮断される。そして、第1区分室20A1用の連絡通路128と、第2区分室20A2用の連絡通路129とがオリフィスを介することなく連通される。すなわち、第1モード切替弁126が通常遮断位置126bに切り替えられた場合、抵抗を介すことなく第1区分室20A1と第2区分室20A2とが連通される。
【0047】
各連絡通路128,129、各中継通路122,124、第1モード切替弁126、第1通路切替弁120、第1供給通路112、第1排出通路116は、第1油圧回路110を構成する。第1油圧回路110は、マニホールド14に収容されている。
【0048】
次に、第2流体室20Bに係る流路について説明する。この流路は、第1流体室20Aに係る流路と同じ構成になっている。そのため、この流路については、通路及び切替弁の接続関係を主に説明し、それぞれの機能の詳細については重複した説明は省略する。
【0049】
第2流体室20Bに係る流路において、タンクには、第2供給通路212及び第2排出通路216が接続されている。
図2に示すように、第2供給通路212には、ポンプ214と逆止弁215とが設けられている。第2排出通路216には、第2コンペンセータ218が設けられている。第2供給通路212及び第2排出通路216は、第2通路切替弁220に接続されている。第2通路切替弁220には、第1区分室20B1用の中継通路222、及び第2区分室20B2用の中継通路224も接続されている。第2通路切替弁220は、連通位置220a、遮断位置220b、反転連通位置220cに位置が切り替えられる。第1区分室20B1用の中継通路222、及び第2区分室20B2用の中継通路224は、第2モード切替弁226に接続されている。第2モード切替弁226には、第1区分室20B1用の連絡通路228、及び第2区分室20B2用の連絡通路229も接続されている。第1区分室20B1用の連絡通路228は第1区分室20B1に接続され、第2区分室20B2用の連絡通路229は第2区分室20B2に接続されている。第2モード切替弁226は、連通位置226a、通常遮断位置226b、減衰用遮断位置226cに位置が切り替えられる。すなわち、第2モード切替弁226は、ノーマルモード、ダンピングモード、フリーモードのいずれかにすることができる。
【0050】
各連絡通路228,229、各中継通路222,224、第2モード切替弁226、第2通路切替弁220、第2供給通路212、第2排出通路216は、第2油圧回路210を構成する。第2油圧回路210は、マニホールド14に収容されている。
【0051】
次に、流体アクチュエータシステムの制御構成について説明する。
第1通路切替弁120、第1モード切替弁126、第2通路切替弁220、第2モード切替弁226は、制御部である制御装置100で制御される。制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、制御装置100は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0052】
制御装置100には、第1油圧回路110における作動油の圧力を監視するための複数の圧力検出器からの検出信号が入力される。また、制御装置100には、第2油圧回路210における作動油の圧力を監視するための複数の圧力検出器からの検出信号が入力される。また、制御装置100には、差動トランス型位置検出器73からの検出信号が入力される。制御装置100は、差動トランス型位置検出器73からの検出信号に基づいて、ピストンロッド30の動作速度を算出する。すなわち、差動トランス型位置検出器73は、ピストンロッド30の動作速度を検出するための検出機器になっている。また、制御装置100には、流体アクチュエータ10のピストンロッド30が取り付けられているフラップに対して取り付けられている他の複数の流体アクチュエータに関する信号が入力される。具体的には、制御装置100には、他の複数の流体アクチュエータに係るモード切替弁が、ノーマルモード、フリーモード、ダンピングモードのいずれであるかに関する信号が入力される。流体アクチュエータシステムは、以上に説明した制御装置100、第1油圧回路110、第2油圧回路210、流体アクチュエータ10を含んで構成されている。
【0053】
次に、制御装置100による制御及びその制御に応じた流体アクチュエータシステムの作用について説明する。制御装置100は、第1油圧回路110及び第2油圧回路210における異常の有無に応じて、つぎの5つの切替パターンを実行する。
【0054】
<第1切替パターン>
図2に示すように、制御装置100は、第1油圧回路110と第2油圧回路210との双方に異常が生じていない場合、第1切替パターンとして、第1モード切替弁126を連通位置126aに切り替えるとともに第2モード切替弁226を連通位置226aに切り替えてこれらの双方をノーマルモードとする。この場合、制御装置100は、差動トランス型位置検出器73の検出信号に基づいて、第1通路切替弁120及び第2通路切替弁220の双方を連通位置または反転連通位置に切り替える。
【0055】
具体的には、制御装置100は、ピストンロッド30の位置が、目標位置よりもシリンダ20の軸線方向A側である場合、第1供給通路112のポンプ114を駆動するとともに、第1通路切替弁120を連通位置120aに切り替える。この結果として、第1供給通路112と第1流体室20Aの第1区分室20A1とが連通され、第1排出通路116と第1流体室20Aの第2区分室20A2とが連通される。そして、第1供給通路112から第1流体室20Aの第1区分室20A1に作動油が供給され、第1流体室20Aの第2区分室20A2から第1排出通路116へ作動油が排出される。また、制御装置100は、第2供給通路212のポンプ214を駆動するとともに、第2通路切替弁220を連通位置220aに切り替える。この結果として、第1油圧回路110の場合と同様、第2供給通路212から第2流体室20Bの第1区分室20B1に作動油が供給され、第2流体室20Bの第2区分室20B2から第2排出通路216へ作動油が排出される。これらの結果として、ピストンロッド30がシリンダ20の軸線方向B側へと動作する。
【0056】
一方、
図3に示すように、制御装置100は、ピストンロッド30の位置が、目標位置よりもシリンダ20の軸線方向B側である場合、第1供給通路112のポンプ114を駆動するとともに、第1通路切替弁120を反転連通位置120cに切り替える。この結果として、第1供給通路112と第1流体室20Aの第2区分室20A2とが連通され、第1排出通路116と第1流体室20Aの第1区分室20A1とが連通される。また、制御装置100は、第1油圧回路110の場合と同様、第2通路切替弁220を反転連通位置220cに切り替えて、第2供給通路212と第2流体室20Bの第2区分室20B2とを連通し、第2排出通路216と第2流体室20Bの第1区分室20B1とを連通する。これらの結果としてピストンロッド30がシリンダ20の軸線方向A側へと動作する。
【0057】
なお、制御装置100は、第1通路切替弁120が連通位置120aにある状態でピストンロッド30が目標位置に至ると、第1供給通路112のポンプ114の駆動を停止する。このとき、第1コンペンセータ118は、第1流体室20Aの第2区分室20A2と連通される。第1コンペンセータ118は、第2区分室20A2の作動油が熱によって膨張した場合には作動油を蓄え、作動油が熱によって収縮した場合や作動油が外部に漏れだしている場合には、第2区分室20A2に作動油を補充する。第1コンペンセータ118は、第1通路切替弁120が反転連通位置120cにある場合も同様に機能する。第2コンペンセータ218も同様に機能する。
【0058】
<第2切替パターン>
図4に示すように、制御装置100は、第1油圧回路110に異常が生じておらず、第2油圧回路210に異常が生じている場合、第2切替パターンとして、第1モード切替弁126を連通位置126aに切り替えて当該第1モード切替弁126をノーマルモードとする。また、制御装置100は、第2モード切替弁226を通常遮断位置226bに切り替えて当該第2モード切替弁226をフリーモードとする。
【0059】
制御装置100は、第2切替パターンでは、第2通路切替弁220を遮断位置220bに切り替える。ここで、第2モード切替弁226が通常遮断位置226bに切り替えられていることから、第2流体室20Bの第1区分室20B1と第2区分室20B2とが連通される。したがって、作動油は、第2流体室20Bの第1区分室20B1と第2区分室20B2とを自由に行き来できるようになる。
【0060】
