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特開2023-174941抗アレルギー用化粧品及び経皮外用剤
<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174941
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】抗アレルギー用化粧品及び経皮外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20231201BHJP
   A61K 36/22 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231201BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231201BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20231201BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20231201BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231201BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231201BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20231201BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/22
A61P37/08
A61P37/06
A61P17/00
A61P29/00
A61K9/08
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/44
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/92
A61Q19/00
A61Q1/00
A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180987
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2022524530の分割
【原出願日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2020087891
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503249119
【氏名又は名称】株式会社 ソーシン
(71)【出願人】
【識別番号】522376276
【氏名又は名称】福山 朋季
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 到
(72)【発明者】
【氏名】福山 朋季
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD32
4B018MD35
4B018MD41
4B018MD61
4B018MD90
4B018ME07
4C076AA12
4C076AA14
4C076AA29
4C076BB31
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC40
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD46
4C076EE51
4C076EE53
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA161
4C083AC391
4C088AB21
4C088BA07
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA16
4C088MA17
4C088MA43
4C088MA63
4C088NA06
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB08
4C088ZB11
4C088ZB13
(57)【要約】
【課題】マスティック成分、特にマスティック精油を使用することにより、製造コストが抑えられた当該マスティック成分を有効成分として含有する抗アレルギー用化粧品及び抗アレルギー用経皮外用剤を提供することにある。
【解決手段】マスティック成分を免疫抑制関与成分として含有する抗アレルギー用化粧品であって、前記抗アレルギー用化粧品は、アレルギー性皮膚炎を抑制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスティック成分を免疫抑制関与成分として含有する抗アレルギー用化粧品であって、前記抗アレルギー用化粧品は、アレルギー性皮膚炎を抑制することを特徴とする抗アレルギー用化粧品。
【請求項2】
前記マスティック成分は、マスティックパウダー、マスティックオイル、マスティック精油又はマスティックウォータのいずれか1つから選択される請求項1に記載の抗アレルギー用化粧品。
【請求項3】
前記マスティックオイルは、希釈剤に溶解させて成り、濃度が0.1~60重量%の前記希釈剤の溶液である請求項2に記載の抗アレルギー用化粧品。
【請求項4】
前記希釈剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、アルコール溶剤、鉱物油又は植物油のいずれかである請求項3に記載の抗アレルギー用化粧品。
【請求項5】
前記マスティックパウダーの配合量は、前記抗アレルギー用化粧品に対して、0.01~80重量%である請求項2に記載の抗アレルギー用化粧品。
【請求項6】
前記マスティックオイルの含有量は、前記抗アレルギー用化粧品に対して、0.01~80重量%である請求項2乃至4のいずれか1項に記載の抗アレルギー用化粧品。
【請求項7】
前記マスティック精油の配合量は、前記抗アレルギー用化粧品に対して、0.001~3重量%である請求項2に記載の抗アレルギー用化粧品。
【請求項8】
前記マスティックウォータの含有量は、前記抗アレルギー用化粧品に対して、0.1~100重量%である請求項2に記載の抗アレルギー用化粧品。
【請求項9】
免疫抑制対象アレルギーが、クームスの分類で、I型及びIV型である請求項1に記載の抗アレルギー用化粧品。
【請求項10】
マスティック成分を免疫抑制関与成分として含有する抗アレルギー用経皮外用剤であって、前記抗アレルギー用経皮外用剤は、アレルギー性皮膚炎を抑制することを特徴とする抗アレルギー用経皮外用剤。
【請求項11】
前記マスティック成分は、マスティックパウダー、マスティックオイル、マスティック精油又はマスティックウォータのいずれか1つから選択される請求項10に記載の抗アレルギー用経皮外用剤。
【請求項12】
前記マスティックオイルは、希釈剤に溶解させて成り、濃度が0.1~60重量%の前記希釈剤の溶液である請求項11に記載の抗アレルギー用経皮外用剤。
【請求項13】
前記希釈剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、アルコール溶剤、鉱物油又は植物油のいずれかである請求項12に記載の抗アレルギー用経皮外用剤。
【請求項14】
前記マスティックパウダーの配合量は、前記抗アレルギー用経皮外用剤に対して、0.01~80重量%である請求項11に記載の抗アレルギー用経皮外用剤。
【請求項15】
前記マスティックオイルの含有量は、前記抗アレルギー用経皮外用剤に対して、0.01~80重量%である請求項11乃至13のいずれか1項に記載の抗アレルギー用経皮外用剤。
【請求項16】
前記マスティック精油の配合量は、前記抗アレルギー用経皮外用剤に対して、0.001~3重量%である請求項11に記載の抗アレルギー用経皮外用剤。
【請求項17】
前記マスティックウォータの含有量は、前記抗アレルギー用経皮外用剤に対して、0.1~100重量%である請求項11に記載の抗アレルギー用経皮外用剤。
【請求項18】
免疫抑制対象アレルギーが、クームスの分類で、I型及びIV型である請求項10に記載の抗アレルギー用経皮外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスティックオイルを有効成分として含有する抗アレルギー用化粧品及び抗アレルギー用経皮外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー若しくはアレルギー反応は、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こる反応のことをいう。アレルギーが起こる原因は解明されていないが、生活環境のほか、抗原に対する過剰な曝露、遺伝などが原因ではないかと考えられている。なお、アレルギーを引き起こす抗原を特にアレルゲンと呼ぶ。ハウスダストや、犬若しくは猫の毛、ダニ、カビ、花粉等といった生物や植物に由来するもの、蕎麦、米、小麦、酵母、ゼラチン、乳製品、鶏卵等といった食物に由来するものなど実に様々なものがアレルゲンとなる。また、薬剤においても成分によってはアレルゲンになったりする。
【0003】
ここで、アレルゲンに対して免疫反応が起こる機序としては、IgE、IgG又はIgMといった免疫グロブリン系抗体のアレルゲンに対する過剰反応、感作T細胞のアレルゲンに対する過剰反応、ヘルパーT細胞若しくはその亜種(例えばTh1、Th2細胞)並びに/又は好中球、好酸球、マクロファージ、サイトカイン(主にインターロイキン(IL))、のアレルゲンに対する過剰反応などがある。
