IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特開2023-174947グレーズ加工セラミック体を生成する方法
<>
  • 特開-グレーズ加工セラミック体を生成する方法 図1
  • 特開-グレーズ加工セラミック体を生成する方法 図2
  • 特開-グレーズ加工セラミック体を生成する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174947
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】グレーズ加工セラミック体を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/86 20060101AFI20231201BHJP
   A61C 5/70 20170101ALI20231201BHJP
   A61C 5/80 20170101ALI20231201BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20231201BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C04B41/86 D
A61C5/70
A61C5/80
A61C8/00 Z
A61C13/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023181115
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2019550165の分割
【原出願日】2018-03-23
(31)【優先権主張番号】17162531.2
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フランク ロスブラスト
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ヘングスト
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン クロリコフスキ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リッツベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ディアーナ トッシュ
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA41
4C159GG15
4C159RR15
4C159SS01
(57)【要約】
【課題】 グレーズ加工セラミック体を提供すること
【解決手段】 本発明は、グレーズ加工セラミック体を生成する方法であって、(a)グレーズ加工用材料を非緻密焼結基体材料に塗布し、(b)グレーズ加工ボディを得るために、基体材料およびグレーズ加工用材料を、第1の温度Tから、第1の温度より高い第2の温度Tに及ぶ温度範囲の熱処理に供し、グレーズ加工用材料が、温度Tにおいて、102.5Pa・s超、特に104.0Pa・s超、好ましくは105.6Pa・s超、特に好ましくは107.0Pa・s超の粘度を有し、温度Tにおいて、10Pa・s未満、特に10Pa・s未満、好ましくは105.6Pa・s未満の粘度を有する、方法に関する。本発明はまた、非緻密焼結基体材料をグレーズ加工するためのグレーズ加工用材料の使用にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未だ緻密焼結されていないセラミック体をグレーズ加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物系セラミックなどのセラミック材料は、完全な解剖学的歯科修復物の生成のために使用されることが多い。これらは、高い臨床安全性を提供し、通常メタルフリーであり、低侵襲調製物で使用することもでき、他のメタルフリー修復物と比べて価格の点から極めて魅力的である。しかし、不利な点は、そのような修復物の生成に通常必要とされる多数の作業ステップである。
【0003】
修復物は通常、予備焼結ブランクからミリングまたは粉砕され、必要に応じて色の点から特徴付けられ、熱処理によって緻密焼結され、塗装技法によってさらに特徴付けられ、最後にグレーズ加工される。一般に、グレーズ加工は、グレーズを緻密焼結修復物に塗布し、700~950℃の温度範囲の熱処理を行うことによって実施される。
【0004】
さらに、部分焼結酸化物系セラミックの表面へのベニアリング材料の塗布も公知である。しかし、この場合、ベニアリング材料が、熱処理時にセラミックに浸透する。
【0005】
