(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174895
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】半導体素子および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20231201BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H01L21/52 A
H01L21/78 R
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180064
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2022162236の分割
【原出願日】2018-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】芳我 基治
【テーマコード(参考)】
5F047
5F063
【Fターム(参考)】
5F047AA11
5F047BA21
5F047BA53
5F047BB11
5F047BB16
5F063AA15
5F063BB02
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB22
5F063CB25
5F063DD04
(57)【要約】
【課題】 接合層の電極への到達を防止することが可能な半導体素子、およびそれが搭載された半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体素子A10は、厚さ方向zを向く表面10Aと、厚さ方向zに対して直交する方向を向き、かつ表面10Aにつながる側面10Cと、を有する素子本体10と、厚さ方向zに対して直交する方向に凹む切欠部21を有するとともに、表面10Aの上に配置された表面保護膜20と、素子本体10に導通する電極(第1電極311)とを備える。前記電極は、厚さ方向zを面内方向に含む第1断面において表面10Aの上に配置され、かつ切欠部21に囲まれている。素子本体10には、側面10Cから厚さ方向zに対して直交する方向に突出する堰部111が設けられている。厚さ方向zに視て、堰部111は、切欠部21の開口の近隣に位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向を向く表面と、前記厚さ方向に対して直交する方向を向き、かつ前記表面につながる側面と、を有する素子本体と、
前記厚さ方向に対して直交する方向に凹む切欠部を有するとともに、前記表面の上に配置された表面保護膜と、
前記厚さ方向を面内方向に含む第1断面において前記表面の上に配置され、かつ前記切欠部に囲まれるとともに、前記素子本体に導通する電極と、を備え、
前記素子本体には、前記側面から前記厚さ方向に対して直交する方向に突出する堰部が設けられ、
前記厚さ方向に視て、前記堰部は、前記切欠部の開口の近隣に位置する、半導体素子。
【請求項2】
前記表面保護膜は、ポリイミドを含む材料からなる、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記電極は、金を含む材料からなる、請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記素子本体は、半導体基板と、前記表面を有し、かつ前記半導体基板に積層されるとともに、前記電極が導通する半導体層と、前記半導体層の上に配置されたパッシベーション膜と、を含み、
前記表面保護膜は、前記パッシベーション膜に接し、
前記堰部は、前記半導体基板に設けられている、請求項3に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記半導体基板は、前記表面とは反対側を向く裏面を有し、
前記堰部は、前記厚さ方向のうち前記表面が向く側を向く頂面と、前記頂面とは反対側を向く底面と、を有し、
前記底面は、前記裏面と面一である、請求項4に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記頂面は、凹状の曲面である、請求項5に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記半導体基板は、前記表面とは反対側を向く裏面を有し、
前記堰部は、前記厚さ方向のうち前記表面が向く側を向く頂面と、前記頂面とは反対側を向く底面と、を有し、