【0004】
そして、アレルギー反応により、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹等といった、いわゆるアレルギー性疾患を発症する。上記アレルギー性疾患は主にヒトにおいて発症するが、他の哺乳動物(例えば犬や猫)でもヒト同様に皮膚炎や結膜炎などといった疾患を発症する。
【0005】
ところで、アレルギー性疾患を治療する、即ち過剰な免疫反応を司る受容体(例えばロイコトリエンLT受容体やヒスタミンH受容体)やメディエータ(ヒスタミンやサイトカイン)自体に対する拮抗剤、阻害剤、抑制剤或いは遊離剤がある。前述した免疫反応における拮抗、阻害、抑制、若しくは遊離においては、ステロイド系化合物を有効成分とするステロイド系製剤又はステロイド系に依らない例えば第一世代若しくは第二世代抗ヒスタミン製剤、ケミカルメディエータ遊離剤などの非ステロイド製剤に大まかに分類される。
【0006】
一般的に、ステロイド系製剤は、主に免疫反応及び免疫反応を司る受容体やメディエータ等の働きを抑制する役割を担う。更に、ステロイド系製剤は、免疫抑制剤としての抗アレルギー剤の役割だけではなく、抗炎症剤、血管収縮剤、細胞増殖抑制剤として用いられており、その剤型も内服薬、皮膚外用剤(塗布剤)、点眼薬、点滴等あらゆる剤型を採る。しかしながら、ステロイド系製剤は、軽症若しくは軽傷又は無症状に近い状態で用法を誤って使用してしまうと、アレルギーや疾患に直接関係のない因子(例えばインスリン等のホルモン)にまで抑制作用が起きてしまい、副作用を併発する可能性が高いという難点がある。また、抗ヒスタミン剤に代表されるような非ステロイド系抗アレルギー剤もまた、有効成分が多くを占めれば、非ステロイド系薬剤と同様に副作用を併発するという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-221328号公報
【特許文献2】特許第5967492号公報
【特許文献3】特開2018-83764号公報
【特許文献4】特開2017-75098号公報
【特許文献5】特開2019-43945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ステロイド系製剤及び/又は非ステロイド系薬剤共に抗アレルギー剤の副作用を少なくするために、例えば特開2003-221328号公報(特許文献1)にL-アルギニン及び/又はエタノールアミン(但し、アミンは第1、第2、又は第3級のいずれか)を使用した皮膚健全化剤が開示されている。特許文献1に記載の剤は、L-アルギニン及び/又はエタノールアミンを使用することにより、有効成分を保持しつつ、副作用を抑えるというものである。しかしながら、特許文献1の剤に係る皮膚健全化効果は、L-アルギニン及び/又はエタノールアミンはあくまで副作用を抑えるという目的であり、あくまで免疫抑制剤等の薬効成分は既知の薬剤を用いている。そして、特許文献1の実施例は、あくまで抗炎症作用や、老化防止作用等といった、目視で確認できる程度の試験であり、具体的に免疫反応を司る受容体やメディエータにどのように作用するかは記載や示唆が無い。
【0009】
ここで、一般的なステロイド系製剤及び/又は非ステロイド系薬剤に含まれている有効成分ではなく、タンパク質のアゴニストを含む免疫抑制剤が例えば特許第5967492号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献2の抑制剤は、蛋白質のアゴニストを用いることにより、自己免疫疾患、臓器移植後の拒絶反応、アレルギー性疾患もしくは炎症性疾患の予防および/または治療に効果が期待できるというものである。しかも、一般的なステロイド系製剤及び/又は非ステロイド系薬剤と違い、特許文献2の抑制剤は、基本的にはタンパク質から成るものなので、副作用が少なくて済む、言い換えると特許文献1のように副作用を抑制するための助剤を必要としない。しかしながら、特許文献2の抑制剤は、アゴニストのためのアミノ酸配列を見出さなくてならないこと、また、生物学的な技法でなくては作製できないことから、設備の整った研究施設等でなくては作製が不可能であり、コストがかかってしまう可能性が高い。
【0010】
一般的なステロイド系製剤及び/又は非ステロイド系薬剤で使用される合成化学的手法や、特許文献2で使用される生物学的手法を用いた場合、コストがかかってしまうことと、受容体やメディエータにどのように作用するかは判明しても、例えば特許文献1に記載されているような助剤によって副作用を抑えなくてはならないといったことが懸念される。
【0011】
そこで、近年では天然物に由来した免疫調整用組成物が、例えば特開2018-83764号公報(特許文献3)に開示されている。特許文献3に係る組成物は、キク科アザミ属ハマアザミ又はその抽出物を有効成分として免疫抑制機能を発現するという組成物である。そしてその組成物を食品等に混合して使用する。しかしながら、特許文献3においては、ハマアザミ抽出物に含まれるシルシマリン及び/又はシルシマリチンが、免疫調整に係る主成分であり、ハマアザミについては、葉や茎などの全草部分を乾燥したものが使用できる旨が記載されているが、結果的にはその乾燥物も熱水抽出して使用することになる。より免疫調整組成物としての精度を上げるためには、抽出物を更にクロマトグラフィー等で精製することにより、シルシマリン及び/又はシルシマリチンを単離しなくてはならない。その際の抽出物についても、熱水抽出ではなく、有機溶剤を使用して抽出をしなくてはならないため、用いる溶媒によっては溶媒の留去が負担になる可能性が高い。
【0012】
上記に述べた、有機溶剤を用いるまでもなく、単離精製が可能な材料として例えばマスティック(マスティハ)等が知られている。マスティック(マスティハ)は、ウルシ科のカイノキ属マスティクス(Pistacia lentiscus)を言い、ギリシャのヒオス島でしか産生しない。そして、マスティックは殺菌、抗微生物効果が知られており、例えば胃腸の疾患をもたらすピロリ菌やボツリヌス菌の殺菌、ヒトやヒト以外(例えば犬、猫)の動物に関わらず歯周病菌に対する殺菌効果、血圧低下作用、血糖値低下作用のほか、コレステロールの低下作用、免疫賦活効果、胆汁分泌の促進、舌が白くなる舌苔の防止、痛風やリウマチの痛みの緩和、傷口の殺菌、創傷治癒促進などの作用等が近年知られるようになった。一般的マスティックは、主成分としてはマスチカジエノン酸、イソマスチカジエノン酸、トリテルペン類、アルデヒド類、アルコール類、ポリβ‐ミルセン等を含有する「マスティック樹液」、マスティック樹液を、自然乾燥させ凝固させたものを「マスティック樹脂」、マスティック樹液又はマスティック樹脂を水蒸気蒸留法若しくは乾留により、揮発性の成分(主にテルペン類)を精油化した「マスティック精油(オイル)」の3種に分けて使用する。マスティックを先に述べたそれぞれの形態に分ける際、自然乾燥や水蒸気蒸留等といった、有機溶剤による抽出、分離をせずに簡便且つ安全な方法で、抽出や単離が可能である。
【0013】
本願の出願人らは、犬若しくは猫の歯周病菌を対象としたマスティック由来成分を含有した口腔組成物を特開2017-75098号公報(特許文献4)に公開している。ここで、特許文献4においては、本願の目的たる抗アレルギー効果や、その抗アレルギー効果である免疫賦活若しくは抑制効果については記載や示唆が無い。もっとも、マスティック(主にオイル)を用いた免疫調整剤が、特開2019-43945号公報(特許文献5)に開示されている。しかしながら、特許文献5に記載されている剤は、マスティックについては免疫反応に関する抑制や賦活等といった何かしらの効果に寄与する旨の記載や示唆はなく、専ら香料、即ちリラックス効果を狙ったものである。
【0014】
本発明は、上記の事情を鑑み、マスティック成分、特にマスティック精油を使用することにより、製造コストが抑えられた当該マスティック成分を有効成分として含有する抗アレルギー用機能性食品組成物、抗アレルギー用化粧品、及び抗アレルギー用経皮外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る抗アレルギー用化粧品の上記目的は、マスティック成分を免疫抑制関与成分として含有する抗アレルギー用化粧品であって、前記抗アレルギー用化粧品は、アレルギー性皮膚炎を抑制することによって達成される。
【0016】
また、本発明に係る抗アレルギー用化粧品の上記目的は、前記マスティック成分は、マスティックパウダー、マスティックオイル、マスティック精油又はマスティックウォータのいずれか1つから選択されることにより、或いは前記マスティックオイルは、希釈剤に溶解させて成り、濃度が0.1~60重量%の前記希釈剤の溶液であることにより、或いは前記希釈剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、アルコール溶剤、鉱物油又は植物油のいずれかであることにより、或いは前記マスティックパウダーの配合量は、前記抗アレルギー用化粧品に対して、0.01~80重量%であることにより、或いは前記マスティックオイルの含有量は、前記抗アレルギー用化粧品に対して、0.01~80重量%であることにより、或いは前記マスティック精油の配合量は、前記抗アレルギー用化粧品に対して、0.001~3重量%であることにより、或いは前記マスティックウォータの含有量は、前記抗アレルギー用化粧品に対して、0.1~100重量%であることにより、或いは免疫抑制対象アレルギーが、クームスの分類で、I型及びIV型であることにより、より効果的に達成される。