したがって、米国特許第4,626,392A号、米国特許第5,447,967A号および国際公開第99/52467A1号には、ベニアリング材料が酸化物系セラミックに拡散し、これによって無機-無機複合材料を多結晶基体とベニアの間の表面に形成する方法が記載されている。
【0006】
国際公開第2011/050786A2号および米国特許出願公開第2012/225201A1号には、部分焼結酸化物系セラミックに塗布され、焼結時に表面に拡散する接着促進剤が記載されている。緻密焼結するステップの後に、次いで、ベニアリングセラミックが塗布され、再び焼結される。接着促進剤は、酸化物系セラミックとその上に焼結されたベニアリングセラミックの間の接合要素を代表する。
【0007】
さらに、多孔性の酸化物系セラミック材料にシリケート材料を大部分浸透させることによって生成される、いわゆるガラス浸透型セラミックは、歯科技術において公知であり、変更された特性を有する浸入構造が、通常形成される。したがって、国際公開第2008/060451A2号には、最終の焼結がされていないZrOから作製された基体にガラス-セラミック材料を浸透させることによって生成される、いわゆるサンドイッチ構造が記載されている。特定の特性は一部このようにポジティブな影響を受けることができるが、特に光学特性は損なわれることが多い。
【0008】
国際公開第2005/070322A1号および米国特許出願公開第2005/164045A1号には、ゾルが真空下に室温で基体に浸透され、次いで緻密焼結が実施される方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,626,392A号明細書
【特許文献2】米国特許第5,447,967A号明細書
【特許文献3】国際公開第99/52467A1号
【特許文献4】国際公開第2011/050786A2号
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/225201A1号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/060451A2号
【特許文献7】国際公開第2005/070322A1号
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/164045A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の根底にある目的は、上記の不利な点を回避し、より少ないプロセスステップを特徴とし、セラミックの光学的特性ならびに他の物理的および化学的特性を損なうことなく、グレーズ加工セラミック体を生成する改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1から18に記載のグレーズ加工セラミック体を生成する方法によって達成される。請求項19に記載の基体材料をグレーズ加工するためのグレーズ加工用材料の使用も、本発明の対象である。
【0012】
本発明による、グレーズ加工セラミック体を生成する方法は、
(a)グレーズ加工用材料を、非緻密焼結基体材料に塗布し、
(b)グレーズ加工ボディを得るために、基体材料およびグレーズ加工用材料を、第1の温度Tから、第1の温度より高い第2の温度Tに及ぶ温度範囲の熱処理に供すること、
グレーズ加工用材料が、温度Tにおいて、102.5Pa・s超の粘度を有し、温度Tにおいて、10Pa・s未満の粘度を有すること
を特徴とする。
【0013】
グレーズ加工用材料は、温度Tにおいて、好ましくは104.0Pa・s超、特に105.6Pa・s超、特に好ましくは107.0Pa・s超の粘度を有し、温度Tにおいて、好ましくは10Pa・s未満、特に105.6Pa・s未満の粘度を有する。グレーズ加工用材料は、温度Tにおいて、105.6Pa・s超、特に107.0Pa・s超の粘度を有し、温度Tにおいて、105.6Pa・s未満の粘度を有することが特に好ましい。
【0014】
グレーズ加工用材料の粘度は、特にVogel-Furcher-Tammann式(VFT式)に基づく粘度-温度曲線を使用して決定することができる。
【数1】
η:温度Tにおける動的粘度
A、B、T:物質特異的な定数
【0015】
この式は、それぞれ膨張計または加熱顕微鏡によって実験的に決定された、少なくとも3対、好ましくは5対の特性温度値、および関連粘度値から始めて解かれる。
【表A】
【0016】
式は、最小二乗法に従う近似法により解かれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例2A~Bに記載。
図2】実施例3A~Cに記載。
図3】実施例4に記載。
【発明を実施するための形態】
【0018】