一方で、制御装置100は、第1切替パターンの場合と同様、差動トランス型位置検出器73の検出信号に基づいて、第1通路切替弁120を連通位置120aまたは反転連通位置120cに切り替える。ピストンロッド30の位置が目標位置よりもシリンダ20の軸線方向A側である場合、制御装置100は、第1通路切替弁120を連通位置120aに切り替える。この場合、第1供給通路112と第1流体室20Aの第1区分室20A1とが連通され、第1排出通路116と第1流体室20Aの第2区分室20A2とが連通される。そして、第1供給通路112から第1流体室20Aの第1区分室20A1に作動油が供給され、第1流体室20Aの第2区分室20A2から第1排出通路116へ作動油が排出される。この結果として、ピストンロッド30がシリンダ20の軸線方向B側へと動作する。また、ピストンロッド30の位置が目標位置よりもシリンダ20の軸線方向B側である場合、制御装置100は、
図4の一点鎖線で示すように、第1通路切替弁120を反転連通位置120cに切り替える。この場合、第1供給通路112と第1流体室20Aの第2区分室20A2とが連通され、第1排出通路116と第1流体室20Aの第1区分室20A1とが連通される。そして、第1供給通路112から第1流体室20Aの第2区分室20A2に作動油が供給され、第1流体室20Aの第1区分室20A1から第1排出通路116へ作動油が排出される。この結果として、ピストンロッド30がシリンダ20の軸線方向A側へと動作する。
【0061】
<第3切替パターン>
図5に示すように、制御装置100は、第2油圧回路210に異常が生じておらず、第1油圧回路110に異常が生じている場合、第3切替パターンとして、第2モード切替弁226を連通位置226aに切り替えて当該第2モード切替弁226をノーマルモードとする。また、制御装置100は、第1モード切替弁126を通常遮断位置126bに切り替えて当該第1モード切替弁126をフリーモードとする。
【0062】
制御装置100は、第3切替パターンでは、第1通路切替弁120を遮断位置120bに切り替える。ここで、第1モード切替弁126が通常遮断位置126bに切り替えられていることから、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2区分室20A2とが連通される。したがって、作動油は、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2区分室20A2とを自由に行き来できるようになる。
【0063】
一方で、制御装置100は、第1切替パターンの場合と同様、差動トランス型位置検出器73の検出信号に基づいて、第2通路切替弁220を連通位置220aまたは反転連通位置220cに切り替える。ピストンロッド30の位置が目標位置よりもシリンダ20の軸線方向A側である場合、制御装置100は、第2通路切替弁220を連通位置220aに切り替える。この場合、第2供給通路212と第2流体室20Bの第1区分室20B1とが連通され、第2排出通路216と第2流体室20Bの第2区分室20B2とが連通される。そして、第2供給通路212から第2流体室20Bの第1区分室20B1に作動油が供給され、第2流体室20Bの第2区分室20B2から第2排出通路216へ作動油が排出される。この結果として、ピストンロッド30がシリンダ20の軸線方向B側へと動作する。また、ピストンロッド30の位置が目標位置よりもシリンダ20の軸線方向B側である場合、制御装置100は、
図5の一点鎖線で示すように、第2通路切替弁220を反転連通位置220cに切り替える。この場合、第2供給通路212と第2流体室20Bの第2区分室20B2とが連通され、第2排出通路216と第2流体室20Bの第1区分室20B1とが連通される。そして、第2供給通路212から第2流体室20Bの第2区分室20B2に作動油が供給され、第2流体室20Bの第1区分室20B1から第2排出通路216へ作動油が排出される。この結果として、ピストンロッド30がシリンダ20の軸線方向A側へと動作する。
【0064】
<第4切替パターン>
図6に示すように、制御装置100は、第1油圧回路110と第2油圧回路210との双方において作動油の圧力に異常が生じている場合であって、尚且つ流体アクチュエータ10が取り付けられているフラップに取り付けられている他の流体アクチュエータのうち、モード切替弁がノーマルモードに切り替えられているものが存在している場合、第4切替パターンを実行する。第4切替パターンでは、制御装置100は、第1モード切替弁126を通常遮断位置126bに切り替えるとともに、第2モード切替弁226を通常遮断位置226bに切り替える。すなわち、制御装置100は、第1モード切替弁126及び第2モード切替弁226の双方をフリーモードに切り替える。なお、制御装置100は、第4切替パターンでは、第1通路切替弁120を遮断位置120bに切り替えるとともに、第2通路切替弁220を遮断位置220bに切り替える。こうした第4切替パターンにおいは、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2区分室20A2とが連通され、第2流体室20Bの第1区分室20B1と第2区分室20B2とが連通される。したがって、作動油は、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2区分室20A2とを自由に行き来できる。また、作動油は、第2流体室20Bの第1区分室20B1と第2区分室20B2とを自由に行き来できる。このことから、ピストンロッド30は、他の流体アクチュエータの動作に伴うフラップの動作に応じて、抵抗を受けることなく動作する。
【0065】
<第5切替パターン>
図7に示すように、制御装置100は、第1油圧回路110と第2油圧回路210との双方において作動油の圧力に異常が生じている場合であって、尚且つ流体アクチュエータ10が取り付けられているフラップに取り付けられている他の流体アクチュエータのうち、モード切替弁がノーマルモードに切り替えられているものが存在していない場合、第5切替パターンを実行する。第5切替パターンでは、制御装置100は、第1モード切替弁126を減衰用遮断位置126cに切り替えるとともに、第2モード切替弁226を減衰用遮断位置226cに切り替える。すなわち、制御装置100は、第1モード切替弁126及び第2モード切替弁226の双方をダンピングモードに切り替える。なお、制御装置100は、第5切替パターンでは、第1通路切替弁120を遮断位置120bに切り替えるとともに、第2通路切替弁220を遮断位置220bに切り替える。こうした第5切替パターンにおいは、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2区分室20A2とがオリフィス126sを介して連通され、第2流体室20Bの第1区分室20B1と第2区分室20B2とがオリフィス226sを介して連通される。したがって、作動油は、抵抗を受けつつ、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2区分室20A2とを行き来する。また、作動油は、抵抗を受けつつ、第2流体室20Bの第1区分室20B1と第2区分室20B2とを行き来する。このことから、ピストンロッド30は、自身が取り付けられているフラップが動作した場合、抵抗を受けつつ動作する。第5切替パターンを継続すると、フラップの動作が徐々に減衰する。
【0066】
また、制御装置100は、第1切替パターン~第4切替パターンのいずれかを実行している場合に、差動トランス型位置検出器73の検出結果に基づいて、ピストンロッド30が予め定められた規定速度以上の速度で予め定められた規定時間以上に亘って往復動作を継続していることを検出した場合、第5切替パターンを実行する。すなわち、制御装置100は、第1モード切替弁126及び第2モード切替弁226の双方をダンピングモードに切り替える。
【0067】
ここで、航空機の飛行中においてはフラップが比較的に速い速度で往復動作を繰り返している場合、機体の飛行状態が不安定になることがある。上記の規定速度及び規定時間は、機体の飛行状態が不安定になる前に、フラップの往復動作を止めることができる値として、実験等により予め定められている。
【0068】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)流体アクチュエータ10の材料について
