(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174896
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用の正極電極、リチウムイオン二次電池用の正極電極シート、およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20231201BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231201BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/139
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180066
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2019067769の分割
【原出願日】2019-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 萌子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】白石 章一郎
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050FA02
5H050GA04
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】製造コストを低減可能な高性能なリチウムイオン二次電池用の正極電極、リチウムイオン二次電池用の正極電極シート、その製造方法を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池用の正極電極は、金属箔9(集電体)と、金属箔9の一方の面に設けられた、正極活物質を含む第一の合材層11と、第一の合材層11によって一部が覆われ、活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層12を備え、第二の合材層12は、第一の合材層11の形成領域と第一の合材層11の非形成領域の境界部のうち、第一の合材層11の一方の端部11a側に設けられ、第二の合材層12の一端12aは第一の合材層11の形成領域における、金属箔9の一方の面と第一の合材層11の下面との間に位置し、他端12bは非形成領域に位置し、第一の合材層11および第二の合材層12中に分散された導電性物質を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のシートである集電体の両面または片面に、少なくとも正極活物質と導電性物質を含む第一の合材層と、前記正極活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層が、前記シートの長尺方向に連続的にそれぞれ形成され、
前記第一の合材層の短尺方向側の少なくとも一方の端部が、前記第二の合材層の短尺方向側の少なくとも一方の端部を覆い、
当該前記第二の合材層の短尺方向側の少なくとも一方の端部の表面には導電性物質が含まれる、リチウムイオン二次電池用の正極電極シート。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極シートから作製されるリチウムイオン二次電池用の正極電極であって、
前記正極電極シートから前記第一の合材層および前記第二の合材層を含む領域を切り出すことにより形成されている、
リチウムイオン二次電池用の正極電極。
【請求項3】
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極を用いた、
リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用の正極電極、リチウムイオン二次電池用の正極電極シート、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題を踏まえ、電気自動車やハイブリッド自動車への関心が高まり、その駆動源である二次電池の高エネルギー密度化、高容量化への技術的要求が一段と高まっている。
【0003】
こうした二次電池用の電極は、アルミニウムや銅等の帯状の金属箔上に活物質を含むスラリを塗布・乾燥させた電極シートから作製される。活物質の塗布方法は、間欠塗工方式と連続塗工方式とに大別できる。
【0004】
リチウムイオン二次電池のセパレータの熱収縮による正極箔露出部と負極の電気的な接触を抑制する構造として、電極端部に絶縁層を設ける構成が特許文献1~15等に記載されている。これらのうち特許文献8、11、13~15は、導電材を含む絶縁層を有している。
【0005】
高エネルギー密度に設計された二次電池に用いる電極は、集電体である金属箔の厚さを薄く設計する傾向にある。その一方で、さらなる高容量化のため、活物質部の厚膜化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-186945号公報
【特許文献2】特開2004-259625号公報
【特許文献3】特開2012-204334号公報
【特許文献4】特開平10-74535号公報
【特許文献5】特表2005-509247号公報
【特許文献6】特開2003-151535号公報
【特許文献7】特開2006-147392号公報
【特許文献8】特開2012-114079号公報
【特許文献9】特開2012-74359号公報
【特許文献10】特表2009-518808号公報
【特許文献11】特開2009-238487号公報
【特許文献12】特開2011-81920号公報
【特許文献13】特開2007-095656号公報
【特許文献14】特開2012-178326号公報
【特許文献15】国際公開第2012/128160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、厚膜塗工後に絶縁物を塗工する場合、塗工設備先端とワークとのギャップを狭くできないため、絶縁物の薄膜塗工が困難であった。そのため、活物質ラップ部の厚みが増すことによるセルの厚みの増加、絶縁材料費の増加、および乾燥時のクラック発生のリスクがある等の問題点があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造コストを低減可能な高性能なリチウムイオン二次電池用の正極電極、リチウムイオン二次電池用の正極電極シート、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の各側面では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0010】
第一の側面は、リチウムイオン二次電池用の正極電極シートに関する。
第一の側面に係るリチウムイオン二次電池用の正極電極シートは、
帯状のシートである集電体の両面または片面に、少なくとも正極活物質と導電性物質を含む第一の合材層と、前記正極活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層が、前記シートの長尺方向に連続的にそれぞれ形成され、
前記第一の合材層の短尺方向側の少なくとも一方の端部が、前記第二の合材層の短尺方向側の少なくとも一方の端部を覆い、
当該前記第二の合材層の短尺方向側の少なくとも一方の端部の表面には導電性物質が含まれる。
【0011】
第二の側面は、リチウムイオン二次電池用の正極電極に関する。
第二の側面に係るリチウムイオン二次電池用の正極電極は、
第一の側面に係るリチウムイオン二次電池用の正極電極シートから作製されるリチウムイオン二次電池用の正極電極であって、
前記正極電極シートから前記第一の合材層および前記第二の合材層を含む領域を切り出すことにより形成されている。
【0012】
第三の側面は、リチウムイオン二次電池に関する。
第三の側面に係るリチウムイオン二次電池は、第二の側面に係るリチウムイオン二次電池用の正極電極を用いた、リチウムイオン二次電池である。