【0017】
更に、本発明に係る抗アレルギー用経皮外用剤の上記目的は、マスティック成分を免疫抑制関与成分として含有する抗アレルギー用経皮外用剤であって、前記抗アレルギー用経皮外用剤は、アレルギー性皮膚炎を抑制することによって達成される。
【0018】
更にまた、本発明に係る抗アレルギー用経皮外用剤の上記目的は、前記マスティック成分は、マスティックパウダー、マスティックオイル、マスティック精油又はマスティックウォータのいずれか1つから選択されることにより、或いは前記マスティックオイルは、希釈剤に溶解させて成り、濃度が0.1~60重量%の前記希釈剤の溶液であることにより、或いは前記希釈剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、アルコール溶剤、鉱物油又は植物油のいずれかであることにより、或いは前記マスティックパウダーの配合量は、前記抗アレルギー用経皮外用剤に対して、0.01~80重量%であることにより、或いは前記マスティックオイルの含有量は、前記抗アレルギー用経皮外用剤に対して、0.01~80重量%であることにより、或いは前記マスティック精油の配合量は、前記抗アレルギー用経皮外用剤に対して、0.001~3重量%であることにより、或いは前記マスティックウォータの含有量は、前記抗アレルギー用経皮外用剤に対して、0.1~100重量%であることにより、或いは免疫抑制対象アレルギーが、クームスの分類で、I型及びIV型であることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物によれば、マスティック樹脂及び/若しくはマスティック精油を使用することにより、製造コストが抑えられ、且つ特にヒト及び犬・猫のメディエータ(サイトカイン、サイトカイニン)免疫抑制作用を示すことが明らかになった。
【0020】
また、マスティック由来成分(特にオイル)を使用しているので、副作用の無い若しくは少ない食品組成物、化粧品、又は経皮外用剤の作製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1におけるアレルギー性皮膚炎モデルマウスの掻把行動を示すグラフである。
図2】実施例1におけるアレルギー性皮膚炎モデルマウスの耳介厚測定結果を示すグラフである。
図3】実施例1において測定した樹状細胞数の測定結果を示すグラフである。
図4】実施例1において測定したヘルパーT細胞数の測定結果を示すグラフである。
図5】実施例1において測定したIgE陽性B細胞数の測定結果を示すグラフである。
図6】実施例1において測定したサイトカイン(IL-4)の量を示すグラフである。
図7】実施例1において測定したサイトカイン(IL-9)の量を示すグラフである。
図8】実施例1において測定したサイトカイン(IL-13)の量を示すグラフである。
図9】実施例1おいて測定したEOTAXIN(エオタキシン)の量を示すグラフである。
図10】実施例1おいて測定したIL-1βの量を示すグラフである。
図11】実施例1おいて測定したTSLP(胸腺間質性リンパ球新生因子)の量を示すグラフである。
図12】血清(上清)中の総IgE量を示すグラフである。
図13】実施例2におけるアレルギー性皮膚炎モデルマウスの掻把行動を示すグラフである。
図14】実施例2において測定した水分蒸散量を示すグラフである。
図15】実施例2において測定した樹状細胞数の測定結果を示すグラフである。
図16】実施例2において測定したヘルパーT細胞数の測定結果を示すグラフである。
図17】実施例2において測定したIgE陽性B細胞数の測定結果を示すグラフである。
図18】実施例2において測定したサイトカイン(IL-4)の量を示すグラフである。
図19】実施例2において測定したサイトカイン(IL-9)の量を示すグラフである。
図20】実施例2において測定したサイトカイン(IL-13)の量を示すグラフである。
図21】実施例2おいて測定したIL-1βの量を示すグラフである。
図22】実施例2において測定したPeriostinの量を示すグラフである。
図23】実施例2おいて測定したTSLP(胸腺間質性リンパ球新生因子)の量を示すグラフである。
図24】実施例2おいて測定したリンパ節中の制御性T細胞数の測定結果を示すグラフである。
図25】実施例3におけるヒト急性単球型白血病細胞(THP-1)からのIL-8の放出の抑制を示すグラフである。
図26】実施例3におけるヒト好酸球性白血病細胞(EoL-1)からのIL-8の放出の抑制を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物について、詳細を説明する。「マスティック樹液」はウルシ科のカイノキ属マスティクス(Pistacia lentiscus)から採れる樹液を言い、背景技術の項で上述したように主成分としてはマスチカジエノン酸、イソマスチカジエノン酸、トリテルペン類、アルデヒド類、アルコール類、ポリβ‐ミルセン等である。「マスティック樹脂」とはマスティック樹液を、自然乾燥させて凝固させたものを言う。「マスティックオイル」とは、マスティック樹液及び/又はマスティック樹脂を、後述する希釈剤に溶解させ、その溶液をろ過したものをいう。「マスティック精油」とは、マスティック樹液又はマスティック樹脂を水蒸気蒸留法若しくは乾留により、揮発性の成分(主にテルペン類)を精油化したものをいう。また、「%」については、特段の記載が無い場合には、全て重量百分率とする。
【0023】
なお、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物、化粧品、及び経皮外用剤における抗アレルギー反応については、クームスの分類にて分類されるI型、II型、III型、IV型の四種類のアレルギー反応型に対して有効である。更には、前記四種類のアレルギー反応型のうち、例えば皮膚炎を発症するI型、IV型の二種類のアレルギー反応型に対して有効である。そして、I型、IV型のアレルギー反応型における抗体として、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して有効である(抑制効果を有する)。
【0024】
次に各マスティック成分について説明する。
【0025】
先ず、マスティックパウダーについて説明する。マスティックパウダーは、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物において、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して有効性を示す重要な構成要素の一形態である。マスティックパウダーは、上述のように、マスティック樹液及び/又はマスティック樹脂を粉末化させたものを使用する。なお、マスティック樹液及び/又はマスティック樹脂を粉末化としたのは、マスティック樹液及びマスティック樹脂については、水分が蒸発した以外は、含まれている成分がほとんど変わらないためであるのと、最終的には粉末になればよいためである。ちなみにその粉末化については、常法(例えばミルや凍結乾燥法等)によって可能であり、マスティック樹液若しくはマスティック樹脂の状態によって、任意の手段を取り得る。
【0026】
マスティックパウダーの配合量であるが、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物に対して、0.01%~80%、好ましくは0.1~50%でより有効性を発揮する。マスティックパウダーの配合量が、0.01%未満であると、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して有効効果が示されない。またマスティックパウダーの配合量が、80%より過剰であると、却って何らかの炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはこの濃度範囲内よりもIgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して免疫抑制効果が低下する可能性もある。また、マスティックパウダーの配合量が、80%より過剰であると、生体内で必要な抗体等を破壊してしまう可能性がある。
【0027】
ところで、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物において、当該食品の形態によっては、マスティックパウダーのような固体粉末を配合するよりも、オイル状で配合、即ちマスティックオイルとして配合した方が都合の良い場合がある。ここで、マスティックオイルについて説明する。マスティックオイルは上述したように、マスティック樹液(樹脂)を希釈剤に溶解させて使用する。希釈剤に溶解させる理由は、マスティック樹液(樹脂)自体が水に不溶であること、当該食品がジェルや液体等の種々の態様を採ったときに種々の材料との相溶性を検討した結果である。
【0028】