シリンダ20における、第1取付部22zの近傍では、機体から当該第1取付部22zに作用する衝撃に耐えられることができるよう、相当の剛性が求められる。また、シリンダ20において、第1シリンダ体22の端壁22aや第2シリンダ体24等、シリンダ20の中心軸線上に位置する壁部には、ピストンロッド30の動作に伴う圧力が作用しやすいことから、相当の剛性が求められる。こうした事情から、本実施形態の構成では、第1シリンダ体22、第2シリンダ体24、第4シリンダ体28の材料として、ステンレスやブロンズ等、剛性の高い部材を採用している。ここで、ステンレスやブロンズは比重が大きい。そのため、シリンダ20全体をステンレスやブロンズで構成すると、流体アクチュエータ10の重量が大きくなる。この点、本実施形態の構成では、第3シリンダ体26の材料として、アルミニウム合金を採用している。第3シリンダ体26は、第2流体室20Bの径方向外側を区画している。第2流体室20Bの径方向外側を区画する壁部には、ピストンロッドの30の往復動に伴う圧力が作用し難いため、シリンダ20の軸線上に位置する壁部ほどの剛性は要求されない。また、第2流体室20Bは、第1取付部22zから軸線方向B側に離れた位置に配置されるため、第1取付部22z近傍ほどの剛性は要求されない。そこで、第3シリンダ体26に関しては、当該第3シリンダ体26の材料として、重量の小さいアルミニウム合金を採用することができる。そして、第3シリンダ体26にアルミニウム合金を採用することで、シリンダ20を軽量化することができる。さらに、本実施形態の構成では、シリンダ20に取り付けられるマニホールド14の材料としてもアルミニウム合金を採用している。このようにして、シリンダ20の一部やマニホールド14にアルミニウム合金を採用することで、流体アクチュエータ10を軽量化できる。
【0069】
(2)シリンダ20とマニホールド14との接続について
(2-1)配管16について
本実施形態の構成では、配管16によって、マニホールド14に収容された油圧回路と、シリンダ20内の流体室とを接続している。配管16によって油圧回路と流体室とを接続することで、例えば、シリンダ20における、第1流体室20Aに連通されたポート孔Pが設けられている位置にまでマニホールド14を拡大する必要がなく、マニホールド14を小型化できる。
【0070】
(2-2)マニホールド14の内部に流体回路が収容されていることについて
マニホールド14は、シリンダ20の外周面に一体に設けられていることから、当該マニホールド14は、第1流体室20Aや第2流体室20Bに比較的に近い位置に配置されている。こうしたマニホールド14の内部に、通路切替弁やモード切替弁を有する油圧回路を収容することで、油圧回路と流体室とを接続する配管16を短くできる。
【0071】
(3)第1ピストン体40の保持溝42aに装着されたシール部材Sについて
特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に柱状の流体室が区画されている。シリンダの軸線方向の一方の底部からはガイド部材が突出している。シリンダの軸線方向の他方の底部からは、ピストンロッドが挿入されている。ピストンロッドは、軸線方向の一方の端部が開口されていて、この開口を通じて、ピストンロッドの内部にガイド部材が挿入されている。ピストンロッドは、ガイド部材に沿って往復動作する。ガイド部材の外周面には、ピストンロッドとの間の隙間を塞ぐシール部材が装着されている。シール部材は、ガイド部材における軸線方向の他方の端部に位置している。特許文献1に開示された流体アクチュエータでは、シリンダの軸線方向に関してピストンロッドがシール部材よりも当該軸線方向の一方側に相応に離れた位置まで動作した場合、シール部材よりも軸線方向の一方側では、ピストンロッドとガイド部材との間に隙間が生じる。こうした隙間にも流体は進入し得ることから、この隙間の分だけ流体室の容積が大きくなる格好となり、流体室の容積が狙いの容積からずれる。こうした容積のずれは、ピストンロッドを動かす際の出力に誤差をもたらす。この点、本実施形態の構成では、位置が固定されているガイド部材72ではなく、移動する部材であるピストンロッド30における、大径部42の軸線方向A側の端部にシール部材Sを装着している。この場合、大径部42の軸線方向A側の端部の移動とともに、シール部材Sも移動することになる。この結果、大径部42の軸線方向A側の端部の位置に合わせてシール部材Sが移動するため、ピストンロッド30の往復動作の位置に拘わらず、大径部42の軸線方向A側の端部で第1ピストン体40とガイド部材72との間の隙間を塞ぐことができる。そして、大径部42の軸線方向A側の端部で第1ピストン体40とガイド部材72との間の隙間を塞ぐことができるため、第1流体室20Aにおける第1区分室20A1の容積と、第2流体室20Bにおける第2区分室20B2の容積とを略一致させることができる。
【0072】
(4)ピストンロッド30の構造について
特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に流体室が区画されている。シリンダの内部にはピストンロッドが収容されている。ピストンロッドは、流体室に供給される流体の圧力が変化することにより往復動作する。ピストンロッドには、往復動作させる対象物が取り付けられる。特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいて、ピストンロッドには、往復動作させる対象物を取り付けた状態で往復運動を繰り返しても壊れにくい耐久性が求められる。ここで、例えば金属部品は、圧縮と引っ張りとを繰り返すと疲労して強度が低下する一方で、圧縮又は引っ張りが継続されている場合には疲労し難い。本実施形態の構成では、第2ピストン体50の筒状体51は、ピストンエンド60と第1ピストン体40の段差面40aとの間に圧縮した状態で挟みこまれている。ピストンエンド60と第1ピストン体40とが螺合されていることから、筒状体51は、圧縮した状態に維持される。したがって、筒状体51は疲労し難く、疲労強度が強化されている。一方で、ピストンエンド60は、第2ピストン体50の筒状体51を圧縮した状態で第1ピストン体40の段差面40aとの間に挟み込んでいることから、筒状体51によって第1ピストン体40の段差面40aから離れる方向、すなわちシリンダ20の軸線方向B側へ押されている。こうしたピストンエンド60に対して第1ピストン体40の小径部44は螺合されている。この結果として、第1ピストン体40の小径部44は、段差面40aから離れる方向に引っ張られた状態が維持される。したがって、小径部44は疲労し難く、疲労強度が強化されている。これらの結果として、ピストンロッド30は全体として、疲労強度が強化されている。
【0073】
(5)流体室の直交断面積について
第1モード切替弁126及び第2モード切替弁226の双方がフリーモードに切り替えられている場合、ピストンロッド30はフラップの動作に伴って動作する。ここで、フラップの動作に応じてピストンロッド30が動作する瞬間では、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2区分室20A2とにおいて作動油の流出入が略無い状態でピストンロッド30が動作しようとする。また、第2流体室20Bの第1区分室20B1と第2区分室20B2とにおいても、作動油の流出入が略無い状態でピストンロッド30が動作しようとする。ここで、第1流体室20Aにおいては、第1区分室20A1の直交断面積のほうが第2区分室20A2の直交断面積よりも大きくなっている。そのため、第1ピストン46が第1流体室20Aにおける軸線方向の略中央に位置している状態では、第1区分室20A1の容積は第2区分室20A2の容積よりも大きくなる。この場合、第1区分室20A1と第2区分室20A2とにおいて作動油の流出入が略無い状態では、第1ピストン46に対してつぎの方向に力が作用する。すなわち、直交断面積が大きいことに付随して容量が大きくなっている第1区分室20A1の側から、直交断面積が小さいことに付随して容量が小さくなっている第2区分室20A2の側へ向かう力が作用する。一方、第2流体室20Bにおいては、第2区分室20B2の直交断面積のほうが第1区分室20B1の直交断面積よりも大きくなっている。このことから、第1流体室20Aの場合とは反対に、第2ピストン52に対して第2区分室20B2の側から第1区分室20B1の側へ向かう力が作用する。このように、ピストンロッド30には、シリンダ20の軸線方向の中央に向かうように両側から力が作用することから、ピストンロッド30はシリンダ20の軸線方向の軸線方向のA側及びB側のどちらにも動き難くなり、且つ、シリンダ20の中央近傍の位置に保持され易くなる。したがって、フラップの往復動作が大きくなることを避ける上では好適である。
【0074】
(6)油圧回路について
(6-1)流体室毎に油圧回路が設けられていることについて