驚くべきことに、本発明による方法は、基体材料にかなりの程度までグレーズ加工用材料を浸入させることなく、未だ緻密焼結されていない基体の直接グレーズ加工を可能にすることが示された。それによって、原理的には、浸透により生じる基体材料の実質的な特性変化なしに、緻密焼結およびグレーズ加工のための複雑な二重熱処理を省くことができる。
【0019】
非緻密焼結基体材料は、例えば未焼結、好ましくは予備焼結基体材料である。非緻密焼結基体材料は、通常、基体材料の真密度に対して30~90%の範囲、特に40~80%の範囲、好ましくは50~70%の範囲の相対密度を有する。基体材料は、温度Tにおいて焼結し始めることが好ましい。基体材料は、温度Tにおいて緻密焼結されることがさらに好ましい。基体材料は、好ましくは温度Tに5~120分間、特に10~60分間、さらにより好ましくは20~30分間の間、維持される。温度Tにおいて、基体材料は、典型的には、基体材料の真密度に対して少なくとも97%、特に少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%の相対密度を有する。
【0020】
相対密度は、基体材料の密度の、基体材料の真密度に対する比である。
【0021】
基体材料の密度は、基体材料を計量し、その体積を幾何形状的に決定することによって決定することができる。次いで、密度を公知の式に従って算出する。
密度=質量/体積
【0022】
基体材料の真密度は、基体材料を、粒子の数に基づいて10~30μm、特に20μmの平均粒径の粉末に粉砕し、比重びんによって粉末の密度を決定することによって決定される。粒径の決定は、例えばQuantachrome GmbH&Co.KGのCILAS(登録商標)Particle Size Analyzer 1064で、ISO
13320(2009)に従ってレーザー回折を使用して実施することができる。
【0023】
好ましい実施形態では、基体材料が基体材料の真密度に対して95%の相対密度を有する温度Tにおいて、グレーズ加工用材料は、102.5Pa・s超、好ましくは104.0Pa・s超の粘度を有する。特に好ましい実施形態では、グレーズ加工用材料は、温度Tにおいて、105.6Pa・s超、特に107.0Pa・s超の粘度を有し、基体材料が基体材料の真密度に対して95%の相対密度を有する温度Tにおいて、102.5Pa・s超、好ましくは104.0Pa・s超の粘度を有し、温度Tにおいて、10Pa・s未満、特に10Pa・s未満、好ましくは105.6Pa・s未満の粘度を有する。さらにさらなる好ましい実施形態では、グレーズ加工用材料は、温度Tにおいて、107.0Pa・s超の粘度を有し、基体材料が基体材料の真密度に対して95%の相対密度を有する温度Tにおいて、104.0Pa・s超の粘度を有し、温度Tにおいて、105.6Pa・s未満の粘度を有する。
【0024】
本発明による方法は、多種多様なセラミック基体材料に適している。好適な基体材料の
例は、酸化物系セラミック、特にZrO、Alまたは無機-無機複合材料をベースとする酸化物系セラミック、ならびにガラスおよびガラスセラミックである。特に好ましい基体材料は、ZrOをベースとする酸化物系セラミック、特にナノスケールのZrOをベースとする酸化物系セラミックである。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態では、基体材料は、化学組成および/または特に色が異なる少なくとも2つの層を含む。
【0026】
一般に、950℃の温度において、本発明による方法で使用されるグレーズ加工用材料は、102.5Pa・s超の粘度を有する。さらに、1300℃の温度において、それは、典型的には102.5Pa・s超の粘度を有する。さらに、一般に、1450℃の温度において、それは、10Pa・s未満の粘度を有する。好ましいグレーズ加工用材料は、950℃の温度において、104.0Pa・s超、好ましくは105.6Pa・s超、特に好ましくは107.0Pa・s超の粘度を有し、1300℃の温度において、10Pa・s超の粘度を有し、かつ/または1450℃の温度において、10Pa・s未満、好ましくは105.6Pa・s未満の粘度を有することを特徴とする。
【0027】
さらに、本発明によれば、700℃の温度において、102.5Pa・s超の粘度を有し、900℃の温度において、102.5Pa・s超の粘度を有し、かつ/または1100℃の温度において、10Pa・s未満の粘度を有するグレーズ加工用材料が好ましい。特に好ましいグレーズ加工用材料は、700℃の温度において、104.0Pa・s超、好ましくは105.6Pa・s超、特に好ましくは107.0Pa・s超の粘度を有し、900℃の温度において、10Pa・s超の粘度を有し、かつ/または1100℃の温度において、10Pa・s未満、好ましくは105.6Pa・s未満の粘度を有することを特徴とする。
【0028】