前記厚さ方向において、前記底面は、前記裏面から前記表面に寄って離間している、請求項4に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記頂面は、凹状の曲面である、請求項7に記載の半導体素子。
【請求項9】
前記底面は、凹状の曲面である、請求項8に記載の半導体素子。
【請求項10】
前記厚さ方向に視て、前記堰部は、前記厚さ方向に対して直交する一方向に沿っている、請求項5ないし9のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項11】
前記厚さ方向に視て、前記堰部は、前記素子本体の全周に位置する、請求項10に記載の半導体素子。
【請求項12】
前記素子本体は、前記半導体層および前記電極の双方に導通する配線層を含み、
前記配線層は、前記パッシベーション膜に接している、請求項10または11に記載の半導体素子。
【請求項13】
前記厚さ方向において前記配線層と前記電極との間に介在するバリア膜をさらに備え、
前記バリア膜の組成は、チタンを含む、請求項12に記載の半導体素子。
【請求項14】
請求項5ないし13のいずれかに記載の半導体素子と、
前記半導体素子が搭載されたダイパッドと、
前記ダイパッドと前記裏面との間に介在する部分を含む接合層と、を備え、
前記接合層には、銀粒子が含有されている、半導体装置。
【請求項15】
前記ダイパッドから離れて配置された端子と、
前記端子と前記電極とに接続されたワイヤと、をさらに備える、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体素子および前記ワイヤを覆う封止樹脂をさらに備える、請求項15に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子と、当該半導体素子が搭載された半導体装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性、機械強度、化学安定性および電気絶縁性に優れるポリイミドを表面保護膜の構成材料に用いた半導体素子が広く知られている。特許文献1には、そのような半導体素子の一例が開示されている。当該半導体素子は、複数の電極(特許文献1ではボンディングパッド)と、複数の電極を露出させる開口部が設けられた表面保護膜(特許文献1ではポリイミド膜)とを備える。
【0003】
当該半導体素子は、銀ペーストを構成材料とした接合層(特許文献1ではダイボンディング材)を介して、ダイパッドなどに接合されることが一般的である。当該半導体装置において、ポリイミドを構成材料とした表面保護膜には、微小な空隙が形成されている。この空隙に水分が浸入すると、イオンマイグレーションにより接合層に含まれる銀が当該空隙に取り込まれる。これにより、表面保護膜の電気絶縁性が低下し、複数の電極が短絡されるという課題がある。
【0004】
このような事情から、厚さ方向に視て半導体素子の周縁の近傍に位置する開口部において、当該開口部と半導体素子の周縁との間に位置する表面保護膜の一部を除去する対策が考えられる。このような対策を講じることで接合層に含まれる銀のイオンマイグレーションを抑制することが期待される。しかし、表面保護膜の一部が除去されると、毛細管現象により接合層が電極に到達し、当該電極におけるワイヤの接続不良が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、接合層の電極への到達を防止することが可能な半導体素子、およびそれが搭載された半導体装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によれば、厚さ方向を向く表面と、および前記厚さ方向に対して直交する方向を向き、かつ前記表面につながる側面と、を有する素子本体と、前記厚さ方向に視て周縁から内方に凹む切欠部を有し、かつ前記表面の上に配置された表面保護膜と、前記表面の上に配置され、かつ前記切欠部に囲まれるとともに、前記素子本体に導通する電極と、を備え、前記素子本体には、前記側面から前記厚さ方向に対して直交する方向に向けて突出する堰部が設けられ、前記厚さ方向に視て、前記堰部は、前記切欠部の開口の近隣に位置することを特徴とする半導体素子が提供される。
【0008】
本発明の実施において好ましくは、前記表面保護膜の構成材料は、ポリイミドを含む。
【0009】
本発明の実施において好ましくは、前記電極の構成材料は、金を含む。
【0010】
本発明の実施において好ましくは、前記素子本体は、半導体基板と、前記表面を有し、かつ前記半導体基板に積層されるとともに、前記電極が導通する半導体層と、前記半導体層の上に配置されたパッシベーション膜と、を含み、前記表面保護膜は、前記パッシベ