【0013】
なお、本発明の他の側面としては、本開示の方法を少なくとも1つのコンピュータに実行させるプログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
このコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに、リチウムイオン二次電池用の正極電極シートの製造装置上で、その製造方法を実施させるコンピュータプログラムコードを含む。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0015】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0016】
また、本発明の方法およびコンピュータプログラムには複数の手順を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の手順を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の方法およびコンピュータプログラムを実施するときには、その複数の手順の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0017】
さらに、本発明の方法およびコンピュータプログラムの複数の手順は個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある手順の実行中に他の手順が発生すること、ある手順の実行タイミングと他の手順の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記各側面によれば、製造コストを低減可能な高性能なリチウムイオン二次電池用の正極電極、リチウムイオン二次電池用の正極電極シート、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態のリチウムイオン二次電池用の正極電極の構成を説明するための電極シートの部分断面図である。
【
図3】
図1の電極シートの製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の電極シートの製造装置の制御装置を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態の変形態様の電極シートの上面図である。
【
図6】
図5の電極シートの製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図5の電極シートの製造工程を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図9】実施例1および比較例1の電極シートの製造方法の手順を示す図である。
【
図10】実施例2および比較例2の電極シートに異物が混入した場合について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0021】
(第1の実施の形態)
本実施形態に係る電極はリチウムイオン二次電池用の正極である。
図1は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用の正極電極の構成を説明するための電極シート10の部分断面図である。リチウムイオン二次電池用の正極電極は、
図2の電極シート10から切り出して作製される。
図1は、
図2の電極シート10を矢印Iの方向から見た線I-Iにおける断面図となっている。
【0022】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用の正極電極は、集電体(以下、金属箔9とも呼ぶ)と、集電体(金属箔9)の少なくとも一方の面に設けられた、少なくとも正極活物質を含む第一の合材層11と、第一の合材層11によって一部が覆われ、活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層12を備える。第二の合材層12は、第一の合材層11が形成される形成領域(以下、塗布領域15とも呼ぶ)と第一の合材層11が形成されない非形成領域(以下、非塗布領域17とも呼ぶ)の境界部19のうち、第一の合材層11の少なくとも一方の端部11a側に設けられる。第二の合材層12の一端12aは、第一の合材層11の塗布領域15における、金属箔9の少なくとも一方の面と第一の合材層11の下面との間に位置し、他端12bは非塗布領域17に位置する。第一の合材層11および第二の合材層12中に分散された導電性物質を含む。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係る電極シート10の上面図である。本実施形態では、電極シート10を連続塗工方式で作製する場合を例に説明するが、電極シート10の作製方法は後述するように間欠塗工方式であってもよく、限定されない。電極シート10は、帯状の金属箔9の少なくとも一面に、第一の合材層11と、第二の合材層12とが、長尺方向Dxに電極シート10が搬送されながら形成される。
【0024】
本実施形態の電極シート10は、塗布装置のロールに巻き取られる帯状のシートである集電体(金属箔9)の両面または片面に、少なくとも正極活物質を含む第一の合材層11と、第一の合材層11によって一部が覆われ、活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層12とが、電極シート10の長尺方向Dxに連続的かつ、電極シート10の長尺方向Dxに対して平行に並列に形成される。
第一の合材層11の電極シート10の短尺方向Dy側の少なくとも一端11aが、第二の合材層12の一部を覆って形成される。
【0025】
<電極の構成>
以下、電極の構成について詳細に説明する。本実施形態の電極は、リチウムイオン電池用の正極電極である。
【0026】
第一の合材層11は、電極活物質を含み、必要に応じてバインダー樹脂等の結着剤、導電助剤、増粘剤等を含む。
【0027】
第一の合材層11に含まれる電極活物質としてはリチウムイオン電池の正極に使用可能な通常の正極活物質であれば特に限定されない。例えば、リチウム-ニッケル複合酸化物、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物;TiS2、FeS、MoS2等の遷移金属硫化物;MnO、V2O5、V6O13、TiO2等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等が挙げられる。
オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
【0028】
これらの中でも、オリビン型リチウム鉄リン酸化物、リチウム-ニッケル複合酸化物、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム複合酸化物が好ましい。これらの正極活物質は作用電位が高いことに加えて容量も大きく、大きなエネルギー密度を有する。
正極活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
正極活物質の含有量は、第一の合材層11の総量を100質量部としたとき、85質量部以上99.8質量部以下であることが好ましい。また、第一の合材層11の密度は3.40g/cm3以上である。
【0030】
第一の合材層11に含まれるバインダー樹脂は用途に応じて適宜選択される。例えば、溶媒に溶解可能なフッ素系バインダー樹脂や、水に分散可能な水系バインダー等を使用することができる。
【0031】
フッ素系バインダー樹脂としては電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、フッ素ゴム等が挙げられる。これらのフッ素系バインダー樹脂は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が好ましい。フッ素系バインダー樹脂は、例えば、N-メチル-ピロリドン(NMP)等の溶媒に溶解させて使用することができる。