グレーズ加工用材料は、好ましくはフリットを含む。特に適しているのは、SiO、AlおよびKO、ならびに/またはNaOを含有するグレーズ加工用材料である。以下の成分のうちの少なくとも1種、好ましくはすべてを所与の量で含有するグレーズ加工用材料が好ましい。
成分 重量%
SiO 50.0~80.0、好ましくは60.0~70.0
Al 10.0~30.0、好ましくは15.0~25.0
O 0~20.0、好ましくは5.0~15.0
NaO 0~10.0、好ましくは0.5~5.0
CaO 0~10.0、好ましくは0.1~1.0
BaO 0~10.0、好ましくは0.1~1.0
【0029】
本発明によれば、グレーズ加工用材料を基体材料に、例えば粉末、泥漿、スプレーもしくはラッカーの形態でエアブラッシング方法によって塗布し、または転写材料によって塗布することができる。実施形態では、グレーズ加工用材料を担体、特に水と混合して、泥漿を形成し、この泥漿を基体材料に、例えばブラシの助けによって塗布する。好ましい実施形態では、グレーズ加工用材料を、通常、加圧容器中で好適な担体、特に噴射剤と混合し、基体材料にスプレーの形態で塗布する。さらなる実施形態では、グレーズ加工用材料を液体担体、特に水と混合し、基体材料にエアブラッシング方法によって塗布する。あるいは、グレーズ加工用材料を乾燥した形態で、液体、特に水で湿らせた基体材料にエアブラッシング方法によって塗布することができる。さらに別の実施形態では、グレーズ加工用材料を、転写材料、特にフィルムまたは粘着ストリップに塗布し、この転写材料で基体材料に転写する。引き続いて、この転写材料を、熱処理によって引き離すまたは除去することができる。
【0030】
好ましい実施形態では、グレーズ加工用材料は、少なくとも1種の担体および/または溶媒、ならびに好ましくは少なくとも1種の無機および/または有機充填剤をさらに含有する組成物の形態で使用される。
【0031】
本発明による方法は、とりわけ、グレーズ加工用材料が基体材料に実質的に浸入しないことを特徴とする。
【0032】
本発明による方法は、グレーズ加工デンタルボディの生成に特に適している。したがって、本発明によれば、グレーズ加工セラミック体は、グレーズ加工デンタルボディ、特にグレーズ加工歯科修復物であることが好ましい。非緻密焼結基体材料は、歯科修復物の形状を有することがさらに好ましい。特に好ましい歯科修復物は、ブリッジ、インレー、アンレー、クラウン、ベニアおよびアバットメントである。
【0033】
本発明はさらに、非緻密焼結基体材料をグレーズ加工するためのグレーズ加工用材料の使用であって、グレーズ加工用材料を非緻密焼結基体材料に塗布し、基体材料およびグレーズ加工用材料を、第1の温度Tから、第1の温度より高い第2の温度Tに及ぶ温度範囲の熱処理に供する、使用にも関する。温度Tにおいて、グレーズ加工用材料は、好ましくは102.5Pa・s超の粘度を有し、温度Tにおいて、好ましくは10Pa・s未満の粘度を有する。好ましいグレーズ加工用材料は、温度Tにおいて、104.0Pa・s超、好ましくは105.6Pa・s超、特に好ましくは107.0Pa・s超の粘度を有し、かつ/または温度Tにおいて、10Pa・s未満、好ましくは105.6Pa・s未満の粘度を有することを特徴とする。本発明による使用のさらなる好ましい実施形態は、本発明による方法の上記の説明によってもたらされる。
【0034】
以下において実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【実施例0035】
(実施例1A~B)
グレーズ加工用材料の調製
表Iに示す組成を有する異なる2種のガラスを、本発明によるグレーズ加工用材料として調製した。
【表1】
【0036】
このために、まず最初に、200gの原料である石英粉末(SiO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)および水酸化酸化アルミニウム水和物(AlO(OH)×HO)を、Turbula混合器によって30分間完全に混合した。
【0037】
均質な混合物から、直径約40mmおよび重量約25gの円柱状圧縮体を、液圧プレスによって3MPaの圧力で一軸生成した。これらの圧縮体を、炉中、石英皿上で1000℃まで6時間にわたって加熱し、この温度でさらに6時間保持した。炉中で冷却した後、圧縮体を、ジョークラッシャーによって約1.5mmのサイズに破砕し、引き続いて乳鉢粉砕器(Retsch R200)で15分間粉砕した。
【0038】
か焼混合物を、液圧プレスによって3MPaの圧力でプレスして、直径約40mmの圧縮体を形成した。これらの圧縮体を、炉中、石英皿上で1150℃まで6時間にわたって加熱し、この温度でさらに6時間保持した。炉中で冷却した後、圧縮体を、ジョークラッシャーによって約1.5mmのサイズに破砕し、引き続いて乳鉢粉砕器(Retsch R200)で15分間粉砕した。