特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に柱状の流体室が区画されている。流体室は、シリンダの軸線方向の中央で2つに仕切られている。また、シリンダの内部にはピストンロッドが収容されている。ピストンロッドからは、ピストンが径方向外側へ張り出している。ピストンは2つ設けられている。一方のピストンは、シリンダの軸線方向の一方側の流体室を2室に分けている。他方のピストンは、シリンダの軸線方向の他方側の流体室を2室に分けている。特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいて、一方側の流体室における2室にはそれぞれ、作動油を給排する接続通路が接続されている。これらの接続通路は、2室のうちの一方と他方への作動油の給排を切り替える切替弁に接続されている。また、これらの接続通路は、途中で分岐していて、他方側の流体室における2室にも接続されている。このように、特許文献1に開示された技術においては、1つの切替弁で一方側の流体室と他方側の流体室における作動油の給排の切り替えを兼ねている。こうした構成では、切替弁に動作不良が生じると、一方側の流体室と他方側の流体室の双方への作動油の給排ができなくなり、流体アクチュエータが動作不能な状態に陥るおそれがある。この点、本実施形態の構成では、第1流体室20Aと第2流体室20Bとのそれぞれ専用の油圧回路が設けられていて、それぞれ専用の通路切替弁及びモード切替弁が設けられている。そのため、第1流体室20Aと第2流体室20Bとのうちいずれかに係る油圧回路に異常が生じた場合でも、他方の油圧回路を利用して、供給通路から流体室に作動油を供給し、流体室から排出通路に作動油を排出できる。したがって、流体アクチュエータ10が動作不能な状態に陥ることを防止できる。
【0075】
(6-2)流体室毎にモード切替弁が設けられていることについて
特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に柱状の流体室が区画されている。流体室は、シリンダの軸線方向の中央で2つに仕切られている。また、シリンダの内部にはピストンロッドが収容されている。ピストンロッドからは、ピストンが径方向外側へ張り出している。ピストンは2つ設けられている。一方のピストンは、シリンダの軸線方向の一方側の流体室を2室に分けている。他方のピストンは、シリンダの軸線方向の他方側の流体室を2室に分けている。特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいて、一方側の流体室における2室にはそれぞれ、作動油を給排する接続通路が接続されている。これらの接続通路は、2室への作動油の給排モードを切り替える切替弁に接続されている。この切替弁は、作動油の供給源から作動油を供給する第1モードと、供給源からの作動油の供給を遮断するとともに、2室を互いに接続して2室の間で作動油を給排する第2モードとに切り替えることができる。この第2モードに切り替わった場合の切替弁内の流路には、オリフィスが設けられていて、作動油の行き来、ひいてはピストンロッドの動作を減衰させる。また、上記の接続通路は、途中で分岐していて、他方側の流体室における2室にも接続されている。このように、特許文献1に開示された技術においては、1つの切替弁で一方側の流体室と他方側の流体室における作動油の給排モードの切り替えを兼ねている。こうした構成では、切替弁に動作不良が生じると、第2モードを利用できなくなり、一方側の流体室でも他方側の流体室でも作動油の流れに抵抗をかけることができなくなる。そのため、ピストンロッドの動作を減衰させることができなくなる蓋然性が高い。この点、本実施形態の構成では、第1流体室20Aと第2流体室20Bとのそれぞれ専用のモード切替弁が設けられている。そのため、第1流体室20Aと第2流体室20Bとのうちいずれかに係るモード切替弁に異常が生じた場合でも、他方のモード切替弁を利用してダンピングモードを実行できる。したがって、ピストンロッド30の動作を減衰させることができないといった事態を回避できる。
【0076】
(6-3)ダンピングモードに係る制御について
特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に流体室が区画されている。シリンダの内部にはピストンロッドが収容されている。ピストンロッドは、流体室に供給される流体の圧力が変化することにより往復動作する。特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、ピストンロッドに取り付けられている相手物が動作することに応じて、ピストンロッドが往復動作することがある。そして、こうしたピストンロッドの往復動を減衰させることが求められる場合がある。例えば、流体アクチュエータが航空機に搭載されていて、ピストンロッドにフラップが取り付けられることがある。航空機の飛行中においてフラップが比較的に速い速度で往復動作を繰り返している場合、機体の飛行状態が不安定になることがある。そのため、比較的に速い速度でのフラップの往復動作が相応の時間に亘って継続している場合には、機体の飛行状態が不安定になる前に、フラップの往復動作を止める必要がある。この点、本実施形態の構成では、ピストンロッド30が、予め定められた規定速度以上の速度で、予め定められた規定時間以上に亘って往復動作を継続していることを検出した場合、第1モード切替弁126及び第2モード切替弁226の双方をダンピングモードに切り替える。そのため、機体の飛行状態が不安定になる前に、ピストンロッド30の往復動作、すなわちフラップの往復動作を速やかに減衰させることができる。
【0077】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・油圧回路の構成は変更可能である。例えば、第1モード切替弁126を減衰用遮断位置126cに切り替えた場合の当該第1モード切替弁126内の流路に、オリフィス126sを複数設けてもよい。この場合、例えば1つのオリフィス126sが破損等によって抵抗として機能しなくなった場合でも、残りのオリフィス126sによって流路に抵抗を付加することができる。
【0078】
・第1供給通路112及び第1排出通路116を介して作動油を給排する区分室のペアを変更してもよい。そして、それに合わせて、第2供給通路212及び第2排出通路216を介して作動油を給排する区分室のペアを変更してもよい。具体的には、
図8に示すように、第1供給通路112及び第1排出通路116を介して作動油を給排する区分室として、第1流体室20Aにおける第1区分室20A1と、第2流体室20Bにおける第2区分室20B2とをペアにしてもよい。この場合、第1モード切替弁126に接続されている連絡通路のうちの一方の連絡通路128を、第1流体室20Aにおける第1区分室20A1に接続し、もう一方の連絡通路129aを第2流体室20Bにおける第2区分室20B2に接続する。また、第2供給通路212及び第2排出通路216を介して作動油を給排する区分室として、第1流体室20Aにおける第2区分室20A2と、第2流体室20Bにおける第1区分室20B1とをペアにする。つまり、第2モード切替弁226に接続されている連絡通路のうちの一方の連絡通路228を、第2流体室20Bにおける第1区分室20B1に接続し、もう一方の連絡通路229aを第1流体室20Aにおける第2区分室20A2に接続する。
【0079】
上記のように区分室のペアを構成した場合、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第1供給通路112とが連通されるときには、第2流体室20Bの第1区分室20B1と第2供給通路212とが連通されるように、第1通路切替弁120及び第2通路切替弁220を制御する。また、第1流体室20Aの第2区分室20A2と第2供給通路212とが連通されるときには、第2流体室20Bの第2区分室20B2と第1供給通路112とが連通されるように、第1通路切替弁120及び第2通路切替弁220を制御する。
【0080】
ここで、特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に柱状の流体室が区画されている。流体室は、シリンダの軸線方向の中央で2つに仕切られている。また、シリンダの内部にはピストンロッドが収容されている。ピストンロッドからは、ピストンが径方向外側へ張り出している。ピストンは2つ設けられている。一方のピストンは、シリンダの軸線方向の一方側の流体室を2室に分けている。他方のピストンは、シリンダの軸線方向の他方側の流体室を2室に分けている。特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいて、一方側の流体室における2室にはそれぞれ、作動油を給排する接続通路が接続されている。これらの接続通路は、2室のうちの一方と他方への作動油の給排を切り替える切替弁に接続されている。また、これらの接続通路は、途中で分岐していて、他方側の流体室における2室にも接続されている。
【0081】
特許文献1に開示された技術においては、1つの切替弁で一方側の流体室と他方側の流体室における作動油の給排の切り替えを兼ねている。こうした構成では、切替弁に動作不良が生じると、一方側の流体室と他方側の流体室の双方への作動油の給排ができなくなり、流体アクチュエータが動作不能な状態に陥るおそれがある。そこで、切替弁を複数設けることが考えられる。切替弁を複数設けた場合、切替弁毎に、切替弁を介して供給される作動油の量と、排出される作動油の量とを略同一にすることが求められる。
【0082】