【0032】
水系バインダーとしては電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。これらの水系バインダーは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、スチレン・ブタジエン系ゴムが好ましい。
なお、本実施形態において、水系バインダーとは、水に分散し、エマルジョン水溶液を形成できるものをいう。
水系バインダーを使用する場合は、さらに増粘剤を使用することができる。増粘剤としては特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;ポリカルボン酸;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩;ポリビニルアルコール;等の水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0033】
バインダー樹脂の含有量は、第一の合材層11の総量を100質量部としたとき、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記範囲内であると、電極スラリの塗工性、バインダーの結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、バインダー樹脂の含有量が上記上限値以下であると、電極活物質の割合が大きくなり、電極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記下限値以上であると、電極剥離が抑制されるため好ましい。
【0034】
導電助剤の含有量は、第一の合材層11の総量を100質量部としたとき、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。導電助剤の含有量が上記範囲内であると、電極スラリの塗工性、バインダーの結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、導電助剤の含有量が上記上限値以下であると、電極活物質の割合が大きくなり、電極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。導電助剤の含有量が上記下限値以上であると、電極の導電性がより良好になるため好ましい。
【0035】
第一の合材層11および第二の合材層12中に分散された導電性物質は同一の種類で構成されてよい。
【0036】
第一の合材層11および第二の合材層12に含まれる導電性物質は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、カーボンナノブラシ、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックから選ばれる炭素材料を少なくとも一種類以上含むのが好ましい。
【0037】
第二の合材層12の抵抗率は、第一の合材層11の抵抗率の1倍以上100倍以下の範囲であるのが好ましい。1倍未満の場合、リチウムイオン二次電池において、穏やかな放電を引き起こすことができない。また、100倍を超えた場合、絶縁効果が乏しく、リチウムイオン二次電池において、正極の金属箔9の露出部と負極間の電流を抑制するという本来の効果を果たさない。
【0038】
さらに、第二の合材層12中に分散された導電性物質は第二の合材層12の総量に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下含まれるのが好ましい。0.1質量部未満の場合、リチウムイオン二次電池において、穏やかな放電を引き起こすことができない。また、20.0質量部を超える場合、絶縁効果が乏しく、リチウムイオン二次電池において、正極の金属箔9の露出部と負極間の電流を抑制するという本来の効果を果たさない。
【0039】
第二の合材層12中には、さらに分散された結着剤を含んでもよい。第二の合材層12中に含まれる結着剤の量が第二の合材層12の総量に対して、0.5質量部以上60質量部以下含まれるのが好ましい。
【0040】
上記第二の合材層12中に含まれる結着剤の第二の合材層12の総量に対する割合の下限の0.5質量部未満の場合、上記第二の合材層12と集電体である金属箔9との結着性が保てない。第二の合材層12の結着剤の割合の上限の60質量部を超える場合、粘性が高すぎて塗工が困難になる。また、塗工ができた場合も、第一の合材層11と第二の合材層12を同時に乾燥固化する工程を経る場合は、第一の合材層11側に第二の合材層12側のバインダーが拡散し、第一の合材層11の抵抗が高くなりすぎ、電池の出力特性などに影響が出るおそれがある。
【0041】
第一の合材層11の厚みは特に限定されるものではなく、所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー密度の観点からは厚く設定することができ、また出力特性の観点からは薄く設定することができる。第一の合材層11の厚み(片面の厚み)は、例えば、10μm以上250μm以下の範囲で適宜設定でき、20μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましい。
【0042】
第二の合材層12の最大厚さは、第一の合材層11の最小厚さよりも薄いのが好ましい。第二の合材層12の平均厚さは、3μm以上、第一の合材層11の平均厚さに対して90%以下の範囲であるのが好ましい。
【0043】
第二の合材層12の厚さが3μm未満の場合、膜厚が薄くなりすぎ、正極金属箔9の露出部と負極の電気的な接触を抑制するという本来の機能を十分維持できない。第二の合材層12の厚さが第一の合材層11の90%を超える場合、第一の合材層11を塗布するとき、第二の合材層12の端部の境界部で段差が大きくなりすぎ、塗工設備先端とワークとのギャップが均一な膜厚を塗工するための適正範囲に入らない。
【0044】
第二の合材層12の密度は、0.5g/cm3以上3.0g/cm3以下の範囲であるのが好ましい。より好ましくは、第二の合材層12の密度は0.7g/cm3以上2.8g/cm3以下の範囲である。
【0045】
第二の合材層12の密度が0.5g/cm3未満の場合、第二の合材層12の空隙率が大きくなりすぎ、電池のセパレータの熱収縮が生じた際に、正極の金属箔9の露出部と負極の電気的な接触を抑制するという本来の機能を十分維持できない。第二の合材層12の密度が3.0g/cm3を超える場合、合材層を通過するリチウムイオンの伝導度が悪化し、定常時の電池特性を確保できない。
【0046】
第一の合材層11に含まれる電極活物質の平均粒径は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、入出力特性や電極作製上の観点(電極表面の平滑性等)から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。ここで、平均粒径は、レーザ回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒子径(メジアン径:D50)を意味する。
【0047】
第二の合材層12に主成分として含まれる粒子の平均粒径は、0.1μm以上3.0μm以下の範囲であるのが好ましい。また、粒径が0.2μm以下の粒子および粒径が2μm以上の粒子の割合は、それぞれ10体積%以下であることが好ましい。
【0048】
第二の合材層12に主成分として含まれる粒子は、アルミナ、シリカ、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂および絶縁性インクから選択される材料を一つ以上含むものである。
【0049】