【0039】
か焼混合物から、重量約40gの焼戻ケークをハンドプレスによって生成し、離型剤として少量の石英粉末と共に石英皿上で約1000℃の高温炉(Nabertherm HT16/17)中に置いた。次いで、焼戻ケークを、10K/分でそれぞれ1450℃(実施例1A)および1400℃(実施例1B)に加熱し、この温度で1.5時間保持した。保持時間が終わった後、焼戻ケークを約2分間空冷し、次いで水浴中でクエンチした。このようにして得られたブランクを、ジョークラッシャーによって約1.5mmのサイズに破砕し、引き続いて乳鉢粉砕器(Retsch R200)で15分間粉砕した。
【0040】
(実施例2A~B)
グレーズ加工用材料の粘性の決定
実施例1A~Bで得られたグレーズ加工用材料の粘性を温度の関数として決定するために、粘度-温度曲線をVogel-Furcher-Tammann式(VFT式)に基づいて算出した:
【数2】
η:温度Tにおける動的粘度
A、B、T:物質特異的な定数
【0041】
このために、以下の特性温度の少なくとも3つを、それぞれ膨張計または加熱顕微鏡によって実験的に決定した:
【表B】
【0042】
温度TおよびTを、石英ガラスプッシュロッドおよびホルダーを装備した膨張計(Baehr-Thermoanalyse GmbH)によって決定した。試験対象の材料を、加熱速度5K/分で軟化点(最高1000℃)に加熱した。測定時に、装置に窒素をフラッシュした。
【0043】
温度T、THBおよびTを、加熱顕微鏡(Hesse Instruments、EMA Iソフトウェアを装備)によって決定した。試験対象の材料を、管状炉中、加熱速度10K/分で加熱した。ソフトウェアは自動的に、試料の特徴的な形状変化を決定し、それらに、対応する温度を割り当てる。
【0044】
以上に示した何対かの実験的に決定された特性温度値および関連粘度値から始めて、Microsoft Excel 2016 MSO(16.0.4456.1003)32ビットソフトウェアの求解機能の助けによって、最小二乗法に従う近似法によりVFT式を解いた。
【0045】
実施例1A~Bで得られたグレーズ加工用材料について、このようにして決定された粘度-温度曲線を図1に示す。比較のため、この図には、市販のグレーズ加工用材料(IPS e.max CAD Crystall./Glaze Spray、Ivoclar Vivadent AG)について同じように決定された粘度-温度曲線も示す。
【0046】
(実施例3A~B)
グレーズ加工するためのグレーズ加工用材料の使用
予備焼結ZrO(IPS e.max ZirCAD MO 0、Ivoclar Vivadent AG)で作製された市販ブランクから、小プレート(19mm×15.4mm×1.5mm)を切り取り、これらをさらに熱前処理することなく基体材料として使用した。エアブラッシング方法によってスプレーガン(VITA SPRAY-ON、Vita Zahnfabrik)を約1バールの使用圧力で約10cmの距離から使用して、実施例1A~Bで調製されたグレーズ加工用材料AおよびBの水性懸濁液を、これらの小プレートに噴霧し、炉(Sintramat S1 1600、Ivoclar
Vivadent AG、プログラムP1)中で30分間風乾した後、70分以内で緻密焼結し、同時にグレーズ加工した。
【0047】
焼結した後、グレーズ加工ZrO小プレートを2成分樹脂(EpoKwick Epoxy Resin/EpoKwick Epoxy Hardener 10:2、Buehler)に包埋し、境界面において光学品質まで(Apex Diamond Grinding Discs、Buehler、グレインサイズ0.5μmまで)磨き、引き続いて走査電子顕微鏡法(SEM、後方散乱電子)によって試験した。結果を図2A(実施例3A)および図2B(実施例3B)に示す。結果から、本発明によるグレーズ加工用材料は、認識できるほどの量で基体材料に浸透していなかったことが示される。
【0048】
(実施例3C)(比較)
グレーズ加工するための市販のグレーズ加工用材料の使用
実施例3A~Bと同じように、予備焼結ZrO(IPS e.max ZirCAD
MO 0、Ivoclar Vivadent AG)で作製された市販ブランクから、小プレートを切り取った。エアブラッシング方法によってスプレーガン(VITA SPRAY-ON、Vita Zahnfabrik)を約1バールの使用圧力で約10cmの距離から使用して、市販のグレーズ加工用材料(IPS e.max CAD Crystall./Glaze Spray、Ivoclar Vivadent AG)の水性懸濁液を、これらの小プレートに噴霧し、炉(Sintramat S1 1600、Ivoclar Vivadent AG、プログラムP1)中で30分間風乾した後、70分以内で緻密焼結し、同時にグレーズ加工した。