図8に示す構成においては、区分室のペアの一方である、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2流体室20Bの第2区分室20B2とでは、互いに直交断面積が同じになっている。そのため、第1供給通路112からこれらのうちの一方の区分室に供給される作動油の量と、これらのうちの他方の区分室から第1排出通路116に排出される作動油の量は同じになる。そして、どちらの区分室が第1排出通路116と連通されて当該第1排出通路116に作動油が排出される場合でも、排出される作動油の量は同じになる。したがって、第1コンペンセータ118に蓄えられている作動油の量がピストンロッド30の移動に応じて増減することを防止できる。このように、第1コンペンセータ118に蓄えられている作動油の量が略一定になるのであれば、その一定量に見合った容量の貯留室を第1コンペンセータ118に確保しておけばよい。このことから、第1排出通路116に設置する第1コンペンセータ118の大きさとして最適なものを選択できるようになり、第1コンペンセータ118が拡大化することもない。
【0083】
同様に、上記の区分室のペアの他方である、第1流体室20Aの第2区分室20A2と第2流体室20Bの第1区分室20B1とでは、互いに直交断面積は同じになっている。そのため、上記したペアの場合と同様に、第2コンペンセータ218に蓄えられている作動油の量がピストンロッド30の移動に応じて増減することを防止できる。
【0084】
・油圧回路を変更する場合の他の例として、
図9に示すように、第2通路切替弁220を省略し、第1通路切替弁120を第1モード切替弁126及び第2モード切替弁226の双方に接続してもよい。つまり、第1通路切替弁120を、第1流体室20Aと第2流体室20Bの双方に関して作動油の供給及び排出を切り替るのに利用してもよい。この場合、第1供給通路112や第1排出通路116も第1流体室20Aと第2流体室20Bの双方に関して利用することになる。こうした構成を採用する場合、
図9に示すように、第1通路切替弁120に接続されている2つの中継通路122,124を途中で分岐させて第1モード切替弁126及び第2モード切替弁226の双方に接続すればよい。こうした構成においても、第1流体室20A及び第2流体室20Bのそれぞれ専用のモード切替弁があることから、いずれか一方の流体室に係るモード切替弁に異常が生じたとしても、他方の流体室に係るモード切替弁を利用してダンピングモードを実現できる。
【0085】
・油圧回路を変更する場合の他の例として、
図10に示すように、第1油圧回路110全体を第1流体室20Aと第2流体室20Bとで兼用してもよい。つまり、第1通路切替弁120のみならず第1モード切替弁126を、第1流体室20Aと第2流体室20Bの双方に関して作動油の流路を切り替えるのに利用してもよい。この場合、第1モード切替弁126と第1流体室20Aの第1区分室20A1とを接続する連絡通路128を途中で分岐させて第2流体室20Bの第1区分室20B1に接続すればよい。また、第1モード切替弁126と第1流体室20Aの第2区分室20A2とを接続する連絡通路129を途中で分岐させて第2流体室20Bの第2区分室20B2に接続すればよい。このように、第1油圧回路110を兼用した場合、第2油圧回路210が廃止されている分だけマニホールド14を小さくすることができ、マニホールド14の小型化に寄与する。
【0086】
・第1切替パターン~第4切替パターンのいずれかを実行している場合に差動トランス型位置検出器73の検出結果に基づいて第5切替パターンに流路を切り替えることに関して、規定時間に関する条件を廃止してもよい。つまり、ピストンロッド30の動作速度が規定速度以上であることが検出された場合に、第1モード切替弁126や第2モード切替弁226を即座にダンピングモードに切り替えてもよい。例えば、通常では生じない程度に過度にピストンロッド30が速く動いた場合にピストンロッド30の動作を減衰させる上では、このような規定速度だけの条件によってダンピングモードを実行することも有効である。ダンピングモードを利用する用途に応じて規定速度の値を適宜設定すればよい。
【0087】
・流体アクチュエータ10におけるピストンロッド30の動作速度を検出する検出機器は、上記実施形態の例に限定されない。検出機器として、例えば、フラップの動作を監視するカメラを設けてもよい。この場合、カメラによって取得されるフラップの動作の速度に基づいて、ピストンロッド30の動作速度を算出すればよい。
【0088】
・流体アクチュエータ10の構成は変更可能である。例えば、シリンダ20の外径が軸線方向A側とB側とで異なっていてもよい。
図11に示す流体アクチュエータ10Aでは、シリンダ20の軸線方向B側の外径よりもA側の外径のほうが小さくなっている。そして、第1流体室20Aにおける直交断面積の最大値、すなわち2つの区分室のうち直交断面積が大きい側である第1区分室20A1の直交断面積が、第2流体室20Bにおける直交断面積の最大値、すなわち2つの区分室のうち直交断面積が大きい側である第2区分室20B2の直交断面積よりも小さくなっている。
【0089】
ここで、特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に柱状の流体室が区画されている。シリンダの内部には、当該内部を往復動作するピストンロッドが収容されている。シリンダの軸線方向の一方の端部には、シリンダに他の物体を取り付けるための取付部が設けられている。特許文献1の流体アクチュエータのように、取付部をシリンダの軸線方向の一方の端部に有する技術においては、取付部がシリンダの外周面に設けられることがある。この場合、シリンダにおける取付部が設けられる箇所では、取付部の分だけ流体アクチュエータの外形が径方向に大きくなる。この点、上記構成では、第1流体室20Aにおける直交断面積の最大値が、第2流体室20Bにおける直交断面積の最大値よりも小さいことから、第1取付部22zが外側へ張り出していても、第1流体室20Aにおける直交断面積が小さい分だけシリンダ20の径方向外側への張り出しを抑えることができ、シリンダ20の軸線方向A側の端部で流体アクチュエータ10Aが拡大化することを抑制できる。
【0090】
・流体室と油圧回路とを接続する上で、配管16を利用しなくてもよい。例えば、上記構成では、シリンダ20の軸線方向に関して、第2流体室20Bと同位置にマニホールド14が配置されていた。この場合、マニホールド14の内外を接続する貫通孔と、第2流体室20Bに繋がるシリンダ20のポート孔との位置を合わせることで、マニホールド14の内部と、第2流体室20Bとを接続することも可能である。
【0091】
・第2ピストン体50の筒状体51の延設長さは、適宜変更可能である。筒状体51の延設長さを変更した場合でも、第1ピストン体40の小径部44における、筒状体51から露出している部分の全域に亘ってねじ部44zを設けてあればよい。そして、そのねじ部44zの延設範囲の全域に亘ってピストンエンド60を螺合することができるように、結合部62の延設長さ及び結合穴62aの深さを変更すればよい。ねじ部44zの延設範囲の全域に亘ってピストンエンド60を螺合することができるようになっていれば、第2ピストン体50の筒状体51を圧縮した状態で、当該筒状体51を第1ピストン体40の段差面40aとピストンエンド60との間に挟み込むことができる。結合部62の延設長さ及び結合穴62aの深さを変更した結果として、結合部62がシリンダ20の内部にまで至っていてもよい。
【0092】
・各区分室の直交断面積を変更してもよい。直交断面積は、ピストンロッド30の移動に際して各区分室に給排する作動油の量との兼ね合いで決定すればよい。例えば、各流体室20A,20Bにおいて、2つの区分室の直交断面積が互いに同じになっていてもよいし、第1流体室20Aの第1区分室20A1と第2流体室20Bの第1区分室20B1とで直交断面積が同じになっていたりしてもよい。直交断面積が、全ての区分室において互いに異なっていてもよい。所望する直交断面積になるように、流体アクチュエータ10の構造を変更すればよい。
【0093】
・シリンダ20の内部空間の形状は、上記実施形態の例に限定されない。内部空間は、角柱状でもよい。シリンダ20の内部空間の形状に合わせて、第1ピストン46及び第2ピストン52の張り出し形状を変更すればよい。
【0094】
・流体室の数は、上記実施形態の例に限定されない。つまり、流体室を3つ以上設けてもよい。
・第1取付部22zの取り付け対象物は、上記実施形態の例に限定されない。第2取付部64の取り付け対象物も、上記実施形態の例に限定されない。
【0095】
・第1取付部22zやマニホールド14の形状等、流体アクチュエータ10の各種部位の形状は適宜変更してよい。第1取付部22zやマニホールド14等の設置位置も適宜変更してよい。
【0096】