第二の合材層12中に含まれる結着剤は、第一の合材層11中に含まれる結着剤と同一種類のものであり、かつ、第二の合材層12中に含まれる結着剤の第二の合材層12の総量に対する割合が、第一の合材層11中に含まれる結着剤の第一の合材層11の総量に対する割合よりも大きいものであるのが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る集電体層(金属箔9)としては特に限定されないが、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金等を用いることができる。その形状としては、例えば、箔、平板状、メッシュ状等が挙げられる。特にアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、および鉄ステンレス合金箔、のいずれか一つを好適に用いることができる。また、金属箔9の厚さは12μm以下であるのが好ましい。
【0051】
<電極シート10の製造方法>
図3は、本実施形態の電極シート10の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。電極シート10の製造方法は、第1の塗布工程(A1)と、第2の塗布工程(B1)と、固化工程(C)を少なくともこの順に含む。
【0052】
電極シート10の製造システムは図示しないが、主に、塗布装置と、乾燥装置とを備える。塗布装置は、金属箔9のシートを巻き取り、シートの長尺方向Dxに搬送するローラと、第一の合材層11および第二の合材層12を形成するペースト状またはスラリ状の混合物を金属箔9の少なくとも一面にそれぞれ塗布する少なくとも2つのダイコータと、を含む。
【0053】
塗布装置のローラと、ダイコータは、図示されない制御装置(後述するコンピュータ)によって制御され、本実施形態の電極シート10の製造方法の各工程が実現される。
【0054】
第1の塗布工程A1では、製造装置のロールに巻き取られる帯状のシートである集電体(金属箔9)の両面または片面の一部に、第二の合材層12を形成する混合物を金属箔9のシートの長尺方向Dxに連続的に塗布する。この工程A1によって第二の合材層12が形成される。この混合物は、導電性のある粒状、繊維状もしくは鱗片状の固形物と、分散媒とを少なくとも含むペースト状の混合物(M1)、導電性のある熱可塑性樹脂(M2)、導電性のある熱硬化性樹脂(M3)、導電性インク(M4)の中から選択されるいずれか一つの導電性物質(M)を含む。
【0055】
第1の塗布工程A1に続く第2の塗布工程B1では、正極活物質と分散媒とを少なくとも含むペースト状の混合物(P)を金属箔9のシートの長尺方向Dxに連続的に塗布する。この工程B1により第一の合材層11が形成される。そして、第2の塗布工程B1に続く固化工程Cでは、乾燥によって形成物(第一の合材層11および第二の合材層12)を固化する。
【0056】
工程B1において、工程A1で導電性物質(M)を含む混合物を塗布した領域16の、金属箔9のシートの短尺方向Dyの一端を含む部分と、導電性物質(M)を含む混合物を塗布していない部分の両方に掛かるように混合物(P)を塗布し、かつ、導電性物質(M)を含む混合物を塗布した領域16の、金属箔9のシートの短尺方向Dyの他端12bを含む部分には混合物(P)が掛からないようにする。
【0057】
また、工程Cにおいて、導電性物質(M)を含む混合物と混合物(P)を同時に固化する。
【0058】
ここで、第一の合材層11を形成するために塗布される電極スラリの調製方法について説明する。
電極スラリは、電極活物質と、必要に応じてバインダー樹脂と、導電助剤と、増粘剤と、を混合することにより調製することができる。電極活物質、バインダー樹脂、および導電助剤の配合比率は電極活物質層中の電極活物質、バインダー樹脂、および導電助剤の含有比率と同じため、ここでは説明を省略する。
【0059】
電極スラリは、電極活物質と、必要に応じてバインダー樹脂と、導電助剤と、増粘剤と、を溶媒に分散または溶解させたものである。
各成分の混合手順は特に限定されないが、例えば、電極活物質と導電助剤とを乾式混合した後に、バインダー樹脂および溶媒を添加して湿式混合することにより電極スラリを調製することができる。
このとき、用いられる混合機としては、ボールミルやプラネタリーミキサー等の公知のものが使用でき、特に限定されない。
電極スラリに用いる溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機溶媒や、水を用いることができる。
【0060】
電極スラリを集電体層上に塗布する方法は、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、ダイコータ法、ドクターブレード法、エクストルージョン法、カーテン法、を挙げることができる。これらの中でも、電極スラリの粘性等の物性および乾燥性に合わせて、良好な塗布層の表面状態を得ることが可能となる点で、ダイコータ法が好ましい。
【0061】
また、工程Cにおける、集電体層上に塗布した電極スラリの乾燥方法としては特に限定されないが、例えば、加熱ロールを用いて集電体層側または既に乾燥した電極活物質層側から電極スラリを間接的に加熱し、電極スラリを乾燥させる方法;赤外線、遠赤外線・近赤外線のヒーター等の電磁波を用いて電極スラリを乾燥させる方法;集電体層側または既に乾燥した電極活物質層側から熱風を当てて電極スラリを間接的に加熱し、電極スラリを乾燥させる方法等が挙げられる。
【0062】
以上の工程により作製された電極シート10を所定の大きさに切断して複数の電極を得ることができる。電極シート10から電極を切り出す手段は特に限定されないが、例えば金属等からなる刃を用いて電極シート10を切断することができる。
【0063】
図2の電極シート10の場合、短尺方向Dyと平行に切断し、所定幅の複数の電極を切り出す方法が挙げられる。さらに用途に応じて、集電体として所望の外形寸法になるように裁断線と垂直な方向Dxのラインに沿って所定の寸法に打ち抜いて、電池用の電極を得ることができる。
【0064】
図4は、本発明の実施の形態に係る電極シートの製造装置の制御装置を実現するコンピュータ100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
制御装置は、それぞれ少なくとも1つのコンピュータ100により実現される。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)102、メモリ104、メモリ104にロードされた制御装置を実現するプログラム110、そのプログラム110を格納するストレージ105、I/O(Input Output)106、およびネットワーク接続用通信インタフェース(I/F)107を備える。CPU102と各要素は、バス109を介して互いに接続され、CPU102によりコンピュータ100全体が制御される。ただし、CPU102などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0065】
CPU102が、ストレージ105に記憶されるプログラム110をメモリ104に読み出して実行することにより、制御装置を用いた電極シート10の製造方法の各工程を実現することができる。
【0066】
制御装置は、コンピュータ100のハードウェアとソフトウェアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
【0067】
プログラム110は、コンピュータ100で読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。記録媒体は特に限定されず、様々な形態のものが考えられる。また、プログラムは、記録媒体からコンピュータ100のメモリ104にロードされてもよいし、ネットワークを通じてコンピュータ100にダウンロードされ、メモリ104にロードされてもよい。
【0068】