マスティック樹液(樹脂)を溶解させるための希釈剤としては、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、脂肪酸モノグリセリド(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、モノカプリン酸グリセリル、脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸エチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、高級アルコール(炭素数8~22程度)、オレイルアルコール、ソルビタン脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、ショ糖脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)といった多価アルコール脂肪酸エステル、並びに/又は天然油脂類、特にオリーブ油やヤシ油などの植物由来不飽和脂肪酸、パーム油などの飽和脂肪酸、ヤシ油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、エゴマ油、亜麻仁油、魚油、大豆油、コーンオイルといった植物若しくは動物油、アルコール系溶剤(但し、食品の場合はエタノール系、化粧品や皮膚外用剤に使用する場合は、エタノールやイソプロパノール系等)といったものを使用することができる。
【0029】
なお、マスティックオイルの濃度は、上記希釈剤の0.1~60%の溶液が望ましい。ちなみに、その濃度が0.1%未満であると、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して免疫抑制効果が低下する又は免疫抑制効果が得られず、その濃度が60%より過剰であると、不均一系溶液になってしまい、且つ0.1%未満のときほどではないものの先に述べたメディエータに対する免疫抑制効果も低下する。
【0030】
マスティックオイルの調製方法については、上記濃度を順守すれば常法で構わない。そして、マスティック樹液(樹脂)の溶解温度は、溶剤の沸点等を考慮すれば適宜温度上昇させてよく、場合によっては常温で構わない。なお、マスティック樹液(樹脂)を先に述べた希釈剤に溶解させた後に、濾過をして、マスティックオイルとして使用するのが望ましい。
【0031】
なお、マスティックオイルの配合量は、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物全量に対し、0.01~80%、好ましくは0.1~80%でより有効性を発揮する。マスティックオイルの配合量が、0.01%未満であると、免疫抑制効果が十分に示されない。またマスティックオイルの配合量が、80%より過剰であると、却って何らかの炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはこの濃度範囲内よりも却って免疫賦活効果が増加する可能性もある。
【0032】
次に、マスティック精油について説明する。ちなみに、マスティック精油については、上述のように、マスティック樹液又は樹脂を水蒸気蒸留して揮発性成分(主にテルペン類)を精油化したものを使用すればよい。なお精油化については常法で良い。
【0033】
マスティック精油の配合量は、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物全量に対し、0.01%~4%、好ましく0.01~3%でより有効性を発揮する。マスティック精油の配合量が、4%より過剰であると、マスティックオイルと同様に、却って何らかの炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはIgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対する抑制効果が低下する可能性がある。ちなみに、マスティック精油については、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物に含有させなくても、即ちマスティックパウダーやマスティックオイルのみでもIgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対する抑制効果を示すが、含有させればより良い抑制効果が得られる。
【0034】
次に、マスティックウォータについて説明する。ちなみに、マスティックウォータについては、上述のように、マスティック樹液又は樹脂を水蒸気蒸留して分離した揮発性成分(マスティック精油に用いる)と水溶性成分のうち、水溶性成分を用いる。
【0035】
なお、マスティックウォータの配合量は、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物全量に対し、0.1~100%、好ましくは1~50%でより有効性を発揮する。マスティックウォータの配合量が、0.1%未満であると、却って免疫抑制効果が低下する又はその免疫抑制効果が示されない。またマスティックウォータの配合量が、100%より過剰であると、却って炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはこの濃度範囲内よりもこれらのメディエータに対する抑制効果が低下する可能性や、却って免疫賦活効果が増加する可能性もある。
【0036】
また、本発明の抗アレルギー用機能性食品組成物は、食品の形状としては、タブレット、カプセル、ドロップ、ゲル(ゼリー)状、顆粒、粉末、又は液体の形状を採ることが可能である。更に具体的には、ソースやサラダドレッシングなどの調味料、クッキー、ビスケット、ケーキ、チョコレート、飴、タブレット型清涼菓子などといった菓子類、栄養補助用サプリメント、ドッグフードやキャットフードなどの犬猫用食品、添加型(例えば顆粒、粉末、濃縮液のポーションタイプ)、濃縮型、ストレート型飲料(清涼飲料)といった態様を採ることが可能である。なお、これらの食品形態においては、それぞれ既知の工法で製造中若しくは製造後にマスティック成分を添加すればよい。そしてまた、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物は、化粧品及び/又は経皮外用剤のいずれかにも応用が可能である。
【0037】
そして、先に述べた食品の形状や態様を採るのに合わせて、マスティック成分としては、マスティックパウダー、マスティックオイル、マスティック精油、又はマスティックウォータのいずれかが選択できる。更には、マスティックパウダー、マスティックオイル、マスティック精油、又はマスティックウォータのうち2種類以上を選択してもよい。
【0038】
以上に述べた態様で、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物については実施可能であるが、種々の添加剤を含有させても良い。その添加剤について次に説明する。
【0039】
本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物において、マスティック成分の免疫抑制効果を高める助剤として、乳酸菌及び乳酸菌生産物質を配合させることが可能である。なお、この場合における乳酸菌の体長については特に制限はない。
【0040】
本発明に係る動物用の抗アレルギー用機能性食品組成物にて使用する乳酸菌やビフィズス菌には、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブレビス・サブスピーシス・コアギュランス(L. brevis subspecies coagulans)、ラクトバチルス・アシドフィルス(L. acidphilus)、ラクトバチルス・ガセリ(L. gasseri)、ラクトバチルス・マリ(L. mali)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L. buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L. johnsonii)、ラクトバチルス・ガリナラム(L. gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L. amylovorus)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L. rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L. kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L. paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L. crispatus)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバチルス・カルバータス(L. curvatus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(L. delbr bulgaricus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L. fermentum)ラクトバチルス・ヘルベティカス(L. helveticus)、ラクトバチルス・サケイ(L. sakei)、ラクトバチルス・サリバリウス(L. salivarius)等のラクトバチルス属細菌類、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属細菌類、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)等のエンテロコッカス属細菌類、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B. adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B. breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B. catenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(B. animalis lactis)等のビフィドバクテリウム属細菌、などが挙げられる。