・シリンダ20、ピストンロッド30、及びマニホールド14の材料は上記実施形態に限定されない。流体アクチュエータ10の剛性や軽量化を考慮しないのであれば、どのような材料を用いてもよい。
【0097】
・ピストンロッド30とガイド部材72の間の隙間を塞ぐシール部材Sに関して、シール部材Sをピストンロッド30に装着するのではなく、シール部材Sをガイド部材72に装着してもよい。流体室の容積の誤差を考慮しないのであれば、シール部材Sをガイド部材72に装着しても何ら問題ない。
【0098】
・ピストンロッド30の構造は、上記実施形態の例に限定されない。ピストンロッド30の疲労強度を考慮しないのであれば、第2ピストン体をピストンエンドと第1ピストン体とで挟み込むような構成を採用する必要はない。
【0099】
・第1モード切替弁126や第2モード切替弁226をノーマルモードやフリーモードで制御しているときのピストンロッド30の動作速度が予め定められた規定速度以上になった場合に、第1モード切替弁126や第2モード切替弁226をダンピングモードに切り替えることは必須ではない。
【0100】
・流体は、油に限定されない。流体は、油以外の液体でもよいし、気体でもよい。
・流体アクチュエータシステムを航空機以外に適用してもよい。
【0101】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術思想とその効果について記載する。
・柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画されたシリンダと、前記軸線方向の一方へ向けて他方から前記シリンダの内部に挿入されるとともに複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドと、前記シリンダにおける前記軸線方向の一方の底部から他方へ延びるガイド部材とを備え、前記ガイド部材は前記ピストンロッドの内部に挿入され、前記ピストンロッドの内面と前記ガイド部材の外面との間には、シール部材が介在しており、前記シール部材は、前記ピストンロッドに装着されている流体アクチュエータ。
【0102】
上記構成のように、位置が固定されているガイド部材ではなく、移動するピストンロッドにシール部材を装着すると、ピストンロッドの移動とともにシール部材も移動することになる。この結果、ピストンロッドの往復動作の位置に拘わらず、ピストンロッドとガイド部材との間の隙間に流体が進入することを回避できる。したがって、こうした隙間への流体の流入に伴って流体室の容積が狙いの容積とずれることを防止できる。
【0103】
・柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画されたシリンダと、前記軸線方向の一方へ向けて他方から前記シリンダの内部に挿入されるとともに複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドとを備え、前記ピストンロッドは、前記ピストンロッドに他の物体を取り付けるためのピストンエンドと、前記ピストンエンドから前記軸線方向の一方へ向けて延びている第1ピストン体と、前記第1ピストン体が挿通される筒状の第2ピストン体とを有し、前記第1ピストン体は、前記軸線方向の一方の流体室を2室に区画する第1ピストンと、前記第1ピストンから前記軸線方向の他方へ向けて延びている大径部と、前記大径部から前記軸線方向の他方へ向けて延びているとともに前記大径部よりも外径が小さい小径部とを有し、前記第2ピストン体は、前記軸線方向の他方の流体室を2室に区画する第2ピストンと、前記軸線方向の長さが前記小径部よりも短く前記小径部が挿通されている筒状体とを有し、前記ピストンエンドは、前記小径部における前記軸線方向の他方の端部に螺合されており、前記第2ピストン体は、前記第1ピストン体における前記大径部及び前記小径部の境界の段差面と前記ピストンエンドとの間に挟まれている流体アクチュエータ。
【0104】
例えば金属部材は、圧縮と引っ張りとを繰り返すと疲労して強度が低下する一方で、圧縮又は引っ張りが継続されている場合には疲労し難い。上記構成では、第2ピストン体は、第1ピストン体の段差面とピストンエンドとで圧縮された状態が維持されることから、疲労し難い。また、上記構成では、第2ピストン体を第1ピストン体の段差面との間に挟み込んでいるピストンエンドは、第2ピストン体によって第1ピストン体の段差面から離れる方向へ押された状態で第1ピストン体の小径部に螺合されている。この結果として、第1ピストン体の小径部は、段差面から離れる方向に引っ張られた状態が維持されることから、小径部は疲労し難い。これらの結果として、ピストンロッドは疲労強度が強化されている。
【0105】
・柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画され前記軸線方向の一方の端部に他の物体に対する取付部を有するシリンダと、複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドとを備え、前記軸線方向の最も一方に位置する流体室に関する前記軸線方向に直交する断面積の最大値が他の流体室に関する前記軸線方向に直交する断面積の最大値よりも小さい流体アクチュエータ。
【0106】
例えば、取付部がシリンダの外面から外側へと張りだす構造とされることもある。仮に複数の流体室の断面積が互いに同じ構造である場合、取付部が設けられる箇所においては、取付部がシリンダの外面から張りだす分だけシリンダの外形が大きくなる。上記構成では、シリンダの軸線方向の一方の流体室の断面積が小さいことから、シリンダの外面が張り出すような形状であったとしても、流体室の断面積が小さい分だけシリンダの外形の拡大を抑えることができる。
【0107】
・柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が2つの流体室に区画され前記軸線方向の一方の端部に他の物体に対する取付部を有するシリンダと、2つの前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を前記軸線方向の一方の第1区分室と前記軸線方向の他方の第2区分室との2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドと、前記シリンダに取り付けられ前記流体室に給排される流体の流体回路が内部に収容されたマニホールドとを備え、前記シリンダは、前記軸線方向の一方に位置する流体室を区画する壁部が鉄系合金で構成され前記軸線方向の他方に位置する流体室を区画する径方向外側の壁部がアルミニウム合金で構成され、前記ピストンロッドは、鉄系合金で構成され、前記マニホールドは、アルミニウム合金で構成され、前記流体回路と前記流体室とは、前記マニホールドから前記シリンダへと延びる配管を介して接続され、前記シリンダにおける前記軸線方向の一方の底部から他方へ延びるガイド部材を備え、前記ガイド部材は前記ピストンロッドの内部に挿入され、前記ピストンロッドの内面と、前記ガイド部材の外面との間には、シール部材が介在しており、前記シール部材は、前記ピストンロッドに装着されており、前記ピストンロッドは、前記ピストンロッドに他の物体を取り付けるためのピストンエンドと、前記ピストンエンドから前記軸線方向の一方へ向けて延びている第1ピストン体と、前記第1ピストン体が挿通される筒状の第2ピストン体とを有し、前記第1ピストン体は、前記軸線方向の一方の流体室を2室に区画する第1ピストンと、前記第1ピストンから前記軸線方向の他方へ向けて延びている大径部と、前記大径部から前記軸線方向の他方へ向けて延びているとともに前記大径部よりも外径が小さい小径部とを有し、前記第2ピストン体は、前記軸線方向の他方の流体室を2室に区画する第2ピストンと、前記軸線方向の長さが前記小径部よりも短く前記小径部が挿通されている筒状体とを有し、前記ピストンエンドは、前記小径部における前記軸線方向の他方の端部に螺合されており、前記第2ピストン体は、前記第1ピストン体における前記大径部及び前記小径部の境界の段差面と前記ピストンエンドとの間に挟まれており、前記軸線方向の一方の前記流体室においては、前記第1区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積が前記第2区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積よりも大きく、前記軸線方向の他方の前記流体室においては、前記第2区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積が前記第1区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積よりも大きい流体アクチュエータ。
【0108】