プログラム110を記録する記録媒体は、非一時的な有形のコンピュータ100が使用可能な媒体を含み、その媒体に、コンピュータ100が読み取り可能なプログラムコードが埋め込まれる。プログラム110が、コンピュータ100上で実行されたとき、コンピュータ100に、制御装置を実現させる電極シート10の製造方法を実行させる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の合材層11を形成する工程A2よりも先に第二の合材層12を形成する工程A1を行うので、第二の合材層12を薄膜形成できるので、第二の合材層12の材料費を抑えることができるとともに、第二の合材層12の乾燥時のクラックの発生を抑制することができる。
【0070】
さらに、本実施形態によれば、第二の合材層12に導電助剤を含めることで、第一の合材層11同様の電子伝導性を持たせて第二の合材層12に電流パスを形成させることができる。また、第一の合材層11より第二の合材層12の抵抗が低いため、負極126から正極121への電流パスが第二の合材層12の方に流れ易くなる。これにより、
図10(a)に示すように、工程内で第二の合材層12に金属異物32が混入した場合に、金属異物32は酸化電位にある正極集電体表面で酸化された金属イオン(M
+)として電解液に溶解する。負極側に到着すると、
図10(b)に示すように、金属イオンは、還元電位にある負極表面で還元反応により金属(M)となって析出する。
【0071】
しかし、本実施形態によれば、析出した金属が成長してセパレータ120を突き抜けたとしても、第二の合材層12に到達した時点で、第二の合材層12内の導電材を通じて第二の合材層12全般に電流パスが形成される。このため、穏やかな放電を引き起こすことができ、局所的に短絡することによる異常な発熱を避けられる。
【0072】
一方、
図10(c)に示すように、第二の合材層12の代わりに絶縁層34を設けた場合、析出した金属が成長してセパレータ120を突き抜けると、正極121と負極126が繋がり、ショートが発生し、自己放電不良となる。
【0073】
図10では、第二の合材層12のみが存在する範囲d1に異物32が混入した例を示しているが、第一の合材層11と第二の合材層12が存在する範囲d2、又は第一の合材層11のみが存在する範囲d3に異物32が混入した場合も同様に、本実施形態によれば、正極121と負極126が繋がらず、自己放電不良とならない。
【0074】
また、第二の合材層12と第一の合材層11の重なり部分に導電性がないと、充放電反応に寄与しないため、実効的に電池の容量が小さくなってしまう。本実施形態では、第一の合材層11と第二の合材層12は導電性を有することで、この問題を解決できる。
【0075】
また、特許文献13の例では、集電体の露出領域を確実に保護層で覆うためには、ある程度活物質層に保護層がかかるように保護層を塗布しなければならない。しかし、活物質層が存在すると、保護層を形成するためのダイを箔に十分近づけられないため、膜厚の薄い膜を形成できない。
【0076】
加えて、マスキングテープを活物質層側に貼ると、保護層の塗布が終わった後にマスキングテープを剥離する際に、活物質層自体が集電体から剥がれてしまう。このため、活物質層側にマスキングテープを貼ることはできず、塗布に用いる装置の安定性やばらつきを考慮すると、活物質層にかかる保護層の面積を大きめに設定せざるを得ない。また、塗工時の箔の蛇行や塗工装置の位置ずれなど、製造条件によって上記の活物質層にかかる保護層の面積は大きなばらつきを持つ。このため、保護層は、活物質層端部の傾斜部だけでなく、その内側の活物質層にも形成される。
【0077】
さらに、活物質層を形成した後に、マスキングテープを貼って、活物質層端部に保護層を塗布すると、マスキングテープと箔との境界および、活物質層と箔との境界がある被塗布部に大きな段差や傾斜があるため、厚みのばらつきが生じやすくなるとともに、液溜まりが起こって必要以上に塗布される保護層の厚みが厚くなってしまう。
【0078】
このような構成にて設計した電極を多数枚積層していくと、保護層が活物質層に重なって形成された領域のみ局所的な積層方向への厚みの増加(段差)が発生する。すなわち、電池全体の膜厚が均一にはならず、保護層のある部分だけ厚み方向に突出した形状となる。
【0079】
一方、リチウムイオン電池の製造過程や使用過程において、電池の積層方向に均一な押圧がされないことにより、ガス除去が行われなかったり、充放電反応の不均一が生じたり、等の問題が生じる。また、マスキングテープと箔との境界および、活物質層と箔との境界である被塗布部に大きな段差や傾斜がある部分では、上記のように保護層を塗布するときの液溜まりが起こっており、その部分だけ乾燥が十分に進まないため、バインダーの箔近辺への分散も進まず、剥離強度が弱くなり、後の工程や電池を使用している際に、そこから保護層がはがれてしまうことがあった。
【0080】
また、保護層の液溜まり部分のようなものができ、保護層の乾燥が不十分なまま後工程にかかるほかの不具合として、フィラー(アルミナなど)よりも導電助剤の方が凝集しやすい性質があるため、導電助剤のみが凝集してしまい、保護層内の抵抗ばらつきが生じやすい、ということがあった。すなわち、保護層表面のみに導電助剤が分布しやすくなり、膜厚が厚いことも相まって、膜厚方向に電気伝導が起こらなくなり、負極から析出し正極上の保護層に到達した時点で、保護層内の導電材を通じて保護層全般に電流パスが形成することが難しくなり、穏やかな放電を引き起こして、局所的に短絡することによる異常な発熱を避ける、という効果が十分得られなかった。
【0081】
マスキングテープを除去する際に、集電体箔表面に形成された保護層もマスキングテープごと剥離されてしまう問題もあった。また、マスキングテープを貼るときの位置ずれによって、負極に対向する正極の箔露出部に、完全に第二の合材層12が形成されない恐れもあった。
【0082】
本実施形態では、第一の合材層11よりも先に導電性の第二の合材層12を形成するため、膜厚の薄い第二の合材層12でも均一な厚さで、塗布位置を高確度かつ高精度に制御しながら第二の合材層12を形成することができる。そして、第二の合材層12内の導電助剤が均一に分布しており、第二の合材層12のどの部分でも厚み方向への導電性が保たれ、抵抗が一定以下に保たれる。
【0083】
第一の合材層11と第二の合材層12の重なり領域においても、第二の合材層12内の導電助剤が均一に分布しており、かつ膜厚も薄いので、第一の合材層11における集電箔と遠い側に存在する活物質粒子の寄与する電子も第二の合材層12内の導電パスを通じて箔側に伝達される。すなわち、活物質粒子表面の電子の箔への移動抵抗が少なくなり、その結果、こうした重なり領域の活物質も充放電に寄与するため、電池の容量を大きく確保することができる。
【0084】
第二の合材層12のどの部分でも厚み方向への導電性が保たれ、抵抗が一定以下に保たれるので、穏やかな放電を引き起こすことが可能である。第一の合材層11と第二の合材層12の重なり領域においても、膜厚の増加が小さく抑えられるので、電極を積層した時の局所的な厚みの増加(段差)がなく、電池を均一に押圧することができる。このため、製造過程で電池内部から十分なガス放出が可能となるほか、使用過程でも均一な充放電反応が起きるため、安定した電池特性が確保される。
【0085】
(第1の実施形態の変形態様)
第1の実施形態では、金属箔9に電極活物質を連続塗布する方法で電極シート10を作製する例について説明した。第1の実施形態の変形態様として、金属箔9の電極活物質を間欠塗布する方法で電極シート10を作製する例について、以下説明する。
【0086】
図5は、本変形態様の電極シート10の上面図である。
本実施形態の電極シート10は、ロールに巻き取られる帯状のシートである集電体(金属箔9)の両面または片面に、金属箔9のシートの長尺方向Dxに、少なくとも正極活物質を含む第一の合材層11と、第一の合材層11によって一部が覆われ、活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層12とが、それぞれ金属箔9の短尺方向Dyに所定の幅で金属箔9の長尺方向Dxに間欠的に形成される。
【0087】
そして、第二の合材層12は、第一の合材層11が形成される形成領域15と活物質合材層が形成されない非形成領域17の境界部19のうち、金属箔9のシートの長尺方向Dxの第一の合材層11の端部のうち少なくとも一方の端部11a側に設けられる。