ーション膜に接し、前記堰部は、前記半導体基板に設けられている。
【0011】
本発明の実施において好ましくは、前記半導体基板は、前記表面とは反対側を向く裏面を有し、前記堰部は、前記厚さ方向のうち前記表面が向く側を向く頂面と、前記頂面とは反対側を向く底面と、を有し、前記底面は、前記裏面と面一である。
【0012】
本発明の実施において好ましくは、前記頂面は、凹状の曲面である。
【0013】
本発明の実施において好ましくは、前記半導体基板は、前記表面とは反対側を向く裏面を有し、前記堰部は、前記厚さ方向のうち前記表面が向く側を向く頂面と、前記頂面とは反対側を向く底面と、を有し、前記厚さ方向において、前記底面は、前記裏面から前記表面に寄って離間している。
【0014】
本発明の実施において好ましくは、前記頂面は、凹状の曲面である。
【0015】
本発明の実施において好ましくは、前記底面は、凹状の曲面である。
【0016】
本発明の実施において好ましくは、前記厚さ方向に視て、前記堰部は、前記厚さ方向に対して直交する一方向に沿っている。
【0017】
本発明の実施において好ましくは、前記厚さ方向に視て、前記堰部は、前記素子本体の全周に位置する。
【0018】
本発明の実施において好ましくは、前記素子本体は、前記半導体層および前記電極の双方に導通する配線層を含み、前記配線層は、前記パッシベーション膜に接している。
【0019】
本発明の実施において好ましくは、前記厚さ方向において前記配線層と前記電極との間に介在するバリア膜をさらに備え、前記バリア膜の組成は、チタンを含む。
【0020】
本発明の第2の側面によれば、裏面を有する半導体基板を含む前記半導体素子と、前記半導体素子が搭載されたダイパッドと、前記ダイパッドと前記裏面との間に介在する部分を含む接合層と、を備え、前記接合層には、銀粒子が含有されていることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0021】
本発明の実施において好ましくは、前記ダイパッドから離れて配置された端子と、前記端子と前記電極とに接続されたワイヤと、をさらに備える。
【0022】
本発明の実施において好ましくは、前記半導体素子および前記ワイヤを覆う封止樹脂をさらに備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る半導体素子によれば、それが搭載された半導体装置において接合層の電極への到達を防止することが可能となる。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体素子の平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図7】
図1に示す半導体素子の製造工程を説明する断面図である。
【
図8】
図1に示す半導体素子の製造工程を説明する断面図である。
【
図9】
図1に示す半導体素子の製造工程を説明する断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態の変形例に係る半導体素子の平面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
【
図14】
図13に示す半導体装置の平面図(封止樹脂を透過)である。
【
図18】
図14のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係る半導体素子の平面図である。
【
図24】
図20に示す半導体素子の製造工程を説明する断面図である。
【
図25】
図20に示す半導体素子の製造工程を説明する断面図である。
【
図26】
図20に示す半導体素子の製造工程を説明する断面図である。
【
図27】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の平面図(封止樹脂を透過)である。
【
図28】
図27のXXVIII-XXVIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1~
図19に基づき、本発明の第1実施形態に係る半導体素子A10と、半導体素子A10を備える半導体装置B10について説明する。
【0028】
<半導体素子A10>
図1~
図6に基づき、半導体素子A10について説明する。これらの図に示す半導体素子A10は、素子本体10、表面保護膜20、複数の第1電極311、複数の第2電極312および複数のバリア膜32を備える。
【0029】