その中でもラクトバチルス属細菌類が好ましく、更にその中でもラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)又はラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)が好ましい。なお、当該乳酸菌やビフィズス菌は死菌を使用するのが好ましい。これは、本発明で使用する乳酸菌として調製する際、その調製が容易だからであるのと、死菌でも十分に所望の免疫抑制効果を発揮するからである。また、これらの細菌に係る菌株は特に問わない。また、乳酸菌生産物質としては、乳酸桿菌溶解質(例えば、ラクトバチルス・クリスパタス KT-11の派生製品であって、製品名KT-11HKN、KT-11 HP等)、乳酸菌発酵エキス(例えば、エクオール乳酸菌、還元発酵乳酸菌)が使用できる。また、上記以外の乳酸菌としては、ブリス(BLIS)菌(ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)K12及びM18菌)、ストレプトコッカス・サーモフィラスStreptococcus thermophilusスタフィロコッカス・キシローサス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylococcus carnosu)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)も使用可能であり、生菌及び死菌のいずれかでも構わない。
【0041】
また、前記乳酸菌は、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物においては、該抗アレルギー用機能性食品組成物の全量に対し、0.01~1.0%配合させることが好ましい。0.01%未満であると、免疫抑制効果が発揮しない。また、1.0%より過剰であると、免疫抑制効果を発揮するには発揮するが、逆に免疫賦活効果が出てしまう可能性もある。
【0042】
更に上記乳酸菌同様の助剤として、更にパパイアエキス及び/又はキトサンを配合させることによって、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物が成る。
【0043】
パパイアエキスは、天然パパイア果実由来のエキスであり、天然パパイアの果実を擦り潰し、エタノール等の溶媒に漬け込んで抽出したエキスであり、パパイアの果実については、熟したものであっても、まだ青い状態の未完熟のものであってもよい。このパパイアエキスの配合量は特に限定はないが、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物の全量に対し、0.005%~10%が望ましい。0.005%未満であると上述の効果が発揮されず、10%より過剰になると本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物の免疫抑制効果が薄れてしまう可能性や、却って免疫賦活効果が増加する可能性がある。
【0044】
対してキトサンは、カニやエビ等の甲殻類の外骨格から得られるキチンを強アルカリ等の煮沸処理などで得られるものである。多糖類であるため、粘結剤として使用されることもある。このキトサンの配合量は特に限定はないが、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物の全量に対し、0.005%~10%が望ましい。0.005%未満であると上述の効果が発揮されず、10%より過剰になると免疫抑制効果が薄れてしまう可能性や、却って免疫賦活効果が増加する可能性がある。
【0045】
さらに、キトサン及びパパイアエキスを同時に配合しても良い。この場合の配合量も特に限定はないが、キトサン及びパパイアエキスそれぞれ0.005%~10%が望ましい。0.005%未満であると上述の効果が発揮されず、10%より過剰になると免疫抑制効果が薄れてしまう可能性がある。
【0046】
更に、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物において、キトサン及び/又はパパイアエキスの他、マスティック成分の免疫抑制効果を高める、即ち免疫抑制効果の相乗効果を高める助剤として、卵黄油、リシン(アミノ酸)、柿由来のタンニン、含ポリフェノール天然物エキス、ラクトフェリン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE及び/又はビタミンKといった脂溶性ビタミン、ビタミンCや葉酸を含むビタミンB類といった水溶性ビタミン、ビオチンやコエンザイムQ10(ユビキノン)等の補酵素類、ルテイン、アスタキサンチン、ベータカロチンなどのカロテノイド類を配合させることが可能である。
【0047】
卵黄油について、説明する。卵黄油とは、鶏卵の卵黄を加熱して生成した固化成分と油脂分のうち、油脂分を一般的に卵黄油若しくは卵油と称している。一般的な卵黄油には、脂溶性ビタミンであるビタミンE(トコフェロール)、卵黄レシチン、コリン(及びフォスファチジルコリン)、フォスファチジルエタノールアミン、パルミチン酸(炭素数16。不飽和度0。)、ステアリン酸(炭素数18。不飽和度0。)、オレイン酸(炭素数18。不飽和度1。)、およびリノール酸(炭素数18。不飽和度2。)といった脂肪酸、前記脂肪酸から誘導されたリン脂質、トリグリセリド等が含まれる。なお、これらの成分は、鶏の種類、鶏に対する飼料、有精卵若しくは無精卵、又は飼育環境などの条件によって、成分比が多少変化することはあるが、成分自体は、このような条件の如何に関わらず、変わるものではない。
【0048】
本発明において卵黄油を使用する場合、卵黄油の製法、餌や飼育場などの鶏の飼育環境の違い、有精卵か無精卵かといったことは特に制限がない。また、本発明においては、市販品を利用しても、用事調製のいずれでも構わない。また、用事調製の場合、製造方法は公知技術でよく、製造方法の条件(例えば加熱温度や容器の材質など)は特に制限はない。また、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物において、抑制対象のメディエータ等の種類により抗体化された鶏卵から製造した卵黄油を使用してもよいが、その限りではなく、抗体化は特にしなくてもよい。なお、鶏卵の抗体化については常法による。
【0049】
本発明において、卵黄油は、本発明の抗アレルギー用機能性食品組成物に対して1~30%が望ましい。1%未満であると、免疫抑制効果が十分に発揮できない。30%よりも多いと、免疫抑制効果がさほど出ないか、或いは却って免疫抑制に係るメディエータを賦活させる可能性がある。
【0050】
次に、リシンについて説明する。本発明においてリシンを使用する場合、本発明の抗アレルギー用機能性食品組成物に対して0.005~40%が望ましい。0.005%未満であると、免疫抑制効果が十分に発揮できない。40%よりも多いと、免疫抑制効果がさほど出ないか、或いは逆に免疫賦活効果が出る可能性がある。本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物にて使用するリシンは、α‐L-リシン、α‐L-リシン塩酸塩、又はε‐ポリ(L‐リシン)のいずれかから選択可能である。
【0051】
次に、本発明において含ポリフェノール天然物エキスを使用する場合、藍抽出物エキス、茶(緑茶、ウーロン茶、紅茶)エキス、甜茶抽出物、抹茶粉末、桜葉(サクラバ)エキス、レモンエキス、シラカバエキス、ブドウ、リンゴ、ブルーベリー、キイチゴ、チョコレート、ココア、大豆、ビワ葉エキス、ワレモコウエキス、オトギリソウエキス、ハマメリス抽出液、オウゴンエキス、ノバラエキス、シソ種子抽出物、グアバ葉エキス、クワ葉エキス、ゲッケイジュ葉エキス、ブドウ種子抽出物、ワインエキス、ブドウ葉抽出物、リンゴ抽出物、リンゴタンニンなどといった、フラボノイドやカテキン、タンニン系のポリフェノール類を含むものから選択され、特に免疫抑制効果が期待できるものとしては、藍抽出物エキス、茶(緑茶)エキス、桜葉(サクラバ)エキス、レモンエキスが望ましい。
【0052】
ちなみに、本発明で使用する含ポリフェノール天然物エキスは、リシン同様に本発明の抗アレルギー用機能性食品組成物に対して0.01~40%が望ましい。0.01%未満であると、免疫抑制効果が十分に発揮できない。40%よりも多いと、免疫抑制効果といった効果がさほど出ないか、却って逆に免疫賦活効果が増加する可能性がある。なお、含ポリフェノール天然物エキスについては、一般的に当該エキスの抽出溶媒(例えばアルコール類や水)の溶液で市販化されている。
【0053】
次に一般的な食品添加物を本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物、化粧品、経皮外用剤に添加してもよい。
【0054】