第二の合材層12の一端12aは第一の合材層11の形成領域15における、金属箔9の少なくとも一方の面と第一の合材層11の下面との間に位置し、他端12bは非形成領域17に位置する。
【0088】
<電極シート10の製造方法>
図6は、本変形態様の電極シート10の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。電極シート10の製造方法は、第1の塗布工程(A2)と、第2の塗布工程(B2)と、固化工程(C)を少なくともこの順に含む。
【0089】
本変形態様において、上記第1実施形態と同様な塗布装置を用いることができるが、本変形態様の塗布装置は、第一の合材層11および第二の合材層12を形成するペースト状またはスラリ状の混合物を金属箔9の少なくとも一面にそれぞれ塗布する少なくとも2つのダイコータの電極シート10に対する配置が上記第1実施形態とは異なる。
【0090】
次に、
図7とともに、各工程について説明する。
図7(a2)、
図7(b2)、
図7(c2)は、
図7(a1)、
図7(b1)、
図7(c1)の電極シート10を、矢印IIの方向から見た線II-IIにおける断面図である。
始めに、塗布装置に金属箔9が準備される(
図7(a1)および
図7(a2))。
【0091】
次に、第1の塗布工程A2では、製造装置のロールに巻き取られる帯状のシートである集電体(金属箔9)の両面または片面の一部に、第二の合材層12を形成する混合物を前記シートの短尺方向Dyに所定の幅で長尺方向Dxに間欠的に塗布する。この工程A2によって、
図7(b1)および
図7(b2)に示すように、第二の合材層12が形成される。
【0092】
図7(b1)および
図7(b2)において、破線15の領域は第二の合材層12が形成される塗布領域15を示している。図示されるように、第二の合材層12は、第一の合材層11が形成される塗布領域15と第一の合材層11が形成されない非塗布領域17の境界部19のうち、第一の合材層11が形成される塗布領域の少なくとも一方の端部11a側に設けられている。
【0093】
第二の合材層12を形成する混合物は、導電性のある粒状、繊維状もしくは鱗片状の固形物と、分散媒とを少なくとも含むペースト状の混合物(M1)、導電性のある熱可塑性樹脂(M2)、導電性のある熱硬化性樹脂(M3)、導電性インク(M4)の中から選択されるいずれか一つの導電性物質(M)を含む。
【0094】
第1の塗布工程A2に続く第2の塗布工程B2では、正極活物質と分散媒とを少なくとも含むペースト状の混合物(P)をシートの短尺方向Dyに所定の幅で長尺方向Dxに間欠的に塗布する。この工程B2により、
図7(c1)および
図7(c2)に示すように、第一の合材層11が形成される。
【0095】
この工程B2において、工程A2で導電性物質(M)を含む混合物を塗布した領域16の、金属箔9の長尺方向Dxの一端12aを含む部分と、導電性物質(M)を含む混合物を塗布していない部分(非塗布領域17)の両方に掛かるように混合物(P)を塗布し、かつ、導電性物質(M)を含む混合物を塗布した領域16の、シートの長尺方向Dxの他端12bを含む部分には混合物(P)が掛からないようにする。
【0096】
そして、第2の塗布工程B2に続く固化工程Cでは、乾燥によって形成物(第一の合材層11および第二の合材層12)を固化する。この工程Cにおいて、導電性物質(M)を含む混合物と混合物(P)を同時に固化する。
【0097】
以上のように、本変形態様の電極シート10においても上記第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0098】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、第1の実施形態で作製された正極電極を用いて製造される電池について説明する。
【0099】
図8は、本発明の実施の形態に係る電池150の構成の一例を示す概略図である。
本実施形態に係る電池は、上記実施形態で説明した電極シート10から作製される正極電極を備える。以下、本実施形態に係る電池について、電池がリチウムイオン電池の積層型電池150である場合を代表例として説明する。
【0100】
積層型電池150は、正極121と負極126とが、セパレータ120を介して交互に複数層積層された電池要素を備えており、これらの電池要素は電解液(図示せず)とともに可撓性フィルム140からなる容器に収納されている。電池要素には正極端子131および負極端子136が電気的に接続されており、正極端子131および負極端子136の一部または全部が可撓性フィルム140の外部に引き出されている構成になっている。
【0101】
正極121には正極集電体層123の表裏に、正極活物質の塗布部(正極活物質層122)と非塗布部がそれぞれ設けられており、負極126には負極集電体層128の表裏に、負極活物質の塗布部(負極活物質層127)と非塗布部が設けられている。
【0102】
正極集電体層123における正極活物質の非塗布部を正極端子131と接続するための正極タブ130とし、負極集電体層128における負極活物質の非塗布部を負極端子136と接続するための負極タブ125とする。
正極タブ130同士は正極端子131上にまとめられ、正極端子131とともに超音波溶接等で互いに接続され、負極タブ125同士は負極端子136上にまとめられ、負極端子136とともに超音波溶接等で互いに接続される。そのうえで、正極端子131の一端は可撓性フィルム140の外部に引き出され、負極端子136の一端も可撓性フィルム140の外部に引き出されている。
【0103】
上記したように、正極活物質の塗布部(塗布領域15)(正極活物質層122)と非塗布部(非塗布領域17)の境界部124に、第二の合材層12を形成することができる。また、第二の合材層12の一端は、正極活物質の塗布部(塗布領域15)(正極活物質層122)にかかり、他端は、正極タブ130までかかる。
【0104】
負極活物質の塗布部(負極活物質層127)と非塗布部の境界部129には、必要に応じて絶縁部材を形成することができ、負極タブ125と負極活物質の双方の境界部付近に形成することができる。
【0105】
通常、負極活物質層127の外形寸法は正極活物質層122の外形寸法よりも大きく、セパレータ120の外形寸法よりも小さい。
【0106】
(リチウム塩を含有する非水電解液)
本実施形態に用いるリチウム塩を含有する非水電解液は、電極活物質の種類やリチウムイオン電池の用途等に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
【0107】
具体的なリチウム塩の例としては、例えば、LiClO4、LiBF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、CF3SO3Li、CH3SO3Li、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等を挙げることができる。
【0108】
リチウム塩を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであれば特に限定されるものではなく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC),ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0109】
(容器)
本実施形態において容器には公知の部材を用いることができ、電池の軽量化の観点からは可撓性フィルム140を用いることが好ましい。可撓性フィルム140は、基材となる金属層の表裏面に樹脂層が設けられたものを用いることができる。金属層には電解液の漏出や外部からの水分の侵入を防止する等のバリア性を有するものを選択することができ、アルミニウム、ステンレス鋼等を用いることができる。金属層の少なくとも一方の面には変性ポリオレフィン等の熱融着性の樹脂層が設けられ、可撓性フィルム140の熱融着性の樹脂層同士を電池要素を介して対向させ、電池要素を収納する部分の周囲を熱融着することで外装体を形成する。熱融着性の樹脂層が形成された面と反対側の面となる外装体表面にはナイロンフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂層を設けることができる。