【0049】
焼結した後、グレーズ加工ZrO小プレートを2成分樹脂(EpoKwick Epoxy Resin/EpoKwick Epoxy Hardener 10:2、Buehler)に包埋し、境界面において光学品質まで(Apex Diamond Grinding Discs、Buehler、グレインサイズ0.5μmまで)磨き、引き続いて走査電子顕微鏡法(SEM、後方散乱電子)によって試験した。結果を図2Cに示す。これらの結果から、市販のグレーズ加工用材料は、基体材料に相当な程度まで浸透したことが示される。
【0050】
(実施例4)
相対密度の浸透深度に対する影響
予備焼結ZrO(IPS e.max ZirCAD MO 0、Ivoclar Vivadent AG)で作製された市販ブランクから、小プレート(19mm×15.4mm×1.5mm)を切り取り、これらを、熱処理によって、いずれの場合にも基体材料の真密度に対してそれぞれ50%、85%、90%および99.7%の相対密度に予備焼結した。エアブラッシング方法によってスプレーガン(VITA SPRAY-ON、Vita Zahnfabrik)を約1バールの使用圧力で約10cmの距離から使用して、実施例1Aで調製されたグレーズ加工用材料Aの水性懸濁液を、これらの小プレートに噴霧し、炉(Sintramat S1 1600、Ivoclar Vivadent AG、プログラムP7)中で30分間風乾した後、70分以内で緻密焼結し、同時にグレーズ加工した。
【0051】
焼結した後、グレーズ加工ZrO小プレートを2成分樹脂(EpoKwick Epoxy Resin/EpoKwick Epoxy Hardener 10:2、Buehler)に包埋し、境界面において光学品質まで(Apex Diamond Grinding Discs、Buehler、グレインサイズ0.5μmまで)磨き、引き続いて走査電子顕微鏡法(SEM、後方散乱電子)およびエネルギー分散型X線分光分析(EDX)によって試験した。結果を図3A~Dに示す。これらから、本発明によるグレーズ加工用材料の浸透深度は、基体材料の相対密度、したがって残留気孔率にほとんど依存しないことがわかる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
グレーズ加工セラミック体を生成する方法であって、
(a)グレーズ加工用材料を、非緻密焼結基体材料に塗布し、
(b)グレーズ加工ボディを得るために、前記基体材料および前記グレーズ加工用材料を、第1の温度T から、前記第1の温度より高い第2の温度T に及ぶ温度範囲の熱処理に供し、
前記グレーズ加工用材料が、前記温度T において、10 2.5 Pa・s超、特に10 4.0 Pa・s超、好ましくは10 5.6 Pa・s超、特に好ましくは10 7.0 Pa・s超の粘度を有し、前記温度T において、10 Pa・s未満、特に10 Pa・s未満、好ましくは10 5.6 Pa・s未満の粘度を有する、方法。
(項2)
前記グレーズ加工用材料が、前記温度T において、10 5.6 Pa・s超、特に10 7.0 Pa・s超の粘度を有し、前記温度T において、10 5.6 Pa・s未満の粘度を有する、上記項1に記載の方法。
(項3)
前記非緻密焼結基体材料が、予備焼結基体材料である、上記項1または2に記載の方法。
(項4)
前記非緻密焼結基体材料が、前記基体材料の真密度に対して30~90%の範囲、特に40~80%の範囲、好ましくは50~70%の範囲の相対密度を有する、上記項1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項5)
前記基体材料が、前記温度T において焼結し始める、上記項1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項6)
前記基体材料が、前記温度T に5~120分間、特に10~60分間、さらに好まし
くは20~30分間の間、維持される、上記項1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項7)
前記基体材料が、前記温度T において、前記基体材料の真密度に対して少なくとも97%、特に少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%の相対密度を有する、上記項1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項8)
前記基体材料が前記基体材料の真密度に対して95%の相対密度を有する温度T において、前記グレーズ加工用材料が、10 2.5 Pa・s超、好ましくは10 4.0 Pa・s超の粘度を有する、上記項1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項9)