無機系添加剤として第二リン酸カルシウム二水和物、第二リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、などが挙げられる。これらのうち1種又は2種以上を併用して用いることができる。これらの無機系添加剤の配合量は、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物全量に対して0.001~20%が一般的である。
【0055】
湿潤剤としてグリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ソルビット、マルチトール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、ローズマリーエキス、クマザサエキス、キク花エキス等の植物エキス、ソルビット液等の糖質類並びに乳由来のホエイが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0056】
粘結剤(増粘剤)として、カラギーナン類、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルシウム含有アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウムなどアルギン酸及びその誘導体、キサンタンガム、グァーガム、ゼラチン、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、プルランや、ヤシ油、パーム油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、エゴマ油、亜麻仁油、大豆油、魚油、グリセリン脂肪酸エステルなどの天然油脂類などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0057】
また、保存剤や防腐剤として安息香酸若しくは安息香酸ナトリウム、ソルビン酸若しくはソルビン酸カリウム、安定型二酸化塩素、ヒノキチオール、グレープフルーツ種子エキス、丁子油やハッカ油などの天然香油及び精油類などがあげられ、これらの1種又は2種以上を併用することができる。
【0058】
pH(水素イオン濃度)調整剤としてクエン酸、クエン酸(モノ若しくはジ)ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸(モノ若しくはジ)ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸(モノ若しくはジ)ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、乳酸、乳酸(モノ若しくはジ)ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用することができる。
【0059】
本発明の抗アレルギー用機能性食品組成物の有効成分を滞留(持続)させるための滞留剤として、流動パラフィン、流動パラフィン及びポリエチレンの混合物であるゲル化炭化水素、植物油、ミツロウなどが使用でき、これらを1種又は2種以上を併用することができる。なお、前記ゲル化炭化水素は、ゲル化剤としての役割も果たす。
【0060】
甘味剤としてサッカリンナトリウム、アスパルテーム、L-フェニルアラニン化合物、トレハロース、ステビオサイド、ステビアエキス、p-メトキシシンナムアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、ハチミツ、オリゴ糖、デキストリンなどがある。なお、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールは、免疫抑制効果助剤としての役割も果たす。
【0061】
香料成分としてl-メントール、アネトール、メントン、シネオール、リモネン、カルボン、メチルサリシレート、エチルブチレート、オイゲノール、チモール、シンナムアルデヒド、トランス-2-ヘキセナールなどの中から1種又は2種以上を併用することができる。これらの成分は単品で配合してもよいが、これらを含有する精油などを用いてもよい。
【0062】
ちなみに、上記に述べた添加剤の配合量は、特に限定はないが、抗アレルギー用機能性食品組成物全量に対して0.001~20%の範囲が一般的である。
【0063】
また、上記香料成分に加えて、脂肪族アルコールやそのエステル、テルペン系炭化水素若しくはテルペン系アルコール、フェノールエーテル、アルデヒド、ケトン、ラクトンなどの香料成分、精油(マスティック精油以外)を本発明の効果を妨げない範囲で配合してもよい。上記香料の配合量は、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物全量に対して0.001~20%の範囲が一般的である。
【0064】
本発明の抗アレルギー用機能性食品組成物には、上記のほか、更なる有効成分を配合してもよい。そのような有効成分としてアスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸塩類、トコフェロール、塩化ナトリウム、デキストラナーゼなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合することができる。該有効成分については、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物全量に対して0.001~20%の範囲が一般的である。
【0065】
そして、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物全量に対して、上記に述べたマスティック樹脂(但し、マスティック樹脂液として)、マスティック精油、卵黄油、添加物等について上記に述べた数値範囲で混合した場合、その残部を溶媒(例えばマスティック樹脂を溶解させた溶剤等)やゲル化剤等として良い。
【0066】
本発明の抗アレルギー用機能性食品組成物は、常法に準じて製造することができ、その製法は特に限定されるものではない。また、本発明に係る化粧品及び経皮外用剤もまた、上記添加剤等をベースに調製が可能であり、製法も常法に準じて可能である。
【0067】
以上に本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物についての実施態様を述べたが、上記の態様の限りではなく、特許請求の範囲及び本明細書の記載の事項を逸脱しない範囲であれば、種々の態様が採用可能であることは言うまでもない。
【実施例0068】
上記に述べた実施形態について、本発明に係る抗アレルギー用機能性食品組成物についての試験(実施例)を述べて更に説明する。
【0069】
[実施例1]ハプテン誘導アレルギー性皮膚炎モデルマウスに対するマスティックオイルの経口投与試験
本実施例1においては、アトピー性皮膚炎を誘導するヘルパーT細胞の亜群であるTh2細胞から生じるTh2型反応に対するマスティックオイルの効果を試験するために、ハプテン誘導アレルギー性皮膚炎モデルマウスを用いて経口投与試験を行った。
【0070】
先ず、ハプテン誘導アレルギー性皮膚炎モデルマウス(以下「アレルギー性皮膚炎モデルマウス」とする。)は、日本エスエルシー株式会社より生産されたBALB/c系SPFマウス(以下単に「マウス」とする。)を用いた。アレルギー性皮膚炎モデルマウスについては、マウス入荷後10日馴化させた後に、ハプテンとしてトリレン‐2,4-ジイソシアネート(TDI)を複数回投与することにより作製した。なお、マウスにTDIの初回投与前日に腹部被毛の除毛を行い、更に初回投与(感作)の3週間後に、腹部除毛後TDIを腹部に再感作を行った。更に再感作の1週間後に、TDIをマウスの耳介部及び頸背部にそれぞれ投与することにより惹起を行った。
【0071】
ここで、アレルギー性皮膚炎モデルマウスに対するマスティックオイルの投与であるが、マウス入荷後の馴化開始からTDIをマウスの耳介部及び頸背部にそれぞれ投与することによる惹起までの約5週間連続で、コーンオイルに溶解させたものを経口投与させた。なお、アレルギー性皮膚炎モデルマウスについては、マスティックオイルを投与させないマウス(以下「コントロール(マウス)」又は後述する図1乃至12においては「Control」とする。)、3%マスティックオイルのコーンオイル溶液を投与させたマウス(以下「マスティック3%(マウス)」図1乃至12においては「Mastic3%」とする。)、及び30%マスティックオイルのコーンオイル溶液を投与させたマウス(以下「マスティック30%(マウス)」図1乃至12においては「Mastic30%」とする。)の三種類のマウスを用意した。
【0072】
各アレルギー性皮膚炎モデルマウスについて、TDIによるハプテン誘導アレルギーを惹起後の痒み行動観察並びに惹起前及び惹起24時間後の耳介厚測定を行った。
【0073】
先ず、痒み行動観察、即ち掻把(かきむしり)行動の観察については、各アレルギー性皮膚炎モデルマウスそれぞれについて、60分間ビデオ録画し、60分間に耳介部及び頸背部に対する掻把行動を観察した。掻把行動の回数と各マウスの関係を図1のグラフとして記す。
【0074】
図1より、掻把行動については、マスティック30%マウスとコントロールマウスを比較したところ、マスティック30%マウスに関しては掻把(かきむしり)行動の有意義な抑制が認められた。一方マスティック3%マウスに関してはコントロールマウスと比較しても変化は見られないどころか却って掻把行動の回数が多くなった。
【0075】