【0110】
(端子)
本実施形態において、正極端子131にはアルミニウムやアルミニウム合金で構成されたもの、負極端子136には銅や銅合金あるいはそれらにニッケルメッキを施したもの等を用いることができる。それぞれの端子は容器の外部に引き出されるが、それぞれの端子における外装体の周囲を熱溶着する部分に位置する箇所には熱融着性の樹脂をあらかじめ設けることができる。
【0111】
(絶縁部材)
活物質の塗布部と非塗布部の境界部129に絶縁部材を形成する場合には、ポリイミド、ガラス繊維、ポリエステル、ポリプロピレンあるいはこれらを構成中に含むものを用いることができる。これらの部材に熱を加えて境界部129に溶着させるか、または、ゲル状の樹脂を境界部129に塗布、乾燥させることで絶縁部材を形成することができる。
【0112】
(セパレータ)
本実施形態に係るセパレータ120は、耐熱性樹脂を主成分として含む樹脂層を備えることが好ましい。
ここで、上記樹脂層は主成分である耐熱性樹脂により形成されている。ここで、「主成分」とは、樹脂層中における割合が50質量%以上であることを言い、好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよいことを意味する。
本実施形態に係るセパレータ120を構成する樹脂層は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
【0113】
上記樹脂層を形成する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-m-フェニレンテレフタレート、ポリ-p-フェニレンイソフタレート、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、フッ素系樹脂、ポリエーテルニトリル、変性ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0114】
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、伸縮性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミドから選択される一種または二種以上がより好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよび全芳香族ポリアミドから選択される一種または二種以上がさらに好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0115】
本実施形態に係るセパレータ120を構成する樹脂層は多孔性樹脂層であることが好ましい。これにより、リチウムイオン電池に異常電流が発生し、電池の温度が上昇した場合等に多孔性樹脂層の微細孔が閉塞して電流の流れを遮断することができ、電池の熱暴走を回避することができる。
【0116】
上記多孔性樹脂層の空孔率は、機械的強度およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、20%以上80%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましく、40%以上60%以下が特に好ましい。
空孔率は、下記式から求めることができる。
ε={1-Ws/(ds・t)}×100
ここで、ε:空孔率(%)、Ws:目付(g/m2)、ds:真密度(g/cm3)、t:膜厚(μm)である。
【0117】
本実施形態に係るセパレータ120の平面形状は、特に限定されず、電極や集電体の形状に合わせて適宜選択することが可能であり、例えば、矩形とすることができる。
【0118】
本実施形態に係るセパレータ120の厚みは、機械的強度およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、好ましくは5μm以上50μm以下である。
【0119】
以上説明したように、上記実施形態のいずれかの電極シート10から作製される正極電極を用いて電池等の電気化学デバイスの組み立てを実施することができる。
【実施例0120】
(実施例1)
図9(a1)~
図9(a3)は、本発明の実施例1の電極シート10の製造方法の手順を示す図である。
【0121】
図9(a1)に示すように、実施例1では、
図3や
図6で説明したように、まず始めに、工程A1又は工程A2によって第二の合材層12が金属箔9の少なくとも一方の面に塗布される。そのため、第二の合材層12の塗布装置のダイコータ22の位置は、金属箔9の上面に近接した高さh1で設置することができる。これは、後述する
図9(b2)の比較例の塗布装置のダイコータ22の位置、すなわち、高さh2より低くすることができる。
【0122】
このように、金属箔9に近接してダイコータ22を配置することができるので、
図9(a2)に示すように、第二の合材層12の薄膜塗工が可能になる。
【0123】
そして、
図9(a3)に示すように、薄膜形成された第二の合材層12の上に一部分掛かるように、工程B1又は工程B2によって第一の合材層11が形成される。
【0124】
このように、実施例1で形成された第二の合材層12は、薄膜形成できるので、第二の合材層12の材料費を抑えることができるとともに、第二の合材層12の乾燥時のクラックの発生を抑制することができる。
【0125】
(比較例1)
図9(b1)~
図9(b3)は、比較例1の電極シート10の製造方法の手順を示す図である。
比較例1では、
図9(b1)に示すように、第二の合材層12より先に第一の合材層11を金属箔9に塗布する。すると、
図9(b2)に示すように、塗布装置のダイコータ22の位置(高さh2)は、
図9(a1)の実施例1の位置(高さh1)より、第一の合材層11の高さ分だけ高くなり、つまり、金属箔9から離れた位置となる。このため、
図9(b3)に示すように、比較例1により形成される第二の合材層12は、実施例1により形成される第二の合材層12に比較して膜厚が厚くなる。このため、第二の合材層12の材料費が高くなるとともに、第二の合材層12の乾燥時にクラック30が発生しやすくなる。
【0126】
(実施例2)
図10(a)および
図10(b)は、本発明の正極電極を用いて作製された実施例2のリチウムイオン二次電池の断面図を模式的に示す図である。
図10(a)に示す実施例2の電池150は、本発明の導電性物質を含む第二の合材層12を有する正極電極121を用いている。
図10(a)に示すように、工程内で第二の合材層12に金属異物32が混入した場合に、金属異物32は酸化電位にある正極集電体表面で酸化された金属イオン(M
+)として電解液に溶解する。負極側に到着すると、
図10(b)に示すように、金属イオンは、還元電位にある負極表面で還元反応により金属(M)となって析出する。
【0127】
しかし、析出した金属が成長してセパレータ120を突き抜けたとしても、第二の合材層12に到達した時点で、第二の合材層12内の導電材を通じて第二の合材層12全般に電流パスが形成される。このため、穏やかな放電を引き起こすことができ、局所的に短絡することによる異常な発熱を避けられる。
【0128】
(比較例2)
図10(c)は、第二の合材層12を有さない正極電極を用いて作製された比較例2のリチウムイオン二次電池の断面図を模式的に示す図である。第二の合材層12の代わりに絶縁層34を設けた場合、析出した金属が成長してセパレータ120を突き抜けて正極121と負極126が繋がり、ショートが発生し、自己放電不良となる。
【0129】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0130】
以下、参考形態の例を付記する。
1. 集電体と、