半導体素子A10の説明においては、便宜上、後述する素子本体10の表面10Aの法線方向を「厚さ方向z」と呼ぶ。厚さ方向zに対して直交する方向を「第1方向x」と呼ぶ。厚さ方向zおよび第1方向xの双方に対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。
【0030】
素子本体10は、
図1に示すように、厚さ方向zに視て矩形状である。素子本体10は、表面10A、裏面10Bおよび側面10Cを有する。表面10Aは、厚さ方向zを向く。裏面10Bは、表面10Aとは反対側を向く。側面10Cは、厚さ方向zに対して直交する方向を向き、かつ表面10Aにつながっている。半導体素子A10では、側面10Cは、第1方向xを向く一対の第1領域101Cと、第2方向yを向く一対の第2領域102Cとを含む。
図2~
図5に示すように、素子本体10は、半導体基板11、半導体層12、層間絶縁膜13、配線層14およびパッシベーション膜15を含む。
【0031】
図2~
図4に示すように、半導体基板11は、半導体層12を支持している。半導体基板11の構成材料は、たとえばノンドープのシリコン(Si)である。半導体基板11は、裏面10Bを有する。
【0032】
図2~
図4に示すように、半導体層12は、半導体基板11に積層されている。半導体層12には、p型半導体およびn型半導体により、複数のトランジスタなどからなる回路が構成されている。半導体層12は、エピタキシャル成長により形成される。半導体層12は、表面10Aを有する。
【0033】
図5に示すように、層間絶縁膜13は、半導体層12の表面10Aを覆っている。層間絶縁膜13は、酸化ケイ素(SiO
2)膜、および窒化ケイ素(Si
3N
4)膜の少なくともいずれかから構成される。層間絶縁膜13は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)などにより形成される。
【0034】
図5に示すように、配線層14は、半導体層12の表面10Aに接して配置されている。配線層14は、半導体層12に導通している。配線層14の構成材料は、たとえばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、およびタンタル(Ta)を含む金属材料群から選択された1つ、または複数の金属である。配線層14は、第1配線層141および第2配線層142を含む。第1配線層141は、表面10Aおよび層間絶縁膜13の双方に接している。第2配線層142は、第1配線層141に積層されている。
【0035】
図5に示すように、パッシベーション膜15は、層間絶縁膜13に積層されている。このため、パッシベーション膜15は、半導体層12の上に配置されている。パッシベーション膜15は、電気絶縁性を有する。パッシベーション膜15は、第1膜151および第2膜152を含む。第1膜151および第2膜152の構成材料は、たとえば窒化ケイ素である。これらのうち、第1膜151の構成材料は、窒化ケイ素に替えて酸化ケイ素でもよい。第1膜151は、層間絶縁膜13、および配線層14の第2配線層142の双方に接している。第2膜152は、第1膜151に積層されている。第2膜152は、複数の第1電極311および複数の第2電極312の双方に接している。パッシベーション膜15には、第1膜151および第2配線層142を厚さ方向zに貫通する複数の開口15Aが設けられている。複数の開口15Aの各々から、第1電極311および第2電極312のいずれかが露出している。
【0036】
表面保護膜20は、
図2~
図5に示すように、パッシベーション膜15に接して配置されている。このため、表面保護膜20は、素子本体10(半導体層12)の表面10Aの上に配置されている。表面保護膜20は、電気絶縁性を有する。表面保護膜20の構成材料は、ポリイミドを含む。表面保護膜20は、複数の切欠部21および複数の開口部22を有する。
【0037】
図1、
図2および
図4に示すように、複数の切欠部21は、厚さ方向zに視て、表面保護膜20の周縁から内方に凹む領域である。このため、厚さ方向zに視て、複数の切欠部21の各々は、半導体素子A10の外側に向けて開口している。半導体素子A10では、複数の切欠部21の少なくとも一部は、厚さ方向zに視て第1方向x および第2方向yの双方に対して開口している。
図1および
図3に示すように、複数の開口部22は、表面保護膜20を厚さ方向zに貫通している。複数の開口部22の各々は、全周にわたって表面保護膜20に囲まれている。
【0038】
複数の第1電極311および複数の第2電極312は、