シリンダにおいては、例えば取付部の近傍等、基本的には剛性が求められる。また、シリンダにおいては、隣り合う流体室を仕切る壁部等、シリンダの軸線上に位置する壁部には、ピストンの動作に伴う圧力が作用することから、こうした壁部にも剛性が求められる。一方で、流体室の径方向外側を区画する壁部には、ピストンの動作に伴う圧力が作用し難い。そのため、取付部から離れた位置であれば、流体室の径方向外側を区画する壁部には、結合部の近傍ほどの剛性は要求されない。こうした壁部をアルミニウム合金とすることでシリンダを軽量化できる。さらに、シリンダに取り付けられるマニホールドもアルミニウム合金とすることで流体アクチュエータを軽量化できる。
【0109】
・柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画されたシリンダと、複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を前記軸線方向の一方の第1区分室と前記軸線方向の他方の第2区分室との2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドと、前記流体室における前記第1区分室及び前記第2区分室への流体の供給及び排出を切り替えるための通路切替弁とを備え、前記通路切替弁は、前記流体室毎に設けられている流体アクチュエータシステム。
【0110】
上記構成では、仮に一つの流体室に係る通路切替弁に動作不良が生じた場合でも、他の流体室に係る通路切替弁を動作させることができる。そのため、ピストンロッドが動作不能な状態になることを防止できる。
【0111】
・流体アクチュエータシステムにおいては、前記シリンダに取り付けられ前記流体室に給排される流体の流体回路が内部に収容されたマニホールドを備え、前記マニホールドの内部に前記通路切替弁が収容されていてもよい。
【0112】
上記構成では、シリンダに取り付けられたマニホールドに通路切替弁が収容されていることから、通路切替弁を流体室の近くに配置できる。そのため、通路切替弁から流体室に至る流路を短くできる。
【0113】
・柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画されたシリンダと、複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を前記軸線方向の一方の第1区分室と前記軸線方向の他方の第2区分室との2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドと、流体が供給される供給通路を前記第1区分室及び前記第2区分室のいずれか一方に連通させ、流体を排出する排出通路を前記第1区分室及び前記第2区分室のいずれか他方に連通させるノーマルモード、前記流体室に対する前記供給通路と前記排出通路との双方の連通を遮断し、前記第1区分室と前記第2区分室とをオリフィスを介して連通させるダンピングモード、及び前記流体室に対する前記供給通路と前記排出通路との双方の連通を遮断し、前記流体室の前記第1区分室と前記第2区分室とを前記オリフィスを介すことなく連通させるフリーモードのいずれかに切り替えるモード切替弁とを備え、前記モード切替弁は、前記流体室毎に設けられている流体アクチュエータシステム。
【0114】
ダンピングモードにおいては、流体室の第1区分室と第2区分室との間での流体の行き来がオリフィスによって減衰される。したがって、ピストンロッドの動作が減衰される。仮にモード切替弁に動作不良が生じて第2モードへの切り替えができなくなると、ピストンロッドの動作を減衰させることができなくなる。上記構成では、流体室毎にモード切替弁が設けられていることから、仮に一つの流体室に係るモード切替弁に動作不良が生じても、他の流体室に係るモード切替弁を動作させることができる。したがって、動作不良になっていないモード切替弁を第2モードに切り替えることで、ピストンロッドの動作を減衰させることができる。
【0115】
・柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画されたシリンダと、複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を前記軸線方向の一方の第1区分室と前記軸線方向の他方の第2区分室との2室に区画するピストンを有し、前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドと、流体が供給される供給通路を前記第1区分室及び前記第2区分室のいずれか一方に連通させ、流体を排出する排出通路を前記第1区分室及び前記第2区分室のいずれか他方に連通させるノーマルモード、前記流体室に対する前記供給通路と前記排出通路との双方の連通を遮断し、前記流体室の前記第1区分室と前記第2区分室とをオリフィスを介して連通させるダンピングモード、及び前記流体室に対する前記供給通路と前記排出通路との双方の連通を遮断し、前記流体室の前記第1区分室と前記第2区分室とを前記オリフィスを介すことなく連通させるフリーモードのいずれかに切り替えるモード切替弁と、前記モード切替弁の切り替えを制御する制御部と、所定時間当たりの前記ピストンロッドの動作速度を検出するための検出機器とを備え、前記制御部は、前記モード切替弁を前記ノーマルモード又は前記フリーモードに制御しているときの前記ピストンロッドの動作速度が予め定められた規定速度以上になった場合に前記モード切替弁を前記ダンピングモードに切り替える流体アクチュエータシステム。
【0116】
上記構成によれば、ピストンロッドに取り付けられる他の物体の動作に応じてピストンロッドが過度に速く動いている場合には、モード切替弁がダンピングモードに切り替えられる。そのため、ピストンロッドの動作を減衰させることができる。
【0117】
・柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が2つの流体室に区画されたシリンダと、2つの前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を前記軸線方向の一方の第1区分室と前記軸線方向の他方の第2区分室との2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドと、流体が供給される第1供給通路を一方の前記流体室の前記第1区分室と他方の前記流体室の前記第2区分室のいずれか一方に連通させ、流体を排出する第1排出通路を一方の前記流体室の前記第1区分室と他方の前記流体室の前記第2区分室のいずれか他方に連通させる第1通路切替弁と、前記第1排出通路の途中に配置され流体を貯留するとともに前記第1通路切替弁側の圧力に応じて前記第1通路切替弁側へ流体を供給する第1コンペンセータと、流体が供給される第2供給通路を一方の前記流体室の前記第2区分室と他方の前記流体室の前記第1区分室のいずれか一方に連通させ、流体を排出する第2排出通路を一方の前記流体室の前記第2区分室と他方の前記流体室の前記第1区分室のいずれか他方に連通させる第2通路切替弁と、前記第2排出通路の途中に配置され流体を貯留するとともに前記第2通路切替弁側の圧力に応じて前記第2通路切替弁側へ流体を供給する第2コンペンセータとを備え、一方の前記流体室の前記第1区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積と、他方の前記流体室の前記第2区分室に関する前記断面積とが同一であり、一方の前記流体室の前記第2区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積と、他方の前記流体室の前記第1区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積とが同一である流体アクチュエータシステム。
【0118】
上記構成では、第1通路切替弁に繋がる2つの区分室の断面積が同一であることから、第1通路切替弁を介して供給される流体の量と、排出される流体の量とを略同一とすることができる。そのため、第1コンペンセータに蓄えられている流体の量がピストンロッドの移動に応じて増減することを防止できる。第2コンペンセータについても同様である。
【0119】
・流体アクチュエータシステムにおいては、前記ピストンによって2室に区画された前記流体室のうちの前記第1区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積と、前記第2区分室に関する前記軸線方向に直交する断面積とは異なっていてもよい。
【0120】