前記グレーズ加工用材料が、前記温度T において、10 5.6 Pa・s超、特に10 7.0 Pa・s超の粘度を有し、前記基体材料が前記基体材料の真密度に対して95%の相対密度を有する温度T において、10 2.5 Pa・s超、好ましくは10 4.0 Pa・s超の粘度を有し、前記温度T において、10 Pa・s未満、特に10 Pa・s未満、好ましくは10 5.6 Pa・s未満の粘度を有する、上記項1から8のいずれか一項に記載の方法。
(項10)
前記基体材料が、酸化物系セラミック、特にZrO 、Al もしくは無機-無機複合材料をベースとする酸化物系セラミック、特に好ましくはナノスケールのZrO をベースとする酸化物系セラミック、またはガラスもしくはガラスセラミックである、上記項1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項11)
前記基体材料が、特に色が異なる少なくとも2つの層を含む、上記項1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項12)
前記グレーズ加工用材料が、950℃の温度において、10 2.5 Pa・s超、特に10 4.0 Pa・s超、好ましくは10 5.6 Pa・s超、特に好ましくは10 7.0 Pa・sの粘度を有し、1300℃の温度において、10 2.5 Pa・s超、好ましくは10 Pa・s超の粘度を有し、1450℃の温度において、10 Pa・s未満、特に10 Pa・s未満、好ましくは10 5.6 Pa・s未満の粘度を有する、上記項1から11のいずれか一項に記載の方法。
(項13)
前記グレーズ加工用材料が、700℃の温度において、10 2.5 Pa・s超、特に10 4.0 Pa・s超、好ましくは10 5.6 Pa・s超、特に好ましくは10 7.0 Pa・sの粘度を有し、900℃の温度において、10 2.5 Pa・s超、好ましくは10 Pa・s超の粘度を有し、1100℃の温度において、10 Pa・s未満、特に10 Pa・s未満、好ましくは10 5.6 Pa・s未満の粘度を有する、上記項1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項14)
前記グレーズ加工用材料がフリットを含み、前記フリットが、SiO 、Al およびK O、ならびに/またはNa Oを含有し、特に以下の成分のうちの少なくとも1種、好ましくはすべてを所与の量で含有する、上記項1から13のいずれか一項に記載の方法:
成分 重量%
SiO 50.0~80.0、好ましくは60.0~70.0
Al 10.0~30.0、好ましくは15.0~25.0
O 0~20.0、好ましくは5.0~15.0
Na O 0~10.0、好ましくは0.5~5.0
CaO 0~10.0、好ましくは0.1~1.0
BaO 0~10.0、好ましくは0.1~1.0。
(項15)
前記グレーズ加工用材料が、前記基体材料に粉末、泥漿、スプレーもしくはラッカーの形態でエアブラッシング方法によって塗布され、またはフィルムもしくは粘着ストリップに組み込まれる、上記項1から14のいずれか一項に記載の方法。
(項16)
前記グレーズ加工用材料が、少なくとも1種の担体および/または溶媒、ならびに好ましくは少なくとも1種の無機および/または有機充填剤をさらに含む組成物の形態で使用される、上記項1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項17)
前記グレーズ加工用材料が、前記基体材料に実質的に浸入しない、上記項1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項18)
前記グレーズ加工セラミック体が、グレーズ加工デンタルボディ、特にグレーズ加工歯科修復物、特に好ましくはブリッジ、インレー、アンレー、クラウン、ベニア、ファセットまたはアバットメントである、上記項1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項19)
非緻密焼結基体材料をグレーズ加工するためのグレーズ加工用材料の使用であって、
前記グレーズ加工用材料を前記非緻密焼結基体材料に塗布し、前記基体材料および前記グレーズ加工用材料を、第1の温度T から、前記第1の温度より高い第2の温度T に及ぶ温度範囲の熱処理に供し、前記グレーズ加工用材料が、前記温度T において、10 2.5 Pa・s超、特に10 4.0 Pa・s超、好ましくは10 5.6 Pa・s超、特に好ましくは10 7.0 Pa・s超の粘度を有し、前記温度T において、10 Pa・s未満、特に10 Pa・s未満、好ましくは10 5.6 Pa・s未満の粘度を有する、使用。
図1
図2
図3
【外国語明細書】