図5に示すように、素子本体10の配線層14の上に配置されている。このため、複数の第1電極311および複数の第2電極312は、素子本体10(半導体層12)の表面10Aの上に配置されている。第1電極311および第2電極312の構成材料は、金(Au)を含む。複数の第1電極311および複数の第2電極312は、複数のバリア膜32を介して配線層14に導通している。したがって、複数の第1電極311および複数の第2電極312は、素子本体10の半導体層12に導通している。あわせて、配線層14は、半導体層12と、複数の第1電極311および複数の第2電極312との双方に導通している。
【0039】
図1、
図2および
図4に示すように、複数の第1電極311の各々は、表面保護膜20の切欠部21に囲まれている。
図1および
図3に示すように、厚さ方向zに視て、複数の211の各々は、表面保護膜20の開口部22に収容されている。このため、厚さ方向zに視て、複数の第1電極311の各々は、切欠部21の開口から半導体素子A10の外部に通じている。なお、複数の第1電極311のいずれかが、本発明に係る特許請求の範囲に記載の「電極」に相当する。
【0040】
複数のバリア膜32の各々は、
図5に示すように、厚さ方向zにおいて素子本体10の配線層14と、複数の第1電極311および複数の第2電極312のいずれかとの間に介在している。複数のバリア膜32は、配線層14の第2配線層142と、素子本体10のパッシベーション膜15との双方に接している。バリア膜32は、導電性を有する。バリア膜32の構成材料は、窒化チタン(TiN)である。このため、バリア膜32の組成は、チタンを含む。
【0041】
図1~
図6(
図5を除く)に示すように、素子本体10の半導体基板11には、側面10Cから厚さ方向zに対して直交する方向に向けて突出する堰部111が設けられている。厚さ方向zに視て、堰部111は、表面保護膜20の切欠部21の開口の近隣に位置する。半導体素子A10では、堰部111は、側面10Cの一対の第1領域101Cと、側面10Cの一対の第2領域102Cのいずれにも設けられている。このため、厚さ方向zに視て、堰部111は、素子本体10の全周に位置する枠状である。
【0042】
図2~
図6(
図5を除く)に示すように、堰部111は、頂面111Aおよび底面111Bを有する。頂面111Aは、厚さ方向zのうち素子本体10の表面10Aが向く側を向く。頂面111Aは、凹状の曲面である。底面111Bは、頂面111Aとは反対側を向く。半導体素子A10では、底面111Bは、素子本体10(半導体基板11)の裏面10Bと面一である。底面111Bから頂面111Aの外縁までの堰部111の最小高さh1(堰部111の厚さ方向zにおける最小寸法)は、50μm以上であることが好ましい。
【0043】
次に、
図7~
図9に基づき、半導体素子A10の堰部111の形成方法について説明する。
【0044】
まず、
図7に示すように、半導体基板11に半導体層12を積層させた後、半導体層12の表面10Aの上に、パッシベーション膜15、表面保護膜20および複数の第1電極311などを配置させる。本工程において、複数の切欠部21が表面保護膜20に形成される。
【0045】
次いで、
図8に示すように、幅b1を有する第1ブレード81により、半導体基板11、半導体層12およびパッシベーション膜15のそれぞれ一部を除去することにより、複数の溝83を形成する。複数の溝83は、厚さ方向zのうち半導体層12の表面10Aが向く側から半導体基板11の裏面10Bに向けて形成される。また、複数の溝83は、第1方向xおよび第2方向yの双方向に沿った碁盤目状となるように形成される。
【0046】
最後に、
図9に示すように、幅b2を有する第2ブレード82により、半導体基板11を切断する。幅b2は、第1ブレード81の幅b1よりも小である。切断にあたっては、複数の溝83の各々に第2ブレード82を通過させた上で、第2ブレード82を厚さ方向zに移動させる。本工程により、堰部111が形成された半導体素子A10が得られる。
【0047】
<半導体素子A10の変形例>
図10~
図12に基づき、半導体素子A10の変形例である半導体素子A11について説明する。半導体素子A11は、表面保護膜20および堰部111の構成が、先述した半導体素子A10に対して異なる。
【0048】
図10に示すように、表面保護膜20の複数の切欠部21はいずれも、厚さ方向zに視て第2方向yに対して開口している。
【0049】
図10~
図12に示すように、半導体素子A11では、堰部111は、側面10Cの一対の第2領域102Cに設けられている。このため、厚さ方向zに視て、堰部111は、第1方向xに沿っている。すなわち、厚さ方向zに視て、堰部111は、厚さ方向zに対して直交する一方向に沿っている。
【0050】
<半導体装置B10>
図13~