次に、耳介厚測定については、TDIによるハプテン誘導アレルギーの惹起前並びに同アレルギー惹起24時間後に、各アレルギー性皮膚炎モデルマウスそれぞれの耳介部の厚さを、ノギスを用いて測定した。その結果を図2として記す。
【0076】
図2より、コントロールマウスについては、惹起前と惹起24時間後を比べるとおよそ200μmほど耳介部の厚さが増した。コントロールマウスに対し、マスティックオイルの濃度に依存して、耳介厚の変化は減少傾向であった。
【0077】
次に、各アレルギー性皮膚炎モデルマウス(コントロールマウス、マスティック3%マウス、マスティック30%マウス)について、痒み(掻把)行動観察及び耳介厚測定後に、イソフルラン吸入麻酔下で安楽死させた後、各マウスの耳介及び耳介リンパ節を採取し、免疫学的検査を軸に耳介組織の解析を行った。
【0078】
先ず、採取した耳介リンパ節について、セルストレーナー上でRPMI-1640培地を用いて擂り潰した。擂り潰して得られた細胞懸濁液について、総細胞数をTali(登録商標)イメージベースサイトメーターにて測定し、樹状細胞数、ヘルパーT細胞、及びIgE陽性B細胞の細胞数の割合をフローサイトメータにて測定した。これらの細胞数について、図3(樹状細胞数)、図4(ヘルパーT細胞)及び図5(IgE陽性B細胞)に示す。
【0079】
図3において、抗原提示を行う樹状細胞は、マスティックオイルの投与により減少し、3及び30%のいずれの濃度においても有意な変化が見られ、濃度の高さに比例することが分かった。
【0080】
図4において、樹状細胞より抗原情報を受け取ったヘルパー(ナイーブ)T細胞は、Th2型へとクラススイッチしてアレルギー反応を増強するが、マスティックオイルの投与により、ヘルパー(ナイーブ)T細胞の細胞数の有意な抑制がみられた。
【0081】
アトピー性皮膚炎をはじめとするTh2型アレルギーにおいて、IgEは中心的な役割を担う。そこで、図5において、IgEを産生するB細胞数は、マスティックオイルの投与により、細胞数の有意な抑制がみられた。
【0082】
次に、耳介リンパ節を擂り潰して得られた細胞懸濁液を、Dynabeads(登録商標) Mouse T-Activator CD3/CD28を用いて、24~96時間培養し、T細胞から放出されるサイトカイン(IL-4、IL-9、IL-13)の量について、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)にて測定した。なお、IL-4及びIL-13は、Th2細胞から産生され、B細胞をIgE産生にクラススイッチする。一方、IL-9は、Th9細胞から産生され、T細胞、巨核球及び肥満細胞の増殖に関与する。各サイトカインの量について、図6(IL-4)、図7(IL-9)、及び図8(IL-13)に示す。
【0083】
図6において、IL-4は、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイルのマウスについては、増加していた。一方30%マスティックオイルのマウスについては、IL-4が有意な減少傾向が見られた。
【0084】
図7において、IL-9は、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイル及び30%マスティックオイルのマウス共に、マスティックオイルの濃度に依存してIL-9が減少した。
【0085】
図8において、IL-13は、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイル及び30%マスティックオイルのマウス共に、マスティックオイルの濃度に依存してIL-13の有意な減少が見られた。
【0086】
次に、耳介の組織の一部(耳介リンパ節ではない)について、電動ホモジナイザを用いてRPMI-1640培地に懸濁させた。氷上で30分間培養後、遠心分離を経て、上清を回収した。上清について、総たんぱく質量を測定し、EOTAXIN(エオタキシン)、IL-1β、TSLP(胸腺間質性リンパ球新生因子)をELISAにより測定した。なお、測定データは、総たんぱく質量で標準化した。なお、EOTAXINは、好酸球を遊走するケモカインで、好酸球はアレルギー増悪に大きく関与する。IL-1β及びTSLPは、角化細胞が産生し、局所の炎症反応及びTh2型免疫反応の誘導に関与している。EOTAXIN、IL-1β、TSLPの量の変化について、図9(EOTAXIN)、図10(IL-1β)、及び図11(TSLP)に示す。
【0087】
図9において、EOTAXINは、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイルのマウスについては、増加していた。一方30%マスティックオイルのマウスについては、EOTAXINの減少が見られた。
【0088】
図10において、IL-1βは、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイル及び30%マスティックオイルのマウス共に、マスティックオイルの濃度に依存してIL-1βが減少した。
【0089】
図11において、TSLPは、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイルのマウスについては、増加していた。一方30%マスティックオイルのマウスについては、TSLPが有意な減少傾向が見られた。
【0090】
次に、血清(上清)中の総IgE量について、図12に示す。コントロールに比べると、マスティックオイルを経口投与したマウスについては、総IgE量が減少したが、マスティックオイルの濃度依存性は見られなかった。
【0091】
以上の結果より、マスティックオイルの濃度について、例えば本願の抗アレルギー用機能性食品組成物の実用化を考慮した際、30%マスティックオイルは必ずしも現実的とは言えないかもしれないが、マスティックオイルの経口投与により、Th2型アレルギー反応に寄与するサイトカイン等に対する免疫抑制効果が見られ、抗アレルギー用機能性食品組成物の材料としてマスティックを用いることが可能であるという示唆が得られた。
【0092】
[実施例2]ハプテン誘導アレルギー性皮膚炎モデルマウスに対するマスティックオイルの経皮投与試験
本実施例2においては、本実施例1と同様にアトピー性皮膚炎を誘導するヘルパーT細胞の亜群であるTh2細胞から生じるTh2型反応に対するマスティックオイルの効果を試験するために、ハプテン誘導アレルギー性皮膚炎モデルマウスを用いて経皮投与試験を行った。
【0093】
先ず、ハプテン誘導アレルギー性皮膚炎モデルマウス(以下「アレルギー性皮膚炎モデルマウス」とする。)は、日本エスエルシー株式会社より生産されたBALB/c系SPFマウス(以下単に「マウス」とする。)を用いた。アレルギー性皮膚炎モデルマウスについては、マウス入荷後10日馴化させた後に、ハプテンとしてトリレン‐2,4-ジイソシアネート(TDI)を複数回投与することにより作製した。なお、マウスにTDIの初回投与前日に腹部被毛の除毛を行い、更に初回投与(感作)の3週間後に、腹部除毛後TDIを腹部に再感作を行った。更に再感作の1週間後に、TDIをマウスの耳介部及び頸背部にそれぞれ投与することにより惹起を行った。更に各アレルギー性皮膚炎モデルマウスとは別に、ハプテン誘導をしていない、健常なマウス(以下「未誘導(未処理)マウス」又は後述する図13乃至24においては「Untreated」とする。)を用意した。ちなみに、未誘導マウスもまた、各アレルギー性皮膚炎モデルマウス同様に10日間馴化させたものを用いた。
【0094】
ここで、アレルギー性皮膚炎モデルマウスに対するマスティックオイルの投与であるが、マウス入荷後の馴化開始からTDIをマウスの耳介部及び頸背部にそれぞれ投与することによる惹起までの約5週間連続で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに溶解させたものを経皮投与させた。なお、アレルギー性皮膚炎モデルマウスについては、マスティックオイルを投与させないマウス(以下「コントロール(マウス)」又は後述する図13乃至24においては「AD Control」とする。)、3%マスティックオイルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル溶液を経皮投与させたマウス(以下「マスティック3%(マウス)」又は図13乃至24においては「Mastic3%」とする。)、及び5%マスティックオイルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル溶液を投与させたマウス(以下「マスティック5%(マウス)」又は図13乃至24においては「Mastic5%」とする。)の三種類のマウスを用意した。
【0095】
各アレルギー性皮膚炎モデルマウスについて、TDIによるハプテン誘導アレルギーを惹起後の痒み行動観察並びに惹起前及び惹起後に皮膚中の水分蒸散量の測定を行った。
【0096】
先ず、痒み行動観察、即ち掻把(掻きむしり)行動の観察については、各アレルギー性皮膚炎モデルマウスそれぞれについて、60分間ビデオ録画し、60分間に耳介部及び頸背部に対する掻把行動を5週間連続で観察した。その結果を図13として記す。
【0097】
図13より、掻把行動については、マスティック3%マウス及びマスティック5%マウスに関しては、開始後3週間までは略回数は一定であったが、4~5週間後では掻把(掻きむしり)行動の有意義な抑制が認められた。一方コントロールマウスに関しては、変化は見られないどころか却って掻把行動の回数が多くなった。