前記集電体の少なくとも一方の面に設けられた、少なくとも正極活物質を含む第一の合材層と、
前記第一の合材層によって一部が覆われ、前記正極活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層を備え、
前記第二の合材層は、前記第一の合材層が形成される形成領域と前記第一の合材層が形成されない非形成領域の境界部のうち、前記第一の合材層の少なくとも一方の端部側に設けられ、
前記第二の合材層の一端は、前記第一の合材層の形成領域における、前記集電体の前記少なくとも一方の面と前記第一の合材層の下面との間に位置し、他端は前記非形成領域に位置し、
前記第一の合材層および前記第二の合材層中に分散された導電性物質を含む、
リチウムイオン二次電池用の正極電極。
2. 前記第一の合材層および前記第二の合材層中に分散された導電性物質は同一の種類で構成される、
1.に記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
3. 前記導電性物質は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、カーボンナノブラシ、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックから選ばれる炭素材料を少なくとも一種類以上含む、
1.または2.に記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
4. 前記第二の合材層の抵抗率は、前記第一の合材層の抵抗率の1倍以上100倍以下の範囲である、
1.乃至3.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
5. 前記第二の合材層中に分散された前記導電性物質が前記第二の合材層の総量に対して、
0.1質量部以上20.0質量部以下含まれる、
1.乃至4.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
6. 前記第二の合材層中に、さらに分散された結着剤を含み、
前記第二の合材層中に含まれる前記結着剤の量が前記第二の合材層の総量に対して、0.5質量部以上60質量部以下含まれる、
1.乃至5.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
7. 前記第二の合材層の最大厚さは、前記第一の合材層の最小厚さよりも薄い、
1.乃至5.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
8. 前記第二の合材層の平均厚さは、3μm以上、前記第一の合材層の平均厚さに対して90%以下の範囲である、
1.乃至7.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
9. 前記第二の合材層の密度は、0.5g/cm3以上3.0g/cm3以下の範囲である、
1.乃至8.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
10. 前記第二の合材層に主成分として含まれる粒子の平均粒径は、0.1μm以上3.0μm以下の範囲である、
1.乃至9.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
11. 前記第二の合材層に主成分として含まれる粒子は、アルミナ、シリカ、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂および絶縁性インクから選択される材料を一つ以上含む、
1.乃至10.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
12. 前記第二の合材層中に含まれる前記結着剤は、前記第一の合材層中に含まれる結着剤と同一種類であり、かつ、前記第二の合材層中に含まれる結着剤の前記第二の合材層の総量に対する割合は、前記第一の合材層中に含まれる結着剤の前記第一の合材層の総量に対する割合よりも大きい、
6.乃至11.のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極。
13. ロールに巻き取られる帯状のシートである集電体の両面または片面に、少なくとも正極活物質を含む第一の合材層と、
前記第一の合材層によって一部が覆われ、前記正極活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層とが、
前記シートの長尺方向に連続的かつ、前記シートの長尺方向に対して平行に並列に形成され、
前記第一の合材層の前記シートの短尺方向側の少なくとも一端が、前記第二の合材層の一部を覆って形成されるリチウムイオン二次電池用の正極電極シート。
14. ロールに巻き取られる帯状のシートである集電体の両面または片面に、
前記シートの長尺方向に、
少なくとも正極活物質を含む第一の合材層と、
前記第一の合材層によって一部が覆われ、前記正極活物質と異なる粒子を主成分として構成する第二の合材層とが、
それぞれ間欠的に形成され、
前記第二の合材層は、前記第一の合材層が形成される形成領域と前記第一の合材層が形成されない非形成領域の境界部のうち、前記第一の合材層の前記シートの長尺方向の少なくとも一方の端部側に設けられ、
前記第二の合材層の一端は、前記第一の合材層の形成領域における、前記集電体の前記少なくとも一方の面と前記第一の合材層の下面との間に位置し、他端は前記非形成領域に位置するリチウムイオン二次電池用の正極電極シート。
15. ロールに巻き取られる帯状のシートである集電体の両面または片面の一部に、導電性のある粒状、繊維状もしくは鱗片状の固形物と、分散媒とを少なくとも含むペースト状の混合物(M1)、導電性のある熱可塑性樹脂(M2)、導電性のある熱硬化性樹脂(M3)、導電性インク(M4)の中から選択されるいずれか一つの導電性物質(M)を含む混合物を前記シートの長尺方向に連続的に塗布する工程(A1)と、
正極活物質と分散媒とを少なくとも含むペースト状の混合物(P)を前記シートの長尺方向に連続的に塗布する工程(B1)と、
乾燥によって形成物を固化する工程(C)と、
を少なくともこの順番で含み、
前記工程(B1)において、前記工程(A1)で前記導電性物質(M)を含む混合物を塗布した領域の、前記シートの短尺方向の一端を含む部分と、前記導電性物質(M)を含む混合物を塗布していない部分の両方に掛かるように前記混合物(P)を塗布し、かつ、前記導電性物質(M)を含む混合物を塗布した領域の、前記シートの短尺方向の他端を含む部分には前記混合物(P)が掛からないようにする、リチウムイオン二次電池用の正極電極シートの製造方法。
16. ロールに巻き取られる帯状のシートである集電体の両面または片面の一部に、導電性のある粒状、繊維状もしくは鱗片状の固形物と、分散媒とを少なくとも含むペースト状の混合物(M1)、導電性のある熱可塑性樹脂(M2)、導電性のある熱硬化性樹脂(M3)、導電性インク(M4)の中から選択されるいずれか一つの導電性物質(M)を含む混合物を前記シートの長尺方向に間欠的に塗布する工程(A2)と、
正極活物質と分散媒とを少なくとも含むペースト状の混合物(P)を前記シートの長尺方向に間欠的に塗布する工程(B2)と、
乾燥によって形成物を固化する工程(C)と、
を少なくともこの順番で含み、
前記工程(B2)において、前記工程(A2)で前記導電性物質(M)を含む混合物を塗布した領域の、前記シートの長尺方向の一端を含む部分と、前記導電性物質(M)を含む混合物を塗布していない部分の両方に掛かるように前記混合物(P)を塗布し、かつ、前記導電性物質(M)を含む混合物を塗布した領域の、前記シートの長尺方向の他端を含む部分には前記混合物(P)が掛からないようにする、リチウムイオン二次電池用の正極電極シートの製造方法。
17. 前記工程(C)において、前記導電性物質(M)を含む混合物と前記混合物(P)を同時に固化する、
15.または16.に記載のリチウムイオン二次電池用の正極電極シートの製造方法。