図19に基づき、半導体装置B10について説明する。これらの図に示す半導体装置B10は、ダイパッド41、複数の端子42、接合層50、複数のワイヤ60、および封止樹脂70を備える。半導体装置B10は、たとえばオペアンプである。半導体装置B10は、増幅回路、コンパレータ、積分回路および発振回路など、様々な回路に用いられる。
図13に示すように、半導体装置B10が示す例においては、当該装置の構造形式はSOP(Single Outline Package)である。なお、半導体装置B10の構造形式は、SOPに限定されない。なお、
図13は、理解の便宜上、封止樹脂70を透過している。
図13において透過した封止樹脂70を、想像線(二点鎖線)で示している。
【0051】
ダイパッド41は、
図14、
図17および
図18に示すように、半導体素子A10が搭載される導電部材である。ダイパッド41は、複数の端子42とともに、同一のリードフレームから構成される。当該リードフレームの構成材料は、たとえば銅、または銅合金である。
図14および
図18に示すように、ダイパッド41は、本体部411および一対の吊り部412を有する。
【0052】
図14に示すように、本体部411は、厚さ方向zに視て矩形状である。本体部411に半導体素子A10が搭載されている。本体部411の表面には、たとえば銀(Ag)めっきが施されている。
【0053】
図14および
図18に示すように、一対の吊り部412は、本体部411の第1方向xの両側につながっている。一対の吊り部412は、第1方向xに延びる帯状である。一対の吊り部412は、リードフレームに対する本体部411の支持部材である。
図16に示すように、一対の吊り部412の各々は、第1方向xを向く端面412Aを有する。一対の端面412Aは、封止樹脂70から露出している。なお、ダイパッド41は、一対の端面412Aを除き封止樹脂70に覆われている。
【0054】
複数の端子42は、
図14に示すように、ダイパッド41から離れて配置された導電部材である。半導体装置B10が示す例においては、ダイパッド41を挟んで第2方向yの一方側および他方側のそれぞれに、4つの端子42が配置されている。これらの端子42は、第1方向xに沿って配列されている。複数の端子42の各々は、パッド部421および露出部422を有する。
【0055】
図14および
図17に示すように、パッド部421は、封止樹脂70に覆われている。パッド部421の表面には、たとえば銀めっきが施されている。
図14~
図17に示すように、露出部422は、封止樹脂70から露出している。厚さ方向zに視て、露出部422は、パッド部421から第1方向xに延びている。
図16および
図17に示すように、露出部422は、第2方向yに視てクランク状に屈曲している。露出部422は、半導体装置B10を配線基板に実装する際に用いられる。露出部422の表面には、たとえば錫(Sn)めっきが施されている。
【0056】
接合層50は、
図17~
図19に示すように、ダイパッド41の本体部411と、半導体素子A10の素子本体10の裏面10Bとの間に介在する部分を含む。接合層50には、銀粒子が含有されている。接合層50の構成材料は、たとえば、銀粒子が含有されたエポキシ樹脂である。接合層50の一部は、半導体素子A10の堰部111に付着している。
【0057】
複数のワイヤ60は、
図14および
図17に示すように、半導体素子A10の複数の第1電極311および複数の第2電極312と、複数の端子42のパッド部421とに、個別に接続されている。これにより、複数の第1電極311および複数の第2電極312は、複数の端子42に導通している。ワイヤ60の構成材料は、たとえば金である。
【0058】
封止樹脂70は、
図17および
図18に示すように、半導体素子A10、接合層50および複数のワイヤ60と、ダイパッド41および複数の端子42の各々の一部ずつとを覆っている。封止樹脂70の構成材料は、たとえば黒色のエポキシ樹脂である。封止樹脂70は、主面71、裏面72、一対の第1側面731および一対の第2側面732を有する。
【0059】
図17および
図18に示すように、主面71は、厚さ方向zのうち素子本体10の表面10Aが向く側を向く。
図17および
図18に示すように、裏面72は、主面71とは反対側を向く。半導体装置B10を配線基板に実装した際、裏面72は、当該配線基板に対向する。
【0060】
図14~
図17に示すように、一対の第1側面731は、第2方向yにおいて互いに離間している。一対の第1側面731の各々は、厚さ方向zの両側において主面71および裏面72につながっている。一対の第1側面731の各々から、複数の端子42の露出部422が露出している。
【0061】