【0098】
次に、皮膚中の水分蒸散量の測定についても、TDIによるハプテン誘導アレルギーの惹起前並びに同アレルギー惹起開始後に、皮膚中の水分蒸散量の測定をした。その結果を図14として記す。
【0099】
図14より、コントロールマウス、マスティック3%マウス及びマスティック5%マウスについては、2週間までは略同程度に水分蒸散量であったが、コントロールマウスは5週間後まで右肩上がりに上昇したのに対し、マスティック3%マウス及びマスティック5%マウスについては、水分蒸散量の抑制がみられた。
【0100】
次に、各アレルギー性皮膚炎モデルマウス(未誘導マウス、コントロールマウス、マスティック3%マウス、マスティック5%マウス)について、痒み(掻把)行動観察及び耳介厚測定後に、イソフルラン吸入麻酔下で安楽死させた後、各マウスの耳介及び耳介リンパ節を採取し、免疫学的検査を軸に耳介組織の解析を行った。
【0101】
先ず、採取した耳介リンパ節について、セルストレーナー上でRPMI-1640培地を用いて擂り潰した。擂り潰して得られた細胞懸濁液について、総細胞数をTali(登録商標)イメージベースサイトメーターにて測定し、樹状細胞数、ヘルパーT細胞、及びIgE陽性B細胞の細胞数の割合をフローサイトメータにて測定した。これらの細胞数について、図15(樹状細胞数)、図16(ヘルパーT細胞)及び図17(IgE陽性B細胞)に示す。
【0102】
図15において、抗原提示を行う樹状細胞は、マスティックオイルの投与により減少し、3及び5%のいずれの濃度においても有意な変化が見られ、濃度の高さに比例することが分かった。
【0103】
図16において、樹状細胞より抗原情報を受け取ったヘルパー(ナイーブ)T細胞は、Th2型へとクラススイッチしてアレルギー反応を増強するが、マスティックオイルの投与により、ヘルパー(ナイーブ)T細胞の細胞数の有意な抑制がみられた。
【0104】
アトピー性皮膚炎をはじめとするTh2型アレルギーにおいて、IgEは中心的な役割を担う。そこで、図17において、IgEを産生するB細胞数は、マスティックオイルの投与により、細胞数の有意な抑制がみられた。
【0105】
次に、耳介リンパ節を擂り潰して得られた細胞懸濁液を、Dynabeads(登録商標) Mouse T-Activator CD3/CD28を用いて、24~96時間培養し、T細胞から放出されるサイトカイン(IL-4、IL-9、IL-13)の量について、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)にて測定した。なお、IL-4及びIL-13は、Th2細胞から産生され、B細胞をIgE産生にクラススイッチする。一方、IL-9は、Th9細胞から産生され、T細胞、巨核球及び肥満細胞の増殖に関与する。各サイトカインの量について、図18(IL-4)、図19(IL-9)、及び図20(IL-13)に示す。
【0106】
図18において、IL-4は、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイルのマウスについては、減少していた。一方5%マスティックオイルのマウスについては、IL-4が有意な減少傾向が見られた。
【0107】
図19において、IL-9は、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイル及び5%マスティックオイルのマウス共に、マスティックオイルの濃度に依存してIL-9が減少した。
【0108】
図20において、IL-13は、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイル及び5%マスティックオイルのマウス共に、マスティックオイルの濃度に依存してIL-13の有意な減少が見られた。
【0109】
次に、耳介の組織の一部(耳介リンパ節ではない)について、電動ホモジナイザを用いてRPMI-1640培地に懸濁させた。氷上で30分間培養後、遠心分離を経て、上清を回収した。上清について、総たんぱく質量を測定し、IL-1β、Periostin、TSLP(胸腺間質性リンパ球新生因子)をELISAにより測定した。なお、測定データは、総たんぱく質量で標準化した。なお、Periostinは、細胞外マトリックスタンパク質の1つである。IL-1β及びTSLPは、角化細胞が産生し、局所の炎症反応及びTh2型免疫反応の誘導に関与している。IL-1β、Periostin、TSLPの量の変化について、図21(IL-1β)、図22(Periostin)、及び図23(TSLP)に示す。
【0110】
図21において、IL-1βは、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティッ及び5%マスティックオイルのマウスについて、IL-1βの有意な減少が見られた。
【0111】
図22において、Periostinは、コントロールマウスのものと比べて、3%マスティックオイル及び5%マスティックオイルのマウス共に、マスティックオイルの濃度に依存してPeriostinが減少した。
【0112】
図23において、TSLPは、コントロールマウスのものと比べて、5%マスティックオイルのマウスについては、減少していた。一方3%マスティックオイルのマウスについては、TSLPが有意な減少傾向が見られた。
【0113】
次にリンパ節中の制御性T細胞数の測定結果について、図24に示す。コントロールに比べると、マスティックオイルを経皮投与したマウスについては、制御性T細胞数が増加したが、マスティックオイルの濃度依存性は見られなかった。
【0114】
以上の結果より、マスティックオイルの経皮投与によっても、Th2型アレルギー反応に寄与するサイトカイン等に対する免疫抑制効果が見られ、抗アレルギー用化粧品又は経皮外用剤の材料としてマスティックを用いることが可能であるという示唆が得られた。
【0115】
[実施例3]ヒト好酸球性及び急性単球性白血病細胞から放出されるIL-8に対するマスティックオイルの効果
次に、マスティック(オイル)のサイトカイン(インターロイキン等)に対する効能を調査する目的で、ヒト好酸球性白血病細胞及び樹状細胞様のヒト急性単球性白血病細胞に対するマスティックオイルの効果を、IL-8の放出を指標に検討した。
【0116】
本実施例3では、ヒト急性単球型白血病細胞としてTHP-1、ヒト好酸球性白血病細胞としてEoL-1をそれぞれ用い、各細胞を37℃、5%の二酸化炭素存在下で培養後、各細胞とマスティックオイル(1.5×10-8~1.5×10-3%の濃度)を96ウェルプレート内で24時間培養し、更にLPS(リポ多糖)を添加して24時間培養した後、ELISAによりサイトカイン(IL-8)の産出量を測定した。それらの結果を図25図26に示す。
【0117】
図25は、ヒト急性単球型白血病細胞(THP-1)からのIL-8の放出の抑制を示すグラフである。図25より、ヒト急性単球型白血病細胞に対するマスティックオイルのIL-8の放出抑制は、マスティックオイルの濃度にほぼ依存せず効果が見られなかった。
【0118】
図26は、ヒト好酸球性白血病細胞(EoL-1)からのIL-8の放出の抑制を示すグラフである。図26より、ヒト好酸球性白血病細胞に対するマスティックオイルのIL-8の放出抑制は、マスティックオイルの濃度に対し、依存的に効果が見られた。
【0119】
本実施例3では、2種類の白血病細胞を用いて、サイトカイン(IL-8)に対するマスティックオイルの効能を検討した。まだ、検討の余地は十分にあると思われるが、少なくとも、マスティックオイルが、ヒトにおけるアレルギー反応に寄与するサイトカイン等に対する免疫抑制効果を有することを示唆する結果が得られた。
【0120】
[実施例4]抗アレルギー用機能性食品組成物の作製
上記実施例1の知見を基に、抗アレルギー用機能性食品組成物を作製した。配合例は下記表1の通りである。
【0121】
【表1】
【0122】
ちなみに、本実施例4に係る抗アレルギー用機能性食品組成物の製造については、常法により混練作製した。なお、当該食品組成物の製造については、常法によるとしているが、既知の製造方法でよく、種々の製造方法を採ったところで先述のアレルギー反応抑制について、上記実施例1と結果にそれほど差が出るわけではないことを申し添える。
【0123】
[実施例5]抗アレルギー用経皮外用剤(化粧品)の作製
上記実施例2の知見を基に、抗アレルギー用経皮外用剤(化粧品)を作製した。配合例は下記表2の通りである。
【0124】
【表2】
【0125】
ちなみに、本実施例5に係る抗アレルギー用経皮外用剤(化粧品)の製造については、常法により混練作製した。なお、タブレットの製造については、常法によるとしているが、既知の製造方法でよく、種々の製造方法を採ったところで先述のアレルギー反応抑制について、上記実施例2と結果にそれほど差が出るわけではないことを申し添える。
【産業上の利用可能性】
【0126】
上述の実施形態及び実施例にて、本発明の抗アレルギー用機能性食品組成物、化粧品、及び経皮外用剤について言及したが、本発明においては、マスティックオイルを使用しているため、ヒト又は犬や猫などの抗アレルギー薬剤として応用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図22
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図24
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図26