ピストンロッドに取り付けられている他の物体が動作することに応じてピストンロッドが動作することがある。このとき、ピストンロッドが動作する瞬間では、第1区分室と第2区分室とにおいて流体の流出入が略無い状態でピストンロッドが動作しようとする。上記構成においては、第1区分室と第2区分室とで断面積が異なっている。そのため、流体室においてピストンが軸線方向の中央近傍に位置している状態では、第1区分室と第2区分室とで容量が異なる。この場合、第1区分室と第2区分室とにおいて流体の流出入が略無い状態では、ピストンに対してつぎの一方向に力が作用する。すなわち、第1区分室と第2区分室とのうち、断面積が大きいことに付随して容量の大きい区分室の側から、断面積が小さいことに付随して容量の小さい区分室の側へと力が作用する。例えば、第1区分室と第2区分室とのうち直交断面積の大きい側がランダムに入れ替わるようにして複数の流体室が並んでいれば、ピストンロッドには、シリンダの軸線方向の一方に作用する力と他方に作用する力とが働く。これらの力を受けることで、ピストンロッドは軸線方向に動き難くなる。そのため、ピストンロッドの動作を抑える上で好適である。
【0121】
・流体アクチュエータシステムにおいては、前記流体室の数は2つであり、一方の前記流体室においては、2つの区分室のうちの前記断面積の大きい区分室が前記軸線方向の一方に位置しており、他方の前記流体室においては、2つの区分室のうちの前記断面積の大きい区分室が前記軸線方向の他方に位置していてもよい。
【0122】
例えば、シリンダの軸線方向の一方の流体室では第2区分室よりも第1区分室の方が断面積が大きく、他方の流体室では第1区分室よりも第2区分室のほうが断面積が大きいものとする。この場合、ピストンロッドに取り付けられている他の物体が動作することに応じてピストンロッドが動作する瞬間、すなわち第1区分室と第2区分室とにおいて流体の流出入が略無い状態では、ピストンが流体室における軸線方向の中央近傍に位置していれば、ピストンに対してつぎの方向に力が作用する。軸線方向の一方の流体室では、第1区分室から第2区分室の側へ、すなわちシリンダの軸線方向の他方へと力が作用する。軸線方向の他方の流体室では、第2区分室から第1区分室の側へ、すなわちシリンダの軸線方向の一方へと力が作用する。つまり、シリンダの軸線方向に関してシリンダの中央へ向かうように両側からピストンロッドに力が作用することから、ピストンロッドを中央近傍の位置に保持し易くなる。
【符号の説明】
【0123】
S…シール部材、10…流体アクチュエータ、14…マニホールド、16…配管、20…シリンダ、20A…第1流体室、20A1…第1区分室、20A2…第2区分室、20B…第2流体室、20B1…第1区分室、20B2…第2区分室、22z…第1取付部、30…ピストンロッド、40…第1ピストン体、40a…段差面、42…大径部、42a…保持溝、44…小径部、46…第1ピストン、50…第2ピストン体、51…筒状体、52…第2ピストン、60…ピストンエンド、72…ガイド部材、100…制御装置、110…第1油圧回路、112…第1供給通路、116…第1排出通路、118…第1コンペンセータ、120…第1通路切替弁、126…第1モード切替弁、210…第2油圧回路、212…第2供給通路、216…第2排出通路、218…第2コンペンセータ、220…第2通路切替弁、226…第2モード切替弁。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画されたシリンダと、
前記軸線方向の一方へ向けて他方から前記シリンダの内部に挿入されるとともに複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドとを備え、
前記ピストンロッドは、前記ピストンロッドに他の物体を取り付けるためのピストンエンドと、前記ピストンエンドから前記軸線方向の一方へ向けて延びている第1ピストン体と、前記第1ピストン体が挿通される筒状の第2ピストン体とを有し、
前記第1ピストン体は、前記軸線方向の一方の流体室を2室に区画する第1ピストンと、前記第1ピストンから前記軸線方向の他方へ向けて延びている大径部と、前記大径部から前記軸線方向の他方へ向けて延びているとともに前記大径部よりも外径が小さい小径部とを有し、
前記第2ピストン体は、前記軸線方向の他方の流体室を2室に区画する第2ピストンと、前記軸線方向の長さが前記小径部よりも短く前記小径部が挿通されている筒状体とを有し、
前記ピストンエンドは、前記小径部における前記軸線方向の他方の端部に螺合されており、
前記第2ピストン体は、前記第1ピストン体における前記大径部及び前記小径部の境界の段差面と前記ピストンエンドとの間に挟まれている
流体アクチュエータ。
【請求項2】
前記シリンダにおける前記軸線方向の一方の底部から他方へ延びるガイド部材をさらに備え、
前記ガイド部材は前記ピストンロッドの内部に挿入され、前記ピストンロッドの内面と前記ガイド部材の外面との間には、シール部材が介在しており、
前記シール部材は、前記ピストンロッドに装着されている
請求項1に記載の流体アクチュエータ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、シリンダの内部に流体室が区画されている。シリンダの内部にはピストンロッドが収容されている。ピストンロッドは、流体室に供給される流体の圧力が変化することにより往復動作する。ピストンロッドには、往復動作させる対象物が取り付けられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいて、ピストンロッドには、往復動作させる対象物を取り付けた状態で往復運動を繰り返しても壊れにくい耐久性が求められる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記課題を解決するための流体アクチュエータは、柱状の内部空間を有し前記内部空間の軸線方向に並ぶようにして前記内部空間が複数の流体室に区画されたシリンダと、前記軸線方向の一方へ向けて他方から前記シリンダの内部に挿入されるとともに複数の前記流体室に跨って配置されそれぞれの前記流体室を2室に区画するピストンを有し前記流体室内の圧力に応じて前記軸線方向に往復動作するピストンロッドとを備え、前記ピストンロッドは、前記ピストンロッドに他の物体を取り付けるためのピストンエンドと、前記ピストンエンドから前記軸線方向の一方へ向けて延びている第1ピストン体と、前記第1ピストン体が挿通される筒状の第2ピストン体とを有し、前記第1ピストン体は、前記軸線方向の一方の流体室を2室に区画する第1ピストンと、前記第1ピストンから前記軸線方向の他方へ向けて延びている大径部と、前記大径部から前記軸線方向の他方へ向けて延びているとともに前記大径部よりも外径が小さい小径部とを有し、前記第2ピストン体は、前記軸線方向の他方の流体室を2室に区画する第2ピストンと、前記軸線方向の長さが前記小径部よりも短く前記小径部が挿通されている筒状体とを有し、前記ピストンエンドは、前記小径部における前記軸線方向の他方の端部に螺合されており、前記第2ピストン体は、前記第1ピストン体における前記大径部及び前記小径部の境界の段差面と前記ピストンエンドとの間に挟まれている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
例えば金属部材は、圧縮と引っ張りとを繰り返すと疲労して強度が低下する一方で、圧縮又は引っ張りが継続されている場合には疲労し難い。上記構成では、第2ピストン体は、第1ピストン体の段差面とピストンエンドとで圧縮された状態が維持されることから、疲労し難い。また、上記構成では、第2ピストン体を第1ピストン体の段差面との間に挟み込んでいるピストンエンドは、第2ピストン体によって第1ピストン体の段差面から離れる方向へ押された状態で第1ピストン体の小径部に螺合されている。この結果として、第1ピストン体の小径部は、段差面から離れる方向に引っ張られた状態が維持されることから、小径部は疲労し難い。これらの結果として、ピストンロッドは疲労強度が強化されている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
流体アクチュエータは、前記シリンダにおける前記軸線方向の一方の底部から他方へ延びるガイド部材をさらに備え、前記ガイド部材は前記ピストンロッドの内部に挿入され、前記ピストンロッドの内面と前記ガイド部材の外面との間には、シール部材が介在しており、前記シール部材は、前記ピストンロッドに装着されていてもよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記構成のように、位置が固定されているガイド部材ではなく、移動するピストンロッドにシール部材を装着すると、ピストンロッドの移動とともにシール部材も移動することになる。この結果、ピストンロッドの往復動作の位置に拘わらず、ピストンロッドとガイド部材との間の隙間に流体が進入することを回避できる。したがって、こうした隙間への流体の流入に伴って流体室の容積が狙いの容積とずれることを防止できる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明によれば、ピストンロッドは疲労強度が強化される。