図14~
図18(
図17を除く)に示すように、一対の第2側面732は、第1方向xにおいて互いに離間している。一対の第2側面732の各々は、厚さ方向zの両側において主面71および裏面72につながっている。また、一対の第2側面732の各々は、第2方向yの両側において一対の第1側面731につながっている。一対の第2側面732から、ダイパッド41の一対の吊り部412の端面412Aが露出している。
【0062】
次に、半導体素子A10および半導体装置B10の作用効果について説明する。
【0063】
半導体素子A10は、表面10Aおよび側面10Cを有する素子本体10と、表面10Aの上に配置された表面保護膜20とを備える。表面保護膜20は、厚さ方向zに視て周縁から内方に凹む切欠部21を有する。素子本体10に導通する半導体素子A10の第1電極311は、切欠部21に囲まれている。素子本体10には、側面10Cから厚さ方向zに対して直交する方向に向けて突出する堰部111が設けられている。厚さ方向zに視て、堰部111は、切欠部21の開口の近隣に位置する。これにより、
図19に示すように、半導体装置B10において毛細管現象により接合層50が側面10Cを這い上がることを、堰部111により抑制できる。したがって、半導体素子A10によれば、半導体装置B10において接合層50の第1電極311への到達を防止することが可能となる。
【0064】
素子本体10に堰部111が設けられることにより、素子本体10の表面積が拡大する。これにより、半導体装置B10において素子本体10に対する接合層50の付着面積が増加するため、ダイパッド41に対する半導体素子A10の接合強度の増加を図ることができる。
【0065】
表面保護膜20の構成材料は、ポリイミドを含む。このような場合であっても、表面保護膜20は切欠部21を有することにより、半導体装置B10において接合層50に含まれる銀のイオンマイグレーションにより第1電極311の短絡を防止することができる。
【0066】
第1電極311の構成材料は、金を含む。これにより、半導体装置B10において第1電極311に対するワイヤ60の接合強度が増加する。したがって、半導体装置B10の信頼性の向上を図ることができる。
【0067】
堰部111は、厚さ方向zのうち表面10Aが向く側を向く頂面111Aを有する。頂面111Aは、曲面である。これは、
図8に示す半導体素子A10の製造工程において、第1ブレード81により形成される溝83の痕跡である。
【0068】
厚さ方向zに視て、堰部111は、素子本体10の全周に位置する。これにより、半導体装置B10において毛細管現象により接合層50が側面10Cを這い上がることを、より効果的に抑制できる。
【0069】
半導体素子A10は、厚さ方向zにおいて配線層14と第1電極311との間に介在するバリア膜32をさらに備える。バリア膜32の組成は、チタンを含む。これにより、第1電極311は、配線層14に対してオーミック接触を図ることができる。また、第1電極311に含まれる金属成分が素子本体10に拡散することを防止できる。
【0070】
〔第2実施形態〕
図20~
図30に基づき、本発明の第2実施形態に係る半導体素子A20と、半導体素子A20を備える半導体装置B20について説明する。これらの図において、先述した半導体素子A10および半導体装置B10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0071】
<半導体素子A20>
図20~
図23に基づき、半導体素子A20について説明する。半導体素子A20においては、堰部111の構成が、先述した半導体素子A10と異なる。
【0072】
図21~
図23に示すように、厚さ方向zにおいて、堰部111の底面111Bは、素子本体10(半導体基板11)の裏面10Bから素子本体10(半導体層12)の表面10Aに寄って離間している。なお、
図20に示すように、厚さ方向zに視た半導体素子A20の形状は、半導体素子A10の形状と同一である。底面111Bは、凹状の曲面である。底面111Bの内縁から頂面111Aの外縁までの堰部111の最小高さh2(堰部111の厚さ方向zにおける最小寸法)は、50μm以上であることが好ましい。
【0073】
半導体素子A20においても、先述した半導体素子A11と同様に、厚さ方向zに視て、堰部111が厚さ方向zに対して直交する一方向に沿った構成とすることができる。
【0074】
次に、
図24~
図26に示すように、半導体素子A20の堰部111の形成方法について説明する。
【0075】
まず、
図24に示すように、
図7に示す半導体基板11および半導体層12などに対して、幅b1を有する第1ブレード81により、半導体基板11、半導体層12およびパッシベーション膜15のそれぞれ一部を除去することにより、複数の第1溝831を形成する。複数の第1溝831は、厚さ方向zのうち半導体層12の表面10Aが向く側から半導体基板11の裏面10Bに向けて形成される。また、複数の第1溝831は、第1方向xおよび第2方向yの双方向に沿った碁盤目状となるように形成される。
【0076】
次いで、
図25に示すように、第1ブレード81により、半導体基板11の一部を除去することにより複数の第2溝832を形成する。複数の第2溝832は、厚さ方向zのうち半導体基板11の裏面10Bが向く側から半導体層12の表面10Aに向けて形成される。また、複数の第2溝832は、複数の第2溝832に対応した碁盤目状となるように形成される。
【0077】
最後に、
図26に示すように、幅b2を有する第2ブレード82により、半導体基板11を切断する。幅b2は、第1ブレード81の幅b1よりも小である。切断にあたっては、複数の第1溝831の各々に第2ブレード82を通過させた上で、第2ブレード82を厚さ方向zに移動させて第1溝831に対応する第2溝832に到達させる。本工程により、堰部111が形成された半導体素子A20が得られる。
【0078】
<半導体装置B20>
図27~
図30に基づき、半導体装置B20について説明する。半導体装置B20においては、半導体素子A20の構成が、先述した半導体装置B10と異なる。なお、
図27に示すように、ダイパッド41に対する半導体素子A20の搭載位置は、半導体装置B10における半導体素子A10の搭載位置と同一である。
【0079】
図28および
図29に示すように、接合層50の一部は、半導体素子A20の堰部111に付着している。
図30に示すように、接合層50は、堰部111の底面111Bの全体にわたって接している。
【0080】
次に、半導体素子A20および半導体装置B20の作用効果について説明する。
【0081】
半導体素子A20は、表面10Aおよび側面10Cを有する素子本体10と、表面10Aの上に配置された表面保護膜20とを備える。表面保護膜20は、厚さ方向zに視て周縁から内方に凹む切欠部21を有する。素子本体10に導通する半導体素子A20の第1電極311は、切欠部21に囲まれている。素子本体10には、側面10Cから厚さ方向zに対して直交する方向に向けて突出する堰部111が設けられている。厚さ方向zに視て、堰部111は、切欠部21の開口の近隣に位置する。これにより、
図30に示すように、半導体装置B20において毛細管現象により接合層50が側面10Cを這い上がることを、堰部111により抑制できる。したがって、半導体素子A20によっても、半導体装置B20において接合層50の第1電極311への到達を防止することが可能となる。
【0082】
半導体素子A20の堰部111の底面111Bは、素子本体10(半導体基板11)の裏面10Bから素子本体10(半導体層12)の表面10Aに寄って離間している。これにより、半導体装置B20において底面111Bに接する接合層50の部分に投錨効果(アンカー効果)が得られるため、ダイパッド41に対する半導体素子A20の接合強度の増加を図ることができる。
【0083】
堰部111の頂面111Aは、曲面である。これは、
図24に示す半導体素子A20の製造工程において、第1ブレード81により形成される第1溝831の痕跡である。堰部111の底面111Bは、曲面である。これは、
図25に示す半導体素子A20の製造工程において、第1ブレード81により形成される第2溝832の痕跡である。
【0084】
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0085】
A10,A11,A20:半導体素子
B10,B20:半導体装置
10:素子本体
10A:表面
10B:裏面
10C:側面
101C,102C:第1領域,第2領域
11:半導体基板
111:堰部
111A:頂面
111B:底面
12:半導体層
13:層間絶縁膜
14:配線層
141,142:第1配線層,第2配線層
15:パッシベーション膜
15A:開口
151,152:第1膜,第2膜
20:表面保護膜
21:切欠部
22:開口部
311,312:第1電極,第2電極
32:バリア膜
41:ダイパッド
411:本体部
412:吊り部
412A:端面
42:端子
421:パッド部
422:露出部
50:接合層
60:ワイヤ
70:封止樹脂
71:主面
72:裏面
731,732:第1側面,第2側面
81,82:第1ブレード,第2ブレード
83:溝
831,832:第1溝,第2溝
z:厚さ方向
x:第1方向
y:第2方向